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特許7138621KPI性能分析のための無拘束の従属変数によるMPC
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】KPI性能分析のための無拘束の従属変数によるMPC
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/04 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
G05B13/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019503521
(86)(22)【出願日】2017-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2017041661
(87)【国際公開番号】W WO2018022298
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】15/221,755
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】トレンチャード,アンドリュー・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オグデン-スウィフト,アンドリュー
【審査官】山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06666049(US,B1)
【文献】特開2015-114778(JP,A)
【文献】特開2016-045793(JP,A)
【文献】特開平08-309140(JP,A)
【文献】特開2004-152264(JP,A)
【文献】特表2012-528392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業プロセスのための動的モデル予測制御(MPC)プロセスモデルを提供する(101)ステップであって、前記MPCプロセスモデルは、前記MPCプロセスモデルを格納するメモリ(211b)を有するプロセッサ(211a)によって実装される、MPCコントローラのための複数の操作変数(MV)及び複数の制御変数(CV)を含み、前記MPCプロセスモデルは、前記工業プロセスのための少なくとも1つの重要業績評価指標(KPI)を含み、前記KPIは、前記MPCコントローラの中の限度で拘束されない少なくとも1つの第1のKPIと前記MPCコントローラの中の前記限度で拘束される少なくとも1つの第2のKPIとを含む、ステップと、
前記少なくとも1つの第1のKPIの将来の軌道及び前記少なくとも1つの第1のKPIが安定する定常状態(SS)値を推定する(102)ステップと、
前記将来の軌道及び前記SS値を用いて、前記複数のCV及び前記複数のMVから選択される重要プラント操作変数と前記少なくとも1つの第1のKPIの間の動的関係を決定する(103)ステップと、
前記工業プロセスの操作の間における前記少なくとも1つの第1のKPIの性能の問題又は前記性能を上回ることの少なくとも1つの原因を、前記MVの少なくとも一部に対する前記動的関係及び現在の値から識別するために、前記少なくとも1つの第1のKPIの性能を分析する(104)ステップと
をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータ可読媒体であって、
前記動的関係を決定するステップは、
が前記少なくとも1つの第1のKPIをKPI目標を満たす方向に移動することから引き止めているかを判定するために、前記少なくとも1つの第1のKPIの性能を検討するステップと、
上下の境界の中で理想操作ポイントを算出して、前記MPCコントローラを該操作ポイントに方向づけるステップと、
前記少なくとも1つの第1のKPIが短期的に著しく変化することが予測される場合にオペレータにリアルタイムに自動的に警告するために、性能の不整合に基づいて、問題の原因を識別して、いつ前記少なくとも1つの第1のKPIがその目標から逸脱させられているかを特定するステップと
を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記問題の前記原因を識別するステップは、前記複数のMVのうちいずれが前記少なくとも1つの第1のKPIに変化を引き起こしているかを識別するステップを含む、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記MPCコントローラの中の前記限度で固定された前記少なくとも1つの第2のKPIの性能を分析して、該限度が前記KPI目標に整合していない場合、不整合にフラグを立てるステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
モデル予測制御(MPC)コントローラであって、
プロセッサであって、複数の操作変数(MV)及び複数の制御変数(CV)を含む、工業プラント(205)で動く工業プロセスのための動的MPCプロセスモデルを実装するために前記プロセッサによって実行される少なくとも1つのアルゴリズムを格納するメモリを有し、前記MPCプロセスモデルは、前記工業プロセスのための少なくとも1つの重要業績評価指標(KPI)を含み、前記KPIは、前記MPCコントローラの中の限度で拘束されない少なくとも1つの第1のKPIと前記MPCコントローラの中の前記限度で拘束される少なくとも1つの第2のKPIとを含む、プロセッサ
を備え、
前記MPCプロセスモデルは、
前記少なくとも1つの第1のKPIの将来の軌道及び前記少なくとも1つの第1のKPIが安定する定常状態(SS)値を推定し、
前記将来の軌道及び前記SS値を用いて、前記複数のCV及び前記複数のMVから選択される重要プラント操作変数と前記少なくとも1つの第1のKPIの間の動的関係を決定し、
前記動的関係を決定することは、
