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特許7138494予圧センサ、軸受装置、軸受、および間座
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】予圧センサ、軸受装置、軸受、および間座
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20220909BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20220909BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20220909BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20220909BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20220909BHJP
   G01L 1/20 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G01L5/00 K
F16C19/54
F16C19/16
F16C41/00
F16C25/08 Z
G01L1/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018124255
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003385
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 勇介
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254742(JP,A)
【文献】特開2014-71085(JP,A)
【文献】特開2005-265446(JP,A)
【文献】特開2006-170626(JP,A)
【文献】特開2007-271005(JP,A)
【文献】特開2012-88091(JP,A)
【文献】米国特許第6508592(US,B1)
【文献】英国特許出願公開第2376988(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0076127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
F16C19/00-27/08
F16C41/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪、外輪、転動体を含む軸受の予圧を検出する予圧センサを備え
前記予圧センサは、
第1主面と第2主面とを有する膜状の感圧部材と、
前記感圧部材に電気的に接続される第1電極および第2電極とを備え、
前記感圧部材は、前記第1主面と前記第2主面との間に作用する圧力に応じて前記第1電極と前記第2電極との間の直流抵抗が変化するように構成され、
前記第1主面は前記軸受の端面に向けて配置され、前記第2主面は前記端面に対向する前記軸受に予圧を与える部材の対向面に向けて配置され
前記軸受と、
前記軸受に隣接して配置される間座とをさらに備え、
前記軸受に予圧を与える部材は、前記間座であり、
前記第1主面が前記端面に接し、前記第2主面が前記対向面に接するように前記予圧センサが配置され、
前記軸受に予圧が印加される経路上に配置された前記間座の端面には凸部が設けられ、
前記凸部の突出面に前記感圧部材が配置される、軸受装置。
【請求項2】
前記感圧部材は、
絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成され、面圧の変化で抵抗が変化する薄膜パターンと、
前記薄膜パターン上に形成され、前記薄膜パターンを保護する保護膜とを含む薄膜センサである、請求項1に記載の軸受装置
【請求項3】
前記感圧部材は、
第1絶縁層と、
前記第1電極が接続される第1電極層と、
感圧インクまたは感圧ゴムで形成される感圧層と、
前記第2電極が接続される第2電極層と、
第2絶縁層とを含み、
前記第1主面と前記第2主面との間に、前記第1絶縁層、前記第1電極層、前記感圧層、前記第2電極層、前記第2絶縁層が、順に配置される、請求項1に記載の軸受装置
【請求項4】
前記軸受は、第1軸受であり、
前記軸受装置は、第2軸受をさらに備え、
前記間座は、前記第1軸受と前記第2軸受との間に配置され、
前記第1軸受と前記第2軸受とは背面組み合わせとなるように配置され、
