IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズーラ オフサルミックス エルティーディー.の特許一覧

特許7138694マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤
<>
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図1
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図2
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図3
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図4
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図5
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図6
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図7
  • 特許-マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】マイボーム腺の脂質分泌を増加させるためのチオールおよびジスルフィド含有薬剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/401 20060101AFI20220909BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A61K31/401
A61K31/145
A61P27/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020206141
(22)【出願日】2020-12-11
(62)【分割の表示】P 2018535266の分割
【原出願日】2016-09-28
(65)【公開番号】P2021063083
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】62/233,906
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/233,941
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518104223
【氏名又は名称】アズーラ オフサルミックス エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アムセレム,シモン
(72)【発明者】
【氏名】アルスター,ヤイル
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ドロン
(72)【発明者】
【氏名】ラファエリ,オマー
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-510961(JP,A)
【文献】特開平07-233057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0171886(US,A1)
【文献】特表2015-514722(JP,A)
【文献】特表2014-518275(JP,A)
【文献】特表2010-520210(JP,A)
【文献】国際公開第2006/137426(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104206(US,A1)
【文献】Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics,2010年,Vol. 26, No. 4,p.329-333
【文献】日本結晶学会誌,2014年,Vol.56, No. 3,p.186-193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61P 27/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼瞼縁への局所的な投与によって、マイボーム腺における脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させるための医薬組成物であって、該医薬組成物は、カプトプリル、およびジスルフィラムから選択される薬剤を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記薬剤は、カプトプリルであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記薬剤は、ジスルフィラムであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
患者の眼瞼縁への局所的な投与によって、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、カプトプリル、およびジスルフィラムから選択される薬剤を含む、医薬組成物。
【請求項5】
前記薬剤は、カプトプリルであることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬剤は、ジスルフィラムであることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺の閉塞物に特徴づけられることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物
【請求項8】
マイボーム腺閉塞物が実質的に取り除かれるまで、前記患者の眼瞼縁への前記薬剤の局所的な投与が繰り返されることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物
【請求項9】
マイボーム腺閉塞物の形成を防ぐために、前記患者の眼瞼縁への前記薬剤の局所的な投与が定期的に繰り返されることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2015年9月28日出願の米国仮特許出願第62/233,906号、および2015年9月28日出願の米国仮特許出願第62/233,941号の利益を主張するものであり、これらの両方がその全体において本明細書で参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
マイボーム腺は睫毛の近くの眼瞼内に垂直に配置された腺である。眼瞼の瞬きの力により、後部の眼瞼縁上に油を排出する。油は、急速に涙が蒸発するのを防止するのに役立つ、涙の「留まらせる力」である。マイボーム腺機能不全(MGD)の患者においては、涙液膜に油分が過多または過少なために、視覚に影響が及ぶ。
【0003】
マイボーム腺は、眼瞼の中にある大きな脂腺であり、皮膚とは異なり、毛に付随していない。マイボーム腺は、水相の蒸発に対しマイボーム腺を保護する涙液膜の脂質層を生成する。マイボーム腺開口部は、眼瞼縁の上皮側に位置しており、粘膜側から数百ミクロンしかない。この腺は上下両方の眼瞼に位置しており、上眼瞼により多くの量の腺がある。1つのマイボーム腺は、長い中央の管の周囲に環状に配置され、かつ短い小導管により長い中央の管に繋げられる、分泌腺房の集合体から成る。中央の管の末端部は上皮の内殖により覆われており、この内殖は、離れた眼瞼縁を覆うとともに、内蓋の辺縁付近の粘膜皮膚移行部のちょうど前に、眼瞼縁の後部に開口部として開く短い排出管を形成する。脂質から成る油性分泌物は、分泌腺房内で合成される。脂質分泌物は、体温に近い時は液体であり、「マイバム」と呼ばれる透明な流体として眼瞼縁の皮膚に送達される。脂質分泌物は、上下の眼瞼縁上に浅いリザーバを形成し、コレステロール、ワックス、コレステロールエステル、少量のトリグリセリドを含むリン脂質、トリアシルグリセロール、および炭化水素の複雑な混合物から成る。別個のマイボーム腺が、平行に、かつ上下の眼瞼における瞼板軟骨の長さ全体にそって一列に、配されている。マイボーム腺の範囲は、ほぼ瞼板軟骨の寸法に相当する。
【0004】
眼瞼縁は生理学上重要な脂質分泌物、すなわちマイバムの供給源である。眼瞼のマイボーム腺分泌物は、涙液膜の外側層を形成する。この涙液膜脂質層に起因した機能は:(1)瞬きの間、眼瞼の動作を容易にする潤滑剤、(2)水性の涙液の蒸発を防ぐ障壁、および(3)花粉などの微生物および有機物の進入に対する障壁、である。
【0005】
動いている眼瞼は、眼の表面にわたってマイバムを広げ、マイバムを涙腺により生成される涙液(AT)と混合させる。マイバムとATを混合し広げることにより、涙液膜(TF)と呼ばれるほぼ連続的な構造をもたらし、これは眼の表面全体を覆い、とりわけ、保護、潤滑、栄養、および、抗菌を含む多くの目的に役立つ。TFはまた、目の表面をより滑らかにし、これは眼の光学特性を改善するので、視力にも関連付けられるものであった。しかし、TFは均質ではなく、これは、脂質が容易に水溶液を形成せず、明確に疎水的な脂質に富む副相を形成することにより分離する傾向があることを考慮すると驚くことではない。TF構造に関する古典的見解は、TFの3層構造を想定している。脂質は、典型的には水ほど密でないため、水性の副相の表面上で蓄積し、したがって、TFの脂質が豊富な最も外部の層(涙液膜脂質層、またはTFLLとも呼ばれる)を形成する。TFLLの下には、水溶性タンパク質、炭水化物、塩、および他の多かれ少なかれ親水性の化合物で富化されたはるかに親水性の水層がある。角膜上皮に最も近いものは、主に膜結合性のムチンで形成される、比較的親水性のムチン富化糖衣層であると考えられている。インターフェロメトリーを使用することにより、TFLLの深さは~40-90ナノメートルであると推定されたが、水層は約4マイクロメートルではるかに厚いことが判明した。3つの層はすべて柔らかく動的な構造であり、該構造では、多数の同時に顕在化する因子、例えば、眼瞼の機械的運動、マイバムと涙液とムチンとの連続的分泌、および、鼻管を通じたATの蒸発および排液、の結果として変化が生じることを理解することが重要である。目が瞬きせずに開かれたままにされると、ヒトのTFは急速に劣化し、薄くなり、壊れ、これは、涙液層破壊(tear break-up)として知られる現象である。
【0006】
ヒトの涙液層破壊時間(TBUT)は秒単位で測定される。これは、眼表面の健康を評価する際に重要かつ客観的な診断パラメータと長く考えられてきた。TBUTは、その発症および進行が、一般的にはTFの、特にはTFLLの、劣化に関連する多因子疾患(または疾病)である、ドライアイを診断する眼科診療において広く使用されている。破壊が生じる場合、角膜は空気にさらされ、患者に不快感を与える。TFによる眼表面の不完全な被覆はまた、過剰な脱水、擦過傷、刺激、炎症、感染などのために、角膜上皮細胞への損傷の可能性を増加させる。TFの不安定性の別の原因は、例えばマイボーム腺の炎症および/または閉塞物に関連するMGDのために、必要な品質の十分なマイバムを分泌できないマイボーム腺である。
【0007】
マイボーム腺によって生成された脂質は、涙液膜の表面の脂質層の主成分であり、水相の蒸発から保護し、また表面張力を低下させることによって涙液膜を安定化させると考えられている。Heiligenhausらの研究で報告されているように、脂質相の変化は、分離された水相の変化よりもMGDを指すことが多く、(Heiligenhausら、Therapie. von Benetzungsstorungen. Klin. Monatsbl. Augenheilkd., 1994、Vol.204、162-168ページ)ここでは、水相が分離された変化を有する患者は11.1%に過ぎないのに比べ、ドライアイ患者の76.7%に脂質欠乏が生じたことが観察された。従って、マイバム脂質は、眼の表面の健康および完全性の維持に必須である。
【0008】
脂質は、マイバム(マイボーム腺分泌物としても知られている)の主要成分である。マイバムの生化学的組成は非常に複雑で、皮脂のそれとは非常に異なっている。脂質は、ヒトおよび動物のマイバムの主成分として広く認められている。ヒトでは、マイボーム腺分泌物において90以上の異なるタンパク質が同定されている。多数の研究者がマイバムの特徴を明らかにしようとしており、研究者が回収する脂質の量は多岐にわたっており(表1)、考えられる原因としては、異なる収集分析技術の使用である。
【0009】
【表1】
【0010】
MGDのない被験体において、マイバム脂質は透明な油のプールである。MGDでは、分泌された物質の量、質および組成が変更される。したがって、MGDは脂質の欠乏を特徴とする。さらに、MGDにおいて、圧搾された脂質の性質は、透明な流体から、粒子状物質、濃く不透明な練り歯磨きのような物質を含有する粘性流体まで、外観が変動する。マイボーム開口部は、眼瞼の表面準位より上の上昇を示し、これは栓(plugging)または膨れ(pouting)と称され、末端管の閉塞物、および、粘度の増加したマイバム脂質の押出によるものである。
【0011】
マイバムの脂質欠乏および粘度の増加は、MGDの重要な病原性の因子であり、閉塞性のMGDの大部分の症例で観察される。したがって、マイボーム腺からの脂質生成および脂質分泌を増強し、脂質欠乏を克服し、ならびに、マイボーム腺の閉塞物を溶解することを可能にするマイボーム油組成物の粘度を低下させることが強く望まれている。
【0012】
高粘度のマイバムは、分子生物学および免疫組織化学によって実証されるように、スメアとして調製された圧搾された病理学なヒトマイバムにおいて、または印象細胞学および組織病理学において見られるように、角質増殖性細胞材料と混合される。粘度の増加も動物モデルの閉塞物した腺の内部で観察された。したがって、管を開き、かつ分泌された脂質の正常な流れを回復するためには、閉塞物する脂質を軟化させ、液化することが望ましい。
【0013】
マイボーム腺機能不全またはMGDは、主としてドライアイ症候群に起因し、しばしば、マイボーム腺による眼の表面への不十分な脂質送達を特徴とする。後部眼瞼炎とも称されるMGDは、瞼縁病の最も一般的な形態である。初期段階では、患者はしばしば無症状であるが、管理されないまま放置すると、MGDはドライアイ症状および眼瞼炎症を引き起こすかまたは悪化させる可能性がある。油腺は、肥厚した分泌物で閉塞される。慢性的に詰まった腺は、最終的には涙液膜およびドライアイに永続的な変化をもたらす油分を分泌できなくなる。MGDの症状は眼の乾燥、灼熱感、そう痒、粘着性、散水、光過敏性、眼の充血およびかすみ目を含んでいる。
【0014】
MGDは主としてドライアイ症候群に起因する。ドライアイ症候群の発症は広範囲であり、アメリカ合衆国だけで約2000万人の患者が影響を受けている。ドライアイ症候群は、不適切な涙の生成、または目の表面からの水分の過剰な蒸発を結果としてもたらす、眼表面の障害である。角膜は血管を含んでおらず、且つ酸素と栄養素を供給するために涙に依拠しているため、涙は角膜の健康に重要である。涙と涙液膜は、脂質、水、および粘液から成り、これらの何れかの崩壊がドライアイを引き起こし得る。MGDは、後部の眼瞼縁の炎症状態を説明する後部眼瞼炎と同義ではない。MGDは後部眼瞼炎を引き起こし得るが、MGDは必ずしも炎症または後部眼瞼炎に関連するとは限らない場合もある。MGDの臨床的兆候は、マイボーム腺の脱落、マイボーム腺分泌物の変化、および眼瞼の形態の変化を含む。
【0015】
閉塞性のMGDは、下記の全てまたは一部を特徴とする:1)慢性的な眼部不快感、2)マイボーム腺開口部周囲の解剖学的異常(これは、血管うっ血、粘膜皮膚接合部の前部または後部への変位、眼瞼縁の不規則状態のうちの1つ以上である)、および、3)腺分泌の閉塞物、または、質的または量的変化(中程度の指圧によって減少したマイバムの発現)。
【0016】
