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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】接着剤組成物、接着シート、及び封止体
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20220909BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220909BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220909BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20220909BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20220909BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220909BHJP
   G02F 1/1341 20060101ALI20220909BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220909BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20220909BHJP
【FI】
H05B33/04
C09J163/00
C09J11/06
C09J7/35
C09J123/26
H05B33/14 A
G02F1/1341
G02F1/1339 505
H01L31/04 560
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019521263
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2018020734
(87)【国際公開番号】W WO2018221574
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017107482
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 樹
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163344(JP,A)
【文献】特開昭63-061017(JP,A)
【文献】特開2016-125042(JP,A)
【文献】特開2001-240838(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047919(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047868(WO,A1)
【文献】特開2005-260204(JP,A)
【文献】特開2000-007840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被封止物が、下記の接着シートを用いて封止されてなる封止体であって、
前記被封止物が、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、又は太陽電池素子である封止体。
〔接着シート1〕
接着剤層を有する接着シートであって、前記接着剤層が、下記の接着剤組成物2を用いて形成されたものである接着シート。
〔接着剤組成物2〕
下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する接着剤組成物であって、下記のパージ&トラップ法により接着剤組成物に含まれる揮発性成分を分析したときに、揮発性の酸化防止剤の含有量が、トルエン換算値で、0.2mg/cm以下であることを特徴とする接着剤組成物。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:25℃において液体である多官能エポキシ化合物
(C)成分:25℃において固体である多官能エポキシ化合物
〔パージ&トラップ法〕
接着剤組成物を用いて形成した接着剤層(18mm×18mm×12μm)をガラスチューブに入れ、ヘリウム気流中にて120℃で20分加熱し、接着剤層から放出された気体を気体捕集管で連続的に捕集する。次いで、捕集した気体をガスクロマトグラフィー質量分析装置に導入し、接着剤組成物に含まれる揮発性成分について分析する。この際、トルエンを用いて作製した検量線より、揮発性の酸化防止剤の量を定量する。
【請求項2】
前記(A)成分が、酸変性ポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載の封止体。
【請求項3】
前記(B)成分と(C)成分の合計量が、前記(A)成分100質量部に対して100~200質量部である、請求項1又は2に記載の封止体。
【請求項4】
前記(B)成分と(C)成分の含有割合(質量比)が、〔(B)成分:(C)成分〕=100:1~1:1である、請求項1~3のいずれかに記載の封止体。
【請求項5】
前記接着剤組成物2が、さらに、下記の(D)成分を含有するものである、請求項1~4のいずれかに記載の封止体。
(D)成分:イミダゾール系硬化触媒
【請求項6】
前記(D)成分の含有量が、前記(B)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して1~10質量部である、請求項5に記載の封止体。
【請求項7】
前記接着剤組成物2が、さらに、下記の(E)成分を含有するものである、請求項1~6のいずれかに記載の封止体。
(E)成分:シランカップリング剤
【請求項8】
前記(E)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部である、請求項7に記載の封止体。
【請求項9】
前記揮発性の酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項1~8のいずれかに記載の封止体。
【請求項10】
前記接着シート1を構成する接着剤層の厚みが5~25μmである、請求項1~9のいずれかに記載の封止体。
【請求項11】
