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特許7138652混合ガス流中の触媒反応性ガスの質量流量を制御するシステム、デバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】混合ガス流中の触媒反応性ガスの質量流量を制御するシステム、デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20220909BHJP
   G01F 1/68 20060101ALI20220909BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20220909BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G01F1/00 X
G01F1/68 Z
B01J23/889 M
G05D7/06 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019550582
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2018022686
(87)【国際公開番号】W WO2018170292
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】62/472,711
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/552,305
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517353253
【氏名又は名称】ラシルク,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RASIRC, INC.
【住所又は居所原語表記】7815 Silverton Avenue San Diego, CA 92126 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スピーゲルマン,ジェフリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホルムズ,ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ラモス,クリストファー
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/065132(WO,A1)
【文献】特表2008-517650(JP,A)
【文献】特開平9-104418(JP,A)
【文献】米国特許第4436674(US,A)
【文献】特開昭50-73697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G05D 7/00- 7/06
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガス流中の触媒反応性ガスの質量流量を制御する質量流量制御システムであって、
(a)触媒反応性ガスおよびキャリアガスを含む混合ガス流を提供する混合ガス源であって、触媒反応性ガスが、キャリアガスよりも低いモル流量を有する、混合ガス源と、
(b)混合ガス流の第1の温度を測定するように構成された第1のプローブを含む第1のセンサと、
(c)混合ガス流の一部を受け入れるように構成された分解チャンバであって、触媒反応性ガスを分解するように構成された触媒を含む分解チャンバと、
(d)前記分解チャンバ内に配置されるとともに、触媒と触媒反応性ガスとの間の反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するように構成された第2のプローブを含む第2のセンサと、
(e)第1および第2のセンサと電気的に接続されたコントローラであって、混合ガス流と触媒との接触前後の温度の変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を求めるように構成されたコントローラと、
(f)コントローラと電気的に接続されたエフェクタであって、触媒反応性ガスの質量流量を変化させるように構成されたエフェクタとを備えることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
触媒反応性ガスが液体源から生成され、前記エフェクタが、液体源の温度、液体源のヘッドスペースの圧力、キャリアガスの流量、またはそれらの任意の組合せを調整するように構成されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
触媒反応性ガスの露点を超える温度まで触媒を加熱するように構成された第1の加熱器と、前記分解チャンバに配置されて、加熱された触媒の第3の温度を測定するように構成された第3のプローブを含む第3のセンサとをさらに備えることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
触媒が、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化銅、およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
触媒反応性ガスが、過酸化水素ガスおよびヒドラジン( )からなる群のなかから選択されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項6】
請求項2に記載の質量流量制御システムにおいて、
液体源が、無水過酸化水素および無水ヒドラジンからなる群のなかから選択されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
キャリアガスが、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、蒸気、清浄乾燥空気、酸素、NH、二酸化炭素、およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
混合ガス流が、約10トール~2バールの圧力で提供されることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項9】
請求項2に記載の質量流量制御システムにおいて、
前記エフェクタが、前記液体源の上流に配置された圧力調整弁、前記液体源の下流に配置された圧力調整弁、前記液体源の温度を調節するように構成された加熱器、および前記液体源の温度を調節するように構成された冷却器からなる群のなかから選択されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項10】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
当該システムによって供給される触媒反応性ガスの濃度が、約100パーツパーミリオン(ppm)~100,000ppmであることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項11】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
真空下で動作するとき、当該システムに対して供給される混合ガス流の圧力が、約10.0~100.0トールであることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項12】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
当該システムに対して供給される触媒反応性ガスの温度が、約15℃~80℃であることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の質量流量制御システムにおいて、
前記温度の変化が、触媒反応性ガスの質量流量の変化にほぼ比例し、かつ前記温度の変化が、混合ガス流の圧力または流量から相対的に独立していることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項14】
請求項1に記載の質量流量制御システムにおいて、
前記第1のセンサ、第2のセンサおよび分解チャンバがハウジング内に配置されており、
当該ハウジングが、
(a)入口と、
(b)前記入口と前記分解チャンバとの間の流体連通を提供するように構成された第1の管と、
(c)出口と、
(d)前記分解チャンバと前記出口との間の流体連通を提供するように構成された第2の管とを備え、
前記第1のセンサが、前記第1の管内に配置されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項15】
