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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】紙おむつ処理装置及び紙おむつ処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/35 20220101AFI20220909BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20220909BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20220909BHJP
【FI】
B09B3/35
B29B17/02
B09B101:67
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020512161
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2018014435
(87)【国際公開番号】W WO2019193687
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592036807
【氏名又は名称】小川 弘
(73)【特許権者】
【識別番号】518052027
【氏名又は名称】藤本 啓一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】小川 弘
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-047023(JP,A)
【文献】特開2005-207641(JP,A)
【文献】特開2009-183893(JP,A)
【文献】特開2003-225645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理装置であって、
前記紙おむつの表面材により被覆された高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の低い供給水を給水する給水部と、
該給水部で給水されることで吸水した前記紙おむつを収容する貫通孔を備えた本体部と、該本体部の内周面との間で前記高分子吸収材を被覆する前記表面材を挟み込み破砕する破砕部とを有し、該破砕された前記表面材を前記本体部内に残して、該表面材から分離された前記高分子吸収材を前記貫通孔から排出する分離部と、
該分離部で前記表面材から分離された前記高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材溶液を供給することで、前記高分子吸収材の被覆膜から該高分子吸収材を残して被処理液を排出させる処理部と、を少なくとも備えることを特徴とする紙おむつ処理装置。
【請求項2】
前記供給水は、真水であることを特徴とする請求項1に記載の紙おむつ処理装置。
【請求項3】
前記添加材は、陽イオンと陰イオンとがイオン結合した塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙おむつ処理装置。
【請求項4】
前記添加材は、塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項3に記載の紙おむつ処理装置。
【請求項5】
前記給水部は、前記紙おむつが載置され前記分離部内に向けて下方に傾斜する載置面と、該載置面に向けて給水する複数の給水口とを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の紙おむつ処理装置。
【請求項6】
前記分離部は、前記表面材から分離された前記高分子吸収材を前記処理部に移送する移送部を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の紙おむつ処理装置。
【請求項7】
前記分離部は、前記高分子吸収材から分離された前記表面材を前記分離部外に排出する排出部を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の紙おむつ処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記高分子吸収材、該高分子吸収材の外部に浸透した前記被処理液、及び前記添加材を前記処理槽外に排出する排水部を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の紙おむつ処理装置。
【請求項9】
使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理方法であって、
