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  • 特許-ジャイロ装置及びフライホイール 図1
  • 特許-ジャイロ装置及びフライホイール 図2
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  • 特許-ジャイロ装置及びフライホイール 図4
  • 特許-ジャイロ装置及びフライホイール 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】ジャイロ装置及びフライホイール
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/08 20060101AFI20220909BHJP
   B66C 13/08 20060101ALI20220909BHJP
   B66C 1/34 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G01C19/08
B66C13/08 L
B66C1/34 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018218124
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020085582
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】阿藻 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】河本 清道
(72)【発明者】
【氏名】前島 暁彦
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-120792(JP,A)
【文献】特開2009-024722(JP,A)
【文献】特開2016-156417(JP,A)
【文献】特開2014-131940(JP,A)
【文献】特開平07-252087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00-19/72
B66C 1/34
13/00-15/06
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力が加えられる中心軸部と、
中心軸部の外周部に設けられた外輪部と
を有するフライホイールであって、
中心軸部と外輪部とが別部材からなり、
中心軸部と外輪部とのうち一側に設けられた係合凸部αが、他側に設けられた係合凹部βに係合することにより、中心軸部と外輪部とが一体化した構造とされ、
通常時には、外輪部が中心軸部と一体になって回転しながらも、
中心軸部の回転がロックした非常時には、係合凸部αが破断することにより、外輪部が中心軸部から独立して回転し続けるようにした
ことを特徴とするフライホイール。
【請求項2】
非常時における係合凸部αの破断を補助する破断補助部が、係合凸部αに設けられた請求項1記載のフライホイール。
【請求項3】
中心軸部に設けられた係合ピン挿入孔に挿入されて、中心軸部の外周面から端部が突出した状態とされる係合ピンが設けられる一方、
外輪部の内周面に、係合ピンにおける前記端部を嵌合するための係合ピン嵌合凹部が設けられ、
係合ピンにおける前記端部が係合凸部αとなり、
外輪部における係合ピン嵌合凹部が係合凹部βとなるようにした
請求項1又は2記載のフライホイール。
【請求項4】
中心軸部の外周部に対して外輪部を回転可能な状態で支持する非常時用軸受が設けられ、
非常時において中心軸部から独立して回転し続ける外輪部を非常時用軸受で支えるようにした
請求項1~3いずれか記載のフライホイール。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載のフライホイールを組み込んだジャイロ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンで吊荷を旋回させるため等に使用されるジャイロ装置と、このジャイロ装置に組み込まれるフライホイールとに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンで作業を行う際に、作業員の手で吊荷の向きを変えるようにすると、吊荷が作業員に当たる危険性がある。このため、クレーンのなかには、吊荷を吊り下げるフックの周辺にジャイロ装置(例えば、特許文献1の第1図における「ジャイロ10」を参照。)を設け、吊荷を機械的に旋回できるようにしたものも見受けられる。この種のジャイロ装置には、フライホイールと呼ばれる円盤状の部材(同文献の第1図における「フライホイール10a」を参照。)が組み込まれている。ジャイロ装置を有するクレーンでは、回転状態にあるフライホイールの回転軸を傾動させることで生ずるジャイロ作用により、吊荷を旋回させるようになっている。
