IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社松風の特許一覧

特許7138404イオン徐放性ガラス粒子を含有する歯科用ブラシ毛材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】イオン徐放性ガラス粒子を含有する歯科用ブラシ毛材
(51)【国際特許分類】
   A46D 1/00 20060101AFI20220909BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A46D1/00 101
A46B15/00 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017250395
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019115430
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】八穴 啓史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】中塚 稔之
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142363(JP,A)
【文献】特許第5660650(JP,B1)
【文献】特開2007-089985(JP,A)
【文献】特開2005-130914(JP,A)
【文献】特開2015-227310(JP,A)
【文献】特開2015-227313(JP,A)
【文献】特開2015-227311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46D 1/00
A46B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン徐放性ガラス粒子(a)と合成樹脂(b)を含む歯科用ブラシ毛材であって、
前記イオン徐放性ガラス粒子(a)のガラス組成範囲は、
SiO2 15~35質量%、
Al2O3 15~30質量%、
B2O3 5~20質量%、
SrO 20~45質量%、
F 5~15質量%、
Na2O 0~10質量%
を含み、
前記イオン徐放性ガラス粒子(a)は、
フッ化物イオン、および2~4価のイオンのうち一種類以上のイオンを徐放することを特徴とし、
前記歯科用ブラシ毛材におけるイオン徐放性ガラス粒子(a)の配合量が、2~15重量%であり、
前記合成樹脂(b)が、ナイロン系樹脂であることを特徴とする歯科用ブラシ毛材。
【請求項2】
イオン徐放性ガラス粒子(a)の平均粒子径が、0.01~100μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用ブラシ毛材。
【請求項3】
前記歯科用ブラシ毛材における合成樹脂(b)の配合量が、75~99重量%であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用ブラシ毛材。
【請求項4】
請求項1~5のいずれかに記載の歯科用ブラシ毛材を備えることを特徴とする歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシ、歯間ブラシ、歯科用フロス、歯科用研磨ブラシ等の口腔内用ブラシに好適な歯科用ブラシ毛材に関するものである。さらに詳しくは、イオン徐放性ガラス粒子と合成樹脂を含む歯科用ブラシ毛材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用ブラシには、歯ブラシ、歯間ブラシ、歯科用フロス、歯科用研磨ブラシ等があり、主に口腔内を清掃するために用いられる。従来、歯科用ブラシの植毛する毛の太さ、毛の量、毛のコシ、毛の材質、毛先端の構造、毛の本数、歯ブラシの柄の形状・構造等、物理的な要素によるブラッシングで、口腔内の硬軟組織からプラークを除去し、口腔内の健全化を保持してきた。
【0003】
口腔内において、歯質からカルシウムイオンとリン酸イオンが溶出する「脱灰」と歯質にカルシウムイオンとリン酸イオンが取り込まれる「石灰化」が平衡状態にある場合、歯質は健康な状態に保たれる。しかしながら、飲食等により口腔内が酸性に傾くと脱灰と石灰化の平衡関係が崩れ、脱灰が有利になり、歯質からカルシウムイオンとリン酸イオンが過剰に溶出し、齲蝕へと進行する。歯科用ブラシを用いて口腔清掃を行う際、ブラッシングにより物理的にプラークを除去するだけではなく、歯質に対する再石灰化効果を高め、歯質の耐酸性を向上させることも求められている。通常、歯科用ブラシを用いて口腔内を清掃する際、通常は歯科用ブラシと併用してFイオンやCa2+イオンを含む歯磨剤を用いることで、歯質に対する再石灰化効果を高めている。しかし、災害時や介護の現場等、歯磨剤を用いることが困難な現場もあり、歯科用ブラシのみの使用で歯質を強化させることが求められている。
