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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】測位装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
G01S5/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019124318
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021009123
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボルティ デバシシュ
(72)【発明者】
【氏名】尾形 英治
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194445(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1374589(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045750(US,A1)
【文献】特開2016-142637(JP,A)
【文献】特開2002-142246(JP,A)
【文献】特開昭64-78180(JP,A)
【文献】特開2020-122742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定局、第2固定局および第3固定局のそれぞれと無線端末との間の距離測定値を、前記第1固定局、前記第2固定局および前記第3固定局のうちの少なくとも1つ、または、前記無線端末から取得する情報取得処理と、
前記第1固定局と前記無線端末との間の第1距離測定値、前記第2固定局と前記無線端末との間の第2距離測定値および前記第3固定局と前記無線端末との間の第3距離測定値のうち少なくとも1つを補正する距離補正処理と、
前記距離補正処理が施された前記第1距離測定値、前記第2距離測定値および前記第3距離測定値に基づいて、前記無線端末の位置を求める位置決定処理と、を実行し、
前記距離補正処理は、
前記第1固定局の位置を中心とし、前記第1距離測定値を半径とする第1円、
前記第2固定局の位置を中心とし、前記第2距離測定値を半径とする第2円、および、
前記第3固定局の位置を中心とし、前記第3距離測定値を半径とする第3円のうち少なくとも1つの半径を各円の幾何学的関係に基づいて変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理であり、
前記距離補正処理は、さらに、
前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが2点で交差する交差関係、または、前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが1点で接触する1点接触関係が成立し、かつ、残りの1つの円が他の2つの円のうち一方に包含され、あるいは、当該残りの1つの円が当該他の2つの円のうちの一方を包含する場合に、
前記交差関係または前記1点接触関係が維持されるか、あるいは、前記交差関係にあった2つの円について前記1点接触関係を成立させるという条件の下で、内包している円の半径を小さくし、かつ、内包されている円の半径を大きくする内包解消処理を含むことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測位装置において、
前記内包解消処理は、
前記交差関係および前記1点接触関係のいずれも維持されず、かつ、前記交差関係にあった2つの円について前記1点接触関係が成立することとならない場合には、内包している円、または、内包されている円の一方のみの半径を変化させる処理を含むことを特徴とする測位装置。
【請求項3】
第1固定局、第2固定局および第3固定局のそれぞれと無線端末との間の距離測定値を、前記第1固定局、前記第2固定局および前記第3固定局のうちの少なくとも1つ、または、前記無線端末から取得する情報取得処理と、
前記第1固定局と前記無線端末との間の第1距離測定値、前記第2固定局と前記無線端末との間の第2距離測定値および前記第3固定局と前記無線端末との間の第3距離測定値のうち少なくとも1つを補正する距離補正処理と、
前記距離補正処理が施された前記第1距離測定値、前記第2距離測定値および前記第3距離測定値に基づいて、前記無線端末の位置を求める位置決定処理と、を実行し、
前記距離補正処理は、
前記第1固定局の位置を中心とし、前記第1距離測定値を半径とする第1円、
前記第2固定局の位置を中心とし、前記第2距離測定値を半径とする第2円、および、
前記第3固定局の位置を中心とし、前記第3距離測定値を半径とする第3円のうち少なくとも1つの半径を各円の幾何学的関係に基づいて変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理であり、
前記距離補正処理は、さらに、
前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが2点で交差する交差関係、または、前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが1点で接触する1点接触関係が成立し、かつ、残りの1つの円が、当該他の2つの円のいずれにも2点で交差することも1点で接触することもない場合に、前記交差関係または前記1点接触関係にある2つの円のうち、前記残りの1つの円からの中心距離が長い方である遠方円と交わるように、前記遠方円と前記残りの1つの円の半径を変化させる処理を含むことを特徴とする測位装置。
【請求項4】
第1固定局、第2固定局および第3固定局のそれぞれと無線端末との間の距離測定値を、前記第1固定局、前記第2固定局および前記第3固定局のうちの少なくとも1つ、または、前記無線端末から取得する情報取得処理と、
前記第1固定局と前記無線端末との間の第1距離測定値、前記第2固定局と前記無線端末との間の第2距離測定値および前記第3固定局と前記無線端末との間の第3距離測定値のうち少なくとも1つを補正する距離補正処理と、
前記距離補正処理が施された前記第1距離測定値、前記第2距離測定値および前記第3距離測定値に基づいて、前記無線端末の位置を決定する位置決定処理と、を実行し、
前記距離補正処理は、
前記第1固定局の位置を中心とし、前記第1距離測定値を半径とする第1円、
前記第2固定局の位置を中心とし、前記第2距離測定値を半径とする第2円、および、
前記第3固定局の位置を中心とし、前記第3距離測定値を半径とする第3円のうち少なくとも1つの半径を各円の幾何学的関係に基づいて変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理であり、
前記距離補正処理では、
前記第1円、前記第2円および前記第3円の中に、一方が他方を内包する2つの円があり、残りの1つの円が、他の2つの円のいずれをも包含することなく、当該他の2つの円のいずれにも包含されることない場合に、当該他の2つの円のうち内包している円の半径を小さくし、かつ、内包されている円の半径を大きくする内包解消処理を最初に実行することを特徴とする測位装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測位装置において、
