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特許7138585負荷時タップ切換器、負荷時タップ切換変圧器及び電圧調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】負荷時タップ切換器、負荷時タップ切換変圧器及び電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/20 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
G05F1/20 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019032100
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020135769
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 南洋
(72)【発明者】
【氏名】久富 和郎
(72)【発明者】
【氏名】白土 紀明
(72)【発明者】
【氏名】前 秀和
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117084(JP,A)
【文献】特開2016-046307(JP,A)
【文献】特開昭58-101309(JP,A)
【文献】特開昭48-093921(JP,A)
【文献】特開昭61-025226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0271096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/20
H01F 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ付き変圧器の奇数番号のタップを選択する奇数タップ選択器と、偶数番号のタップを選択する偶数タップ選択器と、前記奇数タップ選択器及び出力端子の間に接続された奇数タップスイッチと、前記偶数タップ選択器及び前記出力端子の間に接続された偶数タップスイッチとを備える負荷時タップ切換器であって、
前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチのそれぞれは、半導体スイッチと該半導体スイッチに並列的に接続された機械接点を有するスイッチとを含み、
前記半導体スイッチ及び前記機械接点を有するスイッチをオン/オフする制御部と、
前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの何れか一方に含まれる半導体スイッチに印加される電圧に基づいて該半導体スイッチを自己点弧させる自己点弧回路と、
前記半導体スイッチに関する過電圧又は過電流を検出するための検出部と
を備え、
前記制御部は、前記検出部によって前記過電圧又は前記過電流を検出した場合、前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの両方に含まれる半導体スイッチをオフした後に前記一方に含まれる半導体スイッチをオンし、更に後に前記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするようにしてある負荷時タップ切換器。
【請求項2】
前記検出部は、前記出力端子の電圧を検出する電圧検出部であり、
前記制御部は、前記電圧検出部が検出した電圧が所定の電圧閾値より高い場合、前記過電圧を検出するようにしてある
請求項1に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項3】
前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの他方に含まれる半導体スイッチに直列に接続された速断ヒューズを更に備え、
前記検出部は、前記速断ヒューズの溶断を検出する溶断検出部であり、
前記制御部は、前記溶断検出部で溶断を検出した場合、前記過電流を検出するようにしてある
請求項1に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項4】
前記検出部は、前記出力端子に流れる電流を検出する電流検出部であり、
前記制御部は、
前記電流検出部が検出した電流が所定の電流閾値より大きい場合、前記過電流を検出するようにしてあり、
前記過電流を検出した場合、前記一方に含まれる半導体スイッチをオンしているときは、前記半導体スイッチをオン/オフせずに前記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするようにしてある
請求項1に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項5】
前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの他方に含まれる半導体スイッチに印加される電圧に基づいて該半導体スイッチを自己点弧させる第2の自己点弧回路を更に備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項6】
前記一方に含まれる機械接点を有するスイッチがオンしない異常状態を検出する異常検出部を更に備え、
前記制御部は、前記異常検出部で前記異常状態を検出した場合、前記両方に含まれる半導体スイッチをオフした後に前記他方に含まれる半導体スイッチをオンし、更に後に前記他方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするようにしてある
請求項5に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の負荷時タップ切換器と、
前記タップ付き変圧器と
を備える負荷時タップ切換変圧器。
【請求項8】
三相の交流電圧を電源から負荷に配電する配電線路に三相分の二次巻線が直列に接続され、一次巻線が三相結線されている直列変圧器と、請求項7に記載の負荷時タップ切換変圧器とを備える電圧調整装置であって、
前記負荷時タップ切換変圧器は、前記配電線路における前記直列変圧器の接続位置よりも前記負荷側の位置に前記タップ付き変圧器の一次巻線が三相結線され、前記直列変圧器の一次巻線に前記負荷時タップ切換器の出力端子が接続されている電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械接点を有するスイッチ及び半導体スイッチを用いた切換開閉器を有する負荷時タップ切換器、負荷時タップ切換変圧器及び電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる間接切換方式による電圧調整装置(SVR:Step Voltage Regulator )は、二次巻線が配電線路に直列に接続される直列変圧器と、二次巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、調整変圧器のタップを切り換えるタップ切換器と、タップ切換器を制御する制御部とを備えている。調整変圧器は、一次巻線が配電線路に並列に接続されている。タップ切換器は、調整変圧器の二次巻線の各タップと直列変圧器の一次巻線との間に設けられている。制御部は、調整変圧器から直列変圧器に印加される調整電圧を調整して配電線路の電圧を目標範囲に保つようにタップ切換器を制御する。
【0003】
いわゆる負荷時タップ切換器(OLTC:On-Load Tap Changer )は、奇数番号のタップを選択する奇数タップ選択器と、偶数番号のタップを選択する偶数タップ選択器と、これら両タップ選択器を切り換える切換開閉器とを有する(特許文献1参照)。切換開閉器は、例えばサイリスタ対からなる半導体スイッチと、該半導体スイッチに並列的に接続された機械接点を有するスイッチとで構成される(特許文献2参照)。
【0004】
上記のような電圧調整装置にて、半導体スイッチの誤開放及び誤導通が発生したり、配電系統に過電圧及び短絡が発生したりした場合、切換開閉器の半導体スイッチに耐圧を越える高電圧が印加されたり、過電流が流れたりすることがある。これに対し、特許文献3には、直列変圧器の一次巻線に過電圧が誘起したときに、上記一次巻線間に接続した電磁接触器をオンすると共に、タップ切換器に含まれる素通しタップ選択用の半導体スイッチをオンすることにより、タップ切換器を保護する自動電圧調整装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-118106号公報
【文献】特公昭47-26253号公報
