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特許7138390情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20220909BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20220909BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q50/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022110824
(22)【出願日】2022-07-08
【審査請求日】2022-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521212786
【氏名又は名称】株式会社TOWING
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】西田 亮也
(72)【発明者】
【氏名】西田 宏平
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-318375(JP,A)
【文献】特開2009-277105(JP,A)
【文献】特開2004-185400(JP,A)
【文献】特開2005-267391(JP,A)
【文献】特開2021-111067(JP,A)
【文献】特開2020-95457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンクレジットの需要量を取得する需要量取得部と、
カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる手法割当部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
1又は複数のカーボンクレジット創出者に対する1又は複数の前記創出手法の実施依頼を作成する依頼作成部と、
1又は複数のカーボンクレジット創出者が実施を決定した1又は複数の前記創出手法及びその範囲である1又は複数の確定手法を取得する確定手法取得部と、
1又は複数の前記確定手法に基づいて、当該確定手法によって創出できるカーボンクレジットの総量である供給総量を算出する供給総量算出部と、をさらに備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記供給総量算出部は、1又は複数の前記確定手法を導入することによる温室効果ガスをあらかじめ定められた一つの温室効果ガスである基準ガスに換算した場合の削減量から、当該確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量であって前記基準ガスの排出量に換算した排出量を減算することで、前記供給総量を算出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記供給総量算出部は、1又は複数の前記確定手法を導入することによる温室効果ガスをあらかじめ定められた一つの温室効果ガスである基準ガスに換算した場合の削減量から、当該確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量であって前記基準ガスの排出量に換算した排出量を減算した上で、さらに、1又は複数の前記確定手法を導入する前の温室効果ガスの排出量であって前記基準ガスの排出量に換算した排出量を減算することで、前記供給総量を算出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記供給総量算出部が算出した前記供給総量と、前記需要量取得部が取得した前記需要量との大小関係を判定する需要充足判定部と、
前記供給総量が前記需要量未満の場合に、前記需要量と前記供給総量との差分以上となるよう1又は複数のカーボンクレジットの調達先を取得する需要調整部と、をさらに備える、
請求項2から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法は、成果として生産物を伴う創出手法を含んでおり、
前記需要量取得部は、前記生産物の買い付け指定をさらに取得し、
前記手法割当部は、前記買い付け指定があった生産物の生産を伴う創出手法を含むように前記創出手法を割り当てる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法は、成果として生産物を伴う創出手法を含んでおり、
前記創出者データベースは、前記生産物の生産を伴う創出手法に基づく生産物の収量とカーボンクレジットの創出能力とのバランスを指定するためのバランス情報とを含んでおり、
前記手法割当部は、
前記バランス情報を制約条件として含む目的関数を最適化することで、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を前記創出者に割り当てる最適化部を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記情報処理装置は、
異なる創出手法を組み合わせて利用する際に課すべき条件を示す創出手法併用情報を格納する併用データベースをさらに備えており、
前記手法割当部は、
前記創出手法併用情報を制約条件として含む目的関数を最適化することで、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を前記創出者に割り当てる最適化部を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
成果として生産物を伴う創出手法による成果の購入希望者に、前記成果の少なくとも一部を売却する成果売却部をさらに備える、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサが、
カーボンクレジットの需要量を取得するステップと、
カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てるステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
カーボンクレジットの需要量を取得する機能と、
カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項12】
カーボンクレジット需要者が利用する端末と、前記端末と通信ネットワークを介して接続する情報処理装置とを備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記端末からカーボンクレジットの需要量を取得する需要量取得部と、
カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる手法割当部と、を備える、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人類の種々の活動に伴って排出される二酸化炭素やメタンをはじめとする温室効果ガスの排出量の削減努力をするとともに、排出することを避けられない温室効果ガスについては温室効果ガスの削減活動に投資することで、排出される温室効果ガスを埋め合わせる「カーボン・オフセット」という考え方が広がっている。この中で、企業等が自らの活動による削減が困難な温室効果ガスについて、他の組織や場所で実現した温室効果ガスの排出削減や吸収を「カーボンクレジット」として購入することで埋め合わせる取り組みが行われている。
