(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】燃料電池装置モジュールおよび燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220909BHJP
H01M 8/04014 20160101ALN20220909BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220909BHJP
H01M 8/243 20160101ALN20220909BHJP
H01M 8/2457 20160101ALN20220909BHJP
H01M 8/2465 20160101ALN20220909BHJP
H01M 8/2484 20160101ALN20220909BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
H01M8/243
H01M8/2457
H01M8/2465
H01M8/2484
(21)【出願番号】P 2018026023
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶌田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092906(JP,A)
【文献】特開2011-096421(JP,A)
【文献】特許第6239198(JP,B1)
【文献】特開2009-158122(JP,A)
【文献】特開2014-191895(JP,A)
【文献】特開2014-010895(JP,A)
【文献】特開2015-144091(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルが列状に配列された少なくとも1つのセルスタックと、
前記セルスタックの配列方向に沿った前記セルスタックの一方の第一側面と対向して位置し、前記セルスタックの下方に酸素含有ガスを供給する供給孔を有する酸素含有ガス導入部材と、
前記第一側面と反対側に位置する前記セルスタックの第二側面と対向して位置する壁部と、
前記セルスタックの上下方向において、前記配列方向に延び、前記供給孔より上方で、かつ、前記第一側面と前記酸素含有ガス導入部材との間に位置する、少なくとも1つの第一スペーサと、
前記セルスタックの上下方向において、前記配列方向に延び、前記供給孔と同じ位置または前記供給孔より上方で、かつ、前記第二側面と前記壁部との間に位置する、複数の第二スペーサと、を備え、
前記複数の第二スペーサのそれぞれは、前記上下方向に離間して位置しており、
前記複数の第二スペーサは、
前記上下方向における前記セルスタックの中央部に位置する中央部第二スペーサと、
前記中央部より前記セルスタックの前記上下方向の端部に位置する、少なくとも1つの端部第二スペーサと、を含み、
前記中央部第二スペーサの下端は、前記上下方向における、前記供給孔と前記セルスタックの上端との間の中央位置または該中央位置よりも下方に位置し、
前記中央部第二スペーサの上端は、前記上下方向における、前記中央位置よりも上方に位置し、
前記上下方向において、前記複数の第二スペーサの、前記セルスタックとの対向面の長さの和は、前記少なくとも1つの第一スペーサの、前記セルスタックとの対向面の長さの和より大きい、燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記中央部第二スペーサの前記上下方向の長さは、前記端部第二スペーサの前記上下方向の長さより長い、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第一スペーサは、前記上下方向の中央部に位置する中央部第一スペーサを含み、
該中央部第一スペーサの前記上下方向の長さは前記中央部第二スペーサの前記上下方向の長さより短い、請求項1または2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
複数の前記第一スペーサを備え、
該複数の前記第一スペーサは、
前記上下方向の中央部に位置する中央部第一スペーサと、
前記上下方向における前記セルスタックの上端部に位置する上端部第一スペーサと、
前記上下方向における前記中央部第一スペーサの下方に離間して位置する下部第一スペーサと、を含み、
前記中央部第一スペーサの前記上下方向の長さは、前記上端部第一スペーサの前記上下方向の長さおよび前記下部第一スペーサの前記上下方向の長さのいずれより短い、請求項1~3のうちいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記配列方向に直交する、前記セルスタックの左右方向において、
前記セルスタックの前記第一側面と前記酸素含有ガス導入部材との間の、前記左右方向の第一間隙の距離は、
前記セルスタックの第二側面と前記壁部との間の、前記左右方向の第二間隙の距離より短い、請求項1~4のいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
複数の前記第一スペーサを備え、
該複数の第一スペーサのそれぞれは、前記上下方向に離間して位置しており、
前記第一スペーサのそれぞれと、前記酸素含有ガス導入部材と、前記セルスタックの前記第一側面と、に囲まれた第1の空間と、
前記複数の第二スペーサのそれぞれと、前記壁部と、前記セルスタックの前記第二側面と、に囲まれた第2の空間と、を備え、
前記第1の空間の容積の総和は、前記第2の空間の容積の総和より大きい、請求項1~4のいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
複数の前記供給孔を有し、
前記複数の供給孔は、前記配列方向における前記酸素含有ガス導入部材の中央部に位置する1以上の中央部供給孔と、前記配列方向における前記酸素含有ガス導入部材の端部に位置する2以上の端部供給孔と、を含み、
前記2以上の端部供給孔のうち、前記配列方向両端部に位置する少なくとも1つの端部供給孔は、前記配列方向の開口径が、前記中央部供給孔の前記配列方向の開口径より大きい、請求項1~6のいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
複数のセルスタックを備え、
該複数のセルスタックは、
第一セルスタックと、
該第一セルスタックの前記配列方向に沿った側方に並列して位置する第二セルスタックと、を含み、
前記酸素含有ガス導入部材は、前記第一セルスタックと前記第二セルスタックとの間に位置しており、