前記第1軸受の外輪端面と前記間座の外輪間座端面との間に前記予圧センサが配置される、請求項に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記軸受は、第1軸受であり、
前記軸受装置は、第2軸受をさらに備え、
前記間座は、前記第1軸受と前記第2軸受との間に配置され、
前記第1軸受と前記第2軸受とは正面組み合わせとなるように配置され、
前記第1軸受の内輪端面と前記間座の内輪間座端面との間に前記予圧センサが配置される、請求項に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記間座は、内輪間座と外輪間座とを含み、
前記軸受装置は、
前記内輪間座の外周面に配置され、電力受信部とセンサ信号送信部とセンサ信号処理部とを内蔵したセンサ信号送信機と、
前記外輪間座の内周面に配置され、前記電力受信部に非接触で給電する供給電力送信部と前記センサ信号送信部から非接触でセンサ信号を受信するセンサ信号受信部とを内蔵したセンサ信号受信機とをさらに備え、
前記センサ信号送信部は、前記電力受信部から電力が供給され、前記予圧センサの出力を非接触で前記センサ信号受信機側に送信する、請求項のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記間座は、内輪間座と外輪間座とを含み、
前記外輪間座または前記内輪間座は、前記凸部を含む第1部材と、前記第1部材がはめ込まれる凹部が形成された第2部材とを含む、請求項に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記凸部に配置された前記感圧部材と、前記軸受の端面との間に配置される中間間座をさらに備える、請求項または請求項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の主軸スピンドルなどに使用される軸受の予圧を検出する予圧センサ並びに予圧センサを備える軸受装置、軸受、および間座に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のスピンドル装置では、加工精度および効率の向上のため、軸受の予圧管理が求められており、そのため軸受の予圧を検出する要求がある。また、軸受に異常が起こる前にその予兆を検出して、軸受の異常を未然に防ぐ要求もある。
【0003】
特開2008-286219号公報(特許文献1)では、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の間に間座を介在させた軸受装置において、間座の一部分を磁歪材料で構成すると共に、間座のうち、磁歪材料からなる部分の残りの部分の少なくとも一部を非磁性材料で構成し、磁歪材料の部分の磁気特性の変化から軸受の予圧を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-286219号公報
【文献】特開2014-071085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2008-286219号公報(特許文献1)に開示された軸受装置では、外輪間座が2分割した一対の間座部材の間に磁歪材を挟み込んだ構造のため、構造が複雑で、一対の間座部材が分離しないよう保持した状態でハウジングに入れる必要があり、組立が困難である。
【0006】
また、磁歪材を用いた予圧検出では、磁歪材料の選定の他、出力信号の温度ドリフトやヒステリシスなどの低減が課題になる。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡単な構成で軸受の予圧を測定することが可能な予圧センサ並びに予圧センサを備える軸受装置、軸受、および間座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の予圧センサは、内輪、外輪、転動体を含む軸受の予圧を検出する予圧センサである。予圧センサは、第1主面と第2主面とを有する膜状の感圧部材と、感圧部材に電気的に接続される第1電極および第2電極とを備える。感圧部材は、第1主面と第2主面との間に作用する圧力に応じて第1電極と第2電極との間の直流抵抗が変化するように構成される。感圧部材の第1主面は軸受の端面に向けて配置され、第2主面は端面に対向する軸受に予圧を与える部材の対向面に向けて配置される。
【0009】
好ましくは、感圧部材は、絶縁膜と、絶縁膜上に形成され、面圧の変化で抵抗が変化する薄膜パターンと、薄膜パターン上に形成され、薄膜パターンを保護する保護膜とを含む薄膜センサである。
