(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】デュアルインターフェイスカード及びその製造方法、並びにカード内蔵されているアンテナの位置の検査方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/077 196
G06K19/077 244
G06K19/077 268
(21)【出願番号】P 2018118031
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】戸田 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭介
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-207520(JP,A)
【文献】特開2005-045161(JP,A)
【文献】特開2009-169563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触通信機能及び非接触通信機能を有するデュアルインターフェイスカードであって、
1又は複数のコアシートを含み、かつICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域を有するカード基材と、
前記埋め込み予定領域に埋め込まれているICモジュールと、
を有し、
前記1又は複数のコアシートのうちの1つにアンテナが配置されており、かつ前記アンテナが、前記ICモジュールの端子と電気的に接続されており、
前記ICモジュールを埋め込む前の状態で前記埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、前記アンテナが配置されている前記コアシートの前記アンテナが配置されている面に、前記アンテナと相対的な位置が特定されており、かつ前記アンテナと同じ材料で作られている位置決め部を有する、
デュアルインターフェイスカード。
【請求項2】
前記アンテナが巻線アンテナである、請求項1に記載のデュアルインターフェイスカード。
【請求項3】
前記アンテナが配置されている前記コアシートの、前記アンテナが配置されている側の面が、前記デュアルインターフェイスカードの裏面側に向いている、請求項1又は2に記載のデュアルインターフェイスカード。
【請求項4】
前記アンテナが配置されている前記コアシートの、前記アンテナが配置されている側の面が、前記デュアルインターフェイスカードの表面側に向いている、請求項1又は2に記載のデュアルインターフェイスカード。
【請求項5】
前記アンテナが配置されている前記コアシートが透明又は半透明コアシートである、請求項1~4のいずれか一項に記載のデュアルインターフェイスカード。
【請求項6】
前記位置決め部が、L字型形状部分を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のデュアルインターフェイスカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルインターフェイスカード及びその製造方法、並びにデュアルインターフェイスカードに内蔵されているアンテナの位置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードとしては、カード基材の表面からICモジュールを埋め込んでいる接触通信型のICカード、カード基材の中にICチップとICチップに接続されたアンテナ回路とを内蔵している非接触通信型のICカード、並びに接触通信及び非接触通信の双方の機能が付与されたICカードが知られている。
【0003】
接触通信及び非接触通信の双方の機能が付与されたICカードは、一般的に、カード基材の表面から埋め込まれているICモジュールと、カード基材の内部に配置されており、かつICモジュールと電気的に接続しているアンテナとを併用できるカードである。このようなカードは、一般的にはデュアルインターフェイスカード(以下、「DIFカード」とも称する)と呼ばれており、また場合によって、コンビネーションカードやコンビ式カード又は複合ICカードとも呼ばれる。
【0004】
DIFカードは、通常、以下の製造方法によって製造される。
【0005】
まず、アンテナが配置されているコアシート(又はアンテナシート)を形成する。次に、アンテナが配置されているコアシートを、他のコアシートや他の機能性のシート等で挟み込むように積層し、プレスし、そしてカードの形状に打ち抜くことによって、カード基材を形成する。その後、形成されたカード基材の表面から、ICモジュールを埋め込む埋め込み予定領域を切削し、ICモジュールの端子とアンテナとが電気的に接続するようにして、この埋め込み予定領域にICモジュールを埋め込んで、DIFカードを製造する。
【0006】
