(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】ポリペプチド及び/又は細胞培養物を含有する水溶性スクラブ粒子を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20220909BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220909BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220909BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2020193569
(22)【出願日】2020-11-20
(62)【分割の表示】P 2018539213の分割
【原出願日】2016-10-13
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2015-0144297
(32)【優先日】2015-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518131388
【氏名又は名称】パイアン エステティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン キュボム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソン ス
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジョンチョン
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112854(WO,A1)
【文献】特開2009-203184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長因子含有スクラブ粒子及び水溶性賦形用スクラブ粒子を有する非水系化粧品組成物の製造方法であって、
前記成長因子含有スクラブ粒子は、角だって、水溶性とし、上皮成長因子を含有し、0.01mm乃至2mm
の粒子サイズ
とし、
前記
水溶性賦形用スクラブ粒子は、角だっ
て、水溶性とし、上皮成長因子を含まず、ヒアルロン酸を含み、
0.01mm
以上2mm
以下の粒子サイズ
とし、
前記非水系化粧品組成物における前
記成長因子含有スクラブ粒子及び前記水溶性賦形用スクラブ粒子の合計重量は、0.01重量%以上15重量%以下
とし、
前記成長因子含有スクラブ粒子における前記上皮成長因子の含有量は、0.0001重量%以上1重量%以下とし、
前記成長因子含有スクラブ粒子は、
1)ヒアルロン酸2g、水4g、及び前記上皮成長因子200μgの割合で混合された混合溶液を乾燥させる、または
2)ヒアルロン酸2g、前記上皮成長因子を含む細胞培養液4gの割合で混合された混合溶液を乾燥させる、
ことにより得る、
非水系化粧品組成物
の製造方法。
【請求項2】
成長因子含有スクラブ粒子及び水溶性賦形用スクラブ粒子を有する非水系化粧品組成物であって、
前記成長因子含有スクラブ粒子は、角だって、水溶性であって、上皮成長因子を含み、0.01mm乃至2mmの粒子サイズであり、
前記水溶性賦形用スクラブ粒子は、角だって、水溶性であって、上皮成長因子を含まず、ヒアルロン酸を含み、0.01mm以上2mm以下の粒子サイズであり、
前記非水系化粧品組成物における前記成長因子含有スクラブ粒子及び前記水溶性賦形用スクラブ粒子の合計重量は、0.01重量%以上15重量%以下であり、
前記成長因子含有スクラブ粒子における前記上皮成長因子の含有量は、0.0001重量%以上1重量%以下であり、
前記成長因子含有スクラブ粒子は、ヒアルロン酸および前記上皮成長因子を含有する乾燥物である、非水系化粧品組成物。
【請求項3】
前記成長因子含有スクラブ粒子は、前記ヒアルロン酸、前記上皮成長因子、及び、細胞培養物成分を含む乾燥物である、請求項2に記載の非水系化粧品組成物。
【請求項4】
前記成長因子含有スクラブ粒子における前記ヒアルロン酸と前記上皮成長因子との含有比率は重量比で、2:0.2である、請求項2に記載の非水系化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明はポリペプチド及び/又は細胞培養物成分を含有する水溶性スクラブ粒子を含む化粧品組成物に関するものである。より詳しくは、ポリペプチドまたはオリゴペプチドのような多数のアミノ酸が縮合された重合体または細胞培養物に含まれた成分を含有する、硬くて、鋭く角だった水溶性スクラブ粒子を総量対比0.01重量%乃至15重量%を含
