(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】小便器用薬液供給装置、小便器洗浄システム及び小便器用薬液供給方法
(51)【国際特許分類】
E03D 9/02 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
E03D9/02
(21)【出願番号】P 2018040450
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591047970
【氏名又は名称】共立製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 大
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132099(JP,A)
【文献】特開2007-120073(JP,A)
【文献】特開平06-327608(JP,A)
【文献】国際公開第2016/137415(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104612229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側配管と小便器側に位置する二次側配管との間に介在配設されたバルブの開弁動作により、前記一次側配管から前記二次側配管を経て前記小便器に供給される洗浄水に薬液を混合させる小便器用薬液供給装置であって、
前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出する洗浄水センサーと、
薬液が収容された薬液タンクと前記二次側配管とを結ぶ薬液吐出管を有し、ポンプの駆動により、前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管を介して前記二次側配管に吐出する薬液吐出機構と
を備え、
前記薬液吐出機構が、前記洗浄水センサーによる前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出する検出信号に基づいて前記ポンプを駆動させる駆動制御部を有することを特徴とする小便器用薬液供給装置。
【請求項2】
前記洗浄水センサーが、前記二次側配管内の圧力を検出する圧力センサーである請求項1記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項3】
前記洗浄水センサーが、前記二次側配管内を流れる洗浄水の接触を検出する濡れセンサーである請求項1記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項4】
前記洗浄水センサーのコントロール基板は、前記薬液吐出機構の駆動制御部に前記洗浄水センサーによる前記洗浄水の検出信号を出力すると共に、その出力回数を、前記薬液タンク内の薬液残量を管理する管理装置に送信する請求項1~3のいずれか1に記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項5】
一次側配管にバルブを介して接続され、小便器側に位置する二次側配管と、
前記バルブの開弁動作により、前記一次側配管から前記二次側配管を経て前記小便器に供給される洗浄水に薬液を混合させる小便器用薬液供給装置と
を具備する小便器洗浄システムであって、
前記小便器用薬液供給装置として、請求項1~4のいずれか1に記載の小便器用薬液供給装置が用いられていることを特徴とする小便器洗浄システム。
【請求項6】
小便器に供給される洗浄水に薬液を混合させる小便器用薬液供給方法において、
一次側配管に対してバルブを介して小便器側に位置する二次側配管と薬液タンクとの間を薬液吐出管により結ぶと共に、前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管に送るポンプを設け、かつ、前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出する洗浄水センサーを配設し、
前記バルブの開弁動作後、前記洗浄水センサーによる前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出すると、その検出信号を前記ポンプの駆動制御部に送信し、前記ポンプを駆動させて前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管に送り出して前記二次側配管に供給することを特徴とする小便器用薬液供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に洗浄水を供給する際に、洗浄、消臭、殺菌等を目的とした薬液を該洗浄水に混合する小便器用薬液供給装置、小便器洗浄システム及び小便器用薬液供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水洗便器では、洗浄、消臭、殺菌等の目的で様々な薬剤による処理が行われている。この薬剤処理の方法は水洗便器の型によっても異なるが、例えば、薬剤を便器内や洗浄水貯水タンク内に直接投入するもの、薬剤を洗浄水貯水タンクの給水部位に置くものなどがある。しかしながら、このような方法では、薬剤交換作業が頻繁であったり、不経済であったりという種々の問題がある。
