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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】粘着剤、粘着シートおよび表示体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20220909BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220909BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220909BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018152376
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020026491
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】藤井 結加
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108316(JP,A)
【文献】特開平08-120227(JP,A)
【文献】特開2003-001703(JP,A)
【文献】特開2001-152101(JP,A)
【文献】特開2015-010197(JP,A)
【文献】特開平5-132655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤であって、
前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性成分(C)および活性エネルギー線の照射に起因して色が消失する染料を含有する粘着性組成物を架橋してなるものであり、
前記染料が、メロシアニン色素であり、
前記粘着性組成物中における前記染料の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.0005質量部以上、0.5質量部以下であり、
前記粘着剤のCIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値について、下記式(1)
(X値)=(a*値)+(b*値) …(1)
から算出されるX値が、1.5以上であり、
前記粘着剤の硬化の前後におけるCIE1976L***表色系により規定される色差ΔE* abが、1.0以上、60以下である
ことを特徴とする粘着剤
【請求項2】
前記粘着剤を硬化した後における前記粘着剤のCIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値について、下記式(2)
(硬化後のX値)=(硬化後のa*値)+(硬化後のb*値) …(2)
から算出される硬化後のX値が、7未満であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤
【請求項3】
前記粘着剤を硬化した後における23℃での貯蔵弾性率が、0.10MPa以上、1.0MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤
【請求項4】
前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率に対する、前記粘着剤を硬化した後における23℃での貯蔵弾性率の比が、1.1以上、10以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤
【請求項5】
前記粘着剤の23℃での貯蔵弾性率が、0.01MPa以上、0.30MPa以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着剤
【請求項6】
前記粘着剤が、活性エネルギー線の照射によりラジカルまたはカチオンを放出する光開始剤を含有し、
前記染料が、前記光開始剤から放出されたラジカルまたはカチオンと反応して分解されることにより色が消失する染料である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤から構成される粘着剤層を備えることを特徴とする粘着シート。
【請求項8】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層と
を備えることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項9】
一の表示体構成部材と、
他の表示体構成部材と、
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材を互いに貼合する粘着剤層と
を備えた表示体であって、
前記粘着剤層が、請求項またはに記載の粘着シートの粘着剤層を硬化したものである
ことを特徴とする表示体。
【請求項10】
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、硬質体であることを特徴とする請求項に記載の表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体構成部材を貼合するのに用いられる接着剤および粘着シート、ならびに表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスマートフォン、タブレット端末等の各種モバイル電子機器は、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用したディスプレイを備えており、かかるディスプレイがタッチパネルとなることも多くなってきている。
【0003】
上記のようなディスプレイにおいては、通常、表示体モジュールの表面側に保護パネルが設けられている。電子機器の薄型化・軽量化に伴い、上記保護パネルは、従来のガラス板からアクリル板やポリカーボネート板等のプラスチック板に変更されるようになってきている。
【0004】
ここで、保護パネルと表示体モジュールとの間には、外力により保護パネルが変形したときにも、変形した保護パネルが表示体モジュールにぶつからないように、空隙が設けられている。
【0005】
しかしながら、上記のような空隙、すなわち空気層が存在すると、保護パネルと空気層との屈折率差、および空気層と表示体モジュールとの屈折率差に起因する光の反射損失が大きく、ディスプレイの画質が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、保護パネルと表示体モジュールとの間の空隙を粘着剤層で埋めることにより、ディスプレイの画質を向上させることが提案されている。例えば、特許文献1には、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含んでなる紫外線架橋性粘着シートを使用して、保護パネルと表示体モジュールとの間の空隙を埋めることが開示されている。特に、特許文献1には、上記粘着シートの粘着剤層の両面に、保護パネルおよび表示体モジュールをそれぞれ積層した後に、当該粘着剤層に対して紫外線を照射して硬化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-184582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、粘着剤層を、2つの被着体の間に配置した状態で硬化させた場合、粘着剤層の硬化の状態を、製品状態を保ったまま後から確認する方法がなかった。そのため、紫外線の照射が不十分または不均一であったり、紫外線を照射し忘れていた場合、粘着剤層の硬化不良を見落としてしまうといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、活性エネルギー線の照射による硬化を容易に確認することが可能な接着剤および粘着シート、ならびに当該接着剤または当該粘着シートを使用して得られる表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、活性エネルギー線硬化性を有する接着剤であって、前記接着剤のCIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値について、下記式(1)
(X値)=(a*値)+(b*値) …(1)
から算出されるX値が、1.5以上であり、前記接着剤の硬化の前後におけるCIE1976L***表色系により規定される色差ΔE* abが、1.0以上、60以下であることを特徴とする接着剤を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)における接着剤は、CIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値から算出されるX値が上記範囲であるとともに、硬化の前後におけるCIE1976L***表色系により規定される色差ΔE abが上記範囲であることにより、硬化に伴って色が消失するものとなる。そのため、上記接着剤では、活性エネルギー線を照射することで硬化したことを、接着剤の色の変化に基づいて、目視により容易に判定することが可能となる。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記接着剤を硬化した後における前記接着剤のCIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値について、下記式(2)
(硬化後のX値)=(硬化後のa*値)+(硬化後のb*値) …(2)
から算出される硬化後のX値が、7未満であることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)において、前記接着剤を硬化した後における23℃での貯蔵弾性率が、0.10MPa以上、1.0MPa以下であることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1~3)において、前記接着剤の23℃における貯蔵弾性率に対する、前記接着剤を硬化した後における23℃での貯蔵弾性率の比が、1.1以上、10以下であることが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1~4)において、前記接着剤の23℃での貯蔵弾性率が、0.01MPa以上、0.30MPa以下であることが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1~5)において、前記接着剤が、活性エネルギー線の照射に起因して色が消失する染料を含有することが好ましい(発明6)。
【0017】
