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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】改良された圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20220909BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
F17C1/06
F16J12/00 B
F16J12/00 A
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019572086
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067988
(87)【国際公開番号】W WO2019007978
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】17180105.3
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・クリエル
【審査官】蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211783(JP,A)
【文献】特開平08-219390(JP,A)
【文献】特開2008-169893(JP,A)
【文献】特開2001-021099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0029701(US,A1)
【文献】特開2009-058111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加圧下で貯蔵するように構成される圧力容器(100)であって、
円筒区域(41)、第1の丸い端区域(42)、および第2の丸い端区域(42’)を有し、前記第1の丸い端区域は開口(43)を有する、熱可塑性ライナ(40)と、
複合材料から作られる強化構造(50)であって、前記熱可塑性ライナの前記円筒区域を少なくとも包囲する強化構造と、
フランジ(11)を伴うボス(10)であって、前記フランジ(11)は、前記第1の丸い端区域における前記開口の周りで延びる、ボス(10)と、
前記強化構造に埋め込まれる局所強化層(20)であって、前記局所強化層(20)は前記強化構造とは異なる材料で作られ、前記ボスと前記熱可塑性ライナの前記円筒区域との間の領域において前記第1の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、前記円筒区域のうちの20%未満を包囲する局所強化層(20)と、
を備える圧力容器。
【請求項2】
前記局所強化層(20)は、前記強化構造の複合材料が前記局所強化層の下方および上方で延びるように前記強化構造に埋め込まれる、請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記局所強化層(20)は実質的に一定の厚さを有する、請求項1または2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記局所強化層(20)は、以下の材料、すなわち、金属、複合材料のうちのいずれか1つから作られる、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記強化構造(50)は前記局所強化層(20)にわたって少なくとも部分的に延びる、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記局所強化層によって形成される周辺部分の最大外径(Dmax)は、前記熱可塑性ライナの前記円筒区域の外径(D)の50%より大きい、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項7】
圧力容器の軸方向において見ると、前記第1の丸い端区域は長さL2を有し、前記局所強化層は、前記第1の丸い区域の第1の帯域(Z1)の少なくとも一部分において前記第1の丸い端区域を包囲し、前記第1の帯域(Z1)は前記円筒区域から前記圧力容器の軸方向において長さL2/2にわたって延びる、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項8】
前記局所強化層は、30GPaより大きいヤング率を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記局所強化層(20)は1mmを超える厚さを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項10】
前記局所強化層(20)は、6mmより小さい厚さを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項11】
前記局所強化層(20)は、熱硬化性または熱可塑性の母材に埋め込まれる強化繊維を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項12】
前記強化構造(50)は、熱硬化性または熱可塑性の母材に埋め込まれる強化繊維を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項13】
前記局所強化層(20)および/または前記強化構造(50)は前記ボスにわたって延びる、請求項1から12のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項14】
前記第1の丸い端区域(42)の前記開口(43)の周辺の縁が、前記熱可塑性ライナから外向きに突出する円筒端区域(45)に連結され、前記ボス(10)は前記円筒端区域の周りに配置される、請求項1から13のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項15】
前記第1の丸い端区域(42)の前記開口(43)の周辺の縁が、前記熱可塑性ライナから内向きに突出する円筒端区域(46)に連結され、前記ボス(10)は、前記円筒端区域(46)に配置される部分を有し、前記ボス(10)の前記フランジ(11)は前記開口の周りで前記熱可塑性ライナ(40)から突出する、請求項1から12のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項16】
前記第1の丸い端区域および/または前記第2の丸い端区域は実質的にドーム形とされる、請求項1から15のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項17】
前記圧力容器は、以下のもの、すなわち、液化石油ガス(LPG)、水素、圧縮天然ガス(CNG)、アンモニアのうちのいずれかを貯蔵するように構成され、前記圧力容器は2barを超える圧力に耐えるように構成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項18】
