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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】カバーフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220909BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20220909BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20220909BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220909BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220909BHJP
   B65D 73/02 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B7/027
B32B7/12
B32B27/32 C
B32B27/18 J
B65D73/02 B
B65D73/02 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019550363
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2018040030
(87)【国際公開番号】W WO2019087999
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2017210000
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿津坂 高範
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 沙織
(72)【発明者】
【氏名】内山 駿
(72)【発明者】
【氏名】吉川 明宏
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216060(JP,A)
【文献】特開2016-210503(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029867(WO,A1)
【文献】特開2015-199535(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024529(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/158550(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D 67/00- 79/02
B65D 85/30- 85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)基材層、(B)中間層、(C)接着層及びヒートシール可能な樹脂を有する(D)ヒートシール層からなり、(D)ヒートシール層を構成する熱可塑性樹脂がガラス転移温度の異なる2種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体とヒドラジド化合物の混合物からなることを特徴とするカバーフィルムであって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体混合物のうち、1種類はガラス転移温度が-20~10℃であり、もう1種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が40~80℃であり、
ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ガラス転移温度が高い(メタ)アクリル酸エステル共重合体が100~400質量部であり、且つ、ガラス転移温度の低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ヒドラジド化合物が1~9質量部であることを特徴とするカバーフィルム。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体混合物のうち、1種類はガラス転移温度が-10~0℃であり、もう1種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が50~70℃であることを特徴とする請求項1記載のカバーフィルム。
【請求項3】
ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ガラス転移温度が高い(メタ)アクリル酸エステル共重合体が100~400質量部であり、且つ、ガラス転移温度の低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ヒドラジド化合物が1~3質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカバーフィルム。
【請求項4】
前記(D)ヒートシール層を形成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれるヒドラジド化合物においてヒドラジド化合物の炭素鎖が1~4であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のカバーフィルム。
【請求項5】
前記(B)中間層がポリオレフィン系樹脂から形成され、(C)接着層が、スチレン-ジエンブロック共重合体を主成分とするスチレン系樹脂とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物、または芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位を15~35質量%含む芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物、もしくはエチレンに由来する単量体単位を75~91質量%含むエチレン-酢酸ビニル共重合体から形成される請求項1~4のいずれか1項に記載のカバーフィルム。
