(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】窒化ホウ素合金接触層を有するIII族窒化物半導体デバイス及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20220909BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20220909BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
H01L21/28 301R
H01L33/32
H01L31/10 H
H01L21/28 301B
(21)【出願番号】P 2020542216
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2018057982
(87)【国際公開番号】W WO2019077474
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-14
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319003493
【氏名又は名称】キング・アブドゥッラー・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハイディン・サン
(72)【発明者】
【氏名】シアオハン・リ
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-332362(JP,A)
【文献】特開2000-332295(JP,A)
【文献】特開2001-351506(JP,A)
【文献】特開2007-294877(JP,A)
【文献】特開平04-029375(JP,A)
【文献】特表2015-513798(JP,A)
【文献】特開2000-252230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 33/32
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のIII族窒化物接触層(310、320)に隣接する第1のIII族窒化物接触層(310、320)、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)に配置される第1の金属コンタクト(325A、325B)、及び、前記第2のIII族窒化物接触層(310、320)に配置される第2の金属コンタクト(325A、325B)を備えるIII族窒化物半導体デバイス(300A、300B、300C)を形成する方法であって、
前記方法が、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)及び前記第1の金属コンタクト(325A、325B)の仕事関数を決定する段階(205)であって、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)の決定された仕事関数が、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)のIII族元素に基づく、仕事関数を決定する段階(205)と、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)及び前記第1の金属コンタクト(325A、325B)の決定された仕事関数に基づいて、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)の仕事関数が調整されるべきであることを決定する段階(210)と、
前記第2のIII族窒化物接触層(310、320)に隣接する前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)を含む前記III族窒化物半導体デバイス(300A、300B、300C)を形成する段階(215)であって、前記第1の金属コンタクト(325A、325B)が、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)に配置され、前記第2の金属コンタクト(325A、325B)が、前記第2のIII族窒化物接触層(310、320)に配置される、前記III族窒化物半導体デバイス(300A、300B、300C)を形成する段階(215)と、
を含み、
前記形成されたIII族窒化物半導体デバイス(300A、300B、300C)の第1のIII族窒化物接触層(310、320)が、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)のIII族元素に基づく前記第1の
金属コンタクト(325A、325B)の決定された仕事関数に対して、前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)の仕事関数を調整する量のホウ素を有する窒化ホウ素合金である、
III族窒化物半導体デバイス(300A、300B、300C)を形成する方法。
【請求項2】
前記第2のIII族窒化物接触層の仕事関数及び前記第2の金属コンタクトの仕事関数を決定する段階と、
