(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】連続鋳造鋳型
(51)【国際特許分類】
B22D 11/04 20060101AFI20220909BHJP
B22D 11/05 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
B22D11/04 311J
B22D11/05 A
(21)【出願番号】P 2018127302
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 修至
(72)【発明者】
【氏名】田窪 将也
(72)【発明者】
【氏名】葉山 正信
(72)【発明者】
【氏名】太田 和磨
(72)【発明者】
【氏名】関 健
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-214143(JP,A)
【文献】特開平05-293598(JP,A)
【文献】実公昭31-005840(JP,Y1)
【文献】実開昭47-030390(JP,U)
【文献】特開昭49-037038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造装置に固定された固定フレームと、
前記固定フレームに固定されて表面側が水平面と交差方向に配置された固定側長辺部材と、
表面側が前記固定側長辺部材の表面側と対向して配置され、かつ前記固定側長辺部材の表面側と交差する方向に移動可能な移動側長辺部材と、
前記固定側長辺部材および前記移動側長辺部材の両側を接続する一対の短辺部材と、
基部が前記固定フレームの固定側貫通孔を貫通し、先部が前記固定側長辺部材の背面側に配置された固定側コアと、
基部が前記固定フレームの移動側貫通孔を貫通し、先部が前記移動側長辺部材の背面側に配置され、前記移動側長辺部材の移動方向に沿って移動可能な移動側コアと、
前記固定側コアおよび前記移動側コアの外周にそれぞれ隙間を設けて捲回された電磁ブレーキコイルと、
前記移動側コアを前記固定フレームに対して前記移動側長辺部材の移動方向に沿って移動させる駆動部と、
前記移動側コアの下面とこれに対向する前記移動側貫通孔の底面との間に配置された転動部材
として前記移動側コアの下面および前記移動側貫通孔の底面にそれぞれ転動するボール
と、
前記移動側コアの側面とこれに対向する前記移動側貫通孔の内側面との間に設置されて前記移動側コアの側面とこれに対向する前記移動側貫通孔の内側面との少なくともいずれか一方に摺動する磁性体のサイドライナーと、
前記移動側長辺部材の背面側に設置された移動側長辺冷却箱と、
前記移動側長辺冷却箱に形成されて前記移動側コアの先部を挿入可能なコア収容部と、
前記移動側コアの下面とこれに対向する前記コア収容部の底面との間に配置された転動部材として前記移動側コアの下面および前記コア収容部の底面にそれぞれ転動するボールと、
前記移動側コアの側面とこれに対向する前記コア収容部の内側面との間に設置されて前記移動側コアの側面と前記コア収容部の内側面との少なくともいずれか一方に摺動する非磁性体のサイドガイドと、を有することを特徴とする連続鋳造鋳型。
【請求項2】
請求項1に記載の連続鋳造鋳型において、
前記サイドライナーは、前記移動側コアの移動方向に離れた複数箇所に設置されていることを特徴とする連続鋳造鋳型。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の連続鋳造鋳型において、
前記駆動部および前記移動側コアの前記固定フレームの側面から露出した部分を覆う防塵カバーを有することを特徴とする連続鋳造鋳型
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続鋳造鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造鋳型は、対向する固定側長辺部材および移動側長辺部材の両端に一対の短辺部材を挟み込んで矩形枠状に形成され、その内側に溶鋼を通すことで偏平な鋳片を連続して鋳造することができる。
連続鋳造鋳型においては、両短辺部材の幅を変更することで、厚みの異なる鋳片を鋳造することができる。
【0003】
