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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】作業フード
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20220909BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220909BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20220909BHJP
   F16J 15/3248 20160101ALI20220909BHJP
   F16J 15/324 20160101ALI20220909BHJP
【FI】
B01L1/00 D
F24F7/06 C
F16J15/18 C
F16J15/3248
F16J15/324
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018110247
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019211191
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】益留 純
(72)【発明者】
【氏名】金原 孝
(72)【発明者】
【氏名】北洞 和彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 兼
(72)【発明者】
【氏名】今井 広之
(72)【発明者】
【氏名】林 卓也
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-057922(JP,A)
【文献】米国特許第05257957(US,A)
【文献】特開2001-074883(JP,A)
【文献】特開2017-133899(JP,A)
【文献】特開2000-346418(JP,A)
【文献】特開平11-208623(JP,A)
【文献】特開昭54-105700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 1/04
F24F 7/06
F16J 15/00 - 15/56
B25H 1/20
C12M 1/00
B25J 21/02
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ボックスの一部に形成された開口部の周囲に連結されると共に、当該作業ボックスの内部に突出する中空状のハーフスーツを備えた作業フードであって、
前記開口部の周囲とハーフスーツの裾部との連結部分には、当該ハーフスーツ全体を回転自在に支持する円環状の回転支持体が設けられ、
前記回転支持体は、基盤部と回転部とベアリング部とシール部材と連通孔とを有し、
前記基盤部は、前記開口部の周囲に気密的且つ円環状に設けられ、
前記回転部は、前記ハーフスーツの裾部を全周囲に亘って気密的に固定すると共に前記基盤部の周囲に沿って前記ベアリング部を介して当該基盤部に相対するように回転自在に円環状に設けられ、
前記シール部材は、前記基盤部と前記回転部とが形成する円環状の間隙に、前記作業ボックスと外部環境とを区分けするように前記回転支持体の全周囲に亘って円環状に設けられ、
前記連通孔は、前記シール部材が前記基盤部、前記回転部、及び前記ベアリング部とで形成する円環状の小空間に、当該小空間側から外部環境側に開口するように設けられており、
当該連通孔の開口部には、前記小空間の内部に清浄空気、除染ガス又は除染ミストを供給する供給手段、及び/又は、前記小空間の内部から清浄空気、除染ガス又は除染ミストを吸引する吸引手段が連結していることを特徴とする作業フード。
【請求項2】
前記ベアリング部は、1のベアリングを有し、
記ベアリングの回転軸が前記開口部の開口面と直交するように当該ベアリングの内輪が前記基盤部の外周に固定されると共に、当該ベアリングの外輪が前記回転部の内周に固定されていることにより、前記回転部が前記基盤部に相対して回転することを特徴とする請求項1に記載の作業フード。
【請求項3】
前記ベアリング部は、複数のベアリングを有し、
前記複数のベアリングは、前記基盤部の外周に円環状に配されると共に、それぞれの軸部を円環中心に向けて設置され、
前記回転部の円環状の周囲が各ベアリングの外輪に当接することにより、前記回転部が前記基盤部に相対して回転することを特徴とする請求項1に記載の作業フード。
【請求項4】
前記シール部材は、前記円環状の間隙を形成する前記基盤部又は前記回転部の壁面のいずれか一方に突設されると共に、当該シール部材の突出部分の高さを変化させる調節機構を具備し、
前記調節機構の作動により、前記シール部材の突出先端部が相対する前記回転部又は前記基盤部の壁面に当接可能に移動することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の作業フード。
【請求項5】
前記ハーフスーツを固定した前記回転部を前記基盤部に相対して回転するための駆動装置を備え、
前記駆動装置は、前記基盤部の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有する固定円盤部と、前記回転部の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有する回転円盤部と、当該固定円盤部と回転円盤部との中心軸を貫通する支軸部と、前記回転円盤部を前記固定円盤部に相対して同心軸上で回転させる駆動部と、前記ハーフスーツを膨らませるための圧縮空気供給部とを有し、
前記固定円盤部は、円盤状の外周面が前記基盤部の円環状の内周面に当接して固定されるように、その外周面に円環状の第1の膨張パッキンを具備し、
前記回転円盤部は、円盤状の外周面が前記回転部の円環状の内周面に当接して固定されるように、その外周面に円環状の第2の膨張パッキンを具備し、
前記支軸部は二重管からなり、第1の管が前記固定円盤部を支持し、第2の管が前記回転円盤部を支持すると共に、当該第2の管が前記駆動部に連動して前記回転円盤部を回転させ、