請求項14に記載の質量流量制御システムにおいて、
前記第2のセンサが、前記分解チャンバ内に配置されていることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項16】
請求項3に記載の質量流量制御システムにおいて、
前記分解チャンバに入る前に混合ガス流を加熱するように構成された第2の加熱器をさらに備えることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項17】
請求項14に記載の質量流量制御システムにおいて、
前記ハウジングが、前記分解チャンバと接触して配置された第1の加熱器であって、触媒反応性ガスの露点より高い温度まで触媒を加熱するように構成された第1の加熱器と、前記分解チャンバに配置されて、触媒の第3の温度を測定するように構成された第3のプローブを含む第3のセンサとをさらに備えることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項18】
請求項に記載の質量流量制御システムにおいて、
混合ガス流が約15℃~150℃で供給されることを特徴とする質量流量制御システム。
【請求項19】
混合ガス流中の希薄触媒反応性ガスの質量流量を制御する方法であって、
(a)混合ガス源から混合ガス流を提供するステップであって、混合ガス流が、液体源から生成された希薄触媒反応性ガスとキャリアガスとを含む、ステップと、
(b)混合ガス流の第1の温度を測定するステップと、
(c)触媒反応性ガスと反応するように構成された触媒に、混合ガス流の少なくとも一部を曝すステップと、
(d)触媒と触媒反応性ガスとの間の反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するステップと、
(e)混合ガス流と触媒との接触後の温度の変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を測定するステップであって、温度の変化が、混合ガス流の圧力または流量から相対的に独立している、ステップと、
(f)希釈触媒反応性ガスの所望の質量流量を達成するために、液体源の温度、液体源のヘッドスペースの圧力およびキャリアガスの流量のうちの1または複数を調整するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
調整するステップが、液体源の上流に配置された圧力調整弁、液体源の下流に配置された圧力調整弁、液体源の温度を調節するように構成された加熱器、および液体源の温度を調節するように構成された冷却器からなる群のなかから選択されているエフェクタを使用して達成されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、
触媒が、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化銅およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法において、
触媒反応性ガスが、過酸化水素ガスおよび からなる群のなかから選択されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法において、
キャリアガスが、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、蒸気、清浄乾燥空気、酸素、NH、二酸化炭素、およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択されることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項19に記載の方法において、
混合ガス流に曝す前に、触媒反応性ガスの露点を超える温度まで触媒を加熱するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
触媒に曝す前に、混合ガス流を加熱するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項19に記載の方法において、
混合ガス流が約0.076トール~800トールで提供されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項19に記載の方法において、
希釈触媒反応性ガスの所望の質量流量を達成するために調整するステップの後に、さらにステップ(d)-(f)を繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項19に記載の方法において、
混合ガス流が約15℃~150℃で提供されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項19に記載の方法において、
混合ガス流中の希薄触媒反応性ガスの濃度が、約500ppm~約25,000ppmであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、可燃性ガスに関し、より具体的には、熱上昇により、混合ガス流中の可燃性および/または触媒反応性ガスの濃度を測定する方法、システムおよびデバイスに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2017年3月17日に出願された米国出願第62/472,711号、および2017年8月30日に出願された米国出願第62/552,305号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
マイクロエレクトロニクスの製造および処理においては、様々なプロセスガスが使用される場合がある。さらに、様々な化学物質が、高純度ガスを必要とするその他の環境、例えば、重要プロセスにおいて使用される場合があり、そのようなプロセスには、マイクロエレクトロニクス・アプリケーション、ウェーハ洗浄、ウェーハボンディング、フォトレジスト剥離、シリコン酸化、表面パッシベーション、フォトリソグラフィマスク洗浄、原子層堆積、化学蒸着、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、細菌、ウイルスおよびその他の生物学的因子で汚染された表面の消毒、工業用部品の洗浄、医薬品製造、ナノ材料の製造、発電および制御装置、燃料電池、動力伝達装置、並びに、プロセス制御と純度が重要な考慮事項であるその他のアプリケーションが含まれるが、それらに限定されるものではない。これらのプロセスでは、温度、圧力および流量などの制御された動作条件下で、特定の量の特定のプロセスガスを供給する必要がある。
【0004】
様々な理由から、プロセス化学物質の気相供給は、液相供給よりも好ましい。プロセス化学物質の低質量流量を必要とする用途では、プロセス化学物質の液体供給は十分に正確または清浄ではない。ガス供給は、供給の容易さ、正確性および純度の観点から、望まれている。ガスフローデバイスは、液体供給デバイスよりも正確な制御に適している。さらに、マイクロエレクトロニクス・アプリケーションやその他の重要なプロセスは、通常、液体の供給よりも非常に容易にガスを供給する大規模なガス処理システムを有する。1つのアプローチは、使用場所またはその近傍でプロセス化学成分を直接気化させるというものである。液体の気化は、多くの汚染物質を残すプロセスを提供し、それによりプロセス化学物質を浄化する。しかしながら、安全性、取り扱い、安定性および/または純度の理由から、多くのプロセスガスは、直接気化するのに適していない。
【0005】
マイクロエレクトロニクス・アプリケーションおよび他の重要なプロセスで使用される多数のプロセスガスが存在する。オゾンは、半導体の表面を洗浄するために(例えば、フォトレジスト剥離のために)、あるいは酸化剤として(例えば、酸化物層または水酸化物層を形成するために)通常使用されるガスである。マイクロエレクトロニクス・アプリケーションやその他の重要なプロセスでオゾンガスを使用する利点の1つは、従来の液体ベースのアプローチとは対照的に、ガスが表面の高アスペクト比の特徴部にアクセスできることである。例えば、International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)によれば、現在の半導体プロセスは、7nm程度のハーフピッチに対応する必要がある。次の半導体の技術ノードは、5~7nmのハーフピッチを持つと予想されており、ITRSは近い将来5nm未満のハーフピッチを要求する。これらの寸法では、処理液の表面張力により、深い穴またはチャネルの底部や高アスペクト比の特徴部の隅部に処理液がアクセスできないため、液体ベースの化学処理を実行することはできない。これに対して、ガスはそのような表面張力の制限を受けないため、液体ベースのプロセスの特定の制限に対応するために、いくつかの例でオゾンガスが使用されている。しかしながら、オゾンおよびプラズマベースのプロセスには、特に、運転コスト、不十分なプロセス制御、狭い高アスペクト比の構造への浸透不良、望ましくない副反応、非効率的な洗浄などを含む独自の制限がある。
