(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】保水・保湿剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220909BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220909BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220909BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220909BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C09K3/00 N
A61K8/41
A61K8/365
A61Q5/00
A61K8/40
(21)【出願番号】P 2018136893
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2017142170
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-529012(JP,A)
【文献】米国特許第06869977(US,B1)
【文献】特表2008-517881(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104945267(CN,A)
【文献】特開2010-006750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンとアニオン
を有する有機アンモニウム塩を含む保水・保湿剤
であって、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、
前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化1】
(式中、R
1
はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、またはエステル基を1個以上有しアルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいアルキルエステル基を示し、R
2
は水素原子であり、nは1~3の整数を示す。)で表される保水・保湿剤。
【請求項2】
R
1が
炭素数1~6で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基、モノカルボキシアルキル基、モノヒドロキシカルボキシアルキル基、もしくはモノアルキルエステル基
である請求項1に記載の保水・保湿剤。
【請求項3】
R
1のうち少なくとも1つが水酸基を2個以上有する
炭素数1~6で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基
である請求項1に記載の保水・保湿剤。
【請求項4】
アニオンに水素結合性官能基を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の保水・保湿剤。
【請求項5】
カチオンとアニオン
を有する有機アンモニウム塩を含む保水・保湿剤
であって、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、
前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化1】
(式中、R
1
はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、またはエステル基を1個以上有しアルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいアルキルエステル基を示し、R
2
はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。)で表され、
前記アニオンが、
ブロミドイオン;
硫黄系アニオン;
リン系アニオン;
ホウ素系アニオン;
フッ素系アニオン;
窒素酸化物系アニオン;または
カルボン酸アニオン
であり、
前記アニオンがブロミドイオン、ホウ素系アニオン、またはフッ素系アニオンである場合には前記式(I)におけるnは1~4の整数を示す保水・保湿剤。
【請求項6】
前記アニオンが、
硫黄系アニオン;
リン系アニオン;
窒素酸化物系アニオン;または
カルボン酸アニオン
である請求項5に記載の保水・保湿剤。
【請求項7】
nは1~4の整数である
請求項5または6に記載の保水・保湿剤。
【請求項8】
R
1が
炭素数1~6で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基、モノカルボキシアルキル基、モノヒドロキシカルボキシアルキル基、もしくはモノアルキルエステル基
である請求項7に記載の保水・保湿剤。
【請求項9】
R
2が水素原子である
請求項8に記載の保水・保湿剤。
【請求項10】
R
2が
炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である
請求項8に記載の保水・保湿剤。
【請求項11】
R
1のうち少なくとも1つが水酸基を2個以上有する
炭素数1~6で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基
である請求項7に記載の保水・保湿剤。
【請求項12】
R
2が水素原子である
請求項11に記載の保水・保湿剤。
【請求項13】
前記有機アンモニウム塩の無水物および水和物が、25℃で液体である
請求項1~12のいずれか一項に記載の保水・保湿剤。
【請求項14】
前記有機アンモニウム塩を0.01質量%以上含む
請求項1~13のいずれか一項に記載の保水・保湿剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水・保湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
保水・保湿剤は、例えば土壌、緑化材料、紙類、皮膚や毛髪等の水分を保持し乾燥を抑制する目的で使用される。土壌用途においては農業、園芸用土壌の保水力を高め水やりの効果を向上させる目的で使用される。緑化材料においては、建築物の屋上や壁面、河川堤防等を緑化する目的で使用される緑化材料の保水性を向上するために配合される。紙類においては、塗工紙用の塗工液に配合し紙の乾燥による印刷工程での断紙や印刷不良等の不具合を防ぐ目的、ティシュペーパーの保湿性能を高め良好な肌触りを保持する目的で使用される。皮膚や毛髪用の化粧品においては水分を保持し、潤いのあるしっとり感を与える目的で配合される。その他、様々な用途で水分を保持するために保水・保湿剤が使用されている。
【0003】
従来、保水・保湿剤としては、多価アルコール等が提案されている(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-136678号公報
【文献】特開2017-014120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保水・保湿剤は、例えば、冬場の乾燥時のような低湿度環境下では保水・保湿性能が十分ではない場合や、また、揮発性があり長期での保水・保湿の効果が維持できないといった場合があり、こうした点を改善し得る新規な保水・保湿剤が望まれていた。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、保水・保湿性能に優れた新規な保水・保湿剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の保水・保湿剤は、カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩を含むことを特徴としている。
【0008】
好ましい態様において、前記カチオンはアンモニウムカチオンである。特に好ましい態様において、前記アンモニウムカチオンは次式(I):
【0009】
【0010】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、またはエステル基を1個以上有しアルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいアルキルエステル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。)で表される。
【0011】
好ましい態様において、nは1~4の整数である。特に好ましい態様では、R1が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基、モノカルボキシアルキル基、モノヒドロキシカルボキシアルキル基もしくはモノアルキルエステル基(エステル基を1個有するアルキルエステル基)であり、nが1~4の整数である。その中でも好ましい態様では、R2は水素原子である。あるいは、好ましい別の態様では、R2が炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、別の好ましい態様では、R1のうち少なくとも1つが水酸基を2個以上有する炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基であり、nが1~4の整数である。特に好ましい態様において、R2は水素原子である。
【0012】
好ましい態様において、本発明の保水・保湿剤は、アニオンに水素結合性官能基を有する。
【0013】
好ましい態様において、本発明の保水・保湿剤は、有機アンモニウム塩の無水物および水和物が、25℃で液体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より保水・保湿性能に優れた新規な保水・保湿剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の保水・保湿剤は、カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩を含む。
【0017】
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、特に限定されるものではないが、窒素原子をイオン中心とするカチオン、例えば、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、イソキノリニウムカチオン、オキサゾリニウムカチオン、チアゾリニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、グアニジウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン、トリアジニウムカチオン、キノリニウムカチオン、インドリニウムカチオン、キノキサリニウムカチオン、イソオキサゾリウムカチオン、カチオン性アミノ酸等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。なお、ここで例示したカチオンは、記載したとおりの基本構造のカチオンの他、水素結合性官能基等の置換基を含むものを包含する総称として示している。
【0018】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンに水素結合性官能基を有することが好ましい。
【0019】
水素結合性官能基としては、例えば、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基、窒素に直接結合した水素原子等が挙げられる。
【0020】
酸素含有基としては、例えば、水酸基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボキシ基、カルボキシレート基、尿素基、ウレタン基、アミド基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバミン酸基、カルバメート基等が挙げられる。
【0021】
窒素含有基としては、例えば、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0022】
硫黄含有基としては、例えば、硫酸基(-O-S(=O)2-O-)、スルホニル基(-S(=O)2O-)、スルホン酸基(-S(=O)2-)、メルカプト基(-SH)、チオエーテル基(-S-)、チオカルボニル基(-C(=S)-)、チオ尿素基(-N-C(=S)-N-)、チオカルボキシ基(-C(=S)OH)、チオカルボキシレート基(-C(=S)O-)、ジチオカルボキシ基(-C(=S)SH)、ジチオカルボキシレート基(-C(=S)S-)等が挙げられる。
【0023】
リン含有基としては、例えば、リン酸基(-O-P(=O)(-O-)-O-)、ホスホン酸基(-P(=O)(-O-)-O-)、ホスフィン酸基(-P(=O)-O-)、亜リン酸基(-O-P(-O-)-O-)、亜ホスホン酸基(-P(-O-)-O-)、亜ホスフィン酸基(-P-O-)ピロホスフェート基[(-O-P(=O)(-O-))2―O-]等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、カチオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、エステル基、窒素に直接結合した水素原子が好ましい。これらの中でも、水酸基、窒素に直接結合した水素原子がより好ましい。
