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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】コンクリート吹付ガイダンスシステム
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
E21D11/10 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018219213
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020084539
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】坂西 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 洋
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克己
(72)【発明者】
【氏名】手塚 仁
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-090541(JP,A)
【文献】特開2003-013699(JP,A)
【文献】特開2000-120394(JP,A)
【文献】特開2018-017640(JP,A)
【文献】特開2005-069734(JP,A)
【文献】特開2005-113576(JP,A)
【文献】特開2002-349197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート吹付機の吹付ノズルブームに装着された吹付ノズルに取付けられて、吹付ノズルのコンクリートの吹付方向にレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記コンクリート吹付機に取付けられた複数台のカメラと、
前記複数台のカメラのうちの少なくとも2台のカメラでステレオ撮影された、前記レーザ光のトンネル壁面への照射部を含む画像から、前記照射部の位置の3次元座標を算出する照射位置算出手段と、
予め作成しておいた設計図面のトンネル壁面、もしくは、コンクリートの吹付前に測量したトンネル壁面を複数のメッシュに分割した吹付面メッシュモデルを作成するメッシュモデル作成手段と、
前記照射部の位置を前記吹付面メッシュモデルのメッシュ上に表示した画像を表示する表示手段と、
を備えるコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【請求項2】
前記表示手段は、前記照射部の軌跡である吹付軌跡を前記吹付面メッシュモデルのメッシュ上に表示した画像を表示することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【請求項3】
前記吹付ノズルの先端部と根元部とを含む、前記吹付ノズルの先端部と根元部との間の所定の位置であるノズル位置に配置されて標定点となるマークと、
前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記ノズル位置の3次元座標を算出する手段とを設け、
前記表示手段は、前記算出されたノズル位置を表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【請求項4】
前記吹付ノズルの先端部と根元部に配置される標定点となるマークと、
前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記吹付ノズルの先端部と根元部の3次元座標をそれぞれ算出する手段と、
前記先端部と根元部の3次元座標から前記吹付ノズルの傾斜角度を算出する手段とを設け、
前記表示手段は、前記算出された吹付ノズルの先端部の位置もしくは根元部の位置と前記吹付ノズルの傾斜角度とを表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【請求項5】
前記吹付ノズルから噴出するコンクリートの形状を、前記吹付ノズルの内部に頂点を有し、前記吹付ノズルの開口部を通る円錐状とした噴射モデルを作成するとともに、
前記照射部の位置と、前記ノズル位置、前記先端部の位置、もしくは、前記根元部の位置とから吹付ノズルと前記トンネル壁面との距離である吹付距離を算出し、
前記算出された吹付距離、前記吹付ノズルから噴射されるコンクリート圧送量、前記吹付ノズルの移動速度、及び、跳ね返り率と、前記噴射モデルとを用いて、前記照射部の位置におけるコンクリートの吹付け厚さを推定する吹付形状モデル作成手段を備えることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【請求項6】
前記トンネル壁面の同一箇所に複数回コンクリートを吹付けるとともに、
複数回目のコンクリート吹付時における前記照射部の3次元座標と、前記照射部が投影されるメッシュの中心点の3次元座標、もしくは、前記照射部をメッシュに投影した点の3次元座標とから、前記同一箇所のコンクリートの吹付け厚さを推定する手段を設けたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【請求項7】
