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特許7138620支承箇所スペースが拡大された移動可能なピペット導管を備えるピペット装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】支承箇所スペースが拡大された移動可能なピペット導管を備えるピペット装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20220909BHJP
   F16C 29/00 20060101ALI20220909BHJP
   B01L 3/02 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G01N35/10 C
F16C29/00
B01L3/02 D
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019500333
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017066450
(87)【国際公開番号】W WO2018007290
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】102016212444.7
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501401397
【氏名又は名称】ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハンスペーター・ローマー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィオ・ワルペン
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-028884(JP,A)
【文献】実開昭59-103245(JP,U)
【文献】国際公開第2014/041113(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0186367(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0019878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00- 37/00
G01N 1/00
B01L 3/02
F16C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のリニアガイドレール(52)と、第2のリニアガイドレール(56)とを備えているガイドフレーム(12)であって、前記第1のリニアガイドレール(52)及び前記第2のリニアガイドレール(56)が、互いに対して平行な状態で移動軸線(VL)に沿って延在していると共に、前記移動軸線(VL)に対して直交方向において互いに対して距離を有して設けられている、前記ガイドフレーム(12)と、
前記移動軸線(VL)に対して非平行である導管軸線(K14)に沿って延在しているピペット導管(14)であって、第1の支承部材(54)を介して前記第1のリニアガイドレール(52)に、且つ、第2の支承部材(58)を介して前記第2のリニアガイドレール(56)に、前記移動軸線(VL)に沿って移動可能にガイドされている前記ピペット導管(14)と、
を有し、前記第1の支承部材(54)は、前記第1のリニアガイドレール(52)を包囲し、および/または前記第2の支承部材(58)は、前記第2のリニアガイドレール(56)を包囲しているピペット装置(10)において、
前記第1の支承部材(54)及び前記第2の支承部材(58)が、前記移動軸線(VL)に沿って互いに対して距離(A)を有して設けられていることを特徴とするピペット装置。
【請求項2】
前記第1の支承部材(54)の前記移動軸線(VL)に沿った前記ピペット導管(14)からの距離(A)と、前記第2の支承部材(58)の前記移動軸線(VL)に沿った前記ピペット導管(14)からの距離(A)とが、数量的に同じ大きさであることを特徴とする請求項1に記載のピペット装置(10)。
【請求項3】
前記第1の支承部材(54)及び前記第2の支承部材(58)が、前記移動軸線(VL)に直交するオフセット軸線(VA)であって、前記第1のリニアガイドレール(52)と前記第2のリニアガイドレール(56)との最短距離の方向に延在する距離軸線とは異なる前記オフセット軸線(VA)に沿って、互いにオフセット(V)を有して設けられて
いることを特徴とする請求項1又は2に記載のピペット装置(10)。
【請求項4】
前記オフセット軸線(VA)が、前記導管軸線(K14)に対して非平行であるように向けられていることを特徴とする請求項3に記載のピペット装置(10)。
【請求項5】
前記オフセット軸線(VA)に沿った前記第1の支承部材と前記第2の支承部材(54,58)との間の前記オフセット(V)が、前記移動軸線(VL)に沿った前記第1の支承部材と前記第2の支承部材(54,58)との間の前記距離(A)よりも数量的に小さいことを特徴とする請求項3又は4に記載のピペット装置(10)。
【請求項6】
前記ガイドフレーム(12)が、前記移動軸線(VL)に対しても非平行とされ、且つ、前記導管軸線(K14)に対しても非平行とされ、走行軸線(VF)に沿って走行可能であり、ピペットプロセスのための容器が準備される作用平面(AE)が、前記移動軸線(VL)と前記走行軸線(VF)との両方に対して平行であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【請求項7】
前記第1の支承部材(54)及び前記第2の支承部材(58)が、略同一に形成されており、
前記移動軸線(VL)に直交する回転軸線であって、ピペットプロセスのための容器を準備するための前記ピペット装置(10)の作用平面(AE)に対して平行とされる前記回転軸線の周りに180°捩じられているか、あるいは
前記移動軸線(VL)に対して平行とされる回転軸線の周りに180°捩じられて設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【請求項8】
前記ピペット装置が、ホルダ構成体(22)を有しており、前記ホルダ構成体が、前記第1の支承部材(54)及び前記第2の支承部材(58)を互いに結合しており、前記ピペット導管(14)が、前記ピペット導管の導管軸線(K14)に沿って調整可能に、前記ホルダ構成体に受容されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【請求項9】
前記ガイドフレーム(12)が、磁石構成体(36,37)を備えるリニアモータのステータ(28)を有しており、前記ホルダ構成体(22)が、コイル構成体を備える前記リニアモータのロータ(34)を有していることを特徴とする請求項8に記載のピペット装置(10)。
【請求項10】
前記ガイドフレーム(12)が、第3のリニアガイドレール(60)及び第4のリニアガイドレール(64)を有しており、前記第3のリニアガイドレール(60)及び前記第4のリニアガイドレール(64)が、互いに対して平行な状態で前記移動軸線(VL)に沿って延在していると共に、互いに距離を有して設けられており、前記ピペット装置(10)が、さらなるピペット導管(16)を有しており、前記さらなるピペット導管が、前記導管軸線(K14)に対して平行とされるさらなる導管軸線(K16)に沿って延在しており、第3の支承部材(62)を介して前記第3のリニアガイドレール(60)に、且つ、第4の支承部材(66)を介して前記第4のリニアガイドレール(64)に、前記移動軸線(VL)に沿って移動可能にガイドされており、前記第3の支承部材(62)及び前記第4の支承部材(66)が、前記移動軸線(VL)に沿って互いに距離(A)を有して設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【請求項11】
前記第1のリニアガイドレール(52)と前記第2のリニアガイドレール(56)との間の距離が、前記第3のリニアガイドレール(60)と前記第4のリニアガイドレール(64)との間の距離に数量的に等しいことを特徴とする請求項10に記載のピペット装置(10)。
【請求項12】
