IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タラノ・テクノロジーの特許一覧

特許7138358鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ
<>
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図1
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図2
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図3
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図4
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図5
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図6
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図7
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図8
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図9
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図10
  • 特許-鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】鉄道用ブレーキシステムのための摩擦アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/00 20060101AFI20220909BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20220909BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
F16D65/00 C
B61H5/00
F16D65/092 D
F16D65/092 C
F16D65/092 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020505420
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 FR2018051969
(87)【国際公開番号】W WO2019025722
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】1757391
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ロッカ-セラ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500448(JP,A)
【文献】実開昭55-093739(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第04401846(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015114441(DE,A1)
【文献】英国特許出願公開第02540361(GB,A)
【文献】特開昭62-147133(JP,A)
【文献】特開2011-236924(JP,A)
【文献】特開2007-192268(JP,A)
【文献】特開2005-036829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61H 1/00-15/00
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向または二方向の移動(S1、S2)が提供された、鉄道車両のための鉄道用ディスクブレーキシステム(12)のための摩擦装置(16)であって、該摩擦装置(16)は、
- 受入滑り経路(4)を備えたシューホルダ(3)と、
- ブレーキパッド(7)と、前記受入滑り経路(4)内においてスライドされるように構成されたプロファイル形状(6)と、を備えた摩擦シュー(22)であって、該摩擦シュー(22)の第1面(71)により区切られた第1空間(E1)を、前記摩擦シュー(22)の反対側の第2面(72)により区切られた第2空間(E2)に接続した空気導管(9)を備えた摩擦シュー(22)と、