前記第2のIII族窒化物接触層及び前記第2の金属コンタクトの決定された仕事関数に基づいて、前記第2のIII族窒化物接触層の仕事関数が調整されるべきであることを決定する段階と、
をさらに含み、
前記形成されたIII族窒化物半導体デバイスの第2のIII族窒化物接触層が、前記第2のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づく前記第2の
金属コンタクトの決定された仕事関数に対して、前記第2のIII族窒化物接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を有する窒化ホウ素合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のIII族窒化物接触層のIII族元素が、ガリウム、インジウム又はアルミニウムのうちの1つ以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のIII族窒化物接触層のIII族元素が、ガリウム、インジウム又はアルミニウムのうちの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記III族窒化物半導体デバイスの形成が、前記第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に半導体層を形成する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記III族窒化物半導体デバイスの形成が、前記第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に2つの半導体層のヘテロ接合を形成する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の金属コンタクトの決定された仕事関数、及び、前記第1のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づく前記第1のIII族窒化物接触層の決定された仕事関数に基づいて、前記第1のIII族窒化物接触層と、前記第1の金属コンタクトとの間にショットキー接触が形成され、
前記第1の金属コンタクトの決定された仕事関数、及び、前記窒化ホウ素合金に基づく前記第1のIII族窒化物接触層の決定された仕事関数に基づいて、前記形成された第1のIII族窒化物接触層と、前記形成された第1の金属コンタクトとの間にオーミック接触が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の金属コンタクトの決定された仕事関数、及び、前記第2のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づく前記第2のIII族窒化物接触層の決定された仕事関数に基づいて、前記第2のIII族窒化物接触層と、前記第2の金属コンタクトとの間にショットキー接触が形成され、
前記第2の金属コンタクトの決定された仕事関数、及び、前記窒化ホウ素合金に基づく前記第2のIII族窒化物接触層の決定された仕事関数に基づいて、前記形成された第2のIII族窒化物接触層と、前記形成された第2の金属コンタクトとの間にオーミック接触が形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体デバイスが、p-nダイオードであり、前記第1のIII族窒化物接触層が、窒化ホウ素アルミニウムを含み、前記第2のIII族窒化物接触層が、窒化アルミニウムガリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のIII族窒化物接触層が、B
0.14Al
0.86Nを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のIII族窒化物接触層(310、320)と、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)に配置された第1の金属コンタクト(325A、325B)と、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)に隣接して配置された第2のIII族窒化物接触層(310、320)と、
前記第2のIII族窒化物接触層(310、320)に配置された第2の金属コンタクト(325A、325B)と、
を備え、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)が、ホウ素、窒化物及び追加のIII族元素を有する窒化ホウ素合金を含み、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)が、前記追加のIII族元素及び窒化物を含む接触層と比較して、前記第1の
III族窒化物接触層(310、320)の仕事関数を調整する量のホウ素を備える、
半導体デバイス(300A、300B、300C)。
【請求項12】
前記第2のIII族窒化物接触層が、ホウ素、窒化物及びさらなるIII族元素を有する窒化ホウ素合金を含み、前記第2のIII族窒化物接触層が、前記さらなるIII族元素及び窒化物を含む接触層と比較して、前記第2の