が前記少なくとも1つの第1のKPIをKPI目標を満たす方向に移動することから引き止めているかを判定するために、前記少なくとも1つの第1のKPIの性能を検討することと、
上下の境界の中で理想操作ポイントを算出して、前記MPCコントローラを該操作ポイントに方向づけることと、
前記少なくとも1つの第1のKPIが短期的に著しく変化することが予測される場合にオペレータにリアルタイムに自動的に警告するために、性能の不整合に基づいて、性能における問題の少なくとも1つの原因を識別して、いつ前記少なくとも1つの第1のKPIがその目標から逸脱させられているかを特定することと
を含む、モデル予測制御(MPC)コントローラ。
【請求項5】
前記MPCプロセスモデルは、前記工業プロセスの操作の間における前記性能の問題又は前記性能を上回ることのうちの少なくとも1つの原因を前記MVの少なくとも一部に対する前記動的関係及び現在の値から識別することを含む、前記少なくとも1つの第1のKPIの性能を分析することをさらに提供する、請求項4に記載のMPCコントローラ。
【請求項6】
前記動的関係を決定することは、前記MPCコントローラの中の前記限度で固定された前記少なくとも1つの第2のKPIの性能を分析して、該限度が前記KPI目標に整合していない場合、不整合にフラグを立てることをさらに含む、請求項に記載のMPCコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]開示される実施形態は、重要業績評価指標を含むモデル予測制御(MPC)に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]材料を処理する物理プロセスを操作する、製造プラント、化学プラント及び精油所などの処理施設は、通常はプロセス制御システムを用いて管理される。バルブ、ポンプ、モータ、加熱/冷却装置及び他の工業的設備は、処理施設の材料を加工するために必要な動作を通常実行する。他の機能の中でも特に、プロセス制御システムは、処理施設の工業的設備の使用を管理することが多い。
【0003】
[0003]従来のプロセス制御システムにおいて、コントローラは、多くの場合、処理施設の工業的設備の操作を制御するために用いられる。コントローラは、工業的設備の操作をモニタリングすることができ、制御信号を工業的設備に提供し、及び/又は、動作不良が検出されるとアラームを生成する。プロセス制御システムは、アナログ及び/又はデジタルバスによるなどして、少なくとも1台のワークステーションに、そして、1つ又は複数の現場装置に通信可能に結合された1つ又は複数のプロセスコントローラ及び入出力(I/O)装置を通常含む。現場装置は、センサ(例えば、温度、圧力及び流量センサ)並びに他の受動的な及び/又は能動的な装置を含むことができる。プロセスコントローラは、制御ルーチンを実施するために現場装置によりなされる現場計測値などの、プロセス情報を受信することができる。それから、制御信号が生成され、工業的設備に送られて、プロセスの操作を制御することができる。
【0004】
[0004]工業プラントは、重要温度、圧力、液体流速及び流量レベル、重要バルブ、ポンプ及び他の器材の操作位置などのプロセスパラメータを表示するためのディスプレイを有するコントロールルームを一般に有する。コントロールルームのオペレータは、プラントの操作の様々な側面を、自動制御に優先することを通常は含んで、制御することができる。一般にプラントの操作シナリオでは、オペレータは、プラントがその「最適」作動ポイント(すなわち、プロセスと関連する利益が最大であり、それは生成される製品の量に対応することができる)で、したがって警報限界の近くで常に作動するような操作条件を所望する。化学プロセスのための原材料組成の変更、製品の要件もしくは経済面を変えること、又は制約の他の変更に基づいて、操作条件は、利益を増加させるために変更することができる。しかしながら、プロセスの可変性のため警報限界により近くでプラントを操作することと関連して危険が増大する。
【0005】
[0005]高度なプロセスコントローラは、工業プロセスを走らせている器材の操作を制御するための高度プロセス制御(APC)技術である多変数モデル予測制御(MPC)を実装する。このモデルは、いくつかの独立変数といくつかの従属変数間の一組の概して線形の動的関係である。このモデルは、従来のモデル実装であるラプラス変換及びARXモデルによる異なる形を有することができる。変数の間の非線形関係も可能である。
【0006】
[0006]MPC制御技術は経験的に導き出されたプロセスモデル(すなわち履歴上のプロセスデータに基づく)を使用して受け取った現在の入力(例えば、センサ)データを分析することが通常必要で、そこではモデルは、工業的設備が受け取った入力データに基づいて(例えば、アクチュエータ設定を変えることによって)どのように制御されなければならず、したがってどのように操作されなければならないか、について識別する。MPCの制御原理は、独立変数及び従属変数としての制御変数(CV)として3種類のプロセス変数、操作変数(manipulated variable)MV及びいくつかの測定された外乱変数(DV)を使用する。モデルはMV/DV変化に対する各CVの反応を含み、そしてモデルはMV及びDVの変化からCVに対する将来の効果を予測する。
【0007】
[0007]多くの工業的及び商業的顧客アプリケーションで、重要業績評価指標(KPI)が事業KPIモニタリングシステムにより用いられ、事業あるいは組織が、例えば法律遵守、生産速度、エネルギー使用に関して受け入れられる標準に向けて実行されているか、並びに製品又はサービス品質及び収益性を維持しているかを追跡する。通常、例えば、傷害につながる事故により失われたオペレータの作業時間、メンテナンス部門のパフォーマンス、環境排出物から、生産速度、品質変動並びにエネルギー及び化学薬品消費に至るまで、広範囲にわたるタイプのKPIが存在する。
【0008】
