(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】コールドスモーク肉製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 4/044 20060101AFI20220909BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20220909BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220909BHJP
A23L 13/70 20160101ALI20220909BHJP
A23L 13/40 20160101ALI20220909BHJP
A23B 4/03 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A23B4/044 503A
A23L17/00 A
A23L17/00 D
A23L13/00 A
A23L13/70
A23L13/40
A23B4/03 501Z
(21)【出願番号】P 2020556220
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 US2018025214
(87)【国際公開番号】W WO2019133038
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-03-29
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520232932
【氏名又は名称】フィッシュ プロ グロー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン ロナルド エヌ.
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273403(JP,A)
【文献】台湾特許出願公開第201613490(TW,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉源の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方に硬化剤をつける工程と、
前記硬化剤を用いて前記肉源を硬化させる工程と、
第1コールドスモーク工程で前記肉源をコールドスモークする工程と、
前記肉源を冷却する工程と、
前記肉源から前記外皮表面を除去する工程と、
前記肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程と、
前記肉ポーションをマリネ液中でマリネする工程と、
第2コールドスモーク工程で前記肉ポーションをコールドスモークする工程と、を
順に有
し、
前記第1コールドスモーク工程及び第2コールドスモーク工程を約16℃から約38℃の温度で行う、
風味付けされたジャーキー製品を製造する方法。
【請求項2】
前記肉源は魚である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化させる工程と前記第1コールドスモーク工程との間に、前記肉源を乾燥させる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1コールドスモーク工程と前記冷却する工程との間に、前記肉源を乾燥させる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マリネする工程と前記第2コールドスモーク工程との間に、前記肉ポーションを乾燥させる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2コールドスモーク工程の後に前記肉ポーションを乾燥させる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記冷却する工程を、約1℃から約5℃の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マリネ液が生きた培養菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記生きた培養菌がニホンコウジカビ(麹)を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記マリネ液は、シーズニング剤、抗酸化剤、澱粉含有穀粉、典型的な砂糖、転化糖及び乳化剤の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