前記第1のリニアガイドレール(52)と前記第3のリニアガイドレール(60)との間の距離が、前記第2のリニアガイドレール(56)と前記第4のリニアガイドレール(64)との間の距離に数量的に等しく、前記第1のリニアガイドレール(52)と前記第4のリニアガイドレール(64)との間の距離が、数量的に前記第2のリニアガイドレール(56)と前記第3のリニアガイドレール(60)との間の距離に数量的に等しいことを特徴とする請求項10又は11に記載のピペット装置(10)。
【請求項13】
前記さらなるピペット導管(16)が、さらなるホルダ構成体(22)を有しており、前記さらなるホルダ構成体(22)が、前記第3の支承部材(62)及び前記第4の支承部材(66)を互いに結合しており、前記さらなるピペット導管(16)が、前記さらなるピペット導管(16)のさらなる導管軸線(K16)に沿って調整可能に、前記さらなるホルダ構成体(22)に受容されていることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【請求項14】
前記ホルダ構成体(22)及び前記さらなるホルダ構成体(22)はそれぞれ、異なるガイドレールにガイドされた2つの支承部材(54,58,62,66)を互いに結合する支持構成体(24)と、前記支持構成体(24)と別個に形成される調整構成体(26)であって、共に偏位移動するために前記支持構成体と結合された前記調整構成体(26)を有し、それぞれの前記ピペット導管(14,16)が前記導管軸線(K14,K16)に沿って調整可能に、前記調整構成体(26)に受容されていることを特徴とする請求項8を引用する場合の請求項13に記載のピペット装置(10)。
【請求項15】
前記ホルダ構成体(22)及び前記さらなるホルダ構成体(22)の前記調整構成体(26)が共に、略同一に形成されており、前記ガイドフレーム(12)に対して同一の向きで設置されていることを特徴とする請求項14に記載のピペット装置(10)。
【請求項16】
前記ホルダ構成体(22)及び前記さらなるホルダ構成体(22)の前記支持構成体(24)が共に、略同一に形成されており、互いに相対的に異なる向きで設置されていることを特徴とする請求項14又は15に記載のピペット装置(10)。
【請求項17】
前記ホルダ構成体(22)及び前記さらなるホルダ構成体(22)の前記支持構成体(24)が、互いに相対的に、
前記移動軸線(VL)に直交する回転軸線であって、ピペットプロセスのための容器を準備するための前記ピペット装置(10)の作用平面(AE)に対して平行とされる前記回転軸線の周りに180°捩じられているか、あるいは/及び
前記ピペット装置(10)の前記作用平面(AE)に直交する回転軸線の周りに180°捩じられて設けられていることを特徴とする請求項16に記載のピペット装置(10)。
【請求項18】
前記ガイドフレーム(12)が、さらなる磁石構成体を備えるさらなるリニアモータのさらなるステータ(30)を有しており、前記さらなるホルダ構成体が、さらなるコイル構成体を備える前記リニアモータのさらなるロータ(50)を有していることを特徴とする請求項9及び請求項10から17のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【請求項19】
前記磁石構成体(36)を備える前記ステータ(28)と、前記さらなる磁石構成体を備える前記さらなるステータ(30)とが、略同一に形成されており、
前記移動軸線(VL)に直交する回転軸線であって、ピペットプロセスのための容器を準備するための前記ピペット装置(10)の作用平面(AE)に対して平行とされる前記回転軸線の周りに180°捩じられているか、あるいは、
前記移動軸線(VL)に対して平行とされる回転軸線の周りに180°捩じられて設けられていることを特徴とする請求項18に記載のピペット装置(10)。
【請求項20】
前記コイル構成体を備える前記ロータ(34)と、前記さらなるコイル構成体を備える前記さらなるロータ(50)とが、略同一に形成されており、それらの向きにおいて互いに相対的に、前記移動軸線(VL)に直交する回転軸線であって、ピペットプロセスのための容器を準備するための前記ピペット装置(10)の作用平面(AE)に対して平行とされる前記回転軸線の周りに180°捩じられて設けられていることを特徴とする請求項19に記載のピペット装置(10)。
【請求項21】
前記ホルダ構成体(22)の前記支持構成体(24)と、前記さらなるホルダ構成体(22)の前記さらなる支持構成体(24)とがそれぞれ、一のロータ(34,50)を有し、前記ロータ(34,50)を含めて略同一に形成されており、それらの向きにおいて互いに相対的に、前記移動軸線(VL)に直交する回転軸線であって、ピペットプロセスのための容器を準備するための前記ピペット装置(10)の作用平面(AE)に対して平行とされる前記回転軸線の周りに180°捩じられて設けられていることを特徴とする請求項15を引用する場合の請求項20に記載のピペット装置(10)。
【請求項22】
前記ピペット装置が、ピペット導管(14)と、さらなるピペット導管(16)の形態とされる複数の機能ユニットを有しており、前記移動軸線(VL)に沿って、端部側の機能ユニットを例外として、複数の機能ユニットについて、一のピペット導管(14)が2つのさらなるピペット導管(16)の間に設けられ、一のさらなるピペット導管(16)が2つのピペット導管(14)の間に設けられていることを特徴とする請求項10から21のいずれか一項に記載のピペット装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のリニアガイドレールと、第2のリニアガイドレールとを備えるガイドフレームであって、第1及び第2のリニアガイドレールは、互いに平行な状態で移動軸線に沿って延在すると共に、移動軸線に対して直交方向に互いに距離を有して設けられているガイドフレームと、移動軸線に対して非平行であり、好ましくは直交する導管軸線に沿って延在するピペット導管であって、第1の支承部材を介して第1のリニアガイドレールに、第2の支承部材を介して第2のリニアガイドレールに、移動軸線に沿って移動可能にガイドされているピペット導管と、を有するピペット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような種類のピペット装置は例えば特許文献1から知られている。当該文献は、全体で4つの平行なリニアガイドレールを備えるガイドフレームを開示しており、見かけ上、4つのガイドレールのそれぞれ2つが、想像上の移動軸線に沿ってピペット導管の偏位移動を行う働きをする。
【0003】
このとき既知の4つのガイドレールは、2つの対にグループ化されており、一の対にグループ化されたガイドレールは、異なるグループのガイドレールよりも互いに離間する距離が小さい。
【0004】
既知のピペット装置の4つのガイドレールは、一の平面内にあって、同一の向きを有している。4つのガイドレールのそれぞれの上に、当該ガイドレール上で可動式にガイドされた支承部材がピペット導管に向いた側に設けられており、これにより開示された複数のピペット導管の取り付けが容易になる。
【0005】
特許文献1において明示的に開示されてはいないが、個々のピペット導管が、対を成す個々のグループのそれぞれ1つのガイドレールにガイドされていること、さらに、移動軸線に沿って隣接するピペット導管同士が、異なるガイドレールに移動可能にガイドされていることは、前提となっている。
【0006】
上記の種類のピペット装置には基本的に、個々のピペット導管をできるだけ細く形成し、それにより移動軸線に沿って直接的に隣接するピペット導管同士の分注開口部もしくは導管軸線の距離が、移動軸線に沿って9mmより大きくならないようにするという課題がある。これにより個々のピペット導管は移動軸線の方向において、導管軸線に沿った寸法に比べて非常に細くなり、ピペット導管の導管軸線に沿った寸法は、ピペット導管の移動軸線に沿った寸法の何倍もの大きさである。支承部材の移動軸線に沿った寸法は通常、ピペット導管自体の同じ向きの寸法よりも大きく、それにより、支承部材の寸法がピペット導管自体の寸法に比べて大きいにもかかわらず、移動軸線に沿って直接的に隣接するピペット導管同士を、移動軸線に沿って互いに所望の9mmに接近させられるように、2つより多くのガイドレールを用いる必要が生じる。
【0007】