前記トンネル壁面の同一箇所に複数回コンクリートを吹付けるとともに、
1回目のコンクリート吹付時における前記照射部の3次元座標と、n回目のコンクリート吹付時における前記照射部の3次元座標とから、前記同一箇所のコンクリートの吹付け厚さを推定する手段を設けたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のコンクリート吹付ガイダンスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面へのコンクリート吹付作業の進捗状況を作業者に提示するガイダンスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の吹付作業においては、作業者が、吹付位置直下で吹付ロボットを操作することにより作業をしているが、作業環境及び作業者の安全確保の観点から、作業位置から離れた場所で吹付ロボットを操作する遠隔操作技術が開発されている。
遠隔作業の場合には、トンネル内に設置されるモニター室のような、吹付位置より離れた場所で、例えば、吹付機に設けられたカメラの映像を見ながら、吹付ロボットのコントローラを操作していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-120394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラの映像のみでは、吹付ノズルの方向や吹付壁との距離等が把握しづらいため、無駄にコンクリートを消費することになる。
特に、無支保工区間では、後方のトータルステーションの切羽管理レーザーから投影される赤色ポイントを目安に吹付作業を行うが、安全量を見込む必要があるため、作業員の感覚で多めに吹付をすることになり、その結果、吹付材料が必要以上に多くなってしまうといった問題点があった。また、遠隔操作では、赤色ポイントが映像では見難いためことから、吹付自体が難しかった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、吹付ノズルの軌跡などの、トンネル壁面へのコンクリート吹付作業の進捗状況の情報を作業者に提示することのできるコンクリート吹付ガイダンスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート吹付機の吹付ノズルブームに装着された吹付ノズルに取付けられて、吹付ノズルのコンクリートの吹付方向にレーザ光を照射するレーザ装置と、前記コンクリート吹付機に取付けられた複数台のカメラと、前記複数台のカメラのうちの少なくとも2台のカメラでステレオ撮影された、前記レーザ光のトンネル壁面への照射部を含む画像から、前記照射部の位置の3次元座標を算出する照射位置算出手段と、予め作成しておいた設計図面のトンネル壁面、もしくは、コンクリートの吹付前に、レーザースキャナーや写真測量等で測量したトンネル壁面を複数のメッシュに分割した吹付面メッシュモデルを作成するメッシュモデル作成手段と、前記照射部の位置を前記吹付面メッシュモデルのメッシュ上に表示した画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
これにより、吹付の途中であっても、コンクリートの吹付状態を把握できるので、コンクリートの吹付作業を効率よく行うことができる。
また、照射部の位置だけでなく、照射部の軌跡である吹付軌跡を吹付面メッシュモデルのメッシュ上に表示した画像についても表示するようにしたので、コンクリートの吹付状態を精度よく把握できる。
【0007】
また、前記吹付ノズルの先端部と根元部とを含む、前記吹付ノズルの先端部と根元部との間の所定の位置であるノズル位置に配置されて標定点となるマークと、前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記ノズル位置の3次元座標を算出する手段とを設け、前記表示手段に、前記算出されたノズル位置を表示するようにしたので、吹付ノズルの位置を確実に把握することができる。
また、前記吹付ノズルの先端部と根元部に配置される標定点となるマークと、前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記吹付ノズルの先端部と根元部の3次元座標をそれぞれ算出する手段と、前記先端部と根元部の3次元座標とから前記吹付ノズルの傾斜角度を算出する手段とを設け、前記表示手段に、前記算出された吹付ノズルの先端部の位置もしくは根元部の位置と前記吹付ノズルの傾斜角度とを表示するようにしたので、吹付ノズルの位置と吹付ノズルの方向との両方を確実に把握することができる。
なお、吹付ノズルの先端部とは吹付ノズルの中心よりも吹付ノズルの開口部側を指し、根元部とは吹付ノズルの中心よりも開口部側と反対側の端部側を指すものとする。
【0008】
また、本発明は、前記吹付ノズルから噴出するコンクリートの形状を、前記吹付ノズルの内部に頂点を有し、前記吹付ノズルの開口部を通る円錐状とした噴射モデルを作成するとともに、前記照射部の位置と、前記ノズル位置、前記先端部の位置、もしくは、前記根元部の位置とから吹付ノズルと前記トンネル壁面との距離である吹付距離を算出し、前記算出された吹付距離、前記吹付ノズルから噴射されるコンクリート圧送量、前記吹付ノズルの移動速度、及び、跳ね返り率と、前記噴射モデルとを用いて、前記照射部の位置におけるコンクリートの吹付け厚さを推定する吹付け厚さ推定手段を備えたことを特徴とする。