- 前記シューホルダ(3)内に形成され、前記空気導管(9)に面するように配置された、少なくとも1つの貫通穴(38)と、
- 前記シューホルダ(3)の貫通穴(38)と、前記摩擦シュー(22)の空気導管(9)と、の間に空気ガイドを形成した、前記空気導管(9)内に配置された空気接合リング(8)と、
を備えている摩擦装置(16)。
【請求項2】
前記空気接合リング(8)は、前記受入滑り経路(4)の底部に載置されたフランジ(81)および円錐形状(82)を有する部分を備えている、請求項1に記載の摩擦装置(16)。
【請求項3】
前記部分は円錐形状(82)を有し、且つ前記プロファイル形状(6)の高さに等しい高さを有する、請求項に記載の摩擦装置(16)。
【請求項4】
前記シューホルダ(3)の受入滑り経路(4)は出口がなくなっており、具体的には1つの閉鎖端部(41)、ならびに前記摩擦シュー(22)の抜き取りおよび挿入のための開口部を形成した1つの開放端部(40)を備え、前記摩擦装置は、前記摩擦シュー(22)を前記受入滑り経路(4)内にロックするための取り外し可能な部材(19)をさらに備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の摩擦装置(16)。
【請求項5】
前記摩擦シュー(22)は第1部材(1)および第2部材(2)を備え、前記第1部材(1)および第2部材(2)の突き当て領域内において互いに接触するまで、一方でそれらの間に前記空気導管(9)を形成する通路を残すように、前記第1部材および第2部材は前記受入滑り経路(4)内をスライドするように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の摩擦装置(16)。
【請求項6】
前記第1部材(1)および前記第2部材(2)は、各々が前記摩擦シュー(22)の半体の1つを形成している、請求項に記載の摩擦装置(16)。
【請求項7】
前記第1部材(1)および前記第2部材(2)は、接線方向(T)において、前記鉄道車両(10)のブレーキディスク(DK)に対して並置されている、請求項5または6に記載の摩擦装置(16)。
【請求項8】
前記第1部材(1)と前記第2部材(2)との界面に残された通路は、前記突き当て領域の中間部に配置されている、請求項から7のいずれか一項に記載の摩擦装置(16)。
【請求項9】
前記突き当て領域は、実質的に突き当て面(P)として形成され、前記第1部材(1)および前記第2部材(2)は、前記シューホルダ(3)の長手軸方向(Z2)において類似した長さを有し、前記貫通穴(38)は、前記突き当て面(P)と一致した軸(A8)を形成した中心を有する、請求項5から8のいずれか一項に記載の摩擦装置(16)。
【請求項10】
一方向または二方向の移動(S1、S2)を伴った、鉄道車両(10)のための鉄道用ディスクブレーキシステム(12)であって、車軸(14)または車輪(18)に固定されたディスク(DK)と、該ディスク(DK)の各側に配置された、請求項1から9のいずれか一項に記載の2つの摩擦装置(16)と、を備えた鉄道用ディスクブレーキシステム(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。より具体的には、本発明は鉄道車両のブレーキに、特に鉄道車両用のブレーキシステムのための摩擦装置に関する。本発明により、レール上を転がるように構成された任意の物体は、本発明の範囲内にあることが理解されるだろう。したがって、本発明は、列車、路面軌道車、および都市型軽量軌道車に等しい例に適用される。
【背景技術】
【0002】
機関車、普通客車、または貨車のような鉄道車両は、通常はブレーキシステムを備えている。ディスクブレーキは、ブレーキに関する多くの可能な解決策のうちの1つである。したがって、ブレーキシステムは、鉄道車両の車輪または車軸に固定されたディスクを一般的に備えている。ブレーキシステムは、摩擦シューを支持したシューホルダを備えた摩擦装置をさらに備えている。摩擦シューは、通常はシューホルダおよびブレーキパッドの取り付けのための手段を備えている。運転手がブレーキシステムを作動させた場合、摩擦シューのブレーキパッドはディスクと接触して、ディスクに制動力を加える。したがって、摩擦により、摩擦シューは車輪または車軸に固定されたディスクを制動する。一般的に、鉄道車両は2つの摩擦装置を備え、ディスクを両側から圧縮するために、摩擦装置はディスクの各側に配置されて、ディスクをつまみ、換言すると挟み込む。
