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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】生体情報発信装置及び生体情報発信方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220909BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220909BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20220909BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20220909BHJP
   A61B 5/024 20060101ALI20220909BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
G08B21/02
A61B5/01 100
A61B5/022 500
A61B5/024
A61B5/11 200
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017111676
(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公開番号】P2018201902
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 昭二
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027893(JP,A)
【文献】特開2008-029590(JP,A)
【文献】特開2003-168178(JP,A)
【文献】国際公開第2004/089202(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/136050(WO,A1)
【文献】特開平03-202046(JP,A)
【文献】特表2009-537288(JP,A)
【文献】特開平09-097359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/03
A61B 5/06 - 5/22
G08B 19/00 -21/24
G08B 23/00 -31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を検知する生体情報検知部と、
外部機器と通信を行う送信部と、
前記生体情報検知部から前記生体情報を表す生体信号を受けて、その生体信号が正常範囲にあるか否かを判定可能な判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させる制御部と、
を備え、
前記外部機器が電波を用いて通信を行う携帯電話であり、
前記判定信号は、前記携帯電話が前記送信部との通信が許容されたデバイスであるかを判定するデバイス認証情報、及び異常信号又は正常信号であることを表す情報を含み、
人の動静を管理する動静管理装置を更に備え、
前記送信部が、前記携帯電話に前記人の異常を表す第1異常信号を送信すると、前記動静管理装置が、前記携帯電話から前記人の異常を表す第2異常信号を受信し、
前記動静管理装置は、前記携帯電話から前記第2異常信号受けると、予め決められた携帯端末に前記人の異常を表す第3異常信号を送信し、
前記送信部が、前記携帯電話に前記人の正常を表す第1正常信号を送信すると、前記動静管理装置が、前記携帯電話から前記人の正常を表す第2正常信号を受信する、生体情報発信装置。
【請求項2】
生体情報を検知する生体情報検知部と、
外部機器と通信を行う送信部と、
前記生体情報検知部から前記生体情報を表す生体信号を受けて、その生体信号が正常範囲にあるか否かを判定可能な判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させる制御部と、
前記外部機器を構成すると共に人の動静を管理する動静管理装置と、
備え、
前記動静管理装置が、前記送信部から前記人の異常を表す第1異常信号受けると、予め決められた携帯端末に前記人の異常を表す第2異常信号を送信し、
前記動静管理装置が、前記送信部から前記人の正常を表す正常信号も受信するようになっている、生体情報発信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生体情報発信装置において、
人の腕に着脱可能に取り付けるための腕取付部と、
前記人の体温を計測する体温計測部と、
加速度を計測する加速度計測部と、
前記人の脈拍を計測する脈拍計測部と、を備え、