このように、DIFカードのカード基材を製造する場合、プレスの際にアンテナが配置されているコアシートと他のコアシートや他の機能性のシートとが互いにずれてしまうことがある。このようなずれは、外部からは観察することができない。
【0007】
アンテナの位置がずれていると、製造されたDIFカードにエンボス加工を施す場合に、エンボス加工によってアンテナが切断されてしまう可能性がある。また、アンテナの位置がずれていると、アンテナとICチップとの接続が不良になることがある。
【0008】
このため、製造されたDIFカードのカード基材に内蔵されているアンテナの位置を特定する必要となる。
【0009】
なお、特許文献1では、非接触通信型のICカードの製造に使用するためのアンテナ回路多面付けシートが開示されている。具体的には、このアンテナ回路多面付けシートは、1枚のシート上にそれぞれのICカードに対応するアンテナ回路が複数設けられており、2枚の内側シートでこの複数のアンテナ回路が設けられているシートを表裏から挟み込んで一体化して構成されている。このとき、いずれかの内側シートにおいて、端部を基準として位置確認用マークが印刷されている。この位置確認用マークによって、内部に挟まれているアンテナ回路の位置を確認することができる。
【0010】
また、特許文献2では、ICチップを保護する保護板を巻線コイルに対して所定位置に配置したシート状ICモジュールの断裁に先立って、保護板の位置を検出手段により検出し、制御手段によってウエブ搬送手段の駆動を制御してシート状ICモジュールを位置決めすることによって、ICモジュールの位置を精度よく検出して正確に裁断すると共に、異品種混入を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-224508号公報
【文献】特開2005-149352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
DIFカードのカード基材に内蔵されているアンテナの位置を特定するために、X線による検査又は赤外線等の光による検査が考慮される。
【0013】
しかしながら、X線による検査を行う場合、使用する機器は高価であり、かつ使用者の教育や労働基準監督への使用申請が必要である。また、赤外線等の光による検査を行う場合、DIFの表面の印刷デザインと内蔵しているアンテナの形状とが重なっていると、アンテナの位置を判別することが難しい。更に、例えば磁気テープを有するDIFカードを製造する場合、磁気テープを隠蔽するための隠蔽印刷があるため、赤外線等の光は透過し難いという問題がある。
【0014】
したがって、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、内蔵されているアンテナの位置を特定できるDIFカード及びその製造方法、並びにDIFカードに内蔵されているアンテナの位置を特定できる検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決できることを見出した。
【0016】
〈態様1〉
接触通信機能及び非接触通信機能を有するデュアルインターフェイスカードであって、
1又は複数のコアシートを含み、かつICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域を有するカード基材と、
前記埋め込み予定領域に埋め込まれているICモジュールと、
を有し、
前記1又は複数のコアシートのうちの1つにアンテナが配置されており、かつ前記アンテナが、前記ICモジュールの端子と電気的に接続されており、
前記ICモジュールを埋め込む前の状態で前記埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、前記アンテナが配置されている前記コアシートの前記アンテナが配置されている面に、前記アンテナと相対的な位置が特定されており、かつ前記アンテナと同じ材料で作られている位置決め部を有する、
デュアルインターフェイスカード。
〈態様2〉
前記アンテナが巻線アンテナである、態様1に記載のデュアルインターフェイスカード。
〈態様3〉
前記アンテナが配置されている前記コアシートの、前記アンテナが配置されている側の面が、前記デュアルインターフェイスカードの裏面側に向いている、態様1又は2に記載のデュアルインターフェイスカード。
〈態様4〉
前記アンテナが配置されている前記コアシートの、前記アンテナが配置されている側の面が、前記デュアルインターフェイスカードの表面側に向いている、態様1又は2に記載のデュアルインターフェイスカード。
〈態様5〉
前記アンテナが配置されている前記コアシートが透明又は半透明コアシートである、態様1~4のいずれか一項に記載のデュアルインターフェイスカード。
〈態様6〉
前記位置決め部が、L字型形状部分を有する、態様1~5のいずれか一項に記載のデュアルインターフェイスカード。
〈態様7〉
態様1~6のいずれか一項に記載のデュアルインターフェイスカードの製造においてアンテナの位置を検査する検査方法であって、