【請求項6】
前記(D)ヒートシール層に導電材料を含有し、さらに導電材料の形状が針状、球状の微粒子のいずれかまたはこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のカバーフィルム。
【請求項7】
前記(C)接着層、もしくは(D)ヒートシール層が導電材料を含有し、さらに導電材料がカーボンナノ材料であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のカバーフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカバーフィルムを、熱可塑性樹脂からなるキャリアテープの蓋材として用いた電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の包装体に使用するカバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型高性能化が進み、併せて電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に部品を自動的に実装することが行われている。表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて収納し得るように熱成形されたポケットが連続的に形成されたキャリアテープに収納されている。電子部品を収納後、キャリアテープの上面に蓋材としてカバーフィルムを重ね、加熱したシールバーでカバーフィルムの両端を長さ方向に連続的にヒートシールして包装体としている。カバーフィルム材としては、二軸延伸したポリエステルフィルムを基材に、熱可塑性樹脂のヒートシール層を積層したものなどが使用されている。前記キャリアテープとしては、主として熱可塑性樹脂のポリスチレンやポリカーボネート製のものが用いられている。
【0003】
近年、コンデンサや抵抗器、IC、LED、コネクタ、スイッチング素子などの様々な電子部品は著しい微小化、軽量化、薄型化が進んでおり、前記包装体から収納している電子部品を取り出すためにカバーフィルムを剥離する際の要求性能が、従来以上に厳しくなってきている。
上記キャリアテープ包装体により輸送等される電子部品は、近年の表面実装技術の大幅な向上に伴い、より高性能で小型化されてきている。このような電子部品は、キャリアテープ包装体輸送時の振動によりキャリアテープエンボス内表面やカバーフィルムの内側表面と電子部品が擦れることによる静電気が発生し破損してしまうことがある。また、カバーフィルムをキャリアテープから剥離する際に発生する静電気等によっても同様の事態が生じる場合がある。したがって、キャリアテープおよびカバーテープに対する静電対策が最重要課題とされていた。
【0004】
電子部品は包装体に収納された状態で、部品の有無、部品の収納方向、リードの欠損や曲がりを検査することがある。近年、電子部品の小型化に伴って、包装体に収納した部品の検査には、カバーフィルムに極めて高い透明性が必要である。更に、ヒートシール直後や輸送環境中に、電子部品とカバーフィルムのヒートシール層間で発生した摩擦においても、ヒートシール面が白化することで検査を阻害することがあり、前記の透明性に加え、ヒートシール面の削れ抑制も求められている。
【0005】
ヒートシール面の削れ対策として、EVA系のヒートシール層上にシリカ粒子を0.1~50質量%添加することでヒートシール層の表面から微小粒子を突出させ熱可塑性樹脂と部品を接触させない方法や、ヒートシール層に酸化錫や酸化亜鉛といった導電性微粒子を添加することの他に、ヒートシール面の表面粗さRzを1.0μm以上にすることが挙げられる(特許文献1~6参照)。しかしながらこのような方法では、電子部品との摩擦によるカバーフィルムのヒートシール面の削れは抑制出来ても、透明性が著しく低下し、要求性能を満たすことが出来ない場合があり、従来電子部品との摩擦によるカバーフィルムのヒートシール面の削れは、課題として検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-207988号公報
【文献】特開平9-201922号公報
【文献】特開平10-95448号公報
【文献】特開2006-219137号公報
【文献】特開平8-258888号公報
【文献】特許第5983902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリスチレンおよびポリカーボネート等のキャリアテープ用のカバーフィルムで、電子部品を取り出すためにカバーフィルムを剥離する際の剥離強度が連続して所定範囲内で、且つ高速剥離時においても剥離強度の上昇が少なく、剥離の際の振動による微小な電子部品の飛び出しや、高速剥離時のカバーフィルムの破断のような、実装工程でのトラブルを起こさず、高透明で電子部品との摩擦による白化を起こすことのないカバーフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者等は、前記の課題について鋭意検討した結果、特定の組成を有する熱可塑性樹脂からなるヒートシール層を設けることで、本発明の課題を克服したカバーフィルムが得られることを見出し本発明に至った。
即ち本発明は、少なくとも(A)基材層と(B)中間層、(C)接着層及びキャリアテープにヒートシール可能な熱可塑性樹脂を有する(D)ヒートシール層からなり、(D)ヒートシール層を構成する熱可塑性樹脂がガラス転移温度の異なる2種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体とヒドラジド化合物の混合物からなることを特徴とするカバーフィルムである。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体混合物のうち、1種類はガラス転移温度が-20~10℃であることが好ましく、-20~0℃であることがより好ましく、-10~0℃であることがさらに好ましい。また、もう1種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が40~80℃であることが好ましく、40~70℃であることがより好ましく、50~70℃であることがさらに好ましい。また、ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ガラス転移温度が高い(メタ)アクリル酸エステル共重合体が100~400質量部であり、且つ、ガラス転移温度の低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ヒドラジド化合物が1~3質量部であることが好ましい。