上記発明(発明6)において、前記接着剤が、活性エネルギー線の照射によりラジカルまたはカチオンを放出する光開始剤を含有し、前記染料が、前記光開始剤から放出されたラジカルまたはカチオンと反応して分解されることにより色が消失する染料であることが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明6,7)において、前記染料が、ポリメチン系染料であることが好ましい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明1~8)において、前記接着剤が、感圧接着性を有することが好ましい(発明9)。
【0020】
上記発明(発明9)において、前記接着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、架橋剤(B)および活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有する粘着性組成物を架橋してなるものであることが好ましい(発明10)。
【0021】
第2に本発明は、前記接着剤(発明9,10)から構成される粘着剤層を備えることを特徴とする粘着シートを提供する(発明11)。
【0022】
上記発明(発明11)においては、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層とを備えることが好ましい(発明12)。
【0023】
第3に本発明は、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材と、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材を互いに貼合する粘着剤層とを備えた表示体であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明11,12)の粘着剤層を硬化したものであることを特徴とする表示体を提供する(発明13)。
【0024】
上記発明(発明13)において、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、硬質体であることが好ましい(発明14)。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る接着剤および粘着シートは、活性エネルギー線の照射による硬化を容易に確認することが可能である。そして、当該粘着シートを用いて製造される本発明に係る表示体は、粘着剤層の硬化不良が抑制されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔接着剤〕
本発明の一実施形態は、接着剤に関する。本実施形態に係る接着剤は、狭義の接着剤とともに、感圧接着性を有する接着剤(すなわち感圧接着剤または粘着剤)(以下、「粘着剤」という場合がある。)をも含む概念とする。狭義の接着剤とは一般的に、硬化前において液体または所定の流動性を有する状態であるのに対し、硬化によって固体または所定の形状を維持する状態に変化し、これにより被着体に対する密着性を発揮するものをいう。一方、粘着剤とは一般的に、当初より所定の弾性を有するとともに、表面にタックが生じているものであり、被着体に対して押し当てられることによって、当該被着体に対する密着性を発揮するものをいう。特に、本実施形態に係る粘着剤は、硬化の前後において被着体に対する上述した密着性を維持するものであってもよく、または、硬化の前後において上述した密着性が変化するものであってもよい。
【0028】
本実施形態に係る接着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するものである。すなわち、本実施形態に係る接着剤は、活性エネルギー線を照射することにより硬化することができる。本明細書では、特別な説明なく単に「硬化」という表現を使用した場合、活性エネルギー線の照射による硬化をいうものとする。なお、本実施形態に係る接着剤が粘着剤である場合、当該粘着剤は、後述するように所定の粘着性組成物を架橋してなるものであってもよいが、この場合における「架橋」は上記「硬化」に含まれないものとする。
【0029】
1.接着剤の物性
(1)CIE1976L***表色系に関する物性
本実施形態に係る接着剤では、CIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値について、下記式(1)
(X値)=(a*値)+(b*値) …(1)
から算出されるX値が、1.5以上である。これにより、本実施形態に係る接着剤は、硬化前において所定の色を有するものとなり、当該接着剤が硬化していない状態であることを容易に確認することが可能となる。
【0030】
このような観点から、上記X値は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、X値の上限は特に制約されないが、硬化後に着色が残り難いという観点から、1000以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが特に好ましい。
【0031】
また、X値を上記の範囲に調整しやすくする観点から、本実施形態に係る接着剤のCIE1976L***表色系により規定されるa*値の絶対値は、0.1以上であることが好ましく、特に0.5以上であることが好ましく、さらには1.0以上であることが好ましい。また、当該a*値の絶対値は、15以下であることが好ましく、特に5以下であることが好ましく、さらには3以下であることが好ましい。
【0032】
また、上記と同様の観点から、本実施形態に係る接着剤のCIE1976L***表色系により規定されるb*値の絶対値は、1.0以上であることが好ましく、特に1.5以上であることが好ましく、さらには2.3以上であることが好ましい。また、当該b*値の絶対値は、28以下であることが好ましく、特に9以下であることが好ましく、さらには6以下であることが好ましい。
【0033】
一方、本実施形態に係る接着剤のCIE1976L***表色系により規定されるL*値は何ら制約されない。しかしながら、活性エネルギー線の照射前のL*値が大きい場合、接着剤中での活性エネルギー線の損失を低減し易いものとなり、これにより、活性エネルギー線照射により効果的にa*値およびb*値の少なくとも一方を変化させ易くすることができる。この観点から、L*値は、10以上であることが好ましく、特に60以上であることが好ましく、さらには90以上であることが好ましい。また、当該L*値の上限は特に制約されず、例えば100以下であることが好ましく、特に99以下であることが好ましく、さらには98以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る接着剤では、硬化の前後におけるCIE1976L***表色系により規定される色差ΔE* abが、1.0以上である。これにより、本実施形態に係る接着剤では、硬化の前後において、明確に色が変化するものとなる。特に、硬化前の接着剤が有している色が硬化に伴って消失し、これにより、接着剤が硬化の状態を、色の変化に基づいて容易に目視確認することが可能となる。そのため、本実施形態に係る接着剤によって被着体同士を貼合する場合のように、硬化後の接着剤を取り出して各種分析を行うことが困難な場合であっても、当該接着剤の硬化を確認することが可能となる。そして、このように目視により容易に硬化の状態を確認することが可能となることにより、本実施形態に係る接着剤を用いて製造される製品において、接着剤の硬化不良の発生を抑制することができ、所望の性能の製品を製造することが可能となる。
【0035】
一方、上記色差ΔE* abが1.0未満であると、硬化前後における接着剤の色の変化が殆ど生じず、そのため、接着剤の硬化の状態の目視確認ができないものとなる。また、接着剤が硬化後においても着色された状態となり、表示体といった色再現性が求められる用途への使用に適さないものとなる。このような観点から、本実施形態に係る接着剤では、上述した色差ΔE* abが、1.2以上であることが好ましく、特に1.5以上であることが好ましい。なお、上述した色差ΔE* abの上限値については、特に限定されず、例えば60以下であり、特に30以下であることが好ましく、さらには10以下であることが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る接着剤では、当該接着剤を用いて表示体を製造した場合に、当該表示体が視認者に違和感を与え難いという観点から、硬化した後における接着剤のCIE1976L***表色系により規定されるa*値およびb*値について、下記式(2)
(硬化後のX値)=(硬化後のa*値)+(硬化後のb*値) …(2)
から算出される硬化後のX値が、7未満であることが好ましく、3未満であることがより好ましく、1.5未満であることが特に好ましい。一方、硬化した後におけるX値の下限値は、特に制約されず0であってもよい。
【0037】
本実施形態に係る接着剤では、上記硬化後のX値を満たし易くする観点から、硬化した後における、CIE1976L***表色系により規定されるa*値の絶対値が、1.7未満であることが好ましく、特に1.1未満であることが好ましく、さらには0.8未満であることが好ましい。また、当該a*値の絶対値の下限値は、特に制限されず0であってもよい。
【0038】
また、本実施形態に係る接着剤では、上記と同様の観点から、硬化した後における、CIE1976L***表色系により規定されるb*値の絶対値が、2.0未満であることが好ましく、特に1.3未満であることが好ましく、さらには1.0未満であることが好ましい。また、当該b*値の絶対値の下限値は、特に制限されず0であってもよい。
【0039】
また、本実施形態に係る接着剤では、硬化前のX値から硬化後のX値を減じて得られる差の値が、硬化の目視判断をより容易にする観点から、1以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、上記差の上限は、特に制約されないが、1000未満程度であることが好ましく、100未満であることがより好ましく、50未満であることが特に好ましい。
【0040】
本実施形態に係る接着剤では、硬化した後におけるCIE1976L***表色系により規定されるL*値は特に制約されず、活性エネルギー線の照射による接着剤の硬化に悪影響を与えない程度であればよい。しかしながら、接着剤の硬化後においてL*値が過度に小さい場合には、活性エネルギー線が接着剤内を透過し難いものとなり、その結果、接着剤の硬化が不十分となる場合もある。このような問題を回避し易い観点から、硬化後におけるL*値は、10以上であることが好ましく、特に60以上であることが好ましく、さらには90以上であることが好ましい。また、当該L*値は、100以下であることが好ましく、特に99以下であることが好ましく、さらには98以下であることが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る接着剤では、硬化した後において、CIE1976L***表色系により規定されるa*値、b*値、X値およびL*値がそれぞれ上述した範囲を満たすことにより、硬化の前後におけるCIE1976L***表色系により規定される色差ΔE* abが上述した範囲を満たし易いものとなる。また、硬化後における接着剤の着色がなく、かつ、高い透明性を有し易いものとなり、表示体といった色再現性が求められる用途への使用に適したものとなる。