前記距離補正処理を複数回に亘って繰り返し実行し、
各前記距離補正処理は、
先に実行した前記距離補正処理で前記第1円、前記第2円または前記第3円の半径を大きくし、または、小さくしたときは、後に実行する前記距離補正処理で前記第1円、前記第2円または前記第3円の半径を小さくせず、または、大きくしないことを特徴とする測位装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の測位装置において、
前記距離補正処理が施された前記第1円と前記第2円の交点、前記距離補正処理が施された前記第2円と前記第3円の交点、および前記距離補正処理が施された前記第3円と前記第1円の交点を頂点とする測位用の三角形に基づいて前記無線端末の位置を求めることを特徴とする測位装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測位装置において、
前記距離補正処理が施された前記第1円と前記第2円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第1の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第2円と前記第3円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第2の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第3円と前記第1円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第3の頂点とする前記測位用の三角形を求め、前記測位用の三角形が複数あるときは、複数の前記測位用の三角形のうち頂点間の距離の合計値が最小である三角形に基づいて、前記無線端末の位置を求めることを特徴とする測位装置。
【請求項8】
請求項6に記載の測位装置において、
前記距離補正処理が施された前記第1円と前記第2円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第1の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第2円と前記第3円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第2の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第3円と前記第1円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第3の頂点とする前記測位用の三角形を求め、前記測位用の三角形が複数あるときは、複数の前記測位用の三角形のうち面積が最小である三角形に基づいて、前記無線端末の位置を求めることを特徴とする測位装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の測位装置において、
前記測位用の三角形の重心に基づいて前記無線端末の位置を求めることを特徴とする測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置に関し、特に、無線端末と複数の固定局のそれぞれとの間の距離に基づいて、無線端末の位置を測定する測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線端末の位置を測定する測位システムにつき研究開発が行われている。無線端末は、位置が既知である複数の固定局との間で無線信号を送受信することで、各固定局までの距離を測定する。情報処理装置は、無線端末から距離測定結果を取得し、無線端末から各固定局までの距離に基づいて無線端末の位置を求める。このような測位システムは、建造物内における人の居場所の確認や、工場における在庫管理等への応用が期待されている。
【0003】
測位システムとして、以下の特許文献1には、ビーコン装置を保持する移動体の位置を探索するシステムが記載されている。このシステムでは、複数の携帯端末のそれぞれがビーコン装置から送信されたビーコン信号を受信して、ビーコン装置までの距離を求める。移動体探索サーバは、各携帯端末の位置と、ビーコン装置までの距離を表す情報を各携帯端末から取得し、ビーコン装置の位置を求める。
【0004】
また、特許文献2には、無線タグ距離測定装置が記載されている。無線タグ距離測定装置は、無線タグに距離測定信号を送信し、それに応じて無線タグから送信された到来信号を受信する。無線タグ距離測定装置は、距離測定信号を送信してから到来信号を受信するまでの時間に基づいて、無線タグ距離測定装置から無線タグまでの距離を測定する。この文献には、複数の無線タグ距離測定装置による距離測定結果に基づいて、無線タグの位置を求めることが記載されている。
【0005】
非特許文献1には、位置が未知である測定対象のノードと、位置が既知である3つの参照ノードのそれぞれとの間の距離を求め、3点測位法によって測定対象の位置を求める技術が記載されている。3点測位法は、参照ノードの位置を中心とし、参照ノードまでの距離を半径とする円を、3つの参照ノードのそれぞれについて求め、3つの円の交点を測定対象のノードの位置として求める測位方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-218931号公報
【文献】特開2009-174971号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】A Novel Enhance Positioning Trilateration Algorithm Implementation for Medical Implant In-Body Localization, International Journal of Antennas and Propagation, Vol 2013, Article ID 819695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無線端末の測位を行うシステムでは、無線信号を用いて無線端末の測位が行われる。したがって、無線信号の伝搬状況によっては、測位精度が充分でないことがある。
【0009】
本発明は、無線端末の位置を高精度で求めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1固定局、第2固定局および第3固定局のそれぞれと無線端末との間の距離測定値を、前記第1固定局、前記第2固定局および前記第3固定局のうちの少なくとも1つ、または、前記無線端末から取得する情報取得処理と、前記第1固定局と前記無線端末との間の第1距離測定値、前記第2固定局と前記無線端末との間の第2距離測定値および前記第3固定局と前記無線端末との間の第3距離測定値のうち少なくとも1つを補正する距離補正処理と、前記距離補正処理が施された前記第1距離測定値、前記第2距離測定値および前記第3距離測定値に基づいて、前記無線端末の位置を求める位置決定処理と、を実行し、前記距離補正処理は、前記第1固定局の位置を中心とし、前記第1距離測定値を半径とする第1円、前記第2固定局の位置を中心とし、前記第2距離測定値を半径とする第2円、および、前記第3固定局の位置を中心とし、前記第3距離測定値を半径とする第3円のうち少なくとも1つの半径を各円の幾何学的関係に基づいて変