【0004】
歯科用ブラシに新たな機能を付与する様々な試みが行われている。例えば、特許文献1では、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム等のミネラル成分で毛をコーティングした歯ブラシおよびその製造方法が提案されている。特許文献1の記載によれば、長い期間に亘って、ブラシ毛の撥水、雑菌の付着繁殖防止の機能を得ることができるというものである。しかしながら、歯ブラシは毎日複数回使用するものであるため、毛に施したコーティングは使用回数に従い徐々に磨耗していくため、長期間の撥水、雑菌の付着繁殖防止機能を得ることは難しかった。
【0005】
また、特許文献2には、金、銀、並びに銀イオン及び/又は亜鉛イオンを担持した多孔質担体を含有する樹脂からなるブラシ毛を有する歯ブラシが提案されている。特許文献2の記載によれば、金属イオンの効果により、ブラシ毛に高い抗菌力を付与することが可能であり、また抗菌力が持続することができるというものである。しかしながら、使用されている金属担体は高価な場合があり、また、歯質の再石灰化や耐酸性強化については記載されていない。
【0006】
特許文献3には、水溶性金属塩を含有する歯ブラシ用毛が提案されている。特許文献3の記載によれば、口腔内のFイオンやCa2+イオンを効率よく歯の内部組織へ取り込むことができ、高い歯の再石灰化効果が得られ、口腔内の健康増進が可能となるというものである。しかしながら、使用されている金属塩は水溶性であるため、長期間の金属イオンを溶出させることは難しかった。また、水溶性金属塩を配合することで、毛材の強度が低下することより、長期間の使用に耐えうる物性を確保することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-040390号公報
【文献】特開2016-067522号公報
【文献】特開2009-142363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、歯科用ブラシによる口腔清掃では、ブラッシングにより物理的にプラークを除去するだけではなく、歯質に対する再石灰化効果や、耐酸性を向上させることが求められているものの、上記の効果を長期間において継続させることは困難であった。本発明は、高いプラーク除去効果と、長期間における歯質に対する再石灰化効果、耐酸性向上効果を併せ持つ、歯科用ブラシ毛材を提供することを課題とする。また、併せて長期間の使用に耐え得る、ブラシ毛材の高い曲げ強度及び抗菌性を有するブラシ毛材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を克服するために鋭意検討を行った結果、
イオン徐放性ガラス粒子(a)と合成樹脂(b)を含み、
イオン徐放性ガラス粒子(a)が、フッ化物イオン、および2~4価のイオンのうち一種類以上のイオンを徐放することを特徴とする歯科用ブラシ毛材が上記課題を解決することができることを見出した。
歯科用ブラシ毛材に対するイオン徐放性ガラス粒子(a)の配合量は、1~95重量%であることが好ましく、また平均粒子径は、0.01~100μmであることが好ましい。また、イオン徐放性ガラス粒子(a)は、シリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラスから選ばれる一種以上を含むことが好ましい。加えて、合成樹脂(b)の配合量は、5~90重量%であることが好ましく、ナイロン系樹脂であることが好ましい。
【0010】
本発明の歯科用ブラシ毛材は、歯ブラシ、歯間ブラシ、歯科用フロス、歯科用研磨ブラシ等の口腔内清掃器具に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯科用ブラシ毛材は、高いプラーク除去効果と、長期間における歯質に対する再石灰化効果、耐酸性向上効果を併せ持つものである。加えて、毛材が高い曲げ強度および抗菌性を示すことにより、本発明のブラシ毛材は長期間衛生的に用いることができる。
具体的には、イオン徐放性ガラス粒子を歯科用ブラシ毛材に含むことによって、毛材に高い曲げ強度を付与することができ、毛材に適度なコシが生まれ、高いプラーク除去効果が得られる。また、毛材の強度が高くなる結果、長期間のブラッシングに耐えうる耐久性を与えることができる。本発明の歯科用ブラシ毛材に含まれるイオン放出性ガラス粒子からは、フッ化物イオンおよび2~4価のイオンのうち一種類以上のイオンが徐放されることによって、歯質強化、二次齲蝕抑制、脱灰抑制、再石灰化等にも影響を与えるなど口腔内環境の健全化に対して優れた効果を発現することも期待できる。さらに、イオン放出性ガラス粒子からのイオン徐放によって、毛材自体に抗菌効果を付与することができるため、長期間衛生的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の歯科用ブラシ毛材は、イオン徐放性ガラス粒子(a)と合成樹脂(b)を含む歯科用ブラシ毛材であって、イオン徐放性ガラス粒子(a)が、フッ化物イオン、および2~4価のイオンのうち一種類以上のイオンを徐放することを特徴する。