【0003】
上記取り組みに関連する技術として、例えば特許文献1には、水田のメタン排出量から資材利用時にどれだけ排出を抑えられるかを計算し、削減量に応じて炭素クレジットを付与する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-139703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術により、水田等の個々の農地において削減ないし吸収可能な温室効果ガスの排出量を定量化できる。一方で、カーボン・オフセットを実現するために、企業等におけるカーボンクレジットの需要を、農地をはじめとする1又は複数のカーボンクレジットの供給でまかなう仕組みが必要であり、構築が望まれている。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法をカーボンクレジット創出者に割り当てるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、カーボンクレジットの需要量を取得する需要量取得部と、カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる手法割当部と、を備える。
【0008】
前記情報処理装置は、1又は複数のカーボンクレジット創出者に対する1又は複数の前記創出手法の実施依頼を作成する依頼作成部と、1又は複数のカーボンクレジット創出者が実施を決定した1又は複数の前記創出手法及びその範囲である1又は複数の確定手法を取得する確定手法取得部と、1又は複数の前記確定手法に基づいて、当該確定手法によって創出できるカーボンクレジットの総量である供給総量を算出する供給総量算出部と、をさらに備えてもよい。
【0009】
前記供給総量算出部は、1又は複数の前記確定手法を導入することによる温室効果ガスをあらかじめ定められた一つの温室効果ガスである基準ガスに換算した場合の削減量から、当該確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量であって前記基準ガスの排出量に換算した排出量を減算することで、前記供給総量を算出してもよい。
【0010】
前記供給総量算出部は、1又は複数の前記確定手法を導入することによる温室効果ガスをあらかじめ定められた一つの温室効果ガスである基準ガスに換算した場合の削減量から、当該確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量であって前記基準ガスの排出量に換算した排出量を減算した上で、さらに、1又は複数の前記確定手法を導入する前の温室効果ガスの排出量であって前記基準ガスの排出量に換算した排出量を減算することで、前記供給総量を算出してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記供給総量算出部が算出した前記供給総量と、前記需要量取得部が取得した前記需要量との大小関係を判定する需要充足判定部と、前記供給総量が前記需要量未満の場合に、前記需要量と前記供給総量との差分以上となるよう1又は複数のカーボンクレジットの調達先を取得する需要調整部と、をさらに備えてもよい。
【0012】
前記カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法は、成果として生産物を伴う創出手法を含んでもよく、前記需要量取得部は、前記生産物の買い付け指定をさらに取得してもよく、前記手法割当部は、前記買い付け指定があった生産物の生産を伴う創出手法を含むように前記創出手法を割り当ててもよい。
【0013】
前記カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法は、成果として生産物を伴う創出手法を含んでもよく、前記創出者データベースは、前記生産物の生産を伴う創出手法に基づく生産物の収量とカーボンクレジットの創出能力とのバランスを指定するためのバランス情報とを含んでもよく、前記手法割当部は、前記バランス情報を制約条件として含む目的関数を最適化することで、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を前記創出者に割り当てる最適化部を備えてもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、異なる創出手法を組み合わせて利用する際に課すべき条件を示す創出手法併用情報を格納する併用データベースをさらに備えてもよく、前記手法割当部は、前記創出手法併用情報を制約条件として含む目的関数を最適化することで、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を前記創出者に割り当てる最適化部を備えてもよい。
【0015】
前記情報処理装置は、成果として生産物を伴う創出手法による成果の購入希望者に、前記成果の少なくとも一部を売却する成果売却部をさらに備えてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様は、情報処理方法である。この方法において、プロセッサが、カーボンクレジットの需要量を取得するステップと、カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てるステップと、を実行する。
【0017】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、カーボンクレジットの需要量を取得する機能と、カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる機能と、を実現させる。
【0018】
このプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0019】
本発明の第4の態様は、カーボンクレジット需要者が利用する端末と、前記端末と通信ネットワークを介して接続する情報処理装置とを備える情報処理システムである。このシステムにおいて、前記情報処理装置は、前記端末からカーボンクレジットの需要量を取得する需要量取得部と、カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と前記複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、前記需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の前記創出手法を、1又は複数の前記創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる手法割当部と、を備える。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法をカーボンクレジット創出者に割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る情報処理システムの概観を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る手法データベースのデータ構造の一例を模式的に示す図である。
