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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】変異した骨格を有する結合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/315 20060101AFI20220909BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C07K14/315 ZNA
C07K19/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2016537294
(86)(22)【出願日】2014-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2016-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2014068259
(87)【国際公開番号】W WO2015028550
(87)【国際公開日】2015-03-05
【審査請求日】2017-08-03
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】13182022.7
(32)【優先日】2013-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】307015286
【氏名又は名称】アフィボディ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エーリク・ノルドリング
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・ニルソン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ストレームバリ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第92/009633(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/074463(WO,A1)
【文献】特表2011-509073(JP,A)
【文献】特表2016-529270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0238039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K14/315
C12N15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
)EX234AX67EIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647
(配列中、X2、X3、X4、X 6 、X7、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、独立して任意のアミノ酸残基に相当し;そして
配列中、互いに独立して、
16は、NおよびTから選択され;
26は、KおよびSから選択され;
2930PX32は、DDPSおよびRQPEから選択され;
35は、AおよびSから選択され;
36は、EおよびNから選択され;
39は、A、CおよびSから選択され;
4546は、SE、ESまたはSDであり;
47は、AおよびSから選択される)および
ii)i)に定義された配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列、但し、X4546はSE、ESまたはSDである、
から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ、
当該選択されたアミノ酸配列とX 45 46 がNDである点でのみ相異するアミノ酸配列を含むポリペプチドよりも安定であるポリペプチドであって
但し、ヒト補体成分5に結合することができ、かつX10がDでX20がWであるポリペプチドは除外される、ポリペプチド。
【請求項2】
4546がSEまたはSDである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
4546がESである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
4546がSEである、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、
YAK EX234AX67EIX1011LPNLX161718QX2021AF
IX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q AP;および
FNK EX234AX67EIX1011LPNLX161718QX2021AF
IX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q AP
(配列中、各Xyは、請求項1~4のいずれか1項に定義されたとおりである)
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
但し、ヒト補体成分5に結合することができ、かつX10がDでX20がWであるポリペプチドは除外される、ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチドを一部分として含む融合ポリペプチド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド。
【請求項8】
共通の骨格に基づくポリペプチド変異体の集団であって、集団中のそれぞれのポリペプチドが、
i)EX234AX67EIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647
(配列中、X2、X3、X4、X 6 、X7、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、独立して任意のアミノ酸残基に相当し;そして
配列中、互いに独立して、
16は、NおよびTから選択され;
26は、KおよびSから選択され;
2930PX32は、DDPSおよびRQPEから選択され;
35は、AおよびSから選択され;
36は、EおよびNから選択され;
39は、A、CおよびSから選択され;
4546は、SE、ESまたはSDであり;
47は、AおよびSから選択される)および
ii)i)に定義された配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列、但し、X4546はSE、ESまたはSDである、
から選択されるアミノ酸配列を含む集団。
【請求項9】
少なくとも1×104個の独特なポリペプチド分子を含む、請求項8に記載の集団。
【請求項10】
ポリヌクレオチドの集団であって、そのそれぞれのメンバーが、請求項8~9のいずれか1項に記載のポリペプチドの集団のメンバーをコードすることを特徴とする集団。
【請求項11】
請求項8~9のいずれか1項に記載のポリペプチド集団と、請求項10に記載のポリヌクレオチド集団との組合せであって、ポリペプチドの前記集団のそれぞれのメンバーが、遺伝子型-表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコードしているポリヌクレオチドと物理的にまたは空間的に関連している組合せ。
【請求項12】
前記遺伝子型-表現型カップリング手段がファージディスプレイシステムを含む、請求項11に記載の組合せ。
【請求項13】
ポリペプチドの集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択
する方法であって、
(a)請求項8~9のいずれか1項に記載のポリペプチドの集団を準備するステップと;
(b)標的と、該標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間の特異的相互作用が可能となる条件下でポリペプチドの集団を該所定の標的と接触させるステップと;
(c)前記特異的相互作用に基づいて、ポリペプチドの残りの集団から少なくとも1つの所望のポリペプチドを選択するステップと
を含む方法。
【請求項14】
所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離する方法であって、
・請求項13に記載の方法を用いて、ポリペプチドの集団から、前記所望のポリペプチドおよびそれをコードしているポリヌクレオチドを選択するステップと;
・こうして分離された所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと
を含む方法。
【請求項15】
所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを特定する方法であって、
・請求項14に記載の方法を用いて、前記所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと;
・ポリヌクレオチドを配列決定して、前記所望のポリペプチドのアミノ酸配列を推論することによって確定するステップと
を含む方法。
【請求項16】
ポリペプチドの集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択および特定する方法であって、
(a)請求項8~9のいずれか1項に記載のポリペプチドの集団のそれぞれのメンバーを個々の担体またはビーズ上で合成するステップと;
(b)ポリペプチドと所定の標的との相互作用に基づいて担体またはビーズを選択または富化するステップと;
(c)タンパク質特性評価方法論によってポリペプチドを特定するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリペプチド、その産生方法および共通の骨格に基づくポリペプチド変異体の新規な集団に関する。この集団は、例えば新規な結合タンパク質およびポリペプチドを提供するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
新規な結合タンパク質を作製するための種々の方法が記載されている(非特許文献1)。1つの戦略は、ライブラリー生成およびスクリーニングを所望の性質の選択と組み合わせることである。
【0003】
共通の第一世代の骨格に基づく第一世代のZ変異体ポリペプチド、このような分子の集団およびそれらを含む方法は、特許文献1に記載されている。さらに、第二世代の骨格に基づくZ変異体ポリペプチド、このような分子の集団およびそれらを含む方法は、特許文献2に記載されている。これらの2つの開示の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
いくつかの適用に関して、改善された性質、例えばより高いアルカリ安定性、低い抗原性、構造安定性、化学合成の容易さおよび親水性を有するZ変異体ポリペプチドまたはその集団が望まれている。特許文献2は、改善された性質を有する共通の骨格を有するZ変異体を開示しているが、しかし、その中に記載されたZ変異体ポリペプチドによってすべての所望の性質を得ることができるわけではない。
【0005】
ポリペプチド医薬の成功の鍵となる因子の1つは、それらの安定性である。高い構造安定性を示すポリペプチドは、おそらく産生中および人体内の両方で、化学的修飾、物理的条件の変化およびタンパク質分解に機能的に耐えるであろう。さらに、安定性は、ポリペプチド医薬の活性有効期間だけでなく人体内のポリペプチド医薬の活性期間に影響を及ぼすであろう。
【0006】
したがって、Z変異体ポリペプチドの安定性の改善が継続的に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO95/19374
【文献】WO2009/080811
【非特許文献】
【0008】
【文献】Nygren PA and Uhlen M (1997) Curr Opin Struct Biol 7:463-469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
新規な骨格を有するポリペプチドを提供することが本発明の目的であり、このポリペプチドは、現在入手可能なZ変異体ポリペプチドの上記および他の欠点を軽減する。
【0010】
本発明の別の目的は、新規な骨格に基づくポリペプチドの産生方法を提供することである。また、本発明の目的は、このような改善されたポリペプチド変異体の集団を提供することであり、すべて新規な骨格に基づいている。
【0011】
本発明の別の目的は、ポリヌクレオチドの集団を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、ポリペプチド集団とポリヌクレオチド集団との組合せを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを、ポリペプチドの集団から選択する方法を提供することである。
【0014】
別の目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離する方法を提供することである。
【0015】
別の目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを特定する方法を提供することである。
【0016】
さらなる目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択および特定する方法を提供することである。
【0017】
関連した目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを産生する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらのおよび他の目的は、本明細書に開示された種々の態様によって達成してもよい。
【0019】
本開示の第1の態様において、
i)EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647