前記酸素含有ガス導入部材は、前記第一セルスタックに対向する第一面と、第二セルスタックに対向する第二面と、を有しており、
前記第一面および前記第二面は、酸素含有ガスを前記第一および第二セルスタックに供給する前記供給孔を、それぞれ複数個ずつ有しており、
前記第一面および前記第二面に直交する側から側面視した場合、前記配列方向において、
前記第一面に位置する少なくとも1つの第一供給孔の開口位置と、
前記第一供給孔と対向する領域に最も近接して位置する、前記第二面の第二供給孔の開口位置とが異なる、請求項1~7のうちいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項9】
前記配列方向の中央部において、前記配列方向に隣接する複数の前記第一供給孔または前記第二供給孔どうしの中心間距離は、前記配列方向の端部において、前記配列方向に隣接する複数の前記第一供給孔または前記第二供給孔どうしの中心間距離より長い、請求項8に記載の燃料電池モジュール。
【請求項10】
前記複数のセルスタックの上方に位置し、気化部および改質部を有する改質器を備え、
前記気化部は前記第一セルスタックの上方に位置しており、
前記第一面に位置する複数の前記第一供給孔の開口面積の総和が、前記第二面に位置する複数の前記第二供給孔の開口面積の総和より小さい、請求項8または9に記載の燃料電池モジュール。
【請求項11】
前記第一セルスタックおよび前記第二セルスタックのそれぞれの下端を固定するマニホールドを備える燃料電池モジュールであって、
前記酸素含有ガス導入部材の下端は、前記マニホールドから離間しており、
前記酸素含有ガス導入部材の下端と前記マニホールドとの間に、両者に接触しかつ前記配列方向に延びる第1の部材を備える、請求項8~10のいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項12】
燃料電池セルが列状に配列された複数のセルスタックと、
前記セルスタックの配列方向に沿った前記セルスタックの一方の側面と対向して位置する酸素含有ガス導入部と、を備え、
前記複数のセルスタックは、第一セルスタックと、該第一セルスタックの前記配列方向に沿った側方に並列して位置する第二セルスタックと、を含み、
前記酸素含有ガス導入部は、前記第一セルスタックと前記第二セルスタックとの間に位置しており、該酸素含有ガス導入部は、前記第一セルスタックに対向する第一面と、第二セルスタックに対向する第二面と、を有し、
前記第一面は、酸素含有ガスを前記第一セルスタックに供給する第一供給孔を複数有し、前記第二面は、酸素含有ガスを前記第二セルスタックに供給する第二供給孔を複数有し、
前記第一面および前記第二面に直交する側から側面視した場合、
前記配列方向において、
前記第一面に位置する少なくとも1つの第一供給孔の開口位置と、該第一供給孔と対向する領域に最も近接して位置する、前記第二面の第二供給孔の開口位置とが異な
り、且つ前記第一供給孔及び第二供給孔の面積は全て同じである、燃料電池モジュール。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールの運転を行なうための補機と、
前記燃料電池モジュールと前記補機とを収納する外装ケースと、
を備える燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置モジュールおよびそれを用いた燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の構成として、収納容器内に、水素含有ガス(燃料ガス)と酸素含有ガス(空気)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを備える燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールおよびその動作に必要な補機類を外装ケース等の筐体に収容した燃料電池装置とが、種々提案されている。
【0003】
燃料電池モジュールは、特許文献1に記載のように、収納容器の収納室内に、少なくとも1つのセルスタック装置(セルスタック)が収容された構成をとる。セルスタックは、マニホールドと呼ばれる、各セルに燃料ガスを供給するための基台の上に、たとえば柱状等の燃料電池セルを複数個、列状に配列・固定して構成されている。
【0004】
セルスタックの配列方向(長手方向)の側面(以下「第一側面」ともいう)に隣接して、セルスタックを構成する各燃料電池セルの下方である柱状の根元部または基部に酸素含有ガスを供給する、酸素含有ガス導入部材が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、酸素含有ガス(空気)は、加熱された状態で各セルの下部に供給されるが、加熱が不充分で、酸素含有ガスの温度が比較的低い場合、燃料電池セルの下部の発電効率が、比較的低くなるおそれがあった。また、酸素含有ガスの温度分布が不均一であったり、セルに対して均一に供給されていない場合にも、燃料電池モジュールの発電効率が低くなるおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、発電効率の高い燃料電池モジュールおよびそれを用いた燃料電池装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の燃料電池モジュールは、複数の燃料電池セルが列状に配列された少なくとも1つのセルスタックと、
前記セルスタックの配列方向に沿った前記セルスタックの一方の第一側面と対向して位置し、前記セルスタックの下方に酸素含有ガスを供給する供給孔を有する酸素含有ガス導入部材と、
前記第一側面と反対側に位置する前記セルスタックの第二側面と対向して位置する壁部と、
前記セルスタックの上下方向において、前記配列方向に延び、前記供給孔より上方で、かつ、前記第一側面と前記酸素含有ガス導入部材との間に位置する、少なくとも1つの第一スペーサと、
前記セルスタックの上下方向において、前記配列方向に延び、前記供給孔と同じ位置または前記供給孔より上方で、かつ、前記第二側面と前記壁部との間に位置する、複数の第二スペーサと、を備え、
前記複数の第二スペーサのそれぞれは、前記上下方向に離間して位置しており、
前記複数の第二スペーサは、
前記上下方向における前記セルスタックの中央部に位置する中央部第二スペーサと、
前記中央部より前記セルスタックの前記上下方向の端部に位置する、少なくとも1つの端部第二スペーサと、を含み、
前記中央部第二スペーサの下端は、前記上下方向における、前記供給孔と前記セルスタックの上端との間の中央位置または該中央位置よりも下方に位置し、