図4】実施の形態に係る創出者データベースのデータ構造の一例を模式的に示す図である。
図5】実施の形態に係る併用データベースのデータ構造の一例を模式的に示す図である。
図6】創出手法併用情報を説明するためのグラフの一例を模式的に示す図である。
図7】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8】第3の変形例に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図9】第4の変形例に係る創出者データベース101のデータ構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態の概要>
実施の形態に係る情報処理装置は、カーボンクレジットの需要者(例えば企業)から取得した需要量以上のカーボンクレジットを創出するためのカーボンクレジットの創出手法を選択し、その創出手法を実行するカーボンクレジット創出者(以下、単に「創出者」と記載することがある。)に割り当てる処理を実行する。ここで「創出手法」とは、カーボンクレジットを創出するための手法であり、例えば、温室効果ガスの排出量の削減手法、炭素を固定化する手法、他者が創出したカーボンクレジットを譲り受ける手法などが挙げられる。また、「創出者」は創出手法を実行してカーボンクレジットの創出を担う者であり、例えば農家が挙げられる。
【0024】
多くの場合、企業等の大きな組織によるカーボンクレジットの需要は、農家等の単独の創出者が創出できるカーボンクレジットの供給量を上回る。そこで、実施の形態に係る情報処理装置は、カーボンクレジットの需要量を満たすように、1又は複数のカーボンクレジットの創出手法を選択して、1又は複数の創出者に分配する。
【0025】
ここで、個々の創出者はそれぞれ規模や目指す方向が異なり、カーボンクレジット創出の最大量や実現可能な手法、好みの手法等が創出者毎に異なり得る。情報処理装置は、創出手法を分配する対象となる各創出者それぞれの創出能力及び要望を考慮して、各創出者に割り当てる創出手法を最適化する。これにより、実施の形態に係る情報処理装置は、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法の創出者に対する割り当てを最適化できる。
【0026】
図1は、実施の形態に係る情報処理システムSの概観を模式的に示す図である。情報処理システムSは、情報処理装置1、需要者端末2、及び記憶装置3を含む。以下、図1を参照して情報処理システムSにおいて実行される情報処理の流れの概要を(1)から(8)の順に説明するが、その数字は図1における(1)から(8)に対応する。
【0027】
(1)情報処理装置1は、カーボンクレジットの需要者によるカーボンクレジットの需要量を取得する。図1に示す例では、情報処理装置1は、カーボンクレジットの需要者が利用する需要者端末2からカーボンクレジットの需要量を取得する場合の例を示している。これに替えて、あるいはこれに加えて、情報処理装置1は、過去の需要量の履歴に基づいて将来の需要量を推定することによって需要量を取得してもよい。この場合、情報処理装置1は、過去の需要量の履歴に対し、例えば既知の季節性自己回帰統合移動平均やベイジアンモデリング等の既知の推定アルゴリズムを適用して需要量を予測すればよい。また、情報処理装置1は、複数の需要者の需要量を合算した総需要量を取得してもよいし、確保済みのカーボンクレジットを減算した量を需要量としてもよい。
【0028】
(2)情報処理装置1は、取得した需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の創出手法を、1又は複数の創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる。ここで、創出手法は、大きく分けて以下の2種の手法を含むことが好適である。1種類目は、温室効果ガスを排出している既存の手法を、排出量を抑制する他の手法に切り替える種類の手法である。例えば、施設栽培農家において、旧型で燃費の悪い暖房機を、燃費の良い新型の暖房機に切り替えることで、暖房機稼働時に排出される温室効果ガスである二酸化炭素の量を削減し、カーボンクレジットを創出する。
【0029】
2種類目は、本来排出されたはずの温室効果ガスを排出されない状態とする手法である。例えば、木や竹、籾殻、排泄物等は、そのままでは微生物の活動等によって分解され、二酸化炭素として大気中に放出されることになる。そこで、これらを木炭や竹炭、し尿や排泄物、籾殻等のくん炭(以下、これらを「バイオ炭」と記載する。)として農地に埋設することにより、二酸化炭素として大気中に放出されるはずの炭素を土壌に貯留することで炭素を固定し、カーボンクレジットを創出する。
【0030】
1種類目の手法が既に排出されている温室効果ガスの排出量を減らす手法、すなわち、既にプラスとなっている排出量を削減する手法であるのに対し、2種類目は将来発生する温室効果ガスを抑制する手法、いわば温室効果ガス発生のゼロベースをマイナスにする手法である。この意味で、2種類目の手法の別の例として、ソーラーパネルによる太陽光発電も挙げられる。太陽光発電によって発電された分の電力を生み出すために発生するはずであった化石燃料の燃焼を抑制することでカーボンクレジットを創出できるからである。
【0031】
上記2種類の手法は、具体的にはそれぞれ複数の手法が存在する。例えば、バイオ炭は複数の企業が提供しており、それぞれ炭素固定量や施用の上限量が異なる。また、暖房機等の機器を交換する場合も、同種の機器が複数企業から提供されており、温室効果ガスの削減効果も異なる。さらに、肥料と同時に用いる各種苗(例えば、トマト苗やピーマンの苗)もその種類によって炭素固定量や肥料との相性等が存在するし、創出者によって育成が得意な苗や好みの苗、機器等が存在する。
【0032】
このため、情報処理装置1は、記憶装置3に格納されている手法データベースと創出者データベースとにアクセスし、組み合わせ最適化問題を解くことで創出者のニーズに合わせて各創出者に創出手法及びその範囲(例えば、埋設するバイオ端の量や植えるべき苗の本数等を決める量)を割り当てる。
【0033】
(3)情報処理装置1は、1又は複数のカーボンクレジット創出者に対する1又は複数の創出手法の実施依頼を作成する。情報処理装置1は、作成した実施依頼を電子メールや専用のアプリケーション、ウェブアプリケーション等の電子的な手段、又は郵送等の物理的な手段を用いて各創出者に通知し、創出手法の実施を依頼する。
【0034】
(4)情報処理装置1は、実施依頼をした各創出者から、それぞれが実施することを決定した創出手法を取得する。創出者が実施することを決定した創出手法及びその範囲を、以下本明細書において「確定手法」と記載する。情報処理装置1は、各創出者が使用する電子機器から電子的な手段で確定手法を取得してもよいし、各創出者が郵送によって連絡した確定手法を情報処理装置1のオペレータが入力することで取得してもよい。
