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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】加速度防護ズボン
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20220909BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220909BHJP
   A41D 1/06 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A41D13/015 105
A41D13/05 125
A41D13/05 136
A41D13/05 143
A41D1/06 501B
A41D1/06 502F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021545798
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020073772
(87)【国際公開番号】W WO2021043640
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】01115/19
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】00404/20
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519115934
【氏名又は名称】バイエラー, パトリック ジー.
【氏名又は名称原語表記】Patrick G. Beyeler
【住所又は居所原語表記】Chemin de la Rupille 5, CH-1273 Arzier le Muids,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】バイエラー, パトリック ジー.
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019377(JP,A)
【文献】特表2005-509550(JP,A)
【文献】特表2000-516891(JP,A)
【文献】国際公開第1999/054203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い加速度が発生する航空機のパイロット用の加速度防護ズボンであって、
前記加速度防護ズボンの少なくとも一部が二重壁になっており、
速度に依存した空気圧を受けることができるコンパートメント(1;5、13、17、18、25、34、35)が前記二重壁によって形成され
前記加速度防護ズボンの生地を構成するズボン素材(4)は、通気性、耐引裂性、耐火性、低伸縮性の合成織物素材で構成されており、
前記加速度防護ズボンは特定の場所に、尾てい骨チャネル(5)、嚢体(13)、接続チャネル(17)、股間チャネル(18)、臀部コンパートメント(25)、外側用コンパートメント(34)および内側用コンパートメント(35)を含む前記コンパートメント(1;513、17、18、25、34、35)が設けられており、
これらのコンパートメントは、自動計量型圧縮空気供給源に接続するための接合部(24)を備えた外向きのリードホース(22)を介して膨張させることにより、ほぼ円形の断面に膨張させることができ、
前記内側用コンパートメント(35)はズボン脚の内側に沿って延び、前記外側用コンパートメント(34)は前記ズボン脚の外側に沿って延び、前記ズボン脚の前側には、前記内側用コンパートメント(35)の一方の縁と前記外側用コンパートメント(34)の一方の縁とに隣接して、前記ズボン素材(4)の一部を構成する織物素材片(14)が設置され、前記ズボン脚の後側には、前記内側用コンパートメント(35)の他方の縁と前記外側用コンパートメント(34)の他方の縁とに隣接して、前記ズボン素材(4)の一部を構成する織物素材片(15)が設置され、
前記内側用コンパートメント(35)、及び前記外側用コンパートメント(34)の各々を膨張させることで、各々の、前記ズボン脚の前側及び後側の縁を引き寄せて、それとともに隣接する前記織物素材片(14、15)が伸長され得ることによって筋肉として機能し、
前記内側用コンパートメント(35)および前記外側用コンパートメント(34)は、前記ズボン脚の上端で、股間の下部領域(11)に沿って延びる前記股間チャネル(18)を介して接続されており、
前記ズボン脚の前記外側用コンパートメント(34)は、前記股間からさらに上方に延び、それぞれ下腹部に向かって袋状の前記嚢体(13)で終端していることを特徴とし、
一対の前記外側用コンパートメント(34)は、前記加速度防護ズボンの後側において、着用者の背中の小部分の領域(16)で、前記接続チャネル(17)を介して互いに連絡し、
前記接続チャネル(17)から前記尾てい骨チャネル(5)が下方に分岐して、着用者の臀部の間をクロッチの方向に延びており、
前記コンパートメント(1;513、17、18、25、34、35)は少なくとも1本の前記リードホース(22)と前記接合部(24)を介して、自動計量可能な圧縮空気源と連通する
ことを特徴とする加速度防護ズボン。
【請求項2】
前記コンパートメント(1;513、17、18、25、34、35)は、ほぼ円形の断面に膨張させることができるように、内側に気密性の高いエラストマーゴム素材(2)で裏打ちされており、
前記内側用コンパートメント(35)および前記外側用コンパートメント(34)は、これらコンパートメントに隣接する前記織物素材片(14、15)を互いに引き寄せる筋肉として機能する
ことを特徴とする請求項1に記載の加速度防護ズボン。
【請求項3】
前記コンパートメント(1;513、17、18、25、34、35)は、弾性的に伸縮可能なエラストマーのエアホースを備え、
前記エアホースは、前記内側用コンパートメント(35)および前記外側用コンパートメント(34)が隣接する前記織物素材片(14、15)を互いに引き寄せる筋肉として作用するように、ほぼ円形の断面に膨張させることができる
ことを特徴とする請求項1に記載の加速度防護ズボン。
【請求項4】
前記ズボン素材が、単位面積当たりの重量が最大で130グラム/mで、DIN EN ISO 9237準拠の通気性が最大で500l/m×sminであり、ISO 13934-1準拠の引張強度が最大で2000N/5cmであるアラミド繊維を含む、完全合成の、帯電防止性、耐摩耗性、および低伸縮性の糸の混合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項5】
前記加速度防護ズボンの脚にはそれぞれ、下から上に開き、上から下に閉じることができるジッパー(37)が前部に設けられており、これにより、2本のズボン脚をほぼ股間領域まで開くことができ、その結果、前記加速度防護ズボンは、前記ジッパー(37)が開いた状態で飛行服の上から、着用者が着用した飛行靴の上から着用することができ、前記ジッパー(37)が閉じられた後に適切に着用することができ、前記ジッパー(37)が前記飛行靴の上で開いた後に脱ぐことができることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項6】
前記加速度防護ズボンの脚はそれぞれその内側にジッパー(37)を備えており、前記ジッパーは、前記ズボン脚の前部を開放するために下から上に向かって開き、上から下に向かって閉じることができることを特徴とし、
前記ジッパー(37)は、ほぼ股間領域まで開くことができ、したがって、前記加速度防護ズボンは、前記ジッパー(37)が開いているときには、飛行服の上から、着用者が着用した飛行靴の上から着用することができ、前記ジッパー(37)を閉じた後には適切に着用することができ、前記ジッパー(37)が前記飛行靴の上で開いた後に再び脱ぐことができることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項7】