前記中央部第二スペーサの上端は、前記上下方向における、前記中央位置よりも上方に位置し、
前記上下方向において、前記複数の第二スペーサの、前記セルスタックとの対向面の長さの和は、前記少なくとも1つの第一スペーサの、前記セルスタックとの対向面の長さの和より大きいことを特徴とする。
【0009】
また、本開示の燃料電池モジュールは、燃料電池セルが列状に配列された複数のセルスタックと、
前記セルスタックの配列方向に沿った前記セルスタックの一方の側面と対向して位置する酸素含有ガス導入部と、を備え、
前記複数のセルスタックは、第一セルスタックと、該第一セルスタックの前記配列方向に沿った側方に並列して位置する第二セルスタックと、を含み、
前記酸素含有ガス導入部は、前記第一セルスタックと前記第二セルスタックとの間に位置しており、該酸素含有ガス導入部は、前記第一セルスタックに対向する第一面と、第二セルスタックに対向する第二面と、を有し、
前記第一面は、酸素含有ガスを前記第一セルスタックに供給する第一供給孔を複数有し、前記第二面は、酸素含有ガスを前記第二セルスタックに供給する第二供給孔を複数有し、
前記第一面および前記第二面に直交する側から側面視した場合、
前記配列方向において、
前記第一面に位置する少なくとも1つの第一供給孔の開口位置と、該第一供給孔と対向する領域に最も近接して位置する、前記第二面の第二供給孔の開口位置とが異なり、且つ前記第一供給孔及び第二供給孔の面積は全て同じであることを特徴とする。
【0010】
そして、本開示の燃料電池装置は、前述のいずれかの燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールの運転を行なうための補機と、前記燃料電池モジュールと前記補機とを収納する外装ケースと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の燃料電池モジュールは、比較的高温となった酸素含有ガスを燃料電池セルの下部に供給できるため、燃料電池モジュールの発電効率を高くすることができる。または、酸素含有ガスの温度分布や供給量が不均一になることを抑制できるため、燃料電池モジュールの発電効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の燃料電池モジュールの構成を説明する分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すセルスタック装置の構造を説明する側面図である。
【
図3】燃料電池セルの配列方向に沿った、セルスタックの上面図である。
【
図4】第1の実施形態の燃料電池モジュールの構成を説明する上下方向の断面図であり、(a)はモジュールの全体図、(b)は一方のセルスタック側の拡大図である。
【
図5】第2の実施形態の燃料電池モジュールの構成を説明する上下方向の断面図であり、(a)はモジュールの全体図、(b)は一方のセルスタック側の拡大図である。
【
図6】第1,第2の実施形態の燃料電池モジュールの酸素含有ガス導入部材の両面に設けられる、酸素含有ガス供給孔の形状と配置とを模式的に示す図である。
【
図7】第3の実施形態の燃料電池モジュールの構成を説明する上下方向の断面図であり、(a)はモジュールの全体図、(b)は一方のセルスタック側の拡大図である。
【
図8】第3の実施形態の燃料電池モジュールの酸素含有ガス導入部材における、改質部(第二セルスタック)側の面に設けられる酸素含有ガス供給孔の形状と配置の一例を模式的に示す図である。
【
図9】酸素含有ガス導入部材の改質部(第二セルスタック)側の面に設けられる酸素含有ガス供給孔の形状と配置の他の例を模式的に示す図である。
【
図10】第3の実施形態の燃料電池モジュールの酸素含有ガス導入部材の両面に設けられる、酸素含有ガス供給孔の形状と配置の一例を模式的に示す図であり、(a)は改質器の改質部(第二セルスタック)側の第一面を、(b)は気化部(第一セルスタック)側の第二面を示す図である。
【
図11】実施形態の燃料電池装置の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の燃料電池モジュールM(以下、単に「モジュール」という場合がある)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の発電・発熱モジュールである。
図1の分解斜視図に示すように、燃料電池モジュールMは、内箱21と外箱22とからなる二重構造の収納容器20の内側に、二列のセルスタック1(1A,1B)とマニホールド2および改質器3からなるセルスタック装置Sと、酸素含有ガス導入部材4(4A,4B等)、および、内部断熱部材5(5A,5B,5C等)を収容して、収納容器20(収容空間27)の開口を蓋体等で密閉した構成をとる。なお、収納容器20の側面には、該側面より小形の、モジュールの熱交換器Eが取り付けられている。
【0014】
セルスタック1は、図示右方の第一セルスタック1A(以下、右列)と、図示左方の第二セルスタック1B(以下、左列)とからなる。なお、先にも述べたように、セルスタック1(1A,1B)における燃料電池セルの配列(積層固定)方向を、単に「配列方向」、この配列方向に直交する、セルおよびセルスタックを含む各機器における天地(鉛直)方向を「上下方向」という。また、右列の第一セルスタック1Aと左列の第二セルスタック1Bとの間に、構成上の差異はないが、改質器3における上流側の気化部3Aの下方に位置するセルスタックを第一セルスタック1Aと呼び、改質器3における下流側の改質部3Bの下方に位置するセルスタックを第二セルスタック1Bと呼ぶ。
【0015】
さらに、
図1においてセルスタックどうしが対向する、右列の第一セルスタック1Aの左側の側面(対向面)および左列の第二セルスタック1Bの右側の側面(対向面)を、共に、セルスタックの「第一側面」(符号1x)と呼ぶ。また、反対側の、右列の第一セルスタック1Aの外側の側面(図示右側)および左列の第二セルスタック1Bの外側の側面(図示左側)を、共に、セルスタックの「第二側面」(符号1y)と呼ぶ。
【0016】
なお、本開示における「対向」面とは、面と面とが直接に当接する場合は勿論、面どうしがすき間(空間)を空けて向き合う、対面や対峙等を含む概念である。そのため、物の表面の形状や粗さ(凹凸)等は考慮しない。
【0017】
そして、セルスタック装置Sが収納容器20内に収容された、後記の第1の実施形態(
図4),第2の実施形態(
図5)および第3の実施形態(