これにより、吹付の途中であっても、吹付け厚さを精度よく推定できる。
また、前記トンネル壁面の同一箇所に複数回コンクリートを吹付けるとともに、複数回目のコンクリート吹付時における前記照射部の3次元座標と、前記照射部が投影されるメッシュの中心点の3次元座標、もしくは、前記照射部をメッシュに投影した点の3次元座標とから、前記同一箇所のコンクリートの吹付け厚さを推定すれば、コンクリートの吹付け厚さを容易に推定することができる。
また、前記トンネル壁面の同一箇所に複数回コンクリートを吹付けるとともに、1回目のコンクリート吹付時における前記照射部の3次元座標と、n回目のコンクリート吹付時における前記照射部の3次元座標とから、前記同一箇所のコンクリートの吹付け厚さを推定するようにしてもよい。
【0009】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。この明細書において、コンクリートは、モルタルや吹付材料も含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るコンクリート吹付ガイダンスシステムを示す図である。
図2】吹付機、トータルステーション、及び、遠隔操作室の配置を示す図である。
図3】吹付ノズル、カメラ、及び、ノズル側レーザ装置の配置例を示す図である。
図4】吹付ロボットの縦断面図と平面図である。
図5】カメラと標定点との関係と、ステレオ画像とを示す図である。
図6】吹付ノズルの傾きとトンネル側壁との関係を示す図である。
図7】吹付面メッシュモデルの一例を示す図である。
図8】吹付形状モデルを示す図である。
図9】仮想吹付面メッシュと累積吹付け厚さ+の分布の一例を示す図である。
図10】表示画面の一例を示す図である。
図11】コンクリート吹付ガイダンスシステムの動作を示すフローチャートである。
図12】車体の位置の推定方法を示す図である。
図13】吹付け厚さの他の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、コンクリート吹付ガイダンスシステム(以下、ガイダンスシステム1という)を示す図で、ガイダンスシステム1は、吹付機2に設置される、バケット側カメラC11,C12と、本体側カメラC21~C24と、エレクタ側カメラC31~C34と、ノズル側レーザ装置L1と、遠隔操作室10に配置される、吹付位置算出手段11と、ノズル位置算出手段12と、メッシュモデル作成手段13と、吹付軌跡作成手段14と、吹付形状モデル作成手段15と、吹付状態推定手段16と、表示手段17と、記憶手段18と、トータルステーション4に設置される切羽管理レーザ装置L2と、を備える。
吹付位置算出手段11~吹付状態推定手段16までの各手段と記憶手段18とは、例えば、コンピュータのソフトウェア、及び、RAM等のメモリーから構成され、表示手段17は、表示画面17Gを備えたディスプレイやウェラブル端末などにより構成される。
吹付位置算出手段11~記憶手段18までの各手段を、以下、ガイダンスシステム1の演算表示部という。
吹付機2は、図2(a),(b)に示すように、トンネル3の切羽31のコンクリートの吹付けが完了していない区間Lkの後方(切羽31とは反対側)に配置されて、トンネル壁面32(トンネル側壁32aと天羽32b)に吹付コンクリートを吹付ける。なお、同図の符号3Cは吹付コンクリート、符号3Hは支保工である。
トータルステーション4は、切羽31に赤色のレーザ光を照射する切羽管理レーザ装置L2やレーザ距離計L3の他に、図示しない、切羽監視用カメラ、3Dスキャナーなどの切羽31を監視する監視装置を備えた計測器で、吹付機2の後方で、切羽31から所定の距離離れた天羽32b等に設置される。
また、遠隔操作室10は、トンネル3内もしくは坑外などの吹付機2から離れた箇所に設置される。遠隔操作室10には、吹付機2を遠隔操作する吹付機制御装置10Aや、支保工番号や支保パターンなどのトンネルパターンデータを備え、切羽管理レーザ装置L2などの監視装置を制御する切羽管理レーザシステム10Bなどが配置されている。
【0012】
図3は、吹付機2を示す図で、同図の左方向を前方(切羽方向)、右方向を後方、同図の上下方向を上下方向、図面に垂直な方向を左右方向とする。
吹付機2は、走行機構20aやアウトトリガー機構20bなどを備えた吹付機本体(以下、本体20という)と、先端側に図示しないコンクリート圧送装置に接続された吹付ノズル5が搭載された吹付ノズルブームとしての吹付ロボット21と、バケット22bを支持する左右一対のバケットブーム22と、支保工の組み立てるための左右一対のエレクタブーム23とを備える。
吹付ノズル5の側面側には、ノズル側レーザ装置L1が、レーザの照射方向が吹付ノズル5の延長方向であるコンクリートの吹付方向と一致するように、設置されている。本例では、ノズル側レーザ装置L1のレーザ光を切羽管理レーザ装置L2のレーザ光と区別するため、ノズル側レーザ装置L1のレーザ光を緑色とした。