III族窒化物接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を含む、請求項11に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に介在層がなく、前記半導体デバイスが、p-nダイオードである、請求項11に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に半導体層をさらに備える、請求項11に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に2つの半導体層のヘテロ接合をさらに含む、請求項11に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
第1のIII族窒化物接触層(310、320)を形成する段階(505)と、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)に隣接する第2のIII族窒化物接触層(310、320)を形成する段階(510)と、
前記第1のIII族窒化物接触層(310、320)に第1の金属コンタクト(325A、325B)を形成する段階(515)と、
前記第2のIII族窒化物接触層(310、320)に第2の金属コンタクト(325A、325B)を形成する段階(520)と、
を含み、
前記第1及び第2のIII族窒化物接触層(310、320)が両方とも、ホウ素、窒化物、及び、少なくとも1つの追加のIII族元素を含み、前記少なくとも1つの追加のIII族元素が、前記第1及び第2のIII
族窒化物接触層(310、320)用のものとは異なり、
前記第1のIII族窒化物接触層(
310)が、ある量のホウ素で形成され、それにより、前記第1のIII族窒化物接触層(310)が、前記少なくとも1つの追加のIII族元素及び窒化物を含む層と比較して調整された仕事関数を有する、
III族窒化物半導体デバイス(300A、300B、300C)を形成する方法。
【請求項17】
前記第2のIII族窒化物接触層が、ある量のホウ素で形成され、それにより、前記第2のIII族窒化物接触層が、前記少なくとも1つの追加のIII族元素及び窒化物を含む層と比較して調整された仕事関数を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のIII族窒化物接触層が、窒化ホウ素アルミニウムを含み、前記第2のIII族窒化物接触層が、窒化ホウ素ガリウムを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に半導体層を形成する段階をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年10月16日に出願された「BORON CONTAINING III-NITRIDE METAL CONTACT LAYERS」という名称の米国仮特許出願第62/572,672号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
開示される主題の実施形態は、概して、ホウ素を含まない接触層の仕事関数に対して接触層の仕事関数を調整するための窒化ホウ素合金を有する少なくとも1つの接触層を有するIII族窒化物半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
III窒化物半導体(窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化ホウ素(BN)及びそれらの合金)は、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、光検出器などの光電子デバイスの製造、及び、高電子移動度トランジスタ(HEMT)などの高出力電子機器用の重要な材料として登場した。接触抵抗が大きいと接触界面にわたって電圧降下が大きくなり、電力効率が低下し、熱問題によりデバイスの信頼性が低下するため、III族窒化物デバイスの電気的及び光学的性能をさらに向上させるには、低抵抗オーミック接触の形成が不可欠である。
【0004】
ドープされた半導体層上の金属コンタクトが異なる接触障壁を持つショットキー接触を形成するか、オーミック接触を形成するかは、金属コンタクト及びドープされた半導体層の仕事関数(Φ)に大きく依存する。仕事関数は、真空準位に対するフェルミレベル(Ef)間の距離を表し、これは、伝導帯端と価電子帯端の位置、及びドーピングの影響を受ける。
【0005】
図1Aに示すように、金属コンタクトの仕事関数がn型半導体接触層の仕事関数よりも大きい場合、ショットキー接触が形成され、金属コンタクトからn型半導体への電子の流れが妨げられる。伝導帯端又はフェルミレベルが低いためにn型半導体接触層の仕事関数が増加すると、ショットキー障壁又はコンタクト障壁が減少し、金属コンタクトの電子のn型半導体接触層への流れが増加する。
図1Bに示すように、n型半導体接触層の仕事関数が金属コンタクトの仕事関数以上である場合、オーミック接触が形成され、金属コンタクトからn型半導体接触層への電子の流れが可能になる。
【0006】
p型半導体接触層は、n型半導体接触層とは逆の振る舞いをする。具体的には、
