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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20220909BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220909BHJP
   F16K 24/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
B60K15/03 B
F02M37/00 311K
F16K24/00 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019187102
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021062662
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】岡林 俊輔
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10059196(US,B2)
【文献】特表2015-528090(JP,A)
【文献】米国特許第5313977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03,
F02M 37/00,
F16K 24/00,17/36,31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内外を連通する弁口と、
前記弁口下に形成される弁室と、
前記弁室内に上下動可能に配されるフロート体と、
前記フロート体の上部に載置される前記弁口に対するゴム状弾性を持ったシール部材とを備えてなる、弁装置であって、
前記シール部材は、前記弁口を閉塞可能な主体部と、前記フロート体の上部に対する組み合わせ部と、前記主体部から側方に突き出す延出部とを備えており、
前記フロート体は、一定の範囲での前記シール部材の上下方向の移動を許容した状態で前記組み合わせ部に組み合わされる被組み合わせ部と、前記延出部上に位置される掛かり部とを備えてなり、
しかも、前記組み合わせ部を、前記主体部から下方に突き出す突出片の突き出し端に係合突部を形成させてなり、
前記被組み合わせ部を、前記突出片を前記シール部材側の弾性変形により受け入れると共に受け入れ終了位置での前記シール部材側の弾性復帰により前記突出片の前記係合突部に対し一定の範囲での前記シール部材の上下方向の移動を許容した状態で穴縁を引っかける前記フロート体に形成された係合穴としてなる、燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記掛かり部を、前記フロート体の上部から上方に突き出す一対の支持部間に架設させてなる、請求項1に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記一対の支持部間に、前記シール部材の前記延出部の突き出し端から前記主体部側に続く割溝に導入される位置決め部を形成させてなる、請求項2に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記シール部材は、前記フロート体の上部に対し前記主体部の下面部の中央に形成された突出部をもって載置されるようにしてなる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクに取り付けられてかかる燃料タンクの通気流路の一部をなすと共に、開弁状態において燃料タンク内外を連通させるように機能される燃料タンク用弁装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
流体入口と流体出口を備えたハウジング内に、前記流体出口を制限する弁座に上昇位置で着座するフロート部材を納めてなる通気弁として、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この特許文献1のものにあっては、弁座にはフロート部材の上部に固着された軟質閉止膜片で着座するようになっている。着座後にフロート部材が重力により下降可能となると、軟質閉止膜片の変形により、通気出口は漸進的に開口されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-254278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の弁装置において、フロート体と、このフロート体の上部に備えられてフロート部材の最大上昇位置において弁口を塞ぐシール部材とのアッセンブリーを容易にすること、及び、かかる弁装置に、弁口を塞いだ状態からフロート体が下降可能となったときには、弁口からシール部材を引き剥がすことができる構造を合理的に付与すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、燃料タンク用弁装置を、燃料タンク内外を連通する弁口と、