【0006】
より最近では、特定の用途におけるオゾンの代替物として過酸化水素が検討されている。しかしながら、高濃度の過酸化水素水は深刻な安全性と取り扱いの問題を有し、既存の技術を使用して気相で高濃度の過酸化水素を得ることは不可能であるため、過酸化水素の有用性は限られている。通常、過酸化水素は水溶液として入手することができる。さらに、過酸化水素は蒸気圧が比較的低いため(沸点が約150℃)、過酸化水素を運ぶための利用可能な方法およびデバイスは、一般に、十分な濃度の過酸化水素を含む過酸化水素含有ガス流を提供することはない。様々な過酸化水素溶液の蒸気圧および蒸気組成の研究については、例えば、hdl.handle.net/2027/mdp.39015003708784で入手可能なHydrogen Peroxide,Schumb,et al.,Reinhold Publishing Corporation,1955,New Yorkを参照されたい。さらに、研究によれば、真空への供給がさらに低い濃度の過酸化水素をもたらすことが示されている(例えば、Hydrogen Peroxide,Schumb,pp.228-229を参照されたい)。30mmHgの真空を使用して供給される30%のH水溶液の蒸気組成は、大気圧で供給される同じ溶液について予想される過酸化水素の約半分を生成すると予測される。
【0007】
低揮発性化合物の気相供給は、特に固有の問題を提示している。1つのアプローチは、プロセス化学物質が水または有機溶媒(例えば、イソプロパノール)などの揮発性のより高い溶媒と混合される多成分液体源を提供するというものである。ただし、多成分溶液が、供給される液体源(例えば、過酸化水素および水)である場合、多成分溶液に対するラウールの法則が意味を持つようになる。ラウールの法則によれば、理想的な2成分溶液の場合、溶液の蒸気圧は各成分の純粋な溶液の蒸気圧の加重和に等しくなり、ウェイトは各成分のモル分率となる。

上記方程式において、Ptotは2成分溶液の全蒸気圧、Pは成分Aの純溶液の蒸気圧、xは2成分溶液中の成分Aのモル分率、Pは成分Bの純溶液の蒸気圧、xは2成分溶液中の成分Bのモル分率である。このため、各成分の相対モル分率は、液相と、液体の上の気相とでは異なる。具体的には、揮発性の高い成分(すなわち、蒸気圧が高い成分)は、液相よりも気相の相対モル分率が高くなる。さらに、バブラーなどの一般的なガス供給装置の気相はキャリアガスによって連続的に流されるため、2成分の液体溶液の組成、ひいては液体上のヘッドスペースのガスが動的なものとなる。
【0008】
このため、ラウールの法則によれば、多成分液体溶液のヘッドスペースに真空が引かれるか、または気相で溶液を供給するために従来のバブラーまたは気化器が使用される場合に、揮発性の低い成分と比較して、液体溶液の揮発性の高い成分が溶液から優先的に除去される。これにより、気相で供給できる揮発性の低い成分の濃度が制限される。例えば、キャリアガスを30%の過酸化水素/水溶液に通して泡立てると、約295ppmの過酸化水素だけが運ばれて、残りがすべて水蒸気(約20,000ppm)とキャリアガスになる。
【0009】
多成分液体溶液がプロセスガスの供給源として使用される場合に生じる異なる供給速度は、反復可能なプロセス制御を困難にする。絶えず変化する混合物の周囲のプロセスレシピを書くことは困難である。さらに、液体源の成分の絶えず変化する比率を測定するための制御を得るのは容易ではなく、たとえ得ることができたとしても、それらはプロセスに組み込むのにコストがかかり、かつ困難である。さらに、液体源の成分の相対比が変化すると、特定の溶液は危険なものになる。例えば、水中の過酸化水素は約75%を超える濃度で爆発性となり、そのため、過酸化水素水溶液に乾燥ガスをバブリングするか、またはそのような溶液の上にあるヘッドスペースを空にすることによって過酸化水素を供給すると、安全な溶液(例えば、30%w/wのH/HO)を取り込んで、75%以上の過酸化水素である危険な材料に変換する可能性がある。そのため、現在利用可能な供給デバイスおよび方法は、多くのマイクロエレクトロニクス・アプリケーションおよびその他の重要なプロセスにおいて、制御された量のプロセスガスを一貫して、正確に、安全に供給するには不十分である。
【0010】
現在のところ、過酸化水素の気相測定のための他の証明された技術は存在しない。Ando et al.(米国特許第5,608,156号)は、気相のH濃度を測定する手段として半導体ガスセンサを使用することを開示している。しかしながら、反応時間が数十秒であり、センサの出力とHの濃度との関係が圧力によって変化する。Van Den Berg et al.(米国特許第5,600,142号)は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)に基づく方法を開示している。しかしながら、FT-IR法は大規模で、非常に費用がかかり、Hを水に分解するミラーを使用するため、過酸化水素については、誤った低い測定値、水蒸気については、誤った高い測定値が生じる。Freyer et al.(米国特許第6,491,881号)に記載されているように、水スペクトルおよび有機物は、Hスペクトルと負に重なり合う可能性がある。さらに、オゾン用に開発された紫外可視分光法(UV-Vis)ベースのセンサは、Hとともに使用する場合、頻繁に加熱および調整する必要がある。そのため、それらは高濃度を処理することができず、高温で機能しない。さらに、水信号はHと重複する可能性があり、正確な読み取りを行う前に水蒸気からHを分離するために追加の零圧調整ステップが必要である。加熱すると、センサに到達する前にHが分解する可能性がある。Hill et al.(米国特許第6,953,549号)は、Hを分解して、水分含有量を測定することにより、H蒸気濃度を測定することを検討している。プロセス開発用のH蒸気濃度では、湿度測定を何度も求める必要がある。さらに、質量流量を計算するには、温度、圧力、総ガス流量、ベースライン水蒸気、および分解中に生成される酸素の各々を正確に知る必要がある。また、Hを分解するには、センサが使用される場合に、そのプロセスの後にセンサを配置する必要がある。これは、プロセスレシピの他のガスが湿度センサと適合しない場合があるため、適当ではなく、不可能である可能性がある。Foller(国際公開第1991/005998号)は、オゾンまたは酸化塩素の濃度を測定するための熱分解センサについて述べている。Karlson(米国特許第5,167,927号)は、オゾンまたは過酸化水素の触媒分解の温度を測定するための触媒システムを記載している。Nather et al.(国際公開第2006/117328号)は、H蒸気の濃度を測定するための熱分解検出器について述べている。
【0011】
ただし、それら文献の各々は、標的分子の分解中に放出される発熱エネルギーに依存して、可燃性ガスの存在を示す電気信号を生成する。しかしながら、それらセンサは何れも、出力信号が広範囲のプロセス条件をカバーし、濃度の変化に比例する電気信号を出力する必要がある半導体プロセスアプリケーションでは使用できない。真空下での希薄ガス流中の追跡の説明も検討されていなかった。また、H濃度を測定し、その後、プロセスへのH蒸気の供給を安定させるために、生成された電気信号を使用して、H蒸気の温度を昇降させることにより、希薄H蒸気のプロセス制御が制御されるとは判断されていなかった。したがって、マイクロエレクトロニクス製造などのプロセスに供給される触媒反応性ガスの質量流量を制御するために、混合ガス流に供給される過酸化水素などの触媒反応性ガスのインライン測定のためのシステム、方法および/またはデバイスが必要である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、混合ガス流中の触媒反応性ガスの分解による熱上昇の測定が、触媒反応性ガスの濃度と相関するという知見に基づくものである。したがって、一態様では、本発明は、混合ガス流中の触媒反応性ガスの質量流量を制御するための質量流量制御システムを提供する。この質量流量制御システムは、液体源またはガス源から生成された触媒反応性ガスおよびキャリアガスを含む混合ガス流を提供する混合ガス源と、混合ガス流の第1の温度を測定するように構成された第1のプローブを含む第1のセンサと、混合ガス流の一部を受け入れるように構成された分解チャンバであって、触媒反応性ガスを分解するように構成された触媒を含む分解チャンバと、分解チャンバ内に配置されるとともに、触媒と触媒反応性ガスとの反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するように構成された第2のプローブを含む第2のセンサと、第1および第2のセンサと電気的に接続されたコントローラであって、混合ガス流と触媒との接触前後の温度変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を判定するように構成されたコントローラと、コントローラと電気的に接続されたエフェクタであって、液体源の温度、液体源のヘッドスペースの圧力、キャリアガスの質量流量またはそれらの任意の組合せを調整することにより、触媒反応性ガスの質量流量を変更するように構成されたエフェクタとを含む。
