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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】ドリル本体およびドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20220909BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
B23B51/00 L
B23B51/00 T
B23B51/06 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019561808
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018061379
(87)【国際公開番号】W WO2018206400
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】17170612.0
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘンプ, ラスマス
(72)【発明者】
【氏名】カールバーリ, ホーカン
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508244(JP,A)
【文献】特開平02-124209(JP,A)
【文献】特開昭57-048411(JP,A)
【文献】実開昭60-120713(JP,U)
【文献】特開昭60-177809(JP,A)
【文献】特開平06-182613(JP,A)
【文献】特開平11-019812(JP,A)
【文献】特開2003-048110(JP,A)
【文献】米国特許第8668409(US,B2)
【文献】特開平11-090715(JP,A)
【文献】特表2003-535705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリル(2)のドリル本体(4)であり、回転軸(10)を有し、かつドリル本体(4)の前端部(18)に中心インサートシート(12)および周辺インサートシート(14)が設けられている、ドリル本体(4)であって、
前記中心インサートシート(12)が、穴径Dを有する穴の中心部を切削する中心切削インサート(6)を受容するように構成され、前記周辺インサートシート(14)が、前記穴の周辺部を切削する周辺切削インサート(8)を受容するように構成されており、
ドリル本体(4)が、ドリル本体(4)の周辺に沿って前記中心インサートシート(12)から延びた中心切り屑フルート(20)と、ドリル本体(4)の周辺に沿って前記周辺インサートシート(14)から延びた周辺切り屑フルート(22)と、を備えており、
前記中心切り屑フルート(20)が、前記回転軸(10)に垂直に延びた平面に中心切り屑フルート断面を有し、前記中心切り屑フルート断面が、前記回転軸(10)に垂直に延びた前記平面におけるドリル本体(4)の外接円内に形成されているドリル本体(4)において、
前記中心切り屑フルート断面が、前記平面において前記回転軸(10)を通って延びた中心線(26)を有し、前記中心切り屑フルート断面が、前記中心線(26)に沿った深さおよび前記中心線(26)に垂直な幅を有しており、
前記中心切り屑フルート断面は、Dp=0.75×D/2~Dp=0.90×D/2の範囲内の最大深さDpと、W=0.75×D/2~W=0.90×D/2の範囲内の最大幅Wと、を有しており、前記最大幅Wは、前記中心線(26)に関して対称に延びていることを特徴とする、ドリル本体(4)。
【請求項2】
前記中心切り屑フルート断面が、前記中心線(26)に関して対称である、請求項1に記載のドリル本体(4)。
【請求項3】
前記中心切り屑フルート断面が、実質的にU字状である、請求項1または2に記載のドリル本体(4)。
【請求項4】
前記中心切り屑フルート断面が、前記中心線(26)に垂直に延びかつ実質的に真っ直ぐな部分を形成する半径方向内側面(28)と、少なくとも前記中心線(26)の一部に沿って互いに実質的に平行に延びた側面(30、30’)とを有する、請求項1または2に記載のドリル本体(4)。
【請求項5】
前記中心切り屑フルート(20)が、前記ドリル本体(4)の部分的長さに沿った前記中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項6】
1×D~8×Dの範囲内の掘削長Lを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項7】
前記中心切り屑フルート(20)が、前記掘削長Lの少なくとも半分に沿った前記中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有する、請求項6に記載のドリル本体(4)。
【請求項8】
前記中心切り屑フルート(20)が、前記ドリル本体(4)の前端(16)から0.25×D~1×Dの範囲内の距離から前記掘削長Lの後端(24)までの前記中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有する、請求項6または7に記載のドリル本体(4)。