【0025】
また、カチオンに水素結合性官能基を持つアルキル基を有しても良く、水素結合性官能基が結合したアルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基、アルキルエステル基等が挙げられる。
【0026】
上記ヒドロキシアルキル基は、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0027】
上記カルボキシアルキル基は、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0028】
上記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0029】
上記アルキルエステル基は、エステル基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0030】
ここで、アルキル部位が酸素原子を含む場合、該酸素原子は、例えば、アルキル部位にエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を形成する。したがって本発明において「アルキル部位が酸素原子を含む」とは、酸素原子を含む原子団として窒素原子等のヘテロ原子をも含む基によってアルキル部位が中断される場合を包含する。
【0031】
上記ヒドロキシアルキル基としては、モノヒドロキシアルキル基、ポリヒドロキシアルキル基を挙げることができ、これらの具体例としては、アルキル部位が酸素原子を含まないヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、アルコキシヒドロキシアルキル基、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル基等が挙げられる。
【0032】
モノヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシプロパン-2-イル基、2-ヒドロキシプロパン-2-イル基、1-ヒドロキシブタン-1-イル基、2-ヒドロキシブタン-1-イル基、3-ヒドロキシブタン-1-イル基、4-ヒドロキシブタン-1-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシブタン-2-イル基、2-ヒドロキシブタン-2-イル基、3-ヒドロキシブタン-2-イル基、4-ヒドロキシブタン-2-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-ヒドロキシペンタン-1-イル基、6-ヒドロキシヘキサン-1-イル基、7-ヒドロキシヘプタン-1-イル基、8-ヒドロキシオクタン-1-イル基、9-ヒドロキシノナン-1-イル基、10-ヒドロキシデカン-1-イル基等が挙げられる。モノヒドロキシアルキル基は、炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~3のものがさらに好ましい。
【0033】
ポリヒドロキシアルキル基としては、例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基等が挙げられる。具体的には、例えば、1,2-ジヒドロキシエチル基等のジヒドロキシエチル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基等のジヒドロキシプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基等のジヒドロキシプロパン-2-イル基;トリヒドロキシプロパン-1-イル基;トリヒドロキシプロパン-2-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基等のジヒドロキシブタン-1-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基等のトリヒドロキシブタン-1-イル基;テトラヒドロキシブタン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基等のジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;トリヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;テトラヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基等のジヒドロキシブタン-2-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基等のトリヒドロキシブタン-2-イル基;テトラヒドロキシブタン-2-イル基;1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基;ジ、トリ、テトラ、又はペンタヒドロキシペンタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、またはヘキサヒドロキシヘキサン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、またはヘプタヒドロキシヘプタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシオクタン-1-イル基等が挙げられる。ポリヒドロキシアルキル基は、水酸基を2~6個有する炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましい。また、次式で表わされる分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基は好ましいものとして例示される。
【0034】
【0035】
(式中、R11は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又は炭素数1~4の直鎖状のモノヒドロキシアルキル基を示す。)
【0036】
以上のポリヒドロキシアルキル基の中でも、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基、ペンタヒドロキシヘキサン-1-イル基が好ましい。
【0037】
上記カルボキシアルキル基としては、モノカルボキシアルキル基、ポリカルボキシアルキル基を挙げることができ、これらの具体例としては、上記において例示したモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基の水酸基をカルボキシ基に置換したものが挙げられる。
【0038】
モノカルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、2-カルボキシエチル基、1-カルボキシプロパン-1-イル基、2-カルボキシプロパン-1-イル基、3-カルボキシプロパン-1-イル基、1-カルボキシプロパン-2-イル基、2-カルボキシプロパン-2-イル基、1-カルボキシブタン-1-イル基、2-カルボキシブタン-1-イル基、3-カルボキシブタン-1-イル基、4-カルボキシブタン-1-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-カルボキシブタン-2-イル基、2-カルボキシブタン-2-イル基、3-カルボキシブタン-2-イル基、4-カルボキシブタン-2-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-カルボキシペンタン-1-イル基、6-カルボキシヘキサン-1-イル基、7-カルボキシヘプタン-1-イル基、8-カルボキシオクタン-1-イル基、9-カルボキシノナン-1-イル基、10-カルボキシデカン-1-イル基等が挙げられる。カルボキシアルキル基は、炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましい。
【0039】
上記ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、例えば、上記において例示したジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基の水酸基の一部をカルボキシ基に置換したものが挙げられる。水酸基およびカルボキシ基を各々1個有するモノヒドロキシカルボキシアルキル基としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-カルボキシブタン-1-イル基(カルニチン)、1-ヒドロキシエチル-2-カルボキシエチル基(セリン)、2-ヒドロキシエチル-2-カルボキシエチル基(トレオニン)等が挙げられる。ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、2-ヒドロキシ-3-カルボキシブタン-1-イル基(カルニチン)が好ましい。
【0040】
上記アルキルエステル基としては、例えば、上記において例示したカルボキシアルキル基のカルボキシ基をエステル化したものが挙げられる。エステル基を1固有するモノアルキルエステル基としては、例えば、1-アセトキシエタン-2-イル基(アセチルコリン)、1-エトキシエタン-2-イル基などが挙げられる。アルキルエステル基としては、1-アセトキシエタン-2-イル基(アセチルコリン)が好ましい。
【0041】
カチオンにおける水素結合性官能基以外の官能基としては、例えば、アルキル基を挙げることができる。アルキル基は、炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐状が好ましく、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐状が更に好ましく、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐状がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロパン-1-イル基、プロパン-2-イル基、ブタン-1-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ペンタン-1-イル基、1-メチルブタン-1-イル基、2-メチルブタン-1-イル基、3-メチルブタン-1-イル基、1-エチルブタン-1-イル基、1,1-ジメチルプロパン-1-イル基、1,2-ジメチルプロパン-1-イル基、2,2-ジメチルプロパン-1-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基等が挙げられる。
【0042】
本発明の有機アンモニウム塩のカチオンは、全てがアルキル基で置換されることも好ましい態様の一つであるが、本発明の効果、すなわち保水・保湿性を得る点において、本発明に使用される有機アンモニウム塩のカチオンに1個以上の水素結合性官能基を持つアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子を有するすることが好ましい。この場合、カチオンにおける官能基を導入可能な部位(窒素部位や、窒素と共に環を構成する炭素部位などの、基本骨格となる化学構造に含まれる原子)が、その1つが水素結合性官能基を持つアルキル基で置換されるとともに、それ以外の部位が、アルキル基で置換されるのが好ましい。水素結合性官能基を持つアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子のみで構成されることがより好ましい。1個以上窒素に直接結合した水素原子が含まれていることがさらに好ましい。特に好ましいカチオン構造は、水素結合性官能基を持つアルキル基と窒素に直接結合した水素原子で構成されるカチオンである。
【0043】
上記水素結合性官能基は、水酸基が好ましい。
【0044】
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。
【0045】
本発明の保水・保湿剤は、有機アンモニウム塩のカチオンが次式(I)で表されるアンモニウムカチオンまたは次式(II)で表されるイミダゾリウムカチオンであることが好ましい。その中でも、次式(I)で表されるアンモニウムカチオンが特に好ましい。
【0046】
【0047】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、またはエステル基を1個以上有しアルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいアルキルエステル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。)
【0048】
【0049】
(式中、R3~R7はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基、またはエステル基を1個以上有しアルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいアルキルエステル基、水素原子、水酸基または炭素数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。)
