(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】プローバ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220909BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220909BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20220909BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R1/073 A
G01R31/26 J
G01R31/28 K
(21)【出願番号】P 2018069082
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】特許業務法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 勝男
(72)【発明者】
【氏名】有賀 衛
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118320(JP,A)
【文献】特開2013-117476(JP,A)
【文献】特開2000-183120(JP,A)
【文献】特開2003-043079(JP,A)
【文献】特開2004-309257(JP,A)
【文献】特開2015-035577(JP,A)
【文献】特開2005-156253(JP,A)
【文献】特開平07-084003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0292974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 1/073
G01R 31/26-3193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(
9)を有するプローバ;
(1)導電性のウエハ保持面と、前記ウエハ保持面と電気的に導通する導電性のプローブコンタクト面とを上面側に備えるチャックステージ、
(2)支持導電部と、前記支持導電部と電気的に接続されるコンタクト部とをそれぞれ有し、前記チャックステージの前記上面上に配置される表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブ、
(3)前記表面電極用プローブの前記コンタクト部と前記支持導電部との間、又は前記裏面電極用プローブの前記コンタクト部と前記支持導電部との間を接続する導電性のバーであって、前記チャックステージの上面と並行に配置されたインダクタンスキャンセルバー、
(4)前記チャックステージを前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブに対して相対的に移動させる移動手段、
(5)底部導体と側部導体とを有し、前記底部導体と前記側部導体とで囲まれた空間内に前記チャックステージを収容することができる、上面が開口したチャックカバー導電体、
(6)前記インダクタンスキャンセルバーよりも上方に配置され、前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブの前記支持導電部又はそれらと接続される電気的接続線が通過することができる貫通孔を有するとともに、検査時、前記移動手段によって、前記表面電極用プローブの前記コンタクト部が検査対象ウエハ内を相対的に移動するときにも、平面視において、前記チャックカバー導電体の少なくとも前記開口をカバーする大きさを有する上部カバー導電体、
(7)前記チャックカバー導電体と前記上部カバー導電体とを接触させ電気的に導通させる手段
、
(8)前記裏面電極用プローブの前記支持導電部の周囲にあり、前記支持導電部を内部導体とする外部導体であって、前記上部カバー導電体と電気的に導通している外部導体、及び、
(9)前記裏面電極用プローブと前記外部導体とを同電位に保つ手段。
【請求項2】
前記チャックカバー導電体と前記上部カバー導電体とを接触させ電気的に導通させる手段が前記移動手段であり、前記移動手段によって、前記チャックステージを前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブに対して相対的に上下方向に移動させることにより、チャックカバー導電体を前記チャックステージとともに相対的に上下方向に移動させ、前記上部カバー導電体と接触させる手段である請求項
1記載のプローバ。
【請求項3】
前記チャックカバー導電体が、前記上部カバー導電体と接触する部分に、接触時、前記上部カバー導電体に向かって弾性的に付勢される接触子を有している請求項
2記載のプローバ。
【請求項4】
前記コンタクト部と前記支持導電部との間に前記インダクタンスキャンセルバーを有する前記表面電極用プローブ又は前記裏面電極用プローブのコンタクト部が、絶縁体を介して前記上部カバー導電体に支持されている請求項
1~3のいずれかに記載のプローバ。
【請求項5】
前記ウエハ保持面上でウエハを持ち上げる複数のリフトピンと、前記リフトピンを、前記チャックステージの前記ウエハ保持面よりも下方の位置と、前記チャックカバー導電体の側部導体の上端よりも上方の位置との間で上下動させるリフトピン駆動手段を有し、前記チャックステージが前記リフトピンが通過するリフトピン孔を有している請求項
1~4のいずれかに記載のプローバ。
【請求項6】
下記(1)~(7)及び(10)を有するプローバ;
(1)導電性のウエハ保持面と、前記ウエハ保持面と電気的に導通する導電性のプローブコンタクト面とを上面側に備えるチャックステージ、
(2)支持導電部と、前記支持導電部と電気的に接続されるコンタクト部とをそれぞれ有し、前記チャックステージの前記上面上に配置される表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブ、