【0013】
様々な実施形態では、温度の変化が、触媒反応性ガスの質量流量の変化にほぼ比例する。様々な実施形態では、温度の変化が、混合ガス流の圧力または流量から相対的に独立している。様々な実施形態では、触媒反応性ガスが液体源から生成されるものであってもよい。様々な実施形態では、質量流量制御システムが、触媒反応性ガスの露点を超える温度まで触媒を加熱するように構成された第1の加熱器と、分解チャンバに配置されて、加熱された触媒の第3の温度を測定するように構成された第3のプローブを含む第3のセンサとを含むこともできる。さらに、第1の加熱器は、コントローラと電気的に接続されるようにしてもよい。
【0014】
触媒は、触媒反応性ガスとの反応に適したものを選択することができる。様々な実施形態では、触媒が、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、他の貴金属、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化銅およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択される。種々の実施形態では、CARULITE(登録商標)200、CARULITE(登録商標)300およびCARULITE(登録商標)400である。触媒は、アルミニウム温度センサ上にコーティングするようにしてもよい。触媒反応性ガスは、過酸化水素ガスまたはヒドラジンであってもよい。このため、様々な実施形態では、混合ガス流が、過酸化水素ガスと、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、蒸気、清浄乾燥空気、酸素、NH、二酸化炭素などのようなキャリアガスと、任意選択的に、水蒸気とを含むことができる。様々な実施形態では、液体源が、無水過酸化水素および無水ヒドラジンからなる群のなかから選択される。
【0015】
様々な実施形態では、システムによって供給される質量流量が、毎分約1ミリグラム~毎分10グラムである。様々な実施形態では、混合ガス流が、約10トール~2バールの圧力で提供される。様々な実施形態では、触媒反応性ガスの濃度が、約100パーツパーミリオン(ppm)~約100,000ppm(10%)、例えば約500ppm~約25,000ppmである。様々な実施形態では、混合ガス流が、約0.076トール~800トールで提供される。システムが真空下で動作している実施形態では、システムに供給される混合ガス流の圧力が約10.0~100.0トールである。様々な実施形態では、混合ガス流が、約15℃~約150℃、例えば、約20℃~約80℃、或いは約15℃~約80℃で提供される。エフェクタは、液体源の上流に配置された圧力調整弁、液体源の下流に配置された圧力調整弁、液体源の温度を調整するように構成された加熱器、または液体源の温度を調整するように構成された冷却器であってもよい。
【0016】
別の態様では、本発明は、混合ガス流中の触媒反応性ガスの質量流量を制御する質量流量制御システムを提供する。この質量流量制御システムは、オゾン発生器から発生したオゾンのような触媒反応性ガスおよびキャリアガスを含む混合ガス流を提供する混合ガス源と、混合ガス流の第1の温度を測定するように構成された第1のプローブを含む第1のセンサと、混合ガス流の一部を受け入れるように構成された分解チャンバであって、触媒反応性ガスを分解するように構成された触媒を含む分解チャンバと、分解チャンバ内に配置されるとともに、触媒と触媒反応性ガスとの間の反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するように構成された第2のプローブを含む第2のセンサと、第1および第2のセンサと電気的に接続されたコントローラであって、混合ガス流と触媒との接触前後の温度変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を判定するように構成されたコントローラと、コントローラと電気的に接続されたエフェクタであって、混合ガス源の温度、出力、圧力または質量流量を調整して、触媒反応性ガスの質量流量を変更するように構成されたエフェクタとを含む。
【0017】
触媒は、触媒反応性ガスとの反応に適したものを選択することができる。様々な実施形態では、触媒が、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、他の貴金属、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化銅およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択される。種々の実施形態では、CARULITE(登録商標)200、CARULITE(登録商標)300およびCARULITE(登録商標)400である。触媒は、アルミニウム温度センサ上にコーティングするようにしてもよい。このため、様々な実施形態では、混合ガス流が、オゾン発生器からのオゾンおよび/または酸素ラジカルと、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、蒸気、清浄乾燥空気、酸素、NH、二酸化炭素などのキャリアガスとを含むことができ、キャリアガスが、選択した触媒と反応しないように選択される。様々な実施形態では、触媒反応性ガスの濃度が、約100パーツパーミリオン(ppm)~約95%(950,000ppm)、例えば約1000ppm~約900,000ppmである。様々な実施形態では、混合ガス流が、約0.10トール~800トールで提供される。様々な実施形態では、混合ガス流が、約15℃~約350℃、例えば約20℃~約150℃で提供される。エフェクタは、オゾン発生器に電力を供給するように構成された電源であってもよい。
【0018】
様々な実施形態では、温度の変化が、触媒反応性ガスの質量流量の変化にほぼ比例する。様々な実施形態では、温度の変化が、混合ガス流の圧力または流量とは相対的に無関係である。様々な実施形態では、質量流量制御システムが、触媒反応性ガスの露点を超える温度まで触媒を加熱するように構成された第1の加熱器と、分解チャンバに配置されて、加熱された触媒の第3の温度を測定するように構成された第3のプローブを含む第3のセンサとを含むこともできる。さらに、第1の加熱器は、コントローラと電気的に接続されるようにしてもよい。
【0019】
様々な実施形態では、質量流量制御システムの上述した構成要素が、ハウジング内に配置されるようにしてもよい。様々な実施形態では、ハウジングが、入口と、入口と分解チャンバとの間の流体連通を提供するように構成された第1の管と、出口と、分解チャンバと出口の間の流体連通を提供するように構成された第2の管とを含む。第1のセンサは第1の管内に配置することができ、第2のセンサは分解チャンバまたは第2の管内に配置することができる。様々な実施形態では、質量流量制御システムが、分解チャンバと接触して配置された加熱器であって、触媒反応性ガスの露点より高い温度まで触媒を加熱するように構成された加熱器と、分解チャンバ内に配置されて、触媒の第3の温度を測定するように構成された第3のプローブを含む第3のセンサとを備えることもできる。様々な実施形態では、ハウジングが真空内に提供され、混合ガス流が少なくとも約0.3トール~800トールで提供される。
【0020】
別の態様では、本発明は、混合ガス流中の希薄触媒反応性ガスの質量流量を制御する方法を提供する。この方法は、混合ガス源から混合ガス流を提供するステップであって、混合ガス流が、液体源から生成された希薄触媒反応性ガスとキャリアガスとを含む、ステップと、混合ガス流の第1の温度を測定するステップと、触媒反応性ガスと反応するように構成された触媒に、混合ガス流の少なくとも一部を曝すステップと、触媒と触媒反応性ガスとの間の反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するステップと、混合ガス流と触媒との接触後の温度変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を測定するステップであって、温度変化が、混合ガス流の圧力または流量から相対的に独立している、ステップと、希釈触媒反応性ガスの所望の質量流量を達成するために、液体源の温度、液体源のヘッドスペースの圧力およびキャリアガスの流量のうちの1または複数を調整するステップとを含む。様々な実施形態では、希釈触媒反応性ガスの所望の質量流量を達成するために、上記ステップの何れかを繰り返すことができる。様々な実施形態では、混合ガス流が、約0.076トール~約800トール、例えば少なくとも約10.0トール~約100.0トールで提供される。様々な実施形態では、混合ガス流が、約15℃~約150℃、例えば約20℃~約80℃で提供される。様々な実施形態では、この方法が、混合ガス流に曝す前に、触媒反応性ガスの露点より高い温度に触媒を加熱するステップも含む。