【0035】
(5)情報処理装置1は、各創出者から取得した確定手法に基づいて、その確定手法によって創出できるカーボンクレジットの総量である供給総量を算出する。
(6)供給総量が需要量以上である場合、情報処理装置1は、確定手法に用いる資材を確定手法で用いる範囲において資材メーカ4から創出者に送付させる。これにより、創出者はカーボンクレジットの創出を実行できる。
【0036】
(7)供給総量が需要量に満たない場合、情報処理装置1は、需要量と供給総量との差分以上となるよう1又は複数のカーボンクレジットの調達先を取得する。ここで、カーボンクレジットの「調達」は、大きく分けて以下の3種類の手法を含むことが好適である。
【0037】
1種類目は、上記と同様に、既に確定手法を決定している創出者や、新たな創出者に対して創出手法を割り当てることでカーボンクレジットを調達する手法である。この場合、調達先は、上述の農家等の創出者である。
【0038】
2種類目は、既に温室効果ガスの削減が実施されているが、情報処理装置1には通知されていない事項をカーボンクレジットとして調達する手法である。例えば、創出者が機器を変更したり、太陽光パネルを設置したりすることで温室効果ガスの排出量の削減を既に実施している場合、情報処理装置1は、その削減量に対応するカーボンクレジットを調達できる。機器の変更による温室効果ガスの排出量の削減の場合、カーボンクレジットは農家等の創出者に帰属するため、情報処理装置1は農家等からカーボンクレジットを購入して調達する。この場合、調達先は上述の農家等の創出者である。
【0039】
太陽光パネルを設置することによる温室効果ガスの排出量の削減の場合、カーボンクレジットは太陽光パネルに付与されることになる。この場合、パネルメーカと創出者との間の売買契約によってカーボンクレジット帰属が変わる。カーボンクレジットが創出者に帰属する場合は、情報処理装置1は農家等からカーボンクレジットを購入して調達すればよい。カーボンクレジットがパネルメーカに帰属する場合、情報処理装置1は、パネルメーカからカーボンクレジットを購入して調達する。太陽光パネルを設置することによる温室効果ガスの排出量の削減の場合、調達先は温室効果ガスの排出量の削減に寄与した機器のメーカとなる。
【0040】
3種類目は、1種類目と類似するが、情報処理装置1が創出手法を依頼する創出者以外の者であって、情報処理装置1によるカーボンクレジットの調達に提携している提携者からカーボンクレジットを調達する手法である。例えば、大陸棚付近に群生する海藻類は、光合成によって二酸化炭素を吸収することが知られている。この海藻や植物プランクトンによって吸収される二酸化炭素である「ブルーカーボン」を増加させる取り組み、ないし減少を食い止める取り組みを行っている者から、ブルーカーボンに対応するカーボンクレジットを購入することで、情報処理装置1はカーボンクレジットを調達できる。
【0041】
(8)確定手法が穀物や果実の栽培等の農作物、牛や豚等の畜産物、魚介類や海藻等の海産物を含む一次産業等で生産される物(以下、単に「生産物」と記載する。)を成果として伴う場合、カーボンクレジットの需要者がそれらの生産物の購入を希望することもある。この場合、情報処理装置1は、需要者から生産物の買い付け指定を取得する。情報処理装置1は、買い付けのあった生産物を創出者から収集する作業、及び収集した生産物を需要者へ輸送する作業を管理する。これにより、カーボンクレジットの需要者は、カーボンクレジットの購入と同時に生産物の購入もできる。カーボンクレジットの需要者が企業等である場合には、購入した生産物を社員食堂での消費や、福利厚生として社員に販売ないしは配布することで消費することが可能となる。
【0042】
このように、実施の形態に係る情報処理装置1は、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法を創出者に割り当てることができる。
【0043】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部10、通信部11、及び制御部12を備える。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0044】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。図2に示すように、記憶部10は、手法データベース100、創出者データベース101、及び併用データベース102を格納している。
【0045】
通信部11は、情報処理装置1が外部の機器とデータをやり取りするための通信インターフェースであり、既知のWi-Fi(登録商標)モジュールやLAN(Local Area Network)等の既知の通信モジュールを用いて実現できる。以下、情報処理装置1を構成する各部が外部の機器とデータをやり取りする場合は通信部11を介することを前提として通信部11の記載を省略する場合がある。
【0046】
制御部12は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって需要量取得部120、手法割当部121、依頼作成部122、確定手法取得部123、供給総量算出部124、需要充足判定部125、需要調整部126、及び成果売却部127として機能する。
【0047】
なお、図2は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部12を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0048】
需要量取得部120は、カーボンクレジット需要者によるカーボンクレジットの需要量を取得する。手法割当部121は、需要量取得部120が取得した需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の創出手法を、1又は複数の創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる。
【0049】
具体的には、手法割当部121は、カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と、複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベースを参照して、各創出者に割り当てるための創出手法の候補を取得する。続いて、手法割当部121は、1又は複数の創出者と創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベースを参照して、創出者それぞれが実現可能な創出手法を制約条件とする最適化問題を解くことにより、1又は複数の創出手法を1又は複数の創出者に割り当てる。これにより、情報処理装置1は、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法を創出者に割り当てることができる。
【0050】