収縮筋として作用する1つの前記外側用コンパートメント(34)が、外側の横方向にウエストバンド(8)の近傍からズボンの裾(9)までチャネルの形で延在し、同様の前記内側用コンパートメント(35)がそれぞれ前記ズボン脚の内側に沿って股間からズボンの裾(9)まで延びていることを特徴とし、
前記臀部コンパートメント(25)は、それぞれの前記股間チャネル(18)を介して上部で前記外側用コンパートメント(34)に接続されており、単層で薄く通気性のある連続した前記織物素材片(14、15)が、前記ズボン脚の前部と後部に自由なままであり、前記織物素材片(14)は、それぞれジッパー(37)によってその全長にわたって分割可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項8】
前記ズボンの右側および左側において、2つの前記臀部コンパートメント(25)が、着用者の2つの臀部の外側半分を覆うように、側面の腰部領域から水平に背中のウエストバンド(8)に沿ってクロス領域(16)に向かって延在していることを特徴とし、
前記2つの前記臀部コンパートメント(25)は、臀部に圧力を作用させるために、2cm~6cmの幅で前記尾てい骨チャネル(5)がウエストバンドの背面中央から少なくとも20cm分下方に延在する前記接続チャネル(17)で接続されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項9】
前記ズボン脚の外側側面に沿って延在する一対の前記外側用コンパートメント(34)が、腰レベルで、ズボンの前部中央へと延在する一対の前記嚢体(13)に延び、膨張状態で着用者の下腹部に作用するように一対の前記嚢体(13)の一部を重ねることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項10】
膨張可能な前記コンパートメント(1;5、13、17、18、25、34、35)が、ズボンの2つの外側の臀部、ウエストバンド(8)の下の下腹部にわたるとともに、ズボンの脚の外側と内側、また股間領域に沿って延在することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項11】
前記加速度防護ズボンは、前記コンパートメント(1;513、17、18、25、34、35)に沿って通る換気静脈(21)を有し、これらの換気静脈(21)は、加速度防護ズボンの着用者の体表面を冷却するために、圧縮空気を前記加速度防護ズボンの内部に細かく供給することができる閉鎖リップ(19)がある穴を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項12】
覗き窓(29)を備えたポケット(28)が大腿部の前側にそれぞれ取り付けられていることを特徴とし、前記ポケット(28)は、その外側および上側の縁に沿って前記ズボン脚に縫い付けられているが、下方内側の縁は面ファスナ(38)によって前記ズボン脚に保持されているのみであり、その結果、前記ポケット(28)を外側に折り畳んで、その下に通るジッパー(37)を解放することができ、前記ポケット(28)の下端にあるフラップ(42)をジッパーまたは面ファスナで開くことができるようになっていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【請求項13】
覗き窓(29)を備えたポケット(28)が大腿部の前部に取り付けられていることを特徴とし、前記ポケット(28)が面ファスナ(38)によって前記ズボン脚に保持されており、前記ポケット(28)はその下端においてジッパーまたは面ファスナを備えたフラップ(42)で開くことができることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の加速度防護ズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能航空機の乗組員のための、従来のフルGスーツの代わりの加速度防護ズボン、または、略してG防護ズボンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回飛行時には高い加速力が発生することがある。垂直軸に沿って正のG力が発生すると、パイロットの生体にとって、これは体の上部領域からの血液が下方に垂下することを意味する。すると、脳や目に十分な血液を、したがって酸素を供給するために、心臓の働きが活発にならざるを得ない。しかし、個々に異なる能力の限界を超えてしまうと、酸素が不足して視力が低下したり(トンネルビジョン、グレイアウト)、さらには完全意識消失(ブラックアウト)(加速度誘発性意識消失、G-LOC)に陥り、ミッションの中止や事故につながる可能性がある。高いG力は、例えば、フライトレース、エアロバティックス、軍事飛行(空中戦、武器使用後の迎撃演習など)で発生する。航空機の乗組員は、高いG荷重による悪影響をある程度抑えたり、遅らせたりすることができる。適切な訓練に加えて、例えば、的を絞った筋肉の緊張や加圧呼吸などを利用することで、これを実現することができる。これらの対策は、傾斜した座席、酸素を含んだ空気による加圧換気、耐Gスーツなどの技術的な解決策、またはこれらのオプションの組み合わせによってサポートされる。しかし、最終的には、パフォーマンスや行動力の制限、急激な疲労を完全に防ぐことはできない。
【0003】
G防護スーツには様々なデザインのものが知られている。圧力流体として空気にさらされるもの、すなわち、いわゆる空気圧G防護スーツと、静水圧の原理に従って働き、静水圧を防護スーツの着用者に直接作用させるもの、あるいは、基本的に局所的かつ瞬間的にZ軸方向に通る液脈を備え、防護スーツの手足周りの周長を短くすることで液柱に対応する内圧を高める防護スーツとに区別される。これらはいずれも単に静水圧G防護スーツと呼ばれているが、液体は決して水に限定されるものではない。既知のG防護スーツは、例えば、最も近い先行技術と思われる特許文献1に記載されており、また、特許文献2、特許文献3、特許文献4にも記載されている。さらに、特許文献5からは、G防護スーツが知られている。
【0004】
このようなG防護スーツでは、防護すべき体の部位および/または領域は、通常、G防護スーツまたはその一部によって包囲されている。このようなG防護スーツの中では、しばしば極端な加速によって特にストレスを受ける身体部位や領域には、パイロットの止血圧力を打ち消すために、現在の局所的なZ軸(Gzと呼ばれる)の加速度に応じて、圧縮空気やガスで加圧された気泡やホースによって圧力がかかる。これは、そのようなG防護スーツの一般的なタスクである。
【0005】
十分なG防護のための労力は、従来のスーツでは依然として相当なものであり、本発明の目的は、特に、完全なスーツの代わりにG防護ズボンだけで十分なG防護が達成されるという事実によって、この労力を軽減することである。このG防護ズボンは、関連市場全体の約3分の1を占める用途に十分なG防護を提供するはずである。全体の市場が考慮されており、すなわち、高性能戦闘機だけのためのソリューションの市場だけでなく、例えば、ジェットトレーナーや、より一般的には、同様の加速度が発生する航空機で使用されるような、それほど高要求でない用途の市場も考慮されている。この加速度またはG防護ズボンは、従来のGスーツで必要とされるようなパイロット側の特別な行動なしにあらゆる状況下で、特に限界域で、効果的でなければならない。
【0006】
