(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】クランクシャフトを後処理するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B21D 3/14 20060101AFI20220909BHJP
B23P 9/04 20060101ALI20220909BHJP
F16C 3/08 20060101ALN20220909BHJP
【FI】
B21D3/14 Z
B23P9/04
F16C3/08
(21)【出願番号】P 2019569810
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2018063692
(87)【国際公開番号】W WO2018228793
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】102017113071.3
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591025923
【氏名又は名称】マシネンファブリック アルフィング ケスラー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MASCHINENFABRIK ALFING KESSLER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】レーブ、アルフォンス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】グリム、コンラッド
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-333520(JP,A)
【文献】特表2007-524761(JP,A)
【文献】特表2008-535665(JP,A)
【文献】特開昭59-101228(JP,A)
【文献】特開昭64-034517(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006058710(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/14-3/16
B23P 9/04
F16C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心度誤差の補正及び/又は長さ補正を目的としてクランクシャフト(4)を後処理するための方法であって、
同心度誤差を示し、かつ/又は、特徴付けるクランクシャフト(4)のセクター(S
1、S
2、S
3、S
4、S
5、及びS
6)を特定し、かつ/あるいは、
前記クランクシャフト(4)の少なくとも一部に対して、設定値の長さ(L
1、L
2、L
3)からの長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)を特定し、
その後、少なくとも1つの衝撃ツール(16)により、前記同心度誤差及び/又は長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)を補正するための衝撃力(F
S)を、前記クランクシャフト(4)の複数の連接棒軸受ジャーナル(5)と複数のクランクウェブ(7)との間に形成された少なくとも1つの湾曲面部(8)及び/又は複数の主軸受ジャーナル(6)と前記複数のクランクウェブ(7)との間に形成された少なくとも1つの湾曲面部(8)に導入し、
前記同心度誤差及び/又は長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)を特定する前に、前記クランクシャフト(4)の前記湾曲面部(8)
に衝撃を与えて硬化させる衝撃硬化を行うことを特徴とする
後処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の後処理方法であって、
前記設定値の長さ(L
1、L
2、及びL
3)からの前記長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)が特定される前記クランクシャフト(4)の一部は、2つの前記クランクウェブ(7)の間隔、前記クランクシャフト(4)の一部の長さ、又は前記クランクシャフト(4)の全長に対応することを特徴とする
後処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の後処理方法であって、
前記少なくとも1つの衝撃ツール(16)により、前記同心度誤差及び/又は前記長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)を補正するための衝撃力(F
S)が、前記湾曲面部(8)に定義された高負荷領域(B
MAX)に導入されることを特徴とする
後処理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
同心度誤差を示す前記セクター(S
1、S
2、S
3、S
4、S
5、及びS
6)に位置する湾曲面部(8)のみ、及び/又は、長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)を有する前記クランクシャフト(4)の前記少なくとも一部に位置する湾曲面部(8)のみを、衝撃力(F
S)が導入される湾曲面部として選択することを特徴とする
後処理方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
前記長さの偏差(ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3)を補正するために、前記少なくとも1つの衝撃ツール(16)により、
衝撃力(F
S)を前記クランクシャフト(4)のすべての湾曲面部(8)に導入することを特徴とする
後処理方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
前記同心度誤差の性質、特に、前記クランクシャフト(4)の弧状の振れ、ジグザグの振れ、又は、前記クランクシャフト(4)の端部において同心度誤差が存在するかどうかを判定し、
前記同心度誤差の前記性質に基づいて、前記衝撃力(F
S)が導入される湾曲面部(8)が選択されることを特徴とする
後処理方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
前記衝撃力(F
S)が導入される湾曲面部(8)が、それぞれの種類のクランクシャフトのシミュレーション、計算、及び/又は一連のテストに基づいて判定されることを特徴とする
後処理方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
少なくとも1つの別の形状及び/又は位置の仕様のために、呼び寸法から偏差を特定し、
その後、少なくとも1つの衝撃ツール(16)により、少なくとも1つの別の偏差を補正するための衝撃力(F
S)を、前記クランクシャフト(4)の前記複数の連接棒軸受ジャーナル(5)のうちの1つの連接棒軸受ジャーナル(5)と、前記複数のクランクウェブ(7)のうちの1つのクランクウェブ(7)との間に形成された少なくとも1つの湾曲面部(8)、及び/又は、前記複数の主軸受ジャーナル(6)のうちの1つの主軸受ジャーナル(6)と、前記複数のクランクウェブ(7)のうちの1つのクランクウェブ(7)との間に形成された少なくとも1つの湾曲面部(8)に導入することを特徴とする
後処理方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
連接棒軸受ジャーナル(5)とクランクウェブ(7)との間の湾曲面部(8)又は主軸受ジャーナル(6)とクランクウェブ(7)との間の湾曲面部(8)のいずれかを、前記衝撃力(F
S)が導入される湾曲面部(8)として選択することを特徴とする
後処理方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
少なくとも2つの衝撃ツール(16)を使用し、前記複数の連接棒軸受ジャーナル(5)のうちの1つの連接棒軸受ジャーナル(5)と、隣接する複数のクランクウェブ(7)のうちの1つのクランクウェブ(7)との間の少なくとも1つの湾曲面部(8)、及び、前記複数の主軸受ジャーナル(6)のうちの1つの主軸受ジャーナル(6)と、隣接する複数のクランクウェブ(7)のうちの1つのクランクウェブ(7)との間の少なくとも1つの湾曲面部(8)を、前記衝撃力(F
S)が導入される湾曲面部(8)として選択することを特徴とする
後処理方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1つに記載の後処理方法であって、
前記クランクシャフト(4)の周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの前記湾曲面部(8)に沿って、前記衝撃力(F
S)を、前記複数の湾曲面部(8)のうちの少なくとも1つの湾曲面部(8)に導入するために、高負荷領域(B
MAX)、低負荷領域(B
MIN)、及び介在する中間領域(B
ZW)を定義し、
その後、前記中間領域(B
ZW)に導入される前記衝撃力(F
S)が、前記高負荷領域(B
MAX)の方向に向かって増加するように衝撃硬化を行うことを特徴とする
後処理方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載のクランクシャフト(4)を後処理するための方法を実施するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、特に、同心度誤差の補正及び/又は長さ補正を目的としてクランクシャフトを後処理する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、クランクシャフトを後処理する方法を実施する装置に関する。
【0003】
本発明はまた、クランクシャフトに関する。
【背景技術】
【0004】