前記紙おむつの表面材により被覆された高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の低い供給水を給水する給水工程と、該給水工程で給水されることで吸水した前記紙おむつを貫通孔を備えた本体部内に収容し、該本体部の内周面との間で前記高分子吸収材を被覆する前記表面材を破砕部により挟み込み破砕して、該破砕された前記表面材を前記本体部内に残して、該表面材から分離された前記高分子吸収材を前記貫通孔から排出する分離工程と、該分離工程で前記表面材から分離された前記高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材溶液を供給することで、前記高分子吸収材の被覆膜から該高分子吸収材を残して被処理液を排出させる処理工程と、を少なくとも備えることを特徴とする紙おむつ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理装置及び紙おむつ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みの紙おむつは、一般家庭にて発生するのみならず、例えば保育所・幼稚園や養護老人ホーム等の介護・養護施設、或いは複数の病床を備えた医療機関等の事業所では日々大量に発生するものであり、これらの紙おむつは多くの自治体で焼却対象となる可燃ごみ(一般廃棄物・事業系一般廃棄物等)としてごみ収集され、焼却施設にて廃棄物処理がされている。
【0003】
近年の紙おむつは、排泄物等の液体分を高効率に吸収する高分子吸収材が、通水性を有する不織布からなる表面材に被覆されて構成されることが多く、したがって使用済みの紙おむつは、当然のことながら液体を吸収して膨潤化している。よって、このような液体分を含有する使用済み紙おむつを大量に焼却処理するに際しては、不完全燃焼を防止するため、焼却温度を数百度以上に保つ熱源部(ヒータ)等を備えた焼却装置が供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-228127号公報(第3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、液体分を多く含む使用済み紙おむつを焼却処理するために、通常の焼却装置よりも高温の熱源部や熱風配管部等の付帯設備を具備する必要があることから、当該熱源部及び付帯設備の構造が複雑化するばかりか、焼却処理の燃料コストが増大する虞が生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、液体分を含む使用済み紙おむつを効率よく廃棄処理することができる紙おむつ処理装置及び紙おむつ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の紙おむつ処理装置は、
使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理装置であって、
前記紙おむつの表面材により被覆された高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の低い供給水を給水する給水部と、該給水部で給水された前記高分子吸収材と前記表面材とを分離する破砕部を有する分離部と、該分離部で前記表面材から分離された前記高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材溶液を供給する処理部と、を少なくとも備えることを特徴としている。
この特徴によれば、使用済み紙おむつの高分子吸収材に給水部にて、浸透圧の低い供給水を供給して十分に膨潤させ肥大化させることで、紙おむつの表面材と肥大化した高分子吸収材とを分離槽の破砕部により容易に分離することができるため、表面材から分離した高分子吸収材の内部の被処理水を浸透圧で外部に排出させて排水することができ、減容化した高分子吸収材を効率よく廃棄することができる。
【0008】
前記供給水は、真水であることを特徴としている。
この特徴によれば、入手簡単で余剰な添加材を含まず浸透圧の低い真水を高分子吸収材に吸収させることで、この高分子吸収材を容易且つ確実に膨潤させて肥大化できる。
【0009】
前記添加材は、陽イオンと陰イオンとがイオン結合した塩であることを特徴としている。
この特徴によれば、被処理液よりも浸透圧の高い添加材を多種多様の塩(えん)から採用することができる。
【0010】
前記添加材は、塩化ナトリウムであることを特徴としている。
この特徴によれば、被処理液よりも浸透圧の高い添加材を安価で且つ容易に入手することができる。
【0011】