前記圧縮空気供給部は、外部環境にある圧縮空気供給源から前記支軸部を貫通する供給配管を介して、前記回転部と前記回転円盤部とで密閉された前記ハーフスーツの内部に圧縮空気を供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の作業フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄度が要求される環境での作業に使用され、作業者を当該環境から隔離するための作業フードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品などの製造段階或いは研究開発段階の作業においては、無菌室、無塵室など空気清浄度の高い環境が要求される。また、医薬品を無菌容器に充填する作業などは、手作業によって行われることも多く、作業者による作業環境の汚染を防止するために、無菌状態或いは無塵状態に管理された作業ボックスが採用される。これとは逆に、人体に有害な物質等を取り扱う作業においては、作業者を保護するために封じ込め状態に管理された作業ボックスが採用される。これらの作業ボックスにおいては、作業者が作業ボックスの外部からグローブを介して作業を行うグローブボックス方式、或いは、作業者がハーフスーツなどの作業フードを介して上半身を作業ボックス内に突出させて作業を行う作業フード方式が採用される。
【0003】
グローブボックス方式による作業は、作業ボックスの一部の壁部を透明なガラスパネルとし、この透明壁部にグローブを装着することにより、作業者は、作業ボックスの外部から透明壁部を通して作業ボックス内を視認しながらグローブを介して作業ボックス内での作業を行うことができる。しかし、このグローブボックス方式による作業では、作業範囲が限定されるとともに、グローブの位置が固定されているので作業者の腕の動きが規制され作業性が十分ではない。
【0004】
これに対して、ハーフスーツなどの作業フード方式による作業においては、作業者は、作業ボックス外からハーフスーツを着用する。このハーフスーツを着用した作業者は、上半身を作業ボックス内に突出させた状態で作業することができるので、グローブを介して行う作業に比べ、作業性が一段と向上する。
【0005】
このようなハーフスーツを介して作業を行う作業ボックスとしては、例えば、下記特許文献1において、非通気性及び柔軟性を有する材料から形成されたハーフスーツを無菌室内に突出するようにして備えた無菌充填包装装置が提案されている。
【0006】
ここで、上記ハーフスーツは、柔軟性の材料、例えば、ゴム材、塩化ビニル樹脂などで形成されており、グローブボックス方式に比べ作業性が大きく向上する。しかしながら、このような柔軟性の材料で形成された作業フードにおいても、例えば、身体を前後・左右に傾斜させる場合にはある程度の自由度を有するが、身体を回転させる場合の自由度は低く、更なる作業効率の向上が望まれていた。
【0007】
そこで、例えば、下記特許文献2においては、作業ボックス内のハーフスーツ全体を自在に回転できる作業フードが提案されている。この作業フードは、主に原子力発電所などにおいて軽度の放射線に汚染された廃棄物を手作業で仕分する作業などに使用される。そのため、回転するハーフスーツと作業ボックスとの境界にはシール部材が取り付けられ、作業ボックス内の汚染物質から作業者を保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-208623号公報
【文献】特開2001-074883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、医薬品を無菌容器に充填する作業などに採用される作業ボックス(主にアイソレーター)は、内部の無菌、無塵環境を厳密に維持するために頻繁に作業ボックス内部の殺菌、除菌或いは除塵などの除染作業を行う必要がある。しかし、通常の除染作業においては、ハーフスーツと作業ボックスとの境界にあるシール部材の当接部分(回転するハーフスーツと作業ボックス底壁部との当接部分)の除染が十分に確保できないという問題があった。そのため、これまで無菌環境の作業ボックスには回転するハーフスーツの採用がなされてこなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、作業ボックス内で自在に回転できるので作業領域が広く、且つ、作業フードと作業ボックスとの境界にあるシール部分の除染作業を簡単に行うことのできる作業フードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、ハーフスーツと作業ボックスとの境界にあるシール部材の外部環境側(作業ボックス内と反対の作業者がいる領域)に小空間を設け、この小空間を利用してシール部材への除染ガスの吐出・吸引を併用した。このことにより、シール部材の清浄度を十分に維持でき、本発明の目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る作業フードは、請求項1の記載によれば、
作業ボックス(12)の一部に形成された開口部(13a)の周囲に連結されると共に、当該作業ボックスの内部に突出する中空状のハーフスーツ(21、121、221、321、421)を備えた作業フード(20、120、220、320、420)であって、
前記開口部の周囲とハーフスーツの裾部(21a、121a、221a、321a、421a)との連結部分には、当該ハーフスーツ全体を回転自在に支持する円環状の回転支持体(30、130、230、330、430)が設けられ、
前記回転支持体は、基盤部(31、131、231、331、431)と回転部(32、132、232、332、432)とベアリング部(33、133、233、333、433)とシール部材(34、134、234、334、434)と連通孔(35、135、235、335、435)とを有し、
前記基盤部は、前記開口部の周囲に気密的且つ円環状に設けられ、
前記回転部は、前記ハーフスーツの裾部を全周囲に亘って気密的に固定すると共に前記基盤部の周囲に沿って前記ベアリング部を介して当該基盤部に相対するように回転自在に円環状に設けられ、
前記シール部材は、前記基盤部と前記回転部とが形成する円環状の間隙(38、138、238、338、438)に、前記作業ボックスと外部環境とを区分けするように前記回転支持体の全周囲に亘って円環状に設けられ、
前記連通孔は、前記シール部材が前記基盤部、前記回転部、及び前記ベアリング部とで形成する円環状の小空間(39、139、239、339、439)に、当該小空間側から外部環境側に開口するように設けられており、
当該連通孔の開口部には、前記小空間の内部に清浄空気、除染ガス又は除染ミストを供給する供給手段(41)、及び/又は、前記小空間の内部から清浄空気、除染ガス又は除染ミストを吸引する吸引手段(42)が連結していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の作業フードであって、
