IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図1
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図2
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図3
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図4
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図5
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図6
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図7
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図8
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図9
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図10
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図11
  • 特許-低分子量有機成分を含む重合性組成物 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】低分子量有機成分を含む重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/04 20060101AFI20220909BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220909BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20220909BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G02B5/04 A
F21S2/00 431
G02B5/02 C
G02F1/13357
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018116673
(22)【出願日】2018-06-20
(62)【分割の表示】P 2015257202の分割
【原出願日】2006-03-10
(65)【公開番号】P2018142029
(43)【公開日】2018-09-13
【審査請求日】2018-06-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】11/077,598
(32)【優先日】2005-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,クリントン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゲンナー,エミリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,デイビッド ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ブラント ユー.
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】里村 利光
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-217991(JP,A)
【文献】特表2004-516367(JP,A)
【文献】特開平8-113616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0233526(US,A1)
【文献】特表2003-521556(JP,A)
【文献】特表2003-512287(JP,A)
【文献】特開平11-349645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む有機成分であって、450g/モルより大きい数平均分子量を有するエチレン性不飽和オリゴマー若しくはモノマーの含有量が10重量%以下(0重量%である場合を含む)である、有機成分と、
少なくとも10重量%の、5~50nmの粒度を有するジルコニアナノ粒子と、
を含む実質的に溶剤を含有しない重合性組成物の反応生成物を含む、複数のプリズムを含む微細構造化トポグラフィーを備えた輝度向上重合構造体を含む、輝度向上フィルムであって、前記有機成分の少なくとも1つのモノマーが少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有し、前記有機成分が25℃において1000cpsより小さい粘度を有し、前記有機成分は無機ナノ粒子を除いて前記重合性組成物の全てを指す、輝度向上フィルム。
【請求項2】
前記重合性組成物が少なくとも1.47の屈折率を有する、請求項1に記載の輝度向上フィルム。
【請求項3】
前記有機成分が、1.50より小さい屈折率を有する第2のモノマーと組み合わせた少なくとも1.50の屈折率を有する少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1または2に記載の輝度向上フィルム。
【請求項4】
前記重合性組成物が2重量%以上25重量%以下の少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むモノマーを含有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の輝度向上フィルム。
【請求項5】
前記ジルコニアナノ粒子が70重量%以下の量で存在する、請求項1ないし4のいずれかに記載の輝度向上フィルム。
【請求項6】
前記ジルコニアナノ粒子が30~50重量%の量で存在する、請求項1ないし4のいずれかに記載の輝度向上フィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許第5,175,030明細書および米国特許第5,183,597号明細書に記載されるような特定の微細複製光学製品は、一般的に「輝度向上フィルム(brightness enhancing film)」と呼ばれている。エレクトロルミネセントパネル、ラップトップコンピューターディスプレイ、ワープロ、デスクトップモニター、テレビ、ビデオカメラ、ならびに自動車用および航空機用ディスプレイにおいて使用されるものを含めた液晶ディスプレイ(LCD)などのバックライト式フラットパネルディスプレイの輝度を増加させるために、輝度向上フィルムは多くの電子製品において利用される。
【0002】
輝度向上フィルムは、生じた輝度ゲイン(すなわち「ゲイン」)に関連のある輝度向上フィルムの屈折率を含めた特定の光学特性および物理特性を望ましく示す。輝度の改善によって、より少ない電力を使用してディスプレイを照明し、それによって電力消費を低減し、その部品における熱負荷を低下し、そして製品寿命を延長することによって、電子製品をより効率的な操作することが可能となる。
【0003】
例えば米国特許第5,908,874号明細書、米国特許第5,932,626明細書、米国特許第6,107,364明細書、米国特許第6,280,063明細書、米国特許第6,355,754明細書、ならびにEP1014113明細書および国際公開第03/076528号パンフレットに記載されるように、硬化または重合される高屈折率モノマーから輝度向上フィルムは製造される。
【0004】
輝度向上フィルムの製造のために適切である様々な重合性組成物が既知であるが、代替組成物において工業的利点が見出される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに、有機成分と任意に無機成分とを含む実質的に溶剤を含有しない重合性組成物の反応生成物を含む輝度向上重合構造体を含む、輝度向上フィルムが記載される。
【0006】
1つの実施形態において、有機成分は、1つ以上のモノマーを含み、且つ450g/モルより大きい分子量(Mn)を有するオリゴマーエチレン性不飽和モノマーを一切含有しない。有機成分は好ましくは、180°Fにおいて1000cpsより小さい粘度を有する。
【0007】
別の実施形態において、輝度向上フィルムが、180°Fにおいて1000cpsより小さい粘度を有する有機成分と、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子とを含む実質的に溶剤を含有しない重合性組成物の反応生成物を含む輝度向上重合構造体を含む。有機成分は、450g/モルより大きい数平均分子量を有するエチレン性不飽和モノマーを約10重量%以下の量で含む。さらに有機成分は、450g/モル以下の数平均分子量を有するエチレン性不飽和モノマーを約90重量%以下の量で含む。
【0008】
重合性組成物は、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つの成分を含む。有機成分が重合性組成物の全体である実施形態について、モノマーの少なくとも1つは、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含む。しかしながら、有機成分が表面改質ナノ粒子と組み合わせられる実施形態について、ナノ粒子は、有機成分のモノマーが一官能性であるために十分な官能価を有してもよい。
【0009】
好ましい実施形態において、重合性組成物は、有機成分と、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子とを含む。
【0010】
本発明は、添付した図面と共に本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】バックライト式液晶ディスプレイにおいての本発明の実例となる微細構造化物品の略図である。
図2】微細構造化表面を有する実例となる重合構造体の斜視図である。
図3】様々な高さのプリズム要素を有する実例となる微細構造化物品の断面図である。
図4】様々な高さのプリズム要素を有する実例となる微細構造化物品の断面図である。
図5】実例となる微細構造化物品の断面図である。
図6】プリズム要素が異なった高さであり、それらのベースを異なった平面に有する、実例となる微細構造化物品の断面図である。
図7】実例となる微細構造化物品の断面図である。
図8】実例となる微細構造化物品の断面図である。
図9】実例となる微細構造化物品の断面図である。
図10】転向フィルムを備える照明デバイスの略図である。
図11】転向フィルムの断面図である。
図12】別の転向フィルムの断面図である。
【0012】
本発明は様々な改良および別の形態が可能であるが、その詳細は図面において例示され、詳細に記載される。しかしながら、本発明は、記載された特定の実施形態に本発明を限定するものではないことは、理解されるはずである。反対に、本発明は、本発明の精神および範囲内にある全ての改良、等価物、および代替物に及ぶものとする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
輝度向上フィルムは一般に、照明用デバイスの軸方向の輝き(本明細書において「輝度」と称される)を向上させる。輝度向上フィルムは、光透過性微細構造化フィルムであってもよい。微細構造化トポグラフィーは、フィルムを用いて反射および屈折によって光を方向変換するためのフィルム表面上の複数のプリズムであってもよい。プリズムの高さは典型的に、約1~75ミクロンの範囲である。ラップトップコンピュータ、腕時計等に見られるような光ディスプレイにおいて使用されるとき、微細構造化光学フィルムは、光ディスプレイを通して延びている垂直軸から所望の角度において配置された一対の平面内にディスプレイから出る光を限定することによって、光ディスプレイの輝度を増加させることができる。結果として、許容範囲外にディスプレイを出る光は、それの一部が「再循環され」うる場合、反射されてディスプレイに戻され、それがディスプレイから出ることを可能にする角度において微細構造化フィルムに戻される。再循環は、所望のレベルの輝度を有するディスプレイを提供するために必要とされる電力消費を低減することができるので、有用である。
