(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】プロピオン酸遊離剤、酢酸遊離剤、及び整腸剤
(51)【国際特許分類】
A23K 50/30 20160101AFI20220909BHJP
A23K 50/10 20160101ALI20220909BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20220909BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20220909BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220909BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220909BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220909BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220909BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A23K50/30
A23K50/10
A23K50/40
A23K20/158
A61P1/12 171
A61P1/00
A61P13/12
A61P1/04
A61K31/765
(21)【出願番号】P 2022525258
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037322
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020181900
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317001286
【氏名又は名称】佐藤 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓己
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0093860(US,A1)
【文献】特表2019-533010(JP,A)
【文献】特許第5114631(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2020/0224236(US,A1)
【文献】国際公開第2019/035486(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/250980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む大腸内プロピオン酸遊離剤。
【請求項2】
重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む大腸内酢酸遊離剤。
【請求項3】
重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む大腸内酪酸遊離剤。
【請求項4】
重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む大腸内PH低下剤。
【請求項5】
豚の大腸内の腸内細菌にプロピオン酸、酢酸または酪酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む豚
の大腸の整腸剤。
【請求項6】
牛の第1胃内の腸内細菌にプロピオン酸、酢酸または酪酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む牛第1胃環境改善剤。
【請求項7】
猫の大腸内の腸内細菌にプロピオン酸、酢酸または酪酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む猫
の大腸の整腸剤。
【請求項8】
犬の大腸内の腸内細菌にプロピオン酸、酢酸または酪酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む犬
の大腸の整腸剤。
【請求項9】
猫の腸内にプロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分 子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む猫慢性腎臓病(CKD)抑制剤。
【請求項10】
犬の腸内にプロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分 子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む犬慢性腎臓病(CKD)抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚や牛の成長促進及び整腸に寄与する、飼料への添加剤に関する。また、犬や猫の整腸及び慢性腎臓病(CKD)抑制に関与するペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題への世界的関心の高まりとともに、自然界で完全に分解する生分解性プラスチックスへの関心が高まっている。生分解性プラスチックスとして用いられるポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸(以下、「PHB」という)がバクテリアに大量にPHB顆粒として蓄積され、これをPHB粉末として精製する方法が確立された。さらに、PHB粉末は種々の生理作用を誘導することが明らかになり、ペットでサプリメントとしての実用化が待たれる(特許文献1-2を参照)。
【0003】
PHB粉末は、魚やエビに対して種々の生理機能がある。PHB粉末は、1)腸内細菌叢を健全化させる、2)感染症に対して耐性を与える、3)成長促進などの作用が顕著であり。「抗菌性成長促進剤(抗生物質)」に代わる飼料添加物として期待されている(非特許文献1-3)。
【0004】
PHB粉末は、ラットなどの小型哺乳類においては成長促進作用が有意であった。一方、PHB粉末は、豚などの大型哺乳類においては、悪臭の低減作用や軟便の抑制作用は有意ではあったが、成長促進作用は有意ではなかった(特許文献1)。また、猫や犬の泌尿器系の慢性炎症に起因する整腸作用やCKD抑制作用は明らかではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO2005/021013
【文献】国際公開番号WO2019/035486
【非特許文献】
【0006】
【文献】Qiao G, Xu C, Sun Q, Xu DH, Zhang M, Chen P, Li Q. Effects of dietary poly-β-hydroxybutyrate supplementation on the growth, immune response and intestinal microbiota of soiny mullet (Liza haematocheila). Fish Shellfish Immunol. 2019 Aug;91:251-263.
【文献】Franke A, Roth O, Schryver P, Bayer T, Garcia-Gonzalez L, Kunzel S, Bossier P, Miest JJ, Clemmesen C. Poly-β-hydroxybutyrate administration during early life: effects on performance, immunity and microbial community of European sea bass yolk-sac larvae. Sci Rep. 2017 Nov 8;7(1):15022.