(配列中、X、X、X、X6、X、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、独立して任意のアミノ酸残基に相当し;そして
配列中、互いに独立して、
16は、NおよびTから選択され;
26は、KおよびSから選択され;
2930PX32は、DDPSおよびRQPEから選択され;
35は、AおよびSから選択され;
36は、EおよびNから選択され;
39は、A、CおよびSから選択され;
45は、E、NおよびSから選択され;
46は、D、EおよびSから選択されるが、但し、X45がNであるとき、X46はDでなく;
47は、AおよびSから選択される)および
ii)i)に定義された配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列、但し、X45がNであるとき、X46はDでない、
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0020】
上のポリペプチド配列i)の中で、「独立して任意のアミノ酸に相当する」として定義された各アミノ酸Xは、それぞれ、すべての可能なアミノ酸から選択されるアミノ酸残基に相当する。明確にするため、これは、上の配列i)中の位置X、X、X、X、X、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28に相当するアミノ酸位置に当てはまる。これは、それぞれのこのようなXが、配列中のXと表された他の任意の残基の同一性と独立した任意のアミノ酸残基であってもよいことを意味する。アミノ酸配列中、これらのアミノ酸Xは、全20個の天然のアミノ酸残基のいずれかが、任意の所定の変異体中の対応するX位置に存在しうるようなやり方で、これらの20個の天然のアミノ酸残基から選択してもよい。各位置におけるアミノ酸残基の選択は、多少ランダム化してもよい。また、種々の多様なアミノ酸残基が選択される群を、20個の天然のアミノ酸残基のうち19、18、17、16またはそれ未満に限定することも可能である。種々の位置における変動性は、ランダム化を意味しない1個から最大で全20個のアミノ酸までの間で個々に調整してもよい。アミノ酸のより小さなサブセットのランダム導入は、導入されたデオキシリボヌクレオチド塩基の注意深い選択によって行ってもよく、例えば、コドンT(A/C)Cは、ポリペプチド鎖中の所定の位置でセリンまたはチロシンのランダム導入を行うことによって導入してもよい。同様に、コドン(T/C/A/G)CCを導入してポリペプチド鎖の所定の位置でフェニルアラニン、ロイシン、アラニンおよびバリンのランダム導入を行ってもよい。当業者は、ポリペプチド鎖中の所定の位置でアミノ酸の種々の組合せを得るために用いてもよいデオキシリボヌクレオチド塩基の組合せの多くの選択肢を知っている。また、ポリペプチド鎖中の所定の位置に現れてもよいアミノ酸のセットは、一度に1つのデオキシリボヌクレオチド塩基の代わりに、オリゴヌクレオチド合成中のトリヌクレオチドの導入によって決定してもよい。アミノ酸の確定セットは、合成において望ましい位置で確定コドンの組込みを可能にするスプリット-プール(split-pool)合成を用いて得てもよい。ランダム化二本鎖リンカーを得るためのさらに別の選択肢は、その後に構築された二本鎖DNAの連結および制限を用いるトリヌクレオチド構成単位のランダム化セットの組込みによるものである。
【0021】
本開示の一実施態様において、所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドが提供される。このような一実施態様において、標的結合特異性をもたらすアミノ酸残基は、上の配列i)中の位置2、3、4、6、7、10、11、17、18、20、21、25および28に相当する位置のものである。同様に、このようなポリペプチドにおいて、標的結合特異性もたらすアミノ酸残基は、「骨格アミノ酸」または単に「骨格」と呼ばれる。したがって、一実施態様において、本明細書に定義された骨格アミノ酸残基は、上の配列i)中の位置1、5、8、9、12~15、19、22~24、27、31、33~34、37~38、40~44および48に相当する位置のものである。本明細書に定義されたポリペプチドの骨格アミノ酸によってもたらされる好都合な性質が、上記ポリペプチドの標的結合特異性と無関係であることは当業者に明らかであろう。
【0022】
当業者に知られているように、任意のポリペプチド、例えば本開示のポリペプチドの機能は、ポリペプチドの三次構造に依存する。したがって、その機能に影響を及ぼすことなく、ポリペプチドのアミノ酸の配列に小さな変化を加えることが可能である。したがって、本開示は、ポリペプチドの機能的性質、例えばその改善された安定性および/または所定の標的に対するその結合親和性を変えることのない、上記ポリペプチドの修飾された変異体を包含する。
【0023】
このように、また、i)に定義された配列に対して91%またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドが本開示によって包含される。いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、i)に定義された配列に対して少なくとも93%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%同一である配列を含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施態様において、配列定義i)とii)との間のこのような違いは、本明細書に開示されたポリペプチドの配列の任意の位置において見いだされることがある。別の実施態様において、このような変化は、骨格アミノ酸残基にのみ見いだされてもよい。別の実施態様において、上記の変化は、標的結合特異性をもたらすアミノ酸残基中にのみ見いだされてもよい。例えば、アミノ酸残基の特定の機能的分類(例えば疎水性、親水性、極性など)に属するアミノ酸残基を同じ機能的分類からの別のアミノ酸残基と交換することができる可能性がある。
【0025】
「%同一性」という用語は、本明細書中で用いる場合、例えば、以下のように算出してもよい。CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson et al, Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680 (1994))を用いてクエリー配列を標的配列に対して整列させる。整列させた配列の1つ、例えば最も短いものに相当するウィンドウ上で比較を行う。ウィンドウは、いくつかの場合、標的配列によって定義してもよい。他の場合、クエリー配列によってウィンドウを定義してもよい。各位置のアミノ酸残基を比較し、標的配列中で同一の対応関係を有するクエリー配列の位置のパーセンテージを%同一性として報告する。
【0026】
ポリペプチドを結合するための骨格として用いるとき、本明細書に開示された配列は、知られている類似の骨格と比較して利点を提供し、そして高い構造安定性を示し、かつそれによって改善された貯蔵有効期間を示すように設計されている。これらの利点は、本開示の第3の態様(さらに下を参照)にもあてはまり、それらはこの第1の態様のポリペプチド変異体の集団に関連がある。
【0027】
本開示の一実施態様において、X16はTである。
【0028】
一実施態様において、X26はKである。
【0029】
一実施態様において、X2930PX32はDDPSである。
【0030】
一実施態様において、X2930PX32はRQPEである。
【0031】
一実施態様において、X35はSである。
【0032】
一実施態様において、X36はEである。
【0033】
一実施態様において、X39はSである。
【0034】
一実施態様において、X45はEおよびSから選択される。
【0035】
一実施態様において、X45はEである。
【0036】
一実施態様において、X45はSである。
【0037】
一実施態様において、X46はEおよびSから選択される。
【0038】
一実施態様において、X46はEである。
【0039】
一実施態様において、X46はSである。
【0040】
一実施態様において、X46はDである。
【0041】
一実施態様において、X45がNであるとき、X46はDまたはEではない。
【0042】
一実施態様において、X4546は、EE、ES、SEおよびSSから、例えばESおよびSEから選択される。
【0043】
一実施態様において、X4546はESである。
【0044】
一実施態様において、X4546はSEである。
【0045】
一実施態様において、X4546はSDである。
【0046】
一実施態様において、X47はSである。
【0047】
本明細書に用いる「所定の標的に対する結合親和性」という用語は、例えば表面プラスモン共鳴(SPR)技術を用いて試験されうるポリペプチドの性質のことをいう。例えば、上記結合親和性は、所定の標的またはそのフラグメントを機器のセンサチップ上に固定し、被検ポリペプチドを含有するサンプルをチップ上に通過させる実験において試験してもよい。別法として、被検ポリペプチドを機器のセンサチップ上に固定し、所定の標的を含有するサンプルまたはそのフラグメントをチップ上に通過させる。次いで、当業者は、このような実験によって得られた結果を解釈して所定の標的に対するポリペプチドの結合親和性の少なくとも定性的尺度(qualitative measure)を確立してもよい。定量的尺度(quantitative measure)が望ましい場合、例えば相互作用のK値を決定するため、表面プラスモン共鳴法を用いてもよい。結合値は、例えば、ビアコア(Biacore)(GEヘルスケア(GE Healthcare))またはプロテオンXPR36(ProteOn XPR 36)(バイオ・ラッド)Bio-Rad)機器において確定してもよい。所定の標的を機器のセンサチップ上に適切に固定し、親和性を決定すべきポリペプチドのサンプルを系列希釈によって調製し、そして順不同で注射する。次いで、例えばBIAevaluation 4.1ソフトウェアの1:1ラングミュア結合モデル、または機器の製造元によって提供される、他の適したソフトウェアを用いて、結果からK値を算出してもよい。
【0048】
また、本明細書に用いる「所定の標的に対する結合親和性」という用語は、例えばELISAによって試験されうるポリペプチドの性質のことであってもよい。例えば、結合親和性は、抗体コーティングされたELISAプレート上でポリペプチドのサンプルを捕捉し、ビオチン化された所定の標的またはそのフラグメント、続いてストレプトアビジンコンジュゲート化HRPを加える実験において試験してもよい。TMB基質を加え、そしてマルチウェルプレートリーダー、例えばビクター(Victor3)(パーキンエルマー(Perkin Elmer))を用いて450nmでの吸光度を測定する。次いで、当業者は、このような実験によって得られた結果を解釈して所定の標的に関して少なくとも複合体の結合親和性の定性的尺度を確立してもよい。また、定量的尺度が望ましい場合、例えば相互作用に関するEC50値(最大半減有効濃度)を決定するため、ELISAを用いてもよい。上記のようにELISAを用いて、所定の標的またはそのフラグメントの希釈系列に対するポリペプチドの反応を測定する。次いで、当業者は、このような実験によって得られた結果を解釈してもよく、例えばグラフパッドプリズム5(GraphPad Prism 5)および非線形回帰を用いて結果からEC50値を算出してもよい。
【0049】
前述のとおり、Z変異体ポリペプチドは、3-ヘリックスバンドルタンパク質ドメインを構成するか、またはその一部を形成すると考えられ、そのモチーフは、上記3-ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン内で、相互接続ループと共に2本のアルファヘリックスの部分を本質的に形成する所定の標的に対する親和性を有する。
【0050】
本発明の範囲を逸脱することなく、意図する特定の使用に合わせてポリペプチドを作るために、上に定義されたようなポリペプチドの種々の修飾、および/またはそれへの付加を実施してもよい。このような修飾および付加は、以下により詳細に記載されており、同じポリペプチド鎖に含まれるさらなるアミノ酸、または化学的にコンジュゲートされた、もしくは別の方法でポリペプチドに結合された標識および/もしくは治療剤を含んでもよい。
【0051】
したがって、一実施態様において、さらなるアミノ酸残基を含む上記のようなポリペプチドが提供される。
【0052】
いくつかの実施態様において、さらなるアミノ酸残基は、ポリペプチドのC末端にあってもよい。
【0053】
いくつかの実施態様において、さらなるアミノ酸残基は、ポリペプチドのN末端にあってもよい。
【0054】
一実施態様において、C末端の上記さらなるアミノ酸残基は、APを含む。
【0055】
一実施態様において、N末端の上記さらなるアミノ酸残基は、AEAKYAKを含む。
【0056】
さらに別の実施態様において、上記のようなポリペプチドを提供し、それは、N末端で0から7個までのさらなるアミノ酸残基C末端でおよび0から3個までのさらなるアミノ酸残基を有する配列i)またはii)からなる。
【0057】
さらなるアミノ酸残基は、ポリペプチドの結合において役割を果たしうるが、しかし、例えばポリペプチドの産生、精製、安定化、カップリングまたは検出の1つまたはそれ以上に関連した他の目的に同様に十分役立つこともありうる。
【0058】
いくつかの実施態様において、上記さらなるアミノ酸残基は、1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインを構成する。
【0059】
このようなさらなるアミノ酸残基は、化学的カップリングのために付加された1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を含んでもよい。この一例は、ポリペプチド鎖中のいちばん最初のまたはいちばん最後の位置での、すなわちN末端またはC末端でのシステイン残基の付加である。また、化学的カップリングに用いるシステイン残基は、タンパク質ドメインの表面における、好ましくは標的結合に関与しない表面の一部における別のアミノ酸の置換によって導入してもよい。このようなさらなるアミノ酸残基は、ポリペプチドの精製または検出のための「タグ」、例えばヘキサヒスチジル(His)タグ、またはそのタグに特異的な抗体と相互作用するための「myc」タグもしくは「FLAG」タグを含んでもよい。他の代替物は当業者に知られている。