前記ICモジュールを前記埋め込み予定領域に埋め込む前に、前記位置決め部の位置を目視又はカメラで観察して評価することを含む、
検査方法。
〈態様8〉
前記評価が、前記位置決め部が存在すべき位置と、観察された前記位置決め部の位置とを比較することを含む、態様7に記載の検査方法。
〈態様9〉
態様7又は8に記載の検査方法を含む、態様1~6のいずれか一項に記載のデュアルインターフェイスカードの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、DIFカードに内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明のDIFカードの一態様を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る埋め込み予定領域の一態様を示す図である。
図2(a)は、カード基材上における埋め込み予定領域を示す拡大平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA-A線断面の埋め込み予定領域付近の図である。
【
図3】
図3は、実施例1にかかるカード基材の製造工程及びアンテナの位置を検査する検査方法を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施例1、実施例2、及び比較例1のそれぞれのカード基材上における埋め込み予定領域の平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪DIFカード≫
本発明のDIFカードは、
接触通信機能及び非接触通信機能を有するデュアルインターフェイスカードであって、
1又は複数のコアシートを含み、かつICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域を有するカード基材と、
埋め込み予定領域に埋め込まれているICモジュールと、
を有し、
1又は複数のコアシートのうちの1つにアンテナが配置されており、かつアンテナが、ICモジュールの端子と電気的に接続されており、
ICモジュールを埋め込む前の状態で埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、アンテナが配置されているコアシートのアンテナが配置されている面に、アンテナと相対的な位置が特定されており、かつアンテナと同じ材料で作られている位置決め部を有する。
【0020】
本発明において、位置決め部は、アンテナが配置されているコアシートの、前記アンテナが配置されている面に、アンテナと相対的な位置が特定されており、かつアンテナと同じ材料で作られている。例えば、コアシート上に、アンテナを配置する際に、アンテナの接触端子部から更に延伸して、アンテナと相対的な位置が特定される位置決め部を形成することが好ましい。なお、ICモジュールを埋め込む埋め込み予定領域を形成する際に、この位置決め部と接触端子部との間が切断されていてもよい。すなわち、位置決め部はアンテナの接触端子部と連続して存在していてもよく、アンテナの接触端子部と連続せず、単独で存在していてもよい。
【0021】
例えば、
図1は、本発明のDIFカードの一態様を示す平面図である。本発明のDIFカード100は、1又は複数のコアシートを含み、かつICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域3を有するカード基材1と、埋め込み予定領域3に埋め込まれているICモジュールと、を有する。なお、
図1では、説明の便宜上、ICモジュールを省略している。カード基材1に含まれている1又は複数のコアシートのうちの1つにアンテナ2が配置されている。このアンテナ2は、接触端子部2a及び2bを介してICモジュール(図示せず)の端子と電気的に接続することができる。ICモジュールを埋め込む前の状態で、カード基材1の埋め込み予定領域3から観察できる範囲内において、アンテナ2が配置されているコアシートのアンテナ2が配置されている面に、アンテナ2と相対的な位置が特定されており、かつアンテナ2と同じ材料で作られている位置決め部4a及び4bを有する。
【0022】
なお、
図1では、その後の埋め込み予定領域3の第2の凹部を形成する際に、位置決め部4a及び4bは、それぞれ接触端子部2a及び2bとの間が切断されていて、単独に存在している態様である。
【0023】