前記ベアリング部は、1のベアリングを有し、
記ベアリングの回転軸が前記開口部の開口面と直交するように当該ベアリングの内輪(33a、133a、233a)が前記基盤部の外周に固定されると共に、当該ベアリングの外輪(33b、133b、233b)が前記回転部の内周に固定されていることにより、前記回転部が前記基盤部に相対して回転することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1に記載の作業フードであって、
前記ベアリング部は、複数のベアリング(333a)を有し、
前記複数のベアリングは、前記基盤部の外周に円環状に配されると共に、それぞれの軸部を円環中心に向けて設置され、
前記回転部の円環状の周囲が各ベアリングの外輪(333b)に当接することにより、前記回転部が前記基盤部に相対して回転することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1~3のいずれか1つに記載の作業フードであって、
前記シール部材(434)は、前記円環状の間隙を形成する前記基盤部又は前記回転部の壁面(431c、432c)のいずれか一方に突設されると共に、当該シール部材の突出部分の高さを変化させる調節機構(434a、434b、434c)を具備し、
前記調節機構の作動により、前記シール部材の突出先端部が相対する前記回転部又は前記基盤部の壁面に当接可能に移動することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1~4のいずれか1つに記載の作業フードであって、
前記ハーフスーツを固定した前記回転部を前記基盤部に相対して回転するための駆動装置(50)を備え、
前記駆動装置は、前記基盤部の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有する固定円盤部(51)と、前記回転部の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有する回転円盤部(52)と、当該固定円盤部と回転円盤部との中心軸を貫通する支軸部(53)と、前記回転円盤部を前記固定円盤部に相対して同心軸上で回転させる駆動部(54)と、前記ハーフスーツを膨らませるための圧縮空気供給部(55)とを有し、
前記固定円盤部は、円盤状の外周面が前記基盤部の円環状の内周面に当接して固定されるように、その外周面に円環状の第1の膨張パッキン(51b)を具備し、
前記回転円盤部は、円盤状の外周面が前記回転部の円環状の内周面に当接して固定されるように、その外周面に円環状の第2の膨張パッキン(52b)を具備し、
前記支軸部は二重管からなり、第1の管(53a)が前記固定円盤部を支持し、第2の管が前記回転円盤部を支持すると共に、当該第2の管(53b)が前記駆動部に連動して前記回転円盤部を回転させ、
前記圧縮空気供給部は、外部環境にある圧縮空気供給源から前記支軸部を貫通する供給配管(55a)を介して、前記回転部と前記回転円盤部とで密閉された前記ハーフスーツの内部に圧縮空気を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、本発明に係る作業フードには、作業ボックスの一部に形成された開口部の周囲とハーフスーツの裾部との連結部分に円環状の回転支持体が設けられている。この回転支持体は、基盤部と回転部とベアリング部とシール部材と連通孔とを有している。基盤部は、開口部の周囲に気密的且つ円環状に設けられている。一方、回転部は、基盤部の周囲に沿ってベアリング部を介して回転自在に円環状に設けられている。また、回転部には、ハーフスーツの裾部が全周囲に亘って気密的に固定されている。これらのことにより、回転支持体がハーフスーツ全体を回転自在に支持することができるので、ハーフスーツを着用した作業者の作業領域が広くなる。
【0018】
シール部材は、基盤部と回転部とが形成する円環状の間隙に、作業ボックスと外部環境とを区分けするように回転支持体の全周囲に亘って円環状に設けられている。連通孔は、シール部材が基盤部、回転部、及びベアリング部とで形成する円環状の小空間に、当該小空間側から外部環境側に開口するように設けられている。この連通孔の開口部には、小空間の内部に清浄空気、除染ガス又は除染ミストを供給する供給手段と連結することができる。このことにより、除染作業において、作業ボックス内に除染ガスや除染ミストを供給すると共に、これに並行して小空間内にも除染ガスや除染ミストを供給することができ、シール部材を作業ボックス側と外部環境側の両方から除染することができる。よって、作業フードと作業ボックスとの境界にあるシール部材の除染作業を簡単且つ完全に行うことができる。
【0019】
また、連通孔の開口部には、小空間の内部から清浄空気、除染ガス又は除染ミストを吸引する吸引手段と連結することができる。このことにより、除染作業における除染ガスや除染ミストの除去やエアレーションを容易に行うことができる。よって、作業フードと作業ボックスとの境界にあるシール部材の除染作業を簡単且つ完全に行うことができる。更に、作業ボックスを無菌状態で運転する際にも、吸引手段により作業ボックス内の清浄空気をシール部材及び小空間を介して常に吸引できるので、作業ボックスの内部の清浄環境を良好に維持することができる。
【0020】
また、上記構成によれば、回転支持体のベアリング部は、1のベアリングを有していてもよい。この場合、ベアリングの回転軸が前記開口部の開口面と直交するよう当該ベアリングの内輪が基盤部の外周に固定されると共に、当該ベアリングの外輪が回転部の内周に固定されている。このことにより、回転部が基盤部に相対して回転することができる。よって、回転支持体がハーフスーツ全体を回転自在に支持することができるので、ハーフスーツを着用した作業者の作業領域が広くなる。
【0021】
また、上記構成によれば、回転支持体のベアリング部は、複数のベアリングを有していてもよい。この場合、複数のベアリングは、基盤部の外周に円環状に配されると共に、それぞれの軸部を円環中心に向けて設置され、回転部の円環状の周囲が各ベアリングの外輪に当接する。このことにより、回転部が基盤部に相対して回転することができる。よって、回転支持体がハーフスーツ全体を回転自在に支持することができるので、ハーフスーツを着用した作業者の作業領域が広くなる。
【0022】
