(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】接着剤組成物、接着シート、及び封止体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20220909BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20220909BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220909BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220909BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220909BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20220909BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20220909BHJP
G02F 1/1341 20060101ALI20220909BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J123/26
C09J163/00
C09J11/06
H05B33/14 A
H05B33/04
H01L31/04 560
G02F1/1341
G02F1/1339 505
(21)【出願番号】P 2019521261
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2018020732
(87)【国際公開番号】W WO2018221572
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017107483
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017131841
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 樹
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158770(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/062167(WO,A1)
【文献】特開2008-163344(JP,A)
【文献】特開2016-040369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G09F 9/30
H01L 27/323
H01L 51/50
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層を有する接着シートであって、
前記接着剤層が、
下記の接着剤組成物
1を用いて形成された
、熱硬化性を有するものである接着シート。
〔接着剤組成物1〕
下記の(A)成分、(B)成分、及び(D)成分を含有する接着剤組成物であって、
この接着剤組成物を、厚さ10μmのシート状に成形し、次いで、これを硬化させたものを測色したときに、JIS Z 8729-1994に規定されるCIE L*a*b*表色系におけるb*値が、-2.0~+2.0であることを特徴とする接着剤組成物。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:エポキシ当量が100g/eq以上500g/eq以下である、芳香環を有しない多官能エポキシ化合物
(D)成分:イミダゾール系硬化触媒
【請求項2】
接着剤層の厚みが5~25μmである、請求項
1に記載の接着シート。
【請求項3】
さらに剥離フィルムを有する、請求項
1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記(A)成分が、酸変性ポリオレフィン系樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の接着シート。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して1~200質量部である、請求項1~4のいずれかに記載の接着シート。
【請求項6】
前記接着剤組成物1が、さらに、下記の(C)成分を含有するものである、請求項1~5のいずれかに記載の接着シート。
(C)成分:軟化点が80℃以上の粘着付与剤
【請求項7】
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して1~200質量部である、請求項6に記載の接着シート。
【請求項8】
前記(D)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して1~10質量部である、請求項1~7のいずれかに記載の接着シート。
【請求項9】
前記接着剤組成物1が、さらに、下記の(E)成分を含有するものである、請求項1~8のいずれかに記載の接着シート。
(E)成分:シランカップリング剤
【請求項10】
前記(E)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部である、請求項9に記載の接着シート。
【請求項11】
被封止物が、請求項
1~10のいずれかに記載の接着シートを用いて封止されてなる封止体。
【請求項12】
前記被封止物が、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、又は太陽電池素子である、請求項
11に記載の封止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状に成形し易く、かつ、無色透明性に優れる硬化物になる接着剤組成物、この接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を有する接着シート、及び被封止物が前記接着シートで封止されてなる封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
しかし、有機EL素子には、時間の経過とともに、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が低下し易いという問題があった。
この発光特性の低下の問題の原因として、酸素や水分等が有機EL素子の内部に浸入し、電極や有機層を劣化させることが考えられた。そのため、封止材を用いて有機EL素子を封止し、酸素や水分の浸入を防ぐことが行われてきた。