肉源の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方に硬化剤をつける工程と、
前記硬化剤を用いて前記肉源を硬化させる工程と、
第1コールドスモーク工程で前記肉源をコールドスモークする工程と、
前記肉源を冷却する工程と、
前記肉源から前記外皮表面を除去する工程と、
前記肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程と、
前記肉ポーションを、生きた培養菌を含むマリネ液中でマリネする工程と、
第2コールドスモーク工程で前記肉ポーションをコールドスモークする工程と、を
順に有
し、
前記第1コールドスモーク工程及び第2コールドスモーク工程を約16℃から約38℃の温度で行う、
風味付けされたジャーキー製品を製造する方法。
【請求項12】
前記硬化させる工程と前記第1コールドスモーク工程との間に、前記肉源を乾燥させる工程を有する、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1コールドスモーク工程と前記冷却する工程との間に、前記肉源を乾燥させる工程を有する、請求項1
1に記載の方法。
【請求項14】
前記マリネする工程と前記第2コールドスモーク工程との間に、前記肉ポーションを乾燥させる工程を有する、請求項1
1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2コールドスモーク工程の後に前記肉ポーションを乾燥させる工程を有する、請求項1
1に記載の方法。
【請求項16】
前記生きた培養菌がニホンコウジカビ(麹)である、請求項1
1に記載の方法。
【請求項17】
前記マリネする工程を、約20℃から約32℃の温度で行う、請求項1
1に記載の方法。
【請求項18】
肉源の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方に硬化剤をつける工程と、
前記硬化剤を用いて前記肉源を硬化させる工程と、
第1コールドスモーク工程で前記肉源をコールドスモークする工程と、
前記肉源を乾燥させる工程と、
前記肉源を冷却する工程と、
前記肉源から前記外皮表面を除去する工程と、
前記肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程と、
前記肉ポーションを、生きた培養菌を含むマリネ液中でマリネする工程と、
第2コールドスモーク工程で前記肉ポーションをコールドスモークする工程と、
前記肉ポーションを乾燥させる工程と、を
順に有
し、
前記第1コールドスモーク工程及び第2コールドスモーク工程を約16℃から約38℃の温度で行う、
風味付けされたジャーキー製品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2017年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/611,256号の利益を主張するものであり、その全体は引用により本明細書にあらゆる目的のために盛り込まれているものとする。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
該当せず。
【背景技術】
【0003】
ジャーキーは、腐敗を防ぐために硬化及び乾燥された保存肉製品である。ジャーキーの現代的な製造は、肉の塊をストリップ状にスライスして製造されたジャーキーと、肉をすりつぶしてより小さい製品に粉砕して製造されたジャーキーと、の2つのカテゴリに分けることができる。何れの場合でも、肉は通常は脂肪が切り取られ、水、シーズニング、砂糖並びに塩及び硝酸ナトリウムなどの硬化剤を含む硬化液中でマリネされる。塩は肉から水分を取り除くために使用され、硝酸ナトリウムは肉の色を維持するとともに酸敗臭を減少させる。肉は、硬化された後、通常は高温でスモークされ、最終含水量となるまで乾燥される。すりつぶされた肉は、通常、スモーク及び乾燥工程の前に、肉を所望の形状に押し出す追加の工程を経る。
【0004】
公知の肉ジャーキー製品は、風味が落ちるまでの保存可能期間が限られており、また、分厚く及び/若しくは不透明であり、並びに/又は触感が固く噛み切りにくい。
【0005】
現在、当該分野において、保存可能期間を安定化及び延長し、風味を良くし、視覚的な魅力を高め、柔らかさ又は触感を改善し、そして製造工程を簡易化するジャーキー製造方法のための新たなプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の特定の実施形態は、風味付けされたジャーキー製品を製造するための新規のかつ非自明な方法を提供することによって、上記の欠点をほぼ解消する。
