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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/68 20060101AFI20220909BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C08F220/68
C08F290/06
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017539891
(86)(22)【出願日】2016-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2016076818
(87)【国際公開番号】W WO2017047547
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2015183324
(32)【優先日】2015-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015217759
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝治
(72)【発明者】
【氏名】塚田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】井上 政志
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-517929(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196381(WO,A1)
【文献】特開昭60-144701(JP,A)
【文献】国際公開第2013/22065(WO,A1)
【文献】特開昭59-216848(JP,A)
【文献】特開2008-88132(JP,A)
【文献】特許第6470620(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F220/00-220/70
C08F283/01
C08F290/00-290/14
C08F299/00-299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性(メタ)アクリレート[ただし、下記式(I)で表される(メタ)アクリレート化合物は除く。
【化1】
(式中、環Zは単環式アレーン環、縮合多環式アレーン環、又はビアレーン環、R及びRiiはそれぞれ同一又は異なる非反応性置換基、Riiiは水素原子又はメチル基を示し、kは0~4の整数、pは0又は1以上の整数、qは1~3の整数を示し、Aは下記式(II)で表される基
【化2】
(Rivは直鎖状C2-6アルキレン基、Rは分岐鎖状C3-6アルキレン基、miは0又は1~5の整数、niは1~10の整数を示す。)を示し、Aiiは下記式(IV)で表される基
【化3】
(miiは0又は1~5の整数、niiは1~10の整数、Riv及びRは前記に同じ。)を示し、mi+miiの平均値は2~8、ni+niiの平均値は4~16である。)]
と、下記式(1)
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはエチレン基、Rはアルキル基、Arはナフタレン環、aは1、bは0又は1以上の整数を示し、基[-O-(RO)-CO-CR=CH]の結合位置が、Arで表されるナフタレン環の2-位である。)
で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートとを含む硬化性組成物。
【請求項2】
第1の単官能性(メタ)アクリレートが、2-(2-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレートである請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
多官能性(メタ)アクリレートが、下記式(2)
【化5】
(式中、環Z及びZ並びに環Z及びZはアレーン環、R4a及びR4b並びにR5a及びR5bはそれぞれ同一又は異なる非反応性置換基、R6a及びR6bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R7a及びR7bは水素原子又はメチル基、k1及びk2は0又は1以上の整数、m1及びm2は0又は1以上の整数、n1及びn2は0又は1以上の整数、p1及びp2は1以上の整数を示す。)
で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレート、脂環族又は芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも1種の高粘度多官能性(メタ)アクリレートを含み、前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが、下記式(3)
【化6】
(式中、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、2つのRは互いに結合して、アルキル基を有してもよい炭化水素環を形成してもよく、R9a及びR9bはそれぞれアルキル基又はアリール基、R10a及びR10bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R11a及びR11bは水素原子又はメチル基、q1及びq2は0~4の整数、r1及びr2は0、tは0又は1を示す。)
で表される芳香族エポキシ(メタ)アクリレートである請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
多官能性(メタ)アクリレートが、式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートと、ウレタン(メタ)アクリレートとを少なくとも含む請求項3記載の硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートを含む請求項3又は4記載の硬化性組成物。
【請求項6】
式(2)において、環Z及びZ並びに環Z及びZがそれぞれベンゼン環又はナフタレン環、k1及びk2が0、R5a及びR5bがC1-6アルキル基又はC6-10アリール基、m1及びm2が0又は1~2の整数、R6a及びR6bが直鎖状C2-6アルキレン基、n1及びn2が1~10の整数、p1及びp2が1であり、
ウレタン(メタ)アクリレートが、ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレート又はポリカーボネート型ウレタン(メタ)アクリレートである請求項3~5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
多官能性(メタ)アクリレートの粘度(25℃)が、3000mPa・s以上である請求項1~6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
多官能性(メタ)アクリレートと、第1の単官能性(メタ)アクリレートとの割合が、前者/後者(重量比)=80/20~5/95である請求項1~7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートと、ウレタン(メタ)アクリレートとの割合が、前者/後者(重量比)=50/50~99/1である請求項4~8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
高粘度多官能性(メタ)アクリレートと、ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートとの割合が、前者/後者(重量比)=50/50~99/1である請求項5~9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、アルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート及びアリールチオアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の硫黄原子を含有する第2の単官能性(メタ)アクリレートを含み、かつ第1の単官能性(メタ)アクリレートと、第2の単官能性(メタ)アクリレートとの割合が、前者/後者(重量比)=80/20~20/80である請求項1~10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
さらに、下記式(4)
【化7】
(式中、R12は水素原子又はメチル基、R13はアルキレン基、R14はアルキル基、Arはベンゼン環又は環集合アレーン環、cは1~4の整数、dは0又は1以上の整数を示す。)
で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートを含み、かつ第1の単官能性(メタ)アクリレートと、第3の単官能性(メタ)アクリレートとの割合が、前者/後者(重量比)=80/20~20/80である請求項1~11のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項13】
さらに、重合開始剤を含む請求項1~12のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載の硬化性組成物に、活性エネルギーを与えて硬化させ、請求項14記載の硬化物を製造する方法。
【請求項16】
多官能性(メタ)アクリレートの反応性希釈剤であって、請求項1又は2記載の第1の単官能性(メタ)アクリレートを含む反応性希釈剤
【請求項17】
さらに、請求項11記載の第2の単官能性(メタ)アクリレートを含む請求項16記載の反応性希釈剤
【請求項18】
多官能性(メタ)アクリレートに、請求項1又は2記載の第1の単官能性(メタ)アクリレートを添加して、多官能性(メタ)アクリレートの粘度を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率の硬化物を形成可能な新規な硬化性組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合反応により、3次元網目構造を有する硬化物を形成するので、分子内に複数(2以上)の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートが様々な分野で利用されている。なかでも、フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートは、フルオレン骨格(例えば、9,9-ビスアリールフルオレン骨格など)に由来する優れた光学的特性(例えば、高屈折率、高透明性など)などを有しているため、光学材料として利用されている。フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートとして、代表的には、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレンなどが知られている。しかし、多官能性(メタ)アクリレート(特に、フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート)は、比較的高粘度である場合が多く、ハンドリング性改善のために、通常、単官能性(メタ)アクリレートなどの反応性希釈剤と混合して使用される。
【0003】
例えば、国際公開第2013/022065号(特許文献1)には、オキシアルキレン基の付加数の平均値を特定の範囲に調整した9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシフェニル]フルオレンと、そのフルオレン化合物を含む硬化性組成物及びそれらの硬化物とが開示されている。このフルオレン骨格を有する化合物及びそれを含む硬化性組成物は、ハンドリング性及び硬化性に優れ、硬化物においては、高い屈折率と、耐スクラッチ性とを両立できることが記載されている。特に、芳香族(メタ)アクリレートであるアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールオキシC1-10アルキル(メタ)アクリレートなど]は、高屈折率と優れたハンドリング性とをバランスよく両立でき、耐スクラッチ性を効率よく維持できる単官能性(メタ)アクリレートであることも記載されている。この文献の実施例では、9,9-ビス[4-((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレン(1分子に付加するエトキシ基の平均個数10.9)と、芳香族アクリレート(例えば、フェノキシエチルアクリレートなど)などの多種多様な単官能性又は多官能性アクリレートとを含む硬化性組成物を調製している。これらの硬化性組成物及びその硬化物は、高いハンドリング性を有し、硬化物において高い屈折率及び耐スクラッチ性を示すものの、光学材料の分野においては、さらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/022065号(請求の範囲、段落[0013][0107][0111][0112]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、反応性希釈剤を含有しても、高い屈折率の硬化物を形成可能な新規硬化性組成物、その硬化物、及び前記硬化物の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、高いハンドリング性(低粘性)を有し、かつ高屈折率を有する硬化物を形成可能な新規硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、優れた耐スクラッチ性(柔軟性)をも有する硬化物を形成可能な硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、高粘度の多官能性(メタ)アクリレートであっても、有効に低粘度化できる方法及び低粘度化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、多官能性(メタ)アクリレートと、反応性希釈剤としての縮合多環式アリール基を有する単官能性(メタ)アクリレートとを組み合わせると、反応性希釈剤を含有しても、高い屈折率を有する硬化物を形成できること、前記単官能性(メタ)アクリレートが室温で固体であっても、高粘度の多官能性(メタ)アクリレートを低粘度化できハンドリング性を改善できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートと、下記式(1)で表される新規な第1の単官能性(メタ)アクリレートとを含む。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、Rはアルキル基、Arは縮合多環式アレーン環、aは1~4の整数、bは0又は1以上の整数を示す。)
多官能性(メタ)アクリレートと、前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者(重量比)=99/1~1/99(例えば、80/20~5/95など)程度であってもよい。前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートは、縮合多環式C10-14アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。
【0013】
多官能性(メタ)アクリレートは、下記式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、環Z及びZ並びに環Z及びZはアレーン環、R4a及びR4b並びにR5a及びR5bはそれぞれ同一又は異なる非反応性置換基、R6a及びR6bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R7a及びR7bは水素原子又はメチル基、k1及びk2は0又は1以上の整数、m1及びm2は0又は1以上の整数、n1及びn2は0又は1以上の整数、p1及びp2は1以上の整数を示す。)