一部の連続鋳造鋳型には電磁ブレーキが搭載され、連続鋳造鋳型に通される溶鋼に電磁力を作用させて溶鋼の流れを減速させている。
電磁ブレーキが搭載された連続鋳造鋳型では、電磁ブレーキのコアが固定フレームに支持され、その先端は移動側長辺部材との間に磁束を妨げない僅かな隙間(5mm程度)で配置されている。このため、短辺部材の交換時に、一時的に移動側長辺部材を固定側長辺部材から離れるように移動させようとすると、コアと移動側長辺部材とが干渉してしまい、短辺部材の交換のための作業空間が得られない。
【0004】
これに対し、特許文献1の連続鋳造鋳型では、電磁ブレーキのコアを移動側長辺部材の移動方向に移動可能とし、移動側長辺部材を移動させてもコアと干渉しないようにして、短辺部材の交換に必要な作業空間が得られるようにしている。
具体的には、基部が固定フレームを貫通し、先部が固定側長辺部材の背面側に配置された固定側コアと、基部が固定フレームを貫通し、先部が移動側長辺部材の背面側に配置され、移動側長辺部材の移動方向に沿って移動可能な移動側コアと、固定側コアおよび移動側コアの外周にそれぞれ隙間を設けて捲回された電磁ブレーキコイルと、移動側コアを固定フレームに対して移動側長辺部材の移動方向に沿って移動させる駆動部とを設け、この駆動部で移動側コアを移動させて移動側コアと移動側長辺部材との距離を調整している。
【0005】
このような特許文献1の連続鋳造鋳型によれば、移動側コアを移動させることで作業空間が得られ、固定側長辺部材および移動側長辺部材を連続鋳造設備に取付けた状態(オンライン)のまま、両短辺部材の交換による鋳片厚み変更が可能になる。
また、電磁ブレーキを構成する部材の中で、移動するのは移動側コアのみなので、電磁ブレーキの構造を複雑化させることがなく、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0006】
なお、固定側長辺部材および移動側長辺部材には、それぞれ内側に鋳片に摺動するための長辺銅板が設置され、その内側には長辺銅板を冷却するための長辺冷却箱が設置される。長辺冷却箱には凹状のコア収容部が形成され、固定側コアおよび移動側コアの先端は各々のコア収容部に挿入される。これにより、長辺冷却箱を設けた場合でも、固定側コアおよび移動側コアの先端を鋳片に十分に近づけられ、鋳片に対して電磁力を確実に作用させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1の連続鋳造鋳型では、移動側コアと移動側長辺部材との距離を調整するために、駆動部で移動側コアを移動させている。
移動の際には、移動側コアの基部と固定フレームとが摺動するとともに、移動側コアの先端とその支持部分(例えば冷却箱のコア収容部の内側面)とが摺動する。これらの間の摺動抵抗によって、移動する移動側コアの向きが斜めに傾くおそれがある。
特に、移動側コアの下面と固定フレームとの間の摺動は、移動側コアの重量を受けているため摺動抵抗が大きく、左右の摺動抵抗にアンバランスがあると、移動側コアに顕著な傾きを生じさせる可能性がある。
このように、移動の際に移動側コアの傾きが生じると、移動側コアの左右側面が固定フレームの内側面と強く摺動して固着し、移動側コアの移動が確実に行われなくなる可能性がある。このような移動側コアの移動不良がオンライン(稼働状態)で生じると、鋳型交換など長時間の生産停止による甚大な被害に繋がることがあり、その改善が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、電磁ブレーキの移動側コアの移動を確実に行える連続鋳造鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の連続鋳造鋳型は、連続鋳造装置に固定された固定フレームと、前記固定フレームに固定されて表面側が水平面と交差方向に配置された固定側長辺部材と、表面側が前記固定側長辺部材の表面側と対向して配置され、かつ前記固定側長辺部材の表面側と交差する方向に移動可能な移動側長辺部材と、前記固定側長辺部材および前記移動側長辺部材の両側を接続する一対の短辺部材と、基部が前記固定フレームの固定側貫通孔を貫通し、先部が前記固定側長辺部材の背面側に配置された固定側コアと、基部が前記固定フレームの移動側貫通孔を貫