このような封止材の形成方法として、熱硬化性の樹脂シートを利用する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)ポリイソブチレン樹脂、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂、(C)粘着付与樹脂、及び(D)エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物や、この樹脂組成物を含む樹脂組成物シート等が記載されている。
特許文献1には、その樹脂組成物はシート化が容易であることや、得られた樹脂組成物シートは、有機EL素子の封止に好適に用いられることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2011/062167号(US2012/0283375 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、特許文献1の実施例に記載の接着剤組成物の硬化物は、黄みを帯びる傾向があることが分かった。したがって、無色透明性により優れる硬化物を形成し得る接着剤組成物が要望されていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、シート状に成形し易く、かつ、無色透明性に優れる硬化物を与える接着剤組成物、この接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を有する接着シート、及び被封止物が前記接着シートで封止されてなる封止体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、変性ポリオレフィン系樹脂と芳香環を有しない多官能エポキシ樹脂を組み合わせて使用し、さらに、フェノキシ構造を有する化合物を使用しない、又はその使用量を低減化することで、シート状に成形し易く、かつ、無色透明性に優れる硬化物を与える接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記(1)~(9)の接着剤組成物、(10)~(12)の接着シート、及び(13)、(14)の封止体、が提供される。
(1)下記の(A)成分、及び(B)成分を含有する接着剤組成物であって、この接着剤組成物を、厚さ10μmのシート状に成形し、次いで、これを硬化させたものを測色したときに、JIS Z 8729-1994に規定されるCIE L*a*b*表色系におけるb*値が、-2.0~+2.0であることを特徴とする接着剤組成物。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:芳香環を有しない多官能エポキシ化合物
(2)前記(A)成分が、酸変性ポリオレフィン系樹脂である、(1)に記載の接着剤組成物。
(3)前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して1~200質量部である、(1)又は(2)に記載の接着剤組成物。
(4)さらに、下記の(C)成分を含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(C)成分:軟化点が80℃以上の粘着付与剤
(5)前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して1~200質量部である、(4)に記載の接着剤組成物。
(6)さらに、下記の(D)成分を含有する、(1)~(5)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(D)成分:イミダゾール系硬化触媒
(7)前記(D)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して1~10質量部である、(6)に記載の接着剤組成物。
(8)さらに、下記の(E)成分を含有する、(1)~(7)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(E)成分:シランカップリング剤
(9)前記(E)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部である、(8)に記載の接着剤組成物。
(10)接着剤層を有する接着シートであって、前記接着剤層が、(1)~(9)のいずれかに記載の接着剤組成物を用いて形成されたものである接着シート。
(11)接着剤層の厚みが5~25μmである、(10)に記載の接着シート。
(12)さらに剥離フィルムを有する、(10)又は(11)に記載の接着シート。
(13)被封止物が、(10)~(12)のいずれかに記載の接着シートを用いて封止されてなる封止体。
(14)前記被封止物が、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、又は太陽電池素子である、(13)に記載の封止体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート状に成形し易く、かつ、無色透明性に優れる硬化物を与える接着剤組成物、この接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を有する接着シート、及び被封止物が前記接着シートで封止されてなる封止体が提供される。
本発明において、「無色透明性に優れる硬化物を与える」とは、光線透過率が高く、ヘイズ値が小さい硬化物を与え、かつ、前記接着剤組成物を厚さ10μmのシート状に成形し、次いで、これを硬化させたものを測色したときに、JIS Z 8729-1994に規定されるCIE L*a*b*表色系におけるb*値が、-2.0~+2.0であることをいう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、1)接着剤組成物、2)接着シート、及び、3)封止体、に項分けして詳細に説明する。
【0011】
1)接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、下記の(A)成分、及び(B)成分を含有する接着剤組成物であって、この接着剤組成物を、厚さ10μmのシート状に成形し、次いで、これを硬化させたものを測色したときに、JIS Z 8729-1994に規定されるCIE L*a*b*表色系におけるb*値が、-2.0~+2.0であることを特徴とする。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:芳香環を有しない多官能エポキシ化合物
【0012】
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
本発明の接着剤組成物は、(A)成分として、変性ポリオレフィン系樹脂を含有する。