【0003】
そこで、従来、特許文献1、2に示すように、水洗便器(特に、小便器)に洗浄水が流れる度に該小便器に洗浄、殺菌等を目的とした必要量の薬液を自動的に供給する装置が知られている。
【0004】
特許文献1、2に示した装置は、小便器内に洗浄水を吐出する吐出口に至るまでの洗浄水供給経路に接続された洗浄水通過部と、この洗浄水通過部に臨む取り込み口を介して洗浄水を薬液を保持した容器内に取り込み、薬液と混合させ、洗浄水供給経路の圧力が低下してくると、薬液と混合された洗浄水が洗浄水供給経路に送り出される構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭49-21541号公報
【文献】特開2003-96873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に示した装置は、基本的には、洗浄水供給経路を流れる洗浄水の流れの開始時と終了時との流量変化に伴う圧力変化を利用して、薬液を保持した容器内に洗浄水を取り込み、薬液を混合した洗浄水を洗浄水供給経路に戻している。しかしながら、近年、洗浄水の流量を極力減らした節水型のトイレ設備が普及してきている。そのため、洗浄水の流れの開始時と終了時との間で、十分な圧力差を確保できない場合があり、このような設備では、特許文献1、2に示したような圧力差を利用する構造の装置では、薬液の混合量が少なくなったりしてしまうことが懸念される。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、洗浄水供給経路を流れる洗浄水の流量に拘わらず、確実に、所定量の薬液を供給することができる小便器用薬液供給装置、小便器洗浄システム及び小便器用薬液供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の小便器用薬液供給装置は、
一次側配管と小便器側に位置する二次側配管との間に介在配設されたバルブの開弁動作により、前記一次側配管から前記二次側配管を経て前記小便器に供給される洗浄水に薬液を混合させる小便器用薬液供給装置であって、
前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出する洗浄水センサーと、
薬液が収容された薬液タンクと前記二次側配管とを結ぶ薬液吐出管を有し、ポンプの駆動により、前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管を介して前記二次側配管に吐出する薬液吐出機構と
を備え、
前記薬液吐出機構が、前記洗浄水センサーによる前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出する検出信号に基づいて前記ポンプを駆動させる駆動制御部を有することを特徴とする。
【0009】
前記洗浄水センサーが、前記二次側配管内の圧力を検出する圧力センサーであることが好ましい。
また、前記洗浄水センサーが、前記二次側配管内を流れる洗浄水の接触を検出する濡れセンサーであることが好ましい。
前記洗浄水センサーのコントロール基板は、前記薬液吐出機構の駆動制御部に前記洗浄水センサーによる前記洗浄水の検出信号を出力すると共に、その出力回数を、前記薬液タンク内の薬液残量を管理する管理装置に送信する構成であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の小便器洗浄システムは、
一次側配管にバルブを介して接続され、小便器側に位置する二次側配管と、
前記バルブの開弁動作により、前記一次側配管から前記二次側配管を経て前記小便器に供給される洗浄水に薬液を混合させる小便器用薬液供給装置と
を具備する小便器洗浄システムであって、
前記小便器用薬液供給装置として、前記発明に係る小便器用薬液供給装置が用いられていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の小便器用薬液供給方法は、
小便器に供給される洗浄水に薬液を混合させる小便器用薬液供給方法において、
一次側配管に対してバルブを介して小便器側に位置する二次側配管と薬液タンクとの間を薬液吐出管により結ぶと共に、前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管に送るポンプを設け、かつ、前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出する洗浄水センサーを配設し、