【文献】Situmorang ML, De Schryver P, Dierckens K, Bossier P. Effect of poly-β-hydroxybutyrate on growth and disease resistance of Nile tilapia Oreochromis niloticus juveniles. Vet Microbiol. 2016;182:44-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、プロピオン酸または酢酸遊離剤としてのPHB粉末の開発が求められている。具体的には、豚においてPHB粉末が成長促進作用を発現する技術を確立し、PHB粉末を有効成分とする豚及び牛の成長促進剤及び整腸剤、または犬及び猫の整腸剤及びCKD抑制剤の開発が求められている。PHB粉末は、豚のような大型哺乳類の消化器系において、種々の生理作用を発現する。従来技術では、前期肥育期間(生後90日齢まで)の豚の1カ月間PHB供与(5%)において有意な成長促進が認められなかった(特許文献1)。ラットのような小型哺乳類において成長促進作用は有意であったものの、豚や牛のような大型哺乳類では成長促進作用が有意ではなかった(特許文献1)。先行技術では純度(30%以下)が低すぎ、重量平均分子量(80万以上)が高すぎ、PHBの加水分解が十分に進んでいない可能性が高い。
【0008】
本発明の発明者は、純度(70%以上)で重量平均分子量(70万以下)のPHB粉末が豚整腸剤として機能することを見出した。そして、本発明は、一例として、PHB粉末を有効成分とする豚整腸剤を養豚家に提供することを目的とする(表1)。他の例として、高齢(10歳以上)の猫において30%が罹患するとされるCKDの抑制剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のとおりである。
(1)重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末(PHB粉末)を含むプロピオン酸遊離剤
(2)重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む酢酸遊離剤
(3)豚の腸内細菌にプロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む豚成長促進剤
(4)豚の腸内細菌にプロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む豚整腸剤
(5)牛の腸内細菌にプロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む牛整腸剤
(6)牛の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む牛第1胃環境改善剤
(7)猫の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む猫整腸剤
(8)犬の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む犬整腸剤
(9)猫の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む猫慢性腎臓病(CKD)抑制剤
(10)犬の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む犬CKD抑制剤
(11)犬の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む犬CKD抑制剤
(12)犬の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む犬潰瘍性大腸炎抑制剤
(13)猫の腸内細菌プロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末を含む猫潰瘍性大腸炎抑制剤
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るPHB粉末により、動物の大腸に生息する腸内細菌によるプロピオン酸及び酢酸の遊離を促進することができる。これにより、例えば、豚または牛において、PHB粉末を有効成分とする豚成長促進剤または整腸剤を開発し、養豚業などの畜産おいて大幅なコストの低下をもたらし、日本の養豚業の健全な発展に貢献することが可能になる。
【0012】
また、PHB2%(飼料におけるPHB粉末の重量%)をブタに供与すると、酢酸、プロピオン酸及び酪酸が有意に増加し、乳酸が有意には増加しなかった。したがって、本発明に係るPHBにおいてはプロピオン酸と酢酸の増加を介して弱酸性の腸内環境を誘導して整腸剤として機能し、牛の第1胃環境改良剤としても機能する(
図1)。また、本発明のPHB粉末を有効成分として、犬または猫において整腸剤、CKD抑制剤または潰瘍性大腸炎抑制剤を開発し、ペットの健康維持に貢献することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】PHB粉末のプロピオン酸または酢酸を介した生理作用について示す。PHB粉末は腸内細菌を活性化して、腸内細菌から酢酸及びプロピオン酸の遊離を促進し、これらの脂肪酸が豚においては整腸作用、猫においてはCKD抑制作用を誘導する。
【
図2】PHB粉末の腸内細菌の活性化に起因する生理作用を示す。PHB粉末によるケトバイオテイクスィクスについて示す。
【
図3】PHB粉末の腸内細菌を活性化する仕組みを示す。PHB粉末に関するケトン供与体II型について示す。
【
図4】弱酸性の腸内環境による骨形成の促進について示す。
【
図5】弱酸性の腸内環境による消化能力の増加について示す。
【
図6】弱酸性の腸内環境による脳腸相関の活性化について示す。
【
図7】小腸ではなく大腸で働く(ケトン供与体II型)PHB粉末が腸内細菌を活性化する仕組みについて示す。
【
図8】PHB粉末が豚の大腸内の酢酸とプロピオン酸と酪酸を増加させたことを示す。
【
図9】PHB粉末が豚の大腸内に弱酸性の腸内環境を誘導することを示す。
【
図10】PHB粉末がCKDの猫において窒素(BUN)を抑制したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末の構成及び効果について説明する。本発明のポリ(R)-3-ヒドロキシ酪酸粉末は、重量平均分子量1万以上であることを特徴としている。この特徴により、以下の効果が生じる。
【0015】
前期肥育期間に効果がある:豚は約生後21日齢までは、母乳で育てられるが、生後21日齢以降は順次固形飼料で育てられる。この生後21日齢から生後60日齢までの間に腸内細菌叢の変化が起こり、その後安定する。通常、生後180日ほどで豚は市場に出され、生後90日齢までを前期肥育期間、生後90日齢以降を後期肥育期間と呼ぶ。生後21日齢から生後60日齢までの間に成長促進剤を与えると、豚の成育にプラスの効果をもたらすと考えられる。羅漢果抽出物及びバチラス・パデイウス(バクテリアの一種)では豚の有意な成長促進を示した(特願2008―253190とWO01/028551)。しかしながら、旧PHB粉末(純度30%以下で重量平均分子量80万以上)では有意な成長促進が見られなかった(特許文献1)。
【0016】
後期肥育期間に効果がある:本発明は腸内細菌叢が安定した生後90日齢(後期肥育期間)から開始してもなお、短鎖脂肪酸を増加させる作用があった。この事実は重要である。なぜならば、豚の後期肥育期間においてもなお成長促進効果が期待できるのである。また腸内細菌叢の安定化した後でも顕著な短鎖脂肪酸の増加が顕著であったということは、腸内細菌叢の安定化を向かう21日齢から60日齢に与えれば、さらに顕著な短鎖脂肪酸の増加が期待でき、これを起点とした成長促進作用も有意であると考えられる。すなわち、新PHB粉末(純度70%以上で重量平均分子量70万以下)を有効成分とする豚の成長促進剤は前期肥育期間(生後90日齢以前)に対しても、後期肥育期間(生後90日齢以降)に対しても、有意な成長促進作用があると考えられる。