内燃機関の開発が継続的に進められ、その性能が向上し、当該内燃機関には厳しい排出要件が課せられるようになったため、現代のエンジンには、これまで以上に大きな負荷がかけられている。このため、自動車産業においては、特に、高負荷を受け、かつ、内燃機関の機能にとって重要なクランクシャフトの強度に関して高い要求が課されている。ここで、構造の観点から要求されることが多いのは、クランクシャフトの軽量化と必要スペースの縮小である。これは、クランクシャフトの設計においては、断面積の増加、すなわち、クランクシャフトの断面係数ではなく、可能な限り、局所的な内部圧縮応力状態によって負荷容量を増加させるべきであるということを意味する。このため、現代のクランクシャフトは、さらなる高レベルのエンジン出力にさらされるので、様々な機械加工及び熱処理方法を使用して製造される。
【0005】
このような方法の例として、誘導及び表面硬化、レーザ硬化、又は窒化による表面硬化法等の熱処理、並びにディープローリング、ショットピーニング、又は衝撃硬化(衝撃を与えて硬化させる)等のひずみ硬化法が挙げられる。これらの方法は一般的、かつ、よく確立された方法であることがほとんどであり、様々な目的に適している。
【0006】
このような方法の例に関して、以下の文献を参照する:EP 1 479 480 A1、EP 0 788 419 B1、 EP 1 612 290 A1、DE 10 2007 028 888 A1、及び EP 1 034 314 B1。
【0007】
特に、衝撃硬化は、クランクシャフトの疲労強度、特に、曲げ疲労強度及びねじり疲労強度を高めるために有利な方法である。ここでは、断面の渡り及び断面の移行部の負荷領域において、冷間加工、好ましくは、特別な衝撃ツールによる打撃によってクランクシャフトに衝撃力を導入することにより、疲労強度を高める。このような処理の例として、DE 34 38 742 C2及びEP 1 716 260 B1を参照する。
【0008】
局所的な打撃中の剪断応力の好ましくない導入を防ぐために、DE 34 38 742 C2では、圧力パルス動作時、パルス印加体とツール表面との間に、パルス方向に対して横方向に相対的な動きが生じないようにすることが提案されている。この目的のため、衝撃ツールによる内部圧縮応力の導入中の送り運動は、段階的に実行されるであろう。
【0009】
内燃機関に対する要求の増加に伴い、クランクシャフトの寸法公差及び位置公差に対する要求も増加している。この点に関して、クランクシャフト又はクランクシャフトの一部の同心度及び長さの仕様にも特に注意を払う必要がある。厳密な仕様に正確に準拠することは、実際には困難であることが証明されている。これは、特に、焼き戻し処理及び/又は硬化処理の過程で同心度が変化する場合があり、表面処理プロセスにより、クランクシャフト又はクランクシャフトの一部の長さが変化することになる場合もあるからである。このため、実際には、最終的な機械加工処理、又は寸法公差及び位置公差に関するクランクシャフトの調整が、例えば、機械的な加工硬化処理の後に実行されることがある。この目的のため、長さ寸法及び同心度は、必要な狭い範囲内になければならない。
【0010】
この目的のための従来既知の方法は、例えば、クランクシャフトブランクのホットプレス及び/又は例えば、2つのクランクウェブ間でクランクシャフトが拡張されるようなクランクシャフトの一部の拡張である。クランクシャフトの後処理に既知の方法を使用すると、クランクシャフトに損傷を与えることなく最適な同心度及び寸法公差への準拠をいずれも確保することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】EP 1 479 480 A1
【文献】EP 0 788 419 B1
【文献】EP 1 612 290 A1
【文献】DE 10 2007 028 888 A1
【文献】EP 1 034 314 B1
【文献】DE 34 38 742 C2
【文献】EP 1 716 260 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、クランクシャフトを後処理する方法であって、可能な限り最小限の諸経費及び技術経費で同心度誤差の補正及び/又は長さ補正を可能にし、部品に悪影響を及ぼさない後処理方法を提供するという目的に基づいている。
【0013】
最後に、本発明は、改善されたクランクシャフト、特に、その疲労強度並びにその寸法及び位置の仕様に関して改善されたクランクシャフトを提供するという目的にも基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、方法については、請求項1において特定された特徴により、当該方法を実施する装置については、請求項13において特定された特徴により達成される。
【0015】
クランクシャフトに関して、当該目的は、請求項14において特定された特徴により達成される。
【0016】
以下に記載の従属請求項及び特徴は、本発明の有利な実施形態及び変形例に関する。
【0017】
クランクシャフトを後処理するための本発明に係る方法は、同心度誤差の補正及び/又は長さ補正のために提供される。
【0018】
さらに、本発明は、基本的に、クランクシャフトの任意の寸法公差及び/又は位置公差の補正のために、例えば、同心度、長さ、平行度、及び/又は垂直度若しくは角度を確保するために使用することもできる。
【0019】
本発明の使用は、例えば、長さ0.2~8mまたはそれ以上のクランクシャフト及び/もしくは直径30~500mmまたはそれ以上の主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルを有するクランクシャフトの疲労強度を高めるのにあわせて特に好適である。しかしながら、本発明は、長さ1.5~8mまたはそれ以上の大きなクランクシャフト及び/もしくは直径100~500mmまたはそれ以上の主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルを有する大きなクランクシャフトの疲労強度を高めるのにあわせて特に大変好適である。
【0020】
本発明によれば、同心度誤差を示すクランクシャフトのセクター及び/又は同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクターが決定され、かつ/あるいは、クランクシャフトの少なくとも一部に対して、設定値の長さからの長さの偏差が決定され、その後、少なくとも1つの衝撃ツールにより、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するための衝撃力が、クランクシャフトの連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間に形成された少なくとも1つの渡り部、及び/又は、主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間に形成された少なくとも1つの渡り部に導入される。
【0021】
以下、簡潔にするため、連接棒軸受ジャーナル及び主軸受ジャーナルを単に「ジャーナル」と呼ぶ場合もある。ここで、「ジャーナル」という表現は、連接棒軸受ジャーナル及び主軸受ジャーナルの両方を指す場合があり、あるいは、連接棒軸受ジャーナルのみ又は主軸受ジャーナルのみを指す場合もある。特に明記されていない限り、本明細書において、これら3パターンのジャーナルはすべて「ジャーナル」という表現に包含される。
【0022】
クランクシャフトは、様々な種類の渡り部、例えば、3心アーチ形状等を有するフィレット部分又はアンダーカット部分若しくは渡りを伴う部分を有していてもよい。渡り部は、例えば、主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルの軸受ジャーナルポイント又は走行面に対して接線方向に設けられてもよい。
【0023】
これは、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び断面における他の幾何学的移行部への渡りに対しても当てはまる。
【0024】
クランクシャフトは、通常、断面における渡り、すなわち、移行部のすべてにおいて渡り部を有する。これは、特に、軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の断面における移行部に当てはまる。本発明は、軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部に後処理のための衝撃力を導入するのに特に適している。ただし、後処理のための衝撃力を、他の任意の渡り部及び/又は断面における他の任意の移行部、特に、クランクシャフトの端部、特に、クランクシャフトの端部、特に、フランジ、ディスク、又はシャフト等への渡りにおける断面の移行部に導入してもよい。したがって、少なくとも1つの衝撃ツールにより同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するための衝撃力が導入される渡り部は、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間に必ずしも存在する必要はなく、むしろ、クランクシャフトの任意の位置に配置されてもよい。「連接棒軸受ジャーナル」、「主軸受ジャーナル」、「フランジ」、「ジャーナル」、及び/又は「クランクウェブ」という表現は、当業者によって適宜再解釈されてもよい。
【0025】
連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間への衝撃力の導入に実質的に基づいて、本発明を以下に説明する。ただし、これは限定的なものとして理解されるべきものではなく、単に理解度の向上又は読みやすさの向上を目的としている。本発明の文脈において渡り部について言及する場合、この渡り部は、基本的に、クランクシャフトの任意の位置における渡り部であってもよい。
【0026】
衝撃力の導入は、衝撃ツールの衝撃ヘッド、又は、衝撃装置のいわゆる「ヘッダー」が、硬化対象のクランクシャフトの領域(本例では、渡り部)に衝突することを意味すると理解できる。ここで、衝突は、ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って、所望の衝撃位置又は複数の衝撃位置で、目的に応じて行われる。