で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレート、脂環族又は芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも1種の高粘度多官能性(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
【0016】
前記式(2)において、環Z及びZ並びに環Z及びZはそれぞれベンゼン環又はナフタレン環であってもよく、k1及びk2は0であってもよく、R5a及びR5bはC1-6アルキル基又はC6-10アリール基であってもよく、m1及びm2は0又は1~2の整数であってもよく、R6a及びR6bは直鎖状C2-6アルキレン基であってもよく、n1及びn2は1~10の整数であってもよく、p1及びp2は1であってもよい。
【0017】
また、多官能性(メタ)アクリレートは、式(2)で表されるフルオレン(メタ)アクリレートと、ウレタン(メタ)アクリレートとを少なくとも含んでいてもよい。式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートと、ウレタン(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者(重量比)=50/50~99/1程度であってもよい。
【0018】
さらに、前記多官能性(メタ)アクリレートは、前記高粘度多官能性(メタ)アクリレートに加えて、ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記高粘度多官能性(メタ)アクリレートと、ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者(重量比)=50/50~99/1程度であってもよい。
【0019】
芳香族エポキシ(メタ)アクリレートは、下記式(3)で表される芳香族エポキシ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、2つのRは互いに結合して、アルキル基を有してもよい炭化水素環を形成してもよく、R9a及びR9bはそれぞれアルキル基又はアリール基、R10a及びR10bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R11a及びR11bは水素原子又はメチル基、q1及びq2は0~4の整数、r1及びr2は0又は1以上の整数、tは0又は1を示す。)
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート型ウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。
【0022】
また、多官能性(メタ)アクリレートの粘度(25℃)は、高粘度、例えば、3000mPa・s以上であってもよい。
【0023】
前記硬化性組成物は、さらに、アルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート及びアリールチオアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の第2の単官能性(メタ)アクリレート(硫黄原子含有単官能性(メタ)アクリレート)を含んでいてもよい。前記第1の単官能性(メタ)アクリレートと、第2の単官能性(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者(重量比)=80/20~20/80程度であってもよい。
【0024】
前記硬化性組成物は、さらに、下記式(4)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、R12は水素原子又はメチル基、R13はアルキレン基、R14はアルキル基、Arはベンゼン環又は環集合アレーン環、cは1~4の整数、dは0又は1以上の整数を示す。)
前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートと、前記式(3)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者(重量比)=80/20~20/80程度であってもよい。
【0027】
前記硬化性組成物は、さらに、重合開始剤を含んでいてもよい。
【0028】
本発明は、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も含み、さらに、前記硬化性組成物に、活性エネルギーを与えて硬化させ、前記硬化物を製造する方法も包含する。
【0029】
また、本発明は、多官能性(メタ)アクリレートを低粘度化するための低粘度化剤であって、前記第1の単官能性(メタ)アクリレートを含む低粘度化剤も含む。前記低粘度化剤は、さらに、前記第2の単官能性(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
【0030】
本発明は、多官能性(メタ)アクリレートに前記第1の単官能性(メタ)アクリレートを添加して、多官能性(メタ)アクリレートの粘度を低減する方法も含む。
【0031】
また、本発明は、新規な化合物である前記第1の単官能性(メタ)アクリレートも包含する。
【0032】
なお、本明細書中、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を意味する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートと、縮合多環式アリール基を有する単官能性(メタ)アクリレート(第1の単官能性(メタ)アクリレート)とを含むため、反応性希釈剤(単官能性(メタ)アクリレートなど)を含有しても、高い屈折率の硬化物を形成できる。そのため、高価な多官能性(メタ)アクリレートの使用量を有効に低減できる。また、第1の単官能性(メタ)アクリレートは、低粘度化剤として機能させることができ、前記硬化性組成物のハンドリング性(低粘性)を向上し、かつ高い屈折率の硬化物を形成することもできる。さらに、前記硬化物は、高屈折率と耐スクラッチ性(柔軟性)とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、比較例1~5及び実施例1~5の組成物の希釈剤配合割合に対する硬化前屈折率を示すグラフである。
図2図2は、比較例1~5及び実施例2~5の組成物の希釈剤配合割合に対する粘度を示すグラフである。
図3図3は、BPEFA/反応性希釈剤配合系において、目標屈折率を達成する組成物の粘度(計算値)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートと、反応性希釈剤としての縮合多環式アリール基を有する第1の単官能性(メタ)アクリレートとを含む。この第1の単官能性(メタ)アクリレートは、新規化合物である。
【0036】
<縮合多環式アリール基を有する第1の単官能性(メタ)アクリレート>
縮合多環式アリール基を有する第1の単官能性(メタ)アクリレートは、下記式(1)で表される化合物である。
【0037】
【化5】
【0038】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、Rはアルキル基、Arは縮合多環式アレーン環、aは1~4の整数、bは0又は1以上の整数を示す。)
前記式(1)において、基Rは水素原子又はメチル基である。また、基Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であり、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状C2-6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。これらの基Rのうち、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基など)、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基(特にエチレン基、プロピレン基)であってもよい。基(RO)の繰り返し数aは、1~4程度の整数から選択でき、例えば、1~3程度の整数、好ましくは1又は2、さらに好ましくは1であってもよい。繰り返し数aが大きすぎると、硬化物の屈折率が低下するおそれがある。なお、aが2以上である場合、2以上の基Rは、同一又は異なっていてもよい。
【0039】
前記式(1)において、環Arは縮合多環式アレーン環であり、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい環Arとしては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環(好ましくは縮合多環式C10-14アレーン環)が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。前記式(1)において、環Arに対する基[-O-(RO)-CO-CR=CH]の結合位置は特に制限されず、例えば、環Arがナフタレン環である場合には、1-位、2-位のいずれの位置に結合していてもよいが、2-位に結合しているのが好ましい。
【0040】
前記式(1)において、基Rはアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-9アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基)などが挙げられる。基Rの置換数bは0又は1以上の整数であればよく、例えば、0~4程度の整数、好ましくは0~2程度の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。なお、bが2以上である場合、2以上の基Rの種類はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。また、基Rの置換位置は特に制限されず、例えば、環Arがナフタレン環であり、基[-O-(RO)-CO-CR=CH]が2-位に結合している場合、2-ナフチル基の1-位及び3-位乃至8-位のうちのいずれの位置に置換していてもよい。
【0041】
前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートの代表例としては、例えば、前記式(1)において、a=1及びb=0である化合物、すなわち、縮合多環式アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの縮合多環式C10-14アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(1)において、a≧2及びb=0である化合物、すなわち、縮合多環式アリールオキシ(モノ乃至トリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-(2-ナフトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-(2-ナフトキシ)プロポキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの縮合多環式C10-14アリールオキシ(モノ乃至トリ)C2-4アルコキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(1)において、a=1及びb=1である化合物、すなわち、アルキル縮合多環式アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(4-t-ブチル-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC1-12アルキル縮合多環式C10-16アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(1)において、a≧2及びb=1である化合物、すなわち、アルキル縮合多環式アリールオキシ(モノ乃至トリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-(2-(4-t-ブチル-1-ナフトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC1-12アルキル縮合多環式C10-14アリールオキシ(モノ乃至トリ)C2-4アルコキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これらの前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートとしては、前記式(1)において、a=1及びb=0である化合物、すなわち、縮合多環式アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくは、縮合多環式C10-14アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-(2-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのナフトキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。このような前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートは、縮合多環式アリール基を有するためか、硬化性組成物中に多量に混合しても、硬化物における屈折率を保持又は向上でき、かつ粘度低減効果も高い。そのため、例えば、高屈折率かつ低粘度の特性を両立でき、高価な多官能性(メタ)アクリレートの配合割合(又は使用量)を有効に低減できる。また、通常、反応性希釈剤には、使用温度下(例えば、25℃程度の室温下)で高い流動性を示す液状化合物が使用されるが、意外なことに、前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートは、粉体状や粘稠体状などの形態であり、ほとんど流動性を示さない化合物であるにもかかわらず、高粘度な多官能性(メタ)アクリレートを著しく低粘度化できる。そのため、第1の単官能性(メタ)アクリレートは、多官能性(メタ)アクリレートの粘度を低減するための低粘度化剤として機能させることもできる。多官能性(メタ)アクリレートの低粘度化方法においては、少なくとも第1の単官能性(メタ)アクリレートを含む低粘度化剤と、多官能性(メタ)アクリレートとを混合する方法であれば特に制限されず、得られる硬化性組成物を有効に低粘度化でき、かつ屈折率を保持又は向上することもできる。第1の単官能性(メタ)アクリレートと、多官能性(メタ)アクリレートとの配合割合は、後述する硬化性組成物における割合と同様であってもよい。
【0042】
なお、式(1)で表される化合物は、公知の方法(例えば、特開2012-226040号公報(段落[0014])に記載の方法に準ずる方法など)、例えば、ヒドロキシ縮合多環式アレーンのアルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネート付加体を、硫酸、p-トルエンスルホン酸一水和物などのエステル化触媒、ハイドロキノン、4-メトキシフェノールなどの重合禁止剤、及び必要に応じてトルエンなどの溶媒の存在下、(メタ)アクリル酸成分(例えば、(メタ)アクリル酸又はそのエステル形成性誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルなど)など)と反応させる方法などにより調製できる。
【0043】