【0042】
なお、以上のCIE1976L***表色系により規定される各数値および色差ΔE* abの測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。特に、当該測定方法において、接着剤の硬化は、接着剤に対して光量2000mJ/cmの紫外線を照射することで行ったものとする。
【0043】
(2)貯蔵弾性率
本実施形態に係る接着剤では、硬化した後における23℃での貯蔵弾性率が、0.10MPa以上であることが好ましく、特に0.13MPa以上であることが好ましく、さらには0.17MPa以上であることが好ましい。硬化した後における23℃での貯蔵弾性率が0.10MPa以上であることにより、本実施形態に係る接着剤では、硬化後において、被着体との界面における膜強度が比較的高いものとなる。このため、硬化後の接着剤からなる層と被着体との積層体を高温高湿条件下に置き、当該被着体からアウトガスが発生する状態となった場合であっても、被着体と硬化後の接着剤との界面における気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生を効果的に抑制することができる(すなわち、優れた耐ブリスター性を発揮するものとなる)。一方、上記貯蔵弾性率の上限値については、1.0MPa以下であることが好ましく、特に0.8MPa以下であることが好ましく、さらには0.5MPa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の上限値が1.0MPa以下であることで、本実施形態に係る接着剤が硬化後においても所定の柔軟性を有するものとなり、硬化後の接着剤と被着体との間における意図しない剥がれを抑制し易いものとなる。
【0044】
本実施形態に係る接着剤では、23℃における貯蔵弾性率に対する、硬化した後における23℃での貯蔵弾性率の比が1.1以上であることが好ましく、特に1.5以上であることが好ましく、さらには1.8以上であることが好ましい。上記比が1.1以上であることにより、本実施形態に係る接着剤は硬化に伴って、貯蔵弾性率が良好に向上するものとなり、所望の性能を良好に発揮し易いものとなる。例えば、本実施形態に係る接着剤を、表面に段差を有する被着体に使用する場合には、硬化前の接着剤を当該段差に対して良好に追従させ、その状態で当該接着剤を硬化させることにより、当該段差付近における空隙の発生を抑制することが容易となる(すなわち、優れた段差追従性を発揮し易いものとなる)。なお、上述した貯蔵弾性率の比の上限値については特に限定されず、10以下であることが好ましく、特に8以下であることが好ましく、さらには5以下であることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る接着剤が粘着剤である場合、当該粘着剤の硬化前における23℃での貯蔵弾性率は、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.03MPa以上であることが好ましく、さらには0.05MPa以上であることが好ましい。また、上記貯蔵弾性率は、0.30MPa以下であることが好ましく、0.20MPa以下であることがより好ましく、特に0.15MPa以下であることが好ましく、さらには0.12MPa以下であることが好ましい。硬化前における23℃での貯蔵弾性率が上記範囲であることで、上述した貯蔵弾性率の比の範囲を満たし易いものとなる。
【0046】
なお、上述した貯蔵弾性率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0047】
(3)ゲル分率
本実施形態に係る接着剤では、硬化後におけるゲル分率が、50%以上であることが好ましく、特に60%以上であることが好ましく、さらには70%以上であることが好ましい。硬化後におけるゲル分率が50%以上であることにより、硬化に伴って接着剤の凝集力が良好に向上し、前述した段差追従性がより優れたものとなる。また、本実施形態に係る接着剤では、硬化後におけるゲル分率が、95%以下であることが好ましく、特に90%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。硬化後におけるゲル分率が95%以下であることにより、硬化後における接着剤が所定の柔軟性を有し易いものとなり、被着体と硬化後の接着剤との界面における意図しない剥がれを効果的に抑制することが可能となる。
【0048】
ここで、本明細書において「硬化後」とは、さらに活性エネルギー線を照射してもゲル分率の上昇が見られなくなった状態をいう。具体的には、例えば、活性エネルギー線照射量をさらに1000mJ/cm多く照射してもゲル分率の増減幅が3ポイント以下に収まるようになった状態をいう。
【0049】
なお、接着剤が硬化後の状態となっていない場合、接着剤中に未硬化の硬化成分が残存することとなる。このような状態であると、接着剤の高次構造が不十分となったり、未硬化の硬化成分が流動する関係上、耐久性や耐ブリスター性は悪いものとなる。
【0050】
また、本実施形態に係る接着剤が粘着剤である場合、当該粘着剤の硬化前におけるゲル分率は、20%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには40%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、80%以下であることが好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには60%以下であることが好ましい。硬化前におけるゲル分率が上記範囲であることで、被着体に存在する段差に対して、本実施形態に係る接着剤を良好に追従させることが容易となり、前述した段差追従性がより優れたものとなる。
【0051】
また、本実施形態にかかる接着剤が粘着剤である場合、硬化後のゲル分率から硬化前のゲル分率を差し引いた値が、5ポイント以上であることが好ましく、12ポイント以上であることがより好ましく、15ポイント以上であることが特に好ましい。上記値が5ポイント以上であることにより、本実施形態にかかる接着剤は、耐久環境下での優れた段差追従性や優れた耐ブリスター性を有し易くなる。一方、硬化後のゲル分率から硬化前のゲル分率を差し引いた値の上限値は特に制約されないが、45ポイント以下であることが好ましく、35ポイント以下であることがより好ましく、30ポイント以下であることが特に好ましい。
【0052】
なお、上述したゲル分率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0053】
2.接着剤の組成
本実施形態に係る接着剤の組成は、当該接着剤が活性エネルギー線硬化性を示すことができるとともに、CIE1976L***表色系により規定されるX値、および硬化の前後におけるCIE1976L***表色系により規定される色差ΔE* abが、それぞれ前述した範囲となるものである限り、特に限定されない。本実施形態に係る接着剤は、CIE1976L***表色系に関する上述した物性を満たし易いという観点から、活性エネルギー線の照射に起因して色が消失する染料を含有することが好ましい。
【0054】
(1)染料
上述した染料は、活性エネルギー線の照射に起因して構造が変化することで、その色が消失するものであってもよく、または活性エネルギー線の照射に起因して分解することで、その色が消失するものであってもよい。
【0055】
また、上記染料は、それ自身が活性エネルギー線を吸収して励起し、上述した構造の変化や分解を生じるものであってもよい。あるいは、上記染料は、それ自身が活性エネルギー線を吸収しないものであって、活性エネルギー線を吸収して励起した他の成分との相互作用によって、上述した構造の変化や分解を生じるものであってもよい。後者の染料の例としては、他の成分から放出されたラジカルまたはカチオンとの反応により分解する染料が好ましく挙げられる。なお、当該染料を使用する場合には、本実施形態に係る接着剤は、活性エネルギー線の照射に起因してラジカルまたはカチオンを発生する成分をさらに含有することが好ましく、当該成分の例としては、後述する光開始剤が挙げられる。
【0056】
本実施形態における染料の好ましい例としては、ポリメチン系染料が挙げられる。ポリメチン系染料は、上述したように、ラジカルまたはカチオンとの反応により分解し、その色を消失することができる。ポリメチン系染料の例としては、メロシアニン色素、シアニン色素、メチン色素等が挙げられ、これらの中でも、CIE1976L***表色系に関する上述した物性を満たし易いという観点から、メロシアニン色素を使用することが好ましい。
【0057】
上記メロシアニン色素の例としては、2-[4-(1,3-ジブチルテトラヒドロ-2,4,6-トリオキソ-5(2H)-ピリミジニリデン)-2-ブテニリデン]-3(2H)-ベンゾオキサゾールプロパンスルホン酸ナトリウム、2-[4-(1,3ジブチルテトラヒドロ-4,6-ジオキソ-2-チオキソ-5(2H)-ピリミジニリデン)-2-ブテニリデン]-3(2H)-ベンゾオキサゾールプロパンスルホン酸ナトリウム、3-エチル-5-[1-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾセレナゾリリデン)メチル]プロピリデン]-2-チオキソ-4-オキサゾリノン4-[4-(3-エチル-4-オキソ-2-チオキソ-5-オキサゾリジニリデン)-2-ブテニリデン]-1(4H)-キノリンプロパンスルホン酸ナトリウム2-[6-(3-エチル-2-ベンゾチアゾリニデン)-2,4-ヘキサジエニリデン]ベンゾ[b]チオフェン-3(2H)-オン等が挙げられる。
【0058】
上記シアニン系色素の例としては、3,3’-ジカルボキシメチル-2,2’-チアシアニン、3,3’-ジエチル-2,2’-チアゾリノカルボシアニン、3,3’-ジエチル-2,2’-チアシアニン、3,3’-ジエチル-2,2’-チアオキサカルボシアニン、1,1’,3,3’-テトラエチル-5,5’,6,6’-テトラクロロ-2,2’-ベンズイミダゾールカルボシアニン、3,3’-ジエチル-9-メチル-2,2’-セレナカルボシアニン、3,3’-ジエチル-2,2’-オキサカルボシアニン、1,3’-ジエチル-2,2’-キニチアシアニン、1,3’-ジエチル-4,2’-キニチアシアニン、1,1’-ジエチル-2,2’-キノシアニン、1,1’-ジエチル-2,2’-キノカルボシアニン、1-カルボキシメチル-1’-カルボキシエチル-2,2’-キノシアニン等が挙げられる。
【0059】