【0027】
「同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクター」という表現は、それぞれの同心度誤差の決定に特徴的なクランクシャフトのセクターを意味するものとして理解されるべきである。
【0028】
クランクシャフトの振れに影響される主回転軸に沿ったセクターは、例えば、軸方向に分布していてもよい。同心度誤差がある場合、クランクシャフトの主回転軸は、通常、曲線状のプロファイルに従う。すなわち、クランクシャフトの主回転軸は、クランクシャフトの両端間で直線状には延びない。同心度誤差を特徴付けるセクターは、クランクシャフトの主回転軸となる曲線、特に、曲線の始まり及び/又は曲線の終わり(又はクランクシャフトの端部領域)、曲線の極値、すなわち、最大値及び/又は最小値、及び/又は曲線の変曲点を定義するセクターであってもよい。
【0029】
「同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクター」という表現は、同心度誤差を示すクランクシャフトのセクター及び/又は同心度誤差が特に顕著になるクランクシャフトのセクターを意味すると理解されるべきである。ここで、1つのセクターで特に顕著な同心度誤差が、他のセクターに存在する同心度誤差によって引き起こされる可能性が十分にある。
【0030】
同心度誤差を示すクランクシャフトのセクター、及び、同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクターが相互に対応する場合もある。
【0031】
誤差補正のために定義されるクランクシャフトのセクターは、同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクター及び/又は同心度誤差を示すクランクシャフトのセクター及び/又は長さの偏差を有するクランクシャフトのセクターと異なっていてもよい。ただし、セクターは相互に対応していてもよく、あるいは、少なくとも部分的に対応していてもよい。
【0032】
同心度誤差を示すセクター及び/又は同心度誤差を特徴付けるセクターは、典型的には、クランクシャフトの一部、例えば、2つのクランクウェブ間の領域、又はより長い若しくはより短い部分、場合によっては、クランクシャフト全体を構成する。セクターは、場合によっては、単に点状又はリング状若しくは部分的にリング状(クランクシャフトの周囲を取り囲むような形状)であってもよい。
【0033】
同心度誤差を示すクランクシャフトのセクター及び/又は同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクターは、自動又は手動で決定してもよい。
【0034】
同様に、設定値の長さからの長さの偏差を有するクランクシャフトの少なくとも一部は、自動又は手動で決定されてもよい。
【0035】
同心度誤差及び/又は長さの偏差の補正は、同心度誤差及び/又は長さの偏差を、同心度誤差及び/又は長さの偏差が完全に除去又は防止される点まで減少させることになる改善策を意味する。例えば、特定の同心度がクランクシャフトの使用目的の様式において事前に定義される場合、同心度誤差の補正は、同心度の設定を意味すると理解してもよい。
【0036】
長さの偏差を補正する場合、クランクシャフトの少なくとも一部を延長又は短縮してもよい。クランクシャフトの少なくとも一部を延長し、かつ、クランクシャフトの別の少なくとも一部を短縮するようにしてもよい。
【0037】
後処理のための本発明に係る方法の特定の利点は、従来技術と比較して、同心度誤差及び/又は長さの偏差の補正と同時に、クランクシャフトの疲労強度をさらに増加できることである。実際、本発明による後処理、又は同心度誤差及び/又は長さの偏差の補正により、クランクシャフトの強度及び/又は堅牢性がさらに改善される。これは、衝撃硬化のための方法をこの目的のために使用するからである。
【0038】
例えば、鍛造、熱処理、表面硬化、又はその他の理由により、クランクシャフトが全体又は一部において設定値の長さを得ることができない場合、衝撃力の導入による後処理のための本発明に係る方法により、クランクシャフトを「延長」することができる。
【0039】
上記クランクシャフトの製造後、特に、上記クランクシャフトの機械的加工硬化後に、本発明によるクランクシャフトの後処理を行うことによって、特に高い寸法精度を実現することができる。
【0040】
本発明の一改良形態では、同心度誤差及び/又は長さの偏差を決定する前に、クランクシャフトの渡り部を硬化、好ましくは衝撃を与えて硬化させる(以下、衝撃硬化とする)ようにしてもよい。
【0041】
該当する衝撃力が決定されている場合、同心度誤差及び/又は長さの偏差の補正は、基本的に、クランクシャフトに内部圧縮応力を導入する衝撃硬化のための方法と同時に行われてもよい。したがって、例えば、同心度誤差を示すクランクシャフトのセクター及び/又は同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクター及び/又は設定値の長さからの長さの偏差を有するクランクシャフトのセクターを衝撃硬化処理の間に連続的に決定してもよく、衝撃硬化と同時に同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するために、衝撃力が継続的に適応される。これは、特に長さの偏差の補正に有利である場合がある。なぜなら、既に衝撃硬化されたクランクシャフトの場合、遡及的な「延長効果」は、まだ衝撃硬化されていないクランクシャフトの場合よりも小さいからである。
【0042】
しかしながら、同心度誤差及び/又は長さの偏差を決定する前に、必要又は所望の内部圧縮応力が既にクランクシャフトに導入されているように、クランクシャフトを最初に衝撃硬化するのが特に好ましい。これは、内部圧縮応力をクランクシャフトに導入するための衝撃硬化処理が同心度及び/又は長さの偏差に影響を与える可能性があるので、特に有利である。これは、好ましくは、本発明による後処理のために考慮すべきである。
【0043】
本発明の一改良形態では、特に、設定値の長さからの長さの偏差を決定するクランクシャフトの一部が、2つのクランクウェブの間隔、特に、いわゆるクランクシャフトスロー、クランクシャフトの部分的な長さ、又はクランクシャフトの全長に対応してもよい。
【0044】
長さの偏差の補正は、クランクシャフトの様々な点で有利である場合がある。例えば、主軸受ジャーナルの2つの渡り部に衝撃力を導入することにより、対応する主軸受ジャーナルに隣接するクランクウェブの間隔を広げることができる。
【0045】
本発明に係る後処理のための方法により、特に大きなクランクシャフトの場合、衝撃硬化により、長さを最大50mm変更し、かつ/あるいは、同心度を最大90mm改善することができる。場合によっては、長さをさらに大きく変更し、かつ/あるいは、同心度をさらに改善することができる可能性もある。
【0046】
長さ補正及び/又は同心度の改善は、基本的には、わずか数十分の一ミリメートルの同心度誤差又は長さの偏差から始まっていてもよい。
【0047】
0.1mm~100mm、好ましくは0.5mm~50mm、例えば、1mm~25mm、2mm~15mm、及び/又は5mm~10mmの範囲で長さを変動させてもよい。
【0048】
0.1mm~150mm、好ましくは0.5mm~90mm、例えば、1mm~45mm、2mm~20mm、及び/又は5mm~10mmの範囲で同心度を改善させてもよい。
【0049】
本発明の一改良形態では、さらに、少なくとも1つの衝撃ツールが、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するための衝撃力を、渡り部に定義された高負荷領域に導入するようにしてもよい。
【0050】
本発明者らは、クランクシャフトの高負荷領域がしばしば、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正できるように衝撃力を導入するために最も効果的な領域を構成することを認識している。したがって、渡り部に定義された高負荷領域に衝撃力を導入するのが好ましい。
【0051】
本例では、高負荷領域とは、特にエンジン動作中に例えば張力等の特に高い負荷を受けるクランクシャフトのそれぞれの渡り部の領域を意味する。クランクシャフトの負荷容量については、渡り部の高負荷領域を考慮することが重要である。これらの領域に、最大の内部圧縮応力を優先的に導入すべきである。このためにも、クランクシャフトのこれらの領域では、補正を目的とした衝撃力を導入することが特に有利となり得る。これは、クランクシャフトの堅牢性を高負荷領域においてさらに改善することができるからである。
【0052】
クランクシャフトの周囲又は連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部は、一般的に、異なる負荷がかかる複数の領域を有する。
【0053】
例えば、連接棒軸受ジャーナルのいわゆる下死点の周囲の領域は、本発明の意味の範囲内における高負荷領域であってもよい。下死点は、エンジンの動作中に、連接棒軸受ジャーナルの張力側又は圧力の反対側と呼ばれ得る領域である。
【0054】
本発明の一改良形態では、同心度誤差を示すセクターに位置する渡り部及び/又は長さの偏差を有するクランクシャフトの少なくとも一部に位置する渡り部のみを、衝撃力の導入が決定される渡り部として選択してもよい。
【0055】
同心度誤差が特に顕著なセクターは、同心度誤差を示すセクターと必ずしも一致する必要はない。同心度誤差の原因は1つのセクターにある一方で、同心度誤差は他のセクターに現れると考えることもできる。ここで、同心度誤差が現れるセクターにおける渡り部及び/又は同心度誤差を示すセクターにおける渡り部を選択してもよい。しかしながら、通常は、これらセクターは、相互に対応していると想定される。
【0056】
同心度誤差を補正するために、同心度誤差を示すセクターに位置する渡り部のみに衝撃力を導入すると有利であることが分かっている。上述のように、当該セクターは、同心度誤差を特徴付けるセクターに相当していてもよい。
【0057】