【0060】
また、上で議論した「さらなるアミノ酸残基」は、任意の所望の機能、例えば別の結合機能、または半減期延長機能、または酵素的機能、または金属イオンキレート化機能、または蛍光機能、またはそれらの任意の組合せを有する1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインを構成してもよい。
【0061】
実施態様の一例において、所定の標的に対する親和性を有する化合物が提供され、上記化合物は、
A.上に定義された少なくとも1つのポリペプチド;
B.連鎖球菌Gタンパク質の少なくとも1つのアルブミン結合ドメイン、またはその誘導体;および
C.場合により、上記少なくとも1つのアルブミン結合ドメインまたはその誘導体を、上記少なくとも1つのポリペプチドのCまたはN末端に連結するための少なくとも1つの連結部分
を含む。
【0062】
連鎖球菌Gタンパク質のアルブミン結合ドメインの誘導体の非限定的な例は、WO2009/016043およびWO2012/004384に開示される。
【0063】
また、さらなる実施態様において、上に定義されたポリペプチドが提供され、それは、
YAK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q AP;および
FNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q AP
[配列中、各Xyは、上に定義されたとおりである(そしてyは、上のi)によって定義されたポリペプチド配列内の残基Xのアミノ酸位置を表す)]
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0064】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドが提供され、それは、
ADNNFNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
ADNKFNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
VDNKFNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
VDAKYAK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;および
AEAKYAK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
[配列中、Xyは、上に定義されたとおりである(そして、yは、上のi)によって定義されたポリペプチド配列内の残基Xのアミノ酸位置を表す)]
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0065】
本明細書に開示されたポリペプチド変異体は、例えば知られている骨格に基づき、かつ所定の標的に対する親和性を有するZ変異体ポリペプチドを取り上げ、そして選択された位置で部位特異的突然変異誘発を実施して、本開示による骨格を有し、標的親和性を保持しているポリペプチドを得ることによって生成してもよい。別法として、本開示によるポリペプチドは、分子全体の化学合成によって、またはZ変異体ポリペプチドの結合モチーフを本明細書に開示された骨格上へ移植するための、当業者に知られている、他の分子生物学的方法を用いることによって作製してもよい。
【0066】
一般的な実例として、以下の共通の骨格配列を含み、かつ結合モチーフ[BM]:
AEAKYAK-[BM]-DDPSQSSELL SEAKKLNDSQ APK
内のアミノ酸配列によって定義された結合特異性を有する元の(original)Z変異体ポリペプチドを修飾して本明細書に開示されたポリペプチドを提供してもよい。
【0067】
本開示のこの態様のさまざまな具体的実施態様において、以下のポリペプチド:
AEAKYAK-[BM]-RQPEQSSELL SEAKKLNDSQ APK
AEAKYAK-[BM]-DDPSQSSELL SEAKKLSESQ APK
AEAKYAK-[BM]-DDPSQSSELL SEAKKLESSQ APK
AEAKYAK-[BM]-DDPSQSSELL SEAKKLSDSQ APK
AEAKYAK-[BM]-DDPSQSSELL SEAKKLNESQ APK
AEAKYAK-[BM]-RQPEQSSELL SEAKKLSESQ APK
AEAKYAK-[BM]-RQPEQSSELL SEAKKLESSQ APK
AEAKYAK-[BM]-RQPEQSSELL SEAKKLSDSQ APK
AEAKYAK-[BM]-RQPEQSSELL SEAKKLNSSQ APK
が提供される。
【0068】
本明細書に開示されたポリペプチドは、多くの用途、例えば疾患に関する治療上の、診断上のまたは予後の有意性の用途を有する。上記ポリペプチドについて、治療上の、診断上のまたは予後の使用を見いだしうる疾患の非限定的なリストには、がん、炎症性疾患、自己免疫疾患、感染性疾患、神経系疾患、神経変性疾患、眼疾患、腎疾患、肺疾患、消化管の疾患、心血管疾患、血液疾患、皮膚疾患、アレルギーおよびその他が含まれる。
【0069】
したがって、一実施態様において、所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドが提供される。より具体的な実施態様において、上記標的は、HER2、TNFα、EGFR、IGF1R、IgG、PDGFRβ、HER3、C5、FcRn、CAIX、アミロイドβ、CD4、IL8、IL6およびインスリンからなる群から選択される。別の実施態様において、上記ポリペプチドは、バイオテクノロジー、産業および医薬用途において、例えば分離技術、精製用途における親和性リガンドとして、または検出剤として有用でありうる。より具体的なこのような実施態様において、所定の標的は、連鎖球菌Gタンパク質からのアルブミン結合ドメイン(「ABD」または「GAモジュール」)またはその誘導体であってもよい。
【0070】
所定の標的のリストが非限定的なものとみなされ、かつ他の所定の標的に対する親和性を有する本明細書に定義されたポリペプチドが本開示の範囲内にあることは、当業者にとって明らかであろう。
【0071】
知られている骨格に基づき、かつ異なる標的に対する親和性を有する知られているZ変異体ポリペプチドの非限定的な例は、EGF受容体(WO2007/065635に開示された)に対する、HER2受容体(WO2009/080810に開示された)に対する、HER3受容体(WO2010/056124に開示された)に対する、IGF1受容体(WO2009/019117に開示された)に対する、PDGF受容体β(WO2009/077175に開示された)に対する、アルブミン結合ドメイン(ABD)(WO2014/064237に開示された)に対する、新生児Fc受容体(FcRn)(PCT/EP2014/055299に開示された)に対する、そして炭酸脱水酵素IX(WO2014/096163に開示された)に対する親和性を有するZ変異体である。明確にするため、本開示において、Z変異体の結合モチーフ[BM]は上に記載された文献に開示されたそれらの結合モチーフの最初の28個のアミノ酸残基に相当し、その際、結合モチーフの定義は29個のアミノ酸残基であり、そして上の配列i)の位置1~29に相当する位置のアミノ酸残基に相当することに留意すること。
【0072】
一実施態様において、所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドが提供され、それは、標識、例えば、蛍光色素および金属、発色団色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性核種および粒子からなる群から選択される標識をさらに含む。このような標識は、例えばポリペプチドの検出に用いてもよい。
【0073】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、所望の生物活性を有する第2の部分も含んでいる融合ポリペプチドまたはコンジュゲートの一部として存在する。このような所望の生物活性の非限定的な例としては、治療活性、結合活性および酵素活性が含まれる。
【0074】
いくつかの実施態様において、上記部分は、標識をさらに含む。標識は、場合によっては、所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドにのみ結合していてもよく、場合によっては、所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドと、コンジュゲートまたは融合ポリペプチドの第2の部分との両方に結合していてもよい。さらにまた、標識が第2の部分のみ結合しており、所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドに結合していなくてもよいことも可能である。したがって、さらに別の実施態様において、第2の部分を含む所定の標的に対する親和性を有するポリペプチドが提供され、ここで、上記標識は、第2の部分のみに結合されている。
【0075】
本明細書に開示されたポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、検出試薬、捕捉試薬として、分離試薬として、インビボもしくはインビトロでの診断用の診断剤として、または治療剤として用いることができる。本開示によるポリペプチドまたは融合ポリペプチドをインビトロで用いる方法は、種々のフォーマット、例えばマイクロタイタープレート、タンパク質アレイ、バイオセンサー表面、組織切片などにおいて実施してもよい。
【0076】
また、本開示によるポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、例えば上記標的において直接的または間接的な効果を有する、治療剤、診断剤もしくは予後剤としてそれ自体で、または他の治療剤、診断剤もしくは予後剤を標的化するための手段として有用でありうることを理解すべきである。直接的な治療効果は、例えば上記標的によってシグナル伝達を阻害することによって実施してもよい。上記標的は、特定の疾患(例えば上記の疾患)の予後を予測するための有益なマーカーとして役立つこともありうる。
【0077】
したがって、一実施態様において、治療に使用するための、または診断剤として使用するための、本明細書に記載されたようなポリペプチドまたは融合ポリペプチドが提供される。別の実施態様において、上記ポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、治療剤をさらに含む。このような治療剤の非限定的な例としては、上記ポリペプチドまたは融合ポリペプチドの効果を増強する治療剤、上記ポリペプチドまたは融合ポリペプチドとの相乗効果で作用する治療剤および処置すべき疾患の種々の態様に作用する治療剤である。また、本明細書に開示されたポリペプチドを含む医薬組成物は、単独でまたはさらなる治療剤と一緒に想定されている。
【0078】
本開示の第2の態様において、本明細書に記載されたポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。また、このようなポリヌクレオチドを発現することを含む、上記のようなポリペプチドまたは融合ポリペプチドを産生する方法;ポリヌクレオチドを含む発現ベクター;および上記発現ベクターを含む宿主細胞も本開示によって包含される。
【0079】
本開示の第3の態様において、共通の骨格に基づくポリペプチド変異体の集団が提供され、その集団中のそれぞれのポリペプチドは、
i)EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q、
(配列中、X、X、X、X、X、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、独立していずれかのアミノ酸残基に相当し;そして配列中、互いに独立して、
16は、NおよびTから選択され;
26は、KおよびSから選択され;
2930PX32は、DDPSおよびRQPEから選択され;
35は、AおよびSから選択され;
36は、EおよびNから選択され;
39は、A、CおよびSから選択され;
45は、E、NおよびSから選択され;
46は、D、EおよびSから選択されるが、但し、X45がNであるとき、X46はDではなく;
47は、AおよびSから選択される)および
ii)i)に定義された配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列、但し、X45がNであるとき、X46はDではない、
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0080】
上の配列i)において、X、X、X、X、X、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、集団中で変更されたアミノ酸残基に個々に相当する。したがって、それぞれのこのようなアミノ酸残基は、本開示の第1の(ポリペプチド)態様に関連して、上で説明したように、配列中にXyと表された他のいずれの残基の同一性とも無関係の任意のアミノ酸残基であってもよい。ポリペプチドの集団中の特定のアミノ酸残基Xyに関する、および配列i)またはii)のいずれかの末端での任意のさらなるアミノ酸残基に関する非限定的な選択肢は、本開示の第1の態様の実施態様として上に記載されたものと同じである。
【0081】