む化粧品組成物に対するものである。
[背景技術]
最近、高齢化社会が急激に進行されるにつれて、抗老化化粧品が脚光を浴びており、成長因子を含有するか、または幹細胞培養液を含有したバイオ化粧品が開発されている。
【0002】
成長因子を含有する化粧品関連先行技術として、大韓民国登録特許第10-0433373号、大韓民国登録特許第10-1289062号、大韓民国登録特許第10-2013-0024316号などが公開されている。
【0003】
また、幹細胞培養液を含有した化粧品関連先行技術として、大韓民国登録特許第10-1063299号、大韓民国登録特許第10-1047873号、大韓民国特許出願公開第10-2010-0098298号などがある。
【0004】
しかしながら、再組合成長因子や幹細胞培養液に含まれた成長因子は蛋白質であり、このような蛋白質は物理的または化学的環境の変化によって不安定であり、特に水がある状態では加水分解されやすいので、化粧品組成物に添加される場合、生物学的活性を維持することが容易でない。
【0005】
加水分解されやすい蛋白質のアマイド結合を保護して各種のペプチドの活性を保管流通、及び使用期間の間に長期間維持するためには、マンニトールなどのような糖類を含む組成物と共に凍結乾燥して安定化を図るか、高純度に精製後、液状で添加剤を使用して生物学的活性を安定化させる方法が試みられてきた。しかしながら、このような技術は化粧品に適用することが容易でない。
【0006】
特に、上皮細胞成長因子(Epidermal Growth Factor, rh-oligopeptide-1またはsh-oligopeptide-1)は長期保管時、室温でだけでなく、甚だしくは冷蔵保管状態でも物理的、
化学的変化が起こって、生物学的活性が減少するので、保管流通期間がかかる商用化のための製剤化にさまざまな問題点がある。
【0007】
ヨーロッパ特許公開第205,051号は、このような上皮細胞成長因子EGFの活性減少を防ぐための皮膚及び眼科用クリームの組成物としてEGFと1乃至10%の界面活性剤、5乃至45%の脂肪質、及び0.3乃至0.8%の防腐剤からなる組成物を開示している。
【0008】
ヨーロッパ特許公開第267,015号、及び米国特許第4,717,717号には、EGFに水に溶けるセルロース重合体を添加したEGF含有安定化組成物を開示している。また、ヨーロッパ特許公開第398,619号には、EGFに亜鉛などの金属陽イオンを添加したEGF含有安定化組成物を開示している。
【0009】
大韓民国特許公告第10-1996-0013439号は、フェノール、ポリエチレン
グリコール、脂肪酸塩、界面活性剤、スクロース、脂肪酸エステル、硫酸ナトリウム、アミノ酸、タウリン、マンニトール、ゼラチン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、及び有機酸緩衝溶液で構成されたグループから選択された1または2以上の物質を含有した安定したEGF組成物を開示している。
【0010】
その他、EGFを安定化させるための特許として、大韓民国登録特許第10-0570358号は、上皮細胞成長因子とセレニウムを含有したナノベクトル組成物及びこれを用いた化粧品を開示しており、大韓民国登録特許第10-0752990号は、ナノリポソーム及び天然抽出物を含む皮膚疾患の予防または治療用組成物を開示している。
【0011】
このような従来の技術を用いても、室温流通条件、非滅菌的条件、水性条件である化粧品において、上皮細胞成長因子の活性を維持することが容易でない。特に、化粧品で許容している水準の非常に低い濃度で上皮細胞成長因子を化粧品に添加する場合には、保管、流通、使用にかかる期間の間、EGF活性維持がほとんど不可能である。
【0012】
また蛋白質は分子量が大きいので、化粧品に添加しても皮膚浸透がよくできなくて、その効果を得ることが難しいので、成長因子が含まれたバイオ化粧品は蛋白質伝達ドメイン(Protein Transduction Domain;PDT)を用いたペプチド融合技術を使用するか、成
長因子を脂質で包んで皮膚浸透を助けるリポソーム(Liposome)技術を適用するか、微細ニードル治療システム(Miconeedle Therapy System;MTS)を結合した方法を主に活
用している。
【0013】
本発明者は、ポリペプチド及び/又は細胞培養物成分が含まれた鋭くて硬い角だった粒子形態の水溶性スクラブ粒子を非水系化粧品組成物に含有させることによって、加水分解されやすいペプチドの活性を長期間安定して維持させることができた。
【0014】