【0014】
ルー(Lu)およびルーらに記載されているように、微細構造を有する物品(例えば輝度向上フィルム)は、(a)重合性組成物(すなわち本発明の重合性組成物)を調製する工程と、(b)前記重合性組成物をマスターのキャビティを充填するためにちょうどの量でマスター雌型微細構造化成形面上に堆積する工程と、(c)少なくとも一方が可撓性である、予備成形されたベースとマスターとの間に重合性組成物のビードを移動させることによってキャビティを充填する工程と、(d)前記組成物を硬化する工程とを有する方法によって作製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルめっき銅または黄銅などの金属であってもよく、または重合条件下で安定であり、かつ重合された材料をマスターからきれいに除去することを可能にする表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であってもよい。ベースフィルムの表面の1つ以上を任意にプライマー処理するかあるいは他の方法で処理してベースに対する光学層の接着力を促進することができる。
【0015】
輝度向上または他の微細構造化物品は、複数の(例えば表面改質コロイド)ナノ粒子を任意に含む有機成分の反応生成物を含む重合構造体を含む。重合構造体は、基層および光学層から構成された光学要素または光学製品であってもよい。基層および光学層は、同一または異なったポリマー材料から形成されてもよい。
【0016】
本明細書中で用いられるとき「重合性組成物」は、少なくとも1つの重合性モノマーと任意の無機ナノ粒子とを含む、有機成分を含めた全組成物を指す。「有機成分」は、無機ナノ粒子を除いて組成物の成分の全てを指す。重合性組成物が無機ナノ粒子を含有しない実施形態については、有機成分と重合性組成物とは同じものである。前記組成物は、前に記載されたように、ルーおよびルーらにおいて記載されている微細構造化物品を形成する方法に特に適している。
【0017】
有機成分ならびに重合性組成物は好ましくは実質的に溶剤を含有しない。「実質的に溶剤を含有しない」は、(例えば有機)溶剤5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%および0.5重量%未満の重合性組成物を指す。溶剤の濃度をガスクロマトグラフィーなどの公知の方法によって定量することができる。0.5重量%未満の溶剤の濃度が好ましい。
【0018】
有機成分の成分は好ましくは、有機成分が低い粘度を有するように選択される。典型的に有機成分の粘度は、以前に使用された組成物の有機成分より実質的に低い。有機成分の粘度は1000cpsより小さく、典型的に900cpsより小さい。有機成分の粘度は、コーティング温度において800cpsより小さく、450cpsより小さく、600cpsより小さく、または500cpsより小さくてもよい。本明細書中で用いられるとき、粘度は、動的応力レオメーター(Dynamic Stress Rheometer)を用いて25mmの平行なプレートで(1000sec-1までの剪断速度において)測定される。さらに、有機成分の粘度は典型的に、コーティング温度において少なくとも10cps、より典型的に少なくとも50cps、さらにより典型的に少なくとも100cps、最も典型的少なくとも200cpsである。
【0019】
コーティング温度は典型的に、周囲温度(すなわち25℃)~180°F(82℃)の範囲である。コーティング温度は、170°F(77℃)未満、160°F(71℃)未満、150°F(66℃)未満、140°F(60℃)未満、130°F(54℃)未満、または120°F(49℃)未満であってもよい。重合性組成物の融点がコーティング温度より低いことを条件として、有機成分は固体であってもよく、または固体成分を含んでもよい。有機成分は、周囲温度において液体でありうる。
【0020】
有機成分ならびに重合性組成物は、たいていの製品用途について、少なくとも1.47の屈折率を有するが、転向フィルム(turning film)の重合性樹脂組成物は最低1.44の屈折率を有してもよい。有機成分または重合性組成物の屈折率は、少なくとも1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、または1.60であってもよい。ナノ粒子を含有する重合性組成物は、最高1.70の屈折率を有することができる。(例えば少なくとも1.61、1.62、1.63、164、1.65、1.66、1.67、1.68、または1.69)また、可視光線スペクトルにおいて高い透過率が典型的に好ましい。
【0021】
重合性組成物は、75ミクロンの厚さを有する輝度向上フィルムなどについて、好ましくは5分未満の時間尺度においてエネルギー硬化性である。重合性組成物は好ましくは、典型的に45℃より高いガラス転移温度を提供するように十分に架橋される。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)、変調DSC、または動的機械分析などの本技術分野に公知の方法によって測定することができる。重合性組成物は通常のフリーラジカル重合方法によって重合されてもよい。
【0022】
単独でまたは互いに組み合わせて様々な種類および量のモノマーを使用して、記載された粘度および/または屈折率の基準を満たす組成物を提供することができる。
【0023】
1つの実施形態において、有機成分が1つ以上のモノマーを含み、450g/モルより大きい分子量(Mn)を有するあらゆるオリゴマーエチレン性不飽和モノマーを含有しない。
【0024】
高屈折率および450g/モル以下の数平均分子量を有する適したモノマーには、例えばフェノキシエチルアクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-(1-メチル-1-フェネチル)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、2-ナフチルチオエチルアクリレート、1-ナフチルチオエチルアクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチルアクリレート、2-ブロモフェノキシエチルアクリレート、1-ナフチルオキシエチルアクリレート、2-ナフチルオキシエチルアクリレート、フェノキシ2-メチルエチルアクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-フェニルフェノキシエチルアクリレート、4-フェニルフェノキシエチルアクリレート、2,4-ジブロモ-6-sec-ブチルフェニルアクリレート、2,4-ジブロモ-6-イソプロピルフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、2,4,6-トリブロモフェニルアクリレートなどがある。
【0025】
別の実施形態において、実質的に溶剤を含有しない重合性組成物が、180°Fにおいて1000cpsより小さい粘度を有する有機成分と、および少なくとも10重量%の無機ナノ粒子とを含む。有機成分は、450g/モルより大きい数平均分子量を有するエチレン性不飽和モノマーおよび/またはオリゴマーを15重量%未満、14重量%未満、13重量%未満、12重量%未満および典型的に約10重量%まで(例えば約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%または9重量%)含む。有機成分はさらに、450g/モルまでの数平均分子量を有するエチレン性不飽和モノマーを約90重量%まで含む。
【0026】
450g/モルより大きい数平均分子量を有する様々なエチレン性不飽和モノマーおよび/またはオリゴマーが公知であり、例えば特定の(メタ)アクリル化芳香族エポキシオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート、フェノール類(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリル化アクリルオリゴマーなどがある。
【0027】
重合性組成物の成分の少なくとも1つは、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含む。重合性成分は、2つ以上の(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1つの成分を含むことが好ましい。十分な重合性(メタ)アクリレート基を含む表面改質ナノ粒子が使用される場合、有機成分の全てのモノマーが一官能性であってもよい。
【0028】
少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含むモノマーもまた、架橋剤として記載される。適した架橋剤には、例えばヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリトリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレートなどがある。架橋剤のいずれか1つまたは組合せが使用されてもよい。メタクリレート基はアクリレート基ほど反応性ではない傾向があるので、架橋剤はメタクリレート官能価を含有しないのが好ましい。
【0029】
架橋剤が存在するとき、それは重合性組成物の有機成分中に少なくとも約2重量%の量において存在するのが好ましい。典型的に、架橋剤の量は約25重量%を超えない。
【0030】
様々な架橋剤が市販されている。例えば、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)は、ペンシルベニア州、エクストンのサートマー・カンパニー(Sartomer Company,Exton,PA)から商品名「SR444」として、日本、大阪の大阪有機化学工業(株)から商品名「ビスコート(Viscoat)#300」として、日本、東京の東亜合成株式会社から商品名「アロニックス(Aronix)M-305」として、および台湾、カオーシウンのエターナル・ケミカル社(Eternal Chemical Co.,Ltd.,Kaohsiung,Taiwan)から商品名「エターマー(Etermer)235」として市販されている。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)は、サートマー・カンパニーから商品名「SR351」として市販されている。また、TMPTAは、東亜合成株式会社から商品名「アロニックスM-309」として入手可能である。さらに、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびエトキシ化ペンタエリトリトールトリアクリレートはそれぞれ、サートマーから商品名「SR454」および「SR494」として市販されている。
【0031】
有機成分および重合性組成物が全体として所望の屈折率を有する場合、有機成分は、他の(例えばより低屈折率の)モノマーを含むことができる。適したモノマーは、接着力または低減された粘度などの他の有益な特性を提供することができる。適したモノマーには、(メタ)アクリレートまたはモノマーN置換またはN,N-二置換(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドなどの一または二官能性エチレン性不飽和モノマーがある。これらには、N-アルキルアクリルアミドおよびN,N-ジアルキルアクリルアミド、特に、C14アルキル基を含有するものが挙げられる。例は、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムである。
【0032】
本明細書に記載された重合性組成物は好ましくは、無機粒子を含む。一般に、有機成分の粘度は一般に、比較的高い濃度(例えば40重量%~70重量%)の無機ナノ粒子が使用されるとき、前に記載された低い側の目標範囲内である。低い側の濃度のナノ粒子が使用されるとき(例えば10重量%~40重量%)、有機成分は、高粘度側の目標範囲内にあってもよい。
【0033】