図1Cに示すように、金属コンタクトの仕事関数がp型半導体接触層の仕事関数よりも小さい場合、ショットキー接触が形成され、金属コンタクトからp型半導体接触層への正孔の流れを妨げる。価電子帯端又はフェルミ準位が高いためにp型半導体接触層の仕事関数が減少すると、ショットキー障壁又はコンタクト障壁が減少し、金属コンタクトからn型半導体接触層への正孔の流れが増加する。さらに、
図1Dに示すように、金属コンタクトの仕事関数がp型半導体接触層の仕事関数以上の場合、オーミック接触が形成され、金属コンタクトからのp型半導体接触層への流れが可能になる。
【0007】
従って、接触層上に配置された金属コンタクトとの接触障壁が低減されたn型及びp型半導体接触層を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、III族窒化物半導体デバイスを形成する方法がある。この方法は、第1のIII族窒化物接触層及び第1の金属コンタクトの仕事関数を決定する段階であって、前記第1のIII族窒化物接触層の決定された仕事関数が、前記第1のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づく、仕事関数を決定する段階と、前記第1のIII族窒化物接触層及び前記第1の金属コンタクトの決定された仕事関数に基づいて、前記第1のIII族窒化物接触層の仕事関数が調整されるべきであることを決定する段階と、第2のIII族窒化物接触層に隣接する前記第1のIII族窒化物接触層を含む前記III族窒化物半導体デバイスを形成する段階であって、前記第1の金属コンタクトが、前記第1のIII族窒化物接触層に配置され、前記第2の金属コンタクトが、前記第2のIII族窒化物接触層に配置される、前記III族窒化物半導体デバイスを形成する段階と、を含み、前記形成されたIII族窒化物半導体デバイスの第1のIII族窒化物接触層は、前記第1のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づく前記第1の金属層の決定された仕事関数に対して、前記第1のIII族窒化物接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を有する窒化ホウ素合金である。
【0009】
別の実施形態によれば、第1のIII族窒化物接触層と、前記第1のIII族窒化物接触層に配置された第1の金属コンタクトと、前記第1のIII族窒化物接触層に隣接して配置された第2のIII族窒化物接触層と、前記第2のIII族窒化物接触層に配置された第2の金属コンタクトと、を備え、前記第1のIII族窒化物接触層は、追加のIII族元素を有する窒化ホウ素合金を含み、前記第1のIII族窒化物接触層は、前記追加のIII族元素及び窒化物を含む接触層と比較して前記第1の窒化ホウ素合金接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を含む、半導体デバイスがある。
【0010】
さらなる実施形態によれば、III族窒化物半導体デバイスを形成する方法がある。この方法は、第1のIII族窒化物接触層を形成する段階と、前記第1のIII族窒化物接触層に隣接する第2のIII族窒化物接触層を形成する段階と、前記第1のIII族窒化物接触層に第1の金属コンタクトを形成する段階と、前記第2のIII族窒化物接触層に第2の金属コンタクトを形成する段階と、を含み、前記第1及び第2のIII族窒化物接触層が、異なる窒化ホウ素合金である。
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、1つ以上の実施形態を示し、詳細な説明とともにこれらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】金属からn型半導体接合へのショットキー接触の図である。
【
図1B】金属からn型半導体接合へのオーミック接触の図である。
【
図1C】金属からp型半導体接合へのショットキー接触の図である。
【
図1D】金属からp型半導体接合へのオーム接触の図である。
【
図2】実施形態に係るIII族窒化物半導体デバイスを形成する方法のフローチャートである。
【
図3A】実施形態によるIII族窒化物半導体デバイスのブロック図である。
【
図3B】実施形態によるIII族窒化物半導体デバイスのブロック図である。
【
図3C】実施形態によるIII族窒化物半導体デバイスのブロック図である。
【
図4】実施形態によるIII族窒化物材料間の価電子及び伝導帯オフセットのグラフである。
【
図5】実施形態によるIII族窒化物半導体デバイスを形成する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な実施形態の以下の説明は、添付の図面を参照する。種々の図面の同じ参照番号は、同一又は類似の要素を識別する。以下の詳細な説明は、本発明を限定しない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。以下の実施形態は、簡単にするために、III族窒化物半導体デバイスの用語及び構造に関して説明される。
【0014】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」又は「実施形態では」という句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0015】
