(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】押ボタン箱の制御連携システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/095 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
G08G1/095 F
(21)【出願番号】P 2016150495
(22)【出願日】2016-07-29
【審査請求日】2019-05-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】永江 純一
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】山本 信平
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-334397(JP,A)
【文献】特開昭56-129999(JP,A)
【文献】実開昭58-187898(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムスイッチ
信号を送受信する制御手段が、複数の押ボタン箱ごとにそれぞれ装備され、各押ボタン箱の制御手段が相互に通信可能に接続された押ボタン箱の制御連携システムであって、
各押ボタン箱の制御手段は、前記
タイムスイッチ信号を送信する親モードと、親モードの制御手段から前記
タイムスイッチ信号を受信する子モードとに、それぞれ選択可能であり、何れか一の押ボタン箱の制御手段が親モードに選択され、他の押ボタン箱の制御手段は子モードに選択され、
前記親モードの制御手段により、前記
タイムスイッチ信号に基づく制御が一の押ボタン箱自身で実行される時、該親モードの制御手段から前記子モードの制御手段に対して前記
タイムスイッチ信号が同期して送信され、前記子モードの制御手段により、前記親モードの制御手段から受信した前記
タイムスイッチ信号に基づく同じ制御が、他の押ボタン箱でも一斉に実行され、
各押ボタン箱の制御手段は、所定の時間帯に亘り実行中または実行される予定のある制御に係る
音出力制御信号に基づく制御を停止させるタイムスイッチ機能をそれぞれ備え、
前記親モードの制御手段のタイムスイッチ機能により、タイムスイッチ信号が出力されている時間帯でのみ、前記親モードおよび前記子モードの制御手段で前記
音出力制御信号に基づく制御を可能とする一方、前記タイムスイッチ信号が出力されていない時間帯では、前記親モードおよび前記子モードの制御手段で一斉に前記
音出力制御信号に基づく制御が停止されていることを特徴とする押ボタン箱の制御連携システム。
【請求項2】
何れか一の押ボタン箱の制御手段が前記親モードに選択されると、他の押ボタン箱の制御手段は前記子モードに自動的に選択されることを特徴とする請求項1に記載の押ボタン箱の制御連携システム。
【請求項3】
前記親モードの制御手段は、他機器より所定の要求信号の受信が可能であり、該要求信号に基づく制御が一の押ボタン箱で実行される時、該親モードの制御手段から前記子モードの制御手段に対して前記要求信号が同期して送信され、前記子モードの制御手段により、前記親モードの制御手段から受信した前記要求信号に基づく制御が、他の押ボタン箱でも一斉に実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の押ボタン箱の制御連携システム。
【請求項4】
情報別に定められた音を出力する音発生手段が、複数の押ボタン箱ごとにそれぞれ装備され、
前記音発生手段による音の出力は、各押ボタン箱の制御手段により別々に制御される一方、前記親モードの制御手段のタイムスイッチ機能により、前記音発生手段による音の出力が停止される時、該親モードの制御手段から前記子モードの制御手段に対してタイムスイッチ信号が同期して送信され、前記子モードの制御手段でも、前記音発生手段による音の出力が一斉に停止されることを特徴とする請求項3に記載の押ボタン箱の制御連携システム。
【請求項5】
各押ボタン箱の制御手段は、前記親モードか前記子モードかを外部入力により選択するための入力部をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の押ボタン箱の制御連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイムスイッチ信号を送受信する制御手段が、複数の押ボタン箱ごとにそれぞれ装備され、各押ボタン箱の制御手段が相互に通信可能に接続された押ボタン箱の制御連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交差点における歩行者の横断を支援するために、歩行者用信号灯器の灯色等に関する情報を音声により案内する様々な支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる支援装置では、スピーカーやその音声出力を制御する制御機は、信号灯器に付設される押ボタン箱とは別に、それぞれ信号灯器付近に設置されていた。
