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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20220909BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220909BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/03 300D
B60C11/03 300E
B60C11/12 A
B60C11/13 B
B60C11/13 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019558147
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043532
(87)【国際公開番号】W WO2019111757
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2017235973
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】石原 暢之
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082307(JP,A)
【文献】特開平07-215017(JP,A)
【文献】特開平09-076711(JP,A)
【文献】特開2013-132983(JP,A)
【文献】特開2017-024476(JP,A)
【文献】特開2016-037174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部にブロックを備えたタイヤであって、
ブロックは、タイヤ周方向におけるブロック中央部のブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された中央サイプと、中央サイプのタイヤ周方向の両側に隣接してブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された一対の隣接サイプと、を有し、
一対の隣接サイプのタイヤ半径方向の深さは、中央サイプのタイヤ半径方向の深さより小さく、
ブロックのタイヤ周方向における端壁と当該端壁に近いほうの隣接サイプのタイヤ周方向の距離は、隣接サイプのタイヤ半径方向の深さ以上であるタイヤ。
【請求項2】
トレッド部にブロックを備えたタイヤであって、
ブロックは、タイヤ周方向におけるブロック中央部のブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された中央サイプと、中央サイプのタイヤ周方向の両側に隣接してブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された一対の隣接サイプと、タイヤ周方向両側の端壁の間でタイヤ周方向に沿って延びる側壁と、を有し、
一対の隣接サイプのタイヤ半径方向の深さは、中央サイプのタイヤ半径方向の深さより小さく、
タイヤ半径方向面とブロックの側壁とのなす側壁角度は、ブロック中央部から端壁に向かって大きくなるタイヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたタイヤにおいて、
ブロックを区画するタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝と、ブロックを区画するタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向溝と、を備え、
幅方向溝のタイヤ半径方向の深さは、周方向溝のタイヤ半径方向の深さの1/2より大きく3/4以下であり、
中央サイプのタイヤ半径方向の深さは、幅方向溝のタイヤ半径方向の深さと同じであるタイヤ。
【請求項4】
請求項に記載されたタイヤにおいて、
一対の隣接サイプのタイヤ半径方向の深さは、周方向溝のタイヤ半径方向の深さの1/2以上であり、かつ、中央サイプのタイヤ半径方向の深さより小さいタイヤ。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載されたタイヤにおいて、
中央サイプと隣接サイプのタイヤ周方向の距離は、隣接サイプのタイヤ半径方向の深さの1/3以上1/2以下であるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にブロックを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷路面で使用されるタイヤでは、氷路面におけるタイヤの性能(氷上性能)に応じて、トレッドパターンが設定されており、各種のブロックがトレッド部に形成されている。また、従来、ブロックのタイヤ周方向における中央部に2つのサイプを形成して、氷上性能を向上する空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された空気入りタイヤに対し、氷上性能を更に向上するためには、ブロックに形成するサイプの数を増やして、ブロック内のエッジ成分を増加するのが一般的である。ところが、サイプの数が多くなるほど、ブロック内でサイプにより区画された部分(区画ブロック)が小さくなり、車両の走行時に、区画ブロックが変形し易くなる。そのため、区画ブロックの欠損に対処する必要性が高くなる。