[0008]事業KPIモニタリングシステムにより用いられるいくつかのKPIはMPCコントローラの範囲内である変数(例えば、休業災害及びメンテナンス部門の性能KPI)には関連がなく、しかしながら、例えばプロセスに対する送り速度、種々の製品の生産速度、製品1対製品歩留り2、エネルギーの消費などのような、生産目標に関するKPIは、通常著しくMPCモデルのCV、MV又はDVと重複する。場合によっては、KPIを算出するために用いる同じ変数が、MPCモデルのCV又はMVとしても設定される(MPCが重要な生産変数を制御して最適化するので)。他の場合には、KPIは、MPC MV及びDVと非常に相関しており、したがって、同じMPCツール及びワークフローを用いて予測/推定することができる。これには、性能モニタリングのために用いることができる特定のエネルギー使用量又は製品歩留りを含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
KPI性能分析のためのMPCを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0009]本概要は、提供される図面を含む発明を実施するための形態において以下でさらに説明する開示される概念の簡単な抜粋を簡潔な形で紹介するために設けられている。この概要は、請求される主題の範囲を限定することを目的としない。
【0011】
[0010]開示される実施形態は、KPI及びKPIの時系列傾向が性能の追跡に役立って、短時間で工業プロセスのプロセス性能の変化を識別するのを助けている一方で、1つ又は複数のKPIの変化を修正するか、緩和するか又は、利用するためにKPI性能の変化のための根本原因を理解するためには、さらなる詳細分析がしばしば必要であることを認識するものである。データ科学及びデータ分析は成長している分野であり、市販の汎用性ツールセットがこの分野の実務家をサポートするために存在している。しかしながら、不十分なKPI性能の原因を分析することは、所与のKPIに影響を与え得る根本原因事象、及び異種のシステムで測定されることがあるか、又は全く測定されない、それらの根本原因事象の可視性又は推論には多様な可能性があるために、困難なものであり得る。別の全般に重要な要因は、特に制御がアクティブ(閉ループ)モードと非アクティブ(開ループ)モード間で切り替えられることができるとき、測定されているシステムの中の閉ループ制御の影響が多変数である、すなわち、個々に閉ループ制御に取り入れられるか又は取り去ることができる複数の入力(CV、DV)及び複数の出力(MV)を有しているか、又は、非正方形である(すなわち、CVの数はMVの数と一致しない)ということである。
【0012】
[0011]モデル予測制御(MPC)に対しては、制御システムがアクティブであるか部分的にアクティブでどうか、CVの特定のセット及びMVが制御のアクティブセットの中であるかどうかに応じて、時間とともに変化している工業プロセスのためのMPCプロセスモデルの種々のプロセス変数間の相関によって生じる問題があるということも認識される。開示される実施形態は、さらに、閉ループプロセス制御アプリケーションの一部としてKPI分析論を実装することが(統計回帰及びクラスター形成技術が、プロセスのモデル及び制御レイヤーの挙動を含むこと無しに履歴上の時系列データの大きいセットを分析するために用いられる従来の「一般的な」データ分析方法と比較して)はるかにより単純であると認識する。MPCコントローラが問題なく機能していて、適切に構成されて、オペレータによって効果的に使われているかどうか評価するためにMPCアプリケーション上のKPI分析論を実行することができるが、ここのユーザはMPC保守エンジニア/MPCチームのリーダーである。さらに、事業KPIモニタリングシステムの背後にMPC KPI分析論を結びつけることは知られていない。そして、MPCモデルKPIに制御上限又は下限を有しない無拘束の従属変数(UDV)を含むという着想も知られてない。
【0013】
[0012]多くの産業界(例えば、プロセス及び化学工業など)において、閉ループ制御、特にMPC制御が通常用いられる。閉ループ制御は、しばしば、KPIとして直接使われるか、又は一般に強く他のKPIに影響するMVの調整によって複数のCVのための利益を制御して上げるように構成される。アプリケーションは、システムの挙動を記載するいくつかのタイプのプロセスモデルを有する。モデムMPC制御アプリケーションは予測的に動き、CV及びMVの将来の軌道、並びに、利用できるMV及びそれらの設定された上限及び下限によって、MPCが指定のCVの上限及び下限を有するCVを制御することが可能であるか、あるいは、これらの限度が破られるかどうかについての、早期のリアルタイムの指標を提供する。制御アプリケーションは比較的高速に実行されて、モニタリングされている制御システムのリアルタイムの制約をモニタリングし、現在のプロセス計測値に対してCV予測を調停する。KPIがCV又はMVとしてMPCモデルにすでに含まれて、及び/又はKPI UDVとして追加される場合、MPCはKPIの将来の軌道そして、それらが事業KPIシステムで構成される目標から逸脱するかどうかについて予測するために用いることができる。
【0014】
[0013]開示される実施形態は、KPI性能分析の方法を含み、それは、MPCプロセスモデルを保存しているメモリを有するプロセッサによって実装されるMPCコントローラのための複数のMV及び複数のCVを含んでいる工業プロセスのための、動的MPCプロセスモデルを提供することを含む。MPCプロセスモデルは、工業プロセスのための事業KPIモニタリングシステムにも含まれる少なくとも1つのKPIを含む。KPIの将来の軌道及びKPIが安定する定常状態(SS)値が推定される。将来の軌道及びSS値が、複数のCV及び複数のMVから選択される重要プラント操作変数とKPIの間の動的関係を決定するために使われる。KPIの性能は、工業プロセスの操作の間における性能の問題又は性能を上回っていることの少なくとも1つの原因を、MVの少なくとも一部に対する動的関係及び現在の値から識別することを含んで、分析される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[0014]例示の実施形態による、KPI性能分析の方法の例示方法におけるステップを示すフローチャートである。