【0003】
最近では、押ボタン箱自体にスピーカーや制御機を内蔵して、各押ボタン箱ごとに歩行者に音響サービスを提供する支援装置も開発されている。かかる押ボタン箱によれば、スピーカーや制御機を別々に交差点に設置する労力を省くことができる。また、各押ボタン箱ごとに、それぞれ独立して様々な音声出力を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した支援装置では、押ボタン箱にスピーカーを設けたとしても、特に音声出力を停止するための機能は検討されていなかった。従って、交差点付近が閑静な住宅街であるような場合、夜間の時間帯における音声出力は住民にとって騒音になる可能性があった。
【0006】
そこで、交差点における各押ボタン箱での音声案内に関して、夜間の時間帯では音声出力を停止するような機能の付加が希求されていた。このような機能を付加する場合、各押ボタン箱ごとに内蔵された制御機により独自に音声出力の停止が可能となるため、制御タイミングの同期性が課題となる。
【0007】
すなわち、各押ボタン箱ごとに別々に音声出力を停止するとなると(
図7参照)、その制御タイミングにずれが生じやすく(
図8参照)、音声出力の停止の開始ないし終了も互いにずれやすくなり、効率的な制御が行えないという問題があった。また、個々の制御機ごとの重複した制御信号の出力も無駄であった。このような制御タイミングの同期性の確保や効率化に関する問題は、音声出力の停止に限られるものではない。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、複数の押ボタンごとに独立した制御が可能な場合において、所定の制御に関しては同期させることにより、各押ボタン箱で一斉に同じ制御を行うことができる押ボタン箱の制御連携システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]タイムスイッチ信号を送受信する制御手段(100)が、複数の押ボタン箱(10)ごとにそれぞれ装備され、各押ボタン箱(10)の制御手段(100)が相互に通信可能に接続された押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)であって、
各押ボタン箱(10)の制御手段(100)は、前記タイムスイッチ信号を送信する親モードと、親モードの制御手段(100)から前記タイムスイッチ信号を受信する子モードとに、それぞれ選択可能であり、何れか一の押ボタン箱(10)の制御手段(100)が親モードに選択され、他の押ボタン箱(10)の制御手段(100)は子モードに選択され、
前記親モードの制御手段(100)により、前記タイムスイッチ信号に基づく制御が一の押ボタン箱(10)自身で実行される時、該親モードの制御手段(100)から前記子モードの制御手段(100)に対して前記タイムスイッチ信号が同期して送信され、前記子モードの制御手段(100)により、前記親モードの制御手段(100)から受信した前記タイムスイッチ信号に基づく同じ制御が、他の押ボタン箱(10)でも一斉に実行され、
各押ボタン箱(10)の制御手段(100)は、所定の時間帯に亘り実行中または実行される予定のある制御に係る音出力制御信号に基づく制御を停止させるタイムスイッチ機能をそれぞれ備え、
前記親モードの制御手段(100)のタイムスイッチ機能により、タイムスイッチ信号が出力されている時間帯でのみ、前記親モードおよび前記子モードの制御手段(100)で前記音出力制御信号に基づく制御を可能とする一方、前記タイムスイッチ信号が出力されていない時間帯では、前記親モードおよび前記子モードの制御手段(100)で一斉に前記音出力制御信号に基づく制御が停止されていることを特徴とする押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)。
【0010】
[2]何れか一の押ボタン箱(10)の制御手段(100)が前記親モードに選択されると、他の押ボタン箱(10)の制御手段(100)は前記子モードに自動的に選択されることを特徴とする前記[1]に記載の押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)。