現在、MGDに対する標準的な処置は、眼瞼を温めて油の生成を増加させ、かつ温湿布(warm compresses)により腺の中で凝固した油を溶かすことと、睫毛のラインの近くの眼瞼縁に軽い圧力を加えることと、肥厚した分泌物ならびに抗生物質および抗炎症剤のような薬理学的処置を手動で除去することとに、やや限定されている。しかし、これらの処置は患者と眼科医にとっては苛立たしいものかもしれない。眼瞼のマッサージは、マイボーム腺の閉塞物の部分的かつ一時的な軽減のみしか提供せず、これは痛い可能性がある。温湿布のための従来のアプローチは、眼瞼の外部表面に熱を加える。従って熱はしばしば有効性が限られている。MGDに関連する眼瞼縁の細菌の定着および炎症を抑制するための局所的な抗生物質およびコルチコステロイドの使用は、症状の緩和およびMGDの徴候に有効であることが示されているが、しかし、この処置の成功は、変化したマイバムとは何の関係もないことがある。抗生物質、特にテトラサイクリン(ドキシサイクリン、テトラサイクリンおよびミノサイクリンを含む)およびアジスロマイシンは、細菌定着を抑制し、かつ眼瞼縁の炎症を低減するために使用される;しかし、薬物不耐性および延長治療は、経口抗生物質の臨床応用を制限している。
【0017】
眼瞼の予防衛生は、MGDに対する一次処置と考慮され、3つの構成要素から成る:1)温罨法、2)眼瞼の機械的なマッサージ、および3)眼瞼の洗浄。眼瞼の加温手順は、病理学的に変化したマイボーム脂質を溶かすことにより、マイボーム腺分泌物を改善する。加温は、温湿布または装置により達成される。機械的な眼瞼の予防衛生は、スクラブの使用、機械的圧搾、および、まつ毛と眼瞼縁とを様々な溶液で洗浄することを含む。眼瞼縁も、低アレルギー性の固形石鹸、希釈された幼児用シャンプー、または市販の眼瞼用スクラブにより随意に洗浄される。マイボーム腺の物理的圧搾は、医師のオフィスで行われるか、または家で患者により行われる。この技術は、眼球に対する眼瞼の優しいマッサージから、互いに対する、または、内眼瞼の表面上の固い物体と、指(親指)または外眼瞼の表面上の固い物体(ガラス棒、綿棒(Q-tip)、または金属製パドルなど)の間の眼瞼の強力なスクィージングまで異なる。内眼瞼の表面上の固い物体は、眼球が圧搾中に眼瞼を介して強制的に動かされないよう保護し、それにより、安定した耐性をもたらし、腺に加えられる力の量を増加させる。
【0018】
加温することで脂質は溶けるが、角質化した物質の移動には対処しないために、眼瞼の加温は限定的である。更に、眼瞼の加温は、角膜の歪みにより一時的な視覚劣化を誘発する。閉塞物を除去するのに必要とされる力は相当なものであり、その結果患者に相当な痛みがもたらされ得るので、機械的な眼瞼の予防衛生も限定的である。機械的な眼瞼の予防衛生の効果は、この手順中に関連する痛みに耐えることのできる患者に限定される。MGDの他の処置は限定的である。
【0019】
マイボーム腺の圧搾によりマイボーム腺閉塞物を物理的に開口させることは、マイボーム腺分泌とドライアイ症状を改善するために許容可能な方法である。加えて、マイボーム腺管のプロービングは、閉塞物された管を開くために使用されている。しかし、圧搾およびプロービングといった両方の方法は、手順により誘発された痛み、即ち腺および管の構造に対して起こり得る物理的な傷害、並びに数日および数週と推定される、その短命な効果により限定的である。
【0020】
要約すると、これらの治療のそれぞれには異なる欠点があり、MGDの治療は困難なままである。それ故、このような方法は、患者の快適さを改善することを必要とされ、つまりマイボーム腺と管に害をもたらさず、頻繁な来院への依存を減らすとともにマイボームの分泌を改善することを必要とされる。
【0021】
MGDの新たな処置には、粘液溶解剤および/または角質溶解剤の使用が含まれる。粘液溶解療法の目的は、粘液の粘弾性を最適化することによって生理学的クリアランスを促進することであり、角質溶解療法は、皮膚の主要成分であるケラチンを軟化させることを目的とする。
【0022】
N-アセチルシステインまたはN-アセチル-L-システイン(略してNAC)として知られているアセチルシステインは、主として粘液溶解剤として使用される医薬品および栄養補助食品である。アセチルシステインは、L-システインのアセチル化誘導体であり、アセチル基が、粘液溶解、抗コラーゲン分解および抗酸化の特性を有することが知られている窒素原子に結合している。粘液中のジスルフィド結合を破壊して液化させるので、咳止め薬として使用される。これはまた、嚢胞性および肺線維症の患者の異常に厚い粘液を薄くするのに有用なジスルフィド結合を破壊するこの作用でもある。Akyol-Salmanら(J. Ocul. Pharmacol. Ther., 2010, Vol. 26(4), pages 329-33)は、マイボーム腺機能不全(MGD)を持った患者における局所的のN-アセチル-システイン(NAC)治療の効能を評価した。QiaoおよびYan(Clinical Ophthalmology 2013、Vol.7、p.1797-1803)は、NACを含むMGDの新たな治療選択肢のいくつかをレビューした。
【0023】
MGDに対する治療可能性のある方法にかかわらず、徴候および症状の完全に軽減させることは依然として困難である。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、マイボーム腺から眼瞼への脂質生成および/または脂質の分泌を増強する方法を提供する。いかなる理論またはメカニズムにも縛られることを望まないが、マイバムの主要成分である天然の脂質により眼瞼縁の潤滑が増強されることで、MGDおよび/または関連症状が改善されるであろうことが推測される。
【0025】
本発明は予期しない発見に基づいており、それは、チオール含有薬物、-SeH含有薬物、および/またはジスルフィド含有薬物が、マイボーム腺の脂質の生成を増加させ、および/またはマイボーム腺から眼瞼への脂質の分泌を増加させることができる、というものである。この能力は、MGDのような特定の有害な眼瞼の状態を予防、処置および/または改善するのに有効であり得る。
【0026】
本発明は、ある態様において、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体と、マイボーム腺における脂質生成を増加させるか、またはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる、治療上有効な量の少なくとも1つの薬剤とを含む眼用組成物を、その必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここにおいて、薬剤はスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む。
【0027】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置する方法をさらに提供し、該方法は、眼に許容可能な担体と、治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含む眼用組成物を、その必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、該薬剤はカプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、グルタチオン(Gluthatione)、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル(Rentiapril)、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、およびコエンザイムB、からなる群から選択され、または、該薬剤はジスルフィドを含む。
【0028】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺から分泌された脂質の融点を低下させる方法をさらに提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含み、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む。
【0029】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺から分泌された脂質の粘度を低減させる方法をさらに提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含み、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む。
【0030】
特定の実施形態では、薬剤はチオール基を含む。特定の実施形態において、該薬剤は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、L-システイン、セレノシステイン、グルタチオン、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、およびコエンザイムB、からなる群から選択される。特定の実施形態において、該薬剤は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、グルタチオン、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、およびコエンザイムB、からなる群から選択される。取りうる選択肢はそれぞれ、本発明の別個の実施形態を表わす。
【0031】
特定の実施形態において、薬剤はジスルフィド結合を含む。特定の実施形態において、該薬剤は、ジスルフィラム、プサマプリンA(Psammaplin A)、ジキサントゲン、パンテテイン、フルスルチアミン、オクトチアミン、スルブチアミン、プロスルチアミン、チラム、リポ酸、レンチオニン、アホエン、アリシン、ゲモパトリラト(Gemopatrilat)およびスルファンゲン(Sulfanegen)からなる群から選択される。取りうる選択肢はそれぞれ、本発明の別個の実施形態を表わす。
【0032】
特定の実施形態において、眼に許容可能な担体は、少なくとも1つの眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0033】
特定の実施形態において、上述の方法は、患者に角質溶解剤を投与する工程をさらに含む。特定の実施形態において、角質溶解剤は、過酸化ベンゾイル、コールタール、ジスラノール、サリチル酸、二硫化セレン、アルファヒドロキシ酸、尿素、ホウ酸、 レチノイン酸、乳酸、チオグリコール酸ナトリウム、またはアラントイン、からなる群から選択される。
【0034】
特定の実施形態では、マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺の閉塞物を特徴とする。特定の実施形態では、マイボーム腺閉塞物が実質的に取り除かれるまで、患者の眼瞼縁に薬剤を局所的に投与することが繰り返される。特定の実施形態では、マイボーム腺閉塞物の形成を防ぐために、患者の眼瞼縁に薬剤を局所的に投与することが定期的に繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の原理が用いられる例証的な実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって、本発明の特徴および利点のより良い理解が得られるであろう。
図1図1は、対照についての3D脂腺細胞上皮におけるオイルレッド-0染色の例示である。
図2図2は、1.0マイクロモルの12-メルカプトドデカン酸(12-mercaptododecanoic acid)についての3D脂腺細胞上皮におけるオイルレッド-0染色の例示である。
図3図3は、0.1マイクロモルの12-メルカプトドデカン酸についての3D脂腺細胞上皮におけるオイルレッド-0染色の例示である。
図4図4は、本明細書に記載の方法に利用される、チオールおよびジスルフィド含有脂質を調製するための例示的な合成方法を提供する。
図5図5は、本明細書に記載の方法に利用される、チオールおよびジスルフィド含有脂質を調製するための例示的な合成方法を提供する。
図6図6は、本明細書に記載の方法に利用される、チオールおよびジスルフィド含有脂質を調製するための例示的な合成方法を提供する。
図7図7は、本明細書に記載の方法に利用される、チオールおよびジスルフィド含有脂質を調製するための例示的な合成方法を提供する。
図8図8は、本明細書に記載されている方法に利用される、チオールおよびジスルフィド含有脂質を調製するための例示的な合成方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、インビボでのマイバム脂質の分泌を増強するのに有用な非ホルモン性薬剤を初めて提供するものである。
【0037】
より詳しくは、チオール含有薬剤、-SeH含有薬剤、またはジスルフィド含有薬剤を投与することにより脂質生成および/または脂質分泌を増強する方法が、本明細書中に記載され、該薬剤は、マイボーム腺における脂質の生成を増加させ、マイボーム腺から分泌される脂質の量を増加させ、および/または、マイボーム腺から分泌される脂質の組成を変化させる。本明細書に記載の薬剤は、例えば医師または他の訓練された専門家による使用のための急性治療用の薬剤、および、例えば医師、他の訓練された専門家、或いは患者による慢性治療用の薬剤を含む。特定の脂質生成および脂質分泌を増強する薬剤が本明細書に記載されており、脂質生成と脂質分泌を増強するチオール含有薬剤、-SeH含有薬剤、またはジスルフィド含有薬剤を含む組成物を調製する方法、ならびに、患者の処置方法におけるそれらの使用が、本明細書中にさらに提供される。
【0038】
用語「マイボーム腺機能不全」および「MGD」は、本明細書中で交換可能に使用され、マイボーム腺の慢性でびまん性である異常を指し、これは、末端管の閉塞物、または、腺の分泌物中の質的または量的な変化、またはその両方を特徴としている。MGDは結果として、涙液膜の粘度の変化、眼の刺激性症状、炎症、または眼表面疾患をもたらすことがある。MGDの最も顕著な態様は、マイボーム腺の開口部および末端管の閉塞物であり、およびマイボーム腺分泌物中の変化である。MGDはマイボーム腺の機能的異常も指す一方で、「マイボーム腺疾患」は、新生物性および先天性の疾患を含む、広範囲のマイボーム腺の障害を説明する。
【0039】
本発明の原理によれば、脂質生成およびマイバム脂質分泌を誘導する、チオール含有、-SeH含有、またはジスルフィド含有の薬物または薬剤が、例えば、チオールが媒介する脂質過剰分泌機構によるMGDの処置として使用されうる。さらに本発明の原理によれば、ジスルフィド含有薬剤は、ジスルフィラムのように、一旦ジスルフィド結合が酵素または化学反応により体内で切断されると、チオールまたはスルフヒドリルラジカルを呈する。
【0040】
このように、薬物が細胞の脂質生成を活性化することが、コレステロール合成の増強、および脂肪酸とトリグリセリドの生成の増加によるマイボーム腺機能不全の治療的な処置のための新たな手法を提示し、これは、マイバム脂質の融点および粘度を低下させることによって、マイバム脂質の組成の変化をもたらし、結果としてマイバム脂質の外観がより流動的になる。
【0041】
本明細書に記載の、脂質生成および脂質分泌を増強するチオール含有薬剤、-SeH含有薬剤、またはジスルフィド含有薬剤は、急性治療(例えば、訓練された専門家または医師によるもの)、または慢性治療(例えば、患者の手になるもの、あるいは代替的に訓練された専門家または医師によるもの)に有用である。この薬剤は、特定の実施形態において、(例えば実施例に記載されるような)本明細書に記載されるアッセイおよび方法を使用して試験される。
【0042】