【0010】
好ましくは、感圧部材は、第1絶縁層と、第1電極が接続される第1電極層と、感圧インクまたは感圧ゴムで形成される感圧層と、第2電極が接続される第2電極層と、第2絶縁層とを含む。第1主面と第2主面との間に、第1絶縁層、第1電極層、感圧層、第2電極層、第2絶縁層が、順に配置される。
【0011】
本開示の他の局面である軸受装置は、上記の予圧センサと、軸受と、軸受に隣接して配置される間座とを備える。軸受に予圧を与える部材は、間座である。第1主面が端面に接し、第2主面が対向面に接するように予圧センサが配置される。
【0012】
好ましくは、軸受は、第1軸受であり、軸受装置は、第2軸受をさらに備える。間座は、第1軸受と第2軸受との間に配置され、第1軸受と第2軸受とは背面組み合わせとなるように配置され、第1軸受の外輪端面と間座の外輪間座端面との間に予圧センサが配置される。
【0013】
好ましくは、軸受は、第1軸受であり、軸受装置は、第2軸受をさらに備える。間座は、第1軸受と第2軸受との間に配置される。第1軸受と第2軸受とは正面組み合わせとなるように配置される。第1軸受の内輪端面と間座の内輪間座端面との間に予圧センサが配置される。
【0014】
好ましくは、間座は、内輪間座と外輪間座とを含む。軸受装置は、内輪間座の外周面に配置され、電力受信部とセンサ信号送信部とセンサ信号処理部とを内蔵したセンサ信号送信機と、外輪間座の内周面に配置され、電力受信部に非接触で給電する供給電力送信部とセンサ信号送信部から非接触でセンサ信号を受信するセンサ信号受信部とを内蔵したセンサ信号受信機とをさらに備える。センサ信号送信部は、電力受信部から電力が供給され、予圧センサの出力を非接触でセンサ信号受信機側に送信する。
【0015】
好ましくは、軸受に予圧が印加される経路上に配置された間座の端面には凸部が設けられ、凸部の突出面に感圧部材が配置される。
【0016】
より好ましくは、間座は、内輪間座と外輪間座とを含む。外輪間座または内輪間座は、凸部を含む第1部材と、第1部材がはめ込まれる凹部が形成された第2部材とを含む。
【0017】
より好ましくは、軸受装置は、凸部に配置された感圧部材と、軸受の端面との間に配置される中間間座をさらに備える。
【0018】
本開示のさらに他の局面である軸受は、第1主面が端面に接するように上記の予圧センサが内輪または外輪に形成される。
【0019】
本開示のさらに他の局面である間座は、第2主面が対向面に接するように上記の予圧センサが内輪間座または外輪間座に形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構成で軸受の予圧を測定することが可能な予圧センサ並びに予圧センサを備える軸受装置、軸受、および間座を実現することができ、軸受の保守、管理を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態1の軸受装置の構成を示す断面図である。
図2】予圧センサの配置部分を拡大して示した断面図である。
図3】感圧シート13の構造例を示す図である。
図4】感圧シートによって構成した予圧センサの予圧と抵抗の関係を示す図である。
図5】外輪間座の端面に薄膜センサを形成した構造を示す図である。
図6】薄膜センサによって構成した予圧センサの予圧と抵抗との関係を示す図である。
図7】薄膜センサを使用した場合の抵抗変化を検出する回路を示す図である。
図8】実施の形態2の軸受装置に用いられる予圧センサの構成を示す図である。
図9図8の矢印B方向から見た外輪間座の一部を示す図である。
図10図8に示した構成の変形例を示す図である。
図11図10の矢印B2方向から見た外輪間座の一部を示す図である。
図12】実施の形態2の軸受装置の変形例の構成を示す断面図である。
図13】実施の形態3の軸受装置の構成を示す断面図である。
図14】信号送信機24と信号受信機25の構成と、予圧センサ61との接続状態を示す図である。
図15】実施の形態4の軸受装置に用いられる予圧センサの構成を示す図である。
図16図15の矢印C方向から見た内輪間座の一部を示す図である。
図17図15に示した構成の変形例を示す図である。
図18図17の矢印C2方向から見た内輪間座の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の軸受装置の構成を示す断面図である。軸受装置1は、たとえば、工作機械のビルトインモータ方式のスピンドル装置に応用される。この場合、軸受装置1で支持されている主軸4の一方端側には図示しないモータが組み込まれ、他方端にはエンドミル等の切削工具が接続される。なお、図1に示す軸受装置1の構造は、回転中心軸O-Oを中心として上下対称であるが、回転中心軸O-Oより下の部分は図示を省略している。