【0021】
種々の実施形態では、調整するステップが、エフェクタを使用して達成される。エフェクタは、液体源の上流に配置された圧力調整弁、液体源の下流に配置された圧力調整弁、液体源の温度を調整するように構成された加熱器、または液体源の温度を調整するように構成された冷却器であってもよい。様々な実施形態では、混合ガス流中の触媒反応性ガスの総量が、約100ppm~約100,000ppm、例えば約500ppm~25,000ppmで提供される。
【0022】
触媒は、触媒反応性ガスとの反応に適したものを選択することができる。様々な実施形態では、触媒が、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、他の貴金属、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化銅およびそれらの任意の組合せからなる群のなかから選択される。種々の実施形態では、CARULITE(登録商標)200、CARULITE(登録商標)300およびCARULITE(登録商標)400である。可燃性ガスは、過酸化水素ガス、オゾンまたはヒドラジン( )である。このため、様々な実施形態では、混合ガス流が、過酸化水素ガスと、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、蒸気、清浄乾燥空気、酸素、NH、二酸化炭素などのようなキャリアガスと、任意選択的に、水蒸気とを含むことができる。様々な実施形態では、この方法が、触媒に曝す前に混合ガス流を加熱するステップを含む。様々な実施形態では、本発明が、センサからの信号に基づいて流量を制限することにより触媒反応性ガスの量を調節することができるように、制御弁とともに使用することができる。同様に、液体に対する熱を増減したり、あるいはオゾン源に対する電力を増減したりして、流量を増減させることによって、触媒反応性ガスの制御を行うことができる。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、熱分解センサを提供する。この熱分解センサは、入口および出口を有するハウジングと、ハウジング内に配置され、混合ガス流の触媒反応性ガスを分解するように構成された触媒を含む分解チャンバであって、分解チャンバが、ハウジングの入口に供給された混合ガス流の一部を受け入れるように構成され、混合ガス流が触媒反応性ガスおよびキャリアガスを含む、分解チャンバと、ハウジング内に配置されて、入口と分解チャンバとの間の流体連通を提供する第1の管と、ハウジング内に配置されて、分解チャンバと出口との間の流体連通を提供する第2の管と、第1の管内に配置されて、入口に供給される混合ガス流の第1の温度を測定するように構成された統合された第1のプローブを含む第1のセンサと、第2の管内に配置されて、触媒と触媒反応性ガスとの反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するように構成された統合された第2のプローブを含む第2のセンサとを備える。様々な実施形態では、熱分解センサが、ハウジング内に配置され、触媒反応性ガスの露点より高い温度まで触媒を加熱するように構成された加熱器と、加熱器に配置されて、触媒の第3の温度を測定するように構成された統合された第3のプローブを含む第3のセンサとを備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1Aおよび図1Bは、例示的な試験用P&IDを示す絵図である。
図2図2は、例示的な質量流量制御センサの断面図を示す絵図である。
図3図3は、キャリアガス流量を一定に保った状態での過酸化物の質量流量の変化に対する触媒抵抗熱デバイスの熱応答を示すグラフである。
図4図4は、キャリアガス流量を一定に保った状態での過酸化物の質量流量の変化に対する触媒の下流のキャリアガスの熱吸収を示すグラフである。
図5図5は、異なるキャリアガス流量での過酸化物の質量流量の変化に対する触媒抵抗熱デバイスの熱応答を示すグラフである。
図6図6は、異なるキャリアガス流量での触媒下流の過酸化物の質量流量の変化に対するキャリアガスの熱吸収を示すグラフである。
図7図7は、ガス温度の温度変化により正規化された過酸化物の質量流量の変化に対するキャリアガスの熱吸収を示すグラフである。
図8図8は、過酸化物の質量流量の変化に対するキャリアガスの熱吸収を示すグラフである。
図9図9は、過酸化物の質量流量の変化に対するキャリアガスの熱吸収を示すグラフである。
図10図10は、例示的な試験用P&IDを示す絵図である。
図11図11は、例示的なセンサ内部の様々な圧力での触媒層の熱応答の関数としての過酸化水素の質量流量を示すグラフである。
図12図12は、例示的なセンサ内部の様々な圧力で触媒層を通過した後のキャリアガスの熱吸着の関数としての過酸化水素の質量流量を示すグラフである。
図13図13は、様々な過酸化水素流量での例示的なセンサの熱応答に対するセンサ圧力の影響を示すグラフである。
図14図14は、様々な過酸化水素流量での例示的なセンサのキャリアガスへの熱吸着に対するセンサ圧力の影響を示すグラフである。
図15図15は、試験データから生成された例示的な検量線を示すグラフである。
図16図16は、試験データから生成された全体的な検量線を示すグラフである。
図17図17は、液体源の温度を使用して反応性ガスの質量流量を調整できることを示すグラフである。
図18図18は、液体源の温度を使用して反応性ガスの質量流量を調整できることを示すグラフである。
図19図19は、異なる触媒温度でのH質量流量の関数としてのセンサ熱応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、混合ガス流中の触媒反応性ガスの分解による熱上昇の測定が触媒反応性ガスの濃度と相関するという知見に基づくものである。触媒反応性ガスは様々な活性金属表面(触媒)上において低温で容易に分解するため、触媒との反応後の温度変化により、キャリアガスとは無関係に混合ガス流中の触媒反応性ガスを監視する能力を適用することができる。このように、本発明は、半導体、マイクロエレクトロニクス、ディスプレイ、LEDのために、さらには食品サービス、医療、病院および輸送機関の滅菌のために、パッシベーションまたは酸化プロセスで使用されるときに、過酸化水素ガスなどの触媒反応性ガスの質量流量を制御および/または測定する方法、システムおよび装置を提供する。
【0026】
このため、本発明は、熱分解センサであって、(i)キャリアガス中の希釈可燃性ガスの測定を可能にし、(ii)キャリアガス流量を相対的に一定に保ちながら、可燃性ガスの質量流量の線形変化を有する線形出力信号を提供し、(iii)真空圧力下でのキャリアガス中の希釈可燃性ガスの測定を可能にして、重要なプロセスの継続的な監視を提供し、(iv)キャリアガス中の可燃性ガスの実際の量を所望の設定値と比較した後、可燃性ガスの測定量が設定値の許容範囲内になるように可燃性ガスの量を増減する様々な手段で可燃性ガスの量を調整できるようにすることによって、キャリアガス中の希釈可燃性ガスの供給の正確な制御を可能にし、(v)希薄可燃性ガスの凝縮温度より高い固定温度に触媒を加熱できるようにすることにより、供給される可燃性ガスの正確な制御と再現性を可能にするように構成された熱分解センサを提供する。
【0027】
本発明の組成物および方法を説明する前に、本発明は、説明した特定の組成物、方法および試験条件に限定されるものではなく、そのような組成物、方法および条件は変わり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことも理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「the method」に対する言及は、1または複数の方法、および/または本明細書に記載のタイプのステップを含み、それらは、本開示等を読むことにより、当業者に明らかになるであろう。
【0029】