【請求項9】
少なくとも1つの冷媒チャネル(36、36’)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項10】
2つの冷媒チャネル(36、36’)を備え、前記冷媒チャネル(36、36’)がそれぞれ、前記回転軸(10)に垂直に延びた前記平面において、Df=0.4×D3/5~0.7×D3/5の範囲内の直径Dfを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項11】
前記周辺切り屑フルート(22)が、前記回転軸(10)に垂直に延びた平面において、周辺切り屑フルート断面を有し、
前記周辺切り屑フルート断面が、前記回転軸(10)に垂直に延びた前記平面における前記ドリル本体(4)の外接円内に形成されており、
前記周辺切り屑フルート断面が、前記平面において前記回転軸(10)を通って延びた中心線(26’)を有し、前記中心線(26’)に垂直に延びた半径方向内側面(32)と、前記半径方向内側面(32)に連なる第1の側面(34)および反対の第2の側面(34’)と、を有しており、
前記半径方向内側面(32)が、L1=0.95×D/4~L1=1.2×D/4の範囲内の長さL1を有しており、
前記第1および第2の側面(34、34’)がそれぞれ、D/4~1.3×D/4の範囲内の長さLS1、LS2を有しており、
前記半径方向内側面(32)が、前記周辺切り屑フルート断面の前記中心線(26)に関して対称に延びており、
前記第1および第2の側面(34、34’)が、前記内側面(32)から半径方向外方の方向に、互いから分岐した、請求項1から10のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項12】
前記第1および第2の側面(34、34’)が、前記中心線(26’)に関して互いから対称に分岐した、請求項11に記載のドリル本体(4)。
【請求項13】
前記半径方向内側面(32)と反対の前記第1および第2の側面(34、34’)の端部が、L2=1.85×D/4~L2=2.5×D/4の範囲内で互いから距離L2で配置された、請求項11または12に記載のドリル本体(4)。
【請求項14】
前記中心切り屑フルート断面が、周辺切り屑フルート断面と反対に配置され、前記中心切り屑フルート断面および前記周辺切り屑フルート断面が同じ中心線(26、26’)を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項15】
前記中心切り屑フルート(20)及び周辺切り屑フルート(22)はそれぞれ、前記ドリル本体(4)の掘削長の後端(24)において、前記回転軸(10)と平行に、前記ドリル本体(4)に沿って真っ直ぐに延びている、請求項1から14のいずれか一項に記載のドリル本体(4)。
【請求項16】
回転軸(10)を有し、ドリル本体(4)の前端部(18)に中心インサートシート(12)および周辺インサートシート(14)が設けられている前記ドリル本体(4)と、前記中心インサートシート(12)に配置され、穴径Dを有する穴の中心部を切削する中心切削インサート(6)と、前記周辺インサートシート(14)に配置され、前記穴の周辺部を切削する周辺切削インサート(8)と、を備える金属切削用のドリル(2)であって、
前記ドリル本体(4)が、請求項1から15のいずれか一項に記載のドリル本体(4)である、ことを特徴とする、ドリル(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削用のドリルのドリル本体およびドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルは、ワークピースに穴を切削するように構成されている。本発明は、ボール盤等の手動操作機械またはCNC旋盤、CNCフライス盤、もしくはCNCボール盤等の自動制御機械を用いてワークピースを切削するドリルに関する。
【0003】
インデキサブルドリルは、ドリル本体と、ドリル本体の前端部のインサートシートに配置された2つ以上のインデキサブル切削インサートと、を備える。切削インサートのうちの1つが穴の中心部を切削するように構成され、別の切削インサートが穴の周辺部を切削するように構成されていてもよい。切削インサートは、インデキサブルである。すなわち、それぞれが2つ以上の切れ刃を備え、ワークピースと係合するように切れ刃ごとにインサートシート中の異なる位置で位置決め可能である。
【0004】
穴の掘削時には、ドリル本体の前端部で切削インサートによりワークピースから切削された切削屑を穴から除去する必要がある。このため、1つまたは複数の切り屑フルートがドリル本体に沿って延びている場合がある。
【0005】
米国特許第8,668,409号は、2つの切り屑フルートがある距離だけ沿って延びたドリル本体を含むインデキサブルドリルを開示している。2つのインデキサブル切削インサートがドリル本体の各インサートシートにおいて、互いに半径方向にオフセットして固定されている。ドリル本体の長手方向軸に垂直な方向に断面が見られる各切り屑フルートは、第1の壁部および第2の壁部を含む。第1の壁部は、逃げ縁部と第2の壁部との間の曲線に沿って延びている。第2の壁部は、前縁部と第1の壁部との間で直線状に延びている。第1の壁部および第2の壁部は、互いに隣接して配設され、長手方向軸に垂直なJ字状の断面プロファイルを一体的に規定している。