上述したように、本発明のDIFカードは、内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。これは、本発明のDIFカードは、カード基材の表面において、ICモジュールを埋め込む前の状態で埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、アンテナが配置されているコアシートのアンテナが配置されている面に、アンテナと相対的な位置が特定されており、かつアンテナと同じ材料で作られている位置決め部を有していることからである。より具体的には、ICモジュールを埋め込む前に、埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、位置決め部を観察することによって、この位置決め部と特定の相対的な位置関係を有するアンテナの位置を認識できる。これによって、アンテナの位置がずれている場合には、そのことを認識でき、必要に応じて、ICモジュールを取り付ける前にずれが生じているカード基材を廃棄できる。
【0024】
また、本発明において、観察は、特に限定されず、例えば目視であってもよく、カメラ等の機器を用いてもよい。
【0025】
以下では、本発明のDIFカードの構成要素の詳細について説明する。
【0026】
〈カード基材〉
カード基材は、1又は複数のコアシートを含み、かつICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域を有する。また、カード基材に含まれる1又は複数のコアシートのうちの1つに、アンテナが配置されている。
【0027】
カード基材の厚さは、特に限定されず、例えば、500μm以上、550μm以上、600μm以上、650μm以上、680μm以上、700μm以上、750μm以上、又は800μm以上であってもよく、また1000μm以下、950μm以下900μm以下、850μm以下、又は800μm以下であってもよい。
【0028】
(埋め込み予定領域)
ICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域(以下、単に「埋め込み予定領域」とも称する)は、通常、カード基材の表面側から、すなわちDIFカードの表面側から、切削することによって形成されている。
【0029】
埋め込み予定領域の位置は、特に限定されない。ただし、DIFカードに内蔵されているアンテナの接触端子部と、ICモジュールの端子とが接触し易い観点から、通常、カード基材の表面に垂直な方向から見たときに、アンテナの接触端子部と部分的に重複するように、埋め込み予定領域を設定することが好ましい。
【0030】
例えば、
図1に示されているように、カード基材1は、カード基材1の表面に垂直な方向から見たときに、アンテナ2の接触端子部2a及び2bと部分的に重複するようにして、ICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域3を有している。
【0031】
また、埋め込み予定領域を形成する際に、アンテナの接触端子部の末端の一部が切削によって切り取られていてもよい。アンテナの接触端子部の一部が切削によって切り取られている場合、本発明にかかる位置決め部は、アンテナの接触端子部と連続せず、単独で存在する形態となる。また、これに対して、埋め込み予定領域を形成する際に、アンテナの接触端子部の末端の一部が切削されない場合、例えば、後述する埋め込み予定領域の第2の凹部を形成する際に、アンテナの接触端子部を貫通していないところまで切削する場合、又はこの形成される第2の凹部がアンテナの接触端子部の間の空間よりも小さい場合等、位置決め部は、アンテナの接触端子部と連続して存在する態様となる。
【0032】
埋め込み予定領域の大きさ及び形は、使用するICモジュールの大きさ及び形に合わせて適宜設定できる。
【0033】
例えば、埋め込み予定領域は、第1の凹部、第1の凹部の略中心部に形成されている第2の凹部、及び第1の凹部に存在する接点開口部を含むことができる。ここで、第1の凹部は、後述するICモジュールの基板部を収容できるものであり、第2の凹部は、後述するICモジュールの封止部を収容できるものである。また、第1の凹部に存在する接点開口部は、ICモジュールの端子とアンテナの接触端子部とが電気的に接触するための開口部である。
【0034】
本発明において、埋め込み予定領域が上記のような第1の凹部、第2の凹部、及び接点開口部を含む場合、埋め込み予定領域の第1の凹部から位置決め部を観察できることが好ましい。なお、埋め込み予定領域において、コアシートを通して位置決め部が透けて観察できるのであれば、位置決め部がコアシートに覆われていて完全に露出していなくてもよい。
【0035】
一般的に、カード基材の表面に垂直な方向から見た場合、好ましくは、第2の凹部の面積に比べて第1の凹部の面積がより広く、かつ第1の凹部の深さに比べて第2の凹部の深さがより深い。
【0036】
より具体的には、例えば、第1の凹部の深さは、位置決め部及びアンテナの接触端子部が露出しない深さであることができる。
【0037】
なお、アンテナの接触端子部がICモジュールの端子と接触するために、第1の凹部に存在する接点開口部は、アンテナの接触端子部が露出するまでの深さを有することが好ましい。
【0038】
また、第2の凹部は、カード基材内部の存在する導線の接触端子部を貫通までの深さであることができる。