従来のG防護スーツは比較的重くて硬く、着用者はその中で汗をかきやすく、本来のG耐性や健康状態に悪影響を及ぼす。いくつかのGスーツは着用者に足や腕の痛みを引き起こす可能性があり、それらが引き起こすG下の圧力呼吸(PBG)に関する一般的な医学的疑問がある。したがって、G防護ズボンは、絶対的に信頼できるG防護、すなわち、いわゆるG-LOCの防止を保証するものでなければならず、また、可能であれば過圧下での呼吸を必要とすることなく、できるだけ少ない労力でこのG防護を保証するものでなければならない。G防護ズボンは、着用者の影響を受けずに、つまり圧迫された呼吸をせずに、つまり抗G緊張動作(AGSM)なしに機能し、あらゆる状況で最適な効果を発揮し、可能な限り最高の着用感を提供し、下着のように快適に着用できるものでなければならない。これにより、パイロットの疲れを未然に防ぎ、痛みを確実に防ぐことを目的としている。さらに、このG防護ズボンは、水に浸かったときに浮力をサポートすることも必要である。任意に、このG防護ズボンは、有効な冷却装置を含むべきである。これらのG防護ズボンは、標準的なズボンとして製造することが可能であるべきである。これまではスーツにほぼ必要であった、個々の着用者のためのこのようなG防護ズボンの調整は、もはや必要ではないはずである。
【0007】
これまでは、G防護スーツのシェルが着用者の身体に接触圧を発生させていたため、防護すべき身体の部位によって、この接触圧を発生させる気泡の大きさが異なっていた。先行技術文献から分かるように、気泡の体積は比較的大きく、下半身をほぼ完全に覆うまでになっており、空気の圧縮性と相まって、また、Gzの高い発症率を考慮すると、G防護スーツのリードの反応が遅くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1755948号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0289050号明細書
【文献】特開2008-012958号公報
【文献】独国特許出願公開第102007053236号明細書
【文献】国際公開第2012/066114号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の事実を考慮して、防護すべき身体の相対的な大きさに応じて、また、局所的かつ瞬間的な加速度に応じて内圧を制御することができ、さらに、この目的のために充填される体積が小さいままを保つべき、加速度防護ズボンまたはG防護ズボンを作成することである。また、G防護ズボンは、きっちりフィットさせる必要なく快適に着用できるものでなければならない。普通のジーンズと同じように着脱が容易で、Gスーツのような過圧呼吸が不要でなければならない。さらに、オプションで空調などの機能を提供できなければならない。また、このG防護ズボンのもう1つのタスクは、発生する内圧をリズミカルに変化させることで、パイロットの脚の血液の静脈還流を促進させることである。また、大腿部には圧力気泡が配置されていないため、このG防護スーツは、G荷重を受けて膨張する際に大腿部上のパイロットの手の位置を変えないようにする必要がある。ユーロファイターやF/A-18などの航空機には中央に操縦桿があり、パイロットは長期的なサポートを提供するために、あるいは長いターンでの規則的な飛行を容易にするために、操縦桿を大腿部に置くことがよくある。最終的に、このG防護ズボンは、飛行服の上から着用でき、さらには飛行靴の上からスリップ式に履くことができるものでなければならない。この目的のためには、楽に、簡単に、素早く装着でき、飛行服と飛行靴を既に装着した状態で再び脱ぐことができるように、すなわち、飛行靴の上からスリップ式に装着と脱着ができるように特別に装備されている必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目下の課題の解決は、高い加速度が発生する航空機のパイロットのための加速度防護ズボンまたはGズボンによって達成され、それによって、G防護ズボンの少なくとも一部が二重壁であり、したがって、内側または外側に気密コンパートメントを形成し、このコンパートメントは、加速度に依存する空気圧を受けることができ、G防護ズボンは全体的に通気性、耐引裂性、耐火性、低伸縮性の合成織物素材で構成されており、また、G防護ズボンは、自動計量型圧縮空気供給源に接続するための接合部付きホースの外側に膨張させることができるコンパートメントを部分的に備えており、このコンパートメントは、ほぼ円形の断面に膨張させることができ、これらのコンパートメントは、その対向する2つの縁が互いに引き寄せられることができ、隣接する布片がそれに従って伸長され得るため、筋肉の役割を果たすようになっており、それにより、これらのコンパートメントは、フィン脚部の内側と外側に沿って連続的に延び、ズボン脚の上端で、最終部の下側に沿って通る股間チャネルを介して接続されており、ズボン脚の外側のコンパートメントは、最終部からさらに上方へ、下腹部に向かって袋状の嚢体へと延在し、これらのコンパートメントは、ズボンの後ろ側の、着用者の背中の小部分にある接続チャネルを介して互いに連絡し、そこから尾てい骨チャネルが分岐して、着用者の臀部の間をクロッチの方向に延び、それによってコンパートメントは、少なくとも1本の接合部付きホースを介して自動計量型圧縮空気供給源と連通する。
【0011】
従属請求項では、これらのG防護ズボンの特に有利なデザインが、より正確な形で記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
これらのG防護ズボンおよび本発明の基礎となる概念を、図面を用いてより詳細に説明する。
図1】先行技術による5嚢体防護Gズボンの図である。
図2図1によるG防護ズボンの5嚢体の形状の図である。
図3】先行技術による、吹き込みにより完全にカバーされたG防護ズボンの図である。
図4図3によるG防護ズボンの完全にカバーされた嚢体の幾何形状の図である。
図5】本発明によるG防護ズボンを裏返しにして、仮想身体に着用させ、ズボンの脚の内側と外側に沿って空気圧筋があり、分割された腹部嚢体がある図である。
図6】圧縮空気で膨張させることができ、G防護ズボンに組み込まれている、図5によるG防護ズボンのコンパートメントまたは空圧筋の形状を、平面上に別々に広げた状態で示した図である。
図7図6に示したものと同じであるが、矢印で、本図と図6の外側コンパートメントがどのように内転されて、ズボンの脚の内側に沿ってその後の内側コンパートメントを形成するかを示している図である。
図8】G防護ズボンを着用するために図7に従って内転させた後のG防護ズボン内の空間的な位置における、図5によるG防護ズボンのコンパートメントまたは空気圧筋の形状および位置を示し、G防護ズボンを、内側を外側に返して示した図である。
図9】平らな状態で断面を示した、内側にゴム弾性、非通気性、および伸縮性のある層で裏打ちされた、空気圧筋として機能するコンパートメントの図である。
図10】空気圧筋として機能するコンパートメントで、内側をゴム弾性、非通気性、伸縮性のある層で裏打ちされ、部分的に膨張し収縮中の状態を断面で示した図である。
図11】空気圧筋として機能するコンパートメントで、内側をゴム弾性、非通気性、伸縮性のある層で裏打ちされ、完全膨張・完全収縮状態をほぼ円形の断面で示した図である。
図12】G防護ズボンの内側を外側に返して、正面から見た弛んだ状態で、2本のズボンの脚を膝の部分で少し曲げて外側に広げた状態の図である。
図13】内側を外側にしたG防護ズボンを、コンパートメントが部分的に膨張した状態で後ろから見た図である。
図14】右側から見た弛んだ状態で内側を外側に返したG防護ズボンを床置きして、2本のズボンの脚の膝部分の角度を違えた状態の図である。
図15】G防護ズボンの内側を外側に返して、膨らませたコンパートメントを前から見た状態の伸長位置状態の図である。
図16】G防護ズボンの内側を外側に返して膨張した状態を左側から見た図である。
図17】伸長位置状態で、G防護ズボンの内側を外側に返して、膨張したコンパートメントを右側から見た図である。
図18】これらG防護ズボンの別の実施形態で、弛んだ状態で内側を外側に返して仮想身体に担持させて内部構成要素の位置を示している、やや斜め前から見た図である。