本発明の接着剤組成物は、変性ポリオレフィン系樹脂を含有することで、接着強度に優れたものとなる。また、変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物を用いることで、比較的薄い接着剤層を効率よく形成することができる。
【0013】
変性ポリオレフィン系樹脂は、官能基が導入されたポリオレフィン樹脂である。変性ポリオレフィン系樹脂は、前駆体としてのポリオレフィン樹脂に、変性剤を用いて変性処理を施すことにより得ることができる。
【0014】
ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。ポリオレフィン樹脂は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位の一種又は二種からなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位の一種又は二種以上と、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位の一種又は二種以上からなる重合体であってもよい。また、ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、該共重合体の重合形態は特に限定されず、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
【0015】
オレフィン系単量体としては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、又は1-ヘキセンがより好ましく、エチレン又はプロピレンがさらに好ましい。オレフィン系単量体は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
オレフィン系単量体と共重合可能な単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する(以下にて同じ)。
オレフィン系単量体と共重合可能な単量体は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
ポリオレフィン樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0017】
ポリオレフィン樹脂の変性処理に用いる変性剤は、分子内に、官能基を有する化合物である。
官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基が好ましく、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基がより好ましく、カルボン酸無水物基が特に好ましい。
官能基を有する化合物は、分子内に二種以上の官能基を有していてもよい。
【0018】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、本発明のより優れた効果が得られる観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0019】
酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂を酸でグラフト変性して得られる樹脂をいう。例えば、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物(以下、これらをまとめて「不飽和カルボン酸等」ということがある。)を反応させて、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を導入(グラフト変性)したものが挙げられる。
【0020】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸等としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等の不飽和化カルボン酸無水物;が挙げられる。
これらは、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、接着強度により優れる接着剤組成物が得られ易いことから、無水マレイン酸が好ましい。
【0021】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸等の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.2~1.0質量部である。反応させる不飽和カルボン酸等の量が上記の範囲にあることで、得られる酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物は、接着強度により優れたものとなる。
【0022】
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0023】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂を不飽和シラン化合物でグラフト変性して得られる樹脂をいう。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィン樹脂に側鎖である不飽和シラン化合物がグラフト共重合した構造を有する。例えば、シラン変性ポリエチレン樹脂およびシラン変性エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられ、シラン変性低密度ポリエチレン、シラン変性超低密度ポリエチレン、シラン変性直鎖状低密度ポリエチレン等のシラン変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0024】
上記ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、ビニルシラン化合物;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルシラン化合物;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シラン化合物;等が挙げられ、汎用性、接着性等の観点から、ビニルシラン化合物が好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基を表す(以下にて同じ)。
【0025】
ビニルシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシラン等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和シラン化合物を主鎖であるポリオレフィン樹脂にグラフト重合させる場合の条件は、公知のグラフト重合の常法を採用すればよい。