前記給水部は、前記紙おむつが載置され前記分離部内に向けて下方に傾斜する載置面と、該載置面に向けて給水する複数の給水口とを有することを特徴としている。
この特徴によれば、載置面に載置させた紙おむつに給水口から給水することで、高分子吸収材の膨潤化と同時に分離槽へ送出することができるため、処理のハンドリングが容易である。
【0012】
前記分離部は、前記表面材から分離された前記高分子吸収材を前記処理部に移送する移送部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、分離部にて表面材から分離された高分子吸収材のみを分別して、処理部に移送することができる。
【0013】
前記分離部は、前記高分子吸収材から分離された前記表面材を前記分離部外に排出する排出部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、分離部にて高分子吸収材から分離され減容化された不織布からなる表面材、ビニール混合物等を分別して、排出部を介し可燃ごみとして廃棄できるほか、リサイクル材または燃料材として再利用できる。
【0014】
前記処理部は、前記高分子吸収材、該高分子吸収材の外部に浸透した前記被処理液、及び前記添加材を前記処理槽外に排出する排水部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、浸透圧により外部に導出した被処理液、減容化した高分子吸収材、及び添加材を、排水部を介し一緒に排出することできるため処理効率が高い。
【0015】
本発明の紙おむつ処理方法は、
使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理方法であって、
前記紙おむつの表面材により被覆された高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の低い供給水を給水する給水工程と、該給水工程で給水された前記高分子吸収材と前記表面材とを分離する分離工程と、該分離工程で前記表面材から分離された前記高分子吸収材に、該高分子吸収材が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材溶液を供給する処理工程と、を少なくとも備えることを特徴としている。
この特徴によれば、使用済み紙おむつの高分子吸収材に給水工程にて、浸透圧の低い供給水を供給して十分に膨潤させ肥大化させることで、紙おむつの表面材と肥大化した高分子吸収材とを分離工程にて容易に分離することができるため、処理工程にて表面材から分離した高分子吸収材の内部の被処理水を浸透圧で外部に排出させて排水することができ、減容化した高分子吸収材を効率よく廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は実施例における紙おむつ処理装置の給水槽及び分離槽を示す正面断面図であり、(b)は同じく一部断面平面図である。
図2】(a)は紙おむつ処理装置の処理槽を示す正面断面図であり、(b)は同じく平面断面図である。
図3】(a)は使用前の紙おむつを示す断面図であり、(b)は(a)の点線囲い部の部分拡大図である。
図4】(a)は給水槽内の給水状況を示す断面図であり、(b)は(a)の点線囲い部Aの部分拡大図であり、(c)は(a)の点線囲い部Bの部分拡大図である。
図5】分離槽内の紙おむつの分離状況を示す部分拡大図である。
図6】高分子吸収材の内外の液体流動のメカニズムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る紙おむつ処理装置及び紙おむつ処理方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0018】
実施例に係る紙おむつ処理装置及び紙おむつ処理方法につき、図1から図6を参照して説明する。先ず図1,2の符号1は、本発明の適用された紙おむつ処理装置を構成する機器である。
【0019】
図1~3に示されるように、本実施例1の紙おむつ処理装置1は、紙おむつ20に真水W(供給水)を供給する給水槽5(給水部)と、この給水槽5に連設され紙おむつ20を分離する分離槽10(分離部)と、この分離槽10に移送管34を介し接続された処理槽31(処理部)とから主として構成される。本実施例では、図1に示されるように、給水槽5及び分離槽10は一体の機器としてユニット化され、また図2に示されるように、処理槽31は当該機器とは別体に構成されている。以下、図1の左右方向を長手方向と称して説明する。
【0020】
紙おむつ処理装置1は、給水槽5内に使用済みの紙おむつを複数枚投入し、後述する給水槽5にて給水工程(図1,4参照)、分離槽10にて分離工程(図1,5参照)、そして処理槽31にて処理工程(図2,6参照)を順次行うことで、これらの紙おむつの表面材に内蔵され被処理水を吸収した高分子吸収材26を分離して減容化した後、添加材等の他の液体とともに排出するものである。