図19】このG防護ズボンのこの実施形態で、弛んだ状態で内側を外側に返して仮想身体に担持させてその内部構成要素の位置を示している、左から見た図である。
図20】本実施形態のG防護ズボンの、緩んだ状態で外側を外側にしたものを、仮想身体に担持させて後ろから見た図である。
図21図20によるG防護ズボンの本実施形態で、弛んだ状態で仮想身体に装着された状態を右から斜め後ろから見た図である。
図22】締め付け後のGズボンの別バージョンで、ズボンの脚の前部に開いたジッパーがある状態を前から見た図である。
図23図22によるG防護ズボンで、ズボンの脚の前部に開いたジッパーがある状態を後ろから見た図である。
図24】左のズボンの脚のジッパーを閉じ、右のズボンの脚のジッパーを全開にした図22および図23によるGズボンを前から見た図である。
図25】右のズボンの脚のジッパーが部分的に開き、左のズボンの脚のジッパーを全開にした、図22と23によるGズボンを前から見た図である。
図26図22および図23によるGズボンの着用後の状態で、2本のズボンの脚の前側のジッパーを全開にした状態を前から見た図である。
図27】着用状態の図22および図23によるGズボンの、正面から見た、ズボンの脚の前側のジッパーが閉じた状態の図である。
図28図22から図27によるGズボンを引き上げて着用した状態で、その右側から見た図である。
図29図22から図28によるGズボンを履いた状態を左側から見た図である。
図30図22から図29によるGズボンを床置きし、ズボンの脚の前部の開いたジッパーを正面から見た図である。
図31】床置きした図22から図30によるGズボンで、ズボンの脚の前部に開いたジッパーがある状態を後ろから見た図である。
図32】飛行服の上、特に飛行靴の上から着用した、図22から図31によるG防護ズボンで、右のズボンの脚に開いたジッパーがある状態の図である。
図33図22から図32に示したG防護ズボンを、飛行服の上、特に飛行靴の上から着用し、脚部のジッパーを閉じた状態の図である。
図34】このG防護ズボンを着用したパイロットが、飛行服の上に、パイロット・ブーツの上に着装し、G防護ズボンのズボンの脚が、強盗ズボン(robbery trousers)のようにブーツの靴の上で終端している図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の本質をよりよく理解するために、まず、従来技術によるG防護ズボンのシステムを簡単に提示し、議論する。この目的のために、図1は、5嚢体防護Gズボンとして知られているものを、引き上げて着用した状態で示している。これは、1940年代後半に発明されたもので、現在も最も広く生産されているG防護システムである。このようなG防護ズボンは、パイロットのG防護を平均1.0G向上させることが知られている。それらはパイロットのオーバーオール23の上から着用され、いくつかの(5個の)嚢体がそれらの内部に一体化されている。クロッチ周辺と膝の前部領域には、座ったときの動きの自由度を高めるための凹部40が設けられている。各嚢体は互いに連結されており、必要に応じて圧縮空気ホースで膨張させる。膨らませた部分はパイロットの体表面に直接押し付けられ、医師の血圧計と同様に、凹部40の縁で血液の鬱滞が発生し、この血液の鬱滞が循環障害、血圧上昇、血圧心拍数上昇につながる可能性がある。
【0014】
図2は、このG防護ズボンの嚢体システムを、互いに連絡している5つの嚢体26を別々に示したものである。様々な嚢体26には、ホース27を介して圧縮空気が供給される。G防護ズボン内では、嚢体26がそれぞれ大腿部の前部と下腿部の前部を覆っている。さらに、第5の嚢体26が下腹部に働く。この嚢体システムが加圧されると、嚢体26はその形状に応じて膨張し、パイロットの止血圧力を打ち消すために着用者の身体に圧力を発生させる。気泡26の体積が大きいため、第1に、システムが比較的緩慢になり、それに応じて反応時間が長くなるという不利な効果がある。第2に、これらの気密性の高い嚢体26は、着用者の身体の比較的大きな部分を覆い、そこに汗が運ばれるのを防ぐ。したがって、このようなG防護ズボンは、本当の「ヘッドロック」であることが判明し、すなわち、脚部に熱の蓄積を生じさせ、それに応じて、着用の快適さには多くの不満が残る。本願発明による新規のG防護ズボンとは対照的に、この種のGズボンは、抗G性能を発揮するためには非常にタイトに着用しなければならず、自由な動きと快適性が大きく制限される。
【0015】
図3は、1980年頃に発売された先行技術のもう一つの例、すなわちフルカバーG防護ズボンである。このズボンは、前から見て弛んで床置きされているが、後述するように、嚢体は着用者の体のより大きな部分を覆っている。このような従来のG防護ズボンは、ISO9237準拠の20~90l/m×sの比較的重くて非通気性の織物素材、好ましくは耐火性のノーメックスアラミド生地をアウターシェルとして使用しており、その中に嚢体が配置されている。嚢体システムは、強化された非伸縮性のポリウレタンコーティングされたナイロンで作られている。アウターシェルには、ウエストと下肢のためのジッパーが設けられており、例えば、6つの調節可能なひも付きのひも部分と、開閉用のジッパーを備えた2つの容易に取り外し可能な脚部ポケット28が設けられている。これらの覗き窓29付きのポケット28は、書類を受け取ったり見たりするために、大腿部の前部に組み込まれている。また本願による新規のG防護ズボンとは対照的に、図3に示すこのタイプのGズボンは、効果的な抗G性能を発揮するためには非常にタイトに着用しなければならず、パイロットの自由な動きや快適性が大きく制限され、着装時間もずっと長くなる。また、臀部を圧迫せず、その大きな腹用嚢体が圧力下で胃の部分を激しく押圧・圧迫し、非常に不快な思いをする。このようなズボンは、パイロットのG防護を平均1.5G増加させる。
【0016】
図4は、図3によるこれらのフルカバレッジ防護Gズボンの嚢体システムを別個に示している。嚢体30は、ズボンの脚の内側に沿ったギャップ31を除いて、外側から2本の脚をそれぞれ完全に包み込むことによって、脚の表面全体を実質的に覆うように延びており、それゆえに、フルカバレッジG防護ズボンという呼び方になる。上部では、嚢体30は、腰部および下腹部32の上に続けて配置され、これを横方向の腰まで覆っている。この嚢体30には、脇に開いたホース33から圧縮空気が供給される。ここでも、脚と下腹部の大部分を覆うことは、体からの熱の放散にとって不利であることがわかる。体の多くの部分が気密性の高い素材のこれらのズボンで覆われているため、実際「スエットパンツ」として機能しているが、それは、それらは飛行中に人は実際臀部で着座しているため、体から熱が逃げる可能性がないからである。このようなフルカバーのG防護ズボンは、それだけで着用感が悪いことがわかっている。一体型嚢体30の大きな容積は、システム関連の慣性をもたらす、すなわち、圧力の蓄積および圧力の再減少のための反応時間が比較的長くなるということである。
【0017】
本発明によるG防護ズボンは、内側を外側に向けた状態で図5に示されており、従来知られているG防護ズボンとは対照的に、これらの防護ズボンは、基本的に一貫して、これらのG防護ズボンのために特別に開発された独自の素材で作られており、この素材は、DINEN ISO 9237準拠で最大500l/m×s分の高い通気性を提供する。この素材は、ISO 13934-1準拠の最大2000N/5cmの非常に高い引裂強度も特徴とする。このISO 13934-1規格は、ストリップ法を用いて織物の最大力と伸長度を測定する方法を規定している。この方法は主に織物に適用され、第1に織物中にエラストマー繊維が存在することによって、第2に織物の機械的または化学的処理によっても得られる伸び特性を有する織物を含むものである。ただし、他の技術で作られた布地にも適用できるが、ジオテキスタイル、不織布、コーティングされた布地、ガラス布、炭素繊維やポリオレフィンのテープヤーンから作られた布地には適用できない。この手順では、試験用の標準大気と平衡状態にある試験片と、湿潤状態にある試験片の最大力と最大力時の伸びを測定することを規定している。この手順は、CRE試験機(定速伸長)の使用に限定されている。