また、このような水溶性粒子が含まれた非水系化粧品組成物を皮膚に塗布した後、スキンエマルジョンのような水性系化粧品を使用してスクラブ粒子を溶解させることによって、スクラブ粒子に含まれた各種のペプチド成長因子または細胞培養物の有効成分が角質層の内部に皮膚深く浸透される効果があるという事実を確認して本発明を完成した。
【0015】
本明細書でのペプチドという用語は、2個以上数十万個のアミノ酸が縮合重合された物質を意味し、ダイペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド蛋白質などを全て含む天然、再組合、または化学的に合成されたポリペプチドを含む。
【0016】
また、本発明者は上記のポリペプチドや細胞培養物のような有効成分が含まれていない水溶性スクラブ粒子を、上記の有効成分が含まれている水溶性粒子と共に混ぜて非水系化粧品に添加することによって、スクラブ効果を減少させない、かつポリペプチド及び/又は細胞培養物が含まれた水溶性粒子の含量を調節することができる非水系化粧品組成物を製造して本発明を完成するようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の基本的な目的は、ポリペプチドを含有する鋭くて硬い、角だった水溶性スクラブ粒子を0.01重量%乃至15重量%を含む化粧品組成物を提供するものである。
【0018】
本発明の更に他の目的は、細胞培養物成分を含有する鋭くて硬い、角だった水溶性スクラブ粒子を0.01重量%乃至15重量%を含む化粧品組成物を提供するものである。
本発明の更に他の目的は、ポリペプチドと細胞培養物を全て含有する鋭くて硬い、角だ
った水溶性スクラブ粒子を0.01重量%乃至15重量%含む化粧品組成物を提供するものである。
【0019】
本発明の更に他の目的は、前述したポリペプチド及び/又は細胞培養物成分を含有する水溶性スクラブ粒子と、前記ポリペプチドや細胞培養物成分が含まれていない増量や粘度調節用水溶性賦形剤スクラブ粒子を合せて0.01重量%乃至15%重量%含む非水系化粧品組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述した本発明の基本的な目的は、ポリペプチドを含有する鋭くて硬い、角だった水溶性スクラブ粒子を0.01重量%乃至15重量%を含む化粧品組成物を提供することにより達成できる。
【0021】
前記水溶性スクラブ粒子は、0.0001重量%乃至0.1重量%のポリペプチドを含有するものでありうる。本発明のポリペプチドは2個以上数十万個のアミノ酸が縮合重合された物質であり、アミノ酸の個数が通常2個以上数十万個の範囲であり、好ましくは2個以上1000個の範囲であり、より好ましくは2個以上100個、最も好ましくは2個以上80個の範囲である。また、前記水溶性スクラブ粒子は硬くて、鋭く角だった形態のものが好ましく、サイズは0.01mm乃至2mmでありうる。
【0022】
前記粒子のサイズが0.01mm未満の場合には、スクラビング(scrubbing)効果が
弱まる虞があり、2mm以上の場合には外部で異物感が激しくなって皮膚への使用に好ましくない。より好ましくは、前記スクラブ粒子のサイズは0.1mm乃至1mmである。
【0023】
ポリペプチドを含有する本発明の水溶性スクラブ粒子は、種々のペプチド物質を追加で含むことができる。本発明に使われるペプチドは成長因子であって、その中でも上皮細胞成長因子(EGF)でありうる。
【0024】
また、ポリペプチドが含まれた本発明の水溶性スクラブ粒子が入っている化粧品組成物は、これと異なるポリペプチドが含まれた水溶性スクラブ粒子を追加で含むことができる。また、ポリペプチドが含まれた本発明の水溶性スクラブ粒子が含まれた化粧品組成物は、ポリペプチドや細胞培養物成分のような有効成分が含まれていない水溶性スクラブ粒子を増量や粘度調節のために追加で含むことができる。
【0025】
ポリペプチド及び/又は細胞培養物成分を含有する粒子を含んだ本発明の非水系化粧品組成物は、エッセンス、クリーム、またはローションの剤形形態に製造できる。ポリペプチドを含有する水溶性スクラブ粒子を含有した本発明の非水系化粧品組成物は、シワ改善などに卓越した効果がある。
【0026】
本明細書で“成長因子”とは、細胞の分化及び成長に関与するペプチドを称する。成長因子(Growth Factor)は細胞が相互交信のために分泌した比較的低分子量の蛋白質であ
って、さまざまな生理作用をするが、特定成長因子は特定細胞の分裂を促進させる役割をする。
【0027】
本発明で使われる成長因子は、上皮細胞成長因子(Epidermal Growth Factor;EGF