【0013】
イオン徐放性ガラス粒子(a)
イオン徐放性ガラス粒子(a)は、フッ化物イオン、および2~4価のイオンのうち一種類以上のイオンを徐放することを特徴とする。イオン徐放性ガラス粒子(a)は、シリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラスから選ばれる一種以上を含み、ガラス組成に基因したイオンが持続的に徐放されることが好ましい。イオン種は、フッ化物イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、マンガンイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、ホウ酸イオン、ケイ酸イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニアイオン、チタニウムイオン等であり、複数のイオンが同時に徐放される。
【0014】
イオン徐放性ガラス粒子から徐放されるイオンに関して、フッ化物イオンは歯質強化、二次齲蝕抑制、脱灰抑制、再石灰化等にも影響を与えるなど口腔内環境の健全化に対して優れた効果を発現することが期待できる。ストロンチウムイオンあるいはアルミニウムイオンは口腔内に徐放されることで、これらのイオンによる酸中和効果が発現し、口腔内環境が酸性に傾いた場合、中性へと移行させることができ、齲蝕の抑制効果及び酸緩衝能効果が期待される。さらに、ホウ酸イオンは、抗菌、静菌効果により細菌の増殖を抑制することができ、口臭の予防、歯周病の予防等に効果的であり、またブラシ毛自体に抗菌性を付与することができるため、長期間衛生的に使用することが可能である。
【0015】
本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子(a)は、シリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラスから選ばれる一種以上を含むことが好ましく、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でもガラス骨格形成元素としてシリカ、アルミニウム、ボロンを含み、且つガラス修飾元素としてフッ素、ナトリウム、ストロンチウムを含むことが特に好ましく、具体的にはストロンチウム、ナトリウムを含んだシリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラス等が好適に用いられる。さらに、フッ化物イオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ホウ酸イオンを徐放する観点から、より好ましくはナトリウム、ストロンチウムを含んだフルオロアルミノボロシリケートガラスであり、そのガラス組成範囲はSiO2 15~35質量%、Al2O3 15~30質量%、B2O3 5~20質量%、SrO 20~45質量%、F 5~15質量%、Na2O 0~10質量%となる。このガラス組成は元素分析、ラマンスペクトルおよび蛍光X線分析等の機器分析を用いることにより確認することができるが、いずれかの分析方法による実測値がこれらの組成範囲に合致していれば何等問題はない。
【0016】
イオン徐放性ガラス粒子(a)の製造方法においては特に制限はなく、溶融法あるいはゾルーゲル法等の製造方法で製造することができる。その中でも溶融炉を用いた溶融法で製造する方法が原料の選択も含めたガラス組成の設計のし易さから好ましい。
本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子は非晶質構造であるが、一部結晶質構造を含んでいても何等問題はなく、さらにそれらの非晶質構造を有するガラスと結晶構造を有するガラスの混合物であっても何等問題はない。ガラス構造が非晶質であるか否かの判断はX線回折分析や透過型電子顕微鏡等の分析機器を用いて行うことができる。その中でも本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子は外部環境におけるイオン濃度との平衡関係により各種イオンが徐放することから、均質な構造である非晶質構造であることが好ましい。
【0017】