【0024】
軸受装置1は、軸受5と、軸受5に隣接して配置される間座6と、予圧センサ11とを備える。主軸4は、外筒2の内径部に埋設されたハウジング3に複数の軸受5によって回転自在に支持される。各軸受5は、内輪5iと、外輪5gと、転動体Tと、保持器Rtとを含む。間座6は、内輪間座6iと、外輪間座6gとを含む。
【0025】
主軸4には、軸方向に離隔した複数の軸受5が締まり嵌め状態(圧入状態)で嵌合されている。内輪5i-5i間には内輪間座6iが配置され、外輪5g-5g間には外輪間座6gが配置される。
【0026】
軸受5は、内輪5iと外輪5gの間に複数の転動体Tを配置した転がり軸受であり、これら転動体Tは保持器Rtで間隔が保持されている。軸受5は、軸方向の予圧を付与することが可能な軸受であり、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等を用いることができる。図1に示す軸受装置1にはアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の軸受5が背面組み合わせ(DB組み合わせ)で設置されている。
【0027】
ハウジング3には冷却媒体流路Gが形成される。ハウジング3と外筒2との間に冷却媒体を流すことにより、軸受装置1を冷却することができる。
【0028】
組立時には、初めに主軸4に軸受5、間座6、軸受5、間座9の順に挿入し、ナット10で締めて初期予圧が与えられたものを、図1における右側の軸受5の外輪5gの右側がハウジング3に設けた段差部3aに押し当たるまで挿入し、その後、前蓋12によって、左側の軸受5の外輪5gを押すことでハウジング3に固定される。
【0029】
ナット10を締め付けることにより右側の軸受5の内輪5iの端面に間座9を介して力が作用し、内輪5iが内輪間座6iに向けて移動する。この力は、内輪5i、転動体T、外輪5gと伝わり右の軸受5に予圧を与えるとともに、外輪5gから外輪間座6gにも伝わる。外輪間座6gから右側の外輪5gには、押す力が作用し、この力は、左側の軸受5において、外輪5g、転動体T、内輪5iへと伝わり、左側の軸受5にも予圧を与える。内輪5iの移動量は、例えば外輪間座6gと内輪間座6iの幅の寸法差によって定まる。この移動量に応じて軸受5に予圧が付与される。図1図2に示す予圧センサ11は、外輪5gと外輪間座6gとの間に配置されているが、予圧を発生させる力の伝達経路であれば、他の場所であっても良い。たとえば、予圧センサ11は、間座9と内輪5iの間に配置されても良い。
【0030】
図2は、予圧センサの配置部分を拡大して示した断面図である。図2に示すように外輪間座6gの内周面と外周面とをつなぐ端面7のうちの少なくとも一方(図1の左側)には、外輪5gの端面と接触する位置に予圧センサ11が配置される。予圧センサ11に印加される荷重と予圧センサ11の出力との関係は、予め測定され把握されている。軸受装置1を組み立てる際には、外輪5gと外輪間座6gとが当接した状態において内輪5iと内輪間座6iとの間に予め設計上の隙間が設けられている。ナット10を締め付けることにより、この隙間が無くなるとともに外輪間座6gと間座9とによって軸受5に予圧が付与される。ナット10を締め付けると、右側の軸受5に間座9、内輪5iの軌動面、転動体T、外輪5gの軌動面、外輪間座6gの経路で予圧が印加される。また、左側の軸受5には、外輪間座6g、外輪5gの軌動面、転動体T、内輪5iの軌動面の経路で予圧が印加される。
【0031】
予圧センサ11の出力から予圧量を把握することができる。このため、軸受装置1の組立時に予圧センサ11の出力を観測すれば、予め設定した予圧量になっているかを確認でき、組立工数を削減できる。また、工作機械の運転時に予圧センサ11の出力を観測すれば、運転時の発熱による熱膨張で増加した予圧を知ることができる。運転時の予圧変化を観測することによって、切削性能の低下や軸受の焼き付きを事前に防止することができる。
【0032】
予圧センサ11としては、たとえば電気抵抗の変化から面圧を測定する感圧シート13が用いられる。図3は、感圧シート13の構造例を示す図である。
【0033】