ヒドロキシ縮合多環式アレーンとしては、例えば、前記式(1)で表される化合物に対応する化合物(例えば、1-ナフトール、2-ナフトールなど)などが例示できる。アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートとしては、前記Rの項に例示したアルキレン基に対応するアルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネート(例えば、エチレンオキサイドなど)などが挙げられる。代表的なヒドロキシ縮合多環式アレーンのアルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネート付加体としては、例えば、2-(2-ナフチルオキシ)エタノール(NEO)、2-(1-ナフチルオキシ)プロパノール、2-(2-(2-ナフチルオキシ)エトキシ)エタノールなどのヒドロキシ(モノ乃至テトラ)C2-4アルコキシ-C10-14縮合多環式アレーンなどが例示できる。
【0044】
多官能性(メタ)アクリレートと、式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートとの割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1~1/99程度の範囲から選択でき、例えば、90/10~3/97、好ましくは80/20~5/95(例えば、70/30~10/90)、さらに好ましくは65/35~13/87(例えば、60/40~17/83)、特に55/45~20/80(例えば、50/50~22/78)程度であってもよい。式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、十分に高屈折率化及び/又は低粘度化できないおそれがある。
【0045】
また、硬化性組成物中の重合性成分全体に対して、多官能性(メタ)アクリレート及び式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートの総量の割合は、例えば、30~100重量%(50~100重量%)、好ましくは60~100重量%(例えば、70~100重量%)、さらに好ましくは80~100重量%(例えば、90~100重量%)程度であってもよく、実質的に100重量%(多官能性(メタ)アクリレートと式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートのみ)で形成されていてもよい。
【0046】
<多官能性(メタ)アクリレート>
前記多官能性(メタ)アクリレートは、複数(2以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、特に制限されない。1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数は、例えば、2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4(例えば、2)程度であってもよい。(メタ)アクリロイル基の数が多すぎると、硬化物の耐スクラッチ性が低下するおそれがある。
【0047】
代表的な多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート;脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート[例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどのジ(メタ)アクリレートなど];脂環族エポキシ(メタ)アクリレート;芳香族エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど];ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど];ビフェノール類若しくはビスフェノール類(又はそれらのアルキレンオキサイド付加体)のジ(メタ)アクリレート;3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物のポリ(メタ)アクリレート[例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
これらの多官能性(メタ)アクリレートのうち、比較的高粘度の(メタ)アクリレートであっても、第1の単官能性(メタ)アクリレートにより、有効に低粘度化できる。そのため、多官能性(メタ)アクリレートは、室温下(例えば、25℃)で粘稠体又は固体であってもよい。多官能性(メタ)アクリレートの粘度(25℃)は、例えば、1000mPa・s以上、好ましくは3000mPa・s以上、さらに好ましくは5000mPa・s以上であってもよい。前記粘度の上限値は特に制限されず、例えば、後述する実施例に記載の粘度計の測定限界値(例えば、352Pa・s)程度を超えていてもよい。前記多官能性(メタ)アクリレートのうち、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート(例えば、式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートなど)、脂環族エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。これらの高粘度多官能性(メタ)アクリレートのうち、通常、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート(例えば、式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートなど)、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが使用されることが多い。
【0049】
9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートは、光学的特性(例えば、高屈折率、低複屈折、透明性など)、機械的特性、耐熱性などの種々の特性に優れるため、得られる硬化物の特性を向上するのに適している。なお、本明細書において、「9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する」とは、分子構造中に少なくとも9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含むことを意味し、前記骨格のフルオレン環を形成する2つのベンゼン環のうち、少なくとも一方にアレーン環が縮合した骨格(例えば、ビスアリールベンゾフルオレン骨格、ビスアリールジベンゾフルオレン骨格など)を有することも含む意味に用いる。代表的な9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートは、下記式(2)で表される化合物(フルオレン骨格含有(メタ)アクリレートという場合がある。)であってもよい。
【0050】
【化6】
【0051】
(式中、環Z及びZ並びに環Z及びZはアレーン環、R4a及びR4b並びにR5a及びR5bはそれぞれ同一又は異なる非反応性置換基、R6a及びR6bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R7a及びR7bは水素原子又はメチル基、k1及びk2は0又は1以上の整数、m1及びm2は0又は1以上の整数、n1及びn2は0又は1以上の整数、p1及びp2は1以上の整数を示す。)
前記式(2)において、環Z及びZで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0052】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、前記式(1)の環Arに関する記載で例示した縮合多環式アレーン環などが挙げられ、好ましい態様も前記環Arと同様である。
【0053】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環など)などが例示できる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6-10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
【0054】
フルオレンの9-位に結合する2つの環Z及びZは、同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Z及びZのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などが好ましく、特にベンゼン環が好ましい。
【0055】
なお、フルオレンの9-位に結合する環Z及びZの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z及びZがナフタレン環の場合、フルオレンの9-位に結合する環Z及びZに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。また、環Z及びZがビフェニル環の場合、フルオレンの9-位に結合する環Z及びZに対応する基は、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基などであってもよい。
【0056】
前記式(2)において、環Z及びZで表されるアレーン環としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式アレーン環としては、例えば、前記式(1)の環Arに関する記載で例示した縮合多環式アレーン環などが挙げられ、好ましい態様も前記環Arと同様である。これらのアレーン環のうち、好ましい環Z及びZとしては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。
【0057】
環Z及びZは、その間に介在する5員環とともに縮合環骨格を形成し、例えば、環Z及びZのうち、一方がベンゼン環、他方がナフタレン環であるベンゾフルオレン骨格、双方がナフタレン環であるジベンゾフルオレン骨格などを形成してもよい。なお、環Z及びZが縮合多環式アレーン環である場合、環Z及びZと、その間に介在する5員環との結合位置(又は、環Z及びZにおいて、前記5員環と共有する2つの隣接した炭素原子の位置)は、結合(又は共有)可能である限り、特に制限されず、例えば、ナフタレン環の1,2-位、2,3-位、又は3,4-位のいずれかの位置の炭素原子を前記5員環と共有していてもよい。すなわち、環Z及びZのうち、一方がナフタレン環、他方がベンゼン環である場合、及び双方がナフタレン環である場合の前記式(2)における縮合環骨格構造(但し、R4a及びR4b、k1及びk2は省略している)は、下記式(a)~(i)で表される構造のいずれかであってもよい。
【0058】
【化7】
【0059】
特に好ましい環Z及びZはベンゼン環であり、環Z及びZ並びにその間に介在する5員環が形成する縮合環骨格としては、環Z及びZの双方がベンゼン環であるフルオレン骨格が特に好ましい。
【0060】
前記式(2)において、非反応性置換基(又は非ラジカル重合性置換基)R4a及びR4bとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基など)など]、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。
【0061】
これらの基R4a及びR4bのうち、アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基(特に、メチル基などのC1-3アルキル基))、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、特にアルキル基が好ましい。
【0062】
基R4a及びR4bの置換数k1及びk2は、0又は1以上の整数であり、環Z及びZに応じて選択できる。置換数k1及びk2は、通常、0~6程度の整数から選択でき、例えば、0~4(例えば、0~3)程度の整数、好ましくは0~2程度の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、環Z及びZにおける置換数k1及びk2は、互いに同一又は異なっていてもよく、基R4a及びR4bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。k1及びk2が2以上である場合、それぞれの環Z及びZ内における2以上の基R4a及びR4bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R4a及びR4bの置換位置は、特に制限されず、例えば、環Z及びZと、その間に介在する5員環とがフルオレン環を形成する場合、フルオレン環の2-位乃至7-位(2-位、3-位及び7-位など)であってもよい。
【0063】
前記式(2)において、非反応性置換基(又は非ラジカル重合性置換基)R5a及びR5bとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭化水素基{例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基など);アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基など];アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)など}、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオなど)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など)アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1-6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジ(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基など)など]などが例示できる。
【0064】
これらの基R5a及びR5bのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい基R5a及びR5bとしては、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6-14アリール基など)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基など)が挙げられる。なお、基R5a及びR5bがアリール基であるとき、基R5a及びR5bは、環Z及びZとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。なお、基R5a及びR5bの種類は、同一又は異なっていてもよい。置換数m1及びm2が2以上である場合、同一の環Z及びZに置換する2以上の基R2a及びR2bの種類は、同一又は異なっていてもよい。
【0065】
基R5a及びR5bの置換数m1及びm2は、0又は1以上の整数であればよく、環Z及びZの種類に応じて適宜選択できる。例えば、0~8程度の整数であってもよく、好ましくは0~4(例えば、0~3)程度の整数、さらに好ましくは0~2程度の整数(例えば、0又は1)、特に0であってもよい。なお、置換数m1及びm2は、互いに同一又は異なっていてもよい。特に、m1及びm2が1である場合、環Z及びZがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、基R5a及びR5bがメチル基であってもよい。また、基R5a及びR5bの置換位置は、特に制限されず、基[-(OR6an1-OC(=O)-CR7a=CH]及び基[-(OR6bn2-OC(=O)-CR7b=CH](この2つの基を、(メタ)アクリロイル基含有基という場合がある)の置換位置以外の位置に置換していればよい。
【0066】