前記制御部が、前記体温計測部、前記加速度計測部、及び前記脈拍計測部の夫々が計測した前記生体信号の2以上が正常範囲から逸脱している場合に前記人の異常を判定する、生体情報発信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の生体情報発信装置において、
時刻を特定する時刻特定部を備え、
前記制御部は、前記時刻特定部からの信号に基づいて所定時刻になったと判定すると、前記判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させる、生体情報発信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の生体情報発信装置において、
存在位置を特定する位置特定部を備える、生体情報発信装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の生体情報発信装置において、
外部機器から信号の送信を要求する送信要求信号を受信する受信部を備え、
前記受信部が前記送信要求信号を受信すると、前記判定信号が前記送信部から送信される、生体情報発信装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の生体情報発信装置において、
脈拍入力部、体温入力部、及び血圧入力部のうちの1以上の入力部を備え、その1以上の入力部で異常判定の閾値となる生体情報を入力できるようになっている、生体情報発信装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の生体情報発信装置において、
人の腕に着脱可能に取り付けるための腕取付部と、
加速度を計測する加速度計測部と、を備え、
前記制御部が、前記加速度計測部からの信号に基づいて所定時間の間に所定以上の大きさの加速度差が検出されたと判定すると、前記腕の動きが正常であると判定し、そうでない場合に前記腕の動きが異常であると判定する、生体情報発信装置。
【請求項9】
生体情報を検知する生体情報検知部と、外部機器と通信を行う送信部と、前記生体情報検知部から前記生体情報を表す生体信号を受けて、その生体信号が正常範囲にあるか否かを判定可能な判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させる制御部と、を備える装置が、人の状態が異常であるか否かを判定するステップと、
前記人の状態が異常であると、前記送信部が前記人の異常を表す第1異常信号を携帯電話に送信するステップと、
前記携帯電話が前記第1異常信号を受信すると、前記携帯電話が前記人の異常を表す第2異常信号を、人の動静を管理する動静管理装置に送信するステップと、
前記動静管理装置が、前記携帯電話から前記第2異常信号受けると、予め決められた携帯端末に前記人の異常を表す第3異常信号を送信するステップと、
前記人の状態が正常であると、前記送信部が前記人の正常を表す第1正常信号を携帯電話に送信するステップと、
前記携帯電話が前記送信部から前記人の正常を表す前記第1正常信号を受けると、前記携帯電話が前記人の正常を表す第2正常信号を前記動静管理装置に送信するステップと、
を含む、生体情報発信方法。
【請求項10】
生体情報を検知する生体情報検知部と、外部機器と通信を行う送信部と、前記生体情報検知部から前記生体情報を表す生体信号を受けて、その生体信号が正常範囲にあるか否かを判定可能な判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させる制御部と、を備える装置が、人の状態が異常であるか否かを判定するステップと
前記人の状態が異常であると、前記送信部が前記人の異常を表す第1異常信号を、人の動静を管理する動静管理装置に送信するステップと、
前記動静管理装置が、前記送信部から前記第1異常信号受けると、予め決められた携帯端末に前記人の異常を表す第2異常信号を送信するステップと、
前記人の状態が正常であると、前記送信部が前記人の正常を表す正常信号を前記動静管理装置に送信するステップと、