【0050】
これらのヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基、アルキルエステル基としては、上記に例示したものが挙げられる。
【0051】
有機アンモニウムカチオンとしては、アンモニウムカチオンが好ましい。アンモニウムカチオンの中でも、式(I)の構造がより好ましい。
【0052】
式(I)において、nが1~4の整数であることが好ましく、R1が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基、モノカルボキシアルキル基、モノヒドロキシカルボキシアルキル基もしくはモノアルキルエステル基であることがより好ましい。この場合、R2は、水素原子であることが好ましい。また、R2が炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
式(I)において、R1のうち少なくとも1つが水酸基を2個以上有する炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基で、かつnが1~4の整数であることが好ましい。この場合、R2が水素原子であることが好ましい。
【0054】
本発明に使用される有機アンモニウム塩のアニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、ホウ素系アニオン、フッ素系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオン等が挙げられる。
【0055】
前記ハロゲン系アニオンとしては、例えば、クロリドイオン、ブロミドイオン、ヨードイオン等が挙げられる。
【0056】
前記硫黄系アニオンとしては、スルホナートアニオン、水素スルホナートアニオン、アルキルスルホナートアニオン(例えば、メタンスルホナート、エチルスルホナート、ブチルスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホナート、スチレンスルホナート、3-スルホプロピルメタクリレートアニオン、3-スルホプロピルアクリレート等)、スルファートアニオン、水素スルファートアニオン、アルキルスルファートアニオン(例えば、メチルスルファートアニオン、エチルスルファートアニオン、ブチルスルファートアニオン、オクチルスルファートアニオン、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファートアニオン等)等が挙げられる。
【0057】
前記リン系アニオンとしては、ホスファートアニオン、水素ホスファートアニオン、二水素ホスファートアニオン、ホスホナートアニオン、水素ホスホナートアニオン、二水素ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、水素ホスフィナートアニオン、アルキルホスファートアニオン(例えば、ジメチルホスファート、ジエチルホスファート、ジプロピルホスファートアニオン、ジブチルホスファートアニオン等)、アルキルホスホナートアニオン(例えば、メチルホスホナートアニオン、エチルホスホナートアニオン、プロピルホスホナートアニオン、ブチルホスホナートアニオン、メチルメチルホスホナートアニオン等)、アルキルホスフィナートアニオン、ヘキサアルキルホスファートアニオン等が挙げられる。
【0058】
前記シアン系アニオンとしては、例えば、テトラシアノボレートアニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン等が挙げられる。
【0059】
前記ホウ素系アニオンとしては、例えば、テトラフルオロボレートアニオン、ビスオキサレートボラートアニオン、テトラフェニルボレートアニオンのようなテトラアルキルボレートアニオン等が挙げられる。
【0060】
前記フッ素系アニオンとしては、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミド等)、パーフルオロアルキルスルホナートアニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフラートアニオン、パーフルオロオクタンスルホーナートアニオン等)、フルオロホスファートアニオン(例えば、ヘキサフルオロホスファートアニオン、トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファートアニオン等)、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチドアニオン等)、フルオロハイドロジェネートアニオン等が挙げられる。
【0061】
前記窒素酸化物系アニオンとしては、例えば、硝酸アニオン、亜硝酸アニオンが挙げられる。
【0062】
前記カルボン酸アニオンは、分子中に、少なくとも1個以上のカルボン酸アニオン(-COO-)を持つ有機酸アニオンであり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を持つ官能基を含んでいても良い。特に限定されないが、カルボン酸アニオンとしては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸アニオン、不飽和脂肪族カルボン酸アニオン、脂環式カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオン、カルボニルカルボン酸アニオン、アルキルエーテルカルボン酸アニオン、ハロゲンカルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン等が挙げられる。(以下に挙げるカルボン酸アニオンの炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む)
前記飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数1~22が好ましい。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、イソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0063】
前記不飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数3~22が好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、マレイン酸、フマル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0064】
前記脂環式カルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、シクロヘキサン環骨格を有する脂環式カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0065】
前記芳香族カルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環又は複数の環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり炭素数6~20が好ましい。中でも、ベンゼン環骨格を有する芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、安息香酸、ケイヒ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0066】
前記飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数2~24が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する炭素数2~7の飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシデカンサン酸、3-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、セレブロン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0067】
前記不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数3~22が好ましい。具体的には、リシノール酸、リシノレイン酸、リシネライジン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0068】
前記脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数4~20が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する6員環骨格の脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)、シキミ酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。また、水酸基を有する環状ラクトンからプロトンが解離したアニオンも好ましく使用でき、具体的には、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸等からプロトン解離したアニオンが挙げられる。
【0069】
芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環あるいは複数の環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、1~3個の水酸基を有するベンゼン環骨格の芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0070】
前記カルボニルカルボン酸アニオンは、分子内にカルボニル基を有する炭素数3~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のカルボニル基を有する炭素数3~7のカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH3((CH2)pCO(CH2)q)COO-(p及びqは0~2の整数を示す。)で表わされるカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、ピルビン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0071】
前記アルキルエーテルカルボン酸アニオンは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル カルボン酸アニオンを含む、分子内にエーテル基を有する炭素数2~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のエーテル基を有する炭素数2~12のアルキルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH3(CH2)rO(CH2)sCOO-(r及びsは0~4の整数を示す。)で表わされるアルキルエーテルカルボン酸アニオン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、メトキシ酪酸、エトキシ酪酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0072】
前記ハロゲンカルボン酸アニオンとしては、炭素数2~22のハロゲンカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタクロロプロピオン酸、ペンタブロモプロピオン酸、パーフルオロノナン酸、パークロロノナン酸、パーブロモノナン酸等のフッ素置換のハロゲンカルボン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0073】
前記アミノ酸アニオンとしては、特に限定されないが、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、イソロイシン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、ロイシン、リシン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニン、セリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、バリン、サルコシン、アミノ酪酸、メチルロイシン、アミノカプリル酸、アミノヘキサン酸、ノルバリン、アミノ吉草酸、アミノイソ酪酸、チロキシン、クレアチン、オルニチン、オパイン、テアニン、トリコロミン、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸、シスチン、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン、デスモシン等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0074】