【0007】
本発明の実施形態は、風味付けされたジャーキー製品を製造する方法であって、この方法は、肉源の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方に硬化剤をつける工程と、前記硬化剤を用いて前記肉源を硬化させる工程と、第1コールドスモーク工程で前記肉源をコールドスモークする工程と、を有する。上記方法は、前記肉源を冷却する工程と、前記外皮表面がある場合は前記肉源から前記外皮表面を除去する工程と、前記肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程と、をさらに有する。上記方法は、前記肉ポーションをマリネ液中でマリネする工程と、第2コールドスモーク工程で前記肉ポーションをコールドスモークする工程と、をさらに有する。一実施形態では、第1コールドスモーク工程及び第2コールドスモーク工程の少なくとも一方は燻製機内で行われる。本発明のある実施形態は、開示された方法で製造された風味付けされたジャーキー製品である。
【0008】
ある実施形態では、前記肉ポーションは、第2コールドスモーク工程後、水分活性が約0.7から約0.9の間に達する。ある実施形態では、前記肉源は魚である。ある実施形態では前記魚はサーモンである。
【0009】
ある実施形態では、上記方法は、前記硬化させる工程と前記第1コールドスモーク工程との間に、前記肉源を乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、前記第1コールドスモーク工程と前記冷却する工程との間に、前記肉源を乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、前記マリネする工程と前記第2コールドスモーク工程との間に、前記肉ポーションを乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、前記第2コールドスモーク工程の後に前記肉ポーションを乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、乾燥させる工程のうちの少なくとも1つが燻製機内で行われる。ある実施形態では、乾燥させる工程のうちの少なくとも1つが燻製機の外で行われる。
【0010】
ある実施形態では、前記第1コールドスモーク工程及び前記第2コールドスモーク工程の少なくとも一方が約16℃から約38℃の温度で行われる。一実施形態では前記冷却する工程が約1℃から約5℃の温度で行われる。ある実施形態では前記マリネ液が生きた培養菌を含み、ある実施形態では前記生きた培養菌がニホンコウジカビ(麹)を含む。
【0011】
ある実施形態では、前記マリネ液は、シーズニング剤、抗酸化剤、澱粉含有穀粉、典型的な砂糖(traditional sugar)、転化糖及び乳化剤の少なくとも1つを含む。ある実施形態では、抗酸化剤は、ローズマリー、緑茶、緑茶抽出物並びにこれらの派生物及び混合物の少なくとも1つを含む。ある実施形態では、シーズニング剤は、味噌、大豆、モラセス、はちみつ、ブラウンシュガー、メープルシロップ、レモン若しくはブラックペッパー由来の天然香味料、スパイス、澱粉含有穀粉、エスプレッソパウダー、詰め合わせペッパー、乾燥オレンジピール、セサミシード、しょうが並びにこれらの派生物及び混合物の少なくとも1つを含む。ある実施形態では乳化剤はレシチンを含む。
【0012】
本発明のある実施形態は、風味付けされたジャーキー製品を製造する方法である。この方法は、肉源の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方に硬化剤をつける工程と、前記硬化剤を用いて前記肉源を硬化させる工程と、第1コールドスモーク工程で前記肉源をコールドスモークする工程と、を有する。上記方法は、前記肉源を冷却する工程と、前記外皮表面がある場合は前記肉源から前記外皮表面を除去する工程と、前記肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程と、前記肉ポーションを、生きた培養菌を含むマリネ液中でマリネする工程と、第2コールドスモーク工程で前記肉ポーションをコールドスモークする工程と、をさらに有する。ある実施形態では前記生きた培養菌はニホンコウジカビ(麹)である。ある実施形態では前記マリネする工程が約20℃から約32℃の温度で行われる。
【0013】