さらにイオン徐放性ガラス粒子と合成樹脂との親和性を向上させるために、ガラス表面を表面処理することにより機能化してイオン徐放性を向上させることもできる。表面処理に用いる表面処理材を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、モノマー、ポリマー、各種カップリング材、シラン化合物、金属アルコキシド化合物及びその部分縮合物等が挙げられる。好ましくは酸性ポリマー及びシラン化合物を表面処理材として用いることである。
【0018】
これらの表面処理材の中でも、本発明の歯科用ブラシ毛材について、高いプラーク除去効果と、長期間の使用に耐え得る、ブラシ毛材の高い曲げ強度を得るために、本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子をシランカップリング材により表面処理することができる。そのシランカップリング材を具体的に例示するとビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0019】
また、本発明の本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子を酸性ポリマー及びシラン化合物を用いて複合表面処理を行うこともできる。この複合表面処理はシラン化合物によりイオン徐放性ガラス粒子表面に被覆した後に、酸性ポリマーを用いて表面処理する方法であり、以下において具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0020】
粉砕等により所望の平均粒子径に微粉砕されたイオン徐放性ガラス粒子を含有する水性分散体を調製後、一般式(I)(式中、ZはRO-、Xはハロゲン、YはOH-、Rは炭素数が8以下の有機基、n、m、Lは0から4の整数で、n+m+L=4である)で表されるシラン化合物を添加して混合し、そのシラン化合物を加水分解または部分加水分解・縮合させたポリシロキサンでイオン徐放性ガラス粒子表面を被覆する。
【0021】
【化1】
【0022】
一般式(I)で表されるシラン化合物を具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキ
シシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、
トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシ
シラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水
酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)等が挙げられ、より好ましくはテトラメトキシシランお
よびテトラエトキシシランである。
【0023】
また一般式(I)で表されるシラン化合物の低縮合体であることがより好ましく、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランを部分加水分解して縮合させた低縮合シラン化合物である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。
【0024】
またガラス粒子の含有量は水性媒体に対して25~100重量部の範囲であり、好ましくは30~75重量部の範囲である。ガラス粒子の含有量が100重量部を超える場合は縮合によるゲル化速度が速く、均一なポリシロキサン被膜層を形成しにくい。また、25重量部より少ない場合、撹拌状態下でイオン徐放性ガラス粒子が沈降したり水性媒体中で相分離が発生したりする。また、シラン化合物の添加量はガラス粒子の平均粒子径に依存するが、ガラス粒子に対してSiO2 換算で0.1~10重量部の範囲であり、好ましくは0.1~4重量部である。添加量が0.1重量部以下の場合は、ポリシロキサン被膜層形成の効果がなく、一次粒子まで解砕できず凝集したものになる。一方10重量部以上では乾燥後の固化物が硬すぎて解砕することができず、一次粒子まで戻すことができない。
【0025】
上記の水性媒体とは水及びアルコールから構成される。アルコールを加えることにより乾燥工程において表面被覆したガラス粒子の凝集性を軽減させ、より解砕性を向上させる多大な効果がある。好ましいアルコールとしては炭素数2~10のアルコール類であるが、炭素数が10以上のアルコールの添加は沸点が高く溶媒を乾燥除去するために長時間を要する。具体的なアルコールを例示するとエチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、iso-アミルアルコール、n-ヘキシルアルコールn-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-ドデシルアルコールが挙げられ、より好ましくは炭素数2~4のアルコール、例えばエチルアルコール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコールが挙げられる。アルコールの添加量は水に対して5~100重量部、好ましくは5~20重量部である。添加量が100重量部以上になると乾燥工程が複雑になる等の問題が生じる。