前記接着シート1が、さらに剥離フィルムを有するものである、請求項1~10のいずれかに記載の封止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状に成形し易く、かつ、封止材として用いたときに電極部材や有機半導体等を腐食し難い接着剤組成物、この接着剤組成物を用いて形成された、電極部材や有機半導体等を腐食し難い接着剤層を有する接着シート、及び被封止物が前記接着シートで封止されてなる封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
しかし、有機EL素子には、時間の経過とともに、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が低下し易いという問題があった。
この発光特性の低下の問題の原因として、酸素や水分等が有機EL素子の内部に浸入し、電極や有機層を劣化させることが考えられたため、封止材を用いて有機EL素子を封止し、酸素や水分の浸入を防ぐことが行われてきた。
このような封止材の形成方法として、熱硬化性の樹脂シートを利用する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)ポリイソブチレン樹脂、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を持つポリイソプレン樹脂及び/又はポリイソブチレン樹脂、(C)粘着付与樹脂、及び(D)エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物や、この樹脂組成物を含む樹脂組成物シート等が記載されている。
特許文献1には、その樹脂組成物はシート化が容易であることや、得られた樹脂組成物シートは、有機EL素子の封止に好適に用いられることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2011/062167号(US2012/0283375 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、粘着付与樹脂を使用することで樹脂組成物の接着性が向上することが記載されている。
さらに、本発明者らの検討によれば、比較的高い軟化点を有する粘着付与樹脂を含有する樹脂組成物は、形状保持性に優れるため、接着シートの原料として適していることも分かった。
しかしながら、このような利点がある反面、粘着付与樹脂を含有する樹脂組成物を用いて有機EL素子を封止すると、有機EL素子が劣化し易くなり、ダークスポットになり易いことが分かった。
【0006】
本発明者らがさらに検討した結果、有機EL素子の劣化の原因の一つとして酸化防止剤が電極部材や有機半導体等を腐食することが考えられた。そして、市販の粘着付与樹脂には通常酸化防止剤が添加されているため、粘着付与樹脂を配合して得られた樹脂組成物を用いて有機EL素子を封止すると、有機EL素子が劣化し易くなることが分かった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、シート状に成形し易く、かつ、封止材として用いたときに電極部材や有機半導体等を腐食し難い接着剤組成物、この接着剤組成物を用いて形成された、電極部材や有機半導体等を腐食し難い接着剤層を有する接着シート、及び被封止物が前記接着シートで封止されてなる封止体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、変性ポリオレフィン系樹脂、25℃において液体である多官能エポキシ化合物、及び25℃において固体である多官能エポキシ化合物を含有する接着剤組成物は、粘着付与樹脂を使用しなくても、シート状に成形し易く、封止能にも優れるものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記(1)~(9)の接着剤組成物、(10)~(12)の接着シート、及び(13)、(14)の封止体、が提供される。
(1)下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する接着剤組成物であって、下記のパージ&トラップ法により接着剤組成物に含まれる揮発性成分を分析したときに、揮発性の酸化防止剤の含有量が、トルエン換算値で、0.2mg/cm以下であることを特徴とする接着剤組成物。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:25℃において液体である多官能エポキシ化合物
(C)成分:25℃において固体である多官能エポキシ化合物
〔パージ&トラップ法〕
接着剤組成物を用いて形成した接着剤層(18mm×18mm×12μm)をガラスチューブに入れ、ヘリウム気流中にて120℃で20分加熱し、接着剤層から放出された気体を気体捕集管で連続的に捕集する。次いで、捕集した気体をガスクロマトグラフィー質量分析装置に導入し、接着剤組成物に含まれる揮発性成分について分析する。この際、トルエンを用いて作製した検量線より、揮発性の酸化防止剤の量を定量する。
【0009】
(2)前記(A)成分が、酸変性ポリオレフィン系樹脂である、(1)に記載の接着剤組成物。
(3)前記(B)成分と(C)成分の合計量が、前記(A)成分100質量部に対して100~200質量部である、(1)又は(2)に記載の接着剤組成物。
(4)前記(B)成分と(C)成分の含有割合(質量比)が、〔(B)成分:(C)成分〕=100:1~1:1である、(1)~(3)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(5)さらに、下記の(D)成分を含有する、(1)~(4)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(D)成分:イミダゾール系硬化触媒
(6)前記(D)成分の含有量が、前記(B)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して1~10質量部である、(5)に記載の接着剤組成物。
(7)さらに、下記の(E)成分を含有する、(1)~(6)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(E)成分:シランカップリング剤
【0010】
(8)前記(E)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部である、(7)に記載の接着剤組成物。