を含む、生体情報発信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を含む生体信号を発信する生体情報発信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現場の作業員等の安否管理システムとしては、特許文献1に記載されているものがある。この安否管理システムは、作業員等が所定の外部機器に携帯端末等で所定時刻に動静情報を送信することで作業員等の安否を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-33334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業員等が作業中で所定時刻に動静情報を送信できない場合、他の作業員等が当該作業員等の安否確認を行わなければならず、現場作業の円滑な遂行の妨げになる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、作業員等が作業中でも当該作業員等の安否を確認できる生体情報発信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示に係る生体情報発信装置は、生体情報を検知する生体情報検知部と、外部機器と通信を行う送信部と、前記生体情報検知部から前記生体情報を表す生体信号を受けて、その生体信号が正常範囲にあるか否かを判定可能な判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させる制御部と、を備える。
【0007】
開示によれば、作業員等(ユーザ)が作業中であっても、外部機器が受信した判定信号に基づいて当該作業員等の安否確認を行うことができ、又は外部機器が信号を受信するか否かで当該作業員等が通常状態であるか否かを判断できる。
【0008】
また、本開示において、人の腕に着脱可能に取り付けるための腕取付部を備え、前記生体情報検知部は、前記人の脈拍、前記人の体温、及び前記腕の動きのうちの少なくとも一つを検知してもよい。
【0009】
上記構成によれば、生体情報発信装置が人の腕に着脱可能であり、作業員等が生体情報発信装置を容易に装着可能となる。また、作業員等の脈拍、作業員等の体温、及び作業員等の腕の動きのうちの少なくとも一つに基づいて、作業員等の動静を正確に判定でき、作業員等の安否を正確に判断できる。
【0010】
また、本開示において、時刻を特定する時刻特定部を備え、前記制御部は、前記時刻特定部からの信号に基づいて所定時刻になったと判定すると、前記判定信号を前記送信部に前記外部機器へ送信させるか、又は前記生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで前記送信部に信号を送信させてもよい。
【0011】
なお、上記所定時刻は、1つのみ設定されてもよく、複数設定されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、1以上の所定時刻に、作業員等の動静を正確に判定でき、作業員等の安否を判断できる。
【0013】
また、本開示において、存在位置を特定する位置特定部を備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、生体情報発信装置を装着している作業員等の存在場所を特定できる。よって、作業員等が正常でない状態にある場合、作業員等を迅速に救出できる。
【0015】
また、本開示において、外部機器から信号の送信を要求する送信要求信号を受信する受信部を備え、前記受信部が前記送信要求信号を受信すると、前記判定信号が前記送信部から送信されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、地震等の災害の発生時等に外部機器から送信要求信号を送信部に送信することで、所望のタイミングでいつでも作業員等の安否確認をできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る生体情報発信装置によれば、作業員等が作業中でも当該作業員等の安否を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る生体情報発信装置を表す模式図である。
図2】上記生体情報発信装置における各機能の関係を示すブロック図である。
図3】作業員等の安否を確認する際に制御部が実行する処理手続の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る生体情報発信装置1を表す模式図である。この生体情報発信装置1は、時刻表示機能を有する腕時計式の装置であり、人の腕に着脱可能に取り付けられる。図1に示すように、生体情報発信装置1は、本体2と、本体2の12時側と6時側の各側面に取り付けられたバンド3,4を備える。
【0021】
本体2は、金属やABS樹脂などの硬質合成樹脂からなるケース5を備え、その上面には、ガラス又は透明のプラスチックが装着され、ケース5の下面には、ステンレスなどの金属からなる裏蓋(図示せず)が防水パッキンを介してビス等により取り付けられる。ケース5内には、時刻情報をアナログ表示するのに必要な電子部品、GPS機能を発揮させるための電子部品、腕の動きの加速度を測定するための電子部品、体温を測定するための電子部品、及び脈拍を測定するための電子部品が搭載される。なお、ケース内には、時刻情報をデジタル表示するのに必要な電子部品が搭載されてもよい。生体情報発信装置1の詳細な機能及び構成については後で詳述する。