図7)の場合、各セルスタック1Aおよび1Bの第一側面は、それぞれ、第一セルスタック1Aと第二セルスタック1Bとの間に位置する、酸素含有ガス導入部材4の「第一面」(符号4x:第一セルスタック1A側)および「第二面」(符号4y:第二セルスタック1B側)と対向する。また、各セルスタック1Aおよび1Bの第二側面は、それぞれ、モジュール側方の壁部を構成する、断熱材5Aの内側壁面(符号5x:第一セルスタック1A側)および断熱材5Bの内側壁面(符号5y:第二セルスタック1B側)と対向することとなる。
【0018】
セルスタック装置Sは、酸素含有ガス導入部材4との間に配設された第一スペーサ6、および、モジュール側方の壁部を構成する各断熱材5A,5Bとの間に配設された第二スペーサ7、をそれぞれ介して、収容空間27の所定位置に載置・固定されている。この点については、後記の各実施形態において詳細に説明する。
【0019】
第一セルスタック1Aおよび第二セルスタック1Bの基本的な構造を説明する。各セルスタック1A,1Bは、
図2の側面図に示すように、内部を燃料ガスが上下方向(この例では上方向)に流過する燃料ガス流路を複数有する中空平板型の燃料電池セル10の複数個を、それぞれの燃料電池セル10間に集電部材17を介して立設させた状態で配列し、電気的に直列に接続して、セルスタックとしている。
【0020】
セルスタック1A,1Bは、各燃料電池セル10の下端部が、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するマニホールド2に固定されている。なお、マニホールド2は、セルスタックには含まれない。また、セルスタックの配列方向の両端には、発電により生じる電流を引出すための電流引出し部18が設けられている。さらに、セルスタックの上方には、燃料電池セル10に供給する燃料ガスを生成するための改質器3(
図2では図示省略)が配置されている。
【0021】
各燃料電池セル10は、
図3の上面図に示すように、一対の対向する平坦面(幅広面)を有する柱状の導電性支持体11の一方側の平坦面上(図示左側)に、燃料極層12と、固体電解質層13と、酸素極層14とが順に積層されている。また、導電性支持体11の他方側の平坦面上(図示右側)には、インターコネクタ15と、P型半導体層16とが順に積層されている。なお、導電性支持体11の内部には、燃料ガスを流すための、孔状の燃料ガス流路11aが、複数設けられている。
【0022】
なお、燃料電池セル10間を接続する集電部材17は、立体的に見た場合、網目状になっており、
図3の点線矢印に示すように、後記する酸素含有ガス導入部材4(4A,4B等)から供給された酸素含有ガスは、セルスタックと酸素含有ガス導入部材4との間のすき間、または、セルスタックと壁部との間のすき間を、自由に行き来できるようになっている。そのため、各燃料電池セル10の下部に供給された酸素含有ガスは、隣り合う燃料電池セル10との間(すき間)を出入りしながら、燃料電池セル10の上部(
図3においては紙面の裏面から表面)に向かって流過する〔後記の第1の実施形態(
図4),第2の実施形態(
図5)および第3の実施形態(
図7)の二点鎖線を参照〕。
【0023】
一方、孔状の燃料ガス流路11a内を流れる燃料ガス(水素含有ガスであり、改質ガス)は、先に述べた改質器3において、原燃料供給管3cを介して供給される天然ガス等の原燃料を水蒸気改質して、生成される。すなわち、改質器3は、水を気化させるための気化部3Aと、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部3Bと、先述の原燃料供給管3cと、改質・生成された燃料ガスをマニホールド2に輸送するための燃料ガス流通管3dと、を備えている。
【0024】
改質器3は、セルスタック上端から排出される未反応の酸素含有ガスおよび燃料ガス(以下、オフガスという場合がある。)の燃焼熱により、暖められる。なお、本開示において、改質器を有する実施形態を示したが、改質器を有していない形態でもよい。
【0025】
以下、前述の構成のセルスタック装置Sを収納容器20内に収容した、具体的な実施形態について説明する。
【0026】
図4は第1の実施形態、
図5は第2の実施形態、
図7は第3の実施形態の燃料電池モジュール(それぞれM1,M2,M3とする)の構造を示す、セル配列に直交する方向の模式的断面図である。なお、これらの図においては、説明を容易にするために、セルスタックに酸素含有ガス(空気)を供給するための酸素含有ガス流路25と、オフガスを燃焼させた後の排ガスを排出するための排ガス流路26とを、強調・拡大して描いている。また、酸素含有ガス導入部材の中には、流下する空気の温度を測定するための熱電対が挿通されている場合もあるが、その図示を省略している。
【0027】
まず、
図4,
図6に示す、第1の実施形態について説明する。なお、以降の第2,第3の実施形態においても同様の構成部材については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。また、各図中の実線矢印は、酸素含有ガスおよび排ガスの流れ(気体流)を示すものとする。
【0028】
図4(a)に示すように、燃料電池モジュールM1を構成する収納容器20は、内箱21の側壁から構成される内壁23と、外箱22の側壁からなる外壁24とを有する二重構造であり、内壁23により、セルスタック装置Sを収容する収容空間27が設けられている。また、収納容器20の底部には、酸素含有ガス流入管25aが接続されており、内壁23と外壁24との間に形成された酸素含有ガス流路25に、各セルスタック1A,1Bに供給される酸素含有ガス(空気)が導入される。
【0029】
前述の内壁23を挟んだ、酸素含有ガス流路25の容器内側には、燃焼排ガスを排出するための排ガス流路26が、セルスタックの配列方向に沿って並行に設けられている。この構成により、酸素含有ガス流路25内を上に向かって流過する低温の空気と、排ガス流路26内を下に向かって流過する高温の排ガスとの間で熱交換が行われ、酸素含有ガス流路25内の空気が暖められる。なお、図示左下の排ガス流路26の終端には、排ガス流出管26aが接続されており、上述の熱交換後の排ガスが、図示しない熱交換器E(
図1参照)へ導出されるようになっている。
【0030】
収納容器20上部の中央には、酸素含有ガス導入部材4Aが、内壁23を貫通して、右列の第一セルスタック1Aと左列の第二セルスタック1Bとの間の下方まで垂下するよう配設されている。これにより、先の排ガスとの熱交換により暖められた酸素含有ガスを、これら各セルスタック1A,1Bの下部まで流下させ、それぞれ柱状の燃料電池セル10の根元部または基部に、直接的に供給することができる。
【0031】