【0017】
中性脂肪を下げる:PHB粉末の成長促進作用の特異性は、「肥満」とは明らかに異なる生理学的な特徴があることである。それは血中の中性脂肪が減少することである。肥満の生理学的な特徴として、1)皮下脂肪の増加、2)内臓脂肪の増加、3)血中の中性脂肪の増加などがある。新PHBは血中のケトン体濃度を持続的に増加させるために、これら肥満の指標を減らす方向に働く。ケトン体の受容体のひとつであるGPR43という膜上のタンパク質と結合して、中性脂肪や内臓脂肪を減らすからである(Miyamoto J, et al. Ketone body receptor GPR43 regulates lipid metabolism under ketogenic conditions. Proc Natl Acad Sci USA. 2019 Nov 19;116(47):23813-23821)。
【0018】
これは「抗菌性成長促進剤(抗生物質)」とは明らかに異なる生理学的な特徴である(大坪及び北澤 ブタ腸管マイクロバイオーム研究から考えるブタの抗菌性成長促進剤代替法の開発 東北畜産会報68巻第1号)。「抗菌性成長促進剤」は飼料効率を増加させ、豚でも有意な成長促進を誘導するが、血中の中性脂肪を増加させるから、健全な成長促進を誘導しているとは言い難い。PHBは成長促進を誘導するとともに、血中の中性脂肪を下げるから、健全な成長促進を誘導していることがわかる。
【0019】
図2全体の説明:本発明のPHB粉末は腸内細菌内で加水分解され、腸内細菌内でケトン体を生成し、代謝を活性化する(A)。この腸内細菌の活性化(A)により、PHB粉末はケトン体を介する経路(B)、酢酸とプロピオン酸を介する経路(C)及び酪酸を介する経路(D)を誘導する。さらに、本発明のPHB粉末は、これら短鎖脂肪酸群の増加を介する経路群(B)、(C)及び(D)の活性化を介して豚成長促進剤として機能する。PHBが腸内細菌の活性化が起点となって起こる、PHB粉末による(A)、(B)、(C)及び(D)の経路の全体を、「ケトバイオティクス」を呼ぶ。
【0020】
本発明の「ケトバイオティクス」は、先行技術の「ケトジェニック」とは全く異なる。なぜなら「ケトジェニック」は哺乳類(真核生物)の肝臓で生産されるケトン体を起点としているが、「ケトバイオティクス」は腸内細菌の中で生産されるケトン体を起点としているからである。
【0021】
以下、各経路の概要を説明する。
(B)の経路:PHB粉末は、血液中のケトン体濃度を増加させることでミトコンドリアを活性化し、組織のエネルギー代謝を活性化し、豚の成長を促進する。
(C)の経路:PHB粉末は、酢酸及びプロピオン酸の産生を増加させ、弱酸性の腸内環境を保持し、消化吸収機能を亢進して豚の成長を促進する。
(D)の経路:PHB粉末は大腸内の酪酸(化学的に厳密に述べるとn-酪酸)濃度を増加させ、パイエル板においてマクロファージを活性化し、調節性T細胞を活性化し、腸管の慢性炎症を抑制し、豚の成長を促進する。他の有機酸や低級脂肪酸として、コハク酸、乳酸、ギ酸、iso-酪酸、iso-吉草酸、n-吉草酸がある。
【0022】
図2(A)の経路(
図3に詳述):化学的には、PHB粉末はケトン体のポリエステルである。このエステル結合が腸内細菌のリパーゼで加水分解されれば腸内細菌内でケトン体が放出され、腸内細菌を活性化することができる。このケトン体は最初に腸内細菌のエネルギー基質になる。すなわち腸内細菌の代謝が活性化され、腸内細菌が短鎖脂肪酸を大量に放出するようになる。PHB粉末は、これらの短鎖脂肪酸の増加を介する経路(B)、(C)及び(D)を促進することにより経路(A)は豚成長促進に関与する。
【0023】
図2(B)の経路:PHB粉末は、大腸の腸内細菌のリパーゼでケトン体に分解され大腸管腔に放出され、大腸上皮から吸収されて、血中のケトン体濃度の上昇を誘導する。PHB粉末が大腸の腸内細菌により分解されてケトン体が生成される過程はゆっくりと進行するから、血中のケトン体濃度が高い状態に持続的に維持される。ケトン体は膜上の受容体(GPR43やHCAR2)を活性化して、エネルギー代謝を活性化する(Boccella S, et al. Ketones and pain: unexplored role of hydroxyl carboxylic acid receptor type 2 in the pathophysiology of neuropathic pain. FASEB J. 2019 Jan;33(1):1062-1073)。またケトン体は直接エネルギー基質として機能する。すなわちケトン体は、細胞質では代謝されず直接ミトコンドリアの酸化的リン酸化で消費され、ブドウ糖よりも少なくとも数十%程度のATP生産効率があるとされている。
【0024】
一般に、細胞質の解糖系でのATP産生よりもミトコンドリアの酸化的リン酸化のほうがはるかにエネルギー効率は高い。したがって、ケトン体が持続的に供給されれば、細胞は必然的にミトコンドリアを用いて、効率よくATPを生産できるようになる。これにより血中のケトン体濃度の増加は、組織にエネルギー基質であるATPの産生を促すことになる(Williamson DH. Ketone body metabolism during development. Fed Proc. 1985 Apr;44(7):2342-6)。その結果、組織におけるエネルギー産生は高い状態に維持され、豚の成長が促進されることになる。
【0025】
(C)の経路(整腸作用)(
図1及び
図4に詳述):大腸で産生される短鎖脂肪酸は、主に難消化性の炭水化物を原料に腸内細菌で産生され、そのうち7割から9割を占める酢酸とプロピオン酸が占めるとされる(坂田及び市川 短鎖脂肪酸の生理活性 日本油化学会誌46巻第10号)。PHB粉末は腸内細菌を活性化し、腸内細菌に酢酸とプロピオン酸を放出させ、弱酸性の腸内環境を誘導する。弱酸性の腸内環境は、段落0032から段落0038において後述するような作用を誘導して、PHB粉末が豚成長促進剤又は整腸剤として機能することを可能にする。
【0026】
このような腸内環境を整える作用のある化合物は、牛第1胃環境改善剤(Baaske L, Gabel G, Dengler F. Ruminal epithelium: a checkpoint for cattle health. J Dairy Res. 2020 Aug;87(3):322-329)として、犬猫において潰瘍性大腸炎抑制剤(Valcheva R, Koleva P, Martinez I, Walter J, Ganzle MG, Dieleman LA. Inulin-type fructans improve active ulcerative colitis associated with microbiota changes and increased short-chain fatty acids levels. Gut Microbes. 2019;10(3):334-357)として機能しうる。哺乳類においては相互に腸内細菌叢が似ている((Ericsson AC. The use of non-rodent model species in microbiota studies. Lab Anim. 2019 Jun;53(3):259-270.))ことが示されているため、PHB粉末は犬猫においても整腸剤として機能しうるのである。
【0027】