【0022】
ケース5の12時側と6時側の各側面には、バンド取付部8が設けられる。バンド3,4は、一端部がケース5のバンド取付部8に図示しない取付ピンで取り付けられる。12時側のバンド3は、先端側に尾錠6を有する。尾錠6は、ABS樹脂などの硬質合成樹脂または金属などからなり、6時側のバンド4の先端側を係脱可能に係止することで、バンド3,4が互いに連結される。
【0023】
12時側のバンド3の中間には、6時側のバンド4の先端が挿脱可能に挿入される遊環7がスライド可能に取り付けられる。遊環7は、ポリウレタン樹脂などの軟質合成樹脂からなり、6時側のバンド4は、全体がポリウレタン樹脂などの軟質合成樹脂からなる。バンド4には、係止穴9が中間部分から先端側にかけて等間隔で設けられる。係止穴9は、尾錠6のツク棒6aを挿入するために設けられる。バンド3,4、尾錠6、遊環7、バンド取付部8、及び取付ピンは、腕取付部を構成する。
【0024】
図2は、生体情報発信装置1における各機能の関係を示すブロック図である。図2に示すように、生体情報発信装置1は、GPS(Global Positioning System)受信部10、体温計測部20、加速度計測部30、脈拍計測部40、記憶部50、送信部60、時刻表示部70、及び制御部80を備える。GPS受信部10は、存在位置特定部の一例であり、時刻特定部の一例でもある。また、体温計測部20、加速度計測部30、及び脈拍計測部40は、生体情報検知部を構成する。
【0025】
GPS受信部10は、GPSアンテナを含む。GPSアンテナは、地球上空の軌道を周回する人工衛星(GPS衛星)が送信した時刻情報や軌道情報を重畳させたマイクロ波を受信する。GPSアンテナは、文字板の裏面側に配置されると装飾性や装着性が良くなって好ましいが、これに限らない。また、文字板はマイクロ波を透過させるために非金属であるのが望ましい。
【0026】
GPS衛星は、原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報が含まれる。また、地上のコントロールセグメントによりGPS衛星に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定され、衛星信号には、時刻誤差を補正するための時刻補正パラメータも含まれる。GPS受信部10は、GPSアンテナを介してGPS衛星から送信された衛星信号を受け、その中に含まれるGPS時刻情報と時刻補正パラメータを用いて内部時刻を正確な時刻に修正する。
【0027】
衛星信号にはGPS衛星の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれる。GPS受信部10は、GPS時刻情報と軌道情報を使用して存在位置を特定する測位計算も行う。測位計算は、GPS受信部10の内部時刻に誤差が含まれることを前提に行われる。詳しくは、未知数は、4つ存在し、4つの未知数は、GPS受信部10の3次元の位置を特定するためのx,y,zパラメータと、時刻誤差で構成される。GPS受信部10は、4つ以上のGPS衛星から衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行い、GPS受信部10が存在する場所を正確に特定する。GPS受信部10は、時刻を表す信号と存在位置を表す信号を制御部80に出力する。
【0028】
体温計測部20は、例えば公知の小型軽量の半導体センサで構成される。体温計測部20の温度検出部は、ケース5の裏側面に露出し、作業員等(ユーザ)が腕に装着すると腕に接触する。体温計測部20は、温度検出部が検出した情報に基づいて作業員等の体温を検出する。ケース5の材質や厚さは、熱伝導性が良好で、作業員等の腕との接触有無や、ケーシング外部の温度変化に対応して速やかに温度変化しやすいものが選択されると好ましい。体温計測部20は、作業員等の体温を表す信号を制御部80に出力する。当該作業員等の体温を表す信号は、生体信号に含まれる。
【0029】
加速度計測部30は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造された加速度センサ素子を含む。加速度センサ素子は、ピエゾ方式で構成され、梁はりによるばねで錘を支え、ばねの変位をばねの表面に貼り付けてあるピエゾ抵抗で検出する構成でもよい。又は、加速度センサ素子は、容量方式で構成され、錘と一体となった可動電極と固定電極とで容量を形成し、加速度による変位を容量値の変化で検出する構成でもよい。加速度センサ素子は、例えば互いに直交する3軸(例えば、X軸、Y軸およびZ軸)方向の加速度を検出可能に構成される。なお、加速度センサ素子は、3軸方向の加速度を検出可能な1つの素子片で構成されていてもよいし、軸ごとに分割された3つの素子片で構成されていてもよい。加速度計測部30は、加速度を表す信号を制御部80に出力する。当該加速度を表す信号は、生体信号に含まれる。