【0021】
図1に示されるように、紙おむつ処理装置1の給水槽5は、側端上部に上方を向いて開口した投入口2aを有する内空構造の筐体2と、投入口2aに連通する筐体2内の上部に設けられた散水部4(給水部)と、投入口2a及び散水部4の直下方に設けられた紙おむつ20が載置される載置部3とから主としてなる。載置部3は、紙おむつ20の載置面として、投入口2aから長手方向に遠ざかる(図示右方向)につれて下方に向け緩やかに傾斜する傾斜面3a、及びこの傾斜面3aに連なり長手方向に遠ざかるにつれて下方に向け急に傾斜する傾斜面3bが構成されており、この傾斜面2bは後述する分離槽10の入口部7に連設される。
【0022】
また散水部4は、図示しない上水管にバルブを介し接続され、投入口2aの前端部を幅方向に設けられるとともに、載置部3の傾斜面2bの上方の略全面を網羅するように長手方向及び幅方向に格子状に設けられた給水管6を有し、この給水管6の管壁には開口した複数の小径ノズルからなる給水口6aを備え、給水口6aより霧状若しくは小径の水滴状の真水Wを噴出可能に構成される。なお、紙おむつ20に給水する供給水としては、真水W(上水)が好ましいが、高分子吸収材26が吸収するものであればこれに限らず、所定量の添加材や混合物を含んだ溶液であってもよいし、後述すように、処理槽31内の被処理水を循環させて供給水として適用しても構わない。
【0023】
次に分離槽10は、長手方向の一端側(図示左側)が給水槽5の載置部3に内部で連なる内空構造の本体部12と、この本体部12内に長手方向に設けられ、両端が軸受けされた回転軸11と、この回転軸11の外周面に軸方向に沿って複数固定され、それぞれが回転軸11の外径方向に延出された破砕部13と、図示しない電源ケーブルに接続され、この回転軸11に回転駆動力を付与するモータ17と、から主として構成される。また、分離槽10の入口部7には、図示しない送風機に接続された送風口が回転軸11の軸方向に開口している。尚、本実施例の破砕部13は、入口部7において外径方向に張り出した歯部を有する破砕歯9及び、回転軸11の軸方向にわたって径方向の先端が板状に膨出したパドル14を有する攪拌パドルとして構成されている。尚、本発明の破砕部は、パドル14に限らず例えば、回転軸11の周囲を螺旋状に旋回しながら軸方向に延びる攪拌翼や、その一部に破砕用の歯を取り付けるなど、破砕対象となる紙おむつ20の形状に応じた種々の形態が構成されてもよい。
【0024】
また本体部12内には、これら回転軸11及び破砕部13の下半部を外嵌するように、小径で多数の貫通孔15aを有する略半円筒状のパンチングメタルからなるスクリーン部15が、回転軸11と同心位置に固定に設けられている。このスクリーン部15の内壁は破砕部13の径方向の先端に接触しない程度に近接している。
【0025】
更に本体部12内のスクリーン部15よりも下方には、長手方向の他端側に向けて緩やかに下方向に傾斜する樋状の排水受部16が設けられている。また、この排水受部16の他端には、移送ポンプ38が設けられるとともに、この移送ポンプ38には、本体部12内から排出される被処理水を処理槽31に移送する移送管34の一端が接続されている。なお、移送対象となる被処理水には排泄物等が含まれていることから、移送ポンプ38としては水密性が高く若干の固形分や、半固体状の物質も送出可能なマグネットポンプ等が好適である。
【0026】
また本体部12の長手方向の他端側(図示右側)には、その上部側壁に開口するとともに側方に延出した排出シュート18(排出部)が設けられており、この排出シュート18の下方には、紙おむつ20から高分子吸収材26が分離された表面材22,23及び本体部21,24を回収するための回収コンテナ19を設置可能に構成される。
【0027】
次に、処理槽31は、本実施例では内空構造を有し上面に開口部40a,40bが形成された略直方体形状の本体40からなり、この本体40の内部に形成され開口部40aに連通する混合槽41と、この混合槽41の内側の側壁42を介して隣接し、開口部40bに連通する反応槽43と、この反応槽43に側壁44を介して隣接し、開口部40bに連通する貯留槽45と、本体40の上部に設置された操作盤50とから主として構成される。処理槽31は、分離槽10から排出された被処理水に含まれる高分子吸収材から液体を分離促進した後に、被処理水を下水管等に排水するものである。尚、この処理槽31の適所に、図示しない散気装置を設け、被処理水に含まれる排泄物を曝気処理し生物的に浄化するように構成してもよい。
【0028】