(3)前記表面電極用プローブの前記コンタクト部と前記支持導電部との間、又は前記裏面電極用プローブの前記コンタクト部と前記支持導電部との間を接続する導電性のバーであって、前記チャックステージの上面と並行に配置されたインダクタンスキャンセルバー、
(4)前記チャックステージを前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブに対して相対的に移動させる移動手段、
(5)底部導体と側部導体とを有し、前記底部導体と前記側部導体とで囲まれた空間内に前記チャックステージを収容することができる、上面が開口したチャックカバー導電体、
(6)前記インダクタンスキャンセルバーよりも上方に配置され、前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブの前記支持導電部又はそれらと接続される電気的接続線が通過することができる貫通孔を有するとともに、検査時、前記移動手段によって、前記表面電極用プローブの前記コンタクト部が検査対象ウエハ内を相対的に移動するときにも、平面視において、前記チャックカバー導電体の少なくとも前記開口をカバーする大きさを有する上部カバー導電体、
(7)前記チャックカバー導電体と前記上部カバー導電体とを接触させ電気的に導通させる手段、及び、
(10)前記コンタクト部と前記支持導電部との間に前記インダクタンスキャンセルバーを有する前記表面電極用プローブ又は前記裏面電極用プローブのコンタクト部を、絶縁体を介して前記上部カバー導電体に支持する手段。
【請求項7】
前記裏面電極用プローブの前記支持導電部が、その周囲に、前記支持導電部を内部導体とする外部導体を有しており、前記外部導体が、前記上部カバー導電体と電気的に導通している請求項6記載のプローバ。
【請求項8】
前記チャックカバー導電体と前記上部カバー導電体とを接触させ電気的に導通させる手段が前記移動手段であり、前記移動手段によって、前記チャックステージを前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブに対して相対的に上下方向に移動させることにより、チャックカバー導電体を前記チャックステージとともに相対的に上下方向に移動させ、前記上部カバー導電体と接触させる手段である請求項6又は7記載のプローバ。
【請求項9】
前記チャックカバー導電体が、前記上部カバー導電体と接触する部分に、接触時、前記上部カバー導電体に向かって弾性的に付勢される接触子を有している請求項8記載のプローバ。
【請求項10】
前記ウエハ保持面上でウエハを持ち上げる複数のリフトピンと、前記リフトピンを、前記チャックステージの前記ウエハ保持面よりも下方の位置と、前記チャックカバー導電体の側部導体の上端よりも上方の位置との間で上下動させるリフトピン駆動手段を有し、前記チャックステージが前記リフトピンが通過するリフトピン孔を有している請求項6~9のいずれかに記載のプローバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプローバに関し、詳細には、ウエハ基板の両面に電極を有する半導体デバイスの電気的特性をウエハ状態のままで検査する際に用いられるプローバに関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタ、パワーMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電力用半導体デバイスや、LED、半導体レーザなどの半導体デバイスには、電流がチップの上下に流れるように構成されて、ウエハ基板の表裏両面に電極を有しているものがある。このため、このような半導体デバイスの電気的特性をウエハ状態のままで検査するには、ウエハの表裏両面と電気的な接続関係を構築できる構成が必要であり、被検査対象となる半導体デバイスの表面に測定用プローブを接触させるとともに、半導体デバイスの裏面にも電極を接触させるべく、種々のプローバが提案されている。
【0003】
ウエハの表裏両面と電気的な接続関係を構築できる構成としては、例えば、ウエハの表面側には半導体デバイスの個々の表面電極と接触するプローブを設け、ウエハの裏面側には、少なくとも上面が導電性のチャックステージを配置して、検査時には、検査対象ウエハをこのチャックステージ上に載置することによって、チャックステージの上面全体をウエハに形成されている全半導体デバイスの裏面電極と接触する電極として用いることが考えられる。
【0004】
しかし、このような構成をとる場合には、ウエハ上に形成されている全半導体デバイスを順次検査するために、上部に配置されているプローブに対してチャックステージを移動させる必要があり、チャックステージと測定装置とを接続するケーブルの長さが必然的に長くなることが避けられない。ウエハ裏面と接触する電極として使用されるチャックステージと測定装置とを接続するケーブルの長さが長くなると、ケーブルによって構成される測定経路の寄生インダクタンスが大きくなり、検査対象である半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性が得られないという欠点がある。このため、ウエハ状態での検査をパスした半導体デバイスであっても、その後、ボンディング、モールディング、バーイン工程等を経た後に行われる最終的なフルスペック検査において特性不良が発見される場合があり、ウエハ状態での検査後に行われる各種工程が無駄になり、製品コストの上昇や廃棄物量の増加といった不都合を招いている。
【0005】
一方、特許文献1、2においては、半導体デバイスを、半導体デバイスよりも大きな導電性の基台上に載置し、表面電極用のプローブを半導体デバイスの表面に接触させると同時に、裏面電極用のプローブを前記半導体デバイスが載置されていない前記基台の露出部分に接触させるようにしたプローバが開示されている。しかし、これら特許文献1、2に開示されているプローバは、個別に存在する半導体デバイスを検査するものであって、半導体デバイスをウエハ状態のままで検査するものではなく、表裏両面に電極を有する半導体デバイスの特性をウエハ状態のままで如何に精度良く測定するかについて何らの示唆も与えるものではない。
【0006】