「including」、「containing」または「characterized by」と交換可能に使用される「comprising」という用語は、包括的またはオープンエンドの言語であり、追加の、引用されていない要素または方法のステップを除外するものではない。「consisting of」という語句は、請求項で特定されていない任意の要素、ステップまたは成分を除外する。「consisting essentially of」という語句は、特定の材料またはステップ、および請求項に係る発明の基本的な新規の特徴に実質的に影響を与えないものに、請求項の範囲を限定する。本開示は、それら語句の各々の範囲に対応する本発明の組成物および方法の実施形態を企図している。したがって、記載した要素またはステップを含む組成物または方法は、組成物または方法がそれらの要素またはステップから本質的になる、またはそれらからなる特定の実施形態を企図している。
【0030】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。
【0031】
本明細書で使用される「モル比」は、混合ガス流においては、特定のガス成分のモル比が、個々のガス成分のモル流量を混合ガス流全体の総モル流量で割ったものであることを意味すると一般に理解される。比率は一般に、比率に100を掛けたパーセンテージとして使用される。
【0032】
本明細書で使用される「キャリアガス」は、一般的に標的ガスの触媒と反応しない標的ガスの物質移動速度の物質輸送を強化するために使用されるガスである。したがって、キャリアガスは、典型的には、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、蒸気、清浄乾燥空気、酸素、NH、二酸化炭素などの不活性ガスと、任意選択的には水蒸気であるが、それらに限定されるものではない。
【0033】
本明細書で使用される「質量流量計(mass flow meter)」または「MFM」は、管、パイプまたは密閉チャネルを通って移動する流体の質量流量を測定するデバイスである。「質量流量」は、単位時間あたりの固定点を通過する流体の質量である。よって、流体の体積流量は、質量流量を流体密度で割ったものである。ガスの場合、理想気体の状態方程式を使用して体積流量を求めることができ、標準リットル/分(22.4L/mol)で測定される。
【0034】
本明細書で使用される「質量流量コントローラ(mass flow controller)」または「MFC」は、液体および気体の流れを測定および制御するために使用されるデバイスである。質量流量コントローラは、特定の範囲の流量で特定のタイプの液体または気体を制御するように設計および調整されている。MFCには、フルスケール範囲の0~100%の設定値を指定することができるが、通常は、最高の精度が得られるフルスケールの10~90%で動作される。その後、デバイスは、指定された設定値に対する流量を制御することとなる。そのため、MFCとMFMの主な違いは、MFCが質量流量を増減する能動要素(エフェクタ)を含む点である。例示的な能動要素(エフェクタ)には、流体弁、圧力調整弁、液体源の温度を調節するように構成された下流の熱入力部(加熱器)、液体源の温度を調節するように構成された冷却器、オゾン発生器に電力を供給するように構成された電源、またはその任意の組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0035】
本明細書で使用される「抵抗温度検出器(resistance temperature detector)」または「RTD」は、温度が変化するに連れて抵抗値が変化する抵抗器を含む温度センサを指している。通常、このような温度センサには、統合プローブまたは外部プローブが含まれ、抵抗許容差と温度係数の組み合わせにより、RTDセンサの抵抗対温度特性が定義される。例えば、要素の許容差が大きいほど、一般化された曲線からセンサがより大きく逸脱し、センサ毎にバラツキ(交換可能性)が大きくなる。
【0036】
本明細書で使用される「熱電対(thermocouple)」または「TC」は、異なる温度で電気接合を形成する2つの異なる導体からなる電気デバイスを指している。熱電対は、熱電効果の結果として温度依存電圧を生成し、この電圧を読み取って温度を測定することができる。
【0037】
本明細書で使用される、触媒反応性ガスの「凝縮温度」および「露点」という用語は、触媒反応性ガスが(所与の圧力で)気相から凝縮し始める温度を指すために同義的に用いられる。
【0038】
過酸化水素蒸気のカスタマーアプリケーションは、良好なプロセス制御を達成するために、非常に安定した再現性のある化学物質の送達を必要とする。例えば、原子層堆積には、真空と大気圧下で、ウェーハに供給される前駆体化学物質の濃度を測定する能力が必要である。BRUTE(登録商標)Peroxide(カリフォルニア州サンディエゴのRASIRC,Inc.)として知られる無水過酸化水素および有機溶媒の配合物は、水と酸素にゆっくりと連続的に分解される。さらに、配合物の使用中、Hが消費されるため、過酸化水素ガスの蒸気圧が絶えず低下し、よってキャリアガスに対するモル比も絶えず低下する。したがって、本明細書に開示されるシステムおよびデバイスは、プロセスに供給される触媒反応性ガスの出力を制御するために、過酸化水素などの触媒反応性ガスのインライン測定および質量流量制御の能力を提供する。本明細書で実証されるように、システムおよびデバイスは、BRUTE(登録商標)Peroxideのアンプルから供給される過酸化水素ガスの出力を安定化する。様々な実施形態では、過酸化水素ガスの出力を測定して、アンプル温度の閉ループ調整を提供することにより、安定化した供給が達成される。
【0039】
圧縮ガスを測定するために一般的に使用されるサーマルMFCの設計要素は、当業者に周知である。Horiba、STECおよびBrooksなどの製造業者は、ガス流量について1%より良好な精度で測定できるMFCおよびMFMを製造している。しかしながら、2以上のガスが未知の比率で混合されている場合、組み合わされた混合ガス流の新たな比熱を知ることはできない。そのため、例えば、過酸化水素ガス、水蒸気およびキャリアガスの混合物は、任意のフロー条件に対して単一の出力を提供するが、過酸化水素ガスの量は依然として未知のままとなる。さらに、触媒反応性ガスはプロセスのドーパントとして添加される。このため、添加量は、10%未満、1%未満、0.1%未満、あるいは一般にppmまたは100万分の1で表されるように、0.01%未満の場合もある。添加量は、多くの場合、0.1%~2.5%である。この少量の材料は、添加しても、標準タイプのサーマルMFCで測定可能な信号を生成することはない。そのため、過酸化水素ガス分子はキャリアガスとともに供給され、水蒸気を含むため、この用途では、標準のMFCまたはMFMを使用することができない。ガスの混合により、質量流量コントローラは過酸化水素ガス含有量を選択的に測定することができない。UV-VisやFT-IRなどの他の分析方法は、真空中で有効ではないか、またはOEM半導体原子層堆積(ALD)機器への統合には、不向きであり、大きく、かつ/または費用がかかる。
【0040】
過酸化水素蒸気濃度センサの統合は、PPM(体積あたり百万(10)分の1部)~パーセンテージ(%)の過酸化水素蒸気の出力の閉ループ制御を可能にする。これは、過酸化水素気化器内の温度を昇降するか、液体源のヘッドスペース上の圧力を調整することによって可能になる。これにより、流量、過酸化水素濃度および過酸化水素浴温度を考慮することができるアルゴリズムを開発する必要がなくなる。また、気化器の温度が安定するため、熱ドループに対する出力感度も取り除かれる。膜が安定剤などの汚染物質に曝されると、温度によるスループットが低下する。過酸化水素蒸気センサはこのドリフトを緩和する。
【0041】
したがって、本開示は、大気圧および大気圧未満で触媒反応性ガスの質量流量の測定を可能にするために、触媒反応性ガス(例えば、過酸化水素ガス、ヒドラジン( )またはオゾン)の分解熱に基づく熱分解センサを提供する。様々な実施形態において、触媒反応性ガスは、液体源またはガス源から生成される。特定の実施形態では、触媒反応性ガスが、オゾン発生器を使用して生成されるオゾンである。
【0042】
過酸化水素ガスの1つの重要な特徴は、様々な活性金属表面上において低温で容易に分解することである。過酸化水素ガスの分解は高発熱性である。実績のある熱センサ技術を使用し、触媒を加えてガスを分解することにより、本発明のシステムおよびデバイスは、水蒸気およびキャリアガスとは相対的に無関係に、混合ガス流中の過酸化水素ガスを監視することができる。よって、得られた質量流量制御システムは、混合ガス流中の触媒反応性ガスの質量流量を制御する際に用途を見出す可能性がある。
【0043】