ピペット導管の寸法が移動軸線に沿っては細いが、導管軸線に沿っては拡張していることにより、ピペット導管を移動可能に支承する際に問題が生じる。支承部材が移動軸線に直交する方向に有する距離は、支承部材の移動軸線に沿った支承長さに比べて非常に大きいからである。作動中、ピペット導管が移動軸線に沿って加速すると、加速トルクが生じ得、当該加速トルクは、導管軸線にも移動軸線にも直交するトルク軸線の周りに作用し、ダイナミックな軸受力を生じさせ、当該軸受力は支承部材において支持されなければならない。このとき既知のピペット装置では、それぞれのリニアガイドレール上で転動体にガイドされた支承部材を使用した場合でも、例えばスティッキングにより、短時間の移動障害が生じる可能性があり、それによりピペット装置の作動は妨げられるか、あるいは望むよりも緩慢に経過せざるをえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第2410342号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記のピペット装置を改善し、それにより上記の不利点を低減するか、除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は本発明によれば、同型式のピペット装置であって、第1及び第2の支承部材が、移動軸線に沿って互いに距離を有して設けられているピペット装置によって解決される。
【0011】
移動軸線に沿って、同一のピペット導管と共に移動可能な支承部材の構成を、これら両の支承部材が移動軸線に沿って互いに距離を有して設けられているように変化させることにより、同一のピペット導管を支承する両の支承部材が、移動軸線に沿って常に同じ位置に設けられている、既知の支承部において見られるよりも、ピペット導管の支承部において、移動軸線の方向における大きな支承長さが実現される。このように支承長さが拡大されたことにより、開放方向においては短いが、これに対して開放方向に直交する方向においては幅が広い引き出しを動かす際に知られているような、妨げとなる「引き出し効果」を回避することができる。このような引き出しは、引き出す際や挿入移動の間に、何度も動かなくなるものである。
【0012】
本発明に係るピペット装置のガイドフレームは、移動軸線に沿って、およそ第1の支承部材と第2の支承部材の間の距離の分だけ、実際に移動軸線に沿って利用可能なピペット導管の移動経路よりも長く実施しなければならないが、ピペット導管の支承が改善されたことにより、移動軸線に沿ってより大きな加速及び移動速度が可能になることは、構成空間コストがこのようにわずかに余分にかかることを補って余りある。ピペット導管はこれにより、移動軸線に沿って大きく加速され、大きな速度で移動され得、これはピペット装置の作動持続を経て、生産性上の著しい有利点となる。基本的に本発明の第1又は/及び第2の支承部材は、滑り軸受を用いてリニアガイドレールにおいて、移動軸線に沿って移動可能に支承された支承部材であってよい。摩擦が特に小さいという理由から、転動体を用いて、例えば循環ボールを介して、第1又は/及び第2の支承部材をリニアガイドレールに支承することが好ましい。
【0013】
本発明の意味におけるリニアガイドレールは、移動軸線に沿って移動するための支承部材をガイドする個々の部材である。第1又は/及び第2の支承部材は、好ましくはリニアガイドレールを包囲し、それにより第1又は/及び第2の支承部材は好ましくは、個々の支承部材に配設されたリニアガイドレール上に載っている。しかしながら代替的に、例えば移動軸線に直交する方向において利用可能な構成空間上の理由から、支承部材がリニアガイドレールの上方に突出すべきでない場合、リニアガイドレールが当該リニアガイドレールに配設された支承部材を包囲してもよく、それにより支承部材はリニアガイドレールの溝内に、可動式にガイドされた状態で受容されていてよい。
【0014】
第1及び第2の支承部材は好ましくは、ピペット装置を製造するために必要な異なる部材の数を減らすために、同じ支承部材であり、略同一に実施されている。同じことは支承部材をガイドするリニアガイドレールについても当てはまる。リニアガイドレールも好ましくは略同一に形成されている。
【0015】
本願発明において、部材が構成上同一に形成されていることと、構成上同一に形成された部材を互いに相対的に設置することとは別個に考慮すべきである点を指摘しておく。下記においてより詳しく説明されるように、本発明にとっては時に、異なる部材の数を不要に多くすることを避けるために部材が構成上同一に形成されていても、互いに相対的に異なるやり方で、ピペット装置に、又は特にガイドフレームに設置されていると有利である。
【0016】
必ずしも必要ではないが、両の支承部材において、数量的に可能な限り等しい大きさのダイナミックな軸受力を得るために、第1の支承部材の移動軸線に沿ったピペット導管からの距離と、第2の支承部材の移動軸線に沿ったピペット導管からの距離とが、数量的に同じ大きさであると有利である。その場合、第1の支承部材は移動軸線に沿ってピペット導管から、一方の方向において、第2の支承部材が反対方向に突出するのと同じだけ突出する。
【0017】
しかしながら場合により、例えば移動駆動部によりピペット導管に及ぼされる加速力が、移動可能なピペット導管の重心から十分に離れて当該ピペット導管に作用し、それによりダイナミックトルクが生じるとき、ピペット導管の一方の支承部材からの距離が、他方の支承部材からの距離よりも大きいと有利であり得る。このとき、ピペット導管が移動軸線に沿って常に、両の支承部材の1つと同じ場所、すなわちこの場合、同一の移動軸線座標にあり、それぞれ他方の支承部材のみが移動軸線に沿ってピペット導管から距離を有して設けられている構成が選択されていることさえあり得る。
【0018】
本発明の基礎となる課題は、上記の解決に対して付加的又は代替的に、第1及び第2の支承部材が、移動軸線に直交すると共に、第1のリニアガイドレールと第2のリニアガイドレールとの最短距離の方向に延在する距離軸線とは異なるオフセット軸線に沿って、互いにオフセットを有して設けられていることによっても解決され得る。
【0019】
上記の対策により支承寸法はまた、この場合、オフセット軸線の方向においてオフセットの大きさ分だけ増大させられ、これによりピペット導管を、移動軸線に沿って移動可能にガイドフレームに支承することを安定させる。
【0020】
ここで本発明に係るピペット装置の説明を簡単にするために、ピペット装置の作用平面を参照すべきである。作用平面はピペット装置の平面であって、当該平面上に容器が準備され、当該容器においてピペットプロセスが実施されるべきものである。ピペット導管は通常、異なる容器に進入できるように、作用平面に対して平行な平面内で可動式であり、準備された容器に突入し、かつ当該容器から退出できるように、作用平面に対して直交方向に可動式である。上記の移動軸線は作用平面に対して平行な移動方向である。したがって作用平面は以下において、ピペット装置と、ピペット装置において実現される可動性及び拡張を説明するための参照平面として役立つ。
【0021】
ピペット導管は通常、概ね一の顕著な方向において、両のリニアガイドレールから突出し、それによりピペット導管の加速時には、上記の移動軸線に直交すると共にピペット装置の作用平面に対して平行なトルク軸線の周りのダイナミックトルクを、支承部材において支持しなければならないだけでなく、作用平面に直交する第2のトルク軸線の周りのダイナミックトルクも支持しなければならない。後者の第2のトルク軸線の周りのダイナミックトルクの支持は、上記のオフセットによって改善される。移動軸線に沿って移動するためのピペット導管の移動ガイドにおいて、二番目に挙げたダイナミックトルクにより生じる膠着又は移動障害も、こうして最小化するか、又は完全に除去することさえできる。
【0022】
本願において「ダイナミック」という概念は主に、移動により生じさせられた力及びトルクと、力及びトルクにより生じさせられた移動の概念として理解される。
【0023】
オフセット軸線は好ましくは、導管軸線に対して非平行である。オフセット軸線は好ましくは、導管軸線に直交する。したがってオフセット軸線と、移動軸線と、導管軸線とは好ましくは、それぞれ対をなして互いに直交すると共に、直線的に互いに独立した直交座標系の3つの軸線を形成し、当該直交座標系のうち、オフセット軸線と移動軸線とは、好ましくはピペット装置の作用平面に対して平行に延在する。
【0024】