【0030】
脈拍計測部40は、緑色の光を出射するLED(light emitting diode)チップと、受光素子を含む。LEDチップ及び受光素子は、ケース5内に搭載される。ケース5の裏側面は、光を透過可能な部分、例えば透明樹脂で構成された部分を含む。LEDチップから出射された光と、LEDチップから出射されて作業員等の腕で反射された光は、この光を透過可能な部分を通過する。脈拍計測部40は、血液中のヘモグロビンが光を吸収する性質を利用して脈拍数を計測する。詳しくは、脈拍計測部40は、緑色の光を皮膚内の血管に照射し、ヘモグロビンに吸収されずに反射してきた光を受光素子で捉え、光量の微小な変化をモニタリングすることで脈拍を計測する。なお、脈拍計測部は、他の原理に基づいて脈拍を測定してもよい。例えば、脈拍計測部は、荷重検出素子を有し、荷重検出素子が、バンドを介して伝達された手首付近の脈動により生じた張力変動を本体に作用する荷重変動として検出することで脈拍を測定してもよい。脈拍計測部40は、脈拍を表す信号を制御部80に出力する。当該脈拍を表す信号は、生体信号に含まれる。
【0031】
記憶部50は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等で構成され、制御部80と双方のやり取りを行う。RAMは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する機能を有する。また、ROMは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する機能を有する。記憶部50は、フラッシュメモリ等を用いて構成されてもよく、フラッシュメモリ等にデータの記憶やプログラムの記憶を行ってもよい。記憶部50に記憶されるデータについては後で説明する。送信部60は、送信アンテナで構成される。送信アンテナは、文字板の裏面側等に配置されると装飾性や装着性が良くなって好ましいが、これに限らない。また、図1に示すように、時刻表示部70は、時針、分針及び秒針で構成される。制御部80が、GPS受信部10からの時刻を表す信号に基づいて時刻表示部70に時刻を表示させる。
【0032】
制御部80は、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成される。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)を含む。CPUは、記憶部50に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する機能を有する。制御部80は、例えば、マイクロコンピュータによって実行されるソフトウエアによって実現できるが、その一部がハードウエアによって構成されてもよい。
【0033】
以下、作業員等が作業中であっても作業員等の安否を確認できる制御について説明する。図3は、作業員等の安否を確認する際に制御部80が実行する処理手続の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図3を参照して、作業員等が腕時計式の生体情報発信装置1を腕に巻くと制御がスタートする。作業員等による生体情報発信装置1の装着は、例えば体温計測部20が体温を検出したことをもって判定する。制御がスタートすると、ステップS1で、制御部80が、GPS受信部10からの信号に基づいて所定時刻になったか否かを判定する。この所定時刻は、1以上の特定の時刻で構成され、所定時刻のデータは、記憶部50に予め記憶されている。ステップS1で否定判定されると、ステップS5に移行する。ステップS5の処理については後で説明を行う。他方、ステップS1で肯定判定されると、ステップS2に移行する。
【0035】
ステップS2では、制御部80が、体温、腕の動き、脈拍のうちの少なくとも一つに異常がみられるか否かを判定する。詳しくは、ステップS2において、制御部80は、体温計測部20からの信号に基づいて特定した作業員等の体温が、予め記憶部50に記憶されている正常な体温の範囲に含まれるか否かを判定する。制御部80は、特定した作業員等の体温が正常な体温の範囲に含まれる場合に体温が正常であると判定し、そうでない場合に体温が異常であると判定する。
【0036】
また、制御部80は、加速度計測部30からの信号に基づいて所定時間の間に所定以上の大きさの加速度差が検出されたか否かを判定する。所定時間のデータ、及び閾値となる加速度の大きさのデータは、予め記憶部50に記憶されている。制御部80は、所定時間の間に所定以上の大きさの加速度差が検出されたと判定すると、腕の動きが正常であると判定し、そうでない場合に腕の動きが異常であると判定する。
