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特許7138630CD40およびCD137に対する多重特異性抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】CD40およびCD137に対する多重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220909BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220909BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220909BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220909BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220909BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220909BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220909BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220909BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220909BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220909BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220909BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220909BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20220909BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20220909BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220909BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20220909BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N1/21
C12P21/08
C12Q1/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P31/04
G01N33/53 Y
C12Q1/6897 Z
C07K16/46
C12N5/0783
C12N5/0784
【請求項の数】 55
(21)【出願番号】P 2019523182
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017067924
(87)【国際公開番号】W WO2018011421
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/066840
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ゲンマブ エー/エス
(73)【特許権者】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥンタシュ イシリ
(72)【発明者】
【氏名】サテン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラダマーカー リック
(72)【発明者】
【氏名】ペラン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼケ フリーデリケ
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン ウグル
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0223989(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01975182(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)SEQ ID NO:117に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変(VH)配列と、SEQ ID NO:121に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変(VL)配列とを含む、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域、および
(II)SEQ ID NO:123に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のVH配列と、SEQ ID NO:127に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のVL配列とを含む、ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域
を含む、多重特異性抗体。
【請求項2】
前記抗体が、(I)前記第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、(II)前記第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームとを含む、請求項1記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常配列を含み、前記第2の結合アームが第2の重鎖定常配列を含む、請求項2記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
(I)前記第1の結合アームが、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖と、第1の軽鎖可変(VL)配列を含む第1の軽鎖とを含み、
(II)前記第2の結合アームが、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖と、第2の軽鎖可変(VL)配列を含む第2の軽鎖とを含む、
請求項2または3記載の多重特異性抗体。
【請求項5】
前記第1の軽鎖が第1の軽鎖定常(CL)配列をさらに含み、前記第2の軽鎖が第2の軽鎖定常(CL)配列をさらに含む、請求項4記載の多重特異性抗体。
【請求項6】
第1の結合アームが全長抗体に由来する、請求項2~5のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
第1の結合アームが全長IgG1,λ(ラムダ)またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、請求項2~6のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
第2の結合アームが全長抗体に由来する、請求項2~7のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項9】
第2の結合アームが全長IgG1,λ(ラムダ)またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、請求項2~8のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項10】
第1および第2の結合アームのそれぞれが全長抗体に由来する、請求項2~9のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項11】
第1および第2の結合アームのそれぞれが全長IgG1,λ(ラムダ)またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、請求項2~10のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項12】
前記第1および前記第2の重鎖が、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択されるサブクラスを有するIgGアイソタイプのものである、請求項2~11のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項13】
前記第1および第2の重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含む、請求項4~12のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項14】
第1および第2の重鎖のCH3領域が非対称変異を含む、請求項13記載の多重特異性抗体。
【請求項15】
前記第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置の少なくとも1つのアミノ酸が置換されており、前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置の少なくとも1つのアミノ酸が置換されており、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖は同じ位置では置換されていない、請求項4~14のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項16】
(i)前記第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、または
(ii)前記第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸がLである、
請求項15記載の多重特異性抗体。
【請求項17】
前記多重特異性抗体へのC1qの結合が、野生型二重特異性抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%減少するように、前記第1および第2の重鎖および軽鎖の定常配列が改変されており、C1q結合がELISAによって決定される、請求項5~16のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項18】
前記抗体が第1および第2の重鎖を含み、前記第1および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、D265、N297およびP331に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、NおよびPではない、請求項1~17のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項19】
前記第1および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれFおよびEである、請求項18記載の多重特異性抗体。
【請求項20】
前記第1および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235およびD265に対応する位置がそれぞれF、EおよびAである、請求項19記載の多重特異性抗体。
【請求項21】
第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235およびD265に対応する位置がそれぞれF、EおよびAであり、かつ
(i)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または
(ii)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、
請求項20記載の多重特異性抗体。
【請求項22】
第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ
(i)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または
(ii)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、
請求項19記載の多重特異性抗体。
【請求項23】
ヒトCD40を発現する第1の細胞とヒトCD137を発現する第2の細胞とを架橋することができる、請求項1~22のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項24】
前記架橋が、ヒトCD40を発現する第1の細胞株およびヒトCD137を発現する第2の細胞株を用いるアッセイによって決定され、かつ第1または第2の細胞株のいずれかが、NF-κB活性化時に測定可能なレポーターを産生させるレポーター構造を含む、請求項23記載の多重特異性抗体。
【請求項25】
T細胞の増殖を誘導および/または増強する、請求項1~24のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項26】
前記T細胞がCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞である、請求項25記載の多重特異性抗体。
【請求項27】
T細胞の増殖の前記誘導または増強が、PBMCプールにおけるT細胞の最適以下の活性化によって決定される、請求項25または26記載の多重特異性抗体。
【請求項28】
PBMCプールに添加した抗CD3抗体の濃度を滴定し、T細胞増殖を測定し、かつT細胞増殖は少ないがT細胞増殖のさらなる増強が可能である抗CD3抗体濃度を選択することによって、最適以下の活性化が決定される、請求項27記載の多重特異性抗体。
【請求項29】
特異的T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、該TCRによって認識される主要組織適合遺伝子複合体上に対応する抗原を提示する樹状細胞(DC)と共培養することによって、T細胞の増殖が測定される、請求項25または26記載の多重特異性抗体。
【請求項30】
前記T細胞が腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)であり、
ヒト腫瘍試料をインターロイキン2(IL-2)および前記抗体とインキュベートし、10~14日間のインキュベーション後にTILを回収して計数することによって、該TILの増殖の前記誘導または増強が決定される、
請求項25または26記載の多重特異性抗体。
【請求項31】
前記ヒト腫瘍が黒色腫または非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍である、請求項30記載の多重特異性抗体。
【請求項32】
請求項1に記載の第2の抗原結合領域を含むが、第1の抗原結合領域がそれぞれSEQ ID NO:99、100および101に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3と、それぞれSEQ ID NO:102、GVSおよびSEQ ID NO:103に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含む二重特異性抗体で観察されるT細胞増殖よりも、大規模なT細胞増殖を誘導する、請求項25~31のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項33】
二重特異性抗体である、請求項1~32のいずれか一項記載の多重特異性抗体。
【請求項34】
二重特異性抗体であり、
(I)SEQ ID NO:117に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖、ならびに
SEQ ID NO:121に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖
を含む、第1の結合アームと、
(II)SEQ ID NO:123に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖、ならびに
SEQ ID NO:127に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変(VL)配列および第2の軽鎖定常(CL)配列を含む第2の軽鎖
を含む、第2の結合アームとを含み、
第1の重鎖および第2の重鎖がヒトIgG1アイソタイプのものであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖がIgG1、κのものであり、かつ第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRである、
請求項1記載の多重特異性抗体。
【請求項35】
二重特異性抗体であり、
(I)SEQ ID NO:117に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖、ならびに
SEQ ID NO:121に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖
を含む、第1の結合アームと、
(II)SEQ ID NO:123に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖、ならびに
SEQ ID NO:127に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変(VL)配列および第2の軽鎖定常(CL)配列を含む第2の軽鎖
を含む、第2の結合アームとを含み、
第1の重鎖および第2の重鎖がヒトIgG1アイソタイプのものであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖がIgG1、κのものであり、かつ第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである、
請求項1記載の多重特異性抗体。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に定義される多重特異性抗体をコードする、核酸。
【請求項37】
請求項36記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項38】
請求項36記載の核酸または請求項37記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項39】
組換え真核生物、組換え原核生物、または組換え微生物の宿主細胞である、請求項38記載の宿主細胞。
【請求項40】
請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体、請求項36記載の核酸、請求項37記載の発現ベクター、または請求項38および39のいずれか一項記載の宿主細胞を含む、組成物。
【請求項41】
薬学的組成物である、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項41記載の薬学的組成物。
【請求項43】
医薬としての使用のための、請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体、請求項36記載の核酸、請求項37記載の発現ベクター、請求項38もしくは39記載の宿主細胞、請求項40記載の組成物、または請求項41もしくは42記載の薬学的組成物。
【請求項44】
請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体、請求項36記載の核酸、請求項37記載の発現ベクター、請求項38もしくは39記載の宿主細胞、請求項40記載の組成物、または請求項41もしくは42記載の薬学的組成物を含む、疾患の治療のための医薬。
【請求項45】
前記疾患が感染性疾患である、請求項44記載の医薬。
【請求項46】
前記疾患ががんである、請求項44記載の医薬。
【請求項47】
がんが、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、および前立腺がんからなる群より選択される、請求項46記載の医薬。
【請求項48】
請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体、請求項36記載の核酸、請求項37記載の発現ベクター、請求項38もしくは39記載の宿主細胞、請求項40記載の組成物、または請求項41もしくは42記載の薬学的組成物の、医薬の製造における使用。
【請求項49】
前記医薬が1種または複数種のさらなる治療薬との併用のためのものである、請求項48記載の使用。
【請求項50】
前記1種または複数種のさらなる治療薬が化学療法剤である、請求項49記載の使用。
【請求項51】
(a)第1のCH3領域を含むFc領域を含む第1の抗体を提供する工程;
(b)第2のCH3領域を含む第2のFc領域を含む第2の抗体を提供する工程であって、
該第1の抗体が、請求項1~35のいずれか一項記載の2つの第1の抗原結合領域を含むCD40抗体であり、該第2の抗体が、請求項1~35のいずれか一項記載の2つの第2の抗原結合領域を含むCD137抗体であるか、またはその逆であり、かつ、該第1および第2のCH3領域の配列が異なっており、該第1および第2のCH3領域間のヘテロダイマー相互作用が該第1および第2のCH3領域それぞれのホモダイマー相互作用よりも強くなる、工程;
(c)還元条件下で該第1の抗体を該第2の抗体とインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性CD40×CD137抗体を得る工程
を含む、請求項33~35のいずれか一項記載の二重特異性抗体を製造するための方法。
【請求項52】
請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体を接触させたとき、患者から得た試料中で、CD40発現細胞とCD137発現細胞との間の架橋が起こるかどうかを検出するための方法であって、
(i)請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体と該試料を、該多重特異性抗体とCD40発現細胞およびCD137発現細胞との複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる工程;ならびに
(ii)複合体が形成されたかどうかを分析する工程
を含む、前記方法。
【請求項53】
前記試料が血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
患者から得た試料中で、CD40発現細胞とCD137発現細胞との間の架橋を検出するためのキットであって、
(i)請求項1~35のいずれか一項記載の多重特異性抗体;および
(ii)該キットの使用説明書
を含む、前記キット。
【請求項55】
前記試料が血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料である、請求項54記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、CD40およびCD137に結合する多重特異性抗体、およびそのような多重特異性抗体の使用、特に、がんの治療のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD40は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TNFR)ファミリーのメンバーであり、多様な細胞型において見出される共刺激タンパク質として公知である。CD40は、樹状細胞(DC)、B細胞、およびマクロファージを含む抗原提示細胞(APC)によって構成的に発現される。これはまた、内皮細胞、血小板、平滑筋細胞、線維芽細胞、および上皮細胞によっても発現され得る。正常細胞において広範囲にわたって発現されることと矛盾なく、CD40はまた、幅広い腫瘍細胞でも発現されている。
【0003】
(CD80および/またはCD86からの)共刺激シグナルと共に、MHCクラスII分子と関連したペプチド抗原が抗原特異的CD4+T細胞に提示されると、CD4+T細胞が活性化され、DCライセンス因子であるCD40リガンド(CD40L)およびリンホトキシン-α1β2(LTα1β2)が上方調節される。活性化された抗原特異的CD4+ T細胞においてCD40LおよびLTα1β2が発現されると、CD40およびLTβ受容体(LTβR)を介したシグナル伝達が誘導され、このことによって、DCがCD8+T細胞応答を誘導することが可能になる。CD40シグナル伝達の結果、インターロイキン-12(IL-12)が産生され、CD70、CD86、4-1BBリガンド(4-1BBL)、OX40リガンド(OX40L)、およびGITRリガンド(GITRL)が上方調節されるのに対し、LTβRシグナル伝達は、I型インターフェロン(IFN)の産生をもたらす。核因子κB(NF-kB)の活性を制御するシグナル伝達系は、事実上すべてのTNFRスーパーファミリーメンバーに応答性である。病原体関連分子パターン(PAMP)および損傷関連分子パターン(DAMP)もまた、これらの事象の一因となっている。MHCクラスI拘束性ペプチドによってCD8+T細胞が抗原刺激されると、CD27、4-1BB、OX40、およびグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)が上方調節される。CD8+T細胞上のこれらの受容体が、IL-12およびI型IFNと共同してそれらの同系TNFスーパーファミリーリガンドによって刺激されると、着実なCD8+T細胞の活性化、増殖、およびエフェクター機能、ならびにCD8+T細胞記憶の形成および維持が起こる。CD40抗体は、様々な作用を及ぼすこと、すなわち、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)、補体依存性細胞障害(CDC)、または抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)の誘導によってCD40発現腫瘍細胞を死滅させること、細胞シグナル伝達を誘導して直接アポトーシスまたは増殖停止を誘導することができるが、腫瘍細胞におけるCD40発現に依存せず、APCが抗がん免疫応答を促進するのを可能にすることによる場合もある。CD40に結合する抗体は、APC上のCD40がエフェクター細胞障害性Tリンパ球(CTL)を抗原刺激するきっかけとなり、これらの細胞によるIL-2の放出を誘導し、間接的にNK細胞を活性化することができる。CD40を刺激する抗体は、先行技術において開示されており、CP-870,893、ヒトIgG2抗体(WO2003/040170(特許文献1));ダセツズマブ、ヒト化IgG1抗体(WO2000/075348(特許文献2))、およびChi Lob 7/4、キメラIgG1抗体(US2009/0074711(特許文献3))が含まれる。さらに、CD40アンタゴニスティック抗体である、ヒトIgG1抗体のルカツムマブも開示されている(WO2002/028481(特許文献4))。
【0004】
CD137(4-1BB)もまた、TNFRファミリーのメンバーである。CD137は、CD8+T細胞およびCD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、ナチュラルキラーT細胞(NK(T)細胞)、B細胞、ならびに好中球の表面の共刺激分子である。T細胞において、CD137は構成的には発現されていないが、(例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)において)T細胞受容体(TCR)が活性化されると誘導される(Gros et al., J. Clin Invest 2014;124(5):2246-59(非特許文献1)))。その天然リガンド4-1BBLまたはアゴニスト抗体を介する刺激により、アダプターとしてTRAF-2およびTRAF-1を用いるシグナル伝達が起こる。CD137による初期のシグナル伝達は、核因子(NF)-kB経路およびマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路の活性化を最終的にもたらすK-63ポリユビキチン化反応を伴う。シグナル伝達により、T細胞の共刺激、増殖、サイトカイン産生、成熟が高まり、CD8+T細胞の生存期間が延びる。CD137に対するアゴニスティック抗体は、様々な前臨床モデルにおいてT細胞による抗腫瘍制御を促進することが示されている(Murillo et al., Clin Cancer Res 2008;14(21):6895-906(非特許文献2))。CD137を刺激する抗体は、T細胞の生存および増殖を誘導し、それによって、抗腫瘍免疫応答を増強することができる。CD137を刺激する抗体は、先行技術において開示されており、ウレルマブ、すなわちヒトIgG4抗体(AU2004279877(特許文献5))、およびウトミルマブ、すなわちヒトIgG2抗体(Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733(非特許文献3))が含まれる。
【0005】
Westwood JA, et al., Leukemia Research 38 (2014), 948-954(非特許文献4)は、「Combination anti-CD137 and anti-CD40 antibody therapy in murine myc-driven hematological cancers」を開示している。
【0006】
US20090074711(特許文献3)は、「Human therapies using chimeric agonistic anti-human CD40 antibody」を開示している。
【0007】
しかし、当技術分野におけるこれらおよび他の進歩にもかかわらず、CD40およびCD137の両方に結合して、CD40発現APCおよびCD137発現T細胞に同時に結合し、それによってこれらの細胞型を密接させることができる多重特異性抗体が必要とされている。すなわち、これは、両方の細胞型を活性化し、抗腫瘍免疫を効率的に誘導することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2003/040170
【文献】WO2000/075348
【文献】US2009/0074711
【文献】WO2002/028481
【文献】AU2004279877
【非特許文献】
【0009】
【文献】Gros et al., J. Clin Invest 2014;124(5):2246-59
【文献】Murillo et al., Clin Cancer Res 2008;14(21):6895-906
【文献】Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733
【文献】Westwood JA, et al., Leukemia Research 38 (2014), 948-954
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、CD40およびCD137の両方に結合し、T細胞およびAPCの活性化を誘発することができる多重特異性抗体を同定した。
【0011】
したがって、1つの局面において、本発明は、(i)ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域および(ii)ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域を含む、多重特異性抗体に関する。
【0012】
いくつかの態様において、本発明は、第1の抗原結合領域が、任意で変異を有する特定のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含むか、またはそのような特定のアミノ酸配列を含む抗体と競合するかもしくはその特異性を有している抗体のアミノ酸配列を含む、そのような多重特異性抗体に関する。特定の態様において、第1の抗原結合領域は、抗CD40抗体001のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変配列および軽鎖可変配列を含むか、またはそのような抗体と競合するか、もしくはその特異性を有している。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、第2の抗原結合領域が、CDR1、CDR2、およびCDR3が、任意で変異を有する特定のアミノ酸配列を含むかもしくは特定のアミノ酸配列を提供する重鎖可変配列および軽鎖可変配列を含むか、またはそのような特定のアミノ酸配列を含む抗体と競合するかもしくはその特異性を有している抗体のアミノ酸配列を含む、そのような多重特異性抗体に関する。特定の態様において、第2の抗原結合領域は、抗CD137抗体001、002、003、004、005、006、007、008、009、010、011、もしくは012のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変配列および軽鎖可変配列を含むか、またはそのような任意の抗体と競合するか、もしくはその特異性を有している。
【0014】
このような多重特異性抗体のアミノ酸配列をコードする核酸;このような核酸を含む発現ベクター;このような核酸または発現ベクターを含む宿主細胞;このような多重特異性抗体を含む組成物;がんまたは他の疾患を治療する際に使用するためのこのような組成物;このような多重特異性抗体を作製するための方法;ならびにこのような多重特異性抗体に基づく診断方法およびキットを含む、これらのおよび他の局面および態様を、以下にさらに詳細に説明する。
[本発明1001]
(I)ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域であって、
(a)それぞれSEQ ID NO:1、2および3に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:4、YTSおよびSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3;
(b)合計1~12の変異を有する、(a)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
(c)(i)(a)もしくは(b)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体とヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii)(a)もしくは(b)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体のCD40に対して特異性を有する抗体の、重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
からなる群より選択される重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む、該第1の抗原結合領域と、
(II)ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域と
を含む、多重特異性抗体。
[本発明1002]
前記第1の抗原結合領域が、第1の重鎖可変(VH)配列と第1の軽鎖可変(VL)配列とを含み、前記第2の抗原結合領域が、第2のVH配列と第2のVL配列とを含み、かつ該第1および第2のVH配列およびVL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4を含む、本発明1001の多重特異性抗体。
[本発明1003]
前記第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:1、2および3に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3と、それぞれSEQ ID NO:4、YTSおよびSEQ ID NO:5に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含む、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1004]
前記第1の抗原結合領域のVH配列が、SEQ ID NO:117および6の少なくとも1つに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1002~1003のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1005]
前記第1の抗原結合領域のVL配列が、SEQ ID NO:121および7の少なくとも1つに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1002~1004のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1006]
前記第1の抗原結合領域のVH配列が、SEQ ID NO:117に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記第1の抗原結合領域のVL配列が、SEQ ID NO:121に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1002~1005のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1007]
前記第2の抗原結合領域がカニクイザルCD137に結合する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1008]
前記第2の抗原結合領域が、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO:93)への結合よりも高程度でヒトCD137(SEQ ID NO:92)に結合する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1009]
前記第2の抗原結合領域が、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO:94)への結合よりも高程度でヒトCD137(SEQ ID NO:92)に結合する、本発明1001~1007のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1010]
前記第2の抗原結合領域が、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO:95)への結合と同程度でヒトCD137(SEQ ID NO:92)に結合する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1011]
前記ヒトCD137(SEQ ID NO:92)および前記変異型ヒトCD137(SEQ ID NO:93、94および95それぞれ)への結合が、
異なる種由来のCD137の対応するドメインでヒトCD137のタンパク質ドメインが置換されているヒトCD137由来のシャッフル構築物を調製し、ヒトCD137および異なる種のCD137を参照構築物として使用し、参照構築物またはシャッフル構築物をそれぞれコードするプラスミドを細胞に形質導入し、これらのCD137構築物それぞれに対する抗体の結合をフローサイトメトリーにより測定すること
によって決定される、本発明1008~1010のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1012]
前記第2の抗原結合領域が、
(a)それぞれSEQ ID NO:64、65および66に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:67、GASおよびSEQ ID NO:68に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、
(b)合計1~12の変異を有する、(a)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに
(c)(i)(a)もしくは(b)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体とヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii)(a)もしくは(b)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体のCD137に対して特異性を有する抗体の、重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
からなる群より選択される重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む、本発明1001~1008および1010~1011のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1013]
前記第2の抗原結合領域のVH配列が、SEQ ID NO:123および69の少なくとも1つに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001~1008および1010~1012のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1014]
前記第2の抗原結合領域のVL配列が、SEQ ID NO:127および70の少なくとも1つに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001~1008および1010~1013のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1015]
前記第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列が、それぞれSEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:127に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001~1008および1010~1014のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1016]
前記第2の抗原結合領域が、
(a)それぞれSEQ ID NO:36、37および38に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:39、SASおよびSEQ ID NO:40に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、
(b)合計1~12の変異を有する、(a)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに
(c)(i)(a)もしくは(b)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体とヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii)(a)もしくは(b)に記載の重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体のCD137に対して特異性を有する抗体の、重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
からなる群より選択される重鎖および軽鎖の可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む、本発明1001~1007および1009~1011のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1017]
前記第2の抗原結合領域のVH配列が、SEQ ID NO:41に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001~1007、1009~1011、および1016のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1018]
前記第2の抗原結合領域のVL配列が、SEQ ID NO:42に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001~1007、1009~1011、および1016~1017のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1019]
前記第2の抗原結合領域のVHおよびVL配列が、それぞれSEQ ID NO:41およびSEQ ID NO:42に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001~1007、1009~1011、および1016~1018のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1020]
前記第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:1、2および3に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3と、それぞれSEQ ID NO:4、YTSおよびSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含み、かつ
前記第2の抗原結合領域が、
(a)それぞれSEQ ID NO:64、65および66に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:67、GASおよびSEQ ID NO:68に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、または
(b)それぞれSEQ ID NO:36、37および38に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:39、SASおよびSEQ ID NO:40に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
を含む、本発明1004~1019のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1021]
第1および/または第2の抗原結合領域のVHおよびVL配列のそれぞれのFR1、FR2、FR3およびFR4フレームワーク配列が、前記VHおよびVL配列のそれぞれのFR1、FR2、FR3およびFR4フレームワーク配列に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する、本発明1004~1020のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1022]
前記抗体が、(I)前記第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、(II)前記第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームとを含む、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1023]
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常配列を含み、前記第2の結合アームが第2の重鎖定常配列を含む、本発明1022の多重特異性抗体。
[本発明1024]
(I)前記第1の結合アームが、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖と、第1の軽鎖可変(VL)配列を含む第1の軽鎖とを含み、
(II)前記第2の結合アームが、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖と、第2の軽鎖可変(VL)配列を含む第2の軽鎖とを含む、
本発明1022~1023のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1025]
前記第1の軽鎖が第1の軽鎖定常(CL)配列をさらに含み、前記第2の軽鎖が第2の軽鎖定常(CL)配列をさらに含む、本発明1024の多重特異性抗体。
[本発明1026]
第1の抗原結合領域がマウス抗体に由来する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1027]
第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1028]
第1の結合アームが全長抗体に由来する、本発明1022~1027のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1029]
第1の結合アームが全長IgG1,λ(ラムダ)またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、本発明1022~1028のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1030]
第2の抗原結合領域がウサギ抗体に由来する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1031]
第2の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1032]
第2の結合アームが全長抗体に由来する、本発明1022~1031のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1033]
第2の結合アームが全長IgG1,λ(ラムダ)またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、本発明1022~1032のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1034]
第1および第2の抗原結合領域のそれぞれがヒト化抗体に由来する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1035]
第1および第2の結合アームのそれぞれが全長抗体に由来する、本発明1022~1034のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1036]
第1および第2の結合アームのそれぞれが全長IgG1,λ(ラムダ)またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、本発明1022~1035のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1037]