ここで、情報処理装置1が各創出者に割り当てた創出手法の実施を各創出者が必ず受け入れるとは限らない。そこで、依頼作成部122は、1又は複数の創出者に対する1又は複数の創出手法の実施依頼を作成する。実施依頼を受け取った創出者は、依頼された創出手法を実施するか否か、実施する場合には依頼された創出手法のすべてを実施するか、一部だけを実施するか、あるいは一部を変更して実施するかを決定する。
【0051】
確定手法取得部123は、1又は複数の創出者が実施を決定した1又は複数の創出手法及びその範囲である1又は複数の確定手法を取得する。上述したように、創出者が実施を決した確定手法は、依頼作成部122が作成した実施依頼における創出手法及びその範囲と異なる場合がある。そこで、供給総量算出部124は、1又は複数の確定手法に基づいて、その確定手法によって創出できるカーボンクレジットの総量である供給総量を算出する。
【0052】
具体的には、供給総量算出部124は、まず、1又は複数の確定手法を導入することによる温室効果ガスを二酸化炭素等の温室効果ガスの一種である基準ガスに換算した場合の削減量を算出する。以下では、基準ガスが二酸化炭素であることを前提として説明するが、基準ガスは二酸化炭素でなくてもよい。例えばメタンガスやフロンガス、一酸化炭素等他の温室効果ガスであってもよく、いずれであるかはあらかじめ定めておけばよい。ここで、確定手法が農地に所定量のバイオ炭を埋設する手法であるとする。このとき、バイオ炭の単位重さあたりの炭素貯蔵量に所定量を乗じることで炭素の固定量を算出でき、この炭素を二酸化炭素に換算した場合の温室効果ガスの削減量を算出する。
【0053】
図3は、実施の形態に係る手法データベース100のデータ構造の一例を模式的に示す図である。図3に示すように、手法データベース100は、各創出手法に識別子を割り当てて創出手法を管理している。図3に示す手法データベース100の例では、識別子がID0001の創出手法はA社が提供するバイオ炭であり、二酸化炭素の固定量は1リットルあたりXキログラムである。バイオ炭によって創出されるカーボンクレジットは、そのバイオ炭を購入した創出者に帰属するため、創出手法のタイプは「通常」型となっている。
【0054】
図3に示す手法データベース100において、識別子がID0cccの創出手法は太陽光パネルを使用する創出手法である。太陽光パネルによって創出されるカーボンクレジットは太陽光パネルのメーカに帰属するため、創出手法のタイプは「プログラム」型となっている。また、識別子がIDXXXXの創出手法は提携者であるX社からカーボンクレジットを買い取ることでカーボンクレジットを創出する手法であるため、創出手法のタイプは「買取」型となっている。供給総量算出部124は、手法データベース100を参照することにより、1又は複数の確定手法を導入することによる温室効果ガスを二酸化炭素に換算した場合の削減量を算出することができる。
【0055】
図3に示す手法データベース100には図示していないが、創出手法の他の例として、化学肥料を利用している従来農法から、有機肥料への転換することによっても温室効果ガスの排出が削減でき、結果、カーボンクレジットの創出に寄与できる手法も存在する。例えば、化学肥料の合成工程で発生する温室効果ガス(例えばリン鉱石の採掘や輸送等に係る温室効果ガス等)を国産の有機肥料に変更することで、採掘や海外からの輸送に係る化学肥料利用による温室効果ガスを削減でき、カーボンクレジットを創出できる。
【0056】
次に、供給総量算出部124は、確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量を算出し、それを二酸化炭素の排出量に換算した排出量を算出する。確定手法が農地に所定量のバイオ炭を埋設する場合、バイオ炭を製造メーカの工場から農地まで運搬する必要がある。このとき、運搬に内燃機関を動力とする車両を用いる場合、運搬時に内燃機関の排気ガスとして温室効果ガスを排出する。運搬に電気を動力とする車両を用いる場合は、その電力を生み出す際に温室効果ガスが発生している。供給総量算出部124は、運搬に用いる車両の動力に応じて温室効果ガスの排出量を算出することで、確定手法導入時の温室効果ガスの排出量をより精度よく算出することができる。
【0057】
1又は複数の確定手法を導入することによる温室効果ガスの削減量が、確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量を上回る場合、その差分が確定手法を導入することによる温室効果ガスの正味の削減量となる。そこで、供給総量算出部124は、1又は複数の確定手法それぞれを導入することによる温室効果ガスを二酸化炭素に換算した場合の削減量から確定手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量であって二酸化炭素の排出量に換算した排出量を減算することで、上述した供給総量を算出する。
【0058】
これにより、情報処理装置1は、確定手法によって創出できるカーボンクレジットの総量を推定することができる。
【0059】
手法割当部121は、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法を創出者に割り当てるので、依頼作成部122が依頼した創出手法をすべての創出者が実施する場合、カーボンクレジットの供給総量は需要量を充足することになる。しかしながら、確定手法は実施依頼に含まれる創出手法と異なっていたり、その範囲が狭くなっていたりすることが起こり得る。そこで、需要充足判定部125は、供給総量算出部124が算出した供給総量と、需要量取得部120が取得した需要量との大小関係を判定する。
【0060】
需要調整部126は、供給総量が需要量未満の場合に、需要量と供給総量との差分以上となるよう1又は複数のカーボンクレジットの調達先を取得する。カーボンクレジットの調達先は、上述した上述の農家等の創出者、機器のメーカ、または提携者である。情報処理装置1は、供給総量が需要量を超えるまで供給総量の算出、供給総量と需要量との比較、および調達先の取得を繰り返すことで、需要量を満たすカーボンクレジットの創出を担保することができる。
【0061】
(創出手法の割り当て)
以下、手法割当部121による創出手法の割り当てについてより詳細に説明する。
【0062】
複数の創出手法の中には、例えばトマト苗等、資材として生産物の苗を用いる創出手法を含んでいる。これらの創出手法は、生産物を成果として伴う創出手法である。需要量取得部120が、カーボンクレジットの需要量に加えて生産物の買い付け指定をさらに取得した場合、手法割当部121は、買い付け指定があった生産物の生産を伴う創出手法を含むように、これらの創出手法を優先的に割り当てる。
【0063】
成果売却部127は、創出者が創出したカーボンクレジットを需要者に売却する。また、成果売却部127は、成果として生産物を伴う創出手法による成果の購入希望者から成果の少なくとも一部の購入依頼を受け付け、生産物が収穫された後にその生産物を購入希望者に売却する。これにより、需要者が購入希望者となることにより、需要者は、カーボンクレジットの購入と同時に生産物を購入することができる。また、創出者である生産物の生産者は、生産物の生産を開始する時点で生産物の売却先が決まっているため、生産計画が立てやすくなる。