重合性組成物(すなわちナノ粒子含有)の粘度は一般に、有機成分だけについて前に記載された範囲内である。一般に、重合性組成物の無機ナノ粒子の濃度が増加するとき、粘度が増加する場合がある。後で記載されるように適した表面処理をしない無機ナノ粒子の濃度の関数として粘度の一般に相当な増加がある。
【0034】
粒子のサイズは一般に、著しい可視光線の散乱を避けるように選択される。選択された無機酸化物粒子は、屈折率または耐引っ掻き性の増加もしくは両方をもたらすことができる。無機酸化物粒子のタイプの配合物を使用して光学的性質または材料の性質を最適にし、全組成物のコストを下げることが望ましい場合がある。
【0035】
無機ナノ粒子を含有することによって耐久性を改良することができる。好ましくは、重合微細構造化表面は、2004年9月10日に出願された米国特許出願第10/938006号明細書に記載された試験方法によって定量されたとき、1.0~1.15、または1.0~1.12、または1.0~1.10、または1.0~1.05の範囲の引掻きコントラスト比の値を有する。例えば約0.5~15マイクロメートルの範囲の半径を有する丸みを帯びたプリズム頂端の場合、引掻きコントラスト比の値は、1.0~1.65、または1.0~1.4、または1.0~1.10の範囲であってもよい。
【0036】
重合可能な表面改質のない無機ナノ粒子を有用に使用することができるが、無機ナノ粒子は好ましくは、ナノ粒子が有機成分と重合可能であるように表面改質される。表面改質(例えばコロイド)ナノ粒子は、物品または光学要素の耐久性および/または屈折率を向上させるために有効な量において重合構造体中に存在しうる。本明細書に記載された表面改質コロイドナノ粒子は、例えば、ナノ粒子が樹脂系中に安定な分散体を形成するように樹脂系とのナノ粒子の相溶性など、様々な望ましい特性を有することができ、表面改質はナノ粒子と樹脂系との反応性を提供し、複合物をより耐久性にすることができ、樹脂系に添加された適切に表面改質されたナノ粒子は、未硬化組成物の粘度に与える影響を低くする。表面改質剤の組合せを用いて組成物の未硬化および硬化された性質を操作することができる。適切に表面改質されたナノ粒子は、光学要素の光学的性質および物理的性質を提供することができ、例えば、樹脂の機械的強度を改良し、樹脂系中の固体体積配合量を増加させながら粘度の変化を最小にし、樹脂系中の固体体積配合量を増加させながら光学透明度を維持することができる。
【0037】
表面改質コロイドナノ粒子は、1nmより大きく100nmより小さい一次粒度または結合粒度を有する酸化物粒子であってもよい。ナノ粒子は結合していないのが好ましい。それらの測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)に基づいていてもよい。ナノ粒子には、例えば、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、シリカ、ジルコニア、チタニア、それらの混合物、またはそれらの混合酸化物などの金属酸化物などが挙げられる。表面改質コロイドナノ粒子は、実質的に完全凝縮されてもよい。
【0038】
ここで用いられるコロイドシリカなどの完全凝縮ナノ粒子は典型的に、それらの内部にヒドロキシルをほとんど有さない。
【0039】
シリカを含有しない完全凝縮ナノ粒子は典型的に、55%より大きい、好ましくは60%より大きい、より好ましくは70%より大きい結晶度(単離された金属酸化物粒子として測定された)を有する。例えば、結晶度は、約86%までまたはそれ以上の範囲であってもよい。結晶度をX線回折技術によって定量することができる。凝縮結晶性(例えばジルコニア)ナノ粒子は高屈折率を有するが、非晶質ナノ粒子は典型的に、より低い屈折率を有する。
【0040】
シリカナノ粒子は、5~75nmまたは10~30nmまたは20nmの粒度を有することができる。シリカナノ粒子は典型的に、10~60重量%の量である。典型的にシリカの量は40重量%未満である。
【0041】
適したシリカは、商品名ナルココロイドシリカ(NALCO COLLOIDAL SILICAS)としてイリノイ州、ネーパービルのナルコ・ケミカル・カンパニー(Nalco Chemical Co.,Naperville,Ill.)から市販されている。例えば、シリカには、ナルコ(NALCO)の商品名1040、1042、1050、1060、2327および2329などがある。適したヒュームドシリカには、例えば、デガッサ・AG(DeGussa AG)(ドイツ、ハナウ(Hanau,Germany))から入手可能な商品名エーロシル(AEROSIL)シリーズOX-50、-130、-150、および-200、およびキャボット・コーポレーション(イリノイ州、タスコラ(Tuscola,Ill.))から入手可能なCAB-O-SPERSE 2095、CAB-O-SPERSE A105、CAB-O-SIL M5として販売されている製品などがある。
【0042】
ジルコニアナノ粒子は、約5~50nm、または5~15nm、または10nmの粒度を有することができる。ジルコニアナノ粒子は、耐久性物品または光学要素中に10~70重量%、または30~50重量%の量において存在しうる。本発明の材料において使用するためのジルコニアは、イリノイ州、ネーパービルのナルコ・ケミカル・カンパニーから製品名ナルコ OOSSOO8として、およびスイスのブーラー・AG・ウズヴィル(Buhler AG Uzwil)から商品名「ブーラー・ジルコニア・Z-WO・ゾル(Buhler zirconia Z-WO sol)」として市販されている。また、2004年12月30日に出願された米国特許出願第11/027426号明細書および米国特許第6,376,590号明細書に記載されているようなジルコニアナノ粒子を調製することができる。
【0043】
チタニア、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズ、および/または混合金属酸化物ナノ粒子は、5~50nm、または5~15nm、または10nmの粒度または結合粒度を有することができる。チタニア、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズ、および/または混合金属酸化物ナノ粒子は、耐久性物品または光学要素中に10~70重量%、または30~50重量%の量において存在することができる。本発明の材料において使用するための混合金属酸化物は、キャタリスト・アンド・ケミカル・インダストリーズ・コーポレーション(Catalysts & Chemical Industries Corp.)、(日本国川崎)から製品名オプトレーク(Optolake)として市販されている。
【0044】
ナノサイズの粒子を表面処理することによって、ポリマー樹脂中の安定な分散体を提供することができる。好ましくは、表面-処理は、粒子が重合性樹脂中に十分に分散されて実質的に均質な組成物をもたらすようにナノ粒子を安定化する。さらに、安定化された粒子が、硬化する間に重合性樹脂と共重合するかまたは反応するように、ナノ粒子を表面処理剤によってその表面の少なくとも一部の上で改質することができる。
【0045】
ナノ粒子は好ましくは、表面処理剤で処理される。一般に表面処理剤は、(共有結合によって、イオンによって、または強い物理収着によって)粒子表面に結合する第1の末端と、粒子と樹脂との相溶性を与え、および/または硬化する間に樹脂と反応する第2の末端とを有する。表面処理剤の例には、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸(phospohonic acids)、シランおよびチタネートなどがある。好ましいタイプの処理剤は、一つには、金属酸化物表面の化学的性質によって決定される。シランは、シリカのためにおよび他のケイ質充填剤のために好ましい。シランおよびカルボン酸は、ジルコニアなどの金属酸化物のために好ましい。表面改質は、モノマーとの混合に続いてまたは混合した後のどちらかに行うことができる。シランの場合、樹脂に混入する前にシランを粒子またはナノ粒子表面と反応させることが好ましい。表面改質剤の必要とされる量は、粒度、粒子のタイプ、改質剤の分子量、および改質剤のタイプなどのいくつかの因子に依存している。一般に、改質剤のだいたい単一層が粒子の表面に結合していることが好ましい。また、必要とされる結合手順または反応条件は、使用された表面改質剤に依存する。シランについては、およそ1~24時間、酸性または塩基性条件下で高温において表面処理することが好ましい。カルボン酸などの表面処理剤は、高温または長い時間を必要としない場合がある。
【0046】
組成物のために適した表面処理剤の代表的な実施形態には、例えば、イソオクチルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート(PEG3TES)、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート(PEG2TES)、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス-イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ドデカン酸、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEAA)、ベータ-カルボキシエチルアクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびそれらの混合物などの化合物がある。さらに、ウェストバージニア州、クロンプトン・サウス・チャールストン(Crompton South Charleston,WV)のOSI・スペシャルティズから商品名「シルクエスト(Silquest)A1230」として市販されている特許権保護されたシラン表面改質剤は特に適していることがわかった。
【0047】
コロイド分散体中の粒子の表面改質を様々な方法で達成することができる。このプロセスは、無機分散体と表面改質剤とを混合することを必要とする。任意に、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N-ジメチルアセトアミドおよび1-メチル-2-ピロリジノンなどの補助溶剤をこの時点で添加することができる。補助溶剤は、表面改質剤ならびに表面改質粒子の溶解度を向上させることができる。その後、無機ゾルと表面改質剤とを含む混合物を室温または高温において、混合しながらまたはせずに反応させる。1つの方法において、混合物を約85℃において約24時間反応させ、表面改質ゾルをもたらすことができる。金属酸化物を表面改質する別の方法において、金属酸化物の表面処理は好ましくは、粒子表面への酸分子の吸着を必要とすることがある。重金属酸化物の表面改質は好ましくは室温において行われる。
【0048】
シランによるZrO2の表面改質を酸性条件または塩基性条件下で達成することができる。1つの場合において、シランは適した時間の間、酸条件下で加熱される。その時に、分散体にアンモニア水(または他の塩基)を配合する。この方法は、ZrO2表面からの酸対イオンの除去ならびにシランとの反応を可能にする。1つの方法において粒子が分散体から沈殿させられ、液体成分から分離される。
【0049】
表面改質剤の組合せが有用である場合があり、そこで表面改質剤の少なくとも1つが硬化性樹脂と共重合性である官能基を有する。例えば、重合基は、エチレン性不飽和であるかまたは開環重合しやすい環状官能基であってもよい。エチレン性不飽和重合基は、例えば、アクリレートまたはメタクリレート、またはビニル基であってもよい。開環重合しやすい環状官能基は一般に、酸素、硫黄または窒素などのヘテロ原子を含有し、好ましくはエポキシドなどの酸素含有3員環を含有する。
【0050】
表面改質剤の好ましい組合せは、硬化性樹脂(の有機成分)と共重合可能である官能基を有する少なくとも1つの表面改質剤と、第1の改質剤と異なった第2の改質剤とを含有する。第2の改質剤は任意に、重合性組成物の有機成分と共重合可能である。第2の改質剤は、低屈折率(すなわち1.52より小さいまたは1.50より小さい)を有してもよい。第2の改質剤は好ましくは、任意に重合性組成物の有機成分と共重合可能であるポリアルキレンオキシド含有改質剤である。
