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特許7138368蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法
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  • 特許-蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法 図1
  • 特許-蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法 図2
  • 特許-蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法 図3
  • 特許-蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法 図4
  • 特許-蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】蓄光パネルを備えた防災用のロッカー及びロッカーの組立方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 81/00 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
A47B81/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021041405
(22)【出願日】2021-03-15
(62)【分割の表示】P 2016159834の分割
【原出願日】2016-08-17
(65)【公開番号】P2021100593
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2015162035
(32)【優先日】2015-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512331533
【氏名又は名称】株式会社LEC
(74)【代理人】
【識別番号】100148714
【弁理士】
【氏名又は名称】川浪 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山田 輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 めぐみ
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299532(JP,A)
【文献】特開2012-034905(JP,A)
【文献】登録実用新案第3037400(JP,U)
【文献】特開2013-050015(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162620(JP,U)
【文献】特開2003-191952(JP,A)
【文献】特開平10-042970(JP,A)
【文献】特開平09-062181(JP,A)
【文献】登録実用新案第3131011(JP,U)
【文献】特開2009-213611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0043030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 81/00
A47B 55/00
G09F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体のロッカーであって、
前記ロッカーの正面に、回動軸により開閉可能な前面パネルを具備し、
前記前面パネルは補助パネルを有し、前記補助パネルはそれ自体に蓄光材が含まれた蓄光パネルであるロッカー。
【請求項2】
前記前面パネルの材質が、スチール・アルミニウム・銅その他の金属である請求項1記載のロッカー。
【請求項3】
前記前面パネルの材質が、ABS樹脂の他の樹脂である請求項1記載のロッカー。
【請求項4】
前記ロッカーが「組立式」である請求項1記載のロッカー。
【請求項5】
前記補助パネルの表面に点字又は凹凸のパターンが形成された請求項1記載のロッカー。
【請求項6】
前記補助パネルは、複数の貫通孔を有する請求項1記載のロッカー。
【請求項7】
底面パネルと、左側面パネルと、右側面パネルと、背面パネルと、上面パネルと、前面パネルと、を備える略直方体のロッカーの組立方法であって、
前記前面パネルの上下左右のいずれか一片を、
前記上面パネル、前記底面パネル、前記左側面パネル、及び前記右側面パネルのいずれかと、回動可能に連結するステップと、
前記前面パネルにおける前記回動軸の反対側に把手部を取り付けるステップと、
前記前面パネルの表面に第1の補助パネル及び第2の補助パネルを取り付けるステップと有し、
前記第1の補助パネル及び前記第2の補助パネルの少なくともいずれかは、それ自体に蓄光材が含まれた蓄光パネルであるロッカーの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に物品を収納するためのロッカーに関し、より具体的には、災害時の避難生活や救援活動に必要な物品を収納するための防災用のロッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
日本は古来より多くの自然災害に見舞われてきたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、人々は防災の重要性をより強く認識することとなった。防災においては事前に十分な備えをすることが重要となるため、現在、防災ロッカーの設置が政府等の各種機関より推進されている。
【0003】
防災ロッカーとは、災害が発生した際の避難生活や救援活動において必要となる物品を予め格納・保管するためのロッカーである。水や食料のほか、毛布、懐中電灯、救急用具等が主として保存され、火災用の耐火服や空気呼吸具などが格納されることもある。
【0004】
