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特許7138527建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル
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  • 特許-建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル 図1
  • 特許-建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル 図2
  • 特許-建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20220909BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20220909BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220909BHJP
【FI】
B28B1/30
B05B1/02
B33Y30/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018183262
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049863
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 友基
(72)【発明者】
【氏名】梶田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】宮野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】茂木 順一
(72)【発明者】
【氏名】絹村 剛士
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-515908(JP,A)
【文献】実公昭48-032182(JP,Y1)
【文献】米国特許第05529471(US,A)
【文献】特開2018-069661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0300036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00-1/54
B33Y 30/00
E04G 21/10
B05B 1/02-1/10
B29C 64/209
B29C 64/321-64/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタで建設構造物を構築する際に、建設材料を吐出するためのノズルであって、
下方向に材料を吐出するノズル本体の下端部に、吐出口の外周から外方へ向かって延長して設けたコテ部を備え、
前記吐出口は、材料を略鉛直下方向に吐出するように形成されており、
前記コテ部は、下面が平面状となっているとともに、側面の全周において下方に向かって縮径している、
ことを特徴とする建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルに関するものであり、詳しくは、3Dプリンタで建設構造物を作成する際に建設材料を吐出するためのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリンタが実用化されており、建設、医療、デザイン等、種々の分野における造形技術として、広汎な利用が期待されている。代表的な3Dプリンタは、流動性を有する材料(例えば、モルタルや樹脂等)をノズルから吐出させ、設計データに基づいて材料の吐出量や吐出位置を制御することにより、所望形状の造形物を作成するようになっている。従来、3Dプリンタに関する種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された技術は、ノズル形状に特徴を有する3Dプリンタ技術を用いた建設構造物の構築装置に関するものである。この技術において、材料の送出経路の先端側に取り付けたノズルは、吐出する材料の断面が材料の吐出口において所望の形状となるように、材料の送出側から吐出側へ向かって内空形状を徐々に変化させた状態で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-86747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、種々の分野で3Dプリンタが実用化されており、所望形状の造形物を作成するために、ノズルの形状や構造に種々の工夫がなされている。例えば、特許文献1に記載された技術では、構築する建設構造物の形状に応じて複数のノズルを作製し、作業の進行状況に応じてノズルを取り替えることにより、様々な形状の建設構造物を容易に構築することができるという利点があるが、自由な断面形状の造形物を作成するために、更なる工夫の余地があった。
【0006】
一定方向にしか材料を吐出することができないノズルの場合には、ノズルの回転機構が必要となり、構築装置の構造が複雑になるという問題がある。この点、吐出口の断面形状が円形で下向きに材料を吐出するノズルの場合には、材料の圧損が少ない上に、ノズルの回転機構がない場合であっても、曲面や角部を自由に造形することが可能であるが、吐出材料の断面形状が楕円に近いものとなり、各層間において材料が線でしか接触しないことがある。
【0007】
また、吐出口の断面形状が四角形のノズルは、曲面や角部で構造物がねじれてしまうばかりではなく、各層間において材料が線でしか接触しない場合がある。このように、従来のノズルを用いて造形した場合には、造形物の安定性がないため、複数層に高く積み上げたり、一層の高さを大きくしたりすることができず、また、構造上脆いという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、材料の圧損が少ない下向きノズルを採用するとともに、ノズルの回転機構を備えていなくても曲線の造形が可能な建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルは、3Dプリンタで建設構造物を構築する際に、建設材料を吐出するためのノズルに関するものである。この建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルは、下方向に材料を吐出するノズル本体の下端部に、吐出口の外周から外方へ向かって延長して設けたコテ部を備えている。
【0010】
そして、吐出口は、材料を略鉛直下方向に吐出するように形成されている。また、コテ部は、下面が平面状となっているとともに、側面の全周において下方に向かって縮径している。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルによれば、ノズル本体の吐出口が下方向へ向いているため、材料の圧損が少なく、ノズル本体の回転機構を有していなくても曲線部や隅角部等からなる屈曲部の造形が可能である。
【0012】
また、コテ部を有しているため、吐出された材料が盛り上がったり捻れたりした場合であっても、材料の上面をコテ部で均すことができるため、造形物の上面が均一かつ平坦なものとなる。このため、各層間において材料が接触する面積が大きくなり、造形物の安定性を増加させることができる。さらに、吐出した材料を密に積層できるため、構造上の強度を増加させることができ、複数層に高く積み上げたり、一層の高さを大きくしたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルを斜め上から見た状態の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズルを斜め下から見た状態の斜視図。
図3】コテ部の他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る建設材料の積層に用いる下方向吐出型ノズル(以下、下方向吐出型ノズルと称する)を説明する。図1~3は本発明の実施形態に係る下方向吐出型ノズルを説明するもので、図1は斜め上から見た状態の斜視図、図2は斜め下から見た状態の斜視図、図3はコテ部の他の例を示す斜視図である。
【0015】
<下方向吐出型ノズルの概要>
本発明の実施形態に係る下方向吐出型ノズルは、下方向に材料を吐出するノズル本体10の下端部に、吐出口20の外周から外方へ向かって延長して設けたコテ部30を備えた点に特徴がある。すなわち、ノズル本体10の下端部には、吐出口20の周囲にフランジ状のコテ部30が設けられている。
【0016】
<コテ部>
コテ部30は、吐出口20から吐出された材料の上面に押し当たって、材料の上面を均すための部分である。コテ部30はある程度の厚みを持っており、下面は材料の上面を均すために平面状となっている。また、ノズル本体10からの突出長さ(横方向への広がり)は、吐出口20の大きさ(径)、使用する材料等に応じて、適宜設定することができる。
【0017】
<コテ部の形状>
コテ部30の形状はどのようなものであってもよいが、例えば、図1図3に示すように、円柱状(図1及び図2)、多角柱状(図3(a))、四角柱状(図3(b))、逆円錐台状(図3(c))とすることができる。図3(c)に示す逆円錐台状のコテ部30は、下方に向かって縮径しているため、側面が傾斜面となっている。このように、コテ部30を下方に向かって縮径させることにより、吐出した材料に対してコテ部30の側面が接触したとしても、側面は傾斜しているので材料を円滑に均すことができる。
【0018】
<吐出口>
本実施形態の吐出口20は、ノズル本体10の下端部で下向きに開口している。また、図2に示す吐出口20の断面形状は円形であるが、使用する材料や建設構造物の態様に応じて、楕円形、四角形、多角形等であってもよい。
【0019】
<付帯する機器及び材料>
ノズル本体10は、吐出口20を下向きとした状態で、移動装置により所望の方向(3次元方向)へ移動可能に支持されている。また、ノズル本体10には、圧送パイプを介して材料供給装置(材料貯留部、圧送ポンプ等を含む装置)が接続されている。ノズル本体10から吐出する材料は、建設構造物の態様に応じて適宜選択するが、例えば、セメント系材料や樹枝系材料とすることができる。
【0020】
<建設構造物>
本実施形態に係る下方向吐出型ノズルを用いて構築する建設構造物は、どのような形状のものであってもよいが、例えば、壁、中実又は中空の柱、方形・円錐形・円筒状等の建物、これらの複合建設物を構築することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 ノズル本体
20 吐出口
30 コテ部
図1
図2
図3