【0018】
図5に示すようなこれらのG防護ズボンは、ほとんど伸縮せずに極めて高い耐荷重性を提供し、単位面積当たりの重量は121±5グラム/平方メートルと非常に低い。これらのG防護ズボンの素材は、肌に直接着用することができ、これにより、他に必要とされる従来の下着の圧縮性も排除される。しかし、衛生上の理由から、随意に、G防護ズボンは、特別に適合された、耐火性で薄手で通気性のある繊維製の下着と一緒に着用され得る。これらのG防護ズボンは、特別に快適な着用感で、パジャマに似た非常に上質な天然コットンのような感触である。これらのGズボンの生地は、アラミド繊維を含む耐火性のある完全合成繊維の、帯電防止、非常に丈夫で伸縮性の低い糸の混合物で構成されており、これを通気性のある生地に加工している。ズボン脚の前側と後側は、織物片14としてのみデザインされている。これらは通気性があり、体熱を逃がすことができる。
【0019】
特別な特徴として、これらのG防護ズボンは、従来の嚢体システムに基づいて構築されておらず、むしろ、小さく分割された腹部嚢体13を有するコンパートメントで構成された空気圧筋システムを含んでいる。外側のこのようなコンパートメント34は、2本のズボンの脚の外側の側面に沿って、ズボンのウエストバンドから下裾9まで延びている。この種の内側コンパートメント35は、ズボン脚の内側の側面に沿って、股間からズボンの下側の裾9まで延びている。これらの外側コンパートメント34および内側コンパートメント35は、それぞれのストリップチャネル18を介して、下側ストリップ縁11に沿って互いに接続されている。外側コンパートメント34と内側コンパートメント35との間の前後、すなわちズボン脚の前後の領域に、通気性のある織物片14、15(図14にも示されている)が設置され、これが着用者の脚部の前後に直接配置される。外側コンパートメント34は、下腹部を覆って脚の上に延びており、それぞれが気泡13を形成するための袋状のポケットを形成し、こうして形成された2つの気泡13が下腹部全体を覆うようになっている。背面では、2つの外側コンパートメント34は、さらなる図面から明らかになるように、チャネルを介して接続されている。空気圧的に収縮する筋肉として機能するこれらのコンパートメントは、必要に応じて脚を含む下半身全体に圧力をかけられ、それによって、これらのコンパートメント34、35、18、13は、比較的小さな面積のカバレッジを有するが、それでも下半身全体に圧力をかけることができる。これらの空気圧的に収縮する筋肉の目的は、隣接する身体に圧力をかけて膨張させた領域として直接作用するのではなく、むしろ身体の周りの隣接する通気性の生地部分を引き伸ばすことによって間接的に作用することである。これらの空気圧的に収縮する筋肉は、必要に応じてすぐに気泡のない布ストリップ14、15を直ちに互いに引き寄せ、それらで覆われた体の部分や手足をまたぎ、それによって圧力がそこにある体に適用されるのである。大規模な遠心分離機によるテストの結果、これらのG防護ズボンはパイロットに平均3.5~3.8GのG防護を提供することが判明しており、すなわち、市場で入手可能な他のすべてのG防護用パンツよりも2~3倍のG防護を提供する。これらのG防護ズボンは、全体的に非常に軽量で、従来のG防護ズボンに比べて約3分の1の重量に相当する。従来のG防護ズボンが着脱に手間がかかるのに対し、このG防護ズボンはジーンズのように簡単に着脱することができる。
【0020】
内蔵型コンパートメント34、35、18、13は、従って、体表面を直接押すことを目的とした単なる気泡ではなく、収縮するための空気圧的に機能する筋肉として作用する。これらのコンパートメントは、例えば、縫い付けや接着や溶接によって、G防護ズボンの織物素材の内側または外側に織物素材の片を施して二重にすることによって、織物素材に組み込まれており、その結果、片はその縁でのみ織物素材に接続されている。これらのコンパートメントは、残りの織物素材と同じ低伸縮性素材で作られている。第1の変形例では、エラストマー製の柔軟で伸縮可能なホースがこれらのコンパートメントに挿入され、圧力を加えると膨張する。そして、これらの膨張したチューブは、コンパートメントの内側に当てられ、円形の断面に膨らむ。その結果、最初は平らだったコンパートメントの横方向の2つの縁が互いに接近する方向に移動し、つまり収縮し、コンパートメントの外側に隣接する織物片に張力がかかる。別の実施形態では、コンパートメントの内側をゴム弾性のある非通気性の素材で裏打ちしてシールを形成する。コンパートメントの内部に空気が圧送されると、コンパートメントは瞬時に円形の断面に変形し、外側に配置された織物片を収縮的に引き寄せ、その織物片が、覆われた体の部分を包み込み、その結果、体表に圧力をかけることができる。
【0021】
図6は、圧縮空気で膨張させることができ、G防護ズボンに一体化されている図5によるG防護ズボンのコンパートメントまたはこれらの空気圧的に収縮する筋肉の形状を、平面上に広げたときの状態で示している。コンパートメント34は、2本のズボン脚の外側に向けたものである。一方、写真で外側に描かれているコンパートメント35は、ズボン脚の2つの内側を対象としており、図7に曲がった矢印で示されているように、取り付けのために裏返される。上部では、ズボンの脚の内側用コンパートメント35は、それぞれの最後のチャネル18を介してズボンの脚の外側用コンパートメント34に接続されている。ズボンの脚の外側用コンパートメント34は、腰からさらに上に向かってウエストバンドまで延びている。これらはそれぞれ、ズボンの前部に設けられた嚢体13としての袋状のポケットに通じており、これら2つの嚢体13は共同で下腹部全体を覆っている。外側コンパートメント34は、担持者の背面領域16の小部分において、背面に来る領域を伴うさらなるチャネル17を介して互いに接続されている。尾てい骨チャネル5が、このチャネル17から下方向に分岐しており、このチャネルは、G防護ズボンが着用されたときに、着用者の臀部の間を下方向に延びる。この尾てい骨チャネル5は、幅が2cm~6cmの大きさで、下方に延びて臀部に圧力を加えるが、射出座席作動時の危険な「エアクッション効果」はない。
【0022】
図8では、このファンの形状が、G防護ズボン上の、空間的な表現で示されており、ズボンの脚の内側の側面用コンパートメント35は、図6および図7に示されているような状況に基づいているが、これらのコンパートメント35はこのとき、内側に裏返されている。このようにして、ズボン脚の外側の側面用コンパートメント34は、ズボン脚の外側の側面に沿って外側に通り、ズボン脚の内側に沿って延在するコンパートメント35は、ウェルトチャネル18を介して外側コンパートメント34に連絡するように接続されている。外側コンパートメント34と内側コンパートメント35との間のすべての領域は、気密性のあるカバーが明示的にないままであるか、または、通気性の高い織物素材によって橋渡しされている。下腹部領域では、図6および図7の位置から出発して、内側に折り畳まれた袋状のポケットが気泡13として見られる。背中部分の小部分には、連結チャネル17と、そこから下に向かって分岐している尾てい骨チャネル5が見られる。
【0023】
ズボン脚用のそのような空気圧筋はすべて、2本のズボン脚の外側と内側にのみ組み込まれているので、ズボン脚の前側と後側にはコンパートメントが残っておらず、そこの織物素材は織物片14、15として脚部に直接配置され、これらの領域では、汗を外部に拡散させるために、高レベルの通気性が提供されている。こうして、座っているときに大腿部の上側が膨張するのを効果的に防ぐことができる。パイロットは、G荷重やG防護ズボンにかかる圧力にかかわらず、前腕を大腿部に載置でき、荷重が変化しても腕は落ち着いている。特に、これで連続的な旋回が容易になる。