第2の局所強化層が、前記圧力容器の軸方向において見られるとき、前記局所強化層に隣接して設けられ、前記第2の局所強化層は前記局所強化層と異なる、請求項1から17のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項19】
流体を加圧下で貯蔵するように構成される圧力容器(100)を製造するための方法であって、
円筒区域(41)、第1の丸い端区域(42)、および第2の丸い端区域(42’)を有する熱可塑性ライナ(40)を形成するステップと、
複合材料から作られる強化構造(50)を、前記強化構造が前記熱可塑性ライナの前記円筒区域を少なくとも包囲するように形成するステップであって、開口が前記第1の丸い端区域に設けられる、ステップと、
ボスを前記第1の丸い端区域における前記開口の周りに配置するステップと、
前記強化構造とは異なる材料で作られる局所強化層(20)が、前記ボスと前記熱可塑性ライナの前記円筒区域との間の領域において前記第1の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、前記円筒区域のうちの20%未満を包囲するように、前記局所強化層(20)を前記強化構造に埋め込むステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記局所強化層は、6mmより小さい厚さを有するように配置される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記局所強化層は、前記強化構造の2つの複合物層の間での前記局所強化層の位置付けによって前記強化構造に埋め込まれる、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記局所強化層の一部分が、前記局所強化層の一部分において埋め込まれ、熱硬化性または熱可塑性の樹脂が、前記局所強化層と前記強化構造とを形成するために前記局所強化層に注入される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記熱可塑性ライナ(40)は、前記第1の丸い端区域および前記第2の丸い端区域は実質的にドーム形とされるように形成される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、圧力容器に関し、詳細には、車両での使用のための圧力容器に関する。具体的な実施形態は、水素ガス、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、またはアンモニアを貯蔵するための圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高圧での貯蔵のための圧力容器は、典型的には、フィラメントワインディング工程を用いて複合物強化構造がライナ上に製造される該ライナから作られる。例えば、タイプIVの圧力容器について、圧力容器を作るための工程は、
- 例えば、射出成形もしくは吹込成形、回転成形、または、管押出の任意の種類の成形工程との組み合わせによる、熱可塑性ライナの製造のステップであって、成形された端区域が典型的には管押出に溶接され、このステップについての製造時間が典型的には1分間から5分間の間である、ステップと、
- 例えば強化繊維をインライン含浸で適用することによる、フィラメントワインディングを適用するステップであって、このステップのために必要とされる時間が60リットルの容器について典型的には2~4時間である、ステップと、
- 硬化させるステップであって、60リットルの容器について4~6時間を典型的には必要とするステップと
を含み得る。
【0003】
特許文献1は、巻付けの層同士の間に巻き付けられる環状の強化パッチを述べている。これは、極の開口とは別の場所において圧力容器を貫く開口を作ることを可能にする。この開口の設計は、層同士の間で一体にされ、容器製造の後に孔が切り通される複数の環状の強化パッチに基づかれる。
【0004】
特許文献2は、金属ライナと、金属ライナと樹脂が含浸された繊維筐体との間の一体型荷重分配層とを伴う圧力容器を述べている。その手法では、タイプIIIの圧力容器の圧力周期の間の疲労の問題が回避できる。
【0005】
特許文献3は、フランジを伴うボスを伴う圧力コンテナを開示している。フランジは、コンテナ本体に接合する接合位置において、コンテナ本体の周囲に向けて延びる。圧力コンテナのライナは、一緒に封止するようにフランジに当接する自己封止部品を有する。自己封止部品の外方周囲側において、環形とされた規制部材がライナの外方周囲に設けられ、規制部材は、コンテナ本体の膨張によって引き起こされるライナの直径の膨張を抑制するものである。
【0006】
ライナは、その外方周囲において、自己封止部品の径方向において簡単に拡張可能および変形可能である容易に変形可能な部品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3,112,234号
【文献】米国特許第3,815,773号
【文献】米国特許出願公開第2004/0173618号
【文献】EP16305374.7
【文献】EP16305839.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、大きな応力負荷に耐えることができ、同じ応力負荷に耐えることができる先行技術の容器と比較して重量を低減した圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、流体を加圧下で貯蔵するように構成される圧力容器が提供される。圧力容器は、熱可塑性ライナと、ボスと、強化構造と、局所強化層とを備える。熱可塑性ライナは、円筒区域、第1の丸い端区域、および第2の丸い端区域を有する。第1の丸い端区域は開口を有する。ボスのフランジが前記開口の周りに配置される。強化構造は複合材料から作られ、強化構造は、熱可塑性ライナの円筒区域を少なくとも包囲する。局所強化層は、前記強化構造に埋め込まれるか、強化構造とライナとの間に位置付けられるか、ライナにおいて一体にされるかのいずれかである。局所強化層は、ボスと熱可塑性ライナの円筒区域との間の領域において第1の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、円筒区域のうちの20%未満を包囲する。
【0010】
注目されるのは、米国特許出願公開第2004/0173618号では、規制部材がライナの丸い端区域を包囲していないことである。むしろ、規制部材はライナの円筒の段付き端区域を包囲している。
【0011】
「丸い端区域」という表現は、端区域がライナの軸方向において丸められているという意味を含む。後で説明されているように、好ましくは、端区域は実質的にドーム形とされる。
【0012】
「20%未満」という表現は、特定の実施形態では、局所強化層が円筒区域を包囲せず、他の実施形態では、局所強化層が円筒区域において小さい距離(円筒区域の長さの20%より小さい)にわたって延びるという意味を含む。
【0013】