前記バルブの開弁動作後、前記洗浄水センサーによる前記二次側配管内における前記洗浄水の流れを検出すると、その検出信号を前記ポンプの駆動制御部に送信し、前記ポンプを駆動させて前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管に送り出して前記二次側配管に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バルブを介した小便器側である洗浄水供給経路の二次側配管に洗浄水センサーを設け、洗浄水センサーにより二次側配管内を流れる洗浄水の流れを検出した時にポンプが駆動して、上記二次側配管内に薬液を供給する構成である。二次側配管内を洗浄水が流れたことを検出すれば、ポンプの駆動によって薬液が供給されるため、洗浄水の流量の多少、あるいは、洗浄水の流れ始めと流れ終わりとの圧力差に拘わらず、薬液を混合させることができる。しかも、検出信号に基づいてポンプが駆動する構成であり、予め設定されたポンプの機能に従った所定量の薬液を確実に混合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一の実施形態に係る小便器薬液供給装置を備えた小便器洗浄システムを配設した小便器を示す平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の正面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態に係る小便器用薬液供給装置の具体的構成を示した図である。
【
図3】
図3は、上記小便器用薬液供給装置の洗浄水センサー及び薬液吐出機構20の詳細な構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明を説明する。
図1~
図3は本発明の一の実施形態に係る小便器洗浄システム1を示す。この実施形態に係る小便器洗浄システム1は、小便器用薬液供給装置1Aと洗浄水配管経路2の二次側配管2bとを有して構成され、小便器用薬液供給装置1Aは、洗浄水センサー10及び薬液吐出機構20を備えている。
【0015】
洗浄水センサ-10は、
図2に示したように、小便器4の上部に設けられている機構部配置室4a内に配置されている。機構部配置室4a内には、水等の洗浄水が流れる洗浄水配管経路2に介在されるバルブ3が設けられている。バルブ3の上流側が洗浄水配管経路2の一次側配管2aであり、下流側が二次側配管2bである。バルブ3が開弁動作すると、一次側配管2aから二次側配管2bに洗浄水が流れ、さらに、小便器4のボウル4b内に洗浄水が流れる。バルブ3は、電磁弁等から構成され、利用者の離接を検出する光や赤外線等を利用した人感センサー4cの信号により開閉制御される。
【0016】
洗浄水センサー10は、
図2及び
図3に示したように、バルブ3の下流側に位置する二次側配管2b内の洗浄水の流れを検出する。二次側配管2b内を洗浄水が流れる際は、バルブ3が開弁動作した際に限られるため、洗浄水センサー10は、小便器4の利用前後において洗浄水が小便器4のボウル4b内に流れるタイミングを検出できる。よって、二次側配管2b内を流れる洗浄水を検出する洗浄水センサー10を設けることにより、流量差による圧力変化が小さくても、二次側配管2b内の洗浄水の流れを検出したならば、後述する薬液吐出機構20のポンプ21を駆動させる構成とすることで、必要なタイミングで確実に薬液を混合することが可能になる。
【0017】
洗浄水センサー10は、上記のように二次側配管2b内の洗浄水を検出できる限り、その配設位置は限定されるものではない。本実施形態では、
図3に示したように、二次側配管2bに、後述の薬液吐出機構20の薬液吐出管23からの薬液が合流する部位となる混合配管部2cに設けられる。具体的には、混合配管部2cから検出用チューブ2dを分岐させ、二次側配管2b内を通過する洗浄水の一部が混合配管部2cから検出用チューブ2dにも流入するように構成し、検出用チューブ2dに洗浄水センサー10を設ける。
【0018】
洗浄水センサー10としては、圧力センサーを用いることができる。二次側配管2b内を洗浄水が流れ、検出用チューブ2dに一部が流入しようとすると、検出用チューブ24内の圧力が変化し、二次側配管2b内に洗浄水が流れたことを検出できる。洗浄水センサー10としては、濡れセンサーを用いることもできる。この場合は、検出用チューブ2d内に一部の洗浄水が流入して、濡れセンサーが濡れることにより、二次側配管2b内の洗浄水の流れを検出できる。なお、濡れセンサーとは、いわゆる雨センサーと称されるものであり、2つの検出用電極間に水滴が接触し、検出用電極同士が短絡することによる電圧値、電流値、抵抗値等の変化を捉え、水滴の接触の有無を検出する。
【0019】