【0024】
図9は、空気圧的に作用して収縮する筋肉としてのそのような織物コンパートメントを通る断面を示している。基本的なズボン素材4の内側だけでなく外側にも配置され得る一方の側には、織物片7が施されている。このようにして形成されたコンパートメントの内側には、図9に示す例では、ゴム弾性を有する気密層2が完全に裏打ちされている。コンパートメント1の2つの隅部6では、気密性の高いコーティング2が封止するように一体化されている。このコンパートメント1の内部に空気を圧送すると、空気が逃げられない故に膨張し、最終的にコンパートメントは円形の断面を持つことになる。縁は互いに向かって収縮している。図10の外側左右の矢印で示されているように、コンパートメントの2つの側面-ここではコンパートメントの左側と右側-に隣接する織物片14、15が、それによって互いに向かって引き寄せられることは明らかである。図10では、コンパートメント1が部分的に膨張している。この膨らみは、図11に示すように、コンパートメント1の断面がほぼ円形になるまで続けられ得る。また、設計上のオプションとして、乾燥空気冷却システムがあるが、この場合、積層された通気動脈21を介して別々に供給される圧縮空気が、リップ状の開口部19を介して緩和されて着用者の体表面に届き、そこで着用者に冷却効果をもたらす。
【0025】
気密性のある内側のファンコーティングまたはその中に挿入されたエアホースは、エラストマー製であり、したがって、柔軟で伸縮可能である。図9図11に示すように、それらは、より伸縮性の低い織物の被覆によって両側を包囲され、G防護ズボンのコンパートメント1を形成している。コンパートメント1内のエアホースやファンコート2の内部が圧縮空気で加圧されると、隣接する織物片が引き伸ばされて周方向の張力oが生じ、これにより、以下の関係式による身体組織内の圧力pが高まる。
σ=p・r
したがって、
【数1】
は身体の局所的な曲率rに反比例する。
【0026】
コンパートメント1の内部に気密性の高いゴム弾性コーティング2を装備する代わりに、拡張可能なゴム弾性チューブをコンパートメント1の内部に緩やかに案内することもできる。これに空気を圧送すると、空気は膨張して最終的にコンパートメント1の内部を完全に満たし、十分な内圧があれば、このホースはコンパートメントをほぼ円形の断面に膨張させることができる。コンパートメントの2つの縁はそれに応じて収縮し、それに応じて通気性織物片14、15は互いに引き寄せられる。
【0027】
図12は、内側を外側に返したこのG防護ズボンを、弛んだ状態で床置きして正面から見たものであり、2本のズボン脚が膝の部分で外側にわずかに曲げられている。ズボンの脚の外側と同様に、コンパートメント35は、その内側においても、ズボンの脚に沿って股間10からズボンの裾9まで延びている。ステップ10から、股間チャネル18が、コンパートメント35から斜め外上方に向かって、股間の下縁11に沿ってズボンの外側12、すなわち腰領域まで延びている。そこから、さらなるコンパートメントが、ウエストバンド8の下のズボンの前部領域に延びており、それぞれが、ウエストバンド8に沿って着用者のウエストの中央まで水平に気泡13としてのサック状のポケットの形をしている。
【0028】
図13は、コンパートメント34,35を少し膨らませた状態で内側を外側に返したG防護ズボンを後方から見たものである。この図13が示すように、ウエストバンド8にはベルトループ3を設けることができる。この図では、ズボンの内側が外側に返してあるので、これらはここでは内側にある。ここに提示されているこれらのG防護ズボンのズボンに張力をかけるためのコンパートメント34は、ズボンのウエストバンド8の近傍から、ズボンの2つの外側の側面を下り、ズボンの脚の外側に沿って、ズボンの裾9まで続いている。ズボンの両側のウエストバンド8の領域から、コンパートメント34は、ここで見えるズボンの背面側で背中の領域16の小部分まで水平に延び、特に、臀部の外側半分25を覆っている。ウエストバンドの背面の中央部から、尾てい骨チャネル5の形をしたコンパートメントが、幅2cmから6cmで下方に延び、ズボンの着用者の股間の高さまで延びている。空気圧で連結されたコンパートメント5、17、34、35に空気圧をかけると、コンパートメント5、17、34、35が膨張し、コンパートメント5、17、34、35の幅が縮む。そのため、2つのファン縁間の距離が短くなり、隣接する通気性織物部分15に張力がかかり、その結果、多かれ少なかれ覆われた身体部分を引張応力で包囲することになる。このズボンの織物は、繊維の伸びと結合部の伸びの両方の点で、極めて伸縮性の低い織物素材であるため、この引張応力による身体部分、特に大腿部と下腿部だけでなく、骨盤全体、特に臀部のタイトな包囲は、非常に効果的であり、すぐに実行される。同時に、身体の上に配置されたこの単層の織物素材は、特に通気性があり、したがって空気を通す。正にこの特性により、着用者が蒸散することができ、体の上に載った平らな織物片14、15を介して汗を逃がすことができる。ズボンの脚の後ろ側の外側コンパートメント34と内側コンパートメント35の間にある織物部分15は、同じ薄さで通気性のある生地で作られており、快適な座り心地のために使用される。単層であるため、コックピットシートの座面と最も直接的で自然な接触を確実に可能にする。そのため、従来の非通気性または非通気性に近い生地と比較して、着用感が非常に高く、比類なく改善されている。空の状態またはフラットな状態では、コンパートメントの最大幅は数センチである。
【0029】
図14は、内側を外側に返したこのG防護ズボンを弛んだ状態で右側から見た図であり、ズボンは床置きされ、左のズボン脚が少し前方に押し出された状態で示されている。ここでは、内側コンパートメント35が左のズボン脚に、外側コンパートメント34が右のズボン脚に見られる。ズボン脚のコンパートメント34、35の間に配置された織物片14、15は、薄くて通気性のある素材でできている。脚の前側にあるものをここでは14とし、脚の後ろ側にあるものを15とする。そこで、これらの領域14、15は、第1に、コンパートメント34、35によって構築された張力が、織物素材が弾性を有するため、この繊維の良好な空気透過およびしたがって通気性のおかげで維持され、第2に、非常に重要なことに、着用者が素材を通して発汗したとき、汗が外部に拡散することをとりわけ保証する。また、このG防護ズボンは、特に軽量な繊維で作られているため、これまでのGスーツにはない快適性を提供する。G防護ズボンの前身頃には、着用者の腹部の前に延在する2つの袋状の嚢体13の右側が見える。
【0030】
図15では、このG防護ズボンは、内側を外側に返して緊張した状態、つまりコンパートメントを膨張させた状態で示されており、正面から見ている。ベルトループ3がここでは内側にあるのはそのためである。ズボン脚の外側に沿って配置されているコンパートメント34は、ズボン脚の内側に沿って配置されているコンパートメント35と同様に膨張している。内側コンパートメント35は、上部で股間チャネル18に開口し、股間チャネル18は、股間の下端に沿って、つまり斜め外上方に向かって通り、ウエストバンド8の近くまで側部領域につながっている。腰領域の側部領域からは、袋状のポケットがG防護ズボンの両側に分岐して、腹部の中央に向かって嚢体13を形成している。この図では、織物片14がズボン脚の前部に見えるが、これは薄くて通気性のある生地で作られているので、この低伸縮性だが非常に通気性のある生地が着用者の裸の脚部に直接当たるようになっている。着用者は、ズボン脚のこれらの前側および後側の上で蒸散することができ、これは、着用者の汗が織物片14,15を介して外側に効率的に拡散することができることを意味し、これにより、これらのG防護ズボンの着用快適性が大幅に向上する。