)でありうる。上皮細胞成長因子(EGF)は外胚葉及び中胚葉から起源する多様な上皮細胞の強力な細胞分裂促進因子であって、身体の体液中に広く分布しており、53個のアミノ酸残基を有するペプチド(分子量6,200Da)である。
【0028】
このようなペプチドEGFは、上皮細胞、内皮細胞、及び繊維芽細胞細胞増殖の強力な
促進剤として作用し、上皮細胞の欠損時、上皮細胞の移動と増殖を促進させるので、傷治癒効果が優れて、シワ改善効果も良くて、化粧品原料として使われている。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、EGFは再組合大腸菌または植物から製造され、純度90%以上に精製されたものでありうる。EGFは、3T3繊維芽細胞を用いた活性測定で英国NIBSCのEGF標準品に補正時、mg当たり1百万IU(International Unit)以上の活性を示す。
【0030】
EGFの化粧品配合限度は、国内では10ppm(0.001重量%)に規制されており、価格が比較的高価であるので、特殊な化粧品を除いては、一般的に微量の含量で使われている。加水分解に脆弱なペプチドEGFの特性上、微量で使われなければならない化粧品では、活性を示すことができない場合が大部分である。
【0031】
化粧品に添加された後、ペプチドEGFの活性がそのまま維持することを仮定すると、1kgの化粧品に0.1mgのEGFを添加しても(0.1ppm)、1gの化粧品に100IUのEGFが含まれるので、人体皮膚への適用時にも充分の活性を示すことができる。
【0032】
したがって、本発明ではペプチドEGFが1乃至10,000ppm(0.0001乃至1重量%に該当)含まれた水溶性スクラブ粒子を使用し、化粧品の最終ペプチドEGF含量が常に10ppm以下になるように、前記濃度のEGF含有水溶性スクラブ粒子の化粧品組成物での重量%を0.01乃至15重量%の間に調節した。
【0033】
また、ペプチドEGF含有水溶性スクラブ粒子を少なく使用する場合、スクラブ効果が減少することを防止するために、有効成分が含まれていない水溶性スクラブ粒子をスクラブ効果維持と増量、粘度調節のために追加して、水溶性粒子の総量が化粧品での重量%は15重量%以下になるようにした。
【0034】
本明細書で水溶性スクラブ粒子は、硬くて鋭く角だった形態のものが好ましい。前記本発明の鋭く角だった水溶性スクラブ粒子は多角錐形態でありうる。または、前記角だったスクラブ粒子は、四面体またはピラミッド形態のマイクロ構造体(Micro-structure)で
ある微細針(Micro-needle)でありうる。
【0035】
また、前記微細針の各面は平たいか、または凹凸があることがあり、中空のものでありうる。また、前記微細針の隅や頂点の一部が破られるなどの欠陥がありうる。また、前記微細針で1つ以上の面に陥没部が形成されることがあり、前記陥没部の深さは前記微細針の高さの1/2以内でありうる。
【0036】
前述した本発明の更に他の目的は、細胞培養物成分を含有する、水溶性スクラブ粒子を0.01重量%乃至15重量%を含む非水系化粧品組成物を提供することによっても達成できる。
【0037】
前記水溶性スクラブ粒子は0.0001重量%乃至10重量%の細胞培養液乾燥物を含有するものでありうる。また、前記水溶性スクラブ粒子は角だった鋭い粒子形態であり、サイズは0.01mm乃至2mmでありうる。仮に、前記粒子のサイズが0.01mm未満の場合、スクラビング(scrubbing)効果が弱まる虞があり、2mm以上の場合には皮
膚に異物感が激しくなって好ましくない。
【0038】
より好ましくは、前記粒子のサイズは0.1mm乃至1mmである。
前記細胞培養液乾燥物を含有する水溶性スクラブ粒子は、ペプチドを追加で含むことが
できる。前記ペプチドは成長因子であって、その中でも上皮細胞成長因子EGFでありうる。
【0039】
また、前記細胞培養液乾燥物が含まれた水溶性スクラブ粒子が入っている本発明の非水系化粧品組成物は、ペプチドが含まれた本発明の水溶性スクラブ粒子を追加で含むことができる。前記ペプチドは成長因子であって、その中でも上皮細胞成長因子(EGF)でありうる。
【0040】
細胞培養液乾燥物を含有する本発明の粒子を含んだ非水系化粧品組成物は、エッセンス、クリーム、またはローションの剤形に製造できる。細胞培養液乾燥物を含有する本発明の水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品組成物は、シワ改善または美白などの効果がある。
【0041】