前記式(2)において、アルキレン基R6a及びR6bには、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれる。代表的なアルキレン基R6a及びR6bには、例えば、前記式(1)の基Rに関する記載において例示した直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などが挙げられ、好ましい態様も基Rと同様である。なお、同一の又は異なる環Z及びZに置換したそれぞれの(メタ)アクリロイル基含有基間において、アルキレン基R6a及びR6bの種類は、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。また、繰り返し数n1及びn2が2以上である場合、同一の(メタ)アクリロイル基含有基内のアルキレン基R6a及びR6bの種類は、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0067】
オキシアルキレン基(OR6a及びOR6b)の繰り返し数n1及びn2は、0又は1以上の整数(例えば、0~20程度の整数)の範囲から選択でき、例えば、1~15程度の整数、好ましくは1~10(例えば、2~8)程度の整数、さらに好ましくは3~7(例えば、4~6)程度の整数であってもよい。また、同一の又は異なる環Z及びZに置換したそれぞれの(メタ)アクリロイル基含有基において、n1及びn2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。なお、本明細書中において、特に断りのない限り、「オキシアルキレン基の繰り返し数」(及び後述する「オキシアルキレン基の合計数(合計付加数)」)とは、化合物1分子中におけるオキシアルキレン基の数(整数)、及び化合物の分子集合体におけるオキシアルキレン基の個数の平均値(又は相加平均値、算術平均値)[すなわち、平均付加モル数]の双方を含む意味に用いる。そのため、繰り返し数n1及びn2は、前記式(2)で表される化合物の分子集合体における平均値(相加平均又は算術平均)であってもよく、その範囲は、前記整数の範囲と同等程度であってもよい。
【0068】
また、繰り返し数n1及びn2の合計数は、前記式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレート1分子中のオキシアルキレン基の合計数(合計付加数)を意味し、単にn1+n2という場合がある。なお、n1+n2は、p1及び/又はp2が2以上である場合、p1及びp2の数だけ存在する全てのn1及びn2の合計数を意味する。n1+n2は、例えば、0~30程度の整数の範囲から選択でき、例えば、1~25(例えば、2~20)程度の整数、好ましくは3~18(例えば、4~16)程度の整数、さらに好ましくは5~14(例えば、6~12)程度の整数、特に7~11(例えば、8~10)程度の整数であってもよい。また、n1+n2は前記のように整数であってもよいが、前記式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートの分子集合体における平均付加モル数であってもよく、その範囲は、例えば、前記整数の範囲と同等程度であってもよい。n1+n2の値が小さすぎると、硬化性組成物の粘度が上昇し易く、ハンドリング性が低下するおそれがある。また、硬化物の耐スクラッチ性も低下するおそれがある。しかし、本発明では、前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートを多量に混合しても屈折率を保持又は向上できるため、比較的n1+n2の値が小さくても、有効にハンドリング性を向上(粘度を低下)できる。n1+n2の値が大きすぎると、硬化物の単位量(例えば、単位重量)当たりの9,9-ビスアリールフルオレン骨格含有量(例えば、含有モル数)も低下するため、前記骨格に由来する高屈折率、高耐熱性などの優れた特性が低下するおそれがある。なお、n1+n2は、慣用の方法で測定することができ、例えば、前記式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートの調製において、原料となる9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するヒドロキシ化合物の量と、反応で消費されるアルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートの量との割合から、相加平均又は算術平均の値として算出する方法(例えば、特許文献1記載の方法など)などにより測定できる。
【0069】
前記式(2)において、基R7a及びR7bは、水素原子又はメチル基である。同一の又は異なる環Z及びZに置換したそれぞれの(メタ)アクリロイル基含有基において、基R7a及びR7bはそれぞれ同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
【0070】
前記式(2)において、(メタ)アクリロイル基含有基の置換数p1及びp2は、1以上の整数であり、例えば、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、さらに好ましくは1又は2(特に1)であってもよい。p1及びp2が大きすぎると、耐スクラッチ性が低下するおそれがある。なお、置換数p1及びp2は、それぞれの環Z及びZにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0071】
(メタ)アクリロイル基含有基は、環Z及びZの適当な位置に置換でき、例えば、環Z及びZがベンゼン環である場合には、2~6-位の適当な位置に置換でき、p1及びp2が1である場合、フェニル基の2-位、3-位、4-位(特に、3-位又は4-位)のいずれかの位置に置換している場合が多い。p1及びp2が2である場合、2-位及び4-位、3-位及び4-位、3-位及び5-位(特に、3-位及び5-位)などに置換している場合が多い。p1及びp2が3以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環Z及びZがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5~8-位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、p1及びp2が1である場合、フルオレンの9-位に対してナフタレン環の1-位又は2-位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5-位、2,6-位などの関係(特に2,6-位の関係)で(メタ)アクリロイル基含有基が置換している場合が多い。また、p1及びp2が2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Z及びZにおいて、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、特に限定されず、例えば、p1及びp2が1である場合、フルオレンの9-位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Z及びZの3-位又は4-位がフルオレンの9-位に結合していてもよい。ビフェニル環Z及びZの3-位がフルオレンの9-位に結合しているとき、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、ビフェニル環の2-位、4-位、5-位、6-位、2’-位、3’-位、4’-位のいずれであってもよく、通常、6-位、3’-位、4’-位、好ましくは6-位、4’-位のいずれかの位置(特に、6-位)に置換していてもよい。ビフェニル環Z及びZの4-位がフルオレンの9-位に結合しているとき、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、ビフェニル環の2-位、3-位、2’-位、3’-位、4’-位のいずれであってもよく、通常、2-位、3’-位、4’-位、好ましくは2-位、4’-位のいずれかの位置(特に、2-位)に置換していてもよい。また、p1及びp2が2以上である場合、置換位置は特に限定されない。
【0072】
前記式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートとして、代表的には、前記式(2)において、環Z及びZがベンゼン環である化合物、すなわち、下記式(2a)
【0073】
【化8】
【0074】
(式中、環Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、R6a及びR6b、R7a及びR7b、k1及びk2、m1及びm2、n1及びn2、並びにp1及びp2は、好ましい態様も含めて前記式(2)に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。より具体的には、前記式(2a)において、p1及びp2が1であるフルオレン類、例えば、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレン類、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン類、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシナフチル]フルオレン類、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン類などが挙げられる。なお、これらのフルオレン類は、それぞれ対応する9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシアリール]フルオレン骨格又は9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン骨格を有する限り、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環、及び/又は環Z及びZに非反応性置換基を有する化合物(前記式(2a)において、k1及びk2、及び/又はm1及びm2が1以上である化合物)も含む意味に用いる。
【0075】
9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレン類としては、前記式(2a)において、環Z及びZがベンゼン環、n1及びn2が0、p1及びp2が1である化合物、例えば、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレンなど);9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ-モノ又はジアルキルフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシ-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシ-3-t-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシ-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ-モノ又はジC1-4アルキルフェニル]フルオレンなど);9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ-アリールフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシ-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ-C6-10アリールフェニル]フルオレンなど)などが挙げられる。
【0076】
9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン類としては、前記式(2a)において、環Z及びZがベンゼン環、n1及びn2が1~10(好ましくは1~6)、p1及びp2が1である化合物、例えば、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレン);9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ-モノ又はジアルキルフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-3-t-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-モノ又はジC1-4アルキルフェニル]フルオレンなど);9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-C6-10アリールフェニル]フルオレンなど)などが挙げられる。
【0077】
9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシナフチル]フルオレン類としては、前記式(2a)において、環Z及びZがナフタレン環、n1及びn2が0、p1及びp2が1である化合物、例えば、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシナフチル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[6-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(メタ)アクリロイルオキシ-1-ナフチル]フルオレンなど)などが挙げられる。
【0078】
9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン類としては、前記式(2a)において、環Z及びZがナフタレン環、n1及びn2が1~10(好ましくは1~6)、p1及びp2が1である化合物、例えば、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[6-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシナフチル]フルオレンなど)などが挙げられる。
【0079】
これらのフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましいフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートとしては、前記式(2a)において、環Z及びZがベンゼン環、n1及びn2が1~10(好ましくは1~6)、p1及びp2が1である化合物、例えば、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン類などが挙げられ、なかでも、9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレン);9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ-モノ又はジアルキルフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-3-t-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-モノ又はジC1-4アルキルフェニル]フルオレンなど);9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレン(例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-C6-10アリールフェニル]フルオレンなど)などが好ましい。
【0080】
また、これらのフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートは、市販品を使用してもよく、慣用の方法(例えば、特許文献1記載の方法など)により調製してもよい。
【0081】