前記第1および前記第2の重鎖が、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択されるサブクラスを有するIgGアイソタイプのものである、本発明1022~1036のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1038]
前記第1および第2の重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含む、本発明1024~1037のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1039]
第1および第2の重鎖のCH3領域が非対称変異を含む、本発明1038の多重特異性抗体。
[本発明1040]
前記第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置の少なくとも1つのアミノ酸が置換されており、前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置の少なくとも1つのアミノ酸が置換されており、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖は同じ位置では置換されていない、本発明1024~1039のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1041]
(i)前記第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、または
(ii)前記第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸がLである、
本発明1040の多重特異性抗体。
[本発明1042]
第1および第2の重鎖を含み、
同じ第1および第2の抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖とを含む多重特異性抗体と比較して、より低い程度でFc媒介性エフェクター機能を誘導する、
前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1043]
改変されていない第1および第2の重鎖を含む以外は同一である多重特異性抗体と比較してより低い程度で、前記多重特異性抗体がFc媒介性エフェクター機能を誘導するように、前記第1および第2の重鎖が改変されている、本発明1042の多重特異性抗体。
[本発明1044]
前記Fc媒介性エフェクター機能が、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcRのFc媒介性架橋の誘導によって測定される、本発明1042~1043のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1045]
前記Fc媒介性エフェクター機能が、C1qへの結合によって測定される、本発明1044の多重特異性抗体。
[本発明1046]
前記多重特異性抗体へのC1qの結合が、野生型二重特異性抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%減少するように、前記第1および第2の重鎖および軽鎖の定常配列が改変されており、C1q結合がELISAによって決定される、本発明1045の多重特異性抗体。
[本発明1047]
前記抗体が第1および第2の重鎖を含み、前記第1および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、D265、N297およびP331に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、NおよびPではない、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1048]
前記第1および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれFおよびEである、本発明1047の多重特異性抗体。
[本発明1049]
前記第1および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235およびD265に対応する位置がそれぞれF、EおよびAである、本発明1048の多重特異性抗体。
[本発明1050]
第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235およびD265に対応する位置がそれぞれF、EおよびAであり、かつ
(i)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または
(ii)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、
本発明1049の多重特異性抗体。
[本発明1051]
第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ
(i)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または
(ii)第1の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、第2の重鎖の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、
本発明1048の多重特異性抗体。
[本発明1052]
ヒトCD40を発現する第1の細胞とヒトCD137を発現する第2の細胞とを架橋することができる、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1053]
前記架橋が、ヒトCD40を発現する第1の細胞株およびヒトCD137を発現する第2の細胞株を用いるアッセイによって決定され、かつ第1または第2の細胞株のいずれかが、NF-κB活性化時に測定可能なレポーターを産生させるレポーター構造を含む、本発明1052の多重特異性抗体。
[本発明1054]
T細胞の増殖を誘導および/または増強する、前記本発明のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1055]
前記T細胞がCD4 + T細胞および/またはCD8 + T細胞である、本発明1054の多重特異性抗体。
[本発明1056]
T細胞の増殖の前記誘導または増強が、PBMCプールにおけるT細胞の最適以下の活性化によって決定される、本発明1054~1055のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1057]
PBMCプールに添加した抗CD3抗体の濃度を滴定し、T細胞増殖を測定し、かつT細胞増殖は少ないがT細胞増殖のさらなる増強が可能である抗CD3抗体濃度を選択することによって、最適以下の活性化が決定される、本発明1056の多重特異性抗体。
[本発明1058]
特異的T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、該TCRによって認識される主要組織適合遺伝子複合体上に対応する抗原を提示する樹状細胞(DC)と共培養することによって、T細胞の増殖が測定される、本発明1054~1055のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1059]
前記T細胞が腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)であり、
ヒト腫瘍試料をインターロイキン2(IL-2)および前記抗体とインキュベートし、約10~約14日間のインキュベーション後にTILを回収して計数することによって、該TILの増殖の前記誘導または増強が決定される、
本発明1054~1055のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1060]
前記ヒト腫瘍が黒色腫または非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍である、本発明1059の多重特異性抗体。
[本発明1061]
本発明1001~1002のいずれかの第2の抗原結合領域を含むが、第1の抗原結合領域がそれぞれSEQ ID NO:99、100および101に示す配列を有する重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3と、それぞれSEQ ID NO:102、GVSおよびSEQ ID NO:103に示す配列を有する軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含む、二重特異性抗体
と比較して、T細胞のより多くの増殖を誘導または増強する、本発明1054~1060のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1062]
二重特異性抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1063]
本発明1001~1062の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする、核酸。
[本発明1064]
本発明1001~1062のいずれかに定義される多重特異性抗体をコードする、核酸。
[本発明1065]
本発明1063~1064のいずれかの核酸を含む、発現ベクター。
[本発明1066]
本発明1063もしくは1064のいずれかの核酸または本発明1065の発現ベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1067]
組換え真核生物、組換え原核生物、または組換え微生物の宿主細胞である、本発明1066の宿主細胞。
[本発明1068]
本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体、本発明1063および1064のいずれかの核酸、本発明1065の発現ベクター、または本発明1066および1067のいずれかの宿主細胞を含む、組成物。
[本発明1069]
薬学的組成物である、本発明1068の組成物。
[本発明1070]
薬学的に許容される担体をさらに含む、本発明1069の薬学的組成物。
[本発明1071]
医薬としての使用のための、本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体、本発明1063もしくは1064の核酸、本発明1065の発現ベクター、本発明1066もしくは1067の宿主細胞、本発明1068の組成物、または本発明1069もしくは1070の薬学的組成物。
[本発明1072]
疾患の治療における使用のための、本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体、本発明1063もしくは1064の核酸、本発明1065の発現ベクター、本発明1066もしくは1067の宿主細胞、本発明1068の組成物、または本発明1069もしくは1070の薬学的組成物。
[本発明1073]
前記疾患が感染性疾患である、本発明1072の使用のための多重特異性抗体、核酸、発現ベクター、宿主細胞、または組成物。
[本発明1074]
前記疾患ががんである、本発明1072の使用のための多重特異性抗体、核酸、発現ベクター、宿主細胞、または組成物。
[本発明1075]
がんが、黒色腫、肺がん、乳がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、および前立腺がんからなる群より選択され、例えば非小細胞肺がん(NSCLC)または黒色腫である、本発明1074の使用のための多重特異性抗体、核酸、発現ベクター、宿主細胞、または組成物。
[本発明1076]
本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体、本発明1063もしくは1064の核酸、本発明1065の発現ベクター、本発明1066もしくは1067の宿主細胞、本発明1068の組成物、または本発明1069もしくは1070の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、疾患の治療方法。
[本発明1077]
本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体、本発明1063もしくは1064の核酸、本発明1065の発現ベクター、本発明1066もしくは1067の宿主細胞、本発明1068の組成物、または本発明1069もしくは1070の薬学的組成物の、医薬の製造における使用。
[本発明1078]
化学療法剤などの1種または複数種のさらなる治療薬との併用のための、本発明1071~1077のいずれかの方法または使用。
[本発明1079]
(a)第1のCH3領域を含むFc領域を含む第1の抗体を提供する工程;
(b)第2のCH3領域を含む第2のFc領域を含む第2の抗体を提供する工程であって、
該第1の抗体が、本発明1001~1062のいずれかの2つの第1の抗原結合領域を含むCD40抗体であり、該第2の抗体が、本発明1001~1062のいずれかの2つの第2の抗原結合領域を含むCD137抗体であるか、またはその逆であり、かつ、該第1および第2のCH3領域の配列が異なっており、該第1および第2のCH3領域間のヘテロダイマー相互作用が該第1および第2のCH3領域それぞれのホモダイマー相互作用よりも強くなる、工程;
(c)還元条件下で該第1の抗体を該第2の抗体とインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性CD40×CD137抗体を得る工程
を含む、本発明1062の二重特異性抗体を製造するための方法。
[本発明1080]
本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体を投与したとき、血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者から得た試料中で、CD40発現細胞とCD137発現細胞との間の架橋が起こるかどうかを検出するための方法であって、
(i)本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体と該試料を、該多重特異性抗体とCD40発現細胞およびCD137発現細胞との複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる工程;ならびに
(ii)複合体が形成されたかどうかを分析する工程
を含む、前記方法。
[本発明1081]
血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者から得た試料中で、CD40発現細胞とCD137発現細胞との間の架橋を検出するためのキットであって、
(i)本発明1001~1062のいずれかの多重特異性抗体;および
(ii)該キットの使用説明書
を含む、前記キット。
[本発明1082]
本発明1001~1062のいずれかに定義される第2または第1と第2の抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137の配列アラインメント。ヒト配列中のアミノ酸と異なるアフリカゾウCD137またはイノシシCD137中のアミノ酸を黒色で強調している。
図2】アフリカゾウ(シャッフル5)CD137ドメインまたはイノシシ(シャッフル1~4、6)CD137ドメインを含む、CD137シャッフル構築物。
図3】HEK293-T17細胞におけるCD137シャッフル構築物の発現。HEK293-T17細胞にCD137シャッフル構築物をトランスフェクトした。ヒトCD137、イノシシCD137、およびアフリカゾウCD137を認識するポリクローナル抗CD137抗体を用いて、構築物の細胞表面発現をフローサイトメトリーによって測定した。
図4】HEK293-T17細胞において発現されるCD137シャッフル構築物へのCD137抗体クローンの結合。図に示したように、CD137シャッフル構築物、およびヒトCD137(hCD137野生型)、イノシシCD137のアフリカゾウをHEK293-T17細胞にトランスフェクトした。HEK293-T17細胞において発現されるこれらの構築物への様々なCD137抗体クローンの結合をフローサイトメトリーによって測定した。ポリクローナル抗CD137抗体による染色を、対照として示している。
図5】二重特異性抗体を自動で発見するために使用される、行列に似た混合グリッド。図に示したように親抗体をプレーティングすることができる。次いで、単純な行列様混合グリッドを用いて親抗体を組み合わせて、二重特異性抗体を得ることができる。その場合、管理されたFabアーム交換を実施して、二重特異性抗体を得ることができる。
図6】安定に形質導入されたHEK293-NFK-gfp-luc細胞およびK562細胞の細胞表面でのCD40およびCD137の発現。NF-κB/293/GFP-Luc細胞(A)およびK562細胞(B)に、CD40またはCD137を安定に形質導入した。CD40(左のパネル)およびCD137(右のパネル)の表面発現を、フローサイトメトリーによって測定した(白い曲線;抗体を用いない対照;灰色の曲線:抗体染色)。
図7】CD40およびCD137を同時に標的とする二重特異性抗体(CD40×CD137)の解析。CD40およびCD137を標的とする二重特異性抗体(CD40-FEAL×CD137-FEAR)をレポーターアッセイ法によって2つ組で試験した(A~L:CD40-001×CD137-001~CD40-001×CD137-012)。指定の各二重特異性抗体およびトランス活性化のためのCD40を形質導入されたK562細胞(K562_CD40)または対照としての野生型K562細胞(K562_野生型)とインキュベーションした際の、CD137を形質導入されたNF-κB/293/GFP-Luc(HEK293_NFK_CD137_gfp_luc)のルシフェラーゼ活性(相対発光単位、RLU)に基づいて、CD137の活性化を測定した。指定の各二重特異性抗体およびトランス活性化のためのCD137を形質導入されたK562細胞(K562_CD137)または対照としての野生型K562細胞(K562_野生型)とインキュベーションした際の、CD40をトランスフェクトされたNF-κB/293/GFP-Luc(HEK293_NFK_CD40_gfp_luc)のルシフェラーゼ活性(RLU)に基づいて、CD40の活性化を測定した。1本の無関係なアームを有する2種の単特異性一価抗体(b12-FEAL×CD137-FEAR、b12-FEAL×CD40-FEAR)を、二重特異性CD40×CD137抗体に対する対照として使用した。
図8】非抗原特異的T細胞アッセイ法における、CD40×CD137二重特異性抗体によるCD8+T細胞増殖の誘導。CFSE標識したPBMCを、CD40×CD137二重特異性抗体または単特異性一価対照抗体と共に4日間インキュベーションした。フローサイトメトリーによってCD8+細胞の増殖を測定した。示したデータは、0.02μg/mLの指定の各二重特異性抗体および対照抗体によって誘導されたCD8+T細胞増殖を示すCFSEプロット(A)と、FlowJoソフトウェアを用いて算出したCD40-001-FEAL×CD137-005-FEAR(B)、CD40-001-FEAL×CD137-009-FEAR(C)、CD40-001-FEAL×CD137-003-FEAR(D)、およびCD40-001-FEAL×CD137-011-FEAR(E)の場合の分裂細胞率および増殖指数である。
図9】抗原特異的T細胞アッセイ法における、CD40×CD137二重特異性抗体によるCD8+T細胞増殖の増強。クローディン-6特異的TCRをトランスフェクトしCFSEで標識したT細胞を、CD40×CD137二重特異性抗体または対照抗体の存在または不在下で5日間、クローディン-6IVT-RNAをエレクトロポレーションした未成熟DCと共にインキュベーションした。フローサイトメトリーによってCD8+T細胞増殖を測定した。示したデータは、0.02μg/mLの指定の各二重特異性抗体および対照によって誘導されたCD8+T細胞増殖を示すCFSEプロット(A)と、FlowJoソフトウェアを用いて算出した、指定の各濃度における指定の各二重特異性抗体(B)ならびにCD40-001-FEAL×CD137-005-FEARおよび対照抗体(C)ならびにCD40-001-FEAL×CD137-009-FEAR抗体および対照抗体(D)の場合の分裂細胞率および増殖指数である。6.4×10-5~5μg/mLの範囲の段階希釈した指定の各二重特異性抗体についての増殖指数曲線もまた、示している(E)。GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を用いて、曲線を非線形回帰(可変勾配を有するシグモイド用量反応)によって解析した。CD40-001-FEAL×CD137-005-FEARおよびCD40-001-FEAL×CD137-009-FEARの場合のT細胞増殖の誘導についてのEC50値は、それぞれ0.005μg/mLおよび0.030μg/mLであった。
図10】非抗原特異的T細胞アッセイ法における、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体によるCD8+T細胞増殖の誘導。CFSEで標識したPBMCを、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体、親二重特異性抗体、またはIgG1対照抗体と共に4日間インキュベーションした。フローサイトメトリーによってCD8+T細胞増殖を測定した。示したデータは、FlowJoソフトウェアによって算出した分裂細胞率および増殖指数である。(n.d.=未測定)
図11】抗原特異的T細胞アッセイ法における、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体によるCD8+T細胞増殖の増強。クローディン-6特異的TCRをトランスフェクトしCFSEで標識したT細胞を、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-H6LC1-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR)、親二重特異性抗体、またはIgG1対照抗体の存在または不在下で4日間、クローディン-6IVT-RNAをエレクトロポレーションした未成熟DCと共にインキュベーションした。フローサイトメトリーによってCD8+T細胞増殖を測定した。示したデータは、FlowJoソフトウェアを用いて算出した、指定の抗体についての分裂細胞率および増殖指数である。(n.d.=未測定)
図12】CD40×CD137二重特異性抗体による、ヒト黒色腫組織切除物からのTILのエクスビボ増大。切除した組織に由来する腫瘍片を100U/mLのIL-2および指定濃度のCD40×CD137二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-FEAL×CD137-009-FEAR)と共に培養した。14日間の培養後に、細胞を回収し、フローサイトメトリーによって解析した。試料1つ当たりの相対的生存TIL計数値(測定される計数ビーズ1,000個に対して標準化した)を示している。各データ点は1つのウェルを指し、1本のFACSチューブにおいて解析された2つの腫瘍片からのTILの増大を表している。線は、測定した5つの試料の平均値を示している。
図13】CD40×CD137二重特異性抗体による、ヒト非小細胞肺がん(NSCLC)組織切除物からのTILのエクスビボ増大。切除したNSCLC組織に由来する腫瘍片を10U/mLのIL-2および指定濃度のCD40×CD137二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-FEAL×CD137-009-FEAR)と共に培養した。10日間の培養後に、細胞を回収し、フローサイトメトリーによって解析した。試料1つ当たりの相対的生存TIL計数値(測定される計数ビーズ1,000個に対して標準化した)を示している。各データ点は1つのウェルを指し、1本のFACSチューブにおいて解析された2つの腫瘍片からのTILの増大を表している。線は、測定した5つの試料の平均値を示している。
【0016】
(表1)配列
*EUナンバリングに従うアミノ酸位置118~447
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用される用語「CD40」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5(TNFRSF5)とも呼ばれるCD40を指し、これは、リガンドTNFSF5/CD40Lに対する受容体である。CD40は、マクロファージおよびB細胞中のERKを活性化する、TRAF6およびMAP3K8を介したシグナルを変換して、B細胞による免疫グロブリン分泌の誘導をもたらすことが公知である。CD40に対して使用される他の同義語には、B細胞表面抗原CD40、Bp50、CD40L受容体、およびCDw40が含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの態様において、CD40は、UniProtアクセッション番号がP25942であるヒトCD40である。ヒトCD40の配列はまた、SEQ ID NO: 115に示されている。SEQ ID NO: 115のアミノ酸1~20は、ヒトCD40のシグナルペプチドに相当し;SEQ ID NO: 115のアミノ酸21~193は、ヒトCD40の細胞外ドメインに相当し;タンパク質の残りの部分、すなわちSEQ ID NO: 115のアミノ酸194~215および216~277は、それぞれ膜貫通ドメインおよび細胞質内ドメインである。
【0018】
本明細書において使用される用語「CD137」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)とも呼ばれるCD137(4-1BB)を指し、これは、リガンドTNFSF9/4-1BBLに対する受容体である。CD137(4-1BB)は、T細胞活性化に関与していると考えられている。CD137の他の同義語には、4-1BBリガンド受容体、CDw137、T細胞抗原4-1BBホモログ、およびT細胞抗原ILAが含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの態様において、CD137(4-1BB)は、UniProtアクセッション番号がQ07011であるヒトCD137(4-1BB)である。ヒトCD137の配列はまた、SEQ ID NO: 92に示されている。SEQ ID NO: 92のアミノ酸1~23は、ヒトCD137のシグナルペプチドに相当し;SEQ ID NO: 92のアミノ酸24~186は、ヒトCD137の細胞外ドメインに相当し;タンパク質の残りの部分、すなわちSEQ ID NO: 92のアミノ酸187~213および214~255は、それぞれ膜貫通ドメインおよび細胞質内ドメインである。
【0019】
本明細書において使用される用語「キメラ抗体」は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、げっ歯動物に由来する)、定常領域が異なる種、例えばヒトに由来する、抗体を指す。キメラ抗体は、抗体操作によって作製することができる。「抗体操作」は、様々な種類の抗体改変に対して総称的に使用される用語であり、抗体操作のための方法は、当業者には周知である。具体的には、キメラ抗体は、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Ch. 15に記載されている標準的なDNA技術を用いることによって作製することができる。したがって、キメラ抗体は、遺伝子的または酵素的に操作された組換え抗体であってよい。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲に収まり、したがって、キメラ抗体の作製は、本明細書において説明する方法以外の方法によって実施されてよい。ヒトに治療適用するためのキメラモノクローナル抗体が、非ヒト抗体、例えばげっ歯動物抗体の予想される抗体免疫原性を減少させるために開発されている。これらは、典型的には、関心対象の抗原に対して特異的である非ヒト(例えば、マウスまたはウサギ)可変領域、ならびにヒトの定常部の抗体重鎖ドメインおよび抗体軽鎖ドメインを含み得る。キメラ抗体との関連で使用される用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、後述するように、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域を指す。
【0020】
本明細書において使用される用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を有するように改変された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子的に操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体CDRを、相同性のヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)に接ぎ合わせることによって実現することができる(WO92/22653およびEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に復元するために、親抗体(すなわち非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基でヒトフレームワーク領域を置き換えること(復帰変異)が必要とされる場合がある。構造ホモロジーモデリングが、抗体の結合特性にとって重要であるフレームワーク領域中のアミノ酸残基を同定するのに役立つ場合がある。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、および全面的にヒト由来の定常領域を含み得る。任意で、必ずしも復帰変異ではない付加的なアミノ酸改変を適用して、親和性および生化学的特性などの好ましい特徴を有するヒト化抗体を得てよく、かつ/または付加的なアミノ酸変異を定常領域に導入してもよい。
【0021】
本明細書において使用される場合、別のタンパク質、例えば親タンパク質「に由来する」タンパク質とは、そのタンパク質の1つまたは複数のアミノ酸配列が、他のタンパク質または親タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸配列と同一であるか、または類似していることを意味する。例えば、別のまたは親の、抗体、結合アーム、抗原結合領域、または定常領域に由来する抗体、結合アーム、抗原結合領域、または定常領域などにおいて、1つまたは複数のアミノ酸配列は、他のまたは親の、抗体、結合アーム、抗原結合領域、または定常領域のアミノ酸配列と同一であるか、または類似している。そのような1つまたは複数のアミノ酸配列の例には、VH CDRおよびVL CDR、ならびに/またはフレームワーク領域、VH領域、VL領域、CL領域、ヒンジ領域、もしくはCH領域のうちの1つもしくは複数またはすべてのアミノ酸配列が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト親抗体「に由来する」と本明細書において記述することができ、これは、少なくともVL CDR配列およびVH CDR配列が該非ヒト親抗体のVH CDR配列およびVL CDR配列と同一であるか、または類似していることを意味する。キメラ抗体は、非ヒト親抗体「に由来する」と本明細書において記述することができ、これは、典型的には、VH配列およびVL配列が、該非ヒト親抗体のものと同一であり得るか、または類似し得ることを意味する。別の例は、特定の親抗体「に由来する」と本明細書において記述され得る結合アームまたは抗原結合領域であり、これは、該結合アームまたは抗原結合領域が、典型的には、該親抗体の結合アームまたは抗原結合領域と同一または類似のVH CDRおよび/もしくはVL CDR、またはVH配列および/もしくはVL配列を含むことを意味する。しかし、本明細書の別の箇所で説明するように、変異のようなアミノ酸改変を、CDR中、定常領域中、または抗体中、結合アーム中、もしくは抗原結合領域中などの別の場所に起こして、所望の特徴を導入することができる。第1のタンパク質または親タンパク質に由来する1つまたは複数の配列という文脈で使用される場合、「類似の」アミノ酸配列は、好ましくは、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有している。
【0022】
非ヒト抗体は、マウス、ウサギ、ニワトリ、モルモット、ラマ、およびヤギなどのいくつかの異なる種で生成させることができる。
【0023】
モノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルス性形質転換もしくはがん性形質転換、または抗体遺伝子のライブラリーを用いるファージディスプレイ技術を使用することができ、そのような方法は当業者に周知である。
【0024】
そのような非ヒト種におけるハイブリドーマ作製は、非常に良く確立された手順である。融合用の免疫化動物/非ヒト種の脾細胞を単離するための免疫化のプロトコールおよび技術は、当技術分野において公知である。融合相手(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた、公知である。
【0025】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的な変異によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含んでよい。しかし、本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に接ぎ合わされている抗体を含むとは意図されない。
【0026】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系の代わりにヒト免疫系の一部分を有するトランスジェニックマウスまたは染色体導入されたマウスを用いて生成させることができる。
【0027】
用語「免疫グロブリン」は、ポリペプチド鎖の2つのペア、すなわち低分子量の軽(L)鎖の1つのペアおよび重(H)鎖の1つのペアからなり、4本すべてがジスルフィド結合によって相互に連結されている、構造的に関係のある糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は、特徴を十分に明らかにされている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡単に説明すると、各重鎖(「HC」と略される)は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてVHまたはVHと略される)および重鎖定常領域(本明細書においてCHまたはCHと略される)から構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3種のドメイン、すなわちCH1、CH2、およびCH3から構成される。重鎖は、典型的には、ヒンジ領域をさらに含み得る。各軽鎖(「LC」と略される)は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書においてVLまたはVLと略される)および軽鎖定常領域(本明細書においてCLまたはCLと略される)から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1種のドメイン、すなわちCLから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存の程度が高い領域が間に割り込んでいる、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または構造が明らかにされたループの配列および/もしくは形態で超可変性であり得る超可変性領域)にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、典型的には、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917 (1987)も参照されたい)。別段の記載が無い限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、DomainGapAlign(プログラムバージョン4.9.1; 2013-12-19)を用いてIMGT規則に従って同定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Research 2010;38, D301-307;インターネットのhttpアドレスwww.imgt.org/も参照されたい)。
【0028】
別段の記載が無い限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明における定常領域中のアミノ酸位置への言及は、EUナンバリングに基づいている(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85; Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。
【0029】
本発明における用語「抗体」(Ab)は、少なくとも1つの抗体可変ドメイン、例えば、免疫グロブリン重鎖可変領域、または免疫グロブリン重鎖可変領域および軽鎖可変領域、またはその断片、またはそのいずれかの誘導体を含む分子を指し、この分子は、例えば典型的な生理的条件下で抗原に特異的に結合する能力を有しており、半減期が、有意な期間、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間もしくはそれより長く、約48時間もしくはそれより長く、約3日、4日、5日、6日、7日、もしくはそれより長くなど、または機能面で定められた他の任意の適切な期間(例えば、抗原に結合する抗体に関連付けられている生理学的応答を誘導、促進、増強、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を補充するのに十分な時間)である。具体的には、抗体は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはその誘導体であってよい。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および補体系の成分、例えば補体活性化の古典的経路の第1成分であるC1qを含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。先に示したように、本明細書の抗体という用語は、別段の定めが無い限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している、抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。用語「抗体」に包含される抗原結合断片の例には、(i)Fab’断片またはFab断片、すなわちVLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価の断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載されている一価の抗体;(ii)F(ab')2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体の1つのアームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFv断片;(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol. 2003 Nov;21(11):484-90)とも呼ばれるdAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546 (1989));(vi)キャメリドまたはナノボディ(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、VL領域およびVH領域が対になって一価の分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al., Science 242, 423-426 (1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883 (1988)を参照されたい)を形成している単一のタンパク質鎖としてそれらを作製するのを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて、これらを連結することができる。そのような単鎖抗体は、別段の注記の無い限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語に包含される。一般に、このような断片は、抗体の意味の範囲に含まれるが、これらは、集合的におよびそれぞれ独立に、本発明の独特な特徴であり、様々な生物学的特性および有用性を示す。本発明におけるこれらおよび他の有用な抗体断片、ならびにそのような断片の二重特異性形態は、本明細書においてさらに考察される。抗体という用語はまた、別段の指定が無い限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技術など任意の公知の技術によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも、理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプおよび/またはサブクラスを有することができる。
【0030】
普通の抗体、例えば任意の種で産生される抗体は、通常、単特異性二価抗体であり、これは、同じエピトープに結合する2つの抗原結合領域をそれらが含むことを意味する。
【0031】
本発明における用語「多重特異性抗体」は、異なる抗体配列によって定められる異なる抗原結合領域を有している抗体を指す。したがって、多重特異性抗体は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多い異なる抗原結合領域を有していてよい。多重特異性抗体の例には、2つの異なる抗原結合領域を有している抗体、すなわち二重特異性抗体が含まれる。
【0032】
3つまたはそれより多い異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体の例には、(i)Fc部分に付加的な単鎖可変断片(scFv)が連結された二重特異性抗体(Weidle et al., Cancer Genomics Proteomics. 2013 Jan-Feb;10(1):1-18)、(ii)3つまたはそれより多いscFvからなる融合タンパク質(トリアボディ、テトラボディ;Chames et al., FEMS Microbiol Lett. 2000 Aug 1;189(1):1-8)、および(iii)scFvに連結された融合タンパク質(Kermer et.al. Mol Cancer Ther. 2014 Jan;13(1):112-21)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0033】
本発明における用語「二重特異性抗体」は、異なる抗体配列によって定められる2つの異なる抗原結合領域を有している抗体を指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、文脈と矛盾しない限り、用語「Fabアーム」または「アーム」は、1つの重鎖-軽鎖ペアを指し、本明細書において「半分子」と同義的に使用される。
【0035】
用語「抗原結合領域を含む結合アーム」は、抗原結合領域を含む抗体分子または断片を意味する。したがって、結合アームは、例えば、VHおよびVLの6つのCDR配列、VH配列およびVL配列、Fab断片もしくはFab’断片、またはFabアームを含むことができる。
【0036】
本明細書において使用される場合、文脈と矛盾しない限り、用語「Fc領域」は、少なくとも1つのヒンジ領域、1つのCH2ドメイン、および1つのCH3ドメインを含む抗体領域を指す。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「アイソタイプ」は、HC(例えば、IgG、IgD、IgA、IgE、およびIgM)遺伝子またはLC(カッパ、κまたはラムダ、λ)遺伝子によってコードされる免疫グロブリンの特殊なタイプを指す。各アイソタイプには、いくつかのサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などがあり得る。
【0038】
用語「一価抗体」は、本発明において、抗体分子が抗原の単一分子に結合できる、したがって抗原架橋をすることができないことを意味する。
【0039】
「CD40抗体」または「抗CD40抗体」は、抗原CD40に特異的に結合する、前述したような抗体である。
【0040】
「CD137抗体」または「抗CD137抗体」は、抗原CD137に特異的に結合する、前述したような抗体である。
【0041】
「CD40×CD137抗体」または「抗CD40×CD137抗体」は、2つの異なる抗原結合領域を含み、そのうちの1つが抗原CD40に特異的に結合し、そのうちの1つが抗原CD137に特異的に結合する、二重特異性抗体である。
【0042】
用語「特異的に結合する」、「特異的に結合すること」、「特異的結合」、または他の類似表現は、他の抗原と比べて特定の抗原に対して、またはある抗原の他の部分と比べて、同じ抗原の特定の部分(エピトープ)に対して、優先的に結合する抗体の能力を指す。
【0043】
本明細書において使用される場合、所定の抗原またはエピトープへの抗体の結合という文脈における用語「結合」は、典型的には、例えば、リガンドとしての抗体および分析物としての抗原を用いる(または逆の場合も同じ)、BIAcore3000機器において表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定した場合に、約10-7Mもしくはそれ未満、例えば、約10-8Mもしくはそれ未満、例えば、約10-9Mもしくはそれ未満、約10-10Mもしくはそれ未満、または約10-11Mもしくはそれよりさらに小さいKDに相当する親和性での結合であり;所定の抗原または近い関係にある抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合についてのKDと比べて少なくとも10分の1、例えば少なくとも100分の1、例えば少なくとも1,000分の1、例えば少なくとも10,000分の1、例えば少なくとも100,000分の1であるKDに相当する親和性で、所定の抗原に結合する。親和性がより高い量は、抗体のKDによって決まり、したがって、抗体のKDが非常に小さい(すなわち、抗体の特異性が高い)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも高い量は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0044】
本明細書において使用される用語「kd」(sec-1)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値は、koff値とも呼ばれる。
【0045】
本明細書において使用される用語「KD」(M)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0046】
2つの抗体が、同じ抗原におよび同じエピトープに結合する場合、それらは「同じ特異性」を有している。試験される抗体が、ある種の抗原結合抗体と同じエピトープを認識するか、すなわち、それらの抗体が同じエピトープに結合するかどうかは、当業者に周知の様々な方法によって試験することができる。
【0047】
抗体間の競合は、交差ブロッキングアッセイ法によって検出することができる。例えば、競合ELISAアッセイ法が、交差ブロッキングアッセイ法として使用され得る。例えば、標的抗原がマイクロタイタープレートのウェルにコーティングされてよく、抗原結合抗体および候補競合試験抗体が添加されてよい。ウェル中の抗原に結合する抗原結合抗体の量は、同じエピトープへの結合に関してそれと競合する候補競合試験抗体の結合能力と間接的に相関している。具体的には、同じエピトープに対して候補競合試験抗体の親和性が大きいほど、抗原でコーティングされたウェルに結合する抗原結合抗体の量は小さい。ウェルに結合する抗原結合抗体の量は、検出可能または測定可能な標識物質で抗体を標識することによって測定することができる。
【0048】
抗原への結合に関して別の抗体、例えば本明細書において説明する重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体、と競合する抗体、または別の抗体、例えば本明細書において説明する重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体、の抗原に対する特異性を有する抗体は、本明細書において説明する該重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の変異体、すなわち本明細書において説明するCDR中の改変および/またはある程度の同一性を含む抗体であり得る。
【0049】
本明細書において使用される「単離された多重特異性抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない多重特異性抗体を指すものとする(例えば、CD40およびCD137に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は、CD40またはCD137に特異的に結合する単特異性抗体を実質的に含まない)。
【0050】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基からなり、通常、特殊な三次元構造特徴ならびに特殊な電荷特徴を有している。コンフォメーショナルエピトープおよび非コンフォメーショナルエピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接的に関与しているアミノ酸残基および結合に直接的には関与していない他のアミノ酸残基、例えば、特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的に妨害されるかまたは覆われるアミノ酸残基を含んでよい(言い換えると、そのアミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドの影響の及ぶ範囲に含まれる)。
【0051】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、単一の分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「第1のCH3領域と第2のCH3領域のヘテロ二量体相互作用」は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体抗体中の第1のCH3領域と第2のCH3領域の相互作用を指す。
【0053】