洗浄水センサー10はコントロール基板100に電気的に接続されている。コントロール基板100は、洗浄水センサー10への電力の供給等に加えて、洗浄水センサー10による洗浄水の検出信号を後述する薬液吐出機構20の駆動制御部211へ出力する。また、コントロール基板100は、駆動制御部211への検出信号の出力回数を、薬液吐出機構20の薬液タンク22内の薬液残量を管理する管理装置30に送信する機能を有するデータ通信部101を有する構成とすることが好ましい。本実施形態に係る小便器用薬液供給装置10は、例えば、公衆便所、商業ビルやオフィスビルのトイレなどに設置されるが、薬液タンク22内の薬液は管理者によって定期的に補充する必要がある。そこで、管理者側のコンピュータからなる管理装置30に、有線、無線の電話回線、インターネット等の通信回線を介して検出信号の出力回数に関する情報をデータ通信部101から送信する。管理装置30は、この情報を受信することで、例えば、管理対象のポンプ21の1回当たりの薬液の吐出量に検出信号の出力回数を掛ければ、薬液の合計吐出量を算出でき、それを薬液タンク22内の当初の薬液の貯留量から差し引くことで、薬液の残量を求めることができる。
【0020】
管理装置30は、薬液タンク22内の薬液の残量が所定量以下に至ったならば、管理者に、文字、音声、画像などから構成されたメッセージを認識させ、薬液の補充を促したりすることができる。また、管理装置30は、薬液の残量を求めたならば、直前数日間の平均使用量、あるいは所定の管理期間の全期間における平均使用量を求めるなどして、薬液が所定量を下回る日時を予測し、その予測結果を管理者に伝える構成とすることもできる。それにより、薬液残量が底をつく前に確実に薬液の補充を行うことができる。
【0021】
薬液吐出機構20は、ポンプ21、薬液タンク22、及び薬液吐出管23を有している。薬液タンク22内には、所定量の薬液、例えば、洗浄、消臭、殺菌等の機能を有する薬液が貯留される。薬液吐出管23は、一端が洗浄水供給経路2の二次側配管2bに接続され、他端が、薬液タンク22に接続されて配設される。そして、ポンプ21は、薬液タンク22内の薬液を吸い上げて薬液吐出管23へ送り出し、さらに、混合配管部2cにおいて、洗浄水供給経路2の二次側配管2bを流れる洗浄水に混合させる。ポンプ21は、駆動制御部211によりその駆動が制御される。駆動制御部211は、上記のように、洗浄水センサー10からの検出信号を受信し、この検出信号を受信すると、ポンプ21を駆動させる。ポンプ21により薬液吐出管23に送り出される薬液の量が所定量となるように設定することで、検出信号を受信した際の薬液の混合量は一定になる。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。利用者が小便器4に接近してバルブ3が開弁動作すると、洗浄水が洗浄水供給経路2の一次側配管2aから二次側配管2bに流れ、小便器4のボウル4b内に吐出される。これにより、検出用チューブ2d内の圧力が変化し、あるいは、検出用チューブ2d内を洗浄水の一部が流れることにより、圧力センサーや濡れセンサーからなる洗浄水センサー10が、洗浄水を検出する。この検出したときの電気信号(検出信号)がコントロール基板100から、薬液吐出機構20の駆動制御部211に送信される。駆動制御部211はこの検出信号を受信すると、ポンプ21を駆動させる。それにより、所定量の薬液が薬液タンク22から吸い上げられ、薬液吐出管23を介して二次側配管2b内に供給され、洗浄水に混合される。その結果、所定量の薬液が混合された洗浄水が小便器4のボウル部4b内に供給される。
【0023】
本実施形態によれば、洗浄水供給経路2の二次側配管2b内の洗浄水の流量変化に伴う圧力差を利用して薬液タンク22内から薬液を吸い上げて供給する構成ではなく、二次側配管2b内を洗浄水が流れるか否かを検出してポンプ21を駆動させて薬液を吸い上げる構成である。よって、節水型のトイレ設備のように二次側配管2b内を流れる洗浄水の流量が少なくても確実に一定量の薬液を混合させることができる。
【0024】
なお、一定量の薬液をポンプの駆動によって強制的に供給する構成とする場合、バルブ3より上流の一次側配管2a内に薬液を供給する構成とすることも考えられるが、その場合、いずれか一つの小便器で水漏れが生じた場合でも、薬液が消費されてしまう。そこで、本実施形態のように、各小便器4に対応する二次側配管2bに薬液吐出管23を接続して薬液を混合する構成とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 小便器洗浄システム
1A 小便器用薬液供給装置
2 洗浄水供給経路
2a 一次側配管
2b 二次側配管
2c 混合配管部
2d 検出用チューブ
3 バルブ
4 小便器
10 洗浄水センサー
100 コントロール基板
20 薬液吐出機構
21 ポンプ
211 駆動制御部
22 薬液タンク
23 薬液吐出管
30 管理装置