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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】改良版食品生地用延伸機
(51)【国際特許分類】
   A21C 3/02 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
A21C3/02 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021503792
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 IB2019056391
(87)【国際公開番号】W WO2020021502
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】102018000007562
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521027744
【氏名又は名称】エコール インターナショナル エスピーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ダッラ フォンタナ,エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】スミダーレ,ルカ
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01129621(EP,A1)
【文献】米国特許第06364653(US,B1)
【文献】国際公開第2015/115220(WO,A1)
【文献】特表2010-521141(JP,A)
【文献】特開2016-136922(JP,A)
【文献】特開2015-015944(JP,A)
【文献】特開平02-076530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸ばそうとしている生地の塊を載置する支持台(14)と、
前記支持台(14)の上部に、フレーム(11)の所定の縦軸(Y)に沿って同軸に配置された生地延伸部(2)と、
前記支持台(14)を前記生地延伸部(2)に向かって、あるいは前記生地延伸部(2)から遠ざけるように動かす可動手段(15)とに連動するフレーム(11)を備えるピッツァ生地を伸ばすための生地用延伸機(1)であって、
前記生地延伸部(2)は、
前記生地の塊と接触する成形体(21)と、
それぞれが、前記生地の塊を成形する成形要素(3)を摺動可能に収容する、複数の放射状溝(22a)が形成されたプレート(22)と、
前記放射状溝(22a)に沿って、前記成形要素(3)を前記縦軸(Y)に向かって、あるいは前記縦軸(Y)から遠ざけるように、動かす動的手段(4)とを備えることを特徴とし、
前記動的手段(4)は、
その一端(41a)が動力手段(5)に効果的に接続され、他端(41b)が前記プレート(22)に回転可能に連動したねじ軸(41)と、
前記ねじ軸(41)に固定されるナット(42a)を備えた中芯部(42)と、
そのそれぞれが、前記成形要素(3)の一つと丁番で結合される一端(43a)および前記中芯部(42)と丁番で結合される他端(43b)を有する複数のロッド(43)とを備えることを特徴とし、
前記動力手段(5)が前記ねじ軸(41)を回転し、前記ねじ軸(41)の回転方向に応じて、前記中芯部(42)を、下方向または上方向に変位させると、前記動的手段(4)は、複数の前記ロッド(43)をコンパス運動させ、前記縦軸(Y)に向かって、あるいは前記縦軸(Y)から遠ざけるように、前記成形要素(3)を結果的に変位させることを特徴とする、生地用延伸機(1)。
【請求項2】
前記生地延伸部(2)は、前記成形体(21)を変位させる手段を有し、
前記成形体(21)は、
前記中芯部(42)に連動する一端(23a)および前記中芯部(42)が下降した際に前記成形体(21)を押す他端(23b)を有する、少なくとも一つのスラストピン(23)と、
前記スラストピン(23)との接触により前記成形体(21)が移動した際、前記成形体(21)の変位を制御する弾性部(24)とを有することを特徴とする、請求項1に記載の生地用延伸機(1)。
