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特許7138464耐久性に優れた防汚性能を有する合成皮革
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】耐久性に優れた防汚性能を有する合成皮革
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20220909BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220909BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
D06N3/14 102
B32B27/12
B32B27/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018073144
(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公開番号】P2019183309
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯永 英典
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 仁志
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-076157(JP,A)
【文献】特開2013-107254(JP,A)
【文献】特開2015-214773(JP,A)
【文献】特開昭50-048101(JP,A)
【文献】特開平08-337975(JP,A)
【文献】特開2007-191820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00- 7/06
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層された合成皮革において、
表面処理層は、水系ポリウレタン樹脂と、親水性化合物と、カルボジイミド系架橋剤とを含むものであり、
親水性化合物は、ポリビニルアルコールに、下記の一般式1で表される化合物をグラフ ト化させたものであることを特徴とする防汚性能を有する合成皮革。
(式1)

(式中、mは整数を表す。)
【請求項2】
前記親水性化合物は、表面処理層における水系ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して1~35質量部含有されていることを特徴とする請求項1記載の防汚性能を有する合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた防汚性能を有する合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
合成皮革は、例えば車輛内装材、ソファーなどの家具用途、或いはコートなどの衣料用途等に用いられていた。
【0003】
ところが、合成皮革における表面に汚れが付着すると、その汚れをきれいに拭き取ることは困難であった。そのため、特に表面層に淡色系の顔料を使用した合成皮革の場合、汚れが目立ってしまう問題があった。
とりわけ、車輛内装材については、土埃汚れの付着が頻繁に見られており、合成皮革に付着した土埃汚れは拭き取り難いという問題があった。
【0004】
その対策として、特許文献1に記載されているように、防汚性能を有するコーティング剤を合成皮革の表面に塗布した塗布膜を形成することで、例え汚れが付着したとしても容易に拭き取れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-191820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、例えば車輛用内装材のように、乗降時の負荷による摩耗劣化、真夏時の車内温度の上昇による熱劣化、或いは太陽光による紫外線劣化といった要因により、合成皮革の表面に設けた、防汚性能を有する塗布膜が経時劣化する場合があった。
その結果、本来の防汚性能、すなわち、例えば土埃汚れが付着してもきれいに拭き取ることができる性能が、長期に渡って発揮されない問題があった。
【0007】
従って、本発明は、上記課題を解決し、耐久性に優れた防汚性能を有する合成皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、以下の耐久性に優れた防汚性能を有する合成皮革を発明した。
【0009】
本発明の合成皮革は、少なくとも繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層された合成皮革において、表面処理層は、水系ポリウレタン樹脂と、親水性化合物と、カルボジ イミド系架橋剤とを含むものであり、親水性化合物は、ポリビニルアルコールに、下記の一般式1で表される化合物をグラフト化させたものであることを特徴とする防汚性能を有する合成皮革。