【0003】
摩擦シューのブレーキパッドは、鋳鉄、ガラス混合材料、または複合材料等の金属材料を通常は含んでいる。したがって、摩擦シューのブレーキパッドが、ディスクに擦りつけられた場合、ブレーキパッドに由来した材料の粒子は、摩擦装置の周囲の雰囲気に放出される。これにより、ブレーキシステムは、多かれ少なかれ微粒子の形の大気汚染を放出する。
【0004】
したがって、特に摩擦シューのブレーキパッドに由来した粒子の放出領域の近傍に、ポンプにより供給されるブロアまたは吸引装置を設けて、制動の間に放出される材料の粒子を捕捉することが求められている。
【0005】
しかしながら、これらの装置は開放空間内において作動する。実際に、ブレーキ、特にブレーキパッドに由来した粒子の放出は、制限されない。これは、ブロアまたは吸引装置の回収率または効果が、比較的低いためである。さらに、これらの装置を鉄道車両の構造内に組み込むことは、困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の到達点は、ブレーキパッドおよび摩擦シューにより制動サイクルの間に放出される粒子をより効果的に捕捉し、且つ鉄道車両の構造内に容易に組み込まれる摩擦装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明によれば、一方向または二方向の移動が提供された、鉄道車両のための鉄道用ディスクブレーキシステムのための摩擦装置が提供され、この摩擦装置は、
- 受入滑り経路を備えたシューホルダと、
- ブレーキパッドと、受入滑り経路内においてスライドされるように構成されたプロファイル形状と、を備えた摩擦シューであって、摩擦シューの第1面により区切られた第1空間を、摩擦シューの反対側の第2面により区切られた第2空間に接続した空気導管を備えた摩擦シューと、
- シューホルダ内に形成され、空気導管に面するように配置された、少なくとも1つの貫通穴と、
- シューホルダの貫通穴と、摩擦シューの空気導管と、の間に空気ガイドを形成した空気導管内に配置された空気接合リングと、
を備えている。
【0008】
したがって、摩擦シューは空気導管を備え、この導管は、シューホルダに配置された貫通穴と共に空気回路を形成しており、この回路を用いて、制動の間に、摩擦シューのブレーキパッドにより放出された粒子を吸引する。さらに、空気接合リングは、摩擦シューの空気導管からシューホルダの貫通穴へと、ブレーキに由来した粒子をガイドすることに寄与している。したがって、空気接合リングは、空気回路外への漏れの可能性を制限することに寄与している。特に、接合リングは、摩擦シューとシューホルダとの間に配置された隙間内をスライドする、ブレーキに由来した粒子の量を制限することに寄与している。したがって、本発明による摩擦装置は、同じ吸引力に関して、ブレーキに由来したより大量の粒子を吸引することに寄与している。したがって、より効果的である。したがって、本発明による摩擦装置は、ブレーキからの粒子を除去するための空気回路を単純に配置することに寄与している。
【0009】
さらに、本発明の多様な実施形態において、以下の規定の1つおよび/または別のものを使用することもできる。
- プロファイル形状は蟻溝である。
- 空気接合リングは、受入滑り経路の底部に載置されたフランジを備え、その部分は、好適に円錐形状を有し、この手段を伴って、空気ガイドは単純な形状とされることが可能である。
- より一般的には、その部分は任意の形状を有することが可能であり、特に不定形状を有することが可能である。
- 円錐部は円筒状である。
- 円錐部は、蟻溝プロファイル形状の高さに等しい高さを有し、この構成により、ブレーキに由来した粒子は、摩擦シューの空気導管からシューホルダの貫通穴に向かって効果的にガイドされることが可能である。
- シューホルダの受入滑り経路は出口がなくなっており、具体的には1つの閉鎖端部と、摩擦シューの抜き取りおよび挿入のための開口部を形成した1つの開放端部と、を備え、摩擦装置は、摩擦シューを受入滑り経路内にロックするための取り外し可能な部材をさらに備え、これにより、摩擦シューは必要であれば容易に交換可能であり、したがって摩擦装置の保守はより容易である。
- 摩擦シューは第1部材および第2部材により形成され、第1部材および第2部材の突き当て領域内において互いに接触するまで、一方でそれらの間に空気導管を形成する通路を残すように、第1部材および第2部材は受入滑り経路内をスライドするように構成されている。