上記のような状況に鑑み、本出願人は特許文献3において、半導体デバイスをウエハ状態のままで検査する装置として、チャックステージの上面に検査対象となるウエハを保持するウエハ保持部と、ウエハ保持部とほぼ同大のプローブコンタクト領域とを配置し、前記ウエハ保持部と前記プローブコンタクト領域を電気的に導通させるとともに、表面電極用プローブと裏面電極用プローブとを前記チャックステージの上方に水平方向に一定の距離を隔てて配置するようにしたプローバを提案した。
【0007】
このプローバによれば、前記チャックステージを移動させて表面電極用プローブが検査対象ウエハ内を相対的に移動したときにも、裏面電極用プローブが、表面電極用プローブと前記一定の距離を維持したまま、前記プローブコンタクト領域内を相対的に移動することができるので、測定装置と表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブとの電気的接続経路の長さを常に一定の最短長さに維持することが可能となり、測定経路に発生する寄生インダクタンスを最小にして、半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性を得ることができるという極めて優れた利点が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-40926号公報
【文献】特開2008-101944号公報
【文献】特開2013-118320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人が先に特許文献3において提案したプローバは、上記のとおり、極めて優れた利点を備えるものであるが、本発明者らが得たその後の知見によれば、上記プローバにおいても、チャックステージを通じて外来ノイズを受けたり、電流がリークしたりすることがあり、特に微少電流領域の測定において誤差を生じる恐れがあることが判明した。また、容量測定時には、通常はアースされているプローバ筐体との間に発生する浮遊容量の影響を受け、測定誤差が大きくなることがあった。
【0010】
本発明は、本出願人が先に特許文献3において提案したプローバをさらに改良するために為されたもので、測定装置と表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブとの電気的接続経路の長さを常に一定の最短長さに維持することにより、測定経路に発生する寄生インダクタンスを最小にすることができるという上記プローバの特徴を活かしつつ、チャックステージからの電流リークや外来ノイズの影響を低減し、さらにはチャックステージの対プローバ筐体浮遊容量を無くして、半導体デバイスの検査をウエハ状態のままで精度良く行うことができるプローバを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、底部導体と側部導体を有し、上面が開口したチャックカバー導電体の内部にチャックステージを収容するとともに、このチャックカバー導電体の上面開口をチャックステージの上方から上部カバー導電体で覆い、プロービング時に前記チャックカバー導電体と上部カバー導電体とを互いに接触導通させることによって、最短の接続経路で前記チャックステージを囲繞する導電体のガード又はシールドを形成することができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記(1)~(7)を有するプローバを提供することによって上記課題を解決するものである;
(1)導電性のウエハ保持面と、前記ウエハ保持面と電気的に導通する導電性のプローブコンタクト面とを上面側に備えるチャックステージ、
(2)支持導電部と、前記支持導電部と電気的に接続されるコンタクト部とをそれぞれ有し、前記チャックステージの前記上面上に配置される表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブ、
(3)前記表面電極用プローブの前記コンタクト部と前記支持導電部との間、又は前記裏面電極用プローブの前記コンタクト部と前記支持導電部との間を接続する導電性のバーであって、前記チャックステージの上面と並行に配置されたインダクタンスキャンセルバー、
(4)前記チャックステージを前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブに対して相対的に移動させる移動手段、
(5)底部導体と側部導体とを有し、前記底部導体と前記側部導体とで囲まれた空間内に前記チャックステージを収容することができる、上面が開口したチャックカバー導電体、
(6)前記インダクタンスキャンセルバーよりも上方に配置され、前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブの前記支持導電部又はそれらと接続される電気的接続線が通過することができる貫通孔を有するとともに、検査時、前記移動手段によって、前記表面電極用プローブの前記コンタクト部が検査対象ウエハ内を相対的に移動するときにも、平面視において、前記チャックカバー導電体の少なくとも前記開口をカバーする大きさを有する上部カバー導電体、
(7)前記チャックカバー導電体と前記上部カバー導電体とを接触させ電気的に導通させる手段。
【0013】
本発明に係るプローバによれば、上記のとおり、検査時、ウエハ保持面とプローブコンタクト面とを有するチャックステージを、互いに電気的に導通するチャックカバー導電体及び上部カバー導電体によって囲繞することができるので、例えば、上部カバー導電体をチャックステージと同電位にしておくことにより、チャックカバー導電体及び上部カバー導電体をガード又はシールドとして機能させ、外来ノイズの影響やチャックステージからの電流リークを低減させたり、チャックステージの対プローバ筐体浮遊容量を無くすことができる。これにより、本発明に係るプローバによれば、半導体素子の電気的特性の検査をより精度良く行うことができるとともに、チャックステージを測定端子として用いる縦型デバイスの容量測定をより小さな測定誤差で実行することができるという利点が得られる。
【0014】