チオール基またはスルフヒドリルラジカルを有する薬物は、皮脂過剰産生を引き起こすことが従来報告されてきた。チオール基またはスルフヒドリルラジカルを含む薬物もまた、天疱瘡、脂性肌を特徴とする、脂漏性皮膚炎に似ている皮膚疾患を引き起こすことが報告されてきた。キサンチンオキシドレダクターゼ(XOR)は乳脂肪滴分泌のための必須酵素であり、これは2つの別個の相互転換できる酵素型、すなわち酵素特性および立体構造が異なるチオール還元型(XD)およびチオール酸化型(XO)、で存在することが知られている。乳房組織および乳脂肪球皮膜(MFGM)は、XDをXOに変換することができるチオールオキシダーゼを含むことが示されてきた。XORと頂端部細胞膜の間の関連性は、ブチロフィリンタンパク質(乳腺における脂肪滴の分泌にとってまた不可欠なMFGMにおいて最も豊富なタンパク質)、ADPH、または他の膜タンパク質とのジスルフィド結合架橋の形成、および/または、XOR中の立体構造の変化を含む、チオール依存性プロセスにより媒介される。XORの発現および頂端膜局在化のレベルは、乳房上皮細胞を分泌する重大な特性であり、XORの膜結合性は、脂質分泌の間の細胞質脂肪滴の頂端部細胞膜への結合を調節する。
【0043】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含み、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含む。
【0044】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の薬剤と、を含み、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含む。
【0045】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の薬剤と、からなり、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含む。
【0046】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の薬剤と、からなり、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含み、かつ、眼に許容可能な担体は少なくとも1つの眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0047】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の薬剤と、からなり、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含み、かつ、眼に許容可能な担体は2つ以下の眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0048】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の薬剤と、からなり、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含み、かつ、眼に許容可能な担体は3つ以下の眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0049】
本発明は、ある態様では、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させる方法を提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の薬剤と、からなり、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含み、かつ、眼に許容可能な担体は4つ以下の眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0050】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置する方法をさらに提供し、該方法は、眼に許容可能な担体と、治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含む眼用組成物を、その必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、該薬剤はカプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、グルタチオン、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、およびコエンザイムB、からなる群から選択され、または、該薬剤はジスルフィドを含む。
【0051】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺から分泌された脂質の融点を低下させる方法をさらに提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含み、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含む。
【0052】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺から分泌された脂質の粘度を低減させる方法をさらに提供し、該方法は、眼用組成物をその必要がある患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該眼用組成物は、眼に許容可能な担体と、および、マイボーム腺における脂質生成またはマイボーム腺からの脂質分泌を増やす治療上有効な量の少なくとも一つの薬剤と、を含み、ここで、該薬剤はスルフヒドリル基、-SeH基、またはジスルフィドを含む。
【0053】
特定の実施形態では、薬剤はチオール基、または-SeH基を含む。特定の実施形態において、該薬剤は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、L-システイン、セレノシステイン、グルタチオン、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、およびコエンザイムB、からなる群から選択される。特定の実施形態において、該薬剤は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、グルタチオン、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、およびコエンザイムB、からなる群から選択される。取りうる選択肢はそれぞれ、本発明の別個の実施形態を表わす。
【0054】
特定の実施形態では、薬剤は、-SHまたは-SeHを含むアミノ酸、ペプチドまたはペプチド模倣薬である。特定の実施形態では、-SHまたは-SeHを含むアミノ酸、ペプチドまたはペプチド模倣薬は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、L-システイン、セレノシステイン、グルタチオン、チオルファン、ブシラミン、オマパトリラト、パンテテインまたはマイコチオールからなる群から選択される。
【0055】
特定の実施形態では、薬剤は、-SHまたは-SeHを含むアリルまたは、ヘテロアリル化合物である。-SHまたは-SeHを含むアリルまたは、ヘテロアリル化合物は、フラン-2-イルメタンチオール、オボチオールA、レンチアプリル、またはチオサリチル酸からなる群から選択される。
【0056】
特定の実施形態において、薬剤はジスルフィド結合を含む。特定の実施形態において、該薬剤は、ジスルフィラム、プサマプリンA、ジキサントゲン、パンテテイン、フルスルチアミン、オクトチアミン、スルブチアミン、プロスルチアミン、チラム、リポ酸、レンチオニン、アホエン、アリシン、ゲモパトリラト、およびスルファンゲンからなる群から選択される。取りうる選択肢はそれぞれ、本発明の別個の実施形態を表わす。
【0057】
特定の実施形態において、眼に許容可能な担体は、少なくとも1つの眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0058】
特定の実施形態において、上述の方法は、患者に角質溶解剤を投与する工程をさらに含む。特定の実施形態において、角質溶解剤は、過酸化ベンゾイル、コールタール、ジスラノール、サリチル酸、二硫化セレン、アルファヒドロキシ酸、尿素、ホウ酸、レチノイン酸、乳酸、チオグリコール酸ナトリウム、またはアラントイン、からなる群から選択される。
【0059】
特定の実施形態では、マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺の閉塞物を特徴とする。特定の実施形態では、マイボーム腺閉塞物が実質的に取り除かれるまで、患者の眼瞼縁に薬剤を局所的に投与することが繰り返される。特定の実施形態では、マイボーム腺閉塞物の形成を防ぐために、患者の眼瞼縁に薬剤を局所的に投与することが定期的に繰り返される。
【0060】
特定の実施形態では、上述の方法は、マイボーム腺により生成された脂質の量の治療上有効な増加をもたらす。特定の実施形態では、上述の方法は、マイボーム腺から分泌された脂質の量の治療上有効な増加をもたらす。特定の実施形態では、上述の方法は、マイボーム腺により分泌された脂質の組成の変化をもたらす。特定の実施形態では、上述の方法は、マイボーム腺により分泌された脂質の粘度の変化、好ましくは低下、をもたらす。
【0061】
いくつかの実施形態では、活性薬剤は、目の表面に適用可能となる(即ち、目の上皮表面に不適当な刺激または破損を引き起こさない)ように、かつ、組成物との接触時に脂質生成細胞を損なわないように、製剤または適用される。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬剤を投与する医師または患者にとって許容可能かつ実用的な期間および頻度で適用される。例えば、医師は、数週間にわたって毎週または週に2回、本明細書に記載される組成物を適用することで、マイボーム腺から分泌される脂質の量の増加を誘発し、患者は毎日異なる組成物を適用するか、または、数週間にわたって毎日、より強力な組成物を使用し、ついで、その後、それほど強力でない組成物を毎日使用する。いくつかの実施形態において、組成物は、1日に1回または数回、毎日、患者によって適用される。
【0063】
いくつかの実施形態において、適用方法は、薬剤の濃度および/または脂質欠乏の程度に応じて変化する。他の実施形態において、組成物の適用方法は、処置の効果を増強するために、標的組織上での浸透または滞留時間を向上させるように調整される。他の実施形態において、組成物の適用方法は、必要な適用時間量を最小化するために、標的組織上での浸透または滞留時間を向上させるように変更される。他の実施形態において、組成物は、標的組織との接触を増加させ、一方で目を含む非標的組織との接触を最小限にし、したがって望ましくない付随的な活性を制限しまたは減少させるために、(例えば、粘度および/または皮膚接着性を調節することにより)処方される。
【0064】
特定の実施形態において、薬剤および賦形剤の濃度は、治療効果を達成する一方で、任意の眼への刺激または破損、あるいは周囲の眼の組織への刺激または破損を最小限にするために、最小有効濃度の薬剤を送達するように最適化される。
【0065】
本明細書に記載されている方法および組成物は、マイボーム腺から分泌された脂質の量を増加させ、マイボーム腺により分泌された脂質の組成を変化させ、および/または、マイボーム腺から分泌された脂質の粘度を低減させ、それにより、任意のマイボーム腺閉塞物の溶解を増強し、かつ、涙液層破壊時間(TBUT)を改善するための手段である。
【0066】
本発明の方法において使用される組成物は、少なくとも1つの、脂質生成および脂質分泌を増強する、チオール含有薬剤、-SeH含有薬剤、またはジスルフィド含有薬剤である。いくつかの実施形態において、薬剤はマイバムの生成の増加を引き起こすチオール含有薬剤または-SeH含有薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤はチオール含有薬剤、または-SeH含有薬剤であり、例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、L-システイン、セレノシステイン、グルタチオン、ジチオスレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、コエンザイムBなどである。
それらの化学構造は表2に示される。
【0067】
【表2-1】
【0068】
【表2-2】
【0069】
【表2-3】
【0070】
【表2-4】
【0071】
いくつかの実施形態において、薬剤は、ジスルフィラム、プサマプリンA、ジキサントゲン、パンテテイン、フルスルチアミン、オクトチアミン、スルブチアミン、プロスルチアミン、チラム、リポ酸、レンチオニン、アホエン、アリシン、ゲモパトリラト、およびスルファンゲンなどのジスルフィド含有薬である。これらの化学構造は表3で提示される。
【0072】
【表3-1】
【0073】
【表3-2】
【0074】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はカプトプリルである。
【0075】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はゾフェノプリルである。
【0076】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチオプロニンである。
【0077】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はペニシラミンである。
【0078】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はL-システインである。
【0079】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はセレノシステインである。
【0080】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はグルタチオンである。
【0081】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はジチオトレイトールである。
【0082】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチオルファンである。
【0083】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はシステアミンである。
【0084】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はブシラミンである。
【0085】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はジメルカプロールである。
【0086】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤は1,1-エタンジチオールである。
【0087】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はジメルカプトコハク酸である。
【0088】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はフラン-2-イルメタンチオールである。
【0089】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はオマパトリラトである。
【0090】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はオボチオールAである。
【0091】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はパンテテインである。