【0039】
例えば、
図2は、本発明に係る埋め込み予定領域の一態様を示す図である。
図2(a)は、カード基材上における埋め込み予定領域を示す拡大平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA-A線断面の埋め込み予定領域付近の図である。
【0040】
図2(a)に示されているように、埋め込み予定領域30は、第1の凹部30a、第2の凹部30b、並びに第1の凹部30aに存在する接点開口部30c及び30dを含んでいる。このとき、第1の凹部30aにおいて、位置決め部40a及び40bを観察することができる。なお、位置決め部40a及び40bは、いずれも第1の凹部30aに直接に露出していないが、位置決め部40a及び40bの上のコアシート10を通して透かして観察することができる。
【0041】
また、
図2(b)に示されているように、埋め込み予定領域30の第1の凹部30aから、位置決め部40a及び40bを観察することができる。なお、この場合、アンテナ20が配置されているコアシート10の、アンテナ20が配置されている側の面が、DIFカードの裏面側に向いているため、位置決め部40a及び40bも、アンテナ20と同様にDIFカードの裏面側に向いている。したがって、この場合には、位置決め部40a及び40bのいずれも第1の凹部30aに直接に露出していないが、コアシート10自体が不透明であっても、コアシート10の残し部分、すなわち薄くなっている部分を通して透かして観察することができる。また、当然に、コアシート10が透明又は半透明である場合には、コアシート10の厚さがそのままであっても、それを通して、位置決め部40a及び40bを観察することができる。
【0042】
(コアシート)
本発明において、カード基材に1又は複数のコアシートが含まれている。この1又は複数のコアシートのうちの1つにアンテナが配置されている。以下の説明では、「アンテナが配置されているコアシート」との文言は、エッチングアンテナの場合でいう「アンテナシート」の概念を含む。
【0043】
アンテナは、特に限定されず、巻線アンテナであってもよく、エッチングアンテナであってもよい。設計が容易であることから、巻線アンテナを用いることが好ましい。
【0044】
また、巻線アンテナを用いる場合、本発明の効果をより顕著に表すことができる。これは、DIFカードの表面にエンボス加工を施すとき、アンテナの位置が特定できずエンボス加工の位置と重なってしまうと、エッチングアンテナよりも巻線アンテナのほうが断線しやすいからである。本発明によれば、アンテナの位置を特定できるため、製造コストのより安い巻線アンテナを有利に用いることができる。また、位置決め部を容易に形成できる観点からも巻線アンテナを用いることが好ましい。
【0045】
アンテナは、一般的に、アンテナ部及び接触端子部を有する。アンテナ部は、非接触通信機能を有する部分であり、例えば導線でコイル状(渦巻状)に巻かれて形成されていてもよい。接触端子部は、ICモジュールの端子と電気的に接触する役割を有する部分である。例えば、
図1に示されているアンテナ2は、巻線アンテナであり、約3巻のコイル状に巻かれているアンテナ部と、アンテナ部の端から延伸している接触端子部2a及び2bとを有する。
【0046】
なお、巻線アンテナの場合のアンテナ部の巻回数は、特に限定されず、目的・用途に合わせて適宜設定することができる。また、接触端子部の形状は、特に限定されず、導線によってメアンダ型状又は渦巻型状に形成されていてもよく、エッチングによってプレート状に形成されていてもよい。
【0047】
巻線アンテナに用いられる導線の材料は、通信機能及び導電性機能を有するものであれば特に限定されず、例えば銅、アルミニウム、又は金等の金属の線であってもよい。また、導線は、必要に応じて、樹脂等の絶縁性材料で被覆されていてもよい。
【0048】
本発明にかかるカード基材において、アンテナが配置されているコアシートの、アンテナが配置されている側の面の向きは、特に限定されず、DIFカードの裏面側に向いていてもよく、DIFカードの表面側に向いていてもよい。
【0049】
本発明では、ICモジュールを埋め込む前の状態で埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、アンテナが配置されているコアシートの、アンテナが配置されている面に、位置決め部を有する。この位置決め部は、ICモジュールを埋め込む前の状態で埋め込み予定領域から観察できる範囲内において存在している。
【0050】
本発明では、ICモジュールを埋め込む前の状態で、位置決め部を観察することによって、内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。すなわち、アンテナと位置決め部とは同じコアシート上かつ同じ側の面に存在させていることにより、カード基材を形成する際にコアシートがずれても、アンテナと位置決め部との相対的な位置がずれることはなく、したがって位置決め部を観察することによって、内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。