本発明の実施形態は、風味付けされたジャーキー製品を製造する方法である。この方法は、肉源の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方に硬化剤をつける工程と、前記硬化剤を用いて前記肉源を硬化させる工程と、第1コールドスモーク工程で前記肉源をコールドスモークする工程と、を有する。上記方法は、前記肉源を乾燥させる工程と、前記肉源を冷却する工程と、前記外表面がある場合は前記肉源から前記外皮表面を除去する工程と、前記肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程と、をさらに有する。上記方法は、前記肉ポーションを、生きた培養菌を含むマリネ液中でマリネする工程と、第2コールドスモーク工程で前記肉ポーションをコールドスモークする工程と、前記肉ポーションを乾燥させる工程と、をさらに有する。ある実施形態では、第2コールドスモーク工程及び乾燥させる工程の後、前記肉ポーションは、水分活性が約0.7から約0.9の間に達する。ある実施形態では前記生きた培養菌がニホンコウジカビ(麹)である。
【0014】
一態様において、本開示は上記の方法の何れか1つによって製造された風味付けされたジャーキー製品を提供する。
【0015】
本発明の上記の及び他の態様及び利点は、以下の記載から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
風味付けされたジャーキー製品を製造するための方法が提供される。ある実施形態では、この方法は、肉源(meat source)の外表面に硬化剤をつける工程と、前記硬化剤を用いて前記肉源を湿式及び/又は乾式で硬化させる工程と、を有する。ある実施形態では、硬化剤をつける工程の前に、肉源が約1℃から約5℃の温度に冷却される。次に、肉源は、第1コールドスモーク工程を経る。非限定的な例として、肉源が魚である場合、皮付きのフィレ/側部の塊がコールドスモークされる。ある実施形態では、肉源又は肉ポーションが、さまざまな種類が当業者に知られている「燻製機」内でスモークされる。一実施形態では、肉源は、燻液、木材などの燃焼若しくは燻り材を用いて、あるいはその他の承認された発煙源などによって、スモークされる。
【0017】
ある実施形態では、肉源は、次に、塩及び湿気レベルと平衡化される。ある実施形態では、塩及び湿気レベルは、肉源の母体全体でほぼ均等になるよう平衡化される。また肉源は、平衡化する工程の間に約1℃から約5℃の温度以下に冷却され、肉源を少なくとも1つの肉ポーションにスライス又は切り分ける後続のスライス又は切り分け工程の間も冷却され続ける。
【0018】
ある実施形態では、第1コールドスモーク工程の後かつスライス工程の前に、外皮表面が肉源から除去される。次に、肉ポーションは、少なくとも1つのシーズニング剤を含むマリネ液中でマリネされ、そして、第2コールドスモーク工程でスモークされる。コールドスモーク工程のうちの少なくとも1つは、約16℃から約38℃の間、約17℃から約35℃の間、約18℃から約32℃の間、約19℃から約29℃の間、約20℃から約26℃の間、そして好ましくは約21℃から約23℃の間の温度で行われる。
【0019】
ある実施形態では、第2コールドスモーク工程に続いて、風味付けされたジャーキー製品を製造するために肉ポーションを室温(通常約15℃から約25℃)と平衡化する。別の実施形態では、風味付けされたジャーキー製品を製造するために肉ポーションを約1℃から約5℃の温度に冷却する。ある実施形態では、上記方法は、硬化させる工程と第1コールドスモーク工程との間に、肉源を乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、第1コールドスモーク工程と冷却する工程との間に、肉源を乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、マリネする工程と第2コールドスモーク工程との間に、肉ポーションを乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、第2コールドスモーク工程の後に、肉ポーションを乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、乾燥させる工程の種々の組み合わせが用いられる。ある実施形態では、乾燥させる工程のうちの少なくとも1つが燻製機内で行われる。ある実施形態では、乾燥させる工程のうちの少なくとも1つが燻製機の外で行われる。
【0020】