さらに、本発明に係るプローバは、その好適な一態様において、前記裏面電極用プローブの支持導電部が、その周囲に、前記支持導電部を内部導体とする外部導体を有しており、前記外部導体が、上部カバー導電体と電気的に導通していることを特徴としている。上述したとおり、本発明が前提とするプローバにおいては、チャックステージを移動させて表面電極用プローブのコンタクト部が検査対象ウエハ内を相対的に移動したときにも、裏面電極用プローブが、表面電極用プローブと一定の距離を維持したまま、プローブコンタクト領域内を相対的に移動することができるので、測定装置と裏面電極用プローブとの電気的接続経路の長さは常に一定の最短長さに維持されている。したがって、この裏面電極用プローブの支持導電部を内部導体とする外部導体に前記上部カバー導電体を導通させることによって、常に必要最低限の長さの電気的接続経路を介して、上部カバー導電体及びこれと導通するチャックカバー導電体に必要な電位を与えることができるという利点が得られる。
【0015】
また、本発明に係るプローバは、その好適な一態様において、チャックステージを表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブに対して相対的に移動させる移動手段が、チャックカバー導電体と上部カバー導電体とを接触させ電気的に導通させる手段を兼ねている。すなわち、チャックカバー導電体は、通常、チャックステージと同じ移動手段上に配置されているので、前記移動手段によってチャックステージを相対的に上下方向に移動させると、チャックカバー導電体も同様に上下方向に移動し、その側部導体の上端を上部カバー導電体の下面と接触させ、チャックカバー導電体と上部カバー導電体とを電気的に導通させることができる。
【0016】
接触による電気的導通をより確実なものとするために、チャックカバー導電体は、上部カバー導電体と接触する側部導体の上部に、接触時、上部カバー導電体に向かって弾性的に付勢される接触子を有しているのが好ましい。接触子は、それが導電性で、接触時、上部カバー導電体に向かって弾性的に付勢されるものである限り、その構造等に特段の制限はなく、例えば、バネで伸縮自在に付勢された先端部を有するポゴピンや、弾性を有する導電性の板状部材を適宜の形状に曲折させたものなどを接触子として用いることができる。
【0017】
本発明のプローバにおいては、コンタクト部と支持導電部との間にインダクタンスキャンセルバーを有する表面電極用プローブ又は裏面電極用プローブのコンタクト部は、絶縁体を介して上部カバー導電体に支持されているのが好ましい。すなわち、コンタクト部がインダクタンスキャンセルバーを介して支持導電部と接続されている場合には、コンタクト部とインダクタンスキャンセルバーとが支持導電部の位置だけで支持される片持ち梁構造となり、コンタクト部が外部からの振動を受けて上下方向に振動したり、自重で下方に位置ズレを起こしたりする恐れがあるが、少なくともそのコンタクト部が絶縁体を介して上部カバー導電体に支持されている場合には、不安定な片持ち梁構造となることが回避され、コンタクト部の先端を所定の高さに確実に保持することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明のプローバは、その好適な一態様において、ウエハを持ち上げる複数のリフトピンを有しているとともに、前記リフトピンを、前記チャックステージのウエハ保持面よりも下方の位置と、チャックカバー導電体の側部導体の上端よりも上方の位置との間で上下動させるリフトピン駆動手段を有している。これにより、底部導体と側部導体とを有するチャックカバー導電体内にチャックステージを収容したままの状態で、汎用のウエハ交換装置を用いて、ウエハ保持面上に検査対象ウエハを載置したり、検査が終了したウエハをウエハ保持面上から外部へと搬出したりすることが容易に行える。なお、チャックステージが前記リフトピンが通過する部分にリフトピン孔を有していることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプローバによれば、ウエハ保持面とプローブコンタクト面を有するチャックステージが、チャックステージ上面と並行に配置されたインダクタンスキャンセルバー及びそれに接続されるコンタクト部とともに、検査時、チャックカバー導電体及び上部カバー導電体で覆われるので、外来ノイズの影響を避け、かつ電流リークを最小限に抑えながら、ウエハ上に形成されている半導体デバイスの電気的特性を精度良く検査することができるという利点が得られる。また、チャックステージがチャックカバー導電体及び上部カバー導電体で覆われるので、チャックステージの対プローバ筐体浮遊容量を無くして、ウエハ上に形成されている半導体デバイスの容量測定を、チャックステージを測定端子として、精度良く測定することができるという利点が得られる。
【0020】
さらに、本発明のプローバによれば、上部カバー導電体への必要な電位の供給は裏面電極用プローブの支持導電部を内部導体とする外部導体を介して行うことができ、さらに、チャックカバー導電体への必要な電位供給はチャックカバー導電体を上部カバー導電体と接触、導通させることによって行われるので、ガード又はシールドとして機能するチャックカバー導電体及び上部カバー導電体への電位供給に使用される電気的接続経路の長さは極めて短くすることができる。これにより、本発明のプローバにおいては、電気的接続経路に付随して発生する浮遊容量を最低限に抑えつつ、チャックステージを取り囲むガード又はシールドを実現することができるという極めて優れた利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のプローバの一例を示す正面部分断面図である。
【
図7】表面電極用プローブがウエハの上面内を相対的に移動したときの上部カバー導電体とチャックカバー導電体の上面開口との位置関係を示す平面図である。
【
図8】表面電極用プローブがウエハの上面内を相対的に移動したときの上部カバー導電体とチャックカバー導電体の上面開口との位置関係を示す平面図である。
【
図9】表面電極用プローブがウエハの上面内を相対的に移動したときの上部カバー導電体とチャックカバー導電体の上面開口との位置関係を示す平面図である。