上に議論したように、ほとんど三次構造およびその機能に影響を及ぼすことなく、上のアミノ酸配列と比較してより少ない変化を含むポリペプチドも、本開示の範囲内にある。したがって、また、共通の骨格に基づくポリペプチド変異体の集団であって、集団中のそれぞれのポリペプチドがi)に定義されたような配列に対して91%またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含む集団が本開示よって包含される。いくつかの実施態様において、それぞれのポリペプチドは、i)に定義されたような配列に対して少なくとも93%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%同一である配列を含んでもよい。
【0082】
本明細書に定義された集団は、定義されたポリペプチド分子の多数の独特な(unique)および種々の変異体からなる。この文脈において、多数とは、例えば、その集団が少なくとも1×10個の独特なポリペプチド分子、または少なくとも1×10、少なくとも1×10、少なくとも1×1010、少なくとも1×1012、もしくは少なくとも1×1014個の独特なポリペプチド分子を含むことを意味しうる。当業者に認められるように、それは、集団の望ましいサイズを提供するのに十分大きな群を用いることが必要である。また、本明細書に記載された「集団」は、「ライブラリー」と表してもよい。
【0083】
本明細書に開示された集団が、i)に定義されたポリペプチドに基づく新たな結合分子の選択のためのライブラリーとして有用でありうることは、当業者に明らかであろう。ランダム化されたポリペプチドの集団(またはライブラリー)から結合分子を単離しうることは、当分野でよく知られている。この技術は、PCT公報WO95/19374、Nord
et al (1997) Nature Biotechnology 15:772-777、およびWO2009/080811に一般的な用語で記載されており、そして13箇所の異なる標的結合位置をランダムに変え、その後、ファージディスプレイまたは遺伝子型-表現型カップリングに基づく他の選択システムにおいて興味の結合剤を選択することにより、さまざまな標的分子に対して共通のZドメイン骨格に基づく結合分子を選択するために適用することに成功している。本明細書に開示された集団は、先行技術の集団と比較して、特に安定性に関して改善された性質を示すポリペプチド変異体の集団である。ランダム化されたポリペプチドの集団(または、ライブラリー)から単離されたZ変異体の例としては、EGFレセプター(WO2007/065635に開示された)に対する、HER2受容体(WO2009/080810に開示された)に対する、HER3受容体(WO2010/056124に開示された)に対する、IGF1受容体(WO2009/019117に開示された)に対する、PDGF受容体β(WO2009/077175に開示された)に対する、ABD(WO2014/064237に開示された)に対する、新生児Fc受容体(FcRn)(PCT/EP2014/055299に開示された)に対する、そして炭酸脱水酵素IX(WO2014/096163に開示された)に対する親和性を有するZ変異体が含まれる。
【0084】
本開示の第4の態様において、ポリヌクレオチドの集団が提供される。この集団中のそれぞれのポリヌクレオチドは、第3の態様に関連して上に定義されたようなポリペプチドの集団のメンバーをコードしている。
【0085】
本開示の第5の態様において、第3の態様によるポリペプチド集団と、第4によるポリヌクレオチド集団との組合せが提供され、この組合せにおいて、ポリペプチド集団のそれぞれのメンバーは、遺伝子型-表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコードしている対応するポリヌクレオチドと物理的にまたは空間的に関連している。この物理的または空間的関連は、使用するシステムに応じて、多かれ少なかれ厳密になるであろう。遺伝子型-表現型カップリング(genotype-phenotype coupling)手段は、ファージディスプレイシステムを含んでもよい。ファージディスプレイシステムは、当業者によく知られており、例えば、Smith GP (1985) Science 228:1315-1317およびBarbas CF et al (1991) Proc Natl Acad Sci U S A 88:7978-7982に記載されている。
【0086】
さらにまた、遺伝子型-表現型カップリング手段は、細胞表面ディスプレイシステムを含んでもよい。細胞表面ディスプレイシステムは、原核細胞、例えばグラム陽性細胞または真核細胞、例えば酵母細胞を含んでもよい。細胞表面ディスプレイシステムは、当業者によく知られている。原核細胞システムは、例えば、Francisco JA et al (1993) Proc Natl Acad Sci U S A 90:10444-10448およびLee SY et al (2003) Trends Biotechnol 21:45-52に記載されている。真核細胞システムは、例えば、Boder ET et al (1997) Nat Biotechnol 15:553-557およびGai SA et al (2007) Curr Opin Struct Biol 17:467-473に記載されている。一実施態様において、上記遺伝子型-表現型カップリングは、ファージディスプレイシステムを含んでもよい。
【0087】
さらにまた、遺伝子型-表現型カップリング手段は、無細胞ディスプレイシステムを含んでもよい。無細胞ディスプレイシステムは、リボソームディスプレイシステム、またはインビトロ区画化ディスプレイシステム(in vitro compartmentalization display system)、またはシスディスプレイ用のシステム(system for cis display)、またはミクロビーズディスプレイシステムを含んでもよい。リボソームディスプレイシステムは、当業者によく知られており、例えば、Mattheakis LC et al (1994) Proc Natl Acad Sci U S A 91:9022-9026およびZahnd C et al (2007) Nat Methods 4:269-279に記載されている。インビトロ区画化システムは、当業者によく知られており、例えば、Sepp A et al (2002) FEBS Lett 532:455-458に記載されている。シスディスプレイシステムは、当業者によく知られており、例えば、Odegrip R et al (2004) Proc Natl Acad Sci U S A 101:2806-2810に記載されている。ミクロビーズディスプレイシステムは、当業者によく知られており、例えば、Nord O et al (2003) J Biotechnol 106:1-13に記載されている。
【0088】
さらにまた、遺伝子型-表現型カップリング手段は、非ディスプレイシステム、例えばタンパク質-フラグメント相補性アッセイ(PCA)を含んでもよい。PCAシステムは、当業者によく知られており、例えば、Koch H et al (2006) J Mol Biol 357:427-441に記載されている。
【0089】
本開示の第6の態様において、ポリペプチドの集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択する方法であって、
(a)第3の態様によるポリペプチドの集団を準備するステップと;
(b)標的と、その標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間の特異的相互作用が可能となる条件下でポリペプチドの集団を所定の標的と接触させるステップと;
(c)上記特異的相互作用に基づいて、ポリペプチドの残りの集団から少なくとも1つの所望のポリペプチドを選択するステップと
を含む方法が提供される。
【0090】
以下において、この方法は、本開示による「選択方法」と称する。
【0091】
ステップ(a)は、ポリヌクレオチドの集団を準備し、そしてポリヌクレオチドの上記集団を発現させてポリペプチドの上記集団を得る準備ステップを含んでもよい。ポリペプチドの集団を得るための手段は、使用するディスプレイシステムに応じて変わり、このような手段の例は、上の遺伝子型-表現型の文献に見いだすことができる。選択方法で用いるポリペプチドの上記集団のそれぞれのメンバーを、遺伝子型-表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコードするポリヌクレオチドと物理的に関連付けてもよい。遺伝子型-表現型カップリング手段は、上に議論されたものの1つであってもよい。
【0092】
ステップ(b)は、標的と、標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの特異的相互作用が可能となる条件下でポリペプチドの集団を所定の標的と接触させるステップを含む。適用できる条件の範囲は、標的のロバストネス(robustness)、ディスプレイシステムのロバストネス、および標的との相互作用の所望の性質によって決定される。例えば、所定のpHへの酸性化といったような相互作用を分離する具体的方法が望ましいこともありうる。当業者は、適した条件を決定するにはどんな実験が必要か知っている。
【0093】
ステップ(c)は、少なくとも1つのポリペプチドの選択を含む。所定の標的と、標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間の特異的相互作用に基づいて残りの集団から所望のポリペプチドを選択する手段は、使用するディスプレイシステムに応じて変わり、上の遺伝子型-表現型の文献に見いだすことができる。例えば、インビトロディスプレイ選択システムは、ファージディスプレイおよびタンパク質フラグメント区画化アッセイのようなシステムと対照的に無細胞である。
【0094】
本開示の第7の態様において、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離する方法であって、
・第6の態様による選択方法を用いて、ポリペプチドの集団から、上記所望のポリペプチドおよびそれをコードしているポリヌクレオチドを選択するステップと;
・こうして分離された所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと
を含む方法が提供される。
【0095】
以下において、この方法は、本開示による「単離方法」と称する。
【0096】
ポリペプチドからのポリヌクレオチドの分離は、選択に用いるディスプレイシステムに応じて異なるやり方で行ってもよい。例えば、シスディスプレイおよびリボソームディスプレイのような無細胞ディスプレイシステムでは、ポリヌクレオチドまたは対応するmRNAは、上の遺伝子型-表現型の文献で記載された手段を用いてポリペプチドからの効率的溶離により回収される。ポリヌクレオチドの単離は、選択に用いるディスプレイシステムに応じて異なる方法によって行ってもよい。上記の選択システムのほとんど、例えば、タンパク質フラグメント相補性アッセイにおいて、ポリヌクレオチドは、適当なオリゴヌクレオチドを用いる特異的PCR増幅によって直接単離することができる。また、リボソームディスプレイにおけるように、ポリヌクレオチドは、逆転写を用いて対応するmRNAから単離することができる。ポリヌクレオチドを単離するためのさまざまな手段は、上の遺伝子型-表現型の文献に見いだすことができる。
【0097】
本開示の第8の態様において、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを特定する方法であって、
・第7の態様による単離方法を用いて、上記所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと;
・ポリヌクレオチドを配列決定して、上記所望のポリペプチドのアミノ酸配列を推論することによって確定するステップと
を含む方法が提供される。ポリヌクレオチドの配列決定は、当業者によく知られた標準的な方法に従って行ってもよい。
【0098】
本開示の第9の態様において、ポリペプチドの集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択および特定する方法であって、
(a)第3の態様によるポリペプチドの集団のそれぞれのメンバーを個々の担体またはビーズ上で合成するステップと;
(b)ポリペプチドと所定の標的との相互作用に基づいて担体またはビーズを選択または富化するステップと;
(c)タンパク質特性評価方法論によってポリペプチドを特定するステップと
を含む方法が提供される。
【0099】
ステップ(c)では、例えば質量分光分析を用いることが可能である。
【0100】
以下において、この方法は、本開示による「選択および同定方法」と称する。
【0101】
本開示の第10の態様おいて、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを産生する方法であって、
・第6の態様による選択方法または第9の態様による選択および特定方法を用いて所望のポリペプチドを選択および特定するステップと;
・上記所望のポリペプチドを産生するステップと
を含む方法が提供される。
【0102】
以下において、この方法は、本開示による「産生方法」と称する。
【0103】
産生方法において、産生は、所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの組換え発現を用いて実施してもよい。産生は、新たに所望のポリペプチドの化学合成を用いて実施してもよい。
【0104】
本開示の第11の態様において、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを産生する方法であって、
(a1)第7の態様による単離方法を用いて、上記所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと;または
(a2)第9の態様による選択および特定方法を用いて、特定されたポリペプチドを逆翻訳するステップと;
(b)こうして単離されたポリヌクレオチドを発現させて上記所望のポリペプチドを産生するステップと
を含み、その際、ステップ(b)をステップ(a1)またはステップ(a2)の後に実施する方法が提供される。
【0105】