【0092】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はレンチアプリルである。
【0093】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチオサリチル酸である。
【0094】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチキソコルトールである。
【0095】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はマイコチオールである。
【0096】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はコエンザイムAである。
【0097】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はコエンザイムBである。
【0098】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はゲモパトリラトである。
【0099】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はスルファンゲンである。
【0100】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はセレン-Dメチオニンである。
【0101】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はジスルフィラムである。
【0102】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はプサマプリンAである。
【0103】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はジキサントゲンである。
【0104】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はパンテテインである。
【0105】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はフルスルチアミンである。
【0106】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はオクトチアミンである。
【0107】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はスルブチアミンである。
【0108】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はプロスルチアミンである。
【0109】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチラムである。
【0110】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はリポ酸である。
【0111】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はレンチオニンである。
【0112】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はアホエンである。
【0113】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はアリシンである。
【0114】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はゲモパトリラトである。
【0115】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はスルファンゲンである。
【0116】
本発明は、インビボでのマイバム脂質の分泌を増強するのに、およびマイボーム腺機能不全(MGD)を処置する際に役立つ、スルフヒドリル基および/またはジスルフィドを含む脂質の誘導体を初めて提供するものである。
【0117】
より具体的には、チオールを含有するまたはジスルフィドを含有する脂質誘導体を投与することによって、マイボーム腺における脂質生成を増強するための、マイボーム腺から分泌された脂質の融点を低下させるための、マイボーム腺から分泌された脂質の粘性を低下させるための、および眼瞼縁中の脂質の粘性を低下させるための方法が本明細書に記載されている。本明細書に記載される脂質誘導体は、例えば、医師または他の訓練された専門家により使用される救急治療用の脂質誘導体と、例えば、医師または他の訓練された専門家、あるいは患者のいずれかによって使用される長期治療用の脂質誘導体を含む。ある脂質誘導体は本明細書に記載されている;さらに、脂質誘導体を調製する方法と患者の治療法におけるその使用も本明細書で提供される。
【0118】
本発明の原則に従って、脂質生成とマイバム脂質分泌を引き起こすチオールを含有するまたはジスルフィドを含有する脂質誘導体は、例えば、チオールを媒介とした脂質過剰分泌機構を介したMGDの処置として、使用可能である。本発明の原則にさらに従って、いったんジスルフィド結合が酵素または化学反応によって身体内で切断されると、ジスルフィドを含有する脂質誘導体はチオールあるいはスルフヒドリルのラジカルを呈する。
【0119】
したがって、細胞の脂質生成の脂質誘導体により引き起こされた活性化は、マイバム脂質のより流体的な外観をもたらすことになる、マイバム脂質の融点と粘度の低下によって、コレステロールの合成の増強と、マイバム脂質の組成物の変質を引き起こす脂肪酸とトリグリセリドの産生の増加とを介する、MGDの治療的処置の新しいアプローチを表す。
【0120】
本明細書に記載される脂質誘導体を増強する脂質生成と脂質分泌物は、(例えば、訓練された専門家または医師による)救急治療、あるいは(例えば、患者の管理下での、あるいは代替的に、訓練された専門家または医師による)長期治療のいずれかとして有用である。薬剤は、本明細書に記載される(例えば、実施例で記載されるような)アッセイと方法を使用して、ある実施形態で試験される。
【0121】
本発明は、1つの態様において、マイボーム腺からの脂質分泌を増加させるための方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0122】
本発明は、別の態様において、MGDを処置するための方法をさらに提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む治療上有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0123】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺における脂質産生を増加させるための方法をさらに提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0124】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺から分泌される脂質の融点を低下させるための方法をさらに提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0125】
本発明は、別の態様において、マイボーム腺から分泌される脂質の粘度を低下させるための方法をさらに提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0126】
本発明は、別の態様において、眼瞼縁における脂質の粘度を低下させるための方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0127】
ある実施形態では、脂質誘導体は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質(saccharolipid)、ポリケチド、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される脂質の誘導体である。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。ある実施形態では、脂質誘導体はマイバムで自然に見られる脂質の誘導体である。
【0128】
いくつかの実施形態において、脂質誘導体は、チオリン脂質、チオコレステロール、12-メルカプトドデカン酸、または、23-(9-メルカプトノニル)-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン酸として-S-Hまたはジスルフィドを含む脂質である。
【0129】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチオリン脂質である。
【0130】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチオコレステロールである。
【0131】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤は12-メルカプトドデカン酸である。
【0132】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤は23-(9-メルカプトノニル)-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン酸である。
【0133】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤はチオエタノールである。
【0134】
マイボーム腺からの脂質分泌を増加させる方法であって、該方法は、マイボーム腺中の脂質生成を増加させるか、あるいはマイボーム腺からの脂質分泌を増加させる有効な量の少なくとも1つの薬剤と眼に許容可能な担体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、薬剤は二硫化セレンである。
【0135】
ある実施形態では、脂質は、脂肪酸、ワックスエステル、コレステロールエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、ジエステル、脂肪酸アミド、スクワレン、セラミド、スフィンゴ脂質、ω-ヒドロキシ脂肪酸、コレステロール、およびそのエポキシドからなる群から選択される。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0136】
ある実施形態では、脂肪酸は以下からなる群から選択される分子式を有する:(i)C2n(ここで、nは12、14-18、および20-29から選択される任意の整数である);(ii)C2n-2(ここで、nは16-18、20、22、24、26、28、30、および32から選択される任意の整数である);および、(iii)C2n-4(ここで、nは18である)。ある実施形態では、脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0137】
ある実施形態では、ワックスエステルは、飽和したC18-30脂肪酸のオレイン酸エステルである。ある実施形態では、コレステロールエステルはC16-34脂肪酸のコレステロールエステルである。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0138】
特定の実施形態では、トリグリセリドは以下からなる群から選択される:(i)C2n-8(ここで、nは55と57から選択される任意の整数である);(ii)C2n-10(ここで、nは55と57から選択される任意の整数である);および、(iii)トリグリセリドに関連付けられる脂肪酸鎖:C14:0、C15:0、C16:0、C16:1、C17:0、C18:0、C18:1、C18:2.9。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0139】
ある実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、アルキルアシルホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ジメチルホスファチジルエタノールアミン、ジホスファチジルグリセロール(カルディオリピン)、エタノールアミンプラスマロゲン、リゾエタノールアミン・プラスマロゲン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびホスファチジルセリンからなる群から選択される。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0140】
ある実施形態では、脂肪酸アミドは、オレアミド、ミリスタミド、パルミトアミド、ステアルアミド、およびエルカミドからなる群から選択される。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0141】
ある実施形態では、ω-ヒドロキシ脂肪酸は以下からなる群から選択される分子式を有する:(i)C2n-7(ここで、nは46-52から選択される任意の整数である);(ii)C2n-4(ここで、nは42-50から選択される任意の整数である);(iii)C2n-6(ここで、nは42、44、46、および48-52から選択される任意の整数である);(iv)C2n-8(ここで、nは48、50、および52から選択される任意の整数である);および、(v)C2n-10(ここで、nは50と52から選択される任意の整数である)。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0142】
ある実施形態では、脂質誘導体は極性である。ある実施形態では、脂質誘導体は無極性である。ある実施形態では、脂質誘導体はスルフヒドリル基を含む。ある実施形態では、脂質誘導体はジスルフィドを含む。
【0143】
ある実施形態では、上記の方法は、患者に角質溶解剤を投与する工程をさらに含む。ある実施形態では、角質溶解剤は、過酸化ベンゾイル、コールタール、ジトラノール、サリチル酸、二硫化セレン、アルファ-ヒドロキシ酸、尿素、ホウ酸、レチン酸、乳酸、チオグリコレートナトリウム塩、あるいはアラントインから選択される。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0144】
ある実施形態では、マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺の閉塞物を特徴とする。ある実施形態では、マイボーム腺の閉塞物が実質的に取り除かれるまで、患者の眼瞼縁への脂質誘導体の局所的投与は繰り返される。ある実施形態では、患者の眼瞼縁への脂質誘導体の局所的投与は、マイボーム腺の閉塞物の形成を防ぐために定期的に繰り返される。
【0145】
本は、1つの実施形態において、マイボーム腺からの脂質分泌を増加させるための方法をし、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0146】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質誘導体は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質(saccharolipid)、ポリケチド、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される脂質の誘導体である。
【0147】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質誘導体はマイバムで自然に見られる脂質の誘導体である。
