(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】人形体の肩関節構造
(51)【国際特許分類】
A63H 3/46 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
A63H3/46 A
(21)【出願番号】P 2019135401
(22)【出願日】2019-07-23
(62)【分割の表示】P 2016238923の分割
【原出願日】2015-10-26
【審査請求日】2019-08-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(72)【発明者】
【氏名】木村 覚志
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-041855(JP,A)
【文献】特開2002-119768(JP,A)
【文献】特開2009-189498(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187219(JP,U)
【文献】登録実用新案第3171931(JP,U)
【文献】特開平11-76627(JP,A)
【文献】特開2011-36514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形体の肩関節構造であって、
人形体の胴体の肩口に形成された開口を通して第1関節部材、第2関節部材、および、第3関節部材を介して胴体と連結された腕と、
前記胴体の肩口の前記開口に突没可能に挿し込まれた環状の被覆部材と、
を備え、
前記第1関節部材は、前記胴体と前記第1関節部材とが連結された連結部を中心として回動可能であり、
前記第1関節部材と前記第2関節部材、前記第2関節部材と前記第3関節部材、前記第3関節部材と前記腕はそれぞれ
回動可能に連結されており、
前記第3関節部材は、前記胴体と前記第1関節部材とが連結された連結部、および、前記第1関節部材と前記第2関節部材との連結により、前記胴体の体幹軸から肩幅方向に離反することが可能であり、
前記連結部は、前記被覆部材よりも胸厚方向前側に配置されており、かつ、前記人形体の乳房部の内側に配置されている人形体の肩関節構造。
【請求項2】
請求項1記載の人形体の肩関節構造であって、
前記関節部材は、前記連結部を中心として、前記腕を前記胴体の胸厚方向前方に移動させるように回動可能である人形体の肩関節構造。
【請求項3】
請求項2記載の人形体の肩関節構造であって、
前記連結部は、ボールジョイントによって構成されている人形体の肩関節構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の人形体の肩関節構造であって、
前記連結部は、前記胴体の肩口の前記開口に対して体幹軸の軸方向下側に配置されている人形体の肩関節構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形体の肩関節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された人形体の肩関節構造は、腕に設けられた関節部材が、軟質材からなるリング状の被覆材を貫通して胴体の肩口に連結されて構成されている。被覆材は、肩口と腕との間隙を覆い、腕が動かされた際にも肩口との間で挟まれて適宜変形し、腕の可動範囲を制限することなく肩口と腕との間隙を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された人形体の肩関節構造では、腕の付け根の肩の位置がほぼ固定されている。例えば腕を胴体の胸部の前方に動かす場合に、胴体の肩口の胸部前側の縁部と当接し、腕が胴体の胸部に重なるほどに腕を動かすことができない。腕の可動範囲を拡大するため胴体の肩口を抉ったのでは、被覆材が大きくなって不自然さが際立ってしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、腕の可動範囲を広げることが可能な人形体の肩関節構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る人形体の肩関節構造は、人形体の胴体の内部に収容され、前記胴体に連結された第1関節部材と、前記胴体の内部に収容され、前記第1関節部材に連結された第2関節部材と、前記胴体の肩口に形成された開口を通して前記第2関節部材及び人形体の腕にそれぞれ連結された第3関節部材と、を備え、前記第1関節部材は、前記胴体と前記第1関節部材とが連結された第1連結部を中心として、前記第3関節部材を前記胴体の体幹軸から肩幅方向に離反させるように回動可能であり、前記第2関節部材は、前記第1関節部材と前記第2関節部材とが連結された第2連結部を中心として、前記第3関節部材を前記体幹軸から前記肩幅方向に離反させるように回動可能であることを特徴としている。また、本発明に係る人形体の肩関節構造は、人形体の胴体の肩口に形成された開口を通して第1関節部材、第2関節部材、および、第3関節部材を介して胴体と連結された腕と、前記胴体の肩口の前記開口に突没可能に挿し込まれた環状の被覆部材と、を備え、前記第1関節部材は、前記胴体と前記第1関節部材とが連結された連結部を中心として回動可能であり、前記第1関節部材と前記第2関節部材、前記第2関節部材と前記第3関節部材、前記第3関節部材と前記腕はそれぞれ回動可能に連結されており、前記第3関節部材は、前記胴体と前記第1関節部材とが連結された連結部、および、前記第1関節部材と前記第2関節部材との連結により、前記胴体の体幹軸から肩幅方向に離反することが可能であり、前記連結部は、前記被覆部材よりも胸厚方向前側に配置されており、かつ、前記人形体の乳房部の内側に配置されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記第1関節部材は、前記第1連結部を中心として、前記第2関節部材および前記第3関節部材を前記胴体の胸厚方向前方に移動させるように回動可能であってもよい。また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記関節部材は、前記連結部を中心として、前記腕を前記胴体の胸厚方向前方に移動させるように回動可能であってもよい。