本明細書において使用される場合、用語「第1のCH3領域と第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体抗体中の第1のCH3領域と別の第1のCH3領域の相互作用、および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体抗体中の第2のCH3領域と別の第2のCH3領域の相互作用を指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、用語「ホモ二量体抗体」は、2つの第1のFabアームまたは半分子を含み、該Fabアームまたは半分子のアミノ酸配列が同じである、抗体を指す。
【0055】
本明細書において使用される場合、用語「ヘテロ二量体抗体」は、第1のFabアームおよび第2のFabアームまたは半分子を含み、該第1および第2のFabアームまたは半分子のアミノ酸配列が異なる、抗体を指す。具体的には、該第1および第2のFabアーム/半分子のCH3領域、もしくは抗原結合領域、またはCH3領域および抗原結合領域が異なる。
【0056】
用語「還元条件」または「還元性環境」は、抗体のヒンジ領域中のシステイン残基のような基質が酸化されるよりも還元される可能性がより高い、条件または環境を指す。
【0057】
本発明はまた、実施例の二重特異性抗体のVL領域、VH領域、または1つもしくは複数のCDRの機能的変異体を含む、二重特異性抗体などの多重特異性抗体も提供する。二重特異性抗体との関連で使用されるVL、VH、またはCDRの機能的変異体は、その二重特異性抗体の各抗原結合領域が親二重特異性抗体の親和性および/または特異性/選択性の少なくともかなりの比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれより多い)を保持することを引き続き可能にし、いくつかの場合において、そのような二重特異性抗体は、親二重特異性抗体より大きな親和性、選択性、および/または特異性に関連している場合がある。
【0058】
典型的には、そのような機能的変異体は、親二重特異性抗体に対するかなりの配列同一性を保持している。2つの配列の一致率は、2つの配列の最適アライメントのために導入される必要があるギャップ数および各ギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列に共通である同一位置の数の関数である(すなわち、相同率(%)=同一位置の数/位置の総数×100)。2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の一致率は、例えば、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられたE. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17 (1988)のアルゴリズムを使用して、決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列の一致率は、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453 (1970)のアルゴリズムを用いて決定してもよい。
【0059】
本発明において、下記の表記は、別段の定めが無い限り、変異を説明するのに使用される;変異しているアミノ酸の名称、続いて、変異している位置番号、続いて、変異が含む内容。したがって、変異が置換である場合は、前のアミノ酸を置換するアミノ酸の名称が含まれ、アミノ酸が欠失している場合は*によって示され、変異が付加である場合は、付加されるアミノ酸が元のアミノ酸の後に含まれる。アミノ酸の名称は、1文字コードまたは3文字コードであってよい。したがって、例えば、アルギニンによる409位のリジンの置換は、K409Rと表され、任意のアミノ酸による409位のリジンの置換はK409Xと表され、409位のリジンの欠失はK409*と表され、K409の位置のリジンの後へのPの付加はK409KPと表される。
【0060】
例示的な変異体には、主に保存的置換によって親配列のVHおよび/もしくはVLならびに/またはCDRと異なるものが含まれ;例えば、変異体における置換のうちの12個、例えば、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個が、保存的アミノ酸残基置換である。
【0061】
本発明において、保存的置換は、下記に示されるアミノ酸のクラス内での置換と定義され得る。
【0062】
保存的置換のためのアミノ酸残基クラス:
酸性残基:Asp(D)およびGlu(E)
塩基性残基:Lys(K)、Arg(R)、およびHis(H)
親水性非荷電性残基:Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、およびGln(Q)
脂肪族非荷電性残基:Gly(G)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、およびIle(I)
非極性非荷電性残基:Cys(C)、Met(M)、およびPro(P)
芳香族残基:Phe(F)、Tyr(Y)、およびTrp(W)
【0063】
本発明の第1の抗原結合領域および/または第2の抗原結合領域はまた、それぞれ、本明細書において開示される第1の抗原結合領域および/または第2の抗原結合領域の変異体であってもよい。
【0064】
改変を導入する方法、ならびにCDR配列のいくつかのアミノ酸を、例えばアミノ酸置換によって改変して、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を高めること、ヒトで使用される非ヒト抗体の潜在的な免疫原性を低下させること、および/または宿主細胞によって発現される抗体の収量を増やすことができることは、当業者には周知である。このような改変は、抗体が結合する標的抗原のエピトープに影響を及ぼさずに導入することができる。
【0065】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」または「細胞」)は、本明細書において使用される場合、発現ベクターのような核酸、例えば、本発明の多重特異性抗体をコードする発現ベクターのような核酸が導入される細胞を指すものとする。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ、例えば、CHO細胞、CHO-S細胞、HEK細胞、HEK293細胞、HEK-293F細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞、またはNS0細胞、およびリンパ球細胞が含まれる。
【0066】
用語「治療」は、症状または疾患の状態を和らげるか、改善するか、抑制するか、またはなくす(治す)ための、治療的に活性な本発明の多重特異性抗体の有効量の投与を指す。
【0067】
用語「有効量」または「治療的有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量および期間にて有効な量を指す。多重特異性抗体の治療的有効量は、因子、たとえば個体の疾患の状態、年齢、性別、および体重、ならびに多重特異性抗体が個体において所望の応答を誘発する能力に応じて変動し得る。治療的有効量はまた、多重特異性抗体またはその断片の任意の毒性作用または有害作用を、治療的に有益な作用が上回っている量でもある。
【0068】
用語「抗イディオタイプ抗体」は、抗体の抗原結合部位に通常は関連している独特な決定基を認識する抗体を指す。
【0069】
本発明において、多重特異性抗体を含む抗体に関して使用される用語「低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導する」とは、抗体がFcを介したエフェクター機能(このような機能は、特に、IgG Fc受容体(FcガンマR、FcγR)結合、C1q結合、ADCC、またはCDCのリストより選択される)を誘導する程度が、(i)該抗体と同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を特に含む、同じCDR配列、ならびに(ii)ヒトIgG1のヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖、を含むヒトIgG1抗体と比べて、低いことを意味する。
【0070】
Fcを介したエフェクター機能は、FcγRへの結合、C1qへの結合、またはFcを介したFcγRによる架橋の誘導に基づいて測定され得る。
【0071】
発明のさらなる局面および態様
本発明は、2つの異なる抗原結合領域を含み、そのうちの1つがヒトCD40に対する特異性を有し、そのうちの1つがヒトCD137に対する特異性を有する、分子に関する。
【0072】
特定の態様において、前記分子は、多重特異性抗体であってよい。
【0073】
したがって、本発明は、(i)ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域および(ii)ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体に関する。
【0074】
本発明の発明者によって示されるように、本発明による二重特異性抗体は、1つの細胞で発現されるCD40に結合し、かつ別の細胞で発現されるCD137に結合すると、細胞内シグナル伝達を誘導し得る。したがって、本発明による多重特異性抗体は、2つの異なる細胞をトランス活性化することができる。ヒトでは、CD40は、樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)を含むいくつかの細胞で発現されるのに対し、CD137は、T細胞および他の細胞で発現される。したがって、CD40およびCD137に結合する、本発明による二重特異性抗体のような多重特異性抗体は、これらの受容体を発現するAPCおよびT細胞に同時に結合することができる。理論に拘束されるわけではないが、本発明による二重特異性抗体のような多重特異性抗体は、したがって、(i)受容体結合によってAPCとT細胞の細胞間相互作用をもたらし、かつ(ii)CD40とCD137の両方を同時に活性化することができ、これは、架橋および細胞間相互作用の際の受容体クラスター形成によって最初に誘導され、単特異性二価の親抗体のアゴニスト活性に必ずしも依存しない。したがって、二重特異性抗体のようなこれらのトランス活性化多重特異性抗体は、APC:T細胞相互作用という状況で共刺激活性を発揮し、腫瘍細胞に対するT細胞応答を誘発することができる。したがって、この作用メカニズムは、活性化されたAPCによる抗原提示を介する天然T細胞の活性化を反映して、T細胞へのAPCによる様々な腫瘍特異的抗原の提示を可能にすることができる。理論に制限されるわけではないが、共刺激活性は、(i)任意のT細胞とは対照的に、特定のT細胞のみ(すなわち、APCと接触しているもの)が活性化されること、ならびに(ii)活性化APCおよびCD137作動を介する強力な共刺激による、消耗したT細胞の再活性化、ならびに(iii)活性化APCによる抗原提示を誘導し、かつ同時にCD137を作動させることによる、T細胞の抗原刺激、のうちの1つまたは複数をもたらし得る。
【0075】
したがって、本発明の多重特異性、例えば二重特異性の抗体は、T細胞の活性化の恩恵を受けると思われる疾患、例えばがんの治療に使用され得る。
【0076】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、
(I)下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域:
(a)SEQ ID NO: 3に示す配列もしくはSEQ ID NO: 3において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 5に示す配列もしくはSEQ ID NO: 5において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3;ならびに
(b)(i) (a)に記載の重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)に記載の重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3、ならびに
(II)ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域
を含む。
【0077】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 1に示す配列もしくはSEQ ID NO: 1において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 2に示す配列もしくはSEQ ID NO: 2において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 4に示す配列もしくはSEQ ID NO: 4において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列YTSもしくはYTSにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2、をさらに含んでよい。
【0078】
したがって、1つの態様において、本発明は、
(I)下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域:
(a)それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
(b)合計1~12個の変異を有している、(a)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(c)(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに
(II)ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域
を含む、多重特異性抗体に関する。
【0079】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の軽鎖可変(VL)配列を含み、第2の抗原結合領域は、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列を含み、各可変配列は、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列、ならびにそれぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4である4つのフレームワーク配列を含む。
【0080】
さらなる態様において、多重特異性抗体は、(I)第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームおよび(II)第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームを含む。
【0081】
1つの態様において、第1の結合アームは、第1の抗原結合領域および第1の重鎖定常配列を含み、第2の結合アームは、第2の抗原結合領域および第2の重鎖定常配列を含む。
【0082】
さらなる態様において、(i)第1の結合アームは第1の抗原結合領域を含み、その際、第1の結合アームは、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列を含む第1の軽鎖を含み、(ii)第2の結合アームは第2の抗原結合領域を含み、その際、第2の結合アームは、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖ならびに第2の軽鎖可変(VL)配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0083】
さらなる態様において、第1の軽鎖は、第1の軽鎖定常(CL)配列をさらに含み、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列をさらに含む。
【0084】
1つの態様において、第1の結合アームは、第1の抗原結合領域を含む第1のFabアームを含み、第2の結合アームは、第2の抗原結合領域を含む第2のFabアームを含む。
【0085】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体の第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域は、ヒト化抗体に由来する。1つの態様において、第1の結合アームおよび第2の結合アームは、ヒト化抗体に由来してよい。
【0086】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体の第1の結合アームおよび第2の結合アームは、完全長抗体に由来する。
【0087】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体の第1の結合アームおよび第2の結合アームは、完全長のIgG1、λ(ラムダ)抗体またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。
【0088】
1つの態様において、第1の結合アームおよび第2の結合アームは、モノクローナル抗体に由来する。
【0089】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体の第1の重鎖および第2の重鎖は、IgGアイソタイプのものである。第1の重鎖および第2の重鎖のサブクラスは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より別々に選択されてよい。1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖は、同じIgGサブクラス、例えばIgG1のものである。
【0090】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、単離された抗体である。
【0091】
さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくとも1つのヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のCH3領域は、非対称的な変異を含む。
【0092】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0093】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD40を発現する1つの細胞、例えば第1の細胞と、ヒトCD137を発現する別の細胞、例えば第2の細胞とを架橋することができる。
【0094】
1つの態様において、架橋は、ヒトCD40を発現する第1の細胞株およびヒトCD137を発現する第2の細胞株を用いるアッセイ法によって確認され、その際、第1の細胞株または第2の細胞株のいずれかは、NF-кBが活性化されると測定可能なレポーターの産生をもたらすレポーター構造体を含む。
【0095】
1つの態様において、第1の細胞は、抗原提示細胞であってよく、第2の細胞は、CD4+ T細胞またはCD8+T細胞などのT細胞であってよい。
【0096】
様々な方法が、CD40を発現する第1の細胞およびCD137を発現する第2の細胞の架橋を確認するために使用されてよく、本発明は、いかなる特定の方法にも限定されない。
【0097】
1つの態様において、架橋は、例えば実施例4に説明するレポーターアッセイ法によって確認され得る。手短に言えば、該アッセイ法は、第1の標的抗原を発現し、NF-κB応答エレメントによって駆動されるレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼ)を形質導入されたレポーター細胞株を、第2の標的抗原を発現する第2の細胞株と共に同時培養する段階;100ng/mL~10,000ng/mLの濃度の本発明による多重特異性抗体を細胞同時培養物に添加する段階;ならびにレポーター遺伝子発現、例えばルシフェラーゼ生成を測定する段階を含み、その際、第1の標的抗原がヒトCD40であり、第2の標的抗原がヒトCD137であるか、または逆もまた同様である。
【0098】
異なる細胞で発現されるCD40およびCD137の架橋を誘導することができる多重特異性抗体は、このアッセイ法において、NF-κB経路が活性化された際のレポーター遺伝子発現に基づく第1の標的抗原の測定可能な活性化をもたらす。
【0099】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、NF-кBレポーター遺伝子を有していない第2の標的抗原を発現する第2の細胞株を添加した場合にのみ、NF-кB活性化の際に生じるレポーター遺伝子発現を誘導することができる場合がある。
【0100】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、NF-кBレポーター遺伝子を有していない第2の標的抗原を発現する第2の細胞株が添加された場合に、第2の標的抗原を発現しない第2の細胞株の添加と比べて、NF-кB活性化の際に生じるレポーター遺伝子発現をより高いレベルで誘導することができる場合がある。
【0101】
1つの態様において、多重特異性抗体は二重特異性抗体であり、該二重特異性抗体は、1つの態様において、
(i)CD137を発現するレポーター細胞株およびCD40を発現する第2の細胞株の同時培養物に添加された場合にレポーター遺伝子発現を誘導することができるか、または
(ii)CD137を発現するレポーター細胞株およびCD40を発現する第2の細胞株の同時培養物に添加された場合に、ヒトCD137に結合する同じ第2の抗原結合領域を含む参照二重特異性抗体と比べて、より多量のレポーター遺伝子発現を誘導することができ、ただしその際、参照二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、無関係な標的抗原に結合し、例えば第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 99、100、および101に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 102、GVS、および103に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0102】
1つの態様において、多重特異性抗体は二重特異性抗体であり、該二重特異性抗体は、1つの態様において、
(i)CD40を発現するレポーター細胞株およびCD137を発現する第2の細胞株の同時培養物に添加された場合にレポーター遺伝子発現を誘導することができるか、または
(ii)CD40を発現するレポーター細胞株およびCD137を発現する第2の細胞株の同時培養物に添加された場合に、ヒトCD40に結合する同じ第1の抗原結合領域を含む参照二重特異性抗体と比べて、より多量のレポーター遺伝子発現を誘導することができ、ただしその際、参照二重特異性抗体の第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 99、100、および101に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 102、GVS、および103に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0103】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、T細胞増殖を誘導および/または増強し、例えば、該T細胞は、CD4+ T細胞および/またはCD8+T細胞である。
【0104】
T細胞増殖を確認または測定するための様々な方法が使用されてよく、本発明は、いかなる特定の方法にも限定されない。
【0105】
1つの態様において、T細胞増殖の誘導または増強は、例えば実施例5に説明する非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法によって測定される。したがって、T細胞増殖の誘導および/または増強は、PBMCプール(peripheral blood mononuclear lymphocyte)中のT細胞の準最適活性化に基づいて確認することができる。準最適活性化は、PBMCプールに添加される抗CD3抗体の濃度を少しずつ変更し、T細胞増殖を測定し、低レベルのT細胞増殖をもたらすがT細胞増殖のさらなる増強を可能にする抗CD3抗体濃度を選択することによって、確認することができる。この濃度は、PBMCドナーに依存し、アッセイ法が実施される前に各ドナーについて決定される。
【0106】
1つの態様において、T細胞増殖の誘導または増強は、前記準最適濃度の抗CD3抗体を用いてPBMC中のT細胞を活性化し、PBMCを多重特異性抗体と接触させ、T細胞増殖を測定することによって、確認される。さらなる態様において、PBMCはCFSEで標識されてよく、PBMCを多重特異性抗体と接触させる段階は、4日間のインキュベーションによって実施されてよく、T細胞増殖はフローサイトメトリーによって測定されてよい。
【0107】
ある種の反応または作用を誘導すること、例えば「T細胞増殖を誘導すること」は、誘導前にはそのような反応または作用、例えばT細胞増殖がなかったことを意味してよいが、同様に、誘導前に一定のレベルの反応または作用、例えばT細胞増殖があって、誘導後に該反応または作用、例えばT細胞増殖が増強されることも意味してよい。したがって、「誘導すること」は、「増強すること」も含む。
【0108】
T細胞増殖はまた、関心対象の試験抗原を用いて、例えば実施例6に説明する抗原特異的T細胞増殖アッセイ法によって測定され得る。したがって、T細胞増殖の誘導および/または増強は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)において提示される試験抗原のペプチドに特異的なTCRを発現しているT細胞と、次いでTCRによって認識される対応するペプチドをMHCにおいて提示しているDCとを同時培養することによって測定され得る。例えば、T細胞がCD8+T細胞であってよく、かつMHCがMHCクラスIであってよいか、またはT細胞がCD4+ T細胞であってよく、かつMHCがMHCクラスIIであってよい。特異的TCRを発現するT細胞は、TCRをコードするmRNAによる形質導入によって作製されてよい。対応するペプチドを提示するDCは、抗原をコードするmRNAによるDCへの形質導入によって作製されてよい。抗原提示細胞と共にTCR陽性T細胞を同時培養すると、T細胞増殖が誘導される;増殖の程度は、DCによって提示される抗原密度および/または共刺激シグナルの強度に依存し得る。1つの態様において、T細胞増殖は、CFSE標識されたT細胞を用い、試験する抗体を添加し、かつ4日後にT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定する、そのような抗原特異的T細胞アッセイ法によって測定され得る。
【0109】
1つの態様において、T細胞増殖の誘導または増強は、例えば実施例11に説明するエクスビボ増大アッセイ法において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いて測定される。TILの増殖の誘導または増強に対する本発明の多重特異性抗体の効果は、ヒト腫瘍試料をインターロイキン-2(IL-2)および該抗体と共にインキュベーションし、インキュベーション後に約10~約14日の間、生存能力があるTILを回収し計数することによって、評価され得る。その場合、TILの増殖の誘導または増強は、適切な対照、例えば、いかなる多重特異性抗体も伴わずにインキュベーションされたかまたは参照(対照)多重特異性抗体と共にインキュベーションされたヒト腫瘍試料との比較によって、測定することができる。例えば、ヒト腫瘍組織の試料は、例えば生検によってまたは外科的標本から単離し、無血清培地中で洗浄し、直径約1~2mmの腫瘍片を培養皿またはウェルに入れ、例えば1mLの適切な培地中に1つまたは2つの腫瘍片を入れ、37℃でインキュベーションすることができる。適切な培地は、例えば、10%ヒト血清アルブミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%ファンギゾン、および10~100U/mLの範囲の濃度、例えば10U/mLまたは100U/mLのIL-2を添加した無血清培地(例えばX-VIVO 15)であることができる。次いで、多重特異性抗体をTIL培地中に適切な濃度で添加することができる。必要ならばこの期間中に細胞培養物を任意で分割して、10~14日の合計培養期間の後、TILを回収し、生存能力があるCD4+ T細胞およびCD8+T細胞ならびにNK細胞の検出を可能にするために例えば抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、および抗7-AAD抗体を用いるフローサイトメトリーなどによって、計数することができる。
【0110】
1つの態様において、多重特異性抗体は二重特異性抗体であり、この二重特異性抗体は、本明細書において説明する任意の局面または態様に記載の第2の抗原結合領域を含むが、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 99、100、および101に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 102、GVS、および103に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む参照二重特異性抗体と比べて、T細胞のより多くの増殖を誘導および/または増強する。
【0111】
1つの態様において、多重特異性抗体は二重特異性抗体であり、この二重特異性抗体は、本明細書において説明する任意の局面または態様に記載の第1の抗原結合領域を含むが、第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 99、100、および101に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 102、GVS、および103に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む参照二重特異性抗体と比べて、T細胞のより多くの増殖を誘導および/または増強する。
【0112】
CD40への結合
前述したように、本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域を含む。
【0113】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域を含み、該第1の抗原結合領域は、
(a)SEQ ID NO: 3に示す配列またはSEQ ID NO: 3において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 5に示す配列またはSEQ ID NO: 5において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3、
(b)(i) (a)に記載の重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)に記載の重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する、抗体の重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3
からなる群より選択される重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0114】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 1に示す配列もしくはSEQ ID NO: 1において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 2に示す配列もしくはSEQ ID NO: 2において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 4に示す配列もしくはSEQ ID NO: 4において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列YTSもしくはYTSにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2、をさらに含んでよい。
【0115】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域を含み、該第1の抗原結合領域は、
(a)それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3、
(b)合計1~12個の変異を有している、(a)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(c)(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3
からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0116】
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の軽鎖可変(VL)配列を含み、各可変配列は、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列を含む。
【0117】
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の軽鎖可変(VL)配列を含み、各可変配列は、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列、ならびにそれぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4である4つのフレームワーク配列を含む。
【0118】
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。したがって、第1の抗原結合領域は、表1に示すCD40抗体の配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み得る。
【0119】
このような第1の抗原結合領域を含む抗体の例は、本明細書において開示されるキメラ抗体Chi Lob 7/4およびCD40-001である。
【0120】
別の態様において、第1の抗原結合領域は、合計1~12個の変異、例えば、1~11個の変異、1~10個の変異、1~8個の変異、1~7個の変異、1~6個の変異、1~5個の変異、1~4個の変異、1~3個の変異、または1~2個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0121】
1つの態様において、変異は、保存的アミノ酸置換のようなアミノ酸置換であってよい。
【0122】
1つの態様において、変異は、VHおよびVLのCDR3のそれぞれが最大で3個の変異を含み、VHおよびVLのCDR2およびCDR1のそれぞれが最大で2個のアミノ酸変異を含むように、VHのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびにVLのCDR1、CDR2、およびCDR3の全域に分布していてよい。
【0123】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、合計1~12個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、その際、VHおよびVLのCDR3はそれぞれ、最高3個のアミノ酸変異を含み、VHおよびVLのCDR1およびCDR2はそれぞれ、最高2個のアミノ酸変異を含む。
【0124】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、合計1~10個、例えば1~8個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、その際、VHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれ、最高2個のアミノ酸変異を含む。
【0125】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、合計1~6個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、その際、VHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれ、最大で1個のアミノ酸変異を含む。
【0126】
変異を導入する方法、ならびにCDR配列のいくつかのアミノ酸を、例えばアミノ酸置換によって変異させて、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を高めること、ヒトで使用される非ヒト抗体の潜在的な免疫原性を低下させること、および/または宿主細胞によって発現される抗体の収量を増やすことができることは、当業者には周知である。このような変異は、抗体が結合する標的のエピトープに影響を及ぼさずに導入することができる。
【0127】
別の態様において、第1の抗原結合領域は、(i)(a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii)(a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0128】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域は、(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0129】
この文脈において、用語「競合する」は、標的抗原への結合についての2種の抗体間の競合を指す。2種の抗体が、標的抗原への結合について互いに妨害しない場合、このような抗体は非競合的であり、このことは、それらの抗体が標的抗原の同じ部分、すなわちエピトープに結合しないことを示す。標的抗原への結合についての抗体の競合を試験するための方法は、当業者に周知である。このような方法の例は、例えばELISAとして、またはフローサイトメトリーによって実施され得る、いわゆる交差競合アッセイ法である。
【0130】
例えば、ELISAに基づくアッセイ法は、ELISAプレートウェルを各抗体でコーティングし;競合する抗体および標的抗原のHisタグ付き細胞外ドメインを添加し、インキュベーションすることによって実施することができ;添加した抗体が、コーティングされた抗体へのHisタグ付きタンパク質の結合を阻害するかどうかを明らかにする段階は、ビオチン標識した抗His抗体、続いてストレプトアビジン-ポリHRPを添加し、かつさらに、ABTSを用いて反応を発色させ、405nmでの吸光度を測定することによって、実施することができる。例えば、フローサイトメトリーアッセイ法は、標的抗原を発現する細胞を過剰な未標識抗体と共にインキュベーションし、それらの細胞を準最適濃度のビオチン標識抗体と共にインキュベーションし、続いて蛍光標識したストレプトアビジンと共にインキュベーションし、フローサイトメトリーによって解析することによって、実施することができる。
【0131】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 117およびSEQ ID NO: 6のうちの少なくとも1つ、例えばSEQ ID NO: 117に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0132】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO:121およびSEQ ID NO: 7のうちの少なくとも1つ、例えばSEQ ID NO: 121に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0133】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 7に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列をそれぞれ含む。
【0134】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 117およびSEQ ID NO: 121に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列をそれぞれ含む。
【0135】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 7に示す非CDR配列だけが異なる。
【0136】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 117およびSEQ ID NO: 121に示す非CDR配列だけが異なる。
【0137】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、フレームワーク配列だけが異なる。
【0138】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0139】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 6に示すVH配列およびSEQ ID NO: 7に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0140】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 6に示すVH配列およびSEQ ID NO: 7に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第1の抗原結合領域の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べて合計1~12個の変異を有している。さらなる態様において、該変異は、前述したとおりであってよい。
【0141】
さらに別の態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 6に示すVH配列およびSEQ ID NO: 7に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0142】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 117に示すVH配列およびSEQ ID NO: 121に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第1の抗原結合領域の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べて合計1~12個の変異を有している。さらなる態様において、該変異は、前述したとおりであってよい。
【0143】
さらに別の態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 117に示すVH配列およびSEQ ID NO: 121に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、3、4、YTS、および5に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0144】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 117のアミノ酸配列を含む。
【0145】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO: 121のアミノ酸配列を含む。
【0146】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 117およびSEQ ID NO: 121のアミノ酸配列を含む。
【0147】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む。
【0148】
1つの態様において、第1の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む。
【0149】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む。
【0150】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、本明細書の任意の局面または態様の第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームを含み得る。
【0151】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第1の抗原結合領域および第1の重鎖定常配列を含む第1の結合アームを含む。
【0152】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームを含み、この第1の結合アームは、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列を含む第1の軽鎖を含む。
【0153】
1つの態様において、第1の軽鎖は、第1の軽鎖定常(CL)配列をさらに含む。
【0154】
さらなる態様において、第1の重鎖は、少なくとも1つのヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。
【0155】
特定の態様において、本発明による多重特異性抗体は、第1の抗原結合領域を含む第1のFabアームを含む。
【0156】
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、マウス抗体に由来してよい。
【0157】
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、Chi Lob7/4のようなキメラ抗体に由来してよい。
【0158】
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、ヒト化抗体に由来してよい。
【0159】
1つの態様において、第1の結合アームは、完全長抗体に由来してよい。
【0160】
1つの態様において、第1の結合アームは、完全長のIgG1、λ(ラムダ)抗体またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来してよい。
【0161】
1つの態様において、第1の結合アームは、モノクローナル抗体に由来してよい。
【0162】
1つの態様において、第1の重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より任意で選択される、IgGアイソタイプのものであってよい。
【0163】
1つの態様において、第1の結合アームは、SEQ ID NO: 118を含むHCおよびSEQ ID NO: 122を含むLCを含む抗体に由来してよく、HCの定常領域中に1つまたは複数の変異、例えば1~10個、例えば1~5個、例えば1個、2個、3個、4個、または5個の変異を任意で含む。
【0164】
1つの態様において、第1の結合アームは、SEQ ID NO: 118、SEQ ID NO: 119、またはSEQ ID NO: 120を含むHCおよびSEQ ID NO: 122を含むLCを含む。
【0165】
CD137への結合
本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域を含む。
【0166】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域はまた、カニクイザルCD137にも結合する。
【0167】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、下記からなる群より選択される重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む:
(a)SEQ ID NO: 10に示す配列もしくはSEQ ID NO: 10において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 12に示す配列もしくはSEQ ID NO: 12において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン001)、
(b)SEQ ID NO: 17に示す配列もしくはSEQ ID NO: 17において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 19に示す配列もしくはSEQ ID NO: 19において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン002)、
(c)SEQ ID NO: 24に示す配列もしくはSEQ ID NO: 24において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 26に示す配列もしくはSEQ ID NO: 26において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン003)、
(d)SEQ ID NO: 31に示す配列もしくはSEQ ID NO: 31において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 33に示す配列もしくはSEQ ID NO: 33において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン004)、
(e)SEQ ID NO: 38に示す配列もしくはSEQ ID NO: 38において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 40に示す配列もしくはSEQ ID NO: 40において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン005)、
(f)SEQ ID NO: 45に示す配列もしくはSEQ ID NO: 45において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 47に示す配列もしくはSEQ ID NO: 47において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン006)、
(g)SEQ ID NO: 52に示す配列もしくはSEQ ID NO: 52において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 54に示す配列もしくはSEQ ID NO: 54において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン007)、
(h)SEQ ID NO: 59に示す配列もしくはSEQ ID NO: 59において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 61に示す配列もしくはSEQ ID NO: 61において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン008)、