【
図10】表面電極用プローブがウエハの上面内を相対的に移動したときの上部カバー導電体とチャックカバー導電体の上面開口との位置関係を示す平面図である。
【
図11】チャックステージの一例を示す平面図である。
【
図12】チャックステージの他の一例を示す平面図である。
【
図14】本発明のプローバの動作を説明する図である。
【
図15】本発明のプローバの動作を説明する図である。
【
図16】本発明のプローバの動作を説明する図である。
【
図17】本発明のプローバの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明を説明するが、本発明のプローバが図示のものに限られないことは勿論である。
【0023】
図1は、本発明のプローバの一例を示す正面部分断面図である。
図1において、1は本発明のプローバであり、2はその筐体、3はチャックステージ、4はチャックカバー導体である。チャックカバー導電体4は底部導体4bと側部導体4sを有しており、その上面は開口している。5はチャックステージ3とチャックカバー導体4との間に配置された絶縁体である。図に示すとおり、チャックカバー導電体4の側部導体4sの高さは、その先端部がチャックステージ3の上面よりも高くなるように設定されており、チャックステージ3は、絶縁体5とともに、チャックカバー導電体4の底部導体4bと側部導体4sとで囲まれた空間内に嵌り込み、当該空間内に収容された状態にある。
【0024】
6は絶縁板、7は断熱板、8はXYZ-θステージであり、XYZ-θステージ8によって、その上に配置されている断熱板7、絶縁板6、チャックカバー導体4、及び絶縁体5を、チャックステージ3と共にXYZ及びθ方向に移動させることができるようになっている。チャックステージ3の上面には、後述するウエハ保持面とプローブコンタクト面が設けられており、ウエハ保持面の上には検査対象となるウエハWが載置、保持されている。
【0025】
9は上部カバー導体であり、上部カバー導体9は絶縁体10を介して筐体2に取り付けられている。11は表面電極用プローブ、12は裏面電極用プローブ、13は測定装置である。表面電極用プローブ11は、その先端がウエハW上に形成されている半導体デバイスの表面電極とコンタクトするコンタクト部11Aと、コンタクト部11Aに接続され、コンタクト部11Aを支持する支持導電部11Bとから構成されており、支持導電部11Bは、電気的接続線16を介して測定装置13に接続されている。14は、支持導電部11B及び電気的接続線16を内部導体とする外部導体であり、支持導電部11B及び電気的接続線16と外部導体14とで同軸線を構成している。
【0026】
一方、裏面電極用プローブ12は、その先端がチャックステージ3の上面に形成されているプローブコンタクト面とコンタクトするコンタクト部12Aと、支持導電部12Bを有しており、支持導電部12Bは、電気的接続線17を介して測定装置13に接続されている。15は、支持導電部12B及び電気的接続線17を内部導体とする外部導体であり、支持導電部12B及び電気的接続線17と外部導体15とで同軸線を構成している。
【0027】
12Cはインダクタンスキャンセルバーであり、導電性の材料で構成され、一端がコンタクト部12Aに、他端が支持導電部12Bに接続され、かつ、チャックステージ3の上面と並行に配置されている。18は支持絶縁体であり、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aの上面と、上部カバー導体9の下面との間に配置され、コンタクト部12Aを上部カバー導体9の下面に支持、固定している。
【0028】
図2は、
図1における表面電極用プローブ11及び裏面電極用プローブ12の付近と測定装置13だけを取り出して示す部分断面図である。図に示すとおり、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aの先端は、ウエハ保持面に載置されるウエハWの厚さWdだけ、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aの先端よりも上方に位置しており、チャックステージ3をXYZ-θステージ8によって表面電極用プローブ11及び裏面電極用プローブ12に対して相対的に上昇させると、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aの先端と、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aの先端とは、ほぼ同時に、ウエハW上に形成されている半導体デバイスの表面電極及びチャックステージ3のプローブコンタクト面にコンタクトすることになる。
【0029】
測定装置13は、電源P1、P2と、電流計Am1、Am2と、オペアンプOP1、OP2を有しており、オペアンプOP1及びOP2が、それぞれボルテージフォロアー回路を構成し、その出力は、表面電極用プローブ11の外部導体14及び裏面電極用プローブ12の外部導体15にそれぞれ接続されている。これにより、表面電極用プローブ11とその外部導体14には同じ電圧が掛かり、両者は同電位に保たれるとともに、裏面電極用プローブ12とその外部導体15にも同じ電圧が掛かり、両者は同電位に保たれることになる。
【0030】
なお、本例においては、測定装置13は半導体デバイスに電圧を加えて流れる電流を計測する測定装置であるが、本発明のプローバ1に接続される測定装置は、このタイプのものに限られるものではない。半導体デバイスに電流を流してそのときの電圧を計測する測定装置であっても良いし、測定装置13としてLCRメータを用いて容量等を測定するようにしても良い。いずれにせよ、少なくとも裏面電極用プローブ12と外部導体15とに同じ電圧を掛けて両者を同電位に保つことができる手段が存在すれば良く、その手段は測定装置13内にあっても良いし、測定装置13とは別に設けられていても良い。
【0031】
