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特許7138420不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/16 20060101AFI20220909BHJP
   D04H 5/03 20120101ALI20220909BHJP
【FI】
A47L13/16 C
D04H5/03
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017191317
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019063221
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 力
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】長馬 望
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-179545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/16
D04H 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスターであり、
坪量が40~70g/m2であり、
スパンボンド不織布の目付量が10~25g/m2であり、
パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%であり、
乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであり、
前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、着色繊維であり、
かつ、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される、
ことを特徴とする不織布ダスター。
【請求項2】
パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含み、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである、請求項1記載の不織布ダスター。
【請求項3】
着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、合成樹脂繊維による目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布の上に、乾燥パルプシートを積層する積層工程と、
ノズル径0.5~1.5mmφのノズルから乾燥パルプシート面に100~110barの圧力で水流を噴射する水流絡合工程と、
を有し、
合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色する工程を有さず、
乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであり、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される不織布ダスターとする、
ことを特徴とする不織布ダスターの製造方法。
【請求項4】
パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含み、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである、請求項3記載の不織布ダスターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
惣菜や弁当の製造工場、スーパーマーケットのバックヤードでは、不織布製のダスターが多く使われている。この種の不織布製ダスターに用いられる不織布としては、レーヨン繊維又はレーヨン繊維と合成樹脂繊維を水流により交絡させたスパンレース法によるレーヨン不織布が主流であるが、パルプ繊維と合成樹脂製の不織布とを水流により交絡させたパルプ混合不織布も用いられる。
【0003】
他方で、不織布ダスターは、使用場所や拭き取り対象物によって異なるダスターを使い分けしやすいように、表裏に視認しやすい色柄が設けられている。この色柄は、片面から印刷によって形成されるのが一般的である。ダスターは、密度が疎であるため、片面から印刷しても裏面にまでインキが浸透して表裏に容易に色柄を形成することができる。
【0004】
しかしながら、従来の色柄付きのダスターは、消毒等に使用されるアルコールや次亜塩素酸等の薬液によって色落ちすることがあるという問題があった。
【0005】
また、異なるダスターを使用するほどでもないが同じ部分を使用したくない場合などにおいて、ダスターの表裏面で使い分けをしたいということもあるが、従来の色柄付きダスターは、表裏の色柄が同じであるため、表裏での使い分けがし難いという問題があった。特にダスターは二つ折り、四つ折りして使用されることが多いため、表裏に同じ色柄のある従来のダスターは使い分けがし難い。表裏に別の色柄を設けることも考えられるが上記のとおりダスターに用いられる不織布は密度が疎であるためインキが裏面に浸透しやすく、表裏別の印刷をすることが難しく、また、表裏別の印刷を行うとコストも高くなる。
【0006】