[3]前記親モードの制御手段(100)は、他機器より所定の要求信号の受信が可能であり、該要求信号に基づく制御が一の押ボタン箱(10)で実行される時、該親モードの制御手段(100)から前記子モードの制御手段(100)に対して前記要求信号が同期して送信され、前記子モードの制御手段(100)により、前記親モードの制御手段(100)から受信した前記要求信号に基づく制御が、他の押ボタン箱(10)でも一斉に実行されることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)。
【0012】
[4]情報別に定められた音を出力する音発生手段(60)が、複数の押ボタン箱(10)ごとにそれぞれ装備され、
前記音発生手段(60)による音の出力は、各押ボタン箱(10)の制御手段(100)により別々に制御される一方、前記親モードの制御手段(100)のタイムスイッチ機能により、前記音発生手段(60)による音の出力が停止される時、該親モードの制御手段(100)から前記子モードの制御手段(100)に対してタイムスイッチ信号が同期して送信され、前記子モードの制御手段(100)でも、前記音発生手段(60)による音の出力が一斉に停止されることを特徴とする前記[3]に記載の押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)。
【0013】
[5]各押ボタン箱(10)の制御手段(100)は、前記親モードか前記子モードかを外部入力により選択するための入力部をそれぞれ備えることを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)。
【0014】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の押ボタン箱(10)の制御連携システム(1)によれば、複数の押ボタン箱(10)ごとに制御手段(100)が装備されている。各押ボタン箱(10)の制御手段(100)は、それぞれ独立した所定の制御を実行することができ、タイムスイッチ信号を互いに送受信することができる。
【0015】
各押ボタン箱(10)の制御手段(100)は、制御信号を送信する親モードと、親モードの制御手段(100)から制御信号を受信する子モードとに、それぞれ選択可能である。何れか一の押ボタン箱(10)の制御手段(100)が親モードに選択されると、他の押ボタン箱(10)の制御手段(100)は子モードに選択される。
【0016】
親モードの制御手段(100)により、制御信号に基づく制御が一の押ボタン箱(10)自身で実行される時、該親モードの制御手段(100)から子モードの制御手段(100)に対して制御信号が同期して送信される。従って、子モードの制御手段(100)により、親モードの制御手段(100)から受信した制御信号に基づく同じ制御が他の押ボタン箱(10)でも一斉に実行される。
【0017】
このように、親モードの制御手段(100)からの一の制御信号に基づいて、各押ボタン箱(10)で一斉に同じ制御を連携して行うことができる。そのため、複数の押ボタン箱(10)ごとに独立して制御が可能であっても、所定の制御に関しては同期させることにより、各押ボタン箱(10)における制御タイミングのずれを防止でき、また、各制御手段(100)における制御信号の重複した出力も省くことができる。
また、各押ボタン箱(10)の制御手段(100)は、所定の時間帯に亘り音出力制御信号に基づく制御を停止させるタイムスイッチ機能をそれぞれ備えている。これにより、押ボタン箱(10)において音出力制御信号に基づく制御の実行中であったり、実行される予定であっても、所定の時間帯に限っては当該制御を停止することが可能となる。
さらにまた、親モードの制御手段(100)のタイムスイッチ機能により、タイムスイッチ信号が出力されている時間帯でのみ、親モードおよび子モードの制御手段(100)で音出力制御信号に基づく制御を可能とする一方、タイムスイッチ信号が出力されていない時間帯では、親モードおよび子モードの制御手段(100)で一斉に音出力制御信号に基づく制御が停止されている。このように、各押ボタン箱(10)におけるタイムスイッチ機能に関しても、互いに同期するように連携させることができる。
【0018】
前記[2]に記載の制御連携システム(1)によれば、何れか一の押ボタン箱(10)の制御手段(100)が親モードに選択されると、他の押ボタン箱(10)の制御手段(100)は子モードに自動的に選択される。