後述するとおり、外部導体15は上部カバー導電体9並びにチャックカバー導電体4と電気的に接続され、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aはチャックステージ3のプローブコンタクト面に接触するので、裏面電極用プローブ12と外部導体15とが同じ電位であれば、チャックステージ3と、それを囲繞する上部カバー導電体9及びチャックカバー導電体4とは同電位になり、上部カバー導電体9及びチャックカバー導電体4をガード又はシールドとして機能させることができる。
【0032】
図3は
図2の部分拡大図である。
図3において、19は接続導体であり、接続導体19によって裏面電極用プローブ12の外部導体15と上部カバー導電体9とは電気的に導通状態に接続されている。
【0033】
なお、上部カバー導体9と同電位にすべきものは裏面電極用プローブの外部導体であるので、もしも表面電極用プローブ11が裏面電極用プローブとして使用される場合には、その外部導体14と上部カバー導体9とを接続導体によって電気的に接続すれば良い。
【0034】
図4は、
図1を絶縁体10と上部カバー導電体9との間に位置するX-X’線に沿って切断した断面の平面図であり、上部カバー導電体9の平面図に相当する。
図4に示すとおり、上部カバー導電体9は、表面電極用プローブ11の支持導電部11B及び裏面電極用プローブ12の支持導電部12Bが上部カバー導電体9を上下に貫通することができる貫通孔9hを有している。表面電極用プローブ11及び裏面電極用プローブ12は、その支持導電部11B及び12Bの部分で上部カバー導電体9を上下に貫通していても良いし、支持導電部11B及び12Bにそれぞれ接続されている電気的接続線16及び17の部分で上部カバー導電体9を上下に貫通していても良い。
【0035】
なお、外部導体15は接続導体19によって上部カバー導電体9と電気的に接続されることになるので、外部導体15の下端は少なくとも上部カバー導電体9の位置まで延在しているのが好ましい。因みに図示の例では、外部導体14及び15の下端は、上部カバー導電体9の厚さの略中央にまでしか達していないけれども、外部導体14及び15は上部カバー導電体9を貫通孔9hの部分で上下方向に貫通し、その下端が上部カバー導電体9の下面よりも下方に突出していても良い。
【0036】
図5は、
図1をY-Y’線に沿って切断した断面の平面図である。便宜上、上部カバー導電体9と貫通孔9hを破線で示してある。
図5に示すとおり、チャックステージ3は長方形の両端に半円をつなげた平面形状を有している。チャックカバー導電体4は、底部導体4bと側部導体4sを有しており、底部導体4bの平面形状は、チャックステージ3よりも一回り大きく、チャックステージ3と同様に長方形の両端に半円をつなげた平面形状を有している。
【0037】
図6は、
図5の正面図である。
図5及び
図6に示すとおり、側部導体4sは棒状であり、チャックカバー導電体4の底部導体4bの縁部に沿って、チャックステージ3を外周から取り囲むように複数本、立設されている。側部導体4sの先端部は、内蔵されたバネ等の弾性手段によって先端部が上方に向かって付勢されたポゴピン構造を有している。
【0038】
なお、上記の例においては、側部導体4sは、底部導体4bの縁部に沿って間隔をあけて配置された棒状部材であるが、側部導体4sの形状は棒状に限られない。全体が連続した円筒形状の導電体で、その下面において底部導体4bと連結されたものであっても良いし、複数の平板状或いは曲板状の導電体を間隔をあけて底部導体4bの縁部に沿って間隔をあけて配置したものであっても良い。
【0039】
図7~
図10は、XYZ-θステージ8を作動させて、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aを検査対象ウエハWの上面内を相対的に移動させたときの上部カバー導電体9とチャックカバー導電体4の上面開口4Tとの関係を示す平面図である。便宜上、上部カバー導電体4とウエハW、並びにインダクタンスキャンセルバー12Cの一部と、支持絶縁体18とは破線で示してある。
【0040】
図7は表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aが検査対象ウエハWの上面内を相対的に移動して、図中、ウエハの最も手前側に移動したとき、
図8は最も左側に移動したとき、
図9は最も右側に移動したとき、
図10は最も奥側に移動したときをそれぞれ表している。
図7~
図10に示すとおり、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aが検査対象ウエハWの上面内を相対的に移動しても、チャックカバー導電体4の上面開口4Tは、平面視において、常に上部カバー導電体9で覆われており、上部カバー導電体9の下面から外にはみ出すことがない。
【0041】
換言すれば、上部カバー導電体9の大きさは、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aが検査対象ウエハWの上面内を相対的に移動するときにも、平面視において、チャックカバー導電体4の上面開口4Tが上部カバー導電体9よりも外側にはみ出さない大きさに選ばれている。これにより、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aが検査対象ウエハWの上面内のどことコンタクトする位置に移動していても、XYZ-θステージ8を作動させて、チャックステージ3とともにチャックカバー導電体4を上部カバー導電体9に向かって相対的に上昇させることによって、チャックカバー導電体4の側部導体4sと上部カバー導電体9の下面とは接触し、電気的導通を確実に実現することができる。
【0042】
図11は、チャックステージ3だけを取り出して示す平面図である。図において、Waはチャックステージ3の上面に設定されているウエハ保持面であり、Caは、同じくチャックステージ3の上面に設定されているプローブコンタクト面である。図に示すとおり、ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとは、共にチャックステージ3の上面に設定されており、共に上面側に位置している。
【0043】