(9)前記揮発性の酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である、(1)~(8)のいずれかに記載の接着剤組成物。
(10)接着剤層を有する接着シートであって、前記接着剤層が、(1)~(9)のいずれかに記載の接着剤組成物を用いて形成されたものである接着シート。
(11)接着剤層の厚みが5~25μmである、(10)に記載の接着シート。
(12)さらに剥離フィルムを有する、(10)又は(11)に記載の接着シート。
(13)被封止物が、(10)~(12)のいずれかに記載の接着シートを用いて封止されてなる封止体。
(14)前記被封止物が、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、又は太陽電池素子である、(13)に記載の封止体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート状に成形し易く、かつ、封止材として用いたときに電極部材や有機半導体材等を腐食し難い接着剤組成物、この接着剤組成物を用いて形成された、電極部材や有機半導体等を腐食し難い接着剤層を有する接着シート、及び被封止物が前記接着シートで封止されてなる封止体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、1)接着剤組成物、2)接着シート、及び、3)封止体、に項分けして詳細に説明する。
【0013】
1)接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する接着剤組成物であって、下記のパージ&トラップ法により接着剤組成物に含まれる揮発性成分を分析したときに、揮発性の酸化防止剤の含有量が、トルエン換算値で、0.2mg/cm以下であることを特徴とする。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:25℃において液体である多官能エポキシ化合物
(C)成分:25℃において固体である多官能エポキシ化合物
【0014】
〔パージ&トラップ法〕
接着剤組成物を用いて形成した接着剤層(18mm×18mm×12μm)をガラスチューブに入れ、ヘリウム気流中にて120℃で20分加熱し、接着剤層から放出された気体を気体捕集管で連続的に捕集する。次いで、捕集した気体をガスクロマトグラフィー質量分析装置に導入し、接着剤組成物に含まれる揮発性成分について分析する。この際、トルエンを用いて作製した検量線より、揮発性の酸化防止剤の量を定量する。
【0015】
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
本発明の接着剤組成物は、(A)成分として、変性ポリオレフィン系樹脂を含有する。
本発明の接着剤組成物は、変性ポリオレフィン系樹脂を含有することで、接着強度に優れたものとなる。また、変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物を用いることで、比較的薄い接着剤層を効率よく形成することができる。
【0016】
変性ポリオレフィン系樹脂は、前駆体としてのポリオレフィン樹脂に、変性剤を用いて変性処理を施して得られる、官能基が導入されたポリオレフィン樹脂である。
【0017】
ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。ポリオレフィン樹脂は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位と、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位とからなる重合体であってもよい。
【0018】
オレフィン系単量体としては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、又は1-ヘキセンがより好ましく、エチレン又はプロピレンがさらに好ましい。これらのオレフィン系単量体は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オレフィン系単量体と共重合可能な単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等が挙げられる。これらの、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0020】
ポリオレフィン樹脂の変性処理に用いる変性剤は、分子内に、官能基を有する化合物である。
官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基が好ましく、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基がより好ましく、カルボン酸無水物基が特に好ましい。
官能基を有する化合物は、分子内に2種以上の官能基を有していてもよい。
【0021】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。本発明のより優れた効果が得られる観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0022】
酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して酸でグラフト変性したものをいう。例えば、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物(以下、「不飽和カルボン酸等」ということがある。)を反応させて、カルボキシル基等を導入(グラフト変性)したものが挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン樹脂に反応させる、不飽和カルボン酸等としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、接着強度により優れる接着剤組成物が得られ易いことから、無水マレイン酸が好ましい。
【0024】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸等の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.2~1.0質量部である。このようにして得られた酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物は、接着強度により優れる。