【0064】
上述したように、創出者である生産物の生産者は、それぞれ得意とする生産物が異なる。また、創出者である生産物の生産者は、それぞれ生産物の生産に伴うカーボンクレジットの創出に対するスタンスが異なる。例えば、カーボンクレジットの創出よりも生産物の収量の増加を優先する創出者がいる一方で、一定量のカーボンクレジットの創出量の確保を優先しその中で生産物の収穫量の最大化を図る創出者も存在する。
【0065】
図4は、実施の形態に係る創出者データベース101のデータ構造の一例を模式的に示す図である。図4に示すように、創出者データベース101は、各創出者に識別子を割り当てて創出者を管理しており、創出者それぞれについて生産物の生産を伴う創出手法に基づく生産物の収量とカーボンクレジットの創出能力とのバランスを指定するためのバランス情報を格納している。
【0066】
図4に示す創出者データベース101の例においては、識別子がUID0001の創出者は、識別子がID0001及びID00YYで示される創出手法を少なくとも実施可能であり、バランス情報は「タイプ1」である。タイプ1のバランス情報は、炭素固定量(すなわち、カーボンクレジットの創出量)の最大化を優先し、生産物の収量は成り行きとすることを示している。同様に、識別子がUID0002の創出者は識別子がID0XXX及びIDZZZZで示される創出手法を少なくとも実施可能であり、バランス情報はタイプ2(炭素固定量は任意値以上としつつ、生産物の収量は最大化を図る)となっている。
【0067】
これらのバランス情報は、手法割当部121が創出手法を各創出者に割り当てるときに考慮すべき条件と言える。このため、手法割当部121は、バランス情報を制約条件として含む目的関数を最適化することで、需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の創出手法を創出者に割り当てる最適化部1210を備えている。
【0068】
ここで、jを創出者を表す指標、kを農地を利用する創出手法を表す指標とし、lを農地を利用せず農地に依存しない創出手法を表す指標とする。j番目の創出者を創出者j、k番目の農地を利用する創出手法を創出手法k、l番目の農地を利用しない創出手法を創出手法lと記載することとする。また、創出者jが創出手法kを実施する場合の単位面積あたりの施用量をa 、創出者jが創出手法kに利用する農地面積をh とする。
【0069】
農地を利用しない創出手法は、例えば、創出者jが利用している暖房装置を燃費効率のよい装置に交換したり、内燃機関を動力とする農業機械を電動化したりする等の手法であり、これらの創出手法の炭素固定量をb とする。
【0070】
創出手法kが野菜の苗である場合、単位面積あたりの施用量(農地に植える苗の密度)を変更することで単位面積あたりの炭素固定量r が変わる。また、創出手法kがバイオ炭の場合、単位面積あたりの施用量(農地に埋設する単位面積あたりのバイオ炭の量)によって炭素固定量r が変わる。このように、同じ創出手法kであっても創出者jによって単位面積あたりの施用量a が異なる場合があり、それによって単位面積あたりの炭素固定量r も異なり得る。r はa の関数として表され、その関数は創出手法k毎に異なる。その関数をfとすると、r はa を使って以下の式(1)で表すことができる。
【0071】
【数1】
【0072】
一般に、創出手法kの単位面積あたりの施用量a を増加させると単位面積あたりの炭素固定量r も増加するので、fは単調増加関数となる。
【0073】
創出者jが創出手法kに利用する農地面積h はあらかじめ創出者jによって決定されており、図4に図示してはいないが、あらかじめ創出者データベース101に登録されている。この意味で、h は最適化部1210による最適化の対象ではなく、定数と見なすことができる。このとき、すべての創出者によって創出されるカーボンクレジットの総量Cは、以下の式(2)で表される。
【0074】
【数2】
【0075】
創出者jが実施する創出手法kの単位面積あたりの収量をq とする。創出手法kの単位面積あたりの収量q は創出者jが実施する創出手法kの単位面積あたりの施用量a に依存する。例えば、農地に植える苗の密度を上げることで収量は増加するが、上げすぎると苗の発育に悪影響を及ぼし、収量が下がることも起こりうる。この収量q と施用量a との関係を表す関数をgとすると、q はa を使って以下の式(3)で表すことができる。なお、gの具体的な形は、各創出手法について単位面積あたりの施用量a を替えながら実施し、そのときの収量q を実験によって決定すればよい。
【0076】
【数3】
【0077】
このとき、創出者jが創出手法kを実施することによって得られる生産物の収量P は以下の式(4)で表される。
【0078】
【数4】
【0079】
バランス情報は、式(4)に示す生産物の収量P に関する制約条件となる。例えば、創出者jが、創出手法kの成果となる生産物の収量P を最大化することがバランス情報に示されている場合、最適化部1210は、収量P が最大となることを制約条件とする。反対に、創出者jが、創出手法kの成果となる生産物の収量P が成り行きでよい場合、最適化部1210は収量P について何ら制約条件を設けずにa を決定すればよい。
【0080】
ここで、創出者jとして創出手法kに関して最低限達成したい収量(例えば、品目毎や単位面積当たりの平均収量等)があることもある。このような場合、創出者jによる創出手法kの終了目標をPconsとすると、以下の式(5)が収量に関するa の制約条件となる。
【0081】
【数5】
【0082】
式(2)に示す式において、Σ の項は創出者j及び創出手法lが定まれば決定される。また、h はあらかじめ創出者jによって決定されている。需要量取得部120が取得した需要量に相当するカーボンクレジットをCdemandとする。このとき、最適化部1210は、あらかじめ定められたh 及び式(5)等のバランス情報に基づく種々の制約条件の下、式(2)で示すCがC≧Cdemandとなるように、例えば線形計画法等の既知の最適化手法を用いてa (創出者jが実施する創出手法kの単位面積あたりの施用量)を決定する。
【0083】
これにより、情報処理装置1は、創出者毎のカーボンクレジットの創出に対するスタンスを、各創出者に依頼する創出手法の割り当てに反映させることができる。
【0084】
以上、各創出手法をそれぞれ独立に実施できることを前提として説明した。例えば、1人の創出者において、トマトを栽培する創出手法と、暖房機を交換する創出手法とは互いに干渉せずに同時に実施することができる。一方で、2つの異なる創出手法を併用する場合に、それらが互いに影響し合う創出手法の組み合わせも存在する。
【0085】
図5は、実施の形態に係る併用データベース102のデータ構造の一例を模式的に示す図である。併用データベース102は、異なる創出手法を組み合わせて利用する際に課すべき条件を示す創出手法併用情報を格納している。
【0086】
図5に示すように、併用データベース102は、複数の創出手法それぞれについて、その創出手法を単独で用いる場合の使用量の上限と、併用時に影響がある他の創出手法と併用した場合の使用量の上限とを格納している。図5は、識別子がID0001である創出手法(A社製のバイオ炭)に関する創出手法併用情報が例示されている。