【文献】特開2016-42279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載された自動電圧調整装置は、タップ選択にサイリスタを用いてタップ切換器の無接点化を図ったもの(TVR:Thyristor type Step Voltage Regulator)であり、タップ切換器の構成が特許文献2に記載のものとは異なる。このため、半導体スイッチで素通しタップを選択する構成によって、特許文献2に記載された切換開閉器を保護することはできない。また、特許文献3に記載された電磁接触器で切換開閉器を保護する場合は、切換開閉器に過電圧が印加されてから保護動作が開始されるまでの遅延時間が比較的長いため、切換開閉器の半導体スイッチを保護できないことがある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切換開閉器を過電圧又は過電流から保護することが可能な負荷時タップ切換器、負荷時タップ切換変圧器及び電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る負荷時タップ切換器は、タップ付き変圧器の奇数番号のタップを選択する奇数タップ選択器と、偶数番号のタップを選択する偶数タップ選択器と、前記奇数タップ選択器及び出力端子の間に接続された奇数タップスイッチと、前記偶数タップ選択器及び前記出力端子の間に接続された偶数タップスイッチとを備える負荷時タップ切換器であって、前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチのそれぞれは、半導体スイッチと該半導体スイッチに並列的に接続された機械接点を有するスイッチとを含み、前記半導体スイッチ及び前記機械接点を有するスイッチをオン/オフする制御部と、前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの何れか一方に含まれる半導体スイッチに印加される電圧に基づいて該半導体スイッチを自己点弧させる自己点弧回路と、前記半導体スイッチに関する過電圧又は過電流を検出するための検出部とを備え、前記制御部は、前記検出部によって前記過電圧又は前記過電流を検出した場合、前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの両方に含まれる半導体スイッチをオフした後に前記一方に含まれる半導体スイッチをオンし、更に後に前記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするようにしてある。
【0009】
本発明にあっては、外部に接続されたタップ付き変圧器の奇数番号のタップ及び偶数番号のタップそれぞれを奇数タップ選択器及び偶数タップ選択器が選択し、選択されたそれぞれのタップを奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチが出力端子に選択的に接続する。奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチそれぞれは、半導体スイッチと機械接点を有するスイッチとが並列的に接続されており、制御部がこれらのスイッチをオン/オフする。奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチの何れか一方に含まれる半導体スイッチは、自身に印加される電圧に基づいて自己点弧するようにしてある。例えば電流が流れている他の変圧器の一の巻線に接続される出力端子は、奇数タップスイッチに含まれる半導体スイッチによって奇数番号のタップに接続されているか、又は偶数タップスイッチに含まれる半導体スイッチによって偶数番号のタップに接続されている。
【0010】
制御部が半導体スイッチに関する過電圧又は過電流を検出して奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチの両方に含まれる半導体スイッチをオフした場合、出力端子がより確実な開放状態となって出力端子の電圧が的確に上昇し、上記一方に含まれる半導体スイッチが速やかに自己点弧する。その後、制御部が上記一方に含まれる半導体スイッチを確認的にオンする。続いて制御部が上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンすることにより、破壊耐量が大きい機械接点によってタップ付き変圧器のタップと他の変圧器の一の巻線とが接続される。従って、切換開閉器に相当する奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチそれぞれに含まれる半導体スイッチを過電圧又は過電流から保護することが可能となる。
【0011】
本発明に係る負荷時タップ切換器は、前記検出部は、前記出力端子の電圧を検出する電圧検出部であり、前記制御部は、前記電圧検出部が検出した電圧が所定の電圧閾値より高い場合、前記過電圧を検出するようにしてある。
【0012】
本発明にあっては、例えば、オンしている方の半導体スイッチが誤ってオフになったときに、上記他の変圧器の一の巻線が開放されて出力端子に過電圧が発生する。制御部は、出力端子の電圧が所定の電圧閾値より高いと判定することによって過電圧を検出する。
【0013】
本発明に係る負荷時タップ切換器は、前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの他方に含まれる半導体スイッチに直列に接続された速断ヒューズを更に備え、前記検出部は、前記速断ヒューズの溶断を検出する溶断検出部であり、前記制御部は、前記溶断検出部で溶断を検出した場合、前記過電流を検出するようにしてある。
【0014】
本発明にあっては、例えば、オフしている方の半導体スイッチが誤ってオンになったときは、奇数番号のタップ及び偶数番号のタップを介してタップ間短絡が発生し、少なくとも上記他方に含まれる半導体スイッチに過電流が流れて該半導体スイッチに直列に接続された速断ヒューズが溶断する。制御部は、速断ヒューズの溶断を検出することによって過電流を検出する。
【0015】
本発明に係る負荷時タップ切換器は、前記検出部は、前記出力端子に流れる電流を検出する電流検出部であり、前記制御部は、前記電流検出部が検出した電流が所定の電流閾値より大きい場合、前記過電流を検出するようにしてあり、前記過電流を検出した場合、前記一方に含まれる半導体スイッチをオンしているときは、前記半導体スイッチをオン/オフせずに前記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするようにしてある。
【0016】
本発明にあっては、例えば、上記他の変圧器の他の巻線における接続先に短絡が発生した場合、一の巻線に接続された出力端子に過電流が流れる。制御部は、出力端子に流れる電流が所定の電流閾値より大きいと判定することによって過電流を検出する。制御部は、上記一方に含まれる半導体スイッチをオンしている間に過電流を検出した場合は、上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチを直ちにオンする。これにより、既に一方の半導体スイッチがオンしているときは、一方の半導体スイッチが一旦オフされることなく、一方の機械接点が閉じられる。
【0017】
本発明に係る負荷時タップ切換器は、前記奇数タップスイッチ及び前記偶数タップスイッチの他方に含まれる半導体スイッチに印加される電圧に基づいて該半導体スイッチを自己点弧させる第2の自己点弧回路を更に備える。
【0018】
本発明にあっては、奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチの他方に含まれる半導体スイッチについても、自身に印加される電圧に基づいて自己点弧するようにしてある。制御部が半導体スイッチに関する過電圧又は過電流を検出して奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチの両方に含まれる半導体スイッチをオフした場合、出力端子がより確実な開放状態となって出力端子の電圧が的確に上昇し、上記一方又は他方の何れかに含まれる半導体スイッチが速やかに自己点弧する。これにより、上記一方に含まれる半導体スイッチが自己点弧しない場合であっても、上記他方に含まれる半導体スイッチが自己点弧するため、制御部が上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするときに、機械接点に印加される電圧を確実に低下させておくことができる。
【0019】
本発明に係る負荷時タップ切換器は、前記一方に含まれる機械接点を有するスイッチがオンしない異常状態を検出する異常検出部を更に備え、前記制御部は、前記異常検出部で前記異常状態を検出した場合、前記両方に含まれる半導体スイッチをオフした後に前記他方に含まれる半導体スイッチをオンし、更に後に前記他方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンするようにしてある。
【0020】
本発明にあっては、制御部が上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンしたにも関わらず、当該スイッチがオンしない異常状態に陥った場合、制御部は、再び上記両方に含まれる半導体スイッチをオフする。この場合、出力端子が再び開放状態となって出力端子の電圧が上昇し、上記他方に含まれる半導体スイッチが速やかに自己点弧する。その後、制御部が上記他方に含まれる半導体スイッチを確認的にオンする。続いて制御部が上記他方に含まれる機械接点を有するスイッチをオンすることにより、破壊耐量が大きい機械接点によってタップ付き変圧器のタップと他の変圧器の一の巻線とが接続される。
【0021】
本発明に係る負荷時タップ切換変圧器は、上述の負荷時タップ切換器と、前記タップ付き変圧器とを備える。
【0022】
本発明にあっては、タップ付き変圧器のタップを負荷時タップ切換器が選択する。従って、奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチそれぞれに含まれる半導体スイッチを過電圧又は過電流から保護することが可能な負荷時タップ切換器(OLTC )を、負荷時タップ切換変圧器(LRT:Load Ratio control Transformer )に適用することができる。
【0023】