【0148】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質は、脂肪酸、ワックスエステル、コレステロールエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、ジエステル、脂肪酸アミド、スクワレン、セラミド、スフィンゴ脂質、ω-ヒドロキシ脂肪酸、コレステロール、およびそのエポキシドからなる群から選択される。
【0149】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質は脂肪酸であり、脂肪酸は以下からなる群から選択される分子式を有する:(i)C2n(ここで、nは12、14-18、および20-29から選択される任意の整数である);(ii)C2n-2(ここで、nは16-18、20、22、24、26、28、30、および32から選択される任意の整数である);および、(iii)C2n-4(ここで、nは18である)。
【0150】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質は脂肪酸であり、脂肪酸はミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される。
【0151】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質はワックスエステルであり、ワックスエステルは、飽和したC18-30脂肪酸のオレイン酸エステルである。
【0152】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質はコレステロールエステルであり、コレステロールエステルはC16-34脂肪酸のコレステロールエステルである。
【0153】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、脂質はトリグリセリドであり、トリグリセリドは以下からなる群から選択される分子式を有する:(i)C2n-8(ここで、nは55と57から選択される任意の整数である);(ii)C2n-10(ここで、nは55と57から選択される任意の整数である);および、(iii)トリグリセリドに関連付けられる脂肪酸鎖:C14:0、C15:0、C16:0、C16:1、C17:0、C18:0、C18:1、C18:2.9。
【0154】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、アルキルアシルホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ジメチルホスファチジルエタノールアミン、ジホスファチジルグリセロール(カルディオリピン)、エタノールアミンプラスマロゲン、リゾエタノールアミン・プラスマロゲン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびホスファチジルセリンからなる群から選択される。
【0155】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質は脂肪酸アミドであり、脂肪酸アミドはオレアミド、ミリスタミド、パルミトアミド、ステアルアミド、エルカミド、およびセラミドからなる群から選択される。
【0156】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質はω-ヒドロキシ脂肪酸であり、ω-ヒドロキシ脂肪酸は以下からなる群から選択される分子式を有する:(i)C2n-7(ここで、nは46-52から選択される任意の整数である);(ii)C2n-4(ここで、nは42-50から選択される任意の整数である);(iii)C2n-6(ここで、nは42、44、46、および48-52から選択される任意の整数である);(iv)C2n-8(ここで、nは48、50、および52から選択される任意の整数である);および、(v)C2n-10(ここで、nは50と52から選択される任意の整数である)。
【0157】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、脂質誘導体は極性である。別の実施形態は、脂質誘導体が無極性である方法を提供する。別の実施形態は、脂質誘導体がスルフヒドリル基を含む方法を提供する。別の実施形態は、脂質誘導体がジスルフィドを含む方法を提供する。
【0158】
別の実施形態は、マイボーム腺からの脂質の分泌を増加させるための方法を提供し、ここで、眼に許容可能な担体は少なくとも1つの眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0159】
1つの実施形態は、マイボーム腺からの脂質分泌を増加させるための方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、該方法は、角質溶解剤を患者に投与する工程をさらに含む。別の実施形態は、角質溶解剤が硫化セレン、ジトラノール、過酸化ベンゾイル、尿素、サリチル酸、ホウ酸、乳酸、レチン酸、およびアルファ-ヒドロキシ酸からなる群から選択される方法を提供する。
【0160】
1つの実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む治療上有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含む。
【0161】
別の実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、脂質誘導体は、脂肪酸、グリセロ、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質(saccharolipid)、ポリケチド、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される脂質の誘導体である。
【0162】
別の実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、脂質誘導体はマイバムで自然に見られる脂質の誘導体である。
【0163】
1つの実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体とスルフヒドリル基またはジスルフィドを含む治療上有効な量の少なくとも1つの脂質誘導体とを含む眼用組成物を、必要としている患者の眼瞼縁に局所的に投与する工程を含み、ここで、該方法は、角質溶解剤を患者に投与する工程をさらに含む。1つの実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、角質溶解剤は、硫化セレン、ジトラノール、過酸化ベンゾイル、尿素、サリチル酸、ホウ酸、乳酸、レチン酸、およびアルファ-ヒドロキシ酸からなる群から選択される。別の実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、マイボーム腺機能不全はマイボーム腺の閉塞物を特徴とする。別の実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、マイボーム腺の閉塞物が実質的に取り除かれるまで、患者の眼瞼縁への脂質誘導体の局所的投与は繰り返される。別の実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、患者の眼瞼縁への脂質誘導体の局所的投与は、マイボーム腺の閉塞物の形成を防ぐために定期的に繰り返される。別の実施形態は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置するための方法を提供し、ここで、眼に許容可能な担体は少なくとも1つの眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0164】
ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺によって生成される脂質の量の有意な、好ましくは統計的に有意な増加をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺から分泌される脂質の量の有意な、好ましくは統計的に有意な増加をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺によって分泌された脂質の組成の有意な、好ましくは統計的に有意な変化をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺から分泌された脂質の融点の有意な、好ましくは統計的に有意な変化、好ましくは減少をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺によって分泌された脂質の粘度の有意な、好ましくは統計的に有意な変化、好ましくは減少をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、眼瞼縁中の脂質の粘度の有意な、好ましくは、統計的に有意な変化、好ましくは減少をもたらす。
【0165】
ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺によって生成される脂質の量の治療上有効な増加をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺から分泌される脂質の量の治療上有効な増加をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺によって分泌された脂質の組成の治療上有効な変化をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺から分泌された脂質の融点の治療上有効な変化、好ましくは減少をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、マイボーム腺によって分泌された脂質の粘度の治療上有効な変化、好ましくは減少をもたらす。ある実施形態では、上に記載された方法は、眼瞼縁中の脂質の粘度の治療上有効な変化、好ましくは減少をもたらす。
【0166】
いくつかの実施形態において、活性薬剤は、目の表面へ許容可能であり(つまり、目の上皮表面へ過度の刺激あるいは破損を引き起こさない)、かつ、組成物と接した脂質生成細胞を損なわないように製剤および適用される。
【0167】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬剤を投与する医師または患者に許容可能かつ実際的な持続時間と頻度で適用される。例えば、医師は、マイボーム腺から分泌される脂質の量の増加を引き起こすために数週間にわたって毎週または週に2度本明細書に記載される組成物を適用し、患者は毎日異なる組成物を適用するか、あるいは患者は、数週間にわたって毎日より有力な組成物を使用し、その後、さほど強力ではない組成物を毎日使用する。いくつかの実施形態において、組成物は毎日、1日1回または複数回、患者によって適用される。
【0168】
いくつかの実施形態において、適用方法は、脂質誘導体の濃度への依存および/または脂質欠失の程度によって変わる。他の実施形態では、組成物の適用方法は、処置の効果を増強するために標的組織での浸透または滞留時間を増強するために調整される。他の実施形態では、組成物の適用方法は、必要な適用時間を最小限に抑えるために標的組織での浸透または滞留時間を増強するために変えられる。他の実施形態では、組成物は、目を含む非標的組織との接触を最小限に抑えつつ、標的組織との接触を増やし、ゆえに、任意の望ましくない付随的な活性を制限または減少させるために(例えば、粘度および/または皮膚接着性の調節によって)製剤される。
【0169】
ある実施形態では、脂質誘導体および賦形剤の濃度は、任意の目の刺激または破損、あるいは周囲の眼組織に対する刺激または破損を最小限に抑えつつ、治療上の利点を達成するべく脂質誘導体の最小有効濃度を実現させるために最適化される。
【0170】
本明細書に記載される方法と組成物は、マイボーム腺から分泌された脂質の量を増加させ、マイボーム腺によって分泌された脂質の組成を変え、および/または、マイボーム腺から分泌された脂質の粘度を低下させ、それによって、任意のマイボーム腺の閉塞物の溶解を増強し、涙液層破壊時間(TBUT)を増強するための手段である。
【0171】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの脂質誘導体の局所投与は週に二度生じる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの脂質誘導体の局所投与は一日おきに生じる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの脂質誘導体の局所投与は毎日生じる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの脂質誘導体の局所投与は1日に数回生じる。
【0172】
いくつかの実施形態において、局所投与用の組成物は液体または半固体である。いくつかの実施形態において、局所投与用の組成物は半固体のエマルジョンである。いくつかの実施形態において、局所投与用の組成物はクリームである。いくつかの実施形態において、局所投与用の組成物は軟膏である。いくつかの実施形態において、脂質誘導体は組成物内で懸濁または分散する。いくつかの実施形態において、局所投与用の組成物はローション剤である。いくつかの実施形態において、局所投与用の組成物はゲルである。
【0173】
1つの実施形態は、少なくとも1つの脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、マイボーム腺によって生成される脂質の量の治療上適切な増加をもたらす。1つの実施形態は、少なくとも1つの脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、マイボーム腺から分泌される脂質の量の治療上適切な増加をもたらす。別の実施形態は、脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、マイバムの産生の治療上適切な増加をもたらす。別の実施形態は、脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、マイバムの脂肪の組成の治療上適切な変化をもたらす。別の実施形態は、脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、マイボーム腺から分泌される脂質の融点の治療上適切な低下をもたらす。別の実施形態は、脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、マイボーム腺から分泌される脂質の粘度の治療上適切な低下をもたらす。別の実施形態は、脂質誘導体を含む組成物の局所投与によって必要としている患者のMGDを処置するための方法を提供し、該方法は、眼瞼縁の脂質の粘度の治療上適切な低下をもたらす。
【0174】
前述の実施形態のいずれかにおいて、組成物はさらに眼に許容可能な担体を含む。1つのさらなる実施形態では、眼に許容可能な担体は眼に許容可能な賦形剤を含む。ある実施形態では、眼に許容可能な担体は複数の眼に許容可能な賦形剤を含む。こうした賦形剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed. Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載されている。
【0175】