また、左右一対のバケットブーム22のバケット22bの前方下端部には、バケット側カメラC11,C12がそれぞれ設置され、本体20の前面の上下左右には、本体側カメラC21~C24がそれぞれ設置され、左右一対のエレクタブーム23の第1アーム23aの先端側と第2アーム23bの中央側には、エレクタ側カメラC31~C34がそれぞれ設置される。
【0013】
図4(a),(b)は、吹付ロボット21を示す縦断面図と平面図で、同図のX軸方向がトンネルの軸方向(前後方向)、Y軸方向がトンネル幅方向(左右方向)、Z軸方向が上下方向である。
吹付ロボット21は、本体20の取付部20T側に位置する第1のアーム211と、図示しない切羽側に位置する第2のアーム212と、第1及び第2のアーム211,212をそれぞれ伸縮させる第1及び第2のスライド機構213,214と、第1及び第2のアーム211,212をそれぞれ水平面内及び垂直面内で回転させる第1及び第2の回転機構215,216と、第2のアーム212の先端に設置された吹付ノズル設置部217と、吹付ノズル設置部217を水平面内及び垂直面内で回転させる吹付ノズル回転機構218と、を備え、吹付ノズル設置部217を上下、左右に回転させるととともに、前後(第1及び第2のアーム211,212の延長方向)移動させることで、吹付ノズル5の位置と吹付コンクリートの吹付方向とを設定する。
但し、吹付ロボット21は、全ての構成が上記と同一である必要はなく、一部省略されたり、組み合わせが変わる場合もあり、これらを包括して「吹付ロボット」と称する。
【0014】
次に、カメラC11,C12~C33,C34の動作について説明する。
バケット側カメラC11,C12、本体側カメラC21,C22及びC23,C24、エレクタ側カメラC31,C32及びC33,C34は、それぞれ、後述する標定点となるマークとしての標定点ラベルA~Dと、緑色レーザ光の照射部Gとを撮影する。緑色レーザ光の照射部Gとコンクリートの吹付位置(厳密には、コンクリートが吹付けられた領域の中心)とはほぼ一致する。
図5(a)は、標定点ラベルA~Dの設置箇所及びノズル側レーザ装置L1からの緑色レーザ光の照射部Gとの関係を示す図で、標定点ラベルAは吹付ノズルの先端部に設置され、標定点ラベルBは吹付ノズルの根元側に設置される。
また、標定点ラベルCと標定点ラベルDとは、吹付が完了したトンネル壁面32の切羽31側の左右(以下、吹付完了壁部という)の任意の場所にそれぞれ不動点として設置される。
図5(b)は、2台のカメラC11,C12でステレオ撮影した画像(ステレオ画像)の一例を示す模式図で、カメラC11の画像とカメラC12の画像には、それぞれ、緑色レーザ光の照射部Gと標定点ラベルAとが映っている。
【0015】
吹付位置算出手段11は、図5(b)に示すような、ステレオ撮影された2枚の画像から、トンネル壁面32に照射された緑色レーザ光の照射部Gの位置である、コンクリートの吹付位置の3次元座標を算出する。以下、コンクリートの吹付位置の符号を、緑色レーザ光の照射部と同じGとする。すなわち、吹付位置算出手段11は、本発明の照射位置算出手段に相当する手段である。
なお、ステレオ画像は、必ずしも、C11,C12などのカメラ対の画像である必要はなく、例えば、標定点ラベルA,Bがよく映っている2台以上のカメラの画像、標定点ラベルCがよく映っている2台以上のカメラの画像、標定点ラベルDがよく映っている2台以上のカメラの画像などを用いればよい。
ノズル位置算出手段12は、図5(b)に示した、ステレオ撮影された2枚の画像から、標定点ラベルA,Bの位置である、吹付ノズル5の先端部と根元部の3次元座標と、吹付完了壁部の標定点ラベルCと標定点ラベルDの3次元座標とを算出するとともに、この算出された標定点ラベルA,Bの3次元座標を、算出した標定点ラベルC,Dの3次元座標と、トンネルパターンデータベース18dに保存されている、設計掘削断面形状XYZのデータの基準点、もしくは、トータルステーションの設置位置を原点とした標定点ラベルC,Dの3次元座標とを用いて、上記したトンネル3内の基準点を原点とした3次元座標に変換する。
なお、設計掘削断面形状XYZのデータに代えて、レーザースキャナーや写真測量等で測量して算出した掘削断面形状である実測断面形状Xのデータを用いてもよい。
ノズル位置算出手段12では、この算出された吹付ノズル5の先端部と根元部の3次元座標から、吹付ノズル5の傾きを算出するとともに、吹付ノズル5の根元側の3次元座標と、記憶手段18のトンネルパターンデータベース18dに保存されている設計掘削断面形状XYZのデータ、もしくは、実測断面形状Xのデータとから、吹付ノズル5の根元側の位置と切羽31との距離である切羽距離Dx、及び、トンネル壁面32との距離である壁面距離Dwを算出する(図10のノズル位置画像PCを参照)。
なお、後述するように、予め車体位置の3次元座標は求めてあるので、吹付ノズル5の先端部と根元部の3次元座標は、トンネル3内の基準点を原点とした座標に変換されているものとする。
また、切羽距離Dx、及び、壁面距離Dwを算出する基準となる吹付ノズル5の位置としては、吹付ノズル5の根元部ではなく、先端部としてもよく、根元部と先端部の中間点としてもよい。
図6(a),(b)に示すように、吹付ノズル5(5p~5s)の傾きとは、切羽31の面に平行な断面Kにおけるトンネル幅方向(Y軸方向)と、吹付ノズル5の断面Kへの正射影とのなす角(切羽面内角θ)と、吹付ノズルの軸方向と断面Kとのなす角(切羽仰角φ)を指す。