図2】[0015]開示されるMPC制御を実装するMPIコントローラを含む例示プロセス制御システムのブロック図である。
図3】[0016]例示の実施形態による、脱ブタン塔プロセスのための例示シミュレーションフローシートである。
図4】[0017]例示の実施形態による、複数のKPI UDVを有して使用される例示MPC制御戦略を示す脱ブタン塔プロセスのための例示MPC制御概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0018]開示される実施形態は添付図面を参照して記載されており、同一の参照番号が図の全体にわたって使われて同様又は等価な要素を示す。図は一定の比率で描画されてはおらず、それらは単に特定の開示される態様を例示するために提供される。いくつかの開示される態様は、説明のための例示応用を参照して以下に記述する。多数の具体的な詳細、関係及び方法が開示される実施形態を完全に理解するために記載されることを理解されたい。
【0017】
[0019]しかしながら、当業者は、本明細書において開示される内容が具体的な詳細の1つ又は複数なしで、又は、他の方法によって実践され得ることを容易に認識するであろう。他の例において、周知の構造又は操作は、特定の態様が不明瞭となることを回避するために詳細に示さない。本開示は、いくつかの動作が異なる順序で及び/又は他の動作又はイベントと同時に発生する場合があるので、動作又はイベントの説明されている順序によって限定されない。さらに、すべての説明される動作又はイベントが、本明細書において開示される実施形態による方法論を実施するために必要であるというわけではない。
【0018】
[0020]開示される実施形態はMPC制御による特定のタイプの操作上のKPI及びKPI管理動作とMPC目的の間のアライメントによって有効にされる最適化フレームワークを実装し、そして、MPC性能及び構成が考慮されない限り、不十分なKPI性能の原因を分析することが困難であることを認識している。図1は、例示の実施形態による、KPI性能分析の例示方法100におけるステップを示すフローチャートである。ステップ101は、MPCプロセスモデルを保存しているメモリを有するプロセッサによって実装されるMPCコントローラのための、複数のMVと複数のCVとを含む工業プロセスのための動的MPCプロセスモデルを提供することを含む。
【0019】
[0021]MPCプロセスモデルは、工業プロセスのための事業KPIモニタリングシステムにも含まれる少なくとも1つのKPIを含む。KPIは、上述のように制御上限又は下限を有しないKPI UDVを含むことができる。しかし対照的に制御限界の無い外乱変数(DV)は、独立変数である。MPCモデルは、複数のKPI UDVを含むことができる。周知のKPIは送り速度及び製品フロー速度を含み、開示するKPI UDVが歩留り、エネルギー及び化学消費並びに器材効率などの主要生産及びユニット性能モニタリング変数を含むことができる。KPIは、通常、外部的に算出される。算出は、MPCコード化算出の範囲内又はDCSシステムの範囲内でなど、多様な方法で実行することができる。算出は、単純なフロー比率(例えば、製品歩留り)、ヒートバランス又はより複雑な相関であることができる。
【0020】
[0022]KPIは、(限定するものではないが)計算値であることが多い。送りフロー及び製品フローは、単純な直接測定されたKPIの例である。製品歩留りは、例えば製品フロー割る送りフローという計算値である。エネルギー効率、具体的なエネルギー消費量、器材効率は、他の直接測定された変数から算出されるすべての値である。KPI値は、通常、事業KPIモニタリングシステムのために算出される。しかしながら、KPI値は、MPCアプリケーションのためにも算出することが必要である(その値が事業KPIモニタリングシステムに利用可能となって労力の重複を回避することができる)。MPCに対して、算出の実装のための2つの選択、つまりMPC自体又は分散制御システムの算出ブロックが通常ある。
【0021】
[0023]当技術分野で知られているように、MPCモデルはオープンループプロセス挙動に関して定められるが、MPCはモデルを「逆にする」ことによってこれを閉ループ制御のために使用する。この正味効果は、MPCがONに切り替えられて閉ループ挙動を反映するときに、プロセス挙動が変えられるということである。
【0022】
[0024]ステップ102はKPIの将来の軌道とKPIが安定するSS値とを推定することを含む。ステップ103は、将来の軌道及びSS値を用いて複数のCV及び複数のMVから選択される重要プラント操作変数とKPIの間の動的関係を決定することを含む。
【0023】
[0025]ステップ104は、工業プロセスの操作の間における性能の問題又は性能を上回っていることの少なくとも1つの原因を、MVの少なくとも一部及び任意選択でCVの1つ又は複数に対する動的関係及び現在の値から識別することを含んで、KPIの性能を分析することを含む。分析は、MPCコントローラがONであるか、OFFであるか又は部分的にONであるときに、実行することができる。開示される実施形態の重要な利点は、KPI分析がMPC状態、及びそれ(MPC状態)が工業プロセスの挙動にどのように影響するか、を考慮するということである。KPIの性能の分析は、MPCコントローラ又は、1つの具体的な実施形態におけるクラウドベースのコンピュータを含む、開示されるアルゴリズムを実施する別のコンピューティング装置によって実行することができる。
【0024】
[0026]問題の原因を識別することは、複数のMVのうちのいずれがKPIに変化を引き起こしているかについて識別することを含むことができる。方法は、事業KPIモニタリングシステムに分析の結果を提供することをさらに含むことができ、一般にダッシュボード図を示しているディスプレイ画面上にある事業KPIモニタリングシステムのユーザは、分析の結果を利用して、性能の問題、又は場合によっては性能を上回っている理由のトラブルシュートを行う。事業KPIモニタリングシステムのユーザは、MV及びCVから選択される少なくとも1つのMPCモデルのパラメータの設定の変更、又は、なぜ所与のKPIが現在制限されているか、もしくは、それらが別の個人が調査するワークフローを起動させることができるか知るためにプロセスオペレータのクエリを開始することを、示唆することができる。