移動軸線に沿った支承部材同士の距離は、移動軸線に沿った望ましくない「引き出し効果」を回避するために、オフセット軸線に沿った支承部材同士のオフセットよりも重要であるため、オフセット軸線に沿った第1の支承部材と第2の支承部材の間のオフセットは、好ましくは移動軸線に沿った第1の支承部材と第2の支承部材の間の距離よりも数量的に小さい。支承部材がオフセット軸線に沿って互いに距離を有して設けられていることによる、ガイドフレームに対する付加的な構成空間上の要求を限界内に保持するためにさらに好ましくは、第1の支承部材と第2の支承部材の間の距離は、第1のリニアガイドレールと第2のリニアガイドレールの互いの距離よりも数量的に小さい。
【0025】
上記のようにピペット装置の作用平面内部の任意の点に有利に到達可能であることを確保できるように、本発明の一の好適な発展的構成によれば、ガイドフレームが移動軸線に対しても、導管軸線に対しても非平行である走行軸線に沿って走行可能であることが想到されている。走行軸線は好ましくは、導管軸線に対して直交するのと同様に、移動軸線に対して直交する。その場合、走行軸線はオフセット軸線に対して平行である。
【0026】
したがってまたガイドフレーム自体が、装置フレームに対して、自明のリニアガイド装置上に、走行軸線に沿って走行可能に支承されていてよい。
【0027】
ピペット導管は好ましくは、互いに直線的に独立した当該ピペット導管の可能な移動方向のそれぞれにおいて、それぞれ他の移動方向への移動から独立して移動するように駆動可能である。
【0028】
ピペット装置において異なる部材の数を低減するために好ましくは、第1及び第2の支承部材は同一に形成されている。しかしながら第1及び第2の支承部材は同一でない向きでガイドフレームに設けられていることが、同じく好ましい。第1及び第2の支承部材は互いに相対的に、移動軸線に直交すると共にピペット装置の作用平面に対して平行な回転軸線の周りに180°捩じられているか、あるいは移動軸線に対して平行な回転軸線の周りに180°捩じられて設けられているのが好ましい。
【0029】
したがって例えば、第1及び第2の支承部材の一方の支承部材は、当該支承部材に配設されているガイドレール上に直立式に設けられていてよい。それぞれ他方の支承部材は、当該他方の支承部材に配設されている他のガイドレールに懸架式に設けられていてよい。このようなやり方で、ピペット導管の支承部は、反対向きの力を見事に受容できるが、それは常に、それぞれ生じる力が、支承部材をガイドするリニアガイドレールに向かって当該支承部材を押圧する圧力として作用するように、支承部材が設けられていてよいからである。この点は好ましくは反対向きの力であって、それらの力の作用方向が、上記において参照平面として挙げられた作用平面に直交するように向けられている力について当てはまる。
【0030】
移動軸線に沿って共に偏位移動するために、第1及び第2の支承部材を互いに連結するために、ピペット装置はホルダ構成体を有してよく、当該ホルダ構成体は第1及び第2の支承部材を互いに結合し、ピペット導管は当該ホルダ構成体に、ピペット導管の導管軸線に沿って調整可能に受容されている。
【0031】
移動軸線に沿って移動するためのピペット装置の支承は、冒頭で説明したように、非常に大きな加速及び移動速度を可能にする。この有利点を利用できるように、ピペット装置は好ましくは、ピペット導管を移動させるためのリニアモータ式駆動部を有している。これは構造上、ガイドフレームが磁石構成体を備えるリニアモータのステータを有し、ホルダ構成体がコイル構成体を備えるリニアモータのロータを有することによって、実現されていてよい。このとき磁石構成体を備えるステータは、同じく移動軸線に沿って延在する。コイル構成体には電流を供給可能である。
【0032】
磁石構成体はエネルギー供給部からできる限り独立しているように、好ましくは一連の永久磁石を含み、当該永久磁石は移動軸線に沿って極性が交互になるように、連続的に設けられている。永久磁石はこのとき好ましくは、当該永久磁石の一の極が、ロータが通過する区間の方を向き、当該永久磁石の反対の他の極が、この区間に背を向けるように極性を与えられている。
【0033】
ロータが通過する区間内で局所的に大きな磁界強度を得られるように、磁石構成体は特に好ましくは、ヨーク構成体を有し、当該ヨーク構成体では、移動軸線に沿って設けられている2つの平行な永久磁石の列が、間隙距離を有して互いに離れて設けられている。永久磁石の両の列の間に形成された間隙内で、このステータに対応するピペット導管のロータが走行する。このヨーク構成体では間隙距離の方向において、好ましくは反対の磁極が互いに向き合っており、それにより磁石構成体の力線は、ロータが通過する間隙を、できる限り直行方向に貫通する。ここでも平行な磁石構成体のそれぞれにおいて、磁極が交互に配置された永久磁石が設けられている。したがってステータは、移動軸線に直交する断面において、好ましくはU字形の断面を有し、両の平行な磁石構成体のそれぞれが、U字形断面形状のそれぞれの自由脚部に設けられている。
【0034】
ピペット装置は、ピペッティング課題を同期的に処理するために、好ましくはさらなるピペット導管を有し、当該さらなるピペット導管は、ピペット導管の導管軸線に対して平行なさらなる導管軸線に沿って延在する。ピペット導管と、さらなるピペット導管とを、移動軸線に沿って互いにできる限り近く接近させられるように、ガイドフレームは好ましくは第3及び第4のリニアガイドレールを有し、当該第3及び第4のリニアガイドレールは互いに平行な状態で移動軸線に沿って延在すると共に、互いに距離を有して設けられている。第3及び第4のリニアガイドレールは、第1及び第2のリニアガイドレールとは異なるが、第1及び第2のリニアガイドレールに対して平行である。その場合、さらなるピペット導管は、第3の支承部材を介して第3のリニアガイドレールに、第4の支承部材を介して第4のリニアガイドレールに、移動軸線に沿って移動可能にガイドされている。冒頭で述べた安定的な支承という有利点を、さらなるピペット導管についても実現できるように、第3及び第4の支承部材は、移動軸線に沿って互いに距離を有して設けられている。
【0035】
上記においてピペット導管について述べた点は、第1のリニアガイドレールを第3のリニアガイドレールに代え、第2のリニアガイドレールを第4のリニアガイドレールに代え、第1の支承部材を第3の支承部材に代え、第2の支承部材を第4の支承部材に代えるという条件で、さらなるピペット導管についても基本的に準用される。
【0036】
移動軸線に沿った第3の支承部材と第4の支承部材の間の距離は好ましくは、移動軸線に沿った第1の支承部材と第2の支承部材の間の距離と数量的に等しい。その場合、ピペット導管と、さらなるピペット導管とは、互いにできる限り近くに接近させることができ、支承部材同士は移動軸線に沿って、ピペット導管自体よりも大きな寸法を有し得るが、それはピペット導管の支承部材と、さらなるピペット導管の支承部材とが、異なるリニアガイドレールにガイドされており、それにより互いに衝突し得ないためである。
【0037】
ガイドフレームの全ての支承部材は、好ましくは等しく構成されている。
【0038】
ピペット導管における動的条件と、さらなるピペット導管における動的条件をできる限り等しくするために好ましくは、第1のガイドレールと第2のガイドレールの間の距離は、数量的に第3のガイドレールと第4のガイドレールの間の距離に等しい。
【0039】
同じくピペット導管と、さらなるピペット導管とにおいて、同一の移動及び支承の条件を確保するために、第1のガイドレールと第3のガイドレールの間の距離が、数量的に第2のガイドレールと第4のガイドレールの間の距離に等しく、第1のガイドレールと第4のガイドレールの間の距離が、数量的に第2のガイドレールと第3のガイドレールの間の距離に等しければ好適である。これは構成上、例えば第1のガイドレールから第4のガイドレールまでが、直方体の外周面の稜線を形成することにより簡単に実現される。この場合、第1のリニアガイドレールと第2のリニアガイドレールとの最短距離は、好ましくは作用平面に対して斜めに向いており、それにより第1及び第2のガイドレールは、第3及び第4のガイドレールが存在する場合、それらと同じく、一方で作用平面に直交する方向において互いに離間しており、他方ではまた作用平面に対して平行であると共に移動軸線に直交する方向において、互いに離間している。一方で第1及び第4のリニアガイドレールが、他方で第3及び第2のリニアガイドレールが、作用平面に直交する方向においてそれぞれ互いに正確に下方に設けられており、一方で第1及び第3のリニアガイドレールが、他方で第2及び第4のリニアガイドレールが、作用平面に対して平行な方向においてそれぞれ互いに正確に並んで設けられていると、ガイドレールのコンパクトな構成が得られる。これは、リニアガイドレールを、上記のように想像上の直方体の外周面の稜線に設けることになる。