前記弁口下に形成される弁室と、
前記弁室内に上下動可能に配されるフロート体と、
前記フロート体の上部に載置される前記弁口に対するゴム状弾性を持ったシール部材とを備えてなる、弁装置であって、
前記シール部材は、前記弁口を閉塞可能な主体部と、前記フロート体の上部に対する組み合わせ部と、前記主体部から側方に突き出す延出部とを備えており、
前記フロート体は、一定の範囲での前記シール部材の上下方向の移動を許容した状態で前記組み合わせ部に組み合わされる被組み合わせ部と、前記延出部上に位置される掛かり部とを備えてなる、ものとした。
【0007】
かかる構成によれば、前記掛かり部下に延出部を入り込ませるようにしながら、前記被組み合わせ部と前記組み合わせ部とを組み合わせることで、フロート体の上部にゴム状弾性を備えたシール部材を容易且つ適切に備えさせることができる。
【0008】
弁室内への燃料の流入によりフロート体が最大上昇位置まで上昇されると、シール部材によって弁口を塞ぐことができ、弁口を通じた燃料の流出を阻止することができる(閉弁状態)。この閉弁後、弁室内から燃料が流出するとフロート体は自重により下降可能となるが、燃料タンク内の圧力が高い場合、シール部材が弁口に張り付く現象が生じる。この発明にあっては、シール部材は、フロート体に対し、一定の範囲での上下動可能に組み合わされ、かつ、掛かり部下に延出部を位置させていることから、このとき、掛かり部を通じてシール部材に対し延出部側からシール部材を弁口側から引き剥がす向きの力をフロート体によって効果的に作用させることができる。これにより、このような現象が生じたときでも、シール部材と弁口との密着状態を解いてフロート体を速やかに降下させ燃料タンク内外の通気状態を確保させることができる。
【0009】
前記組み合わせ部を、前記主体部から下方に突き出す突出片の突き出し端に係合突部を形成させてなり、
前記被組み合わせ部を、前記突出片を前記シール部材側の弾性変形により受け入れると共に受け入れ終了位置での前記シール部材側の弾性復帰により前記突出片の前記係合突部に対し一定の範囲での前記シール部材の上下方向の移動を許容した状態で穴縁を引っかける前記フロート体に形成された係合穴としてなることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記掛かり部を、前記フロート体の上部から上方に突き出す一対の支持部間に架設させたものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記一対の支持部間に、前記シール部材の前記延出部の突き出し端から前記主体部側に続く割溝に導入される位置決め部を形成させておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記シール部材を、前記フロート体の上部に対し前記主体部の下面部の中央に形成された突出部をもって載置されるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、この種の弁装置におけるフロート体と、このフロート体の上部に備えられてフロート体の最大上昇位置において弁口を塞ぐシール部材とのアッセンブリーを容易にすることができる。また、前記弁口を塞いだ状態からフロート体が下降可能となったときには、弁口からシール部材を合理的に引き剥がすことが可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる弁装置の断面構成図であり、弁装置は開弁状態にある。
図2図2は、前記弁装置の断面構成図であり、弁装置は閉弁状態にある。
図3図3は、前記弁装置の断面構成図であり、図2の状態からフロート体が下降可能になった瞬間の状態を示している。
図4図4は、前記弁装置の平面図である。
図5図5は、前記弁装置を構成するフロート体の斜視図である。
図6図6は、前記弁装置を構成するフロート体の斜視図である。
図7図7は、前記フロート体とシール部材とを分離して示した斜視図である。
図8図8は、前記フロート体とシール部材とを分離して示した斜視図である。