図2は、実施形態によるIII族窒化物半導体デバイスを形成する方法のフローチャートである。最初に、第1のIII族窒化物接触層及び第1の金属コンタクトの仕事関数が決定される(ステップ205)。第1のIII族窒化物接触層の決定された仕事関数は、第1のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づく。次に、第1のIII族窒化物接触層及び第1の金属コンタクトの決定された仕事関数に基づいて、第1のIII族窒化物接触層の仕事関数を調整すべきであることが決定される(ステップ210)。III族窒化物半導体デバイスは、第2のIII族窒化物接触層に隣接する第1のIII族窒化物接触層、第1のIII族窒化物接触層に配置された第1の金属コンタクト、及び、第2のIII族窒化物接触層に配置された第2の金属コンタクトを備えて形成される(ステップ215)。形成されたIII族窒化物半導体デバイスの第1のIII族窒化物接触層は、第1のIII族窒化物接触層のIII族元素に基づいて第1の金属層の決定された仕事関数に対して第1のIII族窒化物接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を有する窒化ホウ素合金である。第1のIII族窒化物接触層のIII族元素は、ガリウム、インジウム又はアルミニウムのうちの1つ以上であり得る。
【0016】
第1のIII族窒化物接触層の仕事関数を調整するために使用されるホウ素の量は、様々なホウ素組成で異なる層を最初に成長させることによって決定することができる。次に、伝導帯の最小値、価電子帯の最大値、及びこれらの層の仕事関数の実験的測定を実行することができる。次に、この仕事関数を、金属コンタクトに使用されている金属の仕事関数と比較することができる。接触層がp型かn型かによって、異なる仕事関数に対応する異なるホウ素組成が決定される。これは一度だけ実行でき、実験測定からの情報を使用して、同じデバイス又は異なるデバイスの異なる接触層の仕事関数を調整することができる。あるいは、接触層のホウ素組成は、理論計算によって決定することができる。
【0017】
窒化ホウ素合金コンタクト層が、少なくとも0.1%のホウ素を含み、これが、ホウ素が意図的に含まれていることを示しており、デバイスの形成中に発生する不純物又は汚染物質として、ホウ素が接触層の一部であることを示していないことを理解されたい。さらに、III族元素(又は、複数のIII族元素)には、少なくとも0.1%のIII族元素(又は、複数のIII族元素の各々)が含まれ、これは、III族元素(又は、複数のIII族元素)が意図的に含まれていることを示しており、III族元素(又は、複数のIII族元素)が、デバイスの形成中に発生する不純物又は汚染物質として、接触層の一部であることを示していない。
【0018】
以下で論じるように、第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に配置された1つ以上の半導体層があってもよい。従って、隣接して形成される語句は、第1及び第2のIII族窒化物接触層の間の直接的な物理的接続、並びに、第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に挿入される1つ以上の半導体層の両方を覆うものとして理解されるべきである。従って、
図2の方法は、また、第1及び第2のIII窒化物接触層の間に半導体層を形成する段階、第1及び第2のIII窒化物接触層の間に2つの半導体層のヘテロ接合を形成する段階、第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に2つの半導体層のホモ接合を形成する段階、又は、第1及び第2のIII族窒化物接触層の間に3つ以上の半導体層を形成する段階を含むことができる。
【0019】
別のIII族元素を有するIII族窒化物合金層にホウ素を含めることにより、別のIII族元素及び窒化物を含む層、すなわちホウ素を含まない層と比較して、仕事関数が調整される。従って、例えば、別のIII族元素とその上に金属コンタクトを有する窒化物とを含む層は、ショットキー接触を形成し得る一方で、この層が窒化ホウ素合金接触層になるように、この層に対するホウ素を添加が、金属コンタクトとオーミック接触を形成することができる。ホウ素の追加により、接触層と金属コンタクトとの間の接触をショットキー接触からオーミック接触に変える必要がないことを認識すべきであり、追加のホウ素は、窒化ホウ素合金層と金属コンタクトとの間の接触障壁を減らすことができる一方で、ショットキー接触を形成する。減少した接触障壁は、半導体デバイスの全体的な性能を向上させる。具体的には、ホウ素を含まないIII窒化物接触層の仕事関数に対する金属コンタクトの仕事関数は、通常、大きな接触抵抗をもたらし、金属コンタクトとIII族窒化物接触層との間の界面にわたる大きな電圧降下をもたらし、これにより、電力効率が低く、信頼性が低下した半導体デバイスをもたらす(大きな接触抵抗から発生する追加の熱により)。従って、接触層と金属コンタクトとの間にショットキー接点が形成されている場合でも、金属コンタクトとIII族窒化物接触層との間の界面にわたる電圧降下が、ホウ素の追加により減少するので、デバイス全体の性能は、接触層にホウ素を添加することによって改善することができる。