(i)SEQ ID NO: 66に示す配列もしくはSEQ ID NO: 66において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 68に示す配列もしくはSEQ ID NO: 68において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン009)、
(j)SEQ ID NO: 73に示す配列もしくはSEQ ID NO: 73において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 75に示す配列もしくはSEQ ID NO: 75において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン010)、
(k)SEQ ID NO: 80に示す配列もしくはSEQ ID NO: 80において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 82に示す配列もしくはSEQ ID NO: 82において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン011)、
(l)SEQ ID NO: 87に示す配列もしくはSEQ ID NO: 87において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR3、およびSEQ ID NO: 89に示す配列もしくはSEQ ID NO: 89において最高4個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR3(CD137クローン012)、ならびに
(m)(i) (a)~(l)のいずれかに記載の重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (a)~(l)のいずれかに記載の重鎖可変CDR3および軽鎖可変CDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域CDR3および軽鎖可変領域CDR3。
【0168】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、下記からなる群より選択される重鎖領域および/または軽鎖領域のCDR1 およびCDR2をさらに含む:
(a)SEQ ID NO: 8に示す配列もしくはSEQ ID NO: 8において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 9に示す配列もしくはSEQ ID NO: 9において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 11に示す配列もしくはSEQ ID NO: 11において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列KASもしくはKASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン001)、
(b)SEQ ID NO: 15に示す配列もしくはSEQ ID NO: 15において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 16に示す配列もしくはSEQ ID NO: 16において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 18に示す配列もしくはSEQ ID NO: 18において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列KASもしくはKASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン002)、
(c)SEQ ID NO: 22に示す配列もしくはSEQ ID NO: 22において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 23に示す配列もしくはSEQ ID NO: 23において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 25に示す配列もしくはSEQ ID NO: 25において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列RTSもしくはRTSにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン003)、
(d)SEQ ID NO: 29に示す配列もしくはSEQ ID NO: 29において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 30に示す配列もしくはSEQ ID NO: 30において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 32に示す配列もしくはSEQ ID NO: 32において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列GASもしくはGASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン004)、
(e)SEQ ID NO: 36に示す配列もしくはSEQ ID NO: 36において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 37に示す配列もしくはSEQ ID NO: 37において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 39に示す配列もしくはSEQ ID NO: 39において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列SASもしくはSASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン005)、
(f)SEQ ID NO: 43に示す配列もしくはSEQ ID NO: 43において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 44に示す配列もしくはSEQ ID NO: 44において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 46に示す配列もしくはSEQ ID NO: 46において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列AASもしくはAASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン006)、
(g)SEQ ID NO: 50に示す配列もしくはSEQ ID NO: 50において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 51に示す配列もしくはSEQ ID NO: 51において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 53に示す配列もしくはSEQ ID NO: 53において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列KASもしくはKASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン007)、
(h)SEQ ID NO: 57に示す配列もしくはSEQ ID NO: 57において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 58に示す配列もしくはSEQ ID NO: 58において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 60に示す配列もしくはSEQ ID NO: 60において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列RASもしくはRASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン008)、
(i)SEQ ID NO: 64に示す配列もしくはSEQ ID NO: 64において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 65に示す配列もしくはSEQ ID NO: 65において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 67に示す配列もしくはSEQ ID NO: 67において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列GASもしくはGASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン009)、
(j)SEQ ID NO: 71に示す配列もしくはSEQ ID NO: 71において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 72に示す配列もしくはSEQ ID NO: 72において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 74に示す配列もしくはSEQ ID NO: 74において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列KASもしくはKASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン010)、
(k)SEQ ID NO: 78に示す配列もしくはSEQ ID NO: 78において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 79に示す配列もしくはSEQ ID NO: 79において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 81に示す配列もしくはSEQ ID NO: 81において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列DTSもしくはDTSにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン011)、ならびに
(l)SEQ ID NO: 85に示す配列もしくはSEQ ID NO: 85において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR1、および/またはSEQ ID NO: 86に示す配列もしくはSEQ ID NO: 86において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している重鎖可変領域CDR2;ならびに/あるいはSEQ ID NO: 88に示す配列もしくはSEQ ID NO: 88において最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR1、および/または配列SASもしくはSASにおいて最高2個のアミノ酸が改変されている配列を有している軽鎖可変領域CDR2(CD137クローン012)。
【0169】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む:
(a)それぞれSEQ ID NO: 8、9、および10に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 11、KAS、およびSEQ ID NO: 12に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン001)、
(b)それぞれSEQ ID NO: 15、16、および17に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 18、KAS、およびSEQ ID NO: 19に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン002)、
(c)それぞれSEQ ID NO: 22、23、および24に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 25、RTS、およびSEQ ID NO: 26に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン003)、
(d)それぞれSEQ ID NO: 29、30、および31に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 32、GAS、およびSEQ ID NO: 33に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン004)、
(e)それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン005)、
(f)それぞれSEQ ID NO: 43、44、および45に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 46、AAS、およびSEQ ID NO: 47に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン006)、
(g)それぞれSEQ ID NO: 50、51、および52に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 53、KAS、およびSEQ ID NO: 54に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン007)、
(h)それぞれSEQ ID NO: 57、58、および59に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 60、RAS、およびSEQ ID NO: 61に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン008)、
(i)それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン009)、
(j)それぞれSEQ ID NO: 71、72、および73に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 74、KAS、およびSEQ ID NO: 75に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン010)、
(k)それぞれSEQ ID NO: 78、79、および80に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 81、DTS、および82に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン011)、
(l)それぞれSEQ ID NO: 85、86、および87に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 88、SAS、および89に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン012)、
(m)合計1~12個の変異を有している、(a)~(l)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに
(n)(i) (a)~(m)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (a)~(m)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3。
【0170】
したがって、第2の抗原結合領域は、表1に示すCD137抗体、すなわち、CD137クローン001、CD137クローン002、CD137クローン003、CD137クローン004、CD137クローン005、CD137クローン006、CD137クローン007、CD137クローン008、CD137クローン009、CD137クローン010、CD137クローン011、またはCD137クローン012の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含み得る。特に、第2の抗原結合領域は、任意でフレームワーク領域が、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域である、同じCD137抗体クローンに由来する重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含み得る。
【0171】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、(i) (a)~(m)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (a)~(m)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0172】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO: 93)に結合する場合よりもより強く、ヒトCD137(SEQ ID NO: 92)に結合する。SEQ ID NO: 93の変異型ヒトCD137はまた、本明細書においてシャッフル6とも呼ばれる。
【0173】
別の態様において、第2の抗原結合領域は、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO: 94)に結合する場合よりもより強く、ヒトCD137(SEQ ID NO: 92)に結合する。SEQ ID NO: 94の変異型ヒトCD137はまた、本明細書においてシャッフル5とも呼ばれる。
【0174】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO: 95)に結合するのと同程度の強さでヒトCD137(SEQ ID NO: 92)に結合する。SEQ ID NO: 95の変異型ヒトCD137はまた、本明細書においてシャッフル4とも呼ばれる。
【0175】
本発明において、「より強く」とは、第2の抗原結合領域の親和性が、変異型ヒトCD137(SEQ ID NO: 93およびSEQ ID NO: 94、それぞれシャッフル6およびシャッフル5)に対してよりもヒトCD137(SEQ ID NO: 92)に対して強いことを意味する。変異型CD137への結合がない場合、ヒトCD137に対する親和性は、変異型CD137に対するよりもはるかに強いと考えられる。しかし、変異型CD137への結合がある場合、ヒトCD137に対する親和性は、各変異型CD137に対する親和性の2倍、例えば、3倍、または4倍、または5倍、または6倍であり得る。
【0176】
本発明において、「同程度の強さで」とは、第2の抗原結合領域の親和性が、ヒトCD137(SEQ ID NO: 92)に対してと変異型ヒトCD137(SEQ ID NO: 95、シャッフル4)に対してとで同様であることを意味する。具体的には、この文脈での「同様」とは、ヒトCD137に対する親和性と変異型CD137に対する親和性の差が、最大で2.5倍、例えば、2.2倍、または2.0倍、または1.8倍、または1.75倍、または1.5倍であることを意味してよい。
【0177】
SEQ ID NO: 93の変異型ヒトCD137は、アミノ酸24~47(シャッフル6)がイノシシCD137由来の対応するアミノ酸で置換された、ヒトCD137のアミノ酸配列に相当する。
【0178】
したがって、1つの態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 92の24~47位(SEQ ID NO: 129に対応する)にアミノ酸L、Q、D、P、C、S、N、C、P、A、G、T、F、C、D、N、N、R、N、Q、I、C、S、およびPのうちの1つまたは複数を含むか、または必要とする、ヒトCD137のエピトープに結合する。
【0179】
SEQ ID NO: 94の変異型ヒトCD137は、アミノ酸48~88(シャッフル5)がアフリカゾウCD137由来の対応するアミノ酸で置換された、ヒトCD137のアミノ酸配列に相当する。
【0180】
したがって、1つの態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 92の48~88位(SEQ ID NO: 130に対応する)にアミノ酸C、P、P、N、S、F、S、S、A、G、G、Q、R、T、C、D、I、C、R、Q、C、K、G、V、F、R、T、R、K、E、C、S、S、T、S、N、A、E、C、D、およびCのうちの1つまたは複数を含むか、または必要とする、ヒトCD137のエピトープに結合する。
【0181】
SEQ ID NO: 95の変異型ヒトCD137は、アミノ酸59~114(シャッフル4)がアフリカゾウCD137由来の対応するアミノ酸で置換された、ヒトCD137のアミノ酸配列に相当する。
【0182】
したがって、1つの態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 92の89~114位(SEQ ID NO: 131に対応する)にアミノ酸T、P、G、F、H、C、L、G、A、G、C、S、M、C、E、Q、D、C、K、Q、G、Q、E、L、T、およびKのうちの1つまたは複数を含むか、または必要とする、ヒトCD137のエピトープに結合しない。
【0183】
1つの態様において、変異型CD137およびヒトCD137への結合は、実施例2に説明するシャッフルアッセイ法として実施してよい。すなわち、ヒトCD137のタンパク質ドメインが異なる種に由来するCD137の対応するドメインで置換されている、ヒトCD137に由来するシャッフル構築物を作り、ヒトCD137および異なる種のCD137を参照構築物として用いて、参照構築物またはシャッフル構築物をそれぞれコードするプラスミドを用いて細胞に形質導入し、これらの各CD137構築物への抗体の結合をフローサイトメトリー、例えばFACSによって測定することによって、ヒトCD137(SEQ ID NO: 92)および変異型ヒトCD137(SEQ ID NO: 93、94、および95)への結合を測定してよい。
【0184】
ある種のシャッフル構築物への結合が失われる場合、対応する領域が抗体エピトープに関与している可能性が高いことが示される。このように、抗ヒトCD137抗体のエピトープに寄与しているヒトCD137のタンパク質ドメインは、したがってシャッフルアッセイ法によって測定され得る。シャッフル構築物を作り出すのに使用される異なる種のCD137は、モノクローナル抗ヒトCD137抗体がこれらの異なる種に由来する全CD137タンパク質に結合しないように選択すべきである(参照構築物)。
【0185】
ヒトCD137およびその変異体への結合の測定は、具体的には、本発明による2つの第2の抗原結合領域を含むモノクローナル抗体を用いて実施され得る。
【0186】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む:
(a)それぞれSEQ ID NO: 8、9、および10に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 11、KAS、およびSEQ ID NO: 12に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン001)、
(b)それぞれSEQ ID NO: 15、16、および17に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 18、KAS、およびSEQ ID NO: 19に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン002)、
(c)それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン005)、
(d)それぞれSEQ ID NO: 43、44、および45に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 46、AAS、およびSEQ ID NO: 47に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン006)、
(e)それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン009)、
(f)それぞれSEQ ID NO: 71、72、および73に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 74、KAS、およびSEQ ID NO: 75に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン010)、
(g)それぞれSEQ ID NO: 85、86、および87に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 88、SAS、およびSEQ ID NO: 89に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン012)、
(h)合計1~12個の変異を有している、(a)~(g)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに
(i)(i) (a)~(h)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (a)~(h)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3。
【0187】
それゆえ、1つの態様において、第2の抗原結合領域は、下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む:
(a)それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン009)、
(b)合計1~12個の変異を有している、(a)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;
(c)(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3。
【0188】
別の態様において、第2の抗原結合領域は、下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む:
(a)それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン005)、
(b)合計1~12個の変異を有している、(a)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(c)(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3。
【0189】
特定の態様において、第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。このような抗体の例には、本明細書においてCD137クローン009と呼ばれる抗体が含まれるがそれに限定されるわけではない。
【0190】
別の態様において、第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。このような抗体の例には、本明細書においてCD137クローン005と呼ばれる抗体が含まれるがそれに限定されるわけではない。
【0191】
別の態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~12個の変異、例えば、1~10個の変異、または1~8個の変異、または1~6個の変異、または1~4個の変異、または2個までの変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む(CD137クローン009)。
【0192】
別の態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~12個の変異、例えば、1~10個の変異、または1~8個の変異、または1~6個の変異、または1~4個の変異、または1~2個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む(CD137クローン005)。
【0193】
1つの態様において、変異は、保存的アミノ酸置換のようなアミノ酸置換であってよい。
【0194】
1つの態様において、変異は、VHおよびVLのCDR3のそれぞれが最大で3個の変異を含み、VHおよびVLのCDR2およびCDR1のそれぞれが最大で2個のアミノ酸改変を含むように、VHのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびにVLのCDR1、CDR2、およびCDR3の全域に分布していてよい。
【0195】
それゆえ、さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~12個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン009)、その際、VHおよびVLのCDR3はそれぞれ、最高3個のアミノ酸改変を含み、VHおよびVLのCDR1およびCDR2はそれぞれ、最高2個のアミノ酸改変を含む。
【0196】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~10個、例えば1~8個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン009)、その際、VHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれ、最高2個のアミノ酸改変を含む。
【0197】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~6個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン009)、その際、VHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれ、最大で1個のアミノ酸改変を含む。
【0198】
別の態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~12個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 36、37、38、39、SAS、および40に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン005)、その際、VHおよびVLのCDR3はそれぞれ、最高3個のアミノ酸改変を含み、VHおよびVLのCDR1およびCDR2はそれぞれ、最高2個のアミノ酸改変を含む。
【0199】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~10個、例えば1~8個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 36、37、38、39、SAS、および40に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン005)、その際、VHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれ、最高2個のアミノ酸改変を含む。
【0200】
さらなる態様において、第2の抗原結合領域は、合計1~6個の変異を有している、それぞれSEQ ID NO: 36、37、38、39、SAS、および40に示す配列を有している重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン005)、その際、VHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれ、最大で1個のアミノ酸改変を含む。
【0201】
さらなる態様において、合計1~12個の変異、例えば、1~10個の変異、または1~8個の変異、または1~6個の変異、または1~4個の変異、または1~2個の変異があってよく;かつ各CDR配列は、最大で2個のアミノ酸置換を含む。
【0202】
変異を導入する方法、ならびにCDR配列のいくつかのアミノ酸を、例えばアミノ酸置換によって変異させて、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を高めることまたはヒトの治療に使用される非ヒト抗体の免疫原性を低下させることができることは、当業者には周知である。このような変異は、抗体が結合する標的抗原のエピトープに影響を及ぼさずに導入することができる。
【0203】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列を含み、各可変配列は、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列を含む。
【0204】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列を含み、各可変配列は、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列、ならびにそれぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4である4つのフレームワーク配列を含む。
【0205】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む:
(a)SEQ ID NO: 123に示すVH配列(ヒト化CD137クローン009)
(b)SEQ ID NO: 13に示すVH配列(CD137クローン001)
(c)SEQ ID NO: 20に示すVH配列(CD137クローン002)
(d)SEQ ID NO: 27に示すVH配列(CD137クローン003)
(e)SEQ ID NO: 34に示すVH配列(CD137クローン004)
(f)SEQ ID NO: 41に示すVH配列(CD137クローン005)
(g)SEQ ID NO: 48に示すVH配列(CD137クローン006)
(h)SEQ ID NO: 55に示すVH配列(CD137クローン007)
(i)SEQ ID NO: 62に示すVH配列(CD137クローン008)
(j)SEQ ID NO: 69に示すVH配列(CD137クローン009)
(k)SEQ ID NO: 76に示すVH配列(CD137クローン010)
(l)SEQ ID NO: 83に示すVH配列(CD137クローン011)
(m)SEQ ID NO: 90に示すVH配列(CD137クローン012)。
【0206】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む:
(a)SEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)
(b)SEQ ID NO: 14に示すVL配列(CD137クローン001)
(c)SEQ ID NO: 21に示すVL配列(CD137クローン002)
(d)SEQ ID NO: 28に示すVL配列(CD137クローン003)
(e)SEQ ID NO: 35に示すVL配列(CD137クローン004)
(f)SEQ ID NO: 42に示すVL配列(CD137クローン005)
(g)SEQ ID NO: 49に示すVL配列(CD137クローン006)
(h)SEQ ID NO: 56に示すVL配列(CD137クローン007)
(i)SEQ ID NO: 63に示すVL配列(CD137クローン008)
(j)SEQ ID NO: 70に示すVL配列(CD137クローン009)
(k)SEQ ID NO: 77に示すVL配列(CD137クローン010)
(l)SEQ ID NO: 84に示すVL配列(CD137クローン011)
(m)SEQ ID NO: 91に示すVL配列(CD137クローン012)。
【0207】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列はそれぞれ、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む:
(a)SEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)
(b)SEQ ID NO: 13に示すVH配列およびSEQ ID NO: 14に示すVL配列(CD137クローン001)
(c)SEQ ID NO: 20に示すVH配列およびSEQ ID NO: 21に示すVL配列(CD137クローン002)
(d)SEQ ID NO: 27に示すVH配列およびSEQ ID NO: 28に示すVL配列(CD137クローン003)
(e)SEQ ID NO: 34に示すVH配列およびSEQ ID NO: 35に示すVL配列(CD137クローン004)
(f)SEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列(CD137クローン005)
(g)SEQ ID NO: 48に示すVH配列およびSEQ ID NO: 49に示すVL配列(CD137クローン006)
(h)SEQ ID NO: 55に示すVH配列およびSEQ ID NO: 56に示すVL配列(CD137クローン007)
(i)SEQ ID NO: 62に示すVH配列およびSEQ ID NO: 63に示すVL配列(CD137クローン008)
(j)SEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列(CD137クローン009)
(k)SEQ ID NO: 76に示すVH配列およびSEQ ID NO: 77に示すVL配列(CD137クローン010)
(l)SEQ ID NO: 83に示すVH配列およびSEQ ID NO: 84に示すVL配列(CD137クローン011)
(m)SEQ ID NO: 90に示すVH配列およびSEQ ID NO: 91に示すVL配列(CD137クローン012)。
【0208】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む:
(a)SEQ ID NO: 123に示すVH配列(ヒト化CD137クローン009)
(b)SEQ ID NO: 41に示すVH配列(CD137クローン005)
(c)SEQ ID NO: 69に示すVH配列(CD137クローン009)。
【0209】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む:
(a)SEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)
(b)SEQ ID NO: 42に示すVL配列(CD137クローン005)
(c)SEQ ID NO: 70に示すVL配列(CD137クローン009)。
【0210】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列はそれぞれ、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む:
(a)SEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)
(b)SEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列(CD137クローン005)
(c)SEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列(CD137クローン009)。
【0211】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 41(CD137クローン005)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0212】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 69(CD137クローン009)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0213】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 123(ヒト化CD137クローン009)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0214】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO: 42(CD137クローン005)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0215】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO: 70(CD137クローン009)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0216】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO: 127(ヒト化CD137クローン009)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列を含む。
【0217】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 41およびSEQ ID NO: 42(CD137クローン005)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有しているアミノ酸配列をそれぞれ含む。
【0218】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 69およびSEQ ID NO: 70(CD137クローン009)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有しているアミノ酸配列をそれぞれ含む。
【0219】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 123およびSEQ ID NO: 127(ヒト化CD137クローン009)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有しているアミノ酸配列をそれぞれ含む。
【0220】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、フレームワーク配列だけが異なる。
【0221】
1つの態様において、第1および/または第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0222】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 41およびSEQ ID NO: 42(CD137クローン005)に示す非CDR配列だけが異なる。
【0223】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 69およびSEQ ID NO: 70(CD137クローン009)に示す非CDR配列だけが異なる。
【0224】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 123およびSEQ ID NO: 127(ヒト化CD137クローン009)に示す非CDR配列だけが異なる。
【0225】
1つの態様において、VH配列およびVL配列は、フレームワーク配列だけが異なる。
【0226】
1つの態様において、第1および/または第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0227】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0228】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第2の抗原結合領域の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO: 36、37、38、39、SAS、および40に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べて合計1~12個の変異を有している。さらなる態様において、該変異は、前述したとおりであってよい。
【0229】
さらに別の態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 36、37、38、39、SAS、および40に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0230】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0231】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第2の抗原結合領域の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べて合計1~12個の変異を有している。さらなる態様において、該変異は、前述したとおりであってよい。
【0232】
さらに別の態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0233】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0234】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第2の抗原結合領域の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べて合計1~12個の変異を有している。さらなる態様において、該変異は、前述したとおりであってよい。
【0235】
さらに別の態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、SEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列の各FR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有しており、かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、66、67、GAS、および68に示す配列を有している重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0236】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、SEQ ID NO: 123(ヒト化CD137クローン009)を含む。
【0237】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、SEQ ID NO: 127(ヒト化CD137クローン009)を含む。
【0238】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 123およびSEQ ID NO: 127を含む。
【0239】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列は、
(a)SEQ ID NO: 41(CD137クローン005)
(b)SEQ ID NO: 69(CD137クローン009)
からなる群より選択されるVH配列を含む。
【0240】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVL配列は、
(a)SEQ ID NO: 42(CD137クローン005)
(b)SEQ ID NO: 70(CD137クローン009)
からなる群より選択されるVL配列を含む。
【0241】
1つの態様において、第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、
(a)SEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列(CD137クローン005)、
(b)SEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列(CD137クローン009)
からなる群より選択される。
【0242】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームを含む。
【0243】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第2の抗原結合領域および第2の重鎖定常配列を含む第2の結合アームを含む。
【0244】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームを含み、この第2の結合アームは、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖ならびに第2の軽鎖可変(VL)配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0245】
1つの態様において、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常配列をさらに含む。
【0246】
さらなる態様において、第2の重鎖は、少なくとも1つのヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。
【0247】
特定の態様において、本発明による多重特異性抗体は、第2の抗原結合領域を含む第2のFabアームを含む。
【0248】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、ウサギ抗体、例えば、本明細書において開示される抗CD137クローン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12のいずれか、特にクローン5および9のいずれかに由来する。
【0249】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、キメラ抗体、例えば、本明細書において開示される抗CD137クローン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12のいずれか、特にクローン5および9のいずれかに由来する可変領域を含む抗体に由来する。
【0250】
1つの態様において、第2の抗原結合領域は、ヒト化抗体に由来する。
【0251】