別の実施形態では、風味付けされたジャーキー製品を製造する方法が提供される。一例として、この方法は、肉源に硬化剤をつける工程と、硬化剤を用いて肉源を湿式又は乾式硬化させる工程と、を有する。次に、肉源は第1コールドスモーク工程を経る。ある実施形態では、肉源は、次に平衡化され、冷却され、その後、肉ポーションを製造するためにスライス又は切り分け工程を経る。肉ポーションは、次にマリネ液中でマリネされる。一実施形態では、マリネ液は、生きた培養菌を含んでもよい。肉ポーションは、次に第2コールドスモーク工程を経る。ある実施形態では、肉ポーションは、水分活性が、約0.5から約1.1の間、約0.6から約1.0の間、好ましくは約0.7から約0.9の間、より好ましくは約0.8から約0.9の間、そして一実施形態では約0.80から約0.85の間に達する。
【0021】
ある実施形態では、上記方法は、硬化させる工程と第1コールドスモーク工程との間に、肉源を乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、第1コールドスモーク工程と冷却する工程との間に、肉源を乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、マリネする工程と第2コールドスモーク工程との間に、肉ポーションを乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、上記方法は、第2コールドスモーク工程の後に、肉ポーションを乾燥させる工程を有する。ある実施形態では、乾燥させる工程のうちの少なくとも1つが燻製機内で行われる。ある実施形態では、乾燥させる工程のうちの少なくとも1つが燻製機の外で行われる。
【0022】
ある実施形態では、風味付けされたジャーキー製品が開示される。風味付けされたジャーキー製品は、水分活性が約0.5から約1.1の間、約0.6から約1.0の間、好ましくは約0.7から約0.9の間、より好ましくは約0.8から約0.9の間、そして一実施形態では約0.80から約0.85の間である肉ポーションであって、シーズニング剤が内部に混入された微細構造を備える肉ポーションを含む。肉ポーションの微細構造は、肉源の表面に硬化剤をつけ、当該表面を硬化剤で硬化させ、そして第1コールドスモーク工程で肉源をスモークすることによって、作られ、ある実施形態では前記表面は肉源の露出筋肉表面であり、ある実施形態では前記表面は肉源の外皮表面であり、ある実施形態では前記表面は肉源の外皮表面と露出筋肉表面の両方である。ある実施形態では、外皮表面が除去され、そして、肉源が肉ポーションにスライスされる又は切り分けられる。肉ポーションは、次に少なくとも1つのシーズニング剤を含むマリネ液中でマリネされ、第2コールドスモーク工程でスモークされて、風味付けされたジャーキー製品が得られる。
【0023】
ある実施形態によれば、上記の風味付けされたジャーキー製品を製造する方法は、加工される肉源を提供する工程を有する。風味付けされたジャーキー製品を製造するのに適した肉源は、例えば、赤肉、家禽の肉、豚肉及びシーフードを含んでもよい。例示的な肉源は、牛肉、鶏肉、ターキー、ヤギ、ラム、バイソン、サーモン、ツナなどを含んでもよいが、これらに限定されない。さらに、本開示は、風味、安定性(保存可能期間)、視覚的な魅力及び柔らかさ(触感)を向上させる、風味付けされたジャーキー製品を製造する方法を提供する。
【0024】
ある実施形態では、硬化剤は、特定の硬化時間の間、肉源につけられる。一実施形態では、硬化剤は、肉源の外皮表面即ち哺乳類の皮又は魚の皮につけられる。魚の皮は鱗付きでも鱗無しでもよい。ある実施形態では、硬化剤は、肉源の露出筋肉表面に直接つけられてもよい。ある実施形態では、硬化剤は、肉源の外皮表面及び肉源の露出筋肉表面の両方につけられる。ある実施形態では、肉源は乾式硬化される。ある実施形態では、肉源は湿式硬化される。乾式硬化では、硬化剤が、肉源の表面に直接、例えば擦りつけなどによりつけられる。あるいは、湿式硬化は、硬化剤を含む溶液中に肉源を置くことを含む。一部の実施形態では、湿式硬化は、肉源に硬化剤を注入する、即ち肉に穴をあける針を用いて注入することを含む。特定の硬化時間は、約30分以下又は約30分から約12時間の間であり、一部の形態では、肉源は約12時間から約36時間又はそれ以上硬化されてもよい。
【0025】
適切な硬化剤は、例えば浸透及び/又は拡散によって肉源から湿気を取り去る反応剤(reagent)を含む。一実施形態では、硬化剤は、塩、硝酸、亜硝酸塩、砂糖(糖)(sugar)などのうちの少なくとも1つを含む。硬化剤の非限定的な例は、ブドウ糖、砂糖、塩、コーンシロップ、植物性たんぱく加水分解物、エリソルビン酸ナトリウム(並びに/又はその天然源及び/又は類似物の1つ、例えばチェリーパウダーなど)、亜硝酸ナトリウム(及び/又はその天然源の1つ、例えばセロリパウダーなど)並びにこれらの混合物及び派生物を含んでもよい。
【0026】