前記[3]に記載の制御連携システム(1)によれば、親モードの制御手段(100)は、他機器より所定の要求信号を受信することができる。親モードの制御手段(100)により、要求信号に基づく制御が一の押ボタン箱(10)で実行される時、該親モードの制御手段(100)から子モードの制御手段(100)に対して要求信号が同期して送信される。
【0019】
従って、子モードの制御手段(100)により、親モードの制御手段(100)から受信した要求信号に基づく制御が他の押ボタン箱(10)でも一斉に実行される。このように、親モードの制御手段(100)から子モードの制御手段(100)に同期して送信される信号は、親モード自身の制御手段(100)より生成される制御信号に限らず、外部の他機器より受信する要求信号であっても良い。
【0022】
前記[4]に記載の制御連携システム(1)によれば、情報別に定められた音を出力する音発生手段(60)が、複数の押ボタン箱(10)ごとにそれぞれ装備されている。音発生手段(60)による音の出力は、各押ボタン箱(10)の制御手段(100)により別々に制御される。これにより、各押ボタン箱(10)では、それぞれ独立した制御によって、例えば、押ボタン箱(10)の所在を知らせる音響を出力したり、信号灯色を知らせる音声案内を出力することができる。
【0023】
また、親モードの制御手段(100)のタイムスイッチ機能により、音発生手段(60)による音の出力を停止させることができる。これにより、押ボタン箱(10)が設置される交差点が閑静な住宅街にある場合等、夜間の時間帯に限って音出力を停止することができ、付近住民にとっての騒音被害となることを防止することができる。
【0024】
このような音出力の停止に関しても、親モードの制御手段(100)のタイムスイッチ機能により、音発生手段(60)による音の出力が停止される時、該親モードの制御手段(100)から子モードの制御手段(100)に対してタイムスイッチ信号が同期して送信される。従って、子モードの制御手段(100)でも、音発生手段(60)による音の出力が一斉に停止される。
【0025】
前記[5]に記載の制御連携システム(1)によれば、各押ボタン箱(10)の制御手段(100)にある入力部での外部入力によって、制御手段(100)を親モードまたは子モードの何れかに容易に選択することができる。ここで外部入力による選択は、初期設定として予め固定しても良く、あるいは、後から変更できるようにしてもかまわない。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る押ボタン箱の制御連携システムによれば、複数の押ボタン箱ごとに独立して所定の制御をそれぞれ実行することができ、所定の制御に関して同期させることにより、各押ボタン箱で一斉に同じ制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係る制御連携システムの押ボタン箱を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る制御連携システムの各押ボタン箱における制御信号の流れを示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る制御連携システムの各押ボタン箱における制御信号のON・OFFを示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る制御連携システムの各押ボタン箱の設置例を示す交差点の平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る制御連携システムの押ボタン箱を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る制御連携システムの押ボタン箱を示す縦断面図である。
【
図7】従来の各押ボタン箱における制御信号の流れを示す説明図である。
【
図8】従来の各押ボタン箱における制御信号のON・OFFを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1~
図6は、本発明の実施の形態を示している。
本実施の形態に係る押ボタン箱10の制御連携システム1は、複数の押ボタン箱10のそれぞれに制御装置(制御手段)100が装備され、各押ボタン箱10ごとの制御装置100を相互に通信可能に接続してなる。以下、本制御連携システム1で制御対象とする複数の押ボタン箱10は、一の交差点に隣接して設置された一群を例として説明する。
【0029】
押ボタン箱10は、付帯する歩行者用信号灯器の作動を指示するものである。