【0006】
穴の直径の4倍以上等の長さの穴の掘削では、関連するドリルに対して特定の要件が発生する。穴の奥底から切削屑を運び出す必要がある一方、ドリルの歪みは、高品質な穴を実現するため、掘削している穴の半径方向に最小限とする必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、長穴の掘削に適しつつ切削屑の効率的な除去を可能にするドリルのドリル本体を提供することである。これら関心事のうちの1つまたは複数に対してより良く対処するため、独立請求項に規定の特徴を有するドリル本体およびドリルが提供される。
【0008】
一態様によれば、上記目的は、ドリルのドリル本体であり、回転軸を有し、前端部に中心インサートシートおよび周辺インサートシートが設けられた、ドリル本体によって達成される。中心インサートシートは、穴径Dの穴の中心部を切削する中心切削インサートを受容するように構成され、周辺インサートシートは、穴の周辺部を切削する周辺切削インサートを受容するように構成されている。このドリル本体は、ドリル本体の周辺に沿って中心インサートシートから延びた中心切り屑フルートと、ドリル本体の周辺に沿って周辺インサートシートから延びた周辺切り屑フルートと、を備える。中心切り屑フルートは、回転軸に垂直に延びた平面に中心切り屑フルート断面を有し、中心切り屑フルート断面は、回転軸に垂直に延びた平面におけるドリル本体の外接円内に形成されている。中心切り屑フルート断面は、平面において回転軸を通って延びた中心線を有し、中心線に沿った深さおよび中心線に垂直な幅を有し、Dp=0.75×D/2~Dp=0.90×D/2の範囲内の最大深さDpと、W=0.75×D/2~W=0.90×D/2の範囲内の最大幅Wと、を有し、最大幅Wが、中心線に関して対称に延びている。
【0009】
中心切り屑フルート断面がDp=0.75×D/2~Dp=0.90×D/2の範囲内の最大深さDpと、W=0.75×D/2~W=0.90×D/2の範囲内の最大幅Wと、を有し、最大幅Wが中心線に関して対称に延びていることから、中心切削インサートからの切削屑が中心切り屑フルートの中に容易に収まる一方、回転軸に垂直に延びた平面におけるドリル本体の断面が高い曲げ剛性および捩り剛性を与えることになる。したがって、高品質の穴をワークピースに切削することができる。その結果、前述の目的が達成される。
【0010】
別の態様によれば、上記目的は、回転軸を有し、前端部に中心インサートシートおよび周辺インサートシートが設けられたドリル本体と、中心インサートシートに配置され、穴径Dの穴の中心部を切削する中心切削インサートと、周辺インサートシートに配置され、穴の周辺部を切削する周辺切削インサートと、を備える金属切削用のドリルによって達成される。ドリル本体は、本明細書において論じる態様および/または実施形態のいずれか1つに記載のドリル本体である。前述の通り、中心切り屑フルート断面の最大幅および最大深さによって、中心切削インサートからの切削屑が中心切り屑フルートの中に容易に収まる一方、ドリルのドリル本体には、高い曲げ剛性および捩り剛性が付与される。
【0011】
長さの4乗(たとえば、m)を単位とする面積慣性モーメントとしても知られる断面二次モーメントによって曲げ剛性が決まるため、回転軸から可能な限り遠くに延びたドリル本体の断面の中実部によって、剛性のドリル本体がもたらされる。上記規定の中心切り屑フルート断面の最大深さおよび最大幅によって、ドリル本体の断面の大部分が与えられ、回転軸から大きな半径方向距離にわたって延びる。
【0012】
本明細書において、最大深さという用語は、回転軸に垂直に延びた平面におけるドリル本体の外接円から測定した中心切り屑フルート断面の最も深い部分を意味する。切り屑フルートの表面上の点における深さは、その点と外接円との間の最短距離である。最大幅という用語は、中心切り屑フルート断面の最も広い部分を意味する。
【0013】
ドリル本体は、掘削長L、すなわち関連するドリルで可能な最大深さの穴の掘削に用いられるドリル本体の長さ(切削インサートによる軸方向深さ未満)、すなわちドリル本体を越える切削インサートの軸方向延伸未満の最大穴深さを有する。
【0014】
実施形態によれば、中心切り屑フルート断面は、中心線に関して対称であってもよい。このように、回転軸に垂直な平面におけるドリル本体の断面も、中心切り屑フルートに関して対称となり得る。
【0015】
実施形態によれば、中心切り屑フルートは、ドリル本体の一部の長さに沿って、中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有していてもよい。このように、中心切り屑フルートが前記部分的長さに沿って上記規定の中心切り屑フルート断面を有することから、ドリル本体の上述の特性は、少なくともドリル本体の前記部分的長さに沿ってもたらされ得る。
【0016】