(式1)

(式中、mは整数を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐久性に優れた防汚性能を有する合成皮革は、例えば車輛用内装材のように、乗降時の負荷による摩耗劣化、真夏時等の車内温度の上昇による熱劣化、或いは太陽光による紫外線劣化といった要因により、防汚性能が経時劣化するのを抑制し、長期に渡り、防汚性能を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の合成皮革は、少なくとも繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層された合成皮革において、表面処理層は、合成樹脂と、親水性化合物とを含むものであり、親水性化合物は、下記の一般式1で表される化合物を含むものであることを特徴とする防汚性能を有する合成皮革。
(式1)
(式中、mは整数を表す。)
【0012】
[繊維布帛基材]
繊維布帛基材は、例えば平織りなどの織物、丸編みなどの編物、スパンボンドなどの不織布等を使用することができる。
とりわけ、合成皮革の貼り込み易さの点から、織物や編物が好ましい。
また、織物や編物の素材としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ナイロン、レーヨンなどが挙げられ、布帛の物性や価格の面からポリエステルが好ましい。
【0013】
[樹脂層]
樹脂層は、少なくとも表皮層を有する層である。
また、樹脂層は、表皮層、中間層の順で積層させたものでもよい。
なお、繊維布帛基材と樹脂層との間に、接着層を介在させてもよい。
【0014】
(表皮層)
表皮層は、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂からなる群より選択される樹脂が好ましい。とりわけ、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が物性面の点からより好ましい。
【0015】
(中間層)
中間層は、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂からなる群より選択される樹脂が好ましい。とりわけ、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が物性面の点からより好ましい。また、中間層は、発泡層又は非発泡層いずれの層であってもよい。
中間層を発泡層とした場合、例えばポリウレタン樹脂と水との反応により発泡させた層でもよいし、発泡剤添加による化学的発泡させた層でよいし、中空微粒子を膨張させたマイクロバルーンを使用して発泡させた層でもよい。このように繊維布帛基材との接着性を阻害しない範囲で、例えば発泡剤や中空微粒子を添加してもよい。
【0016】
(接着層)
接着層は、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂からなる群より選択される樹脂が好ましい。また、接着層は、発泡層又は非発泡層いずれの層であってもよい。
【0017】
また、表皮層、中間層、接着層を構成する樹脂には、物性を阻害しない範囲で、顔料、フィラー、分散剤、消泡剤、艶消し剤、滑剤など公知の添加剤を含有してもよい。
【0018】
[表面処理層]
本発明の表面処理層は、合成樹脂と、親水性化合物とを含むものであり、親水性化合物は、下記の一般式1で表される化合物を含むものである。
(式1)
(式中、mは整数を表す。)
【0019】
(合成樹脂)
合成樹脂としては、例えば水系ポリウレタン樹脂が挙げられ、耐久性の観点から水系(水分散型)のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0020】
(親水性化合物)
親水性化合物としては、少なくとも下記の一般式1で表される化合物を含むものである。
(式1)
(式中、mは整数を表す。)
【0021】
前記一般式1で表される化合物は、表面処理層における合成樹脂の固形分100質量部に対して1~35質量部含有されていることが好ましい。この数値範囲を逸脱すると、所望の防汚性能を有するのが困難となり易い。例えば、実施例で挙げる汚れ試験(ΔE)において、ΔE>5となり、防汚性能に優れたものが得られ難くなる。
また、ここでいう合成樹脂の固形分とは、後述する架橋剤も含むものとする。したがって、表面処理層において、合成樹脂と架橋剤を配合した場合の「合成樹脂の固形分」とは、合成樹脂の固形分と、架橋剤の固形分の和とする。
【0022】
また、表面処理層における親水性化合物としては、前記一般式1で表される化合物に加えて、他のものを加えてもよい。例えばシリコーン系親水性化合物、ポリウレタン系親水性化合物、アクリル系親水性化合物、フッ素系親水性化合物、水溶性高分子からなる群より選択される1種以上の親水性化合物が挙げられる。