本開示によるポリペプチド、集団および方法は、所定の標的に対する特異的結合を特徴とするポリペプチドの供給により、所定の標的に対する親和性を有する物質の供給を可能にする。
【0106】
非特異的結合を少ししかまたは全く示さない所定の標的に結合するポリペプチドを提供することも可能である。
【0107】
融合ポリペプチドの一部として容易に用いることができる所定の標的に結合するポリペプチドを提供することも可能である。
【0108】
さらにまた、既存の抗体試薬で遭遇する知られている問題の1つまたはそれ以上を解決する、所定の標的に結合するポリペプチドを提供することが可能である。
【0109】
さらに、治療および/または診断用途における使用に適した、所定の標的に結合するポリペプチドを提供することが可能である。
【0110】
化学的ペプチド合成によって容易に作られた、所定の標的に結合するポリペプチドを提供することも可能である。
【0111】
さらにまた、本発明は、同じ標的に結合する知られている物質と比べて改善された安定性を示す、所定の標的と結合するポリペプチドの特定を可能にする。
【0112】
哺乳動物中にインビボで用いたときに低い抗原性を示す、かつ/または哺乳動物に投与すると改善された体内分布を示す、所定の標的に結合するポリペプチドを提供することも可能である。
【0113】
本開示による集団を構成しているポリペプチドに関する上で議論された修飾は、上記の方法のいずれかによって得られたポリペプチドにもあてはまる。
【0114】
本開示によるポリペプチドは、化学合成、または細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、全植物およびトランスジェニック動物を含む、種々の原核細胞もしくは真核細胞宿主中での発現を含む、任意の知られている手段で産生してもよい。
【0115】
ポリペプチド、ポリペプチドの集団および本明細書に開示された特定、選択、単離および産生の方法を、さまざまな例示的な態様および実施態様に関して記載してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、さまざまな変更を行うことができ、その要素を同等のもので置換できることは、当業者に理解されるであろう。さらに、本発明の必須の範囲を逸脱することなく、特定の状況または分子を本発明の教示に適合させるために多くの改変を行ってもよい。したがって、本開示は、企図された任意の特定の実施態様に限定されることなく、添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施態様を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1A】本明細書に開示されたポリペプチドの例のアミノ酸配列のリストである。実施例2~3で改善された安定性を有することが示されたC5結合Z変異体ポリペプチド配列が、図1に配列番号:12、17、18および22として記載されており、本明細書に定義された最も短い配列に相当するその配列は、配列番号:19~21として記載されている。アルブミン結合ドメインに融合したC5結合ポリペプチドのアミノ酸配列は、図1において、配列識別子配列番号:4~11、13~16および23~25を有する。改善された安定性を有することが実施例12で示された、HER2、PDGF-Rβ、FcRnおよびCAIXに対する親和性を有するZ変異体ポリペプチドの配列は、それぞれ配列番号:28~29、配列番号:31~32、配列番号:34~35および配列番号:37~42として、対応する対照ポリペプチド配列番号:27、30、33および36と共に記載されている。本明細書に定義された最も短い配列に相当する、HER2、PDGF-Rβ、FcRnおよびCAIXに対する親和性を有する上記Z変異体ポリペプチドの配列は、配列番号:43~54として記載されている。さらに、対照C5結合ポリペプチド、アルブミンに融合する対照C5結合ポリペプチド、アルブミン結合ドメインおよびヒトC5のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:26、1、2および3として記載されている。
図1B図1Aの続き。
図1C図1Bの続き。
図2】SDS-PAGEゲルの画像であり、図中、第1のレーンは、SeeBlue 2Pサイズマーカーを含有し、バンドは、(0)安定性試験前;および(2w)2週間の安定性試験後のC5結合ポリペプチドPSI0242(配列番号:1)を表す。
図3】安定性試験前(実線)および2週間の安定性試験後(点線)のPSI0242(配列番号:1)の逆相HPLCからのクロマトグラムである。
図4】SDS-PAGEゲルの画像であり、図中、第1のレーンはSeeBlue 2Pサイズマーカーを含有し、バンドは、(0)初期サンプル;および(2w)2週間安定性試験後のサンプルを表す。A.配列番号:1;B.配列番号:13;C.配列番号:14;D:配列番号:16。
図5】安定性試験前(実線)および2週間の安定性試験後(点線)の修飾されたC5阻害薬(配列番号:5)の逆相HPLCからのクロマトグラムである。
図6】安定性試験前(実線)および2週間の安定性試験後(点線)の修飾されたC5阻害薬(配列番号:16)の逆相HPLCからのクロマトグラムである。
図7-1】A.Z17351(配列番号:37);B.Z17352(配列番号:38)に関して集めたスペクトルである。
図7-2】C.Z17355(配列番号:39);D.Z17357(配列番号:40)に関して集めたスペクトルである。
図7-3】E.Z17359(配列番号:41);F.Z17360(配列番号:42)に関して集めたスペクトルである。
図7-4】G:Z09782(配列番号:36)に関して集めたスペクトルである。
図8-1】2週間の安定性試験の前(0)および後(2w)の元のおよび発明のポリペプチドを示すSDS-PAGEゲルの画像である。A:HER2を標的とするポリペプチド:レーン1:Mw、レーン2:Z02891(0)、レーン3:Z02891(2w)、レーン4:Mw、レーン5:Z17341(0)、レーン6:Z17341(2w)、レーン7:Z17342(0)、レーン8:Z17342(2w);B.PDGF-Rβを標的とするポリペプチド:レーン1:Mw、レーン2:Z15805(0)、レーン3:Z15805(2w)、レーン4:Mw、レーン5:Z17343(0)、レーン6:Z17343(2w)、レーン7:Z17344(0)、レーン8:Z17344(2w);C.FcRnを標的とするポリペプチド:レーン1:Z10103(0)、レーン2:Z10103(2w)、レーン3:Mw、レーン4:Z17347(0)、レーン5:Z17347(2w)、レーン6:Z17348(0)、レーン7:Z17348(2w);およびD.CAIXを標的とするポリペプチド:レーン1:Mw、レーン2:Z09782(0)、レーン3:Z09782(2w)、レーン4:Mw、レーン5:Z17351(0)、レーン6:Z17351(2w)、レーン7:Z17352(0)、レーン8:Z17352(2w);レーン9:Z17355(0)、レーン10:Z17355(2w)、レーン11:Z17357(0)、レーン12:Z17357(2w)、レーン13:Z17359(0)、レーン14:Z17359(2w)、レーン15:Z17360(0)、レーン16:Z17360(2w)。分子サイズマーカー(Mw)は、Novex(R)Sharp Pre-stained Protein Standard(216、160、110、80、60、50、40、30、20、15、10、3.5kDa)であった。(図8Cに見られる斜めのバンドは、同じ容器中で染色された第2のゲルの痕跡から生じる人為的な結果である)。
図8-2】図8-1の続き。
図8-3】図8-2の続き。
図8-4】図8-3の続き。
図9-1】位置52~53(黒色)にNDからSEのアミノ酸置換を含むZ変異体および2週間の安定性試験後に同じ標的に対する親和性を有する元のZ変異体(灰色)の結合のセンサーグラムを示す。A:HER2に対するZ017341(配列番号:28)およびZ02891(配列番号:27)の結合;B:PDGF-Rβに対するZ017343(配列番号:31)およびZ15805(配列番号:30)の結合;C:FcRnに対するZ017347(配列番号:34)およびZ10130(配列番号:33)の結合およびD:CAIXに対するZ017351(配列番号:37)およびZ09782(配列番号:36)の結合。それぞれのZ変異体の注射濃度は、実施例13に記載した。
図9-2】図9-1の続き。
図9-3】図9-2の続き。
図9-4】図9-3の続き。
【実施例
【0117】
以下の実施例は、改善された安定性を示す新規なZ変異体ポリペプチドを開示している。本明細書では、以前の骨格生成に基づくZ変異体ポリペプチドの性質を、本明細書に開示された骨格に基づくZ変異体ポリペプチドと比較した。
【0118】
〔比較実施例1〕知られているC5結合Z変異体の安定性試験
PSI0242(配列番号:1)で表したC5結合Z変異体を、25mM NaP/125mM NaCl pH7.0中で調製し、37℃で2週間の加速安定性研究にかけた。SDS-PAGEおよび逆相HPLC(RPC)によって、安定性試験後の新たな変異体の出現により安定性を測定した。両分析では、初期サンプルおよび安定性研究にかけたものを並行して実施した。SDS-PAGEでは、タンパク質7.5μgを各ウェルに装填した。RPCは、Agilent 1100 HPLCにおいて、水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)からなる移動相A、および0.1%TFA/45%MeOH/45%イソプロピルアミン(IPA)/10%水からなる移動相Bを用いて実施した。
【0119】
結果は、タンパク質の新たな形態がインキュベーション中に形成され、SDS-PAGE(図2)中にバンドとして、そして逆相HPLC(RPC)クロマトグラム(図3)中に新たなピークとして視覚化されたことを示している。図3において、2週間のインキュベーション後の主要ピークは、元のタンパク質サンプルの57%に相当する。
【0120】
配列番号:1の位置1~60は、配列番号:753としてWO2013/126006に以前に開示されたポリペプチドZ06175aに相当する。
【0121】
〔実施例2〕修飾されたC5結合ポリペプチドおよび化合物の安定性試験
修飾されたC5結合ポリペプチドおよび化合物を本質的にWO2013/126006に記載されたとおり合成し、そして精製した。
【0122】
簡潔に言えば、C5結合Z変異体をコードしているDNAは、GeneArt, GmbHによって最適化され、そして合成されたE. coliコドンであった。新たなC5結合Z変異体を表す合成遺伝子をサブクローニングし、そしてE. coli中で発現させた。
【0123】
細胞内に発現されたZ変異体を、慣用のクロマトグラフ法を用いて精製した。ホモジナイズおよび清澄化は、超音波処理、続いて遠心分離および濾過よって実施した。陰イオン交換クロマトグラフィーを捕捉ステップとして用いた。さらなる精製を疎水的相互作用クロマトグラフィーによって行った。精製は、酸性条件(pH5.5)で実行した。研磨(polishing)および緩衝液交換は、サイズ排除クロマトグラフィーによって実施した。
【0124】
精製されたタンパク質を25mM NaP/125mM NaCl pH7.0中で調製し、そして37℃で2週間の加速安定性研究にかけた。SDS-PAGEおよび逆相HPLC(RPC)によって、安定性試験後の新たな変異体の出現により安定性を測定した。両分析では、初期サンプルおよび安定性研究にかけたものを並行して実施した。SDS-PAGEでは、タンパク質7.5μgを各ウェルに装填した。生成したゲルの例を図4に示す。
【0125】
RPCは、Agilent 1100 HPLCにおいて、水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)からなる移動相A、および0.1%TFA/45%MeOH/45%のイソプロピルアミン(IPA)/10%水からなる移動相Bを用いて実施した。配列番号:5に関して生成したクロマトグラムの例を図5に示す。
【0126】
安定性試験の結果を、表1にまとめる。
【0127】
【表1】
【0128】
表1から、特定の修飾されたC5結合ポリペプチドまたは化合物は、PSI0242と比較したときに、増加した安定性のような改善された性質を有することが結論付けられた。このような改善されたC5結合ポリペプチドまたは化合物としては、PSI0334(配列番号:5)、PSI0340(配列番号:10)、PSI0369(配列番号:11)、PSI0377(配列番号:12)、PSI0378(配列番号:13)、PSI0379(配列番号:14)、PSI0381(配列番号:15)、PSI0383(配列番号:16)、PSI0400(配列番号:22)、PSI0410(配列番号:23)、PSI0403(配列番号:24)およびPSI0404(配列番号:25)が含まれる。前述の変異体の6つ(配列番号:5、12、13、14、16および22)は、位置52~53のアミノ酸残基が、ND(参照PSI0242)からSEに置換されていることで共通している。配列番号:15では、置換がNDからESに相当する。配列番号:24では、位置53のアミノ酸残基のみがDからEに置換されているのに対して、配列番号:25では、位置52のアミノ酸残基がNからSに置換されている。
【0129】
〔実施例3〕修飾された化合物のヒトC5に対する結合
ヒト血清アルブミンを、アミンカップリングによってアミン反応性第二世代(Amine Reactive 2nd generation)(AR2G)ディップアンドリードバイオセンサ(Dip and Read Biosensors)(ポールライフサイエンシズ(Pall Life sciences)(ForteBio)Cat # 18-5092)に固定した。リードバッファー(read buffer)(HBS-EPバッファー[10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20]、GEヘルスケア(GE Healthcare)、カタログ番号BR100188)中のPSI0242(配列番号:1;1μM)および修飾されたC5結合化合物(1μM)を、それぞれHSAと共に別々のセンサ上に120秒間装填し、続いてリードバッファー中で60秒間のベースライン記録後、リードバッファー中0.79nMから25nMの範囲の濃度でヒトC5(クイデル(Quidel)、カタログ番号A403))にかけ、各濃度の間に再生サイクルおよびベースライン記録した。センサの再生条件は、10mMグリシン、pH2(30秒で3回のパルスおよび60秒間のランニングバッファー(running buffer))であった。それぞれのスペクトログラムは、アルブミン結合ドメイン(配列番号:2)を含有するがC5結合能力のない類似の構築物のそれに対して基準値を減算した。ForteBio Analysis 7.1(Pall Life sciences(ForteBio)動態ソフトウェア)を用いて、ラングミュア1:1モデルに従ってデータを分析した。