- 第1部材および第2部材は、各々が摩擦シューの半体の1つを形成しており、2つの摩擦シューの界面に残された通路は、制動の間に放出される粒子の放出の領域の中央部に形成されており、したがって、制動の間に放出された粒子の吸引は、鉄道車両の進行方向に関係なく同様に実行され、制動の間に放出された粒子を除去するための空気的挙動は、結果的により簡素なモデルである。
- 第1部材および第2部材は、鉄道車両のブレーキディスクに対して接線方向に並置されている。
- 第1部材と第2部材との界面に残された通路は、突き当て領域の中間部に配置されており、突き当て領域は単純な嵌合を含んでいる。
- 突き当て領域は、実質的に突き当て面として形成され、第1部材および第2部材は、シューホルダの長手軸方向において類似した長さを有し、貫通穴は、突き当て面から5mm未満だけ離れた、または突き当て面と一致した軸を形成した中心を有し、したがって、摩擦装置の空力的挙動は対称的であり、このことは、鉄道車両が二方向の動作を有するために有利である。
- 摩擦装置は、シューホルダに装着され、貫通穴と空気圧的に接続され、且つシューホルダから離れるように延びた空気圧コネクタを備え、空気圧コネクタは、摩擦シューの導管およびシューホルダに配置された貫通穴により形成された空気回路からの粒子を、フィルタを備えた収集部材へと導くことに寄与している。
- 空気圧コネクタは、シューホルダの主面に対して垂直な軸の周りに、シューホルダに対して回転するように移動可能であり、したがって、摩擦装置は、鉄道車両のブレーキシステム内に容易に統合されることが可能であり、さらに、この装着は、かなりの大きさの相対動作を許容する。
- 摩擦装置は、貫通穴に空気圧的に接続され且つ摩擦シューから離れるように延びたホースを備えている。
- 摩擦装置は、直接的または間接的にホースに接続され且つ貫通穴内に減圧を形成するように構成されたポンプを備え、したがって、摩擦装置は、摩擦シューの空気導管およびシューホルダに配置された貫通穴により形成された空気回路を通じた、ブレーキに由来した粒子を吸引することに寄与している。
【0010】
本発明によれば、鉄道用ブレーキシステムは、2つの移動方向を有する鉄道車両のために設けられることが可能であり、車軸または車輪に固定されたディスクと、これまでに記載され且つディスクの各側に配置された2つの摩擦装置と、を備えている。
【0011】
また、本発明によれば、一方向または二方向の移動を伴った、鉄道車両のための鉄道用ディスクブレーキシステムのための摩擦装置が提供され、この摩擦装置は、
- 受入滑り経路を備えたシューホルダ、
- ブレーキパッドと、受入滑り経路内においてスライドされるように構成されたプロファイル形状と、を備えた摩擦シューであって、摩擦シューの第1面により区切られた第1空間を、摩擦シューの反対側の第2面により区切られた第2空間に接続した空気導管を備えた摩擦シュー、および
- シューホルダ内に形成され、空気導管に面するように配置された、少なくとも1つの貫通穴、
を備えている。
【0012】
空気圧コネクタは、シューホルダに装着され、貫通穴と空気圧的に接続され、摩擦シューから離れるように伸び、且つシューホルダの主面に対して垂直な軸の周りに、シューホルダに対して回転するように移動可能である。
【0013】
したがって、制動の間に放出された粒子は、摩擦シューの空気導管に、次いでシューホルダに形成された貫通穴に到達することが可能である。次に、粒子は空気圧コネクタに到達する。したがって、例えばホースを用いて、空気圧コネクタをブレーキ粒子の回収のためのシステムに接続することにより、これらの2つを接続することが可能である。さらに、空気圧コネクタは、シューホルダの主面に対して垂直な軸の周りに回転するように移動可能であるため、空気圧コネクタを鉄道車両内に容易に配置することが可能である。
【0014】
さらに、本発明の多様な実施形態において、以下の既定の1つおよび/または別のものも使用することも可能である。
- プロファイル形状は蟻溝である。
- 摩擦装置は、空気圧コネクタに空気圧的に接続され且つ摩擦シューから離れるように伸びたホースを備えている。
- 摩擦装置は、直接的または間接的にホースに接続され、且つ貫通穴内に減圧を形成するように構成されたポンプを備えている。
- シューホルダの受入滑り経路は出口がなくなっており、具体的には1つの閉鎖端部と、摩擦シューの抜き取りおよび挿入のための開口部を形成した1つの開放端部と、を備え、摩擦装置は、摩擦シューを受入滑り経路内にロックするための取り外し可能な部材をさらに備えている。