【請求項3】
前記弾性部(24)は、
前記プレート(22)を貫通して配置され、その一端(241a)が前記成形体(21)と連動し、他端(241b)に操作ヘッドを有するピン(241)と、
前記ピン(241)の外側で、前記操作ヘッドおよび前記プレート(22)の間に配置される弾性要素(242)とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の生地用延伸機(1)。
【請求項4】
前記成形体(21)は複数の突出要素(21a)を有する成形プレートを備え、複数の前記突出要素(21a)のそれぞれは、前記支持台(14)に対向する、外側に凸の輪郭を有し、伸ばそうとしている前記生地の塊と接触することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の生地用延伸機(1)。
【請求項5】
前記成形要素(3)のそれぞれは、対応する前記放射状溝(22a)に配置される摺動体(31)を備え、
前記摺動体(31)は、
前記プレート(22)の上に配置され、前記ロッド(43)の一つと丁番で結合される第1部(31a)と、
前記プレート(22)の下に配置され、前記生地の塊を伸ばす成形体(32)と連動する第2部(31b)とを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の生地用延伸機(1)。
【請求項6】
前記成形体(32)はL字形の輪郭を有し、その輪郭において、
前記摺動体(31)の前記第2部(31b)と連動する長辺(322)と、
少なくともその一部が前記生地の塊に埋まる短辺(321)とを有することを特徴とする、請求項5に記載の生地用延伸機(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の生地用延伸機(1)を使用した生地の塊を伸ばす方法であって、
前記支持台(14)の上に、伸ばす前記生地の塊を載置する工程と、
複数の前記ロッド(43)が延長位置にあり、前記成形要素(3)が前記プレート(22)の周囲に配置されているような位置に前記生地延伸部(2)がある時、前記生地の塊、少なくともその一部が前記成形体(21)に向けて押し付けられるまで、前記縦軸(Y)に沿って、前記生地延伸部(2)に向かって前記支持台(14)を上昇させる工程と、
前記縦軸(Y)に沿って、前記成形体(21)に対して前記支持台(14)を下降させる工程と、
前記成形要素(3)が前記縦軸(Y)に向かって、前記放射状溝(22a)に沿って摺動するよう、前記ねじ軸(41)を回転させることで、前記中芯部(42)を上昇させる工程と、
前記成形要素(3)の少なくとも一部が前記生地の塊に埋まるまで、前記生地延伸部(2)に向けて、前記縦軸(Y)に沿って、前記支持台(14)を上昇させる工程と、
複数の前記ロッド(43)を延長し、前記成形要素(3)を前記プレート(22)の周辺まで移動させて前記生地の塊を伸ばすよう、前記ねじ軸(41)を回転させることで、前記中芯部(42)を下降させる工程とを含む方法。
【請求項8】
前記成形体(21)に対して前記支持台(14)を下降させる工程は、前記ねじ軸(41)を回転させることで前記中芯部(42)を上昇させる前記工程と同時に行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記成形体(21)に対して前記支持台(14)を下降させる工程は、前記ねじ軸(41)を回転させることで前記中芯部(42)を上昇させる前記工程の後に行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品生地の塊、特にピッツァ生地の塊を伸ばすために改良された機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ピッツァ、ラップサンド、フォカッチャ、アラブパンやピタパンのように、基本的に平らに伸ばされた食品生地から作られるものは多く存在する。
【0003】
美味しさだけでなく、見た目にも美しくなるよう、最適な材料を混ぜることに加え、生地を充分に伸ばすことが必要となる。
【0004】
食品生地を伸ばすにあたり、種々の方法が採用される。
【0005】