【0037】
また、制御部80は、脈拍計測部40からの信号に基づいて特定した脈拍数が、予め記憶部50に記憶されている正常な脈拍数の範囲に含まれるか否かを判定する。制御部80は、特定した作業員等の脈拍数が正常な脈拍数の範囲に含まれる場合に脈拍数が正常であると判定し、そうでない場合に脈拍数が異常であると判定する。制御部80は、これら3つの判定を行うことで、体温、腕の動き、脈拍のうちの少なくとも一つに異常がみられるか否かを判定する。
【0038】
ステップS2で肯定判定されると、ステップS3に移行して、制御部80が外部機器に作業員等の状態が異常であることを表す信号を送信部60に送信させる。外部機器は、例えば、作業員等の携帯電話で構成される。この送信は、例えば生体情報発信装置1から作業員等の携帯電話にブルーツゥース(Bluetooth(登録商標))を用いて実行される。ブルーツゥースは、規定の周波数を有するマイクロ波(電波)である。このブルーツゥースの信号は、判定信号の一例である。
【0039】
ブルーツゥースは、携帯電話が生体情報発信装置1との通信が許容されたデバイスであるかを判定するデバイス認証情報や、異常信号又は正常信号であることを表す情報を含む。異常信号と正常信号は、例えばブルーツゥースにおける異常又は正常を表す領域において位相と振幅の少なくとも一方が異なる。位相と振幅の少なくとも一方を異ならせることで、2つの信号の判別が可能になる。
【0040】
携帯電話は、生体情報発信装置1から異常信号を受けると、アプリにより作業員等の異常を表す信号を各作業員等の動静を管理する動静管理装置に送信する。動静管理装置は、携帯電話から異常信号を受けると、予め決められた携帯端末等に特定の作業員等の異常を表す信号を送信する。その結果、当該予め決められた携帯端末等の所有者が、特定の作業員等の異常を認識できる。なお、生体情報発信装置は、作業員等の異常を表す信号を電波を用いて動静管理装置に直接送信してもよく、この場合、動静管理装置が外部機器を構成する。ステップS3が完了すると、ステップS5に移行する。
【0041】
他方、ステップS2で否定判定されると、ステップS4に移行する。ステップS4では、制御部80が作業員等の状態が正常であることを表す信号を送信部60に作業員等の携帯電話等に送信させ、当該作業員等の携帯電話等が、特定の作業員等の正常を表す信号を動静管理装置に送信する。ステップS4が完了すると、ステップS5に移行する。
【0042】
ステップS5では、制御部80が、生体情報発信装置1が作業員等の腕から外されたか否かを判定する。この判定は、例えば、制御部80が体温計測部20又は脈拍計測部40からの信号に基づいて行う。ステップS5で否定判定されると、ステップS1以下が繰り返される。他方、ステップS5で肯定判定されると、制御がエンドになる。
【0043】
上記実施形態によれば、作業員等が作業中であっても、所定時刻になると、制御部が、生体情報検知部からの信号に基づいて当該作業員等が正常状態であるか否かを判定できる判定信号を当該作業員等の携帯電話経由で動静管理装置に送信する。したがって、当該作業員等が通常状態であるか否かを判定でき、現場作業をより円滑に実行できる。
【0044】
また、生体情報発信装置1が人の腕に着脱可能であるので、作業員等が生体情報発信装置を容易に装着可能となる。また、生体情報検知部が、作業員等の動静を正確に判定し易い、人の脈拍、人の体温、及び腕の動きを検知するので、作業員等の動静を正確に判定でき、作業員等の安否を正確に判断できる。
【0045】
また、生体情報発信装置1が、GPS受信部10を備え、制御部80がGPS受信部10からの信号に基づいて所定時刻になったと判定すると、生体情報発信装置1が判定信号を送信する。したがって、所定時刻に、作業員等の動静を正確に判定でき、作業員等の安否を判断できる。
【0046】
更には、生体情報発信装置1が、存在位置を特定するGPS受信部10を備える。したがって、生体情報発信装置1を装着している作業員等の存在場所を特定でき、作業員等が正常でない状態にある場合、作業員等を迅速に救出できる。
【0047】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、生体情報発信装置1が、所定時刻に生体信号が正常範囲にあるか否かを判定可能な判定信号を送信部60を介して外部機器へ送信する場合について説明した。しかし、生体情報発信装置は、外部機器から信号の送信を要求する送信要求信号を受信する受信部を備え、受信部が送信要求信号を受信すると、送信部が判定信号を送信してもよい。このようにして、送信部が判定信号を所定時刻に外部機器に送信することに加えて、所定時刻以外の時刻であっても、受信部が送信要求信号を受信すると、送信部が判定信号を外部機器に送信するようにしてもよい。又は、受信部が送信要求信号を受信したときのみ、送信部が判定信号を外部機器に送信するようにしてもよく、送信部が所定時刻に判定信号を外部機器に送信しなくてもよい。また、この場合、生体情報発信装置は、時刻を特定する時刻特定部を有さなくてもよい。