実施形態によれば、中心切り屑フルートは、ドリル本体の前端から0.25×D~1×Dの範囲内の距離から掘削長Lの後端までの中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有していてもよい。このように、中心切り屑フルートは、少なくとも掘削長L≧2×Dのドリルについて、ドリル本体の実質的長さに沿って上記規定の中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有する。
【0017】
実施形態によれば、このドリル本体は、少なくとも1つの冷媒チャネルを備えていてもよい。このように、ドリルによる掘削時に、切削インサートの近傍に冷媒が供給されるようになっていてもよい。これにより、ワークピースおよび切削インサートの冷却に加えて、冷媒は、中心切り屑フルートおよび/または周辺切り屑フルート中の切削屑をドリル本体の前端部から、掘削している穴の外に運び出すことに役立ち得る。
【0018】
ドリル本体の前端部において、少なくとも1つの冷媒チャネルに開口が設けられているのが好ましい。
【0019】
実施形態によれば、ドリル本体は、2つの冷媒チャネルを備え、冷媒チャネルがそれぞれ、回転軸に垂直に延びた平面において、Df=0.4×D3/5~Df=0.7×D3/5の範囲内の直径Dfを有していてもよい。このように、通常の冷媒圧力(たとえば、4Bar)において、切削屑をドリル本体の前端部から穴の外に運び出すためのドリル本体の前端部への冷媒の適切な流れが実現されるようになっていてもよい。
【0020】
実施形態によれば、周辺切り屑フルートは、回転軸に垂直に延びた平面において、周辺切り屑フルート断面を有する。周辺切り屑フルート断面は、回転軸に垂直に延びた平面におけるドリル本体の外接円内に形成されている。周辺切り屑フルート断面は、平面において回転軸を通って延びた中心線を有し、中心線に垂直に延びた半径方向内側面と、半径方向内側面に連なる第1の側面および反対の第2の側面と、を有する。半径方向内側面がL1=0.95×D/4~L1=1.2×D/4の範囲内の長さL1を有し、第1および第2の側面がそれぞれ、D/4~1.3×D/4の範囲内の長さLS1、LS2を有し、半径方向内側面が周辺切り屑フルート断面の中心線に関して対称に延びていてもよく、第1および第2の側面が内側面から半径方向外方の方向に、互いから分岐する。このように、周辺切削インサートにより切削された切削屑が周辺切り屑フルートの中に容易に収まる一方、回転軸に垂直に延びた平面におけるドリル本体の断面が高い曲げ剛性および捩り剛性を与え得る。したがって、2つの切り屑フルートが設けられたドリル本体を備えるドリルにより、高品質の穴をワークピースに切削可能である。
【0021】
実施形態によれば、第1および第2の側面は、半径方向内側面から半径方向外方の方向に、互いから分岐していてもよく、また、中心線に関して互いから対称に分岐していてもよい。このように、周辺切削インサートからの切削屑は、その上面視において略二等辺の台形状を有するが、周辺切り屑フルートを通じて容易に搬送される。
【0022】
実施形態によれば、ドリル本体の前端において、中心切削インサートの切れ刃の半径方向延伸部と中心切り屑フルートの反対壁との間の角度は、回転軸に沿った視点において、約100°である。このように、中心切削インサートからの螺旋状切削屑の直径が小さくなって、切削屑が中心切り屑フルートに収まり得る。
【0023】
本発明の他の特徴および利点については、添付の特許請求の範囲および以下の詳細な説明を検討した場合に明らかとなるであろう。
【0024】
本発明の種々態様および/または実施形態については、その特定の特徴および利点を含めて、以下の詳細な説明および添付の図面に示す例示的な実施形態から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a-1e】実施形態に係るドリルを示した図である。
図2a-2b】図1a~図1eのドリルを示した2つの図である。
図2c-2d】図2aの線IIc-IIcおよびIId-IIdに沿ったドリルの断面図である。
図3a-3c】中心および周辺切り屑フルートの断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の態様および/または実施形態をより詳しく説明する。全体を通して、同じ番号は、同じ要素を表す。簡素化および/または明瞭化のため、周知の機能または構成については、必ずしも詳しく説明しない。
【0027】
図1a~図1eは、実施形態に係るドリル2の図を示している。ドリル2は、金属切削すなわち金属ワークピースに穴を掘削するように構成されている。ドリル2は、ドリル本体4、中心切削インサート6、および周辺切削インサート8を備える。中心切削インサート6および周辺切削インサート8は、インデキサブルである。すなわち、2つ以上の切れ刃を備えており、切れ刃の有効切削位置が切削インサートのインデックス位置に対応する。ドリル本体4は、回転軸10を有し、前端部18に中心インサートシート12および周辺インサートシート14が設けられている。前端部18は、ドリル本体4の前端16に隣接するドリル本体4の部分を形成する。中心切削インサート6は、穴の中心部を切削するように構成され、周辺切削インサート8は、穴の周辺部を切削するように構成されている。中心切削インサート6は、中心インサートシート12に配置され、周辺切削インサート8は、周辺インサートシート14に配置されている。したがって、中心インサートシート12は、中心切削インサート6を受容するように構成され、周辺インサートシート14は、周辺切削インサート8を受容するように構成されている。