「ライナにおいて一体にされる」という表現は、局所強化層が、例えば溶接によって、ライナの表面に付着され得るか、または、例えばオーバーモールディングによって、ライナと一緒に形成され得るという意味を含むが、そのため、局所強化層は、ライナの局所的な強化を作り出すために、ライナの材料特性と異なる材料特性で作り出される。好ましい実施形態では、局所強化層は、ライナに溶接される1つまたは複数のテープ区域によって形成される。
【0014】
「強化構造とライナとの間に位置付けられる」という表現は、局所強化層がライナに付着される必要はないが、強化構造によって所定位置で保持され得るという意味を含む。
【0015】
「強化構造に埋め込まれる」という表現は、強化構造の複合材料が局所強化層の下方および上方で延びることを意味する。
【0016】
発明者は、先行技術の圧力容器において、強化構造が圧力容器の最大圧力に置かれるとき(典型的には、破裂試験の間)、強化構造がその限度の負荷能力まで使用されないこと、つまり、典型的には、強化構造の繊維は、最大圧力に置かれるとき、その限度の負荷能力まで使用されないことを見出している。これは、強化構造における応力が一部の場所において大きいが、圧力容器の他の場所では小さいままであることを意味する。最大応力の場所は、典型的には、圧力容器の丸い端区域に、または、圧力容器の円筒区域と丸い端区域との間の移行領域にある。これらの領域は、典型的には、螺旋層を追加すること、および/または、強化構造の既存の螺旋層の角度を最適化することによって強化される。本発明の実施形態は、圧力容器の丸い端区域において、または、円筒区域と丸い端区域との間の移行領域において、応力を低減させるために加えられる層が、圧力容器の円筒区域の実質的な部分において効率的に使用されていないという発明者の洞察にとりわけ基づかれている。追加の層は、局所的にのみ寄与しており、そのため、重量および製造時間を圧力容器に付加している。圧力容器を製作するときの別の問題は、強化構造の形成の後の硬化サイクルの期間である。この期間は、強化構造の最終的な複合物の厚さに依存し、強化構造が厚くなればなるほど硬化期間が長くなる。これらの発明的な洞察は、本発明の圧力容器の実施形態によって取り組まれている。実際、先に記載されている手法で局所強化層を加えることで、強化構造はより薄くでき、同じ機械的強度を伴う先行技術の圧力容器との比較で、圧力容器の重量低減をもたらす。局所強化層は、第1の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、円筒区域のうちの20%未満を包囲し、局所強化層の少なくとも一部分は、ボスと熱可塑性ライナの円筒区域との間の圧力容器の領域に配置される。この手法では、局所強化層は、応力が最も大きくなる危うい領域に設けられ得る。
【0017】
好ましくは、強化構造は局所強化層を少なくとも部分的に覆う。より好ましくは、強化構造は局所強化層を完全に覆う。この手法では、局所強化層は、強化構造によって所定位置でしっかりと保持され得る。
【0018】
例示の実施形態によれば、局所強化層は、以下の材料、すなわち、金属、複合材料のうちのいずれか1つから作られる。好ましくは、複合材料は、熱硬化性または熱可塑性の母材に埋め込まれる強化繊維を含む。より好ましくは、局所強化層は、熱可塑性もしくは熱硬化性のプリプレグによって、または、強化テープによって形成される。このような複合材料は、圧力容器において容易に配置でき、十分に強い一方で同時に軽量であるという利点を有する。
【0019】
本出願の文脈において、「プリプレグ」という用語は、熱可塑性または熱硬化性の材料と、織られても織られなくてもよい短繊維、長繊維、または連続繊維との両方を含むシートを言っている。概して、短繊維は数十/数百ミクロンの最終的な長さを有する。長繊維の場合、残っている長さは数ミリメートルであり得る。使用される繊維の長さが数十センチメートルである場合、これらは連続繊維または連続フィラメントと称される。これらの繊維は、ガラス(E種、S種など)、炭素、ポリマ(例えばアラミドなどの芳香族ポリアミドといったポリアミド、またはポリエチレンなど)に基づかれてもよく、または、大麻もしくはサイザル麻などの天然繊維であってもよい。繊維は好ましくは炭素繊維である。プリプレグの繊維は、好ましくは、プリプレグの熱可塑性材料または熱硬化性材料と適合できる。この両立性を得るために、繊維は、サイザル麻などの適合性の物質に合う大きさとされ得る(表面処理され得る)。反応性のHDPEの種類の結合剤が使用されてもよい。この状況において、無水マレイン酸の種類の反応性の機能が有利に使用されてもよい。プリプレグにおける繊維含有量は、好ましくは最大で70%であり、強化の残余は熱可塑性または熱硬化性の材料から本質的に成る。別の言い方をすれば、プリプレグの熱可塑性または熱硬化性の材料の含有量は少なくとも30%である。実際、プリプレグは、カレンダー加工、圧縮成形、射出成形、吹付成形、または成形によって製作され得る。
【0020】
本発明の文脈において、「強化テープ」という用語は、任意の種類の強化繊維を熱可塑性または熱硬化性の樹脂において含むテープを言っている。強化繊維は、例えば、炭素、ガラス、バサルト、アラミド、ポリエチレン、または任意の他の強化繊維から作られ得る。強化繊維は、繊維の長さの方向に沿って部品に強度および剛性を加える。繊維は、好ましくは長さが連続的またはほとんど連続的であり、好ましくはテープ長さ(または、テープの長手方向軸)と実質的に平行に並べられるが、テープ内の特定の強化構成が、実施される発明に必要とされる。熱可塑性樹脂は、例えばポリアミド、ポリオレフィン、またはポリフェニレンサルファイドであり得る。熱硬化性樹脂は、エポキシ、不飽和ポリエステル、または不飽和ポリウレタンであり得る。ほとんどの複合物用途と同様に、使用される特定の樹脂および繊維と、複合物内のそれらの比率および構成とが、製造される局所強化層の特定の要件によって決定される。熱可塑性テープは、例えばレーザー、高温ガス、IR、超音波、電子投射、または、当業者によって知られる任意の他の方法によって、ライナに配置され得る。熱可塑性材料は、熱および圧力の適用によってライナに配置されたときのままで接合され得る。テープは、例えば帯形、波形といった、ほとんどあらゆる形であり得る。好ましくは、テープは帯形である。
【0021】
例示の実施形態によれば、局所強化層の材料はライナの材料と異なる。例示の実施形態によれば、局所強化層の材料は強化構造の材料と異なる複合材料である。より具体的には、強化層の材料は、必要とされる応力負荷に耐えることができるのに最適となるように選択され得る。
【0022】
例示の実施形態によれば、局所強化層は、例えば40x10x1mmの試験標本について測定された、30GPaより大きく、より好ましくは40GPaより大きく、さらにより好ましくは50GPaより大きいヤング率を有する。局所強化層が繊維を含む場合、測定は繊維の方向において実施される。局所強化層が繊維を異なる方向において含む場合、要件は少なくとも1つの方向において好ましくは満たされる。このようなヤング率を有する材料は、例えばプリプレグまたは強化テープの形態で利用可能であり、十分な局所的な強度を提供する。
【0023】
好ましい実施形態によれば、局所強化層は、実質的に一定の厚さを有し、好ましくは、名目値の20%以内であり、より好ましくは名目値の10%以内である厚さを有する。