同じことが長さの偏差の除去にも同様に当てはまる。この目的のためにも、長さの偏差が特定された部分に位置する渡り部に衝撃力を導入すると有利である。例えば、1つのクランクウェブスローの2つのクランクウェブ間に長さの偏差が現れる場合、衝撃力により2つのクランクウェブが押し離されるように、軸受ジャーナルと2つのクランクウェブとの間の渡り部に衝撃力を導入するようにするのが好ましい。これにより、クランクシャフトスローのクランクシャフトが延長される。
【0058】
本発明の一改良形態では、長さの偏差を補正するために、少なくとも1つの衝撃ツールにより、クランクシャフトのすべての渡り部に衝撃力を導入するようにしてもよい。
【0059】
この方法は、特に、クランクシャフトの全長が設定値の長さと異なっている場合に有利である。好ましくは均一な「延長」又は「短縮」によってクランクシャフト長さの偏差をクランクシャフト全体に分布するように補償できるので、通常、クランクシャフトの一部、例えば2つのクランクシャフトの間隔における公差がオーバーシュートすることなく、クランクシャフトの全長を補正することができる。
【0060】
長さ補正のために、ここで、所望の延長又は短縮に適した連接棒軸受又は連接棒軸受ジャーナルにおけるセクター及び/又は主軸受又は主軸受ジャーナルにおけるセクターを選択することができる。
【0061】
本発明の一改良形態では、さらに、同心度誤差の性質、特に弧状の振れ、ジグザグの振れ、又はクランクシャフトの端部における同心度誤差が存在するかどうかを決定してもよく、衝撃力の導入が決定される渡り部は、同心度誤差の性質に基づいて選択される。
【0062】
同心度誤差の性質は、特に同心度誤差を特徴付けるクランクシャフトのセクターを特定することにより決定してもよい。例えば、弧状の振れは、クランクシャフトのタブ間のクランクシャフトの主回転軸の均一な弧状プロファイルにより特徴付けられる。したがって、主回転軸の曲線プロファイルは、クランクシャフトの中心に最大値を有する。
したがって、このクランクシャフトの最大値及び端部の(軸)位置は、弧状の振れという同心度誤差の性質に特徴的なクランクシャフトのセクターであってもよく、それにより、同心度誤差の性質を決定することができる。
ジグザグの振れの場合、クランクシャフトの主回転軸の曲線プロファイルは、通常、別の極値を有する。クランクシャフトの端部における同心度誤差の場合、クランクシャフトの主回転軸の曲線プロファイルは、端部間において直線であるか、あるいは、所望のように延びるが、主回転軸のプロファイルは端部で湾曲している。
【0063】
本発明の一改良形態では、特に、それぞれの種類のクランクシャフトのシミュレーション、計算、及び/又は一連のテストに基づいて、衝撃力の導入が決定される渡り部を決定してもよい。
【0064】
それぞれの種類のクランクシャフトに応じて、特定のセクター、一部分、又は渡り部が、同心度誤差の補正及び/又は長さの偏差の補正のための衝撃力を導入するのに特に適している可能性がある。したがって、そのようなセクター、部分、又は渡り部を事前に決定するのが有利である場合がある。
【0065】
上述のように、本発明は、さらに、任意の寸法仕様及び位置仕様の補正にも適している。したがって、本発明の一改良形態では、少なくとも1つの別の形状仕様及び/又は位置仕様について、呼び寸法からの偏差を決定するようにしてもよく、その後、少なくとも1つの衝撃ツールにより、少なくとも1つの別の偏差を補正するための衝撃力が、クランクシャフトの複数の連接棒軸受ジャーナルのうちの1つの連接棒軸受ジャーナルと複数のクランクウェブのうちの1つのクランクウェブとの間に形成された少なくとも1つの渡り部、及び/又は、複数の主軸受ジャーナルのうちの1つの主軸受ジャーナルと複数のクランクウェブのうちの1つのクランクウェブとの間に形成された少なくとも1つの渡り部に導入される。
【0066】
特に、クランクシャフトの形状、向き、プロファイル、及び領域の位置は、本発明による後処理及び補正のために提供されてもよい。
【0067】
本発明の一改良形態では、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部、又は、主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部のみを、衝撃力の導入が決定される渡り部として選択するようにしてもよい。
【0068】
本発明に係る方法を1種類の渡り部のみに使用すると、処理中に対応する衝撃ツールを再構成する必要がなく、そのため、処理速度を高めることができるので、有利である場合がある。
【0069】
主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部のみを、衝撃力の導入が決定される渡り部として選択すると特に好ましい。
【0070】
同心度誤差はクランクシャフトの主軸受に沿ってのみ生じるが、同心度誤差の補償のために、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部に衝撃力を導入することによって補正することも適切である場合がある。しかしながら、クランクシャフトの主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部に衝撃力を導入することによる同心度誤差の補正が基本的に好ましい。
【0071】
本発明の別の改良形態では、少なくとも2つの衝撃ツールを使用して、複数の連接棒軸受ジャーナルのうちの1つの連接棒軸受ジャーナルと、隣接する複数のクランクウェブのうちの1つのクランクウェブとの間の少なくとも1つの渡り部、及び、複数の主軸受ジャーナルのうちの1つの主軸受ジャーナルと、隣接する複数のクランクウェブのうちの1つのクランクウェブとの間の少なくとも1つの渡り部を、衝撃力の導入が決定される渡り部として選択するようにしてもよい。
【0072】
クランクシャフトの種類及び/又はクランクシャフトの用途に応じて、衝撃力の導入が決定される渡り部を選択すると有利である可能性がある。
【0073】
本発明の特定の一変形例では、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するために、クランクシャフトの周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部に沿って、衝撃力を、複数の渡り部のうちの少なくとも1つの渡り部に導入するために、高負荷領域、低負荷領域、及び介在する中間領域を定義するようにしてもよく、その後、中間領域に導入される衝撃力が高負荷領域に向かって増加するように衝撃硬化が行われてもよい。
【0074】
従来技術に係る方法及び装置は、渡り部の衝撃硬化中に、連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部に沿って一定の衝撃力を導入する。ここで、衝撃力は、クランクシャフトの高負荷領域に十分な内部圧縮応力を導入するのに十分なものとなるように選択される。
【0075】
ただし、クランクシャフトの堅牢性及び本発明による同心度誤差及び/又は長さの偏差の補正のために、高負荷領域に導入される衝撃力を中間領域及び/又は低負荷領域にも導入する必要はない。このようにして、本発明に係る方法を実施するための費用を削減又は最適化することができる。
【0076】
したがって、衝撃力又は高い衝撃力を渡り部の1つ以上の高負荷領域のみに導入すると有利である可能性がある。
【0077】
シミュレーションと一連の試験に基づいて、本発明者らは、特定の渡り部に導入される最大衝撃力が高負荷領域にのみ導入され、かつ、当該衝撃力が中間領域から高負荷領域の方向に向かって増加する場合でも、品質を損なわずに又は品質の改善とともにクランクシャフトの堅牢性又は疲労強度を有利に実現できることを見出した。
【0078】
このようにして、ある衝撃から次の衝撃へ衝撃力が突然変化することが回避される。
【0079】
渡り部が(同じ衝撃力で)完全に取り囲まれるようには硬化されなくなったことにより、処理速度を最大にすることができ、さらに、上死点における連接棒軸受ジャーナルへの損傷を回避できる。
【0080】
渡り部の高負荷領域を集中的に硬化した結果、堅牢性が改善することさえある。
【0081】
基本的に、本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、他の方法を使用して予め機械加工されたクランクシャフトの場合であっても、その疲労強度特性を高めるために適用又は使用してもよい。例えば、内部圧縮応力の導入と同時に又はその後に特に同心度及び長さの寸法公差及び位置公差を補正することにより、高周波焼入れにより硬化したクランクシャフトも、その曲げ疲労強度及びねじり疲労強度に関して遡及的に改善することができる。
【0082】
本発明の一変形例では、中間領域に導入される衝撃力を高負荷領域の方向に向かって絶え間なく増加するようにしてもよい。
【0083】
特に、高負荷領域の両側は中間領域で囲まれていてもよく、これにより、高負荷領域が低負荷領域から分離される。
【0084】
基本的に、中間領域及び/又は低負荷領域内の衝撃力が任意の所望のプロファイルに従うようにしてもよい。しかし、衝撃力の突然の変化を避けることが好ましく、衝撃力が渡り部の高負荷領域において最大(特に、渡り部の個々のすべての衝撃力の平均及び/又は合計の観点から考慮して最大)であることが好ましい。
【0085】
中間領域に導入される衝撃力は、高負荷領域の方向に向かって単調に増加することが好ましく、厳密に単調に増加することが特に大変好ましい。
【0086】
中間領域に導入される衝撃力が高負荷領域の方向に向かって均一及び/又は直線的に増加するようにしてもよい。
【0087】
また、任意の所望の数学関数に従って、中間領域に導入される衝撃力を高負荷領域の方向に向かって増加させてもよい。
【0088】
衝撃力が低負荷領域に導入されないようにするか、あるいは、中間領域に導入される最低衝撃力以下の衝撃力のみが低負荷領域に導入されるようにしてもよい。
【0089】
好ましくは、渡り部の低負荷領域に衝撃力を導入しなくてもよい。
【0090】
本発明の一変形例では、最終的に、渡り部の中間領域に導入される最大衝撃力以上の衝撃力が高負荷領域に導入されるようにしてもよい。
【0091】