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理であり、前記距離補正処理は、さらに、前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが2点で交差する交差関係、または、前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが1点で接触する1点接触関係が成立し、かつ、残りの1つの円が他の2つの円のうち一方に包含され、あるいは、当該残りの1つの円が当該他の2つの円のうちの一方を包含する場合に、前記交差関係または前記1点接触関係が維持されるか、あるいは、前記交差関係にあった2つの円について前記1点接触関係を成立させるという条件の下で、内包している円の半径を小さくし、かつ、内包されている円の半径を大きくする内包解消処理を含むことを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記内包解消処理は、前記交差関係および前記1点接触関係のいずれも維持されず、かつ、前記交差関係にあった2つの円について前記1点接触関係が成立することとならない場合には、内包している円、または、内包されている円の一方のみの半径を変化させる処理を含む。
【0012】
また、本発明は、第1固定局、第2固定局および第3固定局のそれぞれと無線端末との間の距離測定値を、前記第1固定局、前記第2固定局および前記第3固定局のうちの少なくとも1つ、または、前記無線端末から取得する情報取得処理と、前記第1固定局と前記無線端末との間の第1距離測定値、前記第2固定局と前記無線端末との間の第2距離測定値および前記第3固定局と前記無線端末との間の第3距離測定値のうち少なくとも1つを補正する距離補正処理と、前記距離補正処理が施された前記第1距離測定値、前記第2距離測定値および前記第3距離測定値に基づいて、前記無線端末の位置を求める位置決定処理と、を実行し、前記距離補正処理は、前記第1固定局の位置を中心とし、前記第1距離測定値を半径とする第1円、前記第2固定局の位置を中心とし、前記第2距離測定値を半径とする第2円、および、前記第3固定局の位置を中心とし、前記第3距離測定値を半径とする第3円のうち少なくとも1つの半径を各円の幾何学的関係に基づいて変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理であり、前記距離補正処理は、さらに、前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが2点で交差する交差関係、または、前記第1円、前記第2円および前記第3円のうち2つが1点で接触する1点接触関係が成立し、かつ、残りの1つの円が、当該他の2つの円のいずれにも2点で交差することも1点で接触することもない場合に、前記交差関係または前記1点接触関係にある2つの円のうち、前記残りの1つの円からの中心距離が長い方である遠方円と交わるように、前記遠方円と前記残りの1つの円の半径を変化させる処理を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、第1固定局、第2固定局および第3固定局のそれぞれと無線端末との間の距離測定値を、前記第1固定局、前記第2固定局および前記第3固定局のうちの少なくとも1つ、または、前記無線端末から取得する情報取得処理と、前記第1固定局と前記無線端末との間の第1距離測定値、前記第2固定局と前記無線端末との間の第2距離測定値および前記第3固定局と前記無線端末との間の第3距離測定値のうち少なくとも1つを補正する距離補正処理と、前記距離補正処理が施された前記第1距離測定値、前記第2距離測定値および前記第3距離測定値に基づいて、前記無線端末の位置を決定する位置決定処理と、を実行し、前記距離補正処理は、前記第1固定局の位置を中心とし、前記第1距離測定値を半径とする第1円、前記第2固定局の位置を中心とし、前記第2距離測定値を半径とする第2円、および、前記第3固定局の位置を中心とし、前記第3距離測定値を半径とする第3円のうち少なくとも1つの半径を各円の幾何学的関係に基づいて変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理であり、前記距離補正処理では、前記第1円、前記第2円および前記第3円の中に、一方が他方を内包する2つの円があり、残りの1つの円が、他の2つの円のいずれをも包含することなく、当該他の2つの円のいずれにも包含されることない場合に、当該他の2つの円のうち内包している円の半径を小さくし、かつ、内包されている円の半径を大きくする内包解消処理を最初に実行することを特徴とする。
【0014】
望ましくは、前記距離補正処理を複数回に亘って繰り返し実行し、各前記距離補正処理は、先に実行した前記距離補正処理で前記第1円、前記第2円または前記第3円の半径を大きくし、または、小さくしたときは、後に実行する前記距離補正処理で前記第1円、前記第2円または前記第3円の半径を小さくせず、または、大きくしない。
【0015】
望ましくは、前記距離補正処理が施された前記第1円と前記第2円の交点、前記距離補正処理が施された前記第2円と前記第3円の交点、および前記距離補正処理が施された前記第3円と前記第1円の交点を頂点とする測位用の三角形に基づいて前記無線端末の位置を求める。
【0016】
望ましくは、前記距離補正処理が施された前記第1円と前記第2円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第1の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第2円と前記第3円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第2の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第3円と前記第1円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第3の頂点とする前記測位用の三角形を求め、前記測位用の三角形が複数あるときは、複数の前記測位用の三角形のうち頂点間の距離の合計値が最小である三角形に基づいて、前記無線端末の位置を求める。
【0017】
望ましくは、前記距離補正処理が施された前記第1円と前記第2円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第1の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第2円と前記第3円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第2の頂点とし、前記距離補正処理が施された前記第3円と前記第1円との交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第3の頂点とする前記測位用の三角形を求め、前記測位用の三角形が複数あるときは、複数の前記測位用の三角形のうち面積が最小である三角形に基づいて、前記無線端末の位置を求める。
【0018】
望ましくは、前記測位用の三角形の重心に基づいて前記無線端末の位置を求める。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線端末の位置を高精度で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る測位システムを示す図である。