- 摩擦シューは第1部材および第2部材を備え、第1部材および第2部材の突き当て領域内において互いに接触するまで、一方でそれらの間に空気導管を形成する通路を残すように、第1部材および第2部材は受入滑り経路内をスライドするように構成されている。
- 第1部材および第2部材は、各々が摩擦シューの半体の1つを形成している。
- 摩擦シューは、単一部品とすることも可能である。
- 第1部材および第2部材は、鉄道車両のブレーキディスクに対して接線方向に並置されている。
- 第1部材と第2部材との界面に残された通路は、突き当て領域の中間部に配置されている。
- 突き当て領域は、実質的に突き当て面として形成され、第1部材および第2部材は、シューホルダの長手軸方向において類似した長さを有し、貫通穴は、突き当て面から少なくとも5mmだけ離れた、または突き当て面と一致した軸を形成した中心を有する。
- 摩擦装置は、シューホルダの貫通穴と空気導管との間に空気ガイドを形成した空気導管内に配置された空気接合リングを備えている。
- 空気接合リングは、受入滑り経路の底部に載置されたフランジおよび円筒部を備えている。
- 円筒部は、蟻溝プロファイル形状の高さに等しい高さを有する。
【0015】
本発明によれば、鉄道用ディスクブレーキシステムは、二方向の移動を伴った鉄道車両のために最終的に設けられることが可能であり、このシステムは、車軸または車輪に固定されたディスク、およびこれまでに記載され且つディスクの各側に配置された2つの摩擦装置を備えている。
【0016】
接合リングを備えた摩擦装置および空気圧コネクタを備えた摩擦装置の特徴が、当然組み合わせられることは、さらに理解されるだろう。
【0017】
非限定的な実施形態として、本発明の4つの実施形態が、以下の図の補助と共に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による鉄道用ディスクブレーキシステムを示した斜視図である。
図2】本発明による2つの摩擦装置を示した斜視図である。
図3】摩擦シューの長手軸方向に垂直な面に沿った、摩擦装置を示した断面図である。
図4】摩擦装置を示した平面図である。
図5】摩擦装置を示した平面分解図である。
図6】本発明による空気接合リングを示した斜視図である。
図7】摩擦シューの長手軸方向に垂直な面に沿った、本発明の第2実施形態による摩擦装置を示した断面図である。
図8】本発明の第2実施形態による摩擦装置を示した平面図である。
図9】摩擦シューの長手軸方向に垂直な面に沿った、第2実施形態による摩擦装置摩擦シューを示した断面図である。
図10】摩擦シューの長手軸方向に垂直な面に沿った、本発明の第3実施形態による摩擦装置を示した断面図である。
図11】本発明の第4実施形態による摩擦装置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による鉄道用ディスクブレーキシステム12を備えた鉄道車両10の一部を示している。この実施形態においては、鉄道車両10は列車である。本発明は、任意のタイプの鉄道車両10において実施されることが可能であることが、同様に理解されるだろう。したがって、都市型軽量軌道車または路面軌道車さえも可能である。同様に、鉄道車両10は、機関車または普通客車とすることが可能である。
【0020】
鉄道車両10は、主軸A1、ディスクDK、および車輪18を備えた車軸14を備えている。車輪18はレール20上に配置され、軸A1の周りを回転することによってレールに対して移動することが可能である。車軸14、ディスクDK、および車輪18は固定されて、これにより車軸14は、主軸A1の周りの回転動作をディスクDKおよび車輪18に伝達する。鉄道車両10は、2つの移動方向を有する。したがって、車輪18は、互いに対して反対向きの2つの方向において、レール20上を移動することが可能である(図2のS1、S2参照)。
【0021】
さらに、鉄道用ディスクブレーキシステム12は、ディスクDKに圧力を加えることが可能であり、それは、そのようにして主軸A1の周りの車輪18の回転を制動し、したがって結果的にレール20上の鉄道車両10の動作を制動するためである。この目的のために、鉄道用ディスクブレーキシステム12は、ディスクDKの各側に配置された2つの摩擦装置16を備えている。これらの2つの摩擦装置16は、油圧または空気圧アクチュエータによって作動されることが可能であり、これによりディスクDKに対称の制動力を加える。図2は、一点鎖線により示されたディスクDKの各側の2つの摩擦装置16の配置を特に示している。