本発明に係る電圧調整装置は、三相の交流電圧を電源から負荷に配電する配電線路に三相分の二次巻線が直列に接続され、一次巻線が三相結線されている直列変圧器と、請求項7に記載の負荷時タップ切換変圧器とを備える電圧調整装置であって、
前記負荷時タップ切換変圧器は、前記配電線路における前記直列変圧器の接続位置よりも前記負荷側の位置に前記タップ付き変圧器の一次巻線が三相結線され、前記直列変圧器の一次巻線に前記負荷時タップ切換器の出力端子が接続されている。
【0024】
本発明にあっては、三相分の二次巻線が三相の配電線路に直列接続される直列変圧器の一次巻線が三相結線され、負荷時タップ切換変圧器が備えるタップ付き変圧器の一次巻線が配電線路に三相結線される。そして、負荷時タップ切換変圧器が備える負荷時タップ切換器の出力端子が直列変圧器の一次巻線に接続される。これにより、負荷時タップ切換変圧器のタップを選択して切り換えることにより、配電線路の三相の電圧が調整される。従って、奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチそれぞれに含まれる半導体スイッチを過電圧又は過電流から保護することが可能な負荷時タップ切換器を備える負荷時タップ切換変圧器を、電圧調整装置(SVR )に適用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、切換開閉器に相当する奇数タップスイッチ及び偶数タップスイッチそれぞれに含まれる半導体スイッチを過電圧又は過電流から保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態1に係る負荷時タップ切換器で双方向サイリスタが誤開放した場合に過電圧が発生する部位を示すブロック図である。
図3】実施形態1に係る負荷時タップ切換器で出力端子の過電圧を検出してこれに対処する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態2に係る負荷時タップ切換器で双方向サイリスタが誤導通した場合に過電流が流れる経路を示すブロック図である。
図5】実施形態2に係る負荷時タップ切換器で双方向サイリスタに過電流が流れたことを検出してこれに対処する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態3に係る負荷時タップ切換器で系統短絡が発生した場合に過電流が流れる経路を示すブロック図である。
図7】実施形態3に係る負荷時タップ切換器で出力端子に流れる過電流を検出してこれに対処する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態4に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
図9】実施形態4に係る負荷時タップ切換器でスイッチの異常状態を検出して代替するスイッチをオンする制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図10】変形例1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
図11】変形例2に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施形態1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。図中1u,1v,1wは、電源から負荷(何れも不図示)へU,V,W三相の交流電圧を紙面の右向きに配電する配電線路である。いわゆる系統切替が発生した場合は、交流電圧が配電される向きが逆転して紙面の左向きとなる。電圧調整装置100aは、配電線路1u,1v,1wそれぞれに二次巻線21s,22s,23sが直列に接続される直列変圧器2と、配電線路1u,1v,1wに一次巻線31p,32pが接続されるタップ付き変圧器である調整変圧器3と、調整変圧器3の二次巻線31s,32s及び直列変圧器2の一次巻線21p,22p,23pの間に設けられた負荷時タップ切換器4aとを備える。調整変圧器3と負荷時タップ切換器4aとで負荷時タップ切換変圧器10aを構成する。
【0028】
直列変圧器2は、二次巻線21s,22s,23sそれぞれに一次巻線21p,22p,23pが対応している。一次巻線21p,22p,23pはスター(Y)結線されているが、調整変圧器3の二次巻線の結線に対応させてオープンスター結線又はデルタ結線されていてもよい。一次巻線21p,22p,23pそれぞれの一端は中性点Nに接続されている。一次巻線21p,22p,23pそれぞれの他端を端子u1,v1,w1とする。
【0029】
調整変圧器3は、一次巻線31pが配電線路1v,1w間に、一次巻線32pが配電線路1u,1v間に、それぞれ接続される。即ち、調整変圧器3は、2つの変圧器の一次巻線31p,32pが配電線路1u,1v,1wにV結線されるが、3つの変圧器の一次巻線が配電線路1u,1v,1wにスター結線又はデルタ結線されるものであってもよい。調整変圧器3は、一次巻線31p,32pそれぞれに二次巻線31s,32sが対応している。二次巻線31s,32sのそれぞれは、一端及び他端の間から引き出された奇数番号のタップt1,t3,t5,t7,t9と,偶数番号のタップt2,t4,t6,t8とを有する。
【0030】
負荷時タップ切換器4aは、調整変圧器3の二次巻線31sが有するタップt1,t3,t5,t7,t9及びタップt2,t4,t6,t8それぞれを選択する奇数タップ選択器41及び偶数タップ選択器42と、奇数タップ選択器41及び偶数タップ選択器42それぞれと出力端子91との間に接続された奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aとを有する。負荷時タップ切換器4aは、また、調整変圧器3の二次巻線32sが有するタップt1,t3,t5,t7,t9及びタップt2,t4,t6,t8それぞれを選択する奇数タップ選択器43及び偶数タップ選択器44と、奇数タップ選択器43及び偶数タップ選択器44それぞれと出力端子92との間に接続された奇数タップスイッチ7a及び偶数タップスイッチ8aとを有する。
【0031】
二次巻線31sが有するタップt1からt9の何れかは、奇数タップ選択器41及び奇数タップスイッチ5aと、偶数タップ選択器42及び偶数タップスイッチ6aとの何れかを介し、更に出力端子91を介して直列変圧器2の一次側の端子w1に接続されている。二次巻線32sが有するタップt1からt9の何れかは、奇数タップ選択器43及び奇数タップスイッチ7aと、偶数タップ選択器44及び偶数タップスイッチ8aとの何れかを介し、更に出力端子92を介して直列変圧器2の一次側の端子u1に接続されている。二次巻線31s及び32sそれぞれが有するタップt5は、出力端子93を介して直列変圧器2の一次側の端子v1に固定的に接続されている。
【0032】
負荷時タップ切換器4aは、更に、奇数タップ選択器41及び偶数タップ選択器42によるタップt1からt9の選択と、奇数タップ選択器43及び偶数タップ選択器44によるタップt1からt9の選択と、奇数タップスイッチ5a,7a及び偶数タップスイッチ6a,8aのオン/オフとを制御する制御部40を備える。制御部40には、後述する複数の接点信号等を入力するための入力部401と、奇数タップスイッチ5a,7a及び偶数タップスイッチ6a,8aをオン/オフに駆動するための駆動部402とが接続されている。
【0033】
制御部40は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、演算等の処理を行う。CPUによる各処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予めRAM(Random Access Memory )にロードし、ロードされたコンピュータプログラムをCPUが実行するようにしてもよいし、制御部40をマイクロコンピュータ又は専用のハードウェア回路で構成してもよい。
【0034】
奇数タップスイッチ5aは、双方向サイリスタ(半導体スイッチに相当)51及び速断ヒューズ53の直列回路と、該直列回路に並列接続された機械接点を有するスイッチ52とを含む。即ち、双方向サイリスタ51及びスイッチ52が並列的に接続されている。偶数タップスイッチ6aは、双方向サイリスタ61と、該双方向サイリスタ61に並列接続された機械接点を有するスイッチ62とを含む。双方向サイリスタ61には、矯絡用の双方向サイリスタ64及び限流抵抗器65の直列回路が並列接続されている。
【0035】
双方向サイリスタ64は、奇数タップ選択器41及び偶数タップ選択器42によってタップt1からt9を切り換える過程で、限流抵抗器65を介してタップ間を一時的に矯絡させる際に、タップ間への限流抵抗器65の接続及び切り離しを行うためのものである。双方向サイリスタ61の両端及びトリガ端子(ゲート)には、自己点弧回路61bが接続されている。双方向サイリスタ51,61,64それぞれの両端及びトリガ端子は駆動部402に接続されている。スイッチ52,62それぞれの駆動コイルは駆動部402に接続されている。
【0036】
奇数タップスイッチ7aは、双方向サイリスタ71及び速断ヒューズ73の直列回路と、該直列回路に並列接続された機械接点を有するスイッチ72とを含む。即ち、双方向サイリスタ71及びスイッチ72が並列的に接続されている。偶数タップスイッチ8aは、双方向サイリスタ81と、該双方向サイリスタ81に並列接続された機械接点を有するスイッチ82とを含む。双方向サイリスタ81には、矯絡用の双方向サイリスタ84及び限流抵抗器85の直列回路が並列接続されている。