【0028】
ドリル2は、図1cに示す方向Rの回転によって切削するように構成されている。ドリル2は、直径Dの穴を掘削するように構成されている。すなわち、中心および周辺切削インサート6、8が一体的に、直径Dの穴を切削する切れ刃を提供する。純粋に一例として、直径Dは、D=15~65mmの範囲内であってもよい。
【0029】
実施形態によれば、中心切削インサート6は、約D/4の半径方向切削長で穴の軸方向に切削するように構成されていてもよく、周辺切削インサート8は、約D/4の半径方向切削長で穴の軸半径方向に切削するように構成されていてもよい。このように、切削インサート6、8に作用する切削力が2つの切削インサート6、8間で均衡を保っていてもよい。
【0030】
実施形態によれば、ドリル本体4は、1×D~8×Dの範囲内の掘削長Lを有していてもよい。ドリル本体4の掘削長は、ドリルで掘削する最大穴深さ(切削インサート6、8による軸方向深さ未満)に対応する。本明細書において論じる中心切り屑フルートおよび周辺切り屑フルートの断面積は、掘削長Lが上記範囲の上側部分にあるドリル本体4を有するドリルにおいて特に有利である。これにより、いくつかの実施形態によれば、ドリル本体4は、L=3×D~L=8×Dの範囲内またはL=4×D~L=8×Dの範囲内の掘削長Lを有していてもよい。
【0031】
図示の実施形態の掘削長Lは、約L=4×Dである。ドリル本体4は、機械のチャック等、ドリル2を機械に固定するシャンク19を備える。
【0032】
ドリル本体4は、ドリル本体4の周辺に沿って中心インサートシート12から延びた中心切り屑フルート20を備える。ドリル本体4は、ドリル本体4の周辺に沿って周辺インサートシート14から延びた周辺切り屑フルート22を備える。
【0033】
これらの実施形態において、中心切り屑フルート20および周辺切り屑フルート22は、ドリル本体4に一部沿って前端16からドリル本体4の掘削長の後端24に向かって延びた螺旋状部を含む。ドリル本体4の掘削長の後端24において、中心切り屑フルート20および周辺切り屑フルート22はそれぞれ、回転軸10と平行に、ドリル本体4に沿って真っ直ぐに延びている。
【0034】
代替実施形態において、螺旋状部は、図示の実施形態より短くてもよいし、図示の実施形態より長くてもよい。いくつかの実施形態によれば、切り屑フルートは、直線部を一切含まないものの、掘削長全体に沿って螺旋状である。
【0035】
図2aおよび図2bは、図1a~図1eのドリル本体4の2つの図を示している。図2aおよび図2bにおいては、中心切り屑フルート20および周辺切り屑フルート22を明瞭に示している。さらに、図2cおよび図2dは、図2aの線IIc-IIcおよびIId-IIdに沿ったドリル本体4の2つの断面図である。
【0036】
ドリル本体4は、回転軸10に垂直に断面形状を有する。ドリル本体4の断面形状は、掘削長に沿った断面の位置に応じて変化する。当然のことながら、ドリル本体4の断面形状は、中心切り屑フルート20および周辺切り屑フルート22の断面形状によって決まる。前端部18およびインサートシートを少し過ぎた部分において、ドリル本体4の断面形状は、前端部18から離れた部分の断面形状と明らかに異なる。これは、切り屑フルート20、22が切削インサートにおいて広い開口を有するためである。前端部18を過ぎると、切り屑フルート20、22は、切削屑をドリル本体4に沿って、掘削している穴から外に運び出すように構成されている。
【0037】
本発明によれば、中心切り屑フルート20は、曲げおよび捩り剛性が高いドリル本体4の断面形状を与えつつ、切削屑を中心切削インサートから滑らかに案内するように構成されている。
【0038】
また、本発明の別の態様によれば、周辺切り屑フルート22は、曲げおよび捩り剛性が高いドリル本体の断面形状を与えつつ、切削屑を周辺切削インサートから滑らかに案内するように構成されている。
【0039】
中心切り屑フルート20は、回転軸10に垂直に延びた平面において、中心切り屑フルート断面を有する。図2cおよび図2dにおいては、中心切り屑フルート断面を単線ハッチングで示している。図2cおよび図2dにおいて破線により示すように、中心切り屑フルート断面は、回転軸に垂直に延びた平面におけるドリル本体4の外接円内に形成されている。図2cおよび図2dに示す断面は、このように回転軸10に垂直に延びた平面の例である。おおよそ、図2dに示す断面から後端24に向かって後方に、中心切り屑フルート断面は、図2cおよび図2dに示したものと同じである。
【0040】
周辺切り屑フルート22は、回転軸10に垂直に延びた平面において、周辺切り屑フルート断面を有する。図2cおよび図2dにおいては、周辺切り屑フルート断面を交差線ハッチングで示している。図2cおよび図2dにおいて破線により示すように、周辺切り屑フルート断面は、回転軸10に垂直に延びた平面におけるドリル本体4の外接円内に形成されている。前述の通り、図2cおよび図2dに示す断面は、このように回転軸10に垂直に延びた平面の例である。おおよそ、図2dに示す断面から後端24に向かって後方に、周辺切り屑フルート断面は、図2cおよび図2dに示したものと同じである。