図9図9は、前記シール部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図9に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弁装置Vは、自動車や二輪自動車などの燃料タンクTに取り付けられてかかる燃料タンクTの通気流路の一部をなすと共に、開弁状態において燃料タンクT内外を連通させるように機能されるものである。かかる弁装置Vは、典型的には、燃料タンクTの上部Taに取り付けられて、燃料タンクTの通気流路の一部を構成する。かかる弁装置Vは、図示の例のように、燃料タンクTに設けた取り付け穴Tbを利用して、あるいは、図示は省略するが燃料タンクT内に設けたブラケットなどを利用するなどして、燃料タンクTに備えさせることができる。
【0016】
弁装置Vは、少なくとも、
(1)燃料タンクTb内外を連通する弁口1と、
(2)前記弁口1下に形成される弁室2と、
(3)前記弁室2内に上下動可能に配されて、最大上昇位置で後述のシール部材4によって前記弁口1を閉塞するように構成されたフロート体3と、
(4)前記フロート体3の上部3fに載置される前記弁口1に対する弁体としてのゴム状弾性を持ったシール部材4とを備えてなる。
【0017】
図示の例では、弁装置Vは、上部構成体5と、弁室構成体6とを組み合わせてなる。上部構成体5、弁室構成体6、前記フロート体3は、典型的には、剛性を備えたプラスチックの成形品によって構成される。
【0018】
上部構成体5は、上端を閉塞し下端を開放させた短寸筒状部5aと、短寸筒状部5aの下端に形成されたフランジ5bと、このフランジ5b上において短寸筒状部5aの側部に一端を連接させて側方に延びる第一及び第二の接続管部5c、5dとを備えている。図示の例では、弁装置Vは前記フランジ5b下を前記取り付け穴Tbに差し入れ、このフランジ5bを燃料タンクTの外面部に固着させることで燃料タンクTに備え付けられている。第一及び第二の接続管部5c、5dに取り付けられる図1中符号Pで示される通気管を通じて上部構成体5の内部と外部、つまり、燃料タンクTbの内部と外部とが連通されるようになっている。
【0019】
弁室構成体6は、上端に弁口1を備え下端を開放させた内筒体6aと、この内筒体6aに組み合わされてその底部6eによって弁室2の底を形成する外装体6dとからなる。
【0020】
内筒体6aの外径は、前記上部構成体5の短寸筒状部5aの内径と実質的に一致している。内筒体6aの上部を上部構成体5の短寸筒状部5aにその下端側から、内筒体6aの天面6bと上部構成体5の上端との間に上部空間7が形成されるようにしてはめ込むことで上部構成体5と弁室構成体6とが組み合わされている。図1中符号8で示すのでは、両者間の気密状態を確保するシールリングである。
【0021】
外装体6dは、上端を開放させ、下端を前記弁室2の底となる底部6eによって数カ所の燃料の通過部6fを形成させた状態で実質的に閉塞させた筒状を呈している。外装体6dの内径は内筒体6aの外径と実質的に一致している。
【0022】
内筒体6a内に前記フロート体3と後述のバネ9を納めた状態で、外装体6dの上端より内筒体6aをその下端6cを先にして外装体6d内に内筒体6aの下端6cが外装体6dの底部6eに突き当たる位置まではめ込むことで、前記フロート体3を上下動可能に納めた弁室2を構成させている。
【0023】
前記弁口1は、内筒体6aの上端の中央に形成されている。弁室2側において弁口1は周回突部1aにより囲繞されている。フロート体3の最大上昇位置において、前記シール部材4は前記周回突部1aを弁座として前記周回突部1aに着座し、これにより前記弁口1が閉弁されるようなっている(図2)。一方、フロート体3がその下端3aを前記外装体6dの底部6eに接しさせた最大下降位置においては、前記通過部6f、弁室2、弁口1、上部空間7、第一及び第二の接続管部5c、5dによって、燃料タンクTbと外部との通気流路が形成されるようになっている。
【0024】
前記フロート体3は、図示の例では、上端を閉塞させ下端3aを開放させた中空の円筒状を呈している。前記フロート体3は、一定の範囲での前記シール部材4の上下方向の移動を許容した状態で後述のシール部材4の組み合わせ部4aに組み合わされる被組み合わせ部3bと、後述の延出部4c上に位置される掛かり部3cとを備えてなる。
【0025】
図示の例では、フロート体3の上部3fには、その中心を通る仮想の直線x(図7参照)に実質的に平行な溝壁3hを備えた溝状凹所3gが形成されている。
【0026】