【0049】
例えば、生体情報発信装置が所定時刻以外の時刻に第1外部機器から受信部を介して送信要求信号を受信すると、送信部が時刻を表す信号と存在位置を表す信号を第2外部機器に送信してもよい。また、生体情報発信装置が所定時刻以外の時刻に第1外部機器から受信部を介して送信要求信号を受信すると、送信部が作業員等の体温を表す信号を第2外部機器に送信してもよい。
【0050】
また、生体情報発信装置が所定時刻以外の時刻に第1外部機器から受信部を介して送信要求信号を受信すると、送信部が加速度を表す信号を第2外部機器に送信してもよい。また、生体情報発信装置が所定時刻以外の時刻に第1外部機器から受信部を介して送信要求信号を受信すると、送信部が作業員等の脈拍を表す信号を第2外部機器に送信してもよい。
【0051】
ここで、上記第1外部機器と、上記第2外部機器は、同じ外部機器であってもよく、異なる外部機器でもよい。この変形例によれば、地震等の災害の発生時等に外部機器から送信要求信号を送信部に送信することで、所望のタイミングにいつでも作業員等の安否確認をできる。
【0052】
また、生体情報発信装置が、作業員等の正常状態を判定したときに外部機器に作業員等の正常状態を表す信号を出力する一方、作業員等の異常状態を判定したときに外部機器に作業員等の異常状態を表す信号を出力する場合について説明した。しかし、生体情報発信装置は、生体信号が正常範囲にある場合と異常範囲にある場合の一方のみで送信部に信号を送信させてもよく、作業員等の正常状態を判定したときと作業員等の異常状態を判定したときの一方のみで外部機器に信号を送信してもよい。このようにして、作業員等が正常状態か否かを判断してもよい。
【0053】
また、体温計測部20、加速度計測部30、及び脈拍計測部40の夫々が計測した生体信号のうちの1つのみが、正常範囲から逸脱していても、作業員等の異常を判定する場合について説明した。しかし、体温計測部20、加速度計測部30、及び脈拍計測部40の夫々が計測した生体信号の2以上が正常範囲から逸脱している場合のみに、作業員等の異常を判定してもよい。すなわち、生体情報検出部が、複数の検出部を含む場合に、1つの検出部の生体信号のみが正常範囲から逸脱していても、作業員等の正常を判定してもよく、2以上の検出部の生体信号が正常範囲から逸脱したときに、作業員等の異常を判定してもよい。
【0054】
また、生体情報検出部が、体温計測部20、加速度計測部30、及び脈拍計測部40を含む場合について説明した。しかし、生体情報検出部は、体温計測部、加速度計測部、及び脈拍計測部のうちの1つのみで構成されてもよく、又は、体温計測部、加速度計測部、及び脈拍計測部のうちの2つで構成されてもよい。また、生体情報検出部は、血圧計測部のみで構成されてもよく、血圧計測部を含んでもよい。この構成は、特開平7-116132号公報に記載されているように、手首に装着する腕時計型の生体情報発信装置に、光学式脈拍計センサと心電図電極を組み込み、光学式脈拍計センサで脈拍と心拍を計測することで実現できる。脈拍の伝搬時間は血圧に比例するので、脈拍の伝搬時間から血圧を計測できるのである。
【0055】
また、標準生体信号、例えば、標準脈拍、標準体温、標準血圧等は、人によって異なる。そこで、生体情報発信装置は、1以上の生体信号入力部、例えば、脈拍入力部、体温入力部、及び血圧入力部のうちの1以上の入力部を備えもよい。そして、この1以上の生体信号入力部で異常判定の閾値となる生体情報を入力できるようにしてもよい。より詳しくは、脈拍入力部を例に説明を行うと、制御部が、入力された脈拍より所定脈拍離れた脈拍であると判定することで作業員等の健康の異常判定を行ってもよい。
【0056】
また、判定信号は生体情報を表す生体信号そのものであってもよい。また、生体情報発信装置は存在位置を特定する位置特定部を有さなくてもよい。また、生体情報発信装置は、腕時計型の装着部を有さなくてもよく、例えば、皮膚に貼り付ける形態の装着部を有してもよく、それ以外の生体情報を取得できる如何なる形態の装着部を有してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 生体情報発信装置、 10 GPS受信部、 20 体温計測部、 30 加速度計測部、 40 脈拍計測部、 60 送信部、 80 制御部。
図1
図2
図3