従って、従来のタイヤにおいては、ブロックの耐欠損性能とタイヤの氷上性能をともに向上する観点から、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-149768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされ、その目的は、トレッド部のブロックの欠損を抑制しつつ、タイヤの氷上性能を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部にブロックを備えたタイヤである。ブロックは、タイヤ周方向におけるブロック中央部のブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された中央サイプと、中央サイプのタイヤ周方向の両側に隣接してブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された一対の隣接サイプと、を有している。一対の隣接サイプのタイヤ半径方向の深さは、中央サイプのタイヤ半径方向の深さより小さい。ブロックのタイヤ周方向における端壁と当該端壁に近いほうの隣接サイプのタイヤ周方向の距離は、隣接サイプのタイヤ半径方向の深さ以上である。
また、本発明は、トレッド部にブロックを備えたタイヤである。ブロックは、タイヤ周方向におけるブロック中央部のブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された中央サイプと、中央サイプのタイヤ周方向の両側に隣接してブロック踏面にタイヤ幅方向に沿って形成された一対の隣接サイプと、タイヤ周方向両側の端壁の間でタイヤ周方向に沿って延びる側壁と、を有している。一対の隣接サイプのタイヤ半径方向の深さは、中央サイプのタイヤ半径方向の深さより小さい。タイヤ半径方向面とブロックの側壁とのなす側壁角度は、ブロック中央部から端壁に向かって大きくなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トレッド部のブロックの欠損を抑制しつつ、タイヤの氷上性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。
図2】第1実施形態の第1陸部を示す平面図である。
図3】第1実施形態のブロックを示す側面図である。
図4】第1実施形態のブロックの接地時の状態を示す側面図である。
図5】一部が路面から離れた状態のブロックを示す側面図である。
図6】第2実施形態のブロックを示す斜視図である。
図7】第2実施形態のブロックの断面図である。
図8】第2実施形態のブロックの接地時の状態を示す断面図である。
図9】第3実施形態のタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタイヤの一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のタイヤは、車両用の空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用タイヤ、重荷重用タイヤ、乗用車用タイヤ)であり、一般的なタイヤ構成部材により、周知の構造に形成されている。即ち、タイヤは、一対のビード部と、一対のビード部のタイヤ半径方向の外側に位置する一対のサイドウォール部と、路面に接触するトレッド部と、トレッド部と一対のサイドウォール部の間に位置する一対のショルダー部を備えている。また、タイヤは、一対のビードコアと、一対のビードコアの間に配置されたカーカスと、カーカスの外周側に配置されたベルトと、所定のトレッドパターンを有するトレッドゴムを備えている。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のタイヤ1のトレッドパターンを示す平面図であり、トレッド部2のタイヤ周方向Sの一部を模式的に示している。
図示のように、タイヤ1は、トレッド部2に、複数の周方向溝10、11、複数の幅方向溝13~15、複数のサイプ20~27、複数の陸部30、40、50、及び、複数のブロック31、41、51を備えている。車両の走行時に、タイヤ1は、複数の陸部30、40、50で路面に接触して転動する。陸部30、40、50のタイヤ半径方向の外側の面が、路面に接触する踏面である。
【0011】
複数の周方向溝10、11は、タイヤ周方向Sに沿って延びる主溝であり、タイヤ幅方向Hに間隔をあけて並列している。ここでは、タイヤ1は、タイヤ周方向Sに連続して形成された4つの周方向溝(2つの第1周方向溝10、2つの第2周方向溝11)を備えている。第1周方向溝10は、複数の周方向溝10、11のうちでタイヤ幅方向Hの最内側(タイヤ赤道面3側)に位置する内側周方向溝であり、第2周方向溝11のタイヤ幅方向Hの内側に形成されている。タイヤ赤道面3は、トレッド部2のタイヤ幅方向Hの中央部に位置している。
【0012】
第1周方向溝10は、タイヤ赤道面3のタイヤ幅方向Hの両側に位置する中央側周方向溝であり、タイヤ赤道面3の両側で、タイヤ赤道面3と第2周方向溝11の間に形成されている。第2周方向溝11は、複数の周方向溝10、11のうちでタイヤ幅方向Hの最外側(ショルダー部4側)に位置する外側周方向溝であり、第1周方向溝10のタイヤ幅方向Hの外側に形成されている。ショルダー部4は、トレッド部2のタイヤ幅方向Hの外側に位置している。タイヤ赤道面3の両側で、第2周方向溝11は、ショルダー部4のタイヤ幅方向Hの内側に位置し、第1周方向溝10とショルダー部4の間に形成されている。
【0013】
複数の幅方向溝13~15は、タイヤ幅方向Hに沿って延びる横溝(ラグ溝)であり、陸部30、40、50に形成されている。また、複数の幅方向溝13~15は、周方向溝10、11に交差する方向に形成されて、周方向溝10、11と交わる。幅方向溝13~15は、周方向溝10、11よりも浅く形成されており、幅方向溝13~15の溝底は、周方向溝10、11の溝底よりもタイヤ半径方向の外側に位置する。複数のサイプ20~27は、陸部30、40、50に形成された切れ目であり、陸部30、40、50の踏面から陸部30、40、50の内部に向かって形成されている。