まず一つめの方法としては、材料を混ぜたものを座面(好ましくは、木製あるいは大理石で造られた座面)に置き、木製のめん棒で伸ばすものだ。
【0006】
めん棒は、主に、薄さを特に必要とせず、ある程度の寸法を有する生地片を伸ばすのに使用される。
【0007】
特に、台に小麦粉で打ち粉をした後、材料を混ぜたものを中央に置き、所望の形になるよう、めん棒で押し広げる。
【0008】
そして、めん棒を生地の上で回転させ、生地をさらに広げ、手をめん棒の上で内側から外側、そしてその反対方向へとすべらせる。
【0009】
めん棒を使うことで、全て手作業で行う場合(下記に記載)と比較して、延伸作業がより簡単になる一方で、パンの発酵ガスが大きく損なわれてしまう。この発酵ガスは、オーブンで生地がふくらむのに大切な要素であるため、仕上がりが大きく左右される。
【0010】
別の方法としては、生地を手で延ばすものがある。
【0011】
この方法では、まず、手や作業台に小麦粉で打ち粉をすることが必要である。それから、指を使って、生地の真ん中を優しく押して、パンの発酵ガスが端に寄るようにする。
【0012】
そして、生地を、中央から外側に向かって、ゆっくりと力を入れて伸ばす。この時、生地の端が欠けずに円盤状になるよう、生地の周囲をつぶさないようにする。
【0013】
次に、頻繁に回したり、ひっくり返したりしながら、都度、作業台に小麦粉で打ち粉をして、生地を伸ばし続ける。
【0014】
この方法は、家庭や、家庭料理を供するレストランで用いられるもので、必要とされる設備はあまり多くない。
【0015】
こうした技術で作られたものは、味がよく、一般的な手作り感のある仕上がりとなるが、作るのに相応の時間がかかる。
【0016】
シェフやピッツァ職人が調理だけでなく生地を伸ばす工程を担っているレストランにとって、このデメリットは特に大きなものである。
【0017】
既知のように、仕上がりの味や食感を損なわないために、生地は注文を受けてからでないと延ばすことはできない。
【0018】
さらに、一日のある特定の時間帯、いわゆる「書き入れ時」には、客の注文に効率的に応え、レストランの生産性を上げるために、生地を伸ばす人員が多く必要となる。
【0019】
また、食品生地を伸ばして平らにする工程が、産業レベルで行われる場合、生産にかかる時間は、利益と反比例する指標であり、したがって、可能な限り抑えなければならない。
【0020】
そのため、近年、食品生地を伸ばすための業務用自動機の使用が確立されてきた。
【0021】
既知の生地用延伸機の一例として、一つ、あるいは間の間隔を調節可能な二本以上のローラーを備えたものがあり、生地の塊はそのローラー間に挿入される。
【0022】
ローラー間に塊がスムーズに入るように、前もって塊を圧縮しなければならず、その後、生地はローラー間を通って徐々に薄くなる。
【0023】
残念ながら、こうした機械には、生地を機械に通した後であっても、手作り感のある仕上がりのため、また、具材をのせる前に空気を取り込むために、伸ばした生地を手で仕上げなければならないというデメリットがある。
【0024】
上記のローラーを有する機械の例は、複数の傾斜したローラーと生地の塊をまるめるためのフックを備える。
【0025】
特に、第1ローラーが生地を伸ばし、その後、生地がフックの上に落ちて回され、その下にある第2ローラーまで、生地が案内される。
【0026】
こうして加工された生地は、ある程度の薄さを有する円形になる。
【0027】
不便なことに、この機械においても、仕上がりの質を担保するため、手による仕上げが必要である。
【0028】
また、この機械には、ナポリピッツァのような、端に厚みを持たせたピッツァ、いわゆる「クラスト」を作るのには向いていないというデメリットもある。
【0029】
もう一つのローラー機械の例として、平行に展開する複数のローラーを有するものがあり、これにより、生地を長方形に伸ばすことができる。
【0030】
不便なことに、こうした機械は円盤状の生地を作るのには適していない。この場合、作業者が、ローラー間において多方向に生地を回さなければならないからだ。
【0031】
さらに既知の種類の生地用延伸機としては、特許文献1に記載の生地用延伸機がある。この種の機械は、支持機構に垂直に取り付けられた軸を有し、その下端がラジアルアームに接続され、生地の塊が伸ばされる。さらに、軸を対称中心で回転させるよう設計された回転機構に機械的に連動していることで、該軸は、静止した面上で生地の塊を回転させることができる。