前記(D)ヒートシール層を形成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれるヒドラジド化合物においてヒドラジド化合物の炭素鎖が1~4であることが好ましい。
前記(B)中間層がポリオレフィン系樹脂から形成され、(C)接着層が、スチレン-ジエンブロック共重合体を主成分とするスチレン系樹脂とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物、または芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位を15~35質量%含む芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物、もしくはエチレンに由来する単量体単位を75~91質量%含むエチレン-酢酸ビニル共重合体から形成されることが好ましい。
前記(D)ヒートシール層に導電材料を含有し、さらに導電材料の形状が針状、球状の微粒子のいずれかまたはこれらの組み合わせからなることが好ましい。この導電材料の他の実施態様としては、カーボンナノ材料が好ましい。
一方で本発明は、前記のカバーフィルムを、熱可塑性樹脂からなるキャリアテープの蓋材として用いた電子部品包装体を包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ポリスチレンおよびポリカーボネート等のキャリアテープ用のカバーフィルムで、電子部品を取り出すためにカバーフィルムを剥離する際の剥離強度が連続して所定範囲内であり、剥離の際の振動による微小な電子部品の飛び出しといった実装工程でのトラブルを起こさず、高透明で電子部品との摩擦による白化を起こすことのないカバーフィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のカバーフィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明で使用したジヒドラジド化合物の一例を示す構造式である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカバーフィルムは、少なくとも(A)基材層と(B)中間層と(C)接着層と(D)ヒートシール層からなる。本発明のカバーフィルムの構成の一例を図1に示す。(A)基材層は、二軸延伸ポリエステル、あるいは二軸延伸ナイロンからなる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)および二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)、二軸延伸した6,6-ナイロン、6-ナイロンを特に好適に用いることができる。二軸延伸PET、二軸延伸PEN、二軸延伸6,6-ナイロン、6-ナイロンとしては、通常用いられているものの他に、帯電防止処理のための帯電防止剤が塗布または練り込まれたもの、またはコロナ処理や易接着処理などを施したものを用いることが出来る。基材層は、薄すぎるとカバーフィルム自体の引張り強度が低くなるためカバーフィルムを剥離する際に「フィルムの破断」が発生しやすい。一方、厚すぎるとキャリアテープに対するヒートシール性が低下を招くだけでなく、コスト上昇を招くため、通常12~25μmの厚みのものを好適に用いることが出来る。
【0012】
本発明においては、(A)基材層の片面にアンカーコート層を介して(B)中間層を積層して設けることが出来る。(B)中間層を構成する樹脂としては、特に柔軟性を有していてかつ適度の剛性があり、常温での引裂き強度に優れる直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと示す)を好適に用いることができ、特に密度が0.880~0.925(×10 kg/m)の範囲の樹脂を用いることで、ヒートシールする際の熱や圧力による、カバーフィルム端部からの中間層樹脂の食み出しが起こりにくいためヒートシール時のコテの汚れが生じにくいだけでなく、カバーフィルムをヒートシールする際に中間層が軟化することによりヒートシールコテの当り斑を緩和するため、カバーフィルムを剥離する際に安定した剥離強度が得られ易い。
【0013】
LLDPEには、チグラー型触媒で重合されたもの、及びメタロセン系触媒で重合されたもの(以下、m-LLDPEと示す)がある。m-LLDPEは分子量分布を狭く制御されているため、とりわけ高い引裂強度を有しており、本発明の(B)中間層としては、特にm-LLDPEを用いることが好ましい。
【0014】
上記のm-LLDPEは、コモノマーとして炭素数3以上のオレフィン、好ましくは炭素数3~18の直鎖状、分岐状、芳香核で置換されたα-オレフィンとエチレンとの共重合体である。直鎖状のモノオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が挙げられる。また、分岐状モノオレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン等を挙げることができる。また、芳香核で置換されたモノオレフィンとしては、スチレン等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独または2種以上を組み合わせて、エチレンと共重合することができる。この共重合では、ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等のポリエン類を共重合させてもよい。