通し、先部が前記移動側長辺部材の背面側に配置され、前記移動側長辺部材の移動方向に沿って移動可能な移動側コアと、前記固定側コアおよび前記移動側コアの外周にそれぞれ隙間を設けて捲回された電磁ブレーキコイルと、前記移動側コアを前記固定フレームに対して前記移動側長辺部材の移動方向に沿って移動させる駆動部と、前記移動側コアの下面とこれに対向する前記移動側貫通孔の底面との間に配置されて前記移動側コアの下面と前記移動側貫通孔の底面との少なくともいずれか一方と転動する転動部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、固定フレーム、固定側長辺部材、移動側長辺部材、一対の短辺部材により連続鋳造鋳型の基本構成が得られるとともに、固定側コア、移動側コア、電磁ブレーキコイルおよび駆動部により、コア移動式の電磁ブレーキが構成される。さらに、転動部材により、移動側コアと移動側貫通孔の底面との間の摺動抵抗を大幅に削減することができる。
これにより、移動側コアが固定フレームに対して移動する際の傾きを抑制することができ、電磁ブレーキの移動側コアの移動を確実に行える連続鋳造鋳型とすることができる。
なお、転動部材は、移動側コアに軸支されて固定フレームに転動するもの、固定フレームに軸支されて移動側コアに転動するもの、移動側コアおよび固定フレームに転動するもののいずれであってもよい。
【0012】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記移動側長辺部材の背面側に設置された移動側長辺冷却箱と、前記移動側長辺冷却箱に形成されて前記移動側コアの先部を挿入可能なコア収容部と、前記移動側コアの下面とこれに対向する前記コア収容部の底面との間に配置されて前記移動側コアの下面と前記コア収容部の前記底面との少なくともいずれか一方と転動する転動部材と、を有することが好ましい。
【0013】
本発明では、移動側長辺部材の背面側に設置されたコア収容部により、移動側コアの先部を移動側長辺部材に近接させることができるとともに、転動部材を介して先部を支持することができる。この際、転動部材により、移動側コアとコア収容部の底面との間の摺動抵抗を大幅に削減でき、移動側コアが移動する際の傾きを削減することができる。
【0014】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記移動側コアの側面とこれに対向する前記コア収容部の内側面との間に設置されて前記移動側コアの側面と前記コア収容部の内側面との少なくともいずれか一方に摺動する非磁性体のサイドガイドを有することが好ましい。
本発明では、移動側コアがその移動方向に対して傾こうとした場合でも、サイドガイドにより先部の左右の振れを抑えることができ、移動側コアの傾きを確実に規制することができる。この際、サイドガイドを非磁性体で形成しておくことで、移動側コアの先部から鋳片を通して固定側コアに至る磁束に対する影響を防止することができる。
【0015】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記移動側コアの側面とこれに対向する前記移動側貫通孔の内側面との間に設置されて前記移動側コアの側面とこれに対向する前記移動側貫通孔の内側面との少なくともいずれか一方に摺動するサイドライナーを有することが好ましい。
本発明では、移動側コアがその移動方向に対して傾こうとした場合でも、サイドライナーが移動側貫通孔の内側面に摺動して傾きを規制することができる。
【0016】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記サイドライナーは、磁性体であることが好ましい。
本発明では、固定フレームと移動側コアとの間にサイドライナーが介在するが、サイドライナーが磁性体であるため、電磁ブレーキコイルから移動側コアを経由して固定フレームへ導入される磁束を妨げることがない。
本発明のサイドライナーに用いられる磁性体としては、例えば鉄の他、ステンレス鋼のうち強磁性を有するもの(マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト二相系)を用いることができる。