【0025】
[0027]方法は、性能の分析に基づいて動的関係をアップデートすることをさらに含むことができる。将来の軌道は、オペレータへの自動警告及びイベント検出のために用いることができる。
【0026】
[0028]大部分の市販MPCソフトウェアは、利益を最大にする操作ポイントにMPCコントローラを方向づけるオプティマイザを含む。この最適ポイントは、1つ又は複数のCV及びMVに対する経済価値又はコストを定めることによって見つかる。オプティマイザは、上下の境界の中で理想操作ポイントを算出する。このオプティマイザは、基本的にMPCに独自の精神を与えて、MPCにKPI目標に向かって、もしくはそれから離れるようにプロセスをドライブさせるか、又は1つのKPI対もう一方のトレードオフを行わせることができる。MPCプロセスモデルがオプティマイザを含む場合には、方法は、オプティマイザがKPIをその目標から逸脱させているときの問題の原因を識別することをさらに含むことができる。
【0027】
[0029]KPIは、現在MV又はDVとしてMPC範囲の中にない独立変数によって影響され得る。しかしながら、MPC構成ツールを使用して、他のプロセス変数を検索し、それらがKPI UDVに測定可能な影響を及ぼすかどうか判定することができる。このような場合には、それらはMPCコントローラの範囲に追加することができて、その結果、方法は、KPIに影響を与えるMPCプロセスモデルに含まれない工業プロセスの少なくとも1つの他の変数を検索すること、及びMPCプロセスモデルに他の変数を追加することを、さらに含むことができる。
【0028】
[0030]MPCモデルに基づくKPI UDVの予測性は、分析することができる。良好な(すなわち予測可能な)MPCモデルは、人がさらなる分析を続行できることを意味する。劣ったモデルはKPI UDVに影響を与える他の有意要因があることを意味し、それは通常、調査されなければならない。モデル予測が劣っている場合、これが何であるかについて調査するようにワークフロー、例えば履歴上のモデル識別のためのツールの導入を起動することができる。KPI予測の品質は、将来のKPI値が予測されるステップ102(将来の軌道を推定する)に基づく。それから、これらの(将来のタイムスタンプでの)予測は格納されて、後で、(実際時間が対応するタイムスタンプまで前進するときに)測定値に対して比較される。追加「テスト」モデルは、予測が改善されるかどうか評価するために追加することができる。これは、KPIへの主要な誘因の理解を向上させるのを助ける。劣ったKPI予測につながる要因の例は、古くて、プロセス挙動における最近の変更を反映するために更新されることを必要としている既存のMPCモデルであり、MPCモデルは追加のプラント情報を含むために強化されることが必要である。これらの両方の影響は、市販のプラントステップテストツール(例えば、ハネウェルの(PROFIT STEPPER)及び履歴上のモデル識別ツールの組合せによって克服することができる。
【0029】
[0031]MPCモデル予測が分析ステップから信頼性が高いと分かる場合、予測されたKPI値は概してプロセスオペレータのためのガイダンスとして有用である。それから、MPCモデル及びMPC制約は、KPI変数上の最も強い影響のある制御された/制御されていない変数並びに、KPIがプロセスの過剰拘束(例えば控え目なMV又はCV限度)によって「妨害されている」(拘束されている)かどうか、及び、特定の限度が緩和される場合どれほど余分に達成が可能であるかを理解するために分析することができ、それは関連するMPC CV及びMV限度がわずかに緩和される場合にKPIの徐々に増大する改善を定量化する。
【0030】
[0032]課題は、時間集積KPI(例えば1シフト又は1日にわたる操作)とオペレータがとる措置の間に良好な「見通し線」を提供する方法である。例えば、どの個々のMV及びCV制約がその目標値から所与のKPIを妨害しているかを(例えばプロセス/信頼性エンジニアによって指定された理想的な範囲の限度に対するMPCコントローラ限度を緩和することによって)評価することができる。これは、コントローラ反復ごと(実行サイクル~毎分)に実行する重要な仕事であり得るもので、KPIのために、これは、通常、より少ない頻度で、例えばコントローラの安定状態到達時間(TTSS)ごとに行うためにより意味のあるものである。1つのアプローチは、限度と共に時限にわたるMV及びCV定常状態値の実測値を平均して、これらを、EXCEL又はハネウェルPROFIT CONTROLLER最適化ソルバーなどの最適化ツールにおいて「最適化」ケースのための出発ポイントとして使用し、平均限度を緩和して、KPI変数への影響を評価することである。DVの効果を考慮することもできる。
【0031】
[0033]従来のMPCモデルで使われない追加のKPI変数が制御上限又は下限を有しない無拘束の従属変数(UDV)としてMPCアプリケーションに組み込まれ、そのためそれらはMPCによって制御されない。上述の通り、良好なアライメントが、MPC制御アプリケーション(又はプロセス工業のAPC)に含まれる変数といくつかの操作に関連したKPI変数(例えば生産速度、製品歩留り、製品品質及びエネルギー使用)の間にあることが多い。良好なアライメントが与えられるのは、重要な生産変数の多くが通常事業KPIシステムによってモニタリングされ、そしてMPCコントローラによって制御されて、操作されるからである。MPC変数と非常に相関しているか又はMPC変数の組合せと相関し得る事業KPIシステムによってモニタリングされる他の変数もある。これは、MPCが通常操作性能の改善によって正当化されるからである。
【0032】