肉源は、硬化された後、特定の燻製時間の間、第1コールドスモーク工程を経る。ある実施形態では、約16℃から約38℃の温度で、好ましい実施形態では約21℃から約23℃の温度で、コールドスモークしてもよい。特定の燻製時間は約30分以上であってもよく、他の実施形態では、特定の燻製時間は約6時間から約10時間又はそれ以上であってもよい。肉源を硬化させ、その後コールドスモークすることで、現在知られているプロセスに勝る多数の利点が得られる。例えば、第1コールドスモーク工程によって、風味が良くなり、肉源の触感が固くなることでより正確なスライスが可能となり、そして驚くことに肉源の脂肪が安定化する。また、第1コールドスモーク工程によって、公知のジャーキー製品の不透明な見た目とは反対の透明な見た目の、驚くべき予想外の素晴らしい視覚的な魅力を有する最終製品を得ることもできる。また、第1コールドスモーク工程によって、抗酸化効果も得られ、このことは風味及び/又は好ましさに関する肉製品の保存可能期間が延長されることと同等である。また、第1コールドスモーク工程によって、最初にコールドスモークされたスライスは取り扱いが生のスライスよりも簡単になるので加工速度も速くなり、よってより速く加工できることから肉源が分裂してより小さく望ましくないポーションが生じることが少なくなる。一部の実施形態では、肉源は、第1コールドスモーク工程の直前又は直後又はその両方で、乾燥工程を経る。(複数の)乾燥工程は、燻製機の中又は外で行ってもよい。燻製機の中で行う場合、煙は吸い出されるか、(複数の)乾燥工程中に燻製機から除去される。
【0027】
風味付けされたジャーキー製品を製造する方法は、肉源を肉ポーションにスライスする又は切り分ける工程をさらに有する。ある実施形態では、肉源を肉ポーションにスライスする工程は、肉源をストリップ状にスライスすること、そしてある実施形態では薄くスライスされたストリップ状にスライスすることを含む。あるいは、ある実施形態では、肉源を肉ポーションに切り分ける工程は、肉源を肉スラリーにするためにすりつぶして粉砕することを含んでもよいが、より好ましい実施形態は肉製品の自然の筋肉塊スライスを製造するものである。肉源の外皮表面が硬化された場合、肉源を切り分ける工程はスライス前に肉源から外皮表面を除去する工程を含む。
【0028】
その後、肉ポーションは、特定のマリネ時間の間、マリネ液中でマリネされる。マリネ液は、シーズニング、抗酸化剤、澱粉含有穀粉、乳化剤、そして一実施形態では生きた培養菌などのうちの1つ以上の材料を含むが、これらに限定されない。マリネ液は風味を追加するとともに安定化させ、肉ポーションを柔らかくし、製品の柔らかさを増し、そして製品の保存可能期間を延長させる。ある実施形態では、穀粉成分は生きた培養菌に栄養分を提供し、肉ポーションの内部及び表面上にオメガ3オイルを維持することを助ける。
【0029】
マリネ時間は短くて約30分とすることができるが、一部の実施形態では肉ポーションを30分以上マリネすることができる。一部の実施形態では、肉ポーションは、約30分から約2時間、一部の実施形態では約2時間から約5時間又はそれ以上、マリネすることができる。一部の実施形態では、マリネ液は約4℃から約25℃の温度に冷却される。生きた培養菌を含むマリネ液を用いる実施形態では、マリネ温度は、約18℃から約25℃、約19℃から約24℃、約20℃から約23℃、そして一実施形態では約25℃から約33℃の間である。
【0030】
ある実施形態では、生きた培養菌は、麹又は麹菌としても知られるニホンコウジカビを含む。麹は、ゲノム的に良く特徴づけられており、また、アフラトキシンを生成する原因となる遺伝子の発現配列タグを有さないことから食品酵素を生成するための安全な生物であると考えられている。麹は、加水分解酵素、即ち肉ポーション中のたんぱく質及び澱粉含有穀粉中の澱粉を分解する役割をするアミラーゼ及びプロテアーゼを大量に分泌する能力を有する糸状菌である。マリネ液中に麹を使用することで、肉ポーション中で澱粉が種々の砂糖及び構造タンパク質に分解されて柔らかさが増し、保存可能期間が延長されたジャーキー製品が提供され、さらに、麹は風味付け剤としての役割も果たす。麹菌によって生成された酵素は、所定のアミノ酸で切断し、舌の上のうま味受容体を刺激するたんぱく質鎖のグルタミン酸部分を露出させる。
【0031】