【0025】
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0026】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して不飽和シラン化合物でグラフト変性したものをいう。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィン樹脂に側鎖である不飽和シラン化合物がグラフト共重合した構造を有する。例えば、シラン変性ポリエチレン樹脂およびシラン変性エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられ、シラン変性低密度ポリエチレン、シラン変性超低密度ポリエチレン、シラン変性直鎖状低密度ポリエチレン等のシラン変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0027】
上記ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、ビニルシラン化合物が好ましく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、不飽和シラン化合物を主鎖であるポリオレフィン樹脂にグラフト重合させる場合の条件は、公知のグラフト重合の常法を採用すればよい。
【0028】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物の量としては、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、特に0.3~7質量部であることが好ましく、さらには0.5~5質量部であることが好ましい。反応させる不飽和シラン化合物の量が上記の範囲にあることで、得られるシラン変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤組成物は、接着強度により優れる。
【0029】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、リンクロン(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。なかでも、低密度ポリエチレン系のリンクロン、直鎖状低密度ポリエチレン系のリンクロン、超低密度ポリエチレン系のリンクロン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体系のリンクロンを好ましく使用することができる。
【0030】
変性ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
変性ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は好ましくは10,000~2,000,000、より好ましくは、20,000~1,500,000である。
変性ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0032】
(B)成分:25℃において液体である多官能エポキシ化合物
本発明の接着剤組成物は、(B)成分として、25℃において液体である多官能エポキシ化合物を含有する。
「25℃において液体である多官能エポキシ化合物」とは、25℃において、一定の体積をもつ(揮発する分を除く)が、定まった形をもたない多官能エポキシ化合物をいう。本発明に用いる「25℃において液体である多官能エポキシ化合物」の25℃における粘度は、通常、0.1~100,000mPa・s、好ましくは0.2~50,000mPa・s、より好ましくは0.3~10,000mPa・sである。
本発明の接着剤組成物は(B)成分を含有するため、加熱したときの流動性に優れる。このため、本発明の接着剤組成物を用いることで、良好な凹凸追従性を有する接着剤層を効率よく形成することができる。
【0033】
多官能エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物のことをいう。
【0034】
(B)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
(B)成分の多官能エポキシ化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B)成分の多官能エポキシ化合物の分子量は、好ましくは700~5,000、より好ましくは1,400~4,500である。
分子量が700以上の(B)成分を含有する接着剤組成物を用いることで、より低アウトガス性の封止材が得られ易くなる。一方、分子量が5,000以下の(B)成分を含有する接着剤組成物は流動性により優れるため、そのような接着剤組成物を用いることで凹凸追従性により優れる接着剤層を形成し易くなる。
【0035】
(B)成分の多官能エポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは100g/eq以上500g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上300g/eq以下である。(B)成分の多官能エポキシ化合物のエポキシ当量が100g/eq以上500g/eq以下の接着剤組成物を用いることで、接着強度が高く、硬化性に優れる封止材を効率よく形成することができる。
【0036】
(C)成分:25℃において固体である多官能エポキシ化合物
本発明の接着剤組成物は、(C)成分として、25℃において固体である多官能エポキシ化合物を含有する。
「25℃において固体である多官能エポキシ化合物」とは、25℃以上の温度領域に軟化点を有する多官能エポキシ樹脂である。
本発明の接着剤組成物は(C)成分を含有することで、液状になり難く、一定の形状を保ち易くなるため、シート状に成形し易いものとなる。
【0037】
(C)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
(C)成分の多官能エポキシ化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(C)成分の多官能エポキシ化合物の分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000である。