【0026】
その後、シラン化合物処理した水性分散体であるスラリーを乾燥し、水性媒体を除去して固化させる。乾燥は、熟成と焼成の2段階からなり、前者はゲル構造の生長と水性媒体の除去を、後者はゲル構造の強化を目的としている。前者はゲル構造にひずみを与えず、かつ水性媒体を除去することから静置で行う必要があり、箱型の熱風乾燥器等の設備が好ましい。
【0027】
以上のように乾燥により水性媒体を除去し、収縮した固化物が得られる。固化物はイオン徐放性ガラス粒子の凝集状態ではあるが、単なるガラス粒子の凝集物ではなく、個々の微粒子の境界面には縮合により形成されたポリシロキサンが介在している。したがって次の工程としてこの固化物をポリシロキサン処理前のガラス粒子相当に解砕すると、その表面がポリシロキサンで被覆されたガラス粒子が得られる。ここで「ポリシロキサン処理前のガラス粒子相当に解砕する」とは、ポリシロキサンで被覆されたガラス粒子の一次粒子に解砕することであり、元のガラス粒子と異なる点は個々の微粒子がポリシロキサンで被覆されていることである。ただし、問題ない程度であれば2次凝集物を含んでいてもよい。固化物の解砕は、せん断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては、例えばヘンシェルミキサー、クロスロータリミキサー、スーパーミキサー等を用いて行いことができる。
【0028】
前記工程で得られたポリシロキサンで被覆されたガラス粒子は酸性ポリマーと反応させる酸性ポリマー処理を施すことによって本発明の最も好ましい表面処理ガラス粒子を得ることができる。酸性ポリマー処理は酸性ポリマー溶液を含浸や噴霧等により接触させることにより行うことができる。例えばポリシロキサン被覆ガラス粒子を乾式流動させ、その流動させた状態で上部から酸性ポリマー溶液を分散させ、十分撹拌するだけでよい。このとき酸性ポリマー溶液の分散法は特に制限はないが、均一に分散できる滴下またはスプレー方式がより好ましく、その後熱処理を行う。得られた熱処理物は必要に応じて解砕を行い、表面処理ガラス粒子を得ることができる。
【0029】
反応に用いる酸性ポリマー溶液の調製に用いる溶媒は、酸性ポリマーが溶解する溶媒であれば何等制限はなく、水、エタノール、アセトン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは水であり、これは酸性ポリマーの酸性基が解離し、ポリシロキサン被覆ガラス粒子と均一に反応することができる。酸性ポリマー溶液中に溶解したポリマーの重量分子量は2000~50000の範囲であり、好ましくは5000~40000の範囲である。また酸性ポリマー溶液中に占める酸性ポリマー濃度は3~25重量部の範囲が好ましく、より好ましくは8~20重量部の範囲である。さらにポリシロキサン被覆ガラス粒子に対する酸性ポリマー溶液の添加量は6~40重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10~30重量部である。この添加量で換算するとポリシロキサン被覆ガラス粒子に対する酸性ポリマー量は1~7重量部、また水量は10~25重量部の範囲が最適値となる。
【0030】
上記の方法によりポリシロキサン被覆ガラス粒子の内側に酸性ポリマー反応相を形成させるために用いることのできる酸性ポリマーは、酸性基として、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基、スルホン酸基等の酸性基を有する重合性単量体の共重合体または単独重合体であれば何等問題なく用いることができる。これらの重合性単量体を具体的に例示するとアクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、グルタコン酸、シトラコン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2-ジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2'-ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、ピロリン酸ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられる。これらの重合性単量体を用いて(共)重合された重合体の中でもポリシロキサン被覆ガラス粒子中に含まれる酸反応性元素との酸-塩基反応が比較的遅い、α基反不飽和カルボン酸の単独重合体または共重合体を用いることが好ましく、具体的にはアクリル酸重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-イタコン酸共重合体等が挙げられる。