プロピオン酸はケトン体の受容体であるHCAR2の活性化剤でもあるため、ケトン体の持つ抗ガン作用や抗炎症作用も発揮しうる(Sivaprakasam S, Prasad PD, Singh N. Benefits of short-chain fatty acids and their receptors in inflammation and carcinogenesis. Pharmacol Ther. 2016 Aug;164:144-51.)。プロピオン酸は腸管内でTregを活性化し、抗CKD作用や抗炎症作用や抗アレルギー作用や抗潰瘍性大腸炎作用を発現しうる(Arpaia N, Campbell C, Fan X, Dikiy S, van der Veeken J, deRoos P, Liu H, Cross JR, Pfeffer K, Coffer PJ, Rudensky AY. Metabolites produced by commensal bacteria promote peripheral regulatory T-cell generation. Nature. 2013 Dec 19;504(7480):451-5.)ことも報告されている。
【0028】
(C)の経路(CKD抑制作用への寄与)(
図1):ある種の食物繊維(レジスタントスターチなど)及びある種の糖は、小腸ではあまり分解されず、腸内細菌に到達することが報告されている(Zaman SA, Sarbini SR. The potential of resistant starch as a prebiotic. Crit Rev Biotechnol. 2016;36(3):578-84. )。このような食材は腸内細菌を活性化することが知られている。またある種の食物繊維などの食材は、腸内細菌の活性化を介して、酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)を遊離する(Huang W, Zhou L, Guo H, Xu Y, Xu Y. The role of short-chain fatty acids in kidney injury induced by gut-derived inflammatory response. Metabolism. 2017 Mar;68:20-30.)。
【0029】
SCFAが増加すると、CKDや潰瘍性大腸炎などの慢性の炎症疾患が抑制されることが知られている。このような経路は基本的にレジスタントスターチなどの食物繊維では複数の報告がある。またSCFAの中で特にプロピオン酸の増加がCKDや潰瘍性大腸などの慢性炎症の抑制に必須であることが示唆されている(Al-Asmakh M, Sohail MU, Al-Jamal O, Shoair BM, Al-Baniali AY, Bouabidi S, Nasr S, Bawadi H. The Effects of Gum Acacia on the Composition of the Gut Microbiome and Plasma Levels of Short-Chain Fatty Acids in a Rat Model of Chronic Kidney Disease. Front Pharmacol. 2020 Dec 22;11:569402.)。
【0030】
先行技術では、2%PHB(食物中のPHB粉末が2%)をラットに供与すると血中のケトン体濃度は増加し、酪酸菌が増加することは言及されているが、酪酸濃度については言及がない(PCT/JP/2020/023042)。これに対して、本発明に係るPHBは、腎繊維症、急性腎障害、CKDなどの慢性腎疾患、糖尿病性腎症、糖尿病性腎硬化症などに効果が期待される。
【0031】
また、
図8に試験結果を示すように、ある種の食物繊維とは別に、
図1で示すPHB粉末によりプロピオン酸や酢酸が遊離することも確認できた。これは、プロピオン酸遊離手段を拡張するものである。
【0032】
ミネラルの吸収促進(
図4に詳述):腸内環境がカルシウム、カリウム又は鉄などの酸性側に傾くとイオン化が促進され、溶液への溶解性が大きく増加する。その結果、弱酸性の腸内環境では、骨などの成長に大きく影響するミネラルの吸収が促進され、骨形成が促進される。これにより豚の成長を促進することになる(Ramakrishna BS. Role of the gut microbiota in human nutrition and metabolism. J Gastroenterol Hepatol. 2013 Dec;28 Suppl 4:9-17)。
【0033】
消化管の運動促進(
図5に詳述):消化管の運動は消化管上皮の直下にある消化管平滑筋の運動により行われる。平滑筋はコリン作動性のニューロンの支配を受けているが、このニューロンの発火はプロトンの濃度が増加するとことで刺激されることがわかっている。弱酸性の腸内環境では、コリン作動性のニューロンが刺激され、アセチルコリンの放出が促進され、平滑筋の運動が亢進する。従って、弱酸性の腸内環境は消化・吸収能力を高め、豚の成長を促進することになる(Greenwood-Van Meerveld B, et al. Gastrointestinal Physiology and Function. Handb Exp Pharmacol. 2017;239:1-16)。
【0034】
消化液(粘液)の分泌促進(
図5に詳述):消化液(粘液)の分泌は消化管上皮細胞により行われる。分泌はコリン作動性の刺激により支配されている。このニューロンの発火はプロトンの濃度が増加することで増強されることがわかっている。弱酸性の腸内環境では、コリン作動性のニューロンが刺激され、消化液(粘液)の分泌が亢進する。従って弱酸性の腸内環境は消化能力を高め、豚の成長を促進することになる(Greenwood-Van Meerveld B, et al. Gastrointestinal Physiology and Function. Handb Exp Pharmacol. 2017;239:1-16)。
【0035】
善玉菌の増殖促進:ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ロゼブリア属(Roseburia)、コプロコッカス属(Coprococcus)、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ラクノスピラ属(Lachnospira)、クロストリジウム属(Clostridium)などの クロストリジウムクラスターの第IV、第XIVa及び第XVIIIに属する細菌群が短鎖脂肪酸を産生する。
【0036】
大腸管腔内に放出能力のある一群の細菌(酪酸菌)、及び、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ストレプトコッカス属(レンサ球菌属)などの一群の細菌(乳酸菌)は弱酸性で成長が早い。また悪玉菌などは中性で成長が早い。従って弱酸性の腸内環境では、これら善玉菌の増殖が促進され、悪玉菌の増殖が抑制されることになる。これにより腸内細菌叢は酪酸菌優位な環境になり、さらに酢酸、プロピオン酸や酪酸の分泌が亢進されて
図1のCの経路がさらに活性化され、豚の成長促進が起こることになる(坂田及び市川 短鎖脂肪酸の生理活性 日本油化学会誌46巻第10号)。さらに増殖した腸内細菌は、トリプトファンの水酸化を促進し、健全な脳腸相関を誘導することになる。
【0037】
脳腸相関の健全化(
図6に詳述):大型哺乳類のような高等動物では、ストレス環境下では情緒が不安定になり、成長の促進は望めない。セロトニンは、ヒトでは「幸福ホルモン」と呼ばれ、情緒の安定には不可欠な神経伝達物質である。また、セロトニンは、ストレスの少ない健全な成長には必ず必要なホルモンでもある。また腸管においては、セロトニンが腸管運動や消化液(粘液)の分泌を調節している。これはコリン作動性ニューロンのような、平滑筋などの効果器への直接作用ではなく、コリン作動性ニューロンを介した間接作用によって、腸管運動の活性を調節する。