また、上記構成によれば、基盤部と回転部とが形成する円環状の間隙に設けられているシール部材は、基盤部又は回転部の壁面のいずれか一方に突設されている。このシール部材は、当該シール部材の突出部分の高さを変化させる調節機構を具備していてもよい。この調節機構が作動することにより、シール部材の高さが変化して突出先端部が相対する回転部又は基盤部の壁面に当接可能に移動することができる。
【0023】
シール部材の突出先端部を相対する壁面に当接させた場合には、基盤部と回転部とが形成する円環状の間隙を作業ボックス側と外部環境側に気密的に隔絶することができる。このことにより、作業ボックスの内部の清浄環境を良好に維持することができる。一方、シール部材の突出先端部を相対する壁面に当接させずに僅かに隙間を残した場合には、回転部が基盤部に相対して容易に回転すると共に、作業フードと作業ボックスとの境界にあるシール部材の除染作業を簡単且つ完全に行うことができる。
【0024】
また、上記構成によれば、本発明に係る作業フードは、ハーフスーツを固定した回転部を基盤部に相対して回転するための駆動装置を備えていてもよい。この駆動装置は、固定円盤部と回転円盤部と支軸部と駆動部と圧縮空気供給部とを有している。固定円盤部は、基盤部の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有しており、円盤状の外周面が基盤部の円環状の内周面に当接して固定されるように、その外周面に円環状の第1の膨張パッキンを具備している。回転円盤部は、回転部の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有しており、円盤状の外周面が回転部の円環状の内周面に当接して固定されるように、その外周面に円環状の第2の膨張パッキンを具備している。
【0025】
支軸部は、固定円盤部と回転円盤部との中心軸を貫通する二重管からなり、第1の管が固定円盤部を支持し、第2の管が回転円盤部を支持している。また、第2の管は、駆動部に連動して回転円盤部を固定円盤部に相対して同心軸上で回転させる。圧縮空気供給部は、外部環境にある圧縮空気供給源から支軸部を貫通する供給配管を介して、回転部と回転円盤部とで密閉されたハーフスーツの内部に圧縮空気を供給してハーフスーツを膨らませる。
【0026】
これらのことにより、除染作業において、シール部材が基盤部、回転部、及びベアリング部とで形成する円環状の小空間の隅々まで清浄空気、除染ガス又は除染ミストを行き渡らせることができる。また、作業フードと作業ボックスとの境界にあるシール部材を回転させながら除染することができる。よって、シール部材の除染作業を簡単且つ完全に行うことができる。
【0027】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】作業フードを配備したアイソレーターを正面から見た断面概要図である。
図2図1のアイソレーターを上面から見た断面概要図(図1のA-A断面図)である。
図3】第1実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
図4】無菌環境での作業時の作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。
図5】除染作業時の作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。
図6図5と異なる除染作業時の作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。
図7】第2実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
図8】第2実施形態において、小空間と連通孔との関係を上面から見た断面概要図である。
図9】第3実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
図10】第4実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
図11】第5実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
図12】第6実施形態において、駆動装置を装着した作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る作業フードを各実施形態により説明する。なお、本発明は、下記の各実施形態にのみ限定されるものではない。
【0030】
<第1実施形態>
本発明に係る作業フードの第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、作業フードを配備したアイソレーター装置を正面から見た断面概要図である。図2は、当該アイソレーター装置を上面から見た断面概要図(図1のA-A断面図)である。図1及び図2において、アイソレーター装置10は、床面上に載置される脚部11と、この脚部11の上に乗載される作業ボックス(チャンバー)12と、このチャンバー12の内部の底壁部13に形成された円形の開口部13aに連結され、チャンバー12の内部に突出する中空状のハーフスーツ21を備えた作業フード20とにより構成されている。図2において、作業フード20は、水平方向に任意の角度或いは360度に回転自在である。
【0031】
次に、作業フード20の回転を可能とする回転支持体の構成について説明する。図3は、作業フード20が有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。図3において、作業フード20は、円環状の回転支持体30によってチャンバー12の内部の底壁部13に形成された円形の開口部13aの周囲に連結されている。この回転支持体30は、基盤部31と回転部32とベアリング部33とシール部材34と連通孔35とを有している。
【0032】
基盤部31は、円筒部分31aとその一端から法線方向外側に張り出した円環板部分31bとからなるL字状断面を有する環状構造物である。円環板部分31bは、その内周が円形であり、チャンバー12の円形の開口部13aの内周に重なるように、チャンバー12の底壁部13にボルト36aで全周に亘って気密的に固定されている。内筒部分31aの内周部は、作業者が上半身を挿入する作業フード20の開口部を形成する。一方、円筒部分31aの外周には、ベアリング部33の内輪33aが固定されている。なお、本第1実施形態においては、1つの大型ボールベアリングがベアリング部33を構成する。
【0033】