【0031】
歯科用ブラシ毛材に対するイオン徐放性ガラス粒子(a)の配合量が、1~25重量%であることが好ましく、特に好ましくは2~15重量%である。1重量%未満であるとイオン徐放量が著しく少なくなるという問題があり、一方25重量%を越えると合成樹脂にイオン徐放性ガラス粒子が分散しないという問題が懸念される。また、歯科用ブラシ毛材にイオン徐放性ガラス粒子を配合することで、長期間の使用に耐えうる耐久性(曲げ強度)を付与することができ、また高いプラーク除去効果を得ることができる。口腔内使用に適した曲げ強度を付与し、また適度なブラシのコシによる高いプラーク除去効果を得る観点からも、イオン徐放性ガラス粒子(a)の配合量が、1~25重量%であることが好ましく、特に好ましくは2~15重量%である。
【0032】
本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子(a)からの各種イオンの徐放はガラスの粒子径によって影響を受けるため湿式又は/及び乾式の粉砕、分級、篩い分け等の方法により粒子径を制御する必要がある。そのため本発明に用いるイオン徐放性ガラス粒子の一次粒子径(50%)は0.01~100μmの範囲であれば特に制限はないものの、好ましくは一次粒子径が0.2~40μmの範囲、さらに好ましくは1~5μmの範囲である。また、ガラスの形状は球状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状でよく、特に何等制限はないが、好ましくは球状あるいは破砕状である。
【0033】
また、イオン徐放性ガラス粒子(a)の粒子径は、歯科用ブラシ毛材の製造工程にも深く関連する。毛材を溶融紡糸する場合、粒子径が100μmを越える場合、紡糸口金から押し出す際に粒子詰まりが起こり、製造が困難になる場合がある。製造工程上好ましい粒子径は、0.2~40μmである。
【0034】
合成樹脂(b)
合成樹脂(b)は、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610、ナイロン612、等のナイロン系樹脂、ポリメチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂のうち1つ以上を含むことが好ましい。特に好ましくは、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610、ナイロン612、等のナイロン系樹脂である。ナイロン系樹脂はイオン徐放性ガラス粒子を含んだ際の強度が適度であり、吸水量が多く、イオン徐放性ガラス粒子からのイオン徐放が最も起こりやすい。吸水量の高い樹脂はイオンを外界に徐放するまたは系内に取り込むことが容易であり、徐放量の視点で捉えると、水分を吸収した直後から多量のイオンを徐放または取り込むことを可能とする。
【0035】
歯科用ブラシ毛材に対する合成樹脂(b)の配合量は、75~99重量%であることが好ましく、特に好ましくは85~98重量%である。75重量%未満であると合成樹脂にイオン徐放性ガラス粒子が分散しないという問題があり、99重量%を越えるとイオン徐放量が著しく少なくなるという問題が懸念される。所望のイオンが歯科用ブラシ毛材を水中浸漬させた初期から徐放され、且つコシのある適度なブラッシング効果を発現できる通常の口腔内用の歯科用ブラシとしての機能を発現させるためには、85~98重量%が特に好ましい。
【0036】
歯科用ブラシ毛材の直径は、10~500μmが好ましく、更に好ましくは50~300μmである。75~200μmが特に好ましい。10μm未満であるとコシのない適度なブラッシング効果を発現できないという問題があり、500μm以上であると毛材が硬すぎて口腔内の軟組織の著しい磨耗、軟組織からの出血、感染を引き起こすという問題が懸念される。コシのある適度なブラッシング効果を発現できる通常の口腔内用の歯科用ブラシとしての機能を発現させるためには、75~200μm特に好ましい。
【0037】
歯科用ブラシ毛材の製造方法は、イオン徐放性ガラス粒子(a)を合成樹脂(b)に一旦分散され、コンパウンドにしたものを紡糸し、イオン徐放性ガラス粒子配合の合成樹脂繊維となる。
製造方法は特に限定されないが、例示するとロール式の混練機を用いて所定の合成樹脂にイオン徐放性ガラス粒子を添加しながら、1torrの真空化にて加熱(200~400℃)・練り込みを行う。
【0038】