【0014】
複数の周方向溝10、11により、トレッド部2がタイヤ幅方向Hに区画されて、複数の陸部30、40、50がトレッド部2に形成されている。複数の陸部30、40、50は、タイヤ半径方向の外側に向かって形成された凸部であり、周方向溝10、11に沿ってタイヤ周方向Sに延びる。また、陸部30、40、50は、タイヤ周方向Sに配列する複数のブロック31、41、51を有するブロック列であり、タイヤ幅方向Hに間隔をあけて並列している。
【0015】
タイヤ1は、5つの陸部(1つの第1陸部30、2つの第2陸部40、2つの第3陸部50)を備えている。第1陸部30は、2つの第1周方向溝10の間に形成された中央陸部であり、タイヤ赤道面3を含むトレッド部2の中央領域に形成されている。タイヤ赤道面3は、第1陸部30のタイヤ幅方向Hの中央に位置する。第1陸部30は、2つの第2陸部40のタイヤ幅方向Hの内側に位置する。
【0016】
第1陸部30は、複数の幅方向溝13と、複数のサイプ20~23(分割サイプ20、21、中央サイプ22、隣接サイプ23)と、路面と接触する複数のブロック31を有している。タイヤ周方向Sに延びる第1陸部30の中央線32の両側で、複数の幅方向溝13は、タイヤ周方向Sに間隔をあけて並列している。第1陸部30の中央線32は、第1陸部30のタイヤ幅方向Hにおける中央に位置するとともに、タイヤ赤道面3に位置する。幅方向溝13の一端部は、第1周方向溝10に開口し、幅方向溝13の他端部は、第1陸部30内で閉じる。
【0017】
中央線32の一方側の幅方向溝13と中央線32の他方側の幅方向溝13は、タイヤ周方向Sにずらして形成されている。分割サイプ20、21は、タイヤ周方向Sに沿って延びる周方向サイプであり、中央線32の一方側の幅方向溝13と中央線32の他方側の幅方向溝13の間に形成されている。分割サイプ20、21の両端部が幅方向溝13に開口して、複数の分割サイプ20、21により、第1陸部30がタイヤ幅方向Hに分割されている。
【0018】
第1陸部30のブロック31は、トレッド部2の中央領域に位置する中央ブロックである。2つの第1周方向溝10、複数の幅方向溝13、及び、複数の分割サイプ20、21により、複数のブロック31が、2つの第1周方向溝10の間に区画されて、第1陸部30に形成されている。中央線32の両側で、複数のブロック31がタイヤ周方向Sに順に配置され、幅方向溝13がブロック31の間に形成されている。中央線32の一方側のブロック31と中央線32の他方側のブロック31は、タイヤ周方向Sにずらして形成されている。
【0019】
ブロック31は、タイヤ周方向Sにおけるブロック31の中央部(ブロック中央部33)に形成された中央サイプ22と、中央サイプ22に隣接する隣接サイプ23を有している。中央サイプ22と隣接サイプ23は、タイヤ幅方向Hに沿って延びる幅方向サイプであり、タイヤ周方向Sに隣接している。また、中央サイプ22と隣接サイプ23は、タイヤ周方向Sに互いに間隔をあけて並列した状態で、ブロック踏面にタイヤ幅方向Hに沿って形成されて、ブロック31をタイヤ幅方向Hに横断している。なお、ブロック中央部33は、タイヤ周方向Sにおけるブロック31の中心位置に限定されず、タイヤ周方向Sの中心位置を含むブロック31のタイヤ幅方向Hに延びる中央領域である。
【0020】
ここでは、ブロック31は、1つの中央サイプ22を含む複数のサイプ22、23(1つの中央サイプ22、2つの隣接サイプ23)を有している。また、一対の隣接サイプ23が中央サイプ22のタイヤ周方向Sの両側に隣接し、中央サイプ22が一対の隣接サイプ23の間に形成されている。複数のサイプ22、23のそれぞれの一端部は、第1周方向溝10に開口し、複数のサイプ22、23のそれぞれの他端部は、分割サイプ20に開口している。
【0021】
第2陸部40は、第1周方向溝10と第2周方向溝11の間に形成された中間陸部であり、タイヤ赤道面3とショルダー部4の間のトレッド部2の中間領域に形成されている。タイヤ赤道面3の両側で、第2陸部40は、第1陸部30と第3陸部50の間に位置する。また、第2陸部40は、複数の幅方向溝14と、複数のサイプ24~27(分割サイプ24、25、中央サイプ26、隣接サイプ27)と、路面と接触する複数のブロック41を有している。タイヤ周方向Sに延びる第2陸部40の中央線42の両側で、複数の幅方向溝14は、タイヤ周方向Sに間隔をあけて並列している。第2陸部40の中央線42は、第2陸部40のタイヤ幅方向Hにおける中央に位置する。
【0022】
幅方向溝14の一端部は、第1周方向溝10又は第2周方向溝11に開口し、幅方向溝14の他端部は、第2陸部40内で閉じる。中央線42の一方側の幅方向溝14と中央線42の他方側の幅方向溝14は、タイヤ周方向Sにずらして形成されている。分割サイプ24、25は、タイヤ周方向Sに沿って延びる周方向サイプであり、中央線42の一方側の幅方向溝14と中央線42の他方側の幅方向溝14の間に形成されている。分割サイプ24、25の両端部が幅方向溝14に開口して、複数の分割サイプ24、25により、第2陸部40がタイヤ幅方向Hに分割されている。
【0023】
第2陸部40のブロック41は、トレッド部2の中間領域に位置する中間ブロックである。第1周方向溝10、第2周方向溝11、複数の幅方向溝14、及び、複数の分割サイプ24、25により、複数のブロック41が、第1周方向溝10と第2周方向溝11の間に区画されて、第2陸部40に形成されている。中央線42の両側で、複数のブロック41がタイヤ周方向Sに順に配置され、幅方向溝14がブロック41の間に形成されている。中央線42の一方側のブロック41と中央線42の他方側のブロック41は、タイヤ周方向Sにずらして形成されている。