図2】基本処理を説明する図である。
図3】基本処理についての課題を説明する図である。
図4】内包解消処理を説明する図である。
図5】制限付き距離補正処理を実行する場合の第1のパターンを示す図である。
図6】制限付き距離補正処理を実行する場合の第2のパターンを示す図である。
図7】制限付き距離補正処理を実行する場合の第3のパターンを示す図である。
図8】制限付き距離補正処理を実行する場合の第4のパターンを示す図である。
図9】制限付き距離補正処理を実行する場合の第5のパターンを示す図である。
図10】制限付き距離補正処理を実行する場合の第6のパターンを示す図である。
図11】制限付き距離補正処理を実行する場合の第7のパターンを示す図である。
図12】制限付き距離補正処理を実行する場合の第8のパターンを示す図である。
図13】制限付き距離補正処理を実行する場合の第9のパターンを示す図である。
図14】制限付き距離補正処理を実行する場合の第10のパターンを示す図である。
図15】無線端末のハードウエアの例を示す図である。
図16】情報処理装置のハードウエアの例を示す図である。
図17】第2実施形態に係る測位システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)測位システムの構成
図1には、本発明の実施形態に係る測位システム10が示されている。測位システム10は、無線端末12、固定局14-1~14-3、ネットワーク無線装置16、通信回線18および情報処理装置20を備えている。無線端末12は、固定局14-1~14-3のそれぞれとの間で無線信号の送受信を行い、各固定局までの距離を測定する。ネットワーク無線装置16は、無線端末12との間で無線通信を行い、無線端末12による測定結果を示す測定情報を取得する。ネットワーク無線装置16は、無線端末12から取得した測定情報を、インターネット等の通信回線18を介して情報処理装置20に送信する。測位装置としての情報処理装置20は、測定情報に含まれる各距離測定値を、後述する距離補正処理によって補正し、補正後の各距離測定値に基づいて無線端末12の位置を測定する。
【0022】
(2)測位システムで実行される基本処理
測位システム10で実行される基本的処理について説明する。無線端末12は、固定局14-1~14-3のそれぞれとの間で無線信号の送受信を行い、各固定局までの距離を測定し、各距離測定値を取得する。無線端末12は、距離測定値r~rを含む測定情報を生成する。ただし、距離測定値r~rは、それぞれ、無線端末12から固定局14-1~14-3までの距離の測定値である。無線端末12は、ネットワーク無線装置16との間で無線通信を行い、測定情報をネットワーク無線装置16に送信する。ネットワーク無線装置16は測定情報を受信し、通信回線18を介して情報処理装置20に送信する。情報処理装置20は、ネットワーク無線装置16から通信回線18を介して測定情報を受信する。
【0023】
情報処理装置20は、測定情報から距離測定値r~rを取得し、距離測定値r~rに対して距離補正処理を施す。距離補正処理は、3つの距離測定値r~rのうちの2つの距離測定値に対する補正を、3つの距離測定値から2つを選択する3種類の組み合わせについて順に実行する処理である。先に補正された2つの距離測定値は、次以降の距離測定値の補正に用いられる。距離補正処理は、複数回に亘って繰り返し実行してもよい。
【0024】
情報処理装置20は、固定局14-1~14-3のそれぞれの位置を予め記憶している。情報処理装置20は、距離補正処理が施された距離測定値r、rおよびrを用いて無線端末12の位置を求める。すなわち、固定局14-1の位置を中心Pとし、距離測定値rを半径とする円Cと、固定局14-2の位置を中心Pとし、距離測定値rを半径とする円Cと、固定局14-3の位置を中心Pとし、距離測定値rを半径とする円Cとの交点を無線端末12の位置として求める。
【0025】
基本処理の具体例について図2を参照して説明する。図2(a)には、固定局14-1~14-3の位置である固定局位置P~Pと、距離補正処理が実行される前の距離測定値r~rが模式的に示されている。円C~Cは、それぞれ、固定局位置P1~Pを中心とし、半径をそれぞれ距離測定値r~rとする円である。この図に示されている例では、円C~円Cは相互に交差しておらず、さらに、相互に1点で接触もしておらず、距離測定値r~rのいずれにも誤差が含まれている。
【0026】
距離補正処理は、3つの距離測定値r~rのうちの2つの距離測定値rおよびrに対し、円CおよびCが2点で交差するか、1点で接触するように距離測定値rおよびrを補正する。例えば、このような処理を、距離測定値rおよびrの組に対して実行し、距離測定値rおよびrの組に対して実行し、さらに、距離測定値rおよびrの組に対して実行する。この例では、距離測定値r~rは最初の値よりも大きくなるように補正される。図2(b)には、距離補正処理が実行された後の距離測定値r~rが模式的に示されている。この図に示されている例では円C~円Cは相互に交差しており、円C~円Cの円周で囲まれる領域P内の位置が、無線端末12の位置として求められる。
【0027】
基本処理では、距離補正処理を繰り返し実行しても第1円C~第3円Cが相互に交差または1点で接触しない場合がある。なお、以下の説明では、2つの円が1点で接触している状態、および2つの円が2点で交差している状態の両者を含めて、2つの円が接触しているという。
【0028】
例えば、図3(a)に示されているように、第1円Cが第3円Cを包含しており、第2円Cが第1円Cおよび第3円Cのいずれにも包含されず、第1円Cおよび第3円Cに接触しない場合について説明する。図3(b)に示されているように、第1円Cおよび第2円Cのそれぞれの半径を大きくして第1円Cおよび第2円Cを交差させると、第1円Cの円周と第3円Cの円周との間の距離が長くなる。
【0029】
次に、図3(c)に示されているように、第1円Cの半径を小さくし、第3円Cの半径を大きくして、第1円Cおよび第3円Cを1点で接触させると、第1円Cの円周と第2円Cの円周が離れて、第1円Cおよび第2円Cは交差しなくなる。この状態で、図3(a)の状態から図3(b)の状態に変化させる処理と同様に、第1円Cおよび第2円Cのそれぞれの半径を大きくして第1円Cおよび第2円Cを交差させると、再び、第1円Cの円周と第3円Cの円周とが離れる。このように、第1円Cおよび第2円Cのそれぞれの半径を大きくして第1円Cおよび第2円Cを接触させる処理と、第1円Cの半径を小さくし、第3円Cの半径を大きくして第1円Cおよび第3円Cを接触させる処理を繰り返し実行したとしても、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態には収束せず、無線端末12の位置を求めることが困難となってしまう。以下に示される制限付き距離補正処理は、このような非収束状態を回避するものである。
【0030】
制限付き距離補正処理は、第1円C~第3円Cの幾何学的関係に応じて課される制限(ルール)に従って、これら3つの円のうち少なくとも1つの円の半径を変化させ、半径を変化させた後の円に対応する距離測定値に補正前の値を補正する処理である。
【0031】
(3)制限付き距離補正処理
(3-1)制限付き距離補正処理において適用されるルール
制限付き距離補正処理は、次のルール1~6に従って実行される。ルール1~5は、2つの円の両方の半径を変化させることを前提としたものである。
【0032】