感圧シート13は、樹脂フィルムを基材14F,14Bとし、基材14F,14Bの各表面に形成した電極15F,15Bの間に感圧インクや感圧ゴムなどの抵抗体16を配置したものである。感圧シート13は、荷重に応じて電極間の電気抵抗が変化するので、電気抵抗と荷重の関係を予め把握しておけば、荷重を検出することができる。感圧シート13をリング状に形成して予圧センサ11とする。この予圧センサ11は、外輪間座6gの内周面と外周面とをつなぐ端面7と外輪5gの内周面と外周面とをつなぐ端面との間に配置される。
【0034】
図2図3を参照して、予圧センサ11は、第1主面SFと第2主面SBとを有する膜状の感圧部材(抵抗体16)と、感圧部材の第1主面SF側に電気的に接続される第1電極15Fと、感圧部材の第2主面SB側に電気的に接続される第2電極15Bとを備える。感圧部材は、第1主面SFと第2主面SBとの間に作用する圧力に応じて第1電極15Fと第2電極15Bとの間の直流抵抗が変化するように構成される。第1主面SFは軸受5の内周面と外周面とをつなぐ端面に向けて配置される。第2主面SBは、軸受5の端面に対向する軸受5に予圧を与える部材(図2では外輪間座6g)の端面7に向けて配置される。
【0035】
図4は、感圧シートによって構成した予圧センサの予圧と抵抗との関係を示す図である。図4には横軸に予圧(荷重)が示され、縦軸には抵抗が示されている。図4に示すように予圧が増加すると、感圧シートの厚みが減少し、感圧シートの抵抗値は低下する傾向にある。
【0036】
あるいは、予圧センサ11は、外輪間座6gの端面7に直接成形した薄膜センサ17であってもよい。図5は、外輪間座の端面に薄膜センサを形成した構造を示す図である。薄膜センサ17は、外輪間座6gの端面7に絶縁膜18を形成後、面圧の変化で抵抗が変化する薄膜パターン19を形成し、その上から保護膜20が形成される。絶縁膜18、薄膜パターン19、保護膜20はスパッタリングなどによって成膜される。薄膜パターン19には、2つの電極が接続される。2つの電極間の抵抗を測定することによって薄膜パターン19の抵抗値の変化を検出することができる。
【0037】
図5に示したように、外輪間座6gの端面7に直接、薄膜センサ17を形成すれば、外輪間座の構造を複雑にすることなく、また、圧力センサの実装に必要なスペースも低減でき、軸受装置を小型化できる。また感圧シート13のようにベース基材として使われる樹脂部材が介在しないため剛性が高いので、外輪間座6gの剛性を落とすことなく予圧(軸受5の軸方向に印加される荷重)を検出できる。したがって、予圧センサを外輪間座6gと外輪5gとの間に介在させても、工作機械としての加工精度に影響が生じることを避けることができる。
【0038】
絶縁膜18や保護膜20は、たとえば二酸化珪素が用いられ、薄膜パターン19は、たとえばひずみゲージで使われる金属合金(銅ニッケッル合金、ニッケルクロム合金など複数の金属からなる合金)が用いられる。たとえば、薄膜センサとして、特開2014-071085号公報に記載された薄膜センサを用いても良い。
【0039】
図6は、薄膜センサによって構成した予圧センサの予圧と抵抗の関係を示す図である。図6には横軸に予圧(荷重)が示され、縦軸には抵抗が示されている。図6に示すように予圧が増加すると、薄膜センサの抵抗値も増加する傾向にある。
【0040】
図7は、薄膜センサを使用した場合の抵抗変化を検出する回路を示す図である。図7に示すセンサ信号処理部28は、DC電源VSDCに接続される抵抗R1~R3と薄膜センサ17と、差動アンプAMPとを含む。抵抗R1~R3と薄膜センサ17とはブリッジ回路を構成する。DC電源VSDCの正極と負極との間には、抵抗R1と抵抗R2とが直列に接続される。また、DC電源VSDCの正極と負極との間には、薄膜センサ17と抵抗R3とが直列に接続される。抵抗R1と抵抗R2との接続ノードには、アンプAMPの一方の入力ノードが接続される。薄膜センサ17と抵抗R3との接続ノードには、アンプAMPの他方の入力ノードが接続される。
【0041】
図7に示すようなブリッジ回路構成することによって、予圧が変化した際の薄膜センサ17の抵抗値の変化をアンプAMPで検出することができる。
【0042】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2の軸受装置に用いられる予圧センサの構成を示す図である。図9は、図8の矢印B方向から見た外輪間座の一部を示す図である。
【0043】
図9には実施の形態2で用いられる外輪間座6gAの側面図が示されている。外輪間座6gAの端面7aには少なくとも3個以上の凸部7bが等間隔で設けられる。凸部7bの端面7cには予圧センサ11が配置される。予圧センサ11としては、感圧シート13、または薄膜センサ17を使用することができる。この場合、外輪間座6gの端面と軸受5の外輪5gの端面とは、予圧センサ11を介して凸部7bの面積だけで当接するため、予圧センサ11に印加される面圧が高められ、予圧センサ11の測定精度を向上させることができる。