上記メチン系色素としては、2[P-[(2-クロロエチル)メチルアミノ]スチリル]-1,3,3-トリメチル-3H-塩化インドリウム、2[[(4-メトキシフェニル)メチルヒドラゾノ]メチル]-1,3,3-トリメチル-3H-メチル硫酸インドリウム、2-[2-[4-[(2,シアノエチル)メチルアミノ]フェニル]エテニル]1,3,3-トリメチル-3H-塩化インドリウム等が挙げられる。
【0060】
上述した染料は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(2)光開始剤
本実施形態に係る接着剤がラジカルまたはカチオンとの反応により分解する染料を含有する場合、当該接着剤は、活性エネルギー線の照射に起因してラジカルまたはカチオンを発生する光開始剤を含有することが好ましい。また、本実施形態に係る接着剤が、後述する活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤である場合には、当該粘着性組成物が光開始剤を含有することで、活性エネルギー線硬化性成分(C)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0062】
本実施形態における光開始剤としては、活性エネルギー線の照射に起因してラジカルまたはカチオンを発生することができる限り特に限定されないものの、活性エネルギー線のなかでも紫外線によりラジカルやカチオンを発生するものであることが好ましい。紫外線は、赤外線や可視光線などに比べ、エネルギーが大きいため、照射されないときは安定状態を保ち易く、照射されたときは効率的に反応を行うことができるためである。
【0063】
上記光開始剤の例としては、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの光開始剤の中でも、活性エネルギー線の照射に起因してラジカルまたはカチオンを効果的に放出し易いという観点から、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドおよびベンゾフェノンの少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0064】
(3)その他の成分
本実施形態に係る接着剤中における、上述した染料や光開始剤以外の成分としては、一般的な接着剤が含有する成分と同様のものが挙げられる。特に、本実施形態に係る接着剤は、所望の接着性を発揮するのに必要な成分を含有することが好ましい。
【0065】
例えば、本実施形態に係る接着剤が、前述したような狭義の接着剤である場合、当該接着剤は、活性エネルギー線硬化性を有する成分を含有することが好ましく、当該成分としては、後述する活性エネルギー線硬化性成分(C)と同様のものを使用することができる。また、本実施形態に係る接着剤が狭義の接着剤である場合、当該接着剤は、造膜性の観点から所定のポリマー成分をさらに含有してもよい。
【0066】
また、本実施形態に係る接着剤が粘着剤である場合、当該粘着剤は、一般的な粘着剤と同様の成分を有するものであってもよい。例えば、本実施形態に係る粘着剤は、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤およびシリコーン系粘着剤のいずれかであってもよい。これらの中でも、本実施形態に係る接着剤としての粘着剤は、粘着物性、光学特性等に優れるアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る接着剤がアクリル系粘着剤である場合、当該粘着剤は、所定の粘着性組成物から形成されるものであることが好ましく、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、架橋剤(B)および活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有する粘着性組成物を架橋してなるものであることが好ましい。なお、前述した染料や光開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、架橋剤(B)および活性エネルギー線硬化性成分(C)とともに、上記粘着性組成物中に含有されていることが好ましい。
【0068】
以下では、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、架橋剤(B)および活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有する粘着性組成物の組成について説明する。
【0069】
(3-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0070】
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れ、被着体への悪影響の少ない水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーの少なくとも一方が特に好ましい。
【0071】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシ基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として3質量%以上含有することが好ましく、特に8質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として35質量%以下含有することが好ましく、特に30質量%以下含有することが好ましく、さらには25質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、所望の凝集力が得られるとともに、硬化前のゲル分率及び硬化前の貯蔵弾性率を前述した範囲に調整し易いものとなる。また、反応性基含有モノマーが水酸基含有モノマーの場合には、含有量が15質量%以上であると、粘着剤中に所定量の水酸基が残存することとなる。水酸基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分との相溶性が良く、その結果、常温常湿に戻したときの粘着剤の白化が抑制されることとなる(耐湿熱白化性に優れる)。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
【0076】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するとともに、当該アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。このようなアルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が3~8のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、特にアクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を使用することが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、特に50質量%以上含有することが好ましく、さらには55質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを99質量%以下含有することが好ましく、95質量%以下含有することがより好ましく、特に90質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するとともに、当該アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用する場合、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を上記範囲とすることは、硬化前の貯蔵弾性率を前述した範囲に調節し易いという観点からも好ましい。
【0078】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。これにより、粘着剤は、段差追従性に優れたものとなる。
【0079】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の相互間の距離を適切にし、粘着剤により高い応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0080】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた段差追従性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の段差追従性がより優れたものとなる。
【0082】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ガラスのようなある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
【0083】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには3質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有することが好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、ガラスに対する優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、高温高湿条件下での段差追従性に優れた粘着剤が得られ易い。
【0087】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、高温高湿条件下での段差追従性に優れた粘着剤が得られ易い。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0089】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として20万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。
【0090】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには100万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記範囲にあることにより、硬化前の貯蔵弾性率を前述した範囲に調節し易くなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0091】
なお、上記粘着性組成物において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