20hは、チャックステージ3のウエハ保持面Waに設けられたリフトピン通過用のリフトピン孔である。チャックステージ3は防錆メッキ処理された銅などの導電性の材料で構成されているので、ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとは互いに電気的に導通状態にある。なお、ウエハ保持面Waには、図示しない多数の吸着孔が設けられており、適宜の吸引手段を介して負圧に吸引されることにより、ウエハ保持面Wa上に検査対象ウエハを吸着、保持する。ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとは、通常、略同じ大きさに設定されており、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aが、ウエハ保持面Waに保持されているウエハ内を相対的に移動すると、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aは、プローブコンタクト面Ca内を相対的に移動することになる。
【0044】
図12は、チャックステージ3の他の一例を示す平面図、
図13はその正面図である。
図12及び
図13に示す例において、ウエハ保持面Waは、チャックステージ3上に着脱自在に保持されるウエハチャックプレートWpの上面に、また、プローブコンタクト面Caは、チャックステージ3上に着脱自在に保持されるコンタクトプレートCpの上面に、それぞれ設けられており、共にチャックステージ3の上面側に位置している。
【0045】
ウエハチャックプレートWp及びコンタクトプレートCpは、共に防錆メッキ処理された銅などの導電性の材料で構成されており、かつ、チャックステージ3についても同様であるので、ウエハチャックプレートWpの上面とコンタクトプレートCpの上面とは、チャックステージ3を介して、電気的に導通状態となっている。
【0046】
20hは、ウエハチャックプレートWpに設けられたリフトピン通過用のリフトピン孔であり、ウエハチャックプレートWpの下方に存在するチャックステージ3の対応する位置にも、リフトピン孔20hは設けられている。なお、ウエハチャックプレートWpのウエハ保持面Waにも、図示しない多数の吸着孔が設けられており、適宜の吸引手段を介して負圧に吸引されることにより、ウエハ保持面Wa上に検査対象ウエハを吸着、保持することができるようになっている。
【0047】
なお、チャックステージ3が、その上面に直接ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caを備えるのではなく、
図12及び
図13に示すように、チャックステージ3とは別にウエハチャックプレートWp及びコンタクトプレートCpを有し、その上面をウエハ保持面Wa及びプローブコンタクト面Caとしている場合には、プローバ1を使用中に、仮に、ウエハ保持面Waやプローブコンタクト面Caが汚れたり、破損したりしても、適宜、新たなウエハチャックプレートWp或いはコンタクトプレートCpと交換することができるので、極めて便利である。
【0048】
図1に示すプローバ1及び測定装置13を使用する場合を例に、本発明に係るプローバ1の動作を説明する。
【0049】
図14は、
図1と同様に、本発明に係るプローバ1の正面部分断面図であり、ウエハWが存在せず、XYZ-θステージ8が作動して、チャックステージ3がチャックカバー導電体4などとともに下方位置まで下降するとともに、リフトピン20が、図示しないリフトピン駆動手段によって駆動され、チャックステージ3に設けられているリフトピン孔20hを通って、チャックステージ3のウエハ保持面Wa上のウエハ受取位置まで上昇した状態を示している。
図14に見られるとおり、ウエハ受取位置において、リフトピン20の上端は、チャックカバー導電体4の側部導体4sの上端よりも長さδだけ上方に位置している。
【0050】
図15は、
図14に示す状態から、図示しないウエハ搬送装置が作動して、検査対象ウエハWをウエハ受取位置にあるリフトピン20上に載置した状態を示している。ウエハ受取位置においてリフトピン20の上端はチャックカバー導電体4の側部導体4sの上端よりも高い位置にあり、リフトピン20上に載置されたウエハWの下面と側部導体4sの間には、汎用されているウエハ搬送装置のフォーク部分が通過できる十分な間隙が残されているので、リフトピン20上に検査対象ウエハWを無理なく載置することができる。
【0051】
図16は、
図15に示す状態から、リフトピン駆動手段が作動して、リフトピン20を待機位置まで下降させた状態を示している。
図16に見られるとおり、待機位置において、リフトピン20の上端はチャックステージ3のウエハ保持面Waよりも下方に位置しており、リフトピン20がその上にウエハWを載置したまま待機位置まで下降することによって、ウエハWをウエハ保持面Wa上に載置することができる。
【0052】
ウエハWがウエハ保持面Wa上に載置されると、図示しない吸引手段が作動して、ウエハ保持面Wa上に開口する多数の吸着孔を負圧に吸引し、その上にあるウエハWを吸着、保持する。
【0053】
図17は、
図16に示す状態から、XYZ-θステージ8が作動して、チャックステージ3を表面電極用プローブ11及び裏面電極用プローブ12に向けて上昇させ、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aを、ウエハW上に形成されている半導体デバイスの表面電極に、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Bを、チャックステージ3上のプローブコンタクト面Caに接触させた状態を示している。このとき、同じくXYZ-θステージ8上に位置しているチャックカバー導電体4も、チャックステージ3と同様に上昇し、側部導体4sの上端が上部カバー導電体9の下面と接触する。側部導体4sの上端には、例えばポゴピン構造を有し、上方に向かって弾性的に付勢されている接触子が備えられているので、接触時、側部導体4sの上端と上部カバー導電体9の下面とより確実に接触し、十分な電気的導通が実現される。
【0054】