【0031】
図16は、内側を外側に返したG防護ズボンを、コンパートメント13、18、25、34、35が空である弛緩状態で、ズボンの左側から見たものである。この表現では、左のズボンの脚の左外側にある外側コンパートメント34が見える。膝の部分では、コンパートメント34は、コックピットシートに座る姿勢のために膝を緊張させずに曲げられるように凹み20が形成されるようにカットされている。その他は、コンパートメント34は、着用者の大腿部と下腿部に対して連続している。
【0032】
図17は、2つのズボンの脚の膝部分が異なって展開している右側から見た、コンパートメント13、18、34が完全に膨張していない、部分的に伸長した状態で、内側を外側に返したG防護ズボンを示している。ここでは、ズボンの右側、つまり、右のズボン脚と右の腰部に、はっきりと見えるコンパートメント34があることがわかる。腰部の前には、袋状の嚢体13が見え、これは、ウエストバンド8に沿って下に延び、反対側の嚢体に対称配置された嚢体13と中央で合流している。
【0033】
図18では、これらのG防護ズボンは、内側が外側に向いて弛んだ状態で示されており、ズボン内部の個々の構成要素の位置を示すために、やや斜め前から見た破線で示された仮想身体に装着されている。ズボンの脚の外側の側面に沿って外側コンパートメント34が認識され、ズボンの脚の内側の側面に沿って内側コンパートメント35が認識される。その間には、織物14の薄くて通気性のある部分が配置されており、コンパートメント34、35が膨張したときの引張応力を維持し、汗が拡散するようになっている。上部には、内側コンパートメント35に隣接して鼠径管18が配置され、さらにその上には、膨張した状態で股間や下腹部を加圧するための2つの袋状の嚢体13が配置されている。G防護ズボンは、頂部のウエストバンド8で終端する。クロッチからウエストバンド8の外まで2つのジッパー36、38がある。ジップファスナー36は第1のジップファスナーであり、第2のジップファスナー38は、ズボンのウエストを大きくしたり広げたりできるように、着用者の体重が大きく増加した場合にのみ開かれる。このG防護ズボンは、革製のオートバイスーツのズボンと同様のフィット感で設計・縫製されており、すなわち、脚を曲げられるズボン脚部を伴う。最終的には、これにより、高圧にさらされたときに、はるかに快適な座り心地が得られる。
【0034】
図19は、内部の構成要素の位置を示すために左側から見た、破線で示された仮想身体上に描かれた、弛緩状態で内側を外側に返したG防護ズボンのこの実施形態を示している。左側のズボン脚の外側に外側コンパートメント34が見え、続いて前側の織物片14のところで外側コンパートメント34に隣接する薄くて通気性のあるコンパートメントが見え、また、後側のコンパートメント34に隣接する薄くて通気性のある織物片15が見える。また、圧縮空気用の接続接合部24を備えた供給ホース22が外側に向いているのがわかる。圧縮空気源は、G防護スーツを着用して飛行する航空機では既に利用可能である。これは、細かく調整可能で、自動制御可能な圧縮空気の供給と圧縮空気の排出を可能にし、このG防護ズボンでシームレスに使用し続けることができる。
【0035】
図20は、G防護ズボンを弛ませた状態で、今度は外側を外側にして、パイロットに対して引き上げて装着した状態を後ろから見たもので、内側構成要素の位置を示している。ここでは、ズボン脚の裏側にある薄くて通気性のある織物インレイ15と、パイロットの臀部の外側半分を覆う2つのコンパートメント領域25を見ることができる。ズボン脚の下側には、ここではジッパー41が設けられている。また、図21には、同じものをやや斜め後方から見た図も示されている。ウエストバンド8の下には、外側コンパートメント34に続いて、2つの臀部コンパートメント25が見えており、この臀部コンパートメント25は、パイロットの臀部のほぼ外側半分を覆っている。図19から図21は、G防護ズボンを、ブーツインして、飛行服の下で着用するバージョンで示している。
【0036】
これらのG防護ズボンの特別な目的の1つは、すべてのパイロットのためにオーダーメイドの衣類を提供しなければならないのではなく、着用者のサイズカテゴリ内で単一のG防護ズボンで通用させることである。提示されたこれらの特定の、筋肉に作用するファンによる加圧も、この目的のために役立つ。
【0037】
圧縮空気供給用の主弁は、安全弁でもある。これは、
-何らかの理由で機内の圧力が低下する、
-機体からの圧力供給ができなくなる、
等があると、直ちにコンパートメントを外界から閉鎖する。このような時、G防護ズボンは圧力スーツのように機能し、圧力条件を臨界値内で安定させる。本発明によるG防護ズボンの上には、必要に応じて、従来の認可された飛行服(オーバーオール)を着用することができ、さらに核放射性降下物、生物学的および化学的戦力、冷水などの影響に対する防護機能を追加することができる。また、この防護ズボンは、猛暑等の気候の中でも快適に過ごすことができるように、乾燥空気冷却システムを装備していてもよい。
【0038】
独自の非常に伸縮性の少ない織物素材のおかげで、通気性と空気透過性にも優れているため、このG防護ズボンで圧力を高めるために必要な空気の量を大幅に減らすことができ、その結果、圧力の高まりと圧力の減少が他のG防護ズボンよりもはるかに速くなっている。これらのG防護ズボンは、初めて普通のジーンズのように簡単に穿くことができるようになった。特定の体型へのタイトな適応の必要はないが、これらのG防護ズボンは、2サイズ上までの服でも効果的なG防護を提供できる。体にぴったりフィットさせるためにひもを使う必要はない。個々の調整のためにひも、ストラップ、バックルを操作する必要がないという事実にもかかわらず、圧迫感の軽減を受け入れる必要もなく、他の場合のような、サイズ適応のためにひもやストラップを伸ばすことによって圧力を増加させる場合の時間のロスもない。
【0039】
これらのG防護ズボンは、空気圧筋によって生成された臀部領域周辺の張力のおかげで、臀部に受け入れられるエアクッション効果なしに、臀部に圧力をかけることもできる。これにより、従来の気泡入り全面プリントのGズボンと比較して、ボトムへのプリントがないG防護を実現している。また、このG防護ズボンは、図20、21に示すように、ズボンの足をブーツインして履くことができるという点もユニークである。これは、G負荷時の足の痛みを効果的に回避することができるということを意味する。コンパートメント5、13、17、18、25、34、35とG防護ズボンの外側との間には、航空機内および/またはコックピット内の気圧が急激に低下した場合に閉じて、コンパートメント内の圧力を維持する逆止弁を設置することができる。別の内蔵弁は、水分センサを用いて水に浸すことで作動し、コンパートメントがその空気含有量を保持し、それに応じて浮力を発生させることができる。
【0040】
これらのG防護ズボンの特に興味深いバージョンが、図22から34に示されている。この例では、図22に示されているように、G防護ズボンは体に直接着用されているが、これは以前には決して可能ではなかったことであり、そのためには、特別に適合された、耐火性のある、薄手で通気性のある繊維の下着のみが着用される。ズボンの脚の大腿部には、覗き窓29と、ジッパーまたは面ファスナーで閉じることができる下部フラップ42を備えたポケット28が、その外側および上側に沿ってジッパーまたはファスナーによって縫い付けられており、他方、ポケットの内側および下側は、ズボンの脚に留められる面ファスナー片によって縫い付けられている。ジッパー37は、ズボン脚の下端から正面に向かって、パッチポケット28の下を通って、ほぼクロッチ10の高さまで伸びている。このファスナー37の配置は、ズボンの脚の前部と後部のこれらの領域には嚢体やコンパートメントがないため、初めて可能となる。着用するには、ウエストバンドの主ジッパー36を開いてズボンを履く。ズボンの脚に沿ったジッパー37の大きな開口部により、G防護ズボンを素早く着脱することができる。しかし、それはまた、着用者が、飛行靴と飛行服の上から、既に飛行服を着用し、既に飛行靴を履いた状態でG防護ズボンを着られるという可能性を提供し、最後に、主ジッパー36と、ズボン脚ジッパー37に沿って延在するジッパーだけを閉じなければならない。ウエストバンドの第2のジップファスナー38は、パイロットが時間の経過とともにウエスト周りが少し大きくなった場合に、ウエストを広げるために使用される。ジッパー36、37を閉じた後、G防護ズボンは、コックピット内の圧縮空気供給装置に接続して使用する準備が整う。逆の順序で、脱衣も非常に迅速に行うことができる。このように、ズボンに足を入れ、再びズボンから出すことは、他のG防護ズボンでは、遠隔にでさえも考えられなかった方式で、数秒で可能である。今までのG防護スーツは、常に着るのが難しく、素早く着たり脱いだりすることができず、確かに、飛行服と飛行靴の上にジーンズを履くように装着することはできなかった。