1つの態様において、第2の結合アームは、完全長抗体に由来する。
【0252】
1つの態様において、第2の結合アームは、完全長のIgG1、λ(ラムダ)抗体またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。
【0253】
1つの態様において、第2の結合アームは、モノクローナル抗体に由来する。
【0254】
1つの態様において、第2の重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群よりサブクラスを任意で有している、IgGアイソタイプのものである。
【0255】
1つの態様において、第1の結合アームは、SEQ ID NO: 124を含むHCおよびSEQ ID NO: 128を含むLCを含む抗体に由来してよく、HCの定常領域中に1つまたは複数の変異、例えば1~10個、例えば1~5個、例えば1個、2個、3個、4個、または5個の変異を任意で含む。
【0256】
1つの態様において、第1の結合アームは、SEQ ID NO: 124、125、または126を含むHCおよびSEQ ID NO: 128を含むLCを含む。
【0257】
CD40およびCD137への結合
いくつかの態様において、本発明は、下記を含む多重特異性抗体に関する:
(I)下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域:
(a)それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3、
(b)合計1~12個の変異を有している、a)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(c)(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに
(II)下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域:
(x)それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン009)、
(y)合計1~12個の変異を有している、x)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(z)(i) (x)もしくは(y)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (x)もしくは(y)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3。
【0258】
別の態様において、本発明は、下記を含む多重特異性抗体に関する:
(I)下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、ヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域:
(a)それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3、
(b)合計1~12個の変異を有している、(a)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(c)(i) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD40結合について競合し、かつ/または(ii) (a)もしくは(b)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD40に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに
(II)下記からなる群より選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、ヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域:
(x)それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン005)、
(y)合計1~12個の変異を有している、(x)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
(z)(i) (x)もしくは(y)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体と、ヒトCD137結合について競合し、かつ/または(ii) (x)もしくは(y)に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3。
【0259】
それゆえ、1つの態様において、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示すアミノ酸配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示すアミノ酸配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつ第2の抗原結合領域は、
(a)それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD136クローン009)、または
(b)それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(CD137クローン005)
を含む。
【0260】
別の態様において、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み;かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む(CD137クローン009)。
【0261】
別の態様において、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み;かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む(CD137クローン005)。
【0262】
さらなる態様において、本発明による多重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、第1の重鎖可変(VH)配列および第1の軽鎖可変(VL)配列を含み、本発明による多重特異性抗体の第2の抗原結合領域は、第2の重鎖可変(VH)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列を含み、各可変配列は、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列、ならびにそれぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4である4つのフレームワーク配列を含む。
【0263】
さらなる態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 6に示すVH配列およびSEQ ID NO: 7に示すVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有している配列をそれぞれ含み、かつ第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 41に示すVH配列およびSEQ ID NO: 42に示すVL配列(CD137クローン005)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有している配列をそれぞれ含む。
【0264】
別のさらなる態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 6に示すVH配列およびSEQ ID NO: 7に示すVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有している配列をそれぞれ含み、かつ第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 69に示すVH配列およびSEQ ID NO: 70に示すVL配列(CD137クローン009)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有している配列をそれぞれ含む。
【0265】
別のさらなる態様において、第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 117に示すVH配列およびSEQ ID NO: 121に示すVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列をそれぞれ含み、かつ第2の抗原結合領域のVH配列およびVL配列は、それぞれSEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列をそれぞれ含む。
【0266】
特定の態様において、本発明は、下記を含む二重特異性抗体に関する:
(I)第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖を含む、第1の結合アームであって、該第1の重鎖可変配列が、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、該第1の軽鎖配列が、それぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第1の結合アーム、ならびに
(II)第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖を含む、第2の結合アームであって、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列をさらに含み、該第2の重鎖可変配列が、それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、該第2の軽鎖配列が、それぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含む(CD137クローン009)、第2の結合アーム;
ここで、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG1アイソタイプのものであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖はIgG1、κのものであり、かつ第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ(a)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか;または(b)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0267】
さらなる特定の態様において、本発明は、下記を含む二重特異性抗体に関する:
(I)第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖を含む、第1の結合アームであって、該第1の重鎖可変配列が、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、該第1の軽鎖配列が、それぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、第1の結合アーム、ならびに
(II)第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖を含む、第2の結合アームであって、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列をさらに含み、該第2の重鎖可変配列が、それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、該第2の軽鎖配列が、それぞれSEQ ID NO: 39、SAS、およびSEQ ID NO: 40に示す配列を有しているCDR1、CDR2、およびCDR3を含む(CD137クローン005)、第2の結合アーム;
ここで、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG1アイソタイプのものであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖はIgG1、κのものであり、かつ第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ(a)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか;または(b)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0268】
特定の態様において、本発明は、下記を含む二重特異性抗体に関する:
(I)第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖を含む、第1の結合アームであって、該第1のVH配列およびVL配列が、それぞれSEQ ID NO: 117に示すVH配列およびSEQ ID NO: 121に示すVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列をそれぞれ含む、第1の結合アーム、ならびに
(II)第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖を含む、第2の結合アームであって、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列をさらに含み、該第2のVH配列およびVL配列が、それぞれSEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列を含む、第2の結合アーム。
【0269】
さらなる具体的な態様において、本発明は、下記を含む二重特異性抗体に関する:
(I)第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖を含む、第1の結合アームであって、該第1のVH配列がSEQ ID NO: 117を含み、該第1のVL配列がSEQ ID NO: 121を含む、第1の結合アーム、ならびに
(II)第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖を含む、第2の結合アームであって、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列をさらに含み、該第2のVH配列がSEQ ID NO: 123を含み、該第2のVL配列がSEQ ID NO: 127を含む(ヒト化CD137クローン009)、第2の結合アーム。
【0270】
特定の態様において、本発明は、下記を含む二重特異性抗体に関する:
(I)第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖を含む、第1の結合アームであって、該第1のVH配列およびVL配列が、それぞれSEQ ID NO: 117に示すVH配列およびSEQ ID NO: 121に示すVL配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列を含む、第1の結合アーム、ならびに
(II)第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖を含む、第2の結合アームであって、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列をさらに含み、該第2のVH配列およびVL配列が、それぞれSEQ ID NO: 123に示すVH配列およびSEQ ID NO: 127に示すVL配列(ヒト化CD137クローン009)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有している配列を含む、第2の結合アーム;
ここで、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG1アイソタイプのものであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖はIgG1、κのものであり、かつ第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ(a)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか;または(b)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0271】
さらなる具体的な態様において、本発明は、下記を含む二重特異性抗体に関する:
(I)第1の重鎖可変(VH)配列および第1の重鎖定常(CH)配列を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変(VL)配列および第1の軽鎖定常(CL)配列を含む第1の軽鎖を含む、第1の結合アームであって、該第1のVH配列がSEQ ID NO: 117を含み、該第1のVL配列がSEQ ID NO: 121を含む、第1の結合アーム、ならびに
(II)第2の重鎖可変(VH)配列および第2の重鎖定常(CH)配列を含む第2の重鎖を含む、第2の結合アームであって、第2の軽鎖は、第2の軽鎖定常(CL)配列および第2の軽鎖可変(VL)配列をさらに含み、該第2のVH配列がSEQ ID NO: 123を含み、該第2のVL配列がSEQ ID NO: 127を含む(ヒト化CD137クローン009)、第2の結合アーム、
ここで、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG1アイソタイプのものであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖はIgG1、κのものであり、かつ第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ(a)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか;または(b)第1の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の定常重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0272】
別の局面において、本発明は、ヒトCD40に結合する第1の結合アームおよびヒトCD137に結合する第2の結合アームを含む二重特異性抗体に関し、その際、
(i)第1の結合アームは、SEQ ID NO: 118を含むかまたはSEQ ID NO: 118からなる重鎖(HC)アミノ酸配列およびSEQ ID NO: 122を含むかまたはSEQ ID NO: 122からなる軽鎖(LC)アミノ酸配列を含み、かつ
(ii)第2の結合アームは、SEQ ID NO: 124を含むかまたはSEQ ID NO: 124からなるHCアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 128を含むかまたはSEQ ID NO: 128からなるLCアミノ酸配列を含み、
任意で、SEQ ID NO: 118、SEQ ID NO: 124、または両方は、HCの定常領域中に1つまたは複数の変異、例えば1~10個、例えば1~5個、例えば1個、2個、3個、4個、または5個の変異を含む。
【0273】
別の局面において、本発明は、ヒトCD40に結合する第1の結合アームおよびヒトCD137に結合する第2の結合アームを含む二重特異性抗体に関し、その際、
(i)第1の結合アームは、SEQ ID NO: 119を含むかまたはSEQ ID NO: 119からなるHCアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 122を含むかまたはSEQ ID NO: 122からなるLCアミノ酸配列を含み、かつ
(ii)第2の結合アームは、SEQ ID NO: 125を含むかまたはSEQ ID NO: 125からなるHCアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 128を含むかまたはSEQ ID NO: 128からなるLCアミノ酸配列を含む。
【0274】
別の局面において、本発明は、ヒトCD40に結合する第1の結合アームおよびヒトCD137に結合する第2の結合アームを含む二重特異性抗体に関し、その際、
(i)第1の結合アームは、SEQ ID NO: 120を含むかまたはSEQ ID NO: 120からなるHCアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 122を含むかまたはSEQ ID NO: 122からなるLCアミノ酸配列を含み、かつ
(ii)第2の結合アームは、SEQ ID NO: 126を含むかまたはSEQ ID NO: 126からなるHCアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 128を含むかまたはSEQ ID NO: 128からなるLCアミノ酸配列を含む。
【0275】
二重特異性形態
特定の態様において、本発明による多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0276】
本発明は、CD40を発現する細胞とCD137を発現する細胞、例えばそれぞれ抗原提示細胞とT細胞とを架橋することができる二重特異性CD40×CD137抗体を提供する。個々の用途のために望ましい機能的特性に応じて、本発明によって提供される一連の抗体または抗原結合領域から、特定の抗原結合領域を選択することができる。二重特異性抗体の多くの様々な形態および用途が当技術分野において公知であり、Kontermann; Drug Discov Today, 2015 Jul;20(7):838-47およびMAbs, 2012 Mar-Apr;4(2):182-97にその総説がある。
【0277】
本発明による二重特異性抗体は、いかなる特定の二重特異性形態にも、それを作製する方法にも、限定されない。
【0278】
本発明において使用され得る二重特異性抗体分子の例には、(i)異なる抗原結合領域を含む2つの結合アームを有する単一の抗体;(ii)例えば、追加されたペプチドリンカーによって縦に並んで連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する単鎖抗体;(iii)各軽鎖および重鎖が、短いペプチド結合によって縦に並んだ2つの可変ドメインを含む、二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-IgTM) Molecule, In: Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(iv)化学的に結合させた二重特異性(Fab’)2断片;(v)各標的抗原に対して2つの結合部位を有する四価の二重特異性抗体を生じる、2つの単鎖ダイアボディの融合物である、Tandab;(vi)多価分子を生じる、scFvとダイアボディの組合せである、フレキシボディ;(vii)Fabに添加された場合に、異なるFab断片に連結された2つの同一のFab断片からなる三価の二重特異性結合タンパク質を生じることができる、プロテインキナーゼAにおける「二量体形成およびドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドックアンドロック」分子;(viii)例えば、ヒトFabアームの両方の末端に融合された2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン分子;ならびに(ix)ダイアボディが含まれる。
【0279】
1つの態様において、本発明の二重特異性抗体は、(WO2011131746 (Genmab)に記載されているような)管理されたFabアーム交換によって得られるダイアボディ、クロスボディ、または二重特異性抗体である。
【0280】
様々なクラスの二重特異性抗体の例には、(i)ヘテロ二量体化を強いる相補的CH3ドメインを有するIgG様分子;(ii)分子の2つの側面が、少なくとも2種の異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部分をそれぞれ含む、組換えIgG様デュアルターゲティング分子;(iii)完全長IgG抗体が、余分なFab断片またはFab断片の一部分に融合されている、IgG融合分子;(iv)単鎖Fv分子または安定化されたダイアボディが、重鎖の定常ドメイン、Fc領域、またはその一部分に融合されている、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が、共に融合され、重鎖の定常ドメイン、Fc領域、またはその一部分に融合されている、Fab融合分子;ならびに(vi)異なる単鎖Fv分子または異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が、互いに、または重鎖定常ドメイン、Fc領域、もしくはその一部分に融合された別のタンパク質もしくは担体分子に融合されている、ScFvをベースとする抗体およびダイアボディをベースとする抗体ならびに重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0281】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例には、トリオマブ/クアドローマ分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech; Roche、WO2011069104)、いわゆるノブイントゥーホール分子(Genentech、WO9850431)、CrossMAb(Roche、WO2011117329)および静電気的にマッチさせた分子(Amgen、EP1870459およびWO2009089004; Chugai、US201000155133; Oncomed、WO2010129304)、LUZ-Y分子(Genentech、Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIGボディ分子およびPIGボディ分子(Pharmabcine、WO2010134666、WO2014081202)、鎖交換操作されたドメインボディ(SEEDbody)分子(EMD Serono、WO2007110205)、Biclonics分子(Merus、WO2013157953)、FcΔAdp分子(Regeneron、WO201015792)、二重特異性のIgG1分子およびIgG2分子(Pfizer/Rinat、WO11143545)、アジメトリック骨格分子(Zymeworks/Merck、WO2012058768)、mAb-Fv分子(Xencor、WO2011028952)、二価の二重特異性抗体(WO2009080254)、ならびにDuoBody(登録商標)分子(Genmab A/S、WO2011131746)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0282】
組換えIgG様二重ターゲティング分子の例には、デュアルターゲティング(DT)-Ig分子(WO2009058383)、ツーインワン抗体(Genentech; Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star、WO2008003116)、ザイボディ分子(Zyngenia; LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通の軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus, US7,262,028)、κλボディ(NovImmune、WO2012023053)、およびCovXボディ(CovX/Pfizer; Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501-506.)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0283】
IgG融合分子の例には、二重可変ドメイン(DVD)-Ig分子(Abbott、US7,612,181)、二重ドメインダブルヘッド抗体(Unilever; Sanofi Aventis、WO20100226923)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly、Lewis et al. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ; Dimasi et al. J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)、ならびにBsAb分子(Zymogenetics、WO2010111625)、HERCULES分子(Biogen Idec、US007951918)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc、CN 102250246)、およびTvAb分子(Roche、WO2012025525、WO2012025530)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0284】
Fc融合分子の例には、ScFv/Fc融合物(Pearce et al., Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88)、SCORPION分子(Emergent BioSolutions/Trubion, Blankenship JW, et al. AACR 100th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465); Zymogenetics/BMS、WO2010111625)、二重親和性リターゲティング技術(Fc-DART)分子(MacroGenics、WO2008157379、WO2010080538)、およびデュアル(ScFv)2-Fab分子(抗体医薬の国立調査センター(中国))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0285】
Fab融合二重特異性抗体の例には、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN; Deo et al J Immunol. 1998 Feb 15;160(4):1677-86.)、二重作用分子またはビス-Fab分子(Genentech, Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、ドックアンドロック(DNL)分子(ImmunoMedics、WO2003074569、WO2005004809)、二価二重特異性分子(Biotecnol, Schoonjans, J Immunol. 2000 Dec 15;165(12):7050-7.)、およびFab-Fv分子(UCB-Celltech、WO 2009040562 A1)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0286】
ScFvをベースとする抗体、ダイアボディをベースとする抗体、およびドメイン抗体の例には、二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子(Micromet、WO2005061547)、タンデムダイアボディー分子(TandAb)(Affimed) Le Gall et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):357-66.)、二重親和性リターゲティング技術(DART)分子(MacroGenics、WO2008157379、WO2010080538)、単鎖ダイアボディ分子(Lawrence, FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合物(Merrimack、WO2010059315)、ならびにCOMBODY分子(Epigen Biotech、Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75.)、デュアルターゲティングナノボディ(Ablynx、Hmila et al., FASEB J. 2010)およびデュアルターゲティング重鎖のみのドメイン抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0287】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくとも1つのヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。
【0288】
さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のCH3領域は、非対称的変異、例えば、安定なヘテロ二量体抗体をもたらす非対称的変異(本明細書において改変とも呼ばれる)を含む。
【0289】
1つの態様において、本発明の二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1の重鎖および第2のCH3領域を含む第2の重鎖を含み、その際、該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の配列は異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域のヘテロ二量体相互作用が該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列である。これらの相互作用およびそれらを実現できる方法に関するより詳細な内容は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるWO 2011/131746およびWO 2013/060867(Genmab)において提供されている。
【0290】
本明細書においてさらに説明するように、CH3領域中にごく少数のかなり保存的な非対称的変異を含む1つのホモ二量体親CD40抗体および1つのホモ二量体親CD137抗体に基づく特別な方法を用いて、安定な二重特異性CD40×CD137抗体を高収率で得ることができる。非対称的変異とは、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一ではない位置にアミノ酸置換を含むことを意味する。
【0291】
したがって、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のCH3領域の配列は、非対称的変異、例えば、CH3領域の一方における、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の405位に対応する位置の変異、および他方のCH3領域における、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の409位に対応する位置の変異を含む。
【0292】
1つの局面において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、その際、第1の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ第1の重鎖および第2の重鎖は、同じ位置において置換されていない。
【0293】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有しており、かつ第1の重鎖および第2の重鎖は、同じ位置において置換されていない。
【0294】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、366位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。1つの態様において、366位のアミノ酸は、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、またはGlnより選択される。
【0295】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、368位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、366、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。
【0296】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、370位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、366、368、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。
【0297】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、399位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、366、368、370、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。
【0298】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、405位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、366、368、370、399、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。
【0299】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、407位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、366、368、370、399、405、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。
【0300】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、409位にアミノ酸置換を有しており、かつ第2の重鎖は、366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。
【0301】
したがって、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は、非対称的変異、すなわち、2つのCH3領域中の異なる位置の変異、例えば、CH3領域の一方における405位の変異および他方のCH3領域における409位の変異を含む。
【0302】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有している。1つのこのような態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、405位にPhe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Cys、Lys、またはLeuを有している。これの別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、405位にPhe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有している。
【0303】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、405位にPheを、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、かつ第2の重鎖は、405位にPhe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Leu、Met、またはCysを、409位にLysを含む。これの別の態様において、第1の重鎖は、405位にPheを、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、かつ第2の重鎖は、405位にPhe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを、409位にLysを含む。
【0304】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、405位にPheを、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、かつ第2の重鎖は、405位にLeuおよび409位にLysを含む。これの別の態様において、第1の重鎖は、405位にPheおよび409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、405位にPhe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Met、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを、409位にLysを含む。別の態様において、第1の重鎖は、405位にPheおよび409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、405位にLeuおよび409位にLysを含む。
【0305】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、かつ第2の重鎖は、409位にLys、370位にThr、および405位にLeuを含む。さらなる態様において、第1の重鎖は409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、409位にLys、370位にThr、および405位にLeuを含む。
【0306】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体のさらに別の態様において、第1の重鎖は、370位にLys、405位にPhe、および409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、409位にLys、370位にThr、および405位にLeuを含む。
【0307】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、かつ第2の重鎖は、409位にLysを、かつa)350位にIleおよび405位にLeuまたはb)370位にThrおよび405位にLeuを含む。
【0308】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、409位にLysを、かつa)350位にIleおよび405位にLeuまたはb)370位にThrおよび405位にLeuを含む。
【0309】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、350位にThr、370位にLys、405位にPhe、および409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、409位にLysを、かつa)350位にIleおよび405位にLeuまたはb)370位にThrおよび405位にLeuを含む。
【0310】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、350位にThr、370位にLys、405位にPhe、および409位にArgを含み、かつ第2の重鎖は、350位にIle、370位にThr、405位にLeu、および409位にLysを含む。
【0311】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の1つの態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有しており、かつ第2の重鎖は、405位にPhe以外のアミノ酸、例えば、405位にPhe、Arg、もしくはGly以外のアミノ酸を有しているか;または第1のCH3領域が、409位にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有しており、かつ第2のCH3領域が、407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有している。
【0312】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有している第1の重鎖および407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸を有している第2の重鎖を含む。
【0313】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、407位にTyrおよび409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有している第1の重鎖および407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸および409位にLysを有している第2の重鎖を含む。
【0314】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、407位にTyrおよび409位にArgを有している第1の重鎖ならびに407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸および409位にLysを有している第2の重鎖を含む。
【0315】
別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有している。別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有している。
【0316】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有している。
【0317】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、407位にTyrを、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを、409位にLysを有している。
【0318】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、407位にTyrを、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを、409位にLysを有している。
【0319】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、407位にTyrを、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを、409位にLysを有している。
【0320】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、407位にTyrおよび409位にArgを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを、409位にLysを有している。
【0321】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、407位にTyrおよび409位にArgを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを、409位にLysを有している。
【0322】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、407位にTyrおよび409位にArgを有しており、かつ第2の重鎖は、407位にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを、409位にLysを有している。
【0323】
本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1の重鎖は、409位にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有しており、かつ第2の重鎖は、
(i)368位に、Phe、Leu、およびMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、もしくはCys、または
(ii)370位にTrp、または
(iii)399位に、Asp、Cys、Pro、Glu、もしくはGln以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asn、Trp、Tyr、もしくはCys、または
(iv)366位に、Lys、Arg、Ser、Thr、もしくはTrp以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Ala、Val、Gly、Ile、Asn、His、Asp、Glu、Gln、Pro、Tyr、もしくはCys
を有している。
【0324】
1つの態様において、第1の重鎖は409位にArg、Ala、His、またはGlyを有しており、かつ第2の重鎖は、
(i)368位にLys、Gln、Ala、Asp、Glu、Gly、His、Ile、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrp、または
(ii)370位にTrp、または
(iii)399位にAla、Gly、Ile、Leu、Met、Asn、Ser、Thr、Trp、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyr、または
(iv)366位にAla、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln、Phe、Gly、Ile、Leu、Met、もしくはTyr
を有している。
【0325】
1つの態様において、第1の重鎖は409位にArgを有しており、かつ第2の重鎖は、
(i)368位にAsp、Glu、Gly、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrp、または
(ii)370位にTrp、または
(iii)399位にPhe、His、Lys、Arg、もしくはTyr、または
(iv)366位にAla、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln
を有している。