【0038】
セロトニンはアミノ酸の1種であるトリプトファンの水酸化されて5-ヒドロキシトリプトファンが生成することを起点として、脳や腸管合成されることがわかっているが、この水酸化の多くが腸内細菌に依存している。例えば酪酸菌優位な腸内細菌を、うつ病モデルのマウスに移植すると、うつの症状を有意に軽減させることが報告されている。これは移植された腸内細菌がトリプトファンの水酸化を促進し、脳内でセロトニンが機能することを可能にしたためであるとされる。これらの研究の意義は、腸管や脳の健全な機能が腸内細菌に大きく依存していることであり、さらに腸内細菌を改善すれば、脳の機能を正常化できることを示している。これを「脳腸相関」と呼ぶことになった。PHB粉末により腸内細菌叢が健全になれば、脳や腸管の機能が健全に保たれる可能性は大きくなる(Wang HX and Wang YP. Gut Microbiota-brain Axis. Chin Med J (Engl). 2016 Oct 5;129(19):2373-80)。
【0039】
豚において、弱酸性の腸内環境により、腸内環境が起こることは難消化性のスターチを用いた実験において示されている。難溶性のスターチをブタに与えると、腸内細菌叢が変化し、酢酸とプロピオン酸が産生され、弱酸性の腸内環境が誘導される。この腸内環境が消化・吸収を促進することによって成長促進が誘導されることが示されている(Regassa A, Nyachoti CM. Application of resistant starch in swine and poultry diets with particular reference to gut health and function. Anim Nutr. 2018 Sep;4(3):305-310.)。
【0040】
(D)の経路:PHB粉末により腸内細菌叢が改善される。すなわちEubacterium属、Roseburia属、Coprococcus属、Faecalibacterium属、Ruminococcus属、Lachnospira属、Clostridium属などの クロストリジウムクラスターの第IV、第XIVa及び第XVIIIに属する、酪酸を産生する能力のある細菌群を増加させ、大腸において酪酸の産生を増加させる(Narushima S, et al. Characterization of the 17 strains of regulatory T cell-inducing human-derived Clostridia. Gut Microbes. 2014 May-Jun;5(3):333-9)。
【0041】
これら酪酸を産生する能力の高い腸内細菌群が増殖することによって酪酸濃度の増加を誘導することができる。大腸内細菌叢の腸内細菌により生成された酪酸は、大腸内にあるパイエル板に常在するマクロファージを活性化する。活性化したマクロファージは、ナイーブT細胞を活性化して調節性T(Treg)細胞に分化させる。Tregは、豚に多い下痢や軟便などを症状とする消化器系の炎症性の疾患を予防する効果が高い。豚において、消化管における健全な消化吸収機能の維持が健全な成長の大前提となることから、酪酸の経路(D)は、豚の成長促進に寄与する。
【0042】
また、PHBはTreg細胞の活性化を誘導することから、家畜における代表的な疾患である口蹄疫、炭疽、ブルセラ病、結核病、ヨーネ病、牛海綿状脳症(BSE)、ブルータング、アカバネ病、チュウザン病、牛ウイルス性下痢・粘膜病(BVD・MD)、牛伝染性鼻気管炎(IBR)、牛白血病、アイノウイルス感染症、イバラキ病、牛流行熱、気腫疽、サルモネラ症、牛アデノウイルス病、牛コロナウイルス病、牛RSウイルス病、牛ロタウイルス病、牛パスツレラ病、牛ピロプラズマ病、牛肺虫症、コクシジウム病、乳頭糞線虫症、クリプトスポリジウム症、ネオスポラ症、硝酸塩中毒、大脳皮質壊死症、豚コレラ、オーエンスキー病、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)、豚流行性下痢(PED)、伝染性胃腸 (TGE)、豚丹毒、トキソプラズマ病、豚胸膜肺炎、豚大腸菌症、滲出性表皮炎(スス病)、馬伝染性貧血、馬インフルエンザ、馬鼻肺炎、馬伝染性子宮炎、馬パラチフス、馬糸状虫症、ニューカッスル病、低病原性ニューカッスル病、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)、低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)、鳥インフルエンザ、家きんサルモネラ感染症、鶏マイコプラズマ病、腐蛆病、アカリンダニ症などに抑制効果を発揮する可能性がある。
【0043】
ケトン供与体(
図7に詳述):消化管内でケトン体を放出する分子を「ケトン供与体」と呼ぶ(
図6)。小腸内でケトン体を放出するケトン供与体1型と大腸内でケトン体を放出するケトン供与体II型がある。ケトン給与体I型の特徴は摂取後数分以内に血中のケトン体がスパイク上に増加し、数時間以内に元のレベルに低下する物質であり、ケトン体やケトンエステルがある。ケトン供与体I型では、腸内細菌の活性化(A)が起こらないので、(A)が起点となっておこる(B)、(C)及び(D)を誘導する効果はない(
図1)。これに対してケトン供与体II型は腸内細菌の活性化(A)と起点として、(B)、(C)及び(D)を誘導する(
図1)。ケトン供与体II型(PHB粉末)の特長は摂取後数時間以上の時間をかけてゆるやかに血中のケトン体濃度が増加し、10時間以上持続的にケトン体濃度が増加する物質である。豚成長促進にはケトン体濃度の持続的な増加が必要であり、ケトン供与体II型であるPHB粉末を用いるべきなのである。
【0044】
豚成長促進剤の形態:PHB粉末の有効量として、豚一頭1人当たり10~2000mg/kg体重(好ましくは100~1000mg/kg体重)の範囲で1日1回又は数回の投与単位に分割して投与することができる。なお、これらの投与量又は摂取量は、豚の体重を60kgと仮定して、体重60kgの豚一頭1日あたりのPHBの摂取量もしくは投与量として、必要により計算することによって表すことができる。
【0045】
PHB粉末の製造:ケトン供与体のうち、ケトン体とケトンエステルは血中のケトン体濃度を急激に上昇させることができるのに対して、PHB粉末は血中のケトン体濃度を増加させるのに5時間程度必要である。一方、PHB粉末は、血中のケトン体濃度を持続的に上昇させることができることから、持続的に使用すること(豚成長促進剤)に適している。PHBは粉末は、無味無臭であるので、豚成長促進剤などに使用しやすい。
【0046】
PHB粉末の重量平均分子量が1万未満であると、血中のケトン体濃度を持続的に増加させることができない。一方、PHB粉末の重量平均分子量が70万を超えると、腸内細菌による加水分解に時間を要するため、血中ケトン体濃度が上昇するまでに時間がかかりすぎると考えられる。このため、PHB粉末の重量平均分子量は、例えば、1万以上70万以下とすることが好ましい。PHB粉末の純度や重量平均分子量は、血中ケトン濃度が上昇するまでに要する時間に影響すると考えられている。PHB粉末の純度は、例えば、50%以上である。純度50%以上のPHB粉末は、比較的量産しやすく、且つ、血中のケトン体濃度の持続的な増加をもたらすことができる。PHB粉末の血中ケトン体濃度の上昇効果を増強するために、PHB粉末の純度を70%以上としてもよい。PHB粉末の血中ケトン体濃度の上昇効果をさらに増強させるため、PHB粉末の純度を90%以上としてもよい。好ましくは、純度(70%以上)で重量平均分子量(60万以下)のPHB粉末である。
【0047】