酸素含有ガス導入部材4Aの下端近傍には、
図6に示すような、暖められた空気の流出孔または噴気孔である供給孔41が複数個設けられている。なお、この
図6は、
図4(b)の拡大断面図の白抜き矢印に示すように、酸素含有ガス導入部材4Aを、左列の第二セルスタック1B側から見たものであり、先に述べた、酸素含有ガス導入部材の「第二面」(符号4y)に相当するものである。したがって、
図6では見えないが、紙面裏側の酸素含有ガス導入部材4Aの「第一面」(符号4x)側にも、供給孔41と同仕様の供給孔が、これら供給孔41と対向・対称となる位置に、それぞれ形成されている。
【0032】
また、収納容器20の内箱21の中には、複数の内部断熱部材5、すなわち側部断熱材5A,5Bおよび底部断熱材5Cにより、前述の収容空間27が形成されている。なお、セルスタック1A,1Bおよびマニホールド2を収容する、収容空間27の下部を発電室27Aと呼び、改質器3を含む、オフガスを燃焼させる収容空間27の上部を燃焼室27Bと呼ぶ場合がある。
【0033】
そして、
図4(a)に示すように、各セルスタック1A,1Bとこれらの間に位置する酸素含有ガス導入部材4Aとの間、および、各セルスタック1A,1Bと発電室27Aの壁部(側壁)を構成する側部断熱材5A,5Bとの間には、スペーサ(第一スペーサ6,第二スペーサ7)が、上下方向において複数個設けられている。各スペーサは、セルの配列方向に延びている。スペーサは、酸素含有ガス導入部材、セルスタックおよび側部断熱材の間隙を調整して、各セルスタックの位置を固定するとともに、これらの部材間のすき間を流れる、酸素含有ガスの流れを制御するために設けられている。
【0034】
なお、スペーサとは、上下方向における酸素含有ガス導入部材の供給孔と同じ位置または供給孔より上方で、かつ、セルスタックと酸素含有ガス導入部材または壁部との間に設けられた部材のうち、セルスタックと対向するものをいう。また、スペーサの対向面(対向部位)とは、酸素含有ガス導入部材または側部断熱材からセルスタックに向かって突出しており、かつ、上下方向における酸素含有ガス導入部材の供給孔と同じ位置または供給孔より上方で、セルスタックと対向している部分をいう。これにより、酸素含有ガス導入部材、セルスタックおよび側部断熱材のすき間を流れる酸素含有ガスを、セルスタック側に促すことができる。さらに、スペーサは、
図4で示すように、酸素含有ガス導入部材または側部断熱材とセルスタックとに当接することで、酸素含有ガス導入部材、セルスタックおよび側部断熱材のすき間を流れる酸素含有ガスを、セルスタックにより促すことができる。
【0035】
すなわち、第1の実施形態の燃料電池モジュールM1は、供給孔41より上方に設けられ、各セルスタック1A,1Bと酸素含有ガス導入部材4Aとの間にそれぞれ配設された、2つの第一スペーサ6(上端部6A,下部6B)を有する。また、供給孔41より上方に設けられ、各セルスタック1A,1Bと各側部断熱材5A,5Bとの間にそれぞれ配設された、2つの第二スペーサ7(上端部7A,中央部7C)を有する。
【0036】
そして、各セルスタックの上下方向において、第二スペーサ7である上端部第二スペーサ7A、中央部第二スペーサ7Cの、各セルスタック1A,1Bとの対向面の長さの和は、第一スペーサ6である上端部第一スペーサ6A,下部第一スペーサ6Bの、各セルスタック1A,1Bとの対向面の長さの和より大きくなっている。
【0037】
この構成により、各セルの間を流れる高温の酸素含有ガスを、セルの間から、セルスタック1A,1Bと酸素含有ガス導入部材4Aとの間へと促すことができ、当該酸素含有ガス導入部材4Aとその内部を流れる酸素含有ガスとを、効率良く加熱できる。すなわち、燃料電池セルの下部に、比較的高温の酸素含有ガスを供給できることで、上下方向における、燃料電池セルの不均一な温度分布が緩和され、燃料電池モジュールM1の発電効率を向上させることができる。
【0038】
また、
図4に示すように、第1の実施形態の燃料電池モジュールM1では、中央部第二スペーサ7Cの下端は、上下方向における、供給孔41とセルスタック1Aの上端との間の中央位置(図示中央線:一点鎖線)または中央位置よりも下方に位置しており、中央部第二スペーサ7Cの上端は、上下方向における、中央位置よりも上方に位置している。
【0039】
さらに、当該燃料電池モジュールMにおいて、各セルスタック1A,1Bと各側部断熱材5A,5Bとの間にそれぞれ配設された、2つの第二スペーサ7(上端部7A,中央部7C)について、それぞれのセルスタック上下方向の長さを比べれば、中央部第二スペーサ7Cの上下方向長さは、端部に位置する上端部第二スペーサ7Aの上下方向長さより、長くなっている。
【0040】
これらの構成により、セル内の反応による熱やジュール熱等によって比較的温度が高い、上下方向における中央部において、温度が高い酸素含有ガスを、セルスタック1A,1Bと酸素含有ガス導入部材4Aとの間へと、促すことができる。このため、さらに当該酸素含有ガス導入部材4Aとその内部を流れる酸素含有ガスとを、効率良く加熱できる。すなわち、燃料電池セルの下部に、比較的高温の酸素含有ガスを供給することで、上下方向における、燃料電池セルの不均一な温度分布を緩和できるため、その結果、燃料電池モジュールM1の発電効率を向上させることができる。
【0041】
前述のような、セルスタック装置S収容後の収容空間27内における、セルスタック1A,1Bと周囲の壁部(側部断熱材5A,5B)との関係、および、セルスタック1A,1Bと酸素含有ガス導入部材4Aとの関係について、以下により詳しく説明する。
【0042】
なお、これらセルスタックと、壁部および酸素含有ガス導入部との関係は、実施形態のような2列のセルスタックを有する燃料電池モジュールM1,M2,M3の場合、セルスタック列の中心を挟んで左右対称に現れるため、後記の詳細な説明では、一方のセルスタック(今回は右列の第一セルスタック1A)側についてのみ説明する。
【0043】
図4(b)は、
図4(a)の一部である、収容空間27内の第一セルスタック1A(右列)側を抜粋して拡大表示したものである。
【0044】
先にも述べたように、第一セルスタック1Aにおける酸素含有ガス導入部材側の側面である第一側面1xと、酸素含有ガス導入部材4Aにおけるセルスタック側の側面である第一面4xとの間には、第一スペーサである上端部第一スペーサ6Aと下部第一スペーサ6Bとが、セルスタックの上下方向に離間した状態で配設されている。
【0045】
また、第一セルスタック1Aにおける壁部側の側面である第二側面1yと、側部断熱材5Aにおけるセルスタック側の側面である内側壁面5xの間には、第二スペーサである上端部第二スペーサ7Aと中央部第二スペーサ7Cとが、それぞれ、セルスタックの上下方向に離間した状態で配設されている。