【0326】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、その際、(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置のアミノ酸は、第1の重鎖においてLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置のアミノ酸は、第2の重鎖においてRであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置のアミノ酸は、第1の重鎖においてRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置のアミノ酸は、第2の重鎖においてLである。
【0327】
さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG1アイソタイプのものである。
【0328】
別のさらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG2アイソタイプのものである。
【0329】
別のさらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖は、ヒトIgG3アイソタイプのものである。
【0330】
別の態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、ヒトIgG4アイソタイプの第1の重鎖および第2の重鎖を含み、その際、(i)EUナンバリングに従うヒトIgG4重鎖中のS228に対応する位置のアミノ酸は、第1の重鎖においてPであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG4重鎖中のS228、F405、およびR409に対応する位置のアミノ酸は、第2の重鎖においてそれぞれP、L、およびKであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG4重鎖中のS228、F405、およびR409に対応する位置のアミノ酸は、第1の重鎖においてそれぞれP、L、およびKであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG4重鎖中のS228に対応する位置のアミノ酸は、第2の重鎖においてPである。
【0331】
本明細書において第1の重鎖の特定の位置のアミノ酸および/または第2の重鎖の特定の位置のアミノ酸に言及する場合、そのような言及は、第1の重鎖の特定の位置のアミノ酸が、第1の重鎖ではなく第2の重鎖の対応する位置に存在する、および/または第2の重鎖の特定の位置のアミノ酸が、第2の重鎖ではなく第1の重鎖の対応する位置に存在する態様を含むと理解されるべきである。
【0332】
上記に指定したアミノ酸置換に加えて、第1の重鎖および第2の重鎖は、野生型重鎖配列に対する、さらなるアミノ酸置換、欠失、または挿入も含んでよい。
【0333】
さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖を含む第1のFabアームおよび第2のFabアーム(または重鎖定常ドメイン)は、指定した変異以外に、以下、すなわち(IgG1m(a))(SEQ ID NO: 106)、(IgG1m(f))(SEQ ID NO: 107)、および(IgG1m(ax)(SEQ ID NO: 108)より独立に選択されるCH3配列を含む。
【0334】
1つの態様において、第1の重鎖も第2の重鎖も、(コア)ヒンジ領域中にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。
【0335】
さらなる態様において、第1の重鎖と第2の重鎖の両方とも、(コア)ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0336】
別々および個々の態様において、Fabアームの一方または両方は、SEQ ID NO: 109、110、111、112、113、および116より独立に選択される重鎖定常領域配列を含む(表1を参照されたい)。
【0337】
二重特異性抗体を調製する方法
ハイブリッドハイブリドーマ法および化学的連結法などの従来の方法(Marvin and Zhu (2005) Acta Pharmacol Sin 26:649)を、本発明の二重特異性抗体を調製するのに使用することができる。異なる重鎖および軽鎖からなる2種の抗体を宿主細胞において同時発現させると、所望の二重特異性抗体に加えて、生じ得る抗体産物の混合物が生じ、次いで、例えばアフィニティークロマトグラフィーまたは同様の方法によって、所望の二重特異性抗体を単離することができる。
【0338】
異なる抗体構築物を同時発現した場合に機能的な二重特異性産物の形成を促進する戦略もまた、例えば、Lindhofer et al. (1995 J Immunol 155:219)によって説明されている方法によって使用することができる。異なる抗体を産生するラットおよびマウスのハイブリドーマの融合により、種によって拘束される優先的な重鎖/軽鎖対形成が原因で、限定された数のヘテロ二量体タンパク質が生じる。ホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成を促進する別の戦略は、第1の重鎖ポリペプチド表面に隆起が導入され、対応する窪みが第2の重鎖ポリペプチドに導入され、その結果、これら2つの重鎖の境界面で隆起が窪みの中におさまって、ヘテロ二量体形成を促進しホモ二量体形成を妨げることができる、「ノブイントゥーホール」戦略である。「隆起」は、第1のポリペプチドの境界面に由来する小型のアミノ酸側鎖を、より大型の側鎖で置換することによって作られる。大型アミノ酸側鎖をより小型のもので置換することによって、隆起と同一または類似したサイズの補填的「空洞」が、第2のポリペプチドの境界面に作り出される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459 (Chugai)およびWO 2009/089004 (Amgen)は、宿主細胞において異なる抗体ドメインを同時発現させた際にヘテロ二量体形成を促進するための他の戦略を説明している。これらの方法では、両方のCH3ドメインにおいてCH3-CH3境界面を構成する1つまたは複数の残基が、荷電アミノ酸で置換され、その結果、ホモ二量体形成が静電気的に不都合になり、ヘテロ二量体化が静電気的に好都合になる。WO2007110205 (Merck)では、IgAおよびIgGのCH3ドメインの差を利用してヘテロ二量体化を促進する、さらに別の戦略を説明している。
【0339】
本発明の二重特異性CD40×CD137抗体を調製するための好ましい方法には、下記の段階を含む、WO 2011/131746およびWO 2013/060867(Genmab)に記載されている方法が含まれる:
(a)第1のCH3領域を含むFc領域を含む、第1の抗体を提供する段階;
(b)第2のCH3領域を含む第2のFc領域を含む、第2の抗体を提供する段階;
その際、第1の抗体は、本明細書において説明する2つの第1の抗原結合領域を含むCD40抗体であり、第2の抗体は、本明細書において説明する2つの第2の抗原結合領域を含むCD137抗体であるか、または逆もまた同じであり;かつ該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の配列は異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域のヘテロ二量体相互作用が該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列である;
(c)還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と共にインキュベーションする段階;ならびに
(d)二重特異性CD40×CD137抗体を取得する段階。
【0340】
1つの態様において、第1の抗体は、ヒンジ領域中のシステインにジスルフィド結合異性化を起こさせるのに十分な還元条件下で、第2の抗体と共にインキュベーションされ、その際、結果として生じるヘテロ二量体抗体における第1の抗体と第2の抗体のヘテロ二量体相互作用は、37℃で24時間後に、0.5mM GSHでFabアーム交換が起こらないようなものである。
【0341】
理論に制限されるわけではないが、段階c)において、親抗体(段階a)およびb)の第1の抗体および第2の抗体)のヒンジ領域中の重鎖ジスルフィド結合が還元され、結果として生じるシステインが、その後、(元来、異なる特異性を有している)別の親抗体分子のシステイン残基と、重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。この方法の1つの態様において、段階c)の還元条件は、還元剤、例えば2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、およびβ-メルカプト-エタノールからなる群より選択される還元剤、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール、およびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加を含む。さらなる態様において、段階c)は、例えば、脱塩等によって還元剤を除去することによって、非還元性または還元性が弱くなるように条件を戻す段階を含む。1つの特定の態様において、二重特異性抗体は、次のようにして作製される:両方とも同じ量の相補的な2種の親抗体を、31℃で5時間、緩衝液(例えばPBSまたはTris-EDTA)に溶かした75mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)と共にインキュベーションする;スピンカラム(例えば、Microcon遠心式フィルター、30k、Millipore)を用いて還元剤2-MEAを除去することによって、還元反応を停止させる(Labrijn et al. Nature Protocols, Vol 9 No 10, p2450-2463; 2014)。別の特定の態様において、方法は、実施例3の方法である。
【0342】
この方法のために、本明細書において開示されるCD40抗体およびCD137抗体のいずれかを使用することができる。特定の態様において、それぞれヒトCD40およびヒトCD137に結合する第1の抗体および第2の抗体は、本明細書において説明する二重特異性抗体を得るために選択されてよい。
【0343】
この方法の1つの態様において、第1の抗体および/または第2の抗体は、完全長抗体である。
【0344】
第1の抗体および第2の抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるサブクラスを有するIgGアイソタイプを非限定的に含む、任意のアイソタイプのものであってよい。この方法の1つの態様において、第1の抗体と第2の抗体の両方のFc領域は、IgG1アイソタイプのものである。別の態様において、これらの抗体のFc領域のうちの一方はIgG1アイソタイプのものであり、他方はIgG4アイソタイプのものである。後者の態様において、結果として生じる二重特異性抗体は、IgG1のFc領域およびIgG4のFc領域を含む。
【0345】
さらなる態様において、親抗体のうちの1つは、プロテインAに結合しないように操作され、したがって、産物にプロテインAカラムを通過させることによって、ホモ二量体親抗体からヘテロ二量体抗体を分離することが可能になる。
【0346】
前述したように、ホモ二量体親抗体の第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域のヘテロ二量体相互作用が該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列である。これらの相互作用およびそれらを実現できる方法に関するより詳細な内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2011/131746およびWO 2013/060867(Genmab)において提供されている。
【0347】
具体的には、それぞれCD40およびCD137に結合し、かつCH3領域中にごく少数のかなり保存的な非対称的変異を含む2つのホモ二量体抗体に基づく本発明の上記の方法を用いて、安定な二重特異性CD40×CD137抗体を高収率で得ることができる。非対称的変異とは、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一ではない位置にアミノ酸置換を含むことを意味する。
【0348】
本発明の二重特異性抗体はまた、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドをコードする構築物を単一細胞において同時発現させることによって得ることもできる。したがって、さらなる局面において、本発明は、二重特異性抗体を作製するための方法に関し、この方法は、下記の段階を含む:
(a)第1のCH3領域を含む第1のFc領域と本明細書の任意の局面または態様に記載のヒトCD40に結合する第1の抗原結合領域とを含む第1のポリペプチドをコードする第1の核酸構築物を提供する段階、
(b)第2のCH3領域を含む第2のFc領域と本明細書の任意の局面または態様に記載のヒトCD137に結合する第2の抗原結合領域とを含む第2のポリペプチドをコードする第2の核酸構築物を提供する段階、
その際、該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の配列は異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域のヘテロ二量体相互作用が該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列であり、かつ該第1のCH3領域において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第2のCH3領域において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ第1の重鎖および第2の重鎖は、同じ位置において置換されておらず、
任意で、第1の核酸構築物および第2の核酸構築物は、第1の抗体および第2の抗体の軽鎖配列をコードする、
(c)第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を宿主細胞において同時発現させる段階、ならびに
(d)細胞培養物からヘテロ二量体タンパク質を取得する段階。
【0349】
したがって、本発明はまた、本発明の二重特異性抗体を産生する組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞にも関する。
【0350】
本発明の1つの態様において、二重特異性抗体は、本発明による方法のいずれかによって得られる。
【0351】
プロモーター、エンハンサーなどを含む適切な発現ベクターおよび抗体を産生させるための適切な宿主細胞は、当技術分野において周知である。宿主細胞の例には、酵母細胞、細菌細胞、および哺乳動物細胞、例えばCHO細胞またはHEK細胞が含まれる。
【0352】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、指定した変異以外にSEQ ID NO: 107(IgG1m(f))の配列を含む第1のCH3領域および第2のCH3領域を含む。
【0353】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域を含み、該第1のFc領域も該第2のFc領域も、ヒンジ領域中にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。
【0354】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域を含み、該第1のFc領域と該第2のFc領域の両方とも、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0355】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域を含み、該第1のFc領域および該第2のFc領域は、ヒト抗体Fc領域である。
【0356】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域を含み、該第1のFc領域および該第2のFc領域は、指定した変異以外に、SEQ ID NO: 109、110、111、112、113、および116からなる群より独立に選択される配列を含む。
【0357】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域を含み、第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域は、重鎖抗体に由来する。
【0358】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される二重特異性抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域を含み、第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域は、第1の軽鎖および第2の軽鎖を含む。
【0359】
さらなる態様において、本発明による同時発現方法は、上記のインビトロ方法のところで説明した他の特徴のいずれかを含む。
【0360】
不活性な形態
抗体のFc領域によって媒介されるエフェクター機能によって、外来の存在物を破壊すること、例えば、病原体を死滅させることならびに抗原の排除および分解が可能になる。抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)および抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)は、Fc受容体(FcR)を有する細胞にFc領域が結合することによって開始されるのに対し、補体依存性細胞障害(CDC)および補体依存性細胞媒介性細胞障害(CDCC)は、補体活性化の古典経路を開始するC1qにFc領域が結合することによって開始される。
【0361】
ADCCおよび補体活性化などのFcを介したエフェクター機能は、がんの治療に使用されるモノクローナル抗体の治療的有効性に寄与することが示唆されている(Weiner et al. Cell 2012, 148:1081-1084)。
【0362】
本発明による二重特異性抗体のような多重特異性抗体は、T細胞、例えばCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞上で発現されるCD137に結合する。例えば抗原提示細胞(APC)上で発現されるCD40に抗体が同時に結合することにより、CD40を発現するAPCとCD137を発現するT細胞の両方に刺激が与えられ、それによって、例えばT細胞増殖が増加し得る。
【0363】
一般に、細胞によって発現される標的抗原への抗体の結合は、Fc受容体または補体タンパク質などのエフェクター分子との相互作用をもたらすことができ、それによってADCCまたは補体活性化などのFcを介したエフェクター機能を誘導することができ、その結果、標的抗原を発現する細胞を死滅させることができる。
【0364】
本発明による二重特異性抗体のような多重特異性抗体の用途は、APCおよびT細胞に同時刺激を与えるその能力に基づいている。
【0365】
特定の態様においては、多重特異性抗体がFcR、例えばFcγRに結合せず、したがってFcRを介した架橋を誘導しないことが好ましい。
【0366】
さらなる態様においては、CD40発現細胞および/またはCD137発現細胞の死滅を回避するように、多重特異性抗体がエフェクター機能を作動させないことが好ましい。
【0367】
本発明の1つの局面において、本発明による多重特異性CD40×CD137抗体は、本明細書において説明する任意の局面または態様に記載の(i)第1の重鎖および第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームならびに(ii)第2の重鎖および第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームを含む。
【0368】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該抗体は、Fcを介したエフェクター機能を誘導および/または増強する程度が、該抗体と同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、かつヒトIgG1のヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖を含む多重特異性抗体と比べて、低い。
【0369】
1つの態様において、本発明による多重特異性抗体は、第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域、ならびにそれぞれがヒトIgG1のヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む第1の重鎖および第2の重鎖を含み、その際、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つは、該抗体と同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、かつヒトIgG1のヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み改変を含まない2つの重鎖を含む参照多重特異性抗体と比べて、Fcを介したエフェクター機能を誘導および/または増強する程度が低くなるような改変を含む。
【0370】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖は、多重特異性抗体がFcを介したエフェクター機能を誘導および/または増強する程度が、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含む以外は同一である多重特異性抗体と比べて低くなるように改変されている。
【0371】
1つの態様において、Fcを介したエフェクター機能は、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcを介したFcR架橋の誘導に基づいて測定され得る。
【0372】
1つの態様において、Fcを介したエフェクター機能は、C1qへの結合に基づいて測定される。
【0373】
1つの態様において、第1および第2の重鎖定常配列および軽鎖定常配列は、C1qの結合をELISAによって測定した場合に、多重特異性抗体へのC1qの結合が野生型多重特異性抗体と比べて少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%減少するように改変されていた。
【0374】
ヒトIgG1は、Fcを介したエフェクター機能を誘導する能力が公知であるのに対し、IgG4のような他のヒトアイソタイプは、Fcを介したエフェクター機能を誘導する能力が劣る。
【0375】
第1の重鎖および第2の重鎖はそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるIgG1アイソタイプを非限定的に含む任意のアイソタイプのものであってよく、任意で1つまたは複数の変異または改変を含んでよい。1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖はそれぞれ、IgG4アイソタイプのものであるか、またはそれに由来し、任意で1つまたは複数の変異または改変を含む。1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖はそれぞれ、IgG1アイソタイプのものであるか、またはそれに由来し、任意で1つまたは複数の変異または改変を含む。別の態様において、重鎖の一方がIgG1アイソタイプのものであり、かつ他方がIgG4タイプのものであるか、またはそのようなそれぞれのアイソタイプに由来し、任意で1つまたは複数の変異または改変を含む。
【0376】
1つの態様において、第1および重鎖の一方または両方は、2つの第1の重鎖または2つの第2の重鎖を含む抗体がエフェクター機能を欠くと思われるようなものである。例えば、第1の重鎖および第2の重鎖は、ADCCのようなエフェクター機能を媒介する能力が、未変異重鎖と比べて低下または消失さえするように変異させられた、IgG4アイソタイプまたはIgG4ではないタイプ、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3のものであってよい。このような変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2):1129-1138 (2006)およびHezareh M, J Virol.; 75(24):12161-12168 (2001)に記載されている。本発明による多重特異性抗体は、野生型ヒトIgG1配列と比べて、第1の重鎖および第2の重鎖中に改変を含んでよい。抗体のFc領域中にそのような改変を含む多重特異性抗体は、不活性多重特異性抗体または非活性化多重特異性抗体になり得る。本明細書において使用される用語「不活性」、「不活性な」、または「非活性化」は、少なくとも、いかなるFcγ(ガンマ)受容体にも結合できないか、C1qに結合できないか、またはFcを介したFcR架橋を誘導できないFc領域を意味する。本発明の多重特異性抗体のFc領域、または第1の重鎖および/もしくは第2の重鎖が不活性であることは、該Fc領域、または2つの第1の重鎖もしくは2つの第2の重鎖を含む二価の単特異性抗体を用いて試験することができる。これはまた、第1の重鎖および第2の重鎖を含む多重特異性抗体を用いて試験することもできる。
【0377】
治療的抗体開発のためにFcγ受容体およびC1qとの相互作用について不活性な抗体のFc領域を作製するために、いくつかの変異体を構築することができる。本発明は、Fcを介したエフェクター機能を低下させるのに関連する任意の特定の変異に限定されない。このような変異体の例は、本明細書において説明する。
【0378】
したがって、C1qおよびFcγ受容体との相互作用において主要な役割を果たすFc領域中のアミノ酸を改変してよい。改変してよいアミノ酸位置の例には、位置L234、L235、およびP331が含まれる。
【0379】
それゆえ、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびP331に対応する少なくとも1つの位置のアミノ酸は、それぞれA、A、およびSであってよい。(Xu et al., 2000, Cell Immunol. 200(1):16-26; Oganesyan et al., 2008, Acta Cryst. (D64):700-4)。また、アミノ酸置換L234FおよびL235Eによっても、Fcγ受容体およびC1qとの相互作用が抑制されたFc領域を得ることができる(Canfield et al., 1991, J. Exp.Med. (173):1483-91; Duncan et al., 1988, Nature (332):738-40)。それゆえ、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEであってよい。アミノ酸置換D265Aによって、すべてのFcγ受容体への結合を減らし、ADCCを防止することができる(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276):6591-604)。それゆえ、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のD265に対応する位置のアミノ酸は、Aであってよい。C1qへの結合は、位置D270、K322、P329、およびP331を変異させることによって抑制することができる。これらの位置をD270AまたはK322AまたはP329AまたはP331Aのいずれかに変異させることによって、抗体がCDC活性を欠くようにすることができる(Idusogie EE, et al., 2000, J Immunol. 164: 4178-84)。それゆえ、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のD270、K322、P329、およびP331に対応する少なくとも1つの位置のアミノ酸は、それぞれA、A、A、およびAであってよい。
【0380】
Fc領域とFcγ受容体およびC1qとの相互作用を最小化するための代替アプローチは、抗体のグリコシル化部位を除去することによる。位置N297を例えばQ、A、またはEに変異させることにより、IgG-Fcγ受容体相互作用にとって不可欠なグリコシル化部位を除去する。それゆえ、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中で、N297に対応する位置のアミノ酸は、G、Q、A、またはEであってよい(Leabman et al., 2013, MAbs; 5(6):896-903)。Fc領域とFcγ受容体との相互作用を最小化するための別の代替アプローチは、次の変異:P238A、A327Q、P329A、またはE233P/L234V/L235A/G236delによって得ることができる(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276):6591-604)。
【0381】
あるいは、ヒトのIgG2サブクラスおよびIgG4サブクラスは、Fcγ受容体との相互作用が報告されてはいるものの、C1qおよびFcγ受容体との相互作用がもともと弱いとみなされている(Parren et al., 1992, J. Clin Invest. 90: 1537-1546; Bruhns et al., 2009, Blood 113: 3716-3725)。これらの残存相互作用を抑制する変異を両方のアイソタイプにおいて生じさせて、FcR結合に関連する不必要な副次的効果を減少させることができる。IgG2の場合、これらにはV234AおよびG237Aが含まれ、IgG4の場合、L235Eが含まれる。それゆえ、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、例えば、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG2重鎖中のV234およびG237に対応する位置のアミノ酸は、それぞれAおよびAであってよい。1つの態様において、EUナンバリングに従うヒトIgG4重鎖中のL235に対応する位置のアミノ酸は、Eであってよい。
【0382】
IgG2抗体においてFcγ受容体およびC1qとの相互作用をさらに最小化するための他のアプローチには、WO2011066501およびLightle, S., et al., 2010, Protein Science (19):753-62に記載されているものが含まれる。
【0383】
抗体のヒンジ領域もまた、Fcγ受容体および補体との相互作用に関して重要であり得る(Brekke et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138; Dall'Acqua WF, et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138)。したがって、ヒンジ領域中の変異またはヒンジ領域の欠失は、抗体のエフェクター機能に影響することができる。
【0384】
1つの態様において、多重特異性抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含み、その際、第1の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPではない。
【0385】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPではない。
【0386】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、およびDではなく、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のN297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0387】
1つの態様において、重鎖の一方または両方は、Asn連結グリコシル化のためのアクセプター部位を除去する変異を含むか、またはさもなければ、グリコシル化特性を変えるように処理されている。例えば、IgG1 Fc領域中でN297Q変異を用いて、Asn連結グリコシル化部位を除去することができる。したがって、特定の態様において、一方または両方の重鎖は、N297Q変異を含むIgG1野生型配列を含む。
【0388】
本明細書において使用される用語「位置に対応するアミノ酸」は、ヒトIgG1重鎖中のアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアライメントによって見つけることができる。別段の記載が無い限り、または文脈と矛盾しない限り、定常領域配列のアミノ酸は、本明細書において、EUの番号付与指針に基づいて番号をつけられている(Kabat, E.A. et al., 1991, Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662, 680, 689に記載されている)。したがって、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」1つの配列中のアミノ酸またはセグメントとは、ALIGN、ClustalW、または類似物などの標準的な配列アライメントプログラムを典型的には既定の設定で用いた場合に他のアミノ酸またはセグメントとアラインし、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するものである。配列または配列中のセグメントをアラインし、それによって本発明によるアミノ酸位置に対する配列中の対応位置を決定する方法は、周知であるとみなされている。
【0389】
本発明において、アミノ酸位置は、前述したように定義され得る。
【0390】
重鎖中のアミノ酸に言及する場合の、用語「アミノ酸は~ではない」または類似の言い回しは、そのアミノ酸が、言及された具体的アミノ酸以外の他の任意のアミノ酸であることを意味すると理解されるべきである。例えば、ヒトIgG1重鎖中のL234に対応する位置のアミノ酸がLではないとは、そのアミノ酸が、L以外の他の天然アミノ酸または非天然アミノ酸のいずれかであってよいことを意味する。
【0391】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、Dではない。
【0392】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のD265に対応する位置のアミノ酸は、Dではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0393】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0394】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用される用語「疎水性の」は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を指す。
【0395】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される。
【0396】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用される用語「極性の」は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0397】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸、または酸性アミノ酸である。
【0398】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用される用語「脂肪族非荷電の」は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。
【0399】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される。
【0400】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用される用語「芳香族の」は、F、T、およびWからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。
【0401】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0402】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用される用語「酸性の」は、DおよびEからなる群より選ばれる任意のアミノ酸残基を指す。
【0403】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群より選択される。
【0404】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群より選択される。
【0405】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0406】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0407】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、Dではない。
【0408】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、Dではない。
【0409】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のD265に対応する位置のアミノ酸は、Dではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0410】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のD265に対応する位置のアミノ酸は、Dではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0411】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0412】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0413】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される。
【0414】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒト重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される。
【0415】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒト重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0416】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸、または酸性アミノ酸である。
【0417】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される。
【0418】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0419】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群より選択される。
【0420】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0421】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸、または酸性アミノ酸である。
【0422】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される。
【0423】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0424】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群より選択される。
【0425】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0426】
さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297に対応する位置のアミノ酸は、Nではない。
【0427】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のN297に対応する位置のアミノ酸は、Nではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置P331に対応する位置のアミノ酸は、Pである。
【0428】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297に対応する位置のアミノ酸は、Nではない。
【0429】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のN297に対応する位置のアミノ酸は、Nではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置P331に対応する位置のアミノ酸は、Pである。
【0430】
さらなる態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれLおよびLではない。
【0431】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれLおよびLではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0432】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応するアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、Y、Vからなる群より選択される。
【0433】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0434】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0435】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択される。
【0436】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0437】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれLおよびLではない。
【0438】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれLおよびLではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0439】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0440】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0441】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択される。
【0442】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0443】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸、または酸性アミノ酸である。
【0444】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、およびVからなる群よりそれぞれ選択される。
【0445】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、F、T、およびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0446】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群よりそれぞれ選択される。
【0447】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、D、E、F、G、I、T、V、およびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0448】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEまたはAおよびAである。
【0449】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEまたはAおよびAであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0450】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEまたはAおよびAである。
【0451】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEまたはAおよびAであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0452】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0453】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0454】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、少なくとも、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれAおよびAである。
【0455】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、少なくとも、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれAおよびAである。
【0456】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれL、L、およびDではない。
【0457】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれL、L、およびDではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0458】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応するアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、Y、V、およびWからなる群より選択され、かつ位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、Y、V、およびWからなる群より選択される。
【0459】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0460】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択され、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0461】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択され、EUナンバリングに従うヒト重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0462】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択され、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0463】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0464】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択され、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0465】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択され、EUナンバリングに従うヒト重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0466】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群よりそれぞれ選択され、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0467】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸、または酸性アミノ酸である。
【0468】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択され、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、およびVからなる群よりそれぞれ選択される。
【0469】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、F、T、およびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0470】
したがって、1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群よりそれぞれ選択される。
【0471】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択され、L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、D、E、F、G、I、T、V、およびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0472】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれL、L、およびDではない。