回転部32は、円筒部分32aとその一端から法線方向内側に張り出した円環板部分32bとからなる逆L字状断面を有する環状構造物である。円筒部分32aは、基盤部31の円筒部分31aの外側に同心軸となるように配置され、その内周には、ベアリング部33の外輪33bが固定されている。一方、円環板部分32bは、その内周が円形であり、基盤部31の円筒部分31aの内周に重なるように、円筒部分32aの上面にボルト36bで全周に亘って気密的に固定されている。また、円筒部分32aと円環板部分32bとが構成する回転部32の外周側面(回転部32の外周側面)には、柔軟性の材料からなるハーフスーツ21(図1参照)の基端部21aが2本のオーリング22で気密的に固定されている。
【0034】
このように、本第1実施形態においては、回転支持体30の基盤部31と回転部32とがベアリング部33(大型ボールベアリング)を介して固定されている。このことにより、回転支持体30は、チャンバー12の底壁部13に固定された基盤部31に相対して、ハーフスーツ21を固定した回転部32が任意の角度から360度まで自在に回転することができる。
【0035】
ここで、ベアリング部33を構成する大型ボールベアリングには、気密性のあるものを使用してもよく、或いは気密性のないものを使用してもよい。気密性のない大型ボールベアリングを使用する場合には、基盤部31の円筒部分31aと回転部32の円環板部分32bとの円環状の間隙37(図3参照)にパッキンを使用するようにしてもよい。なお、本第1実施形態においては、ベアリング部33に気密性のある大型ボールベアリングを採用した。
【0036】
また回転部32の円筒部分32aの下端面32cと、基盤部31の円環板部分31bの上面31cとが形成する円環状の間隙38には、シール部材(リップシール)34が円筒部分32aの下端面32cに円環状に突設されている。なお、リップシール34は、合成ゴムなどの弾性体から形成されている。このリップシール34の先端部は、円環板部分31bの上面31cと僅かに当接していてもよいが、より好ましくは僅かな隙間を有していることがよい。このことにより、リップシール34の先端部への除染ガスの供給が容易となり、シール部分の除染効果がより確実になる。
【0037】
図3において、リップシール34は、基盤部31、回転部32、及びベアリング部33(大型ボールベアリング)とで囲まれた円環状の小空間39を形成する。また、この小空間39からは、外部環境に開口する連通孔35が設けられている。この連通孔35は、小空間39に対して1ヶ所だけ設けてもよく、或いは円環状の複数個所に設けるようにしてもよい。また、小空間39が形成される方向は、外部環境に解放されていればよく垂直方向、水平方向など、どのような方向であってもよい。なお、本第1実施形態においては、1つの連通孔35を垂直方向に設けている。この連通孔35は、外部環境に配置した除染ガス供給装置、圧縮空気供給装置、及び真空吸引装置などと配管を介して連結されている(後述する)。
【0038】
ここで、チャンバー12の内部の無菌環境での作業及び除染作業について説明する。本第1実施形態においては、チャンバー12の内部に回転自在の作業フード20を配備している。従って、作業フード20の回転部分、特にリップシール34及び小空間39の部分の構造が複雑であり、この部分の清浄化の維持及び除染の精度が求められる。
【0039】
まず、無菌環境での作業について説明する。図4は、無菌環境での作業時の作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。図4においては、除染されたチャンバー12の内部は、外部環境に比べ陽圧に制御されている。図4では、陽圧状態を(+)の記号で示す。なお、チャンバー12の内部への清浄空気の供給装置及び陽圧制御装置は図示していない。
【0040】
また、連通孔35の外部環境側の開口部には、除染ガス供給装置41と減圧吸引装置42とが配管43で連結されている。配管43には、除染ガス供給装置41と減圧吸引装置42との連通を変更する三方弁44が設けられている。本第1実施形態においては、除染ガスとして過酸化水素ガスを採用した。また、配管43の減圧吸引装置42と三方弁44との間には、HEPAフィルター45と過酸化水素分解用の触媒装置46とが設けられている。
【0041】
このように配管された連通孔35の作用について説明する。無菌環境での作業時には、三方弁44を切り替えて連通孔35と減圧吸引装置42とが配管43で連通している。減圧吸引装置42を作動することにより、チャンバー12の内部の清浄空気は、回転支持体30の基盤部31と回転部32との間隙を通って、リップシール34の隙間及び小空間39を経て配管43から減圧吸引装置42に吸引される(図では矢印で示す)。この間、チャンバー12の内部の陽圧状態は、清浄空気の供給装置及び陽圧制御装置(いずれも図示せず)によって制御されている。このことにより、作業者(図示せず)が作業フード20を回転させて作業を行っても、チャンバー12の内部の無菌環境は維持されている。
【0042】
次に、除染作業について説明する。図5は、除染作業時の作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。図5において、チャンバー12の内部には、除染ガス(過酸化水素ガス)が供給されている。図5では、除染ガスを(H)の記号で示す。なお、チャンバー12の内部への除染ガスの供給装置及び除染ガス濃度制御装置は図示していない。また、連通孔35の外部環境側の開口部には、上述の除染ガス供給装置41、減圧吸引装置42、配管43、三方弁44、HEPAフィルター45、及び触媒装置46が連結されている。
【0043】
このように配管された連通孔35の作用について説明する。除染作業時には、三方弁44を切り替えて連通孔35と除染ガス供給装置41とが配管43で連通している。除染ガス供給装置41を作動することにより、除染ガス(H)は、配管43と連通孔35から小空間39とリップシール34に供給され、リップシール34の隙間を経て回転支持体30の基盤部31と回転部32との間隙を通ってチャンバー12の内部に導入される(図では矢印で示す)。なお、本第1実施形態においては、除染ガス供給装置41の供給圧をチャンバー12の内部圧よりも高く制御している。
【0044】
また、除染ガス(H)による除染後のエアレーションの際には、上述の陽圧制御の場合と同様の経路を経て、チャンバー12の内部の除染ガス(H)の除去及び清浄空気による正常化を減圧吸引装置42で行うようにする。このとき、吸引される除染ガス(H)は、配管中の触媒装置46により分解される。これらのことにより、構造が複雑なリップシール34及び小空間39の部分の除染の精度が達成される。なお、エアレーションの際には、減圧吸引装置42によりチャンバー12の内部の清浄空気の吸引を行う代わりに、除染ガス供給装置41を清浄な圧縮空気供給装置(図示しない)に代えて除染の際と同様の経路でチャンバー12の内部に清浄空気を供給するようにしてもよい。