【0003】
ところで、フライホイールは、通常、中心軸部と、中心軸部の外周部に設けられた外輪部とで構成され、中心軸部の両端部がそれぞれ軸受に支持された状態とされる。これらの軸受への給油不良や焼付けが生じたり、これらの軸受に経年劣化が生じたりすると、軸受に対してフライホイールの中心軸部が円滑に回転しなくなり、場合によっては、フライホイールの中心軸部が軸受に固着した状態となって、フライホイールの回転が急にロックされた状態となる可能性もある。
【0004】
フライホイールは、通常、その回転の慣性モーメントが大きくなるように、外輪部の重量が大きく確保されているところ、このように重量のあるフライホイールの回転が急にロックされると、そのときの衝撃で中心軸部が破損し、最悪の場合には、フライホイールが回転しながらジャイロ装置におけるカバーやフレームを突き破って外部へ飛び出し(フライホイールが逸走し)、逸走したフライホイールが周囲の人に衝突する事故が発生する虞がある。特に、高層ビルを建設する場合等に使用されるクライミングクレーンにおいてこのような事故が発生すると、フライホイールは、高所から落下するようになるため、その被害は拡大する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-074891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、回転が急にロックされることがあっても逸走しない構造のフライホイールを提供するものである。また、このフライホイールを組み込んだジャイロ装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
回転駆動力が加えられる中心軸部と、
中心軸部の外周部に設けられた外輪部と
を有するフライホイールであって、
中心軸部と外輪部とが別部材からなり、
中心軸部と外輪部とのうち一側に設けられた係合凸部αが、他側に設けられた係合凹部βに係合することにより、中心軸部と外輪部とが一体化した構造とされ、
通常時(中心軸部の回転がロックしていないとき。以下同じ。)には、外輪部が中心軸部と一体になって回転しながらも、
中心軸部の回転がロックした非常時には、係合凸部αが破断することにより、外輪部が中心軸部から独立して回転し続けるようにした
ことを特徴とするフライホイール
を提供することによって解決される。
【0008】
上記のように、中心軸部の回転がロックした非常時に、係合凸部αが破断して、外輪部が中心軸部から独立して回転し続けるようにしたことによって、中心軸部の回転がロックしたときの衝撃を小さく抑え、中心軸部に破損が生じにくくすることが可能になる。このため、中心軸部の回転がロックしても、中心軸部が軸受に支持された状態を維持されるようにし、フライホイールが逸走しないようにすることが可能になる。
【0009】
本発明のフライホイールにおいては、非常時における係合凸部αの破断を補助する破断補助部を、係合凸部αに設けることも好ましい。これにより、非常時に係合凸部が破断しやすくして、外輪部が中心軸部から独立して回転し続ける状況(中心軸部の破損を防止できる状況)がより確実に生ずるようにすることができる。
【0010】
本発明のフライホイールにおいては、中心軸部に設けられた係合ピン挿入孔に挿入されて、中心軸部の外周面から端部が突出した状態とされる係合ピンを設ける一方、外輪部の内周面に、係合ピンにおける前記端部を嵌合するための係合ピン嵌合凹部を設け、係合ピンにおける前記端部が係合凸部αとなり、外輪部における係合ピン嵌合凹部が係合凹部βとなるようにすることも好ましい。これにより、上記の係合凸部αや係合凹部βに係る構造を容易に実現することが可能になる。
【0011】
本発明のフライホイールにおいては、中心軸部の外周部に対して外輪部を回転可能な状態で支持する非常時用軸受を設け、非常時において中心軸部から独立して回転し続ける外輪部を非常時用軸受で支えるようにすることも好ましい。これにより、非常時に係合凸部αが破断した後に、中心軸部に対して外輪部が滑らか且つ安定して回転するようにすることが可能になる。このため、中心軸部の回転がロックする非常が発生しても、係合凸部αが設けられた箇所を除いて、中心軸部や外輪部にダメージが生じないようにすることも可能になる。したがって、係合凸部αが設けられた箇所のみを交換すれば、中心軸部や外輪部をその後継続して使用することも可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によって、回転が急にロックされることがあっても逸走しない構造のフライホイールを提供することが可能になる。また、このフライホイールを組み込んだジャイロ装置を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のジャイロ装置を備えたクレーンで吊荷を旋回させている様子を示した斜視図である。