脂環族エポキシ(メタ)アクリレートは、少なくとも1つの脂環式炭化水素環(脂肪族性環)を有する多官能性エポキシ(メタ)アクリレートであればよく、脂肪族性環としては、例えば、C5-8シクロアルカン環(例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環など)、C7-10ビ又はトリシクロアルカン環(例えば、ノルボルナン環、アダマンタン環など)などが挙げられる。代表的な脂環族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのC5-10脂肪族性環を有するエポキシ化合物のジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの脂環族エポキシ(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0082】
芳香族エポキシ(メタ)アクリレートは、少なくとも芳香族性環を有している多官能性エポキシ(メタ)アクリレートであればよく、芳香族性環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などのC10-14縮合多環式アレーン環などが例示できる。芳香族エポキシ(メタ)アクリレートは、前記芳香族性環を有するため、高屈折率な硬化物を得るのに適している。代表的な芳香族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビフェノール類若しくはビスフェノール類(又はそれらのアルキレンオキサイド付加体)のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂のポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの芳香族エポキシ(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0083】
好ましい芳香族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビフェノール類若しくはビスフェノール類(又はそれらのアルキレンオキサイド付加体)のジグリシジルエーテル(エポキシ化合物)のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。前記ビフェノール類としては、例えば、p,p‘-ビフェノール、m,m’-ビフェノール、o,o’-ビフェノールなどが挙げられる。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールSなどの汎用のビスフェノール類などが挙げられる。前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのC2-4アルキレンオキサイド、好ましくはC2-3アルキレンオキサイドなどが例示できる。なお、前記アルキレンオキサイド付加体は、例示したアルキレンオキサイドに対応するアルキレンカーボネートの付加体であってもよい。
【0084】
代表的なビフェノール類若しくはビスフェノール類(又はそれらのアルキレンオキサイド付加体)のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートとしては、下記式(3)で表される芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが例示できる。
【0085】
【化9】
【0086】
(式中、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、2つのRは互いに結合して、アルキル基を有してもよい炭化水素環を形成してもよく、R9a及びR9bはそれぞれアルキル基又はアリール基、R10a及びR10bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R11a及びR11bは水素原子又はメチル基、q1及びq2は0~4の整数、r1及びr2は0又は1以上の整数、tは0又は1を示す。)
前記式(3)において、Rのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基(特にメチル基)などであってもよい。Rのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6-10アリール基(特にフェニル基)などであってもよい。Rの種類は、同一又は異なっていてもよい。また、2つのRは互いに結合して形成してもよい炭化水素環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などのC5-8シクロアルカン環などであってもよい。炭化水素環に置換していてもよいアルキル基としては、例えば、上記Rのアルキル基の項に例示したアルキル基などが挙げられ、好ましい態様も含めて同様であってもよい。炭化水素環に置換するアルキル基の置換数及び置換位置は特に制限されない。前記置換数は、例えば、0~3の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。前記置換位置は、炭化水素環がシクロヘキサン環である場合、例えば、3-位~5-位のいずれかの位置に置換していてもよい。
【0087】
9a及びR9bは、Rの項において例示したアルキル基、アリール基などが挙げられ、好ましい態様を含めて同様であってもよい。R9a及びR9bの置換数q1及びq2は、0~4の整数であり、例えば、0~3の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。また、R9a及びR9bの種類、同一又は異なっていてもよく、q1及びq2が2以上である場合、同一のベンゼン環に結合する2以上のR9a及びR9bの種類、同一又は異なっていてもよい。R9a及びR9bの置換位置は特に制限されず、ベンゼン環のいずれの位置(2-位、3-位など)に置換していてもよい。
【0088】
10a及びR10bで表される直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基としては、前記式(1)のR(及び前記式(2)のR6a及びR6b)の項において例示した直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などが挙げられ、好ましい態様も含めて同様である。なお、R10a及びR10bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、オキシアルキレン基(OR10a及びOR10b)の繰り返し数r1及びr2が2以上である場合、2以上のR10a及びR10bの種類は、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0089】
前記r1及びr2、並びにr1及びr2の合計数[オキシアルキレン基の合計数(合計付加数)、単にr1+r2という場合がある。]は、前記式(2)のn1及びn2、並びにn1+n2の項において例示した値(整数又は平均値)と、好ましい態様も含めて同様である。r1+r2の値が小さすぎると、硬化性組成物の粘度が上昇し易く、ハンドリング性が低下するおそれがある。しかし、本発明では、前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートを多量に混合しても屈折率を保持又は向上できるため、比較的r1+r2の値が小さくても、有効にハンドリング性を向上(粘度を低下)できる。r1+r2の値が大きすぎると、芳香族性環含有量(例えば、含有モル数)も低下するため、高屈折率などの優れた特性が低下するおそれがある。なお、r1+r2は、前記式(2)のn1+n2の項において例示した方法を参考に測定してもよい。
【0090】
11a及びR11bは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
【0091】
tは0又は1であり、1であるのが好ましい。
【0092】
代表的な前記式(3)で表される芳香族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記式(3)において、t=0である化合物(例えば、p,p’-ビフェノールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなど);前記式(3)において、q1=q2=0、r1=r2=0、t=1である化合物[例えば、2つのRがそれぞれ水素原子又はアルキル基である化合物(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールBなどのビスフェノール類のエポキシ化合物(ジグリシジルエーテル)のジ(メタ)アクリレートなど);2つのRのうち少なくとも一方がアリール基である化合物(例えば、ビスフェノールAP、ビスフェノールBPなどのビスフェノール類のエポキシ化合物のジ(メタ)アクリレートなど);2つのRが互いに結合してアルキル基を有してもよい炭化水素環を形成する化合物(例えば、ビスフェノールZ、ビスフェノールTMCなどのビスフェノール類のエポキシ化合物のジ(メタ)アクリレートなど)など]などが例示できる。
【0093】
前記式(3)で表される芳香族エポキシ(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。前記式(3)で表される芳香族エポキシ(メタ)アクリレートのうち、q1=q2=0、r1=r2=0である化合物、なかでもt=1である化合物が好ましく、特に、2つのRがそれぞれ水素原子又はアルキル基である化合物(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなど)が好ましい。
【0094】
ウレタン(メタ)アクリレートは、主鎖骨格(ウレタンオリゴマー又はウレタンポリマー部分の骨格)が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応物に由来する単位で形成されている。ポリオール成分は、低分子量ポリオール成分(例えば、エチレングリコールなどのアルキレングリコールなど)であってもよいが、硬化物における耐スクラッチ性を向上する観点から、高分子量ポリオール成分であるのが好ましい。なお、高分子量ポリオール成分は、ポリマーであってもよく、繰り返し単位数が比較的少ないオリゴマーであってもよい。高分子ポリオール成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、標準ポリスチレン換算で、例えば、300以上(例えば、400~50000)程度の範囲から選択でき、例えば、500~10000(例えば、600~5000)、好ましくは700~3000(例えば、800~2000)程度であってもよい。ポリオール成分の分子量(重量平均分子量)が低すぎると、硬化物の耐スクラッチ性が低下するおそれがあり、高すぎると、高粘度になりハンドリング性が低下するおそれがある。本発明では、前記第1の単官能性(メタ)アクリレートと組み合わせることにより、比較的高粘度な多官能性(メタ)アクリレートであっても有効に低粘度化できる。
【0095】
高分子量ポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリエーテルポリオール(特に、ポリエーテルジオール)としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド[又はポリアルキレングリコール、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド(テトラヒドロフラン)などのC2-6アルキレンオキサイドの単独又は共重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体などのポリオキシC2-6アルキレングリコールなど、特にポリテトラメチレンエーテルグリコール)など]、ビスフェノールA又は水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体(例えば、ヒドロキシル基1モルに対してC2-4アルキレンオキサイド1~5モル程度が付加した付加体)などが例示できる。これらのポリエーテルポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0096】
ポリエステルポリオール(特に、ポリエステルジオール)としては、ジオール成分とジカルボン酸成分[ジカルボン酸又はその誘導体(例えば、低級アルキルエステル(メチルエステルなどのC1-2アルキルエステルなど)、酸ハライド、酸無水物など]との反応物、ヒドロキシアルカンカルボン酸(3-ヒドロキシ酪酸など)及び/又はラクトン類(ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトンなどのC3-10ラクトン)の単独又は共重合体(ポリ-ε-カプロラクトンなど)、前記ジオール成分とジカルボン酸成分とヒドロキシアルカンカルボン酸及び/又はラクトン類との共重合体などが含まれる。ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸など)、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸などの直鎖状C4-12ジカルボン酸など)、これらのジカルボン酸の誘導体などが挙げられる。また、ジオール成分としては、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルカンジオールなど)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコールなどのポリアルカンジオール)などのポリエーテル系ジオール、脂環族ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなど)などが挙げられる。これらのジオール成分及びジカルボン酸成分は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。具体的なポリエステルポリオールには、末端ヒドロキシル基を有するポリエステルジオール、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレングリコールアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、これらの共重合体などが含まれる。これらのポリエステルポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0097】
ポリカーボネートポリオール(特に、ポリカーボネートジオール)としては、例えば、ポリオール(前記例示の低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなど)と、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネートなど)又はアルキレンカーボネート(例えば、エチレンカーボネートなど)との反応により得られるポリカーボネートジオール(例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール)などが挙げられる。これらのポリオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0098】