【0051】
位置決め部は、特に限定されず、任意の形又は任意の大きさであってもよい。位置決め部は、アンテナの接触端子部から更に延伸して形成する場合において、製造の便宜上及びアンテナ位置の検査の正確さの観点から、位置決め部が、L字型形状部分を有することが好ましい。例えば、
図1では、位置決め部4a及び4bは、いずれもL字型部分を有している。
【0052】
位置決め部は、ICモジュールを埋め込む前の状態で埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、少なくとも一か所に存在していればよく、アンテナの位置を特定する精度を向上させるために、位置決め部は、アンテナの接触端子部の数に合わせて、例えば二か所に存在していてもよい。例えば、
図1では、位置決め部は、二か所に存在している。
【0053】
コアシートの材料としては、特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の結晶性ポリエステル樹脂、テレフタル酸とエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールとの共重合体(PET-G)等の非晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂、又はこれらの樹脂を少なくとも2種以上混合して形成されるポリマーアロイを用いることができる。
【0054】
コアシートは、これらの樹脂を単層で用いたものであってもよく、又はこれらの積層体であってもよい。
【0055】
また、コアシートは、不透明、半透明、又は透明コアシートであってもよい。なお、半透明コアシートの透明の程度は、特に限定されず、例えばそれを通して位置決め部を目視で観察できる程度であればよい。また、不透明コアシートは、埋め込み予定領域を形成するために切削して薄くしたときに、それを通して位置決め部を目視で観察できるものであってもよい。
【0056】
位置決め部が、アンテナが配置されているコアシートの、DIFカードの裏面側に向いている面に存在している場合は、位置決め部をより観察しやすい観点から、アンテナが配置されているコアシートが、透明又は半透明コアシートであることが好ましい。また、アンテナが配置されているコアシートに隣接するコアシートとしては、同様な観点から、透明又は半透明コアシートを用いることが好ましい。
【0057】
個々のコアシートの厚さは、特に限定されず、例えば50μm以上、75μm以上、90μm以上、100μm以上、125μm以上、150μm以上、175μm以上、180μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、又は400μm以上であってもよい。また、DIFカードに薄さを追求する観点から、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、280μm以下、250μm以下、又は200μm以下であってもよい。
【0058】
本発明にかかるカード基材に含まれるコアシートの枚数は、1又は複数である。すなわち、コアシートの枚数は、1枚以上であればよく、例えば2枚以上10枚以下の範囲で、所望のカード基材の厚さの範囲内に合わせて自由に設定することができる。なお、これらのコアシートのうちの1つに、上述した位置決め部を有しており、かつアンテナが配置されているコアシートは必須に存在する。
【0059】
(他の層)
本発明にかかるカード基材は、コアシート以外に、他の層を更に含むことができる。例えば、オーバーフィルム等を含むことができる。
【0060】
オーバーフィルムは、コアシート等を保護する機能を有し、カード基材の少なくとも表面に位置することが好ましく、カード基材の表面側及び裏面側の双方の最表面に位置することがより好ましい。
【0061】
オーバーフィルムの厚さは、特に限定されず、例えば、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、又は55μm以上であってもよく、また80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、又は60μm以下であってもよい。
【0062】
オーバーフィルムの材料として、特に限定されず、例えば上述したコアシートの材料を適宜採用できる。
【0063】
オーバーフィルムは、不透明、半透明、又は透明であってもよい。
【0064】
〈ICモジュール〉
ICモジュールは、上述したカード基材の表面から埋め込まれている。ICモジュールは、基板部、及びICチップを封止している封止部を有していてもよい。
【0065】
(基板部)
基板部を構成する材料は、特に限定されず、例えばガラス-エポキシやポリイミド等であってもよい。