【0473】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれL、L、およびDではなく、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0474】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸、または酸性アミノ酸である。
【0475】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択され、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、G、I、およびVからなる群よりそれぞれ選択される。
【0476】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、DおよびEからなる群よりそれぞれ選択される。
【0477】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置のアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択され、かつL234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、A、D、E、F、G、I、T、V、およびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0478】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAまたはA、A、およびAである。
【0479】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAまたはA、A、およびAであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0480】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAまたはA、A、およびAである。
【0481】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAまたはA、A、およびAであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれNおよびPである。
【0482】
特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0483】
特に好ましい態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0484】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれA、A、およびAである。
【0485】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれA、A、およびAである。
【0486】
別の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、A、Q、およびSである。
【0487】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、A、Q、およびSである。
【0488】
特定の態様において、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み;かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 64、65、および66に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン009)、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つ、例えば第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0489】
別の態様において、第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 1、2、および3に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 4、YTS、およびSEQ ID NO: 5に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み;かつ第2の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 36、37、および38に示す配列を有している重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびにそれぞれSEQ ID NO: 39、SAS、および40に示す配列を有している軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み(CD137クローン005)、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つ、例えば第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0490】
非活性化Fc領域は、抗体が単球のような血液細胞上に存在するFc受容体とまたはC1qと相互作用して古典的補体経路を活性化するのを妨げる。Fc領域中に様々な組合せのアミノ酸置換を含む抗体変異体において、Fc活性の低下を調査した。変異L234F、L235E、およびD265Aを含む、3つのアミノ酸置換を、本発明の親抗体に導入した。これら3つのアミノ酸位置における置換を、K409R IgG1骨格および/またはF405L IgG1骨格に導入した。結果として生じる非活性化抗体変異体を、それぞれ接尾辞「FEAR」または「FEAL」を用いて名付ける。前記親抗体を用いて、実施例で説明するような本発明の二重特異性抗体を作製した。
【0491】
1つの局面において、本発明による多重特異性抗体は、発現レベルおよび/または作製収率を高めるために軽鎖および/または重鎖を改変されてよい。1つの態様において、本発明による抗体は、軽鎖を改変されてよい。このような改変は当技術分野において公知であり、例えばZheng, L., Goddard, J.-P., Baumann, U., & Reymond, J.-L. (2004). Expression improvement and mechanistic study of the retro-Diels-Alderase catalytic antibody 10F11 by site-directed mutagenesis. Journal of Molecular Biology, 341(3), 807-14に記載されている方法に従って実施されてよい。
【0492】
本発明のさらなる態様において、本発明の多重特異性抗体の一部分を形成する抗体の一方または両方は、多重特異性抗体の血清半減期を巧みに操るために、新生児型Fc受容体 (FcRn)への結合を減少または増加させるように操作されている。血清半減期を延長または短縮するための技術は当技術分野において周知である。例えば、Dall'Acqua et al. 2006, J. Biol. Chem., 281:23514-24; Hinton et al. 2006,J. Immunol., 176:346-56;およびZalevsky et al. 2010 Nat. Biotechnol., 28:157-9を参照されたい。
【0493】
1つの局面において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される多重特異性抗体は、第1の定常重鎖(HC)および第1の定常軽鎖(LC)を含み、その際、第1の重鎖および第2の重鎖の両方についての、SEQ ID NO: 109のヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAである。
【0494】
1つの態様において、本明細書において開示される態様のいずれかで定義される多重特異性抗体は、第1および第2の定常重鎖(HC)ならびに第1および第2の定常軽鎖(LC)を含み、その際、第1の重鎖および第2の重鎖の両方についての、SEQ ID NO: 109のヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置は、それぞれFおよびEである。
【0495】
1つの態様において、多重特異性抗体は、第1および第2の重鎖を含み、その際、第1の重鎖および第2の重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置は、それぞれFおよびEであり、かつ(i)第1の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか;または(ii)第1の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0496】
1つの態様において、多重特異性抗体は、第1および第2の重鎖を含み、その際、第1の重鎖および第2の重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ第1の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、第2の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRである。したがって、さらなる態様において、第1の重鎖は、SEQ ID NO: 113に示す定常重鎖配列を含み、第2の重鎖は、SEQ ID NO: 112に示す定常重鎖配列を含む。
【0497】
1つの態様において、多重特異性抗体は、第1および第2の重鎖を含み、その際、第1の重鎖および第2の重鎖の両方についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、かつ第1の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、第2の重鎖についての、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。したがって、さらなる態様において、第1の重鎖は、SEQ ID NO: 112に示す定常重鎖配列を含み、第2の重鎖は、SEQ ID NO: 113に示す定常重鎖配列を含む。
【0498】
核酸
本発明はまた、本明細書において開示される任意の局面または態様に記載の1つまたは複数のアミノ酸配列をコ―ドする核酸にも関する。
【0499】
本発明はまた、本明細書において開示される任意の局面または態様で定義される多重特異性抗体をコ―ドする核酸にも関する。
【0500】
本発明はまた、本発明の核酸を含む発現ベクターにも関する。
【0501】
本発明はまた、本発明による核酸または発現ベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0502】
1つの態様において、宿主細胞は、組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞である。
【0503】
さらなる態様において、発現ベクターは、抗体、例えばヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖と重鎖の両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0504】
本発明における発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクターを含む任意の適切なベクター(発現制御エレメントの適切な一式を含む核酸配列)であってよい。このようなベクターの例には、SV40、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミドの派生物、プラスミドおよびファージDNAの組合せから得られるベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが含まれる。1つの態様において、核酸は、例えば、直線状発現エレメント(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355 59 (1997)に記載されている)、ぎっしり詰められた核酸ベクター(例えば、US 6,077,835および/もしくはWO 00/70087に記載されている)、pBR322、pUC19/18、もしくはpUC118/119などのプラスミドベクター、最小限の大きさの核酸ベクター「ミッジ」(例えば、Schakowski et al., Mol Ther 3, 793 800 (2001)に記載されている)を含む、裸DNAベクターまたは裸RNAベクター中に、またはCaP04で沈殿させた構築物のような、沈殿させた核酸ベクター構築物(例えば、WO200046147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551 55 (1986)、Wigler et al., Cell 14, 725 (1978)、およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603 (1981)に記載されている)として、含まれる。このような核酸ベクターおよびその用法は、当技術分野において周知である(例えば、US5,589,466およびUS5,973,972を参照されたい)。
【0505】
1つの態様において、ベクターは、細菌細胞におけるCD40抗体および/またはCD137抗体の発現に適している。このようなベクターの例には、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503 5509 (1989))、およびpETベクター(Novagen, Madison WI)などの発現ベクターが含まれる。
【0506】
発現ベクターは、同様にまたは別法として、酵母系での発現に適したベクターであってもよい。酵母系での発現に適した任意のベクターが、使用され得る。適切なベクターには、例えば、α因子、アルコール酸化酵素、およびPGHなどの構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York (1987)、およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516 544 (1987)に総説がある)。
【0507】
発現ベクターは、同様にまたは別法として、哺乳動物細胞での発現に適したベクター、例えば、Bebbington (1992) Biotechnology (NY) 10:169-175に記載されているベクターのような、選択マーカーとしてグルタミン合成酵素を含むベクターであってもよい。
【0508】
核酸および/またはベクターはまた、新生ポリペプチド鎖のようなポリペプチドを細胞周辺腔にまたは細胞培地中に導くことができる分泌/局在化配列をコードする核酸配列を含んでもよい。このような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチドが含まれる。
【0509】
発現ベクターは、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含むか、または伴っていてよい。このようなエレメントの例には、強力な発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSVプロモーター、SV40プロモーター、SL3 3プロモーター、MMTVプロモーター、およびHIV LTRプロモーター)、効果的なポリ(A)終止配列、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド産物のための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または好都合なクローニング部位(例えばポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、CMV IEのような構成的プロモーターとは対照的な誘導性プロモーターを含んでもよい。
【0510】
1つの態様において、CD40抗体および/またはCD137抗体をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して宿主細胞または宿主動物中に配置されるか、かつ/または送達されてよい。
【0511】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書において上記に指定した第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含む宿主細胞に関する。
【0512】
したがって、本発明はまた、トランスフェクトーマのような、本発明の多重特異性抗体を産生する組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞にも関する。
【0513】
第1のCD40特異的抗体は、本明細書において定義される抗体を産生するトランスフェクトーマのような組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞において発現されてもよい。第2のCD137特異的抗体も、同様に、抗体を産生するトランスフェクトーマのような組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞において発現されてよい。このような抗体は、本発明による多重特異性抗体を調製するのに使用され得る。本発明による多重特異性抗体はまた、トランスフェクトーマのような組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞において発現されてもよい。
【0514】
宿主細胞の例には、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、および哺乳動物細胞、例えばCHO細胞、CHO-S細胞、HEK細胞、HEK293細胞、HEK-293F細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞、もしくはNS0細胞、またはリンパ球細胞が含まれる。例えば、1つの態様において、宿主細胞は、細胞ゲノム中に安定に組み込まれた第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含んでよい。別の態様において、本発明は、上記に指定した第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含むプラスミド、コスミド、ファージミド、または直線状発現エレメントなどの非組込み型核酸を含む細胞を提供する。
【0515】
さらに別の局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の1つまたは2つのセットをコードする核酸を含み、本発明の多重特異性抗体を産生する、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスジェニック植物に関する。
【0516】
第1のCD40特異的抗体および/または第2のCD137特異的抗体はまた、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の1つまたは2つのセットをコードする核酸を含む、ハイブリドーマ、トランスジェニック非ヒト動物、またはトランスジェニック植物によって産生されてよく、この動物または植物は、多重特異性抗体または本発明の多重特異性抗体において使用するための抗体を産生する。
【0517】
1つの局面において、本発明は、表 1に記述する1つまたは複数のアミノ酸配列をコ―ドする核酸に関する。
【0518】
1つの局面において、本発明は、下記を含む発現ベクターに関する:
(i)本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の第1の結合アームの重鎖配列をコ―ドする核酸配列;
(ii)本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の第1の結合アームの軽鎖配列をコ―ドする核酸配列;
(iii)本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の第2の結合アームの重鎖配列をコ―ドする核酸配列;
(iv)本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の第2の結合アームの軽鎖配列をコ―ドする核酸配列;
(v)(i)で述べた核酸および(ii)で述べた核酸;
(vi)(iii)で述べた核酸および(iv)で述べた核酸
(vii)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)で述べた核酸。
【0519】
特定の態様において、核酸は、表1に列挙したCD40抗体のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域をコードしてよく、かつSEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖をコードしてよい。
【0520】
別の態様において、核酸は、表1に列挙したCD137抗体のうちの1つ、すなわちクローン001~012のいずれか1つのVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域をコードしてよく、かつSEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖をコードしてよい。
【0521】
別々の具体的な態様において、本発明による核酸、核酸構築物、第1の核酸構築物および第2の核酸構築物の組合せ、発現ベクター、または第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターの組合せは、下記をコードしてよい:
(a)(i)表1のCD40抗体のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖を含む、HC;
(b)(i)表1に列挙したCD137抗体のうちの1つ、すなわちクローン001~012のいずれか1つのVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖を含む、HC;
(c)(i)表1のCD40抗体のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 114の配列を有する軽鎖定常領域を含む、LC;
(d)(i)表1に列挙したCD137抗体のうちの1つ、すなわちクローン001~012のいずれかのVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 114の配列を有する軽鎖定常領域を含む、LC;
(e)(a)と(b)の両方;
(f)(a)と(c)の両方;
(g)(b)と(d)の両方;
(h)(c)と(d)の両方;または
(i)(a)、(b)、(c)、および(d)のすべて。
【0522】
他の別々の具体的な態様において、本発明による核酸、核酸構築物、第1の核酸構築物および第2の核酸構築物の組合せ、発現ベクター、または第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターの組合せは、下記をコードしてよい:
(a)(i)SEQ ID NO: 1、2、および3のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖を含む、HC;
(b)(i)SEQ ID NO: 64、65、および66のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖を含む、HC;
(c)(i)SEQ ID NO: 4、YTS およびSEQ ID NO: 5のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 114の配列を有する軽鎖定常領域を含む、LC;
(d)(i)SEQ ID NO: 67、GAS、およびSEQ ID NO: 68のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL、ならびに非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、ならびに(ii)SEQ ID NO: 114の配列を有する軽鎖定常領域を含む、LC;
(e)(a)と(b)の両方;
(f)(a)と(c)の両方;
(g)(b)と(d)の両方;
(h)(c)と(d)の両方;または
(i)(a)、(b)、(c)、および(d)のすべて。
【0523】
他の別々の具体的な態様において、本発明による核酸、核酸構築物、第1の核酸構築物および第2の核酸構築物の組合せ、発現ベクター、または第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターの組合せは、下記をコードしてよい
(a)SEQ ID NO: 117を含むVHならびにSEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖を含む、HC;
(b)SEQ ID NO: 123を含むVHならびにSEQ ID NO: 110、111、112、113、および116からなる群より選択される配列を有するヒトIgG1重鎖を含む、HC;
(c)SEQ ID NO: 121を含むVLおよびSEQ ID NO: 114の配列を有する軽鎖定常領域を含む、LC;
(d)SEQ ID NO: 127を含むVLおよびSEQ ID NO: 114の配列を有する軽鎖定常領域を含む、LC;
(e)(a)と(b)の両方;
(f)(a)と(c)の両方;
(g)(b)と(d)の両方;
(h)(c)と(d)の両方;または
(i)(a)、(b)、(c)、および(d)のすべて。
【0524】
他の別々の具体的な態様において、本発明による核酸、核酸構築物、第1の核酸構築物および第2の核酸構築物の組合せ、発現ベクター、または第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターの組合せは、下記をコードしてよい:
(a)SEQ ID NO: 118を含むHC(CD40-001-HC6、IgG1);
(b)SEQ ID NO: 119を含むHC(CD40-001-HC6-FEAL);
(c)SEQ ID NO: 120を含むHC(CD40-001-HC6-FEAR);
(d)SEQ ID NO: 124を含むHC(CD137-009-HC7);
(e)SEQ ID NO: 125を含むHC(CD137-009-HC7-FEAR);
(f)SEQ ID NO: 126を含むHC(CD137-009-HC7-FEAL);
(g)SEQ ID NO: 122を含むLC(CD40-001-LC1);
(h)SEQ ID NO: 128を含むLC(CD137-009-LC2);
(i)(a)と(g)の両方;
(j)(b)と(g)の両方;
(k)(c)と(g)の両方;
(l)(d)と(h)の両方;
(m)(e)と(h)の両方;
(n)(f)と(h)の両方;
(o)(b)と(e)の両方;
(p)(c)と(f)の両方;
(q)(g)と(h)の両方;
(r)(b)、(e)、(g)、および(h)のすべて;
(s)(c)、(f)、(g)、および(h)のすべて。
【0525】
1つの局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の二重特異性抗体を作製するための方法に関し、この方法は、下記の段階を含む:
(a)本明細書において開示される第1の抗体を発現する本明細書において開示される発現ベクターを含む、本明細書において開示される宿主細胞を培養し、かつ該抗体を培地から精製する段階;
(b)本明細書において開示される第2の抗体を発現する本明細書において開示される発現ベクターを含む、本明細書において開示される宿主細胞を培養し、かつ該抗体を培地から精製する段階;
(c)ヒンジ領域中のシステインにジスルフィド結合異性化を起こさせるのに十分な還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と共にインキュベーションする段階;ならびに
(d)二重特異性抗体を取得する段階。
【0526】
1つの局面において、本発明は、上記に定義した発現ベクターを含む宿主細胞に関する。1つの態様において、宿主細胞は、組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞である。
【0527】
組成物
本発明はまた、本発明による多重特異性抗体、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、または本発明による宿主細胞を含む組成物にも関する。
【0528】
さらなる態様において、本発明による組成物は、薬学的組成物である。
【0529】
さらに別の態様において、本発明による薬学的組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0530】
さらなる局面において、本発明は、
- 本明細書において開示される態様のいずれかで定義される多重特異性CD40×CD137抗体、および
- 薬学的に許容される担体
を含む薬学的組成物に関する。
【0531】
本発明の薬学的組成物は、本発明の1種の多重特異性抗体または本発明の様々な多重特異性抗体の組合せを含んでよい。
【0532】
薬学的組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed. , Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されているもののような従来の技術に従って製剤化されてよい。本発明の薬学的組成物は、例えば、希釈剤、賦形剤、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えば、Tween-20またはTween-80などの非イオン性界面活性剤)、安定化剤(例えば、糖もしくは無タンパク質アミノ酸)、保存剤、組織固定液、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでよい。
【0533】
薬学的に許容される担体には、本発明の多重特異性抗体と生理学的に適合性である任意およびすべての適切な溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、抗酸化剤、および吸収遅延剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物中で使用され得る適切な水性担体および非水性担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適切な混合物、植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴム、およびオレイン酸エチルのような注射剤用の有機エステル、ならびに/または様々な緩衝剤が含まれる。薬学的に許容される担体には、無菌の水溶液または水性分散液、および無菌の注射用溶液または注射用分散液を用時調製するための無菌粉末が含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散液の場合は必要とされる粒子径の維持によって、および表面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0534】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、例えば、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、およびα-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、およびリン酸などの金属キレート剤も含んでよい。
【0535】
本発明の薬学的組成物はまた、等張化剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムを組成物中に含んでもよい。
【0536】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を向上させ得る、選択した投与経路に適切な1種または複数種の補助剤、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存剤、または緩衝剤も含んでよい。本発明の薬学的組成物は、埋め込み剤、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、急速な放出から多重特異性抗体を保護すると考えられる担体と共に調製されてよい。このような担体には、単独またはワックスを伴う、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸、または当技術分野において周知の他の物質が含まれ得る。一般に、このような製剤を調製するための方法は、当業者に公知である。
【0537】
無菌注射液剤は、必要に応じて、適切な溶媒中の必要量の活性化合物を、例えば上記に列挙した成分の1種または組合せと混合し、続いて滅菌精密ろ過することによって調製され得る。一般に、分散剤は、基本となる分散媒体、および例えば上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を混合することによって調製される。無菌注射液剤を調製するための無菌粉末の場合、調製方法の例は、有効成分および任意の付加的な所望の成分の粉末を、予め滅菌ろ過したその溶液から生じさせる、真空乾燥およびフリーズドライ法(凍結乾燥)である。
【0538】
薬学的組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性とならずに、個々の患者、組成物、および投与様式にとって望ましい治療応答を達成するのに有効である量の有効成分を得られるように変更することができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の個々の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される個々の化合物の排出速度、治療の継続期間、使用される個々の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康状態、および以前の病歴、ならびに医薬分野で周知である同様の因子を含む様々な薬物動態学的因子に依存すると考えられる。
【0539】
医薬組成物は、任意の適切な経路および様式によって投与されてよい。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、非経口的に投与される。本明細書において使用される「非経口的に投与される」とは、通常は注射による、経腸投与および局所投与以外の投与様式を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入が含まれる。
【0540】
1つの態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下の注射または注入によって投与される。
【0541】
使用
本発明はまた、本発明による多重特異性抗体、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または医薬として使用するための本発明による薬学的組成物にも関する。
【0542】
本発明はまた、本発明による多重特異性抗体、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、またはがんもしくは感染症などの疾患の治療において使用するための本発明による薬学的組成物にも関する。
【0543】
本発明によれば、用語「疾患」とは、任意の病理学的状態、特に、がん、感染症、炎症性疾患、代謝疾患、自己免疫障害、変性疾患、アポトーシスに関連した疾患、および移植拒絶を指す。
【0544】
本明細書において使用される場合、用語「がん」は、異常に調節された細胞の成長、増殖、分化、接着、および/または遊走を特徴とする疾患を含む。「がん細胞」とは、急速かつ制御不能な細胞増殖によって成長し、新しい成長を開始させた刺激がなくなった後に成長し続ける、異常な細胞を意味する。
【0545】
本発明による用語「がん」は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、副腎がん、甲状腺がん、血液がん、皮膚がん、脳のがん、子宮頸がん、腸のがん、肝臓がん、結腸がん、胃がん、腸がん、頭頸部がん、消化管がん、リンパ節がん、食道がん、結腸直腸がん、膵臓がん、耳鼻咽喉(ENT)がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がん、および肺がん、ならびにそれらの転移を含む。それらの例は、肺がん腫、乳房がん腫、前立腺がん腫、結腸がん腫、腎細胞がん腫、子宮頸がん腫、または前述のがん型もしくは腫瘍の転移である。
【0546】
本発明による用語「がん」はまた、がん転移も含む。「転移」とは、がん細胞が最初の部位から別の身体部分へ広がることを意味する。転移の成立は、非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍から悪性細胞が脱離すること、細胞外基質に侵入すること、体腔および血管に移行するために内皮基底膜を通過すること、次いで、血液によって輸送された後に、標的器官に浸潤すること、に依存する。最終的に、標的部位での新しい腫瘍、すなわち続発性腫瘍または転移性腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、しばしば、原発腫瘍の除去後にさえ起こり、これは、腫瘍の細胞または構成要素が残存し、転移能を持つようになる場合があるためである。1つの態様において、本発明による用語「転移」は、原発腫瘍および局所リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0547】
用語「感染症」は、個体から個体へ、または生物から生物へと伝染することができ、かつ微生物病原体によって引き起こされる任意の疾患(例えば、一般的な風邪)を指す。
【0548】
感染症の例には、AIDS(HIV)、A型肝炎、B型肝炎、もしくはC型肝炎、疱疹、帯状疱疹(水疱)、風疹(風疹ウイルス)、黄熱病、デング熱など、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、出血性感染症(マールブルグウイルスもしくはエボラウイルス)、および重症急性呼吸器症候群(SARS)などのウイルス感染症;レジオネラ病(レジオネラ(Legionella))、性感染症(例えば、クラミジア感染症もしくは淋病)、胃潰瘍(ヘリコバクター(Helicobacter))、コレラ(ビブリオ(Vibrio))、結核、ジフテリア、大腸菌、ブドウ球菌(Staphylococci)、サルモネラ菌(Salmonella)、もしくは連鎖球菌(Streptococci)(破傷風)による感染症などの細菌感染症;マラリア、睡眠病、リーシュマニア症、トキソプラズマ症などの原虫病原体による感染症、すなわち、プラスモディウム(Plasmodium)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、リーシュマニア(Leishmania)、およびトキソプラズマ(Toxoplasma)による感染症;または、例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、もしくはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされる真菌感染症が含まれる。
【0549】
用語「炎症性疾患」は、組織、特に結合組織の高レベルの炎症またはこれらの組織の変性を特徴とするか、または伴う、任意の疾患を指す。慢性炎症性疾患は、持続的な炎症を特徴とする医学的状態である。(慢性)炎症性疾患の例には、セリアック病、脈管炎、狼瘡、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、過敏性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、結腸炎、慢性活動性肝炎、皮膚炎、および乾癬が含まれる。
【0550】
用語「代謝疾患」は、正常な代謝を混乱させる任意の疾患または障害を指す。例には、シスチン症、糖尿病、異脂肪血症、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、高脂血症、低脂血症、ガラクトース血症、ゴーシェ病、肥満、およびフェニルケトン尿症が含まれる。
【0551】
用語「自己免疫障害」は、身体が自身の組織の何らかの構成成分に対する免疫原性(すなわち免疫系)応答を示す、任意の疾患/障害を指す。言い換えると、免疫系が、体内の何らかの組織または系を自己として認識する能力を失い、まるでそれが異物であるかのようにそれを標的とし攻撃する。自己免疫疾患は、主に1つの器官が影響を受けるもの(例えば、溶血性貧血および抗免疫甲状腺炎)および自己免疫疾患プロセスが多数の組織を介して拡散される疾患(例えば全身性エリテマトーデス)に分類することができる。例えば、多発性硬化症は、脳および脊髄の神経線維を取り囲む鞘を攻撃するT細胞によって引き起こされると考えられている。この結果、協調の低下、衰弱、および霧視が起こる。自己免疫疾患は当技術分野において公知であり、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、狼瘡、多発性硬化症、リウマチ関節炎、溶血性貧血、抗免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、結腸炎、糖尿病、強皮症、および乾癬などが含まれる。
【0552】
用語「変性疾患」は、罹患した組織または器官の機能または構造が時間とともに次第に劣化する任意の疾患を指す。例には、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、黄斑変性症、多発性硬化症、筋ジストロフィー、ニーマン・ピック病、骨粗しょう症、および関節リウマチが含まれる。
【0553】
用語「アポトーシスに関連した疾患」は、アポトーシスの変化が関与している任意の疾患を指す。例には、がん;アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脳卒中などの神経障害;虚血再灌流および慢性心不全などの心疾患;感染症、ならびに自己免疫疾患が含まれる。
【0554】
用語「移植拒絶」は、移植された組織または器官がレシピエントの免疫系によって拒絶されることを指し、これは最終的に、移植された組織または器官を破壊する場合がある。
【0555】
1つの態様において、本発明に従って使用するための多重特異性抗体、核酸、発現ベクター、宿主細胞、または組成物の使用は、がんを治療するためであってよい。
【0556】
1つの態様において、本発明に従って使用するための多重特異性抗体、核酸、発現ベクター、宿主細胞、または組成物の使用は、感染症を治療するためであってよい。
【0557】
本発明はまた、本発明による多重特異性抗体、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明の請求項に記載の宿主細胞、本発明による組成物、本発明による薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、がんまたは感染症などの疾患を治療する方法にも関する。
【0558】
本発明はまた、本発明による多重特異性抗体、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または本発明による薬学的組成物の、医薬を製造するための使用にも関する。
【0559】
1つの態様において、本発明による方法または使用は、化学療法剤のような1種または複数種の別の治療物質と組み合わせた使用のためのものである。
【0560】
1つの局面において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の二重特異性抗体のような多重特異性抗体、本明細書において開示される組成物、または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0561】
別の局面において、本発明は、がんまたは感染症などの疾患の治療のための医薬の製造における、本発明による多重特異性抗体の使用に関する。
【0562】
1つの局面において、本発明は、がんまたは感染症などの疾患の治療において使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、本明細書において開示される組成物、または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0563】
1つの局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、本明細書において開示される組成物、または本明細書において開示される薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、疾患を治療する方法に関する。
【0564】
本発明の多重特異性抗体は、いくつかの目的のために使用され得る。特に、本発明の多重特異性抗体は、転移がんおよび難治性がんを含む様々な形態のがんの治療のために使用され得る。
【0565】
1つの態様において、本発明による使用は、化学療法剤のような1種または複数種の別の治療物質と組み合わせられる。
【0566】
特に、本発明による多重特異性抗体は、T細胞増殖の増加が関連している治療状況において有用である場合がある。このような治療状況の例には、がんまたは腫瘍、例えば血液腫瘍および固形腫瘍、例えば、黒色腫、肺がん、乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、および前立腺がん、例えば黒色腫またはNSCLCが含まれるが、それらに限定されるわけではない。それらの例は、肺がん腫、乳房がん腫、前立腺がん腫、結腸がん腫、腎細胞がん腫、子宮頸がん腫、またはこのようながん型もしくは腫瘍の転移である。
【0567】
本発明はまた、
(a)がんに罹患している対象を選択する段階、および
(b)本発明の多重特異性抗体または本発明の薬学的組成物を対象に投与する段階
を含む、がんを治療するための方法に関する。
【0568】
本発明はまた、本明細書において挙げられる具体的ながん適応症のうちの1つのようながんを治療するための医薬を調製するための、ヒトCD40およびヒトCD137に結合する多重特異性抗体の使用にも関する。
【0569】
本発明はさらに、前述のがん適応症のうちの1つのようながんの治療において使用するための多重特異性抗体にも関する。
【0570】
1つの態様において、本発明による方法または使用は、化学療法剤のような1種または複数種の別の治療物質と組み合わせた使用のためのものである。
【0571】
前述の使用のために、本発明の二重特異性抗体のような任意の多重特異性抗体が使用され得る。
【0572】
1つの局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の多重特異性抗体を含む診断用組成物に関する。
【0573】
1つの態様において、診断用組成物は、多重特異性抗体を用いる治療の恩恵を受けると考えられる患者を選別および選択するのに使用されるコンパニオン診断薬である。
【0574】
本発明の治療方法のさらなる態様において、治療の有効性は、治療中に、例えば既定の時点に、腫瘍量を測定することによってモニターされている。
【0575】
上記の治療方法および使用における投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してよく、いくつかに分割した用量を時間をかけて投与してよく、または治療状況の緊急性によって必要とされるように用量を比例的に減少もしくは増加させてよい。投与を容易にし、かつ投与量を均一にするために、非経口組成物を単位剤形に製剤化してよい。
【0576】
多重特異性抗体についての効率的な投与量および投与レジメンは、治療しようとする疾患または病態に応じて変わり、当業者によって決定され得る。本発明の多重特異性抗体の治療的有効量の例示的な非限定的範囲は、約0.001~30mg/kgである。
【0577】
当技術分野において通常の技能を有する医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医は、薬学的組成物中で使用される多重特異性抗体の用量を、所望の治療効果を実現するために必要とされるよりも低いレベルで開始し、所望の効果が実現されるまで投与量を徐々に増加させてよい。一般に、本発明の多重特異性抗体の適切な1日量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量である化合物量であると考えられる。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下など、非経口であってよい。1つの態様において、多重特異性抗体は、mg/m2の単位で計算される1週投与量で、輸注によって投与されてよい。このような投与量は、例えば、次式、すなわち用量(mg/kg)×70:1.8に従って上記に提供されるmg/kg投与量に基づくことができる。このような投与は、例えば1~8回、例えば3~5回、繰り返されてよい。投与は、2~24時間、例えば2~12時間の期間にわたる持続輸注によって行うことができる。1つの態様において、多重特異性抗体は、毒性の副作用を軽減するために、24時間を超えるような長い期間にわたる緩徐な持続輸注によって投与されてよい。
【0578】
1つの態様において、多重特異性抗体は、週に1回与えられる場合、一定用量として算出された1週投与量で、最大8回、例えば4~6回、投与されてよい。このようなレジメンは、例えば6ヶ月後または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回、繰り返されてよい。このような一定投与量は、例えば、体重推定値70kgを用いる、上記に提供されたmg/kg投与量に基づくことができる。投与量は、例えば生物試料を採取し、本発明の多重特異性抗体のCD137抗原抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を用いることにより、投与時の血液中の本発明の多重特異性抗体の量を測定することによって、決定または調整してよい。
【0579】
1つの態様において、多重特異性抗体は、維持療法として、例えば、6ヶ月以上の期間にわたって1週1回、投与されてよい。
【0580】
多重特異性抗体はまた、がんを発症するリスクを減らすため、がん進行時の事象の発生の始まりを遅らせるため、かつ/またはがんが寛解状態にある場合に再発のリスクを減らすために、予防的に投与されてもよい。
【0581】
本発明の多重特異性抗体はまた、併用療法において、すなわち治療しようとする疾患または病態にとって適切な他の治療物質と組み合わせて投与されてもよい。したがって、1つの態様において、多重特異性抗体を含む医薬は、細胞障害剤、化学療法剤、または抗血管新生剤などの1種または複数種の別の治療物質と組み合わせるためのものである。