PHB粉末の製造:PHBは(R)-3-ヒドロキシ酪酸(ケトン体)のエステル結合による重合体である。PHB粉末は、発酵法又は化学合成法によって合成することができる。化学合成法を用いる場合、高価な(R)-3-ヒドロキシ酪酸を原料とするため、合成コストが高い。これに対して微生物を用いる発酵法では、糖質を含む安価な原料を用いて効率的に生合成するので、容易に大量に調整することができる。PHB粉末は、例えば、バクテリアを用いて合成する。不斉触媒を用いてケトン体の重合度を上昇させることにより、PHB粉末を化学合成することも可能であるが、分子量1万を超えるPHB粉末を合成することはできない。このため、重量平均分子量1万以上のPHB粉末を合成するには、バクテリアを用いる必要がある。
【0048】
PHB粉末の製造:バクテリアを用いて発酵させることにより、PHB顆粒をハロモナス菌体内において製造する。続いて、菌体を含む培養液に界面活性剤を添加した後に数回のオートクレーブにかける。このとき、ハロモナス属由来のPHBを使用し、1%未満の界面活性剤を添加して数回のオートクレーブにかければ、重量平均分子量70万程度のPHB粉末を得ることができる。また、ハロモナス属由来のPHBを使用し、1%~2%の界面活性剤を添加して数回のオートクレーブにかければ、重量平均分子量59万程度のPHB粉末を得ることができる。この工程においてPHB以外の菌体成分は水溶液に可溶化され、PHB粉末は不溶成分として沈殿する。このように界面活性剤の濃度で重量平均分子量を変えられる。
【0049】
PHB粉末の製造:次に、PHBを含む不溶成分を10000rpmで10分間遠心分離によりPHB顆粒を沈殿させ、上澄み液を除去することによりPHB顆粒を含む不溶成分の沈殿を取り出す。また、遠心分離によりPHB顆粒の沈殿を取り出す代わりに、溶液を加熱し、加熱後に溶液を収容する容器内を減圧することにより溶液の体積を減少させて菌体を濃縮する真空レオニーダ法を行ってもよい。真空レオニーダ法を行った後に加圧装置により加圧した溶液を濾過するフィルタープレス法を用いてPHB顆粒を含む不溶成分を取り出してもよい。
【0050】
PHB粉末の製造:沈殿として取り出したPHB顆粒を水で洗浄する。この洗浄により、PHB顆粒以外の菌体成分を水に溶解させて除くことが可能である。水での洗浄を繰り返すことによりPHB粉末の純度を90%以上にすることができる。回収した残渣を乾燥させ、乾燥した残渣をブレンダで砕いてPHB粉末を合成する。オートクレーブや熱乾燥処理にかけることにより、菌体の細胞膜が破壊されるとともに、弱い分子間力や水素結合で高次構造を形成していた菌体内のPHB顆粒(数平均重合度1万以上)を、平均重合度数千程度のPHB粉末にすることができる。PHB粉末は、PHB直鎖が弱い分子間力や水素結合により会合して高次構造を取る菌体内のPHB顆粒とは異なり、PHB直鎖が会合せず存在する状態のものである。
必要な結合度は、上記の熱処理を繰り返すことにより実現できるので、これを使用しても良い。
【0051】
<試験例1>
高純度の新PHB粉末のマイクロミニピッグの血液中の血球数への効果を確認した。1日1回、餌100g当たり2g(重量の2%相当)のPHB粉末(純度98%)を40日間連続でマイクロミニピッグに経口投与し、投与期間中は、10日に1回の割で経時的に体重測定、採血および採糞を行った。試験開始0日目、10日目、20日目、30日目及び40日目に体重及び一般血液検査における異常値を認めなかった(表1)。この試験に用いられたPHBの純度は98%(PHB粉末の重量比)であり、数平均分子量は2500、重量平均分子量は650,000であった。
【表2】
【表3】
【0052】
<試験例2(
図8)(
図9)>
[方法]
飼料中のPHB粉末(PHB純度94%)は重量比2%であった。具体的には、この試験に用いられたPHB粉末のPHBの純度は94%であり、数平均分子量は2200、重量平均分子量は580,000であった。供与してから0日目、20日目、40日において豚から採取した糞便を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸)を定量した。HPLCによる分析に使用したのは以下のものである。
HPLC: Prominence; Shimadzu, Kyoto, Japan
検出器:CDD-10A; Shimadzu
2重カラム (Shim-pack SCR-102H, 300 × 8 mm ID; Shimadzu)及びガードカラム n(Shim-pack SCR-102H, 50 × 6 mm ID; Shimadzu)
【0053】
サンプルはMilli-Qに懸濁し、80°Cで15分加熱した。ジルコニアビーズを添加してボルテックスを行い、14,200gで10分間遠心分離して、上清を口径0.45ミクロンのメンブレンフィルターでろ過し、p-トルエンスルホン酸5mM、100マイクロモルEDTA,20mMBis-Tris溶液で反応させた。フロー率は0.8ml/分でフローは45°Cで行った。
【0054】
[結果]
豚においては生後21日齢程度で離乳し、生後60日齢までは増加するが、60日齢以降は一定になるとされている。従って90日齢のマイクロミニブタを用いてPHB粉末(純度94%)の短鎖脂肪酸に対する影響を観察した。糞便中の短鎖脂肪酸酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸の濃度を上記の方向で測定した。90日齢を0日目とし、これをコントロールとして20日目、40日目において糞便中の短鎖脂肪酸の濃度を測定し、コントロールからの変化率をグラフに示してある。
【0055】
90日齢のマイクロミニブタにおいて40日間にわたってPHB粉末(純度94%)混餌投与したときの糞便中の短鎖脂肪酸の濃度の変化:酢酸及びプロピオン酸の増加は顕著であり、3-5倍程度に増加した。また酪酸の増加も有意であったが、乳酸の有意な増加は観察されなかった(
図8)。
【0056】
以上の結果より、従来食物繊維が腸内細菌により分解されプロピオン酸等を遊離する旨の説があったが、それとは異なりPHBが腸内細菌により分解され、プロピオン酸等を遊離することも、試験により明確となった。また、PHBの投与により、糞便中のpHは有意に減少した(8.2から7.5)(
図9)。弱酸性の腸内環境が誘導されたと評価できる。
【0057】
<試験例3(
図10)>
[方法]
10歳以上の猫10匹から採血し、尿素窒素(BUN)及びクレアチニン(CRE)を測定し、ステージ2以上に進んだCKDである猫2匹(猫1と猫2)を選択した。これらの2匹の猫にPHB2%(飼料に対するPHB粉末の重量比2%)を供与し、毎週採血し、BUN及びクレアチニンを3週間にわたって測定した。この試験に用いられたPHB粉末におけるPHBの純度は90%であり、数平均分子量は2000、重量平均分子量は550,000であった。
【0058】
[結果]猫1及び猫2ともに3週間後にBUNが低下した。従ってPHB2%(飼料に対するPHB粉末の重量比2%)供与すると猫CKDは抑制されることが明らかになった。
【産業応用の可能性】
【0059】
「抗菌性成長促進剤」に依存しない養豚業:現場の養豚家が最も必要とする飼料添加剤は、豚の成長促進剤である。成長促進剤とは、市場に出していい体重にできるだけ早く到達させる製剤である。現在最も広く用いられている成長促進剤は「抗菌性成長促進剤」と呼ばれるものである。これらの殆どは医学の分野で用いられる「抗生物質」であり、家畜での抗生物質の大量使用が耐性菌の発生・拡散の温床ともなっているといわれ、「抗菌性成長促進剤」に依存しない養豚業の確立が求められている。また抗生物質による成長促進は最小の飼料で大きく太らせる、いわば「肥満の豚」を生み出している可能性が高い。
【0060】