【0066】
基板部は、その裏側には上述したアンテナの接触端子部と接続できる端子を有する。この端子を構成する材料は、導電性材料であればよく、例えば銅、金、又はアルミニウム等の金属であってもよい。
【0067】
基板部は、その表側が、カード基材の表面から露出していてもよい。また、基板部の表側の面には、外部と接触できる外部接触端子を有することができる。外部接触端子は、例えば銅で構成されているパターン上に、ニッケル、金、銀等で構成されているメッキ層が積層されている外部接触端子であってもよい。
【0068】
(封止部)
封止部は、カード基材の中まで埋め込まれてもよい。封止部の材料は、特に限定されず、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよい。
【0069】
封止部の中には、ICチップが封止されている。ICチップは、端子との接続は、例えばワイヤーボンディング等の接続部材又は異方性導電ペースト等により行うことができる。
【0070】
通常、上述した基板部、封止部、及びICチップを合わせて、「Chip On Tape」と称し、単に「COT」とも称する。
【0071】
≪アンテナの位置を検査する検査方法≫
本発明はまた、DIFカードの製造においてアンテナの位置を検査する検査方法を提供する。なお、DIFカードの詳細については、上述した「DIFカード」の項目の記載を参照できるため、重複の説明を省略する。
【0072】
本発明の検査方法は、
ICモジュールを埋め込み予定領域に埋め込む前に、位置決め部の位置を目視又はカメラで観察して評価することを含む。
【0073】
ここで、評価は、位置決め部が存在すべき位置と、観察された位置決め部の位置とを比較することを含むことができる。
【0074】
例えば、アンテナが正しい位置にある場合の位置決め部の位置を、「位置決め部が存在すべき位置」とし、カード基材を形成してから、ICモジュールを埋め込み予定領域に埋め込む前に、埋め込み予定領域から観察された位置決め部を、「観察された位置決め部の位置」とする場合、この位置決め部が存在すべき位置と、観察された位置決め部の位置とを比較して、カード基材の形成前後における位置決め部のずれの程度を評価することができる。
【0075】
アンテナと位置決め部とは、相対的な位置が特定されているため、観察された位置決め部のずれの程度から、アンテナの位置ずれの程度を特定することができる。
【0076】
したがって、本発明の検査方法によって、DIFカードに内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。
【0077】
例えば、本発明の検査方法を用いることで、特定されたアンテナの位置に合わせて、アンテナが切断されないよう注意しながらエンボス加工することができる。また、ずれの程度によって、比較的高価なICモジュールをカード基材に取り付ける前に、アンテナの位置がずれているカード基材を廃棄することができる。
【0078】
≪DIFカードの製造方法≫
本発明はまた、DIFカードの製造方法を提供する。なお、DIFカードの詳細については、上述した「DIFカード」の項目の記載を参照できるため、重複の説明を省略する。
【0079】
本発明の製造方法は、上述した検査方法を含む。
【0080】
DIFカードを製造する本発明の製造方法は、上述した検査方法を必須に含むこと以外は、特に限定されず、例えば、以下の工程に従って、本発明のDIFカードを製造することができる。なお、以下では、巻線アンテナを用いる場合を一例として、本発明の製造方法を説明するが、本発明はこれに限定されることはない。また、各工程について、上述した本発明のDIFカードにおける内容と関連する部分は、説明を省略する。
【0081】
〈工程(a)〉
工程(a)では、巻線アンテナをコアシート上に配置し、この際、アンテナの位置との位置関係が特定できるように位置決め部を同時に形成する。
【0082】
アンテナ及び位置決め部の配置(形成)方法としては、特に限定されず、例えば、熱をかけながら導線をコアシート上に描画する導線描画法を用いることができる。
【0083】
導線描画法では、具体的には、熱、超音波又はそれらを併用しながら、導線をコアシート上に吐出させ、引張ながら導線を予定の形状にコアシート上に描画することができる。
【0084】
より具体的には、例えば、導線を、L字型部分を有する位置決め部を一つ描画し、続いて1つの接触端子部を描画する。そして続いて巻線アンテナ部を描画してから、もう一つの接触端子部を描画し、更に必要に応じて、もう一つの位置決め部を描画することができる。なお、位置決め部の位置及びアンテナの位置は、お互いの位置関係を特定することできて、かつICモジュールを埋め込む前の状態で埋め込み予定領域から位置決め部を観察できれば、特に限定されない。
【0085】
〈工程(b)〉