【0040】
このとき好ましくは、作用平面に直交する方向に重ねて設けられたレール同士の距離は、作用平面に対して平行に並んで設けられたリニアガイドレール同士の距離よりも大きい。
【0041】
ピペット導管に類似して、さらなるピペット導管はさらなるホルダ構成体を有してよく、当該さらなるホルダ構成体は第3及び第4の支承部材を互いに結合し、さらなるピペット導管は当該さらなるホルダ構成体に、さらなるピペット導管のさらなる導管軸線に沿って調整可能に受容されている。これにより移動軸線に沿って移動可能な機能ユニット、すなわちピペット導管とさらなるピペット導管の剛性は概ね等しくなる。
【0042】
ピペット装置の製造及び取り付けを容易にするために、ホルダ構成体及びさらなるホルダ構成体はそれぞれ、異なるガイドレールにガイドされた2つの支承部材を互いに結合する支持構成体と、当該支持構成体と別個に形成されると共に、共に偏位移動するために当該支持構成体と結合された調整構成体とを有してよく、当該調整構成体に、それぞれのピペット導管が導管軸線に沿って調整可能に受容されている。このとき支持構成体は、それぞれのピペット導管に属する支承部材を互いに結合し、調整構成体を支持構成体に取り付けることを可能にする。
【0043】
調整構成体は、全ての機能ユニット、すなわちピペット導管及びさらなるピペット導管の、通常は共通である制御装置と共に、それぞれの導管軸線に沿った機能ユニットの調整可能性に対して主に寄与するので、まさに共通の制御装置を使用するという観点において、ホルダ構成体及びさらなるホルダ構成体の調整構成体同士が、略同一に形成されており、ガイドフレームに対して同一の向きで設置されていると有利である。同一に形成されていること、及びまたガイドフレームに対して同一の向きで設けられていることに基づき、例えば全ての調整構成体に対して、同じ制御アルゴリズムを用いることができる。
【0044】
ピペット導管及びさらなるピペット導管の支持構成体同士は、同じく同一に形成されていてよく、それによりピペット装置を製造するために必要な異なる部材の数がさらに減少する。その場合、構成上同一に形成された支持構成体を、ピペット導管と、さらなるピペット導管とに対して、互いに相対的に異なる向きで設置するだけで十分である。
【0045】
ホルダ構成体と、さらなるホルダ構成体の支持構成体同士は、好ましくは互いに相対的に、移動軸線に直交すると共にピペット装置の作用平面に対して平行な回転軸線の周りに180°捩じられているか、又は/及びピペット装置の作用平面に直交する回転軸線の周りに180°捩じられた状態で設けられている。これは例えば、上記において説明された通り、4つのガイドレールが直方体の稜線に沿って延在する場合に可能である。その場合、ピペット導管は想像上の直方体を介して対角線方向に向き合うリニアガイドレールの一方の対にガイドされ、さらなるピペット導管は、対角線方向に向き合うリニアガイドレールのそれぞれ他方の対にガイドされている。
【0046】
ホルダ構成体と、さらなるホルダ構成体の支持構成体同士の相対的設置の上記の定義は、上記において説明された通り、4つのガイドレールが直方体の外周面の稜線に沿って延在し、直方体の外周面の2つの側面が作用平面に対して平行に向けられ、当該外周面のさらなる2つの側面が作用平面に直交するように向けられている、顕著に好適な場合に当てはまる。
【0047】
しかしながら、4つのガイドレールによって画定される想像上の直方体の外周面の4つの側面のいずれも、作用平面に対して平行でなく、あるいは作用平面に直交しない、はるかに好適でない場合についても、ホルダ構成体と、さらなるホルダ構成体の支持構成体同士は、当該支持構成体が互いに相対的に、4つのリニアガイドレールによって画定される想像上の直方体の外周面の平行な一対の側面に直交する回転軸線の周りに180°捩じられて設けられている場合、同一部材として形成されていてよい。その場合、リニアガイドレールに対する作用平面の向きは問題にならない。
【0048】
支持構成体は好ましくは、それぞれの支承部材と結合するための結合形成部同士の間に、調整構成体をその上に設置するための設置形成部を有している。当該設置形成部は好ましくは対称であり、それにより、上記において支持構成体との関連で挙げられた回転軸線のうちの一の回転軸線の周りの180°の回転に関して不変であり、それによりリニアガイドレールにガイドされた支持構成体のそれぞれの向きに関わらず、調整構成体をガイドフレームに対して、常に同じ向きに取り付けることを可能にする。取り付けが完了したピペット装置を見るとき好ましくは、同一の支持構成体をガイドする2つのリニアガイドレールの間の、作用平面に直交する方向における距離は、支持構成体をガイドする両の支承部材に支持構成体を結合するための、支持構成体の結合形成部同士の間の距離よりも小さい。これは例えば、リニアモータ式移動駆動部の少なくとも1つのステータを、作用平面に直交する方向において互いに距離を有して設けられるそれぞれ2つのガイドレールの間の領域内に設けることを可能にする。少なくとも1つのステータは好ましくは、ガイドレールによって画定される想像上の直方体の内部に設けられている。
【0049】
ガイドフレームはしたがって好ましくは、さらなるピペット導管も、高加速かつ高速で移動軸線に沿って移動させるために駆動できるように、さらなる磁石構成体を備えるさらなるリニアモータのさらなるステータを含む。さらなるホルダ構成体は、さらなるコイル構成体を備えるリニアモータのさらなるロータを含む。当該さらなるステータも、移動軸線に沿って延在し、移動軸線に対して直交方向に、上記のステータから距離を有して設けられている。
【0050】
好ましくはまた、磁石構成体を備えるステータと、さらなる磁石構成体を備えるさらなるステータは、略同一に形成されている。両のステータは特に、上記のU字形断面を備えるヨークとして形成されており、その場合、ピペット装置の取り付けを容易にするために、ステータは好ましくは、それぞれ互いに向き合う2つの磁石列を備えるステータ同士の間隙が、同一平面上に設けられているように設置されており、ステータとさらなるステータとは好ましくは、ヨーク開口部により互いに向き合い、ヨーク底部により互いに背を向け合う。
【0051】
ステータもさらなるステータも好ましくは、それぞれ作用平面に直交する方向において互いに距離を有して設けられている2つのガイドレールの間の領域内に、特に好ましくはガイドレールによって画定される想像上の直方体の内部に設けられている。
【0052】
ステータとさらなるステータとを形成するために同一部材を使用することは例えば、ステータとさらなるステータとが、それらの向きにおいて互いに相対的に、移動軸線に直交すると共に、ピペット装置の作用平面であって、当該作用平面上でピペットプロセスのための容器が準備される作用平面に平行な回転軸線の周りに180°捩じられているか、あるいは、移動軸線に対して平行な回転軸線の周りに180°捩じられた状態で設けられていることにより可能である。当該記載も、4つのリニアガイドレールが直方体の外周面の稜線を規定し、外周面の2つの側面が作用平面に対して平行に向けられている、好適な場合に当てはまる。外周面の任意の向きにおいて、ステータとさらなるステータとは、同一部材としてそれらの向きにおいて互いに相対的に、直方体の外周面の平行な一対の側面に直交する回転軸線の周りに180°捩じられた状態で設けられていてよい。
【0053】
相対的な捩じりによって規定される互いの相対的な両の向きが、可能である。それぞれのステータもしくはさらなるステータの磁石構成体の形成に応じて、両の異なる相対的設置は、互いに区別できなくなる。これは例えば、ステータとさらなるステータとが、進行方向に直交する長手方向中心平面に関して、鏡面対称に形成されているとき、当てはまる。
【0054】
このとき、移動軸線に沿って共に移動するためにピペット導管と連結されているリニアモータのロータが問題になり得る。さらなるピペット導管のさらなるロータにも同じことが当てはまる。ロータは通常、さらなるロータと同じく、複数のコイル、好ましくは少なくとも3個のコイルを有し、当該コイルは進行軸線に沿って連続的に設けられている。理論上、コイルは少なくとも部分的に重なり合ってよいが、できる限り薄いロータを実現するためには、コイルが完全に並び合って、すなわちピペット装置の取り付けが完了したとき、進行軸線に沿って連続的に設けられていると有利である。しかしながらその場合、進行軸線に沿ったロータの寸法は通常、共に移動するためにロータと連結されているピペット導管の寸法よりも大きい。さらなるピペット導管についても同じことが当てはまる。