防災ロッカーは、その性質上、夜間や停電による暗闇の中でも容易に位置把握ができるものでなければならない。そのため、従来の防災ロッカーにおいては、一般のロッカーに蛍光材及び反射材を使用したステッカーを貼り付ける等がなされていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3037400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の防災ロッカーは、ロッカー表面に蛍光材及び反射材を使用したステッカーを貼り付けるものであるため、美観上好ましいものではなかった。また、災害時にはかかるステッカーが予期せぬ原因により外れてしまう可能性も否定できず、その機能が保証されたものではなかった。
【0007】
防災ロッカーの前面パネル部等に蓄光シールを貼り付けたものは美観を損なうだけでなく、経年劣化し易く、破れたり剥がれたりし易かった。特に、プラスチック製のロッカーは、金属からなるロッカーのように錆びないので、プール施設などの水がかかり易い場所で使用されることもあるが、ステッカーやシールは水に濡れることで一層剥がれ易くなったり、蓄光性能が低下したりする原因ともなっていた。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、美観を損なうことなく暗闇の中でも確実かつ容易に位置把握が可能な防災用のロッカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るロッカーは、略直方体のロッカーであって、
前記ロッカーの正面に、回動軸により開閉可能な前面パネルを具備し、
前記前面パネルは補助パネルを有し、前記補助パネルはそれ自体に蓄光材が含まれた蓄光パネルであることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、蓄光材を含むパネルが夜間や災害時の暗闇において光を発し、ロッカーの位置把握が容易になる。
【0011】
前記前面パネルの材質が、スチール・アルミニウム・銅その他の金属であってもよい。
【0012】
前記前面パネルの材質が、ABS樹脂の他の樹脂であってもよい。
【0013】
前記ロッカーが「組立式」であってもよい。
【0014】
前記補助パネルの表面に点字又は凹凸のパターンが形成されていてもよい。
【0015】
前記補助パネルは、複数の貫通孔を有してもよい。
【0016】
本発明に係るロッカーの組立方法は、底面パネルと、左側面パネルと、右側面パネルと、背面パネルと、上面パネルと、前面パネルと、を備える略直方体のロッカーの組立方法であって、
前記前面パネルの上下左右のいずれか一片を、
前記上面パネル、前記底面パネル、前記左側面パネル、及び前記右側面パネルのいずれかと、回動可能に連結するステップと、
前記前面パネルにおける前記回動軸の反対側に把手部を取り付けるステップと、
前記前面パネルの表面に第1の補助パネル及び第2の補助パネルを取り付けるステップと有し、
前記第1の補助パネル及び前記第2の補助パネルの少なくともいずれかは、それ自体に蓄光材が含まれた蓄光パネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明にかかる防災用ロッカーによれば、補助パネルが蓄光材を含む部材からなり、夜間や災害時の暗闇において発光するため、美観を損なうことなく暗闇の中でも確実かつ容易にロッカーの位置把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかるロッカー(閉状態)を斜め前方から撮影した写真である。
図2】本発明の一実施形態にかかるロッカー(開状態)を斜め前方から撮影した写真である。
図3】本発明の一実施形態にかかるロッカーを斜め後方から撮影した写真である。
図4】本発明の一実施形態にかかるロッカーを正面から撮影した写真である。
図5】本発明の一実施形態にかかる補助パネルと蓄光シールとを暗闇において撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。但し、これらの実施形態はいずれも例示であり、本発明についての限定的解釈を与えるものではない。なお、図面において、同一又は対応する部分については同一の符号を付すものとする。
【0020】
(第1の実施形態)
図1図2、及び図3に示すように、本実施形態にかかる防災用のロッカー1は、底面パネル10と、左側面パネル20と、右側面パネル30と、背面パネル40と、上面パネル50と、前面パネル60と、を備える。それぞれのパネルは略長方形であり、これらが連結固定され、略直方体の防災用のロッカー1を構成する。
【0021】
ここで、「略長方形」とは、完全な長方形に加えて、ロッカーの機能を発揮できる限りにおいて変更が加えられたもの、例えば一部に曲線部を有するもの等を含むという意味であり、「略直方体」についても同様とする。
【0022】
背面パネル40は、それぞれの辺が、底面パネル10、左側面パネル20、右側面パネル30、及び上面パネル50の1辺と連結固定されており、さらには、底面パネル10と左側面パネル20、左側面パネル20と上面パネル50、上面パネル50と右側面パネル30、右側面パネル30と底面パネル10が接触する辺において連結固定されている。
【0023】
図4に示すように、前面パネル60は、メインパネル61と、把手部62と、第1の補助パネル63と、第2の補助パネル64と、を有する。
【0024】
前面パネル60は、上下左右のいずれか一片が、上面パネル50、底面パネル10、左側面パネル20、及び右側面パネル30のいずれかと回動可能に連結され、この連結部を回動軸70として開閉可能に設置される。把手部62は、前面パネル60の回動軸70とは反対側の辺の近傍に配置され、利用者はこの部分を把持して前面パネル60を開閉する。第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64は、例えば、回動軸70と平行な方向に把手部62を挟むように配置される。本実施形態においては、把手部62は前面パネル60の左側に配置され、前面パネル60の右側の片が回動軸70となる。
【0025】
なお、メインパネル61に、把手部62と、第1の補助パネル63と、第2の補助パネル64とに対応する枠を形成しておき、この枠に、把手部62と、第1の補助パネル63と、第2の補助パネル64とを組み付けるようにしてもよい。このようにすることで、ロッカー1の組み立てが容易となる。
【0026】