【0041】
図3aは、図2cおよび図2dの中心切り屑フルート20および中心切り屑フルート断面の拡大を示している。中心切り屑フルート断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において回転軸10を通って延びた中心線26を有する。中心切り屑フルート断面は、中心線26に沿った深さおよび中心線26に垂直な幅を有する。
【0042】
中心切り屑フルート断面は、Dp=0.75×D/2~Dp=0.90×D/2の範囲内の最大深さDpと、W=0.75×D/2~W=0.90×D/2の範囲内の最大幅Wと、を有する。最大幅Wは、中心線26に関して対称に延びている。すなわち、最大幅Wは、中心線26から等距離で延びている。いくつかの実施形態によれば、中心切り屑フルート断面は、Dp=0.8×D/2~Dp=0.86×D/2の範囲内の最大深さDpと、W=0.8×D/2~W=0.86×D/2の範囲内の最大幅Wと、を有する。
【0043】
中心切り屑フルート断面が上記規定の範囲内の深さおよび幅を有することから、ドリル本体4の断面は、たとえば前述の米国特許第8,668,409号に記載のJ字状断面の切り屑フルートを有するドリル等、従来技術の多くのドリル本体の断面と比較して、回転軸10から離れた半径方向距離に材料を含む。これにより、本ドリル本体4の回転軸10に垂直に延びた平面における断面は、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。さらに、最大幅が中心線26に関して対称に延びていることから、ドリル本体4の断面は、中心切り屑フルート20の両側で回転軸10から実質的に同じ半径方向距離だけ延びている。また、この理由により、本ドリル本体4の断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。
【0044】
中心切り屑フルート20がドリル本体4の主要部に沿ってこの断面を有することから、ドリル本体4ひいてはドリルの曲げ剛性および捩り剛性が高くなる。
【0045】
中心切削インサートからの螺旋状切削屑の直径は、掘削している穴の半径(すなわち、D/2)の0.7~0.8倍の範囲内であってもよい。これにより、切削屑は、上述の寸法を有する中心切り屑フルートの中に容易に収まって、掘削している穴の外に案内される。
【0046】
これらの実施形態において、中心切り屑フルート断面は、中心線26に垂直に延び、実質的に真っ直ぐな部分を形成する半径方向内側面28と、少なくとも中心線26の一部に沿って互いに、実質的に平行に延びた側面30、30’とを有する。半径方向内側面28と側面30、30’との間の遷移は、小さな角度または大きな角度で曲線的であってもよい。遷移における応力の集中を避けるため、尖った隅部は回避されるようになっていてもよい。十分に曲線的な遷移は、中心切り屑フルート断面がU字状であることを意味する(図3bを参照しつつ以下参照)。
【0047】
互いに実質的に平行に延びた側面30、30’は、側面30、30’がそれぞれ、中心線26に対して0~5°の範囲内の角度で延びていることを意味する。
【0048】
中心切り屑フルート断面は、中心線26に関して対称である。これにより、回転軸10に垂直な平面におけるドリル本体4の断面についても、中心切り屑フルート20に隣接して、中心線26に関して対称であり、ドリル本体4の断面は、中心切り屑フルート20の両側で回転軸10から同じ半径方向距離だけ延びている。したがって、前述の通り、ドリル本体4の断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。
【0049】
図3bは、中心切り屑フルート20の実施形態を示しており、中心切り屑フルート断面が実質的にU字状である。したがって、図1a~図2bに示すドリル本体4の代替実施形態において、中心切り屑フルート20は、U字状の中心切り屑フルート断面を有していてもよい。この場合も、中心切り屑フルート断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において回転軸10を通って延びた中心線26を有する。中心切り屑フルート断面は、中心線26に沿った深さおよび中心線26に垂直な幅を有する。
【0050】
また、これらの実施形態において、中心切り屑フルート断面は、Dp=0.75×D/2~Dp=0.90×D/2の範囲内の最大深さDpと、W=0.75×D/2~W=0.90×D/2の範囲内の最大幅Wと、を有する。最大幅Wは、中心線26に関して対称に延びている。
【0051】
この場合も、中心切り屑フルート断面は、中心線26に関して対称である。これにより、回転軸10に垂直な平面におけるドリル本体4の断面についても、中心切り屑フルート20に隣接して、中心線26に関して対称であり、ドリル本体4の断面は、中心切り屑フルート20の両側で回転軸10から同じ半径方向距離だけ延びている。したがって、前述の通り、ドリル本体4の断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。