図4に示すように、一の交差点において、それぞれ4方向へ分岐する道路上には4つの横断歩道Aがあり、各横断歩道Aの両端の歩道上に、押ボタン箱10はそれぞれ設置されている。各押ボタン箱10は、横断歩道Aの両端に同じく設置されている図示省略した歩行者用信号灯器に付帯している。また、各歩行者用信号灯器は、同じく図示省略したが、横断歩道A付近の車道上に設置されている車両用信号灯器に対応している。
【0030】
歩行者用信号灯器は、付帯する車両用信号灯器に連動して灯色が変化する。一般に歩行者用信号灯器は、青色点灯(青信号)で歩行者の通行を許可し、青色点滅(青点滅信号)で灯色変化のタイミングを予告し、赤色点灯(赤信号)で歩行者の通行を禁止する。車両用信号灯器や歩行者用信号灯器の灯色変化のタイミング等は、外部にある図示省略した交通信号制御装置によって制御される。また、押ボタン箱10の機能の一部も、交通信号制御装置によって制御される。
【0031】
図1に示すように、押ボタン箱10は、
タイムスイッチ信号を送受信する制御装置100と、音を出力する音発生手段であるスピーカー60の他、上部スイッチ40Aと、前面スイッチ40Bと、確認表示灯50等を備えている。各押ボタン箱10ごとに装備された制御装置100は、互いに共通の構成となっており、スピーカー60による音の出力の制御のみならず、押ボタン箱10全体の作動を制御する。制御装置100は、主制御部101と、入出力端子板102と、無線受信部103と、タイムスイッチ回路104と、音響出力回路105等を備えている。
【0032】
主制御部101は、CPU、ROM、RAM等を有する周知の構成である。CPUは、各種演算および制御を行うものであり、ROMには、各種演算および制御の処理に関するプログラムやデータ等が記憶されている。また、RAMは、各種カウンタ等の記憶領域を含むCPUの作業領域等を備えている。主制御部101のCPUは、入出力端子板102を介して他の押ボタン箱10の制御装置100や、交通信号制御機および交通信号付加装置等と相互に通信可能に接続されている。
【0033】
また、主制御部101は、各種の制御信号のうちタイムスイッチ信号を外部へ送信する「親モード」と、この親モードの制御装置100からタイムスイッチ信号を受信する「子モード」とに、それぞれ選択可能に構成されている。具体的には、制御装置100は、親モードか子モードかを外部入力により選択するための入力部を備えている。ここでの入力部は、例えば、主制御部101の基板上に設けた専用スイッチ(図示せず)である。
【0034】
入出力端子板102は、商用電源より押ボタン箱10の作動に必要な電力が給電される他、主制御部101からの各種の制御信号を外部へ送信したり、外部から各種の制御信号を受信して主制御部101に入力するものである。無線受信部103は、外部からのアンテナ信号を受信するものであり、アンテナ信号は主制御部101に入力される。タイムスイッチ回路104は、内蔵タイマーを備えており、タイムスイッチ信号を出力することにより、任意の時間帯で主制御部101からの音出力制御信号の出力を停止できる。
【0035】
音響出力回路105は、スピーカー60による音の出力を直接制御するものである。ここでスピーカー60が出力する音には、情報別に定められた案内メッセージの音声の他、言語をなさない効果音や電子音、自然音、音楽のフレーズ等も含まれている。前記主制御部101のCPUから音響出力回路105に音出力制御信号が出力されると、スピーカー60から案内メッセージ等の音が出力される。なお、音量に関しては、音の種類毎に個別に設定できるようになっている。
【0036】
音響出力回路105も、CPU、ROM、RAM等を有する周知の構成である。CPUは、音の出力制御を実行しスピーカー60より出力させる。ROMには、音処理手順(プログラム)やデータ等が記憶されている。RAMは、CPUにより音処理手順を実行して取得した情報を記憶する。さらに音響出力回路105は、主制御部101と信号の入出力を行う入出力インターフェース、CPUからの音出力制御信号に基づき具体的な音を生成する音制御IC、音制御ICに管理され、多種多様な音をデータ化し記憶する音データROM、音制御ICから生成された音信号を増幅するアンプ回路等を備えている。
【0037】
音データROMには、例えば、位置表示音、確認音、案内メッセージである音声案内音等の音データが予め記憶されている。位置表示音は、押ボタン箱10の所在を知らせるために、例えば所定のメロディーとして出力される。位置表示音は、その出力が選択されている場合、基本的にはスピーカー60から常時出力されるが、タイムスイッチ回路104からのタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で位置表示音の出力を停止することができる。
【0038】