本発明の効果、すなわち保水・保湿性を得る点において、アニオンがハロゲン原子を含むホウ素系アニオンあるいは、ハロゲン系アニオンである場合、クロリドイオンよりブロミドイオンが好ましく、ハロゲン原子を含むホウ素系アニオンがより好ましい。
【0075】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、アニオンに水素結合性官能基を有することが好ましく、官能基としては酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合可能な基が含まれ、上記の硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオンが好ましい。
【0076】
アニオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基が好ましく、中でも水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、リン酸基がより好ましい。
【0077】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、優れた保水・保湿性を得る点においてカチオンとアニオンの両方に水素結合性官能基を有する有機塩が特に望ましい。
【0078】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、水や溶媒に希釈して使用することができる。
【0079】
本発明の保水・保湿剤は、有機アンモニウム塩が、無水状態(無水物)であってもよく、空気中の水分を吸収した水和物であってもよい。水和物とは、化合物を空気中25℃で放置した時、吸水し、その水分率が飽和状態となった化合物をいう。空気中25℃で放置した時、吸水しない化合物は、水和物が無く、無水物である。
【0080】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、水和物であると、水和物中の水分の蒸発が抑制され、長期間保水・保湿の効果が持続する。そのため、本発明に使用される有機アンモニウム塩に、水和水を超える水を溶解し空気中に放置して水の減少を観察した場合、水和水の蒸発が抑制されるため、水分減少率が経時で減少する。
【0081】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、25℃で液体、固体のいずれであってもよいが、無水物および水和物が25℃で液体の場合、いずれの濃度でも、例えば、塗布面の透明性が高く、外観に優れた塗布面が得られる。また、これら液体の有機アンモニウム塩の無水物、水和物および希釈物は、有機アンモニウム塩の結晶が析出したり、凝集して固化したりする等の使用上の問題が生じない。25℃で液体であると、他の添加剤と使用する場合、溶媒、基剤として使用可能である。また、対象物(例えば、樹脂、紙、皮膚、髪等)への浸透性に優れる。本発明に使用される有機アンモニウム塩の融点(凝固点)は好ましくは25℃未満、より好ましくは-5℃未満、特に好ましくは-10℃未満である。
【0082】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、低湿度環境下においても揮発せず、残存して水分を長期に保持し、長期間保水・保湿効果を維持する観点から好ましい。保水・保湿の効果を対象物(例えば、樹脂、紙、皮膚、髪等)に付与する点において、対象物の表面がマイナス電荷を帯びている場合、本発明の有機アンモニウム塩のカチオンが相互作用して、長時間対象物表面に固定化することが可能である。
【0083】
また、対象物の表面に、本発明の有機アンモニウム塩が有する例えば酸素含有基、窒素含有基等、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合性官能基と相互作用、結合する官能基を有する場合、カチオンおよび/またはアニオンに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩は、対象物に良好に長時間固定化することが可能である。
【0084】
本発明の保水・保湿剤に使用される有機アンモニウム塩は、安全性の観点からカチオン、アニオンのいずれか若しくは両方に、天然系化合物を使用することが好ましい。例えば、カチオンとしては、コリンカチオン、アセチルコリンカチオン、カルニチンカチオン等が挙げられ、アニオンとしては、クエン酸アニオン、乳酸アニオン、リンゴ酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、グリコール酸アニオン、酒石酸アニオン、キナ酸アニオン、酢酸アニオン、酪酸アニオン、カプロン酸アニオン、カプリル酸アニオン、カプリン酸アニオン、コハク酸アニオン、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、アラニンアニオン、グリシンアニオン等が挙げられ、有機アンモニウム塩としては、例えば、コリンクエン酸塩、コリン乳酸塩、コリンリンゴ酸塩、コリンアスコルビン酸塩、コリングリコール酸塩、コリン酒石酸塩、コリンキナ酸塩、コリン酢酸塩、コリン酪酸塩、コリンカプロン酸塩、コリンカプリル酸塩、コリンカプリン酸塩、コリンコハク酸塩、コリンオレイン酸塩、コリンリノール酸塩、コリンアラニン塩、コリングリシン塩を始めとするコリンアミノ酸塩、アセチルコリンクエン酸塩、アセチルコリン乳酸塩、アセチルコリンリンゴ酸塩、アセチルコリンアスコルビン酸塩、アセチルコリングリコール酸塩、アセチルコリン酒石酸塩、アセチルコリンキナ酸塩、アセチルコリン酢酸塩、アセチルコリンカプロン酸塩、アセチルコリンカプリル酸塩、アセチルコリンカプリン酸塩、アセチルコリンコハク酸塩、アセチルコリンオレイン酸塩、アセチルコリンリノール酸塩、アセチルコリンアラニン塩、アセチルコリングリシン塩を始めとするアセチルコリンアミノ酸塩、カルニチンクエン酸塩、カルニチン乳酸塩、カルニチンリンゴ酸塩、カルニチンアスコルビン酸塩、カルニチングリコール酸塩、カルニチン酒石酸塩、カルニチンキナ酸塩、カルニチン酢酸塩、カルニチン酪酸塩、カルニチンカプロン酸塩、カルニチンカプリル酸塩、カルニチンカプリン酸塩、カルニチンコハク酸塩、カルニチンオレイン酸塩、カルニチンリノール酸塩、カルニチンアラニン塩、カルニチングリシン塩を始めとするカルニチンアミノ酸塩等が挙げられる。
【0085】
安全性の点において、カチオンがモノヒドロキシアルキルを有する場合、トリエタノールアンモニウムカチオン、ジエタノールアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリエタノールアンモニウムカチオンが好ましい。
【0086】
また、安全性、使用上の観点から、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、医薬部外品原料規格(外原規)に記載された化合物を原料に用いることが好ましく、カチオン、アニオンの両方の原料が外原規に記載された有機アンモニウム塩、および外原規に記載された有機アンモニウム塩を用いることががより好ましい。特に限定されないが、例えば、カチオンとしてはモノエタノールアンモニウムカチオン、ジエタノールアンモニウムカチオン、トリエタノールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオン、アニオンとしては酢酸アニオン、カプリル酸アニオン、カプリン酸アニオン、ラウリン酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、パルミチン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、乳酸アニオン、グリコール酸アニオン、コハク酸アニオン、クエン酸アニオン、クロリドアニオン、フマル酸アニオン、リン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン等が挙げられる。
【0087】
本発明の保水・保湿剤は必要に応じて、pH調整剤等を添加して、pHを調整することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、安全性が求められる場合は、天然系化合物が好適である。天然系のpH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、酒石酸、キナ酸、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、コハク酸、オレイン酸、リノール酸、アラニン、グリシンを始めとする各種アミノ酸等が挙げられる。
【0088】
本発明の保水・保湿剤に使用される有機アンモニウム塩は、親水性に優れ、分子サイズが小さく、浸透圧が高いことから例えば、皮膚、髪等への浸透性に優れる。皮膚、髪等は表面がマイナスに帯電しているため、本発明の保水・保湿剤に使用される有機アンモニウム塩は、吸着しやすく好適である。
【0089】
紙等の植物性繊維に対して、本発明の保水・保湿剤に使用される水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩は、繊維の水酸基に対して水素結合するため、保持性、浸透性に優れ有用である。さらに、紙の表面はマイナスに帯電しているため、本発明の保水・保湿剤に使用される有機アンモニウム塩は、吸着しやすく好適である。
【0090】
本発明の保水・保湿剤は、保水性が高く不揮発性のため、バリア性に優れ、長期間乾燥を防ぐことが可能である。
【0091】
本発明の保水・保湿剤は、次の分野を始めとする幅広い産業分野に広く用いることができる。例えば、保湿剤、乳液、化粧水、口紅等をはじめとする化粧品、ローションティッシュ用薬剤、紙塗工液等をはじめとする紙処理剤、鮮度保持剤等をはじめとする食品用添加剤、土壌保水剤、土壌改質剤、生花輸送剤、種子コーティング剤等をはじめとする農業用材料、繊維処理剤等をはじめとする繊維材料、電子材料洗浄剤等をはじめとする電子材料、生体材料(人工皮膚等)、口腔洗浄剤等をはじめとする医療・医薬品用材料、インク顔料処理剤、衛生材料、消臭剤、芳香剤の基材、発熱材(カイロ等)、蓄冷剤、冷却シート、ペット用品(吸水シート)、寝衣類及び寝具類等をはじめとする日用品用材料、ガラス処理剤(結露防止剤等)等をはじめとするガラス用材料、止水剤、路盤剤、コンクリート処理剤、建築物の屋上や壁面の緑化用保水剤等)、難燃剤、断熱剤等をはじめとする土木・建築用材料、ガス検知剤、乾燥剤、接着剤、樹脂改質剤等をはじめとする工業品用材料等が挙げられる。
【0092】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、不揮発性であるため、有機アンモニウム塩を低濃度含有する組成物を使用した少量の適用であっても、使用された場所に留まり保水・保湿効果を発現する。
【0093】
本発明の保水・保湿剤は、以上に説明した有機アンモニウム塩やその水和物であってもよいが、この有機アンモニウム塩を含む組成物であってもよい。本発明の保水・保湿剤が組成物である場合、上記有機アンモニウム塩の含有量は無水物に換算して0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、5%質量以上が特に好ましく、10質量%以上が最も好ましい。組成物の態様は特に限定されないが、例えば、上記有機アンモニウム塩を水や溶媒等に溶解または分散したもの等が挙げられる。
【0094】
本発明の保水・保湿剤は、有機アンモニウム塩を予め製造した後に水や溶媒、他の成分と混合して組成物とする他に、カチオン、アニオンの原料となるそれぞれの化合物を水や溶媒、他の成分と混合して組成物としてもよい。
【0095】
溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、アセトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトニトリル等が挙げられ、これらは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また組成物は添加剤を含んでもよく、特に限定されないが、例えば、前記のpH調整剤、顔料、樹脂粒子、界面活性剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む)、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、酸化防止剤、昆虫忌避剤等の成分が挙げられる。
【0096】
本発明に使用される有機アンモニウム塩のうち室温で液体のものは、他の組成物や上記添加剤の溶媒、媒体としても機能する。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(化合物)
化合物1~57
表1~10に示す化合物1~57は以下の方法で合成、入手した。
【0098】
化合物1~5:特開2014-131975号公報に記載の方法で合成した。
【0099】
化合物6~26:特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
【0100】
化合物27~39:特開2012-031137号公報に記載の方法で合成した。