(i)ルール1
第1円C~第3円Cの中に、内包関係にある2つの円があり、残りの1つの円が、他の2つの円と内包関係にないときは、内包関係を解消する距離調整処理を最初に実行する。ここで内包関係とは、2つの円のうち一方が他方を包含するような2つの円の関係をいう。本願明細書でいう内包関係は、一方の円の内側にある他方の円が、一方の円に1点で接触する状態を含まないものとする。
【0033】
(ii)ルール2
先に実行した距離調整処理によって半径を大きくした円については、後に実行する距離調整処理によって半径を小さくしない。同様に、先に実行した距離調整処理によって半径を小さくした円については、後に実行する距離調整処理によって半径を大きくしない。
【0034】
(iii)ルール3
内包関係にある2つの円について、内包関係を解消する距離調整処理は、内包している側の円の半径を小さくし、内包されている側の円の半径を大きくすることで行う。
【0035】
(iv)ルール4
第1円C~第3円Cの中に接触する2つの円があり、残りの1つの円が、他の2つのいずれとも接触しないときには、残りの1つの円と、他の2つの円のうちの一方との間で距離調整処理を実行する。この距離調整処理は、他の2つの円の交差関係または1点接触関係が維持されるように、あるいは、交差関係にあった2つの円について1点接触関係を成立させるように実行される。
【0036】
(v)ルール5
第1円C~第3円Cのうちの1つの円(円A)が、他の2つ(円Bおよび円C)のいずれとも接触もしないときは、円Bおよび円Cのうち、円Aとの間の中心距離が長い方と、円Aとの間で距離調整処理を実行する。
【0037】
(iv)ルール6
ルール1~5に定められた制限によって、2つの円の両方の半径を変化させることができない場合には、残りの1つの円の半径を変化させる処理を実行する。
【0038】
(3-2)要素処理
制限付き距離補正処理において実行される要素処理について説明する。要素処理には、内包解消処理および接近処理がある。内包解消処理は、内包関係にある2つの円の内包関係を解消する処理であり、ルール3に従って行われる。内包解消処理では、原則として、内包する側の円の半径が小さくされ、内包される側の円の半径が大きくされる。接近処理は、内包関係になく、かつ、接触していない2つの円の半径を大きくし、これら2つの円を接触させる処理である。
【0039】
ここで、2つの円を接触させるとは、2つの円を1点で接触させることに加えて、2つの円を2点で交差させることも含む。また、2つの円が接触している状態は、2つの円が1点で接触している状態に加えて、2つの円が2点で交差している状態を含む。
【0040】
接近処理では、原則として2つの円の両方の半径が大きくされる。制限付き距離補正処理は、第1円C~第3円Cから選択された2つの円について、上記ルールに従って内包解消処理または接近処理を実行するものである。
【0041】
(3-2-1)内包解消処理
内包解消処理について説明する。図4(a)には、円Cと、円Cを内包する円Cが示されている。円Cの中心と円Cとの間の距離はdijである。内包解消処理では、円Cおよび円Cを1点で接触させるため、円Cの半径rおよび円Cの半径rが、それぞれ、(数1)および(数2)に従って補正される。
【0042】
(数1)r←(r+r-dij)/2+δ
(数2)r←(r+r+dij)/2-δ
【0043】
ただし、記号「←」は、左側の値を右側の数式によって更新することを意味する。また、マージンδおよびδは、余裕を以て円Cおよび円Cを接触させるための正の値である。マージンδおよびδは0であってもよい。
【0044】
(数1)は、図4(b)を参照した幾何学的解析によって導かれる。図4(b)には、補正前の円Cおよび円Cの関係が示されている。補正後の円CおよびCは、補正前の円Cの円周と補正前の円Cの円周とを最短で結ぶ周間線分Aの中点で接触する。補正における円Cの半径の増加分および補正における円Cの半径の減少分は、いずれも周間線分Aの長さLの半分である。周間線分Aの長さLは、(数3)で表される。
【0045】
(数3)L=r-(dij+r
【0046】
したがって、補正後の円Cおよび円Cの半径RおよびRは、それぞれ、(数4)および(数5)で表される。
【0047】
(数4)R=r+L/2=r+[r-(dij+r)]/2
=(r+r-dij)/2
(数5)R=r-L/2=r-[r-(dij+r)]/2
=(r+r+dij)/2
【0048】
(数1)および(数2)は、右辺の式として、それぞれ(数4)および(数5)を当てはめ、それぞれ、マージンδを加算し、マージンδを減算したものである。図4(c)には補正後の円Cおよび円Cが示されている。
【0049】
(3-2-2)接近処理
次に、接近処理について説明する。接近処理は、円Cおよび円Cが内包関係になく、かつ、接触もしていないとき、すなわち、円Cおよび円Cが離れているときに実行される。
【0050】
補正後の円Cの半径Rが、補正前の円Cの半径rのa倍であるとし、補正後の円Cの半径Rが、補正前の円Cの半径rのa倍であるとした場合において、補正後の円Cおよび円Cが1点で接触するときの条件は、(数6)で表される。
【0051】
(数6)a・(r+r)=dij
【0052】
したがって、(数7)のように倍率aが求められる。
(数7)a=dij/(r+r
【0053】
接近処理では、円Cおよび円Cを1点で接触させるため、円Cの半径rおよび円Cの半径rが、それぞれ、次の(数8)および(数9)に従って補正される。
【0054】
(数8)r←a・r+δ=r・dij/(r+r)+δ
(数9)r←a・r+δ=r・dij/(r+r)+δ
【0055】
(3-2-3)接触維持処理
内包解消処理および接近処理はいずれも、2つの円に対して実行する処理である。3つの円のうち2つが接触するときに、これら2つの円のうちいずれかと、残りの1つの円に対して内包解消処理または接近処理を実行するときは、接触維持処理が実行される。接触維持処理は、接触する2つの円のうちいずれかと、残りの1つの円に対して内包解消処理または接近処理を実行する際に、接触状態にあった2つの円の接触状態を維持する処理であり、ルール4に従って行われる。
【0056】
すなわち、接触維持処理では、交差関係または1点接触関係にある2つの円について交差関係または1点接触関係を維持するか、あるいは、交差関係にあった2つの円について1点接触関係を成立させるという接触維持条件の下で、処理対象の2つの円の半径が補正される。
【0057】
具体的には、内包解消処理において、円Cの半径rおよび円Cの半径rが、それぞれ、(数1)および(数2)によって補正されるとした場合に、上記の接触維持条件が成立し得ない場合には、円Cおよび円Cのうち一方の半径が一定にされ、他方のみが補正される。すなわち、内包解消処理に準ずる処理において円Cの半径を一定にし、円Cの半径を補正する場合には、円Cの半径を減少させ、円Cの半径をそのまま維持する。円Cの半径は、内包関係が解消されるまで、所定の刻み幅で減少させる。また、内包解消処理に準ずる処理において円Cの半径を一定にし、円Cの半径を補正する場合には、円Cの半径を増加させ、円Cの半径をそのまま維持する。円Cの半径は、内包関係が解消されるまで、所定の刻み幅で増加させる。
【0058】