溝状凹所3g内には、フロート体3の上部3fの中央から突き出す短寸円柱状の台座部3iが形成されている。台座部3iの上面3jは溝状凹所3g外のフロート体3の上面3kより下方に位置している。
【0027】
また、溝状凹所3g内には、前記溝壁3hとの間に前記仮想の直線xに平行なスリット3nを形成するように形成された一対の立ち上がり壁3mが形成されており、この一対の立ち上がり壁3m間に前記台座部3iが位置されるようになっている。一対の立ち上がり壁3mの上端間には、天板部3oが架設されている。この天板部3oは、前記仮想の直線xに沿った長辺3pと、前記仮想の直線xに直交する短辺3qとを持った長方形の輪郭形状を有している。この天板部3oの上面3rは、溝状凹所3g外のフロート体3の上面3kと同面で、台座部3iの上面3jより上方に位置している。また、天板部3oには、台座部3iの上面3jの全体を上方に臨ませる窓穴3sが形成されている。
【0028】
窓穴3sは、台座部3iの上面3jの外郭形状に倣った円形穴部3tと、この円形穴部3tと前記天板部3oの一方の短辺3qとの間に形成された追加穴部3uとを備えている。追加穴部3uは、フロート体3の上部3fの中央側で円形穴部3tに連通し、この連通側と反対の穴縁3vを前記仮想の直線xに直交させるように形成させている。図示の例では、この追加穴部3uの前記連通側と反対の穴縁3vと台座部3iとの間を係合穴3wとして後述のシール部材4の組み合わせ部4aが受け入れられると共に、この組み合わせ部4aを構成する係合突部4hが追加穴部3uの前記連通側と反対の穴縁3vに引っかかるようになっている。すなわち、図示の例では、かかる追加穴部3uの前記連通側と反対の穴縁3vと台座部3iとによって、前記被組み合わせ部3bを構成させている。すなわち、前記被組み合わせ部3bは、前記組み合わせ部4aを構成する後述の突出片4dを前記シール部材4側の弾性変形により受け入れると共に受け入れ終了位置での前記シール部材4側の弾性復帰により前記突出片4dの前記係合突部4hに対し一定の範囲での前記シール部材4の上下方向の移動を許容した状態で穴縁を引っかける前記フロート体3に形成された係合穴3wとなっている。
【0029】
なお、図示の例では、前記一対の立ち上がり壁3m及び天板部3oは、前記仮想の直線xに対しフロート体3の上部3fの中心において直交する仮想の直線y(図7参照)に沿った位置で割溝3xによって図7の左側と右側に区分されている。
【0030】
また、この実施の形態にあっては、前記天板部3oにおける前記一方の短辺3qと、この一方の短辺3q側に位置される前記溝状凹所3gの一端との間に、前記掛かり部3cが形成されている。
【0031】
図示の例では、掛かり部3cは、前記一対の立ち上がり壁3mと一体をなして上方に突き出す一対の支持部3y間に架設された形態となっている。一対の支持部3yと掛かり部3cとによって門形構造部分が溝状凹所3g内に形成されている。掛かり部3cは、溝状凹所3gの溝幅方向に沿うように形成されると共に、その下面3dを天板部3oの上面3rよりも上方に位置させ、かつ、その窓穴3s側に位置される縁部を天板部3oの前記一方の短辺3q上に位置させるようになっている。
【0032】
また、図示の例では、掛かり部3cは、その長さ方向、すなわち、溝状凹所3gの溝幅方向の中程の位置において、中間支持部3zをもって天板部3oの前記一方の短辺3qと連接されている。一対の支持部3yと掛かり部3cとによって形成される後述のシール部材4の延出部4cの導入空間は、この中間支持部3zをもって二分されている。なお、図示の例では、掛かり部3cは、中間支持部3zとの連接位置において、前記窓穴3sの側を湾曲内側とするように湾曲されている。
【0033】
図1中符号9は、フロート体3の内部に納められてバネ上端をフロート体3側に接しさせ、バネ他端を外装体6dの底部6eに接しさせた圧縮コイルバネであり、このバネ9によってフロート体3には一定の上向きの付勢力が作用されるようになっている。
【0034】
一方、前記シール部材4は、前記弁口1を閉塞可能な主体部4bと、前記フロート体3の上部3fに対する組み合わせ部4aと、前記主体部4bから側方に突き出す延出部4cとを備えている。かかるシール部材4は、典型的には、ゴム又はプラスチックエラストマーから構成される。
【0035】
主体部4bは、フロート体3の最大上昇位置において、前記弁口1を囲繞する周回突部1aにより形成された円形の弁座に接して弁口1を塞ぐ大きさを備えている。図示の例では、主体部4bは、仮想の円の円弧に沿った外郭形状を持った板状体として構成されている。
【0036】
