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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 3/02 20060101AFI20220909BHJP
   F28F 25/04 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
F28D3/02
F28F25/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022007050
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2022-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509340285
【氏名又は名称】株式会社スイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】畑元 浩
(72)【発明者】
【氏名】光安 忠司
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-079985(JP,A)
【文献】特許第6902582(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/189887(WO,A1)
【文献】実開昭57-055898(JP,U)
【文献】特開平06-300469(JP,A)
【文献】実公昭61-019341(JP,Y2)
【文献】実開平02-007472(JP,U)
【文献】実開昭61-192198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 3/00 - 5/02
F28F 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、前記装置本体内に収納された熱交換ユニットと、前記装置本体の上部に配置された貯留槽と、を有し、前記熱交換ユニットは伝熱媒体を流通させる伝熱媒体流通管を備え、前記貯留槽内に貯留された被熱交換流体を前記熱交換ユニットの前記伝熱媒体流通管に向けて自重で滴下させ、該滴下した被熱交換流体と前記伝熱媒体流通管を流通する伝熱媒体との間で熱交換を行う熱交換装置であって、
前記貯留槽内における基準水位を超えた前記被熱交換流体を前記貯留槽外に排出するオーバーフロー流路と、該オーバーフロー流路から流出した前記被熱交換流体を前記貯留槽から滴下する前記被熱交換流体の滴下経路に導く案内部材と、を有し、
前記案内部材が、前記貯留槽における前記被熱交換流体の各滴下位置を平面上で連ねた場合の周回形状に対応した外周形状を有している
ことを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記案内部材が、前記オーバーフロー流路から流出した前記被熱交換流体を面状に拡げて前記滴下経路に導く形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記案内部材が、前記案内部材から前記滴下経路への前記被熱交換流体の落下が前記被熱交換流体の前記貯留槽からの滴下を邪魔しないように配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記貯留槽が前記装置本体に着脱自在に設けられているとともに、前記案内部材が前記貯留槽側と前記熱交換ユニット側とのいずれか一方側に位置決めされて固定され、前記装置本体と前記貯留槽との間には、前記周回形状、前記案内部材及び前記熱交換ユニットの位置決めを行う位置決め構造が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却又は加熱の対象である被熱交換流体と配管内を流通する伝熱媒体(冷媒又は熱媒)との間で熱交換を行う熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被熱交換流体を自重によって伝熱媒体流通管に向けて滴下させ、この被熱交換流体を伝熱媒体流通管の外表面に沿って液膜状に流下させながら、伝熱媒体流通管を流通する伝熱媒体(冷媒や熱媒)と被熱交換流体との間で熱交換させて被熱交換流体を冷却または加熱する流下液膜式の熱交換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ケース(装置筐体)の上部に被熱交換流体を貯留する貯留槽を設け、ケースの側壁に開閉可能な蓋部材を設けた熱交換装置が提案されている。