ある実施形態では、使用される麹の濃度は、肉源1ポンド当たりの生きた培養菌が約1%から約3%であり、一部の実施形態では約0.1%から約1%であり、一部の実施形態では約1%から約3%であり、一部の実施形態では約3%から約5%である。本開示の全体をとおして、特に記載のない限り、全ての%は重量%を表す。麹の使用によって、柔らかさと触感の両方の望ましい品質が向上するとともに、風味プロファイルの保存可能期間を含む総合的な保存可能期間が延長されるといった、驚くべき予想外の結果が得られた。この予想外の結果は、第1コールドスモーク工程によって得られたものであるとともに、水分活性(Aw)の低下により酸化が防止されたことに部分的に起因するものである。本出願人は、生きた培養菌、特に麹は、その代謝物質の一部が水分と結びつくことから驚くべきことに同じ結果をもたらし得ることを示唆する。多くのジャーキー製品において時間と共に悩まされる第1の品質は、通常は脂質の酸化が原因で、風味となっている。本出願人による比較感覚刺激性保存可能期間研究によって、本発明の実施形態による製品において延長された保存可能期間という予想外の特性が確認された。
【0032】
マリネ液用の乳化剤は、シーズニング剤を可溶化することでマリネ液を安定化させる及び/又は香味料を肉源により放たせる反応剤を含んでもよい。ある実施形態では、乳化剤は、レシチンなどを含んでもよい。ある実施形態では、レシチンを使用するのは、製品中の原料として大豆がすでにあるので追加のアレルゲンの表示が不要となるためと、レシチンがクリーンラベル原料として知られているためである。乳化剤の使用は、肉組織がその有益な性質の多くを維持することを助けるよう設計されている。肉源が魚、より具体的にはサーモンである実施形態では、乳化剤は、組織が自身のオメガ3含有オイルをできるだけ多く維持することを助ける。魚は必要とされる水分活性の食品安全レベルに近づくにつれてそのオイル含有量の一部が失われることから、乳化剤は有益である。
【0033】
適切な抗酸化剤は、風味付けされたジャーキー製品の保存可能期間を延長させる反応剤を含んでもよい。一部の非限定的な例は、ローズマリー、ローズマリー抽出物、緑茶、緑茶抽出物並びにこれらの混合物及び派生物を含むが、これらに限定されない。適切なシーズニングは、白味噌、黄色味の味噌、赤味噌又は他の味噌を含むがこれらに限定されない味噌、醤油、液状塩麹、モラセス、はちみつ、ブラウンシュガー、米又は他の澱粉含有穀粉、エスプレッソパウダー、レモン若しくはブラックペッパー由来の天然香味料、一般的なスパイス並びにこれらの派生物及び混合物を含んでもよいが、これらに限定されない。一般的なスパイスの非限定的な例は、玉ねぎ、ニンニク、胡椒、パプリカ、ナツメグ、メース、クローブ、しょうが、カルダモン、チリペッパー、コリアンダー、クミン、ピメント、詰め合わせペッパー、乾燥オレンジピール、セサミシードなどを含んでもよい。例えばセサミシードは黒及び黄色のセサミシードでもよい。
【0034】
一部の実施形態では、肉源は、第1コールドスモーク工程の直前又は直後又はその両方で、乾燥工程を経る。一部の実施形態では、肉源は、第2コールドスモーク工程の直前又は直後又はその両方で、乾燥工程を経る。(複数の)乾燥工程は、燻製機の中又は外で行ってもよい。燻製機の中で行う場合、煙は吸い出されるか、(複数の)乾燥工程中に燻製機から除去される。上記の方法は、肉ポーションを特定の乾燥時間乾燥させる工程をさらに有する。ある実施形態では、肉ポーションを乾燥させる工程は、肉ポーションをオーブン又は連続ベルト乾燥機などの従来の乾燥機内に配置する工程を含む。
【0035】
ある実施形態では、肉ポーションは、乾燥され、第1コールドスモーク工程でコールドスモークされ、そして乾燥される。一実施形態では、肉ポーションは、乾燥され、第2コールドスモーク工程でコールドスモークされ、そして肉ポーションの水分活性が約0.7から約0.9の間、又は好ましくは約0.8から約0.9、又はさらに好ましくは約0.80から約0.85の間に達するまで乾燥される。ある実施形態では、肉ポーションは、第1コールドスモーク工程の間、又は第2コールドスモーク工程の間、又はその両方の間で、乾燥、コールドスモーク、乾燥の繰り返しサイクルを経る。乾燥、コールドスモーク、乾燥、第1及び/又は第2コールドスモーク工程は、約30分間以上行われてもよく、一方で、他の実施形態では、特定の第1及び/又は第2コールドスモーク工程は、周囲の湿度に応じて約30分から約2時間まで及んでもよく、一部の態様では約2時間から約12時間以上まで及んでもよい。肉ポーションを第2コールドスモーク工程でスモークすることによって、望ましい風味の増大及び/又は保存可能期間の延長を含むがこれらに限定されない数々の驚くべき予想外の利益を製品にもたらした。
【0036】