図2図1のジャイロ装置を、フライホイールの回転軸線L及び傾動軸線Lを含む平面で切断した状態を示した断面図である。
図3図2のジャイロ装置を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図である。
図4】フライホイールにおける中心軸部を外輪部に取り付けている様子を示した斜視図である。
図5図2のジャイロ装置を、フライホイールの回転軸線Lに垂直で傾動軸線Lを含む平面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のジャイロ装置及びフライホイールの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、説明の便宜上、本発明のジャイロ装置については、クレーンで使用する場合を例に挙げて説明する。しかし、本発明のジャイロ装置は、クレーンで使用されるものに限定されず、ジャイロ装置が使用される各種の装置で採用することができる。また、本発明のフライホイールについては、ジャイロ装置に組み込む場合を例に挙げて説明する。しかし、本発明のフライホイールは、ジャイロ装置で使用する場合に限定されず、フライホイールが組み込まれる各種の装置で採用することができる。
【0015】
[ジャイロ装置]
まず、ジャイロ装置について説明する。図1は、本発明のジャイロ装置10を備えたクレーンで吊荷50を旋回させている様子を示した斜視図である。説明の便宜上、図1の丸囲み拡大部分は、ジャイロ装置10の内部構造を透視した状態で描いている。本実施態様のジャイロ装置10は、図1に示すように、クレーンにおけるフック60と吊荷50との間に配されており、吊荷50を同図における矢印Aの方向に旋回させるためのものとなっている。ジャイロ装置10を設ける場所は、クレーンの吊荷50を旋回させることができるの(吊荷50に旋回力を伝達できる場所)であれば、図1に示す場所に限定されない。例えば、吊荷50の下側にジャイロ装置10を設けても、吊荷50を旋回させることができる。
【0016】
このジャイロ装置10は、フライホイール11と、フライホイール11を回転軸線Lを中心として回転駆動する回転用駆動装置12と、フライホイール11を傾動軸線Lを中心として傾動駆動する傾動用駆動装置13とを備えている。回転用駆動装置12や傾動用駆動装置13としては、通常、電動機(モーター)が用いられ、このうち、傾動用駆動装置13としては、減速機付電動機を好適に用いることができる。フライホイール11は、回転軸線Lを中心とする回転(図1の矢印A)と、傾動軸線Lを中心とする傾動(図1の矢印A)との2つの回転を許容するフレーム状の回転台(二軸ジンバル14)に支持されている。フライホイール11の回転軸線Lと傾動軸線Lは、非平行な状態とされ、通常、直交した状態とされる。
【0017】
このジャイロ装置10では、回転用駆動装置12を駆動して、フライホイール11を回転軸線L回りに回転させている状態で、傾動用駆動装置13を駆動し、フライホイール11を傾動軸線L回りに傾動させると、旋回軸線L回りのジャイロモーメントが生じる。このジャイロモーメントによって、ジャイロ装置10が旋回軸線Lを中心として旋回(図1の矢印A)する。吊荷50は、ジャイロ装置10の下部に吊り下げられているため、ジャイロ装置10が旋回軸線L回りに旋回すると、吊荷50も旋回軸線L回りに旋回する。吊荷50が旋回する向きは、フライホイール11を傾動させる向きを逆にすると、逆転させることができる。本実施態様において、ジャイロ装置10は、リモートコントローラ15によって操作するようになっている。
【0018】
ところで、このジャイロ装置10において、フライホイール11の回転軸線L回りの回転が急にロックすることがあると、そのときの衝撃でフライホイール11を軸支する軸部(後掲する図2における中心軸部11a)が破損してしまい、最悪の場合には、フライホイール11が回転しながらジャイロ装置10におけるカバー16等を突き破って外部へ逸走し、逸走したフライホイール11が周囲の作業員70等に衝突する事故が発生する虞がある。この点、本発明のジャイロ装置10では、以下で述べるような工夫をフライホイール11に施しており、フライホイール11の回転軸線L回りの回転が急にロックしても、中心軸部11aが二軸ジンバル14に支持された状態が維持されるようにしている。