【0032】
しかしながら、残念なことに、この生地用延伸機もまた、手作り感のある、厚いクラストを持たせたピッツァを作るのには向いていない。
【0033】
先行技術における更なる生地用延伸機は、複数の延伸具を有する操作装置を備え、延伸具は、径方向に移動可能である。
【0034】
こうした生地用延伸機により、既に部分的に平らに伸ばされた生地の塊は、延伸具の下に配置されることで、生地の中に延伸具入れこむことができ、そこから径方向外側に向かう動きで、延伸具は引っ張りながら生地を伸ばすことができる。
【0035】
延伸具の径方向の動きは、延伸具に連動した可動手段が有する特定の構造的構成によって実現され、可動手段は、特に、一体的に回転するアクチュエータを備える。アクチュエータは、複数のらせん状スリットが形成された面を有する回転盤に接続している。
【0036】
複数の放射状スリットが形成された面を有するプレートを、回転盤の下にさらに備える。
【0037】
回転盤の回転、つまりそこに形成されたらせん状スリットの動きは、延長手段に連動したピンの動きにつながり、それにより、延伸具が連動する。
【0038】
実際、こうしたピンは、らせん状スリットおよび放射状スリットに配置されるため、盤が回転すると、放射状スリットの展開方向に合わせて、前述のピンがらせん状スリットに沿って変位する。これにより、プレート中央からその外端に向かって、延伸具が連動する。
【0039】
こうした生地用延伸機の欠点の一つ目として、延伸具の径方向の動きが、複雑な構造によって実現されたものであることが挙げられ、前述の機械の製造およびメンテナンスが、時間の経過とともに特に困難になる。
【0040】
前述の機械に関する他の欠点として、仕上がりの質が挙げられる。
【0041】
実際、円盤状の生地は、延伸具によって生地を引っ張ることで伸ばされ、延伸具が生地の中に埋まり、中央から外側に向けて生地の塊を部分的に移動させる。これにより、いわゆるクラストが形成される。
【0042】
これにより、厚みのある外端に仕上げることができるが、薄い中心部分は、少し引っ張っただけでも容易に破けてしまうため、ともすると、仕上がった時に穴が開いてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【文献】欧州特許出願公開第1129621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
本発明は、既述の制限・デメリットを全て取り除くことを目的とする。
【0045】
特に、本発明の目的は、作りやすく、維持しやすい食品生地を伸ばすための生地用延伸機を提供することにある。
【0046】
また、本発明の目的は、生地を圧縮するための既出の作業を含む必要なく、前述の生地用延伸機によって、生地の塊から、平坦状の食品生地を得ることにある。
【0047】
さらに、本発明の目的は、人の手で作る際の動きとほぼ同様の動きによって、食品生地を伸ばす機械を提供することにあり、可能な限り手作り感のある仕上がりを得ることにある。
【0048】
本発明の目的はまた、前述の機械によって製造した製品が、その後の工程において、人の手による仕上げを必要としないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0049】
これらの目的は、独立項に記載された、食品生地を伸ばすための生地用延伸機を実現することによって果たされる。
【0050】
この機械の更なる特徴に関しては、従属項において述べる。
【0051】
前述の目的は、その(後述される)利点とともに、本発明の好ましい実施形態の説明の中で強調される。その際、添付の図表を参照しながら、発明を制限することを目的としない例を挙げる。図表は、下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態による生地用延伸機の軸測図である。
図2a図2aは、成形要素が中心位置にある時に、図1に示した、本発明の機械が備える生地延伸部を上から見た軸測図である。
図2b図2bは、成形要素が中心位置にある時に、図1の生地延伸部を、下から見た軸測図である。