【0051】
次に、表面改質粒子を様々な方法で硬化性樹脂に混入することができる。好ましい態様において、溶剤交換手順を利用し、それによって樹脂を表面改質ゾルに添加し、その後に、蒸発によって水および補助溶剤(使用した場合)を除去し、従って粒子を重合性樹脂中に分散させておく。蒸発工程を例えば、蒸留、回転蒸発または炉乾燥によって行うことができる。
【0052】
別の態様において、表面改質粒子を水と非混和性の溶剤中に抽出し、その後に、同じく必要ならば溶剤交換を行うことができる。
【0053】
あるいは、重合性樹脂中に表面改質ナノ粒子を混入するための別の方法は、改質粒子を粉末に乾燥する工程と、その後に、粒子が分散される樹脂材料を添加する工程とを必要とする。この方法の乾燥工程は、例えば、炉乾燥または吹付け乾燥など、システムに適した通常の手段によって行うことができる。
【0054】
また、本明細書に記載された重合性組成物は、界面活性剤、顔料、充填剤、重合抑制剤、酸化防止剤、帯電防止剤、および他の可能な成分などがあるがそれらに限定されない、技術において公知であるような1つ以上の他の有用な添加剤を含有することができる。
【0055】
本発明の放射線硬化性物品は、効率的な混合によってそれらの成分を単にブレンドして均質な混合物を製造する工程と、次に前記成分の調製において使用されたあらゆる溶剤を除去する工程とによって作製されてもよい。気泡は、混合物が粘性である場合、ゆるやかに加熱しながら真空等を適用する工程と、所望の表面上に得られたブレンドのフィルムをキャスチングあるいは他の方法で形成する工程とによって除去することができる。次にフィルムを、複製される微細構造を有する成形型に入れ、紫外線に露光することによって重合させ、前述の性質を有する本発明の硬化光学樹脂物品を製造することができる。それが使用される表面以外の表面上で重合される場合、光学樹脂物品を別の表面に移すことができる。
【0056】
このような重合方法は、溶剤または他の揮発物を全くまたはほんの少量しか発生しないので、環境の悪影響のない物品の迅速な大量生産に適している。また、前記方法は、突起および窪みなどの実用的不連続部分を含む微細構造を有する物品の複製に適しており、それらは、成形型の細部を失わずにおよび使用する間の多種多様な条件下でこのような細部の複製を保持して容易に脱型される。物品は、靭性、可撓性、光学透明度および均質性、および一般的な溶剤に対する耐性、高い熱寸法安定性を有するこのような物品の微細構造、耐磨耗性および耐衝撃性、および物品が曲げられる時でも示される結合性など、多種多様な望ましい性質を有するように形成することができる。
【0057】
適した重合方法には、本技術分野に公知であるような溶液重合、懸濁重合、乳化重合、およびバルク重合などがある。適した方法は、フリーラジカル開始剤の存在下で加熱する工程、ならびに光開始剤の存在下で紫外線または可視光線などの電磁放射線で照射する工程を有する。抑制剤はしばしば重合性組成物の合成において使用され、合成、輸送および貯蔵の間に樹脂の早期重合を防ぐ。適した抑制剤には、50~1000ppmのレベルのヒドロキノン、4-メトキシフェノール、およびヒンダードアミンニトロキシド抑制剤などがある。当業者に公知であるように他の種類および/または量の抑制剤が使用されてもよい。
【0058】
放射線(例えば紫外線)硬化性組成物は、少なくとも1つの光開始剤を含む。単一の光開始剤またはそのブレンドが本発明の輝度向上フィルムにおいて使用されてもよい。一般に光開始剤は、(例えば樹脂の加工温度において)少なくとも部分的に可溶性であり、重合された後にほとんど無色である。光開始剤は、紫外光源に露光した後にほとんど無色にされるならば、(例えば黄色に)着色されていてもよい。
【0059】
適した光開始剤には、モノアシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドなどがある。市販されているモノまたはビスアシルホスフィンオキシド光開始剤には、BASF(ノースカロライナ州、シャーロット(Charlotte,NC))から商品名「ルシリンTPO」として市販されている2,4,6-トリメチルベンゾイジフェニルホスフィンオキシド、同じくBASFから商品名「ルシリンTPO-L」として市販されているエチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、およびチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商品名「イルガキュア(Irgacure)819」として市販されているビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどがある。他の適した光開始剤には、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから商品名「ダロキュア(Darocur)1173」として市販されている2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ならびにチバ・スペシャルティ・ケミカルズから商品名「ダロキュア4265」、「イルガキュア651」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア369」、「イルガキュア1700」、および「イルガキュア907」として市販されている他の光開始剤などがある。
【0060】
光開始剤を約0.1~約10重量パーセントの濃度において使用することができる。より好ましくは、光開始剤は、約0.5~約5重量%の濃度において使用される。5重量%を超えると一般に、輝度向上フィルムの黄変を起こす傾向のために不利である。また、当業者が決定することができるとき他の光開始剤および光開始剤を好適に使用することができる。
【0061】
表面張力を低減し、湿潤を改善し、より滑らかなコーティングを可能にし、コーティングの欠陥を少なくするなどのためにフッ素系界面活性剤およびシリコーンベースの界面活性剤などの界面活性剤が任意に重合性組成物中に含有されてもよい。
【0062】
粘度が非常に高くて、ここで記載された方法において使用することができない組成物を場合により、本技術分野に公知である押出方法によって輝度向上フィルムに作製することができる。
【0063】
光学層は、基層と直接に接触することができ、または基層に光学整列されてもよく、光学層が光の流れを誘導するかまたは集めることを可能にするサイズ、形状および厚さであってもよい。光学層は、説明および図示されたような多数の有用なパターンのいずれかを有することができる構造化表面または微細構造化表面を有することができる。微細構造化表面は、フィルムの長さまたは幅に沿って延在する複数の平行な長さ方向うねであってもよい。これらのうねを複数のプリズム頂端から形成することができる。これらの頂端は、鋭い、丸みを帯びているまたは平らになっているか、または切頭であってもよい。例えば、うねは、4~7~15マイクロメートルの範囲の半径に丸みを帯びていてもよい。
【0064】
これらは、規則的または不規則プリズムパターンを含み、環状プリズムパターン、キューブコーナーパターンまたはいずれかの他のレンチキュラー微細構造であってもよい。有用な微細構造は、輝度向上フィルムとして使用するための内部全反射フィルムとして作用することができる規則的プリズムパターンである。別の有用な微細構造は、反射フィルムとして使用するための再帰反射フィルムまたは要素として作用することができるコーナーキューブプリズムパターンである。別の有用な微細構造は、光ディスプレイにおいて使用するための光学要素として作用することができるプリズムパターンである。別の有用な微細構造は、光ディスプレイにおいて使用するための光学転向フィルムまたは要素として作用することができるプリズムパターンである。
【0065】
基層は、光学製品、すなわち光の流れを制御するように設計された製品において使用するために適した性質および組成でありうる。材料が十分に光学的に透明であって特定の光学製品に組み立てられるかまたはその中で使用されるために十分に構造的に強い限り、ほとんどいずれの材料が基礎材料として用いられてもよい。光学製品の性能が時間とともに損なわれない十分な耐熱性および耐老化性を有する基礎材料を選択することができる。
【0066】
いずれの光学製品についても基礎材料の特定の化学的組成および厚さは、構成されている特定の光学製品の要求条件に依存する場合がある。すなわち、とりわけ、強度、透明度、耐熱性、表面エネルギー、光学層への付着性に対する必要性のバランスをとる。
【0067】
有用な基礎材料には、例えば、スチレン-アクリロニトリル、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレートの他、ナフタレンジカルボン酸、ポリシクロ-オレフィン、ポリイミドをベースとするコポリマーまたはブレンド、およびガラスなどがある。任意に、基礎材料は、これらの材料の混合物または組合せを含有することができる。実施形態において、基礎材料は多層であってもよく、もしくは連続相中に懸濁または分散された分散成分を含有してもよい。
【0068】
微細構造を有する製品、例えば、輝度向上フィルムなどのいくつかの光学製品について、好ましい基礎材料の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリカーボネートなどがある。有用なPETフィルムの例には、フォトグレードポリエチレンテレフタレートおよびデラウェア州、ウィルミントン(Wilmington,Del)のデュポンフィルムズ(DuPont Films)から入手可能なメリネックス(MELINEX)(登録商標)PETなどがある。
【0069】
いくつかの基礎材料は、光学的に活性である場合があり、偏光材料として作用することができる。本明細書においてフィルムまたは基材とも称される多数のベースが光学製品技術において公知であり、偏光材料として有用である。フィルムを通しての光の偏光は、例えば、通過光を選択的に吸収する二色偏光子をフィルム材料に含有することによって達成可能である。また、光の偏光は、整列マイカチップなどの無機材料を含有することによってまたは連続フィルム中に分散された光調節液晶の液体粒子など、連続フィルム中に分散された不連続相によって達成されてもよい。別の選択肢として、フィルムは、異なった材料の極微小層から作製されてもよい。フィルム中の偏光材料は、例えば、フィルムの伸長、電場または磁場の印加、コーティング技術などの方法を使用することによって、偏光の向き(polarizing orientation)に整列されてもよい。
【0070】
偏光フィルムの例には、米国特許第5,825,543号明細書および米国特許第5,783,120号明細書に記載された偏光フィルムがある。輝度向上フィルムと組合せたこれらの偏光子フィルムの使用は、米国特許第6,111,696号明細書に記載されている。
【0071】
ベースとして使用することができる偏光フィルムの第2の例は、米国特許第5,882,774号明細書に記載されたそれらのフィルムである。市販のフィルムは、3Mから商品名DBEF(二層輝度向上フィルム)として販売されている多層フィルムである。輝度向上フィルムにおいてのこのような多層偏光光学フィルムの使用は、米国特許第5,828,488号明細書に記載されている。
【0072】
基礎材料のこのリストは限定的ではなく、当業者によって理解されるように、他の偏光および非偏光フィルムもまた、本発明の光学製品のためのベースとして有用である場合がある。これらの基礎材料を任意の数の他のフィルム、例えば、偏光フィルムと組み合わせて多層構造を形成することができる。さらに別の基礎材料の簡単なリストには、とりわけ、米国特許第5,612,820号明細書および米国特許第5,486,949号明細書に記載されたそれらのフィルムが挙げられる。また、特定のベースの厚さは、光学製品の上述の要求条件に左右される場合がある。
【0073】
微細構造を有する耐久性物品は、内部全反射フィルムを製造するために十分な一連の交互の先端および溝を有する形態を含めて、様々な形態において構成することができる。このようなフィルムの例は、対称的先端および溝の規則的反復パターンを有する輝度向上フィルムであるが、他の例は、先端および溝が対称的でないパターンを有する。輝度向上フィルムとして有用な微細構造を有する物品の例は、米国特許第5,175,030号明細書および米国特許第5,183,597号明細書に記載されている。