この熱交換装置では、貯留槽の底部に被熱交換流体を一定流量で滴下させる滴下孔が形成されており、蓋部材には伝熱媒体を流通させる配管が上下方向に長円形状に積層状態に巻き回しされた熱交換ユニットが一体に固定されている。蓋部材を開けることにより熱交換ユニットをケースの外部に引き出すことができ、清掃やメンテナンスの作業を効率よく行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2017/130898号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の熱交換装置では、装置筐体の上部に被熱交換流体を一定量貯留することが可能な上面開放型の貯留槽を備えた構成が多い。貯留槽に作業担当者が手作業であるいは自動供給機構により被熱交換流体を供給するようになっているが、作業担当者の不注意や自動供給機構の不具合等の不測の要因により供給量が過多となることや、又は貯留槽底部にある滴下孔が詰まることにより滴下量が減少するという懸念があった。オーバーフローが生じると、熱交換処理がなされない被熱交換流体が生じるため被熱交換流体の供給量に対する熱交換の処理率が低下する。また、装置外に流出した被熱交換流体により装置周辺が汚れ、清掃作業が必要となって余計な手間を要する。また、貯留槽を清掃するときには、貯留槽を斜めに傾けてブラシ等で詰まり原因の異物を貯留槽外に排出する作業が必要となるため、清掃に手間を要するという問題があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、オーバーフロー時に被熱交換流体の熱交換率向上を図ることができるとともに、装置周辺の汚れの発生を防止でき、貯留槽内の清掃が容易になり、熱交換率の維持を図ることができる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の熱交換装置は、装置本体(4)と、装置本体(4)内に収納された熱交換ユニット(6)と、装置本体(4)の上部に配置された貯留槽(8)と、を有し、熱交換ユニット(6)は伝熱媒体(WT)を流通させる伝熱媒体流通管(28)を備え、貯留槽(8)内に貯留された被熱交換流体(CF)を熱交換ユニット(6)の伝熱媒体流通管(28)に向けて自重で滴下させ、該滴下した被熱交換流体(CF)と伝熱媒体流通管(28)を流通する伝熱媒体(WT)との間で熱交換を行う熱交換装置(2)であって、貯留槽(8)内における基準水位(L)を超えた被熱交換流体(CF)を貯留槽(8)外に排出するオーバーフロー流路(24)と、該オーバーフロー流路(24)から流出した被熱交換流体(CF)を貯留槽(8)から滴下する被熱交換流体(CF)の滴下経路(DR)に導く案内部材(26)と、を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る熱交換装置によれば、例えば作業担当者の不注意によって貯留槽への被熱交換流体の供給量が過剰となったり、又は貯留槽底部にある滴下孔が詰まることにより滴下量が減少しても被熱交換流体が装置外へ溢れて装置周辺を汚すことがなく、被熱交換流体の供給量に対する処理効率を向上させることができる。また、貯留槽への被熱交換流体の供給における作業担当者の注意力を低減できて作業性の向上を図ることができる。
【0009】
また、上記の熱交換装置では、貯留槽(8)に被熱交換流体(CF)を滴下させる部位とは異なる部位に排水口(22)が形成されているとともに、オーバーフロー流路(24)が管状に形成されて排水口(22)に着脱自在に設けられていることを特徴とする。これによれば、食品分野などで特に厳しい清掃が容易となる。オーバーフロー流路を取り外して排水口に蓋をすれば、通常の滴下構成のみとすることができ、必要に応じて仕様を変えることができる。
【0010】
また、上記の熱交換装置では、案内部材(26)が、オーバーフロー流路(24)から流出した被熱交換流体(CF)を面状に拡げて滴下経路(DR)に導く形状を有していることを特徴とする。これによれば、過剰に供給された被熱交換流体を熱交換処理に回すことができ、無駄のない熱交換処理を行うことができる。
【0011】