本発明の歯科用ブラシ毛材には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増色剤、艶消し剤、着色剤、帯電防止剤、吸湿剤、無機微粒子等の公知の材料を含むことができる。
【実施例
【0039】
以下に実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例において採用した歯科用ブラシ毛材の性能評価は次の通りである。
【0040】
[イオン徐放性ガラス1粒子の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料(ガラス組成:SiO2 23.8質量%、Al2O3 16.2質量%、B2O3 10.5質量%、SrO 35.6質量%、Na2O 2.3質量%、F11.6質量%)をボールミルを用いて均一に混合し原料混合品を調製した後、その原料混合品を溶融炉中で1400℃にて溶融した。その融液を溶融炉から取り出し冷鋼板上、ロールまたは水中で冷却してガラスを生成した。4連式振動ミルのアルミナポット(内容積3.6リットル)中に直径6mmφのアルミナ玉石4kgを投入後、上記で得たガラスを500g投入して40時間粉砕を行った。このイオン徐放性ガラス1の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.2μmであった。
【0041】
[イオン徐放性ガラス粒子2の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料(ガラス組成:SiO2 23.8質量%、Al2O3 16.2質量%、B2O3 10.5質量%、SrO 35.6質量%、Na2O 2.3質量%、F11.6質量%)をボールミルを用いて均一に混合し原料混合品を調製した後、その原料混合品を溶融炉中で1400℃にて溶融した。その融液を溶融炉から取り出し冷鋼板上、ロールまたは水中で冷却してガラスを生成した。4連式振動ミルのアルミナポット(内容積3.6リットル)中に直径6mmφのアルミナ玉石4kgを投入後、上記で得たガラスを500g投入して40時間粉砕を行った。前記ガラスを500g、シラン化合物(予めテトラメトキシシラン5g、水1000g及びエタノール100gを2時間室温で撹拌し得られたシラン化合物の低縮合物)を万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを得た。このポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラス500gを撹拌しつつ、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量%、重量平均分子量20000;ナカライ社製)をヘンシェルミキサーを用いて噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、表面処理したイオン徐放性ガラス2を製造した。このイオン徐放性ガラス1の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.3μmであった。
【0042】
[イオン徐放性ガラス3粒子の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、1400℃にてその混合物を溶融してガラス(ガラス組成:SiO2 19.8質量%、Al2O3 19.8質量%、B2O3 11.7質量%、SrO 35.0質量%、Na2O 2.3質量%、F11.4質量%)を得た。次に生成したガラスを振動ミルを用いて10時間粉砕し、ガラス3を得た。このイオン徐放性ガラス3の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、3.1μmであった。
【0043】
その他粒子
SOC5:シリカ粒子(SO-C5、平均粒径=1.6μm:アドマテックス社)
NaF:フッ化ナトリウム粉末(ナカライテスク社)
【0044】
前記のイオン徐放性ガラス粒子およびその他粒子を用いて、表1に示す組成に従い、ロール式の混練機を用いてイオン徐放性ガラス粒子またはその他粒子を合成樹脂に一旦分散し、コンパウンドにしたものを直径150μmに紡糸することで作製した。実施例4および8については、ガラス粒子の配合量が高くコンパウンドの粘度が高いため、紡糸する際の押し出しが硬く成型に時間を要した。
【0045】
(1)ICP-MSによるイオン徐放量測定
表1に示した組成について直径150μmに紡糸し、繊維状に加工した。歯ブラシ様に1.5cmにカットし、約1,000本(平均的な歯ブラシの植毛量)をイオン交換水15mLに24時間浸漬させ、徐放されたイオン量をICP-MS(株式会社島津製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