ペプチドまたは細胞培養液乾燥物を含有する水溶性スクラブ粒子を含有する本発明の非水系化粧品組成物には、15重量%乃至25重量%の高級アルコール、40重量%乃至65重量%のオイル、2重量%乃至3重量%のワックス、及び5重量%乃至20重量%のトコペリルアセテートを含有する油状成分が含まれることができる。前記高級アルコールは、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールのうちから1種以上選択が可能であり、併用することができる。
【0042】
前記オイルは天然植物オイルであるホホバ油、硬化ヤシ油、アボタド油、オリーブ油、アーモンド油、マカダミアナッツ油、メドウフォーム油、ヤシ油、ひまし油のうちから選択された1種以上を混合使用することが可能である。
【0043】
また、前記ワックスは、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックスのうち、1種以上選択可能であり、併用することができる。
本発明の化粧品組成物は、前記高級アルコール、オイル、ワックス、及びトコペリルアセテートを含む油状成分を85重量%乃至90重量%、好ましくは87重量%乃至88重量%だけ含むことが化粧品の硬度を調節して容器に充填することに容易である。
【0044】
ペプチド及び/又は細胞培養物成分を含有する本発明の水溶性スクラブ粒子を含有した本発明の非水系化粧品組成物には、0.5重量%乃至1.9重量%のヒアルロン酸、1.5重量%乃至10重量%のモノサカライド、及び0.0001重量%乃至0.01重量%のトロメタミンを含むが、ポリペプチドや細胞培養液成分は含まれない水溶性スクラブ粒子をスクラブ効果維持向上または粘度や体積調節のための粒子として追加で含むことができる。
【0045】
前記ヒアルロン酸はソディウムヒアルロネイトまたは加水分解されたヒアルロン酸(hydrolyzed hyaluronic acid)のうちから1種以上の選択が可能であり、併用することができる。
【0046】
前記モノサカライドはソルビトールまたはアスコルブ酸のうちから1種以上の選択が可能であり、併用することができる。
このようなスクラブ効果の維持または向上と化粧剤組成物の全体の粘度や体積調節のための賦形用スクラブ粒子、即ちポリペプチドや細胞培養液成分が含まれていないスクラブ水溶性粒子は、化粧品が過度にぬらぬらすることを防止し、化粧品の硬度が容器に充填することに適合するように調節する役割をする。
【0047】
本発明の更に他の目的は、このような賦形用または増粘増量用水溶性スクラブ粒子を本発明の有効成分が含まれたスクラブ粒子に追加で混入させた非水系化粧品組成物を提供す
ることによって達成できる。増量用水溶性スクラブ粒子を追加使用することによって、ペプチドまたは細胞培養物成分を含有する水溶性スクラブ粒子を高重量%から低重量%範囲に減らす場合でも皮膚には一定の水準のスクラブ刺激効果を維持させることができる技術的手段を提供するものである。
【0048】
したがって、本発明は、ペプチドまたは細胞培養物の成分を含有する水溶性スクラブ粒子と有効成分が含まれていない水溶性スクラブ粒子の混合物を0.01重量%乃至15重量%を含む非水系化粧品組成物を提供することによって達成できる。
【0049】
前記増量用水溶性スクラブ粒子は、ヒアルロン酸やモノサカライドを含むものでありうる。本発明の増量用水溶性スクラブ粒子は、2mm以上のものは使用しない。増量用水溶性スクラブ粒子のサイズが2mm以上の場合には異物感が激しくなって好ましくない。
【0050】
本発明のペプチドまたは細胞培養液乾燥物を含有する水溶性スクラブ粒子を含有した非水系化粧品組成物を皮膚の上に塗って、手で叩いたり擦ったりすれば、硬くて角だった形状の水溶性スクラブ粒子の頂点や隅などが物理的な圧力を皮膚に加えて角質層を除去する(
図1及び
図6参照)。次に、スキンエマルジョンのような水性系化粧品を使用して塗布された角だった水溶性スクラブ粒子を溶解させることによって、本発明の水溶性スクラブ粒子に含まれたポリペプチドや細胞培養物成分のような有効成分が角質が一部分除去された皮膚に吸収される。
【発明の効果】
【0051】
ポリペプチド及び/又は細胞培養物成分が含まれた硬くて角だった粒子形状の水溶性スクラブ粒子を非水系化粧品に含まれた本発明の化粧品組成物は、加水分解されやすいペプチド有効成分または細胞培養物に含まれた有効成分の活性を保管流通期間または化粧品を使用する前まで、常温で安定に維持させることができる。
【0052】
また、本発明に係る水溶性スクラブ粒子を皮膚に擦れば、角質などの皮膚障壁が一部除去される効果があるので(
図6参照)、有効成分が含まれた水溶性スクラブ粒子が含まれた非水系化粧品組成物を皮膚に塗布した後、スキンエマルジョンのような水性系化粧品を使用して水溶性スクラブ粒子を溶解させれば、本発明のスクラブ粒子に含まれたペプチド成長因子または細胞培養物のような有効成分の角質層が一部除去された皮膚に浸透伝達されて卓越した皮膚改善効果を示す(