【0008】
また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記第1連結部は、ボールジョイントによって構成されていてもよい。また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記連結部は、ボールジョイントによって構成されていてもよい。
【0009】
また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記第1連結部は、前記胴体の肩口の前記開口に対して前記体幹軸の軸方向下側に配置されていてもよい。また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記連結部は、前記胴体の肩口の前記開口に対して前記体幹軸の軸方向下側に配置されていてもよい。また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記連結部は、前記胴体の肩口の前記開口に対して体幹軸の軸方向下側に配置されていてもよい。
【0010】
また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記第1連結部は、前記胴体の肩口の前記開口に対して前記胸厚方向前側に配置されていてもよい。また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記連結部は、前記胴体の肩口の前記開口に対して前記胸厚方向前側に配置されていてもよい。
【0011】
また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記第1連結部は、前記人形体の乳房部または大胸筋部の内側に配置されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記胴体の肩口の前記開口に突没可能に挿し込まれ、前記第3関節部材を覆う環状の被覆部材をさらに備えてもよい。また、本発明に係る人形体の肩関節構造においては、前記胴体の肩口の前記開口に突没可能に挿し込まれた環状の被覆部材をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、腕の回動範囲を広げることが可能な人形体の肩関節構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、人形体の上体の斜視図である。
【
図5】
図1の人形体の肩関節構造の動作を示す正面図である。
【
図6】
図1の人形体の肩関節構造の動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2は、本発明の実施形態を説明するための、人形体の上体の構成を示す。
【0016】
図1に示す人形体1は、胴体2と、左右一対の腕3と、肩関節を構成する第1関節部材6及び第2関節部材7並びに第3関節部材8と、被覆部材9とを備える。第1関節部材6及び第2関節部材7並びに第3関節部材8と、被覆部材9とは、左右一対の腕3毎に設けられている。
【0017】
胴体2は、胴体2の体幹軸A上に配置されるフレーム部材11と、胸部前側部材12及び胸部後側部材13とを含む。胸部前側部材12と胸部後側部材13とは互いに組み付けられ、フレーム部材11は、胸部前側部材12と胸部後側部材13とで囲われた胴体2の内部に収容されている。胸部後側部材13がネジなどでフレーム部材11に固定され、胸部後側部材13に組み付けられた胸部前側部材12もまたフレーム部材11に固定されている。
【0018】
腕3は、上腕の付け根となる肩部材14含む。肩部材14には、上腕や前腕などの肩より先の部位を形成する図示しない部材が組み付けられる。
【0019】
第1関節部材6及び第2関節部材7は、胴体2の内部に収容されている。第1関節部材6は、胴体2の内部のフレーム部材11に連結されており、第2関節部材7は第1関節部材6に連結されている。
【0020】
第3関節部材8は、腕3の肩部材14に連結されている。そして、胴体2の肩口には開口15が形成されており、第3関節部材8は、開口15を通して第2関節部材7に連結されている。
【0021】
被覆部材9は環状に形成されており、胴体2の肩口の開口15に突没可能に挿し込まれている。被覆部材9には、開口15を通して第2関節部材7及び肩部材14にそれぞれ連結される第3関節部材8が挿通され、被覆部材9は、第3関節部材8と肩部材14との連結部を覆っている。
【0022】
図3及び
図4は人形体1の肩関節構造を示し、
図5及び
図6は人形体1の肩関節構造の動作を示す。
【0023】
フレーム部材11と第1関節部材6との連結部20は、胴体2の肩口の開口15(
図1参照)に対して体幹軸Aの軸方向下側で且つ開口15に対して胸厚方向前側の胸部前側に配置されており、第2関節部材7と第3関節部材8との連結部22は、開口15を臨む胴体2の肩口に配置されており、第1関節部材6と第2関節部材7との連結部21は、連結部20と連結部22との間に配置されている。
【0024】
フレーム部材11と第1関節部材6との連結部20は、フレーム部材11に設けられたソケット30と、第1関節部材6の一方の端部に設けられたボール31とからなる、いわゆるボールジョイントとして構成されており、第1関節部材6は、フレーム部材11に対し、すりこぎ運動のように回動可能である。なお、フレーム部材11側にボールが設けられ、第1関節部材6側にソケットが設けられていてもよい。