同図に示すように、吹付ノズル5の軸方向の延長方向とトンネル壁面32とが交わる点がコンクリートの吹付位置Gとなる。
図6(c),(d)に示すように、コンクリートの吹付方向とトンネル壁面32とのなす角度を吹付角度αとすると、吹付角度αは、吹付ノズル5(5a,5b)の長さ方向とコンクリートの吹付位置Gにおけるトンネル壁面32の接平面SG(以下、トンネル壁面32という場合もある)との成す角度に等しい。なお、吹付角度αは、コンクリートの吹付方向と吹付位置Gとを通る接線LGとのなす角度としても求められる。α=90°の時に、コンクリートの吹付方向とトンネル壁面32とが直交する。
すなわち、吹付ノズル5aのように、吹付角度αが90°であれば、トンネル壁面32に垂直にコンクリートを吹付けることができるが、吹付ノズル5bのように、吹付角度αが90°でない場合には、トンネル壁面32に垂直にコンクリートを吹付けることができない。
なお、接平面SGと接線LGについても、上記のトンネルパターンデータベース18dに保存されている設計掘削断面形状XYZ(もしくは、実測断面形状X)のデータから求めることができる。
トンネル壁面32の断面形状が掘削方向(X方向;(a)図の紙面に垂直な方向)で同一で、断面Kが天羽32bを通る半径rの円弧である場合は、図6(a),(b)に示した白ヌキの吹付ノズル5pのように、円弧の中心をOとしたとき、方向が原点Oと吹付位置Gとを結ぶ方向(OG方向)でかつφ=0°であれば、吹付ノズル5の吹付方向がトンネル壁面32に直交するが、吹付ノズル5qのように、吹付方向がOGの方向であっても、φが0°でなければ、吹付ノズル5の吹付方向はトンネル壁面32には直交しない。
なお、トンネル壁面32がトンネル幅方向に垂直な箇所では、吹付ノズル5sのように、吹付方向がトンネル幅方向であれば、α=90°となることはいうまでもない。
【0016】
メッシュモデル作成手段13は、切羽管理レーザシステム10Bから取得されて記憶手段18に記憶されたトンネルパターンデータベース18dを用いて、図7(a)に示すような、切羽31の手前のコンクリート吹付予定のトンネル壁面32を、一方の辺がトンネル軸方向に平行で、他方の辺が切羽の輪郭面に沿った、複数のメッシュに分割した吹付面メッシュモデル32Mを作成する。なお、メッシュとしては、メッシュを矩形と見做したときの一辺の長さを、10cm~50cmでの範囲とすることが好ましい。
トンネルパターンデータベース18dには、支保番号、支保パターン、トンネル延長、設計掘削断面形状XYZ(もしくは、実測断面形状X)、吹付量などのデータが蓄積されているので、切羽番号を入力すれば、コンクリート吹付面である、当該切羽31からコンクリート吹付境界面までのトンネル壁面32を、トンネル断面に平行な複数の面Kiとトンネル軸方向に平行な直線miとにより、複数のメッシュMiに分割した吹付面メッシュモデル32Mを作成することができる。
なお、トンネルパターンデータベース18dに保存されているデータは、切羽管理レーザシステム10Bで取得されたデータであるので、実測断面形状Xを用いた場合、吹付面メッシュモデル32Mは、吹付前に実測した実断面の形状にメッシュが投影された形になる。
吹付軌跡作成手段14は、図7(b)に示すように、吹付位置算出手段11で算出したコンクリートの吹付位置Giを、丸印などのマークとして、順次、吹付位置Giの3次元座標を含むメッシュMiに重ねるとともに、これらのマークを繋げることで、同図の太線で示すような、吹付位置の軌跡RLを吹付面メッシュモデル32M上に描画した吹付軌跡画像を作成する。
【0017】
吹付形状モデル作成手段15は、記憶手段18に記憶された機器データベース18a、吹付コンクリートデータベース18b、及び、吹付形状データベース18cを用いて、図8(a)に示すような、0.1sec当たりの吹付コンクリートの平均吹付け厚さHkを算出するための円錐モデル(以下、吹付形状モデル5Mという)を作成する。
機器データベース18aには、吹付機2の機種、ポンプ吐出量、吹付ノズル5の回転移動速度、吹付ノズル5のスライド移動速度、空気圧縮機の空気量や吐出圧などのデータが蓄積され、吹付コンクリートデータベース18bには、コンクリートの配合量、添加剤、ミキシング時間、スランプ、空気量などデータが蓄積され、吹付形状データベース18cには、吹付ノズル口径DN[mm]や、吹付ノズル5から噴射される吹付コンクリートの噴射モデルである推定円錐Cの頂点位置である推定円錐頂点オフセットhN[mm]、推定円錐形状噴射角度θN[deg]などの形状パラメータ、想定コンクリート吐出量VC[mm3/0.1sec]、コンクリート跳ね返り率a[%]、吹付ノズル移動速度v[mm/0.1sec]などのデータが蓄積されている。
吹付形状データベース18cの推定円錐頂点オフセットhN[mm]や想定コンクリート吐出量VCは、吹付コンクリートデータベース18bに蓄積された吹付コンクリートの性状により決定され、吹付ノズル移動速度vは、機器データベース18aに蓄積された吹付ノズル5の回転移動速度と吹付ノズル5のスライド移動速度により決定される。