1つの実施形態は、脂質誘導体を含む局所用組成物を投与することによって必要としている患者のマイボーム腺からの脂質生成と脂質分泌を増強するための方法を提供し、組成物は、脂質誘導体の0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、5%、あるいは10%を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、懸濁液、エマルジョン、クリーム、ローション剤、ゲル、あるいは軟膏として製剤される。いくつかの実施形態において、組成物は、1日おきに1日1回、最初に皮膚を浄化するために薄層として適用され、その後、耐性が進行するにつれて最大で1日2回まで徐々に増やされる。いくつかの実施形態において、組成物は軟膏またはペーストである。いくつかの実施形態において、組成物は0.1%の軟膏として始められる。7日後、濃度を0.25%まで増加させ、その後、必要に応じて1週間に1度の間隔で2倍にして2%の最大強度にしてもよい。いくつかの実施形態において、軟膏の薄層は2-4週間にわたって患部に毎日1回適用される。いくつかの実施形態において、患部を完全にすすぐ前に軟膏は10~20分間にわたって適所に残される。いくつかの実施形態において、チオールを含む、またはジスルフィドを含む薬または医薬品を増強する脂質生成と脂質分泌の濃度を、徐々に最大5%まで増加させ、処置は必要なだけ長い間継続される。
【0176】
いくつかの実施形態において、脂質誘導体を含む組成物の局所投与は週に一度生じる。いくつかの実施形態において、脂質誘導体を含む組成物の局所投与は週に二度生じる。いくつかの実施形態において、脂質誘導体を含む組成物の局所投与は1日おきに生じる。いくつかの実施形態において、脂質誘導体を含む組成物の局所投与は毎日生じる。いくつかの実施形態において、脂質誘導体を含む組成物の局所投与は1日に数回生じる。
【0177】
幾つかの実施形態において、前記方法は、救急処置のシナリオにおける処置を含む。別の実施形態において、前記方法は、類似又は同一の処置を受けていない患者の処置を含む。別の実施形態において、前記方法は、長期処置のシナリオにおける処置を含む。別の実施形態において、前記方法は、維持療法のシナリオにおける処置を含む。救急処置のシナリオにおいて、投与された脂質誘導体の用量は、長期処置のシナリオ又は維持療法のシナリオで利用される脂質誘導体の用量よりも多くてもよい。救急処置のシナリオにおいて、脂質誘導体は、長期処置のシナリオで利用される脂質誘導体とは異なるものでもよい。幾つかの実施形態において、治療の過程は、救急処置のシナリオとして治療の初期段階において始まり、後に長期処置のシナリオ又は維持療法のシナリオへと推移する。
【0178】
幾つかの実施形態において、薬剤は、マイボーム腺から分泌された脂質の量の増加、マイボーム腺により分泌された脂質の組成の変更、及び/又はマイボーム腺により分泌された脂質の粘度の低減の役目を果たす活性薬剤であり、それにより、任意のマイボーム腺閉塞物の分解を増強する。
【0179】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの薬剤の局所投与が、週に2回行われる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの薬剤の局所投与が、1日おきに行われる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの薬剤の局所投与が、毎日行われる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの薬剤の局所投与が、1日に数回行われる。
【0180】
幾つかの実施形態において、局所投与用の組成物は液体又は半固形である。幾つかの実施形態において、局所投与用の組成物は半固形のエマルジョンである。幾つかの実施形態において、局所投与用の組成物はクリームである。幾つかの実施形態において、局所投与用の組成物は軟膏である。幾つかの実施形態において、眼用薬剤は、組成物内で懸濁又は分散される。幾つかの実施形態において、局所投与用の組成物はローションである。幾つかの実施形態において、局所投与用の組成物はゲルである。
【0181】
チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む、薬学的に許容可能な局所組成物が、調製される。ゲルは主に親水性であり、眼用調製物のための所望の許容可能な濃度で懸濁化剤、分散剤、可溶化剤、乳化剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤を随意に含んでいる。眼軟膏は主に無水であり、基礎原料として鉱油と白色ワセリンを含んでいる。ラノリンの添加により、ワセリン基剤を水性成分とより混和させるようにすることができる。本明細書に記載される典型的な、脂質生成及び脂質分泌を増強させる製剤は更に、懸濁化剤、乳化剤、可溶化剤、又は増粘剤を含んでいる。
【0182】
懸濁化剤:懸濁化剤は、懸濁液中の分子の沈降速度を下げるのに役立つ。これらは、液体の賦形剤中で分散する不溶性粒子である。懸濁化剤は、液体の賦形剤の粘度を増加させ、それによりストークスの式に従って沈降の速度を落とすことにより作用する。大半の懸濁化剤は2つの機能を実行する。懸濁化剤として作用することに加えて、これらはまた溶液に粘度を与える。懸濁化剤は、分子の周囲に薄膜を形成し、相互粒子引力(inter-particle attraction)を減少させる。懸濁化剤は増粘剤としても作用する。懸濁化剤は溶液の粘度を増加させ、これは、浮遊粒子の沈降、及び故に粒子の凝集又は固化を防ぐために必要なものである。懸濁化剤の例は、セルロース誘導体(CMC、HPMC、HEC)、カルボマー(カルボポール、ポリカルボフィル)、ガム、アルギン酸塩、ゼラチン、又はコロイド状二酸化ケイ素である。
【0183】
乳化剤:乳化剤は、液体の賦形剤中で細かく分割された液滴の分散を維持するのに役立つ。エマルジョンは、水とオイルなどの2つ以上の不混和液体で作られており、液体、或いはクリーム又はローションなどの半固体であり得る。乳化剤は、レシチン(リン脂質)のように天然由来であり、又は、イオン性(SLS)又は非イオン性の界面活性薬剤(cremophor、ポリソルベート、ポロクサマー)などの合成であり得る。
【0184】
可溶化剤:可溶化剤は、溶解度を増強し、且つやや溶けにくい薬物のバイオアベイラビリティを増加させるために使用される。可溶化剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールのような水混和性のアルコール性溶媒、シクロデキストリンなどの錯化剤、或いはポビドン(PVP)又はポリビニルアルコール(PVA)のような水溶性の合成高分子であり得る。
【0185】
増粘剤:増粘剤は、懸濁液の粘度を増加させるために添加される。成分は全て、懸濁化剤、可溶化剤、乳化剤、又は増粘剤の支援により、軟膏又はゲルにおいて、活動的な脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品の、安定した均質の分散液/懸濁液/溶液を得るために、機械的な振盪により混合される。
【0186】
本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の約0.2%~約10%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約0.2%~約1.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約1.0%~約3.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約3.0%~約5.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約5.0%~約10.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約1.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約1.5%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約2.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約2.5%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約3.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約3.5%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約4.0%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約4.5%の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、約5.0%の薬物又は医薬品を含む。
【0187】
1つの実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の、少なくとも1つの薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、マイボーム腺から分泌される脂質の量の治療上適切な増加を結果としてもたらす。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品は、硫化セレンを含む医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強する医薬品は、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物を含む医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、マイボームの産生の増加を引き起こす。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、天疱瘡を引き起こす薬剤である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品は、マイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加し、且つ、マイバム脂質の組成を変更して、マイボーム腺閉塞物の分解を可能にすることができる。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、マイボーム腺の開口部の中身に接触させることにより、眼瞼縁への適用時にマイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加することができる。
【0188】
1つの実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品は、少なくとも1つの薬剤がマイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加させることが可能な医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む組成物の局所投与により、必要とする患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品は、硫化セレンを含む医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品は、マイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加させることが可能な少なくとも1つの薬剤が、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物である、医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、マイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加させることが可能な少なくとも1つの薬剤が皮脂の過剰産生を引き起こす、医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、マイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加させることが可能な少なくとも1つの薬剤が天疱瘡を引き起こす薬剤である、医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、マイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加させることが可能な少なくとも1つの薬剤が、マイバム脂質の融点を低下させ、それによりマイバム脂質の粘度を低減し、マイボーム腺閉塞物の分解を可能にする、医薬組成物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、少なくとも1つの薬剤が、マイボーム腺の開口部の中身に接触させることにより、眼瞼縁への適用時にマイボーム腺から分泌されるマイバム脂質の量を増加することが可能である、医薬組成物である。
【0189】
1つの実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品は、チオール基又はジスルフィド基を含む薬物である。別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、チオール含有薬物は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、L-システイン、セレノシステイン、グルタチオン、ジチオトレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、及びコエンザイムBから成る群から選択される。
【0190】
別の実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる医薬品を含む組成物の局所投与により、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、ここで、ジスルフィド含有薬物は、ジスルフィラム、プサマプリンA、ジキサントゲン、パンテテイン、フルスルチアミン、オクトチアミン、スルブチアミン、プロスルチアミン、チラム、リポ酸、レンチオニン、アホエン、アリシン、ゲモパトリラト(Gemopatrilat)、及びスルファンゲン(Sulfanegen)から成る群から選択される。
【0191】
前述の実施形態の何れかにおいて、組成物は更に、眼に許容可能な担体を含む。1つの更なる実施形態において、眼に許容可能な担体は、眼に許容可能な賦形剤を含む。
【0192】
特定の実施形態において、本明細書に記載される方法及び組成物に使用される、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、維持療法の設定において随意に使用される。特定の実施形態において、維持療法の設定に使用される、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる低濃度の医薬品を含む。
【0193】
用語「維持療法」又は「維持投与レジメン」は、与えられた状態、例えば寛解状態で自身の健康を維持することを可能にする障害/疾患、例えばMGDと診断された被験体又は患者に対する、処置のスケジュールを指す。
【0194】
1つの実施形態において、維持療法の設定に使用される、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の薬物又は医薬品は、カプトプリル、ゾフェノプリル、チオプロニン、ペニシラミン、L-システイン、セレノシステイン、グルタチオン、ジチオトレイトール、チオルファン、システアミン、ブシラミン、ジメルカプロール、1,1-エタンジチオール、ジメルカプトコハク酸、フラン-2-イルメタンチオール、オマパトリラト、オボチオールA、パンテテイン、レンチアプリル、チオサリチル酸、チキソコルトール、マイコチオール、コエンザイムA、及びコエンザイムBから成る群から選択される。