【0038】
本発明の接着剤組成物において、(B)成分と(C)成分の合計量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは100~200質量部であり、より好ましくは120~170質量部である。
(A)~(C)成分の含有量が上記規定を満たすことで、その接着剤組成物は流動性が適度なものとなり、一定の形状を保ち易くなる。
【0039】
(B)成分と(C)成分の含有割合(質量比)は、〔(B)成分:(C)成分〕=100:1~1:1であることが好ましく、10:1~2:1であることがより好ましい。
(C)成分に対する(B)成分の量が増えるに従って、その接着剤組成物は加熱したときの流動性がより高まる。
一方、(B)成分に対する(C)成分の量が増えるに従って、その接着剤組成物は一定の形状を保ち易くなる。
【0040】
後述するように、本発明の接着剤組成物は、揮発性の酸化防止剤の含有量が極めて少ないものである。通常、市販の粘着付与剤には酸化防止剤が含まれているため、本発明の接着剤組成物は粘着付与剤を含有しないものであることが好ましい。
しかしながら、粘着付与剤は、接着剤組成物の接着性を高める効果や、接着剤組成物の形状を保つ効果を有するものであるため、粘着付与剤を含有しない接着剤組成物はこれらの特性に劣り易くなる。
このため、本発明の接着剤組成物においては(C)成分を必須成分とする。(C)成分を用いることで、接着性により優れる接着剤組成物を得ることができる。また、(B)成分と(C)成分を併用し、その割合を調整することで、接着剤組成物の流動性を適度なものとすることができるため、一定の形状の接着剤層を形成し易くなる。
【0041】
本発明の接着剤組成物は、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分以外の成分を含有してもよい。
(A)成分、(B)成分、(C)成分以外の成分としては、下記(D)成分、及び(E)成分が挙げられる。
(D)成分:イミダゾール系硬化触媒
(E)成分:シランカップリング剤
【0042】
(D)成分:イミダゾール系硬化触媒
イミダゾール系硬化触媒としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらの中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
これらのイミダゾール系硬化触媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
イミダゾール系硬化触媒を含有する接着剤組成物を用いることで、高温時においても優れた接着性を有する硬化物が得られ易くなる。
【0044】
本発明の接着剤組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、前記(B)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~5質量部である。イミダゾール系硬化触媒の含有量がこの範囲内にある接着剤組成物の硬化物は高温時においても優れた接着性を有する。
【0045】
(E)成分:シランカップリング剤
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。なかでも、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
シランカップリング剤を含有する接着剤組成物を用いることで、常温及び高温環境下における接着強度により優れた硬化物が得られ易くなる。
【0047】
本発明の接着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.02~5質量部である。
【0048】
本発明の接着剤組成物は、溶媒を含有してもよい。
溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の含有量は、塗工性等を考慮して適宜決定することができる。
【0049】
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の接着剤組成物がこれらの添加剤を含有する場合、その含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。
【0050】
本発明の接着剤組成物は、所定の成分を、常法に従って適宜混合・攪拌することにより調製することができる。
【0051】
本発明の接着剤組成物は、下記のパージ&トラップ法により接着剤組成物に含まれる揮発性成分を分析したときに、揮発性の酸化防止剤の含有量が、トルエン換算値で、0.2mg/cm以下であることを特徴とするものである。
「酸化防止剤」は、樹脂組成物中の成分が酸化されるのを抑制するために添加される抗酸化物質である。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが挙げられる。「揮発性の酸化防止剤」は、酸化防止剤のうち、接着剤層中に含まれている場合において、該接着剤層を、不活性ガス(ヘリウム等)気流中で120℃に加熱したときに、前記接着剤層から揮発性成分として放出される性質を有する酸化防止剤である。
このような揮発性の酸化防止剤としては特に限定されないが、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0052】
〔パージ&トラップ法〕
接着剤組成物を用いて形成した接着剤層(18mm×18mm×12μm)をガラスチューブに入れ、ヘリウム気流中にて120℃で20分加熱し、接着剤層から放出された気体を気体捕集管で連続的に捕集する。次いで、捕集した気体をガスクロマトグラフィー質量分析装置に導入し、接着剤組成物に含まれる揮発性成分について分析する。この際、トルエンを用いて作製した検量線より、揮発性の酸化防止剤の量を定量する。
【0053】
接着剤組成物を調製する際の製造原料として市販品を使用する場合、その市販品が酸化防止剤を含有していると、得られた接着剤組成物は酸化防止剤を含有することになる。
したがって、本発明の接着剤組成物を製造する際は、酸化防止剤を全く含有していない、又は、酸化防止剤の含有量が微量の製造原料を用いることが重要である。