図7、
図8、
図9参照)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】角だった形態の水溶性スクラブ粒子を含有した本発明の非水系化粧品組成物を皮膚に適用することを示す概念図である。
【
図2】本発明の実施例1で製造されたペプチド成長因子が含まれた0.5mmサイズの角だった形態の水溶性スクラブ粒子を示す顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の実施例1で製造された細胞培養液乾燥物が含まれた0.3mmサイズの角だった形態の水溶性スクラブ粒子に対する顕微鏡写真である。
【
図4】本発明の実施例6で製造された増量用水溶性スクラブ粒子に対する写真である。
【
図5】本発明の有効成分を含有した水溶性スクラブ粒子と増量用水溶性スクラブ粒子が共に含まれた非水系化粧品組成物に対する顕微鏡写真である。
【
図6】ペプチドである上皮細胞成長因子(EGF)が含まれた水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品を豚の皮膚にスクラブした後、上皮細胞成長因子が豚の皮膚に浸透した程度をEGF抗体で染色して断面を撮影した写真である。
【
図7】ペプチドである上皮細胞成長因子(EGF)が含まれた水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品を人体に適用して皮膚の厚さと密度変化に対する効果をスクラブしない対照群と統計処理して比較した結果である。
【
図8】ペプチドである上皮細胞成長因子(EGF)が含まれた水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品を人体に適用してシワの改善に対する効果をスクラブしない対照群と統計処理して比較した結果である。
【
図9】ペプチドである上皮細胞成長因子(EGF)が含まれた水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品を人体に適用して20人の被験者の満足度を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、次の実施例または図面を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、次の実施例または図面に対する説明は本発明の具体的な実施態様を特定して説明しようとするだけであり、本発明の権利範囲をこれらに記載された具体的内容のみに限定または制限解析しようと意図するものではない。
【0055】
実施例1.上皮細胞成長因子または細胞培養物成分を含有する水溶性スクラブ粒子の製造
2gのヒアルロン酸、4gの水、及び200ugの上皮細胞成長因子を配合した混合溶液、または2gのヒアルロン酸及び4gの細胞培養液を配合した混合溶液を角が鋭く角だったピラミッド形態の小さな孔が形成された板にローディングして乾燥させることによって、上皮細胞成長因子または細胞培養物成分を含有する鋭く角だった形態の水溶性スクラブ粒子を製造した(
図2または
図3参照)。本実施例で使われた細胞培養液は大韓民国特許出願公開第10-2010-0098298号に記載された細胞培養液であって、多数の成長因子を含有しており、皮膚再生効果が優れて化粧品原料に使われている。
【0056】
実施例2~5
以下の表1示した組成によって油状成分、ポリペプチド及び/又は細胞培養物成分のような有効成分を含有した水溶性スクラブ粒子、増粘増量用賦形スクラブ粒子、または成分を各々計量した後、60℃に加熱した状態で撹拌器でゆっくり5時間程度均一に混合した。以後、前記混合物を30℃まで冷却させて、本発明の角だった水溶性スクラブ粒子が含まれた非水系化粧品組成物を製造した。表1の実施例4の組成で製造された角だった水溶性スクラブ粒子が含まれた非水系化粧品組成物の形状は顕微鏡で観察時、端部が尖っている角だった粒子が見えるオイルクリーム形態である。
【0057】
【0058】
実験例1.皮膚塗り性/皮膚刺激性/皮膚柔軟性の評価
実施例2乃至5の化粧品組成物に対して使用テストを実施して、その結果を表2に示した。女性10人に対し、洗浄後、顔に前記実施例のサンプルをまんべんなくマッサージし、水性系スキンエマルジョンを塗った後、皮膚塗り性、皮膚刺激性、皮膚柔軟性を5点尺度で評価するようにした後、平均値を求めた。
【0059】
前記5点尺度は、次の通りである;
1点:非常に不満足
2点:不満足
3点:普通
4点:満足
5点:非常に満足
【0060】
【0061】