[0034]しかしながら、いくつかの特定のKPI変数は従来のMPCに含まれず、なぜならそれらが重複情報と考えることができるか、又は特定の制御又は最適化目標を有することができないからである。これらのKPI変数がMPCモデルの少なくとも1つのMVによって影響されるならば、それらはUDVとしてMPCコントローラによって実行されるMPCモデルに含まれることができて一般に非常に小さい追加のエンジニアリングコストでいくつかの重要な利点を提供することができる、ということが認識される。利点として含まれるのは、MVに基づくMPCのKPI見積りの算出、どのMV変化がKPI変化を引き起こしているかの識別を含む根本原因分析、及び一時的な偏差が大きすぎるか、又は、安定状態予測がその目標からかけ離れていると考えられるときなどの警告及び早期のイベント検出のためのKPI見積りの使用である。
【0033】
[0035]ここで図2を参照すると、プロセス制御システム200が示され、その中ではKPI性能分析のための少なくとも1つのKPI UDVを含むKPIを有する開示されるMPCプロセスコントローラ211が、ネットワーク229によって、MPCサーバ228、データヒストリアン212及び、それぞれがディスプレイ画面214を有する1つ又は複数のホストワークステーション又はコンピュータ213(それは、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーションなどを含むことができる)に、通信可能に接続している。MPCプロセスコントローラ211は、プロセッサ211a及びメモリ211bを含む。
【0034】
[0036]制御システム200は、ワークステーション又はコンピュータ241を有するL4ネットワーク235を含んでいる第4レベル(L4)及び事業モニタリングシステムサーバ240を含んでいるKPI事業モニタリングシステムも含む。事業モニタリングシステムサーバ240は、ファイアウォール236を通してネットワーク229に接続している。
【0035】
[0037]MPCコントローラ211は、入出力(I/O)装置226を介して現場装置215~222にも接続している。データヒストリアン212は、通常、メモリ及び、データを格納するためのソフトウェア、ハードウェア又はファームウェアを有する任意のタイプのデータ収集ユニットでもよく、ワークステーション213のうちの1つとは別であるか又はその一部でもよい。MPCコントローラ211は、例えば、イーサネット接続又は他の通信ネットワーク229を介してホストコンピュータ213及びデータヒストリアン212に通信可能に接続している。
【0036】
[0038]通信ネットワーク229は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、遠隔通信ネットワークなどの形であることができて、配線接続かワイヤレス技術を用いて実施することができる。MPCコントローラ211は、例えば、標準4-20ma装置及び/又は任意のスマート通信プロトコル(例えばFOUNDATION(登録商標)フィールドバスプロトコル(フィールドバス)、HART(登録商標)プロトコル、Wireless HART(商標)プロトコル、その他)と関連したハードウェア及びソフトウェアを用いて、現場装置215~222に通信可能に接続している。
【0037】
[0039]現場装置215~222は、例えばセンサ、バルブ、送信器、ポジショナなどの任意のタイプの装置でもよく、一方で入出力装置226は一般にいかなる通信又はコントローラプロトコルにも適合することができる。現場装置215~218は入出力装置226にアナログ回線又は複合アナログ/デジタル線を通じて通信する標準4-20ma装置又はHART(登録商標)装置でもよく、一方で現場装置219~222はフィールドバスプロトコル通信を使用して入出力装置226にデジタルバスを通じて通信する「スマート」現場装置、例えばフィールドバス現場装置でもよい。
【0038】
[0040]MPCコントローラ211(それはプラント205の中の多くの分散コントローラの1つでもよい)は1つ又は複数のプロセス制御ルーチンを実装するか又は監督する少なくとも1つのプロセッサをその中に有し、プロセス制御ルーチンはその中に格納されるか又はそれと関連する制御ループを含むことができる。MPCコントローラ211はまた、装置215~222、ホストコンピュータ213及びデータヒストリアン212と通信して、プロセスを制御する。プロセス制御要素は、コンピュータ装置のCPUなどのプロセッサによって実行可能であるように、例えば、任意のコンピュータ可読媒体に格納されるルーチン、ブロック又はモジュールを含んでいるプロセス制御システムの任意の一部又は部分であることができる。
【0039】
[0041]サブルーチン、サブルーチンの部分(例えば、コードの行)などのような、モジュール又は制御手順の任意の部分であり得る制御ルーチンは、はしご論理、逐次機能図、機能ブロック図、オブジェクト指向プログラミング又は任意の他のソフトウェアプログラミング言語又は設計方法を用いるなど一般にどのようなソフトウェアフォーマットにおいても実施することができる。同様に、制御ルーチンは、例えば、1つ又は複数のEPROM、EEPROM、特定用途向け集積回路(ASIC)又は他のいかなるハードウェア又はファームウェア要素にも、ハードコードすることができる。制御ルーチンは、グラフィック設計ツール又は他のタイプのソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアプログラミング又は設計ツールを含む、様々な設計ツールを用いて設計することができる。したがって、MPCコントローラ211は、通常、望ましい方法で制御戦略又は制御ルーチンを実施するように構成することができる。一実施形態では、MPCコントローラ211は一般に機能ブロックと呼ばれるものを用いた制御戦略を実施し、そこにおいて、各機能ブロックは全体の制御ルーチンの一部又はオブジェクトで、他の機能ブロックと(リンクと一般に呼ばれている通信を介して)連携して作動して、プロセス制御システム200内のプロセス制御ループを実施する。
【0040】