ある実施形態では、上記の方法は、肉源を硬化させ、第1コールドスモーク工程で肉源をスモークし、そして肉源を約1℃から約5℃の温度と平衡化させ、これにより塩及び水分の肉源の母体全体へのほぼ均等な拡散を促進させるとともにスライス品質及び収率を向上させる。ある実施形態では、第1コールドスモーク工程は約16℃から約38℃の温度で行われてもよい。その後、肉源は冷却され、スライスされ、マリネされ、そして第2コールドスモーク工程で約16℃から約38℃の温度でコールドスモークされ、その後、安全水分活性に到達させるための乾燥工程を行っても行わなくてもよい。ある実施形態では、安全水分活性は、約0.80から約0.90の間、好ましくは約0.8から約0.85の間である。ある実施形態では、肉源を平衡化する工程の後に肉源を除膜(skinning)する工程をさらに有してもよい。
【0037】
第1コールドスモーク工程により、驚くべきことに予想外に風味及び脂肪が安定化し、ジャーキー製品の視覚的な魅力が増した。公知の方法は、第1コールドスモーク工程を有しておらず、単に肉をスライスしてマリネするだけである。第1コールドスモーク工程から生じる予想外の相乗的な利点によって、優れたジャーキー製品を得ることができる。
【0038】
ある実施形態では、風味付けされた魚ジャーキー製品が開示される。非限定的な例では、魚の外皮表面及び露出筋肉表面の少なくとも一方が硬化され、皮付きのフィレ/(右又は左)側部の塊がコールドスモークされる。一実施形態では、皮付きの魚のフィレの露出筋肉部分が硬化される。
【0039】
ある実施形態では、魚は、第1コールドスモーク工程の後、約1.0℃から約5.0℃以下に冷却される。魚は、塩水魚又は淡水魚、非限定的な例としてサーモン、さらなる非限定的な例としてアトランティックサーモンを含んでもよいが、これらに限定されない。ある実施形態では、皮付きのフィレ/右又は左側部の塊が、第1コールドスモーク工程を経て、次に平衡化され、冷却され、その後スライスされる。
【0040】
魚は、次に、シーズニング、澱粉含有穀粉、抗酸化剤及び乳化剤のうちの1つを含むマリネ液中でマリネされる。乳化剤はレシチンなどを含んでもよいが、これに限定されない。一部の実施形態では、マリネ液は、シーズニング、抗酸化剤、澱粉含有穀粉及び乳化剤のうちの1つを含む。ある実施形態では、マリネ液は生きた培養菌をさらに含み、一実施形態では生きた培養菌は麹である。次に、魚は、第2コールドスモーク工程を経て、水分活性が約0.80から約0.85に達する。ある実施形態では、魚は、第2コールドスモーク工程の後に乾燥工程を経る。次に、製品は、室温に冷却される又は室温と平衡化される。一部の実施形態では、肉源は、第1コールドスモーク工程の直前、第1コールドスモーク工程の直後、第2コールドスモーク工程の直前又はこれらのあらゆる組み合わせにおいて、乾燥工程を経る。
【0041】
非限定的な例示的実施形態では、硬化剤及びマリネ液は表1に例示する成分を含んでもよい。工程1は第1コールドスモーク工程の前の硬化させる工程であり、工程2はマリネする工程である。第1コールドスモーク工程中のスモーク時における塩とおそらく第2の機能を果たす砂糖とが、工程2及びプロセスの残りの工程にわたって風味を安定化させる硬化及び安定化剤である。この安定化は、水分活性の低下に一部よるものであり、したがって水による脂質酸化への寄与を抑制する。予想外なことに、スライス工程前における第1コールドスモーク工程中のこの水分活性の低下は、多数の筋肉細胞を破壊しよって酸化の確率を高め得るので、脂質及びこれらに特有な風味の安定化ひいては保存可能期間の延長にとって非常に重要である。
【0042】
【0043】
麹は、肉及び/又は肉とマリネ液の重量の合計の約0.1%から約5%の初期濃度で添加される。米粉は、肉製品の重量の約1%から約3%の初期濃度又は麹の重量の約100%から約300%の初期濃度で添加される。液状塩楸は、肉製品の重量の約0.1%から約5%の初期濃度で添加される。ローズマリー抽出物と緑茶抽出物の混合物は、肉及び/又は肉とマリネ液重量の合計の約0.025%から約1%の初期濃度で添加される。一実施形態では、ローズマリー抽出物と緑茶抽出物の混合物の源は、Fortium(登録商標)RGT WS1500液(米国,ZIPコード50317,アイオワ州,1900Scott Avenue Des MoinesにあるKemin(登録商標) Industries社)である。
【0044】
第2コールドスモーク工程の後、風味付けされたジャーキー製品は、約1℃から約室温(15℃から25℃)の間、好ましくは約20℃から約23℃の温度となるよう平衡化される。風味付けされたジャーキー製品は、高バリア性バッグ、但しこれに限定されない、などの適切な媒体内に梱包されてもよい。一実施形態では、高バリア性バッグは、保存性を高めるために乾燥剤及び/又は脱酸素剤を含む。
【0045】
本開示について1以上の好ましい実施形態を記載したが、明記したもの以外にも多くの同等のもの、代替のもの、バリエーション及び変更がなされたものも可能であり本発明の範囲内であることは、すぐに理解されるであろう。