主体部4bの下面部の中央には下方に突き出す突出部4dが形成されている。前記シール部材4は、前記フロート体3の上部3fに対し前記主体部4bの下面部の中央に形成されたこの突出部4dを接しさせるようにして載置される構成となっている。図示の例では、主体部4bは窓穴3sより大きく、シール部材4は台座部3iに突出部4dを接しさせ、窓穴3sを主体部4bで塞ぐようにした状態でフロート体3に載置されている。なお、図1中符号4eで示すのは、主体部4bの中央と突出部4dの突き出し端とに亘る貫通穴である。
【0037】
延出部4cは、前記掛かり部3cと一対の支持部3yとによって形成された導入空間に窓穴3sの側から導入可能な大きさを備えている。延出部4cの延出方向に直交する向きの幅は一対の支持部3y間の距離と実質的に等しくなっている。また、延出部4cには、その突き出し端から前記主体部4b側に続く割溝4fが形成されており、前記導入空間にはこの割溝4fに前記中間支持部3zを導入させた状態で延出部4cが導入されるようなっている。これにより、掛かり部3c下に導入された延出部4cは、常時所定の位置に保持されるようになっている。
【0038】
また、この実施の形態にあっては、前記組み合わせ部4aは、前記主体部4bから下方に突き出す突出片4gの突き出し端に係合突部4hを形成させてなる。
【0039】
図示の例では、シール部材4の主体部4bにおける突出部4dと延出部4cとの間となる位置に、突出片4gの上端が一体化されている。突出片4gは、溝状凹所3gの溝幅方向に沿った両面を備えた板状を呈している。係合突部4hは、突出片4gにおける延出部4cに向けられた側に形成されている。係合突部4hは、その頂部を挟んだ上下にそれぞれ、頂部に向かうに連れて係合突部4hの上下方向の寸法を漸減させる斜面を備えている。
【0040】
そして、この実施の形態にあっては、前記突出片4gを、前記シール部材4側の弾性変形により、前記フロート体3に形成された係合穴3wに導入できるようになっている。図示の例では、突出片4gにおける係合突部4hの形成位置の水平方向の最大寸法は、窓穴3sにおける追加穴部3uの前記穴縁3vと台座部3iとの間の距離よりもやや大きくなっている。そして、かかる突出片4gを前記のように構成される係合穴3wに導入しきった受け入れ終了位置において前記シール部材4側の弾性復帰により前記突出片4gの前記係合突部4hに対し一定の範囲での前記シール部材4の上下方向の移動を許容した状態で係合穴3wの穴縁としての前記追加穴部3uの前記穴縁3vが引っかかるようになっている。
【0041】
すなわち、前記掛かり部3c下に延出部4cを入り込ませるようにしながら、前記被組み合わせ部3bとしての係合穴3wに前記組み合わせ部4aとしての突出片4gを組み合わせることで、フロート体3の上部3fにゴム状弾性を備えたシール部材4を容易且つ適切に備えさせることができる。
【0042】
弁室2内への燃料(図示は省略する。)の流入によりフロート体3が最大上昇位置まで上昇されると、シール部材4によって弁口1を塞ぐことができ、弁口1を通じた燃料の流出を阻止することができる(図2/閉弁状態)。この閉弁後、弁室2内から燃料が流出するとフロート体3は自重により下降可能となるが、燃料タンクTb内の圧力が高い場合、シール部材4が弁口1に張り付く現象が生じる。この実施の形態にあっては、シール部材4は、フロート体3に対し、一定の範囲での上下動可能に組み合わされ、かつ、掛かり部3c下に延出部4cを位置させていることから、このとき、掛かり部3cを通じてシール部材4に対し組み合わせ部4aより外側に位置する一定の長さを備えた延出部4c側からシール部材4を弁口1側から引き剥がす向きの力をフロート体3によって効果的に作用させることができる(図3)。これにより、このような現象が生じたときでも、シール部材4と弁口1との密着状態を解いてフロート体3を速やかに降下させ燃料タンクTb内外の通気状態を確保させることができる。
【0043】
また、シール部材4は、フロート体3に対し前記台座部3iに突出部4dを接しさせて載置されていることから、この突出部4dを中心にその上面の向きを一定の範囲で可変可能であり、フロート体3がやや傾いて上昇されたときでも、これを補正して最大上昇位置で弁口1を隙間なく塞ぐように機能させることができる。
【0044】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0045】
T 燃料タンク
1 弁口
2 弁室
3 フロート体
3b 被組み合わせ部
3c 掛かり部
3f 上部
4 シール部材
4a 組み合わせ部
4b 主体部
4c 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9