(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】索道における電力供給装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220909BHJP
B61B 12/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
B61B12/00 A
H02J7/00 P
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2018078826
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 元幸
(72)【発明者】
【氏名】柳田 剛志
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532784(JP,A)
【文献】特開2017-065362(JP,A)
【文献】特開2003-032920(JP,A)
【文献】特開平9-093705(JP,A)
【文献】特表2017-526570(JP,A)
【文献】特開2012-30781(JP,A)
【文献】特開2007-326442(JP,A)
【文献】特開2006-82799(JP,A)
【文献】特開平7-31063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/00 - 15/00
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
索道の停留場内において搬器の移動経路に沿って
敷設される走行レールと、
前記走行レールの外周と平行するように併設されるガイドレールと、前記ガイドレールの下部に沿って敷設され、通電および通電遮断が可能な給電レールと、前記給電レールの端部位置に備えて前記搬器を検知する搬器検出器と、を有し、
前記搬器には、索条を着脱可能な握索機と、前記握索機に設けられ前記走行レール上を転動する走行ローラーと、前記握索機に設けられ前記ガイドレール上を転動するエンドローラーと、前記給電レールと接触する集電子と、を有し、
前記搬器は、前記握索機によって前記停留所内で前記索条から切り離され、前記走行ローラーと前記エンドローラーが、夫々前記走行レールと前記ガイドレールに転動可能な状態で、前記給電レールと前記集電子が接触された後に、前記搬器検出器から検出された信号により前記給電レールへ通電され、前記給電レールと前記集電子とが離脱する前に、前記搬器検出器からの信号により前記給電レールへの通電が遮断されることを特徴とする索道における電力供給装置。
【請求項2】
前記搬器内に蓄電池を備え、前記給電レールから前記集電子を介して前記蓄電池に通電し、前記蓄電池を急速充電することを特徴とする請求項1記載の索道における電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道設備の停留場において、搬器に電力を供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
索道設備は、空中に張架した索条に搬器を懸垂し、人員や物資を運ぶ輸送設備であり、多くは山岳傾斜地における人員の移動手段や、スキー場におけるスキーヤーやスノーボーダーの移動手段として利用されている。また、索道設備は、鉄道等のように地上にレール等を敷設する必要がなく線路に要する用地が少なくてすむために、特に海外においては都市部の公共交通機関として運用されるようになってきている。
【0003】
このように、都市部等においてゴンドラリフトやロープウェイのように閉鎖型搬器を運用する索道設備を、日常的な交通機関として運用するにあたっては、乗客の快適性を向上するために各搬器には空調装置や客車内の照明装置等を備えることが望ましい。しかしながら従来周知のように、索道設備においては線路中を移動する搬器へ電力を供給することが困難なことから、一般的には小型の蓄電池を搬器に備え、これを運行終了後に停留場において充電して使用しており、空調装置等の消費電力が大きな機器を搬器に備えることは困難であった。
【0004】
このように運行終了後に充電を行うには、多数の搬器を運用するゴンドラリフト等においては多数の充電器が必要となり費用が嵩むことから、索道設備の運行中に停留場内で搬器が移動しながら蓄電池の充電を行うことが従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、搬器外面に取付けられ蓄電池に接続された充電用コネクタと、索道の途中に配置された停留所内に設けられ、搬器が停留所内を移動する間に充電用コネクタと接触する電気供給子と、電気供給子に接続された電源供給装置とを備え、搬器が停留場内を移動していても蓄電池の充電を行えるようにしている。
【0005】
近時は、電気自動車等の普及などから蓄電池の小型化、大容量化が進んでおり、また、これら蓄電池の急速充電等も行われるようになってきている。このような技術を採用して、上記特許文献1のように停留場内を移動する搬器内の蓄電池を急速充電するようにすれば、搬器が線路中にあっても搬器に搭載した機器類に十分な電力が蓄電池から供給でき、搬器内の環境を快適に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蓄電池の急速充電においては電力供給側から蓄電池側へ大きな電流を流すため、上記のように搬器が移動しながら充電を行う場合には、供給側の接触子と蓄電池側の接触子とが接触する瞬間および離脱する瞬間に接触子間にスパークが発生して機器を損傷してしまう虞がある。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、接触子どうしが接触および離脱するときに起こるスパークの発生を防止することができる索道における電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、索道の停留場内において搬器の移動経路に沿って敷設される走行レールと、前記走行レールの外周と平行するように併設されるガイドレールと、前記ガイドレールの下部に沿って敷設され、通電および通電遮断が可能な給電レールと、前記給電レールの端部位置に備えて前記搬器を検知する搬器検出器と、を有し、