【0041】
図23は、このG防護ズボンの両下腿部に沿って開いたジッパー37を、穿いた状態で後ろから見たものである。ズボンの脚の下側の側面には、必要に応じて追加のポケットをそこに取り付けることができるように、2つの面ファスナー片39が見られる。
【0042】
図24は、裸の身体または脚の上に着用したときに、右のズボンの脚にジッパー37が完全に開いた状態のこれらのG防護ズボンを示している。見てわかるように、ジッパー37は、G防護ズボンのクロッチ10の高さまでほぼ伸びている。ジッパー37を開閉するために、上にあるポケット28は、右の大腿部の上に図示されているように外側に離れて折り畳まれ、次いで、そのファスナーによって再び面ファスナーテープ28に押し付けられる。大腿部に他のポケットや戦術的装備を配置することを可能にする、図示されていない追加の実施形態では、ジッパー37は、ほぼG防護ズボンのクロッチのレベルまで、ズボン脚の内側に配置される。
【0043】
図25は、ジッパー37が左脚の上で完全に開き、ポケット28が外側に折り畳まれた状態のこのG防護ズボンを示している。ポケット28の下側には、面ファスナー片38が見え、この面ファスナー片38によって、ジッパー37を閉じたときにポケット28をズボン脚の面ファスナー片38に押し付けることができる。図26では、これらのG防護ズボンは、ポケット28が外側に折り畳まれ、脚の前部に2つのジッパー37がある状態で完全に開いた状態で示されている。
【0044】
図27は、ジッパー37を閉じた状態で、裸の体の上に着用したこれらのG防護ズボンを示している。ズボン脚は充実しており、脚部に接近しているので、G防護ズボンはいつでも行動に移る準備ができている。タイトでありながら快適なカッティング、フィット感、そして非常に通気性の高い生地により、他の非常にボリュームのあるGスーツのズボンやその通気性のない生地とは対照的に、パイロットは地上での長い休憩や中断の際にも、このG防護ズボンを完全に着用したままにすることができ、さらに、冷却のためにジッパー37を開くこともでき、それで、G防護ズボンを、休憩中にも一層着心地のよいものにしている。そして、着用者にはほとんど気づかれない。図28では、同じG防護ズボンが右側の図で示されており、図29では左側の図で示されている。ここでは、圧縮空気用の供給ホース33がまだ見えている。図30では、ジッパー37が開いているこれらのG防護ズボンは、その背中が弛んで床置きされた状態で示されており、図31では、ジッパー37が開いたこれらのG防護ズボンは、その前部が弛んで床置きされた状態で見られる。
【0045】
これらのG防護ズボンが飛行服の上にも着用できることを示すために、これを図32に示す。着用者の右足の下腿部の前にあるジッパー37は、ここでは開いており、下に着用している飛行服のフィンが見えている。図33では、G防護ズボンがジッパー37を閉じた状態で飛行服の上にどのように表れるかを見ることができる。
【0046】
最後に、図34は、フル装備のパイロットが着用するG防護ズボンを示しており、すなわち、飛行服の上に、パイロット・ブーツの上に着用しているので、G防護ズボンのズボン脚は、従来のズボン脚と同様に、靴またはブーツの上で終端している。ジッパー37は、下からズボンの脚の前部を通っているが、股間にもつながっていて、ポケット28の下を通り、ポケット28は、この目的のために一方の側によけるように折り畳まれることができ、面ファスナーによって、ここに示す位置に保持される。また、固定されたポケットがない別のズボン型も実装可能であり、その場合ポケットはファスナーでG防護ズボンに取り付けられているだけなので、それによりパイロットは現在使用しているバッグの選択を日々の任務に合わせることができる。このようなG防護ズボンを使用すれば、パイロットは、図34に示すような状態から、いつでも航空機のコックピットに乗り込んで離陸し、作戦のために上昇することができる。
【0047】
原理的には、これらのG防護ズボンは、飛行服の下とブーツの中に着用するか、または飛行服の上と飛行靴の上に特別な機能として着用することができ、このことは、着用者にとって特に快適であるが、なぜなら、その後、パイロットは、作戦の中断のためにこれらのG防護ズボンを脱ぐことができ、必要であれば同じようにすぐに再び着用し、数秒以内に次の作戦の準備をすることができるからである。G防護ズボンを直接身体に着用し、非常に軽い下着のみを着用する場合は、飛行服の上から使用する場合よりも、少しタイトにカットして身体にフィットさせるのが有利である。後者の場合、G防護ズボンは、飛行服に適用される生地の量を補うために、比較的広く裁断される。
【0048】
これらのG防護ズボンの手入れに関しては、非常に簡単に洗濯でき、したがって清潔に保ちやすいことを述べておく。通常の洗濯機で洗うことができる。わずか121±5g/平方メートルという特に軽い生地は、汚れやシミがつきにくいことが実証されており、油や灯油でひどく汚れた場合でも、非常に簡単に洗うことができる。今回提示したG防護ズボンは、軍用および民間の飛行活動、特にアクロバット飛行に適している。西側と東側の両方の航空機プラットフォームに適しており、つまり使用されるすべての航空機プラットフォームに適している。加圧用のコネクタのみは、航空機のプラットフォームに応じて変更または適合させる必要がある。
【符号の説明】
【0049】
1 コンパートメント
2 気密性の高い層
3 ベルトループ
4 ズボンの素材
5 尾てい骨導管
6 コンパートメントの隅部
7 織物片
8 ウエストバンド
9 ズボンの裾部分
10 ズボンのクロッチ
11 バーの下端
12 ズボンの外側の側面
13 嚢体としてのサック状の袋
14 ズボンの脚の前側にあるポケットのない織物片
15 ズボンの脚の後ろ側にあるポケットのない織物片
16 背中の小部分
17 接続チャネル
18 鼠径部導管
19 リップ開口部
20 膝の部分の凹み
21 リップ開口部がある換気静脈
22 供給ホース
23 パイロット用ズボン
24 接合部
25 臀部の半分を覆う臀部コンパートメント
26 5嚢体型G防護ズボンの嚢体
27 嚢体26用ホース
28 大腿部ポケット
29 大腿部ポケットの覗き窓
30 フルカバーG防護ズボンの嚢体
31 嚢体で覆われていない柱
32 横方向の腰領域
33 プレッシャーホースフルカバレッジG防護ズボン
34 ズボンの脚の外側のコンパートメント
35 ズボンの脚の内側のコンパートメント
36 ウエストバンドを閉じるためのジッパー
37 ズボンの脚に沿ったジッパー
38 G防護ズボンのウエストを広げるための第2のジッパー
39 ズボンの脚の下部の外側の面ファスナー
40 従来のG防護スーツの凹部
41 ズボンの脚の下の部分の背面のジッパー
42 ポケット28にジッパーまたは面ファスナーで閉じることができるフラップ付き
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