図2c図2cは、成形要素が延長位置にある時に、図1に示した、本発明の機械が備える生地延伸部を上から見た軸測図である。
図2d図2dは、成形要素が延長位置にある時に、図1の生地延伸部を、下から見た軸測図である。
図3図3は、成形要素が延長位置にある時に、図2cおよび図2dの生地延伸部を上から見た図である。
図4図4は、図3の生地延伸部を、切断線IV-IVから見た断面側図である。
図5図5は、図3の生地延伸部を下から見た図である。
図6図6は、成形要素が中心位置にある時に、図2aおよび図2bの生地延伸部を上から見た図である。
図7図7は、図6の生地延伸部を、切断線VII-VIIから見た断面側図である。
図8図8は、図6の生地延伸部を下から見た図である。
図9図9は、本発明の成形体を下から見た軸測図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の対象である生地用延伸機を、全体に符号1を付して図1に示した。
【0054】
本発明の生地用延伸機1は、特に、ピッツァ、ラップサンド、フォカッチャ、アラブパンやピタパンといった食品の生地を伸ばすのに使用される。
【0055】
特に、こうした生地用延伸機1は、業務用やレストラン等、職人の手によって伸ばされた時と同等の質を担保しながら、生地の塊を素早く伸ばす必要がある状況において、ピッツァ用の生地を伸ばすのに有効である。
【0056】
本発明の生地用延伸機1は、縦軸Yに沿ったフレーム11を備え、フレーム11は、二つの部分、すなわち、第1上部12および第2上部13を有することが好ましく、第1上部12および第2上部13は、前述の縦軸Yにおいて互いに同軸である。
【0057】
伸ばそうとしている生地の塊を載置する支持台14は、フレーム11、特に、第2上部13に接続する。支持台14の上部に、縦軸Yに沿って同軸に配置された生地延伸部2は、第1上部12に接続する。支持台14を生地延伸部2に向けて、あるいは生地延伸部2から離すように移動させる可動手段15はまた、フレーム11に連動する。
【0058】
特に、図1に示すように、生地延伸部2は、少なくともその一部が第1部12内に配置され、一方、支持台14の可動手段15は、その一部が第2部13内に配置されることが好ましい。
【0059】
必須ではないものの、好ましくは、生地延伸部2および/または可動手段15は、図示しない一つあるいは二つ以上のスクレーパー要素を備える。スクレーパー要素により、小麦粉や固体、液体といったその他異物が、第1部12および第2部13に入り込むことを防ぎ、この二つの部分の中に配置された機構を清潔に保ち、機能を損なわないようにすることができる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、可動手段15は、それ自体は既知の種類のものであり、図1に示すように、生地延伸部2に向けて支持台14を上げる伸縮自在の軸15aを備える。こうした可動手段15は、種々に構成することができ、詳細に後述するように、生地延伸部2と効果的に連動することが好ましい。
【0061】
可動手段15は、縦軸Yに沿った支持台14の位置を特定および/またはその位置の信号を送信するために、センサを備えることができ、この構成は、本発明の実施例の一つに含まれる。
【0062】
それに限定されるものではないが、一例として、前述の可動手段15は、伝動ギアモータを備える。伝動ギアモータは、回転運動を直線運動に変えながら偏心連結ロッド機構に伝え、伸縮自在の軸15aによる支持台14の上昇または下降の動きを制御する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、支持台14は、軸Yに沿った垂直方向に移動する。しかしながら、水平方向あるいは、水平方向・垂直方向の両方に移動することができ、この構成は、本発明の他の実施形態に含まれる。
【0064】
本発明の生地延伸部2は、成形体21を備え、成形体21は、伸ばそうとしている生地の塊と接触する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、成形体21は、複数の突出要素21aを有する成形プレートを備える。各突出要素21aは、支持台14に対向する、外側に凸の輪郭を有し、図9に示すように、伸ばそうとしている生地の塊と接触する。