上記のように、市販の粘着付与剤は、通常、酸化防止剤を含有することから、本発明の接着剤組成物においては、粘着付与剤を使用せず、代わりに、(B)成分と(C)成分とを併用することで、接着性と形状保持性を高めることが好ましい。
【0054】
本発明の接着剤組成物は、揮発性の酸化防止剤の含有量が極めて少ないものであるため、封止材として用いたときに電極部材や有機半導体等を腐食し難いものである。このため、本発明の接着剤組成物は、封止材を形成する際に好適に用いられる。
【0055】
2)接着シート
本発明の接着シートは、接着剤層を有する接着シートであって、前記接着剤層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成されたものである。
【0056】
接着シートの接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましくは5~25μm、より好ましくは10~20μmである。
厚みが上記範囲内にある接着剤層は、封止材として好適に用いられる。
【0057】
本発明の接着シートは、剥離フィルムを有していてもよい。
剥離フィルムは、接着シートの製造工程においては支持体として機能するとともに、接着シートを使用するまでの間は、接着剤層の保護シートとして機能するものである。
本発明の接着シートを使用する際は、通常、剥離フィルムは剥離除去される。
【0058】
剥離フィルムとしては、従来公知のものを利用することができる。例えば、剥離フィルム用の基材上に、剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものが挙げられる。
剥離フィルム用の基材としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0059】
本発明の接着シートが剥離フィルムを有するとき、剥離フィルムの枚数は1枚であってもよいし2枚であってもよいが、通常は、接着剤層の両側にそれぞれ1枚、合計2枚の剥離フィルムを有する。このとき2枚の剥離フィルムは同一であっても、異なっていてもよいが、2枚の剥離フィルムは異なる剥離力を有するものが好ましい。2枚の剥離フィルムの剥離力が異なることで、接着シートの使用時に問題が発生し難くなる。すなわち、2枚の剥離フィルムの剥離力を異なるようにすることで、最初に剥離フィルムを剥離する工程をより効率よく行うことができる。
【0060】
接着シートの製造方法は特に限定されない。例えば、キャスト法を用いて、接着シートを製造することができる。
接着シートをキャスト法により製造する場合、公知の方法を用いて、本発明の接着剤組成物を剥離フィルムの剥離処理面に塗工し、得られた塗膜を乾燥することで、剥離フィルム付接着剤層を製造し、次いで、もう1枚の剥離フィルムを接着剤層上に重ねることで、接着シートを得ることができる。
【0061】
接着剤組成物を塗工する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
塗膜を乾燥するときの乾燥条件としては、例えば80~150℃で30秒~5分間が挙げられる。
【0062】
本発明の接着シートの接着剤層は熱硬化性を有するものである。
接着剤層を熱硬化させる際の条件は特に限定されない。
加熱温度は、通常、80~200℃、好ましくは90~150℃である。
加熱時間は、通常、30分から12時間、好ましくは1~6時間である。
【0063】
硬化処理後の接着剤層の23℃における引き剥がし接着強度は、通常、1~100N/25mm、好ましくは、10~50N/25mmであり、85℃における引き剥がし接着強度は、通常、1~100N/25mm、好ましくは、5~50N/25mmである。
23℃における引き剥がし接着強度は、JIS Z0237:2009に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の環境下と温度85℃(湿度は制御なし)の環境下において、剥離角度180°の条件で剥離試験を行い、測定することができる。
硬化処理後の接着剤層の水蒸気透過率は、通常、0.1~200g・m-2・day-1、好ましくは1~150g・m-2・day-1である。
水蒸気透過率は、公知の水蒸気透過率測定装置を用いて測定することができる。
【0064】
上記のように本発明の接着シートの接着剤層は電極部材や有機半導体等を腐食しにくいものである。このため、本発明の接着シートを用いることで、有機EL素子等の長寿命化を達成することができる。
【0065】
3)封止体
本発明の封止体は、被封止物が、本発明の接着シートを用いて封止されてなるものである。
本発明の封止体としては、例えば、基板と、該基板上に形成された素子(被封止物)と、該素子を封止するための封止材とを備えるものであって、前記封止材が本発明の接着シートの接着剤層由来のもの(接着剤層の硬化物)であるものが挙げられる。
【0066】
基板は、特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができる。特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、素子外部から浸入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。具体的には、石英やガラスなどの透明無機材料;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチック、前述したガスバリア性フィルム;が挙げられる。
基板の厚さは特に制限されず、光の透過率や、素子内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。
【0067】
被封止物としては、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、太陽電池素子等が挙げられる。
【0068】
本発明の封止体の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の接着シートの接着剤層を被封止物上に重ねた後、加熱することにより、接着シートの接着剤層と被封止物を接着させる。
次いで、この接着剤層を硬化させることにより、本発明の封止体を製造することができる。
【0069】
接着シートの接着剤層と被封止物を接着させる際の接着条件は特に限定されない。接着温度は、例えば、23~100℃、好ましくは40~80℃である。この接着処理は、加圧しながら行ってもよい。