【0037】
双方向サイリスタ84は、奇数タップ選択器43及び偶数タップ選択器44によってタップt1からt9を切り換える過程で、限流抵抗器85を介してタップ間を一時的に矯絡させる際に、タップ間への限流抵抗器85の接続及び切り離しを行うためのものである。双方向サイリスタ81の両端及びトリガ端子には、自己点弧回路81bが接続されている。双方向サイリスタ71,81,84それぞれの両端及びトリガ端子は駆動部402に接続されている。スイッチ72,82それぞれの駆動コイルは駆動部402に接続されている。
【0038】
速断ヒューズ53及び73のそれぞれは、溶断時に導通する警報接点53b及び73bを有する。スイッチ52,62,72,82は、例えば電磁接触器である。自己点弧回路61b及び81bのそれぞれは、双方向サイリスタ61及び81の両端に印加された電圧が規定の動作電圧に達したときにオン状態になるトリガ素子をアノード・ゲート間に接続したものである。警報接点53b及び73bは、入力部401に接続されている。警報接点53b及び73bは溶断検出部に相当する。
【0039】
出力端子91及び93の間には、出力端子93の電位に対する出力端子91の電圧、即ち双方向サイリスタ51及び61の一端に印加される電圧を計測する計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されている。出力端子92及び93の間には、出力端子93の電位に対する出力端子92の電圧、即ち双方向サイリスタ71及び81の一端に印加される電圧を計測する計測用変圧器PT2の一次巻線が接続されている。計測用変圧器PT1及びPT2それぞれの二次巻線は、入力部401に接続されている。計測用変圧器PT1及びPT2は電圧検出部に相当する。
【0040】
奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aの接続点と出力端子91との間には、出力端子91に流れる電流、即ち、双方向サイリスタ51又は61に流れる電流を検出する電流トランスCT1が設けられている。奇数タップスイッチ7a及び偶数タップスイッチ8aの接続点と出力端子92との間には、出力端子92に流れる電流、即ち、双方向サイリスタ71又は81に流れる電流を検出する電流トランスCT2が設けられている。電流トランスCT1及びCT2それぞれの二次巻線は入力部401に接続されている。電流トランスCT1及びCT2は電流検出部に相当する。
【0041】
なお、計測用変圧器PT1及びPT2に加えて、又は計測用変圧器PT1及びPT2に代えて、出力端子91及び92の間に他の計測用変圧器を接続し、該他の計測用変圧器によって出力端子91及び92の間の電圧を検出するようにしてもよい。また、電流トランスCT1及びCT2に加えて、又は電流トランスCT1及びCT2に代えて、出力端子93に流れる電流を他の電流トランスによって検出してもよい。また、配電線路1u,1v,1wの少なくとも1つに流れる電流を他の電流トランスによって検出し、直列変圧器2の変圧比に基づいて出力端子91,92,93の少なくとも1つに流れる電流を検出してもよい。
【0042】
上述の構成による電圧調整装置100aの運用中に、制御部40は、不図示の計測用変圧器によって配電線路1u,1v,1wの電圧を検出し、検出した電圧に基づいて奇数タップ選択器41,43及び偶数タップ選択器42,44に各タップを選択させるために、不図示の駆動機構に選択信号を与える。これにより、調整変圧器3のタップt1からt9が選択されて調整電圧が直列変圧器2に印加され、配電線路1u,1v,1wの三相の電圧が調整される。なお、この選択信号による駆動機構の制御については周知であるため、詳細な説明を省略する。
【0043】
奇数タップ選択器41,43及び偶数タップ選択器42,44による各タップの選択に伴い、制御部40は、選択されるタップが奇数番号か偶数番号かに応じて、奇数タップスイッチ5a又は偶数タップスイッチ6aをオンすると共に、奇数タップスイッチ7a又は偶数タップスイッチ8aをオンする。この場合、奇数タップスイッチ5a及び7aそれぞれとして双方向サイリスタ51及び71が用いられ、偶数タップスイッチ6a及び8aそれぞれとして双方向サイリスタ61及び81が用いられる。
【0044】
電圧調整装置100aの運用を終える場合、制御部40は、オンしている双方向サイリスタ51又は61に代えてスイッチ52又は62をオンすると共に、オンしている双方向サイリスタ71又は81に代えてスイッチ72又は82をオンする。これにより、調整変圧器3の二次巻線31sのタップt1からt9の何れかが機械接点を介して直列変圧器2の一次側の端子w1に接続され、二次巻線32sのタップt1からt9の何れかが機械接点を介して直列変圧器2の一次側の端子u1に接続される。
【0045】
電圧調整装置100aの運用中に、制御部40は、速断ヒューズ53及び73それぞれの警報接点53b及び73bからの接点信号と、計測用変圧器PT1及びPT2それぞれからの検出電圧と、電流トランスCT1及びCT2それぞれからの検出電流とを入力部401を介して取り込む。制御部40は、取り込んだ接点信号、検出電圧及び検出電流に基づき、双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84及びスイッチ52,62,72,82を駆動部402によってオン/オフに駆動する。
【0046】
本実施形態1では、制御部40は、計測用変圧器PT1及びPT2それぞれから検出電圧を取り込み、取り込んだ検出電圧に基づいて、出力端子91及び92の過電圧、即ち双方向サイリスタ51,61及び71,81に関する過電圧を検出する。このような過電圧は、例えば、双方向サイリスタ51,61及び71,81が制御部40の制御に反してオフすること(以下、誤開放という)によってもたらされる。
【0047】
制御部40は、出力端子91及び92それぞれの過電圧を検出した場合、双方向サイリスタ51,61及び71,81を過電圧による破壊から保護する処理を行う。出力端子91の過電圧を検出した場合と、出力端子92の過電圧を検出した場合とでは、制御部40が実行する処理が明らかに類似しているため、本実施形態1では、出力端子91の過電圧を制御部40が検出した場合の処理について説明する。双方向サイリスタ51が誤開放した場合と、双方向サイリスタ61が誤開放した場合とでは、これらの原因による過電圧を検出して対処する制御部40の処理内容が同一であるため、以下では、双方向サイリスタ51が誤開放した場合について説明する。
【0048】
図2は、実施形態1に係る負荷時タップ切換器4aで双方向サイリスタ51が誤開放した場合に過電圧が発生する部位を示すブロック図である。図2に示す接続構成は、図1に示すものと同一であるため、説明を省略する。なお、実施形態1では、警報接点53b,73bと、電流トランスCT1,CT2と、速断ヒューズ53,73とを用いない。
【0049】
双方向サイリスタ51がオンに制御されている場合、直列変圧器2の一次巻線23pには、二次巻線23sに流れている配電線路1wの電流に比例する電流が双方向サイリスタ51を介して流れている。ここで、図2に×印で示すように双方向サイリスタ51が誤開放した場合、直列変圧器2の一次巻線23pが開放状態となるため、黒塗りの両矢印で示すように出力端子91の電圧が上昇する。この電圧は、場合により数kVにも達する。
【0050】
制御部40は、計測用変圧器PT1が検出した電圧が所定の電圧閾値より高い場合、出力端子91の過電圧を検出する。過電圧が検出された場合、双方向サイリスタ51又は61が誤開放した蓋然性が高いことから、制御部40は、安全のために少なくとも双方向サイリスタ51及び61を一旦オフし、これに伴って双方向サイリスタ61(一方に含まれる半導体スイッチに相当)を自己点弧させて端子w1と二次巻線31sとの接続を速やかに確保する。然る後に、制御部40は、双方向サイリスタ61を確認的にオンし、更に後にスイッチ62(一方に含まれる機械接点を有するスイッチに相当)をオンする。これにより、直列変圧器2の一次巻線23p、スイッチ62の機械接点、偶数タップ選択器42及び調整変圧器3の二次巻線31sが閉ループを形成するようになり、出力端子91の過電圧が解消される。
【0051】
なお、双方向サイリスタ61が誤開放した場合に、双方向サイリスタ61を自己点弧させたり、制御部40の制御でオンさせたりすることができないときであっても、双方向サイリスタ61がオンしたか否かに関わらず、制御部40はスイッチ62をオンする。スイッチ62をオンした後に、制御部40は、双方向サイリスタ61をオフしてもよいし、オンのまま保持してもよい。
【0052】
上記で少なくとも双方向サイリスタ51及び61をオフして双方向サイリスタ61を自己点弧させるために、制御部40は、双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84の全てをオフにする。これは、少なくとも直列変圧器2の一次巻線23pを完全な開放状態にして出力端子91の電圧を上昇させるためである。自己点弧回路61bに含まれる上述のトリガ素子がオン状態になるときの出力端子91の電圧は、制御部40が過電圧を判定する電圧閾値よりも高く設定されている。このため、制御部40は、双方向サイリスタ61が自己点弧する前に、出力端子91の過電圧を検出することができる。
【0053】