【0101】
化合物40、42:和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
【0102】
化合物41:東京化成株式会社製の試薬(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート)を用いた。
【0103】
化合物43:イオン交換水を用いた。
【0104】
化合物44
モノエタノ-ルアミン(12.88g、0.21mol)とアスコルビン酸(37.12g、0.21mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、褐色固体を得た。得られた固体を洗浄することにより、黄色固体のモノエタノ-ルアミンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3552cm-1:O-H伸縮振動 2960cm-1:C-H伸縮振動 1586cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 3.05 (m, 2H, N+CH
2
CH2OH), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.73 (m, 2H, N+CH2CH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 41.3 (N+
CH2CH2OH), δ 57.7 (N+CH2
CH2OH), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0105】
化合物45
ジエタノ-ルアミン(18.69g、0.18mol)とアスコルビン酸(31.31g、0.18mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、濃黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体のジエタノ-ルアミンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3370cm-1:O-H伸縮振動 2950cm-1:C-H伸縮振動 1591cm-1:COO-伸縮振動
11H-NMR (D2O 400MHz): δ 3.13 (m, 4H, N+CH
2
CH2OH), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.76 (m, 4H, N+CH2CH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 48.9 (N+
CH2CH2OH), δ 56.5 (N+CH2
CH2OH), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0106】
化合物46
トリエタノ-ルアミン(22.93g、0.15mol)とアスコルビン酸(27.07g、0.15mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、濃黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体のトリエタノ-ルアミンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3360cm-1:O-H伸縮振動 2950cm-1:C-H伸縮振動 1558cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 3.31 (t, 6H, N+CH
2
CH2OH), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.85 (t, 6H, N+CH2CH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 55.4 (N+
CH2CH2OH), δ 55.6 (N+CH2
CH2OH), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0107】
化合物47
2-アミノ-1,3-プロパンジオ-ル(17.05g、0.19mol)とアスコルビン酸(32.95g、0.19mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色固体を得た。得られた固体を洗浄することにより、黄色固体の2-アミノ-1,3-プロパンジオ-ルアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3362cm-1:O-H伸縮振動 2954cm-1:C-H伸縮振動 1588cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 3.15-3.19 (m, 1H, HOCH2CH(N+H3)CH2OH), δ 3.49-3.65 (m, 4H, HOCH
2
CH(N+H3)CH
2
OH), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 53.8 (HOCH2
CH(N+H3)CH2OH), δ 59.5 (HOCH2CH(N+H3)CH2OH), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0108】
化合物48
2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル(20.18g、0.17mol)とアスコルビン酸(29.82g、0.17mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色固体を得た。得られた固体を洗浄することにより、黄色固体の2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ルアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3152cm-1:O-H伸縮振動 2921cm-1:C-H伸縮振動 1549cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 0.60-0.68 (m, 3H, NH3
+C(CH2OH)2CH2CH
3
), δ 1.25-1.47 (m, 2H, NH3
+C(CH2OH)2CH
2
CH3), δ 3.40 (s, 4H, NH3
+C(CH
2
OH)2CH2CH3), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 6.3 (NH3
+C(CH2OH)2CH2
CH3), δ 23.2 (NH3
+C(CH2OH)2
CH2CH3), δ 60.7 (NH3
+
C(CH2OH)2CH2CH3), δ 60.9 (NH3
+C(CH2OH)2CH2CH3), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0109】
化合物49
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオ-ル(20.38g、0.17mol)とアスコルビン酸(29.62g、0.17mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色固体を得た。得られた固体を洗浄することにより、黄色固体の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオ-ルアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3153cm-1:O-H伸縮振動 2922cm-1:C-H伸縮振動 1551cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 3.67 (s, 6H, NH3
+C(CH
2
OH)3), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 61.0 (NH3
+
C(CH2OH)3), δ 61.5 (NH3
+C(CH2OH)3), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0110】
化合物50
D-グルカミン(10.14g、0.06mol)とアスコルビン酸(9.86g、0.06mol)を水50ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色固体を得た。得られた固体を洗浄することにより、黄色固体のD-グルカミンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3167cm-1:O-H伸縮振動 2920cm-1:C-H伸縮振動 1573cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 2.94-3.13 (m, 2H, HOCH2(CH(OH))3CH(OH)CH
2
NH3
+), δ 3.51-3.72 (m, 5H, HOCH
2
(CH(OH))3CH(OH)CH2NH3
+), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.82 (s, 2H, HOCH
2
COO-), δ 3.89-3.96 (m, 1H, HOCH2(CH(OH))3CH(OH)CH2NH3
+), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 41.7 (HOCH2(CH(OH))3CH(OH)CH2NH3
+), δ 62.6 (HOCH2(CH(OH))3CH(OH)CH2NH3
+), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 68.9-70.9 (HOCH2(CH(OH))3
CH(OH)CH2NH3
+), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0111】
化合物51
水酸化コリン(10.14g、0.06mol)とアスコルビン酸(9.86g、0.06mol)を水50ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色固体を得た。得られた固体を洗浄することにより、黄色固体のコリンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3330cm-1:O-H伸縮振動 2980cm-1:C-H伸縮振動 1580cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 3.02 (s, 9H, CH
3
N+), δ 3.38 (q, 2H, CH
2
N+), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.94 (t, 2H, N+CH2CH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 54.7 (CH3N+), δ 56.3 (N+CH2
CH2OH), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 68.1 (N+
CH2CH2OH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0112】
化合物52
カルニチン(9.56g、0.06mol)とアスコルビン酸(10.44g、0.06mol)を水50ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体のカルニチンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3330cm-1:O-H伸縮振動 2980cm-1:C-H伸縮振動 1580cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 2.35 (m, 2H, N+CH2CHCH
2
COOH), δ 3.12 (s, 9H, CH
3
N+), δ 3.38 (q, 2H, CH
2
N+), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.45 (m, 1H, N+CH2CHCH2OH), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 43.0 (N+CH2CHCH2COOH), δ 54.1 (CH3N+), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 64.1 (N+CH2
CHCH2COOH), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 70.1 (N+ CH2CHCH2COOH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 171.0 (COO-).