【0055】
ピペット装置を製造する際、同一部材の割合を高めるためにまた、コイル構成体を備えるロータと、さらなるコイル構成体を備えるさらなるロータとは、好ましくは構成上、同一に形成されている。しかしながら上記の寸法上の理由からピペット導管と、さらなるピペット導管とが進行軸線に沿って互いに接近する際、ロータの衝突を回避し、そのようにしてピペット導管と、さらなるピペット導管との比較的大きな接近を可能にするために、ロータとさらなるロータとは好ましくは、それらの向きにおいて互いに相対的に、移動軸線に直交すると共に、作用平面に平行な回転軸線の周りに、あるいはごく一般的に、リニアガイドレールによって画定される直方体の外周面の平行な一対の側面に直交する回転軸線の周りに、180°捩じられた状態で設けられている。
【0056】
したがって支持構成体は、ロータをその上に取り付けるための取り付け形成部を有している。
【0057】
ロータとさらなるロータとの互いの相対的な向きは、支持構成体とさらなる支持構成体との向きに対応するので、本発明に係るピペット装置の取り付けを容易にするために、好ましくは個々のロータもしくは個々のロータ部材は、同一のやり方で支持構成体に取り付けられている。その場合、取り付けられたロータ部材がロータであるか、さらなるロータであるかは、ガイドフレームに対する支持構成体の向きにより、取り付けられたロータ部材が電磁式加速力を生じさせるためにステータと協働するか、あるいはさらなるステータと協働するかに応じて、決定される。
【0058】
ロータもしくはさらなるロータは、複数の電気ケーブルを介して、電圧源の異なる位相と連結されており、上記の制御装置によって制御される。制御装置はコンピュータ又はプログラマブル論理制御装置であってよい。ロータとさらなるロータとが、制御装置によって互いに別個に電流を供給され得ることにより、ピペット導管とさらなるピペット導管とは、移動軸線に沿って互いに独立して移動可能である。
【0059】
本願で説明される本発明に係るピペット装置は、単独よりも多いピペット導管を有し得、単独のさらなるピペット導管よりも多いさらなるピペット導管を有し得る。ピペット導管とさらなるピペット導管の形での機能ユニットの数が増大するにつれて、同時に実施可能なピペットプロセスの数が増大する。したがってピペット装置は好ましくは、ピペット導管とさらなるピペット導管の形での複数の機能ユニットを有し得る。機能ユニットが互いにできる限り良好に接近できるように、本願では隣接する機能ユニットの導管軸線が少なくとも9mmに接近することが望ましいが、進行軸線に沿って、端部側の機能ユニットを例外として、複数の機能ユニットについて、一のピペット導管が2つのさらなるピペット導管の間に設けられ、一のさらなるピペット導管が2つのピペット導管の間に設けられていることが当てはまる。これは好ましくは全ての残りの機能ユニットについて、端部側の機能ユニットを例外として、すなわち移動軸線に沿って最初と最後のピペット導管もしくはさらなるピペット導管を例外として、ピペット装置が偶数の機能ユニット又は奇数の機能ユニット、すなわちピペット導管及びさらなるピペット導管、を有するかに応じて当てはまる。
【0060】
以下において本発明を添付の図面に基づいてより詳しく説明する。図面が表示するのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】ピペット装置の本発明に係る一の実施の形態を上及び前から見た概略的な斜視図である。
図2図1のピペット装置を移動軸線に沿って見た図である。
図3図1及び図2のピペット装置を被覆のない状態で、上及び後ろから見て斜視的に示す図である。
図4図1のピペット装置を、ガイドフレームがなく、リニアガイドレールと、リニアガイドレールに支承部材を用いてガイドされたホルダ構成体と、ピペット導管とのみを備える状態で走行軸線に沿って見た図である。
図5図4の表示を上及び後ろから斜視的に見た図である。
図6図3のピペット装置を、ピペット導管を走行軸線の方向にも移動させるために代替的に表示されたリニアガイド構成体を備える状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1から図6において、本願のピペット装置の本発明に係る一の実施の形態は、一般的に10で表されている。
【0063】
ピペット装置10はガイドフレーム12を含み、図1に示されるピペット導管14及び16は、移動軸線VLに沿って走行可能にガイドフレームに支承されている。ピペット導管14及び16は略同一に構成されており、それにより一のピペット導管に関する以下の記載は、本実施の形態において示される全てのピペット導管に当てはまる。
【0064】
ピペット導管14及び16には、自明のやり方でピペット先端部18もしくは20が着脱式に受容されていてよい。
【0065】
ピペット導管14及び16は、それぞれの導管軸線K14もしくはK16に沿って延在し、導管軸線は好ましくは移動軸線VLに直交するように向けられている。
【0066】
作用平面AEは本実施の形態において点鎖線で暗示されており、通常、作用平面上で、図に表示されておらず、ピペット装置に属さない容器が準備され、当該容器から、液体がピペット先端部18及び20内に受容されるか、液体がピペット先端部18及び20から、当該容器内に排出される。液体の吸引又は吐き出しのために、自明のやり方でピペット導管14及び16内で、作用媒体、通常は空気の圧力が変化させられ、それにより周囲の雰囲気の圧力に対して、このように生じさせられた負圧もしくは正圧を介して、液体をそれぞれのピペット先端部18又は/及び20内に吸引するか、又は当該ピペット先端部から排出する。
【0067】
作用平面AEは本実施例において、移動軸線VLに対して平行、かつ導管軸線K14及びK16に直交する。
【0068】
ピペット装置10は付加的に、例えば図6においてガイドフレーム12の当該図での左端部において表示されているように、作用平面AEに対して同じく平行であるが、移動軸線VLに対して直交する走行軸線VFに沿って、走行可能に設けられていてよい。その場合、ピペット導管14及び16は、当該ピペット導管の移動領域の枠内で、作用平面AEに対して平行な移動軸線VL及びVFに沿って、作用平面AEの任意の点に向かうことができる。作用平面AEに対して平行に走行する際、作用平面に準備された容器に衝突しないで、しかも当該容器に進入できるように、ピペット導管14及び16は、それぞれの導管軸線K14もしくはK16に対して平行な調整軸線VSに沿って調整可能である。したがって移動軸線VL,VF及びVSは、直線的に互いに独立した直交座標系の移動軸線を形成し、それによりピペット先端部18の分注開口部18aは、移動軸線に対応するそれぞれの移動領域の枠内で、移動軸線VL,VF及びVSによって張設される移動空間内の任意の点に停止することができる。さらなるピペット先端部20等の分注開口部については、ピペット先端部18について述べたことが相応に当てはまる。
【0069】
本願発明のピペット装置10のピペット導管14と、その他すべてのさらなるピペット導管16等は、ホルダ装置22を介して、移動軸線VLに沿って移動可能にガイドフレーム12に受容されている。図に示す実施の形態においてホルダ装置22は、移動軸線VLに沿って移動可能に、ガイドフレーム12にガイドされている支持部材24と、共に移動軸線VLに沿って偏位移動を行うために支持構成体に結合された調整構成体26とを含む。調整構成体26は支持構成体に固定された第1部材26aと、第1部材26aに接しながら、当該第1部材に対して調整軸線VSに沿って可動式の第2部材26bとを含む。第2部材26bは自明のやり方で、調整軸線VSに沿って移動するために、例えば調整軸線VSに沿って延在するリニアガイド装置を介して、第1部材26aにガイドされていてよく、さらに調整移動するために自明のやり方で、例えばスピンドル駆動部又はリニアモータにより駆動されていてよい。第1部材26aに対して第2部材26bを調整軸線VSに沿って相対移動させるための移動駆動部は、第1部材26a内に受容されていてよく、そのために必要な制御部も、部分的又は完全に第1部材26a内に受容されていてよい。第2部材26bは、対応するそれぞれのピペット導管内の作用媒体の圧力を変化させるために必要な、例えば相応の制御部のような装置を部分的又は完全に有し得る。ピペット導管14は例えば強磁性で、好ましくは永久磁化されたピストンを有し得、当該ピストンは、それぞれの導管軸線K14,K16に対して同心的なコイル27により、ピペット導管チューブ内で導管軸線K14に沿って移動するために駆動されていてよい。駆動コイル27への電流供給は、第1部材26a又は/及び第2部材26b内に受容された制御部によって制御されていてよい。