各パネルの材質としては、スチール、アルミニウム、銅等の金属を用いることもできるが、ABS樹脂の合成樹脂を用いることが好ましい。このようにすることで、軽量で耐久性に優れ、廃棄も容易となる。
【0027】
また、このような樹脂のプラスチック製のロッカー1は錆びることがないため、プール施設、水を扱う工場、学校や銭湯などの水場付近での使用にも適している。
【0028】
本実施形態における第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64は蓄光材を含む部材からなる。これにより、夜間や災害時の暗闇においてこの部分が発光し、暗闇の中でもロッカー1の位置把握が容易となる。
【0029】
図5は、本実施形態における第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64と蓄光シール80とを暗闇において撮影した写真である。暗闇の中でもロッカー1の位置把握が容易とするレベルの発光が第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64によって得られることがわかる。
【0030】
また、第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64は把手部62を挟むように配置されるため、夜間や災害時の暗闇においても把手部62の位置把握も容易となり、暗闇の中での利便性が向上する。
【0031】
蓄光材を含んだ部材からなる第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64は、白色樹脂に蓄光材を練り込んだものであることが好ましい。蓄光材は下地が白色の場合に発光強度が最も強くなるため、このようにすることで暗闇におけるロッカー1及び把手部62の位置把握がより容易となり、また、少量の蓄光材によっても十分な発光が行われるため、蓄光材の使用量を低減することもができる。
【0032】
また、第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64に白色樹脂を用いる代わりに、透明樹脂に蓄光材を練り込み、背面を白色に着色したものを用いることもできる。このようにしても白色樹脂を用いた場合と同等の発光強度が得られ、ロッカー1及び把手部62の位置把握において同様の効果を奏する。なお、この場合は、透明樹脂の裏面を塗料等によって白色に着色したり、または透明樹脂の裏面に白色樹脂の薄板を貼り合わせるなどにより、背面を白色にすることができる。
【0033】
本実施形態にかかる蓄光部を備えた防災用のロッカー1は、蛍光灯等を備えた従来の防災ロッカーと異なり、発光のために外部電源を必要としない。また、蓄光材による発光は、燐光(りんこう)と呼ばれる優しいほのかな光であるため、睡眠等を妨害する可能性が低い。そのため、本実施形態にかかる防災用のロッカー1は、従来の防災ロッカーよりも設置可能範囲を広げることができ、設置者及び利用者にとってより使いやすいものとなる。
【0034】
また、本実施形態にかかる第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64は複数の貫通孔65を有する。蓄光材を含む第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64に貫通孔65が形成されることで、蓄光材の使用量を低減することができ、製造コストを低減することができる。また、ロッカー1の内部の通気性が確保され、衣類等の長期保存が可能となる。さらに、複数配置された貫通孔65はロッカー1の意匠性にも寄与し、特に発光時の意匠性を向上させるができる。また、ロッカー1の内部に保存する内容物によって貫通孔65の形成パターンを変えることで、前面パネル60を開けることなく内容物の特定が可能となる。
【0035】
なお、ロッカー1の内部の通気性については、必要に応じ、第1の補助パネル63及び第2の補助パネル64以外のパネルにも貫通孔を設けてもよい。
【0036】
必要により、補助パネルに文字や記号、例えば、使用者名や「救命器具、災害救助用品」等の表示や避難経路を示す矢印(→)等が示されるようにしてもよい。また、補助パネルの表面に点字や凹凸のパターンが形成されていてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態にかかる防災用のロッカー1によれば、蓄光材を含むパネルが暗闇において発光するため、暗闇の中でも容易にロッカーの位置把握が可能となる。また、蓄光テープ等を貼り付けた従来品とは異なり蓄光材を練り込んだパネルそのものが発光するものであるため、ロッカーの美観を損ねることがない。また、従来品のように蓄光テープが外れるおそれがないので、災害時においてもロッカーの確実な位置把握が可能となる。また、蓄光材は日光や蛍光灯の光を吸収し、周囲が暗くなった場合に発光するものであるため、発光に際し外部電源等を要せず、ランニングコストを必要としない。また、蓄光材による発光は、蛍光灯等の光とは異なり、優しくほのかな燐光であるため、睡眠等を妨げる可能性も少なく、様々な場所に設置が可能とある。また、発光部となる第1の補助パネル及び前記第2の補助パネルは、既存の金型を用いて製造できるため、本実施形態にかかる防災用のロッカー1を製造するに際し新たに金型を起こす必要がなく、低コストで製造できる。
【0038】
なお、上記においては、本実施形態にかかるロッカー1を防災用途として用いることを前提に説明したが、本発明にかかるロッカーの用途はこれに限定されるものではなく、学校やスポーツ施設、その他一般にロッカーを設置可能な場所で用いることができる。また、例えば暗闇での意匠性を備えたロッカーとしても用いることが可能である。
【0039】
また、上記の本発明にかかる実施形態の説明は、本発明の例示を目的として行ったものであるため、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者によって適宜変更等を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ロッカー
10 底面パネル
20 左側面パネル
30 右側面パネル
40 背面パネル
50 上面パネル
60 前面パネル
61 メインパネル
62 把手部
63 補助パネル
64 補助パネル
65 貫通孔
70 回動軸
80 蓄光シール
図1
図2
図3
図4
図5