【0044】
なお、凸部7bは、軸受5の外輪5gの端面を安定的に押すために外輪間座6gに3個以上設けることが好ましい。
【0045】
図10は、図8に示した構成の変形例を示す図である。図11は、図10の矢印B2方向から見た外輪間座の一部を示す図である。図8図9に示した構成では外輪間座6gの端面7に直接凸部7bを設けた。これに対し、図10図11に示す構成は、小片21に設けた凸部21bの端面21cに予圧センサ11が配置される点が図8図9に示した構成と異なる。小片21は、外輪間座6gBの端面7aに設けた凹部7dに埋設され、ボルト22で外輪間座6gBに固定されている。小片21であればサイズが外輪間座6gAよりも小さいので、スパッタ等で薄膜センサを形成する場合に処理装置に入れやすいので有利である。なお、凸部21bは、軸受5の外輪5gの端面を安定的に押すために外輪間座6gBに3個以上設けることが好ましい。
【0046】
図12は、実施の形態2の軸受装置の変形例の構成を示す断面図である。図8または図10に示すように、凸部7b、21bに予圧センサ11を設けた場合、軸受5の外輪5g端面は、外輪間座6gA、6gBとは予圧センサ11を介して凸部7b、21bのみで当接することになる。この場合、軸受5の変形が懸念される場合には、図12に示す軸受装置1Aのように、外輪5gと外輪間座6gとの間にリング状の中間間座23を入れ、中間間座23に予圧センサ11を取り付けてもよい。
【0047】
以上説明したように、工作機械のスピンドル装置に前述の予圧センサ11を実装することができる。この場合には、工作機械運転中の軸受予圧状態を検出可能なため、軸受の状態の判断が容易となり、軸受5に異常(たとえば焼付き)が起こる前にその予兆を検出して軸受の異常を未然に防ぐことができる。
【0048】
たとえば、軸受予圧が閾値を超えた場合、あるいは予圧上昇変化率が閾値を超えた場合に焼き付きが生じる可能性が高い状態と判定し、切削加工を中止したり、回転速度を下げたりするなどの対策を行ない、軸受の焼き付きを防止することができる。
【0049】
なお、実施の形態1,2では、予圧センサ11の内、薄膜センサ17を外輪間座6g、6gAの金属表面に形成したが、軸受5の外輪5gの端面に薄膜センサ17を形成してもよい。
【0050】
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、2個の軸受5を背面組み合わせ(DB組み合わせ)としたが、実施の形態3では、2個の軸受5を正面組み合わせ(DF組み合わせ)とした例を示す。
【0051】
図13は、実施の形態3の軸受装置の構成を示す断面図である。なお、図13に示す軸受装置1Bの構造は、回転中心軸O-Oを中心として上下対称であるが、回転中心軸O-Oより下の部分は図示を省略している。
【0052】
軸受装置1Bは、軸受55と、軸受55に隣接して配置される間座56と、予圧センサ61とを備える。主軸4は、外筒2の内径部に埋設されたハウジング3に複数の軸受55によって回転自在に支持される。各軸受55は、内輪55iと、外輪55gと、転動体Tと、保持器Rtとを含む。間座56は、内輪間座56iと、外輪間座56gとを含む。
【0053】
実施の形態1,2では、ナット10の締め付け力によって予圧が与えられたが、軸受55を正面組み合わせにした場合、前蓋12を図示しないボルト等で締め付けることによって予圧が与えられる。前蓋12を図示しないボルト等で締め付けると、図13の左側の軸受55には、外輪55g、外輪55gの軌動面、転動体T、内輪55iの軌動面、内輪55i、内輪間座56iの経路で予圧が印加される。また、図13の右側の外輪には、内輪間座56i、内輪55i、内輪55iの軌動面、転動体T、外輪55gの軌動面、外輪55gの経路で予圧が印加される。このため、予圧センサ61は内輪間座56iと内輪55iとが当接する部分である、内輪間座56iの端面または内輪55iの端面に設けられる。なお、予圧センサ61の位置は、予圧を与える力が伝わる経路上であれば他の位置であっても良い。
【0054】
しかし、予圧センサ61を内輪間座56iまたは内輪55iに設けると、これらは主軸4とともに回転するため、予圧センサ61の出力をケーブルCBで外部機器に送信するためには工夫が必要である。このため、実施の形態3では、内輪間座56iの外周面に信号送信機24が配置される。また、外輪間座56gの内径面には、信号送信機24と対向する位置に信号受信機25が配置される。信号送信機24と信号受信機25との間で、非接触給電と非接触通信が行なわれる。