一実施形態では、システムが、触媒反応性ガスおよびキャリアガスを含む混合ガス流Gを提供する混合ガス源50を含む。様々な実施形態では、混合ガス流が液体源またはガス源から生成される。また、システムは、触媒反応性ガスを含む混合ガス流の第1の温度を測定するように構成されたプローブを含む第1のセンサと、混合ガス流の一部を受け入れるように構成された分解チャンバとを含み、分解チャンバが、触媒反応性ガスと反応するように構成された触媒を含む。システムは、分解チャンバ内に配置され、触媒と触媒反応性ガスの反応後の混合ガス流の第2の温度を測定するように構成されたプローブを含む第2のセンサも含む。様々な実施形態では、システムが、第1および第2センサと電気的に接続されたコントローラをさらに含み、このコントローラが、混合ガス流と触媒の接触前後の温度変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を求めるように構成されている。様々な実施形態では、システムが、コントローラと電気的に接続されたエフェクタも含み、このエフェクタが、液体源の温度、液体源のヘッドスペースの圧力、またはオゾン源への電力、圧力またはガスの流れのうちの1または複数を調整することにより、触媒反応性ガスの質量流量を調整するように構成されている。
【0044】
デバイスに有用な例示的な触媒には、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、他の貴金属、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化銅およびそれらの任意の組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。種々の実施形態では、触媒が、CARULITE(登録商標)200、CARULITE(登録商標)300またはCARULITE(登録商標)400である。種々の実施形態では、触媒が、ステンレス鋼またはアルミニウム温度センサ上にコーティングされる。
【0045】
別の態様において、本発明は、混合ガス流中の希釈触媒反応性ガスの質量流量を制御する方法を提供する。この方法は、混合ガス源から混合ガス流を提供するステップであって、混合ガス流が希釈触媒反応性ガスおよびキャリアガスを含む、ステップと、それに続いて、混合ガス流の第1の温度を決定するステップとを含む。その後、この方法は、混合ガス流の少なくとも一部を、触媒反応性ガスと反応するように構成された触媒に曝すステップと、触媒と触媒反応性ガスとの反応に続いて混合ガス流の第2の温度を測定するステップとを含む。この方法は、混合ガス流と触媒との接触後の変化を測定することにより、触媒反応性ガスの質量流量を測定するステップも含み、温度の変化が、混合ガス流の圧力または流量から相対的に独立している。最後に、この方法は、希釈触媒反応性ガスの所望の質量流量を達成するために、液体源の温度、液体源のヘッドスペースの圧力およびキャリアガスの流量のうちの1または複数を調整するステップを含む。様々な実施形態において、この方法は、混合ガス流に曝す前に、触媒反応性ガスの露点より高い温度に触媒を加熱するステップを含む。様々な実施形態において、この方法は、加熱された触媒に曝す前に混合ガス流を加熱するステップも含むことができる。様々な実施形態において、希釈触媒反応性ガスの所望の質量流量を達成するために、上記ステップの何れかが繰り返されるようにしてもよい。
【0046】
さらに別の態様において、本発明は、熱分解センサ10を提供し、この熱分解センサが、入口12、第1の管14、第2の管16および出口18を含み、それらがすべてハウジング20内に配置されている。第1の管14内には、流入する混合ガス流Gの温度を測定するように構成された統合された第1のプローブ36を有する第1のセンサ24が配置されている。第1の管14および第2の管16と流体連通する分解チャンバ26が設けられ、この分解チャンバが、流入する混合ガス流Gの少なくとも一部を受け入れるように構成されている。分解チャンバ26内には、混合ガス流G中の触媒反応性ガスを分解するように構成された触媒28が配置されている。様々な実施形態では、分解チャンバ26が加熱器30も含むことができ、当該加熱器が、触媒反応性ガスの露点より高い温度に触媒を加熱するように構成され、かつ/または触媒と接触する前に、流入する混合ガス流Gを加熱するように構成されている。第2の管16内には第2のセンサ32が配置され、この第2のセンサが、触媒28と触媒反応性ガスとの間の反応後のキャリアガスの温度を測定するように構成された統合された第2のプローブ36を有する。様々な実施形態では、第2のセンサ32が第2の管16内に配置される場合に、統合されたプローブ36を有する第3のセンサ34が、加熱器30または分解チャンバ26内に配置されて、触媒28および/または分解チャンバ26の温度を測定するように構成されている。
【0047】
本開示は、プロセスシステムにおける過酸化水素の供給に関連するシステムの使用を示しているが、このシステムは、例えばヒドラジンまたはオゾンなど、触媒で分解するか、または他の方法で触媒と反応する他のガスに使用されることが想定される。
【0048】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図したものであって、限定することを意図したものではない。
【0049】
実施例1
図1Aおよび図1Bは、抵抗熱デバイスに固定された触媒材料を使用して、真空下でのH蒸気分解の熱応答を試験するための例示的な試験装置を示している。なお、図1Aおよび図1Bに示すシステムは、僅かな変更により、H、ヒドラジン( )またはオゾンの何れかの制御された供給を提供するために使用され得ることを理解されたい。この試験では、300mgのCarulite-300をRTD2の周りに詰め、RTD2の各側にある2つの80メッシュのステンレス鋼スクリーンで閉じ込めた。充填層の直径は0.35インチであり、スクリーンを有する充填層の全長は~0.31インチであった。RTD1は入口キャリアガスの温度を測定し、RTD3は充填層での分解後のキャリアガスの温度を測定した。この試験装置では、RTD3は、熱伝導が最小限に抑えられるように、充填層との間に3/8インチのギャップを有していた。
【0050】
図2は、熱分解センサの例示的なレイアウトを示している。図示のように、熱分解センサ10は、入口12、第1の管14、第2の管16および出口18を含み、それらはすべてハウジング20に配置されている。第1の管14内には、第1のセンサ(抵抗温度検出器;RTD1)24が配置され、この第1のセンサは、流入する混合ガス流Gの温度を測定するように構成された統合された第1のプローブ36を備えている。第1の管14および第2の管16と流体連通する分解チャンバ26は、流入する混合ガス流Gの少なくとも一部を受け入れるように構成されている。分解チャンバ26内には、混合ガス流G中の触媒反応性ガスを分解するように構成された触媒28が配置されている。様々な実施形態では、分解チャンバ26が加熱器30も含むことができ、当該加熱器は、触媒反応性ガスの露点を超える温度まで触媒を加熱するように構成され、かつ/または触媒と接触する前に流入する混合ガス流Gを加熱するように構成されている。第2の管16内には、第2のセンサ(抵抗温度検出器;RTD3)32が配置され、当該第2のセンサが、触媒28と触媒反応性ガスとの間の反応後にキャリアガスの温度を測定するように構成された統合された第2のプローブ36を有する。様々な実施形態では、第2のセンサ32が第2の管16内に配置される場合に、統合されたプローブ36を有する第3のセンサ(抵抗温度検出器;RTD2)34が、加熱器30または分解チャンバ26内に配置されて、触媒28および/または分解チャンバ26の温度を測定するように構成されている。
【0051】
熱分解センサ(10)は、1Lの液体トラップの下流に設置した。圧力調整器-1(PR-1)を8psigに設定し、M2のベース圧力を12トール±2トールに設定した。NV-1を調整することにより気化器のヘッドスペースの圧力を25、50、75トールに設定して試験を繰り返し、それによりセンサに送達される過酸化物の質量流量を減らし、検量線を作成できるようにした。
【0052】
4つの一連の試験を、200sccmの窒素キャリアガス流の下で、Carulite-300充填層センサで行った。一連の試験のそれぞれの間にヘッドスペース圧力を75、50、25から12トールに変更して、キャリアガス流量を一定に保ちながらキャリアガス流中の過酸化物の質量流量を変更した。得られた過酸化物の質量流量は、それぞれ4.56、6.83、12.5、および15.3g/分であった。表1は、触媒充填層の熱応答(RTD2)とキャリアガスへの熱吸収の熱応答(RTD3)を要約したものである。図3および図4は、表1の結果をプロットし、200sccmおよび9トールのセンサ圧力に有効な線形相関に適合させたものである。
【0053】