【0017】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記サイドライナーは、摺動面が平滑面とされていることが好ましい。
本発明では、サイドライナーの表面が平滑面であるため、サイドライナーと移動側貫通孔との摺動抵抗を最小限にとどめることができる。
本発明の平滑面としては、例えばサイドライナーをステンレス鋼で形成し、その表面を機械研磨により平滑に仕上げたものが採用できる。表面の平滑度は特に限定されないが、この平滑面と移動側貫通孔の底面とが摺動した際の摺動抵抗が、移動側コアの移動に影響しない程度にできればよい。
【0018】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記サイドライナーは、前記移動側コアの移動方向に離れた複数箇所に設置されていることが好ましい。
本発明では、少なくとも4つのサイドライナーにより、移動側コアの移動時の傾きを確実に抑制することができる。
【0019】
本発明の連続鋳造鋳型において、前記駆動部および前記移動側コアの前記固定フレームの側面から露出した部分を覆う防塵カバーを有することが好ましい。
本発明では、防塵カバーで固定フレームの側面の一部および当該部分から露出する駆動部および移動側コアを覆うことで、これらの各部からスケールや塵埃などが侵入することを防止でき、これらのスケールなどが移動側コアの摺動部分に噛み込まれて動作抵抗が増すといった不都合を防止できる。さらに、防塵カバーの内部に清浄な空気を導入することで、スケールなどを空気とともに排出することができ、防塵カバーによる摺動部分への噛み込み防止効果をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動側コアが固定フレームに対して移動する際の傾きを抑制することができ、電磁ブレーキの移動側コアの移動を確実に行える連続鋳造鋳型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の連続鋳造設備を示す側面図。
【
図2】前記実施形態の連続鋳造鋳型を示す縦断面図。
【
図3】前記実施形態の連続鋳造鋳型を示す水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、連続鋳造設備1は、レードル2に供給された溶鋼を、タンディッシュ3に一時貯留したのちノズル3Nから連続鋳造鋳型4に供給する。連続鋳造鋳型4は、ノズル3Nから供給された溶鋼を冷却して連続した鋳片9として下方へ送り出す。連続鋳造鋳型4から送り出された鋳片9は、サポートロール5、フレーム6Fで支持された複数のガイドロールセグメント6およびピンチロール7に順次通されて所定サイズに整形され、切断装置8で所定長さに切断される。
【0023】
図2および
図3において、連続鋳造鋳型4は、連続鋳造設備1に固定される固定フレーム10を有する。
固定フレーム10は、上下が開口した四角柱状に形成され、その内部には固定側長辺部材20、移動側長辺部材30、一対の短辺部材40が配置されている。
【0024】
固定側長辺部材20は、固定フレーム10の対向面間に掛け渡された固定側長辺冷却箱21と、その表面側に張られた固定側長辺銅板22とを有する。固定側長辺銅板22の表面は、鉛直方向(水平面と交差方向)に配置されている。
移動側長辺部材30は、固定フレーム10の対向面間に掛け渡された移動側長辺冷却箱31と、その表面側に張られた移動側長辺銅板32とを有する。移動側長辺銅板32の表面は、固定側長辺銅板22と対向かつ所定間隔をおいて配置されている。
【0025】
移動側長辺冷却箱31の両端は、固定フレーム10に対して移動可能に支持されている。固定側長辺冷却箱21と移動側長辺冷却箱31との間には、長辺側移動シリンダ33が設置されている。長辺側移動シリンダ33により、移動側長辺部材30を固定側長辺部材20に対して近接離隔させることで、固定側長辺銅板22と移動側長辺銅板32との間隔を拡大または縮小させることができる。
【0026】
一対の短辺部材40はそれぞれ、短辺銅板42が張られた短辺冷却部41を有し、短辺冷却部41は短辺側移動シリンダ43を介して固定フレーム10に支持されている。一対の短辺銅板42は、それぞれ固定側長辺銅板22および移動側長辺銅板32の両端間に配置されている。