【0015】
前記(B)中間層の厚みは、5~50μmが一般的であり、好ましくは10~40μmである。(B)中間層の厚みが5μm未満では、キャリアテープにカバーフィルムをヒートシールする際のヒートシールコテの当り斑を緩和する効果が得られにくい。一方、50μmを超えるとカバーフィルムの総厚が厚いために、キャリアテープにカバーフィルムをヒートシールする際に十分な剥離強度を得ることが困難となることがある。
【0016】
本発明のカバーフィルムは、(B)中間層と(D)ヒートシール層の間に(C)接着層を設ける。この(C)接着層に用いる熱可塑性樹脂は、スチレン-ジエンブロック共重合体を主成分とするスチレン系樹脂とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物、または芳香族ビニル基の含有量が15~35質量%である芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物、もしくはオレフィン成分を75~91質量%含むエチレン-酢酸ビニル共重合体のいずれかまたはこれらの組み合わせからなる。中でもスチレン比率が15~35質量%からなるスチレン-イソプレン共重合樹脂の水素添加物、スチレン-ブタジエン共重合樹脂の水素添加物は、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキが小さく好適に用いることができる。
【0017】
(C)接着層の厚さは通常0.1~15μm、好ましくは0.1~10μmの範囲である。(C)接着層の厚さが0.1μm未満の時、カバーフィルムをキャリアテープにヒートシールした時に十分な剥離強度を示さないことがある。一方、(C)接着層の厚さが15μmを越える場合には、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じる恐れがある。なお、この(C)接着層は、通常は押出製膜によって形成されるが、コーティング法で形成した場合は、ここでいう厚みとは乾燥後の厚みである。
【0018】
(C)接着層にはカバーフィルムを巻いた時のブロッキングを防止するために、球状または破砕形状のアクリル系粒子やスチレン系粒子、シリコーン系粒子などの有機系粒子や、タルク粒子、シリカ粒子、マイカ粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、などの無機粒子を添加することができる。特に、アクリル系粒子やシリカ粒子を添加した際の透明性の低下が少なく、より好適に用いることができる。粒子の質量分布曲線より得られる最大頻度径は1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~7μmである。最大頻度径が1μm未満では粒子添加によるブロッキング防止効果が十分に現れないことがある。一方、10μmを越える場合にはブロッキング防止の効果は良好になるが、ブロッキングの防止のためには多量添加が必要なためにコストの上昇を招いたり、カバーフィルムのヒートシール層表面に目視可能な凹凸を生じてしまうためにカバーフィルムの外観を損なう恐れがある。(C)接着層中の微粒子の質量分率は0~15質量%が好ましく、さらに好ましくは5~10質量%である。添加量がこの範囲内は、透明性およびヒートシール性と、ブロッキング防止効果のいずれにおいてもバランスがとれている。
【0019】
本発明のカバーフィルムは、(C)接着層の表面上に(D)ヒートシール層が形成される。(D)ヒートシール層の熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステルなど、少なくとも一種以上を含む樹脂であり、これらの二種以上を共重合した樹脂であってもよい。
【0020】
(D)ヒートシール層を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、2種類の異なるガラス転移温度の(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる。1種類はガラス転移温度が-20~10℃であることが好ましく、-10~0℃であることがより好ましい。-20℃未満の時、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じる恐れがあり、更にキャリアテープ内に収納された電子部品がカバーテープの(D)ヒートシール層に付着する不具合や電子部品との摩擦により白化を起こすことがある。一方、10℃を越える場合には、ヒートシール層を形成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の弾性が得られず、電子部品との摩擦により白化を起こす可能性がある。
もう1種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度は40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。40℃未満では(D)ヒートシール層の弾性が低下し、前述同様、電子部品との摩擦により白化を起こすことがある。一方で、ガラス転移温度が80℃を超える場合は、(D)ヒートシール層の造膜が安定せず、電子部品との摩擦により白化を起こすことがある。
【0021】
前記、ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)により決定される。装置はパーキンエルマージャパン社製入力補償型DSC8500を使用し、窒素ガス封入下にて(メタ)アクリル酸エステル共重合体の試料量5mgをアルミ製パンに投入した後に、-40℃まで急冷した後に、1分間に10度の昇温速度で0.01秒間隔にデータを得た。昇温に伴い、基準線と吸熱側に変化する変曲点での接線の交点をガラス転移温度として読み取り決定した。
【0022】