本実施形態1にあっては、双方向サイリスタ61を自己点弧させるために、双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84の全てをオフにしたが、これに限定されるものではない。双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84の全てをオフにすることにより、直列変圧器2の一次巻線21p,22p,23pの全てが開放状態となり、出力端子91の電圧がより上昇する。但し、直列変圧器2の設計によっては、双方向サイリスタ51,61,64のみをオフした場合であっても、出力端子91の電圧を適度に上昇させることができる。
【0054】
以下では、上述した負荷時タップ切換器4aの動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。図3は、実施形態1に係る負荷時タップ切換器4aで出力端子91の過電圧を検出してこれに対処する制御部40の処理手順を示すフローチャートである。図3に示す処理は、電圧調整装置100aの運用中に適時起動される。図中、破線で囲んだステップは、制御部40が実行する処理ではなく、自己点弧回路61bがハードウェアで実行するステップである。
【0055】
図3の処理が起動された場合、制御部40は、入力部401を介して計測用変圧器PT1の検出電圧を取り込み(S10)、取り込んだ検出電圧が所定の電圧閾値より高いか否かを判定する(S11)。検出電圧が電圧閾値より高くない場合(S11:NO)、制御部40は、計測用変圧器PT1の検出電圧の取り込みを繰り返すために、ステップS10に処理を移す。
【0056】
検出電圧が電圧閾値より高い場合(S11:YES)、制御部40は、出力端子91の過電圧を検出したものとして全ての双方向サイリスタ(双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84;以下同様)をオフし(S13)、所定の第1時間だけ待機して(S14)各サイリスタが確実にオフするのを待ち受ける。この間に、自己点弧回路61bが双方向サイリスタ61をオンする(S15)、即ち自己点弧させる(以下同様)。その後、制御部40は、双方向サイリスタ61をオンし(S16)、更に後にスイッチ62をオンする(S17)
【0057】
次いで、制御部40は、スイッチ62の機械接点が確実にオンするのを待ち受けるために、第2時間だけ待機した(S18)後、双方向サイリスタ61をオフして(S19)図3の処理を終了する。上述したように、ステップS18及びS19の処理は省略してもよい。
【0058】
なお、ステップS11で双方向サイリスタ51がオンしている場合、ステップS13で双方向サイリスタ51をオフしてからステップS16で双方向サイリスタ61をオンするまでの間は、タップ間短絡が発生しないように双方向サイリスタ51が実際にオフするまでの時間を確保する必要がある。本実施形態1では双方向サイリスタ51が実際にオフしてタップ間が開放された直後に、ステップS15で自己点弧回路61bが双方向サイリスタ61をオンする(即ち自己点弧させる)ため、タップ間が開放される時間を最小限にすることができる。
【0059】
以上のように本実施形態1によれば、タップ付き変圧器である調整変圧器3の奇数番号のタップt1,t3,t5,t7,t9及び偶数番号のタップt2,t4,t6,t8それぞれを奇数タップ選択器41及び偶数タップ選択器42が選択し、選択されたそれぞれのタップを奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aが出力端子91に選択的に接続する。奇数タップスイッチ5aは、双方向サイリスタ51と機械接点を有するスイッチ52とが並列的に接続されており、偶数タップスイッチ6aは、双方向サイリスタ61と機械接点を有するスイッチ62とが並列的に接続されている。制御部40がこれらのスイッチをオン/オフする。奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aの一方に含まれる双方向サイリスタ61は、自己点弧回路61bによって自己点弧するようにしてある。電流が流れている直列変圧器2の一次巻線23pに接続される出力端子91は、奇数タップスイッチ5aに含まれる双方向サイリスタ51によって奇数番号のタップt1,t3,t5,t7,t9の何れかに接続されているか、又は偶数タップスイッチ6aに含まれる双方向サイリスタ61によって偶数番号のタップt2,t4,t6,t8の何れかに接続されている。
【0060】
制御部40が出力端子91の過電圧、即ち双方向サイリスタ51及び61に関する過電圧を検出して少なくとも奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aの両方に含まれる双方向サイリスタ51及び61をオフした場合、出力端子91がより確実な開放状態となって出力端子91の電圧が的確に上昇し、上記一方に含まれる双方向サイリスタ61が速やかに自己点弧する。その後、制御部40が上記一方に含まれる双方向サイリスタ61を確認的にオンする。続いて制御部40が上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチ62をオンすることにより、破壊耐量が大きい機械接点によって調整変圧器3のタップt2,t4,t6,t8の何れかと直列変圧器2の一次巻線23pの端子w1とが接続されて過電圧が解消する。従って、切換開閉器に相当する奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aそれぞれに含まれる双方向サイリスタ51及び61を過電圧から保護することが可能となる。
【0061】
また、実施形態1によれば、オンしている方の双方向サイリスタ51が誤ってオフになったときに、直列変圧器2の一次巻線23pが開放されて出力端子91に過電圧が発生する。制御部40は、出力端子91の電圧が所定の電圧閾値より高いと判定することによって過電圧を検出することができる。
【0062】
更に、実施形態1によれば、調整変圧器3のタップt1からt9を負荷時タップ切換器4aが選択する。従って、奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aそれぞれに含まれる双方向サイリスタ51及び61を過電圧から保護することが可能な負荷時タップ切換器4aを、負荷時タップ切換変圧器10aに適用することができる。
【0063】
更に、実施形態1によれば、三相分の二次巻線21s,22s,23sそれぞれが三相の配電線路1u,1v,1wに直列接続される直列変圧器2の一次巻線21p,22p,23pがスター結線され、負荷時タップ切換変圧器10aが備える調整変圧器3の一次巻線31p,32pが配電線路1u,1v,1wにV結線される。そして、負荷時タップ切換変圧器10aが備える負荷時タップ切換器4aの出力端子91,92,93それぞれが直列変圧器2の一次巻線23p,21p,22pに接続される。これにより、調整変圧器3のタップt1からt9を選択して切り換えることにより、配電線路1u,1v,1wの三相の電圧が調整される。従って、奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aそれぞれに含まれる双方向サイリスタ51及び61を過電圧から保護することが可能な負荷時タップ切換器4aを備える負荷時タップ切換変圧器10aを、電圧調整装置100aに適用することができる。
【0064】
(実施形態2)
実施形態1は、制御部40が出力端子91及び92の過電圧を検出してこれに対処するする形態であるのに対し、実施形態2は、制御部40が双方向サイリスタ51及び71に過電流が流れたことを検出してこれに対処する形態である。本実施形態2では、制御部40は、警報接点53b及び73bそれぞれの接点信号を取り込み、取り込んだ接点信号に基づいて、双方向サイリスタ51及び71に過電流が流れたこと、即ち双方向サイリスタ51及び71に関する過電流を検出する。このような過電流は、例えば、双方向サイリスタ51,61及び71,81が制御部40の制御に反してオンすること(以下、誤導通という)によってもたらされる。
【0065】
制御部40は、双方向サイリスタ51及び71それぞれに過電流が流れたことを検出した場合、双方向サイリスタ51,61及び71,81に過電流の影響が残るのを防止する処理を行う。双方向サイリスタ51に過電流が流れたことを検出した場合と、双方向サイリスタ71に過電流が流れたことを検出した場合とでは、制御部40が実行する処理が明らかに類似しているため、本実施形態1では、双方向サイリスタ51に過電流が流れたことを制御部40が検出した場合の処理について説明する。双方向サイリスタ51が誤導通した場合と、双方向サイリスタ61が誤導通した場合とでは、これらの原因による過電流を検出して対処する制御部40の処理内容が同一であるため、以下では、双方向サイリスタ61が誤導通した場合について説明する。
【0066】
図4は、実施形態2に係る負荷時タップ切換器4aで双方向サイリスタ61が誤導通した場合に過電流が流れる経路を示すブロック図である。図4に示す接続構成は、図1に示すものと同一であるため、説明を省略する。実施形態2では、計測用変圧器PT1,PT2と、電流トランスCT1,CT2とを用いない。
【0067】
双方向サイリスタ51がオンに制御されている状態で、図4に×印で示すように双方向サイリスタ61が誤導通した場合、黒塗りの両矢印で示すように二次巻線31sについてタップ間短絡が発生する。この場合の短絡電流は、場合により数kAにも達するため、速断ヒューズ53が速やかに溶断して警報接点53bの接点信号がオンとなる。
【0068】