【0046】
ここで、第二スペーサ7A,7B,7Cとセルスタック1A(第二側面1y)の対向面の上下方向長さの和は、第一スペーサ6A,6Bとセルスタック1A(第一側面1x)との対向面の上下方向長さの和より大きい点は、先にも述べたとおりである。
【0047】
さらに、セルスタック装置Sにおいて、各部材の間の空間(セルスタック上下方向のすき間)に着目すると、セルスタックの左右方向(図示左右方向)において、
図4(b)に示すように、セルスタック1Aの第一側面1xと酸素含有ガス導入部材4Aの第一面4xとの間の、第一間隙の距離L1は、第一セルスタック1Aの第二側面1yと側部断熱材5Aの内側壁面5xとの間の、第二間隙の距離L2より短い。これにより、酸素含有ガス導入部材4Aは、セルスタックからの輻射熱を受けやすくなり、その内部を流過する酸素含有ガスを、より高温にすることができる。
【0048】
これらの構成によって、
図4に記載の第1の実施形態の燃料電池モジュールM1は、酸素含有ガス導入部材の内部を流下し、燃料電池セルに導入される酸素含有ガスの温度が、従来より上昇する。したがって、本実施形態の燃料電池モジュールM1は、燃料電池セルの上部と下部との間で発生する温度差が低減され、その結果、セルスタック全体の発電効率を向上させることができる。
【0049】
なお、第一スペーサ6および第二スペーサ7を含む各スペーサは、各断熱材5と同様の材料でもよい。具体的には耐熱性であるセラミックファイバー等を用いることができる。
【0050】
各スペーサおよび各断熱材は、燃料電池セル10の配列方向に沿って、セルスタック1A,1Bの側面側に配置すればよく、セルスタック1A,1Bの側面におけるセル配列方向に沿った幅(長さ)と同等、または、それ以上の幅(長さ)を有するものを配置することができる。なお、各スペーサと各セルスタックとの間は、必ずしも当接している必要はなく、若干のすき間があってもよい。
【0051】
つぎに、第1の実施形態(
図4)の変形例である、第2の実施形態(
図5)について説明する。なお、この実施形態においても、前出と同様の構成部材については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0052】
図5(a)に示す、第2の実施形態の燃料電池モジュールM2も、収納容器20の収容空間27内にセルスタック装置Sを収容したものである。この実施形態のセルスタック装置Sが、第1の実施形態のものと異なる点は、各セルスタック1A,1Bとこれらの間に位置する酸素含有ガス導入部材4Aとの間の間隙(距離)と、このすき間に配設された第一スペーサ6の配置・構成が異なる点である。この点について以下で説明する。
【0053】
第1の実施形態と同様、一方のセルスタック(右列の第一セルスタック1A)側についてのみ見ると、
図5(b)の拡大図に示すように、第一セルスタック1Aにおける酸素含有ガス導入部材側の側面である第一側面1xと、酸素含有ガス導入部材4Aにおけるセルスタック側の側面である第一面4xとの間には、第一スペーサである上端部第一スペーサ6Aと下部第一スペーサ6Bに加え、すき間の上下方向中央寄りに、中央部第一スペーサ6Cが、それぞれ、セルスタックの上下方向に離間した状態で配設されている。
【0054】
また、第一セルスタック1Aにおける壁部側の側面である第二側面1yと、側部断熱材5Aにおけるセルスタック側の側面である内側壁面5xの間には、第二スペーサである上端部第二スペーサ7Aと下部第二スペーサ7Bおよび中央部第二スペーサ7Cが、それぞれ、セルスタックの上下方向に離間した状態で配設されている。すなわち、第2の実施形態の燃料電池モジュールM2は、セルスタック1Aの左右方向両側のすき間に、それぞれ3個ずつのスペーサを備える。なお、下部第二スペーサ7Bは、供給孔41より上側に位置している。
【0055】
ここで、第2の実施形態の燃料電池モジュールM2は、
図5(b)に示すように、セルスタック1Aと酸素含有ガス導入部材4Aの間の上下方向中央寄りに、中央部第一スペーサ6Cが配設されている。このため、仮に、酸素含有ガス導入部材4Aが、高温により変形を起こした場合でも、この中央部第一スペーサ6Cが緩衝材となって、セルスタック1Aと酸素含有ガス導入部材4Aとが接触することを抑制できる。
【0056】
さらに、各スペーサの大きさ(上下方向の長さ:矢印で表示)に着目すると、上記の中央部第一スペーサ6Cに関し、この中央部第一スペーサ6Cの上下方向長さが、セルスタックと壁部の間の、中央部第二スペーサ7Cの上下方向の長さより、短い。これにより、温度が高い、上下方向における中央部のガスを、酸素含有ガス導入部材4A側へと促すことができる。
【0057】
また、第2の実施形態の燃料電池モジュールM2は、セルスタックと酸素含有ガス導入部材の間のすき間において、上述の中央部第一スペーサ6Cの上下方向長さが、上端部第一スペーサ6Aの上下方向長さおよび下部第一スペーサ6Bの上下方向長さのいずれより短い。この構成により、温度が高い上下方向における中央部のガスを導入部材側へと促すことができる。
【0058】
そして、第2の実施形態の燃料電池モジュールM2は、上端部第一スペーサ6Aと中央部第一スペーサ6Cとに囲まれた空間J1(容積J1
VOL)と、中央部第一スペーサ6Cと下部第一スペーサ6Bとに囲まれた空間J2(容積J2
VOL)とからなる「第1の空間」の空間容積の総和が、上端部第二スペーサ7Aと中央部第二スペーサ7Cとに囲まれた空間K1(容積K1
VOL)と、中央部第二スペーサ7Cと下部第一スペーサ7Bとに囲まれた空間K2(容積K2
VOL)とからなる「第2の空間」の空間容積の総和より、大きくなっている〔
図5(b)参照〕。
【0059】
すなわち、言い換えれば、セルスタックと酸素含有ガス導入部材の間における〔スペーサのない空間の容積の総和(J1VOL+J2VOL)〕が、セルスタックと側部断熱材の間における〔スペーサのない空間の容積の総和(K1VOL+K2VOL)〕より、大きくなっている。この構成により、酸素含有ガス導入部材4Aにより近い、セルスタック1Aと酸素含有ガス導入部材4Aとの間の空間(J1,J2)に、セルスタック1Aと側部断熱材5Aとの間の空間(K1,K2)より多くの、セル内で加温された酸素含有ガスを、セルスタックと酸素含有ガス導入部材の間の前記「第1の空間」に促すことで、酸素含有ガス導入部材4Aの中を流下する酸素含有ガスを、より効率良く暖めることができる。なお、図では、第1間隙の距離L1と第2間隙の距離L2は等距離であるが、空間の容積の総和が上述の関係にあれば、L1とL2は異なっていてもよい。