また、親水性化合物の添加量は、合成樹脂の固形分100部に対して、固形分の合計が200部を超えない範囲で添加するのが好ましい。
【0023】
(架橋剤)
表面処理層は、合成樹脂と、前記一般式1で表される化合物を含む親水性化合物に加えて、更に架橋剤を含むものが好ましい。架橋剤としては、例えばイソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系からなる群より選択される1種以上の架橋剤が挙げられる。
また、架橋剤としては、無黄変型のものがより好ましい。
架橋剤として、イソシアネート系を使用する場合、常温における水との反応を少なくする為に、ブロック型イソシアネートを用いることが好ましい。
架橋剤の添加量は、水分散型ポリウレタン樹脂の固形分100部に対して、固形分の合計が0.5~50部となるように添加するのが好ましい。
【0024】
また、表面処理層には、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒、シリカなどの無機微粒子、有機フィラーなど公知の添加剤を添加してもよい。
【0025】
本発明の表面処理層は、ぬれ試薬による測定値が60dyne/cm以上であると共に、後述する1)耐摩耗性試験、2)耐熱性試験、3)耐光性試験を各々行った後における、該表面処理層のぬれ試薬による測定値が50dyne/cm以上を示す層であることが好ましい。
【0026】
また、表面処理層における「ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)」は、JIS K6768に準拠して行われる。そして、後述する1)耐摩耗性試験、2)耐熱性試験、3)耐光性試験を各々行った後における、表面処理層における「ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)」も、JIS K6768に準拠して行われる。
【0027】
(耐摩耗性試験)
1)耐摩耗性試験は、平面摩耗機において、摩擦子に9号帆布をセットし、試験片にかかる荷重圧が2Mpa になるように荷重を掛けて、2万回往復させる。
なお、ここでいう試験片とは、表面処理層を設けた合成皮革を指す。
【0028】
(耐熱性試験)
2)耐熱性試験は、ギアオーブン内に試験片を置き、温度100℃にて500時間静置して、加熱処理を行う。
なお、ここでいう試験片とは、表面処理層を設けた合成皮革を指す。
【0029】
(耐光性試験)
3)耐光性試験は、試験片に対して、フェードメーター試験機にて、温度83℃にて500時間処理を行う。
なお、ここでいう試験片とは、表面処理層を設けた合成皮革を指す。
【0030】
本発明の表面処理層は、合成樹脂と、親水性化合物と、必要に応じて架橋剤を含むコーティング剤を調製し、このコーティング剤を樹脂層(表皮層)上に塗布して形成することができる。このコーティング剤を塗布する方法は、特に限定されるものではないが、例えばグラビア法、リバース法など公知の方法により形成することができる。
また、樹脂層上に塗布後、例えば加熱オーブン内で乾燥して形成する方法が好ましい。乾燥における温度条件は、架橋剤の反応性の観点から80~150℃が好ましく、120~140℃がより好ましい。
なお、コーティング剤は、有機溶媒などの溶剤を含んでもよいし、無溶剤でもよい。
【0031】
[プライマー層]
表面処理層と樹脂層との間に、密着性を向上させる為にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、樹脂からなる層であり、必要に応じて顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒、シリカなどの無機微粒子、有機フィラーなど公知の添加剤を添加してもよい。
【実施例
【0032】
以下に本発明を実施例に基づいて、詳細に説明する。
【0033】
(処方1:樹脂層における表皮層用樹脂の調製)
・主剤:ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(DIC(株)製「クリスボンNY335FT 」):100質量部
・溶剤:DMF 30質量部、及び酢酸エチル10質量部
・白色顔料:10質量部
調製法:粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0034】
(処方2:接着層用樹脂の調製)
・主剤:ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(DIC(株)製「クリスボンTA205FT 」):100質量部
・架橋剤:イソシアネート系架橋剤(DIC(株)製「バーノックDN950」):12質量部
・溶剤:DMF 30質量部、及びMEK 30質量部
・触媒:DIC(株)製「クリスボン アクセルT81-E」:1質量部
調製法:粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0035】
(処方3:表面処理層用樹脂の調製)