2種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体の混合比率は、ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、ガラス転移温度が高い(メタ)アクリル酸エステル共重合体が100~400質量部であることが好ましい。100質量部未満では、ヒートシール層の弾性が低下し、前述同様、電子部品との摩擦により白化を起こすことがある。一方で、400質量部を超える場合には、(D)ヒートシール層の造膜が安定せず、電子部品との摩擦により白化を起こすことがある。
【0023】
(D)ヒートシール層には、ヒドラジド化合物を混合する。このヒドラジド化合物とは、一般的にモノヒドラジド、ジヒドラジド化合物があるが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体同士を架橋させる目的から、図2に示すジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物は、炭素鎖がC1(炭素鎖が1を示す)相当のマロン酸ジヒドラジド、C2相当のコハク酸ジヒドラジド、C3相当のグルタル酸ジヒドラジド、C4相当のアジピン酸ジヒドラジド、C8相当のセバシン酸ジヒドラジドがある。
【0024】
前記ヒドラジド化合物を構成する炭素鎖はC1~4が好ましい。C4を超える場合は、反応性が乏しく、十分なヒートシール層の弾性が得られない恐れがあり、電子部品との摩擦により白化を起こすことがある。
【0025】
(D)ヒートシール層を構成するヒドラジド化合物の混合比率は、ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、1~3質量部が好ましい。1質量部未満では、(メタ)アクリル酸エステル共重合体との反応が十分に進まず、電子部品との摩擦により白化を起こす恐れがある。一方で、3質量部を超える場合は、(D)ヒートシール層の弾性が高くなり、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じる可能性がある。
【0026】
(D)ヒートシール層には、導電性酸化錫粒子、導電性酸化亜鉛粒子、導電性酸化チタン粒子の少なくとも一つを含有することができる。中でも、アンチモンや燐、ガリウムがドーピングされた酸化錫を用いることで導電性が向上し、また透明性低下が少ないため、より好適に用いることができる。導電性酸化錫粒子、導電性酸化亜鉛粒子、導電性酸化チタン粒子は、球状、あるいは針状のものを用いることができる。特にアンチモンをドーピングした針状の酸化錫を用いた場合、特に良好な帯電防止性能を有するカバーフィルムが得られる。添加量は(D)ヒートシール層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、通常100~1000質量部であり、好ましくは、200~800質量部である。導電性粒子の添加量が100質量部未満の場合、カバーフィルムの(D)ヒートシール層側の表面抵抗値が10の12乗Ω以下のものが得られない恐れがあり、1000質量部を超えると、相対的な熱可塑性樹脂の量が減少するため、ヒートシールによる十分な剥離強度を得ることが困難となる恐れがある。
【0027】
(D)ヒートシール層には、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーの少なくとも一つのカーボンナノ材料を含有することができる。中でも、アスペクト比が10~10000のカーボンナノチューブが好ましい。(D)ヒートシール層への添加量は、層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5~15質量部であり、好ましくは3~10質量部である。添加量が0.5質量部未満の場合、カーボンナノ材料の添加による導電性付与の効果が十分得られず、一方15質量部を越えるとコストの上昇を招くだけでなく、カバーフィルムの透明性の低下を招くために、収納部品をカバーフィルム越しに検査することが困難となる。
【0028】
(D)ヒートシール層の厚さは0.1~5μm、好ましくは0.1~3μm、更に好ましくは0.1~0.5μmの範囲である。ヒートシールの厚さが0.1μm未満の時、(D)ヒートシール層が十分な剥離強度を示さないことがある。一方、ヒートシール層の厚さが5μmを越える場合には、コストの上昇を招くだけでなく、またカバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じやすい。
【0029】
上記カバーフィルムを作成する方法は特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンイミンなどの接着剤を(A)基材層の二軸延伸ポリエステルフィルム表面に塗布しておき、(B)中間層となるm-LLDPEを主成分とする樹脂組成物をTダイから押出し、アンカーコート剤の塗布面にコーティングすることで、(A)基材層と(B)中間層から成る二層フィルムとする。さらに(B)中間層の表面に、本発明の(C)接着層を、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等によりコーティングすることができる。この場合、塗工する前に、(B)中間層表面をコロナ処理やオゾン処理することが好ましく、特にコロナ処理することが好ましい。更に(B)中間層に塗布した(C)接着層の上に(D)ヒートシール層を構成する樹脂組成物を例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等によりコーティングすることで目的とするカバーフィルムを得ることが出来る。
【0030】
他の方法として、(B)中間層と(C)接着層を予めTダイキャスト法、あるいはインフレーション法などで製膜しておき、(A)基材層の二軸延伸ポリエステルフィルムと、それぞれのフィルムをポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィンなどの接着剤を介して接着するドライラミネート法により、(A)基材層の二軸延伸ポリエステルフィルムと(B)中間層、(C)接着層から成るフィルムを得ることが出来、(C)接着層の表面に(D)ヒートシール層を塗布することにより、目的とするカバーフィルムを得ることもできる。