[0042]機能ブロックは、送信器、センサ又は他のプロセスパラメータ測定装置に関連するような入力機能、何らかの装置(例えば、バルブ)の操作を制御するMPCを実行する制御ルーチンに関連するような制御機能のうちの1つを通常実行して、プロセス制御システム200の中のいくつかの物理機能を実行する。機能ブロックはMPCコントローラ211に格納され、それにより実行され得、そのことは、これらの機能ブロックが標準4~20ma装置及びHART(登録商標)装置などのいくつかのタイプのスマート現場装置のために使われるか又は関係するか又は現場装置自体に格納され、実装され得るときの、通常ケースであり、そして、それはFOUNDATION(登録商標)フィールドバス装置を有するケースでもよい。またさらに、コントローラルーチンを実施する機能ブロックは、ホストワークステーション又はコンピュータ213において、又は、他のいかなるコンピュータ装置においても全体的にあるいは部分的に実装され得る。
【実施例
【0041】
[0043]開示された実施形態は以下の特定の実施例でさらに例示されるが、それはいかなる形であれ本開示の範囲又は内容を限定するものとして解釈されるべきでない。
[0044]例えば、図3において表される脱ブタン塔プロセスのためのシミュレーションフローシート300を考える。脱ブタン塔プロセスは、軽い液化石油ガス(LPG)成分を混合ナフサストリームから分離する多くの精油所において一般的な蒸留プロセスである。図4は、いくつかのKPI UDVを含むKPIを有して使用される例示MPC制御戦略を示している脱ブタン塔プロセスのための例示MPC制御概要図を示す。
【0042】
[0045]明らかなように、プロセスに対する重要蒸留KPIの多くは、MPCモデルの制御戦略の中に当然含まれ、以下のようなものがある。
操作変数MV1として、ユニット送り速度。
制御変数CV1として、オーバーヘッド製品品質。
制御変数CV2として、最低製品品質。
【0043】
[0046]しかしながら、Error! Reference source not foundで分かるように、従来のMPCモデルのKPIとして用いられないいくつかのKPI指標がMPCコントローラに追加されており、各々が制御上限及び下限の両方とも無いKPI UDV1~4(特定のエネルギー使用、リボイラデューティ-熱流、LPG収率及び凝縮液収率である)として示される。MPCモデルの中で、KPI UDVが定常状態(SS)及び将来の値だけを各々有するということを知ることができる。上限又は下限のないMPCモデルの中の追加のKPIとしてこれらのKPI UDV1~4を実装することは、少なくとも2つの利点を提供すると認められる。
1. MPCコントローラ情報(例えば、他のコントローラMV及びCVの値及びオペレータ入力による限度、オプティマイザ構成(コントローラ状態)を用いて、それぞれのKPIのいずれかがそれらの目標(制限又は範囲)を上回るか下回って実行している理由を診断する(根本原因を見つける)のを助けることができる。
2. KPIの将来の値は予測されて(軌道)、その結果、KPIが短期的に著しく変化することが予測される(将来の値)かどうか、オペレータはリアルタイムに自動的に警告を受けることができ、可能な是正処置を先制して取ることができる。
劣った(又は上回っている)KPI性能の原因を分析することは、後述するように複数ステッププロセスとして実装することができる。
ステップ1 予測品質:
[0047]第1のステップは、各KPI値がMPCモデルによって良好に予測されるかどうかの評価を含むことができる。一般のMPC制御変数の予測品質を分析する技術は、十分に確立されていて、ハネウェルのPROFIT EXPERTツールセットなどの市販の製品で実行されるようになった。このアプローチは、MPCコントローラ及び他の外部変数の範囲内で変数の変化に対する予測MPCモデルバイアスの評価を必要とする。MPCモデルが劣っている(KPI対して大きいバイアスがある)場合、ハネウェルのPROFIT STEPPER及びPROFIT SUITE ENGINEERING STUDIOなどのステップテストツールを用いたモデル更新ワークフローを、MPCモデルの性能を高めるために用いることができる。MPCモデルが劣っている可能性がある理由は、それがプロセスの挙動における変化を反映しないか又は不完全である、すなわち、すべての影響要因を含むというわけではないからである。既知のツールを用いて、データヒストリアン212に格納される履歴データから影響しているプロセス変数を捜すことができ、それからステップテストツールによってそれを精緻化することができる。
ステップ2 KPIターゲット偏差の根本原因の判定:
[0048]KPIの偏差の原因をその目標値又は範囲から判定するために従うことができるいくつかの逐次的ステップがある。
ステップ2a:チェックカムは、KPIがオペレータ又はエンジニア入力した制限に対して固定された時のパーセンテージそして、MPCコントローラ限度が全体のKPI限度と整合しているかどうかについて決定するために実行される。例えば、Error! Reference source not found.3において、送り速度(MV1)及び2つの品質KPI(CV1及びCV2)は、関連した限度を有する。このリアルタイム図(時間内の1つの瞬間のMPCコントローラのスナップショット)において、それらは、それらの限度によって制限されていない。しかしながら、KPI集積期間にわたって、それらは、時間のいくらかのパーセンテージの間に限界に達することがあり得る。
【0044】
[0049]MPCモデルの中のKPIがMPC限度で固定されていてMPC限度が事業KPIシステムのそれらのKPI目標に整合していない(すなわち、より拘束性である)場合、この不整合は、劣ったKPI性能の原因として自動的にフラグを立てることができる。例えば、脱ブタン塔送り速度に対する劣ったKPI性能は、「脱ブタン塔送り速度は、KPI集積期間の間に目標を下回った。この偏差の67%は、MPC送り速度がプロセスオペレータによって20m/時間で平均して固定されたという事実に起因し得る。」として報告することができる。
【0045】