他方、特にパルプ混合不織布のダスターは、合成樹脂繊維の不織布からバインダー臭が異臭として感じられることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-266873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、吸液性と耐摩耗性に優れ、表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難いパルプ混合不織布としての不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0010】
その第一の手段は、
合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスターであり、
坪量が40~70g/m2であり、
スパンボンド不織布の目付量が10~25g/m2であり、
パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%であり、
乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであり、
前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、着色繊維であり、
かつ、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される、
ことを特徴とする不織布ダスターである。
【0011】
第二の手段は、
パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含み、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである、上記第一の手段の不織布ダスター。
【0012】
第三の手段は、
着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、合成樹脂繊維による目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布の上に、乾燥パルプシートを積層する積層工程と、
ノズル径0.5~1.5mmφのノズルから乾燥パルプシート面に100~110barの圧力で水流を噴射する水流絡合工程と、
を有し、
合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色する工程を有さず、
乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであり、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される不織布ダスターとする、
ことを特徴とする不織布ダスターの製造方法である。
【0013】
第四の手段は、
パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含み、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである、上記第三の手段の不織布ダスターの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸液性と耐摩耗性に優れ、表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難いパルプ混合不織布としての不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の不織布ダスター及びその製造方法を説明する。
【0016】
本実施形態の不織布ダスターは、合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布である。係るパルプ混合不織布は、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維とパルプ繊維との絡合により繊維同士の絡みが良好で一体の不織布シートを構成しながら、表裏が完全に同質にならずスパンボンド不織布面とパルプ繊維面とを有する。スパンボンド不織布は、ペレット原料を直接紡糸して不織布を製造するスパンボンド法により得られる不織布であり、長繊維であり寸法安定性に優れる。また、ノーバインダー不織布として、バインダーを使用せずに形成することができる。
【0017】
本実施形態の不織布ダスターにおけるパルプ繊維は、広葉樹由来のパルプ繊維、針葉樹由来のパルプ繊維、古紙由来のパルプ繊維から選択することができる。特に、パルプ繊維が非着色の漂白パルプであるのが望ましい。漂白パルプであるとパルプ繊維面が漂白パルプ由来の高い白色度となり白色に視認されるようになる。ここで、パルプ繊維の平均繊維長(以下、繊維の長さともいう)は、3.0~5.0mmであるのが望ましい。合成樹脂繊維と絡合が好適となりやすい。パルプ繊維の中でも特に好ましくは、針葉樹由来のパルプ繊維である。針葉樹由来のパルプ繊維は、平均繊維長が3.5~4.0mmであり、合成樹脂繊維と効果的に絡合され、繊維落ちが少なく紙粉が発生し難い。繊維長及び漂白パルプが望ましいことから、本形態では、特にパルプ繊維は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を95質量%以上含むのがよい。但し、広葉樹未晒しパルプ(LUKP)や針葉樹未晒しパルプ(NUKP)を使用することもできる。
【0018】
スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維は、パルプ繊維と水流絡合可能なものであり、ダスター用途に問題がないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。複数の樹脂からなる繊維、例えば、芯鞘構造を有する合成樹脂繊維であってもよい。好ましくは、安価で軽量かつ十分な強度を発現でき、水流によって絡合しやすいポリエチレン繊維又はポリプロピレン繊維である。合成樹脂繊維の太さは、18~22μmであるのが望ましい。パルプ繊維、特に針葉樹由来のパルプとの絡合が強固でパルプ繊維が脱落し難いものとなる。なお、繊維長は、カヤニ/ファイバーラボにて測定し、繊維太さは、電子顕微鏡にて観察し測定する。