所望の疲労強度を得るため及び/又は後処理のために必要な衝撃力のみが各領域に導入されるのが好ましく、当該衝撃力は、衝撃力を変えた方が有利である領域の方向に向かって均一に増加又は減少するのが好ましい。
【0092】
本発明の一変形例では、特に、高負荷領域に導入される衝撃力が、クランクシャフトの所望の疲労強度、クランクシャフトの一部の所望の疲労強度、並びに/又は同心度誤差及び/若しくは長さの偏差の所望の補正に基づいて決定されるようにしてもよい。
【0093】
クランクシャフトの所望の疲労強度、および/又は、クランクシャフトの一部の所望の疲労強度、および/又は、同心度誤差、および/又は、長さの偏差の所望の補正を得るためには、高負荷領域のみに衝撃力を導入すれば十分である。
【0094】
本発明の一変形例では、高負荷領域に導入される衝撃力が一定であるか、あるいは、高負荷領域にわたって一定に保たれるようにしてもよい。
【0095】
シミュレーション及び試験において、特に、一定強度の(高い)衝撃力を高負荷領域に導入することにより、クランクシャフトの高い疲労強度及び/又は堅牢性を得られることが分かっている。これは、(限定されるわけではないが)特に、高負荷領域から強度が低下する衝撃力、特にある衝撃から次の衝撃まで直線的に減少する衝撃力がそれぞれ中間領域に導入される場合に当てはまり、低負荷領域においては当該衝撃力をゼロに減らしてもよい。
【0096】
本発明の一変形例では、連接棒軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って、高負荷領域が連接棒軸受ジャーナルの最大負荷点ポイントから少なくとも±20°、好ましくは少なくとも±30°、より好ましくは少なくとも±40°、特に好ましくは少なくとも±50°、特に大変好ましくは少なくとも±60°、例えば、少なくとも±70°、少なくとも±80°、又は少なくとも±90°の位置にあるようしてもよい。
【0097】
連接棒軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿った高負荷領域の範囲の上限を定義することもでき、この定義によれば、高負荷領域は、連接棒軸受ジャーナルの最大負荷点から最大±90°、好ましくは最大±80°、より好ましくは最大±70°、特に大変好ましくは最大±60°、例えば、±50°、例えば、最大±40°、最大±30°、又は最大±20°の位置にある。
【0098】
連接棒軸受ジャーナルの最大負荷点は、特に、連接棒軸受ジャーナルの下死点である。
【0099】
したがって、特に、ジャーナルの最大負荷点からジャーナルの周囲に沿って高負荷領域が定義されるようにしてもよい。
【0100】
本発明の一変形例では、さらに、主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って、高負荷領域が主軸受ジャーナルの最大負荷点から少なくとも±20°、好ましくは少なくとも±30°、より好ましくは少なくとも±40°、特に好ましくは少なくとも±50°、特に大変好ましくは少なくとも±60°、例えば、少なくとも±70°、少なくとも±80°、又は少なくとも±90°の位置にあるようにしてもよい。
【0101】
主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿った高負荷領域の範囲の上限を定義することもでき、この定義によれば、高負荷領域は、主軸受ジャーナルの最大負荷点から最大±90°、好ましくは最大±80°、より好ましくは最大±70°、特に大変好ましくは最大±60°、例えば、最大±50°、例えば、最大±40°,最大±30°、又は最大±20°の位置にある。
【0102】
これは、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び断面における他の幾何学的移行部への渡りに対しても同様に当てはまる。
【0103】
高負荷領域又は最大負荷点を決定するために、それぞれのタイプのクランクシャフトのシミュレーション及び/又は計算及び/又は一連のテストを考慮してもよい。
【0104】
渡り部のそれぞれの高負荷領域又はそれぞれの最大負荷点は、クランクシャフトの個々の渡り部において異なっていてもよい。ただし、高負荷領域又は最大負荷点は、特に一種類の渡り部におけるすべての渡り部において対応していてもよい。高負荷領域又は最大負荷点は、第一に連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間、第二に主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間において、すべての渡り部に対応していてもよい場合がある。
【0105】
同じことが1つ以上の中間領域及び低負荷領域にも当てはまる。
【0106】
高負荷領域は、基本的に、所望のサイズを有していてもよく、例えば、連接棒軸受ジャーナルの下死点又は主軸受ジャーナルの最大負荷点から±20°未満又は±90°を超えていてもよい。
【0107】
本発明の一変形例では、特に、主軸受ジャーナルの渡り部の(特に、ねじれに関する)最大負荷点が、クランクシャフトの断面において、主軸受ジャーナルの渡り部と主軸受ジャーナルの中心点及び主軸受ジャーナルの渡り部に隣接する連接棒軸受ジャーナルの中心点の接続線との交点にあると定義してもよい。
【0108】
主軸受ジャーナルの渡り部の最大負荷点は、連接棒軸受ジャーナルの下死点から離れたクランクシャフトの側面に配置されていてもよい。
【0109】
本発明の一変形例では、少なくとも1つの衝撃ツールの衝撃ヘッドの衝撃痕がクランクシャフトの周囲(特に、連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲)を環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部に沿って、定義された方法で重なるように衝撃力を導入するようにしてもよい。
【0110】
衝撃痕の重なり及び/又は密接に配置され、かつ、正確に定義された衝撃位置により、疲労強度又は曲げ疲労強度及びねじり疲労強度を特に効果的に高めることができ、それと同時に同心度誤差及び長さの偏差を補正することができる。
【0111】
本発明の一変形例では、さらに、少なくとも1つの衝撃ツール衝撃ヘッドにより、調整可能な衝撃角度で衝撃力を渡り部に導入するようにしてもよい。
【0112】
したがって、クランクシャフトの動作中の最大負荷点に正確に適合した角度、又は、曲げ荷重及びねじり荷重を考慮して、クランクシャフトへの最大負荷及びその範囲に正確に適合した角度で衝撃力を渡り部に導入できる。
【0113】
衝撃ピストン、偏向部、及び少なくとも1つの衝撃ツールを有する衝撃装置を使用するようにしてもよく、少なくとも1つの衝撃ツールは、偏向部に締結され、衝撃ピストンは、偏向部を介して少なくとも1つの衝撃ツールに衝撃を伝達し、その後、少なくとも1つの衝撃ツールの衝撃ヘッドが上記衝撃角度で衝撃力を渡り部に導入する。
【0114】
この目的のため、衝撃ヘッドに(例えば、空気圧、油圧、及び/又は電気で発生した)強いパルス又は衝撃を伝達する衝撃ピストンを使用してもよい。
【0115】
衝撃力に応じて、それぞれの衝撃位置に衝撃ヘッドの目に見える衝撃痕が形成される。衝撃痕の深さ及び導入された内部圧縮応力の質又は深さの影響は、この場合、選択した衝撃力に依存する。ツール及び処理パラメータは、それぞれのクランクシャフト及び、ここでは、適切な場合、部分的な幾何学的移行部(断面における移行部)と正確に整合されることが好ましい。
【0116】
次に、衝撃角度を変えることで、衝撃力を個別に最大荷重に設定したり、最大荷重にさらに正確に合わせたりすることができる。
【0117】
最初にクランクシャフトを駆動装置によって回転方向に沿って衝撃位置に回転させるようにしてもよい。これは、クランクシャフトの閉ループ位置コントローラ(ポイント・ツー・ポイントの移動)により実現することができる。
【0118】
例えば、クランクシャフトをある衝撃位置から次の衝撃位置まで段階的又は経時的に回転させるために、開ループ位置コントローラを使用してもよい。最も単純な場合、この目的のために、開ループPTPコントローラ又はポイントコントローラを設けてもよい。
【0119】
駆動装置は、モータ、特に電気モータを備えていてもよい。電気モータは、基本的には、任意の電気モータ、例えば、三相モータ(特に、三相非同期機)、交流モータ、直流モータ、又はユニバーサルモータであってもよい。
【0120】
好ましくは、ステッピングモータを用いてもよい。
【0121】
二部駆動装置を設けることも可能であり、その場合、例えば、クランクシャフトの各端部にモータを設け、すなわち、クランクシャフトの同期駆動又は両側駆動とする。
【0122】
少なくとも1つの衝撃ツールが、周期的に、好ましくは、0.5Hz~30Hzのタイミング、すなわち、衝撃周波数、特に好ましくは0.5Hz~5Hzのタイミング、特に大変好ましくは0.5Hz~3Hzのタイミングで衝撃運動を実行するか、あるいは、衝撃力を導入するようにしてもよい。
【0123】
他のタイミング、例えば、0.1Hzから50Hzまでの衝撃周波数を用いてもよいことは自明であるが、上記の値は特に大変適している。
【0124】
衝撃力を生成するために衝撃ピストンが印加できる衝撃圧力は、動作モードに応じて、10~300バール、好ましくは30~180バール、特に好ましくは50~130バールである。
【0125】
クランクシャフトセグメントの領域又は機械加工される渡り部の温度は、65°C以下であることが好ましく、12°C~25°Cの値が好ましい。
【0126】
本発明による後処理のために渡り部に導入される衝撃力は、クランクシャフト又はジャーナルの周囲を数回取り囲むように渡り部に導入してもよい。したがって、クランクシャフトの後処理のために衝撃力が既に導入されている渡り部の領域に衝撃力を導入するようにしてもよい。
【0127】
低負荷領域(又は、特に低負荷領域に衝撃力を導入しない場合、中間領域)において衝撃力の導入が開始されるようにしてもよく、また、上記領域から高負荷領域の方向に向かって衝撃力が増加するようにしてもよい。
【0128】