前記搬器には、索条を着脱可能な握索機と、前記握索機に設けられ前記走行レール上を転動する走行ローラーと、前記握索機に設けられ前記ガイドレール上を転動するエンドローラーと、前記給電レールと接触する集電子と、を有し、
前記搬器は、前記握索機によって前記停留所内で前記索条から切り離され、前記走行ローラーと前記エンドローラーが、夫々前記走行レールと前記ガイドレールに転動可能な状態で、前記給電レールと前記集電子が接触された後に、前記搬器検出器から検出された信号により前記給電レールへ通電され、前記給電レールと前記集電子とが離脱する前に、前記搬器検出器からの信号により前記給電レールへの通電が遮断されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の索道における電力供給装置において、前記搬器内に蓄電池を備え、前記給電レールから前記集電子を介して前記蓄電池に通電し、前記蓄電池を急速充電することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、給電レールと集電子とが接触する瞬間および離脱する瞬間には給電レールに通電されておらず、給電レールと集電子とが接触した状態で通電および通電遮断が行われるので、急速充電のように大電流を通電する場合であっても給電レールと集電子間で発生するスパークを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、索道設備の代表例として単線自動循環式索道により説明を行う。
図1は、単線自動循環式索道の模式図である。単線自動循環式索道10は、線路の端部に停留場11及び停留場12を有しており、各停留場11、12には、原動滑車13及び従動滑車14を回転自在に備えている。原動滑車13と従動滑車14には、索条15が無端状に巻き掛けられており、原動滑車13を回転駆動することにより、索条15は両停留場11、12間を循環して移動する。索条15には、線路中で所定の間隔となるように複数の搬器18が懸垂される。
【0013】
搬器18は索条15に着脱自在であって、線路中では索条15に取り付けられて索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15から切り離される。停留場11、12には、平面視U字状の走行レール16及び走行レール17がそれぞれ敷設されており、索条15から切り離された搬器18は、走行レール16、17に沿って次のように移動する。まず、停留場11、12に到着した搬器18は、索条15から切り離されるとともに、走行レール16、17に乗り移り、走行レール16、17に沿って設けられた移送装置により減速させられる。乗客が乗降可能な速度まで搬器18が減速すると、その速度を保って停留場11、12内を出発側へ折返し、この間に乗客の乗降が行われる。出発側へ折り返した搬器18は、索条15の速度と同一速度にまで加速させられた後、索条15に取り付けられるとともに走行レール16、17から離脱して線路中へ出発する。
【0014】
図2は、停留場11、12の一部を示した図である。搬器18の握索機20には、走行レール16、17上を転動する走行ローラー21を備えるとともに、走行ローラー21とは反対側の端部にエンドローラー22を備えている。エンドローラー22の位置には、走行レール16、17の外周と平行してガイドレール19が延設されており、これにより停留場11、12で進行する搬器18の姿勢が一定に保たれる。ガイドレール19の下部に沿っては、通電された給電レール23が敷設されており、一方、握索機20には給電レール23に接触する集電子24を備えている。集電子24には電線ケーブル25が接続されており、電線ケーブル25の他端は搬器18内の蓄電池26に接続されている。停留場11、12内においては、給電レール23と集電子24とが接触して移動し、この間に搬器18側へ電力が供給され蓄電池26が充電される。
【0015】
給電レール23の両端部付近(
図1参照)には、非接触で搬器18の握索機20の通過を検出する搬器検出器27を備えている。搬器検出器27は、近接スイッチや光電センサ等であって、握索機20を検知していないときはOFFとなっており、握索機20を検知するとONとなる。このような構成により搬器検出器27ないし給電レール23は以下のように動作する。
【0016】
まず、搬器18が停留場11、12に到着していないときには、搬器検出器27はOFFの状態であり、また、給電レール23への通電は遮断された状態である。搬器18が停留場11、12に到着して索条15から切り離されて進行すると、まず、給電レール23と搬器18の集電子24とが接触する。このときに給電レール23には通電されていないので、給電レール23と集電子24との間でスパークが発生することはない。次いで、握索機20が搬器検出器27の位置に到達すると搬器検出器27がONとなり、この信号により給電レール23への通電が開始される。これにより集電子24を介して搬器18の蓄電池26へ電力が供給され、搬器18が停留場11、12内を移動する間に蓄電池26が充電される。
【0017】
次ぎに、搬器18が出発側へ移動し握索機20が出発側の搬器検出器27の位置に達すると、搬器検出器27が握索機20を検知してONとなり、この信号により給電レール23への通電を遮断する。このとき給電レール23と集電子24は、接触した状態を保っている。次いで、握索機20が移動するのにともなって給電レール23と集電子24とが離脱し、給電レール23への通電は遮断された状態で保持される。
【0018】
このように、給電レール23と集電子24とが接触する瞬間および離脱する瞬間には給電レール23に通電されておらず、給電レール23と集電子24とが接触した状態で通電および通電遮断が行われるので、急速充電のように大電流を通電する場合であっても給電レール23と集電子24間でのスパークの発生を防止することができる。また、握索機20検出信号のみで給電レール23への通電および通電遮断を行うので複雑な制御機器等を必要とせず、このため確実に給電レール23への通電および通電遮断を行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
10 単線自動循環式索道
11 停留場
12 停留場
13 原動滑車
14 従動滑車
15 索条
16 走行レール
17 走行レール
18 搬器
19 ガイドレール
20 握索機
21 走行ローラー
22 エンドローラー
23 給電レール
24 集電子
25 電線ケーブル
26 蓄電池
27 搬器検出器