【0026】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~7質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。反応させる不飽和シラン化合物の量が上記の範囲にあることで、得られるシラン変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物は、接着強度により優れたものとなる。
【0027】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、リンクロン(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。なかでも、低密度ポリエチレン系のリンクロン、直鎖状低密度ポリエチレン系のリンクロン、超低密度ポリエチレン系のリンクロン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体系のリンクロンを好ましく使用することができる。
【0028】
変性ポリオレフィン系樹脂は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
変性ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果が得られ易い等の理由から、好ましくは10,000~2,000,000、より好ましくは、20,000~1,500,000である。
変性ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0030】
(B)成分:芳香環を有しない多官能エポキシ化合物
本発明の接着剤組成物は、(B)成分として、芳香環を有しない多官能エポキシ化合物を含有する。
本発明の接着剤組成物は多官能エポキシ化合物を含有するため、その硬化物は水蒸気遮断性に優れたものとなる。
また、本発明に用いる(B)成分は、芳香環を有しない多官能エポキシ化合物であるため、このものを含有する接着剤組成物は、透明性に優れる硬化物を与える。すなわち、芳香環を有しない多官能エポキシ化合物は、芳香環を有する多官能エポキシ化合物に比べて(A)成分の変性ポリオレフィン樹脂との相溶性が高い。そのため、多官能エポキシ化合物として(B)成分を用いることで、より光線透過率が高く、かつ、ヘイズが小さい硬化物を与える接着剤組成物を得ることができる。
この観点から、本発明の接着剤組成物は、芳香環を有する多官能エポキシ化合物を含有しないものが好ましい。特に、後述するように、本発明の接着剤組成物の硬化物のb*値は、0に近いことが望ましいことから、分子内に、フェノキシ構造を有する多官能エポキシ化合物を含有しないものがより好ましい。
ここで、フェノキシ構造とは、下記(a)、(b)に示す部分構造をいう(以下にて同じ)。
【0031】
【0032】
上記式(a)、(b)中、A1は、無置換又は置換基を有するアリール基を表し、A2は、無置換又は置換基を有するアリーレン基を表す。
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
無置換又は置換基を有するアリーレン基のアリーレン基としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基、及び置換基を有するアリーレン基の置換基としては、メチル基、イソプロピル基、t―ブチル基等の単層数1~6のアルキル基;メトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等を表す。
【0033】
多官能エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物のことをいう。
(B)成分としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(3-グリシジル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ジメチロールトリシクロデカンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
多官能エポキシ化合物は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
(B)成分の多官能エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果が得られ易い等の理由から、好ましくは100~3,000、より好ましくは200~1,500である。
【0034】
(B)成分の多官能エポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは100g/eq以上500g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上300g/eq以下である。エポキシ当量が100g/eq以上500g/eq以下である(B)成分の多官能エポキシ化合物を含有する接着剤組成物を用いることで、低アウトガス性の封止材を効率よく形成することができる。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、前記(A)成分、(B)成分に加えて、(C)成分として、軟化点が80℃以上の粘着付与剤を含有してもよい。
(C)成分を含有する接着剤組成物は、一定の形状を保ち易く、シート状の接着剤層をより効率よく形成することができる。
【0036】
(C)成分の粘着付与剤としては、軟化点が80℃以上の粘着付与剤であれば、特に制限されない。例えば、重合ロジン、重合ロジンエステル、ロジン誘導体等のロジン系樹脂;ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びその水素化物、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;クマロン・インデン樹脂;脂肪族石油系樹脂、芳香族系石油樹脂及びその水素化物、脂肪族/芳香族共重合体石油樹脂等の石油樹脂;スチレン又は置換スチレンの低分子量重合体;α-メチルスチレン単一重合系樹脂、α-メチルスチレン/スチレン共重合系樹脂、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、スチレン系モノマー/α-メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、スチレン系モノマー単一重合系樹脂、スチレン系モノマー/芳香族系モノマー共重合系樹脂等のスチレン系樹脂;等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、スチレン系樹脂が好ましく、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂がより好ましい。
【0037】
軟化点が80℃以上の粘着付与剤を用いることで、高温時における粘着性に優れる接着剤組成物が得られる。また、接着剤組成物をシート状に成形する際の作業性が向上する。
【0038】
本発明の接着剤組成物が(C)成分を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~200質量部、より好ましくは10~150質量部である。(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量が少な過ぎると、接着剤組成物をシート状に成形することが困難になるおそれがある。一方、(C)成分の含有量が多過ぎると、接着剤層が脆くなるおそれがある。
【0039】
本発明の接着剤組成物は、前記(A)成分、(B)成分に加えて、(D)成分として、イミダゾール系硬化触媒を含有してもよい。
イミダゾール系硬化触媒を含有する接着剤組成物を用いることで、高温時においても優れた接着性を有する硬化物が得られ易くなる。
【0040】
イミダゾール系硬化触媒としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらの中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
これらのイミダゾール系硬化触媒は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明の接着剤組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~5質量部である。イミダゾール系硬化触媒の含有量がこの範囲内にある接着剤組成物の硬化物は、高温時においても優れた接着性を有する。
【0042】
本発明の接着剤組成物は、前記(A)成分、(B)成分に加えて、(E)成分として、シランカップリング剤を含有してもよい。
シランカップリング剤を含有する接着剤組成物を用いることで、常温及び高温環境下における接着強度により優れた硬化物が得られ易くなる。
【0043】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。なかでも、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の接着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.02~5質量部である。
【0045】
本発明の接着剤組成物は、溶媒を含有してもよい。
溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の含有量は、塗工性等を考慮して適宜決定することができる。
【0046】
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の接着剤組成物がこれらの添加剤を含有する場合、その含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。
【0047】
本発明の接着剤組成物は、所定の成分を、常法に従って適宜混合・攪拌することにより調製することができる。
【0048】
本発明の接着剤組成物は、厚さ10μmのシート状に成形し、次いで、これを硬化させたものを測色したときに、JIS Z 8729-1994に規定されるCIE L*a*b*表色系におけるb*値が、-2.0~+2.0になるものである。
上記の測色において、接着剤組成物をシート状に成形する方法と、その硬化方法は、後述する方法を使用することができる。
【0049】
L*a*b*表色系において、L*は明度を、a*及びb*は色相と彩度をそれぞれ示す。a*が正の値の場合は赤方向、a*が負の値の場合は緑方向、b*が正の値の場合は黄方向、b*が負の値の場合は青方向の色彩と彩度を示す。a*、b*の絶対値が小さくなるにしたがって無色となる。
本発明の接着剤組成物の硬化物のb*値は、-2.0~+2.0、好ましくは-1.0~+2.0、より好ましくは0.0~2.0、最も好ましくは0.0~1.0である。本発明の接着剤組成物の硬化物は、黄方向(+b*)にも、青方向(-b*)にも偏りが少ないものである。b*が上記範囲にある硬化物を与える接着剤組成物は、全光線透過率が高く、ヘイズ値が低く、且つ着色が非常に少ないという利点を有し、有機EL素子等の発光デバイスの封止材として好適に用いられる。
CIE L*a*b*表色系におけるb*値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0050】
前記硬化物のb*値は、接着剤組成物に含まれる芳香環(フェノキシ構造)を有する化合物の影響を受ける。したがって、b*値が-2.0~+2.0である硬化物を与える接着剤組成物は、芳香環(フェノキシ構造)を有する化合物を使用しない、又はその使用量を低減することで、効率よく、かつ、容易に調製することができる。
本発明の接着剤組成物は、芳香環(フェノキシ構造)を有する化合物を含有しないか、又は、芳香環(フェノキシ構造)を有する化合物の含有量が少ない(接着剤組成物全体に対し、固形分量で、5質量%以下)ものが好ましく、芳香環(フェノキシ構造)を有する化合物を含有しないものがより好ましい。
【0051】
本発明の接着剤組成物は、厚さ10μmのシート状に成形し、次いで、これを硬化させたものを試験片として全光線透過率とヘイズ値を測定したときに、全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。全光線透過率の上限は特にないが、通常は、95%以下である。また、ヘイズ値は、好ましくは1.4%以下、より好ましくは1%以下である。ヘイズ値の下限は特にないが、通常は、0.5%以上である。
全光線透過率は、JIS K7361:1997に準拠して測定できる。ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。
【0052】
上記のように、本発明の接着剤組成物においては、変性ポリオレフィン系樹脂を(A)成分として使用し、さらに、この(A)成分と相溶性の高い多官能エポキシ化合物である、芳香環を有しない多官能エポキシ化合物を(B)成分として使用する。この結果、本発明の接着剤組成物の硬化物は、全光線透過率が高く、かつ、ヘイズ値が小さいものとなる。
【0053】
本発明の接着剤組成物は、シート状に成形し易く、かつ、無色透明性に優れるものである。したがって、本発明の接着剤組成物は、光学用途において好適に用いられる。