例えば、環状に取り囲む渡り部の周囲に360°にわたって第1の衝撃力を最初に導入し、続いて、第2の衝撃力を中間領域及び高負荷領域に導入し、3周目において第3の衝撃力を高負荷領域に導入するようにしてもよい。第2の衝撃力は、第1の衝撃力と同一であってもよく、第3の衝撃力は、第1及び/又は第2の衝撃力と同一であってもよい。したがって、衝撃力は、基本的に、本発明による後処理のために環状に取り囲む渡り部に複数周にわたって衝撃力が導入されることにより、例えば、中間領域から高負荷領域の方向に向かって増加してもよい。したがって、複数の個々の衝撃力の合計として衝撃力を導入してもよい。
【0129】
同心度誤差の補正及び/又は長さ補正のためにクランクシャフトを後処理するためにクランクシャフトの渡り部、特にクランクシャフトの連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又はクランクシャフトの主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部を衝撃硬化するための方法の使用を請求することにより、本発明を定義してもよい。
【0130】
本発明における後処理のために使用するために、既知の衝撃硬化方法の有利な使用及び起こり得る表示に関して、クランクシャフトを後処理するための方法の上記及び下記の説明を参照する。
【0131】
本発明は、さらに、クランクシャフトを後処理するための上記方法を実施するための装置に関する。
【0132】
本発明に係る方法に関連して既に説明した特徴は、本発明に係る装置についても有利に実現可能であり、その逆もまた同様であることは自明である。さらに、本発明に係る方法に関連して既に説明した利点は、本発明に係る装置に関連するものとして理解することができ、その逆もまた同様である。
【0133】
本発明に係る装置のいくつかの構成要素は、基本的に、その構造に関して、EP 1 716 260 B1による装置に対応し、そのため、EP 1 716 260 B1に開示された内容は、その全体が、参照により本開示に援用される。
【0134】
本発明はまた、上記方法に従って製造されたクランクシャフトに関する。
【0135】
本発明に係るクランクシャフトは、特に、その後処理のために、複数の渡り部のうちの少なくとも1つの渡り部に衝撃力が導入される点で従来のクランクシャフトとは異なる。これにより、クランクシャフトの特徴的な構成が得られる。これは、特に、異なる領域において異なる強度で、それぞれ環状に取り囲む渡り部に沿って衝撃力が導入されるときに当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【
図1】
図1は、本発明に係る第1の実施形態における方法を実施するための装置全体を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る第2の実施形態における方法を実施するための装置の一部を概略的に示す斜視図である
【
図3】
図3は、
図1の詳細「A」による拡大図における2つの衝撃ツールを有する衝撃装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、衝撃ツールを1つのみ有する衝撃装置を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、クランクシャフトの例示的な部分に例示的な長さの偏差を有する例示的なクランクシャフトを概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、弧状の振れのような同心度誤差を有する例示的なクランクシャフトを概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、ジグザグの振れのような同心度誤差を有する例示的なクランクシャフトを概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、クランクシャフトの端部に同心度誤差を有する例示的なクランクシャフトを概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、別のクランクシャフトの例示的な詳細を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、断面線Xによる
図9のクランクシャフトの断面を概略的に示す図である。
【
図11】
図11は、例示的なジャーナルの高負荷領域、低負荷領域、及び介在する中間領域への環状に取り囲む渡り部の例示的な分割を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第1の実施形態におけるジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿った衝撃力の例示的な分布を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第2の実施形態におけるジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿った衝撃力の例示的な分布を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の第3の実施形態におけるジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿った衝撃力の例示的な分布を概略的に示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の第4の実施形態におけるジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿った衝撃力の例示的な分布を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0137】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0138】
各図は、好ましい例示的な実施形態を示しており、本発明の個々の特徴が相互に組み合わせて示されている。例示的な実施形態の特徴はまた、同一の例示的な実施形態の他の特徴と別個に実現可能であり、したがって、別の有意義な組み合わせ及び部分的組み合わせを作るために、当業者によって他の例示的な実施形態の特徴と容易に組み合わせることができる。
【0139】
各図において、機能的に同一の要素は、同一の参照符号で示されている。
【0140】
図1の全体図に示す装置は、基本的に、その構造に関して、1つ以上の衝撃装置1を有するDE 34 38 742 C2及びEP 1 716 260 B1のような装置に対応する。そのため、以下、重要な部分及び従来技術との相違点のみを詳細に説明する。
【0141】
上記装置は、機械ベッド2及び駆動装置3を有する。駆動装置3は、回転方向に沿ってクランクシャフト4を衝撃位置に移動又は回転させるために使用される。
【0142】
クランクシャフト4は、連接棒軸受ジャーナル5及び主軸受ジャーナル6を複数有し、それら各々の間にクランクウェブ7が複数配置される。渡り部8(
図3~9参照)は、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間、及び主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間、すなわち、一般的に、クランクシャフト4の断面における渡り部分に形成される。
【0143】
クランクシャフト4の駆動装置3に面する側には、クランプディスク又は締結フランジ10を有する締結装置9が設けられる。クランクシャフト4の駆動装置3から離れた側には、支持体11、好ましくはテールストックのような支持体11が設けられ、当該支持体11は、クランクシャフト4を回転可能に収容又は回転可能に固定するための別の締結装置9を有する。任意選択的に又は支持体11に加えて、回転対象位置に配置された背もたれを設けてもよい。
【0144】
駆動装置3は、クランクシャフト4を回転軸Cに沿って回転運動させることができる。ここで、クランクシャフト4の主回転軸C
KWが、
図1及び
図2に示すように、駆動装置3の回転軸Cから偏心して配置されるようにしてもよい。この目的のため、締結装置9の領域に位置合わせ手段17(
図2参照)を設けられることが好ましい。ここで、位置合わせ手段17が、硬化されるジャーナル5又は6の中心軸を変位させ、ジャーナル5又は6の中心軸が回転軸C上にあるようにしてもよい。
【0145】
駆動装置3に対して、ダイレクトドライブ、好ましくはクラッチなしのダイレクトドライブを設けてもよい。したがって、駆動装置3のモータ、好ましくは電気モータを伝達比なしで、すなわちトランスミッションなしで締結装置9又はクランクシャフト4に結合することができる。
【0146】
以下に例として詳細に説明する衝撃装置1は、連接棒軸受ジャーナル5及び主軸受ジャーナル6の位置とクランクシャフト4の長さとに適合させるための、変位及び調整装置15の各々において調整可能に保持される。
【0147】
図1の二重矢印で示すように、支持体11を変位可能に設計してもよい。
【0148】
図1には2つの衝撃装置1が示されているが、基本的には、任意の数、例えば、1つのみの衝撃装置1を設けてもよい。
【0149】
主軸受ジャーナル6の渡り部8に衝撃力を導入するために少なくとも1つの衝撃装置を設計及び構成し、1つの衝撃装置1を連接棒軸受ジャーナルの渡り部8に衝撃力を導入するために設計及び構成するようにしてもよい。
【0150】
本発明によれば、クランクシャフト4を後処理するための方法、特に、クランクシャフト4の同心度誤差及び/又は長さを補正するための方法が提供される。
【0151】
ここで、同心度誤差を特徴付けるクランクシャフト4のセクターS
1、S
2、S
3、S
4、S
5、及びS
6(以下の
図6~8参照)が、最初に決定される。
【0152】
あるいは、又はそれに加えて、ここでは図示しないが、同心度誤差を示すセクターを決定してもよい。同心度誤差を特徴付けるセクター及び同心度誤差を示すセクターは、例えば、セクターS3及びS4の場合、一致していてもよい。
【0153】
あるいは、又はそれに加えて、クランクシャフト4の少なくとも一部の設定値の長さL
1、L
2、及びL