確認音は、押ボタン箱10にある上部スイッチ40Aや前面スイッチ40Bが感応状態となった場合に、例えば電子音(ピピピピピ等)として出力される。ただし、確認音も、前記タイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止できるように設定されている。また、確認音の出力中に上部スイッチ40Aまたは前面スイッチ40Bが感知した場合(再感知時)は、確認音は出力しないように設定されている。
【0039】
音声案内音は、歩行者用信号灯器の作動に関する情報を音声で案内するものである。本実施の形態における音声案内音は、確認案内音と信号案内音とがあり、それぞれ複数言語で用意されている。確認案内音は、確認案内音1,2の2種類あり、上部スイッチ40A、前面スイッチ40Bが感応状態となった場合に、前記確認音の鳴動終了後に出力される。ただし、確認案内音も、前記タイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止できるように設定されている。
【0040】
詳しくは、上部スイッチ40Aが操作されて感応状態になると、主制御部101から入出力端子板102を介して音響式信号1が出力され、このリコール時に確認案内音1は、例えば「次の青信号までしばらくお待ちください。」等の音声案内として出力される。同様に、前面スイッチ40Bが操作されて感知すると、主制御部101から入出力端子板102を介して高齢者等感応信号が出力され、このリコール時に確認案内音2は、前記確認案内音1と同様の音声案内として出力される。なお、確認案内音は、英語でも用意されている。
【0041】
信号案内音は、歩行者青信号案内音と歩行者青点滅信号案内音の2種類あり、歩行者用信号灯器の灯色の変化に応じて出力される。詳しくは、歩行者用信号灯器が青色点灯(青信号)になると、外部の交通信号付加装置から音出力制御信号が送出され、これを主制御部101が受信した時に、歩行者青信号案内音は出力される。歩行者青信号案内音は、例えば「信号が青になりました。左右の安全を確かめてから横断しましょう。」等の音声案内である。
【0042】
歩行者用信号灯器が青色点滅(青点滅信号)になると、外部の交通信号付加装置から音出力制御信号が送出され、これを主制御部101が受信した時に、歩行者青点滅信号案内音は出力される。歩行者青点滅信号案内音は、例えば「信号が赤になります。これからの横断はやめてください。」等の音声案内である。このような信号案内音に関しても、前記タイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止できるように設定されている。また、信号案内音も、英語等の複数言語で用意すると良い。
【0043】
また、制御装置100は、タイムスイッチ機能を備えている。すなわち、内蔵のタイムスイッチ回路104および外部からのタイムスイッチ信号により、音出力の有無を設定することができる。タイムスイッチ回路104は、例えば1日1回の音出力を入切することができる。また、タイムスイッチ回路104は、タイムスイッチ出力を備え、他の押ボタン箱10にタイムスイッチ信号を出力できるように設定されている。
【0044】
各押ボタン箱10ごとに制御装置100は、主制御部101のCPU等により前述したような音響出力やタイムスイッチ機能を制御するが、さらに10、次のような制御を実行するように設定されている。すなわち、各押ボタン箱10の制御手段100は、前述したように、タイムスイッチ信号を送信する親モードと、親モードの制御装置100からタイムスイッチ信号を受信する子モードとに、それぞれ選択可能となっている。
【0045】
制御装置100における親モードか子モードかの選択は、前記入力部としての専用スイッチ等で制御装置100ごとに選択する。あるいは、何れか一の押ボタン箱10の制御装置100で親モードに選択すると、他の押ボタン箱10の制御装置100では、自動的に子モードに選択されるように設定しても良い。また、入力部による選択は、初期設定として予め固定しても良く、あるいは後から変更できるようにしてもかまわない。何れにせよ、各押ボタン箱10の制御装置100は、何れか一の押ボタン箱10の制御装置100が親モードに選択され、他の押ボタン箱10の制御装置100は子モードに選択される。
【0046】
このように、各押ボタン箱10の制御装置100を親モードと子モードとに選択することで、所定の制御に関しては、親モードの制御装置100に子モードの制御装置100を同期させて、各押ボタン箱10で一斉に同じ制御を行うように設定されている。すなわち、親モードの制御装置100により、前記タイムスイッチ信号に基づく音出力停止の制御が一の押ボタン箱10自身で実行される時、該親モードの制御装置100から子モードの制御装置100に対して前記タイムスイッチ信号が同期して送信される。すると、子モードの制御装置100でも、前記タイムスイッチ信号に基づく音出力停止の制御が一斉に実行される。