混合槽41の上部側壁の適所には、この混合槽41に被処理水を移送するための移送管34の端部34aが接続されている。なお、この端部34aよりも僅かに下方位置に、被処理水に含まれる固形分を分離するための分離フィルタを敷設してもよい。また混合槽41の底部の適所には、この混合槽41内を攪拌するための攪拌ポンプ47が配設されている。
【0029】
混合槽41と反応槽43との間を区画する側壁42の適所には、複数の連通孔42aが貫通形成され、また反応槽43と貯留槽45との間を区画する側壁44の適所には、複数の連通孔44aが貫通形成されていることから、混合槽41内の被処理水が連通孔42aを介し反応槽43内に自然流入し、更に反応槽43内の被処理水が連通孔44aを介し貯留槽45内に自然流入するように構成され、すなわちこれら混合槽41、反応槽43及び貯留槽45内の水位は同レベルとなるように構成される。
【0030】
また貯留槽45の側壁44に対向する外壁近傍には、上下方向に排水管55が延設されており、この排水管55の上端部55aは、貯留槽45内の上部にて上方を向いて開口するとともに、排水管55の下端部は、処理槽31の本体40の外壁の下部を貫通して外方に延出し、図示しない放流槽ないし下水管に接続されている。またこの排水管55の下端部よりも下方の位置には、短管であるドレン管56が本体40の外壁を貫通して水平方向に延設されており、このドレン管56の一端が貯留槽45内に開口し、他端が開閉バルブ57を介し外方に延出開口し、図示しない下水管または放流槽に接続されている。
【0031】
また、混合槽41の上面には、その開口部40aを開閉可能な上蓋51が設けられるとともに、反応槽43及び貯留槽45の上面には、これらに共通の開口部40bを開閉可能な上蓋52が設けられる。
【0032】
次に、紙おむつ処理装置1を用いた紙おむつ処理方法の工程について説明する。
【0033】
先ず、図1及び図4に示されるように、給水工程について説明すると、複数枚の使用済み紙おむつを給水槽5の投入口2aに投入することで、緩斜面3a上に載置された紙おむつ20は、順次筐体2の内部の載置面3bに進入する。筐体2の内部では、載置面3b上の紙おむつ20に対し、給水管6を介し真水Wが散布される。給水管6に形成された複数の給水口6aは、載置面3bの略全面を網羅するように配されているため、紙おむつ20の表面に万遍なく真水Wが付着する。
【0034】
ここで、図3に示されるように、本発明に係る紙おむつ処理装置1の処理対象となる紙おむつ20の構造について説明する。紙おむつ20は、不織布等からなり使用者が装着する本体部21,24の略中央の内部に、排泄物等の液体を吸収する高分子吸収材25を備えるものであり、本体部21,24の内外両側の表面に、通水性を有する不織布等からなる表面材22,23が貼着されることで、本体部21,24と表面材22,23との間にて高分子吸収材25が被覆されている。なお、本体部21,24も表面材を構成している。
【0035】
高分子吸収材25は、その自重の数百倍から約千倍程度の水を吸収可能な高い吸水機能、及び吸収した水分を保持する水分保持機能を備えた親水性を有する樹脂からなり、その吸水前は図3(b)に示されるように、小径で多数個の顆粒状に形成されており、また紙おむつの使用後の高分子吸収材26は、図4(b),(c)に示されるように、その内部に吸収した液体分を包含するとともに膨潤することで、粘性の高いジェル材の様に一塊の半液体・半固体状に形成されるようになっている。
【0036】
但し、近年の紙おむつは吸水能力が高く、すなわち想定される通常の排泄量を十分に上回る吸水能力を備えていることから、多くの場合、使用後の紙おむつの高分子吸収材26は、その吸水能力の最大限に至るまでは吸水しておらず、換言すればある程度の余剰の吸水性能を残した状態で使用済み紙おむつとして廃棄される。
【0037】
本発明に係る紙おむつ処理装置1は、図4に示されるように、この使用済み紙おむつ20に対し、真水Wを供給することで、当該紙おむつの高分子吸収材26の吸水能力の最大限若しくはその近くまで積極的に吸水させ、後述する高分子吸収材26と本体部21,24及び表面材22,23との分離を容易にしたものである。
【0038】
載置面3b上の使用済み紙おむつ20に真水Wを供給すると、高分子吸収材26は、その吸水能力の最大まで給水し、紙おむつ20は十分に肥大化し且つその重量を増す。図4(c)に示されるように、肥大化した紙おむつ20’の外面は凸状に膨出している。
【0039】
すなわち、真水Wを十分に吸収する前の使用済み紙おむつ20は、その重量が十分でないことから、載置面3b上に比較的滞留し易いが、載置面3b上にて真水Wを漸次吸水しその重量を増すことで、図4(a)に示されるように、肥大化した紙おむつ20’は、上記したように傾斜した載置面3bの下方に滑り出したとき、慣性により止まり難くなり、載置面3b下方の分離槽10に移送され易くなる。