(3-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、粘着性組成物を加熱した際に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、これによって、得られる粘着剤中に良好な三次元網目構造を形成することを可能とする。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、硬化前のゲル分率および硬化前の貯蔵弾性率を前述した範囲に調節し易くなる。
【0093】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基がカルボキシ基の場合、カルボキシ基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、およびそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートの少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0095】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0096】
粘着性組成物中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤の硬化前のゲル分率および貯蔵弾性率を、前述した範囲に調整し易くなる。
【0097】
(3-3)活性エネルギー線硬化性成分(C)
上記粘着性組成物が活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有することにより、上記粘着性組成物を架橋(熱架橋)して得られる粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するものとなる。当該粘着剤では、被着体貼付後の活性エネルギー線照射による硬化により、活性エネルギー線硬化性成分(C)が互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性成分(C)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。かかる高次構造を形成することで、粘着剤における活性エネルギー線照射後のゲル分率を上述した範囲に調節し易くし、また、活性エネルギー線照射後の23℃における貯蔵弾性率を上述した範囲に調節し易くなる。
【0098】
活性エネルギー線硬化性成分(C)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)等との相溶性に優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0099】
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。上記の中でも、得られる粘着剤の耐ブリスター性および高温高湿条件下での段差追従性の観点から、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーが好ましく、3官能以上、かつ、分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーがより好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0100】
粘着性組成物中における活性エネルギー線硬化性成分(C)の含有量は、硬化後の貯蔵弾性率および貯蔵弾性率の硬化前後の比を前述の範囲に調節し易くする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが特に好ましく、7質量部以上であることがさらに好ましい。また、上限値として50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0101】
(3-4)粘着性組成物中のその他の成分
上述した粘着性組成物には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、屈折率調整剤、防錆剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物を構成する添加剤に含まれないものとする。
【0102】
上述した粘着性組成物は、上記の中でもシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、被着体がプラスチック板であっても、ガラス部材であっても、当該被着体との密着性が向上し、高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。
【0103】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0104】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
粘着性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。
【0106】
(3-5)粘着性組成物中における染料および光開始剤の含有量
前述した染料および光開始剤は、上述した粘着性組成物に含有されていることが好ましい。この場合、粘着性組成物中における染料の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.0005質量部以上であることが好ましく、特に0.001質量部以上であることが好ましく、さらには0.002質量部以上であることが好ましい。染料の含有量が0.0005質量部以上であることで、前述した式(1)から算出されるX値を前述した範囲に調整し易いものとなる。また、当該含有量は、2質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。染料の含有量が2質量部以下であることで、色差ΔE* abを前述した範囲に調整し易いものとなる。
【0107】
また、粘着性組成物中における光開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(C)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に5質量部以上であることが好ましく、さらには10質量部以上であることが好ましい。光開始剤の含有量が1質量部以上であることで、色差ΔE* abを前述した範囲に調整し易いものとなるとともに、粘着剤を効果的に硬化させ易くなる。また、当該含有量は、40質量部以下であることが好ましく、特に30質量部以下であることが好ましく、さらには20質量部以下であることが好ましい。光開始剤の含有量が40質量部以下であることで、活性エネルギー線の照射後に残存する光開始剤量を少ないものとしやすい。これにより、活性エネルギー線照射後の接着剤あるいは粘着剤が劣化しにくいものとなる。
【0108】
(3-6)粘着性組成物の調製
上述した粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)と、所望により染料と、光開始剤と、その他の添加剤とを混合することで製造することができる。
【0109】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0110】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0111】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0112】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0113】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性成分(C)、所望により染料、光開始剤、その他の添加剤、ならびに所望により希釈溶剤および添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0114】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0115】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0116】
(3-7)粘着剤の形成
上述した粘着性組成物を架橋することで、本実施形態に係る粘着剤を形成することができる。粘着性組成物の架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物の塗布層から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0117】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0118】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0119】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。このようにして得られる粘着剤は、高温高湿条件下での段差追従性に優れたものとなる。
【0120】
3.接着剤の使用方法
本実施形態に係る接着剤は、一般的な接着剤と同様に使用することができる。しかしながら、本実施形態に係る接着剤は、2つの被着体同士の貼合に使用することが好適である。このような使用方法では、硬化後の接着剤が2つの被着体の間に位置することとなる。従来、このようにして得られた製品では、その状態を保ったまま接着剤の硬化の状態を確認することが不可能であった。しかしながら、本実施形態に係る接着剤は、硬化に伴って色が消失するものであるため、2つの被着体の間に積層された状態のまま、接着剤の硬化の程度を、目視によって容易に判断することができる。すなわち、本実施形態に係る接着剤は、製品状態を保ったまま接着剤の硬化の状態を確認するという従来不可能であった確認方法を実現することができる。
【0121】
本実施形態に係る接着剤が前述した狭義の接着剤である場合における使用方法の一例としては、一の被着体と、上記接着剤と、他の被着体とを積層した後、これらの被着体の少なくとも一方越しに、接着剤に対して活性エネルギー線を照射する。これにより、接着剤を硬化させ、被着体同士を接着させることができる。
【0122】
また、本実施形態に係る接着剤が粘着剤である場合における使用方法の一例としては、一の被着体と、上記粘着剤と、他の被着体とを積層することで、被着体同士を密着させた後、これらの被着体の少なくとも一方越しに、粘着剤に対して活性エネルギー線を照射することで、上記粘着剤を硬化する。当該硬化により粘着剤の凝集力が高まり、耐ブリスター性や段差追従性等の所望の効果が発生または向上する。
【0123】