【0047】
図5に示すように、押ボタン箱10は、前記制御装置100の構成部品を収納する箱状の筐体11を本体とする。筐体11は、その背面側となり前面側が開口したベース本体20と、該ベース本体20の開口を前方から覆うように組み合わされた前面ケース30とから成る。前面ケース30の上下に、上部スイッチ40Aと前面スイッチ40Bが設けられている。各スイッチ40A,40Bは、操作時に押す必要はなく、単に触れることで操作可能な接触感知式のセンサスイッチから構成されている。
【0048】
筐体11の各面部の外面は、突起物がなく滑らかな平面であり、二面ないし三面が接合する角は丸みを付けて安全性を考慮している。また、筐体11の上面は、斜め後方へ下向きに傾斜しており、異物を置きにくい構造となっている。ベース本体20は、前面側が開口したケース状の部材であり、前面ケース30は、背面側が開口してベース本体20の開口周縁に被さる底浅なフタ状の部材である。上部スイッチ40Aは、前面ケース30の正面上部の傾斜面に配設され、前面スイッチ40Bは、前面ケース30の正面下部の垂直な前面に配設されている。
【0049】
前面ケース30の正面上部の傾斜面は、視覚障がい者にとって触りやすい位置ないし方向となるため、上部スイッチ40Aは、特に視覚障がい者用として設定されている。一方、前面ケース30の正面下部の前面スイッチ40Bは、健常者ないし高齢者用として設定されている。また、前面ケース30の正面において、上下のスイッチ40A,40Bの間には、確認表示灯50が配設されている。確認表示灯50は、例えば、交通信号制御機から送出される表示駆動信号により点灯するように制御されるが、歩行者用信号灯器の作動に関する各種情報を表示可能に構成しても良い。
【0050】
制御装置100のうち主制御部101、入出力端子板102、無線受信部103、タイムスイッチ回路104、それに音響出力回路105等は一つの制御基板100a上に組み込まれた状態で構成されている。
図6に示すように、制御基板100aは、ベース本体20の背面内側に配設されている。また、スピーカー60は、従来は制御基板100a上に配設されていたが、本実施の形態に係る押ボタン箱10では、
図6に示すように、制御基板100aではなく前面ケース30の内側に配設されている。
【0051】
次に、本実施の形態に係る押ボタン箱10の制御連携システム1の作用について説明する。本制御連携システム1に含まれる複数の押ボタン箱10は、それぞれが制御装置100を装備しており、各押ボタン箱10の制御装置100は、独立してスピーカー60からの音響出力等の制御を実行することができる。
【0052】
また、各押ボタン箱10の制御装置100は、相互に通信可能に接続されており、タイムスイッチ信号を送受信することができる。ここでタイムスイッチ信号とは、各種制御信号のうち押ボタン箱10同士で互いに連携させるべき制御の実行に関するものである。
【0053】
各押ボタン箱10の制御装置100では、タイムスイッチ信号を送信する親モードと、親モードの制御装置100からのタイムスイッチ信号を受信する子モードとに、それぞれ選択可能である。ここでの選択は、前記入力部としての専用スイッチ等で制御装置100ごとに容易に選択することができる。各押ボタン箱10の制御装置100は、何れか一の押ボタン箱10の制御装置100が親モードに選択されると、他の全ての押ボタン箱10の制御装置100は子モードに選択されることになる。
【0054】
各押ボタン箱10では、制御装置100の主制御部101から音響出力回路105に音出力制御信号が出力されると、スピーカー60から案内メッセージである音声案内音の他、位置表示音や確認音等が随時出力される。このような音響出力の制御は、各押ボタン箱10ごとに独立して実行され、歩行者を聴覚的に案内して支援することになる。ところが、交差点付近が閑静な住宅街である場合、夜間の時間帯における音響出力は付近住民にとって騒音になる可能性がある。
【0055】
そこで、制御装置100にあるタイムスイッチ回路104によって、歩行者が少ない夜間の時間帯では、余計な音響出力を停止するように設定する。すなわち、タイムスイッチ回路104からタイムスイッチ信号が出力される時間帯でのみ、音出力制御信号による音響出力の制御を可能とする。
図3に示すように、タイムスイッチ信号は、音響出力の開始時に出力されてLoレベル(OFF)からHiレベル(ON)に変化し、音響出力の終了時にHiレベルからLoレベルに変化する。