【0027】
これら一対の短辺銅板42、移動側長辺銅板32および固定側長辺銅板22により、上下に延びる偏平な筒状の鋳型が構成され、ノズル3Nから注入される溶鋼を冷却固化させて鋳片9とすることができる。
一方、鋳造停止時に、長辺側移動シリンダ33により移動側長辺銅板32と固定側長辺銅板22との間隔を拡大させ、短辺側移動シリンダ43により短辺部材40の短辺銅板42を移動側長辺銅板32および固定側長辺銅板22から抜き出すことにより、短辺部材40の交換を行うことができる。
【0028】
固定側長辺部材20の背面側および移動側長辺部材30の背面側には、それぞれ固定側コア50および移動側コア60が設置されている。
これらの固定側コア50および移動側コア60を設置するために、固定フレーム10には、固定側長辺部材20の背面側に固定側貫通孔11が形成され、移動側長辺部材30の背面側に移動側貫通孔12が形成されている。また、固定側長辺冷却箱21の背面側にはコア収容部24が形成され、移動側長辺冷却箱31の背面側にはコア収容部34が形成されている。
【0029】
固定側コア50は、その基部51が固定フレーム10の固定側貫通孔11を貫通し、先部52が固定側長辺部材20のコア収容部24に挿入されている。
基部51の端面には固定板53が設置され、固定板53はボルトで固定フレーム10に締結固定されている。固定板53で固定された状態で、固定側コア50の先端はコア収容部24の最奥位置に達しており、鋳型内の溶鋼(冷えて鋳片9となる)に最接近した状態に保持されている。
【0030】
移動側コア60は、その基部61が固定フレーム10の移動側貫通孔12を貫通し、先部62が移動側長辺部材30のコア収容部34に挿入されている。
移動側コア60の固定フレーム10から外側に露出された部位には、駆動部としてのコア移動シリンダ64が設置されている。
【0031】
移動側コア60の基部61には凹部63が形成され、凹部63には移動側貫通孔12を水平に横断するブラケット13が設置され、ブラケット13にはコア移動シリンダ64のピストンロッドが接続されている。
従って、コア移動シリンダ64のピストンロッドを進退させることで、移動側コア60を移動側長辺部材30の移動方向に沿って移動可能である。移動側コア60は、先部62がコア収容部34の最奥位置つまり鋳型内の溶鋼(冷えて鋳片9となる)に最接近した位置まで移動可能であり、当該位置から逆方向へ移動側長辺部材30の最大移動量よりも長い距離移動可能である。
【0032】
移動側コア60の基部61の下面には、移動側貫通孔12に挿通される部位に、両側2箇所の凹部が形成され、各々には転動部材である鋼製のボール65が収容されている。
ボール65は、凹部の天井面および移動側貫通孔12の底面にそれぞれ当接されており、移動側コア60の荷重を支持するとともに、移動側コア60が移動した際に凹部の天井面および移動側貫通孔12の底面とそれぞれ転動可能である。
【0033】
移動側コア60の先部62の下面には、移動側長辺冷却箱31のコア収容部34に導入される部位に、両側2箇所の凹部が形成され、各々には転動部材である鋼製のボール66が収容されている。
ボール66は、凹部の天井面およびコア収容部34の底面にそれぞれ当接されており、移動側コア60の荷重を支持するとともに、移動側コア60が移動した際に凹部の天井面およびコア収容部34の底面とそれぞれ転動可能である。
【0034】
移動側長辺冷却箱31のコア収容部34の両内側面には、移動側コア60の先部62の側面と摺動するサイドガイド67が設置されている。
サイドガイド67は、非磁性体の金属(オーステナイト系ステンレス鋼など)で形成された板状の部材であり、コア収容部34の内側面の奥行き方向へ延びている。
【0035】
移動側コア60の基部61の両側面には、移動側コア60の移動方向に離れた2箇所に、移動側貫通孔12の内側面と摺動するサイドライナー68が設置されている。
サイドライナー68は、強磁性を有する鉄や、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)のステンレス鋼で形成されている。
サイドライナー68の移動側貫通孔12と摺動する表面(摺動面)は、機械研磨により所定の平滑度に仕上げられた平滑面とされている。