ポリイソシアネート成分は、特に限定されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネートなど);脂環族ポリイソシアネート[例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、水添ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)など];芳香脂肪族ポリイソシアネート[例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)など];芳香族ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、p-フェニレンジイソシアネートなど);末端イソシアネート基を有するプレポリマー[例えば、前記例示のポリオール成分(例えば、ジオール成分)と、ポリイソシアネート成分(例えば、ジイソシアネート成分)とが反応したウレタンプレポリマーなど]などが挙げられる。また、ポリイソシアネート成分は、変性体[又は誘導体、例えば、多量体(二量体、三量体(トリイソシアヌレート環など)など)、カルボジイミド体、ビウレット体、アロファネート体、ウレットジオン体、ポリアミン変性体など]であってもよい。これらのポリイソシアネート成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0099】
代表的なウレタン(メタ)アクリレートとしてはポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール成分とするポリカーボネート型ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのウレタン(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのウレタン(メタ)アクリレートは、硬化物の耐スクラッチ性を有効に向上でき、なかでも、ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。
【0100】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、好ましい態様などを含めて、前記と同様のポリエステルポリオールと、(メタ)アクリル酸との反応により調製できる。硬化物における耐スクラッチ性を向上する観点から、ポリエステルポリオールは、脂肪族モノマー成分{例えば、脂肪族ジオール成分(ブチレングリコールなどのC2-12アルキレングリコールなど)及び脂肪族ジカルボン酸成分[アジピン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルカンカルボン酸又はその誘導体(酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル)など]、脂肪族ラクトン成分(ε-カプロラクトンなど)、脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(3-ヒドロキシ酪酸、5-ヒドロキシ吉草酸など)など}に由来する単位で形成されていてもよい。これらのポリエステルポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0101】
なお、脂環族エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートは、市販品を使用してもよい。
【0102】
高粘度多官能性(メタ)アクリレートの含有量は、多官能性(メタ)アクリレート全体に対して、例えば、10重量%以上の範囲から選択でき、例えば、30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上(例えば、80重量%以上)、特に、実質的に100重量%であってもよい。高粘度多官能性(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、有効に低粘度化できなくなるおそれがある。
【0103】
また、これらの高粘度多官能性(メタ)アクリレートは単独で使用してもよく、用途などに応じて、2種以上を組み合わせて使用し、各特性(例えば、屈折率、耐スクラッチ性、耐熱性、機械的特性など)のバランスを調整してもよい。一般に高屈折率の硬化物は剛性が大きく柔軟性に欠ける傾向があるが、本発明では、高屈折率と耐スクラッチ性(柔軟性)とを高いレベルで両立できる。例えば、多官能性(メタ)アクリレートは、高屈折率などの光学的特性に優れた9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート(例えば、前記式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートなど)と、硬化物の耐スクラッチ性に優れたウレタン(メタ)アクリレートとを少なくとも含んでいてもよい。このような多官能性(メタ)アクリレートは、高い屈折率及び優れた耐スクラッチ性をバランスよく備えた硬化物を形成できる。9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート(例えば、式(2)で表されるフルオレン骨格含有(メタ)アクリレートなど)と、ウレタン(メタ)アクリレートとの割合は、例えば、前者/後者(重量比)=50/50~99/1程度の範囲から選択でき、例えば、53/47~90/10、好ましくは55/45~80/20、さらに好ましくは58/42~70/30(例えば、60/40~65/35)程度であってもよい。9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートが少なすぎると、硬化物の屈折率が低下するおそれがある。
【0104】
多官能性(メタ)アクリレートは、高粘度多官能性(メタ)アクリレートに加えて、さらに、ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。このような多官能性(メタ)アクリレートは、硬化性組成物における低粘性と、硬化物における高屈折率及び耐スクラッチ性とをバランスよく向上しやすい。
【0105】
ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートに関して、ビフェノール類、ビスフェノール類、及びアルキレンオキサイドとしては、例えば、前記ビフェノール類若しくはビスフェノール類(又はそれらのアルキレンオキサイド付加体)のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートの項において例示したビフェノール類、ビスフェノール類、及びアルキレンオキサイドなどが挙げられ、好ましい態様なども含めて同様である。アルキレンオキサイド(又はアルキレンカーボネート)の付加に由来するオキシアルキレン基の合計数(合計付加数)(整数又は平均付加モル数)は、例えば、1~30程度の範囲から選択でき、例えば、2~25、好ましくは3~20、さらに好ましくは5~15(例えば、8~12)程度であってもよい。オキシアルキレン基の合計数が低すぎると、耐スクラッチ性を向上できないおそれがある。
【0106】
代表的なビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート[例えば、1モルのp,p’-ビフェノールに対して、エチレンオキサイドが10モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレートなどの1モルのビフェノール類に対してC2-4アルキレンオキサイドが2~25モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレートなど];ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート[例えば、1モルのビスフェノールAに対して、エチレンオキサイドが10モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールFに対して、プロピレンオキサイドが10モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレートなどの1モルのビスフェノール類に対してC2-4アルキレンオキサイドが2~25モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
【0107】
これらのビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートのうち、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートが好ましく、1モルのビスフェノール類に対してC2-3アルキレンオキサイドが3~20モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレート(例えば、1モルのビスフェノールAに対してエチレンオキサイドが10モル程度付加した付加体のジ(メタ)アクリレートなど)がさらに好ましい。なお、これらのビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートは、市販品を使用してもよい。
【0108】
高粘度多官能性(メタ)アクリレートと、ビフェノール類又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートとの割合は、例えば、前者/後者(重量比)=50/50~99/1程度の範囲から選択でき、例えば、53/47~90/10、好ましくは55/45~80/20、さらに好ましくは58/42~70/30(例えば、60/40~65/35)程度であってもよい。ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートの割合が多すぎると、粘度低減の効果が得られなくなるおそれがある。
【0109】
<他の単官能性の重合性成分>
本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレート及び前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートに加え、さらに、他の単官能性の重合性成分(又はモノマー)を含んでいてもよい。硬化性組成物は、他の単官能性の重合性成分を含むことにより、用途に応じて、ハンドリング性(低粘性)や屈折率、耐スクラッチ性(柔軟性)などの特性を、調整又は向上することもできる。他の単官能性の重合性成分としては、重合性基(又は重合性不飽和結合)(例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基など)、(メタ)アクリロイル基など)を1つ有する化合物であればよく、例えば、単官能性ビニル系モノマー[例えば、α-オレフィン系モノマー(例えば、エチレン、プロピレンなど);スチレン系モノマー(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなど);ビニルエステル系モノマー(例えば、酢酸ビニルなど);N-ビニルピロリドンなど]、単官能性(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。これらの単官能性の重合性成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの単官能性の重合性成分のうち、単官能性(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0110】
単官能性(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなど)、(メタ)アクリロニトリルなどであってもよいが、単官能性(メタ)アクリレートが利用されることが多い。
【0111】
単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族単官能性(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのC1-20アルキル(メタ)アクリレートなど];脂環族単官能性(メタ)アクリレート[例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5-10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレートなど];芳香族単官能性(メタ)アクリレート(ただし、前記式(1)で表される単官能性(メタ)アクリレートを含まない。);硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの単官能性(メタ)アクリレートのうち、硬化性組成物のハンドリング性と、硬化物の高い屈折率及び耐スクラッチ性とをバランスよく向上できる点から、硬化性組成物は、硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレート(単に、第2の単官能性(メタ)アクリレートという場合がある。)を含むのが好ましく、第2の単官能性(メタ)アクリレートは、芳香族性環を有していてもよい。また、硬化性組成物のハンドリング性を向上しつつ、硬化物の屈折率をさらに向上できる点から、硬化性組成物は、芳香族単官能性(メタ)アクリレート(単に、第3の単官能性(メタ)アクリレートという場合がある。)を含むのが好ましく、第3の単官能性(メタ)アクリレートは、硫黄原子を有していてもよい。好ましい単官能性(メタ)アクリレートは、芳香族性環を有し、硫黄原子を有する単官能性(メタ)アクリレートであってもよい。
【0112】
硫黄原子を含有する第2の単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキルチオ(メタ)アクリレート(例えば、メチルチオ(メタ)アクリレートなどのC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートなど)、アリールチオ(メタ)アクリレート(例えば、フェニルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオ(メタ)アクリレートなど)、アラルキルチオ(メタ)アクリレート(例えば、ベンジルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートなど)、アリールチオアルキル(メタ)アクリレート(例えば、フェニルチオエチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオC2-6アルキル(メタ)アクリレートなど)などが例示できる。これらの硫黄原子を含有する第2の単官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの硫黄原子を含有する第2の単官能性(メタ)アクリレートのうち、硬化性組成物のハンドリング性と、硬化物における屈折率及び耐スクラッチ性とを特にバランスよく向上できる観点から、アリールチオアルキル(メタ)アクリレートを含むのが好ましく、特に、フェニルチオエチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオC2-4アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。このような硫黄原子を含有する第2の単官能性(メタ)アクリレートは、市販品などを使用してもよい。
【0113】
また、第1の単官能性(メタ)アクリレートと、第2の単官能性(メタ)アクリレートとの割合は、例えば、前者/後者(重量比)=100/0~20/80(例えば、80/20~20/80)程度の範囲から選択でき、例えば、70/30~25/75、好ましくは65/35~30/70(例えば、60/40~35/65)、さらに好ましくは55/45~40/60(例えば、50/50~40/60)程度であってもよい。第1の単官能性(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、ハンドリング性や、硬化物の屈折率が低下するおそれがある。
【0114】