【0024】
ブロック41は、タイヤ周方向Sにおけるブロック41の中央部(ブロック中央部43)に形成された中央サイプ26と、中央サイプ26に隣接する隣接サイプ27を有している。中央サイプ26と隣接サイプ27は、タイヤ幅方向Hに沿って延びる幅方向サイプであり、タイヤ周方向Sに隣接している。また、中央サイプ26と隣接サイプ27は、タイヤ周方向Sに互いに間隔をあけて並列した状態で、ブロック踏面にタイヤ幅方向Hに沿って形成されて、ブロック41をタイヤ幅方向Hに横断している。なお、ブロック中央部43は、タイヤ周方向Sにおけるブロック41の中心位置に限定されず、タイヤ周方向Sの中心位置を含むブロック41のタイヤ幅方向Hに延びる中央領域である。
【0025】
ここでは、ブロック41は、1つの中央サイプ26を含む複数のサイプ26、27(1つの中央サイプ26、2つの隣接サイプ27)を有している。また、一対の隣接サイプ27が中央サイプ26のタイヤ周方向Sの両側に隣接し、中央サイプ26が一対の隣接サイプ27の間に形成されている。複数のサイプ26、27のそれぞれの一端部は、第1周方向溝10又は第2周方向溝11に開口し、複数のサイプ26、27のそれぞれの他端部は、分割サイプ24に開口している。
【0026】
第3陸部50は、第2周方向溝11のタイヤ幅方向Hの外側に形成された外側陸部であり、トレッド部2のタイヤ幅方向Hの外側領域(ショルダー部4側領域)に形成されている。タイヤ赤道面3の両側で、第3陸部50は、第2陸部40のタイヤ幅方向Hの外側に位置する。また、第3陸部50は、複数の幅方向溝15と、路面と接触する複数のブロック51を有している。複数の幅方向溝15は、タイヤ周方向Sに間隔をあけて並列している。幅方向溝15の一端部は、第2周方向溝11に開口し、幅方向溝15の他端部は、ショルダー部4側に開口している。
【0027】
第3陸部50のブロック51は、トレッド部2の外側領域に位置する外側ブロックである。第2周方向溝11と複数の幅方向溝15により、複数のブロック51が、第2周方向溝11のタイヤ幅方向Hの外側に区画されて、第3陸部50に形成されている。複数のブロック51がタイヤ周方向Sに順に配置され、幅方向溝15がブロック51の間に形成されている。また、ブロック51は、幅方向溝15よりも細い細溝52と、複数のサイプ53を有している。細溝52とサイプ53は、タイヤ幅方向Hに沿って形成されている。
【0028】
第1陸部30と第2陸部40は、同様に構成されており、それぞれのブロック31、41と幅方向溝13、14に関して同じ特徴を有している。以下、第1陸部30を例にとり、ブロック31と幅方向溝13について詳しく説明する。第2陸部40のブロック41と幅方向溝14は、以下説明する第1陸部30のブロック31と幅方向溝13と同じであるため、説明を省略する。
【0029】
図2は、第1実施形態の第1陸部30を示す平面図であり、図1の一部を拡大して示している。図3は、第1実施形態のブロック31を示す側面図であり、ブロック31をタイヤ幅方向Hの側方からみて模式的に示している。
図示のように、第1周方向溝10は、ブロック31のタイヤ幅方向Hの側方でブロック31を区画し、幅方向溝13は、ブロック31のタイヤ周方向Sの両側でブロック31を区画する。ブロック31は、タイヤ周方向Sに沿って形成された踏面(ブロック踏面34)と、第1周方向溝10内に位置する側壁35と、幅方向溝13内に位置する端壁36と、複数のエッジ部37A、37B(第1エッジ部37A、第2エッジ部37B)を有している。ブロック踏面34は、ブロック31のタイヤ半径方向Kの外側の面であり、タイヤ1の転動時(車両の走行時)に路面に接触する。側壁35と端壁36は、ブロック31の壁部の一部であり、ブロック踏面34の縁に位置するエッジ部37A、37Bからタイヤ半径方向Kの内側に向かって形成されている。
【0030】
ブロック31の側壁35は、タイヤ幅方向Hの側方に位置するブロック31の側面であり、第1周方向溝10を区画する。また、側壁35は、第1周方向溝10の溝壁でもあり、第1周方向溝10の溝底からブロック踏面34まで形成されている。中央サイプ22は、ブロック中央部33のブロック踏面34にタイヤ幅方向Hに沿って形成されて、側壁35に開口する。一対の隣接サイプ23は、中央サイプ22に平行にブロック踏面34に形成されて、中央サイプ22のタイヤ周方向Sの両側で側壁35に開口する。側壁35と端壁36は、第1周方向溝10と幅方向溝13が交わる位置(ブロック31の角部)で交わる。
【0031】
ブロック31の端壁36は、タイヤ周方向Sにおけるブロック31の端部に位置するブロック31の端面であり、幅方向溝13を区画する。また、端壁36は、幅方向溝13の溝壁でもあり、幅方向溝13の溝底からブロック踏面34まで形成されている。2つの端壁36が、ブロック31のタイヤ周方向Sにおける両端部に位置し、ブロック31のタイヤ周方向Sの両側の幅方向溝13内に位置する。
【0032】
ブロック31の側壁35は、タイヤ周方向Sの両側の端壁36の間でタイヤ周方向Sに沿って延びる周方向壁である。ブロック31の端壁36は、ブロック31のタイヤ周方向Sにおける両端部でタイヤ幅方向Hに沿って延びる幅方向壁である。第1エッジ部37Aは、タイヤ周方向Sに沿って延びる周方向エッジ部であり、ブロック踏面34と側壁35とが交わる位置(エッジ)に形成されている。第2エッジ部37Bは、タイヤ幅方向Hに沿って延びる幅方向エッジ部であり、ブロック踏面34と端壁36とが交わる位置(エッジ)に形成されている。
【0033】