「短鎖脂肪酸」と「腸内細菌」:「抗菌剤非依存性畜産のガイドライン」(平成15年、財団法人畜産生物科学安全研究所)では、抗生物質にかわる成長促進剤として、種々の「有機酸」(短鎖脂肪酸)とバクテリアを直接飼料に添加する「プロバイオティクス」を可能性として取り上げ、鶏と豚で検査を野外及び実験舎において検査を行った。鶏においては「有機酸」と「プロバイオティクス」どちらも有意な成長促進効果があったものの、豚においては「有機酸」または「プロバイオティクス」の単独使用及び「有機酸とプロバイオティクスの併用」においても有意な成長促進はなかった。豚において有意な成長促進がおこらなかった理由は、有機酸(短鎖脂肪酸)が1種類(フマル酸やギ酸)しか用いられていなかったことにある可能性がある。
【0061】
新たな「豚成長促進剤」:大腸内に常在する酢酸、プロピオン酸及び酪酸の全体を押し上げて、腸内環境を弱酸性に変えてしまうPHB粉末を用いれば、成長促進を豚でも誘導できる可能性が高い。すなわち腸内細菌を活性化して酢酸やプロピオン酸などの有機酸(短鎖脂肪酸)を増加させるPHB粉末は、豚用の新たな「豚成長促進剤」となる可能性がある。そこで、PHB粉末を有効成分とする豚成長促進剤を開発することで、養豚業において大幅なコストの低下をもたらし、日本の養豚業の健全な発展に貢献することができる。さらに日本のみならず、全世界の養豚業に大きな貢献をできる可能性は高い。
【0062】
新たな「整腸剤」:大腸内に常在する酢酸、プロピオン酸及び酪酸の全体を押し上げて、腸内環境を弱酸性に変えてしまうPHB粉末は、下痢や軟便が多い豚において腸内環境を正常に戻し、整腸剤として期待できる。
【0063】
新たな「CKD抑制剤」:大腸内に常在する酢酸、プロピオン酸及び酪酸の全体を押し上げて、腸内環境を弱酸性に変えてしまうPHB粉末は、CKDが頻発する猫において免疫応答を正常に戻し、CKD抑制剤として期待できる。
【0064】
哺乳類は共通の腸内細菌が多く、ヒトや豚で有意な酪酸菌などは、ラット、犬や猫でも共通にみられる(Ericsson AC. The use of non-rodent model species in microbiota studies. Lab Anim. 2019 Jun;53(3):259-270.)。特に犬と猫の間では同じ食肉目であるため共通点が多い(Grzeskowiak L, Endo A, Beasley S, Salminen S. Microbiota and probiotics in canine and feline welfare. Anaerobe. 2015 Aug;34:14-23.)これらのことから、PHBの豚での整腸作用は猫や犬でも起こるはずのものである。
【0065】
同様に、PHBによるネコでのCKD抑制作用は犬でも起こるはずのものである(Zhang J, Rodriguez F, Navas MJ, Costa-Hurtado M, Almagro V, Bosch-Camos L, Lopez E, Cuadrado R, Accensi F, Pina-Pedrero S, Martinez J, Correa-Fiz F. Fecal microbiota transplantation from warthog to pig confirms the influence of the gut microbiota on African swine fever susceptibility. Sci Rep. 2020 Oct 19;10(1):17605.)。
【0066】
[製剤の形態]
本発明の「遊離剤」、「改善剤」「整腸剤」、「抑制剤」は「経口剤」の形態をとる。本実施形態に係る経口剤は、有効成分であるPHB粉末を、生理学的に許容されうる担体、賦形剤、結合剤、希釈剤等と混合することにより製造することができる。経口剤は、経口摂取することができる形態で製造される(WO2020/25098017、PCT/JP2020/023042)経口剤としては、例えば、食品、頼粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、又は懸濁剤等が挙げられる。
【0067】
経口剤は、薬学的に許容される添加剤とともに製剤化することができる。薬学的に許容される添加剤としては、例えば、賦形剤、担体、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、緩衝剤、コーティング剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤、香料等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、デンプン、マン二卜ール等が挙げられる。担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラク卜ース、ペクチン、デキス卜リン、澱粉、ゼラチン、卜ラガン卜、メチルセルロース、ナトリウムカルポキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。崩壊剤としては、炭酸カルシウム、力ルポキシメチルセルロースカルシウム等が挙げられる。結合剤としては、例えば、α化デンプン、アラビアゴム、力ルポキシメチルセルロース、ポリビニールピ口リドン、ヒド口キシプ口ピルセルロース等が挙げられる。滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等が挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。コーティング剤は、例えば、昧をマスキングすることを目的として、あるいは、腸溶性又は持続性を確保することを目的として添加される。コーディング剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテー卜フタレート、ヒド口キシプ口ピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギッ卜(メタアクリル酸-アクリル酸共重合物)等が挙げられる。
【0068】
経口剤を製造するためには、まず、PHB粉末に対し、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤又は滑沢剤(タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール600等)を添加して圧縮成形する。続いて、必要により、圧縮成形したPHB粉末をコーティング剤でコーティングする。
【0069】
[経口剤の調整]
PHB粉末を含む経口剤は、ヒ卜や動物向けの健康食品又はペット療法食(WO2020/25098018、PCT/JP2020/023042)に配合することができる。各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等をPHB粉末とともに健康食品等に配合してもよい。健康食品等は、液状、半液体状もしくは固体状にしたもの、又は、ペース卜状にしたものであってもよい。健康食品等は、通常の食品の形状であっても、サプリメン卜のような栄養補助食品の形状であってもよい。
【0070】
健康食品等の包装には、ケトン体の濃度を増加させることにより治療、予防又は改善しうる疾患又は状態の治療、予防又は改善する機能が表示されていてもよく、抗酸化能、解毒能、又は、抗炎症能が表示されていてもよい。健康食品等は、飲料であってもよく、通常の飲料の製造に用いられている糖類、香料、果汁、食品添加剤等を適宜添加することができる。本発明による食品は様々な形態をとることができ、公知の医薬品の製造技術に準じて本発明による食品を製造してもよい。その場合には、上述した添加剤を用いて製造することができる。
【0071】