【0040】
使用済み紙おむつ20の高分子吸収材26を更に膨潤させて肥大化させるためには、清浄で且つ添加物等を含まない真水Wが最も好適であり、例えば水道水(上水)を使用すれば、容易且つ安価に真水Wを適用することができる。ただし供給水として、本実施例に係る真水Wに限られず、例えば、塩分や、除菌液、界面活性剤等を含有する洗浄液等の高分子を吸収しやすい添加材を水で希釈した溶液であってもよい。
【0041】
次に、図1及び図5に示されるように、分離工程について説明すると、分離槽10内に移送された紙おむつ20’は、入口部7を介しスクリーン部15内に導入され、入口部7の送風口(図示略)に供給される強風によって回転軸11の軸方向に押し出されるとともに、回転軸11回りに回転する破砕部13によって、スクリーン部15内を軸方向且つ外径方向に不規則的に押し出されるように移動する。
【0042】
図5に示されるように、紙おむつ20’は、この移動に伴い、破砕部13のパドル14の外端部14aとスクリーン部15の内壁15bとの狭隘な隙間に挟まれ、不織布等からなる表面材22,23が破砕される。この破砕に伴い、表面材22,23の内部にて排泄物に加え真水Wを吸収し十分に肥大化した膨潤状態の高分子吸収材26が、漸次、紙おむつ20’の本体部21,24や表面材22,23に形成された破損部Cを介し外部に露出して、紙おむつの本体部21,24から分離する。
【0043】
上述したように、分離槽10内の紙おむつ20’は、真水Wを吸収して肥大化しており、表面材22,23の外面には張力が作用していることから、真水Wの吸収前と比較して破砕され易くなっている。尚、真水Wを吸収する前の紙おむつ20は、表面材22,23の外面に張力が作用していないため、パドル14の外端部14aとスクリーン部15の内壁15bとの隙間に挟まれても、その形状を隙間に追従させて自由度高く変形してしまい破砕され難い。
【0044】
紙おむつ20’の外部に露出した膨潤状態の高分子吸収材26は、比重の大きい重量物であることから、遠心力によって外径方向に押し出されスクリーン部15に形成された貫通孔15aを通過し、スクリーン部15よりも下方の排水受部16を通じて移送ポンプ38により後述する処理槽31に移送される。また移送ポンプ38は、前述した高分子吸収材26に加え、幾分かの水分を移送することも可能である。
【0045】
一方で、高分子吸収材26から分離された紙おむつ20’の本体部21,24や表面材22,23等の固形分の残渣は、不織布やビニール混合物等の比重の小さい軽量物であることから、送風により回転軸11の軸方向に運ばれ、やスクリーン部15内をパドル14によって他端側に搬送された後、スクリーン部15内に連通する排出シュート18を介し、本体部12の外部に排出され、排出シュート18の下方に載置された回収コンテナ19内に投入され、回収されるようになっている。すなわち、本発明に係る分離槽10は、破砕部13及び送風機によって、被処理水を含む高分子吸収材26等の液体分と、この高分子吸収材26から分離された紙おむつ20’の本体部21,24や表面材22,23等の固形分とに分離されるように構成されている。
【0046】
次に、図2及び図6に示されるように、処理工程について説明すると、移送ポンプ38により高分子吸収材26が移送された混合槽41内に、塩(添加材:NaCl)が所定量導入される。混合槽41内に導入された液体と添加液が混合され、一定の高い塩分濃度を有する塩水(添加材溶液)が満たされる。なお添加材は、作業者が混合槽41の上蓋51を開放し開口部40aから投入してもよいし、予め所定濃度に希釈した添加材溶液を図示しない供給ポンプ等により供給してもよい。
【0047】
混合槽41内では、ジェル状の高分子吸収材26が塩水と接することで、高分子吸収材26の内部に吸収していた液体分が、浸透圧によって高分子吸収材26の外部に排出される。よってジェル状の高分子吸収材26は漸次減容化される(図6参照)。
【0048】
以下、膨潤状態の高分子吸収材26内外の液体流動の微視的なメカニズムを詳述すると、先ず図6(a)に示されるように、使用済み紙おむつに内蔵され、液体分を吸収した吸水後の高分子吸収材26は、微視的には、通水性を有する被覆膜28と、この被覆膜28によって内部に閉じ込められた排泄物の液体分Dと、から主として構成される。この吸水後の高分子吸収材26が、紙おむつの本体部21,24から分離することで、被覆膜28の内部に閉じ込められた液体分Dよりも浸透圧の高い塩分濃度の塩水(添加材溶液)に浸される。そうすると、被覆膜28の内部に閉じ込められた液体分Dが、浸透圧により被覆膜28を通じて外側に漸次流出する結果、肥大化していた高分子吸収材26の体積が小さくなるとともに、被覆膜28の外側に流出した液体分Dは、真水Wと塩Nとからなる塩水と混合してゆく。なお、略全量の液体分Dが外部に流出した後の高分子吸収材26は、例えば1ミリ以下程度の微細な形状に収縮される。