サイドライナー68は、基部61の両側面に形成された凹部に嵌め込まれ、摺動面が基部61の側面から1mm程度突出した状態で固定されており、この摺動面が移動側貫通孔12の内側面と摺動される。
【0036】
駆動部であるコア移動シリンダ64および移動側コア60の基部61は、固定フレーム10から露出されている。
固定フレーム10には防塵カバー14が設置され、固定フレーム10から露出した駆動部であるコア移動シリンダ64および移動側コア60の基部61は防塵カバー14で覆われている。
防塵カバー14には図示しない給気装置が接続され、防塵カバー14の内部には清浄な空気が供給されている。
【0037】
固定側コア50および移動側コア60の外周には、それぞれ隙間を設けて捲回された電磁ブレーキコイル71,72が設置されている。
電磁ブレーキコイル71,72は、それぞれ固定フレーム10の内側面に密接した状態で設置されている。
従って、電磁ブレーキコイル71,72に通電して固定側コア50および移動側コア60を励磁することで、固定側コア50、固定フレーム10、移動側コア60を巡り、固定側長辺銅板22と移動側長辺銅板32との間の溶鋼(冷えて鋳片9となる)を貫通する磁束が形成され、この磁束により鋳型内の溶鋼の流れを減速することができる。
これらの固定側コア50、移動側コア60、電磁ブレーキコイル71,72および駆動部であるコア移動シリンダ64により、コア移動式の電磁ブレーキが構成されている。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、固定フレーム10、固定側長辺部材20、移動側長辺部材30、一対の短辺部材40により連続鋳造鋳型4の基本構成が得られる。
また、固定側コア50、移動側コア60、電磁ブレーキコイル71,72および駆動部であるコア移動シリンダ64により、コア移動式の電磁ブレーキが構成される。
【0039】
本実施形態では、転動部材としてボール65,66を設けたため、移動側コア60の移動時に、移動側コア60と移動側貫通孔12の底面との間、および移動側コア60と移動側長辺冷却箱31のコア収容部34との間の摺動抵抗を大幅に削減できる。
これにより、移動側コア60が固定フレーム10に対して移動する際の傾きを抑制することができ、電磁ブレーキの移動側コア60の移動を確実に行える連続鋳造鋳型4とすることができる。
【0040】
本実施形態では、移動側長辺冷却箱31のコア収容部34の両側面にサイドガイド67を設けたため、移動側コア60がその移動方向に対して傾こうとした場合でも、サイドガイド67により先部62の左右の振れを抑えることができ、移動側コア60の傾きを確実に規制することができる。この際、サイドガイド67を非磁性体で形成しておくことで、移動側コア60の先部62から鋳片9を通して固定側コア50に至る磁束に対する影響を防止することができる。
【0041】
本実施形態では、移動側コア60の側面に、移動側貫通孔12の内側面に摺動可能なサイドライナー68を設けたため、移動側コア60がその移動方向に対して傾こうとした場合でも、サイドライナー68が移動側貫通孔12の内側面に摺動して傾きを規制することができる。
とくに、本実施形態では、サイドライナー68を、移動側コア60の両側面の、移動側コア60の移動方向に離れた2箇所に設置したため、移動側コア60の移動時の傾きを確実に抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、サイドライナー68は磁性体であるとしたため、固定フレーム10と移動側コア60との間にサイドライナー68が介在しても、電磁ブレーキコイル72から移動側コア60を経由して固定フレーム10へ導入される磁束を妨げることがない。
また、サイドライナー68の表面を平滑面としたため、サイドライナー68と移動側貫通孔12の内側面との摺動抵抗を最小限にとどめることができる。
【0043】
本実施形態では、固定フレーム10に防塵カバー14を設け、駆動部であるコア移動シリンダ64および移動側コア60の固定フレーム10の側面から露出した部分を覆うようにした。このため、防塵カバー14で覆われた各部に、あるいは移動側貫通孔12から固定フレーム10の内部に、スケールや塵埃などが侵入することを防止でき、これらのスケールなどが移動側コア60の摺動部分に噛み込まれて動作抵抗が増すといった不都合を防止できる。