前記芳香族単官能性(メタ)アクリレート(第3の単官能性(メタ)アクリレート)としては、例えば、アリール(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、ビスフェノール類(又はそのアルキレンオキサイド付加体)のモノ(メタ)アクリレート(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体のモノ(メタ)アクリレートなど)、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート(例えば、9-(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレンなど)、下記式(4)
【0115】
【化10】
【0116】
(式中、R12は水素原子又はメチル基、R13はアルキレン基、R14はアルキル基、Arはベンゼン環又は環集合アレーン環、cは1~4の整数、dは0又は1以上の整数を示す。)
で表される単官能性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの第3の単官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第3の単官能性(メタ)アクリレートのうち、硬化性組成物のハンドリング性を向上しつつ、硬化物の屈折率を特に向上できる点から、前記式(4)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。
【0117】
前記式(4)において、基R12は水素原子又はメチル基である。また、基R13は直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であり、例えば、前記基R(並びに基R6a及びR6b)に例示したアルキレン基などが例示でき、好ましい態様も前記基R(並びに基R6a及びR6b)と同様である。基(R13O)の繰り返し数cは、1~4程度の整数から選択でき、例えば、1~3程度の整数、好ましくは1又は2、さらに好ましくは1であってもよい。繰り返し数cが大きすぎると、硬化物の屈折率が低下するおそれがある。なお、cが2以上である場合、2以上の基R13は、同一又は異なっていてもよい。
【0118】
前記式(4)において、環Arはベンゼン環又は環集合アレーン環であり、環集合アレーン環としては、例えば、前記環Z及びZに例示した環集合アレーン環などが例示でき、好ましい態様も前記環Z及びZの環集合アレーン環と同様である。これらの環Arのうち、ベンゼン環又はビフェニル環(特にビフェニル環)が好ましい。前記式(4)において、環Arに対する基[-O-(R13O)-CO-CR12=CH]の結合位置は特に制限されず、例えば、環Arがビフェニル環である場合には、ビフェニル環の2~6-位のいずれかの位置に結合していてもよいが、2-位に結合しているのが好ましい。
【0119】
前記式(4)において、基R14はアルキル基であり、例えば、前記式(1)において、基Rに例示したアルキル基などが挙げられ、好ましい態様も基Rと同様である。基R14の置換数dは0又は1以上の整数であればよく、例えば0~4程度の整数、好ましくは0~2程度の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。なお、dが2以上である場合、2以上の基R14の種類はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。また、基R14の置換位置は特に制限されず、例えば、環Arがベンゼン環であり、基[-O-(R13O)-CO-CR12=CH]の結合位置を1-位として、1-フェニル基の2~6-位のうちのいずれかの位置に置換していてもよく、例えば、3~5-位のうちのいずれかの位置(例えば、4-位)に置換していてもよい。また、環Arがビフェニル環であり、基[-O-(R13O)-CO-CR12=CH]が2-位に結合している場合、2-ビフェニリル基の3~6-位及び2’~6’-位のうちのいずれかの位置に置換していてもよい。
【0120】
前記式(4)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートの代表例としては、例えば、前記式(4)において、c=1及びd=1、かつArがベンゼン環である化合物、すなわち、アルキルフェノキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(ノニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC1-12アルキルフェノキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c=1及びd=1、かつArが環集合アレーン環である化合物、すなわち、アルキル-環集合多環式アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(ノニルビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC1-12アルキルC6-10アリールC6-10アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c≧2及びd=1、かつArがベンゼン環である化合物、すなわち、アルキルフェノキシ(モノ乃至トリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-(ノニルフェノキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC1-12アルキルフェノキシ(モノ乃至トリ)C2-4アルコキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c≧2及びd=1、かつArが環集合アレーン環である化合物、すなわち、アルキル-環集合多環式アリールオキシ(モノ乃至トリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-(ノニルビフェニリルオキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC1-12アルキルC6-10アリールC6-10アリールオキシ(モノ乃至トリ)C2-4アルコキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c=1及びd=0、かつArがベンゼン環である化合物、すなわち、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c=1及びd=0、かつArが環集合アレーン環である化合物、すなわち、環集合多環式アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(m-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(p-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC6-10アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c≧2及びd=0、かつArがベンゼン環である化合物、すなわち、フェノキシ(モノ乃至トリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-フェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-フェノキシプロポキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシ(モノ乃至トリ)C2-4アルコキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど];前記式(4)において、c≧2及びd=0、かつArが環集合アレーン環である化合物、すなわち、環集合多環式アリールオキシ(モノ乃至トリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-(2-(o-フェニルフェノキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-(m-フェニルフェノキシ)プロポキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC6-10アリールオキシ(モノ乃至トリ)C2-4アルコキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
【0121】
これらの前記式(4)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第3の単官能性(メタ)アクリレートとしては、前記式(4)において、c=1及びd=0、かつArが環集合アレーン環である化合物、すなわち、環集合多環式アリールオキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、さらに好ましくは、C6-10アリールC6-10アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのフェニルフェノキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。
【0122】
なお、式(4)で表される化合物は、市販品を使用してもよく、公知の方法、例えば、フェノール又はヒドロキシ環集合多環式アレーンのアルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネート付加体を、硫酸などのエステル化触媒、ハイドロキノンなどの重合禁止剤、及び必要に応じて溶媒の存在下、(メタ)アクリル酸と反応させる方法などにより調製できる。
【0123】
また、式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートと、式(4)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者(重量比)=100/0~20/80(例えば、80/20~20/80)程度の範囲から選択でき、例えば、70/30~25/75、好ましくは65/35~30/70(例えば、60/40~35/65)、さらに好ましくは55/45~40/60(例えば、50/50~43/57)程度であってもよい。式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、ハンドリング性や、硬化物の屈折率が低下するおそれがある。
【0124】
なお、本発明の低粘度化剤においても、第1の単官能性(メタ)アクリレートに加え、さらに、前記他の単官能性の重合性成分[例えば、第2の単官能性(メタ)アクリレート、第3の単官能性(メタ)アクリレート(特に第2の単官能性(メタ)アクリレート)など]を含んでいてもよい。また、他の単官能性の重合性成分は、好ましい態様(代表的な化合物、第1の単官能性(メタ)アクリレートとの割合など)などを含めて前記と同様であってもよい。
【0125】
<重合性成分以外の成分>
(重合開始剤)
硬化性組成物は、重合性成分(又はモノマー成分)の他に、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。
【0126】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物[例えば、ジアルキルパーオキサイド類(例えば、ジ-tert-ブチルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類(例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸(又は過酸エステル)類(例えば、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酢酸tert-ブチルなど)、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類など]、アゾ化合物[例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物など]などが例示できる。これらの熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0127】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(例えば、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなど)、アミノアセトフェノン類{例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1など}、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、2-メチルアントラキノンなど)、チオキサントン類(例えば、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなど)、ケタール類(例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
重合開始剤(熱及び/又は光重合開始剤)の割合は、重合性成分の総量100重量部に対して0.1~15重量部、好ましくは0.5~10重量部(例えば、1~8重量部)、さらに好ましくは2~5重量部程度であってもよい。
【0129】
光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、例えば、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(例えば、トリエタノールアミンなど)、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチル[例えば、p-(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N-ジメチルアミノ安息香酸アミル[例えば、p-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。これらの光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0130】
光増感剤の割合は、前記重合開始剤100重量部に対して、1~200重量部、好ましくは5~150重量部、さらに好ましくは10~100重量部程度であってもよい。
【0131】
(溶媒)
また、硬化性組成物は、必用に応じて、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など);ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなど);エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など);ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など);エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など);グリコールエーテルアセテート類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類など);スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど);アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなど);ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせた混合溶媒として使用することもできる。
【0132】
(他の添加剤)
さらに、硬化性組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、重合禁止剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0133】