【0049】
次に混合槽41内の液体は、連通孔42aを通じ反応槽43に移送される。なお、連通孔42aは比較的小口径に形成されているため、混合槽41内のジェル状の高分子吸収材26は、この連通孔42aを通過可能な程度に減容化されるまでは反応槽43に移送されず、混合槽41内に留まり、上記した塩水による浸透作用を継続するように構成されている。
【0050】
なお、混合槽41と反応槽43との境界部に、上記した連通孔42aが形成された側壁42に替えて、或いは当該側壁42に加えて、例えば目の細かい格子状のスクリーンやパンチングメタルを配設しても構わない。
【0051】
次に反応槽43内では、上記した混合槽41内の作用と同様に、ジェル状の高分子吸収材26が塩水と接することで、高分子吸収材26の内部に吸収していた液体分が、浸透圧によって高分子吸収材26の外部に排出され、ジェル状の高分子吸収材26は更に減容化される。
【0052】
次に反応槽43内の液体は、側壁44の連通孔44aを通じ貯留槽45に移送される。なお、側壁44の連通孔44aは前述した側壁42の連通孔42aよりも更に小口径に形成されているため、反応槽43内のジェル状の高分子吸収材26は、この連通孔44aを通過可能な程度に減容化されるまでは貯留槽45に移送されず、反応槽43内に留まり、上記した塩水による浸透作用を継続するように構成されている。
【0053】
なお、反応槽43内では、図示しないブロアポンプより送気されたエアバブルを散気管を介し送出することで、反応槽43内の好気性微生物を活性化し、反応槽43内の液体の排泄物に含まれる有機物を生物学的に分解処理するようにしてもよい。
【0054】
上記した給水工程及び分離工程を経て随時、被処理水が移送管34を介し処理槽31に導入され、混合槽41、反応槽43及び貯留槽45の水位レベルが漸次高くなる。被処理水の水位レベルが排水管55の上端部55aに達すると、浄化処理後の被処理水の上澄み水が排水管55の上端部55a内に導入され、排水管55内を介し順次外部に排出されるように構成されている。また、貯留槽45内には、排水管55の上端部55aよりも僅かに低い高さ位置に、被処理水に含まれる固形分を分離するための図示しない分離フィルタを水平方向に敷設してもよく、このようにすることで、この分離フィルタを通過し得た被処理水の液体分及び所定径以下の固形分のみが上端部55a内に導入されるようになる。
【0055】
なお上記した側壁42の連通孔42a、側壁44の連通孔44aの構成、及び排水管55の上方に開口した上端部55aの構成により、混合槽41、反応槽43及び貯留槽45の水位レベルは、排水管55の上端部55aと略同じ若しくは低い同一レベルで安定するようになっている。
【0056】
また処理槽31における浄化処理の終了後は、ドレン管56の開閉バルブ57を開放操作することで、混合槽41、反応槽43及び貯留槽45内の被処理水の全量を外部に排出することができる。
【0057】
以上説明したように、本発明に係る紙おむつ処理装置1によれば、使用済み紙おむつ20の高分子吸収材26に給水槽5にて供給水を供給して十分に膨潤させ肥大化させることで、紙おむつ20の本体部21,24及び表面材22,23と肥大化した高分子吸収材26とを分離槽10の破砕部13により容易に分離することができるため、本体部21,24及び表面材22,23から分離した高分子吸収材26の内部の被処理水を浸透圧で外部に排出させて排水することができ、減容化した高分子吸収材26を効率よく廃棄することができる。
【0058】
また、供給水として、入手簡単で且つ余剰な添加材を含まず浸透圧の低い真水Wを高分子吸収材26に吸収させることで、この高分子吸収材26を容易且つ確実に膨潤させて肥大化できる。
【0059】
また添加材は、陽イオンと陰イオンとがイオン結合した塩(えん)であることで、被処理液よりも浸透圧の高い添加材を多種多様の塩(えん)から採用することができる。添加材の一例として、好適には、無機凝集剤としても有効性が認められている硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の多価イオンを含む添加材溶液を採用することができ、被処理水のpH等の条件に応じた無機凝集剤を選択することが好ましい。これは、排泄物等の被処理水中に懸濁している多くの粒子の表面は、負の電荷が帯電していることから、上記した多価の陽イオンを含む添加材を供給することで、荷電中和を積極的に行うことができるためと考えられる。