【0066】
成形体21は、伸ばそうとしている生地の塊に圧力をかけるよう構成され、パン生地に含まれる発酵ガスが最適な形で広がる点において優位である。
【0067】
また、突出要素21aは、職人の指の形を再現している点で優位であり、そのため、成形体21が生地の塊にかける圧力は、職人の指の動きを模して、生地の塊を伸ばす。よって、手作りのような仕上がりに限りなく近くなる。
【0068】
しかし、こうした突出要素21aは、前述の形とは異なる形を有していてもよく、この構成は、本発明の他の実施形態に含まれる。
【0069】
また、この成形体21は、突出要素21aのかわりに、平滑な、もしくは粗い平面を有していてもよく、この構成も排除されるものではない。
【0070】
本発明の生地延伸部2に説明を戻す。生地延伸部2はまた、プレート22を備える。プレート22には、複数の放射状溝22aが形成され、そのそれぞれが、生地の塊を伸ばす成形要素3を摺動可能に収容する。
【0071】
こうしたプレート22は、固定プレートであることが好ましい。
【0072】
また、好ましくは、前述のプレート22はさらに、複数の貫通孔を有する。それらは、互いに等しい、あるいは異なる寸法を有し、各要素は貫通孔を通ることができるようになっている。それにより、要素は、成形体21の変位を促すようになっているが、それについては後ほど詳述する。
【0073】
生地延伸部2はさらに、動的手段4を備え、動的手段4は、縦軸Yに向けて、あるいは縦軸Y自体から離れるように、放射状溝22aに沿って成形要素3を動かすために採用される。
【0074】
特に、図4および図7の断面からも分かるように、動的手段4は、ねじ軸41を備える。ねじ軸41の一端41aは、効果的に動力手段5に接続され、その他端41bは、前述のプレート22に回転可能に連動する。
【0075】
さらに、動的手段4は、中芯部42を備える。中芯部42は、ねじ軸41に固定されるナット42aと複数のロッド43を備える。各ロッド43の一端43aは、成形要素3の一つと丁番で結合され、その他端43bは、中芯部42と丁番で結合される。
【0076】
必須ではないものの、好ましくは、動的手段4はさらに、縦軸Yに沿った中芯部42の位置を特定および/またはその位置の信号を送信するために、センサを備える。ことができ、この構成は、本発明の実施例の一つに含まれる。
【0077】
こうした動的手段4は、複数のロッド43をコンパス運動させ、縦軸Yに向けて、あるいは縦軸Y自体から離れるように、成形要素3を結果的に変位させる点で優位である。
【0078】
ここで、コンパス運動とは、その支点を中芯部42に置くコンパスのロッドの動きと同化可能な動きを意味することが理解されよう。
【0079】
詳細には、動力手段5がねじ軸41を回転すると、ねじ軸41の回転方向と、プレート22の放射状溝22aの展開方向に沿った、各ロッド43の端43aおよびそこに丁番で結合された成形要素3の結果的な動きに応じて、中芯部42を、下方向または上方向に変位させる。これによりコンパス運動が生まれる。
【0080】
本発明における、生地延伸部2の特定の幾何学構成、およびコンパス運動の特徴は、速度の変化をつけて成形要素3を移動させることができる点で優位である。
【0081】
詳細には、実際、特定のロットシステム43により、成形要素3の半径方向の速度は、プレート22の端に近づくにつれ、徐々に遅くなる。
【0082】
こうした特徴により、先行技術における生地用延伸機と比較して、生地の塊のより繊細な成形が可能となり、さらに、伸ばされた生地の塊が破けたり、過度に圧力がかかったりすることが防がれる。
【0083】
図4および図7に示すように、本発明の好ましい実施形態によれば、各成形要素3は、摺動体31を備える。摺動体31は、対応するプレート22の放射状溝22aに配置され、第1部31aと第2部31bとを有する。第1部31aは、プレート22の上に配置され、ロッド43の一つと丁番で結合される。第2部31bは、プレート22の下に配置され、生地の塊を伸ばす成形体32と連動する。
【0084】
図2bおよび図2dからもさらに明らかなように、成形体32はL字形の輪郭を有し、長辺322および短辺321を有する。長辺322は、摺動体31の第2部31bと連動し、短辺321は、少なくともその一部が生地の塊に埋まるようになっており、これについては、下記でさらに詳述することとする。