また、上記の熱交換装置では、案内部材(26)が、貯留槽(8)における被熱交換流体(CF)の各滴下位置を平面上で連ねた場合の周回形状(36)に対応した外周形状を有しているとともに、案内部材(26)から滴下経路(DR)への被熱交換流体(CF)の落下が被熱交換流体(CF)の貯留槽(8)からの滴下を邪魔しないように配置されていることを特徴とする。これによれば、無駄のない熱交換処理の精度を一層高めることができる。
【0012】
また、上記の熱交換装置では、貯留槽(8)が装置本体(4)に着脱自在に設けられているとともに、案内部材(26)が貯留槽(8)側と熱交換ユニット(6)側とのいずれか一方側に位置決めされて固定され、装置本体(4)と貯留槽(8)との間には、周回形状(36)、案内部材(26)及び熱交換ユニット(6)の位置決めを行う位置決め構造(20)が設けられていることを特徴とする。これによれば、滴下による熱交換処理と案内部材を介した過剰供給の被熱交換流体の熱交換処理を精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オーバーフロー時に被熱交換流体の熱交換率の向上を図ることができるとともに、装置周辺の汚れの発生を防止でき、貯留槽内の清掃が容易になり、熱交換率の維持を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る熱交換装置を示す斜視図である。
図2図1のV-V線での断面斜視図である。
図3図1で示した熱交換装置の分解斜視図である。
図4図1で示した熱交換装置を反対側から見た斜視図である。
図5図1で示した熱交換装置の、貯留槽を取り外した状態の平面図である。
図6図1のV-V線での断面図である。
図7図1で示した熱交換装置の位置決め構成を示す図で、(a)は貯留槽の底面における平面図、(b)は図1のV-V線での断面を拡大した要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る熱交換装置2は、矩形のボックス形状を有する装置本体4と、装置本体4内に収納された熱交換ユニット6と、装置本体4の上部に配置された上面開放型の貯留槽8と、を有し、熱交換ユニット6は伝熱媒体(後述)を流通させる伝熱媒体流通管28を備える。熱交換装置2は、貯留槽8内に貯留された被熱交換流体(後述)を熱交換ユニット6の伝熱媒体流通管28に向けて自重で滴下させ、該滴下した被熱交換流体と伝熱媒体流通管28を流通する伝熱媒体との間で熱交換を行う装置である。
【0017】
装置本体4は、外側板10と内側板12の二重構造を有しており、幅方向(矢印X方向)における外側板10の左側面10aと右側面10b(図2図4参照)には、切欠き凹部10a-1、10b-1が形成されている。内側板12の左側面12aには奥行方向(矢印Y方向)に間隔をおいて伝熱媒体の導入口14と排出口16とが並置されており、これらの外方への突出が切欠き凹部10a-1によって許容されている。装置本体4の左側面の下方には、熱交換処理済みの被熱交換流体を外部に排出するための被熱交換流体排出口18が外側板10と内側板12とを貫通して形成されている。
【0018】
図2に示すように、熱交換ユニット6は内側板12に保持されており、内側板12を熱交換ユニット6と共に引き上げて向きを180°変え、切欠き凹部10b-1側に導入口14と排出口16とを配置することにより、設置現場の配管状況の変化に任意に対応できるようになっている。装置本体4の下方の4隅には、高さ調整のためのアジャスタ19が設けられている。
【0019】
図3及び図4に示すように、貯留槽8は装置本体4に着脱自在に設けられており、装置本体4の上面に載置するだけで位置決めを含むセッティングが完了する構成となっている。具体的に説明すると、矩形の容器状をなす貯留槽8の上端には水平に突出する載置縁8aが外周全体に亘って形成されており、さらに幅方向の両側には載置縁8aから水平方向外側に突出する位置決め片8b、8cが形成されている。内側板12の左側面12aと右側面12bの上端には、位置決め片8b、8cが嵌合する位置決め凹部12c、12dが形成されており、奥行方向の両側には装置本体4の内方へ水平に突出する載置受け片12e、12fが折り曲げて形成されている。載置受け片12e、12fは内側板12の左側面12aと右側面12bの上端(位置決め凹部12c、12dを除く)よりも載置縁8aの略厚み分下がっている。
【0020】