なお、本例では、機器データベース18aのポンプ吐出量については、打設中に稼動しているポンプからのポンプ吐出量(ピストンの往復回数)のデータ、吹付ノズル5の移動速度及び方向については、カメラからの映像データにてリアルタイム(0.1sec)毎に更新されたものを用いている。上記のデータは、切羽管理レーザシステム10Bにより更新されて、記憶手段18に送られるが、切羽管理レーザシステム10Bから直接データを取得してもよい。
【0018】
吹付形状モデル作成手段15では、吹付位置算出手段11で算出された吹付位置Gの3次元座標と、ノズル位置算出手段12で算出された吹付ノズル5の先端部の3次元座標とから、吹付ノズル5の先端と吹付対象面Sとの距離である吹付距離hk[mm]を算出し、この吹付距離hkと吹付形状データベース18cに蓄積された吹付ノズル5から噴射される吹付コンクリートの噴射モデルである推定円錐Cのパラメータである推定円錐頂点オフセットhNとから、吹付形状である推定円錐Cの頂点Tの位置と吹付面との距離である円錐高さhCを算出する。
図8(a)に示すように、hC=hk+hNである。
また、円錐の底面SCの直径Wk[mm]は、円錐高さhCと推定円錐形状噴射角度θN[deg]とから、Wk=2hC・tanθNにより算出される。
なお、推定円錐形状噴射角度θNは、円錐を頂点Tを通り底面に垂直な面で切ってできる二等辺三角形の頂点の角度の半分の角度である。
ここで、吹付ノズル移動速度をv、吹付コンクリートの平均吹付け厚さをHkとすると、コンクリートの吹付量Vkは、下記の式で近似できる。
k=v・Wk・Hk
また、想定コンクリート吐出量をVC、コンクリート跳ね返り率をaとすると、Vk=a・VCなので、吹付コンクリートの平均吹付け厚さHkは、以下の式で算出できる。
k=(a・VC )/(v・2hC・tanθN
吹付形状モデル5Mは、0.1sec毎のモデルなので、平均吹付け厚さHkの単位は[mm/0.1sec]となる。
【0019】
吹付形状モデル5Mとしては、通常は、図8(b)に示すような、吹付角度αが90°の場合が用いられるが、図8(c)に示すような、αが90°でないモデルを用いることができる。この場合には、吹付領域の形状は円ではなく、円錐Cを、トンネル壁面32のコンクリート吹付位置Gにおける接平面で切った楕円となるので、吹付コンクリートの吹付幅Wαkは、図8(b)の吹付幅Wkよりも長くなり、逆に、平均吹付け厚さHαk図8(b)の平均吹付け厚さHkよりも薄くなる。
図8(d)は、図8(b)の吹付形状モデル5Mをトンネル壁面32に沿って移動させた吹付合成モデルで、同図の白丸はコンクリート吹付位置Gを示す。メッシュMi内の吹付形状モデル5Mを重ね合わせることで、メッシュMiにおける平均吹付厚であるメッシュ単位吹付け厚さHiを算出することができる。メッシュ単位吹付け厚さHiの単位は[mm]である。
【0020】
吹付状態推定手段16は、図9(a)に示すように、吹付面メッシュモデル32Mの各メッシュMiのうち、吹付が完了した各メッシュMiを塗潰すなどして特定して、仮想吹付面メッシュとするとともに、各メッシュMiのデータに、当該メッシュMiの吹付け厚さであるメッシュ単位吹付け厚さHiを追加する。
このとき、本例では、メッシュMiの吹付時には、メッシュMiに隣接するメッシュMjにもコンクリートが吹付けられるとし、メッシュMjのメッシュ単位吹付け厚さHjに、メッシュMiのメッシュ単位吹付け厚さHiの、p倍(p<1)の吹付け厚さを追加するようにしている。ここで、pの大きさとしては、0.2~0.8とすることが好ましい。
メッシュMiに隣接する4つのメッシュをMj1~Mj4とすると、メッシュMiの累積吹付け厚さHi+は、H,i+=Hi+a・(Hi1+Hi2+Hi3+Hi4)となる。
図9(b)は、吹付途中の累積吹付け厚さH,i+の分布を示す図(吹付経過画像)で、同図の細かい斜線を施したメッシュは累積吹付け厚さH,i+が設計厚さK1以上のメッシュで、粗い斜線を施したメッシュは累積吹付け厚さH,i+がK1未満で、かつ、K1よりも小さな閾値K2以上のメッシュである。また、複数のドットを付けたメッシュは累積吹付け厚さH,i+がK2未満で、かつ、K2よりも小さな閾値K3以上のメッシュである。
本例では、K1=10mm、K2=6mm、K3=3mmとした。
なお、吹付経過画像は、各メッシュを累積吹付け厚さH,i+毎に色分けしてもよい。
【0021】
表示手段17は、図10に示すように、吹付ノズルの軌跡を表示した吹付軌跡画像PAと、吹付け厚さの分布を示す吹付経過画像PBと、ノズル位置を表示したノズル位置画像PCとから成るガイダンス画面を、表示画面17Gに表示する。
吹付軌跡画像PAは、吹付軌跡作成手段14で作成した吹付軌跡画像を用いた。
吹付経過画像図PBは、吹付状態推定手段16で作成した吹付経過画像に、ノズル位置算出手段12で算出したトンネル軸方向から見たノズル位置、吹付ノズル5の根元部の軌跡である回転ラインR、及び、推定した車体位置を重ね合わせたものである。
また、ノズル位置画像PCは、現在の吹付ノズル角度より、吹付ノズル回転機構218で回転した場合の想定軌跡と、吹付角度αと、吹付ノズル5と切羽31との距離である切羽距離Dx、及び、トンネル壁面32との距離である壁面距離Dwとを表示する。
作業者は、上記のガイダンス画面から、吹付ノズル5の現在位置とコンクリート吹付の進捗状態を把握することができるので、吹付操作を効率よく行うことができる。
【0022】