接着剤層を硬化させる際の硬化条件としては、先に説明した条件を利用することができる。
【0070】
本発明の封止体は、被封止物が、本発明の接着シートで封止されてなるものである。
したがって、本発明の封止体においては、長期にわたって被封止物の性能が維持される。
【実施例
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0072】
〔実施例1〕
酸変性ポリオレフィン系樹脂(酸変性α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、数平均分子量:47,000)100部、多官能エポキシ化合物(1)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8000、25℃において液体、エポキシ当量:205g/eq、25℃における粘度:1900mPa・s)100部、多官能エポキシ化合物(2)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8040、25℃において固体、エポキシ当量:1100g/eq、軟化点:84℃)25部、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、商品名:キュアゾール2E4MZ、2-エチル-4-メチルイミダゾール)1部、及び、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM4803)0.1部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度25%の接着剤組成物1を調製した。
この接着剤組成物1を剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET382150)の剥離処理面上に塗工し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚みが12μmの接着剤層を形成し、その上に、もう1枚の剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET381031)の剥離処理面を貼り合わせて接着シート1を得た。
【0073】
〔実施例2〕
実施例1において、多官能エポキシ化合物(2)の量を50部に変更したことを除き、実施例1と同様にして、接着剤組成物2を調製し、これを用いて接着シート2を得た。
【0074】
〔実施例3〕
実施例1において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(3)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8034、25℃において液体、エポキシ当量:270g/eq、25℃における粘度:9000mPa・s)を使用したことを除き、実施例1と同様にして、接着剤組成物3を調製し、これを用いて接着シート3を得た。
【0075】
〔比較例1〕
酸変性ポリオレフィン系樹脂(α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、数平均分子量:47,000)100部、多官能エポキシ化合物(1)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8000、25℃において液体)100部、粘着付与剤(スチレン系モノマー脂肪族系モノマー共重合体、軟化点95℃、三井化学社製、商品名:FTR6100)50部、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、商品名:キュアゾール2E4MZ、2-エチル-4-メチルイミダゾール)1部、及び、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM6803)0.1部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30%の接着剤組成物4を調製した。
接着剤組成物4を使用したこと以外は実施例1と同様にして、接着シート4を得た。
【0076】
〔比較例2〕
比較例1において、多官能エポキシ化合物(1)に代えて、多官能エポキシ化合物(3)(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名:YX8034、25℃において液体)を使用したことを除き、比較例1と同様にして、接着剤組成物5を調製し、これを用いて接着シート5を得た。
【0077】
実施例1~3、比較例1~2で得た接着シート1~5について、以下の分析を行った。
〔アウトガスの分析〕
実施例又は比較例で得た接着シートの剥離フィルム1枚を剥がし、露出した接着剤層がガラス板に対向するように、この接着シートをガラス板上に置き、ヒートラミネーターを用いて23℃で接着した。
次いで、残りの剥離フィルムを剥がしたものを測定試料として使用し、120℃、20分の条件でアウトガスを発生させ、その発生量を定量した。
アウトガスの発生量の定量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津社製、GCMS-QP2010)を使用し、カラムは5%-Diphenyl-95%Dimethyl polysiloxane(HP-5ms)を使用して行った。このとき、トルエンを用いて検量線を作成した。
検出されたアウトガス量(接着シート1cmあたりのアウトガス量(mg))と、その中に含まれる揮発性酸化防止剤(ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)の量(接着シート1cmあたりの量(mg))を第1表に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
第1表から以下のことがわかる。
実施例1~3の接着シートにおいては、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエンは検出されなかった。一方、比較例1、2ではジ-t-ブチルヒドロキシトルエンが検出された。
このように、実施例1~3の接着シートは、電極部材や有機半導体を腐食し得る化合物をほとんど含有しないものであるため、これらの接着シートを用いて形成された封止材は、電極部材や有機半導体等を腐食し難いものである。