上記被着体の例としては、一般的に、接着剤を介して貼合されるものである限り、特に限定されない。上記被着体は、接着剤の目視による確認を容易にするために、可視光に対する透過性を有するものであることが好ましい。また、上記被着体は、接着剤の硬化を良好に進行させる観点から、硬化のために使用される活性エネルギー線に対する透過性を有するものであることが好ましい。本実施形態に係る接着剤に好適な被着体の例としては、後述するような表示体を構成する構成部材が挙げられる。
【0124】
本実施形態に係る接着剤を硬化させるための活性エネルギー線としては、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものが好ましく、例えば赤外線、可視光線、紫外線、電子線等いずれの波長のものであってもよい。特に、照射前の状態において接着剤の安定性を保ち易いとともに、照射により効率的に接着剤を硬化させやすいという観点から、紫外線や電子線が好ましく、中でも、面照射を効率よく行うことが可能であるとともに、取扱いが容易な紫外線が好ましい。
【0125】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cmであることが好ましく、500~5000mJ/cmであることがより好ましく、1000~3000mJ/cmであることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0126】
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、前述した粘着剤から構成される粘着剤層を備えるものである。図1には、本実施形態に係る粘着シートの一例の構成が示される。図1に示すように、粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0127】
1.粘着シートの構成
(1)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層11は、前述した粘着剤から構成されたものであり、特に、前述した粘着性組成物を架橋してなる粘着剤から構成されたものであることが好ましい。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0128】
本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層11が前述した粘着剤から構成されたものであることにより、硬化に伴って粘着剤層11の色が消失するものとなる。このため、本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11を被着体に積層した後に、当該粘着剤層11を硬化する場合において、粘着剤層11が十分に硬化したどうかをその色に基づいて容易に目視判断することが可能となる。
【0129】
本実施形態における粘着剤層11の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さが10μm以上であることで、硬化前の粘着剤層11の色を確認し易くなり、硬化に伴う粘着剤層11の色の変化を判断し易くなる。また、段差追従性がより優れたものとなるとともに、所望の粘着力を発揮し易くもなる。一方、粘着剤層11の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには300μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さが1000μm以下であることで、硬化後の粘着剤層11が優れた透明性を有し易くなるとともに、粘着剤層11を効率的に硬化させ易くなる。
【0130】
(2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0131】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0132】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0133】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0134】
2.粘着シートの物性
本実施形態に係る粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として1N/25mm以上であることが好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには30N/25mm以上であることが好ましい。粘着力の下限値が上記であると、耐ブリスター性がより優れたものとなる。また、本実施形態に係る粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、上限値として100N/25mm以下であることが好ましく、特に80N/25mm以下であることが好ましく、さらには50N/25mm以下であることが好ましい。粘着力の上限値が上記であると、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合、表示体構成部材、特に高価な表示体構成部材の再利用が可能となる。なお、上記粘着力は、基本的にJIS Z0237:2009に準じて測定されたものであり、その測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0135】
3.粘着シートの製造
本実施形態に係る粘着シート1は、前述した粘着剤を用いて粘着剤層11を形成することができる限り、特に限定されない。粘着シート1の製造方法の一例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、前述した粘着性組成物の塗布溶液を塗布し、必要に応じて加熱処理を行って熱架橋させて、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0136】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物の塗布溶液を塗布し、必要に応じて加熱処理を行って熱架橋させて、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物の塗布溶液を塗布し、必要に応じて加熱処理を行って熱架橋させて、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。ここで、塗布層付きの剥離シートを複数作製し、その塗布層を所望の数だけ貼合してもよい。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0137】
上記粘着性組成物の塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0138】
4.粘着シートの使用方法
本実施形態に係る粘着シート1は、一般的な粘着シートと同様に使用することができる。しかしながら、本実施形態に係る粘着シート1は、2つの被着体同士の貼合に使用することが好適である。例えば、一の被着体と、粘着シート1における粘着剤層11と、他の被着体とを積層することで、被着体同士を密着させた後、これらの被着体の少なくとも一方越しに、粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射することで、上記粘着剤層11を硬化する。なお、当該活性エネルギー線の好ましい種類および照射の好ましい条件としては前述した通りである。
【0139】
本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層11が硬化に伴って色が消失するものであるため、2つの被着体の間に位置する粘着剤層11の硬化の程度を、目視によって容易に判断することができる。上記被着体としては、本実施形態に係る接着剤の使用に好適な被着体として前述したものを使用することができる。
【0140】
〔表示体〕
本実施形態に係る表示体は、図2に示されるように、第1の表示体構成部材21(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材22(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する粘着剤層11’とを備えて構成される。本実施形態に係る表示体2では、第1の表示体構成部材21は、粘着剤層11’側の面に印刷層3などの段差を有していてもよい。
【0141】
上記表示体2における粘着剤層11’は、前述した粘着シート1の粘着剤層11を活性エネルギー線照射により硬化したものである。
【0142】
表示体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。また、表示体2としては、それらの一部を構成する部材であってもよい。
【0143】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における粘着剤層11’側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0144】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~5mmであり、好ましくは0.2~2mmである。
【0145】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmである。
【0146】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0147】
第2の表示体構成部材22は、第1の表示体構成部材21に貼付されるべき光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。
【0148】
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
【0149】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さの下限値は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、7μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。下限値が上記以上であることにより、電気配線を視認者側から見えなくする等の隠蔽性を十分に確保することができる。また、上限値は、50μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが特に好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。上限値が上記以下であることにより、当該印刷層3に対する粘着剤層11の段差追従性の悪化を防止することができる。
【0150】