第1エッジ部37Aは、端壁36からブロック中央部33に向かってみたときに、タイヤ周方向Sに対してタイヤ幅方向Hにおけるブロック31の側方側(外側)に向かって傾斜する。その結果、側壁35は、ブロック中央部33が突き出る凸状に形成され、端壁36とブロック中央部33の間でタイヤ周方向Sに対して傾斜する。また、ブロック中央部33における側壁35には、外端35Aが形成されている。外端35Aは、側壁35内でタイヤ幅方向Hの最外側に位置する最外側部である。中央サイプ22は、側壁35の外端35Aに開口し、隣接サイプ23は、外端35Aのタイヤ周方向Sの両側で側壁35に開口している。
【0034】
中央サイプ22と一対の隣接サイプ23により、ブロック31がタイヤ周方向Sに区画されて、複数の区画ブロック38A~38Dがブロック31内に形成されている。区画ブロック38A~38Dは、ブロック31を構成する小ブロックであり、タイヤ周方向Sに順に配置されている。2つの区画ブロック38A、38Bは、ブロック31内でタイヤ周方向Sの外側に位置する外側ブロック(以下、第1外側ブロック38A、第2外側ブロック38Bという)であり、それぞれ幅方向溝13と隣接サイプ23の間に形成されている。2つの区画ブロック38C、38Dは、ブロック31内でタイヤ周方向Sの内側に位置する内側ブロック(以下、第1内側ブロック38C、第2内側ブロック38Dという)であり、それぞれ中央サイプ22と隣接サイプ23の間に形成されている。
【0035】
内側ブロック38C、38Dは、2つの外側ブロック38A、38Bの間に形成されており、中央サイプ22のタイヤ周方向Sの両側に位置する。隣接サイプ23は、内側ブロック38C、38Dと外側ブロック38A、38Bの間に形成され、中央サイプ22は、2つの内側ブロック38C、38Dの間に形成されている。内側ブロック38C、38Dは、外側ブロック38A、38Bよりも薄いサイプ間ブロックであり、内側ブロック38C、38Dのタイヤ周方向Sの寸法(幅)は、外側ブロック38A、38Bのタイヤ周方向Sの寸法(幅)より小さい。
【0036】
一対の隣接サイプ23のタイヤ半径方向Kの深さをLr、中央サイプ22のタイヤ半径方向Kの深さをLt、幅方向溝13のタイヤ半径方向Kの深さをLh、第1周方向溝10のタイヤ半径方向Kの深さをLsとする(図3参照)。この場合に、一対の隣接サイプ23は、互いに同じ深さLrであり、かつ、中央サイプ22よりも浅い。即ち、一対の隣接サイプ23の深さLrは、中央サイプ22の深さLtより小さい(Lr<Lt)。また、幅方向溝13の深さLhは、第1周方向溝10の深さLsの1/2より大きく3/4以下である((Ls×1/2)<Lh≦(Ls×3/4))。中央サイプ22の深さLtは、幅方向溝13の深さLhと同じであり(Lt=Lh)、第1周方向溝10の深さLsの1/2より大きく3/4以下である((Ls×1/2)<Lt≦(Ls×3/4))。一対の隣接サイプ23の深さLrは、第1周方向溝10の深さLsの1/2以上であり、かつ、中央サイプ22の深さLtより小さい((Ls×1/2)≦Lr<Lt)。
【0037】
中央サイプ22と隣接サイプ23のタイヤ周方向Sの距離をTf、端壁36と当該端壁36に近いほうの隣接サイプ23のタイヤ周方向Sの距離をTgとする。距離Tfは、中央サイプ22と一方の隣接サイプ23のタイヤ周方向Sの距離、及び、中央サイプ22と他方の隣接サイプ23のタイヤ周方向Sの距離である。距離Tgは、一方の端壁36と一方の端壁36に近いほうの隣接サイプ23(一方の隣接サイプ23)のタイヤ周方向Sの距離、及び、他方の端壁36と他方の端壁36に近いほうの隣接サイプ23(他方の隣接サイプ23)のタイヤ周方向Sの距離である。
【0038】
この場合に、中央サイプ22と隣接サイプ23の距離Tfは、隣接サイプ23の深さLrの1/3以上1/2以下である((Lr×1/3)≦Tf≦(Lr×1/2))。端壁36と隣接サイプ23の距離Tgは、隣接サイプ23の深さLr以上である(Lr≦Tg)。ここでは(図2参照)、端壁36と隣接サイプ23の距離Tgは、ブロック31のタイヤ幅方向Hの位置によって変化するが、ブロック31の全体にわたって、隣接サイプ23の深さLr以上である。また、中央サイプ22と隣接サイプ23の距離Tfがブロック31のタイヤ幅方向Hの位置によって変化するときでも、距離Tfは、隣接サイプ23の深さLrの1/3以上1/2以下の範囲内の距離である。
【0039】
図4は、第1実施形態のブロック31の接地時の状態を示す側面図であり、ブロック31をタイヤ幅方向Hの側方からみて模式的に示している。
図示のように、車両の走行時には、タイヤ1がタイヤ回転方向Rに回転して、ブロック31のブロック踏面34が路面G(氷路面)に接触する。これにより、ブロック踏面34が路面Gに押し付けられて、ブロック31が変形する。ブロック踏面34には、中央サイプ22と一対の隣接サイプ23により複数のエッジ部が形成されている。ブロック踏面34の複数のエッジ部は、ブロック31のタイヤ幅方向Hのエッジ成分であり、路面Gに押し付けられて、エッジ効果を発揮する。
【0040】
2つの外側ブロック38A、38Bは、内側ブロック38C、38Dと幅方向溝13に向かって張り出すように変形する。2つの内側ブロック38C、38Dは、2つの外側ブロック38A、38Bの間に挟み込まれた状態で路面Gに押し付けられ、タイヤ半径方向Kの内側に向かって圧縮される。これにより、2つの内側ブロック38C、38Dが2つの外側ブロック38A、38Bの間で座屈するように変形する。これに伴い、2つの内側ブロック38C、38Dは、互いに接触するとともに、それぞれ外側ブロック38A、38Bに接触する。
【0041】