<硬化物>
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー(又は活性エネルギー線)を付与することで容易に硬化し、硬化物を生成する。前記活性エネルギーは、熱エネルギー及び/又は光エネルギー(例えば、紫外線、X線など)が有用である。
【0134】
熱エネルギーを利用して加熱処理する場合、加熱温度としては、例えば、50~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~120℃程度であってもよい。
【0135】
また、光エネルギー(例えば、紫外線など)を利用して光照射する場合、光照射エネルギー量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50~10000mJ/cm、好ましくは70~8000mJ/cm、さらに好ましくは100~5000mJ/cm(例えば、500~3000mJ/cm)程度であってもよい。
【0136】
硬化物の形状は、特に制限されず、三次元構造の硬化物(例えば、レンズなど)であってもよく、二次元構造の硬化物(又は硬化膜)(例えば、フィルム、シートなど)、一次元構造の硬化物(例えば、線状、棒状、管状など)であってもよい。
【0137】
硬化物の製造方法は、特に限定されず、例えば、三次元構造又は一次元構造の硬化物の製造方法としては、硬化物の形状に応じて、前記硬化性組成物を成形又は所定の型内に注型(注入)した後、硬化処理(加熱及び/又は光照射)して製造してもよい。また、二次元構造の硬化物の製造方法としては、例えば、前記硬化性組成物を基材又は基板[例えば、金属(例えば、アルミニウムなど)、セラミックス(例えば、酸化チタン、ガラス、石英など)などの無機材料、プラスチック(例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など)などの有機材料、木材などの多孔質体など]に塗布してフィルム状の塗膜(又は薄膜)を形成させた後、硬化処理を施すことで製造してもよい。
【0138】
<硬化性組成物及び硬化物の特性>
本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートと、前記式(1)で表される第1の単官能性(メタ)アクリレートとを含むため、比較的低い粘度を有し、ハンドリング性に優れており、さらに、高屈折率な硬化物を形成できる。
【0139】
硬化性組成物の粘度(温度25℃)は、多官能性(メタ)アクリレートの種類などに応じて、例えば、1~500000mPa・s(例えば、50~100000mPa・s)程度であってもよく、例えば、1~50000mPa・s(例えば、5~25000mPa・s)程度の範囲から選択でき、例えば、10~20000mPa・s(例えば、20~10000mPa・s)、好ましくは30~6000mPa・s(例えば、50~2000mPa・s)、さらに好ましくは70~1000mPa・s(例えば、90~300mPa・s)程度であってもよい。また、本発明では、極めて粘度が高い多官能性(メタ)アクリレートであっても、第1の単官能性(メタ)アクリレートと組み合わせることで、粘度を有効に低減できる。そのため、硬化性組成物の粘度(温度60℃)は、例えば、100Pa・s以下(例えば、0.1~50Pa・s)程度の範囲から選択でき、例えば、30Pa・s以下(例えば、1~27Pa・s)、好ましくは25Pa・s以下(例えば、10~23Pa・s)程度であってもよい。なお、粘度は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
【0140】
硬化前の硬化性組成物の屈折率(硬化前屈折率)(温度25℃、波長589nm)は、例えば、1.5~1.7程度の範囲から選択でき、例えば、1.52~1.65(例えば、1.53~1.62)、好ましくは1.54~1.61、さらに好ましくは1.55~1.60程度であってもよい。
【0141】
また、硬化性組成物は、通常、硬化により屈折率が向上する傾向があり、重合性成分100重量部に対して、光重合開始剤3重量部を加熱混合した硬化性組成物を調製し、UV照射(500mJ/cm)により硬化した硬化物(例えば、後述する実施例の項に記載の方法で硬化した硬化物など)の屈折率(温度25℃、波長589nm)は、例えば、1.5~1.7程度の範囲から選択でき、例えば、1.52~1.66、好ましくは1.54~1.63、さらに好ましくは1.56~1.6程度であってもよい。なお、屈折率は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
【実施例
【0142】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価方法及び原料を示す。
【0143】
(粘度)
25℃における粘度を、TV-22形粘度計(コーンプレートタイプ、東機産業(株)製「TVE-22L」)を用い、測定粘度に応じたオプションロータ(01:1゜34’×R24、07:3゜×R7.7)を選択し、回転数0.5~20rpmで測定した。
【0144】
また、60℃における粘度は、E型溶融粘度計(BROOK FIELD社製「CAP2000+」)を使用して測定した。
【0145】
(屈折率)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、DR-M2<循環式恒温水槽60-C3>)を用いて、温度25℃、589nmでの屈折率を測定した。
【0146】
(耐スクラッチ性)
表面性測定器HEIDON-14DR(新東科学(株)製)を用いて、スチールウール♯0000を鉛筆硬度計の先端に装着し、硬化物(50mm×15mm×2mm)に荷重250gを垂直負荷させ、速度1mm/sで硬化物上を移動させ、傷の有無を目視にて確認した。この操作を5本の硬化物について行い、以下の基準で耐スクラッチ性を評価した。
【0147】
○:すべての硬化物に傷が付かない
△:1本でも傷付く硬化物があるが、回復性が確認できる。
【0148】
×:傷が付き、回復を確認できない。
【0149】
(原料)
BPEFA:大阪ガスケミカル(株)製、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン
BPEF-9EOA:大阪ガスケミカル(株)製、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン1モルに対して、エチレンオキサイドが平均値で9モル付加した付加体のジアクリレート
UV-3200B:日本合成化学工業(株)製、二官能性ウレタンアクリレート
FA-321A:日立化成工業(株)製、ビスフェノールA 1モルに対して、エチレンオキサイドが平均値で10モル付加した付加体のジアクリレート
エポキシエステル3000A:共栄社化学(株)製、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物
KAYARAD UX-5000:日本化薬(株)製、6官能エステル系ウレタンアクリレート
POA:2-フェノキシエチルアクリレート
NEOA:2-(2-ナフトキシ)エチルアクリレート(後述する合成例1により調製)
PTEA:Miwon Specialty Chemical Co., Ltd.製、フェニルチオエチルアクリレート
OPPEOA:日本化薬(株)製、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート
イルガキュア184:BASFジャパン(株)製、光重合開始剤。
【0150】
(合成例1)
ディーンスタークを付けた500mL三口フラスコに、2-(2-ナフチルオキシ)エタノール(NEO)49.4g(0.26mol)、アクリル酸24.6g(0.34mol)、4-メトキシフェノール0.56g(0.0046mol)及びトルエン256gを加えた。系内を窒素置換し、60℃まで昇温して、前記成分を溶解させた後、p-トルエンスルホン酸一水和物6.24g(0.033mol)を添加した。再度窒素置換後、115℃まで昇温して、3時間還流脱水した。
【0151】
得られた溶液を20重量%食塩水で洗浄後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液と20重量%食塩水で中和し、水層がpH10以上であることを確認した。その後、有機層に500ppmの4-メトキシフェノールを添加し、溶液を均一化した。この溶液を20重量%食塩水で2回、蒸留水で3回洗浄し、水層がpH7であることを確認した後、有機層を濃縮し、セライト濾過を行った。濾過後、濾液を濃縮乾燥し、粉末状の白色固体であるNEOAを得た。
【0152】
NEOAの屈折率(25℃、589nm)は1.59、融点は62℃であった。なお、融点は示差走査熱量計(DSC)(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC6220」)により測定した。
【0153】
(比較例1~5及び実施例1~5)
下記表1に示す割合で、各重合性成分(多官能性(メタ)アクリレートとしてのBPEFA、及び反応性希釈剤としてのPOA又はNEOA)を混合して、硬化性組成物を調製し、硬化前屈折率及び粘度を測定した。測定結果を表1及び図1~2に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
表1及び図1~2から明らかなように、比較例に比べて、実施例では、希釈剤を多量に含むにもかかわらず、比較的高い屈折率を維持し、かつ、粘度も同程度まで低減できる。なお、常温(例えば、25℃程度)において、POAは、一般的な反応性希釈剤と同様に、透明な液体であるが、NEOAは全く流動性を示さない粉末状の白色固体であり、粘稠体であるBPEFAと混合して始めて液状となり、低粘性を示すため、極めて意外な結果であった。
【0156】
また、図1及び図2には、各反応性希釈剤の配合割合をx、屈折率又は粘度をyとして、比較例1~5及び実施例1~5の測定値に基づく近似線を示す式を表記した。なお、近似線は、マイクロソフト社製「Microsoft Excel (Microsoft Office Standard 2010)」を使用して算出し、屈折率については、線形近似を、粘度については、累乗近似を採用した。比較例及び実施例から得られた結果をより分かりやすく比較するため、これらの近似線(又は近似線を示す式)に基づき、BPEFAと各反応性希釈剤との配合系において、下記表2に記載の目標屈折率(硬化前)を達成する配合割合、及びその配合割合における硬化性組成物の粘度を、それぞれの反応性希釈剤について算出した。計算結果を表2及び図3に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
表2及び図3から明らかなように、BPEFA/POA配合系に比べて、BPEFA/NEOA配合系では、各目標屈折率を達成する硬化性組成物の粘度が低く、特に、目標屈折率が大きくなるほど、粘度の差が極めて大きくなることが分かった。また、BPEFA/NEOA配合系では、目標屈折率を達成するための配合比において、反応性希釈剤の割合が多く、BPEFAの使用割合を低減できることが分かる。
【0159】
(比較例6及び実施例6~12)
下記表3に示す割合で、各重合性成分を混合して、硬化性組成物を調製し、粘度及び屈折率(硬化前)を測定した。
【0160】
調製した各硬化性組成物(重合性成分)100重量部に対して、光重合開始剤3重量部を添加し、加熱溶融して混合した。得られたそれぞれの硬化性組成物を、TAC(酢酸セルロース)フィルム上に、アプリケーターを使用して膜厚200μmに塗布し、UV照射(500mJ/cm)を1回行って硬化物を作製した。得られたそれぞれの硬化物は、いずれも膜厚100μmのフィルム状であり、この硬化物を使用して、屈折率(硬化後)を測定した。
【0161】
また、離型剤をスプレーにより付着させたガラスに金型を載せ、この金型に前記光重合開始剤を混合した各硬化性組成物を流し込み、同じ処理を施したガラスで金型を挟み、UV照射(500mJ/cm)を4回繰り返し、50mm×15mm×2mmのサイズを有する硬化物を作製した。得られた硬化物を用いて、耐スクラッチ性を測定した。
【0162】
配合割合及び評価結果を表3に示す。なお、表3中の( )内の数字は、硬化性組成物における各構成成分の重量部を意味する(以下、表4も同じ)。
【0163】
【表3】
【0164】
表3から明らかなように、比較例6は、屈折率は高いものの、粘度が高いためハンドリング性が十分ではなく、ハンドリング性と高屈折率とを両立できない。一方、実施例6では、耐スクラッチ性を維持しつつ、優れたハンドリング性及び高屈折率を有している。
【0165】
また、実施例7~8では、軟質二官能性(メタ)アクリレートを含むためか、比較的良好なハンドリング性を維持しつつ、かつ高屈折率と耐スクラッチ性とを両立できるため、各特性のバランスにも優れている。特に実施例7で混合したUV-3200Bは、60℃における粘度が40000~60000mPa・sとかなり高粘度であるにもかかわらず、比較的良好なハンドリング性を示している。
【0166】
さらに、実施例9~12では、他の単官能性アクリレート(硫黄原子を含有する第2の単官能性(メタ)アクリレート又は前記式(3)で表される第3の単官能性(メタ)アクリレート)を組み合わせることで、より優れたハンドリング性と高屈折率との両立を達成している。特に、実施例10では、高いレベルでハンドリング性と高屈折率とを両立するだけでなく、耐スクラッチ性も向上している。
【0167】
(比較例7~9及び実施例13~15)
下記表4に示す割合で、各重合性成分を混合して、硬化性組成物を調製し、粘度(温度25℃)及び屈折率(硬化前)を測定した。さらに、比較例7~8及び実施例13~14では、60℃における硬化性組成物の粘度も併せて測定した。
【0168】
また、比較例6及び実施例6~12と同様の方法により、調製した各硬化性組成物の硬化物(膜厚100μmのフィルム状の硬化物及び50mm×15mm×2mmのサイズを有する硬化物)を作製し、これらの硬化物を使用して、屈折率(硬化後)及び耐スクラッチ性を測定した。配合割合及び評価結果を表4に示す。
【0169】
【表4】
【0170】
表4の結果から明らかなように、実施例13~15のいずれにおいても、10重量%のNEOAの添加により、ハンドリング性が大幅に向上し、かつ屈折率も向上した。また、ウレタン(メタ)アクリレートを用いた実施例13及び15は、耐スクラッチ性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の硬化性組成物は、低粘度、高屈折率、耐スクラッチ性などの特性に優れているため、種々の用途に利用できる。例えば、インク材料、発光材料(例えば、有機EL用発光材料など)、有機半導体、黒鉛化前駆体、ガス分離膜(例えば、COガス分離膜など)、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ[例えば、ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、反射防止フィルム(又は反射防止膜、例えば、表示デバイス用反射防止フィルムなど)、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム[例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ(特に薄型ディスプレイ)用フィルム(フィルタ、保護フィルムなど)など]、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに好適に使用できる。特に、本発明の硬化性組成物は、光学材料用途に好適に利用でき、このような光学材料の形状としては、例えば、フィルム状(又はシート状)、板状、レンズ状、管状などが挙げられる。
【0172】
また、本発明の第1の単官能性(メタ)アクリレートは、多官能性(メタ)アクリレートの粘度を低減するための低粘度化剤としても利用できる。
図1
図2
図3