同様に、接近処理において、円Cの半径rおよび円Cの半径が、それぞれ、(数8)および(数9)によって補正されるとした場合に、上記の接触維持条件が成立し得ない場合には、円Cおよび円Cのうち一方の半径が一定にされ、他方のみが補正される。すなわち、接近処理に準ずる処理において円Cの半径を一定にし、円Cの半径を補正する場合には、円Cの半径を増加させ、円Cの半径をそのまま維持する。円Cの半径は、円Cおよび円Cが接触するまで、所定の刻み幅で増加させる。また、接近処理に準ずる処理において円Cの半径を一定にし、円Cの半径を補正する場合には、円Cの半径を増加させ、円Cの半径をそのまま維持する。円Cの半径は、円Cおよび円Cが接触するまで、所定の刻み幅で増加させる。
【0059】
なお、上記では、接触維持条件が維持されない場合に円Cの半径を補正し、円Cの半径をそのまま維持する処理、あるいは、円Cの半径を補正し、円Cの半径をそのまま維持する処理について説明した。接触維持条件が満足される限りにおいては、円Cおよび円Cの両者の半径を補正してもよいし、一方の半径を一定に維持し、他方の半径を補正してもよい。
【0060】
(4)制限付き距離補正処理の例
図5図14を参照して制限付き距離補正処理の例について説明する。制限付き距離補正処理では、情報処理装置20が、上記(3-2-1)および(3-2-2)で述べたような内包解消処理および接近処理を適宜実行する。内包解消処理においては、(数1)および(数2)に従う処理によって接触維持条件が成立しない場合には、情報処理装置20は、上記(3-2-3)で述べたような接触維持処理を実行する。接近処理においては、(数8)および(数9)に従う処理によって接触維持条件が成立しない場合には、情報処理装置20は、上記(3-2-3)で述べたような接触維持処理を実行する。なお、以下の第1~第10のパターンの説明では、内包解消処理に準ずる処理(2つの円のうちいずれか一方の半径を一定とするように拡張された内包解消処理)と内包解消処理とを併せて内包解消処理という。同様に、接近処理に準ずる処理(2つの円のうちいずれか一方の半径を一定とするように拡張された接近処理)と接近処理とを併せて接近処理という。
【0061】
(4-1)第1のパターン
図5(a)~図5(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第1のパターンが示されている。図5(a)に示されているように、第1円C~第3円Cは相互に接触していない。情報処理装置20は、第1円Cおよび第2円Cに対して接近処理を実行する。図5(b)には、接近処理によって、第1円Cおよび第2円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。
【0062】
図5(b)に示されているように、第1円Cの方が第2円Cに比べて第3円Cからの中心距離が長い。したがって、情報処理装置20は、ルール5に従い、第1円Cおよび第3円Cに対して接近処理を実行する。図5(c)には、接近処理によって、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。図5(c)には、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点を頂点とする測位用の三角形(以下、単に三角形という)の領域Qが示されている。情報処理装置20は、領域Qが占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0063】
情報処理装置20が、三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める処理は、その三角形の重心を無線端末12の位置として求める処理であってよい。
【0064】
なお、情報処理装置20は、第1円Cと第2円Cとの交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第1の頂点とし、第2円Cと第3円Cとの交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第2の頂点とし、および第3円Cと第1円Cとの交点が複数ある場合には複数の交点のうち1つを第3の頂点とする三角形の領域を求める。
【0065】
情報処理装置20は、このようにして求められた複数の三角形のうち頂点間の距離の合計値、すなわち、外周の長さが最小である三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。また、情報処理装置20は、複数の三角形のうち面積が最小である三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求めてもよい。情報処理装置20が、三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める処理は、その三角形の重心を無線端末12の位置として求める処理であってよい。
【0066】
(4-2)第2のパターン
図6(a)~図6(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第2のパターンが示されている。図6(a)に示されているように、第1円Cおよび第2円Cは2点で交差しており、残りの1つの円である第3円Cは、第1円Cおよび第2円Cのいずれとも接触しない。また、第1円Cの方が第2円Cに比べて第3円Cからの中心距離が長い。したがって、情報処理装置20は、ルール4および5に従い、第1円Cおよび第3円Cに対して接近処理を実行する。図6(b)には、接近処理によって、第1円Cおよび第3円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。
【0067】
図6(b)に示されている状態では、第2円Cおよび第3円Cが接触していない。そこで、情報処理装置20は、第2円Cおよび第3円Cに対して接近処理を実行する。図6(c)には、接近処理によって、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。図6(c)に示されている例では、第1円C~第3円Cは1点αで交わっている。情報処理装置20は、点αを無線端末12の位置として求める。
【0068】
なお、第1円C~第3円Cが1点αで交わらず、図5(c)に示されているように、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点が生じるときは、情報処理装置20は、第1のパターンと同様の処理を実行する。すなわち、情報処理装置20は、これら3つの交点を頂点とする三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。情報処理装置20が、三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める処理は、三角形の重心を無線端末12の位置として求める処理であってよい。
【0069】
また、情報処理装置20は、第1円Cと第2円Cとの交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第1の頂点とし、第2円Cと第3円Cとの交点が複数ある場合には複数の交点のうちの1つを第2の頂点とし、および第3円Cと第1円Cとの交点が複数ある場合には複数の交点のうち1つを第3の頂点とする三角形の領域を求める。
【0070】