【0024】
例示の実施形態によれば、局所強化層は1mmより大きい厚さを有する。例示の実施形態によれば、局所強化層は、6mmより小さく、より好ましくは5mmより小さい厚さを有する。発明者は、それらの厚さの要件を満たす層が、丸い端区域、および/または、圧力容器の丸い端区域と円筒区域との間の移行領域において、典型的な局所的な応力に耐えることができるのに適切であることを見出した。
【0025】
例示の実施形態によれば、局所強化層によって形成される周辺部分の最大外径(Dmax)は、ライナの円筒区域の外径(D)の50%より大きく、好ましくは70%より大きく、より好ましくは80%より大きく、さらにより好ましくは90%より大きい。その手法では、第1の丸い端区域における危うい領域が局所強化層によって強化されることになる。
【0026】
例示の実施形態によれば、圧力容器の軸方向において見ると、第1の丸い端区域は長さL2を有し、局所強化層は、第1の丸い区域の第1の帯域(Z1)の少なくとも一部分において第1の丸い端区域を包囲し、前記第1の帯域(Z1)は円筒区域から圧力容器の軸方向において長さL2/2にわたって延びる。この手法では、ライナの円筒部分の近くの第1の丸い端区域の危うい領域が局所強化層によって強化されることになる。より好ましくは、第1の帯域(Z1)は、円筒区域から圧力容器の軸方向において、例えば全体の長さL2にわたってといった、長さ(3/4)*L2にわたって延びる。後で説明されているように、局所強化層はボスにわたって延びてもよい。
【0027】
例示の実施形態によれば、局所強化層はライナと強化構造との間に配置される。この手法では、局所強化層は圧力容器における流体と接触せず、強化構造によって所定位置に保持され、局所強化層のために使用され得る幅広い範囲の材料をもたらす。
【0028】
例示の実施形態によれば、強化構造は、熱硬化性または熱可塑性の母材に埋め込まれる、例えば炭素、ガラス、アラミドなどの強化繊維を含む。例示の実施形態によれば、強化構造は、以下のもの、すなわち、フィラメントワインディング層、編組層、テープ層のうちの1つまたは複数を備える。強化構造は、フィラメントワインディング工程、編組工程、自動テープ配置工程、レーザー支援テープ配置工程、それらの組み合わせ、または任意の代替の工程によって得ることができる。
【0029】
好ましくは、ボスは金属から作られ、より好ましくはアルミニウムから作られる。好ましくは、ボスは、ボスの円筒形の内面によって画定される通路を有する。典型的には、通路は、圧力容器の軸方向に延び、典型的にはライナにおける開口と並べられる。ボスのフランジは通路から外向きに突出する。ボスのフランジの形は、そこでの開口の周りでの第1の丸い端区域の形に適合され得る。ボスは、機能的構成要素が取り付けられ得る構成要素である。そのために、ボスには、機能的構成要素におけるネジ山と協働するための雌ネジ山が設けられてもよい。機能的構成要素は、例えば、圧力逃し弁または多機能弁などの弁、出口、センサ、熱的加圧逃し弁、圧力センサ、温度センサ、過圧逃し弁、アダプタ部品、接続部品、閉止部品などであり得る。
【0030】
例示の実施形態によれば、第1の丸い端区域の開口の周辺の縁は、ライナから外向きに突出する円筒端区域に連結され、ボスは円筒端区域の周りに配置され、局所強化層および/または強化構造はボスにわたって延びる。その手法では、局所強化層および/または強化構造はボスを所定位置で保持し、圧力容器のコンパクトで強い端区域をもたらす。
【0031】
例示の実施形態によれば、第1の丸い端区域の開口の周辺の縁は、ライナから内向きに突出する円筒端区域に連結され、ボスは円筒端区域に配置され、ライナから突出し、局所強化層および/または強化構造はボスの一部分にわたって延びる。この実施形態でも、局所強化層および/または強化構造はボスを所定位置で保持し、圧力容器のコンパクトで強い端区域をもたらす。
【0032】
例示の実施形態によれば、ライナの第1および/または第2の丸い端区域は実質的にドーム形とされる。これは、通常は、圧力容器における大きな圧力負荷に対処するのに最適な形である。ライナの端区域が、開口を含む概ね平坦な端部分、または、開口を含む円形部分をさらに備えてもよいが、強化層は、段差または不連続のない実質的にドーム形の区域を包囲する。
【0033】
例示の実施形態によれば、圧力容器は、以下のもの、すなわち、液化石油ガス(LPG)、水素、圧縮天然ガス(CNG)、アンモニアのうちのいずれか1つを貯蔵するように構成され、圧力容器は2barを超える圧力に耐えるように構成される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、流体を加圧下で貯蔵するように構成される圧力容器を製造するための方法であって、
- 円筒区域、第1の丸い端区域、および第2の丸い端区域を有する熱可塑性ライナを形成するステップであって、開口が前記第1の丸い端区域に設けられる、ステップと、
- ボスを前記第1の丸い端区域における前記開口の周りに配置するステップと、
- 前記熱可塑性ライナの前記円筒区域を少なくとも包囲するように複合材料から作られる強化構造を形成するステップと、
- 局所強化層が、ボスと熱可塑性ライナの円筒区域との間の領域において第1の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、円筒区域のうちの20%未満を包囲するように、前記局所強化層を前記強化構造に埋め込むステップ、前記局所強化層をライナと強化構造との間に位置付けるステップ、または、前記局所強化層を前記ライナにおいて一体にするステップのいずれかと
を含む方法が提供される。
【0035】
例示の実施形態によれば、局所強化層は、ライナまたはライナの副次的部分の成形の間にライナにオーバーモールドされる。ライナの形成は、例えば、吹込成形、射出成形、回転成形、または、管押出の任意の種類の成形工程との組み合わせによって行われ、成形された端区域が典型的には管押出に溶接される。例えば、炭素に基づくプリプレグといったプリプレグは、金型の外で加熱され、正しい形へとドレープされ、ライナ製造工程の間にオーバーモールドされるように金型の内側で位置付けられ得る。
【0036】
例示の実施形態によれば、局所強化層は、ライナの形成と強化構造の形成との間においてライナに位置付けられ、強化層は、独立した構成要素として一体にされるか、ライナの形成の後にライナに付着させられるかのいずれかである。例えば、局所強化層が、ライナ製造の工程ステップと強化構造製造の工程ステップとの間にライナに位置決めされてもよい。この実施形態では、局所強化層は、独立した構成要素として一体にされてもよい。代替で、局所強化層は、ライナの製造工程の後、例えばライナに溶接されるなど、ライナに付着され得る。具体的な実施形態では、熱可塑性強化テープが、局所強化層を作り出すために第1の丸い端区域に直接的にレーザー溶接され得る。
【0037】