【0045】
次に、上述の除染作業とは異なる除染作業について説明する。図6は、図5と異なる除染作業時の作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。図6において、チャンバー12の内部には、除染ガス(過酸化水素ガス)が供給されている。図6では、除染ガスを(H)の記号で示す。なお、チャンバー12の内部への除染ガスの供給装置及び除染ガス濃度制御装置は図示していない。また、連通孔35の外部環境側の開口部には、上述の除染ガス供給装置41、減圧吸引装置42、配管43、三方弁44、HEPAフィルター45、及び触媒装置46が連結されている。
【0046】
このように配管された連通孔35の作用について説明する。除染作業時には、三方弁44を切り替えて連通孔35と減圧吸引装置42とが配管43で連通している。減圧吸引装置42を作動することにより、チャンバー12の内部の除染ガス(H)は、回転支持体30の基盤部31と回転部32との間隙を通って、リップシール34の隙間及び小空間39を経て配管43から減圧吸引装置42に吸引される(図では矢印で示す)。この間、チャンバー12の内部の除染ガス(H)の濃度は、除染ガスの供給装置及び除染ガス濃度制御装置(いずれも図示せず)によって制御されている。
【0047】
このとき、吸引される除染ガス(H)は、配管中の触媒装置46により分解される。また、除染ガス(H)による除染後のエアレーションの際には、除染の場合と同様の経路を経て、チャンバー12の内部の除染ガス(H)の除去及び清浄空気による正常化を減圧吸引装置42で行うようにする。このときも、配管中の触媒装置46により吸引される除染ガス(H)の分解がなされる。これらのことにより、構造が複雑なリップシール34及び小空間39の部分の除染の精度が達成される。
【0048】
<第2実施形態>
本発明に係る作業フードの第2実施形態を図面に基づいて説明する。本第2実施形態においては、小空間から外部環境に開口する連通孔の位置と個数が上記第1実施形態と異なっている。図7は、第2実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。また、図8は、第2実施形態において、小空間と連通孔との関係を上面から見た断面概要図である。
【0049】
図7において、作業フード120は、円環状の回転支持体130によってチャンバー12の内部の底壁部13に形成された円形の開口部13aの周囲に連結されている。この回転支持体130は、基盤部131と回転部132とベアリング部133とリップシール134と連通孔135とを有している。なお、基盤部131、回転部132、ベアリング部133、及びリップシール134の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0050】
図7及び図8において、リップシール134は、基盤部131、回転部132、及びベアリング部133(大型ボールベアリング)とで囲まれた円環状の小空間139を形成する。また、この小空間139には、外部環境に開口する連通孔135が設けられている。本第2実施形態においては、円環状の小空間139に等間隔で設けられた4つの連通孔135を水平方向に設けている。なお、4つの連通孔135は、いずれも小空間139の円環中心方向から所定の角度をもって設けられている(図8参照)。また、4つの連通孔135は、いずれも外部環境に配置した除染ガス供給装置、圧縮空気供給装置、及び真空吸引装置などと配管を介して連結されている。なお、本第2実施形態においては、チャンバー12の内部の無菌環境での作業及び除染作業の操作は上記第1実施形態と同様である。
【0051】
ここで、連通孔135を水平方向に4つ設けると共に、これらの連通孔135を小空間139の円環中心方向から所定の角度をもって設ける理由について説明する。除染作業において、4つの連通孔135から小空間139に流入する除染ガス(H)は、小空間139の内部を一定方向に流れる(図8において時計回り)。このようにして、小空間139に流入した除染ガスは、小空間139の各壁面に流動しながら接触し、リップシール134を介してチャンバー12の内部に導入される、このことにより、構造が複雑なリップシール134及び小空間139の部分の除染がより精度よく達成される。
【0052】
なお、小空間139を構成する回転部132の円筒部分132aに複数の抵抗板を設けるようにしてもよい(図8には図示していない)。これらの抵抗板に4つの連通孔135から小空間139に一定方向に流入する除染ガスが当たることにより、回転支持体130の回転部132が基盤部131に相対して僅かに回転するようになる。このことにより、構造が複雑なリップシール134及び小空間139の部分の除染が更に精度よく達成される。
【0053】
<第3実施形態>
本発明に係る作業フードの第3実施形態を図面に基づいて説明する。本第3実施形態においては、回転支持体の回転部の構造が上記第1実施形態と異なっている。図9は、第3実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
【0054】
図9において、作業フード220は、円環状の回転支持体230によってチャンバー12の内部の底壁部13に形成された円形の開口部13aの周囲に連結されている。この回転支持体230は、基盤部231と回転部232とベアリング部233とリップシール234と連通孔235とを有している。なお、基盤部231、ベアリング部233、リップシール234、及び連通孔235の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
図9において、回転部232は、円筒部分232aとその外周端から円筒軸方向上側に張り出した円環板部分232bとからなるL字状断面を有する環状構造物である。円筒部分232aは、基盤部231の円筒部分231aの外側に同心軸となるように配置され、その内周には、ベアリング部233の外輪233bが固定されている。一方、円環板部分232bは、その外周が円筒形であり、円筒部分232aの外周に重なるように、円筒部分232aの上面にボルト236bで全周に亘って気密的に固定されている。また、円環板部分232bの外周側面には、柔軟性の材料からなるハーフスーツ221の基端部221aの内面と外面に2本の平バンド223で気密的に固定されている。