次に、ガイダンスシステム1について、図11のフローチャートを参照して説明する。
はじめに、映像カメラの校正を行う(ステップS10)。
これは、吹付機2に設置された10台のカメラのうち、本体側カメラC21~C24の位置は本体20に対して固定されているが、バケット22bに取付けられたバケット側カメラC11,C12の位置と、エレクタブーム23に取付けられたエレクタ側カメラC31~C34の位置とは、本体20に対して、設置毎に異なるためである。
そこで、本例では、絶対固定点カメラである本体側カメラC21~C24から、移動点カメラであるバケット側カメラC11,C12と、エレクタ側カメラC31~C34とを校正するようにしている。
次に、トンネルパターンデータベース18dなどの基礎データを記憶手段18に読み込む(ステップS11)。
例えば、トンネルパターンデータベース18dは切羽管理レーザシステム10Bから取得し、吹付形状データベース18cは、今までの吹付け実績から構築されたデータとして取得する。また、吹付コンクリートデータベース18bは、コンクリートプラントからLANなどで取得し、機器データベース18aは、吹付機の初期データを取得する。
なお、トンネルパターンデータベース18dは、切羽管理レーザシステム10Bにデータとして存在していることから、本ガイダンスシステム1と切羽管理レーザシステム10Bとでデータを共有することで、記憶手段18に読み込むことなく、切羽管理レーザシステム10Bから使用するデータを各手段に取り込むようにしてもよい。
ステップS12では、コンクリートの吹付を行う切羽番号を入力し、ステップS13では、切羽管理レーザシステム10Bと連携して、この入力された切羽番号と連動してデータを取り込み、吹付機2の本体20である「車体の位置」を推定する。
具体的には、図12に示すように、トータルステーション4に設けられた切羽管理レーザ装置L2から切羽31に照射された赤色レーザ光の照射部P1~P3とトータルステーション4との距離を、レーザ距離計L3にて測定するとともに、この測定された照射部P1~P3の3次元座標と、カメラC21,C23のいずれかと、カメラC22,C24のいずれかとでステレオ撮影した画像から求められた照射部P1~P3の3次元座標とから「車体の位置」を推定する。
なお、切羽管理レーザシステム10Bの能力不足や切羽面増水等により、照射部P1~P3の位置を直接計測できない場合には、以下のようにして「車体の位置」を求めればよい。
まず、カメラC21,C23のいずれかと、カメラC22,C24のいずれかとでステレオ撮影した画像から、照射部P1~P3の3次元座標を求め、次に、この3次元座標と、切羽管理レーザシステム10Bにより予め設定されたトンネル3内の図示しない基準点(例えば、トータルステーション4の設置位置など)を原点とした照射部P1~P3の3次元座標との差を求めることで「車体の位置」を推定する。この「車体の位置」としては、本体20のどこに設定してもよいが、本体20に最も近い位置にある本体側カメラ対C23,C24の中心位置とすることが好ましい。
なお、赤色レーザ光の照射部P1~P3に加えて、吹付完了壁部の左右に設置された標定点ラベルCと標定点ラベルDとを用いて、車体の位置を推定してもよい。
これにより、全てのカメラC11~C34の位置を特定することができる。
【0023】
次に、カメラC11~C34にて、標定点ラベルA~D、及び、Gを撮影(ステップS14)し、この撮影された画像から吹付位置Gとノズル位置とを算出する(ステップS15)。
具体的には、バケット側カメラC11,C12、本体側カメラC21,C22、本体側カメラC23,C24、エレクタ側カメラC31,C32、及び、エレクタ側カメラC33,34がそれぞれ、標定点ラベルA~D、及び、Gを撮影し、これら撮影された2枚以上のステレオ画像から、トンネル壁面32に照射された緑色レーザ光の照射部Gの位置である、コンクリートの吹付位置の3次元座標、標定点ラベルA,Bの位置である、吹付ノズル5の先端部と根元部の3次元座標を算出するとともに、算出された吹付ノズル5の先端部と根元部の3次元座標と、記憶手段18のトンネルパターンデータベース18dに保存されている設計掘削断面形状XYZのデータ、もしくは、実測断面形状Xとから、吹付ノズル5の傾き(θ,φ)及び吹付角度αと、吹付ノズル5と切羽31との距離である切羽距離Dx、及び、吹付ノズル5とトンネル壁面32までの距離である壁面距離Dwとを算出する。
次に、トンネルパターンデータベース18dを用いて、切羽31の手前のコンクリート吹付予定のトンネル壁面32を複数のメッシュに分割した吹付面メッシュモデル32Mを作成するとともに、ステップS15で求めたコンクリートの吹付位置Gと吹付ノズル5の先端部の3次元座標と、機器データベース18a、吹付コンクリートデータベース18b、及び、吹付形状データベース18cとを用いて、0.1sec当たりの吹付コンクリートの平均吹付け厚さHkを算出するための円錐モデルである吹付形状モデル5Mを作成する(ステップS16)。
【0024】
ステップS17では、ステップS16で作成した吹付面メッシュモデル32Mと吹付形状モデル5Mとを用いて、各メッシュMi毎の吹付け厚さを算出する。このとき、吹付け厚さに代えて、隣接するメッシュへのコンクリート吹付けの影響を考慮した累計吹付け厚さを用いれば、コンクリートの吹付け厚さの推定精度を向上させることができる。