【0055】
図14は、信号送信機24と信号受信機25の構成と、予圧センサ61との接続状態を示す図である。
【0056】
信号送信機24は、電力受信部26と、センサ信号送信部27と、センサ信号処理部28と、これらを搭載する配線基板31とを含む。配線基板31は、好ましくは、内輪間座56iの外周面に沿うように曲げることが可能に構成される。信号送信機24は、内輪間座56iに実装した予圧センサ61に電力受信部26で得た電力を供給する。予圧センサ61で検出された予圧の信号は、センサ信号処理部28によって非接触通信可能な信号に変換され、センサ信号送信部27によって信号受信機25に送信される。
【0057】
信号受信機25は、給電電力送信部29と、センサ信号受信部30と、これらを搭載する配線基板32とを含む。配線基板32は、好ましくは、外輪間座56gの内周面に沿うように曲げることが可能に構成される。信号受信機25は、センサ信号受信部30が受信した予圧センサ61の予圧情報を含む信号をケーブルCBで送信しやすい信号に変換して、ケーブルCBを介して外部機器100に送る。
【0058】
また、外部機器100からは、信号受信機25に電源が供給される。この電力の一部は、給電電力送信部29から電力受信部26に向けて非接触で送電される。電力の送電は、無線によるものであっても、また光波、赤外線、超音波によるもの、あるいは磁気結合により行なうものであっても良く、方式は限定されない。
【0059】
[実施の形態4]
図15は、実施の形態4の軸受装置に用いられる予圧センサの構成を示す図である。図16は、図15の矢印C方向から見た内輪間座の一部を示す図である。図15図16に示すように、内輪間座56iAの端面に凸部を設けて、その端面に予圧センサ61を配置してもよい。
【0060】
図17は、図15に示した構成の変形例を示す図である。図18は、図17の矢印C2方向から見た内輪間座の一部を示す図である。図17図18に示す構成は、小片71に設けた凸部71bの端面71cに予圧センサ61が配置される点が図15図16に示した構成と異なる。小片71は、内輪間座56iBの端面56aに設けた凹部56dに埋設され、ボルト72で内輪間座56iBに固定されている。
【0061】
また、実施の形態4においても、図12の中間間座23と同様な中間間座を内輪間座56iと内輪5iとの間に挿入してもよい。
【0062】
以上説明したように、実施の形態1~4では、軸受の外輪端面と外輪間座とが当接する位置、または軸受の内輪端面と内輪間座とが当接する位置に面圧を測定する予圧センサを配置し、直接、面圧を測定することで、事前に測定した面圧と荷重の関係から軸受予圧量を測定することができる。
【0063】
また、間座に剛性を低くした起歪部を設けることなく予圧を測定するため、軸受装置の剛性を低下させることがなく予圧を測定できる。このため、予圧の測定が工作機械としての加工精度に影響することを避けることができる。
【0064】
さらに、予圧センサとして、感圧シート、あるいは金属面に圧力センサを直接形成した薄膜センサを用いるので、外輪間座の構造を複雑にすることなく、また、予圧センサの実装に必要なスペースも削減でき、軸受装置、および軸受予圧検出装置の小型化に貢献する。
【0065】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B 軸受装置、2 外筒、3 ハウジング、3a 段差部、4 主軸、5,55 軸受、5g,55g 外輪、5i,55i 内輪、6,9,56 間座、6g,6gA,6gB,56g,66g 外輪間座、6i,56i,56iA,56iB 内輪間座、7,7a,7c,21c,56a,71c 端面、7b,21b,71b 凸部、7d,56d 凹部、10 ナット、11,61 予圧センサ、12 前蓋、13 感圧シート、14B,14F 基材、15B,15F 電極、16 抵抗体、17 薄膜センサ、18 絶縁膜、19 薄膜パターン、20 保護膜、21,71 小片、22,72 ボルト、23 中間間座、24 信号送信機、25 信号受信機、26 電力受信部、27 センサ信号送信部、28 センサ信号処理部、29 給電電力送信部、30 センサ信号受信部、31,32 配線基板、100 外部機器、AMP アンプ、CB ケーブル、R1,R2,R3 抵抗、Rt 保持器、SB 第2主面、SF 第1主面、T 転動体、VSDC 電源。
図1
図2
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