【0113】
化合物53
アセチルコリンクロリド(25.00g、0.14mol)をイオン交換水に溶解し、OH型に置換したイオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイアイオン SA10A)を充填したカラムに通液することによって水酸化アセチルコリンを得た。
水酸化アセチルコリン(22.46g、0.14mol)とアスコルビン酸(24.24g、0.14mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体のアセチルコリンアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3330cm-1:O-H伸縮振動 2980cm-1:C-H伸縮振動 1580cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 2.12 (s, 3H, CH
3
C=O), δ 3.56 (s, 9H, CH
3
N+), δ 3.64 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.98 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.17 (q, 2H, CH
2
N+), δ 4.60 (t, 2H, N+CH2CH
2
O), δ 4.86 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 21.0 (CH3C=O), δ 54.1 (CH3N+), δ 58.7 (N+CH2
CH2O), δ 62.9 (CHCH2OH), δ 64.6 (N+
CH2CH2O), δ 69.8 (CHCH2OH), δ 77.0 (CHCHOH), δ 118.7 (C(=O)C=COH), δ 156.2 (COCOH), δ 170.0 (CH3
C=O), δ 171.0 (COO-).
【0114】
化合物54
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(50.00g、0.56mol)と乳酸(50.53g、0.56mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール乳酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3350cm-1:O-H伸縮振動 2985cm-1:C-H伸縮振動 1585cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 1.20 (m, 9H, (CH
3
)2C, CH
3
CH(OH)COO-), δ 3.45 (s, 2H, CCH
2
OH), δ 4.00 (m, 1H, CH3CH(OH)COO-).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 19.0 (CH3CH(OH)COO-), δ 21.5 ((CH3)2C), δ 55.0 ((CH3)2
C), δ 68.4 (CH3
CH(OH)COO-), δ 72.8 (N+CCH2OH), δ 182.4 (COO-).
【0115】
化合物55
2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオール(50.00g、0.48mol)と乳酸(42.84g、0.48mol)を水100ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体の2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオール乳酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3350cm-1:O-H伸縮振動 2985cm-1:C-H伸縮振動 1585cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 1.20 (m, 6H, CH
3
CN+H3, CH
3
CH(OH)COO-), δ 3.56 (m, 4H, C(CH
2
OH)2), δ 4.00 (m, 1H, CH3CH(OH)COO-).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 16.9 (CH3CH(OH)COO-), δ 20.0 (CH3CN+H3), δ 58.3 (CH3
C N+H3), δ 63.0 (N+C(CH2OH)2),δ 68.4 (CH3
CH(OH)COO-),δ 182.4 (COO-).
【0116】
化合物56
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(10.00g、0.11mol)とアスコルビン酸(19.76g、0.11mol)を水50ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールアスコルビン酸塩を得た。
FT-IR(KBr):3350cm-1:O-H伸縮振動 2985cm-1:C-H伸縮振動 1585cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 1.22 (m, 6H, (CH
3
)2C), δ 3.47 (s, 2H, CCH
2
OH), δ 3.65 (m, 2H, CHCH
2
OH), δ 3.93 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.41 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 21.5 ((CH3)2C), δ 55.0 ((CH3)2
C), δ 62.5 (CHCH2OH), δ 66.5 (N+CCH2OH), δ 69.6 (CHCH2OH), δ 78.4 (CHCHOH), δ 113.1 (C(=O)C=COH), δ 175.6 (COCOH), δ 177.5 (COO-).
【0117】
化合物57
2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオール(10.00g、0.10mol)とアスコルビン酸(16.75g、0.10mol)を水50ml中で、室温下、3時間反応後、水を減圧留去し、黄色液体を得た。得られた液体を洗浄することにより、黄色液体の2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオールアスコルビン塩を得た。
FT-IR(KBr):3350cm-1:O-H伸縮振動 2985cm-1:C-H伸縮振動 1585cm-1:COO-伸縮振動
1H-NMR (D2O 400MHz): δ 1.18 (s, 3H, (CH
3
)2C), δ 3.52 (m, 6H, CCH
2
OH、CHCH
2
OH), δ 3.93 (m, 1H, CHCH2OH), δ 4.41 (d, 1H, CHCHOH).
13C-NMR (D2O 100MHz): δ 16.9 (CH3C), δ 55.0 (CH3
C), δ 62.5 (CHCH2OH), δ 62.9 (N+CCH2OH), δ 69.5 (CHCH2OH), δ 78.4 (CHCHOH), δ 113.1 (C(=O)C=COH), δ 175.7 (COCOH), δ 177.5 (COO-).