例示の実施形態によれば、局所強化層は、強化構造の2つの複合物層の間での局所強化層の位置付けによって強化構造に埋め込まれる。局所強化層は、例えば強化構造の2つのフィラメント層の間での局所強化層の位置付けによって、強化構造に埋め込まれ得る。この手法では、局所強化層は、複合物構造の2つの複合物層の間における所定位置でしっかりと保持され得る。
【0038】
例示の実施形態によれば、局所強化層の一部分が、ライナに配置されるか、または、強化構造の一部分において埋め込まれ、熱硬化性または熱可塑性の樹脂が、局所強化層と強化構造とを形成するために注入される。ライナにおける局所強化層の「乾燥」部分の配置、または、強化構造の「乾燥」部分における局所強化層の「乾燥」部分の埋め込みによって、局所強化層および強化構造を形成するための熱硬化性または熱可塑性の樹脂の注入は、1つのステップで行うことができる。例えば、フィラメントワインディングは、強化繊維のインライン含浸なしで実施されてもよい。その実施形態では、「乾燥」した局所強化層の部分が、ライナに、および/または、フィラメントワインディングの異なる層の間に位置付けられ得る。フィラメントワインディングのステップは、強化構造および局所強化層の複合材料を固めるために、熱硬化性または熱可塑性の樹脂の注入が続く。
【0039】
例示の実施形態によれば、ライナは、例えばHDPE、PA、PPA、PVDF、または任意の他の適切な熱可塑性材料に基づかれる単一材料から作られ得る。代替で、ライナは、例えば、非常に小さい水素透過性(典型的にはEVOH)を伴う層を含む共押出層といった、共押出構造から作られてもよい。
【0040】
例示の実施形態によれば、強化構造は、局所強化層にわたって少なくとも部分的に形成され、好ましくは局所強化層にわたって完全に形成される。
【0041】
例示の実施形態によれば、局所強化層の位置は、局所強化層によって形成される周辺部分の最大外径(Dmax)がライナの円筒区域の外径(D)の50%より大きくなり、好ましくは70%より大きくなり、より好ましくは80%より大きくなるように選択される。
【0042】
例示の実施形態によれば、局所強化層は、1mmより大きく、および/または、6mmより小さく、より好ましくは5mmより小さい厚さを有するように選択される。
【0043】
例示の実施形態によれば、強化構造は、以下のもの、すなわち、フィラメントワインディング、編組、強化テープを適用することのうちの1つまたは複数によって作られる。
【0044】
例示の実施形態によれば、局所強化層および/または強化構造は、ボスにわたって延びるように形成される。
【0045】
例示の実施形態によれば、ライナは、第1の丸い端区域の開口の周辺の縁に、ライナから外向きに突出する円筒端区域が設けられるように形成され、ボスは円筒端区域の周りに配置される。別の実施形態によれば、ライナは、第1の丸い端区域の開口の周辺の縁に、ライナから内向きに突出する円筒端区域が設けられるように形成され、ボスは円筒端区域に配置され、ボスのフランジは開口の周りでライナから突出する。
【0046】
例示の実施形態によれば、第1の丸い端区域および第2の丸い端区域には第1の局所強化層および第2の局所強化層がそれぞれ設けられ得る。第1の局所強化層は、強化構造に埋め込まれるか、ライナに配置されるか、または、ライナにおいて一体にされるかのいずれかとでき、第1の局所強化層は、第1の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、円筒区域のうちの20%未満を包囲する。同様に、第2の局所強化層は、強化構造に埋め込まれるか、ライナに配置されるか、または、ライナにおいて一体にされるかのいずれかとでき、第2の局所強化層は、第2の丸い端区域の一部分を少なくとも包囲し、円筒区域のうちの20%未満を包囲する。典型的な実施形態では、第1の丸い端区域および第2の丸い端区域は局所的な強化から便益を得ることができ、これはこの実施形態で達成される。
【0047】
例示の実施形態によれば、例えば、ライナにおける局所強化層またはライナにおいて一体にされる局所強化層、および、強化構造に埋め込まれるさらなる局所強化層といった、2つ以上の局所強化層があってもよく、局所強化層およびさらなる局所強化層は、同じ丸い端区域の一部分を少なくとも包囲でき、円筒区域のうちの20%未満を包囲できる。このような実施形態は、必要とされる局所的な領域において機械的強度をさらに増加させることができる。別の例示の実施形態によれば、第2の局所強化層が、圧力容器の軸方向において見られるとき、局所強化層に隣接して設けられ、前記第2の強化層は前記局所強化層と異なる。別の言い方をすれば、圧力容器の軸方向において見られる複数の隣接する局所強化層が提供されてもよい。隣接する局所強化層は、圧力容器における位置の関数で最適化され得る異なる特性を有してもよい。隣接する局所強化層は、例えばプリプレグまたは強化テープとして適用されてもよい。
【0048】
本発明の背景では文脈において、「圧力容器」という用語は、少なくとも2barで、好ましくは3barの内部圧力に耐えることができる容器を言っている。圧力容器は、圧力容器本体の開口に備え付けられる機能部品など、圧力容器本体の本体において一体にされる構成要素を備え得る。その例が、以下の図の記載においてより詳細に記載されている。圧力容器本体は、2つの丸い端区域を伴う細長い実質的に円筒形の区域を有することができ、機能部品がこれらの丸い端区域のうちの1つに配置され得る。
【0049】
本発明の文脈において、「タイプIVの圧力容器」という用語は、炭素繊維またはハイブリッド炭素/ガラス繊維の複合物が配置されるライナを特徴とする構造を言っている。ライナは、製造の後に容器の一部として留まる。
【0050】
本発明の文脈において、「熱可塑性材料」という用語は、熱可塑性エラストマを含む任意の熱可塑性ポリマ、およびそれらの混合物を意味する。「ポリマ」という用語は、単独重合体と共重合体(特に二元または三元の共重合体)との両方を意味する。このような共重合体の例は、限定されることはないが、ランダム共重合体、線状ブロック共重合体、他のブロック共重合体、およびグラフト共重合体である。しばしば使用される1つのポリマはポリエチレンである。優れた結果が、高密度ポリエチレン(HDPE)および繊維強化ポリマで得られる。
【0051】
例示の実施形態によれば、ライナの第1および/または第2の丸い端区域は、実質的にドーム形とされるように形成される。端区域は、開口を含む概ね平坦な端部分を有し得るが、強化層は、段差または不連続のない実質的にドーム形の区域を好ましくは包囲することは、留意されている。
【0052】
圧力容器について先に記載された好ましい特徴は方法にも当てはまり、逆もまた然りである。
【0053】
添付の図面は、本発明の装置の現在好ましいとされる非限定的な例示の実施形態を示すために使用される。本発明の特徴および目的の上記の利点および他の利点がより明らかとなり、本発明は、添付の図面と併せて読まれるとき、以下の詳細な記載からより良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による圧力容器の第1の例示の実施形態を貫いての概略的な断面図である。
図2A】本発明による圧力容器の異なる実施形態による、圧力容器の一部分の概略的な断面図である。