位置決め片8b、8cを位置決め凹部12c、12dに嵌合して載置することにより、幅方向両側の載置縁8aが載置受け片12e、12fに当接して貯留槽8は装置本体4の上部に安定に載置される。位置決め片8b、8cと位置決め凹部12c、12dとの嵌合により、装置本体4に対する貯留槽8の奥行方向の位置ずれが規制され、載置縁8aの幅方向における両側の端面が内側板12の左側面12aと右側面12bの内面に当接することにより、装置本体4に対する貯留槽8の幅方向の位置ずれが規制される。貯留槽8側に形成された位置決め片8b、8c及び載置縁8aと、装置本体4側に形成された位置決め凹部12c、12d及び左側面12aと右側面12bは位置決め構造20を構成している。
【0021】
貯留槽8の底面8dには、被熱交換流体を滴下させる小径の滴下孔8eが円を描くように複数形成されている。また、被熱交換流体を滴下させる部位(滴下孔8eの形成位置)とは異なる部位である底面8dの中心には、排水口22が形成されており、排水口22にはオーバーフロー流路としてのオーバーフロー管24が着脱自在に設けられている。オーバーフロー管24は、貯留槽8内における基準水位(後述)を超えた被熱交換流体を貯留槽8外に排出するもので、管本体24aと、下方への位置ずれを阻止するとともに排水口22へ挿入した後の水密状態を保持するシール機能を呈するフランジ部24bとを有している。
【0022】
図2に示すように、オーバーフロー管24の下方には、オーバーフロー管24から流出した被熱交換流体を貯留槽8から滴下する被熱交換流体の滴下経路(後述)に導く案内部材としての円形平板からなる案内板26が設けられている。熱交換ユニット6は、伝熱媒体を流通させる伝熱媒体流通管28と、伝熱媒体流通管28の両端に接続された導入口14と排出口16とを有している。伝熱媒体流通管28は熱伝導率の高い配管(パイプ)を螺旋状に上下方向に積層した構成を有し、その下端側(上流側)は装置本体4の上方に延ばされて導入口14に接続され、上端側(下流側)は排出口16に接続されている。すなわち、導入口14から導入された伝熱媒体は伝熱媒体流通管28を下側から上側に向かって流れ、排出口16から装置本体4の外部に出る流通経路となっている。伝熱媒体流通管28の積層構成は熱交換部29としてなる。伝熱媒体流通管28は、内部に水などの冷媒や蒸気などの熱媒を流通させるものであり、本実施形態では冷媒として水道水を流通させている。伝熱媒体流通管28の材質は金属部材が好ましく、ステンレスや銅、銅合金などが望ましい。
【0023】
熱交換ユニット6は図2及び図5に示すように、内側板12に固定された籠状の枠体30に上方に引き出し可能に収容・保持されている。枠体30は複数の角材30aを幅方向、奥行方向及び上下方向に配置して組み付けた構成を有している。案内板26は複数の固定片26aを有しており、熱交換部29の上方に位置するようにボルト32で枠体30に固定されている。したがって、貯留槽8を外した後に、装置本体4から熱交換ユニット6を引き出すことが可能となり、清掃が容易となる。図5に示すように、案内板26は、固定片26aを除いた部分が貯留槽8における被熱交換流体の各滴下位置(厳密には滴下孔8eの中心位置)を平面上で連ねた場合の周回形状(仮想円)36に対応した外周形状を有している。
【0024】
図6に示すように、熱交換部29の上部の内側には、ボルト32で案内板26と共に固定された爪片34が引っ掛けられており、装置本体4内での熱交換部29のガタツキが防止されている。図7(a)に示すように、案内板26の外周縁と熱交換部29の内周縁及び外周縁及び滴下孔8eの中心位置を平面上で連ねた場合の仮想円36は貯留槽8の底面8dの中心Oを中心とする同心円となっている。案内板26は予め熱交換部29に対して位置決めされた状態で固定されており、貯留槽8を装置本体4の上部に載置すると、上述の位置決め構造20により、仮想円36、案内板26及び熱交換ユニット6の位置決めが自動的に同心円状になされるようになっている。
【0025】
図7(b)に示すように、貯留槽8に供給された被熱交換流体CFの量が基準水位Lを超えると、超えた分の被熱交換流体CFはオーバーフロー管24内に流入し、オーバーフロー管24の下方に位置する案内板26上に落下する。落下した被熱交換流体CFは平らな案内板26で水平面の全方位に面状に拡げられ、その外周縁から落下し、滴下孔8eから落下する被熱交換流体CFの通常の滴下経路DRに合流する(矢印IR)。すなわち、案内板26は、オーバーフロー管24から流出した被熱交換流体CFを面状に拡げて滴下経路DRに導く形状を有している。