制御部40は、警報接点53bの接点信号がオンであると判定して速断ヒューズ53の溶断を検出した場合、双方向サイリスタ51に過電流が流れたことを検出する。ここで過電流が流れたことが検出された場合、双方向サイリスタ51又は61が誤導通した蓋然性が高いことから、制御部40は、安全のために少なくとも双方向サイリスタ51及び61を一旦オフし、これに伴って双方向サイリスタ61を自己点弧させて端子w1と二次巻線31sとの接続を速やかに確保する。然る後に、制御部40は、双方向サイリスタ61を確認的にオンし、更に後にスイッチ62をオンする。これにより、直列変圧器2の一次巻線23p、スイッチ62の機械接点、偶数タップ選択器42及び調整変圧器3の二次巻線31sが閉ループを形成するようになる。タップ間短絡の状態は、速断ヒューズ53が溶断した時点で解消されている。
【0069】
上記で少なくとも双方向サイリスタ51及び61をオフして双方向サイリスタ61を自己点弧させるために、制御部40は、双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84の全てをオフにする。この処理及びこの後の制御部40の動作については、実施形態1の場合と同様である。
【0070】
以下では、上述した負荷時タップ切換器4aの動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。図5は、実施形態2に係る負荷時タップ切換器4aで双方向サイリスタ51に過電流が流れたことを検出してこれに対処する制御部40の処理手順を示すフローチャートである。図5に示す処理は、電圧調整装置100aの運用中に適時起動される。図中、破線で囲んだステップは、制御部40が実行する処理ではなく、自己点弧回路61bがハードウェアで実行するステップである。
【0071】
図5の処理が起動された場合、制御部40は、入力部401を介して警報接点53bの接点信号を取り込み(S20)、取り込んだ接点信号がオンであるか否かを判定する(S21)。接点信号がオンではない場合(S21:NO)、制御部40は、警報接点53bの接点信号の取り込みを繰り返すために、ステップS20に処理を移す。
【0072】
接点信号がオンである場合(S21:YES)、制御部40は、全ての双方向サイリスタをオフする(S23)。この後のステップS24からS29までの処理は、実施形態1の図3に示すステップS14からS19までの処理と同一であるため、その説明を省略する。
【0073】
以上のように本実施形態2によれば、制御部40が双方向サイリスタ51に過電流が流れたこと、即ち双方向サイリスタ51に関する過電流を検出した場合、少なくとも奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aの両方に含まれる双方向サイリスタをオフし、これに伴って双方向サイリスタ61を自己点弧させ、更に双方向サイリスタ61をオンした後にスイッチ62をオンする。これにより、破壊耐量が大きい機械接点によって調整変圧器3のタップt2,t4,t6,t8の何れかと直列変圧器2の一次巻線23pの端子w1とが接続される。従って、切換開閉器に相当する奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aそれぞれに含まれる双方向サイリスタ51及び61に過電流の影響が残るのを防止することが可能となる。
【0074】
また、実施形態2によれば、オフしている方の双方向サイリスタ61が誤ってオンになったときは、奇数番号のタップt1,t3,t5,t7,t9の何れかと偶数番号のタップt2,t4,t6,t8の何れかとを介してタップ間短絡が発生し、少なくとも双方向サイリスタ51に過電流が流れて該双方向サイリスタ51に直列に接続された速断ヒューズ53が溶断する。制御部40は、警報接点53bからの接点信号に基づいて速断ヒューズ53の溶断を検出することによって過電流を検出することができる。
【0075】
(実施形態3)
実施形態1は、制御部40が出力端子91及び92の過電圧を検出してこれに対処する形態であるのに対し、実施形態3は、制御部40が出力端子91及び92に流れる過電流を検出してこれに対処する形態である。本実施形態3では、制御部40は、電流トランスCT1及びCT2それぞれから検出電流を取り込み、取り込んだ検出電流に基づいて、出力端子91及び92に流れる過電流、即ち双方向サイリスタ51,61及び71,81に関する過電流を検出する。このような過電流は、例えば、直列変圧器2の二次巻線21s,22s,23sにおける接続先に短絡(以下、系統短絡という)が発生した場合に発生する。
【0076】
制御部40は、出力端子91及び92それぞれに流れる過電流を検出した場合、双方向サイリスタ51,61及び71,81を過電流による破壊から保護する処理を行う。出力端子91に流れる過電流を検出した場合と、出力端子92に流れる過電流を検出した場合とでは、制御部40が実行する処理が明らかに類似しているため、本実施形態1では、出力端子91に流れる過電流を制御部40が検出した場合の処理について説明する。
【0077】
図6は、実施形態3に係る負荷時タップ切換器4aで系統短絡が発生した場合に過電流が流れる経路を示すブロック図である。図6に示す接続構成は、図1に示すものと同一であるため、説明を省略する。実施形態3では、警報接点53b,73bと、計測用変圧器PT1,PT2とを用いない。
【0078】
双方向サイリスタ51がオンに制御されている状態で系統短絡が発生した場合、黒塗りの矢印で示すように、直列変圧器2の一次巻線22p,23pと、速断ヒューズ53と、奇数タップ選択器41と、調整変圧器3の二次巻線31sとを介して双方向サイリスタ51に過電流が流れる。一方、双方向サイリスタ61がオンに制御されている状態で系統短絡が発生した場合、黒塗りの矢印及び破線の矢印で示すように、直列変圧器2の一次巻線22p,23pと、偶数タップ選択器42と、調整変圧器3の二次巻線31sとを介して双方向サイリスタ61に過電流が流れる。
【0079】
制御部40は、電流トランスCT1が検出した電流が所定の電流閾値より大きい場合、出力端子91に流れる過電流を検出する。この過電流が検出された場合、系統短絡が発生した蓋然性が高いことから、制御部40は、双方向サイリスタ51及び61によらずに機械接点を有するスイッチ62によって、端子w1と二次巻線31sとの接続を速やかに確保する。なお、制御部40が、出力端子91に流れる過電流を検出する前に、警報接点53bによって速断ヒューズ53の溶断を検出した場合は、実施形態2に係る処理が先に実行されて、本実施形態3に係る処理は実行されないものとする。
【0080】
スイッチ62によって端子w1と二次巻線31sとの接続を確保するには、実施形態1及び2の場合と同様に、双方向サイリスタ51,61,64,71,81,84の全てをオフにし、これに伴って双方向サイリスタ61を自己点弧させ、更に双方向サイリスタ61をオンした後にスイッチ62をオンするようにしてもよい。但し、実施形態1及び2の場合とは異なり、双方向サイリスタ51,61が誤開放又は誤導通したケースではないため、安全のためにこれらの双方向サイリスタ51,61を必ずしも一旦オフにする必要がない。
【0081】
そこで、本実施形態3では、出力端子91に流れる過電流が検出された場合に、双方向サイリスタ51をオンに制御しているときは、上記の実施形態1及び2の場合と同様の処理を実行し、双方向サイリスタ61をオンに制御しているときは、直ちにスイッチ62をオンする処理を実行する。これにより、双方向サイリスタ61をオンに制御しているときは、処理時間が短縮される上に、自己点弧回路61bが動作する程度の高電圧がタップ間に発生することもない。
【0082】
以下では、上述した負荷時タップ切換器4aの動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。図7は、実施形態3に係る負荷時タップ切換器4aで出力端子91に流れる過電流を検出してこれに対処する制御部40の処理手順を示すフローチャートである。図7に示す処理は、電圧調整装置100aの運用中に適時起動される。図中、破線で囲んだステップは、制御部40が実行する処理ではなく、自己点弧回路61bがハードウェアで実行するステップである。
【0083】
図7の処理が起動された場合、制御部40は、入力部401を介して電流トランスCT1の検出電流を取り込み(S30)、取り込んだ検出電流が所定の電流閾値より大きいか否かを判定する(S31)。検出電流が電流閾値より大きくない場合(S31:NO)、制御部40は、電流トランスCT1の検出電流の取り込みを繰り返すために、ステップS30に処理を移す。
【0084】
検出電流が電流閾値より大きい場合(S31:YES)、制御部40は、双方向サイリスタ61をオンに制御している状態であるか否かを判定し(S32)、オンに制御している状態である場合(S32:YES)、直ちにスイッチ62をオンするために、後述するステップS37に処理を移す。なお、双方向サイリスタ61をオンに制御している状態であるか否かは、奇数タップ選択器41,43及び偶数タップ選択器42,44にタップt1からt9を選択させる処理によって、制御部40が有する不図示の記憶部に記憶されている。
【0085】
一方、双方向サイリスタ61をオンに制御している状態ではない場合(S32:NO)、制御部40は、全ての双方向サイリスタをオフする(S33)。この後のステップS34からS39までの処理は、実施形態1の図3に示すステップS14からS19までの処理と同一であるため、その説明を省略する。
【0086】