図2B】本発明による圧力容器の異なる実施形態による、圧力容器の一部分の概略的な断面図である。
図2C】本発明による圧力容器の異なる実施形態による、圧力容器の一部分の概略的な断面図である。
図2D】本発明による圧力容器の異なる実施形態による、圧力容器の一部分の概略的な断面図である。
図3】本発明による圧力容器の様々な例示の実施形態を貫いての概略的な断面図である。
図4】本発明による圧力容器の第1の例示の実施形態を貫いての概略的な断面図である。
図5】本発明による圧力容器の第1の例示の実施形態を貫いての概略的な断面図である。
図6】本発明による圧力容器の例示の実施形態を備える燃料電池システムの概略図である。
図7A】本発明による圧力容器の異なる実施形態による、圧力容器の一部分の概略的な断面図である。
図7B】本発明による圧力容器の異なる実施形態による、圧力容器の一部分の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、ガスを加圧下で貯蔵するように構成された圧力容器100の第1の例示の実施形態を示している。図1の圧力容器100は、熱可塑性ライナ40と、強化構造50と、第1および第2の強化層20、20’と、ボス10、10’とを備える。熱可塑性ライナ40は、細長い円筒区域41と、第1の丸い端区域42と、第2の丸い端区域42’とを有する。強化構造50は複合材料から作られ、熱可塑性ライナ40の円筒区域41を少なくとも包囲する。好ましくは、強化構造50は、図1に描写されているように、ライナ40を円筒区域41と第1および第2の丸い端区域42、42’との両方において包囲する。より好ましくは、強化構造50はボス10、10’にもわたって延びる。局所強化層20、20’は、熱可塑性ライナ40において直接的に、少なくとも部分的に前記強化構造50の下で、好ましくは前記強化構造50によって完全に覆われるように配置されるか(図1に描写されている)、または、前記強化構造50に埋め込まれるか(後で見るが、図2Cに描写されている)のいずれかである。
【0056】
第1の局所強化層20は、第1の丸い端区域42を、圧力容器100の軸方向Aにおいて見たとき、好ましくは長さL2の少なくとも20%にわたって、より好ましくは長さL2の少なくとも50%にわたって、さらにより好ましくは長さL2の少なくとも70%にわたって包囲する。好ましくは、第1の局所強化層20は、円筒区域41を包囲しない、または、好ましくは円筒区域41の直径の20%未満で、より好ましくは円筒区域41の直径の15%未満で、円筒区域41の小さな部分だけにわたって延びる。局所強化層20は、第1の丸い端区域42の第1の帯域(Z1)の少なくとも一部分において第1の丸い端区域42を包囲し、前記第1の帯域(Z1)は、円筒区域から圧力容器の軸方向において長さL2/2にわたって延びる。局所強化層20は、第1の帯域Z1の一部分において、または、第1の帯域Z1全体において存在してもよい。局所強化層20は、第1の丸い端区域42の最後の半分を覆う第2の帯域Z2にわたって延びてもよく、円筒区域41にわたって延びてもよく、および/または、後で見るが、ボス10にわたって延びてもよい。好ましくは、局所強化層20によって形成される周辺部分の最大外径Dmaxは、ライナ40の円筒区域41の外径Dの50%より大きく、好ましくは70%より大きく、より好ましくは80%より大きく、さらにより好ましくは90%より大きい。その手法では、第1の丸い端区域42における危うい領域が局所強化層20によって強化されることになる。
【0057】
図1に示されているシステムでは、ライナ40、強化構造50、および第1および第2の強化層20、20’は、細長い円筒区域101と第1および第2の丸い端区域102、102’とを伴う圧力容器100を形成している。
【0058】
好ましくは、第1および第2の強化層20、20’は、以下の材料、すなわち、金属、複合材料のうちのいずれか1つから作られる。好ましい実施形態では、第1および第2の強化層20、20’は、熱可塑性または熱硬化性のプリプレグの形態で適用される複合材料から作られる。プリプレグは、「あらかじめ含浸された」繊維を含み、繊維は熱硬化性または熱可塑性のポリマの母材材料においてあらかじめ含浸されている。繊維は織りの形態を取ることができ、母材は、それら繊維を一緒に接合するために、および、ライナまたは他の構成要素への接合を許容するために使用される。熱硬化性の母材が使用される場合、典型的には、熱硬化性の母材は、容易な取り扱いを可能とするために、それを圧力容器に配置する前にはある程度までしか硬化させられず、圧力容器において一体になった後に完全に硬化することが許容される。
【0059】
例示の実施形態によれば、局所強化層20、20’は、例えば40x10x1mmの試験標本について測定された、30GPaより大きく、より好ましくは40GPaより大きく、さらにより好ましくは50GPaより大きいヤング率を有する。局所強化層20、20’が繊維を含む場合、測定は繊維の方向において実施される。局所強化層が繊維を異なる方向において含む場合、要件は少なくとも1つの方向において好ましくは満たされる。
【0060】
好ましくは、局所強化層20、20’は1mmより大きい厚さを有する。より好ましくは、厚さは1mmから5mmの間であり、さらにより好ましくは、1mmから4mmの間である。
【0061】
強化構造50は、複合材料から作られてもよく、熱硬化性または熱可塑性の母材に埋め込まれた、例えば炭素、ガラス、アラミドなどの強化繊維を含んでもよい。強化構造50は、フィラメントワインディング工程、編組工程、自動テープ配置工程、レーザー支援テープ配置工程、それらの組み合わせ、または任意の代替の工程によって得ることができる。強化構造50は、以下のもの、すなわち、フィラメントワインディング層、編組層、テープ層のうちの1つまたは複数を備え得る。好ましくは、強化構造はフィラメントワインディング層を備える。有利な強化構造は、本出願者の名前での特許文献4および特許文献5に記載されており、それら特許文献は、参照により本明細書に含まれている。
【0062】
好ましくは、第1および第2の丸い端区域42、42’は実質的にドーム形とされる。それらの端区域に開口43、43’が典型的には設けられることが留意されている。開口43、43’を画定する縁は、ライナ40から外向きに突出する円筒端区域45、45’に連結されており、ボス10、10’が円筒端区域45、45’の周りに配置されている。ボス10、10’は、開口43、43’の周りの領域において丸い端区域42、42’に当てて配置されるフランジ11、11’を有する。好ましくは、強化構造50はボス10、10’にわたって延びる。任意選択で、局所強化層20、20’はボス10、10’にわたって延びてもよい(図1では描写されていない)。ライナ40は機能部品を開口43内に保持するだけの強さの材料から作られないことが多いため、圧力容器100には、円筒端区域45、45’の周りでボス10、10’が典型的には設けられる。このボス10は、圧力容器100内の圧力に耐える金属または任意の他の材料から形成されてもよい。ボス10、10’は、典型的にはアルミニウムから作られる。強化構造50はボス10の周りに配置され得る。別の言い方をすれば、製造する間、ボス10は最初にライナ40の円筒端区域45の周りに配置され、それから、強化構造50を形成するための強化材料が、ライナ40にわたって、および、ボス10の周辺外面にわたって配置され得る。同様に、局所強化層20は、ボス10の周辺外面にわたって部分的に延びるように配置されてもよい。