【0022】
したがって、特に図2から図4に示されたように、鉄道用ディスクブレーキシステム12の各摩擦装置16は、図1に示された長手方向軸Z2を備え、この軸は、ディスクDKの接線方向Tと一致しており、ディスクブレーキシステムは、摩擦シュー22を支持したシューホルダ3を備えている。摩擦シュー22は、ディスクDKと直接接触するように意図されている。
【0023】
さらに、図3および図4に示されたように、各摩擦アセンブリ16は、横軸Xおよびいわゆる縦軸Yを備え、ここでYは、摩擦面に垂直である(Yは摩擦面の法線である)。
【0024】
シューホルダ3は、図2に見られているように、その長手方向上端において、鉄道車両10の本体への取付手段24を備えている。これらの取付手段24は2つの貫通穴の形式であり、互いの真向かいに配置されて、したがって鉄道車両10の本体によって支持された相補的な支持手段を受け入れるための個々の軸X1、X2を形成している。軸X1、X2は、軸A1および軸Z2に対して垂直である。軸X1、X2は、図示された例においては、レール上の鉄道車両の移動方向に略平行である。
【0025】
さらに、シューホルダ3は、シューホルダ3の長さに沿って長手方向に延び、且つ摩擦シュー22を受容した受入滑り経路4を備えている。図5に示されたように、受入滑り経路4は出口がない。そのように、受入滑り経路は1つの閉鎖端部41および1つの開放端部40を備えている。この開放端部40の機能は、摩擦シュー22の抜き取りおよび挿入のための開口部を形成することである。摩擦シュー22を受入滑り経路4内に配置するために、シューホルダ3は可動ロック部材19をさらに備え、この部材は細長い部材19の形状とされており、受入滑り経路4に対して略垂直であり、受入滑り経路4の開放端部40を塞いでいる。可動ロック部材19はシューホルダ3に固定されて、摩擦シュー22を受入滑り経路4内に捕捉することが可能である。可動ロック部材19は、ブランチの1つの強固なピンとして見ることができ、このブランチは、シューホルダ3内に形成された相補的な凹形溝内に収容される。
【0026】
それに加えて、シューホルダ3は、受入滑り経路4の略中央に配置された貫通穴38を備えている。貫通穴38は、摩擦装置16の垂直軸Yに平行な主軸A8を形成した中心を備えている。この主軸A8はさらに、シューホルダ3の主面XYに垂直である。この軸は、貫通穴38の主面にも垂直である。
【0027】
図3に見られているように、摩擦シュー22はブレーキパッド7を備え、その機能は、ディスクDKと接触することである。したがって、摩擦シューは、ディスクDKと直接接触するように意図された第1面71を備えている。摩擦シュー22は、ブレーキパッドから離れるように拡張した蟻溝プロファイル形状6も有する。ここで、プロファイル形状は蟻溝プロファイル形状6であり、これは、プロファイル形状が台形形状断面を有し、且つさらにシューホルダ3の受入滑り経路4の形状と相補的であることを意味している。したがって、蟻溝プロファイル形状6は、シューホルダ3の受入滑り経路内へとスライドされるように構成されている。したがって、摩擦シュー22は、第1面71の反対側の第2面72を備え、この面は、シューホルダ3の底部と直接接触している。本発明によれば、プロファイル形状が四角形断面を有し得ることがさらに理解されるだろう。より一般的には、プロファイル形状は、任意の形状を有する断面を有することが可能である。
【0028】
蟻溝プロファイル形状6は、図示された実施形態では、蟻溝プロファイル形状6の全長に伸びた長手方向溝68を備えている。蟻溝プロファイル形状6は、必要な長さに切断された、プロファイル形状を有する押出金属から得ることが可能である。使用される材料は、ステンレス鋼または高性能アルミニウム合金である。
【0029】
さらに、図4に明確に示されているように、摩擦シュー22は第1部材1および第2部材2を備え、各部材は摩擦シュー22の半分の1つを形成している。より一般的には、それらの部材は、少なくとも長手軸Z2に沿って類似した長さを有する。それらの部材は、受入滑り経路4内を順々にスライドするように構成されている。それらの部材は、図5に示されたように、ディスクDKの接線方向に並置され、互いに接触しており、それは図1および図5を重ねることによって見られる。第1部材と第2部材との間の接触は、図4に突き当て面Pとして示された突き当て領域の近傍において形成されている。