情報処理装置20は、このようにして求められた複数の三角形のうち頂点間の距離の合計値、すなわち、外周の長さが最小である三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。また、情報処理装置20は、複数の三角形のうち面積が最小である三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求めてもよい。情報処理装置20が、三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める処理は、三角形の重心を無線端末12の位置として求める処理であってよい。
【0071】
(4-3)第3のパターン
図7(a)~図7(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第3のパターンが示されている。図7(a)に示されているように、第1円Cは第2円Cに包含され、第2円Cと第3円Cは2点で交差している。情報処理装置20は、ルール1に従い、第1円Cおよび第2円Cに対して内包解消処理を実行する。図7(b)には、内包解消処理によって、第1円Cおよび第2円Cが2点で接触する状態となったことが示されている。図7(b)に示されている状態では、第1円Cおよび第3円Cが接触していない。そこで、情報処理装置20は、第1円Cおよび第3円Cに対して接近処理を実行する。図7(c)には、第1円Cおよび第3円Cに対して接近処理が施されたことで、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。
【0072】
情報処理装置20は、第1のパターンおよび第2のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0073】
図7(c)に示されているように、第1円Cと第2円Cの交点には、交点βおよび交点βの2つがある。第2円Cと第3円Cの交点には、交点βおよび交点βの2つがある。第3円Cと第1円Cの交点は交点βのみである。情報処理装置20は、交点βおよび交点βのうちの一方の交点、交点βおよび交点βのうちの一方の交点、ならびに交点βを頂点とする三角形のうち、頂点間の距離の合計値が最小である三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。すなわち、頂点間の距離の合計値が最小である三角形の重心を無線端末12の位置として求める。情報処理装置20は、交点βおよび交点βのうちの一方の交点、交点βおよび交点βのうちの一方の交点、ならびに交点βを頂点とする三角形のうち、面積が最小である三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求めてもよい。すなわち、面積が最小である三角形の重心を無線端末12の位置として求めてもよい。
【0074】
(4-4)第4のパターン
図8(a)~図8(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第4のパターンが示されている。図8(a)に示されているように、第1円Cは第2円Cに包含されている。第3円Cは、第1円Cおよび第2円Cのいずれをも包含せず、第1円Cおよび第2円Cのいずれにも包含されない。さらに、第3円Cは、第1円Cおよび第2円Cのいずれにも接触していない。情報処理装置20は、ルール1に従い、第1円Cおよび第2円Cに対して内包解消処理を実行する。図8(b)には、内包解消処理によって、第1円Cおよび第2円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。
【0075】
図8(b)に示されているように、第3円Cは、第1円Cおよび第2円Cのいずれに対しても包含関係にない。さらに、第3円Cは、第1円Cおよび第2円Cのいずれにも接触していない。情報処理装置20は、ルール5に従い、第1円Cおよび第2円Cのうち、第3円Cとの間の中心距離が長い第1円Cと、第3円Cに対して、接近処理を実行する。
【0076】
図8(c)には、接近処理によって、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0077】
(4-5)第5のパターン
図9(a)~図9(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第5のパターンが示されている。図9(a)に示されているように、第1円Cおよび第2円Cは、2点で交差している。また、第3円Cは、第1円Cおよび第2円Cを包含している。
【0078】
情報処理装置20は、ルール5に従い、第1円Cおよび第2円Cのうち、第3円Cとの間の中心距離が長い第2円Cと、第3円Cに対して、内包解消処理を実行する。図9(b)には、内包解消処理によって、第2円Cおよび第3円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。
【0079】
図9(b)に示されている状態では、第1円Cおよび第3円Cが接触していない。そこで、情報処理装置20は、第1円Cおよび第3円Cに対して接近処理を実行する。情報処理装置20は、第3円Cの半径を一定とした上で、第1円Cの半径のみを大きくしてもよい。これによって、第2円Cおよび第3円Cの1点接触関係が維持されながらも、図9(c)に示されているように、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となる。
【0080】
情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0081】
(4-6)第6のパターン
図10(a)~図10(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第6のパターンが示されている。図10(a)に示されているように、第1円Cは第2円Cに包含され、第2円Cは第3円Cに包含されている。情報処理装置20は、第1円Cおよび第2円Cに対して内包解消処理を実行する。図10(b)には、内包解消処理によって、第1円Cおよび第2円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。
【0082】
第1円Cおよび第2円Cに対する内包解消処理によって、第1円Cの半径は大きくされ、第2円Cの半径は小さくされる。したがって、次の処理において、第1円Cの半径を小さくし、第2円Cの半径を大きくすることはルール2によって許されない。そこで、情報処理装置20は、第1円Cおよび第3円Cに対して内包解消処理を実行する。この内包解消処理によって第1円Cと第3円Cは接触するが、第2円Cと第3円Cの内包関係は解消されない。そのため、情報処理装置20はルール6に従い、第3円Cのみ半径を小さくする。
【0083】
図10(c)には、上記の処理によって、第1円Cおよび第3円Cが2点で交差し、第1円Cおよび第2円Cが2点で交差し、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0084】
(4-7)第7のパターン
図11(a)~図11(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第7のパターンが示されている。図11(a)に示されているように、第1円Cは第2円Cおよび第3円Cに包含され、第2円Cおよび第3円Cは2点で交差している。情報処理装置20は、第1円Cおよび第2円Cに対して内包解消処理を実行する。図11(b)には、内包解消処理によって、第1円Cおよび第2円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。
【0085】