【0063】
図1の圧力容器は20リットルから120リットルの間の容積を有し得る。先に提供されている定義を見ると、これはいわゆるタイプIVの容器であり得る。好ましくは、圧力容器は、以下のもの、すなわち、液化石油ガス(LPG)、水素、圧縮天然ガス(CNG)、アンモニアのうちのいずれか1つを貯蔵するように構成される。好ましくは、圧力容器は、2barを超える圧力に耐えるように構成されている。圧力容器は、本発明の一部の実施形態では、ガスを0.3MPa(3bar)を超える圧力において貯蔵するように構成され得る。圧力容器が液化石油ガス(LPG)を貯蔵するように構成される場合、圧力容器はこの液化石油ガスをおおよそ0.5~1.5MPa(5~15bar)の圧力において貯蔵するように構成され得る。水素ガスを貯蔵するように構成される圧力容器について、圧力容器は、このガスをおおよそ70MPa(700bar)または35MPa(旧基準350bar)の圧力において貯蔵できる。圧力容器は、圧縮天然ガス(CNG)を貯蔵するためのものである場合、ガスをおおよそ20MPa(200bar)において貯蔵するように構成され得る。圧力容器は、典型的にはアンモニア水であるアンモニアを貯蔵するためのものである場合、アンモニアを0.1MPaから2MPaの圧力で貯蔵するように構成され得る。
【0064】
ライナ40は、吹込成形、射出成形、または任意の他の適切な成形技術によって熱可塑性材料から製造され得る。ライナ40は、押し出しされた管区域と、管区域に溶接される2つの成形されたドーム形の区域とから形成されてもよい。ライナ40は、HDPE、PA、PPA、PVDFなどに基づかれた単一材料から成り得る、または、EVOH層などの非常に小さい水素浸透性を伴う層を含む共押出構造から作られ得る。
【0065】
強化構造50は螺旋状の巻付けを含むことができ、本発明の実施形態では、螺旋状の巻付けの一部は、局所強化層20、20’を、丸い端区域42、42’に、または、円筒区域41と丸い端区域42、42’との間の移行領域に加える一方で、同じ機械的強度要件での先行技術の実施形態と比較して取り除くことができる。本発明の実施形態は、同じ機械的強度要件に対してより小さい重量の圧力容器をもたらすことになる。これは製造時間も短縮し、特に硬化に必要とされる時間を短縮する。
【0066】
局所強化層20、20’は以下の例示の方法によって得られる。
- ライナまたはライナの副次的部分の成形過程の間に局所強化層をオーバーモールドする。例示の実施形態では、例えば炭素に基づかれたプリプレグといったプリプレグが、金型の外側で加熱され、正しい形へとドレープされ、ライナ製造過程の間にオーバーモールドされるように金型の内側に位置付けでき、別の例示の実施形態では、強化テープ区域の構築が、ライナ製造の間にオーバーモールドされる型の内側に位置付けられ得る。
- ライナ製造の工程ステップと強化構造製造の工程ステップとの間に局所強化層をライナに位置決めする。この実施形態では、局所強化層は、独立した構成要素として一体にされてもよい。
- ライナの製造過程の後、例えば溶接するといった、局所強化層をライナへと付着する。具体的な実施形態では、熱可塑性テープは、局所強化層を作り出すために丸い端区域に直接的にレーザー溶接されてもよく、また、複数のテープ区域は、1つまたは複数の局所強化層を形成するためにレーザー溶接されてもよく、異なるテープ区域は異なる強度特性の熱可塑性テープを有してもよい。
- 例えば、強化構造の2つの複合物層の間での局所強化層の位置付けによって、局所強化層を強化構造に埋め込む。
- 局所強化層の「乾燥」部分をライナに配置するか、または、局所強化層の「乾燥」部分を強化構造の「乾燥」部分に埋め込み、局所強化層および強化構造を形成するために熱硬化性または熱可塑性の樹脂を注入する。例えば、フィラメントワインディングは、強化繊維のインライン含浸なしで実施されてもよい。その実施形態では、「乾燥」した局所強化層の部分が、ライナに、および/または、フィラメントワインディングの異なる層の間に位置付けられ得る。フィラメントワインディングのステップは、強化構造および局所強化層の複合材料を固めるために、熱硬化性または熱可塑性の樹脂の注入が続く。局所強化は、製造支持体におけるテープ区域の構築によって製造されてもよい。この構築は、完成されると、任意の成形過程によってライナにおいて一体にされ得るかまたはライナに配置され得る。
【0067】
図2A図2Dは、ライナ40と、強化構造50と、局所強化層20とを備える圧力容器の4つの可及的な例示の実施形態を示している。ボス10が、図1の実施形態について先に記載されているように提供されている。
【0068】
図2Aの実施形態では、局所強化層20は、ライナ40において一体にされており、ライナ40の厚さの一部分にわたって、または、ライナ40の厚さ全体にわたって延びることができる。好ましくは、局所強化層はライナ40の外面において一体にされる。図2Bの実施形態では、局所強化層20はライナ40の外面において位置付けられており、ライナ40の厚さ全体にわたって延びていない。この実施形態は、局所強化20が圧力容器におけるガスと接触せず、これは、汚染を防止する意味において有利であり得る。
【0069】
図2Cの実施形態では、局所強化層20は強化構造50に埋め込まれている。任意選択で(描写されていない)、局所強化層20はボス10にわたって延びてもよい。一部の実施形態では、ボス10は、図2Cを見ると、機能的構成要素をボスにおいて固定するためのネジ山を備えてもよい。図2Dは、可及的な圧力容器の他のより詳細な実施を示している。この実施形態では、強化構造50は、ライナ40の円筒区域41に配置され、局所強化層20にわたって部分的に延びる。局所強化層20は、ライナ40の丸い端区域42に配置されるプリプレグまたは強化テープである。局所強化層20はボス10にわたって延びている。図1および図2A図2Dとの関連で記載された特徴のうちの一部が、図3図6の例示の実施形態にも存在しており、再度記載されてはいない。
【0070】
図1に示した圧力容器100の実施形態では、外向きに突出する実質的に円筒の端区域45が提供されている。実質的に円筒の端区域45が外向きに突出している実施形態では、ボス10は実質的に円筒の端区域45の周りに配置され得る。対照的に、図3では、ライナ40には、内向きに突出する円筒端区域46(つまり、圧力容器100の内部の方へ内向きに突出する実質的に円筒の端区域46)が設けられている。ボス10が、内向きに突出する端区域46に挿入され得る。ボス10は、例えば、圧力逃し弁または多機能弁などの弁、出口、センサ、熱的加圧逃し弁、圧力センサ、温度センサ、過圧逃し弁、アダプタ部品、接続部品などの構成要素を装着するように意図されている。代替の実施形態では、ボス10は、閉じた部品、つまり、中心の通路を有していない部品であってもよい。図3に示された圧力容器100では、ボス10は、第1の直径を有する第1の実質的に円筒の部分12と、例えば第1の直径より大きい第2の直径を有するフランジ11を形成する第2の実質的に円筒の部分とを備え、前記第1の部分12は開口43において挿入され、フランジ11は開口43から外向きに延びている。シール3が、貯蔵されたガスが圧力容器100から漏れるのを防止するために、円筒端区域46とボス10との間で開口43内に配置されてもよい。局所強化層20および/または強化構造50は、第1の実質的に円筒の部分12および/またはフランジ11にわたって延びて包囲してもよい。