以上のように本実施形態3によれば、制御部40が出力端子91に流れる過電流、即ち双方向サイリスタ51及び61に関する過電流を検出した場合、双方向サイリスタ51をオンに制御しているときは、少なくとも奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aの両方に含まれる双方向サイリスタ51及び61をオフし、これに伴って双方向サイリスタ61を自己点弧させ、更に双方向サイリスタ61をオンした後にスイッチ62をオンする。これにより、破壊耐量が大きい機械接点によって調整変圧器3のタップt2,t4,t6,t8の何れかと直列変圧器2の一次巻線23pの端子w1とが接続される。従って、切換開閉器に相当する奇数タップスイッチ5a及び偶数タップスイッチ6aそれぞれに含まれる双方向サイリスタ51及び61を過電流から保護することが可能となる。
【0087】
また、実施形態3によれば、直列変圧器2の二次巻線21s,22s,23sにおける接続先に短絡が発生した場合、一次巻線22p,23pに接続された出力端子91,93に過電流が流れる。制御部40は、出力端子91に流れる電流が所定の電流閾値より大きいと判定することによって過電流を検出することができる。制御部40は、双方向サイリスタ61をオンに制御している間に過電流を検出した場合は、機械接点を有するスイッチ62を直ちにオンする。従って、既に双方向サイリスタ61をオンに制御しているときは、双方向サイリスタ61を一旦オフすることなく、スイッチ62の機械接点を閉じることができる。
【0088】
(実施形態4)
実施形態1から3は、双方向サイリスタ51及び71に自己点弧回路が接続されていない形態であるのに対し、実施形態4は、双方向サイリスタ51及び71それぞれにも自己点弧回路51b及び71bが接続されており、更に、スイッチ62及び82それぞれが補助接点62b及び82bを有する形態である。本実施形態4では、スイッチ62及び82それぞれがオンしない異常状態が発生した場合、代替的に、制御部40がスイッチ52及び72をオンする。
【0089】
図8は、実施形態4に係る電圧調整装置100bの構成例を示すブロック図である。電圧調整装置100bは、直列変圧器2と、調整変圧器3と、負荷時タップ切換器4bとを備える。調整変圧器3と負荷時タップ切換器4bとで負荷時タップ切換変圧器10bを構成する。負荷時タップ切換器4bは、実施形態1の負荷時タップ切換器4aと比較して、奇数タップスイッチ5b及び7bそれぞれが自己点弧回路51b及び71bを更に有し、偶数タップスイッチ6b及び8bそれぞれが補助接点62b及び82b(異常検出部に相当)を更に有する。
【0090】
自己点弧回路51b及び71b(第2の自己点弧回路に相当)のそれぞれは、双方向サイリスタ51及び71の両端に印加された電圧が規定の動作電圧に達したときにオン状態になるトリガ素子をアノード・ゲート間に接続したものである。補助接点62b及び82bのそれぞれは、スイッチ62及び82の機械接点と同時にオン/オフして接点信号を出力するものである。補助接点62b及び82bは、入力部401に接続されている。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
本実施形態4では、制御部40が、補助接点62b及び82bそれぞれから取り込んだ接点信号に基づいて、スイッチ62及び82がオンしない異常状態を検出した場合、スイッチ62及び82それぞれに代えてスイッチ52及び72をオンする。スイッチ62がオンしない異常状態を検出した場合と、スイッチ82がオンしない異常状態を検出した場合とでは、これらの異常状態に対処するために制御部40が実行する処理が明らかに類似しているため、以下では、スイッチ62がオンしない異常状態を制御部40が検出した場合について説明する。
【0092】
最初に、図8に示す電圧調整装置100bを実施形態1及び3に適用した場合に、自己点弧回路51bがどのように作用するかについて、フローチャートに沿って説明する。自己点弧回路71bの作用についても同様である。なお、電圧調整装置100bを実施形態2に適用した場合は、双方向サイリスタ61の誤導通に伴うタップ間短絡によって速断ヒューズ53が溶断することで、自己点弧回路51bに電圧が印加されなくなるため、自己点弧回路51bは特段の作用を及ぼさない。
【0093】
電圧調整装置100bを実施形態1及び3に適用した場合、図3及び7それぞれに示すフローチャートのステップS15及びS35では、自己点弧回路61bが双方向サイリスタ61をオンするか、又は自己点弧回路51bが双方向サイリスタ51をオンするか、何れか一方の事象が発生する。このため、自己点弧回路61bが双方向サイリスタ61をオンすることができない場合、必然的に自己点弧回路51bが双方向サイリスタ51をオンすることとなり、制御部40がステップS17及びS37でスイッチ62をオンする前に、出力端子91の電圧を確実に低下させておくことができる。
【0094】
一方、自己点弧回路61bが双方向サイリスタ61をオンすることが可能な状態で、先に自己点弧回路51bが双方向サイリスタ51をオンした場合、制御部40がステップS16及びS36で双方向サイリスタ61をオンしたときに、タップ間短絡が発生し、速断ヒューズ53が溶断する。従って、制御部40がステップS17及びS37でスイッチ62をオンすることにより、実施形態1及び3の場合と同様に、双方向サイリスタ51,61を過電圧及び過電流から保護することが可能となる。
【0095】
次に、実施形態1から3で制御部40がスイッチ62をオンすることができなかった場合に実行される異常処理について説明する。スイッチ62が有する機械接点は、電圧調整装置100bが運用を停止するときにオンされるものであるため、運用が長期間にわたった後では、接点の接触不良によってオンしない異常状態に陥ることがあり得る。制御部40は、スイッチ62の主たる機械接点と同時にオン/オフする補助接点62bの接点信号を、入力部401を介して取り込むことにより、このような異常状態を検出することができる。
【0096】
制御部40は、スイッチ62の異常状態を検出した場合、スイッチ62に代えてスイッチ52をオンする。スイッチ52をオンするための制御部40の処理手順は、実施形態1から3にて制御部40がスイッチ62をオンするときの処理手順と類似している。具体的には、制御部40は、少なくとも奇数タップスイッチ5b及び偶数タップスイッチ6bの両方に含まれる双方向サイリスタ51及び61をオフし、これに伴って双方向サイリスタ51を自己点弧させ、更に双方向サイリスタ51をオンした後にスイッチ52をオンする。
【0097】
以下では、上述した負荷時タップ切換器4bの動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。図9は、実施形態4に係る負荷時タップ切換器4bでスイッチ62の異常状態を検出して代替するスイッチ52をオンする制御部40の処理手順を示すフローチャートである。図9の処理は、実施形態1,2,3それぞれの図3,5,7に示すステップS16,S26,S36の処理に続けて実行される。具体的には、図9のステップS17bが、図3,5,7それぞれに示すステップS17,S27,S37に対応している。また、ステップS17b,S18b,S19bが、実施形態1の図3に示すステップS17,S18,S19に対応している。実施形態2,3についても同様である。
【0098】
制御部40は、スイッチ62をオンし(S17b)、第2時間だけ待機した(S18b)後に、補助接点62bの接点信号を取り込む(S40)。制御部40は、取り込んだ接点信号がオンであるか否かを判定し(S41)、オンである場合(S41:YES)、実施形態1,2,3の場合と同様に双方向サイリスタ61をオフして(S19b)、図9の処理を終了する。
【0099】
一方、取り込んだ接点信号がオンではない場合(S41:NO)、即ちスイッチ62がオンしない異常状態が発生した場合、制御部40は、信頼できないスイッチ62をオフする(S42)。次いで、制御部40は、全ての双方向サイリスタをオフし(S43)、所定の第1時間だけ待機して(S44)各サイリスタが確実にオフするのを待ち受ける。この間に、自己点弧回路51b又は61bが双方向サイリスタ51又は61をオンする(S45)。実施形態2にて既に速断ヒューズ53が溶断していたときは、自己点弧回路51bに電圧が印加されないため、このステップS45で必然的に自己点弧回路61bが双方向サイリスタ61をオンする。
【0100】
その後、制御部40は、双方向サイリスタ51をオンする(S46)。実施形態1及び3にて速断ヒューズ53が溶断していない状態で、上記ステップS45にて先に双方向サイリスタ61がオンしていたときは、このステップS46でタップ間短絡が発生する。但し、速断ヒューズ53が溶断してタップ間短絡が直ちに解消するため、以下の処理ステップに支障は生じない。また、実施形態2にて既に速断ヒューズ53が溶断していたときは、自己点弧回路51bに電圧が印加されないため、このステップS46では双方向サイリスタ51がオンしない。但し、上記ステップS45にて双方向サイリスタ61がオンしているため、次のステップS47でスイッチ52をオンする前に、出力端子91の電圧は確実に低下している。
【0101】
次いで、制御部40は、スイッチ52をオンする(S47)。実施形態2にて既に速断ヒューズ53が溶断していた状態で、ステップS45にて双方向サイリスタ61がオンしていたときは、このステップS47にてタップ間短絡が発生する。但し、数ms以内に双方向サイリスタ61に流れる電流がゼロクロスして双方向サイリスタ61がオフし、タップ間短絡が解消するため、特段の問題は生じない。
【0102】