【0019】
[フライホイール]
図1のジャイロ装置10に組み込まれた本発明のフライホイール11の構造について詳しく説明する。図2は、図1のジャイロ装置10を、フライホイール11の回転軸線L及び傾動軸線Lを含む平面で切断した状態を示した断面図である。図3は、図2のジャイロ装置10を、同図における破線囲み部Pで抜き出して拡大した図である。図4は、フライホイール11における中心軸部11aを外輪部11bに取り付けている様子を示した斜視図である。
【0020】
本実施態様において、フライホイール11は、図2に示すように、円柱状の中心軸部11aと、中心軸部11aの外周部に環状に設けられた外輪部11bとで構成されている。中心軸部11aは、回転用駆動装置12に連結されている。このため、回転用駆動装置12が回転駆動されると、中心軸部11aは、回転軸線Lを中心として回転するようになっている。中心軸部11aは、その両端部を一対の通常時用軸受17によって、二軸ジンバル14のフレーム部分に軸支された状態となっている。
【0021】
外輪部11bは、フライホイール11に回転軸線L回りの回転モーメントを発現させるためのものである。フライホイール11における中心軸部11aと外輪部11bは、別部材で構成されているものの、通常時(中心軸部11aの回転軸線L回りの回転がロックされていないとき)においては、図3及び図4に示すように、係合凸部αと係合凹部βとが互いに係合した状態となっており、回転軸線L回りには相対的に回動できない状態となっている。したがって、通常時においては、中心軸部11aが回転軸線Lを中心として回転すると、外輪部11bも中心軸部11aと一体となって回転軸線Lを中心として回転するようになっている。
【0022】
係合凸部α及び係合凹部βのそれぞれを中心軸部11a及び外輪部11bのどちらに設けるかは特に限定されない。しかし、本実施態様においては、図4に示すように、外輪部11bの中心部に設けた軸部保持孔11bに対して、中心軸部11aを挿通して保持させる構造を採用しているところ、この構造においては、外輪部11bの内周面(軸部保持孔11bの内壁)に係合凸部αを設けることが容易ではない。このため、本実施態様においては、中心軸部11aの外周面に係合凸部αを設けて、外輪部11bの内周面に係合凹部βを設けている。係合凹部βは、中心軸部11aの挿通方向(フライホイール11の回転軸線Lに平行な方向)に沿って延びる溝状に設けている。このため、外輪部11bの軸部保持孔11bに中心軸部11aを挿通する際には、係合凸部αが係合凹部βに沿って所定の位置まで案内されるようになっている。
【0023】
係合凸部αが係合凹部βに係合すると、外輪部11bは、中心軸部11aに対して回転軸線L回りに相対的に回転できない状態となる。ただし、溝状の係合凹部βに対して係合凸部αが係合しただけでは、中心軸部11aに対する外輪部11bの回転(回転軸線L回りの回転)を拘束できても、中心軸部11aに対する外輪部11bのスライド(回転軸線Lに平行な方向のスライド)を拘束することはできない。この点、本実施態様においては、図3に示すように、中心軸部11aの両端部近傍にスライドストッパー18を設けており、中心軸部11aに対して外輪部11bが回転軸線Lに平行な方向にスライドしないようにしている。
【0024】
係合凸部α及び係合凹部βの個数は、特に限定されないが、複数個ずつ設けてもよい。係合凸部α及び係合凹部βを複数個ずつ設ける場合には、係合凸部α及び係合凹部βを回転軸線Lに対して回転対称に配することが好ましい。これにより、中心軸部11aに対して外輪部11bをバランスよく拘束することが可能になる。本実施態様においては、図3及び図4に示すように、中心軸部11aの外周面における、互いに反対側を向く箇所に、一対(計2個)の係合凸部αを設けており、外輪部11bの内周面における、互いに対向する箇所に、一対(計2個)の係合凹部βを設けている。
【0025】
具体的には、中心軸部11aを径方向(回転軸線Lに垂直な方向)に貫通する係合ピン挿入孔11aを中心軸部11aに設けて、係合ピン挿入孔11aの全長よりも長い係合ピン19を係合ピン挿入孔11aに挿入し、係合ピン挿入孔11aの両側の開口端から外方に突出した状態となる係合ピン19の両端部(一端部及び他端部)が係合凸部αとなるようにしている。これにより、中心軸部11aに簡単な加工(係合ピン挿入孔11aを穿孔する加工)を施すだけで、中心軸部11aの外周面における、互いに反対側を向く箇所に、一対の係合凸部αを形成することができる。一方の係合凹部βは、外輪部11bの内周面における、係合凸部αに対応する箇所に溝を切削加工することによって設けている。