【0056】
タイムスイッチ信号がLoレベル(OFF)に維持される時間帯では、音出力制御信号による音響出力の制御を停止させるように予め設定する。よって、タイムスイッチ信号がLoレベル(OFF)に維持される時間帯を、音響出力が騒音となる夜間の時間帯に合わせれば良い。タイムスイッチ信号のLoレベル・Hiレベルの切り替えは、予め定めた任意の時間帯における1日1回のON・OFFだけで対処することができる。なお、具体的な時間帯に関しては、例えばタイムスイッチ回路104の内蔵タイマーによって設定することができる。
【0057】
タイムスイッチ回路104による音響入切時間の制御は、
図7に示すように、各押ボタン箱ごとに独自に実行することも可能である。しかしながら、音響入切時間の制御を別々に実行する場合、
図8に示すように、各押ボタン箱における制御タイミングにずれが生じやすく、音響出力の開始時ないし終了時も互いにずれやすくなる。よって、効率的な制御を行うことができず、また、個々の制御装置ごとに、重複した制御信号を出力することにも制御上の無駄があった。
【0058】
本制御連携システム1によれば、親モードの制御装置100により、タイムスイッチ信号に基づく音響入切時間の制御が一の押ボタン箱10自身で実行される時、
図2に示すように、親モードの制御装置100から子モードの制御装置100に対してタイムスイッチ信号が同期して送信される。従って、子モードの制御装置100により、親モードの制御装置100から受信したタイムスイッチ信号に基づく同一の音響入切時間の制御が、他の押ボタン箱10でも一斉に実行される。
【0059】
このように、親モードの制御装置100からの一のタイムスイッチ信号に基づいて、各押ボタン箱10で一斉に同じ音響入切時間の制御を連携して行うことができる。そのため、複数の押ボタン箱ごとに独立して制御が可能であっても、音響入切時間の制御に関しては同期させることができる。従って、
図3に示すように、各押ボタン箱10における音響入切時間の制御タイミングにずれが生じる虞はなく、また、各制御装置100におけるタイムスイッチ信号の重複した出力も省くことができる。なお、このような制御の連携は、押ボタン箱10同士で互いに連携させるべき制御であれば、音響入切時間の制御に限られるものではない。
【0060】
また、別の実施の形態として、親モードの制御装置100は、他機器である交通信号制御機および交通信号付加装置等より所定の要求信号の受信が可能となるように設定する。ここで所定の要求信号とは、例えば、各制御装置100にタイムスイッチ回路104を設けずに、交通信号制御機から出力されるタイムスイッチ信号としても良い。そして、親モードの制御装置100が要求信号を受信した場合に、この要求信号に基づく制御が一の押ボタン箱10で実行されるが、この時に親モードの制御装置100から子モードの制御装置100に対して前記要求信号が同期して送信される。
【0061】
従って、子モードの制御装置100により、親モードの制御装置100から受信した前記要求信号に基づく制御が、他の押ボタン箱10でも一斉に実行される。このように、親モードの制御装置100から子モードの制御装置100に同期して送信される信号は、親モード自身の制御装置100より生成されるタイムスイッチ信号に限らず、外部の他機器より受信する要求信号であっても良い。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、各押ボタン箱において、親モードの制御装置100と子モードの制御装置100とで同期させる制御は、音出力制御信号による音響出力の制御だけに限られることなく、他に例えば、表示駆動信号による確認表示灯50の点灯・表示に関する制御としても良い。
【0063】
また、制御装置100の無線受信部103は、外部からのアンテナ信号を受信するものであるが、代わりに無線送受信部を設けて、各制御装置100を無線通信により相互に通信可能に構成しても良い。これにより、各制御装置100で同期させる制御信号の送受信を無線通信により行うことが可能となり、各押ボタン箱10を信号線を介して接続する作業は不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る押ボタン箱の制御連携システムは、各押ボタン箱間における様々な制御に関して広く適用することができるが、特に、歩行者支援に用いる音声案内の制御に最適である。
【符号の説明】
【0065】
10…押ボタン箱
11…筐体
20…ベース本体
30…前面ケース
60…スピーカー
100…制御装置
101…主制御部
102…入出力端子板
103…無線受信部
104…タイムスイッチ回路
105…音響出力回路