とくに、防塵カバー14の内部に清浄な空気を導入することで、スケールなどを空気とともに排出することができ、防塵カバー14による摺動部分への噛み込み防止効果をさらに高めることができる。
【0044】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態において、移動側コア60の基部61の下面に設置される転動部材としてのボール65は、凹部の天井面および移動側貫通孔12の底面にそれぞれ当接されて転動するものとしたが、移動側コア60に軸支されて移動側貫通孔12の底面と転動するものでもよく、移動側貫通孔12の底面に軸支されて移動側コア60の下面に転動するものでもよい。
同様に、移動側コア60の先部62の下面に設置される転動部材としてのボール66は、凹部の天井面およびコア収容部34の底面にそれぞれ当接されて転動するものとしたが、移動側コア60に軸支されてコア収容部34の底面と転動するものでもよく、コア収容部34の底面に軸支されて移動側コア60の下面に転動するものでもよい。
転動部材は、鋼製のボール65,66に限らず、ローラであってもよく、他の材質であってもよい。
【0045】
前記実施形態においては、サイドガイド67をコア収容部34の内側面に設置し、これに対向する移動側コア60の側面と摺動させたが、これに限らず、サイドガイド67を移動側コア60の側面に設置し、これに対向するコア収容部34の内側面と摺動させてもよい。
また、前記実施形態では、サイドガイド67を両側に各1つ設置したが、移動側コア60の移動方向に複数列設置する等してもよい。
【0046】
前記実施形態においては、サイドライナー68を移動側コア60の側面に設置し、これに対向する移動側貫通孔12の内側面と摺動させたが、これに限らず、サイドライナー68を移動側貫通孔12の内側面に設置し、これに対向する移動側コア60の側面と摺動させてもよい。
また、前記実施形態では、サイドライナー68を、移動側コア60の移動方向に離れた2箇所に設置したが、3箇所以上の複数箇所に設置してもよく、あるいは1箇所であってもよい。サイドライナー68を1箇所とする場合でも、移動側コア60の移動方向に延びる長尺の部材とすることで、移動側コア60の傾き防止効果を得ることができる。
【0047】
前記実施形態において、サイドライナー68を磁性体とすることは必須ではないが、磁性体とすることで電磁ブレーキとしての機能を最大限に発揮することができる。
前記実施形態において、サイドライナー68の摺動面を機械加工により平滑面とすることは必須ではないが、平滑面とすることで摺動抵抗を低減することができる。サイドライナー68の摺動面は、低摩擦性の表面被膜などを形成してもよいが、耐熱性および耐摩耗性などを考慮すると、金属製の材料の表面を平滑に形成することが好ましい。
前記実施形態において、固定フレーム10の側面から露出した部分を覆う防塵カバー14は必須ではないが、これを設けることで防塵カバー14による摺動部分への噛み込み防止効果を得ることができ、摺動抵抗の低減に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電磁ブレーキ付きの連続鋳造鋳型として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…連続鋳造設備、2…レードル、3…タンディッシュ、3N…ノズル、4…連続鋳造鋳型、5…サポートロール、6…ガイドロールセグメント、6F…フレーム、7…ピンチロール、8…切断装置、9…鋳片、10…固定フレーム、11…固定側貫通孔、12…移動側貫通孔、13…ブラケット、14…防塵カバー、20…固定側長辺部材、21…固定側長辺冷却箱、22…固定側長辺銅板、24…コア収容部、30…移動側長辺部材、31…移動側長辺冷却箱、32…移動側長辺銅板、33…長辺側移動シリンダ、34…コア収容部、40…短辺部材、41…短辺冷却部、42…短辺銅板、43…短辺側移動シリンダ、50…固定側コア、51…基部、52…先部、53…固定板、60…移動側コア、61…基部、62…先部、63…凹部、64…コア移動シリンダ、65,66…転動部材であるボール、67…サイドガイド、68…サイドライナー、71,72…電磁ブレーキコイル。