【0060】
更に添加材は、塩化ナトリウム(NaCl)であることで、排泄物の液体Dよりも浸透圧の高い添加材を安価で且つ汎用品であることから容易に入手することができる。尚、添加材として、上記した硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の無機凝集材の場合、水で希釈した比較的低濃度の溶液でも高い効果を期待できることから、被処理水の水質条件によっては、本実施例の塩化ナトリウム(NaCl)よりも更に安価にできる場合もあると考えられる。
【0061】
また、給水槽5は、紙おむつ20が載置され分離槽10内に向けて下方に傾斜する載置面3a,3bと、載置面3a,3bに向けて給水する複数の給水口6aとを有することで、載置面3a,3bに載置させた紙おむつ20に給水口6aから給水し、高分子吸収材26の膨潤化と同時に分離槽10へ送出することができるため、処理のハンドリングが容易である。
【0062】
また、分離槽10は、本体部21,24及び表面材22,23から分離された高分子吸収材26を処理槽31に移送する移送ポンプ38(移送部)を有することで、分離槽10にて本体部21,24及び表面材22,23から分離された高分子吸収材26のみを分別して処理槽31に移送することができる。
【0063】
また、分離槽10は、高分子吸収材26から分離された本体部21,24及び表面材22,23を分離槽10外に排出する排出シュート18(排出部)を有することで、分離槽10にて高分子吸収材26から分離され減容化された可燃性の不織布からなる本体部21,24及び表面材22,23、ビニール混合物等を分別して排出シュート18を介し可燃ごみとして廃棄できるほか、リサイクル材または燃料材として再利用できる。
【0064】
また、処理槽31は、高分子吸収材26、該高分子吸収材26の外部に浸透した被処理液、及び塩N(添加材)を処理槽31外に排出する排水管55(排水部)を有することで、浸透圧により外部に導出した被処理液、減容化した高分子吸収材26、及び塩N(添加材)を、排水管55を介し一緒に排出することできるため処理効率が高い。
【0065】
また、本発明に係る紙おむつ処理方法によれば、使用済み紙おむつ20の高分子吸収材26に給水工程にて、浸透圧の低い供給水を供給して十分に膨潤させ肥大化させることで、紙おむつ20’の本体部21,24及び表面材22,23と肥大化した高分子吸収材26とを分離工程にて容易に分離することができるため、処理工程にて本体部21,24及び表面材22,23から分離した高分子吸収材26の内部の被処理水を浸透圧で外部に排出させて排水することができ、減容化した高分子吸収材26を効率よく廃棄することができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施例では、紙おむつ20の高分子吸収材26と本体部21,24及び表面材22,23とを分離する破砕部13として、攪拌パドルが構成されているが、これに限らず例えば、分離槽内に破砕部として鋭利なカッタが設けられ、該カッタにより本体部21,24及び表面材22,23を切削することで高分子吸収材26を分離するようにしてもよい。
【0068】
また例えば、前記実施例では、分離槽10内で分離された高分子吸収材26を処理槽31に移送し、この処理槽31内に浸透圧の高い添加材溶液を添加しているが、これに限らず例えば、分離槽10内で分離された高分子吸収材26を移送することなく、当該分離槽10内に添加材溶液を添加して、その後に処理槽31に移送してもよいし、若しくは、添加材溶液を添加した分離槽10内にて高分子吸収材26の内部の被処理水を外部に排出するようにしてもよい。
【0069】
また例えば、前記実施例では、処理槽31内にて処理された被処理水を、排出管55を介し下水として排出しているが、これに限らず例えば、処理槽31内にて処理された被処理水の一部を給水槽5に循環させ、供給水として適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 紙おむつ処理装置
2 筐体
2a 投入口
3 載置部
3a,3b 載置面
4 散水部
5 給水槽(給水部)
6 給水管
6a 給水口
9 破砕歯
10 分離槽(分離部)
11 回転軸
12 本体部
13 破砕部
14 パドル
15 スクリーン部
18 排出シュート(排出部)
21,24 本体部
22,23 表面材
25,26 高分子吸収材
31 処理槽
34 移送管
38 移送ポンプ(移送部)
40 本体
41 混合槽
43 反応槽
45 貯留槽
55 排水管(排水部)
W 真水(供給水)
N 塩化ナトリウム(添加材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6