【0030】
さらに図5に示されたように、第1部材1は、第2部材2に面したその長手方向端部において、上からみた場合に半円形凹部11を備え、その凹部は第1部材1の全厚さにわたって延びている。同様に、第2部材2は、第1部材1に面したその長手方向端部において半円形凹部12を備え、その寸法は、第1部材の凹部11の寸法と同一である。したがって、第1部材1と第2部材2との間の突き当て面Pの領域内において、それらの部材は、第1部材1および第2部材2のそれぞれの2つの凹部11、12によって形成された通路を残している。この通路は突き当て面Pの中間部に、特に横断方向Xに沿った中間に配置されている。図3に示されたように、この通路は空気導管9を形成しており、摩擦シュー22の面71により区切られた第1空間E1と、摩擦シュー22の第2面72により区切られた第2空間E2と、の間の流体接続を形成している。シューホルダ3に設けられた貫通穴38は、空気導管9の反対側に配置されている。貫通穴38の主軸A8は、突き当て面P内にある。より一般的には、貫通穴38の主軸A8は、突き当て面Pと一致しているか、または別個とされ、もしくは突き当て面から5mm未満の距離だけ離れている。したがって、貫通穴38および空気導管9は、連続的な空気回路を形成している。
【0031】
摩擦装置16は、特に図6に示された空気接合リング8も備えている。空気接合リング8は、軸A8に対して横向きの環状に広がったフランジ81を備えている。このフランジ81の内側から、ここでは円筒部82である円錐部が伸びている。この部分は任意の種類の形状を有し、特に不定形状を有することが可能である。図3に示されたように、空気接合リング8は空気導管9内に配置されて、これによりフランジ81は受入滑り経路4の底部に載置される。フランジ81は、摩擦シュー22の面72と直接接触する。空気接合リング8の円筒部82は、空気の漏れがないことを意味するあそびを形成することなく、第1部材1の凹部11および第2部材の凹部12により形成された空気導管9の内壁内に伸びている。さらに図3に示されたように、円筒部82の高さは、摩擦シュー22の蟻溝プロファイル形状6の高さに等しい。円筒部82の高さが、長手方向溝68の高さに等しいことが、さらに理解されるだろう。
【0032】
そのように、空気接合リング8は、シューホルダ3の貫通穴38と摩擦シュー22の空気導管9との間の空気ガイドを形成している。実際に、空間E1から空気導管9内に進入し、垂直下向きに導かれる気流の大部分は、貫通穴38に到達することのみが可能である。実際に、空気接合リング8は、摩擦シュー22の面72と、この面72に直接接触した受入滑り経路4の底部と、の間に位置した隙間内における方向Xに沿った、および蟻溝プロファイル形状の長手方向溝68にもよる漏れを制限している。
【0033】
摩擦装置16は、シューホルダ3の貫通穴38の内側に配置された第1コネクタ42をさらに備えている。この第1コネクタ42は、第2部材46に取り付けられた第1部材44を備えている。この取付は、特にネジまたはクリップによる取付とすることが可能である。第1部材44は、摩擦シュー22から離れるように、貫通穴38を部分的に超えて伸び、第2部材46は、貫通穴38内に配置されている。摩擦装置16は、第1コネクタ42に接続された可撓性ホース50も備えている。この目的のために、可撓性ホース50は、第1コネクタ42の第1部材44に接続されている。したがって、可撓性ホース50は、摩擦シュー22から離れるように伸びている。変形によれば、第1コネクタ42は単一のユニットとして形成可能であることが理解されるだろう。この場合、第1部材44および第2部材46は、結合して形成される。
【0034】
そのように、摩擦装置16は、空気導管9、空気接合リング8、第1コネクタ42、および可撓性ホース50を備えた空気回路を備えている。可撓性ホース50は、ブレーキに由来した粒子のための回収タンクに有利に接続されている。さらに摩擦装置16は、前述の空気回路内に、特に貫通穴38内に減圧を形成することが可能なポンプ、および吸引された粒子を捕捉するためのフィルタ要素を備えている。
【0035】
鉄道車両10のブレーキに由来した粒子の回収は、ここで以下に記載される。
【0036】
鉄道のディスクブレーキ12が作動された場合、アクチュエータは、2つの摩擦装置16の個々の摩擦シュー22のブレーキパッド7が、ディスクDKと直接接触状態となるように付勢される。結果的に、回転しているディスクDKとブレーキパッド7との間の摩擦により、ブレーキに由来した粒子は、ブレーキパッド7により空間E1内に放出される。