また、本実施形態に係る表示体2では、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の少なくとも一方が硬質体であることが好ましい。なお、本明細書における「硬質体」とは、ロール状に巻回できない、いわゆる、しならない状態の物品をいうものとする。また、第1の表示体構成部材21が積層体であり、一部にしなるような部材が含まれる場合であっても、粘着剤層11と貼合される段階において、当該積層体全体として硬質体である場合には、第1の表示体構成部材21は硬質体に該当するものとする。また、第2の表示体構成部材22が積層体である場合も同様である。
【0151】
上記表示体2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。このとき、粘着剤層11は、硬化前の状態であるため、印刷層3による段差に良好に追従することができ、当該段差近傍に隙間や浮きが生じることが抑制される。
【0152】
次いで、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合して積層体を得る。また、他の例として、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0153】
上記積層体を得た後、当該積層体中の粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射する。これにより、粘着剤層11が硬化して、硬化後の粘着剤層11’を備える表示体2が得られる。本実施形態に係る表示体2では、製造に用いられる粘着剤層11が、硬化に伴って色が消失するものであるため、その硬化の程度を、第1の表示体構成部材21または第2の表示体構成部材22越しに目視にて容易に確認することができる。このため、表示体2を製造する際における、粘着剤層11の硬化し忘れや、硬化不良の発生を防止することが容易となり、所望の性能を有する表示体2を製造することができる。
【0154】
粘着剤層11に対するエネルギー線の照射は、通常、第1の表示体構成部材21または第2の表示体構成部材22のいずれか一方越しに行い、好ましくは、保護パネルとしての第1の表示体構成部材21越しに行う。上記活性エネルギー線の好ましい種類および照射の好ましい条件としては前述した通りである。
【0155】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0156】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。また、第1の表示体構成部材21は、段差を有しないものであってもよい。さらには、第1の表示体構成部材21のみならず、第2の表示体構成部材22も粘着剤層11’側に段差を有するものであってもよい。
【実施例
【0157】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0158】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製
アクリル酸n-ブチル30質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル30質量部、N-アクリロイルモルホリン10質量部、アクリル酸イソボルニルアクリル酸イソボルニル10質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0159】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート0.15質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(C)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート8質量部と、光開始剤としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド1.6質量部と、染料としてのメロシアニン色素(山田化学工業社製,製品名「FDB-006」)0.003質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.25質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0160】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(B)]
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート
エポキシ:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン
[光開始剤]
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
【0161】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:50μm)を形成した。得られた塗布層付きの重剥離型剥離シートにおける塗布層側の面と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381130」)の剥離処理面とを貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
【0162】
〔実施例2~5,比較例1~3,参考例〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の種類および配合量、活性エネルギー線硬化性成分(C)の配合量、光開始剤の種類および配合量、染料の配合量、ならびにシランカップリング剤の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、表1中の配合量の欄における「-」という表記は、その成分を配合していないことを意味する。
【0163】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0164】
〔試験例1〕(CIE1976L***表色系に係る測定)
実施例、比較例および参考例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面をガラス板を貼付した。その後、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥離し、それにより得られた粘着剤層とガラス板との積層体について、同時測光分光式色度計(日本電色工業社製,製品名「SQ2000」)を使用し、CIE1976L***表色系により規定されるL*値、a*値およびb*値を測定した。これらの値を、それぞれ未照射のL*値、未照射のa*値および未照射のb*値として表2に示す。なお、上記ガラス板のL*値、a*値およびb*値は、それぞれ100、0および0であることは別途確認している。
【0165】
また、実施例、比較例および参考例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の露出面を、上述したものと同種のガラス板に貼付した。続いて、粘着剤層に対し、重剥離型剥離シート越しに下記の紫外線照射条件1にて紫外線を照射した。その後、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥離し、それにより得られた粘着剤層とガラス板との積層体について、上記と同様にCIE1976L***表色系により規定されるL*値、a*値およびb*値を測定した。これらの値を、それぞれ200mJ/cm照射後のL*値、200mJ/cm照射後のa*値および200mJ/cm照射後のb*値として表2に示す。
<紫外線照射条件1>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量200mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製の製品名「UVPF-A1」を使用
【0166】
また、実施例、比較例および参考例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の露出面を、上述したものと同種のガラス板に貼付した。続いて、粘着剤層に対し、重剥離型剥離シート越しに下記の紫外線照射条件2にて紫外線を照射した。その後、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥離し、それにより得られた粘着剤層とガラス板との積層体について、上記と同様にCIE1976L***表色系により規定されるL*値、a*値およびb*値を測定した。これらの値を、それぞれ2000mJ/cm照射後のL*値、2000mJ/cm照射後のa*値および2000mJ/cm照射後のb*値として表2に示す。
<紫外線照射条件2>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量2000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製の製品名「UVPF-A1」を使用
【0167】
さらに、紫外線の未照射の粘着剤層から測定されたa*値およびb*値について、下記式(1)
(X値)=(a*値)+(b*値) …(1)
からX値を算出し、これを未照射の粘着剤層に係るX値として表2に示す。また、紫外線照射条件1にて紫外線を照射した粘着剤層から測定されたa*値およびb*値についても上記式(1)からX値を算出し、これを200mJ/cm照射後の粘着剤層に係るX値として表2に示す。さらに、紫外線照射条件2にて紫外線を照射した粘着剤層から測定されたa*値およびb*値についても上記式(1)からX値を算出し、これを2000mJ/cm照射後の粘着剤層に係るX値として表2に示す。
【0168】
さらに、上記の通り測定された各値に基づいて、紫外線未照射の状態における粘着剤層と200mJ/cm照射後の粘着剤層との色差ΔE* ab、および紫外線未照射の状態における粘着剤層と2000mJ/cm照射後の粘着剤層との色差ΔE* abを算出した。具体的には、下記の式(3)
ΔE* ab={(ΔL*+(Δa*+(Δb*1/2 …(3)
(式3中、ΔL*は、色差を算出しようとする2つの粘着剤層から測定された2つのL*値の差を表し、Δa*は、色差を算出しようとする2つの粘着剤層から測定された2つのa*値の差を表し、Δb*は、色差を算出しようとする2つの粘着剤層から測定された2つのb*値の差を表す。)
に基づいて、色差ΔE* abを算出した。これらの結果を、それぞれ、200mJ/cm照射後についての色差ΔE* ab、および2000mJ/cm照射後についての色差ΔE* abとして表2に示す。
【0169】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着剤層を厚さ3mmになるように複数層積層した。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0170】