【0074】
これらの特許によって、微細構造を有する物品は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)前記重合性組成物をマスターのキャビティを充填するためにやっとの量でマスター雌型微細構造化成形面上に堆積する工程と、(c)少なくとも一方が可撓性である、予備成形されたベースとマスターとの間に重合性組成物のビードを移動させることによってキャビティを充填する工程と、(d)前記組成物を硬化する工程とを有する方法によって作製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルめっき銅または黄銅などの金属であってもよく、または重合条件下で安定であり、かつ重合された材料をマスターからきれいに除去することを可能にする表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であってもよい。ここに記載された微細構造化トポグラフィーを形成するために用いられた特定の方法は、米国特許第5,691,846号明細書に記載された成形方法に似ている場合がある。本発明による微細構造化物品は、例えば、5、10、100、1000メートル以上などのいずれかの望ましい長さにおいて連続方法から形成されてもよい。
【0075】
耐久性物品は、例えば、輝度向上フィルムなどの耐久性微細構造化フィルムを必要とする適用において使用されてもよい。これらの耐久性輝度向上フィルムの構造は、例えば、米国特許第5,771,328号明細書、米国特許第5,917,664号明細書、米国特許第5,919,551号明細書、米国特許第6,280,063号明細書、および米国特許第No.6,356,391号明細書などの多種多様な微細構造化フィルムを含めることができる。
【0076】
図1において10に略示されたバックライト式液晶ディスプレイは、拡散体12と液晶ディスプレイパネル14との間に配置することができる本発明の輝度向上フィルム11を備える。また、バックライト式液晶ディスプレイは、蛍光ランプなどの光源16と、液晶ディスプレイパネル14の方向に反射のために光を送るための光ガイド18と、同じく液晶ディスプレイパネルの方向に光を反射するための白色反射体20とを備えることができる。輝度向上フィルム11は光ガイド18から放射された光を平行にし、それによって液晶ディスプレイパネル14の輝度を増加させる。輝度の増加は、液晶ディスプレイパネルがより鮮明な画像を生み出すことを可能にし、光源16のパワーを低減させて選択された輝度を生じることができる。バックライト式液晶ディスプレイの輝度向上フィルム11は、基準符号21によって示された、コンピュータディスプレイ(ラップトップディスプレイおよびコンピュータモニタ)、テレビ、ビデオレコーダ、モバイル通信デバイス、ハンドヘルドデバイス(すなわち携帯電話、PDA)、自動車および航空電子工学計測器ディスプレイ等の装置において有用である。
【0077】
輝度向上フィルム11は、図2に示されるように、プリズム22、24、26、および28によって代表されるプリズムの配列を備える。例えば、プリズム22などの各プリズムは、第1のファセット30と第2のファセット32とを有する。プリズム22、24、26、および28は、プリズムが上に形成される第1の表面36と略平らまたは平面であり、かつ第1の表面の反対側にある第2の表面38とを有する本体部分34上に形成されてもよい。
【0078】
規則的直角プリズムの直線アレイは、光学性能と製造の容易さとの両方を提供することができる。直角プリズムとは、頂角θが約90°であるが、また、約70°~120°または約80°~100°の範囲であってもよいことを意味する。プリズムファセットは同一である必要はなく、プリズムは互いに対して傾斜されていてもよい。さらに、フィルムの厚さ40とプリズムの高さ42との間の関係は重要ではないが、明瞭なプリズムファセットを有する比較的薄いフィルムを使用することが望ましい。ファセットが表面38と形成することができる角度は、ファセットが投影される場合、45°であってもよい。しかしながら、この角度は、ファセットのピッチまたは頂端の角度θに応じて変化する。
【0079】
図3~9は、光学要素の構成の代表的な実施形態を示す。これらの図面は縮尺通りではなく、特に、構造表面のサイズは例示目的のために大幅に大きくなっていることに留意しなければならない。光学要素の構成は、以下の記載された実施形態の組合せまたは2つ以上を含めることができる。
【0080】
図3を参照して、光学要素または光誘導フィルムの1つの実施形態の一部の代表的な断面が示される。フィルム130は、第1の表面132と、複数の略直線的に延在するプリズム要素136を備える対向した構造表面134とを備える。各プリズム要素136は、その上縁が交わってピークを画定する、第1の側面138および第2の側面138’、またはプリズム要素136の頂端142を有する。隣接したプリズム要素136の側面138、138’の下縁が交わってプリズム要素間に直線的に延在する溝144を形成する。図3に示された実施形態において、プリズム頂端142によって画定された二面角は約90度の大きさであるが、しかしながら、このおよび他の実施形態において二面角の正確な大きさを所望の光学パラメーターによって変化させてもよいことは理解されるであろう。
【0081】
フィルム130の構造表面134は、共通の基準面から異なった距離において離隔されているピークを有するプリズム要素の複数の交互の領域を有するとして説明することができる。共通の基準面は、任意に選択されてもよい。共通の基準面の1つの便利な実施例は、第1の表面132を含有する平面である。別の実施例は、破線139によって示された、構造表面の最下溝の底部によって画定された平面である。図3に示された実施形態において、低いほうのプリズム要素は、破線139から測定されたとき、幅が約50ミクロンおよび高さが約25ミクロンの大きさであり、高いほうのプリズム要素は、幅が約50ミクロンおよび高さが約26ミクロンの大きさである。高いほうのプリズム要素を備える領域の幅は、約1ミクロン~300ミクロンの大きさであってもよい。低いほうのプリズム要素を備える領域の幅は重要ではなく、200ミクロン~4000ミクロンの大きさであってもよい。いずれかの与えられた実施形態において低いほうのプリズム要素の領域は、高いほうのプリズム要素の領域と少なくとも同じ幅であってもよい。図3に示された物品は典型例であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは当業者によって理解されよう。例えば、プリズム要素の高さまたは幅を実行可能な限度内で変化させてもよい-約1ミクロン~約200ミクロンで延在する範囲において正確なプリズムを機械加工することが実行可能である。さらに、二面角を変化させるかまたはプリズム軸を傾斜して所望の光学的効果を達成してもよい。
【0082】
第1の領域の幅は、約200~300ミクロン未満であってもよい。通常の表示条件下で、ヒトの目は、幅が約200~300ミクロン未満の領域において生じる光の強度の小さな変化を解像するのは難しい。従って、第1の領域の幅が約200~300ミクロン未満に低減されるとき、この領域において生じる場合があるどんな光カップリングも、通常の表示条件下でヒトの目に感じとることができない。
【0083】
また、可変高さ構造表面は、1つ以上のプリズム要素の高さをその直線範囲に沿って変化させて、共通の基準面より高い様々な高さにおいて配置されたピークを有するプリズム要素の一部分を含有する交互の領域を形成することによって実施されてもよい。
【0084】
図4は、フィルム150が、高いほうの単一プリズム要素156を備える領域によって隔てられた比較的低いほうのプリズム要素154の領域を有する構造表面152を備えることを除いて、図3と同様な光学要素の別の実施形態を示す。図3に示された実施形態とほとんど同じように、高いほうのプリズム要素は、構造表面152へのフィルムの第2のシートの物理的近接を限定し、それによって可視的な浸潤状態の可能性を低減する。ヒトの目は光誘導フィルムのファセットの高さの変化に敏感であり、高いほうのプリズム要素の比較的広い領域がフィルムの表面上に可視的なラインとしてみえることが確認された。これはフィルムの光学性能に本質的に影響を与えないが、ラインが特定の商業環境において望ましくないことがある。高いほうのプリズム要素の領域の幅を低減すると、相応して、高いほうのプリズム要素によって生じたフィルム中のラインをヒトの目が感知する能力を低減する。
【0085】
図5は、プリズム要素が大体同じサイズであるが反復階段または傾斜パターンにおいて配列される、光学要素の別の実施形態の代表的な実施例である。図5に示されたフィルム160は、第1の表面162と、複数の略直線プリズム要素166を備える対向した構造表面164とを備える。各プリズム要素は、それらの上縁において交わってプリズムピーク170を画定する対向した横面168、168’を有する。対向した横面168、168’によって画定された二面角は約90度の大きさである。この実施形態において最も高いプリズムは、第1の領域であると考えられ、隣接したプリズムは、第2の領域であると考えられる。また、第1の領域は、約200~300ミクロン未満の大きさであってもよい。
【0086】
図6は、光学要素のさらに別の実施形態を示す。図6に開示されたフィルム180は、第1の表面182と、対向した構造表面184とを備える。このフィルムは、比較的低いほうのプリズム要素を備える第2の領域が様々な高さのプリズム要素を含有することを特徴とする場合がある。図6に示された構造表面は、プリズム要素の高さの変化によって生じたフィルムの表面上のラインの、ヒトの目に対する可視度を実質的に低減するさらなる利点を有する。
【0087】
図7は、ソフトカットオフを提供するための光学要素の別の実施形態を示す。図7は、本発明による、240と略示された輝度向上フィルムを示す。輝度向上フィルム240は、基材242と構造表面材料244とを備える。基材242は一般にポリエステル材料であってもよく、構造表面材料244は、紫外線硬化されたアクリルまたは本明細書に記載された他のポリマーの材料であってもよい。基材242の外面は好ましくは平らであるが、同様に構造を有することができる。さらに、他の代替の基材を使用することができる。
【0088】
構造表面材料244は、その上に形成された、プリズム246、248、および250などの複数のプリズムを有する。プリズム246、248、および250は、それぞれ、ピーク252、254、および256を有する。ピーク252、254、および256の全てが好ましくは90度のピークまたはプリズム角度を有するが、60度~120度の範囲の角度を含める。プリズム246および248の間に谷258がある。プリズム248および250の間に谷260がある。谷258は、プリズム246に対応した谷を有すると考えられ、70度の谷角度を有し、谷260はプリズム248に対応した谷であると考えられ、110度の谷角度を有するが、他の値を使用することができる。有効に、輝度向上フィルム240は、先行技術の輝度向上フィルムのように光の一部を反射および再利用し、その残りを屈折することによってバックライトの見掛の軸方向輝度を増加させるが、プリズムは交互の方向に傾斜される。プリズムを傾斜する効果は、出力光円錐のサイズを増加させることである。
【0089】
図8は、丸みを帯びたプリズム頂端を有する光学要素の別の実施形態を示す。輝度向上物品330は、両方とも基層332と一体に形成される、一対の反対側の表面334、336を有する可撓性の基層332を特徴とする。表面334は、一連の突き出る光拡散要素338を特徴とする。これらの要素は、層332と同じ材料から製造された表面において「バンプ」の形状であってもよい。表面336は、基層332と一体に形成された鈍いまたは丸みを帯びたピーク340を有する直線プリズムの配列を特徴とする。これらのピークは、弦幅342、断面ピッチ幅344、曲率半径346、および歯底角348を特徴とし、そこで弦幅は断面ピッチ幅の約20~40%に等しく、曲率半径は断面ピッチ幅の約20~50%に等しい。歯底角は、約70~110度、または約85~95度の範囲であり、約90度の歯底角が好ましい。配列内のプリズムの配置は、所望の光学性能を最大にするように選択される。