PHB粉末を含む経口剤や食品等を投与又は摂取する場合、PHB粉末の投与量又は摂取量は、治療対象の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明によるPHB粉末を健康食品として投与する場合、PHB粉末の有効量として、成人1人当たり10-2000mg/kg体重(好ましくは100-100Omg/kg体重)の範囲で1日1回又は数回の投与単位に分割して投与することができる。なお、これらの投与量又は摂取量は、成人の体重を60kgと仮定して、体重60kgの成人1人1日あたりのPHBの摂取量もしくは投与量として、必要により計算することによって表すことができる。
【0072】
プロピオン酸または酢酸遊離剤としてのPHB粉末は、以下の疾患に対して効果が期待できる。多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、急性出血性白質脳脊髄炎、ハースト病、脳脊髄炎、視神経炎、脊髄病変、急性壊死性脊髄炎、横断性脊髄炎、慢性進行性ミエロパシー、進行性多巣性白質脳症、放射線ミエロパシー、HTLV-1関連ミエロパシー、単層性独立性脱髄、橋中心髄鞘崩壊症、白質ジストロフィー、炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、急性ギラン-バレー症候群、多発神経炎、重症筋無力症、イートン-ランバート症候群、脳脊髄炎、炎症性腸疾患、クローン病、ループス、全身性エリテマトーデス、喘息、レーバー病、デビック病、フリードライヒ運動失調症、ミトコンドリア中枢神経系疾患、強皮症、ブドウ膜炎、抗リン脂質抗体症候群、多発性関節炎、多関節型若年性特発性関節炎、鎌状赤血球病、強直性脊椎炎、筋炎、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性末梢ニューロパシー、頭部損傷、脳卒中、HIV-認知症、心筋梗塞、狭心症、心不全、乾癬、乾癬性関節炎、シェーグレン症候群、糖尿病、水疱形成性皮膚疾患、サルコイドーシス、変形性関節症、潰瘍性大腸炎、脈管炎、肺線維症、特発性肺線維症、肝線維症、腎線維症、急性腎障害、慢性腎疾患、糖尿病性腎硬化症、移植片対宿主反応、橋本甲状腺炎、グレーブス病、悪性貧血、肝炎、神経皮膚炎,網膜色素変性症、ミトコンドリア脳筋症、梅毒性骨軟骨炎(ヴェグナー病)、大理石様皮膚(リベド血管炎)、ベーチェット病、汎動脈炎、変形性関節症、痛風、動脈硬化症、ライター病、肺肉芽腫症、脳炎、エンドトキシンショック(肺血性毒素ショック)、敗血症、肺炎、拒食症、レンネルトT-リンパ腫症、メサンギウム腎炎、血管形成後の再狭窄、再灌流症候群、サイトメガロウイルス網膜症、アデノウイルス性疾患、AIDS、ヘルペス後神経痛、帯状疱疹後神経痛、多発性単ニューロパシー、嚢胞性線維症、ベヒテレフ病、バレット食道、エプスタイン-バーウイルス感染、心臓リモデリング、間質性膀胱炎、ヒト腫瘍放射線増感、化学療法剤に対する悪性細胞の多耐性、環状肉芽腫、癌、慢性閉塞性肺疾患、気管支平滑筋細胞のPDGF誘発性チミジン取込み、気管支平滑筋細胞増殖、副腎白質ジストロフィー、アルコール依存症、アルパース病、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、牛海綿状脳症、脳性麻痺、コケーン症候群、皮質基底核変性症、クロイツフェルト-ヤコブ病、家族性致死性不眠症、前頭側頭葉変性症、ケネディ病、レヴィー小体認知症、神経ボレリア症、マシャド-ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多系統萎縮症、ナルコレプシー、ニーマン-ピック病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する脊髄の亜急性連合変性症、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルゼウスキー病、脊髄癆、中毒性脳症、MELAS(ミトコンドリア脳筋症;乳酸アシドーシス;脳卒中)、MERRF(ミオクローヌス癲癇赤色ぼろ線維)、PEO(進行性外眼筋麻痺)、リー症候群、MNGIE(ミオパシーおよび外眼筋麻痺;ニューロパシー;胃腸;脳障害)、カーンズ-セイヤー症候群、NARP、遺伝性痙性対麻痺、ミトコンドリア性ミエロパシー,視神経炎、進行性多巣性白質脳症、壊疽性膿皮症、頭皮のびらん性膿疱性皮膚症、スイート症候群、腸関連皮膚症-関節炎症候群、膿疱性乾癬、急性汎発性発疹性膿疱症、膿漏性角皮症、スネドン-ウィルキンソン病、皮膚襞の無菌性膿疱症、乳児肢端膿疱症、一過性新生児膿疱症、好中球性エクリン汗腺炎、リウマチ好中球性皮膚炎、好中球性じんましん、スティル病、有縁性紅斑、未分類間欠熱症候群/自己炎症性症候群、水疱性全身性エリテマトーデス、手の甲の好中球性皮膚病(膿疱性脈管炎)、過敏症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、肺癌、喘息の重度の窒息のエピソード、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、虚血再灌流障害、多臓器機能不全を伴う敗血症、分類不能大腸炎、鎌状赤血球クリーゼ、急性胸部症候群、強皮症性肺疾患、慢性喘息、放射線誘発性線維症サルコイドーシス、肺高血圧症、気管支肺異形成症(BPD)、肺移植による拒絶反応、肺GVHD合併症、移植レシピエントにおける間質性肺炎症候群(IPS)、COPD、珪肺症、石綿肺症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、アルコール誘発性肝線維症、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎(HepB、C)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝移植による拒絶反応、GVHDの肝合併症、移植レシピエントにおける静脈閉塞症、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性腎症、IgA腎症、GVHDの腎合併症(AKI臓器移植後臓器機能障害)、CABG後の急性腎破壊(CABG後のAKI)、ループス腎炎、高血圧症誘発性腎線維症、HIV-関連腎症、腹膜透析誘発性腹膜線維症、後腹膜線維症、特発性糸球体硬化症、腎移植による拒絶反応、アルポート症候群、再狭窄、くも膜下出血(SAH)、心臓移植による拒絶反応、美容整形、慢性創傷、火傷、手術癒着、ケロイド、ドナー移植片再上皮化、骨髄線維症、角膜移植、LASIX、トラベクレクトミー、全身性硬化症、放射線誘発性線維症、膝蓋周囲線維症、デュピュイトラン拘縮、ジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ肉腫、リンパ芽球腫白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、血管腫、血管内皮腫、血管外皮細胞腫、血管肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、線維肉腫、食道扁平上皮癌、膵臓癌、胃腸腫瘍、結腸癌、直腸癌、胃癌、リンパ管腫、脳腫瘍、神経芽細胞腫、シュワン鞘腫、クロム親和細胞腫、肺癌、頭部および頚部扁平上皮癌、メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌、平滑筋腫、平滑筋肉腫、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、頚管癌、腎臓癌、前立腺癌である。
【0073】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【要約】
(1)重量平均分子量1万以上のPHB粉末を含むプロピオン酸遊離剤、(2)重量平均分子量1万以上のPHB粉末を含む酢酸遊離剤、(3)豚の腸内細菌にプロピオン酸または酢酸を遊離させる、重量平均分子量1万以上のPHB粉末を含む豚成長促進剤などを提供する。