・主剤:水系ポリウレタン樹脂(セイコー化成(株)製「ラックコートWN568M」、固形分25%):100質量部(固形分で25質量部)
・架橋剤:カルボジイミド系架橋剤(セイコー化成(株)製「ラックコートCL7070」、固形分40%):8質量部(固形分で3.2質量部)
・親水性化合物:下記の一般式で表される化合物(以下、「PVP」という。)を含む親水性化合物(第一工業製薬(株)製「ピッツコールV-7154」、固形分15%):20質量部(固形分で3.0質量部)
なお、ピッツコールV-7154は、ポリビニルアルコールに、下記の一般式で表される化合物をグラフト化させたものである。また、ピッツコールV-7154の固形分に対する、PVPの固形分は25%である。したがって、ピッツコールV-7154の固形分中に含有されている下記の一般式で表される化合物の固形分は、0.8質量部である。
(式1)
調製法:粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0036】
また、表面処理層における合成樹脂の固形分は、主剤:25質量部と、架橋剤:3.2質量部の和であり、その合計が28.2質量部である。
そして、合成樹脂の固形分28.2質量部を、100.0質量部として考えた場合、PVPの固形分0.8質量部は、表1に示すように2.7質量部となる。
【0037】
(処方4:表面処理層用樹脂の調製)
・主剤:水系ポリウレタン樹脂(セイコー化成(株)製「ラックコートWN568M」、固形分25%):100質量部(固形分で25質量部)
・架橋剤:カルボジイミド系架橋剤(セイコー化成(株)製「ラックコートCL7070」、固形分40%):8質量部(固形分で3.2質量部)
・親水性化合物:一般式(図示省略)で表される化合物(以下、「PVP」という。)を含む親水性化合物(第一工業製薬(株)製「ピッツコールV-7154」、固形分15%):8質量部(固形分で1.2質量部)
なお、ピッツコールV-7154は、ポリビニルアルコールに、下記の一般式で表される化合物をグラフト化させたものである。また、ピッツコールV-7154の固形分に対する、PVPの固形分は25%である。したがって、ピッツコールV-7154の固形分中に含有されている下記の一般式で表される化合物の固形分は、0.3質量部である。
調製法:粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0038】
また、表面処理層における合成樹脂の固形分は、主剤:25質量部と、架橋剤:3.2質量部の和であり、その合計が28.2質量部である。
そして、合成樹脂の固形分28.2質量部を、100.0質量部として考えた場合、PVPの固形分0.3質量部は、表1に示すように1.1質量部となる。
【0039】
(処方5:表面処理層用樹脂の調製)
・主剤:水系ポリウレタン樹脂(セイコー化成(株)製「ラックコートWN568M」、固形分25%):100質量部(固形分で25質量部)
・架橋剤:カルボジイミド系架橋剤(セイコー化成(株)製「ラックコートCL7070」、固形分40%):8質量部(固形分で3.2質量部)
・親水性化合物:一般式(図示省略)で表される化合物(以下、「PVP」という。)を含む親水性化合物(第一工業製薬(株)製「ピッツコールV-7154」、固形分15%):226.7質量部(固形分で34.0質量部)
なお、ピッツコールV-7154は、ポリビニルアルコールに、下記の一般式で表される化合物をグラフト化させたものである。また、ピッツコールV-7154の固形分に対する、PVPの固形分は25%である。したがって、ピッツコールV-7154の固形分中に含有されている下記の一般式で表される化合物の固形分は、8.5質量部である。
調製法:粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0040】
また、表面処理層における合成樹脂の固形分は、主剤:25質量部と、架橋剤:3.2質量部の和であり、その合計が28.2質量部である。
そして、合成樹脂の固形分28.2質量部を、100.0質量部として考えた場合、PVPの固形分8.5質量部は、表1に示すように30.1質量部となる。
【0041】
(処方6:表面処理層用樹脂の調製)
・主剤:水系ポリウレタン樹脂(セイコー化成(株)製「ラックコートWN568M」、固形分25%):100質量部(固形分で25質量部)
・架橋剤:カルボジイミド系架橋剤(セイコー化成(株)製「ラックコートCL7070」、固形分40%):8質量部(固形分で3.2質量部)
調製法:粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0042】
(実施例1)
上述の処方1に従い調製した樹脂層における表皮層用樹脂を、離型紙上にコンマコータにて塗布し、80℃から120℃まで徐々に温度を上げ、120℃到達後、5分間乾燥し、厚さ約15μmの樹脂層における表皮層を得た。
続いて、上述の処方2に従い調製した接着層用樹脂を、離型紙上に形成した表皮層の上にコンマコータにて塗布し、120℃で乾燥し、厚さ約30μmの接着層を得た。