【0020】
従って、第1及び/又は第2のドープされたIII族窒化物接触層がn型ドープされた接触層であるとき、第1及び/又は第2のIII族窒化物接触層中のホウ素の量は、第1及び第2のIII族窒化物接触層がそれぞれ、ホウ素を有しない接触層より大きな仕事関数を有するように選択される。同様に、第1及び/又は第2のIII族窒化物接触層がp型ドープ接触層であるとき、第1及び/又は第2のIII族窒化物合金接触層中のホウ素の量は、第1及び/又は第2のIII族窒化物接触層がそれぞれ、ホウ素を有しない接触層よりも小さな仕事関数を有するように選択される。
【0021】
図2の方法は、この層の仕事関数を調整する量のホウ素を有する第1のIII族窒化物接触層として説明されているが、この方法はまた、この層の仕事関数を調整する量のホウ素を有する第2のIII族窒化物接触層を含み得る。この場合、
図2の方法は、第2のIII族窒化物接触層の仕事関数及び第2の金属コンタクトの仕事関数を決定する段階と、第2のIII族窒化物接触層及び第2の金属コンタクトの決定された仕事関数に基づいて、第2のIII族窒化物接点層の仕事関数を調整すべきであることを決定する段階と、を含む。形成されたIII族窒化物半導体デバイスの第2のIII族窒化物接触層は、III族窒化物接触層のIII族元素に基づく第2の金属層の決定された仕事関数に対して第2のIII族窒化物接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を有する窒化ホウ素合金である。
【0022】
第1及び第2のIII族窒化物接触層の組成は、形成される特定の半導体デバイスに応じて変化する。例えば、第1及び/又は第2のIII族窒化物接触層は、以下を含む任意のタイプの窒化ホウ素合金を含むことができる:窒化ホウ素アルミニウム、窒化ホウ素ガリウム、窒化ホウ素インジウム、窒化ホウ素アルミニウムガリウム、窒化ホウ素インジウムガリウム、窒化ホウ素アルミニウムインジウム、及び、窒化ホウ素アルミニウムガリウムインジウム。特定の一例では、第1及び/又は第2のIII族窒化物接触層は、B0.14Al0.86Nを含むことができる。
【0023】
図3Aから
図3Cは、実施形態によるラテラルメサ型設計を有するIII族窒化物半導体デバイスのブロック図である。
図3Aに示す半導体デバイス300Aは、基板305に配置された第1のIII族窒化物接触層310と、第1のIII族窒化物接触層310に配置された第2のIII族窒化物接触層320とを含む。第1の金属コンタクト325Aは、第1のIII族窒化物接触層310に配置され、第2の金属コンタクトは、第2のIII族窒化物接触層320に配置される。第1のIII族窒化物接触層305及び第2のIII族窒化物接触層310のうちの1つは、窒化ホウ素合金を含み、追加のIII族元素を含む。第1及び第2のIII族窒化物接触層の一方は、追加のIII族元素及び窒化物を含む接触層と比較して、第1の窒化ホウ素合金接触層の仕事関数を調整する量のホウ素を含む。半導体デバイス300Aは、第1及び第2のIII族窒化物接触層の一方がp型ドープされ、他方がn型ドープされたp-n型ダイオードである。従って、第1及び第2のIII族窒化物接触層は、少なくとも1つの異なるIII族元素を含むことができる。
【0024】
図3B及び3Cは、第1及び第2のIII族窒化物接触層310及び320の間に挿入された1つ以上の半導体層を有する半導体デバイス300B及び300Cを示す。具体的には、
図3Bでは、半導体層315は、第1のIII族窒化物接触層310と第2のIII族窒化物接触層320との間に挿入される。従って、この例では、半導体層315は、第1のIII族窒化物接触層310に配置され、第2のIII族窒化物接触層は、半導体層315に配置される。
図3Cでは、第1の半導体層315A及び第2の半導体層315Bのヘテロ接合は、第1の接触層310と第2の接触層320との間に挿入することができる。従って、この例では、第1の半導体層315Aは、第1のIII族窒化物接触層310に配置され、第2のIII族窒化物接触層320は、第2の半導体層320に配置される。半導体層315(又は、層315A及び315B)並びに第1の接触層310及び第2の接触層315の組成に応じて、半導体デバイス300B及び300Cは、光電子デバイス(例えば、発光ダイオード、レーザー、光検出器など)、又は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり得る。当業者は、半導体層315(又は、層315A及び315B)並びに第1の接触層310及び第2の接触層315の組成を選択することによって、光電子デバイス又は高電子移動度トランジスタを形成する方法を理解するであろう。
【0025】
図3Aから
図3Cは、第1及び第2のIII族窒化物接触層並びに第1及び第2の金属コンタクトを含むものとして説明されている。第1及び第2のIII窒化物接触層並びに第1及び第2の金属コンタクトは、
図2に示される方法に関連して上で説明した第1及び第2のIII窒化物接触層並びに第1及び第2の金属コンタクトに直接的に対応する必要はない。従って、例えば、