【0118】
(評価方法)
(1)水和物の有無、n水和物、25℃の外観評価、凝固点(表1~6)
表1~6記載の水和物の有無、n水和物(水和水の数)、25℃の外観評価、凝固点は次の方法で行った。水分量はカールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック製KF-200)にて測定した。
【0119】
水和物の有無については、各化合物を空気中25℃で放置した時、吸水し、その水分率(表4~6の試験前水分率:実施例40~77、101~112)が飽和状態となった化合物を水和物とした。一方で、吸水しない化合物を無水物とした。水和物の水和水の数は、飽和後の水分率と化合物の分子量より算出した。25℃の外観評価(液体もしくは固体)については、無水物及び水和物は、空気中25℃放置後に外観を確認した。さらに、水和物の無水状態の外観については、吸水飽和した化合物を60℃で減圧乾燥し、無水物とした後、外観を確認した。凝固点は、水和物となるものは水和物、水和物とならないものは無水物を恒温器(福島工業製FMU-133I)に一定期間静置し、結晶の有無を確認する方法で評価した。
【0120】
(2)保水性試験1(表1~3)
化合物1~42、44~57の20wt%水溶液を調製し、カールフィッシャー水分計で水分率が20.0wt%であることを確認した(試験前水分率A)。それらのサンプル1.0gをスクリュー管に加え蓋しない状態で、40℃25%RHに設定した恒温恒湿器(東京理化器械株式会社製KCL-2000W)中に、24時間静置した。24時間後の水分率を再度、測定し(試験後水分率B)、下記式を用いて、水分減少率を算出し、保水性を評価した。
【0121】
試験前水分率A(%)
試験後水分率B(%)
水分減少率(%)=[(A(%)-B(%))/A(%)]×100
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表1~3の結果より、20wt%水溶液において、実施例の化合物1~39、44~57は、比較例の化合物40~42よりも、水分減少率が小さく、保水性に優れていた。
【0127】
カチオン及び/またはアニオンに水素結合性官能基(水酸基)を持つ有機塩の化合物1~39、44~57は、同様に水素結合性官能基を有するが塩構造ではない化合物42よりも水分減少率が小さく、有機塩が高い保水性を有することが示唆された。
【0128】
カチオンのみに水素結合性官能基を有した化合物12~14、18、19、35、37、38とアニオンのみに水素結合性官能基を有した化合物39は、水素結合性官能基を有さない比較例の化合物40、41より水分減少率が小さく保水性に優れ、カチオンもしくはアニオンのいずれかに水素結合性官能基を有する有機塩が好ましい。
【0129】
同様なアニオンで比較した場合、カチオン及びアニオンに水素結合性官能基を導入した化合物1、2、5、8、15、20、23、24、25、26、29、54、55は、アニオンのみに水素結合性官能基を有した化合物39よりも水分減少率が小さく保水効果に優れ、また、同様なカチオンで比較した場合、カチオン及びアニオンに水素結合性官能基を導入した化合物6~11は、カチオンのみに水素結合性官能基を有した化合物12~14よりも水分減少率が小さく保水効果に優れていたことから、カチオンとアニオンの双方に水素結合性官能基を有することが、さらに好ましいことを確認した。
【0130】
カチオンの置換基の組み合わせについては、同様のアニオン(乳酸アニオン)の有機塩で比較した場合、カチオンに1個以上ヒドロキシアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子を有し、アルキル基を含んでも良い化合物1、2、5、8、15、20、23、24、25、26、29、54、55は、アルキル基のみで構成された化合物39よりも水分減少率が小さいことから、カチオンにヒドロキシアルキル基、窒素に直接結合した水素原子を有することが好ましい。
【0131】
次に、カチオンの水素結合性官能基を比較した場合、カチオンがヒドロキシアルキル基とアルキル基からなる化合物29よりも、カチオンがヒドロキシアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子のみで構成された化合物1、2、5、8、15、20、23、24、25、26、54、55の方が、水分減少率が小さく、カチオンの構造はヒドロキシアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子のみで構成されることがより好ましい。
【0132】
さらに、窒素に直接結合した水素原子を持たない化合物25、26よりも、1個以上窒素に直接結合した水素原子が含まれている化合物1、2、5、8、15、20、23、24、54、55の方が、水分減少率が小さく、1個以上窒素に直接結合した水素原子が含まれていることがさらに好ましいことを確認した。中でも、窒素に直接結合した水素原子のみで構成される化合物24よりも、化合物1、2、5、8、15、20、23、54、55が特に保水性に優れる結果を示したことから、特に好ましいカチオン構造は、ヒドロキシアルキル基と窒素に直接結合した水素原子で構成されるカチオンである。
【0133】
アニオン種については、同様のカチオンの有機塩でアニオンの比較を行った。アニオンに水素結合性官能基を含む化合物6~11と含まない化合物12~14、または、化合物27~34と化合物35を比較した結果、水素結合性官能基を含むアニオンの化合物6~11、27~34は、水分減少率が小さいことを確認した。一方、水素結合性官能基を含まないハロゲン系アニオンより、水素結合性官能基を含む水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、リン酸基を含むアニオンの化合物が保水性能に優れていた。また、ハロゲン系アニオンで比較した場合、化合物12(ホウ素系アニオン)、13(ブロミドイオン)、14(クロリドイオン)の順で保水性が優れていた。
【0134】
(3)保水性試験2(表4~6)
各化合物における水和物の保水性を評価した。化合物1~38、44~57は水和物を用いたが、化合物39~42は無水物であるため、1水和物~3水和物の濃度となるように加水して調製した水溶液を用いた。サンプルの水分率は、カールフィッシャー水分計で確認した(試験前水分量率A)。各サンプル1.0gをスクリュー管に加え蓋しない状態で、40℃25%RHに設定した恒温恒湿器中に、24時間静置した。24時間後の水分率を、再度測定し(試験後水分量率B)、上記同様に、水分減少率を算出し、保水性を評価した。なお、化合物1~38、44~57の各水和物と、それらの水和水の数に対応する濃度の化合物39~42の水溶液で比較評価した。
(実施例40~77、103~116:化合物1~38、44~57中の1水和物と実施例78:化合物39、比較例4:化合物40、比較例7:化合物41及び比較例10:化合物42)
(実施例40~77、103~116:化合物1~38、44~57中の2水和物と実施例79:化合物39、比較例5:化合物40、比較例8:化合物41及び比較例11:化合物42)
(実施例40~77、103~116:化合物1~38、44~57中の3水和物と実施例80:化合物39、比較例6:化合物40、比較例9:化合物41及び比較例12:化合物42)
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
表4~6の結果より、実施例の化合物1~39、44~57は、比較例の化合物40~42よりも水分減少率が小さく、保水性に優れていた。
【0140】
また、カチオン、アニオンの分子構造と保水性との相関は、保水性試験1と同様の傾向であった。
【0141】
保水性試験1(20wt%水溶液)と保水性試験2(水和物)の結果を比較し、化合物の20wt%水溶液と水和物の水分減少率の傾向について評価した。実施例の化合物1~13、15~18、20~34、36、44~57は、保水性試験1の20wt%水溶液の水分減少率より保水性試験2の水和物の水分減少率が小さい傾向を示した。保水性試験1における20wt%水溶液の試験前~試験後の水分率は、水和物の水分率より大きく(例えば、化合物8の20wt%の試験後水分率:19.2%、化合物8の水和物水分率:16.6%)、自由水が揮発し、一方で、保水性試験2では水和水が揮発して水分が減少している。つまり、水和物の化合物は、水和物の水分率以下の範囲では、水和水は揮発性が低く、より減水率は小さく保水性が良好であることが示唆された。しかしながら、クロリドアニオンの化合物14、19、35、37、38は、20wt%水溶液の水分減少率に対して水和物の水分減少率は同じもしくは大きく、上記の傾向を示さなかった。
【0142】