【0019】
本実施形態に係る不織布ダスターの坪量は、40~70g/m2である。より好ましくは、48~58g/m2である。拭き取りに必要な強度及び十分な吸液性となる。さらにスパンボンド不織布における合成樹脂繊維の目付量が10~25g/m2であり、好ましくは12~16g/m2である。また、パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が30~40質量%である。このパルプ配合割合は、高い数値であり、吸液性の点で優れるようになる。すなわち、上記合成樹脂繊維の目付量の範囲で、パルプの配合割合が不織布全体の60~70質量%であると、十分な強度でありながら柔らかく、特に吸液性に優れるようになる。また、スパンボンド不織布における合成樹脂繊維の目付量が10~25g/m2と低く、スパンボンド不織布の割合が30~40質量%であるため、パルプ繊維の吸水性を十分に発揮できる。さらに、この目付量であることによりパルプ繊維層とスパンボンド不織布層との一体性が高く、耐摩耗性が高く特にパルプ繊維面を使用した際におけるルプ繊維落ちが発生し難くなる。さらに、スパンボンド不織布であることからバインダー成分を必要ないためバインダーに起因する異臭が発生しないものとなる。また、バインダーを用いてもその目付量が低いことからバインダーの使用量を少なくできバインダーに起因する異臭の発生もし難いものとなる。
【0020】
ここで、本実施形態の不織布ダスターは、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされた着色繊維となっている。特に、上記の目付量とすることで着色された合成樹脂繊維が十分な色の濃さとなって視認できるようになる。係る着色繊維は、着色剤が練り込まれた着色ペレット原料を紡糸してスパンボンド不織布を製造するか、ペレット原料に着色剤を混合して紡糸してスパンボンド不織布を製造すればよい。着色剤は、合成樹脂材の着色剤として用いられるもののなから適宜選択することができる。但し、摩擦による色落ちに関係なく、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸、水に対する溶出試験においてヘプタンは150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸、水で30μg/ml以下である必要がある。
【0021】
本実施形態の不織布ダスターでは、特に、パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なる。このようにパルプ繊維とスパンボンド不織布の繊維の色が異なると、本実施形態の不織布ダスターでは表裏が異なる色として視認されるようになる。なお、パルプ繊維は、上記のとおり漂白パルプ、特にISO白色度が85%以上の漂白パルプが望ましく、特に非着色のパルプ繊維が望ましい。この場合、パルプ繊維面が白色となるため合成樹脂繊維は、白色以外に着色されてものとする。
【0022】
本実施形態の不織布ダスターでは、パルプ繊維とスパンボンド不織布との絡合による一体性が高いうえ、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維やパルプ繊維がインキ等によって外的に着色されておらず、合成樹脂繊維が着色料が練りこまれて色付けされた着色繊維となっていることから摩擦時における色落ちが非常に発生し難い。そして、特にパルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差がはっきりと視認しやすい。さらに、スパンボンド不織布面とパルプ繊維面とで地合いに明確な差があるため二つ折り、四つ折りした際においても表裏を認識しやすい。また、実施形態の不織布ダスターは、スパンボンド不織布面は耐摩耗性に優れるとともに油に対してなじみやすく、また、パルプ繊維面は柔らかく水となじみやすいため表裏の使い分けもしやすい。
【0023】
ここで、本実施形態の不織布ダスターは、乾燥引張強度の縦横比が3.0以下、好ましくは2.5以下であるのが望ましい。縦方向及び横方向の具体的な乾燥引張強度は、必ずしも限定されないが、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであるのが望ましい。この範囲であれば拭き取りに十分な強度である。なお、乾燥引張強度の測定方法は、JIS P8113(1998)に準ずる方法で実施する。測定装置としては、ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG-200N」が挙げられる。水流絡合のパルプ混合不織布としての本実施形態の不織布ダスターの上記の縦横比は、非常に小さい値である。すなわち、水流絡合のパルプ混合不織布は、合成樹脂繊維の不織布にクレープ紙等の抄紙した紙を積層した後、紙積層面から液体を噴射することで、紙を構成するパルプ繊維と不織布とを交絡させるのが一般的である。合成樹脂繊維の不織布は、縦方向、横方向における乾燥引張強度の差はさほどないため、パルプ混合不織布における縦横比は、抄紙という製造方法に由来する紙の縦横比の影響がある。本実施形態の不織布ダスターでは、このような紙由来の縦横比の影響等がない特徴的なものであるのが望ましい。なお、係るパルプ混合不織布の製造方法例は、後述する。
【0024】