【0090】
丸みを帯びたプリズム頂端の輝度向上物品は通常、ゲインの減少をもたらす。しかしながら、高屈折率の表面改質ナノ粒子の添加によって、丸みを帯びたプリズム頂端の輝度向上物品からの損失ゲインを補うことができる。
【0091】
図9は、平らなまたは平面プリズム頂端を有する光学要素の別の実施形態を示す。輝度向上物品430は、両方とも基層432と一体に形成される、一対の反対側の表面434、436を有する可撓性の基層432を特徴とする。表面434は、一連の突き出る光拡散要素438を特徴とする。これらの要素は、層432と同じ材料から製造された表面において「平らなバンプ」の形状であってもよい。表面436は、基層432と一体に形成された平らになったまたは平面ピーク440を有する直線プリズムの配列を特徴とする。これらのピークは、平らになった幅442および断面ピッチ幅444を特徴とし、そこで平らになった幅は断面ピッチ幅の約0~30%に等しい場合がある。
【0092】
光を光ガイドから抽出する別の方法は、フラストレーテッド内部全反射(TIR)の使用による。1つのタイプのフラストレーテッドTIRにおいて光ガイドはくさび形を有し、光ガイドの厚い縁上に入射する光線は光ガイドの上面および底面に対して臨界角を達成するまで内部全反射される。次に、これらの臨界角未満の光線が抽出されるか、または光ガイドから視射角において出力表面に、より簡単に屈折する。ディスプレイデバイスを照明するために有用であるために、次いで、これらの光線はディスプレイデバイスの視軸、または出力軸に略平行に回転されなければならない。この転向は通常、転向レンズまたは転向フィルムを用いて達成される。
【0093】
図10~12は、転向フィルムを備える照明デバイスを示す。転向フィルムは、耐久性転向フィルムを形成するための本明細書に開示された本発明の材料を含有することができる。転向レンズまたは転向フィルムは典型的に、入力平面上に形成されたプリズム構造体を備え、入力平面は光ガイドに隣接して配置される。出力表面に対して通常30度未満の視射角において光ガイドを出る光線は、プリズム構造体にぶつかる。光線は、プリズム構造体の第1の表面によって屈折され、プリズム構造体の第2の表面によって反射されて、それらは転向レンズまたはフィルムによって所望の方向に、例えば、ディスプレイの視軸に略平行に誘導される。転向フィルムは、例えば少なくとも0.5マイクロメートルおよび典型的に10マイクロメートル以下の半径を有する丸みを帯びた頂端を有してもよい。
【0094】
図10を参照して、照明システム510は、光学的に結合された光源512、光源反射体514、出力表面518と裏側の表面520と入力平面521と末端表面522とを有する光ガイド516、裏側の表面520に隣接した反射体524、入力平面528と出力表面530とを有する第1の光方向転換要素526、第2の光方向転換要素532、および反射偏光子534を備える。光ガイド516は、くさびまたはその改良であってもよい。公知であるように、光ガイドの目的は、光源512よりもずっと大きい領域にわたって、およびより詳しくは、実質的に、出力表面518によって形成された全領域にわたって光源512からの光の均一な分布を提供することである。光ガイド516はさらに好ましくは、小型の薄いパッケージにおいてこれらの課題を達成する。
【0095】
光源512は、光ガイド516の入力平面521にエッジ結合されるCCFLであってもよく、ランプ反射体514は、ランプキャビティを形成する、光源512の周りを囲む反射フィルムであってもよい。反射体524は、光ガイド516を支持し、効率的裏面反射体、例えば、均等拡散または正反射フィルムまたは組合せであってもよい。
【0096】
エッジ結合光は、TIRによって閉じ込められて、入力平面521から端表面522の方向に伝播する。前記光は、TIRのフラストレーションによって光ガイド516から抽出される。光ガイド516内に閉じ込められた光線は、各々のTIRバウンドによって、くさび角度のために、上および下壁の平面に対するその入射角を増加させる。従って、最終的に光は、TIRによってもう含有されないので、出力表面518および裏側の表面520の各々から屈折する。裏側の表面520から屈折する光は、反射体524によって光ガイド516の方向におよび主にそれを通して正反射または拡散反射される。第1の光方向転換要素526は、好ましい視方向に略平行な方向に沿って出力表面518を出る光線を方向変換するように配列される。好ましい視方向は出力表面518に垂直であってもよいが、より典型的に、出力表面518に対して或る角度をなしている。
【0097】
図11に示されるように、第1の光方向転換要素526は光透過光学フィルムであり、そこで出力表面530は略平面であり、入力平面528はプリズム538、540および542の配列536と共に形成される。また、第2の光方向転換要素532は光透過フィルム、例えば、ミネソタ州、セントポールの3Mカンパニーから入手可能な3M輝度向上フィルム製品(BEFIIIとして販売)などの輝度向上フィルムであってもよい。反射偏光子534は、無機ポリマーコレステリック液晶反射偏光子またはフィルムであってもよい。適したフィルムは、共に3Mカンパニーから入手可能である3M拡散反射偏光子フィルム製品(DRPFとして販売)または正反射偏光子フィルム製品(DBEFとして販売)である。
【0098】
配列536内に、各プリズム538、540および542は、その各々の隣接プリズムと比較した時に異なる側面の角度で形成されてもよい。すなわち、プリズム540は、プリズム538(角度AおよびB)、およびプリズム542(角度EおよびF)とは異なった側面の角度(角度CおよびD)で形成されてもよい。図示されるように、プリズム538は、角度AおよびBの合計に等しいプリズム角度、すなわち、夾角を有する。同様に、プリズム540は角度CおよびDの合計に等しいプリズム角度を有するが、プリズム542は角度EおよびFの合計に等しいプリズム角度を有する。配列536は異なったプリズム角度に基づいた3つの異なったプリズム構造体を備えるように示されるが、実質的に任意の数の異なったプリズムを用いてもよいことは理解されるはずである。
【0099】
また、プリズム538、540および542は、共通のプリズム角度で、様々なプリズムの向きで形成されてもよい。プリズム軸「l」は、プリズム538について図11に示される。プリズム軸lは、プリズム538について示されるように、出力表面530に垂直に配列されてもよく、またはプリズム540および542について、それぞれ、想像軸(phantom axes)「l+」および「l-」によって示されるように光源の方向にまたは光源から離れて出力表面に対して角度をなしていてもよい。
【0100】
プリズム538、540および542は、プリズムの規則的反復パターンまたはクラスタ543において図11に示されたように配列536内に配列されてもよく、配列536は、同じプリズムに隣接した同じプリズムを有するように示されていないが、このような構成も使用されてもよい。さらに、配列536内に、プリズム538、540および542は、プリズム構成538などの第1のプリズム構成からプリズム構成540などの第2のプリズム構成等に連続的に変化してもよい。例えば、プリズム構成は、第1のプリズム構成から第2のプリズム構成に勾配をなして変化してもよい。あるいは、プリズムは、図11に示された構成と同様に、段階的に変化してもよい。各クラスタ543内に、プリズムは、空間リプル周波数よりも小さいように選択される、プリズムピッチを有する。同様に、クラスタは、規則的なクラスタピッチを有してもよい。プリズム配列は図11に示されるように対称的であってもよく、またはプリズム配列は非対称的であってもよい。
【0101】
図11に示された配列536は対称的構成を有するプリズムを有するが、光方向転換要素526’内に形成された図12に示された配列536’などのプリズムの配列を用いてもよい。次いで図12を参照すると、配列536’において、プリズム538’は、例えば、角度B’に等しくない角度A’を有する。同様にプリズム540’および542’について、角度C’は、角度A’および角度D’に等しくなく、角度E’は、角度A’、角度C’または角度F’のどれにも等しくない。配列536’は有利には、予め決められた角度の単一ダイアモンドカッティング用具を用いて、および異なるプリズム角度および対称なプリズムを各々カット製造するための用具を傾斜して形成されてもよい。しかしながら、単一カッティング用具の使用によって、プリズム角度は同じになる、すなわち、A+B=C+D=E+Fであることは理解されよう。
【0102】
わずか2つの異なったプリズム構成が配列536内で使用されてクラスタになって配列されてもよいが、光ガイド516からの出力プロファイルの改良を行うために必要な数のプリズムサイズを用いてもよいことは予想される。プリズムの側面の角度の変化の1つの目的は、可変量の光パワーを第1の光方向転換要素526に広げ、付加することである。プリズム538、540および542の様々な構成が光ガイドの入口開口の実質的に均一なサンプリングを提供するのに役立ち、光ガイド516から抽出された光の不均一性を最小にする。最終結果は、光ガイド516の入口端521の特に付近のリプル効果の効果的な最小化である。
【0103】
以下の定義された用語について、異なった定義がクレームまたは本明細書のどこか他で与えられない限り、これらの定義を適用するものとする。
【0104】
用語「微細構造化」は、米国特許第4,576,850号明細書に定義および説明されたように本明細書において用いられる。従って、それは、微細構造を有する物品の予め決められた所望の実用目的または機能を示すかまたは特徴づける表面の構成を意味する。センターラインより上の表面プロファイルによって包含された面積の合計が前記ラインより下の面積の合計に等しいように前記物品の表面の突起および窪みなどの不連続部分は、微細構造にわたって引かれた平均センターラインからプロファイルにおいて外れ、前記ラインは、物品の(微細構造を有する)公称表面に本質的に平行である。前記偏りの高さは、典型的に、表面の代表的な特徴長さ、例えば、1~30cmにわたって光学または電子顕微鏡によって測定されたとき、約+/-0.005~+/-750ミクロンである。前記平均センターラインは、ピアノ、凹形、凸形、非球面またはそれらの組合せであってもよい。前記偏りが低いオーダー、例えば、+/-0.005+/-0.1または、好ましくは、+/-0.05ミクロンであり、前記偏りが頻出しないかまたは最小の出現である、すなわち、表面があらゆる有意な不連続部分を含有しない物品は微細構造を有する表面が本質的に「平ら」または「平滑な」表面である物品であり、このような物品は、例えば、眼科用レンズなど、精密光学要素または精密光学境界面を有する要素として有用である。前記偏りが低いオーダーであり頻出する物品には、反射防止微細構造を有する物品がある。前記偏りが高いオーダー、例えば、+/-0.1~+/-750ミクロンであり、同一または異なっておりランダムにまたは規則的に離隔されるかまたは接触している複数の実用的不連続部分を含む微細構造による物品は、再帰反射キューブ-コーナーシート材料、リニアフレネルレンズ、ビデオディスクおよび輝度向上フィルムなどの物品である。微細構造を有する表面は、前記低いおよび高いオーダーの両方の実用的不連続部分を含有することができる。微細構造を有する表面は、その量またはタイプが前記物品の予め決められた所望の有用性を著しく妨げないかまたは悪影響を与えない限り、外来のまたは非実用的不連続部分を含有してもよい。
【0105】
再帰反射フィルムは一般に、その主面に垂直な軸を中心にしたシート材料の回転配向(rotational orientation)に関係なく比較的高い照射角(入口角度)において入射光のかなりのパーセンテージを戻すことができる。キューブコーナー再帰反射フィルムは、略平面基礎表面と、前記基礎表面の反対側の複数のキューブコーナー要素を含む構造表面とを典型的に有する本体部分を備えることができる。各キューブコーナー要素は、単一基準点、または頂点において典型的に交わる3つの相互に略垂直な光学面を備えることができる。キューブコーナー要素のベースは、光がそれを通してキューブコーナー要素中に伝達される開口として作用する。米国特許第5,898,523号明細書に記載されているように、使用時に、シート材料の基礎表面上に入射する光は、シート材料の基礎表面において屈折され、シート材料上に配置されたキューブコーナー要素の各ベースを通して伝達され、3つの垂直なキューブコーナー光学面の各々から反射され、光源の方向に方向転換される。