図11(b)に示されている状態では、第1円Cおよび第3円Cが接触していない。そこで、情報処理装置20は、第1円Cおよび第3円Cに対して内包解消処理を実行する。
【0086】
図11(c)には、内包解消処理によって、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態が示されている。情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0087】
(4-8)第8のパターン
図12(a)および図12(b)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第8のパターンが示されている。図12(a)に示されているように、第1円Cおよび第2円Cは2点で交差している。また、第3円Cは、第1円Cに包含されている。
【0088】
情報処理装置20は、ルール1に従い、第1円Cおよび第3円Cに対して内包解消処理を実行する。図12(b)には、内包解消処理によって、第1円Cおよび第3円Cが1点で接触する状態となると共に、第1円Cおよび第2円Cが2点で交差する状態が維持されていることが示されている。また、図12(b)には、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0089】
(4-9)第9のパターン
図13(a)および図13(b)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第9のパターンが示されている。図13(a)に示されているように、第1円Cおよび第3円Cは2点で交差し、第2円Cおよび第3円Cもまた2点で交差している。第1円Cおよび第2円Cは接触しておらず、包含関係にもない。
【0090】
情報処理装置20は、第1円Cおよび第2円Cに対して接近処理を実行する。図13(b)には、接近処理によって、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0091】
(4-10)第10のパターン
図14(a)~図14(c)には、第1円C~第3円Cに対して制限付き距離補正処理を実行する場合の第10のパターンが示されている。図14(a)に示されているように、第1円Cおよび第2円Cは接触しておらず、さらに、包含関係にもない。また、第1円Cおよび第2円Cは、いずれも第3円Cに包含され、第2円Cの方が第1円Cに比べて第3円Cとの間の中心距離が長い。そこで、情報処理装置20は、第2円Cおよび第3円Cに対して内包解消処理を実行する。
【0092】
図14(b)には、内包解消処理によって、第2円Cおよび第3円Cが1点で接触する状態となったことが示されている。図14(b)に示されている状態では、第1円Cが第3円Cに内包されている。そこで、情報処理装置20は、第1円Cおよび第3円Cに対して、内包解消処理を実行する。
【0093】
図14(c)には、第1円Cおよび第3円Cに対する内包解消処理によって、第1円C~第3円Cが相互に接触する状態となったことが示されている。情報処理装置20は、第1のパターン~第3のパターンについて説明した処理と同様の処理によって、第1円Cと第2円Cの交点、第2円Cと第3円Cの交点、および第3円Cと第1円Cの交点に基づいて、無線端末12の位置を求めるための1つの三角形を求める。情報処理装置20は、その三角形の領域が占める範囲に基づいて無線端末12の位置を求める。
【0094】
(5)ハードウエアの例
図15には、無線端末12のハードウエアの例が示されている。無線端末12は、無線部32および情報処理部34を備えている。無線部32は、情報処理部34から取得した情報を固定局14-1~14-3またはネットワーク無線装置16に無線送信する。また、固定局14-1~14-3またはネットワーク無線装置16から送信された無線信号を受信し、無線信号に含まれる情報を情報処理部34に出力する。
【0095】
情報処理部34は、距離測定部36および測定情報生成部38を備えている。情報処理部34は、プログラムを実行するプロセッサを含んでもよい。この場合、情報処理部34は、プログラムを実行することによって、内部に距離測定部36および測定情報生成部38を構成する。
【0096】
距離測定部36は、無線部32を介して、固定局14-1~14-3のそれぞれと無線信号の送受信を行い、各固定局までの距離測定値r~rを求める。測定情報生成部38は、距離測定値r~rを含む測定情報を生成し、無線部32を介してネットワーク無線装置16に測定情報を無線送信する。
【0097】
図16には、情報処理装置20のハードウエアの例が示されている。情報処理装置20は、インターフェイス50および情報処理部52を備えている。情報処理装置20は、サーバとして機能するコンピュータであってよい。インターフェイス50は、情報処理部52を通信回線18に接続する。情報処理部52は、情報取得部54、距離補正部56および位置決定部58を備えている。情報処理部52は、プログラムを実行するプロセッサを含んでもよい。この場合、情報処理部52は、プログラムを実行することによって、内部に各構成要素(情報取得部54、距離補正部56および位置決定部58)を構成する。
【0098】
情報取得部54は、インターフェイス50を介して通信回線18から測定情報を受信し、各固定局について求められた距離測定値r~rを測定情報から取得する。距離補正部56は、3つの距離測定値r~rに対し、制限付き距離補正処理を実行する。位置決定部58は、制限付き距離補正処理が実行された後の3つの距離測定値r~rに基づいて、無線端末12の位置を求める。
【0099】
(6)その他の実施形態
図17には、第2実施形態に係る測位システム100が示されている。測位システム100では、固定局14-1~14-3が通信回線18に接続されている。固定局14-1~14-3のそれぞれは、無線端末12との間の無線通信によって、それぞれ、距離測定値r~rを取得する。固定局14-1~14-3は、通信回線18を介して情報処理装置20に、それぞれ、距離測定値r~rを送信する。また、固定局14-1~14-3のうち少なくとも1つが、無線端末12との間の無線通信および他の固定局との間の通信によって、距離測定値r~rをまとめて取得してもよい。固定局14-1~14-3のうち、距離測定値r~rをまとめて取得した固定局は、通信回線18を介して情報処理装置20に距離測定値r~rを送信する。図16に示された情報取得部54は、インターフェイス50を介して、3つの固定局14-1~14-3のうちの少なくとも1つから距離測定値r~rを取得する。
【0100】
測位システムには、4つ以上の固定局が設けられていてもよい。この場合、4つ以上の固定局の中から選択された3つの固定局を用いて、無線端末12の位置が測定される。
【符号の説明】
【0101】
10,100 測位システム、12 無線端末、14-1~14-3 固定局、16 ネットワーク無線装置、18 通信回線、20 情報処理装置、32 無線部、34,52 情報処理部、36 距離測定部、38 測定情報生成部、50 インターフェイス、54 情報取得部、56 距離補正部、58 位置決定部。
図1
図2
図3
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図5
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図12
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図15
図16
図17