【0037】
同時に、空気導管9、空気接合リング8、第1コネクタ42、および可撓性ホース50により形成された空気回路内に、減圧が形成される。
【0038】
減圧は、ブレーキシステム近傍のまたはそこから所定の距離の、例えば真空ポンプまたはベンチュリシステムにより形成することが可能である。
【0039】
したがって、ブレーキに由来した粒子は、最初に空間E1内に、次いで空気導管9に到達する。次に、粒子は空気接合リング8に、第1コネクタ42に、および可撓性ホース50到達し、ブレーキ粒子の回収のためのタンクに到達する。これまでに示したように、空気接合リング8は、ブレーキ粒子が摩擦シュー22の面72と、面72と直接接触した受入滑り経路4の底部と、の間に配置された隙間に到達することを防止している。これにより、ブレーキに由来した相当な量の粒子が回収される。したがって、本発明による摩擦装置は、汚染がより少ない。
【0040】
他の3つの本発明の実施形態が、図7から図11の補助と共にここに記載される。第1実施形態との差異のみが、明確にカバーされる。同一の対象の参照符号は、変更されないままである。
【0041】
図7から9に示された第2実施形態によれば、ブレーキパッド7の蟻溝プロファイル形状6は、図3に示された長手方向溝68を備えていない。
【0042】
図10に示された第3実施形態によれば、摩擦シュー22は単一部品とすることが可能である。
【0043】
本発明の第4実施形態による摩擦装置16は、図11に示されている。摩擦装置16は、第1コネクタ42の第1部材44に装着された空気圧コネクタ5を備えている。第1部材44に対する空気圧コネクタ5の位置決めは、ねじ込みまたはクリップにより行われる。したがって、空気圧コネクタ5はシューホルダ3に装着されて、摩擦シュー7から離れるように伸びている。
【0044】
したがって、空気圧コネクタ5は、シューホルダ3内に配置された貫通穴38および可撓性ホース50の両方と空気的に接続されている。可撓性ホース50は、空気圧コネクタ5に対して摩擦シュー22から離れるように伸びている。さらに、空気圧コネクタ5は、シューホルダ3および摩擦シュー22に対して軸A8の周りに回転可能であり、軸A8は、これまでに示されたように、空気圧コネクタ5の近傍に配置された矢印によって示された、シューホルダ3の主平面XYに対して垂直である。
【0045】
したがって、空気圧コネクタ5は、鉄道車両10の構造内により容易に組み込まれる。実際にこのことは、可撓性ホース50を軸A8に向かわせることを可能にしている。
【0046】
本発明の多様な実施形態の特徴は、それらが相互に矛盾しない限り、組み合わせられることが可能であることが理解されるだろう。
【0047】
もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に多くの修正をさらに加えることができる。
【0048】
とりわけ、摩擦シュー22はいくつかの部材1、2を備え得る。例えば、摩擦シュー22は、3つまたは4つの部材1、2を備え得る。
【0049】
同様に、シューホルダ3は非単一部品として、いくつかの個別の部材を備え得る。
【0050】
シューホルダ3は、少なくとも2つの貫通穴38を備えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ・・・第1部材
2 ・・・第2部材
3 ・・・シューホルダ
4 ・・・受入滑り経路
6 ・・・蟻溝プロファイル形状
5 ・・・空気圧コネクタ
7 ・・・ブレーキパッド
8 ・・・空気接合リング
9 ・・・空気導管
10 ・・・鉄道車両
11、12 ・・・半円形凹部
12 ・・・ディスクブレーキシステム
14 ・・・車軸
16 ・・・摩擦装置
18 ・・・車輪
19 ・・・可動ロック部材
20 ・・・レール
22 ・・・摩擦シュー
24 ・・・取付手段
38 ・・・貫通穴
40 ・・・開放端部
41 ・・・閉鎖端部
42 ・・・第1コネクタ
44 ・・・第1部材
46 ・・・第2部材
50 ・・・可撓性ホース
68 ・・・長手方向溝
71 ・・・第1面
72 ・・・第2面
81 ・・・フランジ
82 ・・・円筒部
A1 ・・・主軸
DK ・・・ディスク
E1 ・・・第1空間
E2 ・・・第2空間
P ・・・突き当て面
T ・・・接線方向
Z2 ・・・長手方向軸
XY ・・・主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11