次いで、制御部40は、スイッチ52の機械接点が確実にオンするのを待ち受けるために、第2時間だけ待機した(S48)後、双方向サイリスタ51をオフして(S49)図9の処理を終了する。上述したように、ステップS48及びS49の処理は省略してもよい。
【0103】
以上のように本実施形態4によれば、奇数タップスイッチ5b及び偶数タップスイッチ6bの他方に含まれる双方向サイリスタ51についても、自己点弧回路51bにより自己点弧するようにしてある。制御部40が双方向サイリスタ51及び61に関する過電圧又は過電流を検出して、少なくとも奇数タップスイッチ5b及び偶数タップスイッチ6bの両方に含まれる双方向サイリスタ51及び61をオフした場合、出力端子91がより確実な開放状態となって出力端子91の電圧が的確に上昇し、上記一方又は他方に含まれる双方向サイリスタ61又は51が速やかに自己点弧する。これにより、上記一方に含まれる双方向サイリスタ61が自己点弧しない場合であっても、上記他方に含まれる双方向サイリスタ51が自己点弧するため、制御部40が上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチ52をオンするときに、機械接点に印加される電圧を確実に低下させておくことができる。
【0104】
また、実施形態4によれば、制御部40が上記一方に含まれる機械接点を有するスイッチ62をオンしたにも関わらず、当該スイッチ62がオンしない異常状態に陥った場合、制御部40は、少なくとも上記両方に含まれる双方向サイリスタ51及び61を再びオフする。この場合、出力端子91が再び開放状態となって出力端子91の電圧が上昇し、上記他方に含まれる双方向サイリスタ51が速やかに自己点弧する。その後、制御部40が上記他方に含まれる双方向サイリスタ51を確認的にオンする。続いて制御部40が上記他方に含まれる機械接点を有するスイッチ52をオンすることにより、破壊耐量が大きい機械接点によって調整変圧器3のタップt2,t4,t6,t8の何れかと直列変圧器2の一次巻線23pの端子w1とが接続される。従って、奇数タップスイッチ5b及び偶数タップスイッチ6bそれぞれに含まれる双方向サイリスタ51及び61を過電圧や過電流から保護することが可能となる。
【0105】
(変形例1)
実施形態1から3は、機械接点を有するスイッチ52に流れる電流が、速断ヒューズ53には流れない構成であったが、スイッチ52に流れる電流が、速断ヒューズ53に流れる構成であってもよい。同様に、スイッチ72に流れる電流が、速断ヒューズ73に流れる構成であってもよい。
【0106】
図10は、変形例1に係る電圧調整装置100cの構成例を示すブロック図である。電圧調整装置100cは、直列変圧器2と、調整変圧器3と、負荷時タップ切換器4cとを備える。調整変圧器3と負荷時タップ切換器4cとで負荷時タップ切換変圧器10cを構成する。負荷時タップ切換器4cは、実施形態1から3の負荷時タップ切換器4aと比較して、速断ヒューズ53及び73の接続位置が異なっている。
【0107】
即ち、奇数タップスイッチ5cは、双方向サイリスタ51及びスイッチ52の並列回路と、速断ヒューズ53とが直列に接続されている。奇数タップスイッチ7cは、双方向サイリスタ71及びスイッチ72の並列回路と、速断ヒューズ73とが直列に接続されている。換言すれば、実施形態1から3の場合と比較して、スイッチ52及び72の接続部位が変更されている。その他、実施形態1から3に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0108】
実施形態1から3にあっては、電圧調整装置100aの運用中にスイッチ52及び72がオンにされることはなかった。従って、変形例1にてスイッチ52及び72の接続部位を変更した場合であっても、実施形態1から3と同様の効果を奏する。また、双方向サイリスタ51及び71それぞれに自己点弧回路51b及び71bを追加して、実施形態1から3に適用することにより、双方向サイリスタ51及び71を過電圧及び過電流からより確実に保護することもできる。
【0109】
(変形例2)
実施形態1から3では、奇数タップスイッチ5a,7a及び偶数タップスイッチ6a,8aの何れか一方とは、偶数タップスイッチ6a,8aを指していた。例えば、奇数タップスイッチ5aに含まれる双方向サイリスタ51に速断ヒューズ53を直列接続してあり、制御部40が双方向サイリスタ51及び61に関する過電圧及び過電流を検出した場合、最終的に偶数タップスイッチ6aに含まれるスイッチ62をオンにした。
【0110】
本変形例2では、上記の偶数と奇数の関係を入れ替える。例えば、偶数タップスイッチ6dに含まれる双方向サイリスタ61に速断ヒューズ63を直列接続してあり、制御部40が双方向サイリスタ51及び61に関する過電圧及び過電流を検出した場合、最終的に奇数タップスイッチ5dに含まれるスイッチ52をオンにする。
【0111】
図11は、変形例2に係る電圧調整装置100dの構成例を示すブロック図である。電圧調整装置100dは、直列変圧器2と、調整変圧器3と、負荷時タップ切換器4dとを備える。調整変圧器3と負荷時タップ切換器4dとで負荷時タップ切換変圧器10dを構成する。負荷時タップ切換器4dは、実施形態1から3の負荷時タップ切換器4aと比較して、速断ヒューズ53及び73が削除されており、速断ヒューズ63及び83が追加されている。
【0112】
奇数タップスイッチ5dは、双方向サイリスタ51と、該双方向サイリスタ51に並列接続されたスイッチ52とを含む。偶数タップスイッチ6dは、双方向サイリスタ61及び速断ヒューズ63の直列回路と、該直列回路に並列接続されたスイッチ62とを含む。即ち、双方向サイリスタ61及びスイッチ62が並列的に接続されている。速断ヒューズ63は、溶断時に導通する警報接点63bを有する。警報接点63bは入力部401に接続されている。
【0113】
奇数タップスイッチ7dは、双方向サイリスタ71と、該双方向サイリスタ71に並列接続されたスイッチ72とを含む。偶数タップスイッチ8dは、双方向サイリスタ81及び速断ヒューズ83の直列回路と、該直列回路に並列接続されたスイッチ82とを含む。即ち、双方向サイリスタ81及びスイッチ82が並列的に接続されている。速断ヒューズ83は、溶断時に導通する警報接点83bを有する。警報接点83bは入力部401に接続されている。その他、実施形態1から3に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0114】
本変形例2にあっては、上述のとおり奇数タップスイッチ5d,7d及び偶数タップスイッチ6d,8dと、実施形態1から3に係る奇数タップスイッチ5a,7a及び偶数タップスイッチ6a,8aとでは、偶数と奇数の関係が入れ替わっている。従って図3,5,7に示すフローチャートにおける双方向サイリスタ、自己点弧回路及びスイッチの符号を入れ替えることにより、実施形態1から3に係る電圧調整装置100aと同様の効果を奏する。
【0115】
例えば、図3に示すステップS15では「自己点弧回路51bが双方向サイリスタ51をオン」とし、ステップS16では「双方向サイリスタ51 オン」とし、ステップS17では「スイッチ52 オン」とし、ステップS19では「双方向サイリスタ51 オフ」とする。図5,7についても同様である。
【0116】
なお、本変形例2におけるスイッチ62及び82の接続部位を、変形例1におけるスイッチ52及び72の接続部位と同様に変更することにより、スイッチ62及び82それぞれに流れる電流が、速断ヒューズ63及び83に流れるようにしてもよい。このように構成した場合であっても、変形例1の場合と同様に、実施形態1から3と同様の効果を奏する。
【0117】
また、本変形例2におけるスイッチ52及び72それぞれに補助接点を追加し、双方向サイリスタ61及び81それぞれに自己点弧回路61b及び81bを更に追加してもよい。このように追加した構成は、実施形態4に係る負荷時タップ切換器4bにおける奇数タップスイッチ5b,7b及び偶数タップスイッチ6b,8bにて偶数と奇数の関係を入れ替えたものとなり、実施形態4と同様の効果を奏する。
【0118】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施の形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1u,1v,1w 配電線路、 2 直列変圧器、 21p,22p,23p 一次巻線、 21s,22s,23s 二次巻線、 u1,v1,w1 端子、 N 中性点、 3 調整変圧器、 31p,32p 一次巻線、 31s,32s 二次巻線、 t1,t2,t3,t4,t5,t6,t7,t8,t9 タップ、 4a,4b,4c,4d 負荷時タップ切換器、 40 制御部、 401 入力部、 402 駆動部、 41,43 奇数タップ選択器、 42,44 偶数タップ選択器、 5a,5b,5c,5d,7a,7b,7c,7d 奇数タップスイッチ、 6a,6b,6d,8a,8b,8d 偶数タップスイッチ、 51,61,64,71,81,84 双方向サイリスタ、 52,62,72,82 スイッチ、 53,63,73,83 速断ヒューズ、 53b,63b,73b,83b 警報接点、 51b,61b,71b,81b 自己点弧回路、 62b,82b 補助接点、 65,85 限流抵抗器、 PT1,PT2 計測用変圧器、 CT1,CT2 電流トランス、 91,92,93 出力端子、 10a,10b,10c,10d 負荷時タップ切換変圧器、 100a,100b,100c,100d 電圧調整装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11