【0052】
U字状断面の側面30、30’は、中心線26に対して0~5°の範囲内の角度で延びていてもよい。
【0053】
図1cは、ドリル本体4の前端16に向かって回転軸10に沿ったドリル2の図を示している。この図では、ドリル本体4の前端16において、中心切削インサート6の切れ刃27の半径方向延伸部と中心切り屑フルート20の反対壁29との間の角度が約100°である。このため、中心切削インサート6からの切削屑(実質的に一定の直径螺旋を構成)の直径は、掘削時に形成され、上述の寸法の中心切り屑フルート20を通じて切削屑を導くのに適すると考えられる。
【0054】
図1a、図1b、図2a、および図2bに戻って、中心切り屑フルート20は、図2c、図2d、図3a、または図3bに関して論じた中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有し、ドリル本体4の一部の長さに沿って(たとえば、図2aにおいて矢印IId-IIdで示す断面から掘削長Lの後端24まで)延びている。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、中心切り屑フルート20は、少なくとも掘削長Lの半分に沿って、中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有していてもよい。この中心切り屑フルート断面は、図2c、図2d、図3a、または図3bに関して論じた中心切り屑フルート断面である。
【0056】
中心切り屑フルート20は、ドリル本体4の前端16から0.25×D~1×Dの範囲内の距離から掘削長Lの後端24までの中心切り屑フルート断面に対応する断面形状を有していてもよい。
【0057】
図3cは、図2cおよび図2dの周辺切り屑フルート22および周辺切り屑フルート断面の拡大を示している。周辺切り屑フルート断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において回転軸10を通って延びた中心線26’を有する。周辺切り屑フルート断面は、中心線26に垂直に延びた半径方向内側面32と、半径方向内側面32に連なる第1の側面34および反対の第2の側面34’と、を有する。半径方向内側面32が実質的に真っ直ぐであってもよく、また、第1および第2の側面34、34’が実質的に真っ直ぐであってもよい。半径方向内側面32と第1および第2の側面34、34’との間の遷移は、ドリル本体4中の応力の集中を回避するため、曲線的であってもよい。
【0058】
半径方向内側面32がL1=0.95×D/4~L1=1.2×D/4の範囲内の長さL1を有し、第1および第2の側面34、34’がそれぞれ、LS1(LS2)=D/4~LS1(LS2)=1.3×D/4の範囲内の長さLS1、LS2を有していてもよく、第1および第2の側面34、34’が内側面32から半径方向外方の方向に、互いから分岐する。半径方向内側面32は、周辺切り屑フルート断面の中心線26’に関して対称に延びている。第1および第2の側面34、34’は、同じ長さであってもよいが、必ずしも同じ長さである必要はない。上述の寸法を有する周辺切り屑フルート22が設けられたドリル本体4の断面は、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。この場合も、回転軸10から半径方向に遠くまで延びたドリル本体4の断面は、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。上述の寸法を有する周辺切り屑フルート22によれば、ドリル本体4の断面は、周辺切り屑フルート22に隣接してドリル本体4内で利用可能な最大の半径方向距離だけ延伸可能となる。
【0059】
周辺切削インサートからの切削屑は、その上面視において、概算的尺度として測長D/4、長底辺1.9×D/4、および短底辺0.9×D/4を有する略二等辺の台形状を有していてもよい。切削屑の長底辺は、周辺切り屑フルートの上面視において外方を向く。これにより、切削屑は、上述の寸法を有する周辺切り屑フルートの中に容易に収まって、掘削している穴の外に案内される。
【0060】
第1および第2の側面34、34’は、中心線26’に関して互いから対称に分岐していてもよい。このような実施形態において、第1および第2の側面34、34’は、同じ長さである。このため、周辺切削インサートからの切削屑は、周辺切り屑フルート22に沿って、掘削している穴の外に容易に案内され得る。
【0061】
半径方向内側面32と反対の第1および第2の側面34、34’の端部は、L2=1.85×D/4~L2=2.5×D/4の範囲内で互いから距離L2で配置されていてもよい。このように、第1および第2の側面34、34’は、周辺切削インサートからの切削屑が周辺切り屑フルート22の中に十分に収まり、周辺切り屑フルート22に沿って、掘削している穴の外に容易に案内され得るように、互いから分岐する。
【0062】
長さL1、LS1、LS2、L2は、それぞれの距離の間の交差点間で測定される。
【0063】