【0085】
しかしながら、成形要素3は、上述した構成とは異なる構成を有していてもよく、前述した方法によって、中芯部42が下降し、複数のロッド43が延長した際に、連動して、伸ばそうとしている生地の塊を伸ばすことを促進するものを、少なくとも一部に備えている。この構成は、本発明の他の実施形態に含まれる。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、図4および図7に示すように、生地延伸部2はまた、成形体21を変位させる手段を備える。該手段は、少なくとも一つのスラストピン23を備え、その一端23aは、中芯部42に連動し、他端23bは、中芯部42が下降した際、成形体21と接触し、垂直方向Yに沿って、支持台14に向けて下に押す。
【0087】
特に、成形体21の変位は、前述のスラストピン23に接触することで促進される。ラストピン23が、中芯部42が下降している間に、プレート22の貫通孔の一つを通り、成形体21を支持台14に向けて押す。
【0088】
こうした成形体21の変位動作は、好ましくはピン241を備える弾性部24によって制御されている点で優位である。ピン241は、プレート22を貫通して配置され、成形体21に連動する一端241aを有する。
【0089】
操作ヘッドは、ピン241の他端241bにあり、弾性要素242は、ピン241の外側で、前述の操作ヘッドとプレート22の間に配置される。
【0090】
図7の断面で示されるように、成形要素3が中心位置にある、つまり、縦軸Y近くのプレート22の略中心にある際、中芯部42は、端23bが解放状態のスラストピン23を有するプレート22よりも上がった状態にある。
【0091】
さらに、この位置で、弾性部24の弾性要素242は、静止して、操作ヘッドに弾性力を加える。これにより、例えば、成形体21の重さに比例して、ピン241および成形体21を上昇位置で連動させる。
【0092】
ここで「上昇位置」とは、成形体21が支持台14に対向するプレート22の下面に近づく位置であることが理解される。
【0093】
好ましくは、こうした上昇位置において、プレート22は、前述の成形体21と接する部分を、その下面の少なくとも一部に有する。
【0094】
動作としては、ねじ軸41が動力手段5によって回転すると、中芯部42のナット42aは、中芯部42をプレート22に向けて下に変位させスラストピン23が成形体21に接触するまで、スラストピン23を貫通孔内に転置させる。スラストピン23の端23bは、成形体21の上面に接触し、成形体21の上面を支持台14に向けて押し付けながら、伸ばそうとしている生地の塊を押し、そこで静止する。
【0095】
生地の塊が押されると、ねじ軸41の回転方向が反転し、それにより、中芯部42が縦軸Yの方向に沿って上昇し、端23bが成形体21から解放される位置まで、スラストピン23を移動させる。
【0096】
結果として、スラストピン23を成形体21に押し込み終わると、弾性部24の弾性要素242は、静止状態に戻り、そして成形体21が上昇位置に戻る。
【0097】
伸ばそうとしている生地の塊を伸ばす際、成形体21が下降動作に入る。これにより、本発明の生地用延伸機1は、先行技術における機械のように、部分的に伸ばす動作を必要とすることなく、生地の塊を伸ばすことができる点で優位である。
【0098】
こうした利点は、ピッツァのような、伸ばそうとしている生地の塊が一般的に略円形を有するものを作る際、特に重要である。
【0099】
生地用延伸機1の操作は、本発明の好ましい実施形態による生地用延伸機1を使用した、生地の塊を伸ばす方法の記載において、より明確に説明されるものである。生地用延伸機1は、変更例を含み、それらもまた、本発明を構成するものとみなされるべきである。
【0100】
この方法は、例えば、ピッツァ、ラップサンド、フォカッチャ、アラブパンやピタパンといった製品を作るための食品生地の塊を伸ばすのに、特に適している。
【0101】
特に、この方法は、まず、伸ばす生地の塊を支持台14上に配置することを含む
【0102】
この工程は職人の手によって、あるいは当業者にとって既知の載置装置を利用して自動的に行われる。