【0106】
用語「ポリマー」は、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なったモノマーを用いて形成されたポリマー)、オリゴマーおよびそれらの組合せ、ならびに例えば、同時押出またはエステル交換などの反応によって混和性ブレンドに形成され得るポリマー、オリゴマー、またはコポリマーを含めるものとして理解される。特に指示しない限り、ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーの両方を含める。
【0107】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレート化合物の両方を指す。
【0108】
用語「屈折率」は、自由空間における電磁放射線の速度の、その材料中の前記放射線の速度に対する比であると理解される材料の絶対屈折率として本明細書において定義される。前記屈折率は、公知の方法を用いて測定することができ、一般に、可視光線領域においてアッベ屈折計を用いて測定された。
【0109】
本明細書において用語「ナノ粒子」は、約100nmより小さい直径を有する粒子(一次粒子または結合一次粒子)を意味すると定義される。
【0110】
本明細書中で用いられるとき、用語「結合粒子」は、凝結される、および/または凝集される2つ以上の一次粒子の集まりを指す。
【0111】
本明細書中で用いられるとき、用語「凝結」は、互いに化学結合していてもよい一次粒子間の強い結合を説明する。より小さな粒子への凝結体の分解は達成が困難である。
【0112】
本明細書中で用いられるとき、用語「凝集」は、電荷または極性によって一緒に保持される場合がありかつより小さな実体に分解されうる一次粒子の弱い結合を説明する。
【0113】
用語「一次粒度」は、非結合単一粒子のサイズとして本明細書に記載される。
【0114】
用語「ゾル」は、液相中のコロイド粒子の分散体または懸濁液として本明細書において定義される。
【0115】
用語「安定な分散体」は、コロイドナノ粒子が約24時間などの或る時間、例えば室温(約20~22℃.)、大気圧、および極電磁力がない周囲条件下で放置した後に凝集しない分散体として本明細書において定義される。
【0116】
用語「ゲイン」は、輝度向上フィルムによるディスプレイの輝度の改良の尺度として本明細書において定義され、光学材料の、また、輝度向上フィルムの幾何学的形状の性質である。典型的に、ゲインが増加するとき、視角は減少する。改良されたゲインはバックライトディスプレイの輝度の有効な増加をもたらすので、高ゲインは輝度向上フィルムのために望ましい。
【0117】
エンドポイントによる数の範囲の記載には、その範囲内に包括されたすべての数を含める(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含める)。
【0118】
本明細書および添付された請求項において用いられるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかに要求しない限り複数の指示物を含める。従って、例えば、「化合物(a compound)」を含有する組成物への言及は、2つ以上の化合物の混合物を含める。本明細書および添付された請求項において用いられるとき、用語「または」は一般に、内容が明らかに要求しない限り「および/または」を含めるその意味において使用される。
【0119】
特に記載しない限り、本明細書および請求項において用いられる、成分の量を表す全ての数、性質などの測定値は、あらゆる場合において用語「約(about)」によって修飾されるものとして理解されなければならない。
【0120】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施例に限定されると考えられるべきでなく、添付した請求項に明確に示されるような本発明の全ての態様にわたると理解されるべきである。様々な改良、同等の方法、ならびに本発明が適用可能である多数の構造は、本明細書を検討するとき当業者には容易に明らかとなろう。
【0121】
表Iの以下の成分が実施例の有機成分の調製において使用された。
【0122】
【表1】
【0123】
2004年12月30日に出願された米国特許出願第11/027426号明細書に記載されたように3つのZrO2ゾルを調製した。
【0124】
ZrO2ゾル1
38.58gの酢酸イットリウム水和物(Aldrich)を1500gの酢酸ジルコニウム溶液(MEI Corp)に溶解し、溶液を一晩室温において、次いで4時間、90℃の強制空気炉内で乾燥させた。固体を十分な脱イオン水に溶解して12.5%溶液を生じた。206℃に加熱された油の槽中に浸漬された外径1/4インチのステンレス鋼管の100フィートを通してこれを80mL/分の速度でポンプ輸送した。次にその流れを氷/水槽中に浸漬された付加的な40フィートの長さの管に送り、ストリームを冷却した。背圧調節器を管の端部に置いて260~290psigの出口圧力を維持した。この工程の生成物は、白色固体の微細粒子の液体懸濁液であった。
【0125】
液体懸濁液を回転蒸発を用いて固形分14.5%に濃縮した。206℃に加熱された油の槽中に浸漬された外径1/4インチのステンレス鋼管の100フィートを通してこの濃厚物を10mL/分の速度でポンプ輸送した。次にその流れを氷/水槽中に浸漬された付加的な40フィートの長さの管に送り、ストリームを冷却した。背圧調節器を管の端部に置いて260~270psigの出口圧力を維持した。この工程の生成物は液体ゾル(固形分10.5%)であった。
【0126】
ZrO2ゾル2
79.5gの酢酸イットリウム水和物(Aldrich)を3000gの酢酸ジルコニウム溶液(MEI Corp)に溶解し、溶液を一晩室温において、次いで4時間、90℃の強制空気炉内で乾燥させた。固体を十分な脱イオン水に溶解して12.5%溶液を生じた。206℃に加熱された油の槽中に浸漬された外径1/4インチのステンレス鋼管の100フィートを通してこれを80mL/分の速度でポンプ輸送した。次にその流れを氷/水槽中に浸漬された付加的な40フィートの長さの管に送り、ストリームを冷却した。背圧調節器を管の端部に置いて250~310psigの出口圧力を維持した。この工程の生成物は白色固体の微細粒子の液体懸濁液であった。
【0127】
液体懸濁液を回転蒸発を用いて固形分約18.5%に濃縮した。206℃に加熱された油の槽中に浸漬された外径1/4インチのステンレス鋼管の100フィートを通してこの濃厚物を15mL/分の速度でポンプ輸送した。次にその流れを氷/水槽中に浸漬された付加的な40フィートの長さの管に送り、ストリームを冷却した。背圧調節器を管の端部に置いて230~340psigの出口圧力を維持した。この工程の生成物は液体ゾルであった。ゾルを回転蒸発によってさらに濃縮して固形分40.47%の最終物を生じた。
【0128】
ZrO2ゾル3を同じ方法で製造することができ、固形分45.78%を有するゾルを生じる。
【0129】
3つのZrO2ゾルを以下のZrO2試験方法によって試験した。
【0130】
光子相関分光法(PCS)
マルバーン(Malvern)シリーズ4700粒度アナライザ(マサチューセッツ州、サウスバーロウのマルバーン・インストルメンツ社(Malvern Instruments Inc.,Southborough,MA)から入手可能)を用いて光子相関分光法(PCS)によって体積-平均粒度を定量した。希釈ジルコニアゾル試料をシリンジによって適用された圧力を用いて0.2μmフィルターを通してガラスキュベット中に濾過し、次いで覆った。データ獲得を開始する前に試料チャンバの温度を25℃に平衡させた。供給されたソフトウェアを用いて90度の角度でCONTIN分析を行った。CONTINは、S.W.Provencher、Comput.Phys.Commun.、27、229(1982年)にさらに記載されている一般的逆変換問題を分析するための広範囲に使用された数学的方法である。分析は、24のデータビンを用いて行われた。以下の値を計算において用いた:1.333に等しい水の屈折率、0.890センチポアズに等しい水の粘度、および1.9に等しいジルコニア粒子の屈折率。
【0131】
2つの粒度測定をPCSデータに基づいて計算した。ナノメートル単位で記録された強度-平均粒度は、散乱光強度分布の平均値に相当する粒子のサイズに等しかった。散乱光強度は、粒子の直径の7乗に比例した。同じくナノメートル単位で記録された体積-平均粒度は、ジルコニア粒子の屈折率と分散媒(すなわち、水)の屈折率との両方を考慮に入れる散乱光強度分布から計算された体積分布から得られた。体積-平均粒度は、体積分布の平均に相当する粒度に等しかった。
【0132】
強度-平均粒度を体積-平均粒度によって割り、粒度分布を示す比を提供する。
【0133】
結晶構造およびサイズ(XRD分析)
乾燥されたジルコニア試料の粒度を瑪瑙乳鉢と乳棒を用いて手作業による粉砕で低減した。試料の多めの量を、両面塗布テープの一部が付着されたガラス顕微鏡スライドにへらで適用した。試料をへらの刃でテープに当てることによって試料をテープ上の接着剤に押し付けた。過剰な試料を除去するために試料の領域をへらの刃の縁で掻き取り、接着剤に付着された粒子の薄い層を残した。掻き取りの後に残っているゆるく付着した材料を除去するために、顕微鏡スライドを硬質表面に当てて強く叩いた。同様な方法で、コランダム(インディアナ州、インディアナポリスのユニオン・カーバイド(Union Carbide,Indianapolis, IN)製のリンデ(Linde)1.0μmアルミナ磨き粉、ロット番号C062)を調製し、計器上の広がりについて回折計を較正するために使用した。
【0134】
X線回折走査は、反射幾何学、銅Kα放射線、および散乱放射線の比例検出器レジストリを有するフィリップス(Philips)垂直回折計を用いて得られた。回折計に可変入射ビームスリット、一定回折ビームスリット、および黒鉛回折ビームモノクロメータを取り付けた。0.04度のステップサイズおよび8秒の停滞時間を用いてサーベイスキャンを25~55度の2シータ(2θ)から行った。45kVおよび35mAのX線発生装置設定値を使用した。コランダム標準のデータ収集をいくつかの単独コランダムマウントの3つの別個の領域上で行った。データを薄層試料マウントの3つの別個の領域上で行った。
【0135】
観察された回折ピークは、回折データのための国際センター(the International Center for Diffraction Data)(ICDD)粉末回折データベース(セット1~47、ペンシルベニア州、ニュートン・スクエアのICDD)に含まれる基準回折パターンと比較して同定され、ジルコニアの立方晶/正方晶(C/T)または単斜晶(M)の形に帰された。立方晶相の(111)ピークと正方晶相の(101)ピークとを分けることはできず、これらの相は一緒に記録される。各々のジルコニアの形の量を相対的な基準で測定し、最も強い回折ピークを有するジルコニアの形に、100の相対強度の値を与えた。残存している結晶ジルコニア形の最も強いラインを、最強ラインに対して一定率で決め、1~100の値を与えた。
【0136】
コランダムによる観察された回折最大値のピーク幅をプロファイルフィッティングによって測定した。平均コランダムピーク幅とコランダムピーク位置(2θ)との間の関係を確認するために、これらのデータに多項式を当てはめ、コランダム試験の範囲内で何れかのピーク位置で計器幅を計算するために用いた連続関数をつくった。ジルコニアによる観察された回折最大値のピーク幅を、観察された回折のピークをプロファイルフィッティングすることによって測定した。
以下のピーク幅を、存在していることがわかったジルコニア相によって測定した。
立方晶/正方晶(C/T):(111)
単斜晶(M):(-111)、及び(111)