【0060】
これらの構成によっても、
図5に記載の第2の実施形態の燃料電池モジュールM2は、酸素含有ガス導入部材の内部を流下し、燃料電池セルに導入される酸素含有ガスを、より効率良く暖めることができる。したがって、本実施形態の燃料電池モジュールM2の発電効率を、向上させることができる。
【0061】
なお、第1,第2の実施形態の燃料電池モジュールM1,M2においては、2列のセルスタックを有する燃料電池モジュールとしたが、収納容器20内に、1列のセルスタックを1つ収容してもよく、この場合において、燃料電池モジュールの内壁が、酸素含有ガス導入部材を兼ねていてもよい。
【0062】
また、第2の実施形態の燃料電池モジュールMにおいて、セルスタックと壁部の間のすき間の下部に位置する、下部第二スペーサ7Bを配設しない構成とすることもできる。
【0063】
図7は、第3の実施形態の燃料電池モジュールM3の構造を示す模式的断面図である。また、
図8~
図10は、この燃料電池モジュールM3に用いられている酸素含有ガス導入部材に形成されている、酸素含有ガス供給孔の種々の形状例を示す平面図である。なお、
図8,
図9と、
図10(a)の平面図は、酸素含有ガス導入部材を、
図7(b)の拡大断面図における白抜き矢印方向から見た図であり、先に述べた、酸素含有ガス導入部材の「第二面」(符号4y)に相当する。また、
図10(b)の平面図は、酸素含有ガス導入部材の「第一面」(符号4x)に相当するものである。さらに、前述の第1,第2の実施形態と同様の構成部材については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0064】
図7(a)の断面模式図に示すように、この第3の実施形態の燃料電池モジュールM3においても、第1,第2の実施形態と同様、複数個のスペーサ(第一スペーサ6,第二スペーサ7)が、それぞれの部材間に配設されている。
【0065】
そして、第3の実施形態の燃料電池モジュールM3においては、
図7(a)に示すように、酸素含有ガス導入部材4Bの先端に相当する最下端に、この酸素含有ガス導入部材4Bを支持する第三スペーサ8が配設されている。なお、第三スペーサ8は、「第1の部材」の一例である。
【0066】
この第三スペーサ8は、酸素含有ガス導入部材4Bおよびマニホールド2の両者に接触しつつ、セル配列方向に延びる形状であり、これにより、酸素含有ガス導入部とマニホールドとの間に形成された左右方向のすき間を経由して、セルスタック1A側(図示右側)に供給された酸素含有ガスと、セルスタック1B側(図示左側)に供給された酸素含有ガスとが、左右に行き来することを、抑制している。したがって、セルスタック1A側(図示右側)およびセルスタック1B側(図示左側)の供給される酸素含有ガスの、時間あたりの量が安定し、その結果、セルスタック全体の発電効率を、向上させることができる。なお第三スペーサ8は、左右方向における中央部から端部へと向かうにつれて、上向きに傾いていてもよい。
【0067】
つぎに、
図8~
図10を用いて、右列(気化部3A側)の第一セルスタック1Aと、左列(改質部3B側)の第二セルスタック1Bとの間に配設された酸素含有ガス導入部材4B~4Dについて説明する。
【0068】
先にも述べたように、酸素含有ガス導入部材の下端には、複数の燃料電池セル10に、加温された酸素含有ガスを、セル配列方向であるセルスタック長手方向に、できるだけ供給量を揃えて均一に空気を供給するために、空気の流出孔または噴気孔である供給孔(42~47等)が設けられている。
【0069】
なお、供給孔の従来公知の構造としては、先の
図6に示した、供給孔を、酸素含有ガス導入部材の「第二面」(符号4y)側から見ても、「第一面」(符号4x)側から見ても同じ配置に見える、酸素含有ガス導入部材の中心を挟んで対向・対称な形状と位置に形成されたもの、すなわち、酸素含有ガス導入部材の幅広面のどちらから見ても、同じ形状・配置に見える(反対側が見通せる)供給孔配置のものが、知られている。
【0070】
ところで、比較的高温の酸素含有ガスが供給孔から導出される構造において、当該供給孔に酸素含有ガスが集まるため、供給孔の周囲の酸素含有ガス導入部材の温度が、局所的に上昇する可能性がある。そして、従来の構造のように、酸素含有ガス導入部材の第一面および第二面に、供給孔がそれぞれ対称に位置する場合には、上述する現象がさらに顕著に現れるため、酸素含有ガス導入部材の変形を引き起こすおそれがある。酸素含有ガス導入部材が変形すると、内部を流下する酸素含有ガスの温度分布が不均一になったり、燃料電池セルに対する酸素含有ガスの導入量を、均一にすることができなくなったりするため、燃料電池モジュールの発電効率が低くなるおそれがあった。
【0071】
図8~
図10に示す、実施形態の燃料電池モジュールM3の酸素含有ガス導入部材4B,4C,4Dは、上記したような、酸素含有ガス導入部材内を流下してセルスタックに供給される空気に生じる、種々の問題を軽減することを目的としたものである。その具体的形状や配置について、以下に説明する。
【0072】
図8は、
図7(a)における酸素含有ガス導入部材4Bを、第一面および第二面に直交する側から側面視した図である。言い換えれば、上述の、第3の実施形態(
図7)で用いられていた酸素含有ガス導入部材4Bの、第二面4y側〔第二セルスタック1B側でかつ
図7(b)における白抜き矢印側〕から見た平面図である。
【0073】
図8の酸素含有ガス導入部材4Bは、配列方向において、第一面4xに位置する少なくとも1つの第一供給孔42(点線)の開口位置と、第一供給孔42と対向する領域に最も近接して位置する、第二面4yの第二供給孔43(実線)の開口位置とが異なっている。
【0074】
すなわち、酸素含有ガス導入部材4Bにおいて、局所的な温度上昇を誘発するおそれがある、第一面4xおよび第二面4yにそれぞれ設けられた供給孔42および供給孔43を、配列方向にそれぞれずらして設けたため、酸素含有ガス導入部材4Bの局所的温度上昇による変形を抑制することができる。これにより、酸素含有ガス導入部材4Bの内部を流下する酸素含有ガスの温度分布や、酸素含有ガスの導入量が不均一になることが抑制されるので、燃料電池モジュールM3の発電効率を向上させることができる。
【0075】
なお、「開口位置が異なる」とは、
図8で示すように、第一供給孔42と第二供給孔43との開口部分の一部が重複する場合も含む。また、