【0087】
バイオ炭は、地中に埋設すると土壌がアルカリ性に傾く性質がある。一方、化学肥料Aは、用いることで土壌が酸性に傾く性質があるとする。このため、バイオ炭と化学肥料Aとを併用することにより、バイオ炭による影響が化学肥料Aによって中和され、結果としてバイオ炭を単独で用いるときよりも多い量のバイオ炭を用いることができることになる。すなわち、図5において、バイオ炭を単独で使用する場合の使用料の上限値S[kg]/平方メートルよりも化学肥料Aと併用する場合の使用料の上限値T[kg]/平方メートルの方が値として大きくなる。
【0088】
これに対し、例えば牡蠣殻等から作られた石灰を含む有機肥料Uは、用いることで土壌がアルカリ性に傾く性質がある。このため、バイオ炭と有機肥料Uを併用する場合、土壌がアルカリ性に傾きすぎることを防ぐために、バイオ炭を単独で用いる場合よりも使用量の上限値を小さくする。すなわち、図5において、S[kg]/平方メートルよりもV[kg]/平方メートルの方が値として小さい。
【0089】
図5に図示してはいないが、併用データベース102は、創出手法としての生産物とその生産物に利用可能な農薬も創出手法併用情報として格納している。使用可能な農薬が制限される生産物の栽培を創出手法として割り当てる場合には、情報処理装置1は、その生産物に適した農薬も創出者に示せる方が好ましい。また、農地に栽培する生産物によって土壌の酸性土の許容範囲が異なるので、創出手法として割り当てる生産物の種類が許容する範囲のpHに土壌がなるように、併用するバイオ炭や肥料を割り当ててもよい。また、「農薬」は、主に除草や生産物を害虫から保護することを目的としている。このため、例えば稲に用いる農薬に替えてカモ等の鳥類に除草や虫の駆除をさせることで、農薬の生産に伴う温室効果ガスの発生を抑制し、カーボンクレジットの創出に寄与させることもできる。
【0090】
そこで、最適化部1210は、創出手法併用情報を制約条件として含む目的関数を最適化することで、需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の創出手法を創出者に割り当てる。
【0091】
図6(a)-(c)は、創出手法併用情報を説明するためのグラフの一例を模式的に示す図である。図6(a)-(c)に示すグラフは一例であり、図示はしないが、併用データベース102は種々の創出手法の組み合わせに関してそれらの併用時の影響をデータ化して記憶している。
【0092】
図6(a)は、成果として生産物を伴うある創出手法kとA社製バイオ炭とを併用したときの、バイオ炭の施用量と炭素固定量との関係、及びバイオ炭の施用量と生産物の収量とを示すグラフである。図6(a)において、横軸は単位面積あたりのバイオ炭の施用量、実線で示す縦軸及び実線のグラフは炭素固定量、破線で示す縦軸及び破線のグラフは収量を示している。図6(a)において、炭素固定量は単位面積あたりの施用量に比例することを示している。一方、収量は、単位面積あたりの施用量が多くなるほど増加するがやがて頭打ちとなり、最終的には減少に転じることを示している。
【0093】
図6(b)はB社製バイオ炭の施用量と炭素固定量との関係、及びバイオ炭の施用量と生産物の収量とを示すグラフである。同様に、図6(c)は、X社製バイオ炭の施用量と炭素固定量との関係、及びバイオ炭の施用量と生産物の収量とを示すグラフである。
【0094】
図6(a)と図6(b)とを比較すると、バイオ炭の施用量に対する生産物の収量の変化はほぼ同じである。一方、B社製バイオ炭はA社製バイオ炭より同量の施用量であっても炭素固定量が多いことが分かる。また、図6(a)と図6(c)とを比較すると、X社製バイオ炭はA社製バイオ炭よりも炭素固定量が少し多く、さらにバイオ炭を施用したときの収量の最大値が大きいことが分かる。
【0095】
例えば、ある創出者jについて、ある創出手法kに関するバランス情報が「収量が所定量Pcons以上、炭素固定量最大化」であるとする。この場合、最適化部1210は、式(4)に示す」制約条件の下、炭素固定量が最大となる条件を検索する。図6(a)-(c)に示す例では、B社製のバイオ炭の単位面積あたりの施用量をαとする場合、収量が所定量Pcons以上としつつ炭素固定量が最大となることが分かる。したがって、最適化部1210は、創出手法kについてB社製のバイオ炭の単位面積あたりの施用量をαとすることを解として導き出す。
【0096】
別の例として、ある創出者jについて、ある創出手法kに関するバランス情報が「収量最大化、炭素固定量成り行き」であるとする。この場合、最適化部1210は、炭素固定量については制約条件として考慮せず、収量が最大となる条件を検索する。図6(a)-(c)に示す例では、X社製のバイオ炭の単位面積あたりの施用量をβとする場合、収量が最大となることが分かる。したがって、最適化部1210は、創出手法kについてX社製のバイオ炭の単位面積あたりの施用量をβとすることを解として導き出す。
【0097】
このように、情報処理装置1は、創出手法を併用する場合の影響を創出手法の割り当てに反映させることができる。
【0098】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図7は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0099】
需要量取得部120は、カーボンクレジット需要者によるカーボンクレジットの需要量を取得する(S2)。手法割当部121は、需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の創出手法を、1又は複数の創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる(S4)。
【0100】
依頼作成部122は、1又は複数のカーボンクレジット創出者に対する1又は複数の創出手法の実施依頼を作成する(S6)。確定手法取得部123は、1又は複数のカーボンクレジット創出者が実施を決定した1又は複数の創出手法及びその範囲である1又は複数の確定手法を取得する(S8)。
【0101】
供給総量算出部124は、1又は複数の確定手法に基づいて、それらの確定手法によって創出できるカーボンクレジットの総量である供給総量を算出する(S10)。供給総量がカーボンクレジットの需要量に不足する場合(S12のNo)、需要調整部126は需要量と供給総量との差分以上となるよう1又は複数のカーボンクレジットの調達先を取得する(S14)。その後、情報処理装置1は、ステップS8の処理に戻ってステップS8の処理及びステップS10の処理を繰り返す。
【0102】
供給総量がカーボンクレジットの需要量を満たす場合(S12のYes)、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0103】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法を創出者に割り当てることができる。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【0105】