他方で、本実施形態に係る不織布ダスターは、JIS L 1096 E法(2010)に規定されるマーチンデール法における測定値が、スパンボンド不織布面で100以上、パルプ繊維面においても15以上であるのが望ましい。また、特にこの試験法において20回で標準摩擦布に色移りがなければ色落ちがしない製品といえる。マーチンデール法は、耐摩耗性を図る試験であり、試験片の裏面にポリウレタンフォーム(見掛密度0.03g/cm3、厚さ約3mm)を摩耗試験機の試料ホルダに取り付け、あらかじめ織フェルト(材質:毛、単位質量:750g/m2、厚さ:3mm)の上に標準摩擦布(材質:縦/毛、横/毛、繊度:縦/R63 tex/2、横/R74 tex/2、質量:215g/m2)を重ねて取り付けた摩擦台の上に載せて多方向に摩擦し、エンドポイントまでの回数を測り、毛羽立ちが目視で確認された回数を測定する。その4回の平均を算出し、これを測定値とする。なお、本実施形態における測定値は1回単位で示す。摩耗試験機の具体例としては、グロッツ・ベッケルト製のマーチンデール摩耗試験機が挙げられる。なお、測定は、摩擦を加える素材は標準摩擦布、荷重は9Kpa、WET条件、動きはリサージュとして行う。WET条件は、300μlの水で試験片(38mmφ)全体を湿らせる。
【0025】
以上の本実施形態に係るパルプ混合不織布としての不織布ダスターは、パルプ繊維の配合率が高く吸液性に優れ、さらに表裏におけるパルプ繊維の離脱差が少なく合成樹脂繊維とパルプ繊維との絡合が良好なものとなっている。
【0026】
なお、本実施形態に係る不織布ダスターにおいては、吸液性を低下させやすいバインダー成分は塗布しないのが望ましい。また、インキ等による印刷など外的な着色が行われていないものであるのが望ましい。
【0027】
次いで、本実施形態に係る不織布ダスターの製造方法について説明する。本実施形態に係る不織布ダスターは、着色料が練りこまれて色付けされた合成樹脂繊維による目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布の上に、溶解パルプをシート状にして乾燥させた乾燥パルプシートを積層する工程を有する。上記スパンボンド不織布は、着色剤が練り込まれた着色ペレット原料を紡糸してスパンボンド法によって不織布を製造するか、ペレット原料に着色剤を混合して紡糸してスパンボンド法によって不織布を製造すればよい。このとき、バインダーを用いずにノーバインダー不織布とするのがよい。スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維及び溶解パルプを構成するパルプ繊維における繊維種、繊維長、繊維の太さは上記の本実施形態の不織布ダスターにおいて説明したとおりである。
【0028】
溶解パルプをシート状にした乾燥パルプシートは、水にパルプ繊維を分散懸濁させたパルプ溶解液を搬送平面上に吐出し、加熱ドラムで圧縮乾燥させてシート状にしたものを用いるのが望ましい。乾燥温度は、85~115℃、好ましくは90~110℃である。なお、パルプ溶解液中には本発明の効果を妨げない範囲で適宜の助剤を加えることができる。この乾燥パルプシートは、繊維配向性が小さく乾燥引張強度の縦横比差が非常に小さい。また、乾燥パルプシートの目付量(坪量)は、水流交絡時の歩留まり等を考慮して、パルプ混合不織布時にパルプの繊維配合割合が60~70質量%となるように適宜に調整する。
【0029】
次いで、ウォータージェット技術、ウォーターニードル技術等とも称されるスパンレース技術に準じて、スパンボンド不織布と乾燥パルプシートとが積層された積層シートの乾燥パルプシート面に水を噴射して打ち付け、乾燥パルプシートにおけるパルプ繊維の結合を破壊するとともにスパンボンド不織布の合成樹脂繊維と乾燥パルプシートのパルプ繊維とを水流絡合させる工程を行う。ここで、本実施形態のパルプ混合不織布としての不織布ダスターの製造方法では、特に水流を噴射するノズルのノズル径0.5~1.5mmφのノズルとする。より好ましくは、0.75~1.25mmφである。水圧については必ずしも限定されないが、100~110bar程度が望ましい。これは一般的な圧(80~90bar)より高い値である。なお、適宜の調整は合成樹脂繊維の種類等によって行う。このノズル径は、従来パルプ混合不織布の製造方法よりも小さい。本実施形態では、目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布上に積層した繊維配向性の少ない乾燥パルプシートに対して小径のノズルから水流を噴射して打ち付けることで、合成樹脂繊維とパルプ繊維との絡合が良好となり、とりわけスパンボンド不織布面側へのパルプ繊維の入り込みが良好となってパルプ繊維面におけるパルプ繊維が離脱し難いものとなる。特に、好ましい合成樹脂繊維の構成及びパルプ繊維の構成をとる場合に、水流による繊維の動きが良好で、効果的に本実施形態に係るダスターが製造できる。すなわち、乾燥パルプシートがNBKPを95質量%以上含み、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維の太さが18~22μmであるのが望ましい。
【0030】
かくして水流交絡された積層シートは、適宜に乾燥工程を経てパルプ混合不織布とされた後、裁断等され不織布ダスターとされる。これらの乾燥工程及び裁断工程は公知の技術により行うことができる。
【実施例
【0031】
次いで、本実施形態に係る不織布ダスター(実施例1及び2)と、従来の不織布ワイプ(比較例1~8)とについて試験を行った。なお、比較例1は、従来のパルプ混不織布であり、比較例2~比較例8は従来例に係るスパンレース不織布の不織布ダスターである。試験の結果は、実施例及び比較例に係る物性値及び測定値とともに下記表1に示す。なお、行った試験は次のとおりである。