中央サイプ22よりもタイヤ回転方向Rの前方側(車両の進行方向の後方側)では、第1内側ブロック38Cが、第1外側ブロック38Aにより支持されつつ、第1外側ブロック38Aによりタイヤ回転方向Rの後方側(車両の進行方向の前方側)に押される。中央サイプ22よりもタイヤ回転方向Rの後方側では、第2内側ブロック38Dが、第1内側ブロック38Cにより支持されつつ、第2外側ブロック38Bをタイヤ回転方向Rの後方側に押す(矢印J参照)。第2内側ブロック38Dは、第2外側ブロック38Bを斜め上方に押して、路面Gに押し付ける方向の力(モーメント)を第2外側ブロック38Bに加える(矢印M参照)。これにより、第2外側ブロック38Bのエッジ部38Eが路面Gに押し付けられて、エッジ部38Eにおける接地圧(エッジ圧)が高くなる。
【0042】
第2外側ブロック38Bは、ブロック31の蹴り出し側の区画ブロックであり、エッジ部38Eは、第2外側ブロック38Bの踏み込み端に位置する踏み込みエッジ部である。ここでは、中央サイプ22が一対の隣接サイプ23よりも深いため、2つの内側ブロック38C、38Dが中央サイプ22の両側で確実に変形する。そのため、第2外側ブロック38Bにモーメントが確実に発生するとともに、エッジ部38Eの接地圧が高くなる。これにより、エッジ部38Eによるエッジ効果が向上して、タイヤ1の氷上性能がより向上する。
【0043】
図5は、一部が路面Gから離れた状態のブロック31、100を示す側面図であり、サイプ22、23、101の部分の形状を誇張して示している。図5Aは、2つのサイプ101を有する従来のブロック100の例を示し、図5Bは、第1実施形態のブロック31を示している。
図示のように、ブロック31、100の接地時には、ブロック31、100の変形に伴い、サイプ22、23、101が変形して、サイプ22、23、101の底部に歪みが生じる。第1実施形態のブロック31では、歪みは、中央サイプ22と一対の隣接サイプ23とに分散される。そのため、中央サイプ22を従来のブロック100のサイプ101より深くしても、各サイプ22、23の底部の歪みが低減して、ブロック31に欠損が生じるのが抑制される。
【0044】
従って、第1実施形態のタイヤ1では、ブロック31の欠損を抑制しつつ、タイヤ1の氷上性能を向上することができる。また、ブロック31の耐欠損性能とタイヤ1の氷上性能とを共に向上して両立することができる。中央サイプ22を深くすることが可能になり、ブロック31の摩耗が進展したときでも、タイヤ幅方向Hのエッジ成分を確保することができる。これにより、タイヤ1の使用期間を長くすることができる。
【0045】
幅方向溝13の深さLhが第1周方向溝10の深さLsの1/2以下であると、タイヤ1の使用期間に影響が生じる虞がある。これに対し、幅方向溝13の深さLhが第1周方向溝10の深さLsの3/4より大きいと、ブロック31の耐欠損性能に影響が生じる虞がある。そのため、幅方向溝13の深さLhは、第1周方向溝10の深さLsの1/2より大きく3/4以下であるのが好ましい。この場合には、タイヤ1の使用期間を確保しつつ、ブロック31の欠損をより確実に抑制することができる。中央サイプ22の深さLtを幅方向溝13の深さLhと同じにすることで、タイヤ1の使用期間を確保しつつ、ブロック31の欠損をより確実に抑制することができる。従って、ブロック31の摩耗が進展したときでも、タイヤ1の氷上性能を確保することができる。
【0046】
一対の隣接サイプ23の深さLrが第1周方向溝10の深さLsの1/2より小さいと、タイヤ1の使用期間に影響が生じる虞がある。これに対し、一対の隣接サイプ23の深さLrが中央サイプ22の深さLt以上であると、内側ブロック38C、38Dの耐欠損性能に影響が生じる虞がある。そのため、一対の隣接サイプ23の深さLrは、第1周方向溝10の深さLsの1/2以上であり、かつ、中央サイプ22の深さLtより小さいのが好ましい。この場合には、タイヤ1の使用期間を確保しつつ、ブロック31の欠損をより確実に抑制することができる。
【0047】
中央サイプ22と隣接サイプ23の距離Tfが隣接サイプ23の深さLrの1/3より小さいと、内側ブロック38C、38Dの耐欠損性能に影響が生じる虞がある。これに対し、中央サイプ22と隣接サイプ23の距離Tfが隣接サイプ23の深さLrの1/2より大きいと、内側ブロック38C、38Dが変形し難くなる虞がある。そのため、中央サイプ22と隣接サイプ23の距離Tfは、隣接サイプ23の深さLrの1/3以上1/2以下であるのが好ましい。この場合には、内側ブロック38C、38Dの欠損を抑制しつつ、第2内側ブロック38Dの変形により、エッジ部38Eの接地圧をより確実に高くすることができる。端壁36と隣接サイプ23の距離Tgが隣接サイプ23の深さLr以上であるときには、ブロック中央部33側に複数のサイプ22、23が密集することで、タイヤ1の氷上性能が効果的に向上する。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のタイヤ1について、第1実施形態のタイヤ1(図1参照)と相違する事項を説明する。第2実施形態のタイヤ1に関し、第1実施形態のタイヤ1に相当する部分には、第1実施形態のタイヤ1と同じ名称と符号を用い、第1実施形態のタイヤ1と同じ事項の説明は省略する。また、第1陸部30のブロック31と第2陸部40のブロック41は、同様に形成されており、それぞれの壁部(側壁35、端壁36)に関して同じ特徴を有している。以下、第1陸部30のブロック31を例にとり、ブロック31について詳しく説明する。第2陸部40のブロック41は、以下説明する第1陸部30のブロック31と同じであるため、説明を省略する。
【0049】
図6は、第2実施形態のブロック31を示す斜視図であり、1つのブロック31をタイヤ半径方向Kの外側からみて示している。また、図6では、ブロック31の第1周方向溝10側の部分を示しており、ブロック31の分割サイプ20、21側の部分を省略している。