【0070】
ピペット導管14,16等は、移動軸線VLに沿ってリニアモータ式に移動するように駆動されており、それは、相応に大きな動的反力を備える大きな加速を可能にする。このようなピペット装置の生産性は、これにより著しく大きい。
【0071】
したがってガイドフレーム12は、少なくとも1つのステータ28を有する。より正確に言えばガイドフレームは、2つのステータ、すなわちステータ28と、さらなるステータ30とを有する。両のステータは概ね等しく形成されているが、ただ、互いに相対的に捩じられた状態で、互いに距離を有して設けられている。例えば両のステータ28及び30は、移動軸線VLに対して平行な回転軸線の周りに180°回転することにより、理論上互いに入れ替えられ得、あるいは両のステータ28及び30は、走行軸線VFに対して平行な、すなわち移動軸線VLに対して直交すると共に、作用平面AEに対して平行な回転軸線の周りに180°相対的に捩じることにより、理論上互いに入れ替えられ得る。図に示す実施の形態は後者である。したがって以下においてステータ28を説明すれば十分である。ステータ28の説明は、上記の対称条件の下で、ステータ30にも当てはまる(走行軸線VFに対して平行な回転軸線の周りに180°捩じることによって理論上入れ替えられる)。
【0072】
ステータ28は、ステータ30と同じく、好ましくはガイドフレームと一体式に、例えばプラスチック押し出し成形形材として、又はアルミニウム連続鋳造形材として形成されている。ステータ28又は/及びステータ30はまた、ガイドフレームと別個に形成され、好適な結合手段を用いてガイドフレームと結合されていてよい。
【0073】
ステータ28は、互いに向き合う2つの脚部28a及び28bを備えるU字形状の断面を有し、脚部は底部28cを介して互いに結合されている。脚部28a及び28bは、重量を節約するために中空体として形成されていてよい。ヨーク状のステータ28の脚部28a及び28bの間に間隙32が形成されており、当該間隙内で、この場合はピペット導管16のロータ34が移動軸線VLに沿って移動可能に走行する。
【0074】
ヨーク脚部28a及び28bの互いに向き合う内側にはそれぞれ、磁石構成体が設けられており、磁石構成体は移動軸線VLに沿って連続的に設けられると共に、極性が交互になる一連の永久磁石を含む。図1において認められるのは、ピペット導管14及び16から比較的遠い脚部28aの磁石構成体36のみである。この磁石構成体36に、脚部28bに設けられたさらなる磁石構成体37(図3参照)が向き合い、しかも常に反対の極が間隙32の幅方向において互いに向き合うように向き合う。磁石構成体36の永久磁石は、対向する磁石構成体37の永久磁石と同じく、永久磁石の極性化方向が同じく間隙32の幅方向を向いている、すなわち一の永久磁石の両極の1つは常に全体として間隙32に対して比較的近く設けられ、それぞれ他方の反対の極は全体として間隙32に対して比較的遠く設けられるように、設けられている。このようなやり方で、ヨーク状のステータ28の両のステータ脚部28a及び28bの磁石構成体36及び37の間で、力線は間隙32を、当該間隙の幅方向において概ね直交方向に貫通し、磁場方向は、移動軸線VLに沿って極性が交互になるように設けられた永久磁石の順番に応じて、互いに向き合う永久磁石ペアごとに逆転する。このようにして高効率で、密な磁場を実現することができ、当該磁場においてロータ34は高精度かつ高速で、高加速式に移動させることができる。移動軸線VLに沿ったピペット導管の設置の正確性はさらに、磁石構成体36と、当該磁石構成体に向き合う磁石構成体37の磁極ピッチに依存している。
【0075】
ガイドフレーム12のステータ部分の、それぞれ他方のステータに背を向ける側に、それぞれ一対のリニアガイドレールを備える構成体38もしくは40が設けられている。図1では、上方の構成体38のみが詳しく表示され、下方の構成体40は暗示されるにとどまる。
【0076】
ガイドフレーム12はまた、距離スケール42を有し得、当該距離スケールは、移動軸線VLに沿ったピペット導管の位置を検知することに役立つ。スケール42は好ましくは絶対的スケールであり、それによりピペット導管の位置は直接的に特定可能である。しかしながらこの代わりにインクリメンタルスケールが用いられることが除外されるべきではない。スケール42は好ましくは取り付け形成部44に設けられており、当該取り付け形成部内でスケールは好ましくは面一に適合する。図に示す例において、距離スケール42を取り付けるための取り付け形成部44は、ステータ28の脚部28aの、磁石構成体36に背を向ける側に設けられている。上記の対称条件の下で、ステータ30について同じことが当てはまる。しかしながら取り付け形成部44は、ステータ脚部28bの磁石構成体に背を向けた側、あるいはガイドフレーム12の他の場所に同じく良好に形成されるものと想定される。
【0077】
移動軸線VLに沿って移動するためにガイドフレーム12にガイドされたピペット導管は、互いに追い抜き得ないので、1つのみの取り付け形成部内に距離スケールを1つだけ設置すれば十分である。図に示す例においてガイドフレーム12は、C形状断面を備えるシェル状の被覆46に包囲されている。被覆46のスリット48を通過して、ピペット導管14及び16等と、ロータ34もしくは50との機械的結合が行われる。
【0078】
図5において特に良好に認識されるように、個々のピペット導管は2つのリニアガイドレールにガイドされ、しかも個々のレール構成体38及び40からのそれぞれ1つのリニアガイドレールにガイドされている。リニアガイドレール構成体38は、第1のリニアガイドレール52を有し、当該第1のリニアガイドレールに支承部材54が、移動軸線VLに沿ってのみ移動可能にガイドされている。
【0079】
リニアガイドレール構成体40は、第2のリニアガイドレール56を有し、当該第2のリニアガイドレールに第2の支承部材58が、移動軸線VLに沿ってのみ移動可能にガイドされている。支承部材54及び58は、例えば循環ボール列を備えるガイドキャリッジであってよく、当該ガイドキャリッジは低摩擦だが、正確にそれぞれのガイドレール52及び56にガイドされている。ピペット導管14は、第1の支承部材54及び第2の支承部材58を介して、移動軸線VLに沿って移動するために支承されている。
【0080】
第1のリニアガイドレール構成体38は、第3のリニアガイドレール60を有し、当該第3のリニアガイドレールに第3の支承部材62が、移動軸線VLに沿ってのみ移動可能にガイドされている。他方のリニアガイドレール構成体40は同じく第4のリニアガイドレール64を有し、当該第4のリニアガイドレールに第4の支承部材66が、移動軸線VLに沿ってのみ移動可能にガイドされている。ピペット導管16は、第3及び第4の支承部材62もしくは66を用いて、移動軸線VLに沿って移動するために第3もしくは第4のリニアガイドレール60もしくは64にガイドされている。
【0081】
ピペット導管14の支持構成体24はこのとき、第1及び第2のガイドレール52及び56を囲繞し、それは図に示す実施の形態におけるリニアガイドレールの構成では、第4のガイドレール64を囲繞することも意味する。ピペット導管14の支持構成体24は、第1及び第2の支承部材54及び58を、移動軸線VLに沿って共に移動させるために互いに剛接合している。ガイドレール構成体38及び40を、当該ガイドレール構成体にガイドされたピペット導管と共に、走行軸線VFに沿って見た状態で示している図4において認められるように、同一のピペット導管14と結合されている支承部材54及び58の間には、移動軸線VLに沿って距離Aがある。これにより移動軸線VLに沿ったピペット導管14のガイド長さは増大させることができるが、そのためにピペット導管14又は当該ピペット導管14と関連するホルダ構成体26を、必要以上に幅広く実施する必要はない。ピペット導管14及びホルダ構成体26は、移動軸線VLの方向における寸法が9mmの値を超えない。これに対してピペット導管14の第1及び第2の支承部材54もしくは58の間の距離Aは、ピペット導管14、又は当該ピペット導管のホルダ構成体26の移動軸線VLの方向における寸法の何倍もの大きさである。両の支承部材54及び58は、ピペット導管14の導管軸線K14を含むと共に、移動軸線VLに直交する平面から、数量的に等しく離間しているが、当該平面の異なる側に設けられている。