図8で示す実施形態においては、全ての第一供給孔42と当該第一供給孔42に対応する第二供給孔43との開口位置が異なるが、局所的に温度上昇がするおそれがある一部分についてのみ、第一供給孔42と第二供給孔43との開口位置とが異なる構成であってもよい。
【0076】
酸素含有ガス導入部材4Bでは、
図8に示すように、第二面4y側〔第二セルスタック1B側〕を平面視した場合、配列方向の中央部で隣接する第二供給孔43(実線)どうしの中心間距離(ピッチ)P
3は、配列方向の端部で隣接する第二供給孔43どうしの中心間距離(ピッチ)P
4より、長くなっていてもよい。
【0077】
なお、点線で示す第一面4x側〔第一セルスタック1A側〕も同様に、配列方向の中央部で隣接する第一供給孔42(点線)のどうしの中心間距離(ピッチ)P1は、配列方向の端部で隣接する第一供給孔42どうしの中心間距離(ピッチ)P2より長くなっていてもよい。また、ここでの中心間距離は、各領域の平均の中心間距離をいう。
【0078】
これにより、セルスタックからの熱の影響を受けて比較的高温になり易い、配列方向における中央部の強度を上げることができるため、酸素含有ガス導入部材4Bの変形を、抑制することができる。
【0079】
また、酸素含有ガス導入部材4Bを流下する酸素含有ガスの流速は、中央部より端部が遅いため、セルスタックの配列方向の端部に導入される酸素含有ガスの量が少なくなるおそれがある。しかしながら、上述の構成にすることで、セルスタックの配列方向に対して、均一に酸素含有ガスを導入することができるため、発電効率を向上させることができる。
【0080】
なお、配列方向の中央部とは、酸素含有ガス導入部材を配列方向に三等分した場合の中央の領域をいう。中心間距離とは、隣接する開口部におけるそれぞれの中心間の距離である。中心間距離(ピッチ)は、中央部における平均の中心間距離と、端部における平均の中心間距離と、を比較することで評価することができる。
【0081】
つぎに、
図9および
図10に記載の酸素含有ガス導入部材4Cおよび4Dは、各供給孔の個々の形状や大きさを変えることにより、セル配列方向の中央部と端部との間で空気供給量に差を生じることを企図したものである。なお、これらの実施形態においては、収納容器20内にセルスタックを1つ収容し、1つのセルスタックに対向する酸素含有ガス導入部材の一方側面にのみ供給孔を設けることもできる。
【0082】
図9に記載の酸素含有ガス導入部材4Cにおける、第二面4y側に位置する第二供給孔45(実線)は、端部近傍の供給孔が、ほぼ円形の中央部に比べ、図に示すように、配列方向に径の延びた楕円形に形成されている。また、第一面4x側に位置する第一供給孔44(点線:隠れ線)も、ほぼ円形の中央部の供給孔に比べ、端部近傍の供給孔が、配列方向に径の延びた楕円形に形成されている。
【0083】
この構成により、酸素含有ガスは、流速の遅い配列方向の端部の供給孔からも導出されやすくなるため、セルスタックの配列方向に対して、均一に酸素含有ガスを導出することができ、発電効率を向上することができる。
【0084】
同様に、
図10に記載の酸素含有ガス導入部材4Dも、
図10(a)に記載の第二面4y側に位置する第二供給孔47(実線)のうち、端部近傍の供給孔の開口径が、中央部に比べ大きくなるよう形成されている。また、
図10(b)に記載の第一面4x側に位置する第一供給孔46(点線:隠れ線)についても同様である。
【0085】
これらの構成により、配列方向における中央部から集中して酸素含有ガスが導出され、中央部の温度が局所的に高くなるため、当該酸素含有ガス導入部材4Dの耐久性が低下することを抑制することができる。
【0086】
ここで、
図10に記載の、第二面4y側に位置する第二供給孔47〔
図10(a)の実線〕と、第一面4x側に位置する第一供給孔46〔
図10(b)の実線〕とを比べると、酸素含有ガス導入部材4Dは、第二面4y側の第二供給孔47〔
図10(a)〕の個数が、第一面4x側の第一供給孔46〔
図10(b)〕の個数より多くなっていることがわかる。
【0087】
すなわち、酸素含有ガス導入部材4Eは、改質器3の気化部3A側に位置する第一セルスタック1Aに対応する、第一面4xの第一供給孔46の開口面積の総和が、改質器3の改質部3B側に位置する第二セルスタック1Bに対応する、第二面4yの第二供給孔47の開口面積の総和より小さくなっている。
【0088】
この構成により、水の気化(吸熱反応)により比較的低温となる改質器3の気化部3A側に供給される酸素含有ガスの量を低減することで、第一セルスタック1Aの上端から排出されるガスにおける燃料ガスの濃度を高くできるため、第一セルスタック1A上端から排出される混合ガスの燃焼状態を安定化できる。
【0089】
つぎに、
図11は、実施形態の燃料電池装置100の一例を示す透過斜視図である。
燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュールMと、熱交換器Eと、燃料電池モジュールMを動作させるための補機と、燃料電池モジュールMおよび補機を収納する外装ケース30とを備えている。なお、
図11においては、補機および一部構成の図示を省略している。
【0090】
支柱31と外装板32から構成される外装ケース30は、その内部が仕切板33により上下に区画されている。上方側は、上述した燃料電池モジュールMおよび熱交換器E等を収容するモジュール収納室34とされ、下方側は、モジュールMを動作させるための補機を収容する補機収納室35として構成されている。
【0091】
実施形態の燃料電池装置100によれば、燃料電池モジュールMを備えることにより、発電効率を向上させることができる。
【0092】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 セルスタック
1A 第一セルスタック
1B 第二セルスタック
1x 第一側面
1y 第二側面
3 改質器
3A 気化器
3B 改質器
4 酸素含有ガス導入部材
4A 酸素含有ガス導入部材
41 第一供給孔
4B 酸素含有ガス導入部材
42 第一供給孔
43 第二供給孔
4C 酸素含有ガス導入部材
44 第一供給孔
45 第二供給孔
4D 酸素含有ガス導入部材
46 第一供給孔
47 第二供給孔
4x 第一面
4y 第二面
5 内部断熱部材
5A 側部断熱材
5B 側部断熱材
5x 内側壁面
5y 内側壁面
6 第一スペーサ
6A 上端部第一スペーサ
6B 下部第一スペーサ
6C 中央部第一スペーサ
7 第二スペーサ
7A 上端部第二スペーサ
7B 下部第二スペーサ
7C 中央部第二スペーサ
8 第三スペーサ
10 燃料電池セル
20 収納容器
100 燃料電池装置
M,M1,M2,M3 燃料電池モジュール
S セルスタック装置