イオン徐放性ガラス粒子を配合したブラシ毛材である実施例1~14は、F、B、Al、Sr、Naのイオンが徐放されていることが確認された。フッ化物イオンは歯質強化、二次齲蝕抑制、脱灰抑制、再石灰化等にも影響を与えるなど口腔内環境の健全化に対して優れた効果を発現することが期待できる。ストロンチウムイオンあるいはアルミニウムイオンは口腔内に徐放されることで、これらのイオンによる酸中和効果が発現し、口腔内環境が酸性に傾いた場合、中性へと移行させることができ、齲蝕の抑制効果及び酸緩衝能効果が期待される。さらに、ホウ酸イオンは、抗菌、静菌効果により細菌の増殖を抑制することができ、口臭の予防、歯周病の予防等に効果的であり、またブラシ毛自体に抗菌性を付与することができるため、長期間衛生的に使用することが可能である。
イオン放出性ガラス粒子および合成樹脂の種類別で比較すると、組成中のイオン放出性ガラス粒子の配合量が増加するに従ってイオン徐放量が増加する傾向が確認された。実施例1~5と実施例6~10の比較により、合成樹脂にナイロン6を用いた方がポリブチレンテレフタレートを使用した場合と比較してイオン徐放量が多いことが明らかになった。また、イオン徐放性ガラス粒子に対して、表面処理を行っていない実施例1~5と、表面処理を行っている実施例11、12と比較した場合、表面処理を行っていないガラス粒子の方がイオン徐放量が多い結果となった。
比較例1と比較例2はイオン徐放性ガラス粒子を配合していないため、F、Al、Srのイオン徐放は確認されなかった。また、NaF粉末を配合した比較例3、4では、FおよびNaにおいて、高いイオン徐放が確認された。シリカ粒子を配合した比較例5,6においては、F、Al、Srのイオン徐放は確認されなかった。
【0048】
(2)CP-MSによる経時的イオン徐放量測定
(1)と同様の試験方法において、イオン交換水に対する浸漬時間を5分、24時間として、経時的なイオン徐放量測定を行った。結果を表2に示す。



【0049】
【表2】

【0050】
実施例1~5、11~14については、浸漬時間5分であってもF、B、Al、Sr、Naのイオンが徐放されていることが確認された。イオン徐放量は浸漬時間24時間と比較すると少ないことから、経時的にイオンが徐放されていることが明らかになった。比較例1においては、浸漬時間5分、24時間の双方でF、Al、Srのイオン徐放は確認されなかった。比較例3,4については、浸漬時間5分であってもFおよびNaにおいて、高いイオン徐放が確認された。シリカ粒子を配合した比較例5,6においては、F、Al、Srのイオン徐放は確認されなかった。
【0051】
(3)使用試験結果
表1に示す実施例1~5、比較例1、3、5について、直径150μmに紡糸して繊維状に加工しブラシ毛を作製した。ナイロン6樹脂に、規定量のイオン徐放性ガラス粒子を分散して紡糸したブラシ毛と、ナイロン6樹脂にNaFまたはSOC5を分散して紡糸したブラシ毛を、歯ブラシの柄に植毛し、ブラシ面が水平になるように毛先を切り揃え歯ブラシを作製した。作製した歯ブラシに対して、口腔内での使用試験を行った。
実施例1~3の歯ブラシについては、適度に強く、口腔内の軟組織を痛めることなく、ブラシ毛の回復力もあることから歯ブラシそのものの「へたり」が少なく、長持ちする特長が得られた。実施例4の歯ブラシについては、実施例1~3と比較するとブラシ毛が硬いため口腔内に対するあたりが強いものの、歯ブラシの「へたり」が少ない性状であった。実施例5の歯ブラシについては、イオン徐放性ガラス粒子の充填量が多いため口腔内に対するあたりが強く、またブラシ毛がやや脆性をおび、使用時に中折れする毛材もあった。上記のとおり、実施例1~5においては、イオン徐放性ガラス粒子の配合量が2、5、10重量%である実施例1~3が最も好ましいブラシ毛材の特性を有しており、歯ブラシとしてのコシ、プラーク除去性も特に好ましい結果となった。
イオン徐放性ガラス粒子を配合していない比較例1の歯ブラシについては、ブラシ毛はコシが弱く、毛の変形が大きく歯ブラシとしての「へたり」が早いものであった。また歯面のプラークも、イオン徐放性ガラス粒子を分散したものに比べ除去性が劣り、物理的なかきとり効果も低いと考えられた。NaFを5重量%配合した比較例3の歯ブラシについては、比較例1の歯ブラシと比較して更にコシが弱い性状であり、「へたり」が早く、長期的な使用は困難である性状であった。SOC5を5重量%配合した比較例5の歯ブラシについては、ブラシ毛が非常に硬く、コシが強すぎて、口腔内のプラークのみならず軟組織にダメージを与え、歯肉退縮や出血などの弊害が懸念され、歯ブラシとしては適正なものではないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、歯ブラシ、歯間ブラシ、歯科用フロス、歯科用研磨ブラシ等の口腔内用ブラシに好適な歯科用ブラシ毛材として使用することができる。