【0054】
2)接着シート
本発明の接着シートは、接着剤層を有する接着シートであって、前記接着剤層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成されたものである。
【0055】
接着シートの接着剤層の厚みは特に限定されないが、通常、5~25μmであり、好ましくは10~20μmである。
厚みが上記範囲内にある接着剤層は、封止材として好適に用いられる。
【0056】
本発明の接着シートは、剥離フィルムを有していてもよい。
剥離フィルムは、接着シートの製造工程においては支持体として機能するとともに、接着シートを使用するまでの間は、接着剤層の保護シートとして機能するものである。
本発明の接着シートを使用する際は、通常、剥離フィルムは剥離除去される。
【0057】
剥離フィルムとしては、従来公知のものを利用することができる。例えば、剥離フィルム用の基材上に、剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものが挙げられる。
剥離フィルム用の基材としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0058】
本発明の接着シートが剥離フィルムを有するとき、剥離フィルムの枚数は1枚であってもよいし2枚であってもよいが、通常は、接着剤層の両側にそれぞれ1枚、合計2枚の剥離フィルムを有する。このとき2枚の剥離フィルムは同一であっても、異なっていてもよいが、2枚の剥離フィルムは異なる剥離力を有するものが好ましい。2枚の剥離フィルムの剥離力が異なることで、接着シートの使用時に問題が発生し難くなる。すなわち、2枚の剥離フィルムの剥離力を異なるようにすることで、最初に剥離フィルムを剥離する工程をより効率よく行うことができる。
【0059】
接着シートの製造方法は特に限定されない。例えば、キャスト法を用いて、接着シートを製造することができる。
接着シートをキャスト法により製造する場合、公知の方法を用いて、本発明の接着剤組成物を剥離フィルムの剥離処理面に塗工し、得られた塗膜を乾燥することで、剥離フィルム付接着剤層を製造し、次いで、もう1枚の剥離フィルムを接着剤層上に重ねることで、接着シートを得ることができる。
【0060】
接着剤組成物を塗工する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
塗膜を乾燥するときの乾燥条件としては、例えば80~150℃で30秒~5分間が挙げられる。
【0061】
本発明の接着シートの接着剤層は熱硬化性を有するものである。
接着剤層を熱硬化させる際の条件は特に限定されない。
加熱温度は、通常、80~200℃、好ましくは90~150℃である。
加熱時間は、通常、30分から12時間、好ましくは1~6時間である。
本発明の接着剤層が熱硬化した後の状態とは、被封止物の封止に用いることができる程度まで硬化させた状態のことをいう。
【0062】
硬化処理後の接着剤層の23℃における引き剥がし接着強度は、通常、1~100N/25mm、好ましくは、10~50N/25mmであり、85℃における引き剥がし接着強度は、通常、1~100N/25mm、好ましくは、5~50N/25mmである。
23℃における引き剥がし接着強度は、JIS Z0237:2009に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の環境下と温度85℃(湿度は制御なし)の環境下において、それぞれ、剥離角度180°の条件で剥離試験を行い、測定することができる。
硬化処理後の接着剤層の水蒸気透過率は、通常、0.1~200g・m-2・day-1、好ましくは1~150g・m-2・day-1である。水蒸気透過率は、公知の水蒸気透過率測定装置、例えば、LYSSY社製の透過率測定機「L80-5000」を用い、40℃、90%RHの条件で測定することができる。
【0063】
上記のように本発明の接着シートの接着剤層の硬化物は無色透明性に優れる。このため、本発明の接着シートは、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、太陽電池素子等を封止する際に好適に用いられる。
【0064】
3)封止体
本発明の封止体は、被封止物が、本発明の接着シートを用いて封止されてなるものである。
本発明の封止体としては、例えば、基板と、該基板上に形成された素子(被封止物)と、該素子を封止するための封止材とを備えるものであって、前記封止材が本発明の接着シートの接着剤層由来のもの(接着剤層の硬化物)であるものが挙げられる。
【0065】
基板は、特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができる。特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、素子外部から浸入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。具体的には、石英やガラス等の透明無機材料;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類等の透明プラスチック、前述したガスバリア性フィルム;が挙げられる。
基板の厚さは特に制限されず、光の透過率や、素子内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。
【0066】
被封止物としては、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、太陽電池素子等が挙げられる。
【0067】
本発明の封止体の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の接着シートの接着剤層を被封止物上に重ねた後、加熱することにより、接着シートの接着剤層と被封止物を接着させ、次いで、この接着剤層を硬化させることにより、本発明の封止体を製造することができる。
【0068】
接着シートの接着剤層と被封止物を接着させる際の接着条件は特に限定されない。接着温度は、例えば、23~100℃、好ましくは40~80℃である。この接着処理は、加圧しながら行ってもよい。
接着剤層を硬化させる際の硬化条件としては、先に説明した条件を利用することができる。
【0069】
本発明の封止体は、被封止物が、本発明の接着シートで封止されてなるものである。
したがって、本発明の封止体においては、長期にわたって被封止物の性能が維持される。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0071】
〔実施例1〕