【0582】
このような併用投与は、同時、別々、または逐次的であってよい。同時投与の場合、これらの作用物質は、適宜、1つの組成物としてまたは別々の組成物として投与されてよい。したがって、本発明はまた、後述する1種または複数種の付加的な治療物質と組み合わせられた本発明の多重特異性抗体の投与を含む、障害を治療するための方法も提供する。
【0583】
1つの態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の多重特異性抗体および任意で少なくとも1種の付加的な治療物質の、それを必要とする対象への投与を含む、障害を治療するための方法を提供する。
【0584】
1つの態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の多重特異性抗体および少なくとも1種の付加的な治療物質の、それを必要とする対象への投与を含む、がんを治療または予防するための方法を提供する。
【0585】
本発明の薬学的組成物はまた、併用療法において、すなわち他の作用物質と組み合わせて、または他の治療レジメンと組み合わせて、投与することもできる。例えば、多重特異性抗体は、放射線療法および/もしくは手術ならびに/または自己もしくは同種の末梢幹細胞もしくは骨髄の移植と組み合わされてよい。
【0586】
バイオマーカー
したがって、1つの局面において、本発明はまた、バイオマーカーとしての多重特異性抗体の使用に関する。
【0587】
別の局面において、本発明は、
(i)本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の多重特異性抗体;および
(ii)キットを使用するための取扱説明書
を含む、血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者から得られた試料において、CD40発現細胞とCD137発現細胞の架橋を検出するためのキットに関する。
【0588】
さらなる局面において、本発明は、
(i)試料と本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の多重特異性抗体とを、該多重特異性抗体とCD40発現細胞およびCD137発現細胞との複合体の形成を可能にする条件下で接触させる段階;ならびに
(ii)複合体が形成されたかどうかを解析する段階
を含む、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の二重特異性抗体を投与した際に、血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者から得られた試料において、CD40発現細胞とCD137発現細胞の架橋が起こるかどうかを検出するための方法に関する。
【0589】
複合体の検出は、実施例4、5、6、10、11、または12で実施されるような当技術分野において公知の方法によって行うことができる。
【0590】
抗イディオタイプ抗体
別の局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つで定義される第1の抗原結合領域および/または第2の抗原結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0591】
特定の態様において、抗イディオタイプ抗体は、多重特異性抗体の第1の抗原結合領域および/または第2の抗原結合領域に結合し、その際、
- 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 117に示すVH配列およびSEQ ID NO: 121に示すVL配列を含み、かつ
- 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 123を含むVH配列およびSEQ ID NO: 127を含むVL配列を含む。
【0592】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、本明細書において開示される態様のいずれか1つで定義される第1の抗原結合領域に結合する。特定の態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 117を含むVH配列およびSEQ ID NO: 121を含むVL配列を含む。
【0593】
別の態様において、抗イディオタイプ抗体は、本明細書において開示される態様のいずれか1つで定義される第2の抗原結合領域に結合する。特定の態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 123を含むVH配列およびSEQ ID NO: 127を含むVL配列を含む。
【0594】
本発明は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例
【0595】
実施例1:抗体の作製
上記の表1で挙げたCD40抗体および各CD137抗体(すなわちクローン1~12)を、表1に記載したVH配列およびVL配列と、ヒトκ軽鎖と、ヒトIgG1重鎖を用いて作製した。CD40抗体は、2種の異なるヒトIgG1重鎖、すなわち、1)次のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265A、およびF405L(FEAL)を含むヒトIgG1重鎖(アミノ酸位置の番号は、EUナンバリングに従う)(SEQ ID NO: 113に対応する);ならびに2)次のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265A、およびK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖(アミノ酸位置の番号は、EUナンバリングに従う)(SEQ ID NO: 112に対応する)を用いて作製した。
【0596】
CD137抗体はすべて、次のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265A、およびK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖(アミノ酸位置の番号は、EUナンバリングに従う)(SEQ ID NO: 112に対応する)を用いて作製した。
【0597】
同様に、表1に挙げたVH配列およびVL配列を含むb12抗体も、ヒトIgG1軽鎖ならびに次のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265A、およびF405L(FEAL)を含むヒトIgG重鎖(アミノ酸位置の番号は、EUナンバリングに従う)(SEQ ID NO: 113に対応する)を用いて、作製した。
【0598】
抗体は、製造業者の取扱い説明書に従って、ExpiFectamine(商標)293(ThermoFisherカタログ番号A14525)を用いて、Expi293F(商標)細胞(ThermoFisherカタログ番号A14527)に適切な重鎖発現ベクターおよび軽鎖発現ベクターを同時トランスフェクトすることにより、無血清条件下で作製した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製し、12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl、pH7.4緩衝液(B.BraunまたはThermo Fisher)にバッファー交換した。バッファー交換後、試料を0.2μmデットエンドフィルターに通して滅菌ろ過した。精製タンパク質をCE-SDSおよびHP-SECによって解析した。280nmでの吸光度に基づいて濃度を測定した。精製抗体を2~8℃で保存した。
【0599】
実施例2:抗CD137抗体の結合に重要なドメインを決定するための、イノシシCD137またはゾウCD137とヒトCD137間のDNAシャッフリング
ヒトCD137への抗CD137抗体の結合に重要なドメインを決定するために、ヒトCD137とイノシシCD137(イノシシ(sus scrofa);XP_005665023)間またはヒトCD137とアフリカゾウCD137(アフリカゾウ(loxodonta Africana);XP_003413533)間でDNAシャッフリングを実施した。ヒトドメインをイノシシ(シャッフル構築物1~4、6)ドメインまたはゾウ(シャッフル構築物5)ドメインで置換することによって、ヒトCD137をコードするDNAからシャッフル構築物を作製した。ヒトCD137中のあるドメインが抗CD137抗体の結合にとって重要である場合、そのドメインがイノシシドメインまたはアフリカゾウドメインによって置換されると結合が失われると考えられる。必要条件は、抗体がゾウCD137全体配列にもイノシシCD137全体配列にも結合しないことである。ヒトCD137とイノシシCD137の相同性およびヒトCD137とアフリカゾウCD137の相同性は、それぞれ70.2%および74.5%である。図1は、ヒトCD137、イノシシCD137、およびアフリカゾウCD137の配列アラインメントを示す。図2は、記載したようにイノシシCD137ドメインまたはアフリカゾウCD137ドメインを含む、ヒトCD137の構築物を示す。
【0600】
3×106個のHEK293T-17細胞を、T75培養フラスコ(Greiner Bio-One、カタログ番号658175)に入れた10%FCS(Biochrom、カタログ番号S 0115)含有RPMI 1640 GlutaMAX培地20mL中に播種した。一晩インキュベーションした後、製造業者の取扱い説明書に従って、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬、Mirus Bio(VWR International、カタログ番号731-0029)を用いて、構成的に活性なヒト伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターの下流でシャッフル構築物またはイノシシCD137、アフリカゾウCD137、もしくはヒトCD137をコードする発現ベクターを用いて、細胞に一過性に形質導入した。翌日、1.5mLアクターゼ(Sigma Aldrich、カタログ番号A6964)(37℃で5分間インキュベーション)を用いて細胞を回収し、本質的には実施例4で説明するようにしてフローサイトメトリーを実施して、シャッフル構築物ならびにヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137の表面発現を測定し、かつ様々なシャッフル構築物に対する抗体クローンの結合を測定した。構築物の細胞表面発現を測定するために、形質導入された細胞を、FACS緩衝液(5mM EDTA(Sigma Aldrich、カタログ番号03690)および5%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、Biochrom、カタログ番号S0115)を添加したD-PBS)に溶かした1μg/mLヤギポリクローナル抗ヒトCD137(R&D Systems、カタログ番号AF838)と共にインキュベーションし(4℃、20分)、続いてAPC標識抗ヤギIgG(H+L)(R&D Systems、カタログ番号F0108)と共にインキュベーションした(4℃、20分)。形質導入された細胞を1μg/mLの抗体クローン、続いてAPC標識AffiniPure F(ab')2断片(最終希釈倍率1:50、Jackson、カタログ番号109-136-127)と共にインキュベーションすることによって、シャッフル構築物を発現する細胞への様々なCD137抗体クローンの結合を測定した。
【0601】
すべてのCD137シャッフル構築物、ならびにヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137が、同様の発現レベルで細胞表面に発現された(図3)。
【0602】
表2および図4は、クローン1を除いて、すべてのクローンが、少なくともアフリカゾウCD137またはイノシシCD137への結合の喪失を示したことを示している。クローン2、3、4、5、6、7、8、9、10、および11は、シャッフル構築物の少なくとも1つへの結合の喪失を示した。クローン1は、ヒトCD137への結合と比べて、アフリカゾウおよびシャッフル構築物5への結合の減少を示した。クローン12は、シャッフル構築物のどれに対しても結合の喪失は示さなかったが、シャッフル構築物5への結合の減少を示した。クローンのいずれも、シャッフル構築物1および2に対する結合の喪失も結合の減少も示さなかった。
【0603】
(表2)シャッフル構築物へのCD137抗体の結合についての要約
【0604】
実施例3:2-MEAによって誘導されるFabアーム交換による、二重特異性抗体の作製
IgG1をベースとする安定な二重特異性抗体を作製するための方法は、WO2011131746(Genmab)に記載されている。後述するこの方法によって生じる二重特異性抗体産物は、Fabアーム交換にもはや関与しない。この方法の基本原理は、特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体の形成を促進する相補的CH3ドメインの使用であった。この方法による二重特異性抗体の作製を可能にするために、CH3ドメイン中にある種の変異、すなわち、一方の親IgG1抗体中にT350I、K370T、およびF405L変異(または最小限F405L)、他方の親IgG1抗体中にK409R変異、を有するIgG1分子を作製した。
【0605】
F405L点変異またはK409R点変異のいずれかを最小限含む親IgG1抗体の濃度を、280nmでのそれらの吸光度を用いて測定した。アミノ酸配列に基づく固有の吸光係数を用いて、タンパク質濃度を推測した。
【0606】
Cubeシステムは、Genmab社の順応性のあるロボットワークセルである。このシステムは、Peak Analysis and Automation(PAA)(Farnborough UK)と共同で設計および構築された。
【0607】
実施例1で得た下記の抗体を組み合わせることによって、二重特異性抗体を作製した:
- 各CD137-FEAR抗体と組み合わせられたCD40-FEAL抗体、
- b12-FEAL抗体と組み合わせられたCD40-FEAR抗体、および
- b12-FEAL抗体と組み合わせられた各CD137-FEAR抗体。
【0608】
二重特異性抗体の発見工程は、図5に示し後述するように、Cubeシステムにおいて自動式で実施する。
【0609】
二重特異性抗体を作製するために、下記の(自動化)段階が実施される:
- 必要とされる容積に応じて、深型ウェルソースプレート(96ウェルの透明V底2mLポリプロピレン深型ウェルプレート、Corning、カタログ番号3960;48ウェルRiplate(登録商標)SW 5mL、Ritter、カタログ番号43001-1062;24ウェルRiplate SW 10mL、Ritter、カタログ番号43001-1066)が、(1×PBS(B.Braun)に溶かした)濃度1.0mg/mLの親抗体で満たされる(異なるプレートに、F405Lを含む抗体およびK409Rを含む抗体)(図5、左のプレート)。
- これらのソースプレートから、図5の中央のプレートに従って、プレグリッドプレート(96ウェルV底、Corning)がCubeによって準備される。交換グリッド中の親抗体との各組合せに対して、67.5μLの親抗体が、適切なプレグリッドプレートに添加される。
- プレグリッド後、交換が実施される。このとき、異なるプレグリッドプレートにそれぞれ由来する2種の親抗体(各67.5μL、1.0mg/mL)が、交換プレート(96ウェル丸底ポリプロピレンプレート、Greiner、カタログ番号650293)に、各抗体の最終濃度0.5mg/mL(等モル濃度)で、添加される(図5、右のプレート)。
- (1×PBS(B.Braun)に溶かした)15μLの75mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)を交換プレートに添加することによって、交換反応が開始される。交換プレート中の総体積は、この時点で150μL(2-MEA最終濃度7.5mM)である。
- 交換プレートが、Cytomat 6000自動インキュベーター(Thermo Scientific)中、31℃で5時間、インキュベーションされる。
- 流出が重力に基づいている脱塩カラム(PhyTip脱塩カラム、600μL樹脂、PhyNexus、カタログ番号PDR91-60-06)を用いることによって、還元剤2-MEAが除去される。
・96本のカラムの付いたアダプターを廃棄物位置に配置し、450μLの1×PBS(B.Braun)を2回添加し、溶液にカラムを通過させ廃棄物へと流入させることによって、カラムがコンディショニングされる。
・コンディショニング後、交換プレートに由来する100μLの試料が添加され、それによって、残存PBSがカラムの外へと押し出される。
・溶液にカラムを通過させ廃棄物へと流入させた後、カラムの付いたアダプターが、脱塩(または送り先)プレート(96ウェル丸底、Greiner)に置かれる。
・交換プレートに由来する残りの試料が、カラムに添加される。
・試料にカラムを通過させ脱塩プレートへと流入させた後、225μLの1×PBS(B.Braun)がカラムに添加され、試料が脱塩プレートに溶出される。
・2-MEAは、カラムの内部に残る。適切な場合には、カラムは、1×PBS(B.Braun)で洗浄することによって、再生することができる。
- 脱塩プレートが、Cytomat 6001自動インキュベーター(Thermo Scientific)中、8℃で保存される。これらのプレートは、この時点で、二重特異性抗体を含む。
【0610】
最終的な二重特異性抗体試料を0.2μmデットエンドフィルターに通してろ過し、二重特異性産物の280nmでの吸光度(A280)を測定して最終濃度を明らかにした。試料は、さらに使用する前に少なくとも24時間、2~8℃で保存した。
【0611】
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、すなわちブチル-NPR、2.5μm、4.6×35mm HIC-HPLCカラム(Tosoh Bioscience)を流速1mL/分で用いる疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって、二重特異性抗体交換効率を定量した。親抗体および解析試料の濃度を標準化し、HIC溶出剤A(15.4mM K2HPO4、9.6mM KH2PO4、1.5M (NH4)2SO4;pH7.0)を用いて2倍希釈した。50μLの試料を注入し、HIC溶出剤AからHIC溶出剤B(15.4mM K2HPO4、9.6mM KH2PO4、pH7.0)への12分にわたる勾配を用いて溶離を実施し、280nmで検出した。あるいは、HPLC、すなわち解析的陽イオン交換クロマトグラフィー(CIEX)を用いて、二重特異性抗体の交換効率を定量した。移動相A(10mM NaPO4、pH7.0)に溶かした1mg/mLの親抗体および解析試料をHPLCに注入した。流速1mL/分で4mm×250mmのProPac WCX-10解析用カラムを用いることによって、荷電状態の異なるIgG分子を分離した。50μLの試料を注入し、移動相A(10mM NaPO4、pH7.0; Milli-Q 1リットルにつき10.3gのNa2HPO4・2H2Oおよび5.07gのNaH2PO4を添加することによって得られるリン酸ナトリウム緩衝液の0.1M原液から調製される)から移動相B(10mM NaPO4、pH7.0、0.25M NaCl)への勾配を用いて溶離を実施し、280nmで検出した。Empower3ソフトウェア(Waters)を用いて、ピークを親抗体または二重特異性反応産物に割り当て、かつピーク面積を積分して二重特異性抗体交換反応の程度を定量した。製造業者の取扱い説明書に従って、TSK HP-SECカラム(G3000SWxl;Tosoh Biosciences、Omnilabo, Breda、The Netherlandsを介する)を用いる解析的サイズ排除クロマトグラフィー、ならびに還元条件および非還元条件下でLabChip GXII(Caliper Life Sciences、MA)においてHTタンパク質発現LabChip(Caliper Life Sciences、MA)を用いるキャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)によって、二重特異性抗体反応産物をさらに解析した。
【0612】
実施例4:CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体によるトランス活性化を測定するレポーターアッセイ法
CD40は、樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)で主に発現されるのに対し、CD137は、活性化されたT細胞で主に発現される。したがって、CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体は、これらの受容体を発現するAPCおよびT細胞に同時に結合することができる。それによって、これらの二重特異性抗体は、受容体結合によってAPCとT細胞の細胞間接触を媒介し、両方の受容体を活性化することができる。この受容体活性化は、架橋および細胞間相互作用の際の受容体クラスター形成によって誘導されることができ、単特異性二価の親抗体のアゴニスト活性に必ずしも依存しない。したがって、これらのトランス活性化二重特異性抗体は、APCとT細胞の相互作用という状況で共刺激活性を発揮することができる。
【0613】
レポーターアッセイ系を確立して、二重特異性抗体による各受容体の活性化を測定した。NF-κB/293/GFP-Luc(商標)転写レポーター細胞株(System Biosciences;カタログ番号TR860A-1)は、NF-κBシグナル伝達経路をインビトロでモニターするために設計されたレポーター細胞株である。NF-κB経路の活性化は、定量的転写活性化レポーターアッセイ法のための緑色蛍光タンパク質(GFP)蛍光ならびにルシフェラーゼ活性を検出することによってモニターすることができる。製造業者の取扱い説明書に従って、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬、Mirus Bio(VWR International、カタログ番号731-0029)を用いて、構成的に活性なヒト伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターの下流で完全長ヒトCD40またはCD137をコードする発現ベクターを用いて、NF-κB/293/GFP-Luc細胞に安定に形質導入した。10mg/mLブラスチシジン(Invivogen、カタログ番号ant-bl-1)を用いて、安定なクローンを選択した。さらに、前述したようにして、ヒトCD40およびCD137をK562細胞に安定に形質導入して、二重特異性抗体の他方のアームに対する対応する標的抗原を提供できる細胞株を作製した。受容体の細胞表面発現をフローサイトメトリーによって測定した。0.3×106個の細胞を遠心沈殿させ(460×g、5分)、FACS緩衝液(5mM EDTA(Sigma Aldrich、カタログ番号03690)および5%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、Biochrom、カタログ番号S0115)を添加したD-PBS)中で洗浄した(460×g、5分)。50μLの1:50希釈したアロフィコシアニン(APC)標識抗ヒトCD40(BD Biosciences、クローン5C3、カタログ番号555591)またはフィコエリトリン(PE)標識抗ヒトCD137(BD Biosciences、クローン4B4-1、カタログ番号555956)を細胞プレートに添加し、暗所、4℃で20分間、インキュベーションした。FACS緩衝液で3回洗浄した後、細胞をFACS緩衝液100μL中に再懸濁し、FACSCanto II(BD Biosciences)を用いたフローサイトメトリーによって、抗体の結合を検出した。形質導入されたNF-κB/293/GFP-Luc細胞(図6A)およびK562細胞(図6B)におけるCD40およびCD137の細胞表面発現が、うまく示された。
【0614】
トランス活性化を測定するレポーターアッセイ法を次のように設定した:指定の2種のTNF受容体のうちの1つを発現するNF-κB/293/GFP-Luc細胞を、白色不透明の384ウェル細胞培養プレート(PerkinElmer、カタログ番号6007680)に入れたGlutaMAX補助成分(Life Technologies、カタログ番号61870)を含むRPMI 1640培地30μL中に10,000細胞/ウェルの濃度で播種した。一方のアームでCD40に結合し他方のアームでCD137に結合する二重特異性抗体および対応する単特異性一価(1本の無関係な対照アームを含む[b12])対照抗体を、最終濃度0.078μg/mL~10μg/mLの範囲に(培地中で)段階希釈し、緩衝液対照を含めて、レポーター細胞に10μL/ウェルの量で添加した。第2のTNF受容体を発現するK562細胞または野生型K562(K562_wt)細胞17,000個を、10μL培地に加えて各ウェルに添加し、37℃および5%CO2で18時間、インキュベーションした。したがって、二重特異性抗体は、NF-κB/293/GFP-Luc細胞株表面の第1のTNF受容体に、かつ同時に、K562細胞株表面の第2のTNF受容体に、結合することができる。NF-κB/293/GFP-Luc細胞表面の第1のTNF受容体の受容体活性化のみを、NF-κBシグナル伝達の際に誘導されるルシフェラーゼ活性に基づいて測定する。したがって、CD40およびCD137を標的とする二重特異性抗体を、次の2つのレポーターアッセイ法によって解析した:レポーター細胞株表面のCD137およびK562細胞表面のCD40への同時結合によって誘導されるCD137活性化を測定する第1のアッセイ法(HEK293_NFK_CD137_gfp_luc+K562_CD40)ならびにレポーター細胞株表面のCD40およびK562細胞表面のCD137への同時結合によって誘導されるCD40活性化を測定する第2のアッセイ法(HEK293_NFK_CD40_gfp_luc+K562_CD137)。Glo溶解緩衝液(Promega;カタログ番号E266A)を加えて復元した50μL/ウェルのSteady-Glo(登録商標)試薬(Promega;カタログ番号E2520)を添加し、室温で30分間インキュベーションした後に、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer)によって相対発光単位としてルシフェラーゼ活性を測定した。
【0615】
CD40×CD137二重特異性抗体(図7A~L、下側のパネル、1番目および3番目のグラフ)のみが、トランス活性化条件(それぞれK562-CD40またはK562-CD137とのインキュベーション)下で、CD137またはCD40のいずれかを形質導入されたNF-κB/293/GFP-Luc細胞において(約100ng/mLおよびそれより高い濃度において)ルシフェラーゼ活性を誘導した。単特異性一価(1本の無関係な対照アームを含む[b12])対照抗体のどれも、形質導入されたNF-κB/293/GFP-Luc細胞においてルシフェラーゼ活性を誘導しなかった(上側のパネル)。さらに、トランス活性化条件下ではない場合(野生型K562細胞を使用)、二重特異性CD40×CD137抗体によってルシフェラーゼ活性は誘導されなかった(下側のパネル、2番目および4番目のパネル)。
【0616】
実施例5:CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体によるトランス活性化を測定するための、非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法
非抗原特異的増殖を測定するために、末梢血単核細胞(PBMC)集団中のT細胞を、CD40×CD137二重特異性抗体または対照抗体と組み合わせた準最適濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)と共にインキュベーションした。このPBMC集団内で、CD40を発現する抗原提示細胞は、二重特異性抗体のCD40特異的アームによって結合されることができるのに対し、集団中のT細胞は、CD137特異的アームによって結合されることができる。二重特異性抗体を介した抗原提示細胞への架橋によって誘導されるT細胞のトランス活性化を、T細胞増殖として測定する。
【0617】
PBMCは、健常なドナーのバフィコート(Transfusionszentrale、大学病院、Mainz、Germany)からフィコール勾配(VWR、カタログ番号17-5446-02)を用いて得た。PBMCは、製造業者の取扱い説明書に従って、PBSに溶かした1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(Thermo Fisher、カタログ番号C34564)を用いて標識した。96ウェル丸底プレート(Sigma Aldrich、CLS3799-50EA)中にウェル当たり75,000個のCFSE標識PBMCを播種し、5%ヒトAB血清を添加した150μLのIMDM GlutaMAXに溶かした、各ドナーについて予め決定された準最適濃度の抗CD3抗体(R&D Systems、クローンUCHT1、カタログ番号MAB100;最終濃度0.01~0.1μg/mL)、および二重特異性抗体または対照抗体と共に、37℃、5%CO2で4日間、インキュベーションした。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖を、本質的には前述したようにして、フローサイトメトリーによって解析した。FACS緩衝液中にPE標識CD4抗体(BD Biosciences、カタログ番号555347;最終希釈倍率1:80)、PE-Cy7標識CD8α抗体(クローンRPA-T8、eBioscience、カタログ番号25-0088-41;最終希釈倍率1:80)、APC標識CD56抗体(eBiosciences、カタログ番号17-0567;最終希釈倍率1:80)、および7-AAD(Beckman Coulter、カタログ番号A07704;最終希釈倍率1:80)を含む30μLを用いて、細胞を染色し、ナチュラルキラー(NK)細胞(CD56)および死細胞(7-AAD)を解析から除外した。試料をFACSCanto II(BD Biosciences)で測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な解析を、FlowJo7.6.5ソフトウェアによって行った。分裂を始めたT細胞の平均比率(分裂細胞率(%))および分裂を始めた細胞の平均分裂回数(増殖指標)を算出した。
【0618】
図8Aは、CD40×CD137二重特異性抗体のみがCD8+T細胞増殖を効率的に増強したことを示す。単特異性一価の対照抗体(b12xCD40;b12xCD137)および単特異性一価CD40抗体と単特異性一価CD137抗体の組合せ(b12xCD40+b12xCD137)は、対照(弱く活性化されたPBMCのみ、対照、なし)で観察されたよりも大規模な増殖を誘導しなかった。異なる濃度の異なる抗体について、フローサイトメトリーのヒストグラムを定量して、前述したように、分裂細胞率(図8B)および増殖指標(図8C)を示した。これらの図は、二重特異性抗体のみがCD8+細胞の増殖を誘導することができ、最適濃度が0.04~0.2μg/mLの間であったことを示す。
【0619】
実施例6:CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体によるトランス活性化を測定するための、抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法
抗原特異的アッセイ法において二重特異性抗体による増殖誘導を測定するために、樹状細胞(DC)にクローディン6インビトロ転写RNA(IVT-RNA)をトランスフェクトして、クローディン6抗原を発現させた。クローディン-6に特異的なHLA-A2拘束性T細胞受容体(TCR)をT細胞にトランスフェクトした。このTCRは、DC表面のHLA-A2において提示されるクローディン-6由来エピトープを認識することができる。CD40×CD137二重特異性抗体は、樹状細胞上のCD40とT細胞上のCD137を架橋して、DCの活性化およびT細胞への共刺激シグナルをもたらし、その結果、T細胞増殖を起こすことができる。
【0620】
HLA-A2+ PBMCは、健常なドナー(Transfusionszentrale、大学病院、Mainz、Germany)から得た。製造業者の取扱い説明書に従って抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi;カタログ番号130-050-201)を用いる磁気活性化細胞選別(MACS)技術によって、単球をPBMCから単離した。後でT細胞を単離するために、末梢血リンパ球(PBL、CD14陰性画分)を凍結した。未成熟DC(iDC)に分化させるために、1×106個/mLの単球を、5%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、カタログ番号H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH、カタログ番号11360-039)、非必須アミノ酸(Life technologies GmbH、カタログ番号11140-035)、100IU/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH、カタログ番号15140-122)、1000IU/mL顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF; Miltenyi、カタログ番号130-093-868)、および1000IU/mLインターロイキン4(IL-4;Miltenyi、カタログ番号130-093-924)を含むRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH、カタログ番号61870-044)中で、5日間培養した。この5日間の間に一度、培地の半分を新しい培地に交換した。非接着細胞を採取することによってiDCを回収した;接着細胞は、2mM EDTAを含むPBSと共に37℃で10分間インキュベーションすることによって剥離した。洗浄後、後で行う抗原特異的T細胞アッセイ法のために、10% v/v DMSO(AppliChem GmbH、カタログ番号A3672,0050)および50%v/vヒトAB血清を含むRPMI GlutaMAX中でiDCを凍結させた。
【0621】
T細胞アッセイ法を開始する1日前に、同じドナーに由来する凍結したPBLおよびiDCを解凍した。製造業者の取扱い説明書に従って抗CD8マイクロビーズ(Miltenyi;カタログ番号130-045-201)を用いるMACS技術によってCD8+T細胞を単離するために、PBLを使用した。BTX ECM(登録商標)830エレクトロポレーションシステム装置(BTX;500V、1×3msパルス)を用いて、4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH、カタログ番号732-0023)中で、250μLのX-Vivo15(Biozym Scientific GmbH、カタログ番号881026)に溶かしたα鎖をコードする10μgのIVT-RNAおよびクローディン-6に特異的なマウスTCR(HLA-A2拘束性;WO 2015150327 A1に記載されている)のβ鎖をコードする10μgのIVT-RNAを、約10~15×106個のCD8+T細胞にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、5%ヒトAB血清を添加した新しいIMDM培地(Life Technologies GmbH、カタログ番号12440-061)に細胞を移し、37℃、5% CO2で少なくとも1時間休ませた。T細胞を、製造業者の取扱い説明書に従って、PBSに溶かした1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen、カタログ番号C34564)を用いて標識し、5%ヒトAB血清を添加したIMDM培地中で一晩インキュベーションした。
【0622】
前述したエレクトロポレーションシステム(300V、1×12msパルス)を用いて、250μLのX-Vivo15培地に溶かした完全長クローディン-6(UniProt P56747)をコードする0.4~5μgのIVT-RNAを、最高で5×106個の解凍したiDCにエレクトロポレーションし、5%ヒトAB血清を添加したIMDM培地中で一晩インキュベーションした。
【0623】
翌日、細胞を回収した。DCにおけるクローディン-6およびT細胞におけるTCRの細胞表面発現をフローサイトメトリーによって確認した。したがって、Alexa647結合CLDN6特異的抗体(市販されていない。施設内で作製)でDCを染色し、抗マウスTCR β鎖抗体(Becton Dickinson GmbH、カタログ番号553174)でT細胞を染色した。96ウェル丸底プレートにおいて、5%ヒトAB血清を添加したIMDM GlutaMAX(Life Technologies、カタログ番号12440-061)に溶かした二重特異性抗体または対照抗体の存在下で、エレクトロポレーションされた5,000個のDCを、エレクトロポレーションされた50,000個のCFSE標識T細胞と共にインキュベーションした。5日後、フローサイトメトリーによってT細胞増殖を測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な解析を、FlowJo 7.6.5ソフトウェアによって行った。分裂を始めたT細胞の平均比率(分裂細胞率(%))および分裂を始めた細胞の平均分裂回数(増殖指標)を算出した。
【0624】
図9Aは、CD40×CD137二重特異性抗体のみがCD8+T細胞増殖を効率的に増強したことを示す。単特異性一価の対照抗体(b12xCD40;b12xCD137)および単特異性一価CD40抗体と単特異性一価CD137抗体の組合せ(b12xCD40+b12xCD137)は、対照(弱く活性化されたPBMCのみ、対照、なし)で観察されたよりも大規模な増殖を誘導しなかった。同じことが、分裂細胞率にも反映されており(図9B)、増殖指標から極めて明確である(図9C)。図9Dは、CD40×CD137二重特異性抗体による抗原特異的増殖の誘導が濃度依存性であり、このアッセイ法での最適濃度が0.1μg/mL前後であったことを示している。
【0625】
実施例7:マウス抗体およびウサギ抗体のヒト化
マウス抗CD40-001抗体およびウサギ抗CD137-009抗体に由来するヒト化抗体配列は、Antitope(Cambridge、UK)で作られた。生殖系列ヒト化(CDRグラフティング)技術を用いてヒト化抗体配列を作った。ヒト化V領域遺伝子は、マウス抗体およびウサギ抗体のVHアミノ酸配列およびVκアミノ酸配列に最も近い相同性を有するヒト生殖系列配列をベースとして設計した。一連の4~6個のVHおよび4個または5個のVκ(VL)生殖系列ヒト化V領域遺伝子を、各非ヒト親抗体について設計した。抗体の結合特性にとって重要である可能性があるV領域フレームワーク中のアミノ酸を同定するために、Swiss PDBを用いて非ヒト親抗体V領域の構造モデルを作成し、解析した。1種または複数種のCDRグラフト化変異体抗体に組み入れるために、これらのアミノ酸に注目した。ヒト化設計のための基盤として使用した最もよく一致している生殖系列配列を表3に示している。
【0626】
(表3)最もよく一致しているヒト生殖系列Vセグメント配列およびJセグメント配列
【0627】
次いで、Antitope社が登録商標権をもつインシリコ技術であるiTope(商標)およびTCED(商標)(T Cell Epitope Database)(Perry, L.C.A, Jones, T.D. and Baker, M.P. New Approaches to Prediction of Immune Responses to Therapeutic Proteins during Preclinical Development (2008). Drugs in R&D 9 (6): 385-396; 20; Bryson, C.J., Jones, T.D. and Baker, M.P. Prediction of Immunogenicity of Therapeutic Proteins (2010). Biodrugs 24 (1):1-8)を用いて、潜在的なT細胞エピトープの出現率が最も低い変異体配列を選択した。最後に、ヒト細胞において発現させるために、設計した変異体のヌクレオチド配列をコドン最適化した。
【0628】
ヒト化CD40抗体およびヒト化CD137抗体の可変領域配列を、上記の配列表および表1に示している。
【0629】
実施例8:抗体の発現構築物、一過性発現、および精製
抗体発現のために、VH配列およびVL配列を発現ベクター(pcDNA3.3)にクローニングした。この発現ベクター(pcDNA3.3)は、VHの場合、F405L変異もしくはK409R変異ならびに/またはL234F、L235E、およびD265Aをいくつかの場合に含む適切な定常重鎖(HC)を含み、VLの場合、軽鎖(LC)領域を含んだ。抗体は、IgG1、κとして発現させた。本質的にはVinkらによって説明されているようにして(Vink et al., Methods, 65 (1), 5-10 2014)、293フェクチン(Life technologies)を用いて、Expi293F細胞(Life technologies, USA)に、抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードするプラスミドDNA混合物を一過性にトランスフェクトした。次に、プロテインG固定化クロマトグラフィーによって抗体を精製した。
【0630】
実施例9:CD40およびCD137に結合するヒト化二重特異性抗体の機能性を試験するための非特異的T細胞増殖アッセイ法
CD40およびCD137に結合するヒト化二重特異性抗体の機能性を測定するために、前述したようにして非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法を実施した。要するに、1名のドナーのPBMCをCFSEで標識し、準最適濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1;このドナーについて決定された0.01μg/mL)および0.008μg/mL、0.04μg/mL、0.2μg/mL、または1μg/mLのヒト化CD40×CD137二重特異性抗体、親二重特異性抗体、またはIgG1対照抗体と共にインキュベーションした。
【0631】
CD8+T細胞増殖を、本質的には前述したようにして、フローサイトメトリーによって解析した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な解析を、FlowJo 7.6.5ソフトウェアによって行った。分裂を始めたT細胞の平均比率(分裂細胞率(%))および分裂を始めた細胞の平均分裂回数(増殖指標)を算出した。
【0632】
図10は、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-HC6LC1-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR)がCD8+T細胞増殖を効率的に増強したことを示す。ヒト化二重特異性抗体は、分裂細胞の比率およびCD8+細胞の平均分裂回数の両方を増大させた。ヒト化二重特異性抗体の有効性は、親二重特異性抗体(CD40-001×CD137-009)の有効性に匹敵していた。
【0633】
実施例10:CD40およびCD137に結合するヒト化二重特異性抗体の機能性を試験するための抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法
CD40およびCD137に結合するヒト化二重特異性抗体の機能性を測定するために、前述したようにして抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法を実施した。要するに、CFSEで標識しCLDN6-TCRをトランスフェクトしたCD8+T細胞を、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体、親抗体、またはIgG1対照抗体の存在下で、CLDN6 RNAをエレクトロポレーションされたDCと共にインキュベーションした。4日後、フローサイトメトリーによってT細胞増殖を測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な解析を、FlowJo 7.6.5ソフトウェアによって行った。分裂を始めたT細胞の平均比率(分裂細胞率(%))および分裂を始めた細胞の平均分裂回数(増殖指標)を算出した。
【0634】
図11は、ヒト化CD40×CD137二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-H6LC1-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR)がCD8+T細胞増殖を効率的に増強したことを示す。ヒト化二重特異性抗体の有効性は、親二重特異性抗体(CD40-001×CD137-009)の有効性に匹敵していた。ヒト化二重特異性抗体および親二重特異性抗体の両方とも、このアッセイ法において、分裂細胞の比率およびCD8+細胞の増殖指標を増大させた。
【0635】
実施例11:腫瘍浸潤リンパ球に対するCD40×CD137二重特異性抗体の作用を評価するためのエクスビボTIL増大アッセイ法
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対するCD40×CD137二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-FEAL/CD137-009-FEAR)の作用を評価するために、ヒト腫瘍組織のエクスビボ培養を下記のようにして実施した。単離された腫瘍の大きな塊を、スパーテルまたはセロロジカルピペットを用いて、洗浄培地を入れた6ウェルプレート(Fisher Scientificカタログ番号10110151)の1つのウェルからすぐ隣のウェルに移すことによって、新たにヒト腫瘍組織切除物を3回洗浄した。洗浄培地は、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher、カタログ番号15140-122)および1%ファンギゾン(Thermo Fisher、カタログ番号15290-026)を添加したX-VIVO 15(Biozym、カタログ番号881024)から構成された。次に、メス(Braun/Roth、カタログ番号5518091 BA223)を用いて腫瘍を切断し、直径約1~2mmの腫瘍片に切り分けた。2片ずつを、1mLのTIL培地(X-VIVO 15、10%ヒト血清アルブミン(HSA、CSL Behring、カタログ番号PZN-6446518)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%ファンギゾン、および指定濃度のIL-2(Proleukin(登録商標)S、Novartis Pharma、カタログ番号02238131)を含む24ウェルプレート(VWR international、カタログ番号701605)の1つのウェルに入れた。CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体を、指定の最終濃度で添加した。培養プレートを37℃および5%CO2で72時間インキュベーションし、指定のIL-2濃度および指定濃度の二重特異性抗体を含む1mLの新鮮なTIL培地を各ウェルに添加した。5.0メガピクセルカメラを装備されたLeica DMi1顕微鏡を用いて、TILクラスターの出現についてウェルを1日おきにモニターした。25個を超えるTILマイクロクラスターが検出された場合、ウェルを個々に分割した。TIL培養物を分割するために、細胞を再懸濁し、6ウェルプレートの1つのウェルに移し、新たな2mLのTIL培地を添加した。
【0636】
10~14日の合計培養期間の後に、TILを回収し、フローサイトメトリーによって解析した。異なる治療群の定量的比較を可能にするために、BD(商標)CompBeads(BD biosciences、カタログ番号51-90-9001291)を添加したFACS緩衝液による最後の洗浄段階の後に細胞ペレットを再懸濁した。BD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)によってフローサイトメトリー解析を実施し、獲得したデータをFlowJo 7.6.5ソフトウェアを用いて解析した。ビーズ1,000個当たりの相対的生存TIL計数値(7-AAD陰性細胞)を各ウェルについて算出した。
【0637】
図12は、ヒト黒色腫組織からのTIL増大の解析を示す。このとき、100U/mLのIL-2をTIL培地のための補助成分として使用した。さらに、CD40およびCD137に結合する次の濃度の二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-FEAL/CD137-009-FEAR)を添加した:0.016μg/mL、0.08μg/mL、0.4μg/mL、2.0μg/mL、および10.0μg/mL;抗体添加のないウェルは陰性対照としての機能を果たした。14日間の培養後に、TILを回収し、フローサイトメトリーによって解析した。24ウェルプレートの異なるウェルに由来する、各抗体濃度について5つの試料を測定した。CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体と共に培養された試料すべてにおいて、生存TIL計数値は、抗体を用いない対照試料と比較して実質的に増加していた。全般的にみて、生存TILの平均相対計数値の約100倍の増加が観察された(図12)。
【0638】
図13は、非小細胞肺がん(NSCLC)組織からのTIL増大の解析を示す。このとき、10U/mLのIL-2をTIL培地のための補助成分として使用した。さらに、CD40およびCD137に結合する次の最終濃度の二重特異性抗体(ビスG1-CD40-001-FEAL/CD137-009-FEAR)を投与した:0.01μg/mL、0.1μg/mL、および1.0μg/mL;抗体添加のないウェルは陰性対照としての機能を果たした。10日間の培養後に、TILを回収し、フローサイトメトリーによって解析した。24ウェルプレートの異なるウェルに由来する、各抗体濃度について5つの試料を測定した。CD40およびCD137に結合する二重特異性抗体と共に培養された試料すべてにおいて、生存TIL計数値は、抗体を用いない対照試料と比較して実質的に増加していた。全般的にみて、生存TILの平均相対計数値の最高10倍の増加が、0.1μg/mLまたは1μg/mLで観察された(図13)。
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図4-1】
図4-2】
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