図示のように、ブロック31の側壁角度Pは、ブロック中央部33と端壁36の間で変化し、ブロック31の端壁角度Qは、端壁36の全体で一定である。ここでは、ブロック31に関する角度は、接地していない規定状態のタイヤ1における角度(交角)(単位:°)である。規定状態とは、タイヤ1を規定リムに装着して、タイヤ1に規定内圧を充填し、タイヤ1を無負荷にしたときの状態であり、タイヤ1に適用される規格により規定される。
【0050】
例えば、JATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格)では、規定リムは標準リムであり、規定内圧は最大負荷能力に対応して規定される空気圧である。タイヤ1の使用地又は製造地において、他の規格が適用されるときには、各々の規格に従って、タイヤ1の規定状態が規定される。他の規格は、例えば、アメリカ合衆国ではTRA(The Tire and Rim Association Inc.)のYEAR BOOKであり、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organization)のSTANDARDS MANUALである。なお、ここでは、第1実施形態における深さと距離も、角度と同様の条件で測定される。
【0051】
図7は、第2実施形態のブロック31の断面図であり、ブロック31の各部の断面を示している。また、図7Aは、図6のX1-X1線で切断したブロック中央部33の側壁35を示し、図7Bは、図6のX2-X2線で切断した側壁35を示している。図7Cは、図6のX3-X3線で切断したブロック31の端壁36を示している。
図6図7に示すように、角度P、Qは、それぞれタイヤ半径方向Kを含むタイヤ半径方向面(第1タイヤ半径方向面K1、第2タイヤ半径方向面K2)を基準として規定される。第1タイヤ半径方向面K1は、ブロック踏面34と側壁35の間の第1エッジ部37Aを通る側壁角度Pの基準面であり、ブロック31の側壁角度Pは、第1タイヤ半径方向面K1と側壁35とのなす角度である。第2タイヤ半径方向面K2は、ブロック踏面34と端壁36の間の第2エッジ部37Bを通る端壁角度Qの基準面であり、ブロック31の端壁角度Qは、第2タイヤ半径方向面K2と端壁36とのなす角度である。
【0052】
ブロック31の側壁35は、タイヤ半径方向Kに沿って形成され、又は、タイヤ半径方向Kの外側(ブロック踏面34側)から内側(溝底側)に向かってみたときに、タイヤ半径方向Kに対して第1周方向溝10の溝幅方向の内側(ブロック31の外部側)に傾斜している。具体的には、ブロック31の側壁角度Pは、ブロック中央部33(図7A参照)からタイヤ周方向Sの両側の端壁36(図7B参照)のそれぞれに向かって大きくなる。また、ブロック31の側壁35において、ブロック中央部33に側壁角度Pが最も小さい最小部が設けられ、側壁35の周方向端に側壁角度Pが最も大きい最大部が設けられている。側壁35の周方向端は、側壁35のタイヤ周方向Sにおける端部(端壁36側の端部)である。また、ブロック中央部33における側壁35の外端35Aが、側壁角度Pの最小部である。従って、ブロック31の側壁角度Pは、側壁35の外端35Aで最も小さく、外端35Aから端壁36に向かって次第に大きくなる。
【0053】
ここでは、ブロック31の側壁角度Pは、0度以上12度以下である(0°≦P≦12°)。また、側壁角度Pは、ブロック中央部33(最小部である外端35A)で0度であり、側壁35の周方向端(最大部)で12度である。側壁角度Pが0度の部分では(図7A参照)、側壁35は、タイヤ半径方向Kに沿って形成されている。側壁角度Pが0度より大きい部分では(図7B参照)、側壁35は、タイヤ半径方向Kの外側から内側に向かってみたときに、タイヤ半径方向Kに対して第1周方向溝10の溝幅方向の内側に傾斜している。ブロック31の側壁角度Pは、側壁35の両側の周方向端で同じ角度(ここでは、12度)である。
【0054】
ブロック31の側壁角度Pは、ブロック中央部33から端壁36に向かって連続して大きくなる(図6参照)。その結果、ブロック31の側壁35には、2つの壁面35B、35Cが形成されている。2つの壁面35B、35Cは、互いに異なる方向を向くように、外端35Aのタイヤ周方向Sの両側に形成されて、側壁35の外端35Aで接続する。ブロック31のブロック踏面34と側壁35とのなす角度Eは、90度以上であり(図7A図7B参照)、ブロック中央部33から端壁36に向かって次第に大きくなる。
【0055】
ブロック31の端壁角度Qは、当該端壁36側に位置する側壁35の周方向端におけるブロック31の側壁角度Pと同じ角度である(図7C参照)。従って、ブロック31の端壁36は、タイヤ半径方向Kの外側から内側に向かってみたときに、タイヤ半径方向Kに対して幅方向溝13の溝幅方向の内側(ブロック31の外部側)に傾斜している。また、ブロック31の端壁角度Qは、0度より大きく12度以下であり、ここでは、側壁角度Pに対応して12度になっている。ブロック31のブロック踏面34と端壁36とのなす角度Fは、90度より大きく、側壁35の周方向端におけるブロック踏面34と側壁35とのなす角度Eと同じ角度である。
【0056】
図8は、本実施形態のブロック31の接地時の状態を示す断面図であり、タイヤ1の転動時(車両の走行時)におけるブロック31の各部の断面を示している。図8では、接地により変形したブロック31の形状を実線で示し、変形していないブロック31の形状を破線で示している。また、図8Aは、図7Aに対応してブロック中央部33の側壁35を示し、図8Bは、図7Bに対応して側壁35を示している。図8A図8Bでは、第1陸部30と第2陸部40(図1参照)の間に位置する第1周方向溝10の一部を示している。図8Cは、図7Cに対応してブロック31の端壁36を示している。図8Cでは、幅方向溝13の両側に位置する端壁36を示している。