酸変性ポリオレフィン系樹脂(酸変性α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、数平均分子量:47,000)100部、多官能エポキシ化合物(1)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8000、エポキシ当量:205g/eq)25部、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、商品名:キュアゾール2E4MZ、2-エチル-4-メチルイミダゾール)0.25部、及び、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM6803)0.1部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度20%の接着剤組成物1を調製した。
この接着剤組成物1を剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET382150)の剥離処理面上に塗工し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚みが10μmの接着剤層を形成し、その上に、もう1枚の剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET381031)の剥離処理面を貼り合わせて接着シート1を得た。
【0072】
〔実施例2〕
実施例1において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(2)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8034、エポキシ当量:270g/eq)を使用したことを除き、実施例1と同様にして、接着剤組成物2を調製し、これを用いて接着シート2を得た。
【0073】
〔実施例3〕
実施例1において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(3)(ADEKA社製、商品名:EP-4088L、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:165g/eq)を使用したことを除き、実施例1と同様にして、接着剤組成物3を調製し、これを用いて接着シート3を得た。
【0074】
〔実施例4〕
酸変性ポリオレフィン系樹脂(α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、数平均分子量:47,000)100部、多官能エポキシ化合物(1)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8000)100部、粘着付与剤(スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合樹脂、三井化学社製、商品名:FTR6100)50部、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、商品名:キュアゾール2E4MZ、2-エチル-4-メチルイミダゾール)1部、及び、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM6803)0.1部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30%の接着剤組成物4を調製した。
接着剤組成物1に代えて、接着剤組成物4を使用したことを除き、実施例1と同様にして接着シート4を得た。
【0075】
〔実施例5〕
実施例4において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(2)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8034)を使用したことを除き、実施例4と同様にして、接着剤組成物5を調製し、これを用いて接着シート5を得た。
【0076】
〔実施例6〕
実施例4において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(4)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8040、エポキシ当量:1100g/eq)を使用したことを除き、実施例4と同様にして、接着剤組成物6を調製し、これを用いて接着シート6を得た。
【0077】
〔実施例7〕
実施例4において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(3)(ADEKA社製、商品名:EP-4088L)を使用したことを除き、実施例4と同様にして、接着剤組成物7を調製し、これを用いて接着シート7を得た。
【0078】
〔比較例1〕
実施例4において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(5)(未水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:jER828、エポキシ当量:190g/eq)を使用したことを除き、実施例1と同様にして、接着剤組成物8を調製し、これを用いて接着シート8を得た。
【0079】
実施例1~7、比較例1で得た接着シート1~8について、以下の分析を行った。結果を第1表に示す。
〔全光線透過率及びヘイズ測定〕
実施例又は比較例で得た接着シートの剥離フィルムを1枚剥離除去し、接着剤層を露出させた。露出した接着剤層がソーダライムガラスに対向するように、この接着シートを、ソーダライムガラス上に置き、次いで、ラミネーターを用いて、これらを23℃で貼合した。もう1枚の剥離フィルムを剥離除去した後、これらを100℃で2時間加熱して、接着剤層を硬化させ、試験片を得た。
得られた試験片について、全光線透過率測定装置(日本電色工業社製、製品名:NDH-5000)を用いて、全光線透過率及びヘイズを測定した。
【0080】
〔測色〕
全光線透過率及びヘイズ測定で用いたものと同様の試験片を作製した。
得られた試験片について、CIE1976L*a*b*表色系により規定される色彩値b*を、JIS Z 8729-1994に準拠し、分光光度計(島津製作所社製、UV-3200)を用いて測定した。
【0081】
【0082】
第1表から以下のことがわかる。
実施例1~7で得られた接着シート1~7の接着剤層の硬化物は、全光線透過率が高くヘイズ値が低い。さらにそのb*値は、-2.0~+2.0である。
一方、比較例1で得られた接着シート8の接着剤層の硬化物は、ヘイズ値が大きく、透明性に劣っている。