3からの少なくとも1つの長さの偏差ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3(以下の
図5参照)を決定する。
本発明によれば、続いて、少なくとも1つの衝撃ツール16により、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するための衝撃力F
Sが、クランクシャフト4の複数の連接棒軸受ジャーナルのうちの1つの連接棒軸受ジャーナル5と複数のクランクウェブ7のうちの1つのクランクウェブ7との間に形成された少なくとも1つの渡り部8、及び/又は、複数の主軸受ジャーナル6のうちの1つの主軸受ジャーナル6と複数のクランクウェブ7のうちの1つのクランクウェブ7との間に形成された少なくとも1つの渡り部8に導入される。
【0154】
図1に示す装置は、基本的には、クランクシャフト4を衝撃硬化するために設計されているが、衝撃力F
Sを導入するために使用されてもよい。ここで、好ましくは、同心度誤差及び/又は長さの偏差ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3を決定する前に、クランクシャフト4の渡り部8は、硬化、好ましくは衝撃硬化される。しかしながら、クランクシャフト4の衝撃硬化と同時に、クランクシャフト4を後処理するようにしてもよい。
【0155】
同心度誤差の補正及び/又は長さの偏差の補正に加えて、別の寸法公差及び位置公差を補正するためにクランクシャフト4を後処理することを目的として本発明を使用してもよい。
例えば、少なくとも1つの別の形状及び/又は位置の仕様のために、呼び寸法から偏差を決定するようにしてもよい。その後、少なくとも1つの衝撃ツール16により、少なくとも1つの別の偏差を補正するための衝撃力FSを、クランクシャフト4の複数の連接棒軸受ジャーナルのうちの1つの連接棒軸受ジャーナル5と複数のクランクウェブ7のうちの1つのクランクウェブ7との間に形成された少なくとも1つの渡り部8に導入する。
【0156】
図2は、本発明に係る方法を実施するための別の装置の詳細を斜視図で示しているが、衝撃装置が含まれていない。ここで、
図2に示す装置は、
図1に示す装置と実質的に同一であるため、以下、重要な相違点のみ詳細に言及する。
【0157】
駆動装置3が再び設けられる。さらに、締結フランジ10と、それに締結された、クランクシャフト4を固定するためのクランプジョーを有する面板とを有する締結装置9が設けられる。締結装置9のクランプジョーを有する面板は、締結フランジ10上の位置合わせ手段17上で調整可能に配置され、これにより、クランクシャフト4の縦軸CKWを駆動シャフト又は入力シャフト13の回転軸Cに対して変位させることができる。
【0158】
図2に示すクランクシャフト4は、
図1に示す実施形態から逸脱する構成を有するが、基本的には、同様に、連接棒軸受ジャーナル5、主軸受ジャーナル6、及びクランクウェブ7を備える。
【0159】
図2(
図1と同様)において、省略してもよいが、駆動装置3から離れたクランクシャフト4の端部に別の締結装置9を設けてもよい。
【0160】
本発明は、基本的には、任意の衝撃装置1で実施することができる。
図1に示す衝撃装置1は、
図3に示す例により詳細に示されている。この衝撃装置1は、本体18を有する。本体18は、機械加工されるクランクシャフトセグメントの部分に対応して角柱状のアバットメントを有していてもよく、支持面内に2つの衝撃ツール16をガイドし、偏向部20の周りの支持角に関して、対応する自由度をそれら衝撃ツール16に付与するガイド19を有することが好ましく、クランクシャフト4の寸法条件への適合に有利である。いずれの場合も、衝撃ヘッドとして1つのボールを2つの衝撃ツール16の前端に配置する。中間部22は、衝撃ピストン23と偏向部20とを接続し、これにより、衝撃エネルギーが衝撃ツール16に伝達される。中間部22は省略してもよい可能性がある。
【0161】
衝撃の有効性を高めるために、本体18から離れたジャーナル5又は6側にクランプナット27を有する調整可能なクランプボルト26により、スプリング25を介して、クランププリズム24を締結してもよい。ここで、他の構造的な解決法も可能である。
【0162】
説明の一部が「衝撃ツール」又は「衝撃装置」又は「複数の衝撃ツール/衝撃装置」を指す場合、基本的には、任意の数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の衝撃ツール/衝撃装置を意味することを理解されたい。複数又は単数への言及は、読みやすくするためだけにされているものであり、限定するものではない。
【0163】
機械加工されるクランクシャフト4の長さにわたって複数の衝撃装置1を配置することにより、必要に応じて、クランクシャフト4のすべての中央領域と、場合によっては、偏心した領域とを同時に機械加工することができる。
【0164】
衝撃ピストン23は、偏向部20を介して衝撃ツール16に衝撃を伝達し、これにより、衝撃ツール16の衝撃ヘッド21は、渡り部8に衝撃力FSを導入する。
【0165】
本明細書における「FS」という表現及びこれに類似する表現は、単に当業者にとって適切と考えられる任意の衝撃力についてのプレースホルダ/変数として理解されるべきである。ここで、「衝撃力FS」と記載されている場合、それぞれの場合について、異なる衝撃力そうでなければ同一の衝撃力を指してもよい。
【0166】
図4は、1つのみの衝撃ツール16を備える衝撃装置1を示す。本発明の例示的な実施形態では、衝撃装置1は、特に、衝撃装置1の縦軸に対して同軸に配置された衝撃ツール16が、機械加工されるクランクシャフトセグメントの領域、本例では、機械加工される渡り部8の領域に対して垂直に衝撃を与えるように、クランクシャフト4に対して傾斜していることが好ましい。この場合、それぞれ、1つのクランクシャフトセグメントのみを機械加工することが可能であるが、衝撃装置1による構造設計と力の伝達が良好かつ簡単である。
【0167】
本実施形態は、クランクシャフト4の非対称のクランクシャフトセグメントでの使用に特に有利であることが証明されている。本実施形態は、同心度誤差及び長さの偏差を補正する目的で、同じジャーナル5又は6に隣接する2つの渡り部8のうちの1つのみに衝撃力を導入するのにも適している。
【0168】
図5は、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間、及び主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間のそれぞれ渡り部8と渡り部8を有する断面の渡りとを有する例示的なクランクシャフト4を示す。ここでは、対応する設定値の長さL
1、L
2、及びL
3からの長さの偏差ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3が決定される例示的な部分が示されている。クランクシャフト4のそのような部分は、この場合、クランクシャフト4の全長をカバーしてもよい。
これを本発明の例示的な実施形態において、設定値の長さL
1からの長さの偏差ΔL
1の差分として示す。したがって、
図5に示すクランクシャフト4は、長さの偏差ΔL
1だけ寸詰まりである。長さの偏差ΔL
1、ΔL
2、及びΔL
3が決定されるクランクシャフト4の部分は、所望の長さを有していてもよい。当該所望の長さは、例えば、2つのクランクウェブ7間の間隔に対応していてもよい。
図5に示す本発明の例示的な実施形態では、いわゆるクランクシャフトスロー、すなわち、クランクウェブ7/連接棒軸受ジャーナル5/クランクウェブ7のシーケンスの設定値の長さL
2からの長さの偏差ΔL
2を例として示す。長さの偏差ΔL
1、ΔL
2、ΔL
3が決定されるクランクシャフト4の領域は、クランクシャフト4の任意の所望の部分的な長さをカバーしてもよい。本発明の例示的な実施形態では、クランクシャフト4の中央領域における設定値の長さL
3からの長さの偏差ΔL
3も示されており、これは、3つのクランクシャフトスローを例として包含する。
【0169】
本発明による衝撃力FSをクランクシャフト4に形成された渡り部8に導入することにより、長さの偏差ΔL1、ΔL2、及びΔL3を有利に補正することができる。この目的のため、例えば、長さの偏差ΔL1、ΔL2、及びΔL3を示す部分に位置する渡り部8を選択することができる。しかしながら、特に、クランクシャフト4全体の長さの偏差ΔL1を補正するために、少なくとも1つの衝撃ツール16により、衝撃力FSをクランクシャフト4のすべての渡り部8に導入するようにしてもよい。
【0170】
課題を解決するための手段の欄でも述べたように、本発明は、同心度誤差の修正にも特に適している。慣行上、様々な種類の同心度誤差が知られている。ここで、同心度誤差の性質、特にクランクシャフト4の弧状の振れ(
図6に示す)、ジグザグの振れ(
図7に示す)、又はクランクシャフト4の端部における同心度誤差(
図8に示す)が存在するかどうかを最初に決定すると有利である場合があり、衝撃力F
Sの導入が決定される渡り部8は、同心度誤差の性質に基づいて選択される。
【0171】
弧状の振れのように同心度誤差を有するクランクシャフト4を、例として
図6に示す。弧状の振れは、実質的に、クランクシャフト4の主回転軸C
kwの曲線プロファイルにより特徴付けられる。
【0172】
同心度を補正するために、例示的な実施形態では、同心度誤差を特徴付けるクランクシャフト4セクターS1、S2、S3、S4、S5、及びS6を最初に決定する。弧状の振れは、例えば、クランクシャフト4の端部における図示のセクターS1及びS2、及び場合によっては、クランクシャフト4の中央にある別のセクター(不図示)より特徴付けられる。当該別のセクターは、クランクシャフト4の主回転軸CKWの曲線プロファイルの最大値又は極値に関連する。
【0173】
図7は、ジグザグの振れのように同心度誤差を示す。ジグザグの振れは、少なくとも2つの極値を有するクランクシャフト4の主回転軸C
KWの曲線プロファイルにより特徴付けられる。クランクシャフト4の端部における特徴的なセクターS
1及びS
2に加えて、クランクシャフト4の主回転軸C
KWの曲線プロファイルの極値のセクターS