【0026】
滴下孔8eから滴下する被熱交換流体CFは、伝熱媒体流通管28の水平方向の幅w1(図7(a)参照)のほぼ中央に落下し、伝熱媒体流通管28の外表面に沿って液膜状に下方に流れ落ちる。その過程で高温の被熱交換流体CFと伝熱媒体流通管28を流れる水道水WTとの間で熱交換が行われ、被熱交換流体CFの温度が低減される。幅w1の中央は仮想円36にほぼ一致する。図7(b)では被熱交換流体CFが伝熱媒体流通管28の表面に沿って落ちる状態を下方側では直線矢印で表示して省略している。また、案内板26の固定構造等も省略し、伝熱媒体流通管28の断面を一部のみ表示している。
【0027】
図7(b)に示すように、案内板26の外周縁と伝熱媒体流通管28の内周との間の水平方向の隙間w2と、熱交換部29の上面と案内板26との間の上下方向の隙間tは、案内板26からの滴下経路DRへの被熱交換流体CFの落下が、被熱交換流体CFの貯留槽8からの滴下を邪魔しないように設定されている。隙間w2と隙間tは、被熱交換流体の粘性等の条件の違いによって変化する。
【0028】
案内板26としては、上記機能を満足することを条件に、平板の他に凹面状や凸面状のもの、錐体状や錘台状、半球状のものを採用することができる。また、本実施形態ではオーバーフロー管24を貯留槽8に着脱自在に設ける構成としたが、貯留槽8に一体に構成してもよい。
【0029】
上記構成による熱交換装置4によれば、従来の滴下孔8eから被熱交換流体を滴下させるだけの構成に比べて、オーバーフローした分の被熱交換流体を熱交換処理している間は伝熱媒体流通管28に接触する被熱交換流体の量が増えるので熱交換率が低くなる。しかしながら、熱交換率が低い状態は短時間で解消され、オーバーフローによる装置周辺の汚損を回避できる点、被熱交換流体の供給量に対する熱交換率の低下を抑制できる点、さらには作業担当者の不注意による装置周辺の汚れを解消できる点、等を勘案すれば、メリットが大きい。また、貯留槽8への被熱交換流体の供給における作業担当者の注意レベルを低減することができ、被熱交換流体の供給作業の簡易化に寄与することができ、貯留槽8内の清掃が容易になって熱交換率の維持を図ることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態ではオーバーフロー流路24を貯留槽8の底面8dの中心に配置する構成としたが、これに限定されず貯留槽8の外周側に設ける構成としてもよい。また、案内板26は貯留槽8側に位置決めして一体に固定する構成としてもよい。すなわち、案内板26は貯留槽8側と熱交換ユニット6側とのいずれか一方側に位置決めされて固定されていればよい。また、上記の周回形状には円形の他に角形の形状も含まれる。また、上記実施形態では被熱交換流体を冷却する例を説明したが、加熱する場合にも同様に実施することができる。さらにいえば、適度な温度調整が必要な熱交換装置として広範な分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
2 熱交換装置
4 装置本体
6 熱交換ユニット
8 貯留槽
18 被熱交換流体排出口
20 位置決め構造
22 排水口
24 オーバーフロー管(オーバーフロー流路)
26 案内板(案内部材)
28 伝熱媒体流通管
29 熱交換部
36 仮想円(周回形状)
CF 被熱交換流体
DR 滴下経路
L 基準水位
WT 水道水(伝熱媒体)
【要約】
【課題】オーバーフロー時に被熱交換流体の熱交換率の向上を図ることができるとともに、装置周辺の汚れの発生を防止でき、貯留槽内の清掃が容易になり、熱交換率の維持を図ることができる熱交換装置を提供する。
【解決手段】装置本体4の上部に配置された貯留槽8の底面8dには複数の小径の滴下孔8eが形成されているとともに、中央には排水口22が形成され、オーバーフロー管24が着脱自在に設けられている。熱交換部29の上面側にはオーバーフロー管24から流出した被熱交換流体を、滴下孔8eから滴下する被熱交換流体の滴下経路に導く案内板26が配置されている。貯留槽8に被熱交換流体が過剰に供給された場合でも過剰分がオーバーフロー管24に流入して案内板26で面状に拡げられて通常の滴下経路に導かれ、無駄なく熱交換処理されるとともに、装置周辺の汚れの発生も防止される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7