<第1の変形例>
上記では、情報処理装置1の成果売却部127が、創出者が生産した生産物の購入依頼を購入希望者から受け付ける場合について説明した。これに加えて、成果売却部127は、提携者が生産した生産物の購入依頼も購入希望者から受け付けてもよい。
【0106】
例えば、ブルーカーボンを増加させる取り組み、ないし減少を食い止める取り組みを行っている提携者の中には、大陸棚付近に群生する海藻類を食い荒らすウニ等の生物を捕獲して海藻類を保護するとともに、捕獲した生物を養殖して食用として販売する者もいる。成果売却部127は、提携者が食用として養殖した生物の購入希望者から購入依頼を受け付けることで、提携者が生産した生産物の流通経路を提供者に提供することができる。
【0107】
<第2の変形例>
上記では、手法割当部121が創出者データベース101を参照して、創出者それぞれのバランス情報を加味して各創出者に創出手法を割り当てる場合について説明した。これに加えて、手法割当部121は、各創出者が創出手法を適用した場合のリスクを少なくなくなることを拘束条件として創出手法を割り当ててもよい。また、手法割当部121は、各創出者それぞれが持つ生産物の販売目標量を勘案して、各創出者が生産する生産物が販売目標量に近づくことを拘束条件として創出手法を割り当ててもよい。これは、創出者データベース101が、各創出者に対応づけて創出手法を適用した場合のリスクと生産物の販売目標とを記憶しておけばよい。
【0108】
<第3の変形例>
上記では、供給総量算出部124が、1又は複数の確定手法に基づいて供給総量を算出する場合について説明した。しかしながら、すべての創出者が、決定した確定手法をすべて実施するとは限らず、何らかの事情で確定手法における手法そのものや、範囲が異なってしまうことも起こりうる。
【0109】
図8は、第3の変形例に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。第3の変形例に係る情報処理装置1は、図2に示す実施の形態に係る情報処理装置1と比較すると、実績取得部128を備えている点で相違するが、他は同様である。以下、第3の変形例に係る情報処理装置1と実施の形態に係る情報処理装置1と共通する部分については、適宜省略又は簡略化して説明する。
【0110】
実績取得部128は、確定手法を取得した各創出者から、実際に実施した手法を実績手法として取得する。具体的には、実績取得部128は、電子メールや専用のアプリケーション、ウェブアプリケーション等の電子的な手段、又は創出者が記載した専用の申請用紙を郵送等の手段で創出者から実績手法を取得する。
【0111】
供給総量算出部124は、実績取得部128が取得した実績手法それぞれを導入することによる温室効果ガスを二酸化炭素に換算した場合の削減量から、実績手法を導入するために要する温室効果ガスの排出量であって二酸化炭素の排出量に換算した排出量を減算することで、供給総量を算出する。これにより、供給総量算出部124は、各創出者が実際に実施した手法である実績手法に基づいて、供給総量をより正確に算出することができる。
【0112】
<第4の変形例>
上記では、創出者データベース101が、各創出者とその創出者が実施可能な創出手法とを対応づけて格納している場合について説明した。これに替えて、創出者データベース101は、各創出者とその創出者が利用可能な農地面積や現在の作付け作物、現在の利用資材を格納していてもよい。
【0113】
図9は、第4の変形例に係る創出者データベース101のデータ構造を模式的に示す図である。図9に示すように、第4の変形例に係る創出者データベース101は、各創出者に割り当てられた識別子と、その創出者の所在地、創出者が利用可能な農地面積や現在の作付け作物、現在の利用資材を対応づけて格納している。例えば、図8に示す創出者データベース101の例から、識別子がUID0001の創出者の所在地はAA県BB町であり、農地面積はEE[ha]、作付け作物はトマト、土壌改良剤は未使用で、肥料は化学肥料A、α社製の苗を用いていることが分かる。
【0114】
第4の変形例に係る手法割当部121は、創出者データベース101を参照して、各創出者の所在地からその地域で作付け可能な作物を割り出し、各創出者が利用可能な農地面積から、割り出した作物それぞれの作付け可能な範囲(例えば苗の数)を算出する。これにより、手法割当部121は、創出者データベース101に各創出者が実現可能な創出手法が記録されていなくても、各創出者が実現可能な創出手法とその範囲とを決定することができる。また、最適化部1210は、創出者データベース101を参照して、各創出者が実施済みの創出手法(例えば、土壌改良剤や各種肥料等)を創出手法の割り当てに反映することができる。これにより、最適化部1210は、創出手法の割り当ての精度を向上させることができる。
【0115】
<第5の変形例>
上記では、供給総量算出部124が、確定手法を導入することによる温室効果ガスを二酸化炭素に換算した場合の削減量Pから、その確定手法を導入するために要する温室効果ガスにおける二酸化炭素換算の排出量Qを減算した正味の削減量R(=P-Q)を供給総量として算出する場合について説明した。これに替えて、供給総量算出部124は。確定手を導入する前の温室効果ガスの排出量Bをベースラインとし、正味の削減量Rからベースラインの排出量Bを減算した値T(=R-B=P-Q-B)の二酸化炭素換算量を供給総量としてもよい。この場合、確定手法を導入することによる温室効果ガスの削減効果が、従来排出していた温室効果ガスの量を上回った場合にはじめてカーボンクレジットが創出されることになる。これにより、温室効果ガスの排出量をマイナスする確定手法の導入を促進することができる。
【符号の説明】
【0116】
1・・・情報処理装置
10・・・記憶部
100・・・手法データベース
101・・・創出者データベース
102・・・併用データベース
11・・・通信部
12・・・制御部
120・・・需要量取得部
121・・・手法割当部
1210・・・最適化部
122・・・依頼作成部
123・・・確定手法取得部
124・・・供給総量算出部
125・・・需要充足判定部
126・・・需要調整部
127・・・成果売却部
128・・・実績取得部
2・・・需要者端末
3・・・記憶装置
4・・・資材メーカ
5・・・スライド
S・・・情報処理システム
【要約】
【課題】カーボンクレジットの需要量を創出するための創出手法を創出者に割り当てる。
【解決手段】需要量取得部120は、カーボンクレジットの需要量を取得する。手法割当部121は、カーボンクレジットを創出するための複数の創出手法と複数の創出手法それぞれのカーボンクレジットの創出能力とを関連付けて格納する手法データベース100、及び1又は複数のカーボンクレジット創出者と当該創出者それぞれが実現可能な創出手法とを関連付けて格納する創出者データベース101を参照して、需要量に相当するカーボンクレジットを創出するために要する1又は複数の創出手法を、1又は複数の創出者それぞれが実現可能な範囲において割り当てる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9