【0056】
このように、本第3実施形態においては、回転支持体230の基盤部231と回転部232とがベアリング部233(大型ボールベアリング)を介して固定されている。このことにより、回転支持体230は、チャンバー12の底壁部13に固定された基盤部231に相対して、ハーフスーツ221を固定した回転部232が任意の角度から360度まで自在に回転することができる。
【0057】
なお、連通孔135は、外部環境に配置した除染ガス供給装置、圧縮空気供給装置、及び真空吸引装置などと配管を介して連結されている。なお、本第3実施形態においては、チャンバー12の内部の無菌環境での作業及び除染作業の操作は上記第1実施形態と同様である。このことにより、構造が複雑なリップシール234及び小空間239の部分の除染が精度よく達成される。
【0058】
<第4実施形態>
本発明に係る作業フードの第4実施形態を図面に基づいて説明する。本第4実施形態においては、ベアリング部の構造が上記第3実施形態と異なっている。図10は、第4実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
【0059】
図10において、作業フード320は、円環状の回転支持体330によってチャンバー12の内部の底壁部13に形成された円形の開口部13aの周囲に連結されている。この回転支持体330は、基盤部331と回転部332とベアリング部333とリップシール334と連通孔335とを有している。なお、基盤部331、回転部332、リップシール334、及び連通孔335の構成については、上記第3実施形態と同様である。
【0060】
図10において、基盤部331は、円筒部分331aとその一端から法線方向外側に張り出した円環板部分331bとからなるL字状断面を有する環状構造物である。円環板部分331bは、その内周が円形であり、チャンバー12の円形の開口部13aの内周に重なるように、チャンバー12の底壁部13にボルト336aで全周に亘って気密的に固定されている。内筒部分331aの内周部は、作業者が上半身を挿入する作業フード20の開口部を形成する。
【0061】
一方、円筒部分331aの外周には、ベアリング部333が固定されている。なお、本第4実施形態においては、複数の小型ボールベアリング333aがベアリング部333を構成する。これらの小型ボールベアリング333aは、基盤部331の円筒部分331aの外周に円環状に配されると共に、各軸部333cを円環中心に向けて等間隔に固定されている。
【0062】
図10において、回転部332は、円筒部分332aとその外周端から円筒軸方向上側に張り出した円環板部分332bとからなるL字状断面を有する環状構造物である。円筒部分332aは、基盤部331の円筒部分331aの外側に同心軸となるように配置されている。また、円筒部分332aの内周上部には、庇部分332cが全周に亘って形成されている。この庇部分332cは、基盤部331の円筒部分331aの外周に等間隔に固定された複数の小型ボールベアリング333aの外輪333bの上部に当接するように配されている。
【0063】
なお、本第4実施形態においては、ベアリング部333に複数の小型ボールベアリング333aを使用するので、基盤部331の円筒部分331aの外周と回転部332の円筒部分332aの内周上部の庇部分332cとの円環状の間隙337にパッキンを使用するようにしてもよい。
【0064】
一方、円環板部分332bは、その外周が円筒形であり、円筒部分332aの外周に重なるように、円筒部分332aの上面にボルト336bで全周に亘って気密的に固定されている。また、円環板部分332bの外周側面には、柔軟性の材料からなるハーフスーツ321の基端部21aの内面と外面に2本の平バンド323で気密的に固定されている。
【0065】
このように、本第4実施形態においては、回転支持体330の基盤部331と回転部332とがベアリング部333(複数の小型ボールベアリング333a)を介して当接している。このことにより、回転支持体330は、チャンバー12の底壁部13に固定された基盤部331に相対して、ハーフスーツ321を固定した回転部332が任意の角度から360度まで自在に回転することができる。
【0066】
なお、連通孔335は、外部環境に配置した除染ガス供給装置、圧縮空気供給装置、及び真空吸引装置などと配管を介して連結されている。なお、本第4実施形態においては、チャンバー12の内部の無菌環境での作業及び除染作業の操作は上記第1実施形態と同様である。このことにより、構造が複雑なリップシール334の当接部分及び小空間339の部分の除染が精度よく達成される。
【0067】
<第5実施形態>
本発明に係る作業フードの第5実施形態を図面に基づいて説明する。本第5実施形態においては、シール部材(リップシール)の突設位置及び機能が上記第1実施形態と異なっている。図11は、第5実施形態において、作業フードが有する回転支持体の構成を示す断面図(図1のB部分を見た図2のC-C断面図)である。
【0068】
図11において、回転支持体430の回転部432の円筒部分432aの下端面432cと、基盤部431の円環板部分31bの上面31cとが形成する円環状の間隙438には、シール部材(リップシール)434が円環板部分431bの上面431cに円環状に突設されている。リップシール434は、合成ゴムなどの弾性体から形成されている。なお、基盤部431、回転部432、ベアリング部433、及び連通孔435の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0069】
本第5実施形態に係るリップシール434は、上述のように、その機能が上記第1実施形態と異なっている。本第5実施形態に係るリップシール434の機能は、円環板部分31bの上面31cから突出するリップシール434の突出部分の高さを変化させるものである。そのため、リップシール434は、円環板部分31bから上下方向に摺動可能に埋設されると共に、突出部分の高さを制御する調節機構434a、434b、434cを具備している。
【0070】
調節機構は、リップシール434の基端部(円環板部分31bの内部に埋没されている部分)に密閉された空気室434aを有している。この空気室434aは、配管434bを介して外部環境にあるポンプ434cと連通している。ポンプ434cを作動し、空気室434aに空気を供給した場合には、空気室434aが膨張してリップシール434を円環板部分31bの上面31cから上方に押し上げる。一方、ポンプ434cを切り替えて作動し、空気室434aの空気を排気した場合には、空気室434aが収縮してリップシール434を円環板部分31bの上面31cから下方に押し下げる。