【0195】
1つの実施形態において、維持療法の設定に使用される、脂質生成及び脂質分泌を増強させるジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、ジスルフィラム、プサマプリンA、ジキサントゲン、パンテテイン、フルスルチアミン、オクトチアミン、スルブチアミン、プロスルチアミン、チラム、リポ酸、レンチオニン、アホエン、アリシン、ゲモパトリラト、及びスルファンゲンから成る群から選択される。
【0196】
1つの実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物を投与することにより、必要とする患者におけるマイボーム腺からの脂質生成及び脂質分泌を増強する方法を提供し、ここで、局所用組成物は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、5%、又は10%の、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む。幾つかの実施形態において、局所用組成物は、懸濁液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、又は軟膏として製剤される。幾つかの実施形態において、局所用組成物は、1日置きに1日1回、最初に清潔な皮膚へ薄層として適用され、次いで耐性が発達するにつれて1日2回まで徐々に増やされる。幾つかの実施形態において、局所用組成物は軟膏又はペーストである。幾つかの実施形態において、局所用組成物は0.1%の軟膏として開始される。7日後、濃度は0.25%に増加され、その後二倍にされ、必要であれば毎週の間隔で2%の最大強度に増加され得る。幾つかの実施形態において、軟膏の薄層は、2-4週間にわたり影響を受けた領域に1日1回適用される。幾つかの実施形態において、軟膏は、前記領域が完全にすすがれる前に、10~20分間にわたり適所に残る。幾つかの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させるチオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品の濃度は、最大5%にまで徐々に増加され、処置は必要とされる間にわたり継続される。
【0197】
他の実施形態において、本明細書に記載される局所組成物は、薬学的に適切又は許容可能な担体(例えば、薬学的に適切な(又は許容可能な)賦形剤、生理学的に適切な(又は許容可能な)賦形剤、又は生理学的に適切な(又は許容可能な)担体)と組み合わせられる。典型的な賦形剤は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro, 21st Ed. Mack Pub. Co., Easton, PA (2005))に記載されている
【0198】
1つの実施形態は、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物を投与することにより、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供する。1つの実施形態は、角質溶解薬と組み合わせて、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物を投与することにより、マイボーム腺機能不全を処置する方法を提供する。
【0199】
幾つかの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物の局所投与は、週に1回行われる。幾つかの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物の局所投与は、週に2回行われる。幾つかの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物の局所投与は、1日置きに行われる。幾つかの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物の局所投与は、毎日行われる。幾つかの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む局所用組成物の局所投与は、1日に数回行われる。
【0200】
幾つかの実施形態において、前記方法は、救急処置のシナリオにおける処置を含む。別の実施形態において、前記方法は、類似又は同一の処置を受けていない患者の処置を含む。別の実施形態において、前記方法は、長期処置のシナリオにおける処置を含む。別の実施形態において、前記方法は、維持療法のシナリオにおける処置を含む。救急処置のシナリオにおいて、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品の投与される用量は、長期処置のシナリオ又は維持療法のシナリオで利用される、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品の投与される用量よりも多くてもよい。救急処置のシナリオにおいて、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品は、長期処置のシナリオで利用される、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品とは異なってもよい。幾つかの実施形態において、治療の過程は、救急処置のシナリオとして治療の初期段階において始まり、後に長期処置のシナリオ又は維持療法のシナリオへと推移する。
【0201】
特定の臨床症状において、患者は、医師又は医療従事者により、又は、本明細書に記載される治療薬の1つの、より高濃度の組成物を配することにより施される、初期治療を必要とし得る。この事象において、より高濃度の組成物が必要とされ、その適用は、眼の表面又は周囲の組織の刺激或いは破損の影響を最小化するために、眼の遮蔽又は他の活動を必要とし得る。そのような手順に従い、患者は、マイボーム腺の開通性を維持するために、家に持ち帰って眼瞼縁に周期的に適用するための、活性薬剤の異なる組成物を提供され得る。そのような適用は、組成物の活性、及び治療の所望の生成物の特性に依存して、1日2回、1日1回、毎週、又は毎月行われてもよい。
【0202】
本明細書に記載される処置方法の1つの態様は、組成物の局所投与の位置である。1つの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物は、眼への刺激が生じないように投与される。1つの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物は、眼瞼縁に投与される。
【0203】
本明細書に記載される処置方法の付加的な1つの実施形態は、目への刺激を回避するように目に提供される保護要素の使用である。本明細書に記載される組成物は通常、非刺激的なものではあるが、幾つかの実施形態において(例えば、高濃度の薬剤、又は、敏感な目に使用された場合)、保護要素は、患者に安全性及び快適性の付加的な層をもたらす。1つの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物が投与される一方で、目への刺激が低減されるように薬剤が角膜及び/又は結膜に接触するのを減らすために、眼の遮蔽物が眼に配される。幾つかの実施形態において、眼の遮蔽物は、コンタクトレンズ又アイカバーである。幾つかの実施形態において、アイカバーは自己接着性を含む。1つの実施形態において、脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む組成物が投与される一方で、眼への刺激が低減されるように薬剤が角膜及び/又は結膜に接触するのを減らすために、眼瞼は眼球から離される。
【0204】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指定していない限り、複数の指示物を含む。故に、例えば、「薬剤」への言及は、複数のそのような薬剤を含み、「細胞」への言及は、1以上の細胞(又は複数の細胞)、及び当業者に既知の同等物などへの言及を含む。分子量などの物理的特性、又は化学式などの化学的特性についての範囲が本明細書で使用されると、範囲及びその中の特異的な実施形態の全ての組み合わせ及びサブ組み合わせ(sub-combinations)が含まれるように意図される。用語「約」は、数又は数値域への言及が、言及される数又は数値域を意味する場合、実験的な変形内の(又は統計的実験誤差内の)概算であり、故に、数又は数値域は、明示された数又は数値域の1%と15%の間で変動し得る。用語「含んでいる(comprising)」(並びに、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」、或いは「有している(having)」又は「含んでいる(including)」などの関連語)は、他の特定の実施形態において、例えば、本明細書に記載される任意の合成物、組成物、方法、又はプロセスの実施形態などが、記載された特徴「から成る」又はそれら「から本質的に成る」場合があるものを除外するようには意図されない。
【0205】
本明細書で使用されるような用語「眼に許容可能な担体」は、本発明の教示に従って適用されると、生物の眼に重度の刺激を引き起こさず、且つ、それと共に運ばれた薬剤の薬理活性及び特性を無効にしない、担体を指す。
【0206】
眼に許容可能な担体は通常、無菌性であり、実質的に異物を含まず、且つ、通常は5-8の範囲のpHを有している。好ましくは、pHは可能な限り涙液のpH(7.4)に近いものである。眼に許容可能な担体は、例えば、等張食塩水又はホウ酸溶液などの無菌の等張溶液である。そのような担体は典型的に水溶液であり、塩化ナトリウム又はホウ酸を含んでいる。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液も有用である。
【0207】
本明細書で使用されるような用語「有効な量」は、マイボーム腺からの脂質分泌の増加、マイボーム腺から分泌された脂質の融点の低下、又はマイボーム腺から分泌された脂質の粘度の低減など、特定の条件を達成するために必要な量を指す。
【0208】
本明細書で使用されるような用語「治療上有効な量」は、疾患の症状を処置、予防、緩和、又は改善するのに有効な、治療上有効な化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の量を指す。用語「治療上有効な化合物」は、疾患の症候を処置、予防、緩和、又は改善するのに有効な化合物を指す。
【0209】
本明細書で使用されるような用語「スルフヒドリル基」は、-SH官能基を指す。
【0210】
本明細書で使用されるような用語「チオール基」は、-C-SH又はR-SHの基を指し、ここでRはアルカン、アルケン、又は原子の他の炭素含有基を指す。
【0211】
本明細書で使用されるような用語「ジスルフィド」は、硫黄原子の結合された対を指す。
【0212】
本明細書で使用されるような用語「ジスルフィド結合」は、通常は2つのチオール基の結合により得られる共有結合を指し、そのため全体的な結合は-S-S-である。この結合は、SS結合又はジスルフィド架橋とも呼ばれる。
【0213】
本明細書で使用されるような用語「眼に許容可能な賦形剤」は、本発明の教示に従って適用されると、生物の眼に重度の刺激を引き起こさず、且つ、それと共に運ばれた薬剤の薬理活性及び特性を無効にしない、賦形剤を指す。
【0214】
本明細書で使用されるような用語「角質溶解薬」は、皮膚の角質層を緩め且つ取り除き、或いは皮膚のケラチン層の構造を変更する化合物を指す。
【0215】
本明細書で使用されるような用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、又は「処置(treatment)」は、長期又は救急の治療のシナリオにおいてMGDに関連する症状を減少、低減、軽減、改善、又は緩和することを含む。1つの実施形態において、処置は脂質産生の増加を含む。1つの実施形態において、処置は脂質分泌の増加を含む。1つの実施形態において、処置は分泌された脂質の粘度の低減を含む。
【0216】
用語「再発」又は「再発の減少」は、長期治療のシナリオにおけるMGD症状の回帰を指す。
【0217】
用語「開口」は、閉塞されたマイボーム腺の管又は開口部の(少なくとも部分的な)除去、及び/又はマイボーム腺の管又は開口部の開通性の維持を指す。
【0218】
本明細書で使用されるような用語「脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品」は、マイボサイト(meibocytes)の分化の増加又はマイボサイトの増殖の増加を引き起こし、マイボーム腺から分泌された脂質の量を増加させ、或いはマイバム脂質の組成を変更する、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を指す。
【0219】
本明細書で使用されるような用語「マイバム脂質」は、マイボーム腺により分泌された脂質を指す。
【0220】
用語「ローション」は、エマルジョンの液体の剤形を記載する。この剤形は通常、皮膚への外部適用のためのものである(US FDA Drug Nomenclature Monograph, number C-DRG-00201)。
【0221】
用語「クリーム」は、エマルジョンの半固形の剤形を記載し、通常は>20%の水、及び揮発性物質、及び/又はビヒクルとして<50%の炭化水素、ワックス、又はポリオールを含有している。クリームはローションよりも粘性である。この剤形は通常、皮膚への外部適用のためのものである(US FDA Drug Nomenclature Monograph, number C-DRG-00201)。
【0222】
用語「軟膏」は、半固形の剤形を記載し、通常は<20%の水、及び揮発性物質、及び/又は>50%の炭化水素、ビヒクルとしてワックス又はポリオールを含有している。この剤形は通常、皮膚又は粘膜への外部適用のためのものである(US FDA Drug Nomenclature Monograph, number C-DRG-00201)。
【0223】
用語「溶液」は、溶媒、又は互いに混和する溶媒の混合物の中で溶解する1以上の化学物質を含有する、透明で均質な液体の剤形を記載する(US FDA Drug Nomenclature Monograph, number C-DRG-00201)。
【0224】
用語「懸濁液」は、沈降には十分に大きな固形微粒子を含有する、不均一な混合物を指す。
【0225】
本明細書で使用されるような用語「脂質誘導体」は通常、少なくとも1つのスルフヒドリル基又は少なくとも1つのジスルフィドを含む、疎水性又は両親媒性の分子を指す。用語「脂質誘導体」は更に、少なくとも1つのスルフヒドリル基及び少なくとも1つのジスルフィドを含む、疎水性又は両親媒性の分子を指す。用語「脂質誘導体」は更に、脂質誘導体の組み合わせ及び混合物を指す。
【0226】
本発明により記載されるチオール含有及び/又はジスルフィド含有の脂質又は「脂質誘導体」は、構造及び誘導のレベルに関して非常に不均一である。例えば、コレステロールなどの脂質には、複数の異なるチオール含有誘導体があり得る(図4)。脂肪のチオール化合物を合成する方法は以前に記載されており(J. Org. Chem., 1958, Vol. 23, pages 1525-1530)、ジスルフィドにより結合される複数の脂質を生成する(図5)。また、ジスルフィド含有脂質を合成する方法(図6)に加え、スクワレンなどの複数のチオール含有脂質を合成する方法(図7)も以前に記載されている。モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドはまた、それらのチオール含有誘導体に変換された(図8)。要するに、脂質は、当該技術分野で周知の方法により、広範囲のチオール含有及び/又はジスルフィド含有の誘導体を生成するための誘導体であり得る。