α1およびKα2波長成分が説明されるピアソンVIIピーク形状モデル、及び線形バックグラウンドを全ての場合において用いた。幅は、度の単位を有するピークの半値全幅(FWHM)とされた。プロファイルフィッティングは、JADE回折ソフトウェア一式の能力を用いて達成された。試料ピーク幅を、同じ薄層試料マウントについて得られた3つの別個のデータ収集について計算した。
【0137】
試料のピークを、コランダム計器較正からの計器幅値の補間によって計器による広がりについて補正し、補正したピーク幅をラジアンの単位に変換した。Scherrerの式を用いて一次結晶サイズを計算した。
微結晶のサイズ(D)=Kλ/β(cosθ)
Scherrerの式中、
K=形状因子(ここでは0.9)、
λ=波長(1.540598Å)、
β=計器による広がりの補正後のピーク幅の計算値(ラジアン単位)=[ピークFWHMの計算値-計器幅](ラジアンに変換された)、ここでFWHMは半値全幅である。及び
θ=1/2ピーク位置(散乱角)。
【0138】
立方晶/正方晶微結晶のサイズを(111)ピークを用いて3つの測定の平均として測定した。
立方晶/正方晶の平均微結晶サイズ=
[D(111)(面積1)+D(111)(面積2)+D(111)(面積3)]/3
【0139】
単斜晶微結晶のサイズを(-111)ピークを用いる3つの測定および(111)ピークを用いる3つの測定の平均として測定した。
単斜晶平均微結晶サイズ=
[D(-111)(面積1)+D(-111)(面積2)+D(-111)(面積3)
D(111)(面積1)+D(111)(面積2)+D(111)(面積3)]/6
【0140】
立方晶/正方晶(C/T)および単斜晶相(M)の重み付き平均を計算した。
重み付き平均=[(%C/T)(C/Tのサイズ)+(%M)(Mのサイズ)]/100
この式において、
%C/T=ZrO2粒子の立方晶及び正方晶の微結晶含有量によって寄与された結晶性のパーセント、
C/Tのサイズ=立方晶及び正方晶の微結晶のサイズ、
%M=ZrO2粒子の単斜晶の微結晶含有量によって寄与された結晶性のパーセント、及びMのサイズ=単斜晶微結晶のサイズ。
【0141】
分散体指数
分散体指数は、PCSによって測定された体積-平均サイズをXRDによって測定された重み付き平均微結晶サイズで割った値に等しい。
【0142】
固形分の重量パーセント
固形分の重量パーセントは、3~6グラムの重さの試料を30分間120℃において乾燥させることによって定量された。固形分のパーセントは、以下の式を用いて湿潤試料の重量(すなわち、乾燥する前の重量、重量(湿潤))および乾燥試料の重量(すなわち、乾燥した後の重量、重量(乾燥))から計算することができる。
固形分の重量%=100(重量(乾燥))/重量(湿潤)
【0143】
結果を以下のように表2および3に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【実施例
【0146】
実施例1
ZrO2ゾル1を約12時間透析して(アルドリッチ(Aldrich)から入手可能なシグマ250-7U MWCO >12,000)、固形分10.93%の安定なゾルを生じた。透析されたZrO2ゾル1(435.01g)およびMEEAA(9.85g)を1リットルの丸底フラスコに入れ、回転蒸発によって濃縮した。次に、イソプロパノール(30g)およびNSEA(35.00g)を濃縮ゾルに添加した。次に、分散体を回転蒸発によって濃縮した。ZrO2充填NSEAは1.674の屈折率を有し、48.83%のZrO2であった。0.39gのTPO-Lを40.09gの濃縮分散体に添加した。この混合物10.03gに、0.98gのSR351を添加した。
【0147】
実施例2
ZrO2ゾル1を約12時間透析して(アルドリッチから入手可能なシグマ250-7U MWCO>12,000)、固形分10.93%の安定なゾルを生じた。透析されたZrO2ゾル1(437.02g)およびMEEAA(10g)を1リットルの丸底フラスコに入れた。水および酢酸を回転蒸発によって除去した。このように得られた粉末を脱イオン水中に再分散させた。分散体は21.45重量%のZrO2であった。水性ZrO2ゾル(206.5g)をジャーに入れ、攪拌しながら、300gの1-メトキシ-2-プロパノール、9.89gのA174、6.64gのシルクエストA-1230を添加した。次に、この混合物を1Lのジャー中に注ぎ、封止し、3時間90℃に加熱した。ジャーの内容物を除去し、回転蒸発によって約25.4重量%のZrO2に濃縮した。脱イオン水(450g)および濃アンモニア水(29%NH4OH)(13.9g)を1Lのビーカーに入れた。濃縮ZrO2分散体をビーカーに攪拌しながらゆっくりと添加した。このように得られた白色沈殿物を真空濾過によって単離し、付加的な脱イオン水で洗浄した。湿った固体を1-メトキシ-2-プロパノール中に分散させた。得られたシラン改質ジルコニアゾルは、20.53重量%の固形分および17.44重量%のZrO2を含有した。
【0148】
シラン改質ZrO2ゾル(117.03g)、PEA(15.12g)、HDDA(1.68g)およびプロスタブ(Prostab)5198の5%水溶液(0.13g)を丸底フラスコに添加した。水および1-メトキシ-2-プロパノールを回転蒸発によって除去した。ZrO2充填樹脂は1.584の屈折率を有し、47%のZrO2であった。
【0149】
実施例3
ZrO2ゾル2を約4.5時間透析して(VWRから入手可能なスペクトラ/ポー・メンブラン(Spetra/Por Membrane)MWCO12~14,000)、固形分33.85%の安定なゾルを生じた。透析されたZrO2ゾル2(53.13g)、MEEAA(1.59g)、BCEA(1.14g)、1-メトキシ-2-プロパノール(133g)、NSEA(7.09g)およびTMPTA(0.97g)を丸底フラスコに入れ、回転蒸発によって濃縮した。ZrO2含有樹脂は58.57%のZrO2であり、1.682の屈折率を有した。ZrO2含有樹脂(21.94g)およびTPO-L(0.09g)を一緒に混合した。
【0150】
実施例4
ZrO2ゾル2を約4.5時間透析して(VWRから入手可能なスペクトラ/ポー・メンブランMWCO12~14,000)、固形分33.85%の安定なゾルを生じた。透析されたZrO2ゾル2(109.90g)、MEEAA(3.28g)、BCEA(2.36g)、1-メトキシ-2-プロパノール(200g)、NOEA(14.68g)およびTMPTA(2.00g)を1リットルの丸底フラスコに入れ、回転蒸発によって濃縮した。ZrO2含有樹脂は57.22%のZrO2であり、1.661の屈折率を有した。ZrO2含有樹脂(29.47g)およびTPO-L(0.13g)を一緒に混合した。
【0151】
実施例5
ZrO2ゾル2を約4.5時間透析して(VWRから入手可能なスペクトラ/ポー・メンブランMWCO12~14,000)、固形分33.85%の安定なゾルを生じた。透析されたZrO2ゾル2(144.02g)、MEEAA(4.30g)、BCEA(3.09g)、1-メトキシ-2-プロパノール(300g)、NOEA(10.22g)、TMPTA(4.38g)、BR31(21.89g)およびプロスタブ5198の5%水溶液(0.3g)を丸底フラスコに入れ、アルコールおよび水を回転蒸発によって除去した。ZrO2含有樹脂は46.97%のZrO2であり、1.636の屈折率を有した。ZrO2含有樹脂(49.03g)およびTPO-L(0.26g)を一緒に混合した。
【0152】
実施例6
ZrO2ゾル3(100.00g)、MEEAA(4.44g)、BCEA(2.13g)、1-メトキシ-2-プロパノール(115g)、PEA/BR31の50/50配合物(29.78g)およびプロスタブ5198の5%水溶液(0.12g)を丸底フラスコに入れ、アルコールおよび水を回転蒸発によって除去した。ZrO2含有樹脂は約53.3%のZrO2であり、1.642の屈折率を有した。0.47pphのTPO-Lを上記の混合物に添加した。
【0153】
実施例7
ZrO2ゾル3(200g)、MEEAA(8.81g)、BCEA(4.22g)、1-メトキシ-2-プロパノール(230g)、BR31/PEA/TMPTAの38/50/12配合物(59.1g)、およびプロスタブ5198の5%水溶液(0.24g)を丸底フラスコに入れ、アルコールおよび水を回転蒸発によって除去した。ZrO2含有樹脂は52.31%のZrO2であり、1.638の屈折率を有した。ZrO2充填樹脂(116g)およびTPO-L(0.55g)を一緒に混合した。
【0154】
全ての実施例の有機成分ならびに全ての実施例の重合性組成物は、2重量%未満の溶剤含有量を有する。実施例において使用された全ての有機成分は、50℃において100cpsより小さい粘度を有する。実施例において使用された全ての有機成分は、有機成分が25℃において均質な混合物であるならば、25℃において1000cpsより小さい粘度を有する。実施例の全ての重合性組成物(すなわち、ナノ粒子を含める)は、50℃において1000cpsより小さい粘度を有する。
【0155】
3組の実験において、重合性樹脂組成物を、プリズムの面の傾きによって画定される90°の頂角を有するマスター用具を用いて輝度向上フィルムに作製した。
【0156】
第1の組の実験において、隣接した頂端の間の平均距離は約50マイクロメートルであり、プリズムの頂端は鋭く、プリズムは、3Mカンパニーによって商品名「ビキュイティ(Vikuiti)BEF III90/50フィルム」として販売された輝度向上フィルムに似てそれらの長さに沿って高さが変化した。
【0157】
第2および第3の組の実験において、隣接した頂端の間の平均距離は約24マイクロメートルであり、プリズム頂端の頂端は鋭かった。
【0158】
各々の実験のために重合性樹脂組成物を約50℃の温度に加熱し、連続フィルムを形成するために十分な体積においてマスター用具上に注いだ。マスター用具および重合性樹脂をコーティングバーデバイスによって引っ張り、第1の組の実験において約25ミクロンおよび第2および第3の組の実験において約13ミクロンの重合性樹脂の厚さを形成した。コーティングした後、実験1については5ミルのPETフィルムを重合性樹脂上に積層した。2ミルのPETフィルムを実験2のために用い、3Mカンパニーから商品名「ビキュイティDBEF-P」として市販されているものと実質的に同じ反射偏光子を実験3のために用いた。次に、マスター用具、重合性樹脂、およびPETまたは反射偏光子フィルムを紫外線硬化装置内に置き、3000ミリジュール/cm2において露光した。硬化した後、重合された樹脂およびPETをマスター用具から剥離した。
【0159】
得られた輝度向上フィルムのゲインをカリフォルニア州、チャッツワースのフォト・リサーチ社(Photo Research,Inc,Chatsworth,CA)から入手可能なスペクトラスキャン(SpectraScan)(登録商標)PR-650スペクトラカラリメーター(SpectraColorimeter)で測定した。以下の各実施例のためのこの方法の結果は、以下の結果の部分に記載される。単一シートゲイン(すなわち「SS」)を測定するためにフィルム試料を切り分け、プリズムの溝がテフロン(登録商標)光キューブの前面に平行であるように、フォスター(Foster)DCR II光源を用いて光パイプ経由で照明されるテフロン(登録商標)(Teflon)光キューブ上に置いた。交差シートゲイン(すなわち「XS」)のために同じ材料の第2のシートを第1のシートの下に置き、第2のシートの溝がテフロン(登録商標)光キューブの前面に垂直であるように方向付けした。
【0160】
結果を以下の表IVに記載する。
【0161】
【表4】
【0162】
実施例8
3Mカンパニーから商品名「ビキュイティT-BEF」として市販されている輝度向上フィルムを、第2のシートの溝がテフロン(登録商標)光キューブの前面に垂直であるように、実験3によって調製された実施例6と同じ組成を有する輝度向上フィルムの下に置いた。実験3によって調製された実施例6の単一シートゲインは2.519であった。「ビキュイティT-BEF」と組み合わせられたこのシートのゲインは3.143であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12