[0050]ステップ2b:KPIが、KPIとして示されるKPI UDV(限度を有しない)を含む限度でMPCコントローラの中で拘束されない時、MPCコントローラ性能は、何がKPIを集積されたKPI目標を満たす方向に移動することから引き止めているかを判定するために検討されなければならない。これは、以下のことに起因し得る:
1. MPCコントローラ経済学(線形プログラム及び二次プログラム加重)が、間違った(集積されたKPI目標から離れた)方向にKPIを移動するように構成されていた。
2. MPCコントローラ経済学が、CV及びMVを(より大きな経済価値によって)それらの目標の方へ移動するために、そのオプティマイザが、1つ又は複数のKPIを間違った方向に移動することによってより多くのお金を得ることができると算出したようになっている。単純な例としては、加工工場が完売であるときには、より多くの製品を生産する(より多くの送り速度を消費する)インセンティブが、消費される全エネルギー又は消費される特定のエネルギーさえ減らすインセンティブより強いということである。しかしながら、主要な最適化ハンドル(生産速度の最大化に関する)が、生産速度がさらに増加することができないようなそれらの制約にぶつかる場合、二次的な目標、例えばいかなる増加的な特定のエネルギー使用量も減らすことが、効果を示し始め得る(すなわちいかなる増加的な特定のエネルギー使用量も減らす)ことに留意されたい。
3. 別の、コントローラの中の関連した変数が、好ましい方向にKPIを移動することから、MPCコントローラを拘束している。
【0046】
[0051]MPCオプティマイザの意図は、KPIのための安定状態予測(例えば、MPCのCV又はMV)を現在の測定値と比較することによって、そして、目的関数経済学の検査によってという、2つの方法のうちの1つで確立することができる。
【0047】
[0052]オプティマイザは、直接のMVの経済的重み付け及び経済的重み付けによるCV上のMVの変化の影響を考慮することによって、固定されていないMVをどちらに移動するべきかを決定することができる。これは、所与のオプティマイザ定式化のために分析的に算出することができるが、一般的意味において、これは以下の等式によって表され得る:
【0048】
【数1】
【0049】
であり、ここで、δは、偏導関数を示す。
Objcostは、コストベースの目的関数の値である:
【0050】
【数2】
【0051】
CV値は、下記の等式に示すように過去のMV及びDV変化から予測される:
【0052】
【数3】
【0053】
[0053]MVのためのインセンティブが正である場合、オプティマイザは、MPCコントローラ限度を前提として、常にMV値を最小化しようとする。これが最大にされる集積された目標を有するKPIである場合、プロセスはプロセスオペレータに依存していて、集積されたKPI制限を達成するために下限を常に集積されたKPI制限以上で維持する。そうでない場合は、常にMVとKPIの間に不整合がある。
【0054】
[0054]同様に、KPI UDVが適用MVのいずれによっても正しい方向において最適化されない場合、集積されたKPI目標は通常、オペレータ限度を正しく設定することによって達成することができるだけであり、そして、それは操作データから検証することができる。これは、上記のケース1をカバーする。
【0055】
[0055]上記のケース2はMVの混合物があるかどうか分析することによって決定することができ、それのいくつかは所与のKPIを正しい方向に(集積されたKPI方向に向かって)動かし、その他は、所与のKPIを間違った方向に動かす。このシナリオにおいて、オプティマイザは、動かすそれぞれのMVの自由度に基づいて集積されたKPIの方へ、又は、それから離れてKPI UDVを動かすべきかどうかを決めることができる。このケースは最適化方向を分析することによって識別することができ、そのMV及びCVは制約及び経済的重み付けである。
【0056】
[0056]上記のケース3は、制約のアクティブセットに関して、最適化ステップから返されるソリューションを検討することによって評価することができる。概念的には、これは、オプティマイザがその集積されたKPI目標の方へKPIを動かすかどうか決定するために(定常状態で)それらの限界にあると予測されるMPC変数のための限度を順次緩和することに等しい。
ステップ3:集積及び閾値処理
[0057]分析におけるいくつかのステップはリアルタイム情報を使用して、KPIがその集積された目標から離れて拘束されている理由を評価する。通常、これらの理由はKPIレポート期間にわたって集積されることを必要とし、そして、それらのパーセンテージ適用可能性及びKPI性能上の問題の原因として報告される最上位の理由に関してランクを付けられる。
【0057】
[0058]種々の開示される実施形態が上で記載されているが、それらは例として示されているだけであり、限定するためのものではないことを理解すべきである。本明細書において開示される内容に対する多数の変更は、本開示の精神又は範囲を逸脱しない範囲で本開示に従って行うことができる。さらに、特定の特徴は、いくつかの実装のうちの1つだけに関して開示された場合であっても、そのような特徴は、所望されかつ、任意の与えられた、又は特定の用途に対して有利であるような、その他の実装の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0058】
[0059]当業者であれば理解されるように、本明細書において開示される内容は、システム、方法又はコンピュータプログラム製品として実施することができる。したがって、本開示は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)又は本明細書においてすべて全般に、「回路」、「モジュール」もしくは「システム」と称することができるソフトウェア及びハードウェア態様を結合した実施形態の形をとることができる。さらに、本開示は、媒体で実施されるコンピュータが使用可能なプログラムコードを有する表現のいかなる有形の媒体でも具体化されるコンピュータプログラム製品という形をとることができる。
図1
図2
図3
図4