【0025】
第1関節部材6と第2関節部材7との連結部21は、第1関節部材6の他方の端部に設けられた軸部32と、第2関節部材7の一方の端部に設けられた軸受部33とで構成されており、第2関節部材7は、第1関節部材6に対し、軸部32を回動軸として回動可能である。なお、第1関節部材6側に軸受部が設けられ、第2関節部材7側に軸部が設けられていてもよい。
【0026】
第2関節部材7と第3関節部材8との連結部22は、第2関節部材7の他方の端部に設けられたソケット34と、第3関節部材8の一方の端部に設けられたボール35とからなる、いわゆるボールジョイントとして構成されており、第3関節部材8は、第2関節部材7に対し、すりこぎ運動のように回動可能である。なお、第2関節部材7側にボールが設けられ、第3関節部材8側にソケットが設けられていてもよい。
【0027】
第3関節部材8と腕3の肩部材14との連結部23は、第3関節部材8の他方の端部に設けられた軸受部36と、肩部材14に設けられた軸部37とで構成されており、肩部材14は、第3関節部材8に対し、軸部37を回動軸として回動可能である。なお、第3関節部材8側に軸部が設けられ、肩部材14側に軸受部が設けられていてもよい。
【0028】
腕3は、肩部材14の第3関節部材8に対する回動及び第3関節部材8の第2関節部材7に対する回動により、胴体2に対し、前後及び上下にスイングされる。
【0029】
図5及び
図6に示すように、第1関節部材6は、ボールジョイントとして構成されたフレーム部材11との連結部20を支点として、第2関節部材7との連結部21を胴体2の体幹軸Aから肩幅方向に離反させるように、フレーム部材11に対して回動可能である。かかる第1関節部材6の回動により、第3関節部材8が、体幹軸Aから肩幅方向に離反するように移動される。
【0030】
第2関節部材7もまた、第1関節部材6との連結部21を支点として、第3関節部材8との連結部22を胴体2の体幹軸Aから肩幅方向に離反させるように、第1関節部材6に対して回動可能である。かかる第2関節部材7の回動により、第3関節部材8が、さらに体幹軸Aから肩幅方向に離反するように移動される。
【0031】
第3関節部材8が体幹軸Aから肩幅方向に離反するように移動されることにより、第3関節部材8と腕3の肩部材14との連結部23が、胴体2の肩口の開口15から離反する。これにより、肩部材14の先に延びる腕3の上腕部分が胴体2または開口15の縁部に干渉し難くなり、腕3の可動範囲が拡大される。例えば腕3を胴体2の胸部の前方に動かす場合に、腕3が胴体2の胸部に重なるほどに腕3を動かすことが可能となる。
【0032】
さらに、第1関節部材6は、ボールジョイントとして構成されたフレーム部材11との連結部20を支点として、第3関節部材8を胸厚方向前方に移動させるようにフレーム部材11に対して回動可能である。かかる第1関節部材6の回動により、第3関節部材8と腕3の肩部材14との連結部23、すなわち腕3のスイングの支点となる部分が、胴体2の肩口の開口15の胸部前側の縁部に接近して配置される。これにより、肩部材14の先に延びる腕3の上腕部分が胴体2または開口15の胸部前側の縁に干渉し難くなり、腕3の可動範囲がさらに拡大される。つまり、腕3を胴体2の前方に動かす際の可動範囲が拡大される。
【0033】
以上の第1関節部材6の回動における支点となる連結部20を、開口15に対して胸厚方向前側の胸部前側に配置することにより、胸厚方向の胸部後側にある場合に比べて、より大きく腕3を胴体2の前方に動かすことができる。また、第1関節部材6の回動における支点となる連結部20は、さらに胴体2の肩口の開口15に対して体幹軸Aの軸方向下側の胸部に配置されているので、第3関節部材8の回動半径を拡大することができる。第1関節部材6は胴体2の内部の限られたスペースで回動され、第1関節部材6の回動角度は自ずと制限されるが、第3関節部材8の回動半径が拡大されることにより、所定の第1関節部材6の回動角度に対して第3関節部材8の変位量を拡大することができる。
【0034】
また、第1関節部材6の回動支点となる連結部20が胴体2の肩口の開口15に対して体幹軸Aの軸方向上側に設けると、連結部20のスペースを確保するため、胴体2の上部(人体でいうところの鎖骨付近の位置)が胸厚方向に厚くなるため、見栄えが損なわれる。そこで、第1関節部材6の回動支点となる連結部20を胴体2の胸部に配置することにより、胴体2の外観に不自然な膨らみを設けることなく、胸部乳房の膨らみを利用して、胸部乳房の内側に連結部20を収容するスペースを確保することができる。
【0035】
第3関節部材8の移動に対し、被覆部材9は、第3関節部材8に引きずられて胴体2の肩口の開口15から突出し、又は第3関節部材8と接触することにより開口15に没入し、第3関節部材8と肩部材14との連結部23が被覆部材9によって覆われた状態が維持される。これにより、人形体1の腕3の可動範囲を拡大しつつも外観の自然さを保つことができる。
【0036】
また、以上に、第1関節部材6とフレーム部材11、第2関節部材7と第3関節部材8の連結はボールジョイントとして、第1関節部材6と第2関節部材7、第3関節部材8と肩部材14との連結は軸と軸受けとして本発明の実施形態を説明したが、本発明の肩関節構造の連結部の構造は上述したものに限られない。
【符号の説明】
【0037】
1 人形体
2 胴体
3 腕
6 第1関節部材
7 第2関節部材
8 第3関節部材
9 被覆部材
11 フレーム部材
12 胸部前側部材
13 胸部後側部材
14 肩部材
15 開口
20 連結部
21 連結部
22 連結部
23 連結部
A 体幹軸