上記サンプルについて、JIS K7244-6:1999に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,製品名「MCR300」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(MPa)を測定した。この結果を、未照射の状態における貯蔵弾性率として表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0171】
また、上記と同様に得たサンプルを、前述した紫外線照射条件2にて紫外線を照射した後、上記と同様に貯蔵弾性率(MPa)を測定した。この結果を、2000mJ/cm照射後の貯蔵弾性率として表2に示す。
【0172】
さらに、上述の通り得られた2000mJ/cm照射後の貯蔵弾性率の値を、上述の通り得られた未照射の貯蔵弾性率の値で除した。これによって得られた値を、貯蔵弾性率の比として表2に示す。
【0173】
〔試験例3〕(色変化の目視判断の可否の評価)
実施例、比較例および参考例で製造した粘着シートの粘着剤層に対し、軽剥離型剥離シート越しに前述した紫外線照射条件2(光量:2000mJ/cm)にて紫外線を照射した。当該照射を行った粘着シートについて、以下の基準に基づいて、色変化の目視判断の可否を評価した。結果を表3に示す。
○:紫外線照射の前後における粘着剤層の色の変化(紫外線照射による色の消失)を目視にて確認できた。
×:紫外線照射の前後における粘着剤層の色の変化(紫外線照射による色の消失)を目視にて確認できなかった。
【0174】
〔試験例4〕(粘着力の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
【0175】
続いて、23℃、50%RHの環境下にて、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、オートクレーブ(栗原製作所社製)にて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。これにより、粘着力測定用サンプルを得た。
【0176】
当該粘着力測定用サンプルを、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。その結果を、未照射の状態における粘着力として表3に示す。なお、剥離の際に粘着剤層の凝集破壊が生じた例については、表3中に「(Cf)」と表示した。
【0177】
また、上記と同様に得た粘着力測定用サンプルについて、PETフィルム越しに粘着剤層に対して前述した紫外線照射条件1にて紫外線を照射した。そして、粘着力測定用サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、上記と同様に粘着力(N/25mm)を測定した。その結果を、200mJ/cm照射後の粘着力として表3に示す。
【0178】
さらに、上記と同様に得た粘着力測定用サンプルについて、PETフィルム越しに粘着剤層に対して前述した紫外線照射条件2にて紫外線を照射した。そして、粘着力測定用サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、上記と同様に粘着力(N/25mm)を測定した。その結果を、2000mJ/cm照射後の粘着力として表3に示す。
【0179】
〔試験例5〕(ゲル分率の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0180】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を未照射の状態におけるゲル分率として表3に示す。
【0181】
また、実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートについて、軽剥離型剥離シート越しに粘着剤層に対して前述した紫外線照射条件1にて紫外線を照射した。この粘着シートについて、上記と同様にゲル分率(%)を測定した。その結果を、200mJ/cm照射後のゲル分率(%)として表3に示す。
【0182】
また、実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートについて、軽剥離型剥離シート越しに粘着剤層に対して前述した紫外線照射条件2にて紫外線を照射した。この粘着シートについて、上記と同様にゲル分率(%)を測定した。その結果を、2000mJ/cm照射後のゲル分率(%)として表3に示す。
【0183】
さらに、実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートについて、軽剥離型剥離シート越しに粘着剤層に対して、以下の紫外線照射条件3にて紫外線を照射した。この粘着シートについて、上記と同様にゲル分率(%)を測定した。その結果を、3000mJ/cm照射後のゲル分率(%)として表3に示す。
<紫外線照射条件3>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量3000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製の製品名「UVPF-A1」を使用
【0184】
表3の結果から明らかな通り、実施例1~5および比較例1~2の粘着シートでは、活性エネルギー線を200mJ/cmの光量で照射することにより、未照射の状態と比較してゲル分率が増加し、また、2000mJ/cmの光量で照射することにより、ゲル分率の値がさらに増加した。しかしながら、3000mJ/cmの光量で照射した場合には、2000mJ/cmの光量で照射した場合とゲル分率がほぼ変わらないものとなった。これらのことから、実施例1~5および比較例1~2の粘着シートでは、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を硬化させることができ、且つ、2000mJ/cmの光量で照射することにより、粘着剤層の硬化をほぼ完了させることができることがわかる。
【0185】
一方、比較例3および参考例では、未照射、200mJ/cm照射後、2000mJ/cm照射後および3000mJ/cm照射後の全てにおいて、ゲル分率がほぼ同一の値となった。すなわち、これらの例では、活性エネルギー線を照射したとしても、粘着剤層が硬化しないことがわかる。
【0186】
〔試験例6〕(耐ブリスター性の評価)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートの粘着剤層を、厚さ1.1mmの無アルカリガラス板と、プラスチック板(三菱レイヨン社製,製品名「アクリライト MR-200」,厚さ:0.7mm,水蒸気透過度44g/(m・24h・100μm))とで挟んだ。その後、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。これにより積層体サンプルを得た。
【0187】
当該積層体サンプルを各例10サンプル用意し、それぞれ、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて150時間保管した。その後、粘着剤層と被着体との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。その結果を未照射の状態における耐ブリスター性の評価として表3に示す。
◎…10サンプル全てにおいて、気泡や浮き・剥がれがなかった。
〇…10サンプル中7~9サンプルでは、気泡や浮き・剥がれがなかった。
△…10サンプル中4~6サンプルでは、気泡や浮き・剥がれがなかった。
×…10サンプル中7サンプル以上で、気泡や浮き・剥がれが発生した。
【0188】
また、上記と同様に得た積層体サンプルにおける粘着剤層に対して、上記樹脂板越しに、前述した紫外線照射条件1にて紫外線を照射した。続いて、積層体サンプルを、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した後、上記と同様に耐ブリスター性を評価した。その結果を200mJ/cm照射後における耐ブリスター性の評価として表3に示す。
【0189】
さらに、上記と同様に得た積層体サンプルにおける粘着剤層に対して、上記樹脂板越しに、前述した紫外線照射条件2にて紫外線を照射した。続いて、積層体サンプルを、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した後、上記と同様に耐ブリスター性を評価した。その結果を2000mJ/cm照射後における耐ブリスター性の評価として表3に示す。
【0190】
表3の結果から明らかな通り、実施例1~5および比較例1~2では、未照射の場合および光量200mJ/cmで活性エネルギー線を照射した場合には、十分な耐ブリスター性が得られないのに対し、光量2000mJ/cmで活性エネルギー線を照射した場合に、優れた耐ブリスター性が発揮された。一方、比較例3および参考例では、未照射、光量200mJ/cmおよび光量2000mJ/cmの全ての場合において、十分な耐ブリスター性が得られなかった。これらの結果からも、実施例1~5および比較例1~2では、活性エネルギー線を2000mJ/cmの光量で照射することにより、粘着剤層が良好に硬化することが示唆される。
【0191】
【表1】
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
表3に示されるように、実施例で得られた粘着シートでは、粘着剤層の硬化(ゲル分率の上昇および耐ブリスター性の向上から示唆される)と、粘着剤層における色変化との間で相関関係がみられた。すなわち、実施例で得られた粘着シートでは、粘着剤層の色の変化(色の消失)により、粘着剤層が硬化したことを目視にて確認することができた。また、表3に示されるように、実施例で得られた粘着シートでは、紫外線照射後においても所定の粘着力を発揮することができた。また、実施例で得られた粘着シートは、粘着剤層を被着体に貼合した後、当該粘着剤層に紫外線照射条件2(光量2000mJ/cm)の紫外線照射により硬化した後において、優れた耐ブリスター性を発揮することができた。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の接着剤および粘着シートは、例えば、LEDディスプレイにおける表示体構成部材同士の貼合、特に、段差を有する保護パネルと所望の表示体構成部材との貼合などに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0196】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…表示体
11’…粘着剤層(粘着シート1の粘着剤層11を硬化したもの)
21…第1の表示体構成部材
22…第2の表示体構成部材
3…印刷層
図1
図2