前記<表2>を参照すると、本発明の実施例2乃至5で製造された化粧品組成物は、各項目で全て普通以上の高い満足度を示した。角だったスクラブ粒子に対する皮膚刺激性に
対する反応は、スクラブ粒子の含量に従う異なる傾向性を示した。
実験例2.経時安定性の評価
実施例2乃至5の組成によって製造された組成物の経時安定性を評価するために、各々不透明プラスチック注射器容器に入れて、低温(4℃)、室温(25℃)、及び高温(55℃)で3ヶ月間放置後、内容物を搾って経時安定性を評価し、その結果を<表2>に示した。
【0062】
【0063】
前記<表3>に示すように、本発明の化粧品組成物は経時安定性に優れると示されたが、高温ではアスコルブ酸による色変化があり、水溶性スクラブ粒子が大いに含まれた実施例5の組成物の場合、高温で相分離が少し起こった。
【0064】
実験例3.活性安定性の評価
実施例4の組成によって製造された組成物を使用して上皮成長因子(EGF)活性安定性評価を遂行した。安定性を評価するために、前記組成物を不透明なプラスチック注射器容器に入れて、室温(25℃)及び高温(55℃)で3ヶ月間放置後、内容物を以下のような方法によりEGFの活性を特定した。水性系化粧品であるスキンエマルジョンに実施例4の組成と同量の角だった水溶性スクラブ粒子を入れて活性測定試験対照群に使用した。
【0065】
実験材料
上皮細胞成長因子(EGF)に対する細胞増殖活性測定はBalb/c 3T3繊維芽
細胞細胞株(ATCC #CCL-163)を使用し、細胞株系代用培養培地は10%牛
血清が含まれたDMEM培地を使用し、分析用培地としてUltraMEM無血清培地を使用した。EGF活性測定標準品は英国NIBSCでhEGF(Epidermal Growth Factor Human
、rDNA derived、91/530、4000 IU/4ug/mL)を購買して活性測定に使用した。EGFによる細胞増殖測定はMTS試薬を使用した。
【0066】
活性測定方法
製造時点の以後、3ヶ月経過後、本発明の化粧品の重さを測定して上皮細胞成長因子活性測定用培地であるUltraMEM無血清培地に入れて(スクラブ粒子含量から計算してEGFの最終濃度が1ug/mLになるように調節する)非常に強く撹拌した後、遠心分離により水溶液を取って活性分析に使用した。活性を測定する抽出物及びEGF活性標準品を96-ウェルプレートで2倍数連続希釈して各ウェル当たり100uLずつ入るようにした
後、Balb/c 3T3繊維芽細胞をウェル当たり3×103匹ずつ入れた後、37℃
、5%のCO2培養器で72時間の間培養した。この後、各ウェルに40uLのMTS試薬を入れて、37℃、5%のCO2培養器で4時間の間インキュベーションした後、マイクロリーダー機で490nmで吸光度を測定し、PLA 2.0プログラムを用いて平行
線分析法によりEGF標準品と抽出物との間の値を比較することによって、抽出物のEGF活性を計算し、抽出回収率60%を考慮して水溶性スクラブ粒子が含まれた化粧品組成物1g当たりEGF活性を計算した。
【0067】
【0068】
前記<表4>に示すように、上皮細胞成長因子EGFの活性は、実施例4の非水系化粧品組成物に添加された場合が水性系化粧品に添加された場合(対照群)より格段に安定し、室温では実施例4の化粧品組成物の初期EGFの活性平均値である5.0×103IU/gに比べて約72%の活性を維持し、高温でも約41%の活性を維持した。したがって、本発明の化粧品組成物で上皮細胞成長因子(EGF)の活性安定性が非常に優れるに示されることが分かった。
【0069】
実施例6 増量用水溶性スクラブ粒子の製造
ヒアルロン酸と水を1:2で配合した混合溶液を平らな板やトレーに薄くローディングして乾燥した後、粉碎機を用いて角だった水溶性スクラブ粒子と類似のサイズに粉砕した。以後、メッシュまたは篩を用いてサイズが2mm以下であるペプチド成長因子または細胞培養液乾燥物を含まない水溶性増量用賦形剤スクラブ粒子を得た。
【0070】
アスコルビク酸の場合、粉碎機を用いて角だったスクラブ粒子と類似のサイズに粉砕した。メッシュまたは篩を用いてサイズが2mm以下であるポリペプチドや成長因子、細胞培養物を含まない、増量用水溶性スクラブ粒子を製造した。
【0071】
実施例7 増量用水溶性スクラブ粒子を含んだ非水系化粧品の製造
以下の<表5>示した、有効成分を含有する本発明の角だった水溶性スクラブ粒子と、増量用水溶性賦形剤スクラブ粒子を除外した全ての組成物の成分は実施例4によって製造した。
【0072】
【0073】
実験例1
実施例7乃至11の化粧品組成物に対して、ポリペプチドやEGF、または細胞培養物成分のような有効成分含有水溶性スクラブ粒子と有効成分非含有水溶性賦形剤スクラブ粒