続いて、接着層に接着性が発現しているタイミングで、繊維布帛基材(丸編機にて150デニールのポリエステル糸から編み立てたポリエステル製生地)の貼り合わせを行った。
続いて、ロール状に巻き取りを行った後、これを50℃、48時間かけて熟成させた後、離型紙を剥離して、繊維布帛基材、接着層、表皮層の順で積層した合成皮革を得た。
【0043】
続いて、上述の処方3に従い調製した表面処理層用樹脂を、得られた合成皮革上にグラビアロールにて塗工を行い、連続したオーブンで130℃加熱を行った後、これを50℃、48時間かけて熟成させ、塗膜厚さが約2μmの表面処理層を設けた合成皮革を得た。
【0044】
(各試験前の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)と、汚れ試験)
得られた表面処理層を設けた合成皮革を試験片とし、この試験片の表面処理層におけるぬれ性試験と、汚れ試験を行った。結果を、表1に示す。
【0045】
(各試験後の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)と、汚れ試験)
試験片に対して、1)耐摩耗性試験、2)耐熱性試験、3)耐光性試験を各々行った後、各々の試験後における試験片の表面処理層について、ぬれ性試験と、汚れ試験を行った。結果を、表1に示す。
【0046】
(ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験))
ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)は、JIS K6768に準拠して行った。
【0047】
(汚れ試験)
試験片に対して、「擦り付け」前と後の色差ΔEを測定した。
ここでいう「擦り付け」とは、先ず、試験片に対して、汚染布(EMPA#104号)を平面型摩耗試験機において荷重圧2MPaで1000回擦り付け、その後、汚染布を新しいものに取り換え、同じ作業を合計3回繰り返し、試験片を合計3000回擦り付ける。
続いて、汚染布により汚れを擦り付けた試験片に対して、蒸留水を十分湿らせた白布を平面型摩耗試験機において荷重圧30kPaを掛けて10回擦り付けることをいう。
【0048】
(耐摩耗性試験)
耐摩耗性試験は、平面型摩耗試験機において、摩擦子に9号帆布をセットし、試験片にかかる荷重圧が2Mpaになるように荷重を掛けて、2万回往復させる方法。
【0049】
(耐熱性試験)
耐熱性試験は、ギアオーブン内に試験片を置き、温度100℃にて500時間静置して、加熱処理を行う方法。
【0050】
(耐光性試験)
耐光性試験は、試験片に対して、フェードメーター試験機にて、温度83℃にて500時間処理を行う方法。
【0051】
(実施例2)
表面処理層として、上述の処方4に従い調製した表面処理層用樹脂を使用した以外は実施例1と同様に行い、表面処理剤を設けた合成皮革を得た。
得られた合成皮革に対して、実施例1同様に、各試験前の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)、及び汚れ試験を実施した結果を表1に示す。
また、実施例1同様に、各試験後の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)と汚れ試験を実施した結果を表1に示す。
【0052】
汚れ試験の結果は、耐摩耗性試験後、耐熱性試験後、耐光性試験後のいずれもΔE<5であった。
【0053】
(実施例3)
表面処理層として、上述の処方5に従い調製した表面処理層用樹脂を使用した以外は実施例1と同様に行い、表面処理剤を設けた合成皮革を得た。
得られた合成皮革に対して、実施例1同様に、各試験前の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)、及び汚れ試験を実施した結果を表1に示す。
また、実施例1同様に、各試験後の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)と汚れ試験を実施した結果を表1に示す。
【0054】
汚れ試験の結果は、耐摩耗性試験後、耐熱性試験後、耐光性試験後のいずれもΔE<5であった。
【0055】
(比較例1)
表面処理層として、上述の処方6に従い調製した表面処理層用樹脂を使用した以外は実施例1と同様に行い、表面処理剤を設けた合成皮革を得た。
得られた合成皮革に対して、実施例1同様に、各試験前の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)、及び汚れ試験を実施した結果を表1に示す。
また、実施例1同様に、各試験後の、ぬれ試薬による測定(ぬれ性試験)と汚れ試験を実施した結果を表1に示す。
【0056】
汚れ試験の結果は、耐摩耗性試験後、耐熱性試験後、耐光性試験後のいずれもΔE>5であり、実施例1~3と比較して劣っている結果であった。
【0057】
【表1】