【0082】
上記の平面は、走行軸線VFが図面平面に直交している図4の観点に基づくと、同じく図面平面に直交しており、それにより上記の平面は導管軸線K14の線と一致する。図4では、作用平面AEも図面平面に直交している。
【0083】
第1及び第2の支承部材54及び58をガイドするリニアガイドレール52及び56は、走行軸線VFと一致するオフセット軸線VAに沿って互いにずらされているので、支承部材54及び58は当該オフセット軸線VAに沿ってもオフセットを有しており、このオフセットは、ピペット導管14が移動軸線VLに沿って移動する際、当該ピペット導管のガイド安定性を高める。
【0084】
第1及び第2の支承部材54もしくは58の間のオフセット軸線VAに沿ったオフセットVは、図2において良好に認識される。図2において移動軸線VLは、作用平面AEと同じく、図面平面に直交する向きを有する。
【0085】
支承部材54,58,62及び66は同一である。リニアガイドレール52,56,60及び64も互いに同一である。リニアガイドレール52,56,60及び64は、移動軸線VLに沿って見た場合(図2参照)、矩形の隅部を形成し、移動軸線VL及び走行軸線VFに直交する方向における2つのリニアガイドレール間の距離は、走行軸線VFもしくはオフセット軸線VAに沿った2つのリニアガイドレール間の距離よりも大きい。リニアガイドレール52,56,60及び64はこれにより、直方体の外周面の稜線を形成する。構成体38のリニアガイドレールと、構成体40のガイドレールとは、一方の構成体が、移動軸線VLに対して平行な回転軸線の周りに180°回転することにより、理論上、それぞれ他方の構成体に入れ替え可能であるように対称に設けられている。同じくリニアガイドレールはその対称的な実施ゆえに、走行軸線VFに対して平行な回転軸線の周りに180°回転することにより、理論上、互いに入れ替え可能である。
【0086】
支持構成体24は、全てのピペット導管に対して同一に形成されているが、同一に設置されてはいない。ピペット導管14の支持構成体24は、走行軸線VFに対して平行な回転軸線の周りに180°回転することにより、ピペット導管16の支持構成体24となり得、またその逆も成り立つ。それぞれの支持構成体24に結合された支承部材は、この回転に関与し得る。
【0087】
移動軸線VLに沿って直接的に互いに隣接するそれぞれ2つのピペット導管は好ましくは、リニアガイドレールの異なるペアにガイドされている。したがって移動軸線VLに沿って、ピペット導管14に対して直接的に隣接するピペット導管16は、移動軸線VLに沿って移動するために、第3のリニアガイドレール60と、第4のリニアガイドレール64とにガイドされている。図4は2つのさらなるピペット導管を示しており、1つは、ピペット導管14に背を向ける側でピペット導管16に対して隣接するピペット導管であり、1つは、ピペット導管16に背を向ける側でピペット導管14に対して隣接するピペット導管である。移動軸線VLに沿って移動可能にガイドされているピペット装置10の全てのピペット導管について、移動軸線VLに沿って互いに直接的に隣接する2つのピペット導管は、異なるリニアガイドレールにガイドされており、ピペット導管は常に1つおきに同一の両リニアガイドレールにガイドされているという条件が当てはまる。これにより支承部材を移動軸線VLに沿った方向において、当該支承部材により支承されるピペット導管よりも長く実施することが可能となり、これは移動軸線VLに沿った付加的なガイド長さを意味する。
【0088】
図5に示すように、移動軸線VLに沿って直接的に隣接する2つのピペット導管のロータ34及び50は、同一に実施されているが、ピペット装置10に同一に設置されてはいない。当該ロータは細い取り付け部分34aもしくは50aを有しており、当該取り付け部分は移動軸線VLの方向において、直接的に隣接する2つのピペット導管の、互いに最大に接近させられた2つの導管軸線の間の所望の格子間隔よりも幅が広くない。ロータ34及び50はさらにコイル部分34bもしくは50bを有しており、当該コイル部分内にコイル構成体が受容されており、コイル構成体は電流が供給されると時間的に変化する磁場を生じさせ、当該磁場はステータ28もしくは30の磁石構成体と相互に作用し、それにより移動軸線VLに沿ったそれぞれのピペット導管の加速を生じさせる。取り付け部分34a及びコイル部分34bはL字形状を有しており、それにより移動軸線VLに沿って直接的に隣接する2つのピペット導管のロータ34及び50は、互いに最大限に接近したとき、概ね閉鎖された矩形になるように互いに補い合うことができる。
【0089】
支持構成体24に、もしくは当該支持構成体に設けられたロータに(図4のロータ50参照)、センサ68が設けられていてよく、当該センサは位置決定のための距離スケール42と協働する。対称性の理由と、それに関連して取り付け及び製造を容易にするという理由から、ガイドフレーム12は当該ガイドフレームと一体式に形成されたステータ28及び30と共に、好ましくは作用平面AEに対して平行な鏡面対称平面に関して鏡面対称に設けられている。これによりガイドフレームは、距離スケール42を取り付けるための2つの取り付け形成部44を有しているが、実際にはそのうちの1つのみが必要とされる。
【0090】
図2は、移動軸線VLに沿って見た場合、支持構成体24がE字形を有していることを示しており、当該E字形の上方脚部及び下方脚部は支承部材との結合に役立ち、当該E字形の中央脚部はそれぞれのロータとの結合に役立ち、脚部同士を結合する当該E字形の底部は、調整構成体26との結合に役立つ。このとき3つの脚部を結合する底部の中央部は好ましくは、それぞれ支持構成体と結合されたピペット導管の導管軸線Kに対して平行に向けられており、これに対して支持構成体24の底部の上部領域及び下部領域は、対応する導管軸線Kに対して傾斜しており、それにより支持構成体24と結合された支承部材同士の距離Aを生じさせることができる。
【0091】
図6において1つには、ピペット装置が必ずしもガイドフレーム12を包囲するハウジング46を必要としないことが示されている。むしろガイドフレーム12自体が直接的に、フレーム70を介して定置式に設置されているか、さらなるリニアガイド構成体72を介して走行軸線VFに沿って移動させるためにガイドされていてよい。ガイドフレーム12はそれ自体がまた、リニアモータ式に、あるいはスピンドル駆動部により機械式に、走行軸線VFに沿って移動するために駆動されていてよい。ガイドフレーム12がハウジング46と共に、リニアガイド構成体72を用いて走行可能に形成されていてよいのは自明である。
【0092】
本発明により、高度にダイナミックで、高速かつ正確に移動可能であり、それにより生産性の高いピペット装置10が実現される。
【符号の説明】
【0093】
10 ピペット装置
12 ガイドフレーム
14 ピペット導管
16 ピペット導管
18 ピペット先端部
20 ピペット先端部
22 ホルダ装置(ホルダ構成体)
24 支持構成体
26 調整構成体
26a 調整構成体の第1部材
26b 調整構成体の第2部材
27 駆動コイル
28 ステータ
28a ステータの脚部
28b ステータの脚部
28c ステータの底部
30 ステータ
32 間隙
34 ロータ
34a ロータの取り付け部分
34b ロータのコイル部分
36 磁石構成体
37 磁石構成体
38 リニアガイドレール構成体
40 リニアガイドレール構成体
42 距離スケール
44 取り付け形成部
46 被覆(ハウジング)
48 スリット
50 ロータ
50a ロータの取り付け部分
50b ロータのコイル部分
52 第1のリニアガイドレール
54 第1の支承部材
56 第2のリニアガイドレール
58 第2の支承部材
60 第3のリニアガイドレール
62 第3の支承部材
64 第4のリニアガイドレール
66 第4の支承部材
68 センサ
70 フレーム
72 リニアガイド構成体
VL 移動軸線
VF 走行軸線
VA オフセット軸線
VS 調整軸線
K14 導管軸線
K16 導管軸線
AE 作用平面
A 支承部材同士の距離
V 第1及び第2の支承部材の間のオフセット軸線に沿ったオフセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6