子の混合割合に従う皮膚刺激性比較テストを実施して、その結果を<表6>に示した。前記有効成分含有水溶性スクラブ粒子と有効成分非含有水溶性賦形剤スクラブ粒子が添加された化粧品に対して皮膚刺激性を判断根拠にして差異を評価しようとした。女性10人に対し、洗浄後、顔に前記実施例のサンプルをまんべんなくマッサージし、水性系スキンエマルジョンを塗った後、5点尺度で評価するようにした後、平均値を求めた。
【0074】
前記5点尺度は、次の通りである。
1点:非常に差異がある
2点:差異がある
3点:知らない
4点:差異がない
5点:非常に差異がない
評価は盲検テストで遂行し、前記有効成分が含まれた水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品を対照群に使用し、有効成分非含有水溶性賦形剤スクラブ粒子が含まれた非水系化粧品を試験群にして各々差異を比較した。
【0075】
【0076】
<表6>に示すように、対照群と試験群において、皮膚刺激性で明確な差異が区別できない結果を得た。このような結果は、有効成分非含有水溶性賦形剤スクラブ粒子の重量%の調節により有効成分が含まれた角だった水溶性スクラブ粒子の投与効果を減少させない、かつ多様な濃度のペプチド成長因子または細胞培養物乾燥物を含有する水溶性粒子を含む非水系化粧品組成物を本発明が提供することができることを示すものである。
【0077】
実施例12 豚皮膚浸透実験
上皮細胞成長因子EGFが含まれた本発明の水溶性スクラブ粒子を含む非水系化粧品を試験群とし、内容物及び含量は同一であるが、水溶性スクラブ粒子を使用しないEGF化粧品を対照群(対照群は試験群に蒸溜水を60%添加してスクラブ粒子を溶解させて同一な組成及び条件で実験を遂行)にして豚皮膚浸透実験を実施した。
【0078】
試験群の場合、豚皮膚の表面に0.1gを取って塗布して20秒間スクラブした後、蒸溜水0.06gを添加してスクラブ粒子を溶かして追加で20秒間塗布した。対照群は0.16g(蒸溜水を添加して溶かしたEGF)を取って40秒間塗布した。
【0079】
豚皮膚は塗布後4℃で12時間の間培養し、10%固定液を用いて固定させてパラフィンブロックを作って4mm厚さに切片を作った。スライドの上に組織をマウンティング(mounting)した後、パラフィンを除去し、水化過程を経た後、組織切片を30分間ブロッキングした。ブロッキングが終わった組織にanti-EGF antibodyを処理して4℃で18時
間反応させた。翌日PBSで洗った後、2次抗体を処理し、DAB試薬で反応させ、顕微鏡で観察した。
【0080】
図6に示すように、対照群(
図6B)に比べて試験群(
図6C)はスクラブによる角質の除去の効果を確認することができ、またスクラブによってペプチド成長因子EGFが対照群に比べて真皮部分までより深く浸透する本発明の効果を確認することができる。
【0081】
実施例13 臨床試験
皮膚疾患のない健康な成人男女20人を対象に、皮膚シワ改善に対する臨床試験を実施し、正確には目尻の周囲のシワに対して試験を進行した。被験者の左側の目尻には対照群を塗布し、右側の目尻には試験群を塗布した。対照群は試験群に60%蒸溜水を添加して水溶性スクラブ粒子を溶かしたものを使用した。各々の試料を毎日1回ずつ目の周囲の皮膚に塗布し、8週間観察測定して、本臨床試験を進行した。対照群の場合、適用部位を清潔にし、対照物質0.16gを40秒程度塗布し、試験群の場合、適用部位を清潔にし、試験物質0.1gを塗布し、20秒程度スクラブ後、60uL程度の蒸溜水を加えて20秒程度追加スクラブした。測定は、試験物質塗布後、1週、2週、3週、4週、8週間、観察測定した。
【0082】
臨床評価指標はA-one pro顔面診断装備とUltrascan UC22皮膚超音波装備、観察者評価
、及び被験者評価を用いた。観察者評価(IGA;Investigator global assessment)には、WSRS(Wrinkle severity rating scale、5 point scale)を基準に皮膚科医師2人の肉眼評価でシワ程度によって点数を付けて数値化した。被験者評価(PGA;Patient global assessment)は被験者満足度を4-point scaleに数値化して示した。
【0083】
臨床試験結果、試験群は対照群に比べて真皮の厚さと密度が高まることを確認することができ(
図7参照)、ペプチドEGF含有粒子のスクラブによる皮膚のシワ改善効果を確認した(
図8参照)。また、被験者の満足度調査結果で対照群の50%に比べて試験群は70%の高い満足度を示してスクラブによる拒否感は少ないことと調査された(
図9参照)。