【0057】
図示のように、車両の走行時には、タイヤ1の回転に伴い、ブロック31のブロック踏面34が路面G(氷路面)に接触する。これにより、ブロック踏面34が路面Gに押し付けられて、ブロック31が変形する。ブロック中央部33(図8A参照)では、ブロック31の側壁角度Pが相対的に小さいため、ブロック31の側壁35が路面Gに沿って張り出すように変形する(矢印N1参照)。これに対し、ブロック31の側壁角度Pが大きくなるほど(図8B参照)、側壁35の張り出し方向が路面G側に傾斜し、ブロック31の側壁35が路面G側に張り出すように変形する(矢印N2参照)。端壁36(図8C参照)では、端壁36の張り出し方向が路面G側に傾斜し、ブロック31の端壁36が路面G側に張り出すように変形する(矢印N3参照)。
【0058】
その結果、ブロック31の側壁35側の第1エッジ部37A(及び、その周辺部)では、接地圧がブロック中央部33から端壁36に向かって大きくなる。これに伴い、ブロック中央部33の第1エッジ部37A、及び、サイプ22、23の端部で、接地圧が高くなるのが抑制されて、接地圧の集中が回避され、ブロック31に欠損が生じるのが抑制される。また、ブロック中央部33での接地面積、中央サイプ22の長さ、及び、中央サイプ22によるタイヤ幅方向Hのエッジ成分が確保される。ブロック31の端壁36側の第2エッジ部37Bでは、接地圧が上昇するため、水がブロック中央部33に向かって浸入するのが抑制される。
【0059】
従って、第2実施形態のタイヤ1では、ブロック31の欠損を抑制しつつ、タイヤ1の氷上性能を更に向上することができる。また、ブロック31の耐欠損性能とタイヤ1の氷上性能とを共に向上して両立することができる。ブロック31の側壁角度Pがブロック中央部33における外端35Aから端壁36に向かって大きくなるときには、外端35Aでの接地圧の集中を回避して、ブロック31の欠損をより確実に抑制することができる。ブロック31に複数のサイプ22、23を形成することで、ブロック31の氷上性能をより向上することができる。
【0060】
ブロック31の側壁角度Pは、ブロック中央部33から端壁36に向かって連続して大きくなる。その結果、ブロック31の第1エッジ部37Aで、接地圧が連続して変化して、接地圧が分散され易くなる。ブロック31の端壁角度Qが側壁35の周方向端におけるブロック31の側壁角度Pと同じ角度であるときには、ブロック31の第2エッジ部37Bの接地圧が第2エッジ部37Bの全体で同じように上昇して、ブロック中央部33に向かう水の浸入をより確実に抑制することができる。
【0061】
ブロック31の側壁35が、タイヤ半径方向Kの外側から内側に向かってみたときに、タイヤ半径方向Kに対して第1周方向溝10の溝幅方向の外側(ブロック31の内部側)に傾斜するときを、ブロック31の側壁角度Pが0度より小さいとする。この場合には、ブロック31の第1エッジ部37Aでせん断変形が大きくなることで、ブロック31の耐欠損性能に影響が生じる虞がある。また、ブロック31の側壁角度Pが12度より大きいと、溝底の形状を含む第1周方向溝10の形状に影響が生じる虞がある。そのため、ブロック31の側壁角度Pは、0度以上12度以下であるのが好ましい。この場合には、第1周方向溝10の形状に影響が生じるのを回避しつつ、ブロック31の欠損をより確実に抑制することができる。
【0062】
なお、ブロック中央部33の側壁角度Pを0度より大きくしてもよい。また、ブロック31の側壁角度Pを連続して大きくしてもよく、ブロック31の側壁角度Pを不連続に大きくしてもよい。ブロック31の端壁角度Qを側壁35の周方向端における側壁角度Pと異なる角度にしてもよい。第2実施形態の側壁35は、ブロック31のタイヤ幅方向Hの一方側の側壁に適用してもよく、ブロック31のタイヤ幅方向Hの両側の側壁に適用してもよい。
【0063】
第1実施形態又は第2実施形態のブロック31と同様のブロックは、トレッド部2の1つの陸部に設けてもよく、トレッド部2の複数の陸部に設けてもよい。ブロック31は、ブロックを備えた種々のトレッドパターンに適用することができる。
【0064】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態のタイヤ1のトレッドパターンを示す平面図であり、トレッド部2のタイヤ周方向Sの一部を模式的に示している。
ここでは、第3陸部50の幅方向溝15が、図1に示す第3陸部50の幅方向溝15と相違する。幅方向溝15は、ブロック51の細溝52と同様の細溝であり、周方向溝10、11及び他の幅方向溝13、14よりも細い。
【符号の説明】
【0065】
1・・・タイヤ、2・・・トレッド部、3・・・タイヤ赤道面、4・・・ショルダー部、10・・・第1周方向溝、11・・・第2周方向溝、13・・・幅方向溝、14・・・幅方向溝、15・・・幅方向溝、20・・・分割サイプ、21・・・分割サイプ、22・・・中央サイプ、23・・・隣接サイプ、24・・・分割サイプ、25・・・分割サイプ、26・・・中央サイプ、27・・・隣接サイプ、30・・・第1陸部、31・・・ブロック、32・・・中央線、33・・・ブロック中央部、34・・・ブロック踏面、35・・・側壁、36・・・端壁、40・・・第2陸部、41・・・ブロック、42・・・中央線、43・・・ブロック中央部、50・・・第3陸部、51・・・ブロック、52・・・細溝、53・・・サイプ、G・・・路面、H・・・タイヤ幅方向、K・・・タイヤ半径方向、P・・・側壁角度、Q・・・端壁角度、R・・タイヤ回転方向、S・・・タイヤ周方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9