3及びS
4を考慮することができる。
図7に示す同心度誤差の補正は、例えば、クランクシャフト4の主回転軸C
KWの曲線プロファイルの極値を描くセクターS
3及びS
4に近い渡り部8に衝撃力F
Sを導入することにより実現される。
【0174】
最後に、
図8は、クランクシャフト4の端部における同心度誤差を示す。当該同心度誤差は、例えば、セクターS
5及びS
6により特徴付けることができる。これら特徴的なセクターS
5及びS
6間において、クランクシャフト4の主回転軸C
KWのプロファイルは、実質的に線形である。
【0175】
補正のために、セクターS3、S4、S5、及びS6に位置する渡り部8を選択することができるのが好ましい。同心度誤差の範囲は、セクターS3、S4、S5、及びS6において最大である。したがって、補正のために、これらセクターの渡り部8又はこれらセクターS3、S4、S5、及びS6に隣接する渡り部8に衝撃力を導入するのが適切である。本発明により提供される衝撃力は、同心度誤差を示すセクター(又はこれらセクターに隣接するセクター)に位置する渡り部に有利に導入される。
【0176】
基本的には、それぞれの種類のクランクシャフトのシミュレーション、計算、及び/又は一連のテストに基づいて、衝撃力FSが導入される渡り部8が、決定されてもよい。
【0177】
特に、1つの衝撃装置1及び/又は1つの衝撃ツール16のみを使用する場合、衝撃力FSの導入が決定される渡り部8として、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間、又は、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の、いずれかの渡り部8を、選択するのが有利である。この場合、本発明における方法において用いられる装置の変換又は調整を省略することができ、したがって、処理速度を最大化することができる。
【0178】
衝撃力FSの導入が決定される渡り部8として、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の渡り部8のみを選択するのが好ましい。
【0179】
少なくとも2つの衝撃ツール16を使用し、衝撃力FSの導入が決定される渡り部8として、複数の連接棒軸受ジャーナル5のうちの1つの連接棒軸受ジャーナル5と、隣接する複数のクランクウェブ7のうちの1つのクランクウェブ7との間の少なくとも1つの渡り部8、及び、複数の主軸受ジャーナル6のうちの1つの主軸受ジャーナル6と、隣接する複数のクランクウェブ7のうちの1つのクランクウェブ7との間の少なくとも1つの渡り部8が、選択されてもよい。
【0180】
特に好ましくは、少なくとも1つの衝撃ツール16により、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するための衝撃力FSを、衝撃力FSの導入が決定される渡り部の高負荷領域8に導入するようにしてもよい。
【0181】
図9は、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間、及び、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間にそれぞれ渡り部8を有するクランクシャフト4の例示的な詳細を示す図である。
【0182】
ジャーナル5及び6にそれぞれ隣接する渡り部8は、エンジン動作又はクランクシャフト4の目的に応じて、それぞれ異なる位置に配置された高負荷領域B
MAXを有していてもよい。クランクシャフト4の例示的な負荷は、
図9において矢印で示されている。連接棒軸受ジャーナル5は、ピストン(不図示)を介して矢印に沿ってエンジンに接続されている。連接棒軸受ジャーナル5の矢印が示す側は、この場合、いわゆる圧力側である。連接棒軸受ジャーナル5のいわゆる下死点BDCは、圧力側とは反対側、具体的には張力側に位置する。経験上、それぞれの渡り部8の曲げ荷重は、連接棒軸受ジャーナル5の下死点BDCで最大になる。下死点BDCと隣接するように、好ましくは対称的に取り囲むように高負荷領域B
MAXを定義できることが有利である。
【0183】
図9の示すクランクシャフト4の場合、さらに、連接棒軸受ジャーナル5に隣接する主軸受ジャーナル6の最大負荷点を連接棒軸受ジャーナル5に隣接する圧力側に対応する領域とすることができる。簡単にするために、主軸受ジャーナル6の上記領域を以降「上死点」TDCと呼ぶ。
【0184】
したがって、特に、(連接棒軸受ジャーナル5及び/又は主軸受ジャーナル6の周囲を)環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部8に沿って、同心度誤差及び/又は長さの偏差を補正するための衝撃力FSを少なくとも1つの渡り部8に導入するために、高負荷領域BMAX、低負荷領域BMIN、及び介在する中間領域BZWを定義してもよい。
その後、中間領域BZWに導入される衝撃力FSが、高負荷領域BMAXの方向に向かって増加するように衝撃硬化を行う。
【0185】
ここで、高負荷領域BMAXに導入される衝撃力FSを、クランクシャフト4の所望の疲労強度及び/又はクランクシャフト4の一部の所望の疲労強度に基づいて決定してもよい。
【0186】
死点BDC及びTDCの位置を分かりやすく説明するために、
図9に示す断面線「X」に沿ったクランクシャフト4の断面を
図10に示す。
【0187】
ここで、主軸受ジャーナル6の渡り部8の最大負荷点又は上死点TDCは、クランクシャフト4の断面において、主軸受ジャーナル6の渡り部8と、主軸受ジャーナル6の中心点MH及び主軸受ジャーナル6の渡り部8に隣接する連接棒軸受ジャーナル5の中心点MPの接続線xとの交点にあることが分かる。
【0188】
図11は、ジャーナル5又は6の周囲に沿った領域B
MAX、B
MIN、及びB
ZWの考えられる分布を示すために、例示的なジャーナル5又は6の断面を示す。
【0189】
本例では、ジャーナル5又は6の最大負荷点、すなわち、連接棒軸受ジャーナル5の下死点BDC又は主軸受ジャーナル6の上死点TDCが180°で示されている。この点から、クランクシャフト4の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8に沿って、高負荷領域BMAXが定義される。高負荷領域BMAXは、この点から少なくとも±20°、好ましくは少なくとも±30°、より好ましくは少なくとも±40°、特に好ましくは少なくとも±50°、特に大変好ましくは少なくとも±60°、例えば、少なくとも±70°、少なくとも±80°、又は少なくとも±90°の位置にあってもよく、対称的に位置することが好ましい。
【0190】
高負荷領域BMAXに隣接して2つの中間領域BZWが定義されており、当該2つの中間領域BZWが高負荷領域BMAXを低負荷領域BMINから分離している。中間領域BZWは、環状に取り囲む渡り部8に沿った任意の角度セグメントを包含してもよい。同じことが低負荷領域BMINにも当てはまる。それぞれの角度範囲は、計算、シミュレーション、及び/又は一連のテストによって、場合によっては、(エンジンの)リアルタイム動作中の測定から決定してもよい。
【0191】
中間領域BZWに導入される衝撃力FSは、高負荷領域BMAXの方向に(好ましくは絶え間なく)増加するのが好ましい。衝撃力FSが増加するという記載は、連続する衝撃間で衝撃力FSが漸次増加することが好ましいことを意味する。
【0192】
図12~15は、ジャーナル5又は6、例えば、
図11に示すジャーナル5又は6の周囲に沿った衝撃力F
Sの4つの例示的なプロファイルを示す。
【0193】
ここで、
図12、14、及び15において、高負荷領域B
MAXにそれぞれ導入される衝撃力F
Sは、一定である。
【0194】
例として示すすべての曲線において、高負荷領域BMAXに導入される衝撃力FSは、中間領域BZWにそれぞれ導入される最大衝撃力FS以上である(それぞれの場合において、低負荷領域BMINに導入される衝撃力FSより大きいことは自明である)。
【0195】
したがって、最大衝撃力FMAXは、渡り部8の高負荷領域BMAXに導入される。
【0196】
さらに、
図12及び15は、それぞれ、低負荷領域B
MINに衝撃力F
Sが導入されない例示的な力の分布を示す。対照的に、
図13及び14では、それぞれ、低負荷領域B
MINにおいて、中間領域B
ZWに導入される最小衝撃力F
Sより小さい衝撃力F
Sが導入される。ここで、
図14の場合、最小衝撃力F
minが与えられ、低負荷領域B
MINにおいて一定に保たれる。対照的に、
図13では、中間領域B
ZWから最大負荷点、すなわち、下死点BDC又は上死点TDCの反対側の位置に向かって、衝撃力F
Sが絶え間なく直線的に最小値、本例では0まで減少する。
【0197】
図12では、例えば、本例では衝撃力が導入されない低負荷領域B
MINから高負荷領域B
MAXに向かって、中間領域B
ZWに導入される衝撃力F
Sが均一及び/又は直線的に増加する。
【0198】
対照的に、
図13では、衝撃力F
Sのプロファイルは、クランクシャフト4の円周に沿って、最大負荷点、すなわち、下死点BDC又は上死点TDCと反対側の点から最大負荷点、すなわち、下死点BDC又は上死点TDCの方向にそれぞれ増加する連続的なランプに従う。ここで、領域B
MIN、B
ZW、及びB
MAXのそれぞれにおいて、衝撃力F
Sのプロファイルは、それぞれ関連するランプ関数に従い、合わせて図示のランプを形成する。
【0199】
図14は、
図12に示す衝撃力F
Sのプロファイルと基本的に同様の衝撃力F
Sのプロファイルを示す。ただし、中間領域B
ZWでは、
図12に示す衝撃力F
Sの線形又はランプ状の変化とは対照的に、滑らかな曲線プロファイルが示されている。
【0200】
基本的に、
図15は、中間領域B
ZWにおいて衝撃力F
Sが段階的に変化する図を示す。
【0201】
最後に、特に(ただし、限定的ではない)
図12~15に示すプロファイルの変形例及び組み合わせを提供してもよい。本発明は、衝撃力F
Sの特定のプロファイルに限定されない。環状に取り囲む渡り部8の周囲に沿った衝撃力F
Sのプロファイルを、エンジン動作又はクランクシャフト4の目的に関して選択してもよい。