【実施例
【0227】
実施例1:脂腺細胞の3Dモデル培養における脂質合成に対する、チオール含有又はジスルフィド含有化合物の効果のインビボでの評価
【0228】
マイボーム腺の分泌細胞(マイボサイト)には、同様の構造、機能、及び結合部の発生学的な発達(joint embryologic development)から検証され得るような、脂線の分泌細胞(脂腺細胞)と共通の類似性があるため(Knop 2011_IOVS)、脂質産生に対するチオール含有脂質の効果は、脂腺細胞の3Dモデル培養において評価され得る。Barrault 2012, Immortalized sebocytes can spontaneously differentiate into a sebaceous-like phenotype when cultured as a 3D epithelium, Exp. Derm, 21:299-319も参照されたい。
【0229】
脂質合成に対する異なる化合物の効果を、脂腺細胞の3Dモデル培養において評価した。薬物の候補は、S-H又はジスルフィドを含む薬物:正の対照として二硫化セレン(カルボキシメチルセルロース-CMCの中で分散されるSeS2)、セレノシステイン、カプトプリル、ジスルフィラム、及び、S-H又はジスルフィドを含有する脂質:チオエタノール、12-メルカプトドデカン酸であった。脂腺細胞の分化は、脂質の合成及び蓄積の増加に関連するので、増殖及び分化の評価を、3D脂腺細胞培養(ヒト細胞株-SEBO662)における脂質蓄積の量を計ることにより行った。脂質蓄積を、オイルレッド染色による脂質染色により評価した。
【0230】
脂腺細胞SEBO662を、三次元(3D)上皮へと培養し、皮脂性のような表現型に分化した。脂腺細胞を、試験化合物で処理し、又は処理せず(対照)、14日間インキュベートした。全ての実験を3回行った。インキュベーションの後、組織を急速凍結した。ホルムアルデヒドで固定した凍結切片を、オイルレッドO溶液を使用して染色し、ヘマトキシリンを使用するので対比染色した。各試験条件のために、カメラを備えた光学顕微鏡を使用して切片を観察した。1つの複製につき5枚の写真を撮り、1つの処置条件につき15の値を作成した。各サンプル中の脂質含有量を、脂肪滴の表面積の算出により定量化した。試験された化合物と対照の、脂肪滴の表面積間の全てのデータポイントの定量比較を実行した。
【0231】
結果:
【0232】
図1は、対照に関する3D脂腺細胞の上皮におけるオイルレッドO染色の例示である。
【0233】
図2は、1.0マイクロモルの12-メルカプトドデカン酸に関する3D脂腺細胞の上皮におけるオイルレッドO染色の例示である。
【0234】
図3は、0.1マイクロモルの12-メルカプトドデカン酸に関する3D脂腺細胞の上皮におけるオイルレッドO染色の例示である。
【0235】
定量比較
【0236】
二硫化セレン(SeS2)は、0.01μM及び0.1μMで、両方の試験濃度にて3D脂腺細胞の上方の領域において、脂質蓄積の統計的に有意な増加を誘導した(それぞれ、対照の282%及び348%)。
【0237】
セレノシステインを1μM及び10μMで試験した。1μMの濃度で、化合物は、3D脂腺細胞における脂質蓄積の統計的に有意な増加を誘導した(対照の296%)。10μMでは、刺激効果は見出されなかった。
【0238】
1.0μM及び10μMで試験されたカプトプリルは、両方の試験濃度にて脂質蓄積の統計的に有意な増加を誘導した(それぞれ、対照の240%及び173%)。
【0239】
ジスルフィラムを100μM及び1000μMで試験した。100μMの濃度では、3D脂腺細胞における脂質蓄積の統計的に有意な増加を刺激した(対照の199%)。1000μMでは、刺激効果は見出されなかった。
【0240】
0.1μM及び1μMで試験されたチオエタノールは、両方の試験濃度にて脂質蓄積の統計的に有意な増加を刺激した(それぞれ、対照の251%及び228%)。
【0241】
0.1μM及び1μMで試験された12-メルカプトドデカン酸は、3D脂腺細胞の脂質蓄積の統計的に著しい増加を誘導した。この効果は、両方の濃度で同様であった(それぞれ、対照と比べて385%及び349%)。
【0242】
推定:
【0243】
S-H又はジスルフィドを含有する化合物である、二硫化セレン、セレノシステイン、チオエタノール、カプトプリル、ジスルフィラム、及び12-メルカプトドデカン酸は、3D脂腺細胞における脂質合成に対して著しい刺激効果を有していた。
【0244】
実施例2:脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品を含む医薬組成物の調製。
2.5グラムの12-メルカプトドデカン酸を、10グラムの流動パラフィン及び87.5グラムの白色の軟性ワセリンと混合させ、均質な混合物を得るまで一定の撹拌により~60℃に加熱して、これを室温に冷却する。
2.5グラムの12-メルカプトドデカン酸を、2.5グラムのコレステロール、10グラムの流動パラフィン、及び85グラムのワセリンと混合する。全ての成分が~80℃で溶け、均質性を得るまで混合物を混合しながら加熱し、その後室温に冷却する。
2.5グラムの12-メルカプトドデカン酸を、5グラムのスクワレン及び97.5グラムのワセリンと混合させ、均質性を得るために混合しながら~60℃に加熱し、その後室温に冷却する。
2.5グラムの12-メルカプトドデカン酸を、10グラムの鉱油、10グラムのスクワレン、10グラムのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、10グラムのマイクロクリスタリンワックス、10グラムの硬化植物油、及び3グラムのラノリンと混合し、100グラムになるまでワセリンと混合する。均質性を得るまで、混合物を混合しながら~80℃-90℃に加熱し、室温に冷却する。
2.5グラムのチオコレステロールを、10グラムの鉱油、10グラムのスクワレン、10グラムのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、10グラムのマイクロクリスタリンワックス、10グラムの硬化植物油、及び3グラムのラノリンと混合し、並びに100グラムになるまでワセリンと混合する。均質性を得るまで、混合物を混合しながら~80℃-90℃に加熱し、室温に冷却する。
2.5グラムのチオリン脂質を、10グラムの鉱油、10グラムのスクワレン、10グラムのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、10グラムのマイクロクリスタリンワックス、10グラムの硬化植物油、及び3グラムのラノリンと混合し、並びに100グラムになるまでワセリンと混合する。均質性を得るまで、混合物を混合しながら~80℃-90℃に加熱し、室温に冷却する。
2.5グラムの23-(9-メルカプトノニル)-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン酸(Heptaoxatricosanoic Acid)を、10グラムの鉱油、10グラムのスクワレン、10グラムのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、10グラムのマイクロクリスタリンワックス、10グラムの硬化植物油、及び3グラムのラノリンと混合し、並びに100グラムになるまでワセリンと混合する。均質性を得るまで、混合物を混合しながら~80℃-90℃に加熱し、室温に冷却する。
2.5グラムのジスルフィラムを、10グラムの鉱油、10グラムのスクワレン、10グラムのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、10グラムのマイクロクリスタリンワックス、10グラムの硬化植物油、及び3グラムのラノリンと混合し、並びに100グラムになるまでワセリンと混合する。均質性を得るまで、混合物を混合しながら~80℃-90℃に加熱し、室温に冷却する。
2.5グラムのチオリン脂質を、3グラムのコレステロール及び10グラムのリン脂質と混合させ、エタノール・アセトンの混合物中で溶解する。混合物を真空下で乾燥し、激しい撹拌、その後高圧の均質化の下で1000mlの食塩水と混合させて、非常に細かいリポソーム分散を産生する。
2.5グラムのジスルフィラムを、5グラムの硬化植物油及び5グラムの鉱油と混合させ、撹拌しながら~80℃に加熱し、全ての成分を溶解する。1%のtween80及び2%のリン脂質を含む、80℃に予め加熱された87.5グラムの水溶液を、激しい混合及び高剪断均質化の下で加える。0.8グラムのキサンタンガム(Xantural 3000(商標))を、激しい混合の下で加え、混合物を室温に冷却し、固形の脂質分散を得る。2.5グラムのカプトプリルを滅菌注射用蒸留水に溶かし、1.2グラムのキサンタンガム及び0.8グラムの塩化ナトリウムを加え、混合物を撹拌して透明なゲルを得る。
【0245】
実施例3:マイボーム腺における脂質産生の増加。
【0246】
研究の目的は、マイボーム腺により産生された脂質の量の増加に対する、脂質生成及び脂質分泌を増強させる製剤の効果を評価することである。
【0247】
脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は薬剤の光層は、被験体の下方の眼瞼に適用され、マイボーム腺により産生された脂質の量は、薬物又は薬剤の適用の前後に測定される。マイボーム腺における脂質産生のレベルを判定するための典型的な方法は、1、3、5、及び7日間にわたり、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は医薬品により又はそれら無しでヒトのマイボーム腺の上皮細胞を培養し、次いで、LipidTOXの緑色の中性脂質染色、及びLysoTracker(登録商標)Red DND-99(リソソームを標識化するために設計された蛍光技術)で細胞を染色することによって細胞の脂質及びリソソーム蓄積の規模を判定することにより、行われる。加えて、前記方法は、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物が、ヒトのマイボーム腺の上皮細胞における極性及び中性の脂質種の合成を増加させるかどうかを調べ、及び、7日間にわたりチオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物群で又はそれら無しで培地中で細胞を培養し、その後、リン脂質、ワックス、及びコレステロールエステルの識別のために細胞を処理することにより、行われる。これらの後者の2つの種は、ヒトのマイバムにおける主な脂質である。分析は、高性能薄層クロマトグラフィーの使用、及びImageJ色素による染色度の定量化を含んでいる。別の既知の代替的な方法は、オイルレッドO及びナイルレッドでの染色を利用する。脂質蓄積の程度を、ナイルレッド染料の使用により判定する。この色素は、蓄積された脂質の量に比例する蛍光シグナルをもたらす。
【0248】
実施例4:マイボーム腺からの脂質分泌の増加。
【0249】
研究の目的は、マイボーム腺から分泌された脂質の量の増加に対する、脂質生成及び脂質分泌を増強させる製剤の効果を評価することである。
【0250】
脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は薬剤の光層は、被験体の下方の眼瞼に適用され、マイボーム腺から分泌された脂質の量は、薬物又は薬剤の適用の前後に測定される。マイボーム腺から脂質分泌のレベルを判定するための典型的な方法は、眼瞼縁上のマイボーム脂質を定量化するための「meibometer」装置を使用することであり、これは、分泌されているマイバムの量を測定するために眼瞼縁に対して置かれるテープを備える、光学分光光度計である(Chew et al, Current Eye Research, Vol. 12 (3), pages 247-254, 1993)。
【0251】
実施例5:マイボーム腺から分泌される脂質の融点の低下。
【0252】
研究の目的は、マイボーム腺から分泌された脂質の融点の低下に対する、脂質生成及び脂質分泌を増強させる製剤の効果を評価することである。
【0253】
脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は薬剤の光層は、被験体の下方の眼瞼に適用され、マイボーム腺から分泌された脂質の融点は、薬物又は薬剤の適用の前後に測定される。マイボーム腺からの脂質分泌の融点を判定するための典型的な方法は、100ミリグラムのマイバム脂質の量の重さを量り、クロロホルム-メタノール(3:1)の溶媒混合液にそれらを溶かすことである。上述の混合物のごく一部を引き抜き、予め重さを量った示差走査熱量計(DSC)パンの上に置く。続いて、溶媒を窒素の流れの下で蒸発させ、均一に混合したサンプルを得る。DSCパンの重さを再び量り、脂質の正確な重量を判定する。その後、DSCを使用してサンプルを3回繰り返して分析し、5℃/分の速度で-50℃~100℃まで処理する(run)。特異な構成要素も、混合物中でそれらを識別するための基準として同様の条件下で処理する。別個の構成要素を、そのままで、並びに、クロロホルム-メタノールの混合物に溶かした後、及び溶媒の蒸発の後に処理する。融点を、DSCサーモグラムにおけるピークとして記録する。
【0254】
実施例6:マイボーム腺から分泌される脂質の粘度の低減。
【0255】
研究の目的は、マイボーム腺から分泌された脂質の粘度の低減に対する、脂質生成及び脂質分泌を増強させる製剤の効果を評価することである。
【0256】
脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は薬剤の光層は、被験体の下方の眼瞼に適用され、マイボーム腺から分泌された脂質の粘度は、薬物又は薬剤の適用の前後に測定される。マイボーム腺からの脂質分泌の粘度を判定するための典型的な方法は、特殊な形状のBrookfield Cone/Plate Viscometerを使用して、小さなサンプルの容量で流体の絶対粘度を慣例的に判定するための精巧な装置を研究者に与えることにより行われる。Brookfield Cone/Plate Viscometerは、種々様々な剪断速度及び粘度範囲をもたらし、これらは更に、交換可能な円錐体のスピンドルの使用により拡大され得る。必要な粘度及び剪断速度の特定範囲を満たすために、異なるモデルが選択され得る。必要とされる小さなサンプルの容量により、流動学的な評価は、体液及びマイバムのサンプルなど、サンプルの利用度が限定される材料上で行われることが可能になる。
【0257】
実施例7:MGD患者の処置。
【0258】
研究の目的は、MGD又はその症状の少なくとも1つの処置に対する、脂質生成及び脂質分泌を増強させる製剤の効果を評価することである。
【0259】
脂質生成及び脂質分泌を増強させる、チオール含有の、-SeH含有の、又はジスルフィド含有の薬物又は薬剤の光層は、MGD患者の下方の眼瞼に適用され、MGD又はその症状の少なくとも1つの重症度は、薬物又は薬剤の適用の前後に測定される。MGD又はその症状の少なくとも1つを評価且つモニタリングするための典型的な方法は、限定されないが、患者へのアンケート、マイボーム腺の圧搾、涙液層の安定性の破壊時間、及び指での圧搾に見られるような開通性の腺の数の判定を含む。MGD症状を評価するための他の方法は、限定されないが、Shirmer試験、眼表面染色、眼瞼の形態分析、マイボグラフィー、マイボメトリー、インターフェロメトリー、エバポリメトリー、涙の脂質組成分析、蛍光分析、メニスコメトリー(meiscometry)、モル浸透圧濃度分析、涙液膜動態の指標、蒸発、及び涙のターンオーバー(turnover)を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8