【0130】
PSI0242(配列番号;1)とC5との相互作用の相対Kを表2に示す。PSI0242(配列番号:1)のKは、種々の実行において1~3nM変動する。
【0131】
表2の結果は、本開示によるC5結合化合物が、WO2013/126006に開示されたポリペプチドPSI0242(配列番号:1)のものと類似したヒトC5に対する結合能力を有することを示している。
【0132】
【表2】
【0133】
〔実施例4〕化学合成されたC5結合ポリペプチドの安定性
化学合成されたPSI0400(配列番号:22)をバッヘムAG(BACHEM AG)に注文した。ポリペプチドの安定性を実施例2と同じ方法論に従って試験した。安定性試験の結果を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
PSI0400の安定性は、実施例2のE. coli中で産生された同じポリペプチドに匹敵した。
【0136】
UV円偏光二色性(CD)スペクトルを用いて、PSI0400(配列番号:22)の折り畳みの完全性を、実施例2の方法に従って産生された組換えC5結合ポリペプチド(PSI0257、配列番号:26)と比較した。
【0137】
CDスペクトルは、J-720CD分光偏光計(ジャスコ(Jasco)、日本)によって記録した。Piバッファー(5mM Na-K-PO4、pH7.0)を用いてサンプルを0.17mg/mlのタンパク質濃度に希釈した。PiバッファーのCDスペクトルを最初に記録し、次いで、サンプルのそれぞれついて、最後に再びPiバッファーについてスペクトルを記録した。2つのバッファースペクトルが一致するように、最初に記録されたスペクトルを、バッファースペクトルとして用いた。畳み込み幅(convolution width)25でSavitzky-Golay法を用いてバッファースペクトルを滑らかにした。他のスペクトルは、同じ方法に従って畳み込み幅15で滑らかにした。次いで、他の滑らかにしたスペクトルのそれぞれから、滑らかにしたバッファースペクトルを減算した。CDNNプログラムを用いてタンパク質の二次含量を推定し、得られた推定値を表4に示す。結果は、位置52および53の2つのアミノ酸置換も、化学合成によるポリペプチド産生も、化学合成されたポリペプチドの二次構造含量に影響を与えないことを示した。二次構造含量の完全性を、組換えにより産生されたPSI0257(配列番号:26)と比較した。
【0138】
【表4】
【0139】
〔実施例5〕修飾されたZ変異体およびポリペプチドのヒトC5に対する結合
ビアコアT200(Biacore T200)機器(GEヘルスケア(GE Healthcare))を用いて、C5結合化合物PSI0242(配列番号:1)、PSI0340(配列番号:10)、PSI0378(配列番号:13)およびPSI0410(配列番号:23)ならびにヒトC5に関するC5結合ポリペプチドPSI0400(配列番号:22)の結合親和性を分析した。ヒトC5(クイデル(Quidel)、カタログ番号A403)を、製造元のプロトコールに従ってアミンカップリング化学を用いてCM5センサチップ(900RU)に結合させた。hC5を10mM酢酸NaバッファーpH5(GEヘルスケア)中7.5μg/mlの濃度で注射することによってカップリングを実施した。参照細胞は、同じ試薬で処理したが、ヒトC5を注射しなかった。固定されたhC5に対するC5ポリペプチドおよび化合物の結合を単一のサイクル動態方法で研究し、ここでは、5つの濃度、典型的にHBS-EPバッファー中25、12.5、6.25、3.12および1.56nMのサンプルを、注射間で再生することなく同じサイクルで、25℃で30μl/分の流速で順々に注射した。バルク屈折率(bulk refractive index)変化を補正するため参照セルからのデータを減算した。ほとんどの場合、センサーグラムがダブルブランクとなるように、対照としてHBS-EPの注射も含んだ。表面をHBS-EPバッファーで再生した。速度定数は、ビアコアT200(Biacore T200)評価ソフトウェアバージョン1.0のラングミュア1:1検体モデルを用いてセンサーグラムから算出した。得られた相互作用のK値を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
本データは、安定性強化アミノ酸置換が、C5に結合する分子の能力においてなんら有意な悪影響がなく、そのため、それらの生物活性に影響を及ぼさないことを示している。
【0142】
〔実施例6〕溶血の阻害
古典的補体経路機能ならびにC5結合化合物PSI0378(配列番号:13)およびPSI0410(配列番号:23)、およびC5結合ポリペプチドPSI0400(配列番号:22)によるその阻害の研究のため、アルセバー液中の新たなヒツジ全血(スウェーデン国立獣医研究所(Swedish National Veterinary Institute))からヒツジ赤血球を調製した。その後、赤血球をウサギ抗ヒツジ赤血球抗血清(シグマ)で処理して抗体感作ヒツジ赤血球(EA)とした。過程全体を無菌条件下で実施した。他のすべての試薬は、商業的供給源のものであった。
【0143】
インビトロ試験は、96ウェルU型マイクロタイタープレート中で、試験タンパク質、補体血清およびEA懸濁液の逐次添加によって行った。すべての試薬の最終濃度は、ウェル当たり50μlの全反応体積中かつpH7.3~7.4で、0.15mM CaCl;0.5mM MgCl;3mM NaN;138mM NaCl;0.1%ゼラチン;1.8mMナトリウムバルビタール;3.1mMバルビツール酸;5,000,000EA;適した希釈度の補体タンパク質C5血清、および所望の濃度のC5結合化合物またはポリペプチドであった。
【0144】
C5結合化合物およびポリペプチドを、上記の補体血清と共に氷上で20分間プレインキュベートした後、EA懸濁液の添加によって反応を開始した。溶血反応を撹拌条件下、37℃で45分間進行させ、次いで、場合により0.02%ツイーン20(Tween 20)を含有する氷冷生理食塩水100μlの添加によって終了させた。細胞をバイアルの底に遠心分離し、上清100μlに相当する上方部分をハーフエリアおよび平底のウェルを有する透明なマイクロプレートに移した。415nmの波長でマイクロタイタープレートリーダーを用いて反応結果を光学濃度として分析した。
【0145】
非阻害および完全阻害の反応値を確定するため、それぞれ、各プレートには対照試料(PSI0242、配列番号:1)およびビヒクルが含まれている。これらの値を用いて任意の所定のサンプル濃度での補体溶血の%阻害を算出した。試験されたC5結合化合物およびポリペプチドの阻害能力(IC50値)は、C5減損血清(C5 depleted serum)に添加されたヒトC5の制御濃度の存在下で、同じ試験を適用することによって確定した。高度に強力な阻害薬(低ナノモルからナノモル以下)に関して、反応混合物の最終的なC5濃度は、0.1nMで制御されており、これは場合によりC5減損または欠損血清を用いて確立した。結果を下の表6に示す。
【0146】
【表6】
【0147】
溶血試験からの結果は、改善されたC5結合化合物PSI0378(配列番号:13)およびPSI0410(配列番号:23)が、機能に関して参照化合物PSI0242(配列番号:1)と大きく異ならないことを示している。C5結合ポリペプチドPSI0400(配列番号:22)は本試験において機能的であるが、それはアルブミン結合ドメインを含まないので、結果を参照化合物のものと直接比較することはできない。
【0148】
〔実施例7〕ヒトアルブミンに対する結合
アルブミンに対するC5結合化合物の親和性の評価のため、コーティング(ノボザイム(Novozymes))として組換えヒトアルブミンならびにアフィボディAB(一次)およびダコサイトメーション(DakoCytomation)(検出)から商業的に入手可能な抗体を使用してヒトアルブミンELISAを用いた。PSI0242(配列番号:1)から調製され、かつC5結合ポリペプチドおよび連鎖球菌Gタンパク質のアルブミン結合ドメインを含む方法標準をサンプルの定量に用いた。
【0149】
96ウェルマイクロプレートを組換えヒトアルブミンでコーティングした。次いで、プレートを、0.05%ツイーン20(PBST)を含有するリン酸緩衝食塩水で洗浄し、PBS中の1%カゼインで1~2時間ブロックした。プレート洗浄後、標準、方法対照、対照サンプルおよび試験サンプルをプレートに加える。2時間インキュベーション後、非結合物質を洗浄によって除去した。ヤギ抗アフィボディ(anti-Affibody)(R)IgG(アフィボディAB(Affibody AB)、カタログ番号20.1000.01.0005)をウェルに加え、プレートを1.5時間インキュベートして、結合されたC5結合化合物に結合させた。洗浄後、ウサギ抗ヤギIgG HRP(ダコサイトメーション(DakoCytomation))を、ヤギ抗体に1時間結合させた。最終洗浄後、結合したHRPの量を、TMB基質(3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン)の添加によって検出したところ、それは酵素によって青色の生成物に変換された。30分後、1M塩酸の添加により反応を停止し、ウェル内容物の色は青色から黄色に変わった。参照波長として650nmの吸光度を用いて450nmの吸光度を測光的に測定した。色の強さはPSI0242(配列番号:1)の量に比例しており、サンプル濃度は検量線から決定した。
【0150】
連鎖球菌Gタンパク質からのアルブミン結合ドメイン(ABD)の誘導体を含むC5結合化合物は、ヒトアルブミンに結合できることが示された。データを表7に示す。
【0151】
【表7】
【0152】
試験の解釈では、調査した改善された安定性を有するC5結合ポリペプチドはいずれも、ヒト血清アルブミンを結合するそれらの能力を維持している。
【0153】
〔実施例8〕C5結合Z変異体およびポリペプチドの3ヵ月の安定性試験
37℃で2週間の安定性試験においてPSI0242と比較して改善された安定性を示したC5結合変異体およびポリペプチド(実施例2)を、37℃でより長い3ヵ月の安定性試験にかけた。安定性試験およびRPCによる分析の設定は実施例2に記載されたとおりであった。クロマトグラムの主要ピークを測定し、対応する総タンパク質含量のパーセンテージを算出することによって安定性の評価を行った。実施例2のデータは、解釈をより容易にするため下の表8に含まれる。
【0154】
【表8】
【0155】
PSI0242と比較して位置52~53においてSEからNDのアミノ酸置換を含むC5結合化合物(配列番号:13、14および16)は、同じ条件下で2週間後のPSI0242(配列番号:1)(表1参照)よりも、37℃で3ヵ月後における元の形態のタンパク質の割合がより高いことを示した。また、他の試験化合物もPSI0242と比較して増加した安定性を示す。
【0156】
〔実施例9〕種々の標的に対する特異性を有する骨格修飾されたポリペプチドの生成、安定性研究および結合評価
種々の標的に対して特異性を有する骨格修飾されたポリペプチドの生成:本明細書に記載された新たな骨格を含むポリペプチド変異体は、種々の標的に対する特異性を有するZ変異体ポリペプチドを取り上げ、骨格内の選択された位置で部位特異的突然変異誘発を実施することによって生成される。別法として、分子全体の化学合成によって、またはZ変異体ポリペプチドの結合モチーフを新たな骨格に移植するための、当業者に知られている他の分子生物学的方法を用いることによって新たな分子を作ってもよい。
【0157】
種々の標的に対する特異性を有する骨格修飾されたポリペプチドの比較安定性研究:上記のように生成されたそれぞれの新たなポリペプチドに関して、元のポリペプチドまたは別の類似のポリペプチドの安定性と安定性を比較する。ポリペプチドを異なる条件、例えば[25mM NaP、125mM NaCl、pH7.0]中の調製物ならびに実施例2に記載された2週間および/または実施例8に記載された3ヵ月の37℃でのインキュベーションにかける。安定性は、実施例2に記載したようなSDS-PAGEおよびRPC分析を実施して新たな変異体の出現を分析することによって評価する。
【0158】
骨格位置に導入された修飾を有するポリペプチドは、実施例2および実施例12に示した結果と同様に改善された安定性を示すことが期待される。
【0159】
骨格修飾されたポリペプチドの結合評価:改善された安定性を示しているポリペプチドを、骨格における改変の導入後にその標的に対する結合能力の保存に関してさらに評価する。結合研究は、バイオセンサー機器、または当業者に知られている他のいずれかの機器において2つまたはそれ以上の分子間の相互作用を測定して実施する。例えば、標的分子またはそのフラグメントを機器のセンサチップ上に固定し、被検ポリペプチドを含有するサンプルをチップ上に通過させる。別法として、被検ポリペプチドを機器のセンサチップ上に固定し、所定の標的を含有するサンプルまたはそのフラグメントをチップ上に通過させる。結合親和性は、抗体コーティングされたELISAプレート上でポリペプチドのサンプルを捕捉し、ビオチン化された所定の標的またはそのフラグメント、ストレプトアビジン結合HRPを加える実験において試験してもよい。TMB基質を加え、マルチウェルプレートリーダー、例えばビクター(Victor3)(パーキンエルマー(Perkin Elmer))を用いて450nmでの吸光度を測定する。また、例えば相互作用のEC50値(最大半減有効濃度)を決定するため、定量的尺度が望ましい場合、ELISAを用いてもよい。上記のようにELISAを用いて、所定の標的またはそのフラグメントの希釈系列に対するポリペプチドの反応を測定する。このような実験およびEC50値によって得られた結果は、例えばグラフパッドプリズム5(GraphPad Prism 5)および非線形回帰を用いて結果から算出してもよい。ポリペプチドがアルブミン結合ドメインを含有する場合、アルブミン結合における効果を、実施例3に記載したように、または実施例7に記載したように同様に評価する。