【0026】
図5は、図2のジャイロ装置10を、フライホイール11の回転軸線Lに垂直で傾動軸線Lを含む平面で切断した状態を示した断面図である。図5(a)は、中心軸部11aの回転軸線L回りの回転がロックされていない通常時の状態を、図5(b)は、中心軸部11aの回転軸線L回りの回転がロックされた非常時の状態を示している。通常時のフライホイール11は、図5(a)に示すように、係合凸部αと係合凹部βとの係合によって、中心軸部11aと外輪部11bとが一体化された状態となっているため、中心軸部11a及び外輪部11bが回転軸線Lを中心として一体的に回転する。
【0027】
これに対し、中心軸部11aが通常時用軸受17(図2)に固着した状態となり、中心軸部11aの回転がロックした非常時においても、中心軸部11aと外輪部11bとが一体化された状態が維持され続けると、中心軸部11aの回転軸線L回りの回転が停止したにもかかわらず、重量のある外輪部11bは、慣性によって回転軸線L回りに回転し続けようとするため、外輪部11bの回転力が、回転停止状態の中心軸部11aに衝撃力として伝わり、その衝撃力によって中心軸部11aが破損し、フライホイール11が逸走する虞がある。中心軸部11aの回転がロックする原因としては、中心軸部11aを軸支する通常時用軸受17(図2)の給油不良、焼付け又は経年劣化等が考えられる。
【0028】
この点、本発明のフライホイール11では、中心軸部11aの回転がロックした非常時においては、図5(b)に示すように、係合凸部αが中心軸部11aから破断(本実施態様においては、係合凸部αが、係合ピン19における、係合ピン挿入孔11aに挿通された部分から破断)することにより、外輪部11bが中心軸部11aから独立して回転し続けるようになっている。本実施態様においては、図3に示すように、通常時に中心軸部11aを軸支する一対の通常時用軸受17よりも内側に、非常時において中心軸部11aから独立して回転し続ける外輪部11bを軸支する一対の非常時用軸受20を設けており、中心軸部11aの外周部に対して外輪部11bが円滑に回転するようにしている。
【0029】
このため、フライホイール11の回転軸線L回りの回転が急にロックしたときの衝撃力が中心軸部11aに伝わらないようになっており、中心軸部11aの破損を防止できるようになっている。したがって、非常時においても、中心軸部11aが通常時用軸受17(図2)に支持された状態が維持され、フライホイール11の逸走を防止することが可能となっている。破断した後の係合凸部αは、係合凹部βに収まった状態のまま、外輪部11bとともに回転し続ける。
【0030】
以上のように、係合凸部αは、非常時において破断することが前提のものである一方で、通常時において破断することがあってはならない。したがって、係合凸部αの破断強度は、通常時においては破断せず、非常時においては破断するように設定しておく必要がある。係合凸部αの破断強度は、係合凸部αを形成する部材の素材の種類や寸法等(本実施態様においては係合ピン19の素材や直径等)によって定まるが、係合凸部αを形成する部材の素材の種類や寸法によって、係合凸部αの破断強度を適切な範囲に設定することは必ずしも容易ではない。
【0031】
この点、本実施態様においては、図3に示すように、係合凸部αの付根近傍(中心軸部11aの外周面との境界近傍)に破断補助部αを設けることで、係合凸部αの破断強度を適切な範囲に設定している。破断補助部αは、係合凸部αにおける他の部分より脆弱に形成された部分となっている。破断補助部αは、通常、凹部とされる。破断補助部αを構成する凹部は、連続線状に設けられたもの(溝状のもの)であってもよいし、断続的に設けられたもの(ミシン目状の凹部)であってもよい。本実施態様において、破断補助部αは、係合凸部αの付根近傍の外周部全周に亘って環状に設けた環状溝としている。この環状溝は、断面「V」字状に形成しており、所定以上の力が加わるとこの環状溝が設けられた部分で確実に破断するようになっている。
【符号の説明】
【0032】
10 ジャイロ装置
11 フライホイール
11a 中心軸部
11a 係合ピン挿入孔
11b 外輪部
11b 軸部保持孔
12 回転用駆動装置
13 傾動用駆動装置
14 二軸ジンバル
15 リモートコントローラ
16 カバー
17 通常時用軸受
18 スライドストッパー
19 係合ピン
20 非常時用軸受
50 吊荷
60 フック
70 作業員
フライホイールの回転軸線
フライホイールの傾動軸線
ジャイロ装置の旋回軸線
α 係合凸部
α 破断補助部
β 係合凹部
図1
図2
図3
図4
図5