【0031】
更に他の方法としてサンドラミネート法によっても、目的とするカバーフィルムを得ることが出来る。即ち、(C)接着層を構成するフィルムをTダイキャスト法、あるいはインフレーション法などで製膜する。次にこの(C)接着層のフィルムと(A)基材層フィルムとの間に、溶融したm-LLDPEを主成分とする樹脂組成物を供給して(B)中間層を形成し積層し、目的とするカバーフィルムの(A)基材層と、(B)中間層と(C)接着層からなるフィルムを得、更に接着層側の表面に(D)ヒートシール層を塗布することにより、目的とするフィルムを得ることが出来る。この方法の場合も、前記の方法と同様に、(A)基材層フィルムの積層する側の面に接着剤をコーティングしたものを用いるのが一般的である。
【0032】
前記の工程に加えて、必要に応じて、カバーフィルムの(A)基材層に帯電防止処理を行うことが出来る。帯電防止剤として、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系、ベタイン系などの界面活性剤型帯電防止剤や、高分子型帯電防止剤及びバインダーに分散した導電材などをグラビアロールを用いたロールコーターやリップコーター、スプレー等により塗布することが出来る。また、これらの帯電防止剤を均一に塗布するために、帯電防止処理を行う前に、フィルム表面にコロナ放電処理やオゾン処理することが好ましく、特にコロナ放電処理が好ましい。
【0033】
カバーフィルムは、電子部品の収納容器であるキャリアテープの蓋材として用いる。キャリアテープとは、電子部品を収納するためのポケットを有した幅8mmから100mm程度の帯状物である。カバーフィルムを蓋材としてヒートシールする場合、キャリアテープを構成する材質は特に限定されるものではなく、市販のものを用いることができ、例えばポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を使用することができる。ヒートシール層にアクリル系樹脂を用いた場合は、ポリスチレンおよび/またはポリカーボネートのキャリアテープとの組み合わせが好適に用いられる。キャリアテープは、カーボンブラックやカーボンナノチューブを樹脂中に練り込むことにより導電性を付与したもの、帯電防止剤や導電フィラーが練り込まれたもの、あるいは表面に界面活性剤型の帯電防止剤やポリピロール、ポリチオフェンなどの導電物をアクリルなどの有機バインダーに分散した塗工液を塗布し帯電防止性を付与したものを用いることが出来る。
【0034】
電子部品を収納した包装体は、例えば、キャリアテープの電子部品収納部に電子部品等を収納した後にカバーフィルムを蓋材とし、カバーフィルムの長手方向の両縁部を連続的にヒートシールして包装し、リールに巻き取ることで得られる。この形態に包装することで電子部品等は保管、搬送される。電子部品等を収納した包装体は、キャリアテープの長手方向の縁部に設けられたキャリアテープ搬送用のスプロケットホールと呼ばれる孔を用いて搬送しながら断続的にカバーフィルムを引き剥がし、部品実装装置により電子部品等の存在、向き、位置を確認しながら取り出し、基板への実装が行われる。
【0035】
更に、カバーフィルムを引き剥がす際には、剥離強度があまりに小さいとキャリアテープから剥がれてしまい、収納部品が脱落してしまう恐れがあり、あまりに大きいとキャリアテープとの剥離が困難になると共にカバーフィルムを剥離する際に破断させてしまう恐れがあるため、120~220℃でヒートシールした場合、0.05~1.0Nの剥離強度を有するものがよく、且つ剥離強度のバラツキについては0.4Nを下回るものが好ましい。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例および比較例において、(A)基材層、(B)中間層、(C)接着層及び(D)ヒートシール層に、以下の樹脂原料を用いた。
((A)基材層の樹脂)
(a-1)基材:E-5100(東洋紡社製)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み16μm
((B)中間層の樹脂)
(b-1)m-LLDPE:ユメリット2040F(宇部丸善ポリエチレン社製),
MFR4.0g/10min(測定温度190℃、荷重2.16kgf),
密度0.904×10kg/m
【0037】
((C)接着層の樹脂)
(c-1-1)樹脂:タフテックH1041(旭化成ケミカルズ社製)、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体の水素添加樹脂(SEBS)、スチレンに由来する単量体単位の含有量(以下、スチレン成分の含有量という)30質量%
(c-1-2)樹脂:デンカクリアレン(デンカ社製)、スチレンブロック-スチレンとブタジエンのテーパーブロック-スチレンブロックからなるブロック共重合体、スチレン成分の含有量84質量%
(c-1-3)樹脂:TRレジン(JSR社製)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン成分の含有量43質量%
(c-1-4)樹脂:タフマーA(三井化学社製)、エチレン-1-ブテンランダム共重合体
(c-1-5)樹脂:トーヨースチロールE640N(東洋スチレン社製)、ハイインパクトポリスチレン
(c-1-6)樹脂:エバフレックスV5711(三井・デュポン・ポリケミカル社製)、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレンに由来する単量体単位の含有量90質量%
((C)接着層中の微粒子)
(c-2)微粒子:PEX-ABT-16(東京インキ社製)、タルク、シリカマスターバッチ(タルク5質量%、シリカ45質量%、低密度ポリエチレン50質量%)
【0038】
((D)ヒートシール層の樹脂)
(d-1-1)樹脂:NKポリマーEC-242(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度60℃、ヒドラジド化合物未含有