【0032】
〔乾燥引張強度〕
JIS P 8113(1998)の引張試験に従って測定した。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いた。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200Nを用いた。つかみ間隔は100mmに設定した。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行った。引張速度は100mm/minとした。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とした。(試料の調整は、JIS P 8111(1998))なお、縦横比は、測定値から算出する。
【0033】
〔耐摩耗試験〕
JIS L 1096 E法(2010)に規定されるマーチンデール法により測定した。実施例1、実施例2及び比較例1については、スパンボンド不織布面とパルプ繊維面とについて行い、表裏の繊維構成に差のない比較例2~比較例9については一方面のみ行った。摩耗試験機は、グロッツ・ベッケルト製マーチンデール試験機を用いた。摩擦を加える素材は標準摩擦布、荷重は9Kpa、WET条件(38mmφの試験片を300μLの水で全体を湿らす)、動きはリサージュとして行った。WET条件は、試料面を霧吹きで吹くことによる。
【0034】
摩擦による色落ちについては、上記と同様の手順で、20回摩擦を加えた際に、標準摩擦布に色移りが目視で確認できるか否かにより判断した。
【0035】
〔吸水量〕
吸水量の測定は下記(1)~(5)のとおりに行った。
(1)試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃の水を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目15mm)の上に拡げて載せ、前記水を入れたトレイ内におろして、水面に接触するように試験片を浸水させる。
(4)試験片の表面にまで十分に水が浸みこんだら、平網を水面より真上に上げ、ピンセットにより試験片の角を摘み、そのまま30秒静止する。
(5)30秒後に吸水した試験片の質量を電子天秤により測定し、下記式により1m2当たりの吸水量を算出する。
吸水量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸水した試験片の質量)-(上記(1)で測定した試験片の質量))×100(注:m2に換算するため、100倍する)
【0036】
〔吸油量〕
吸油量の測定は下記(1)~(5)のとおりとした。
(1)試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目30mm)の上に拡げて載せ、前記サラダ油を入れたトレイ内におろして、油面に接触するように試験片を浸油させる。
(4)試験片の表面にまで十分にサラダ油が浸みこんだら、平網を油面より真上に上げ、そのまま30秒静止した後、ピンセットにより試験片の角を摘み、予め秤量された測定容器に試験片を移す。このとき、平網を油面より上げて静止を開始してから測定容器に移すまで30秒を超えないようにする。
(5)試験片が入った測定容器の質量を電子天秤により測定し、その測定値より測定容器の質量を差し引いて、吸油後の試験片の質量を算出する。そして、下記式により1m2当たりの吸油量を算出する。
吸油量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸油した試験片の質量)-(上記(1)で測定した試験片の質量))×100(注:m2に換算するため、100倍する)
【0037】
〔色泣き〕
染色堅ろう度を測る色泣き試験方法(大丸法)に基づいて次のようにして測定した。まず、各例に係る試験片を白布に縫い付けた試料、次亜塩素酸ナトリウム0.02%溶液(表中「次亜」と表記)、アルコール76%、洗剤に試験片の2cm分を浸漬する。2時間経過後、試料を引き上げて自然乾燥し、試験片から白布への汚染の程度を判定する。判定は、JIS L 0801染色堅ろう度試験方法に基づいて、汚染用グレースケールにて判断する。なお、5級は、色泣きがない、4~5級は、色泣きが僅かにある、4級以下は色泣きありを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
各試験の結果を見てみると、実施例1及び実施例2は、耐摩耗強度試験時における色落ちが発生していない。また、色泣きの試験においても実施例1及び実施例2は、5級の評価でまったく色泣きがない。対して、比較例2~比較例8は、色落ちが発生し、また、色泣きの試験においても5級に満たない。
【0040】
他方で、実施例1及び実施例2は、スパンボンド不織布面においては、非常に高い耐摩耗強度を有しており、パルプ繊維面における耐摩耗強度も、レーヨン100%の単層の比較例6やレーヨン/ポリエステル混合の比較例7に比して高く、比較例8とほぼ同様であり、これらの従来例と同様に使用ができる。
【0041】
すなわち、実施例1及び実施例2は、パルプ繊維と合成樹脂繊維との絡合がしっかりしたものとなっており、色落ち等の発生もなく、スパンボンド不織布面及びパルプ繊維面において十分な使用が可能で使い分けができる。
【0042】
さらに、実施例と比較例とを比較してみると、実施例において縦方向及び横方向の乾燥引張強度が特段低いということもなく、また、吸水量や吸油量も十分に発現している。これらの結果からすると本発明の実施例は、吸液性と耐摩耗性に優れ、表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難い不織布ダスターとなっている。