工程(b)では、アンテナが配置されているコアシートと、随意に用いる他のコアシート及びオーバーフィルムとを積層して、熱プレスを行うことによって、カード基材を形成する。
【0086】
〈工程(c)〉
工程(c)では、カード基材の表面側から、ICモジュールを埋め込む埋め込み予定領域を切削する。この際、埋め込み予定領域の第1の凹部は、位置決め部上のコアシートを通して位置決め部が透けて見える深さまで切削することが好ましい。
【0087】
〈工程(d)〉
工程(d)では、位置決め部の位置を目視又はカメラで観察して評価する。この工程によって、位置決め部に対して特定の位置関係を有するアンテナの位置を実質的に検査することができる。
【0088】
〈工程(e)〉
工程(e)では、ICモジュールを埋め込み予定領域に埋め込む。
【0089】
このように、DIFカードを製造する本発明の方法は、上述した検査方法を含むことによって、DIFカードに内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。
【実施例】
【0090】
〈実施例1〉
下記表1に示されているカード基材の構成を用いて、
図3に示されている工程(a)及び(b)に基づいて、表面側から、第1のオーバーフィルム/第1のコアシート/第2のコアシート/第3のコアシート/第4のコアシート/第2オーバーフィルムの順で、積層して、熱プレスして、カード基材を形成した。
【0091】
【0092】
この際、第2のコアシート(透明コアシート)のアンテナが配置されている側の面が、DIFカードの裏面側に向いている。また、アンテナとして、銅線の巻線アンテナを用いた。なお、
図3では、カード基材の積層構成及びアンテナの位置を示しており、位置決め部の位置(特に、位置決め部とアンテナの接触端子部との位置関係)は、
図4の左図に示されている。
【0093】
そして、
図3(c)に示されているように、このカード基材の表面側から、ICモジュールを埋め込むための埋め込み予定領域を切削して、実施例1のカード基材を作製した。
【0094】
このように作製されたカード基材に対して、
図3(d)及び
図4の左図に示されているように、位置決め部を目視又はカメラで観察することによって、内蔵されているアンテナの位置を特定することができる。
【0095】
〈実施例2〉
上記実施例1において、第2のコアシートを意図的にずらして積層したこと以外は、同様にして、アンテナの位置がずれている実施例2のカード基材を作製した。
【0096】
〈比較例1〉
上記実施例2において、位置決め部を全く施さないこと以外は、同様にして、アンテナの位置がずれている比較例1のカード基材を作製した。
【0097】
(対比評価)
図4は、実施例1、実施例2、及び比較例1のそれぞれのカード基材上における埋め込み予定領域の平面概略図である。なお、
図4の各図におけるカード基材内部の構成、すなわち外部から観察できない部分(例えば、アンテナの接触端子部の一部)を点線で表示している。
【0098】
図4に示されているように、実施例1及び2のそれぞれの埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、それぞれのアンテナと相対的な位置が特定されている位置決め部41a及び41b、並びに42a及び42bを観察することによって、アンテナの位置を特定することができる。
【0099】
より具体的には、例えば、実施例1を標識サンプル(アンテナがずれていないサンプル又はずれの程度が特定できたサンプル)としてみる場合では、実施例2における位置決め部42a及び42bのそれぞれの位置と、実施例1における位置決め部41a及び41bのそれぞれの位置と、を比較すれば、実施例2のカード基材に内蔵されているアンテナがずれていることを認識できる。
【0100】
また、上記のような標識サンプルを使用せずアンテナを特定する場合では、実施例2の位置決め部42a及び42bを観察する際に、例えば、積層前の位置決め部42aの端部e1及び/又は位置決め部42bの端部e2とカード基材の任意の端部との相対の距離と、積層後のそれらの相対の距離とを比較することによって、実施例2のカード基材に内蔵されているアンテナがずれていることを認識できる。
【0101】
一方、比較例1では、位置決め部を施されていないため、その埋め込み予定領域から観察できる範囲内において、アンテナが配置されているコアシート(第2のコアシート)が透明であったため、アンテナの接触端子部の一部を観察できるが、アンテナの位置がずれているか否かを判断することが不可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 カード基材
2、20 アンテナ
2a、2b、20a、20b アンテナの接触端子部
3、30 埋め込み予定領域
3a、30a、31a、32a 第1の凹部
3b、30b 第2の凹部
3c、3d、30c、30d 接点開口部
4a、4b、40a、40b、42a、42b 位置決め部
10 アンテナが配置されているコアシート
100 DIFカード