また、水和物の形成の有無による水分減少率の傾向を評価した。同様のアニオンで、それぞれの1,2,3水和物を比較した場合、水和物を形成する化合物1、2、5、8、15、20、23、24、25、26、29、54、55は、水和物を形成しない無水物の化合物39よりも水分減少率が小さく、水和物を形成する化合物が、保水性に優れることを確認した。
【0143】
(4)保水性試験3(表7)
保水性試験3では、化合物8、11、40、41、42の20wt%水溶液を調製し、カールフィッシャー水分計で水分率が20.0wt%であることを確認した後、それらのサンプル1gをスクリュー管に加え蓋をしない状態で、40℃、25%RHに設定した恒温恒湿器中に静置した。24、96、120、144、168、192時間後、水分率をカールフィッシャー水分計で再度測定した。一方で、重量を測定することにより、各時間の(0~24h、24~96h、96~120h、120~144h、144~168h及び168~192h)の水分減少量を算出した。さらに、それぞれの水分減少量(mg)から1時間あたりの水分減少量(mg/h)を算出することで、保水性を評価した。
【0144】
【0145】
【0146】
それらの結果、比較例の化合物40、41は96時間後、化合物42は192時間後に水分率が1%未満となったのに対して、実施例の化合物の8、11は192時間後も15%以上の水分率を示し、水素結合性官能基を有する有機塩の本願化合物の長期保水効果を確認した。
【0147】
化合物8、11の0~144時間後の水分率(化合物8:16.5%、化合物11:16.2%)は、それぞれの水和物の水分率(化合物8:16.6%、化合物11:16.1%)に対してほぼ同等以上であり、自由水が揮発し、144~192時間の間は、水和物の水分率より小さく水和水が揮発している。化合物8、11の自由水が揮発した0~144時間の時間当たりの水分減少量は、0.3mg/hに対して、水和水が揮発した144~192時間の時間当たりの水分減少量は0.2mg/hに減少した。つまり、水和水は揮発性が小さく、水和物の化合物が長期の保水効果に優れていることが示唆された。
【0148】
(5)水分閉塞性試験(表8)
3cm×3cmにカットした5Cの定量ろ紙(東洋濾紙製)に、化合物8、11、20、29、40、41、42の20wt%水溶液を0.01mL/cm2を塗布した。次に、40mLのピアースバイアル瓶(アズワン製)に水を20.0g入れ、ピアースバイアル瓶の内蓋(ゴム栓)をはずして各サンプルを塗布したろ紙をピアースバイアル瓶の上にのせ、外蓋で栓をした。これを40℃25%RHに設定した恒温恒湿器に入れ、24時間静置し、バイアル内の水の重量を測定した。
【0149】
水のみを塗布したろ紙の水分蒸発量W(g)、サンプルを塗布したろ紙での水分蒸発量S(g)とし、それらの保存前のバイアル内の水の重量をm1=20.0g、24時間後のバイアル内の水の重量をm2として、下記式より、水分蒸発抑制率(%)を算出して、水分閉塞性を評価した。水分閉塞性は、数値が高いほど、水分閉塞性に優れることを示す。また、下記式中のWm1、Wm2、Sm1、Sm2はそれぞれ次の数値を表す。
【0150】
Wm1:保存前のバイアル内の水の重量(水のみを塗布したろ紙使用)
Wm2:24時間後のバイアル内の水の重量(水のみを塗布したろ紙使用)
Sm1:保存前のバイアル内の水の重量(サンプルを塗布したろ紙使用)
Sm2:24時間後のバイアル内の水の重量(サンプルを塗布したろ紙使用)
水分蒸発量W(g) =Wm1-Wm2
水分蒸発量S(g) =Sm1-Sm2
水分蒸発抑制率(%)=[(W(g)-S(g))/W(g)]×100
【0151】
表8に水分閉塞性試験結果を示した。
【0152】
【0153】
比較例16~18の水分蒸発抑制率は16.2~29.5%であったのに対して、実施例の化合物は37.4~40.0%の水分蒸発抑制率であり、実施例の化合物が水分閉塞性に優れることが確認された。
【0154】
また、室温で固体の比較例16の化合物40を塗布したろ紙は、試験後に結晶の析出が見られたのに対して、液体の実施例の化合物のろ紙には結晶等の析出は見られず、固体より液体の方が、塗布性、浸透性、乾燥後の外観に優れる結果となった。
【0155】
さらに、実施例の化合物8、11、20、29、比較例の化合物40、41と42を比較すると、比較例の化合物42の方が、水分蒸発抑制率が低く、水分蒸発抑制効果は、不揮発性の塩構造の化合物が望ましいことを確認した。加えて、塩構造を有する実施例の化合物8、11、20、29と比較例の化合物40、41を比較すると実施例の化合物の方が、水分蒸発抑制率が高く、塩構造の中でも、水素結合性官能基を有することで水分蒸発抑制効果をさらに高めることが可能となることを確認した。
【0156】
(6)毛髪保水性、毛髪浸透性試験(表9)
毛髪は、化学的に処理されていない健常な毛髪(株式会社ビューラックス製、人毛黒髪)を用いた。毛髪の水分率は、赤外水分計(ケット科学研究所社製)にて測定した。
【0157】
毛髪0.01g(試験前毛髪重量A)をそれぞれ化合物20、29、42の13.2wt%水溶液(化合物20の水和物の水分量に設定)3.0g及び化合物43(水)3.0gに60分間浸漬した。浸漬後、髪を取り出し、化合物をキムワイプで重量変化がなくなるまで拭き取り、重量を測定した(試験後毛髪重量B)。拭き取った髪を40℃25%RHに設定した恒温恒湿器中に静置した。24時間後の水分率を測定し、保水性試験1と同様の方法で、水分の減少率を算出して、毛髪保水性を評価した。また、毛髪浸透性試験は、下記式を用いて増加率を算出し、毛髪浸透性を評価した。
【0158】
試験前毛髪重量A(g)
試験後毛髪重量B(g)
増加率(%)=[(B(g)-A(g))/A(g)]×100
表9に毛髪保水性、毛髪浸透性試験結果を示した。
【0159】
【0160】
比較例の化合物42、43の水分減少率はそれぞれ、32.2、42、5%であったのに対して、実施例の化合物20は13.8%、化合物29は24.1%の水分減少率であり、実施例の水素結合性官能基を有する有機塩である化合物が毛髪の保水性に優れることを確認された。
【0161】
また、毛髪の増加率は、比較例20の水は増加が見られず、化合物42は1.0%であったのに対して、実施例の化合物20は、増加率が2.9%、化合物29の増加率は2.0%であり、実施例の化合物が、毛髪への浸透性(吸着)に優れることを示した。
【0162】
実施例の化合物20、29を比較すると、カチオンが水素結合性官能基とアルキル基からなる化合物29よりも、カチオンが水素結合性官能基のみで構成された化合物20の方が、毛髪の水分減少率が小さく、さらには毛髪浸透性に優れることから、カチオンの構造は水素結合性官能基のみで構成されることがより好ましい。
【0163】
以上の結果より、本発明の実施例の化合物が、毛髪に対する高い保水性に加えて、優れた浸透性の効果を有していることを確認した。
【0164】
(7)紙保水性試験(表10)
5cm×5cmの5C定量ろ紙(東洋濾紙製)に化合物20、29、42、43の20wt%水溶液を0.2mL塗布した。このろ紙サンプルををそれぞれ化合物20、29、42の13.2wt%水溶液(化合物20の水和物の水分量に設定)3.0g及び化合物43(水)3.0gに60分間浸漬した。浸漬後、髪を取り出し、化合物をキムワイプで重量変化がなくなるまで拭き取り、重量を測定した(試験後毛髪重量B)。拭き取った髪を40℃25%RHに設定した恒温恒湿器中に24時間静置した。24時間後、赤外水分計でろ紙の水分量を測定して水分率を算出し、水分減少率を求めることで紙保水性を評価した。表10に紙保水性試験結果を示した。
【0165】
【0166】
比較例の化合物42、43の水分減少率はそれぞれ、21.0、100.0%であったのに対して、実施例の化合物20は9.5%、化合物29は15.0%の水分減少率であり、実施例の水素結合性官能基を有する有機塩である化合物が紙の保水性に優れることを確認された。
【0167】
実施例の化合物20、29を比較すると、カチオンが水素結合性官能基とアルキル基からなる化合物29よりも、カチオンが水素結合性官能基のみで構成された化合物20の方が、紙の水分減少率が小さいことから、カチオンの構造は水素結合性官能基のみで構成されることがより好ましい。
【0168】
以上の結果より、本発明の実施例の化合物が、紙に対する保水性に優れていることを確認した。
【0169】
(8)揮発性評価
化合物20の0.01、0.1、1質量%の組成物を60℃の真空乾燥機(0.1kPa)に入れ、6時間減圧処理を行った。処理後、サンプルの状態を観察すると液体の化合物が残存していた。つまり、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、不揮発性であるため、有機アンモニウム塩を低濃度含有する組成物を使用した少量の適用であっても、使用された場所に留まり保水・保湿効果を発現する。