【0160】
本明細書に記載された骨格変異、およびさらにその標的に対する類似のまたは改善された結合能力を有するポリペプチドは、例えば生物医薬品へとさらに開発するためのより良好な候補であると考えられる。
【0161】
〔実施例10〕4つの異なる標的に対する特異性を有する骨格修飾されたポリペプチドの生成
本明細書に記載された新たな骨格を含むポリペプチド変異体は、種々の標的に対する特異性を有するZ変異体ポリペプチドを取り上げ、骨格内の選択された位置で部位特異的突然変異誘発を実施することによって生成した。ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)を標的とするポリペプチド変異体Z02891(配列番号:27);血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGF-Rβ)を標的とするポリペプチド変異体Z15805(配列番号:30);新生児Fc受容体(FcRn)を標的とするポリペプチド変異体Z10103(配列番号:33);および炭酸脱水酵素IX(CAIX)を標的とするポリペプチド変異体Z09782(配列番号:36)中の骨格位置のアミノ酸置換は、表9に明記されている。
【0162】
【表9】
【0163】
すべての変異体は、N末端6×ヒスチジン-タグ(His)付きでクローニングされ、そして得られた構築物は、フォーマットMGSSHHHHHHLQ[Z#####]のポリペプチドをコードした。所望のアミノ酸置換をコードしているオーバーラップオリゴヌクレオチドプライマー対を用い、確立された分子生物学的手法を適用することによって本発明のポリペプチドのプラスミドに変異を導入した。正確なプラスミド配列は、DNAシークエンシングによって検証した。
【0164】
元のおよび本発明のポリペプチドをコードする遺伝子フラグメントを含有するプラスミドを用いてE coli(菌株T7E2)細胞(ジーンブリッジ(GeneBridge))を形質転換した。50μg/mlのカナマイシンを補充したTSB-YE培地中37℃で細胞を培養し、その後、IPTGの添加によりタンパク質発現を誘導した。沈殿した細胞を、ファストプレップ(FastPrep)(R)24ホモジナイザー(Nordic Biolabs)を用いて破壊し、細胞残屑を遠心分離によって除去した。Hisタグ付けされたタンパク質としてZ変異体を含有するそれぞれの上清を、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によってHis GraviTrapTMカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))を用いて製造元の説明書に従って精製した。精製したZ変異体を、PD-10脱塩カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))を用いてリン酸緩衝食塩水(PBS;1.47mM KHPO、8.1mM NaHPO、137mM NaCl、2.68mM KCl、pH7.4)にバッファー交換した。それぞれのポリペプチドの正確な同一性は、SDS-PAGEおよびHPLC-MSによって検証した。
【0165】
〔実施例11〕骨格修飾されたポリペプチドの円偏光二色性分光分析
融解温度(Tm)を決定し、かつアミノ酸置換の結果として本発明のポリペプチドの二次構造における潜在的変化を評価するために円偏光二色性(CD)分析を実施した。精製されたHisタグ付けされたZ変異体をPBS中で0.5mg/mlまで希釈した。希釈された各Z変異体に関して、250~195nmのCDスペクトルを20℃で記録した。Tmを決定するために可変温度測定(VTM)を実施した。VTMでは、5℃/分の温度勾配で温度を20℃から90℃まで上昇させながら、吸光度を221nmで測定した。VTM後、250~195nmでの第2のCDスペクトルを20℃で記録した。CD測定は、1mmの光路長を有するセルを用いてジャスコ(Jasco)J-810分光偏光計(ジャスコスカンジナビアAB(Jasco Scandinavia AB))において実施した。
【0166】
CDシグナル対温度プロットで遷移の中点から決定されたそれぞれ個々のポリペプチドのTmを表10に示す。すべての変異ポリペプチドは、保存されたアルファヘリックス構造を示し、かつ可逆的にまたはほぼ可逆的にリフォールディングされた。CDスペクトルの選択されたセットを図7に示す。
【0167】
【表10】
【0168】
〔実施例12〕4つの異なる標的に対する特異性を有する骨格修飾されたポリペプチドの比較安定性研究
実施例10に記載したように作製されたそれぞれの新たなポリペプチドについて、その安定性を、元のポリペプチドの安定性と比較した。PBS pH7.4中で調製されたポリペプチドを1mg/mlに希釈し、200μlのアリコートを37℃で2週間インキュベートした。安定性試験の前および後に採取されたサンプルは、10%Bis-Tris NuPAGEゲル(インビトロゲン)を用いて、タンパク質5μgを各ウェルに装填してSDS-PAGEによって分析した。得られたクーマシーブルー染色ゲルを図8に示す。高められた温度でインキュベーション後、新たな変異体の出現によって安定性を評価し、変異した変異体を、それぞれの元のポリペプチドと比較した。
【0169】
表9に記載した骨格位置に導入された修飾を有するすべてのポリペプチドは、それぞれの元のポリペプチドと比較して改善された安定性を示した。元のポリペプチドのサンプルでは、ゲル上で第2のバンドが主要バンドのすぐ上に認めることができた。置換D53Eおよび/またはN52Sを有する本発明のポリペプチドのサンプルでは、対応する第2のバンドを認めることができなかった。これは、実施例2および4に示した結果と類似している。したがって、本発明の骨格変異に関して観察された安定化効果は、Z変異体または上記Z変異体を含むポリペプチドの標的特異性に関係なく共通の効果であると考えられる。置換D53Eおよび/またはN52Sを単独でまたは置換D36R、D37QおよびS39Eと組み合わせて有するポリペプチドは、SDS-PAGEゲル上で類似のプロファイルを示した。単独の、または置換D36R、D37QおよびS39Eと組み合わせた置換D53Eは、SDS-PAGEゲル上で第2のバンドとして観察された別の確証を有する種の量を低減すると考えられるが、しかし、この種の形成を完全に防ぐことができなかった。
【0170】
〔実施例13〕骨格修飾されたポリペプチドの結合評価
実施例12で改善された安定性を示す一組のポリペプチドを、骨格における改変の導入後だけでなく安定性試験にかけた後、すなわち37℃で2週間インキュベートした後のそれらの標的に対する結合能力の保存に関してさらに評価した。比較速度定数(konおよびkoff)および親和性(K)は、ビアコア2000(Biacore 2000)機器を用いて決定した。標的タンパク質ヒトHER2-Fc(R&Dシステムズ(R&D Systems)、カタログ番号1129-ER-050)、ヒトPDGF-Rβ(R&Dシステムズ(R&D Systems)、カタログ番号385-PR-100/CF)、ヒトFcRn(Biorbyt、カタログ番号orb84388)およびヒトCAIX(R&Dシステムズ(R&D Systems)、カタログ番号2188-CA)を、それぞれCM5チップ(GEヘルスケア(GE Healthcare))のカルボキシル化デキストラン層表面上に固定した。固定化は、製造元のプロトコールに従ってアミンカップリング化学を用い、かつランニングバッファーとしてHBS-EPを用いて実施した。チップ上の1つのフローセル表面を活性化し、そして検体注射におけるブランクとして使用するため不活性化した。それぞれの表面上の標的タンパク質の固定化レベルは、HER2に関して約850RU、PDGF-Rβに関して2200RU、FcRnに関して750、そしてCAIXに関して580RUであった。
【0171】
HBS-EP(HER2、PDGF-Rβ、CAIX)またはpH6.0のNaHPO/クエン酸バッファー(126mM NaHPO、37mMクエン酸)(FcRn)をランニングバッファーとして用い、さらに後述するように、25℃で実施した結合実験では、流速は30μl/分であった。
【0172】
HER2を標的とするZ変異体Z02891(配列番号:27)、Z17341(配列番号:28)およびZ17342(配列番号:29)をランニングバッファー中で3.33、10、30および90nMの最終濃度に希釈し、5分間注射し、続いてランニングバッファー中で30分解離させた。10mM HClと10mM NaOHとを交互に繰り返す4回の適用、続いてランニングバッファー中の5分の平衡化による再生を、各検体注射後に適用した。
【0173】
PDGF-Rβを標的とするZ変異体Z15805(配列番号:30)、Z17343(配列番号:31)およびZ17344(配列番号:32)をランニングバッファー中で6.67、20、60および180nMの最終濃度に希釈し、5分間注射し、続いてランニングバッファー中で20分間解離させた。10mM NaOHの3回の適用、続いてランニングバッファー中の5分の平衡化による再生を、各検体注射後に適用した。
【0174】
FcRnを標的設定とするZ変異体Z10103(配列番号:33)、Z17347(配列番号:34)およびZ17348(配列番号:35)をランニングバッファー中で3.33、10および30nMの最終濃度に希釈し、3分間注射し、続いてランニングバッファー中で15分間解離させた。HBS-EPの3回の適用、続いてランニングバッファー中の10分の平衡化による再生を、各検体注射後に適用した。
【0175】
CAIXを標的とするZ変異体Z09782(配列番号:36)、Z17351(配列番号:37)、Z17355(配列番号:39)およびZ17359(配列番号:41)をランニングバッファー中で30、90および270nMの最終濃度に希釈し、5分間注射し、続いてランニングバッファー中で15分解離させた。10mMグリシン-HCl pH3.0の3回の適用、による再生、続いてランニングバッファー中の5分の平衡化による再生を、各検体注射後に適用した。
【0176】
速度定数は、ラングミュア1:1モデル(HER2、FcRn、CAIX)またはBiaEvaluationソフトウェア4.1(GEヘルスケア(GE Healthcare))の物質移動モデルによる1:1の結合(PDGF-Rβ)を用いてセンサーグラムから算出した。リガンド表面の曲線からブランク表面の曲線を減算し、試験サンプルサイクルのデータからバッファーサイクルのデータを減算してシグナル中の任意の変動を補正した。
【0177】
標的分子に結合するZ変異体に関する比較速度定数を表11に示し、分析された相互作用のサブセットに関するセンサーグラムを図9に示す。そのデータは、位置52~53におけるNDからSEの置換によってごくわずかしか親和性がもたらされず、一組の変異体、Z17341(配列番号:28)およびZ17343(配列番号:31)では、親和性がごくわずかに改善されることを示している。Z17342(配列番号:29)、Z17344(配列番号:32)およびZ17348(配列番号:35)中のような、位置52~53におけるSEからNDの置換と、置換D36R、D37QおよびS39Eとの組合せは、より速い解離速度のため、主に親和性においてよりマイナスの効果を有したが、しかし、10-9Mの範囲のKを有する機能的な結合剤が得られた。また、評価された変異体は、37℃で2週間のインキュベーション後、結合能力も保存していた。
【0178】
【表11】
【0179】
【表12】
【0180】
実施態様の項目化されたリスト
1.ポリペプチドであって、
i)EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647
(配列中、X、X、X、X6、X、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、独立して任意のアミノ酸残基に相当し;そして
配列中、互いに独立して、
16は、NおよびTから選択され;
26は、KおよびSから選択され;
2930PX32は、DDPSおよびRQPEから選択され;
35は、AおよびSから選択され;
36は、EおよびNから選択され;
39は、A、CおよびSから選択され;
45は、E、NおよびSから選択され;
46は、D、EおよびSから選択されるが、但し、X45がNであるとき、X46はDでなく;
47は、AおよびSから選択される)および
ii)i)に定義された配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列、但し、X45がNであるとき、X46はDでない、
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
2.X16がTである、項目1に記載のポリペプチド。
3.X26がKである、項目1または2に記載のポリペプチド。
4.X2930PX32がDDPSである、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
5.X2930PX32がRQPEである、項目1~3のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
6.X35がSである、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
7.X36がEである、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
8.X39がSである、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