(d-1-2)樹脂:NKポリマーEC-300(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度0℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-3)樹脂:NKポリマーEC-301(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-10℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物1質量部含有
(d-1-4)樹脂:NKポリマーEC-302(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-10℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-5)樹脂:NKポリマーEC-303(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-10℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物5質量部含有
(d-1-6)樹脂:NKポリマーEC-306(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-10℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖8のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-7)樹脂:NKポリマーEC-307(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-10℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖1のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-8)樹脂:NKポリマーEC-302NC(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-10℃、ヒドラジド化合物未含有
(d-1-9)樹脂:NKポリマーEC-310(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度10℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-10)樹脂:NKポリマーEC-311(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度-20℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-11)樹脂:NKポリマーEC-312(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度60℃、アクリル樹脂100質量部に対して炭素鎖4のヒドラジド化合物3質量部含有
(d-1-12)樹脂:NKポリマーEC-24(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度80℃、ヒドラジド化合物未含有
(d-1-13)樹脂:NKポリマーEC-2424(新中村化学社製)、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体エマルジョン、固形分濃度36質量%、ガラス転移温度40℃、ヒドラジド化合物未含有
((D)ヒートシール層に添加する導電剤)
(d-2-1)導電剤:SN-100D(石原産業社製)、球状アンチモンドープ酸化錫、数平均長径0.1μm、水分散タイプ、固形分濃度30質量%
(d-2-2)導電剤:FS-10D(石原産業社製)、針状アンチモンドープ酸化錫、数平均長径2μm、水分散タイプ、固形分濃度20質量%
(d-2-3)導電剤:DCNT240D-1(大同塗料社製)、カーボンナノチューブ、固形分濃度1wt.%
((D)ヒートシール層に添加する無機フィラー)
(d-3-1)無機フィラー:W630(エボニック社製)、球状アルミナ、数平均長径0.1μm、水分散タイプ、固形分濃度30質量%
【0039】
(実施例1)
(C)接着層を構成する樹脂としてスチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加樹脂(旭化成ケミカルズ社製、「タフテックH1041」、スチレン成分の含有量30質量%)80質量%とタルク、シリカマスターバッチ(東京インキ社製、「PEX-ABT-16」)20質量%をタンブラーにてプリブレンドして、径40mmの単軸押出機を用いて200℃で混練し、毎分20mのライン速度で接着層を構成する樹脂組成物を得た。この樹脂組成物と(B)中間層を構成するオレフィン系樹脂としてメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、「ユメリット2040F」)とを別々の単軸押出機から押し出し、マルチマニホールドTダイで積層押出することにより、(C)接着層厚みが10μm、前記(B)中間層の厚みが20μmの二層フィルムを得た。次に、(A)基材層である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μm、東洋紡社製、「E-5100」)の一方の面に、主剤としてポリエステル系樹脂(東洋モートン社製、「LIOSTAR1000」)、硬化剤として主成分がヘキサメチレンジイソシアネート/イソホロンジイソシアネート(東洋モートン社製、「LIOSTAR500H」)からなる二液硬化型の接着剤を用い、グラビア法により乾燥後の厚みが3μmとなるようにアンカーコート層を形成させ、ドライラミネート法により前記二層フィルムの(B)中間層面と貼り合わせた。(C)接着層表面をコロナ処理した後、ヒドラジド化合物を混合したメタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体[(d-1-2)樹脂エマルジョン]5質量%、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル-メタクリル酸シクロヘキシルランダム共重合体[(d-1-1)樹脂エマルジョン]15質量%、導電剤[(d-2-1)導電性フィラー分散液]80質量%からなる溶液を、乾燥後の厚みが0.3μmになるように塗工して(D)ヒートシール層を形成することにより、図1に示す構成の電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムを得た(アンカーコート層は不図示)。