【0071】
これらのことにより、チャンバー12の内部の無菌環境での作業、又は除染作業の各操作に合わせてリップシール434の突出部分の高さを調節することができる。具体的には、リップシール434の突出先端部と、これに相対する壁面(回転部432の円筒部分432aの下端面432c)との距離を制御し、或いは突出先端部と壁面とを当接させることができる。
【0072】
例えば、チャンバー12の内部の無菌環境での作業の際には、リップシール434の突出先端部と壁面との間に僅かな隙間を開けるか、僅かに当接させることにより、無菌状態の維持と作業フードの回転が容易になる。一方、除染作業において除染ガスの供給やエアレーションの際には、リップシール434の突出先端部と壁面との間に隙間を開けて除染ガスやエアレーションの清浄空気が通り易くなり、シール部分の除染効果がより確実になる。
【0073】
なお、本第5実施形態においては、リップシール434の突設位置は、基盤部431の円環板部分31bの上面31cとするが、これに限るものではなく、上記第1実施形態と同様に回転部432の円筒部分432aの下端面432cに突設するようにしてもよい。また、本第5実施形態においては、調節機構434a、434b、434cの作用によりリップシール434を上下するものであるが、これに限るものではなく、シール部材として空気圧などによる膨張パッキンなどを使用し、膨張パッキン内の空気圧を調節することにより、膨張パッキンと相対する壁面との距離を調節するようにしてもよい。
【0074】
<第6実施形態>
本発明に係る作業フードの第6実施形態を図面に基づいて説明する。本第6実施形態においては、チャンバー12の内部の除染作業においてハーフスーツを自動的に回転させる駆動装置を装着したものである。なお、駆動装置以外の部分の構成は、上記第1実施形態と同様である。図12は、第6実施形態において、駆動装置を装着した作業フードの回転支持体を正面から見た断面概要図である。
【0075】
図12において、駆動装置50は、チャンバー12の内部の底壁部13に形成された円形の開口部13aに設けられた回転支持体30の内周部に当接して固定されている。この駆動装置50は、固定円盤部51と回転円盤部52と支軸部53と駆動モーター54と圧縮空気供給装置55とを有している。
【0076】
固定円盤部51は、回転支持体30の基盤部31の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有する円盤51aと、その外周面に円環状の膨張パッキン51bとを具備している。図12においては、膨張パッキン51bが膨張して基盤部31の円環状の内周面に当接して気密的に固定されている。また、回転円盤部52は、回転支持体30の回転部32の円環状の内周面に嵌入可能な直径を有する円盤52aと、その外周面に円環状の膨張パッキン52bとを具備している。図12においては、膨張パッキン52bが膨張して回転部32の円環状の内周面に当接して気密的に固定されている。
【0077】
支軸部53は二重管53a、53bからなり、固定円盤部51と回転円盤部52との中心軸を貫通すると共に、外部管53aが固定円盤部51を支持し、内部管53bが回転円盤部52を支持している。また、内部管53bは、固定円盤部51の下面に設置された駆動モーター54に連動して回転円盤部52を固定円盤部51に相対して回転させる。また、圧縮空気供給装置55は、外部環境にあって支軸部53の内部を貫通する供給配管55aを介して、回転円盤部52に固定されたハーフスーツ21の内部に圧縮空気を供給して当該ハーフスーツ21を膨らませる。
【0078】
このように、本第6実施形態においては、回転支持体30の内周に駆動装置50が固定されている。このことにより、回転支持体30の回転部32に固定されたハーフスーツ21は、膨らんだ状態で駆動モーター54の駆動によりチャンバー12の底壁部13に固定された基盤部31に相対して回転することができる。
【0079】
なお、連通孔35は、外部環境に配置した除染ガス供給装置、圧縮空気供給装置、及び真空吸引装置などと配管を介して連結されている。なお、本第6実施形態においては、チャンバー12の内部の除染作業の操作は上記第1実施形態と同様である。このことにより、構造が複雑なリップシール34及び小空間39の部分の除染がより精度よく達成される。
【0080】
よって、上記各実施形態においては、作業ボックス内で自在に回転できるので作業領域が広く、且つ、作業フードと作業ボックスとの境界にあるシール部分の除染作業を簡単に行うことのできる作業フードを提供することができる。
【符号の説明】
【0081】
10…アイソレーター装置、11…脚部、12…作業ボックス(チャンバー)、13…底壁部、13a…開口部、20、120、220、320、420…作業フード、21、121、221、321、421…ハーフスーツ、22、122、422…オーリング、223、323…平バンド、30、130、230、330、430…回転支持体、31、131、231、331、431…基盤部、31a、131a、231a、331a、431a…円筒部分、31b、131b、231b、331b、431b…円環板部分、32、132、232、332、432…回転部、32a、132a、232a、332a、432a…円筒部分、32b、132b、232b、332b、432b…円環板部分、33、133、233、333、433…ベアリング部、333a…小型ベアリング、33a、133a、233a、433a…内輪、33b、133b、233b、333b、433b…外輪、333c…軸部、34、134、234、334、434…シール部材(リップシール)、434a…空気室、434b…配管、434c…ポンプ、35、135、235、335、435…連通孔、36、136、236、336、436…ボルト、37、38、137、138、237、238、337、338、437、438…間隙、39、139、239、339、439…小空間、41…除染ガス供給装置、42…減圧吸引装置、43…配管、44…三方弁、45…HEPAフィルター、46…触媒装置、50…駆動装置、51…固定円盤部、52…回転円盤部、51a、52a…円盤、51b、52b…膨張パッキン、53…支軸部、53a…外部管、53b…内部管、54…駆動モーター、55…圧縮空気供給装置、55a…供給配管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12