9.X45がEおよびSから選択される、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
10.X45がEである、項目9に記載のポリペプチド。
11.X45がSである、項目9に記載のポリペプチド。
12.X46がEおよびSから選択される、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
13.X46がEである、項目12に記載のポリペプチド。
14.X46がSである、項目12に記載のポリペプチド。
15.X46がDである、項目12に記載のポリペプチド。
16.X45がNであるとき、X46はDまたはEではない、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
17.X4546がEE、ES、SEおよびSSから選択される、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
18.X4546がESおよびSEから選択される、項目17に記載のポリペプチド。19.X4546がESである、項目18に記載のポリペプチド。
20.X4546がSEである、項目18に記載のポリペプチド。
21.X4546がSDである、項目18に記載のポリペプチド。
22.X47がSである、上記項目のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
23.さらなるアミノ酸残基を含む、項目1~22のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
24.上記ポリペプチドのC末端でさらなるアミノ酸残基を含む、項目23に記載のポリペプチド。
25.上記ポリペプチドのC末端のさらなるアミノ酸残基がAPを含む、項目24に記載のポリペプチド。
26.上記ポリペプチドのN末端でさらなるアミノ酸残基を含む、項目23に記載のポリペプチド。
27.上記ポリペプチドのN末端でさらなるアミノ酸残基は、AEAKYAKを含む、項目26に記載のポリペプチド。
28.ポリペプチドの結合、産生、精製、安定化、カップリングまたは検出の目的で、上記さらなるアミノ酸残基が付加される、項目23~27のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
29.上記さらなるアミノ酸残基が1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインを構成する、項目23~28のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
30.上記1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインが、結合機能、酵素機能、金属イオンキレート化機能および蛍光機能またはそれらの混合の群から選択された機能を有する、項目29に記載のポリペプチド。
31.項目1~28のいずれか1項目に記載のポリペプチドであって、
YAK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q AP;および
FNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q AP
(配列中、各Xyは、項目1~22のいずれか1項目に定義されたとおりである)
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
32.項目31に記載のポリペプチドであって、
ADNNFNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
ADNKFNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
VDNKFNK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
VDAKYAK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;および
AEAKYAK EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647Q APK;
(配列中、各Xyは、項目1~22のいずれか1項目に定義されたとおりである)
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
33.上記標的が、ABD、HER2、TNFα、EGFR、IGF1R、IgG、PDGFRβ、HER3、C5、FcRn、CAIX、アミロイドβ、CD4、IL8、IL6およびインスリンからなる群から場合により選択される、所定の標的に対する親和性を有する、項目1~32のいずれか1項目に記載のポリペプチド。
34.項目1~33のいずれか1項目に記載のポリペプチドを一部分として含む融合ポリペプチド。
35.標識をさらに含む、項目1~34のいずれか1項目に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
36.治療剤をさらに含む、項目1~35のいずれか1項目に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
37.検出試薬、補足試薬または分離試薬としての、項目1~36のいずれか1項目に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチドの使用。
38.治療に使用するための、項目1から36のいずれか1項目に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
39.診断剤として使用するための、項目1~36のいずれか1項目に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
40.項目1~34のいずれか1項目に記載のポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド。
41.共通の骨格に基づくポリペプチド変異体の集団であって、集団中のそれぞれのポリペプチドが、
i)EXAXEIX1011LPNLX161718QX2021AFIX2526LX282930 PX32QSX3536LLX39E AKKLX454647
(配列中、X、X、X、X6、X、X10、X11、X17、X18、X20、X21、X25およびX28のそれぞれは、独立して任意のアミノ酸残基に相当し;そして
配列中、互いに独立して、
16は、NおよびTから選択され;
26は、KおよびSから選択され;
2930PX32は、DDPSおよびRQPEから選択され;
35は、AおよびSから選択され;
36は、EおよびNから選択され;
39は、A、CおよびSから選択され;
45は、E、NおよびSから選択され;
46は、D、EおよびSから選択されるが、但し、X45がNであるとき、X46はDでなく;
47は、AおよびSから選択される)および
ii)i)に定義された配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列、但し、X45がNであるとき、X46はDでない、
から選択されるアミノ酸配列を含む集団。
42.少なくとも1×10個の独特なポリペプチド分子を含む、項目41に記載の集団。
43.少なくとも1×10個の独特なポリペプチド分子を含む、項目42に記載の集団。
44.少なくとも1×10個の独特なポリペプチド分子を含む、項目43に記載の集団。
45.少なくとも1×1010個の独特なポリペプチド分子を含む、項目44に記載の集団。
46.少なくとも1×1012個の独特なポリペプチド分子を含む、項目45に記載の集団。
47.少なくとも1×1014個の独特なポリペプチド分子を含む、項目46に記載の集団。
48.ポリヌクレオチドの集団であって、そのそれぞれのメンバーが、項目41~47のいずれか1項目に記載のポリペプチドの集団のメンバーをコードすることを特徴とする集団。
49.項目41~47のいずれか1項目に記載のポリペプチド集団と、項目48に記載のポリヌクレオチド集団との組合せであって、ポリペプチドの上記集団のそれぞれのメンバーが、遺伝子型-表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコードしているポリヌクレオチドと物理的にまたは空間的に関連している組合せ。
50.上記遺伝子型-表現型カップリング手段がファージディスプレイシステムを含む、項目49に記載の組合せ。
51.上記遺伝子型-表現型カップリング手段が細胞表面選択ディスプレイシステムを含む、項目49に記載の組合せ。
52.上記細胞表面ディスプレイシステムが原核細胞を含む、項目51に記載の組合せ。53.上記原核細胞がグラム陽性細胞である、項目52に記載の組合せ。
54.上記細胞表面ディスプレイシステムが真核細胞を含む、項目51に記載の組合せ。55.上記真核生物細胞が酵母細胞である、項目54に記載の組合せ。
56.上記遺伝子型-表現型カップリング手段が無細胞ディスプレイシステムを含む、項目49に記載の組合せ。
57.上記無細胞ディスプレイシステムがリボソームディスプレイシステムを含む、項目56に記載の組合せ。
58.上記無細胞ディスプレイシステムがインビトロ区画化ディスプレイシステムを含む、項目56に記載の組合せ。
59.上記無細胞ディスプレイシステムがシスディスプレイ用のシステムを含む、項目56に記載の組合せ。
60.無細胞ディスプレイシステムがミクロビーズディスプレイシステムを含む、項目56に記載の組合せ。
61.上記遺伝子型-表現型カップリング手段が非ディスプレイシステムを含む、項目49に記載の組合せ。
62.上記非ディスプレイシステムがタンパク質-フラグメント相補性アッセイである、項目61に記載の組合せ。
63.ポリペプチドの集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択する方法であって、
(a)項目41~47のいずれか1項目に記載のポリペプチドの集団を準備するステップと;
(b)標的と、その標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間の特異的相互作用が可能となる条件下でポリペプチドの集団を所定の標的と接触させるステップと;
(c)上記特異的相互作用に基づいて、ポリペプチドの残りの集団から少なくとも1つの所望のポリペプチドを選択するステップと
を含む方法。
64.ステップ(a)が、項目48に記載のポリヌクレオチドの集団を準備し、上記ポリヌクレオチドの集団を発現させて上記ポリペプチドの集団を得る準備ステップを含む、項目63に記載の方法。
65.上記ポリペプチドの集団のそれぞれのメンバーが、遺伝子型-表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコードしているポリヌクレオチドと物理的にまたは空間的に関連している、項目64に記載の方法。
66.上記遺伝子型-表現型カップリング手段が項目50~62のいずれか1項目に定義されたとおりである、項目65に記載の方法。
67.所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離する方法であって、
・項目63に記載の方法を用いて、ポリペプチドの集団から、上記所望のポリペプチドおよびそれをコードしているポリヌクレオチドを選択するステップと;
・こうして分離された所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと
を含む方法。
68.所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを特定する方法であって、
・項目67に記載の方法を用いて、上記所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと;
・ポリヌクレオチドを配列決定して、上記所望のポリペプチドのアミノ酸配列を推論することによって確定するステップと
を含む方法。
69.ポリペプチドの集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択および特定する方法であって、
(a)項目41~47のいずれか1項目に記載のポリペプチドの集団のそれぞれのメンバーを個々の担体またはビーズ上で合成するステップと;
(b)ポリペプチドと所定の標的との相互作用に基づいて担体またはビーズを選択または富化するステップと;
(c)タンパク質特性評価方法論によってポリペプチドを特定するステップと
を含む方法。
70.所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを産生する方法であって、
・項目68に記載の方法を用いて所望のポリペプチドを選択および特定するか、
または項目69および70のいずれか1項目に記載の方法を用いて所望のポリペプチドを選択および特定するステップと;
・上記所望のポリペプチドを産生するステップと
を含む方法。
72.上記産生が、所望のポリペプチドのデノボ化学合成を用いて実施される、項目71に記載の方法。
73.上記産生が、所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの組換え発現を用いて実施される、項目71に記載の方法。
74.所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを産生する方法であって、
(a1)項目68に記載の方法を用いて、上記所望のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを単離するステップと;または
(a2)項目69および70のいずれか1項目に記載の第9の態様による選択および特定方法を用いて、特定されたポリペプチドを逆翻訳するステップと;
(b)こうして単離されたポリヌクレオチドを発現させて上記所望のポリペプチドを産生するステップと
を含む方法。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
【配列表】
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