【0040】
(実施例2~19、比較例1~4)
(C)接着層、および(D)ヒートシール層を、表1~3に記載した樹脂等の原料を用いて形成した以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作成した。
(比較例5)
(C)接着層を設けず、(B)中間層の厚みを30μmとし、(D)ヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作成した。
(比較例6)
(B)中間層を設けず、(C)接着層を表2に記載した原料を用いて形成し、その厚みを30μmとし、(D)ヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作成した。
【0041】
<評価方法>
各実施例及び各比較例で作製した電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムについて下記に示す評価を行った。これらの結果をそれぞれ表1~3にまとめて示す。
(1)曇価
JIS K 7105:1998の測定法Aに準じて、積分球式測定装置を用いて曇価を測定した。結果を表1~3の曇価の欄に示す。
【0042】
(2)シール性
テーピング機(澁谷工業社、ETM-480)を使用し、シールヘッド幅0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力0.1MPa、送り長4mm、シール時間0.1秒×8回にてシールコテ温度140℃から190℃まで10℃間隔で5.5mm幅のカバーフィルムを8mm幅のポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)、及びポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)にヒートシールした。温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて毎分300mmの速度、剥離角度170~180°でカバーフィルムを剥離し、シールコテ温度140℃から190℃まで10℃間隔でヒートシールした時の平均剥離強度が0.3~0.9Nの範囲にあるものを「優」とし、平均剥離強度が0.3~0.9Nの領域となるシールコテ温度範囲はあるものの、シールコテ温度140℃から190℃まで10℃間隔でヒートシールした時の平均剥離強度が0.3~0.9Nの範囲を外れるシールコテ温度範囲があるものを「良」とし、何れのシールコテ温度においても平均剥離強度が0.3~0.9Nの領域に入らないものを「不良」として表記した。結果を表1~3のシール性の欄に示す。
(3)剥離強度のバラツキ
ポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)に対する剥離強度が0.4Nとなるようにヒートシールを行った。カバーフィルムを前記(2)シール性と同条件で剥離した。剥離方向に100mm分のカバーフィルムを剥離した際に得られたチャートから剥離強度のバラツキを導き出した。剥離強度のバラツキが0.2N以下であるものを「優」、0.2から0.4Nであるものを「良」、0.4Nより大きいものを「不良」として標記した。結果を表1~3の剥離強度のバラツキの欄に示す。
【0043】
(4)電子部品との摩擦試験
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下において、ポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)に電子部品(テキサスインストラメント社、SOT-223-6:6.45mm×3.45mm×1.80mm)を装填した後に、カバーテープを190℃でヒートシールし、20cmのテープカットサンプルを作製した。テープカットサンプルの片側を振動試験機(AS-ONE社、ENVIRONMENTAL VIBRATION TESTER CV-101)に固定し、周波数20Hz、加速度1.5G、振幅2mm、時間1分で電子部品との摩擦振動試験を実施した。カバーテープのヒートシール面に傷が付かなかったものを「優」とし、電子部品の四つ角の内、1箇所に傷が付いたものを「良」とし、2箇所以上に傷が付いたものを「不良」として表記した。結果を表1~3の電子部品との摩擦試験の欄に示す。
(5)剥離強度の経時安定性
前記(3)シール性と同条件において、剥離強度を0.4Nとなるようにヒートシールを行った。温度60℃、相対湿度10%、及び温度60℃、相対湿度95%の環境下に7日間投入し、取り出し後温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて剥離強度の測定を行った。剥離強度の測定は前記(3)シール性と同条件にて実施した。平均剥離強度が0.4±0.1Nの範囲にあるものを「優」とし、0.4±0.2Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」として表記した。結果を表1~3の剥離強度の経時安定性の欄に示す。
【0044】
(6)表面抵抗値
三菱化学社のハイレスタUP MCP-HT450を使用しJIS K 6911の方法にて、雰囲気温度23℃、雰囲気湿度50%RH、印加電圧10Vでヒートシール層表面の表面抵抗値を測定した。結果を表1~3の表面抵抗値の欄に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【符号の説明】
【0048】
1 カバーフィルム
2 基材層
3 中間層
4 接着層
5 ヒートシール層
図1
図2