この状態で測定装置13が作動し、必要な電気信号を裏面電極用プローブ12に加えるとともに、表面電極用プローブ11から測定装置13に戻ってくる電気信号を測定し、必要な検査、測定が行われるとともに、裏面電極用プローブ12の外部導体15には、ボルテージフォロアー回路を構成するオペアンプOP2から、裏面電極用プローブ12の電気的接続線17に印加されるのと同電位の電圧が印加される。
図18は、この状態にあるときのプローバ1の要部を拡大して示す図である。
【0055】
図18に示すとおり、裏面電極用プローブ12の電気的接続線17に印加された電圧は、裏面電極用プローブ12の支持導電部12B、インダクタンスキャンセルバー12C、及びコンタクト部12Aを介してチャックステージ3に印加される。一方、外部導体15と上部カバー導電体9とは接続導体19によって電気的に接続されており、上部カバー導電体9の下面とチャックカバー導電体4の側部導体4sとは電気的に接触状態にあるので、上部カバー導電体9及びチャックカバー導電体4と外部導体15とは同電位になり、チャックステージ3とも同電位になる。
【0056】
これにより、チャックステージ3を囲繞するチャックカバー導電体4及び上部カバー導電体9は、チャックステージ3に対し、ガード又はシールドとして機能することになり、外来ノイズの影響やチャックステージ3からの電流リークを低減するとともに、チャックステージ3とプローバ1の筐体2との間の浮遊容量もなくすことができ、極めて精度の高い測定、検査を行うことが可能となる。
【0057】
このように、本発明のプローバ1においては、裏面電極用プローブ12の外部導体15が、接続導体19を介して最短距離で上部カバー導電体9及びチャックカバー導電体4と電気的に接続されるので、接続経路に発生する浮遊容量を最小に抑制しながら、ガード又はシールドを実現することができるという利点が得られる。
【0058】
なお、測定時には、インダクタンスキャンセルバー12Cとチャックステージ3には、
図18に白矢印と黒矢印で示すとおり、逆方向の電流が流れるが、インダクタンスキャンセルバー12Cがチャックステージ3の上面と並行に配置されているので、チャックステージ3中を流れる電流によって発生される磁界と、インダクタンスキャンセルバー12C中を流れる電流によって発生される磁界とは、向きが逆になり、互いに相殺される。したがって、表面電極用プローブ11のコンタクト部11Aと、裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aとの間の電流経路における実効インダクタンスを低減することができ、より精度の高い測定が可能となる。
【0059】
また、このとき、インダクタンスキャンセルバー12Cが接続されている裏面電極用プローブ12のコンタクト部12Aは、支持絶縁体18を介して上部カバー導電体9に支持されているので、プローブコンタクト面Caとの接触を繰り返しても、コンタクト部12Aの先端部の高さが変化する恐れがなく、常に同一高さを保ちながら、一定の安定したコンタクト条件で、コンタクト部12Aをプローブコンタクト面Caに接触させることができる。さらに、コンタクト部12Aは、支持絶縁体18を介して上部カバー導電体9に支持され、同一高さに安定して支持されているので、コンタクト部12Aに接続されているインダクタンスキャンセルバー12Cも、そのコンタクト部12Aとの接続部において、同一高さに安定して支持されることになり、チャックステージ3の上面との並行関係が変化せず、インダクタンスキャンセルバーとしての機能が損なわれる恐れがない。
【0060】
なお、上記の説明では、チャックステージ3としては、長方形の両端に半円をつなげた平面形状を有しているものを示したが、チャックステージ3の平面形状はこれに限定されるものではない。例えば、チャックステージ3の平面形状は矩形や多角形、楕円等の形状であっても良いし、その他の形状であっても良い。また、上記の説明では、ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとは、共に、チャックステージ3の連続した導電性の上面の一部を占める部分領域として設けられているが、これに限定されない。例えば、上述したチャックステージ3では、ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caの並び方向において全て一体的に連続しているが、ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとの間の領域において、一部又は複数箇所が欠落して部分的に連続していてもよい。また、ウエハ保持面Waを含む部分とプローブコンタクト面Caを含む部分とを別々に構成し、それら部分同士を連結して電気的に接続してもよいし、それら部分間を一つ又は複数の導電性部材で接続してもよい。また、ウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとの間に非導電性の領域を有していても良く、その場合には、互いに電気的に分離されているウエハ保持面Waとプローブコンタクト面Caとを、一つ又は複数の箇所で電気的に接続すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したとおり、本発明のプローバによれば、極めて短い接続経路によって、チャックステージを取り囲むガード又はシールドを実現することができ、外来ノイズの影響や電流リークを低減することができるとともに、チャックステージの対プローバ筐体浮遊容量を無くして、精度の高い測定並びに検査を行うことができる。本発明の産業上の利用可能性には多大のものがある。
【符号の説明】
【0062】
1 プローバ
2 筐体
3 チャックステージ
4 チャックカバー導電体
5、10 絶縁体
8 XYZ-θステージ
9 上部カバー導電体
11 表面電極用プローブ
12 裏面電極用プローブ
13 測定装置
14、15 外部導体
16、17 電気的接続線
18 支持絶縁体
19 接続導体
20 リフトピン
W ウエハ
Wa ウエハ保持面
Ca プローブコンタクト面
Wp ウエハチャックプレート
Cp コンタクトプレート