同じキャリアガス流量での乾燥窒素による60分間のパージを、各60分間の過酸化物蒸気暴露の前に実行する。供給される平均質量流量は、質量差(前-後)により計算して、総H実行時間で割る。例えば、「4.56mg/分の試験」で気化した総質量は0.82gであり、これは、気化器に200sccmを流した場合に180分(60分パルス3回)に亘って発生したものである(すなわち、820mg/180分)。

【0054】
触媒充填層のRTD(2-1)とキャリアガスへの熱吸収のRTD(3-1)の両方の熱応答は線形であることが分かった。両方の曲線のR2値は0.99を超えていた。9トールのセンサ圧力および200sccmのキャリアガス流量では、キャリアガスへの熱伝達が低いことが分かった。これらの条件下において、触媒層の温度上昇は、キャリアガスの温度上昇よりも約6倍大きかった。
【0055】
キャリアガス流量の影響:次の一連の試験は、センサを通るキャリアガス流量を200、350から500sccmまで変化させるものである。上述した手順と同じ手順を使用した。これらの試験の目的は、キャリアガス流量の変化がRTD2およびRTD3の平衡温度にどのように影響するかを実証することである。各キャリアガス流量で、NV-1を使用してBRUTE過酸化物のヘッドスペース圧力を調整し、H質量流量を変化させた。各キャリアガス流量の熱応答を個々の組にグループ化して、比較した(図5および図6)。
【0056】
図5に示すように、RTD(2-1)の平衡温度は、同じH質量流量に対してキャリアガス流量が増加するに連れて低下する(すなわち、キャリアガス流量の増加とともに線形傾向が左にシフトする)。反対に、RTD(3-1)の平衡温度は、同じH質量流量に対してキャリアガス流量が増加するに連れて上昇する(すなわち、キャリアガス流量の増加とともに線形傾向が右にシフトする(図6))。
【0057】
理論に拘束されるものではないが、平衡熱比は以下のように定義される。

【0058】
図7は、キャリアガス流量に対する熱比をプロットしている。各キャリアガス流量の点のグルーピングは、広範囲のH質量流量(4~18mg/分)を有する。センサ圧力は、キャリアガス流量がそれぞれ200、350、500および1000sccmの場合、9、12、15および42トールに維持された。
【0059】
熱比は、キャリアガス流量に指数関数的に依存する。キャリアガスの流量がゼロに近付くと、センサの圧力は1トール未満になる。過酸化物蒸気の質量流量は、2.6~13.2sccm(4~20mg/分)の範囲である。キャリアガス流がない場合、対流および伝導の熱伝達は僅かであり、RTD(3-1)の熱応答が~0℃であることが分かった。以下の熱比制限を結論付けることができる。

【0060】
熱比を使用して、過酸化物蒸気の質量流量とは無関係にキャリアガス流量を求めることができる。RTD(3-1)またはRTD(2-1)の平衡温度応答を使用して、過酸化物蒸気の質量流量を求めることができる。両方の相関関係により、カスタマーからの情報なしで、ガス流中のHの濃度を概算することができる。
【0061】
変化するセンサ圧力の影響:センサの圧力は、RTD2およびRTD3の平衡温度に影響を与える。センサ圧力が高くなると、より多くの熱がキャリアガスに移動する。これにより、Carulite充填層の平衡温度が低くなり、キャリアガスの温度吸収が大きくなる。流体圧力が増加するに連れて、ガスの密度がより高くなり、滞留時間が増加する。よって、より多くのキャリアガス分子がCaruliteと衝突して熱を除去することができる。
【0062】
熱比は、10~200トールのセンサ圧力範囲で評価した。平衡熱比は、センサ圧力の増加とともに徐々に増加することが分かった(図8)。キャリアガスの流量が少ないと、その現象はより急激なものとなる。
【0063】
センサは、17トールおよび500sccmで調整した。過酸化物蒸気の質量流量は、7.33から20.3mg/分(11ポイント)まで変化した。RTD(3-1)が最適であることが分かった(図9)。次の調整式を使用した。

【0064】
実施例2
図10は、H蒸気分解の特定の圧力範囲で機能する調整されたセンサを準備するための試験装置を示している。上述したように、僅かな変更により、図10に示すシステムを使用して、H、ヒドラジン( )またはオゾンの何れかの制御された送達を提供できることを理解されたい。この試験では、20℃で、様々なBRUTE(登録商標)Peroxide Vaporizer(BPV)ヘッドスペース/アンプル圧力で、70、200、350および500トールの圧力下において、センサを動作させた。熱分解センサ(10)は、NV-1の下流とM3の上流に設置した。
【0065】
試験前後のBPV質量の変化から計算されたH質量流量は、センサ内部の充填層の熱応答およびキャリアガスへの熱吸着に対してプロットした。それらプロットは、図11および図12にそれぞれ示されている。熱応答と熱吸着の両方が、Hの質量流量と正の線形関係を示した。特に指定のない限り、試験はすべて20℃で500sccmのキャリアガス流量で実行した。

【0066】
センサ圧力の影響を考慮して、2つのバージョンの検量線の試験を行った。一方はセンサ圧力を低(<100トール)、中(100~200トール)および高(>200トール)の範囲で区分関数に分類し(図15)、他方はセンサ圧力を補正しない全体的な検量線である(図16)。区分的な検量線の最大誤差は約5%RDであるが、全体的な検量線の最大誤差は約14%RDである。
【0067】
センサが閉ループ熱制御システムで使用できることを証明するために、500sccmおよび20℃でBPVの曲線を生成した。曲線を生成するために、BPVで可変圧力を設定した。BPVの過酸化水素の蒸気圧曲線に基づいて、環境チャンバ内の温度を30℃に設定し、温度が均一に分布するように試験前に4時間流した。なお、環境チャンバは、上述したように混合ガス源を加熱するように構成された加熱器を含むことを理解されたい。その後、200トールのヘッドスペース圧力により、200トール、500sccmでセンサを動作させた。Hの質量流量は、約9.92 mg/分で、熱応答は約15.44℃であった。データは、図17および図18のセンサの同じ動作条件下で、20℃における以前の試験から得られたポイントでプロットした。図17では、R2平方係数が、20℃のデータセットに追加されたときに、30℃ポイントで0.9994であった。これは、センサにおける所定の条件セット(例えば、圧力および混合ガスの流量)に対して、エフェクタが液体源の圧力またはその温度の何れかを変更して、反応性ガスの既知の出力を生成できることを示している。
【0068】
このため、触媒反応性ガス供給ループにセンサを組み込むことにより、混合ガス流に加えられる触媒反応性ガスの質量は、液体源の温度または圧力を上昇または低下させることにより調節することができる。図17および図18に示すように、所与の条件セットに対して検量線を生成することにより、電子コントローラは、液体源の温度または圧力を調整して、過酸化水素などの触媒反応性ガスの予測出力を生成および測定することができる。例えば、ユーザが10mg/分の過酸化水素ガスを供給する必要がある場合、BPV温度を30℃に調整することができ、それにより9.92mg/分の値が得られる。10mg/分に近付けるには、センサからの出力と以前に作成した検量線とに基づいて、温度をさらに調整するようにしてもよい。同様に、固定された温度を維持して、BPVヘッドスペースの圧力を変化させることにより、出力が調整される。
【0069】
このように、この実施例は、表2(上記)に示すように、熱センサが混合ガス流中の4,900ppm~24,800ppmのキャリアガス中の過酸化水素を測定できたことを実証している。図16に示すように、感度は2,200ppm~15,600ppm、または0.2%~1.6%の範囲であった。
【0070】
実施例3
この実施例では、Watlow加熱ロッド、熱電対および熱スイッチ(ミズーリ州セントルイスのWatlow Electric Manufacturing Co.)の追加により、熱分解センサに変更を加えた。変更を加えたセンサは、Watlow加熱器を制御するWatlowコントローラと組み合わせて使用した。センサは、(加熱器を介して制御により)設定温度に調整した。
【0071】
試験は、20℃の環境チャンバ内で実行した。Watlow加熱器を50℃に設定し、試験全体を通じてセンサ触媒を約46℃に維持した。図19に、20℃および50℃での熱分解センサの熱応答を示す。図示のように、センサ/触媒温度の上昇とともに、熱応答が増加した。そのため、触媒活性は、触媒温度と正の関係にあることが認められ、このことは、反応速度が温度とアレニウスの関係にあるため、予想することができる。Hの同じ質量流量の場合、熱応答は触媒温度の変化とともに変化する。
【0072】
上記実施例を参照しながら本発明を説明してきたが、修正および変更が本発明の主旨および範囲内に含まれることを理解されたい。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19