【0071】
図4の例示の実施形態では、ライナ40に円筒端区域が設けられていない。代わりに、円筒区域は、ボス10にオーバーモールドされ得る別の円筒の構成要素47によって形成されている。この円筒の構成要素47は、溶接可能な熱可塑性材料から形成され得る。図4の実施形態の製造の間、最初に円筒の構成要素47がライナ40に溶接でき、次に局所強化層20および強化構造50が適用できる。局所強化層20は円筒の構成要素47の前に配置されてもよい。さらに、ここではアダプタ部品の形態で描写されている機能的構成要素65が、円筒の構成要素47に挿入される。機能的構成要素65は、圧力逃し弁または多機能弁などの弁、出口、センサ、熱的加圧逃し弁、圧力センサ、温度センサ、過圧逃し弁、アダプタ部品、接続部品、閉止部品などのいずれか1つであり得る。
【0072】
図5の圧力容器100では、圧力容器100には、ライナ40における開口43に挿入された内部ボス70が設けられている。この内部ボス70は、金属から、または、圧力容器内の圧力に耐える任意の他の材料から作ることができ、ライナ40の吹込成形の間に一体にされ得る。図5の実施形態では、圧力容器100は外部のボスを備えていない。開口43が適切に封止されるように、シール3がライナ40の内周と内部容器アダプタ70との間に設けられてもよい。
【0073】
2つのさらなる例示の実施形態が図7Aおよび図7Bにおいて概略的に示されている。図7Aの例示の実施形態によれば、第1、第2、および第3の局所強化層20a、20b、20cが、圧力容器の軸方向において見たときに互いと隣接して提供されており、第1、第2、および第3の強化層20a、20b、20cは、例えば、異なる繊維母材、異なる厚さ、および/または異なる繊維含有量などの異なる特性を有する。より大まかには、圧力容器の軸方向において見たとき、任意の数の隣接する局所強化層20a、20b、20cが提供され得る。隣接する局所強化層は、圧力容器における位置の関数で最適化され得る異なる特性を有してもよい。図示されている実施形態では、第3の局所強化層20cはボス10にわたって延びており、強化構造50は、ライナ40全体と、第1、第2、および第3の局所強化層20a、20b、20c全体と、ボス10全体とにわたって延びている。他の実施形態(図示せず)では、第3の局所強化層20cはボス10にわたって延びない。第1、第2、および第3の局所強化層20a、20b、20cは、例えばプリプレグ層または強化テープ層であり得る。第1、第2、および第3の局所強化層20a、20b、20cはすべて第1の丸い端区域42に配置されてもよく、例えば、第1の局所強化層20aは、ライナ40の円筒区域41にわたって小さい距離で延びてもよい。
【0074】
図7Bの例示の実施形態によれば、ライナ40に位置付けられるかまたはライナ40で一体にされる第1の局所強化層20dと、強化構造50に埋め込まれるさらなる局所強化層20eとが設けられる。第1の局所強化層20dと第2の局所強化層20eとの両方は、同じ丸い端区域42の一部分を少なくとも包囲し、円筒区域の20%未満を包囲する。このような実施形態は、特定の局所領域における機械的強度を、所望の機械的強度特性の機能においてさらに増加させることができる。
【0075】
本発明の図示されている実施形態では、圧力容器100は、以下のもの、すなわち、液化石油ガス(LPG)、水素、圧縮天然ガス(CNG)、アンモニアガスのうちのいずれか1つを貯蔵するように構成され得る。
【0076】
図6は、図1の圧力容器と大まかには同一である圧力容器100を備える燃料電池システムの例示の実施形態を示している。圧力容器100は、強化構造50と局所強化層20、20’とによって包囲されたライナ40によって形成されている。圧力容器100は、細長い円筒区域101と、第1の丸い端区域102と、第2の丸い端区域102’とを有する。圧力容器100には、丸い端区域102、102’において緩衝装置138、139が設けられ得る。さらに、圧力容器システム100を車両に固定するために、圧力容器100の円筒区域101の周りにストラップ130、131が設けられ得る。
【0077】
図6の圧力容器システム100では、ライナ40の第1の丸い端区域42における第1の開口43と、ライナ40の第2の丸い端区域42’における第2の開口43’とがある。他の実施形態では、1つだけの丸い端区域42または42’に開口43または43’が設けられてもよい。例えば水素多機能弁といった多機能弁を例として備える第1の機能部品132が、ライナ40の第1の円筒端区域45に配置される。例えば補助圧力逃し弁といった第2の機能部品147が、ライナ40の第2の円筒端区域45’に配置される。
【0078】
図6では、機能部品132の装着は、ライナ40から外向きに突出する円筒端区域45の周りに設けられたボス10、10’を使用して行われる。しかしながら、当業者は、図3図5のいずれか1つの構造も可能であることを理解する。
【0079】
図6の燃料電池システムは、燃料補給管135を通じて多機能弁132に連結された燃料補給接合部137と、燃料電池供給管142を通じて多機能弁132に連結された燃料電池145とをさらに備える。
【0080】
本発明の原理が特定の実施形態と関連して先に述べられたが、この記載は、添付の特許請求の範囲によって決定される保護の範囲の限定としてではなく、単に例を用いて行われている。
【符号の説明】
【0081】
10、10’ ボス
11、11’ フランジ
12 第1の実質的に円筒の部分
20 第1の局所強化層
20’ 第2の局所強化層
20a 第1の局所強化層
20b 第2の局所強化層
20c 第3の局所強化層
20d 第1の局所強化層
20e 第2の局所強化層
40 熱可塑性ライナ
41 細長い円筒区域
42 第1の丸い端区域
42’ 第2の丸い端区域
43、43’ 開口
45 第1の円筒端区域
45’ 第2の円筒端区域
46 内向きに突出する円筒端区域
47 円筒の構成要素
50 強化構造
65 機能的構成要素
70 内部ボス、内部容器アダプタ
100 圧力容器システム
101 円筒区域
102 第1の丸い端区域
102’ 第2の丸い端区域
130、131 ストラップ
132 第1の機能部品、多機能弁
135 燃料補給管
137 燃料補給接合部
138、139 緩衝装置
142 燃料電池供給管
145 燃料電池
147 第2の機能部品
A 軸方向
Dmax 最大外径
D 外径
L2 長さ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B