図2に示される方法の第1のIII族窒化物接触層及び第1の金属コンタクトは、
図3Aから
図3Cにおける第2のIII族窒化物接触層及び第2の金属コンタクトに対応することができ、
図2に示される方法の第2のIII族窒化物接触層及び第2の金属コンタクトは、
図3Aから
図3Cにおける第1のIII族窒化物接触層及び第1の金属コンタクトに対応することができる。
図3Aから
図3Cは、基板305を有する半導体デバイスで示されているが、基板を省略して、第1のIII族窒化物接触層310が半導体デバイスの基板として機能するようにすることができる。
【0026】
図3Aから
図3Cが、一般的なIII族窒化物半導体デバイスを示し、半導体デバイスが、発光ダイオード、レーザー、光検出器及び高電子移動度トランジスタなどのデバイスのタイプに応じて追加の層を含み得ることを認識されたい。例えば、半導体デバイスは、接触抵抗を低減するために、第2のIII族窒化物接触層320に配置されたキャップ層を含むことができる。III族窒化物半導体300A、300B、300Cが発光ダイオードであるとき、電子ブロッキング層は、III族窒化物半導体層315(又は、315A及び315B)の頂部に配置することができ、第2のIII族窒化物接触層320は、電子ブロッキング層に配置することができる。
【0027】
基板305と接触層310との間に任意に、例えば、クラッド層及び超格子層などの1つ以上の層が配置され得ることに留意されたい。従って、「上に配置された」という語句は、層間の直接的な物理的接触として理解されるべきであり、「隣接して配置された」という語句は、層間の直接的な物理的接触として理解されるべきであり、又は、2つの層の間に介在する1つ以上の層があり得ると理解されるべきである。
【0028】
図3Aから
図3Cは、ラテラルメサ型設計を有する半導体を示しているが、これらの半導体デバイスは、デバイスの2つの対向する垂直側面に形成されたコンタクトを有する垂直デバイスとして実装することもできる。
【0029】
III窒化物接触層の仕事関数の調整は、
図4に示す価電子帯及び伝導帯のオフセットを比較することで理解することができる。図示のように、窒化アルミニウム接触層にホウ素を追加して窒化ホウ素アルミニウム接触層を形成すると、価電子帯の最大値が窒化アルミニウム接触層に比べて真空準位に近くなる。これは、仕事関数を減らすことができるため、p型III窒化物接触層に特に有用である。
【0030】
図5は、実施形態によるIII族窒化物半導体デバイスを形成する方法のフローチャートである。最初に、第1のIII族窒化物接触層が形成される(ステップ505)。次に、第2のIII族窒化物接触層が第1のIII族窒化物接触層に隣接して形成される(ステップ510)。第1のIII族窒化物接触層に第1の金属コンタクトが形成され(ステップ515)、第2のIII族窒化物接触層に第2の金属接触が形成される(ステップ520)。第1及び第2のIII族窒化物接触層は、異なる窒化ホウ素合金である。
【0031】
例示的な実施形態がIII族窒化物半導体デバイスに関連して説明されたが、開示された窒化ホウ素合金接触層を他のタイプの半導体デバイスで使用して、金属コンタクトの仕事関数に対して接触層の仕事関数を調整することができる。さらに、実施形態が、発光ダイオード又は高電子移動度トランジスタであるIII族窒化物半導体デバイスに関連して説明されたが、III族窒化物半導体デバイスは、代替として、レーザーダイオード又は光検出器を含む別のタイプの光電子デバイスであり得る。
【0032】
開示された実施形態は、半導体及び製造方法を提供する。この説明が、本発明を限定することを意図していないことを理解されたい。それどころか、例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲に含まれる代替物、修正物及び等価物をカバーすることを意図している。さらに、例示的な実施形態の詳細な説明では、特許請求の範囲に記載される発明の包括的な理解を与えるために、多数の特定の詳細が述べられている。しかしながら、当業者は、そのような特定の詳細なしに様々な実施形態が実施され得ることを理解するであろう。
【0033】
例示的な本実施形態の特徴及び要素が、特定の組合せで実施形態に記載されているが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素なしで単独で、又は、本明細書で開示される他の特徴及び要素の有無にかかわらず、様々に組み合わせて使用することができる。
【0034】
ここで記載された詳細な説明は、開示された主題の例を使用して、任意のデバイス又はシステムの作成及び使用、並びに、組み込まれた方法の実行を含む例を当業者が実施できるようにする。主題の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【符号の説明】
【0035】
300A III族窒化物半導体デバイス
300B III族窒化物半導体デバイス
300C III族窒化物半導体デバイス
305 基板
310 III族窒化物接触層
315 半導体層
315A 半導体層
315B 半導体層
320 III族窒化物接触層
325A 金属コンタクト
325B 金属コンタクト