【0103】
伸ばそうとしている生地の塊を支持台14に配置したら、生地の塊が、少なくともその一部が、成形体21に押されるまで、支持台14を垂直方向Yに沿って生地延伸部2に向かって上昇させる。
【0104】
図2c、図2d、および図3乃至図5に例示して前述したように、複数のロッド43が延長位置に配置されるような位置に生地延伸部2がある時、つまり、成形要素3がプレート22の周囲に配置され、中芯部42のスラストピン23と接触することでスラスト力が働き、成形体21が下降位置にある時に、こうした上昇操作が行われる。
【0105】
生地の塊が成形体21上に押されると、突出要素21aが生地の塊を押す点で、優位性がある。これにより、パンの発酵ガスが塊内に行きわたるようになり、さらに職人の指の形を再現し、職人の指の動きを模し、手作りした時と同じような質感となるよう生地の塊を伸ばす。
【0106】
この押圧動作に続いて、本発明の方法は、支持台14を、成形体21に対し垂直方向Yに沿って下降させることを含み、さらに、この操作に続いて、あるいは同時に、ねじ軸41の回転によって、中芯部42を上昇させる。これにより、中芯部42と丁番で結合される、複数のロッド43の端43bも上昇し、閉じる方向に向かうコンパス運動が生まれる。その時、成形要素3丁番で結合される、前述のロッド43の端43aが、縦軸Yに向かって、プレート22の放射状溝22aに沿って摺動する。
【0107】
成形要素3を縦軸Yの略中心位置に持つ生地用延伸機1の構成は、図2a、図2bおよび図6乃至図8に例示している。
【0108】
本発明の方法に説明を戻す。該方法は、続いて、成形要素3が少なくとも部分的に生地の塊に入り込むまで、垂直方向Yに沿って生地延伸部2に向かって支持台14を上昇させることを含む。
【0109】
好ましくは、成形要素3の成形体32が有する短辺321が、少なくとも部分的に、伸ばそうとしている生地の塊に入り込むまで、この上昇を行う。
【0110】
続いて、中芯部42が、ねじ軸41が回転することにより下降する。これにより、複数のロッド43が延長され、成形要素3がプレート22の周囲に向かって移動する。そして、各成形要素3の成形体32が、プレート22の周囲に向かって径方向に、生地の塊の一部を移動させ、結果、この生地の塊を、好ましくは円盤状の生地となるよう、伸ばす。
【0111】
より好ましくは、こうした成形要素3の径方向の動きは、生地の塊の一部がプレート22の周囲に寄り、伸ばされた生地の塊の周長において、厚みのある生地端を形成するよう、予め設定されている。
【0112】
こうした厚みのある端を形成することは、外側に生地クラストを有する、いわゆるナポリ風ピッツァを作る際、生地の塊を伸ばす工程において、特に好都合である。
【0113】
好ましくは、生地の塊が伸ばされた後、該方法は、さらに、支持台14を下降させる動作を含む。これにより、職人あるいは自動装置が、伸ばされた生地の塊を取り出して、完成品を作るための他の作業、例えば、具をのせたり、焼いたり、梱包したりといった作業に直接取り掛かることができる。
【0114】
特に、支持台14を昇降・下降させる操作は、可動手段15によってなされることが好ましい。
【0115】
したがって、上記によれば、本発明の生地用延伸機は、提示した目的を全て果たしている。
【0116】
特に、生地延伸部の単純なロッド構成により、食品生地を伸ばすための生地用延伸機を、製作しやすく、メンテナンスしやすいものとする、という目的を果たすことができる。
【0117】
また、本発明の生地用延伸機により、食品生地を平坦状にすることが可能となり、生地自体を圧縮するという従来の工程を含むことなく、比較的コンパクトにまとまった生地の塊から、例えば、略円形のピッツァ生地に伸ばすことができる。
【0118】
さらに、成形要素および成形体により、本発明の生地用延伸機は、手作りした際の実際の動きを模した動きにあわせて、食品生地を伸ばす。そのため、可能な限り手作りに近い仕上がりとなる。
【0119】
最後に、本発明の生地用延伸機を使用して、この生地を伸ばす方法によって得られた製品は、その後に手作業での仕上げを必要とせず、時間の節約につながる。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9