次に、図10に示すような、吹付ノズルの軌跡を示す吹付軌跡画像PAと、吹付け厚さの分布を示す吹付経過画像PBと、トンネル内のノズル位置を示すノズル位置画像PCとから成るガイダンス画面を表示手段17の表示画面に表示する(ステップS18)。
そして、累計吹付け厚さが規定の吹付け厚さを超えたメッシュがあるか否かを判定し(ステップS19)、規定の吹付け厚さを超えたメッシュがあった場合には、ステップS18で表示した表示画面のうちの吹付経過画像PBのメッシュのうちの、規定の吹付け厚さを超えたメッシュを黒塗りするなど、吹付完了メッシュであるように表示した、吹付経過画像PBとを表示(ステップS20)して終了する。
ステップS19にて、規定の吹付け厚さを超えたメッシュがない場合には、ステップS17に戻って、コンクリートの吹付けを継続する。
【0025】
以上、本発明を実施の形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0026】
例えば、前記実施の形態では、ステレオ撮影する10台のカメラの映像から吹付位置とノズル位置とを算出したが、少なくとも1対のカメラがあれば、吹付位置とノズル位置とを求めることができる。
また、カメラの配置としては、少なくとも、バケットブーム22側、本体20側、及び、エレクタブーム側に、それぞれ、2台ずつ配置すれば、標定点ラベルA~D、及び、照射部Gがよく映っている2台以上のカメラの画像が得られるので、好ましい。
また、前記実施の形態では、バケットブーム22のバケット22bにカメラC11,C12を、吹付機2の本体20にカメラC21~C24を、エレクタブーム23にカメラC31~C34をそれぞれ配置する構成としたが、吹付機2が、バケットブーム22、エレクタブーム23を搭載していない場合には、カメラC11,C12、及び、カメラC31~C34、もしくは、その一部を、本体以外の場所、例えば、地面に立設された三脚上などに設置してもよい。
また、前記実施の形態では、0.1sec当たりの吹付コンクリートの平均吹付け厚さHkを算出するための吹付形状モデル5Mを作成したが、吹付形状モデル5Mとしては、必ずしも「0.1sec当たり」に限定されるものではなく、カメラの撮影間隔やシステムのデータ処理能力により、適宜設定されることはいうまでもない。
なお、吹付ノズル移動速度vを0.1sec当たりの移動速度から、異なる時間間隔当たりの移動速度v’に変更する場合には、想定コンクリート吐出量VCについても、変更された吹付ノズル移動速度v’に応じて変更することが好ましい。
【0027】
また、前記実施の形態では、吹付形状モデル作成手段15で作成した吹付形状モデル5Mを用いて、メッシュMiの吹付け厚さであるメッシュ単位吹付け厚さHiを推定したが、吹付ノズル5を回転させたり、吹付ノズル5を同一軌跡にて往復させるなどして、トンネル壁面32の同一箇所に所定回数(例えば、N回)コンクリートを吹付けて、コンクリートの吹付け厚さを所定の厚さにする場合には、コンクリートの吹付位置である緑色レーザ光の照射部Gの3次元座標からコンクリートの吹付け厚さを推定することができる。
具体的には、図13(a)に示すように、n回目にコンクリートを吹付けた時の照射部Gnのうちの、メッシュMiの設計中心点Mi0から一番近い照射部Gn0と設計中心点Mi0との距離を、メッシュMiの吹付け厚さHinとすればよい。ここで、iはメッシュの番号、nは、メッシュMiにコンクリートを吹付けた回数である(但し、n≦N)。
照射部Gnの軌跡は、吹付軌跡作成手段14により既知であるので、上記の距離Hi0を、n回の吹付けが終了したメッシュMiについて算出してやれば、吹付け厚さHinを連続的に管理することができる。
また、図13(b)に示すように、n回目にコンクリート吹付けた時の照射部Gnの3次元座標と、照射部GnをメッシュMiに投影した点GnMの3次元座標との差から吹付け厚さHinを算出しても、吹付け厚さHinを連続的に管理することができる。
また、最初にコンクリート吹付ける際に予め照射部G1の3次元座標を求めておき、n回目にコンクリート吹付けた時の照射部Gnの3次元座標と、最初にコンクリート吹付ける前の照射部G1の3次元座標との差から吹付け厚さHinを算出してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 コンクリート吹付ガイダンスシステム、
10 遠隔操作室、10A 吹付機制御装置、10B 切羽管理レーザシステム、
11 吹付位置算出手段、12 ノズル位置算出手段、13 メッシュモデル作成手段、
14 吹付軌跡作成手段、15 吹付形状モデル作成手段、16 吹付状態推定手段、
17 表示手段、17G 表示画面、18 記憶手段、
2 吹付機、20 吹付機本体、21 吹付ロボット、22 バケットブーム、
22b バケット、23 エレクタブーム、
3 トンネル、4 トータルステーション、5 吹付ノズル、
C11,C12 バケット側カメラ、C21~C24 本体側カメラ、
C31~C34 エレクタ側カメラ、L1 ノズル側レーザ装置、
L2 切羽管理レーザ装置、L3 レーザ距離計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13