周辺切り屑フルート22は、ドリル本体4の主要部に沿って、この断面を有していてもよい。たとえば、本明細書において論じる実施形態によれば、中心切り屑フルート20が中心切り屑フルート断面を有するのと同じ掘削長の例示的距離にわたって有していてもよい。これにより、ドリル本体4ひいてはドリルの曲げ剛性および捩り剛性が高くなる。
【0064】
図2aおよび図2cに戻って、中心切り屑フルート断面は、周辺切り屑フルート断面と反対に配置され、中心切り屑フルート断面および周辺切り屑フルート断面が同じ中心線を有していてもよい。ドリル本体4の部分に沿って、中心切り屑フルート断面が周辺切り屑フルート断面と反対に配置されており、中心切り屑フルート断面および周辺切り屑フルート断面は、同じ中心線26、26’を有していてもよい。すなわち、中心切り屑フルート断面および周辺切り屑フルート断面それぞれの中心線26、26’が同一線上であってもよい。これらの実施形態において、中心切り屑フルート断面は、ドリル本体4の部分に沿って周辺切り屑フルート断面と反対に配置されており、中心切り屑フルート20および周辺切り屑フルート22は、回転軸10と平行に、ドリル本体4に沿って真っ直ぐに延びている。
【0065】
ドリル本体4のウェブ厚は、中心切り屑フルート20が周辺切り屑フルート22と反対に配置された断面において、0.20×D~0.30×Dの範囲内であってもよい。ウェブは、中心切り屑フルート20と周辺切り屑フルート22との間の材料である。
【0066】
図2cにおいては、2つの角度βを示している。角度βはそれぞれ、ドリル本体4の半径方向距離がドリル本体4の直径に対して可能な最大の半径方向距離だけ延びたドリル本体4の断面の部分にわたって延びている。これらの角度βは、従来技術のドリルのドリル本体よりもかなり広い。したがって、ドリル本体4の断面は、回転軸10に垂直に延びた平面において、高い曲げ剛性および捩り剛性を与える。いくつかの実施形態によれば、角度βはそれぞれ、110~120°の範囲内である。いくつかの実施形態によれば、角度βはいずれも、同じサイズである。
【0067】
中心切り屑フルート断面の側面30、30’(図3aおよび図3b参照)は、各交差点40、40’において、回転軸10に垂直に延びた平面におけるドリル本体4の外接円と交差する。周辺切り屑フルート断面の第1および第2の側面34、34’(図3c参照)は、各接合点42、42’において、回転軸10に垂直に延びた平面におけるドリル本体4の外接円と交差する。角度βはそれぞれ、交差点40、40’と円周方向に隣接する接合点42、42’との間に延びた角度βとして規定されていてもよい。
【0068】
ドリル本体4は、少なくとも1つの冷媒チャネル36、36’を備える。少なくとも1つの冷媒チャネル36、36’は、ドリル本体4のシャンク19からドリル本体4の前端部18における1つまたは複数の開口まで通じる。
【0069】
これらの実施形態において、ドリル本体4は、2つの冷媒チャネル36、36’を備える。冷媒チャネルはそれぞれ、回転軸10に垂直に延びた平面において、Df=0.4×D3/5~Df=0.7×D3/5の範囲内の直径Dfを有する。このため、冷媒チャネル36、36’を通る冷媒の流れは、通常の冷媒圧力(たとえば、4Bar)において、切削屑をドリル本体4の前端部から、掘削している穴の外に運び出すのに十分と考えられる。
【0070】
中心切り屑フルート断面および周辺切り屑フルート断面の上述の寸法によれば、冷媒チャネル36、36’は、ドリル本体4の製造時にも穴が開くことなく、切削屑が中心および/または周辺切り屑フルート20、22を摩耗させ得るドリル2の使用時にも穴が開くことのないように、中心切り屑フルート20および周辺切り屑フルート22からある距離のドリル本体4内に配置可能である。
【0071】
2つの冷媒チャネル36、36’はそれぞれ、周辺切り屑フルート断面の中心線26’から、dc=0.20×D~dc=0.35×Dの範囲内の距離dcに配置されていてもよい(図2d参照)。このように、冷媒チャネル36、36’は、ドリル本体の製造時およびドリルの使用時に損傷を受けることのないように、周辺切り屑フルートから安全な距離に配置されていてもよい。距離dcは、周辺切り屑フルート断面の中心線26’に垂直に測定される。
【0072】
以上、簡潔に述べた通り、冷媒チャネルは、ドリル本体の製造時に真っ直ぐな穴として掘削される。そして、ドリル本体が回転軸周りに捩られる。その後、中心および周辺切り屑フルートがそれぞれの螺旋状部を含めて、ドリル本体にフライス加工される。
【0073】
上記は例示的な種々実施形態の説明であって、本発明は、添付の特許請求の範囲のみにより規定されることが了解されるものとする。当業者であれば、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の範囲から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態を改良可能であり、例示的な実施形態のさまざまな特徴の組み合わせによって、本明細書の記載以外の実施形態を創出可能であることが認識されよう。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c