(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】自動車両のセンサー装置用の磁石組立体、磁石組立体を有したセンサー装置、およびセンサー装置を有した自動車両
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
(21)【出願番号】P 2020562651
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2019061605
(87)【国際公開番号】W WO2019215111
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】102018111046.4
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】エッケハルト、フレーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダービト、ネムル
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014688(JP,A)
【文献】特開2016-206093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052077(US,A1)
【文献】国際公開第2014/046076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
G01B 7/30
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両のステアリングシャフトの回転状態を特徴付ける測定変数を検出するためのセンサー装置用の磁石組立体(10,10’,10”)であって、
- 当該磁石組立体(10,10’,10”)は、スリーブ(11)と、当該スリーブ(11)に対して形状結合式に連結された磁気要素(12,12’,12”)とを有し、
- 前記スリーブ(11)は、当該磁石組立体(10,10’,10”)を前記ステアリングシャフトの第1部分へ連結するように設計されると共に、少なくとも1つの止めフランジ(11C)を有し、その止めフランジ(11C)は、前記磁気要素(12,12’,12”)を第1軸線方向(A1)で軸線方向に固定するために、半径方向平面内で半径方向の外側へ広がっており、
- 前記磁気要素(12,12’,12”)は、スリーブ形状もしくは環状設計のものであるか、または磁性リングもしくは磁性スリーブであって、第1端側(S1)と、第2端側(S2)と、それらの側同士の間の磁気的に有効な磁性部分(12A)とを有し、
- 前記磁気要素(12,12’,12”)は、前記スリーブ(11)に対して同心状に配置されると共に、自らの第1端側(S1)にて前記止めフランジ(11C)上で少なくとも部分的に軸線方向に支持され、それにより前記第1軸線方向(A1)に固定されている、磁石組立体(10,10’,10”)において、
前記磁気要素(12,12’,12”)が、前記軸線方向へ開いた凹部(12B,12B’,12B”)内に係合する少なくとも1つの掛け留め手段(11D)によって第2軸線方向(A2)と第1円周方向(U1)と第2円周方向(U2)とに固定され、その凹部(12B,12B’,12B”)は複数の内面(I1,I2,I3)を有し、前記凹部(12B,12B’,12B”)の第1内面(I1)が、前記第2軸線方向(A2)の止め面を形成して前記掛け留め手段(11D)を前記第2軸線方向(A2)に固定し、前記凹部(12B,12B’,12B”)の第2内面(I2)が、前記第1円周方向(U1)の止め面を形成して前記掛け留め手段(11D)を前記第1円周方向(U1)に固定し、前記凹部(12B,12B’,12B”)の第3内面(I3)が、前記第2円周方向(U2)の止め面を形成して前記掛け留め手段(11D)を前記第2円周方向(U2)に固定
し、
前記スリーブ(11)に、前記掛け留め手段としての掛け留めアーム(11D)が設けられ、前記掛け留めアーム(11D)は、半径方向に可撓性であり、これにより、前記掛け留めアーム(11D)を半径方向に押し曲げることにより前記掛け留めアーム(11D)の自由端部を前記凹部(12B,12B’,12B”)内に係合させることができるようになっていることを特徴とする磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項2】
前記止めフランジ(11C)は全周を取り囲むように形成されていることを特徴とする、請求項1記載の磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記凹部(12B)は、前記磁気要素(12)の前記第2端側(S2)に配置されて前記第2端側(S2)の端面から前記軸線方向(A1)における前記第1端側(S1)の方向と前記円周方向(U1,U2)とに伸びて前記磁気要素(12)内へと引き込まれた窪みまたは間隙であることを特徴とする、請求項1または2記載の磁石組立体(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記凹部(12B’)は、前記磁気要素(12’)の前記第2端側(S2)の端面部分(I2)と、前記磁気要素(12’)の2つの突起(16-1,16-2)とによって形成されており、前記突起は、それぞれ円周方向(U1,U2)の外側で前記端面部分に隣接すると共に、それぞれ前記第2端側(S2)の前記端面から前記軸線方向(A2)に遠ざかって伸びていることを特徴とする、請求項1または2記載の磁石組立体(10’)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記凹部(12B”)は、前記磁気要素(12”)の前記第2端側(S2)において、当該第2端側(S2)の端面から前記軸線方向(A1)における前記第1端側(S1)の方向と前記円周方向(U1,U2)とに当該磁気要素内へと引き込まれた窪みまたは間隙と、前記磁気要素(12”)の2つの突起(16-1’,16-2’)とによって形成されており、前記突起は、それぞれ円周方向(U1,U2)の外側で前記窪みまたは間隙に隣接すると共に、それぞれ前記第2端側(S2)から前記軸線方向(A2)に遠ざかって伸びていることを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の磁石組立体(10”)。
【請求項6】
前記掛け留め手段(11D)は、少なくとも部分的に軸線方向(A1,A2)へ伸びて
前記自由端
部を有した
前記掛け留めアーム(11D)を有しているか、または
前記掛け留めアーム(11D)によって形成されており、前記掛け留めアームは、関連した前記凹部(12B,12B’,12B”)内に自らの自由端部で係合し、それにより前記磁気要素(12,12’,12”)を、前記第2軸線方向(A2)と、前記第1円周方向(U1)および前記第2円周方向(U2)とにそれぞ
れ形状結合式に固定することを特徴とする、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項7】
前記掛け留め手段(11D)
としての前記掛け留めアーム(11D)は、
前記スリーブ(11)に連結されて
いるか、
前記スリーブ(11)と一体的に形成されているか、また
は、
前記スリーブ(11)と共通の部品を形成していることを特徴とする、請求項6に記載の磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項8】
前記掛け留め手段(11D)
は、前記スリーブ(11)に留め付けられるか、または前記スリーブ(11)と一体的に、もしくは前記スリーブ(11)との一体品として形成された、
前記自由端部を有する
前記掛け留めアーム(11D)であって、実質的に前記軸線方向(A1,A2)と、少なくとも部分的に半径方向と、自らの自由端部にて前記磁気要素(12,12’,12”)の前記第2端側(S2)の方向とに外側へ伸びる
前記掛け留めアーム(11D)であることを特徴とする、請求項7記載の磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項9】
前記スリーブ(11)は金属を含むか、または金属で構成されており、前記掛け留めアーム(11D)
は、留め付け部分(11A)の部位での前記スリーブ(11)からのタブの部分的な切り抜
きまたは打ち抜きと、その後
の、前記タブの曲げによる当該タブの形成とによって作り出されていることを特徴とする、請求項8記載の磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項10】
前記磁気要素(12,12’,12”)は、その内周面上に複数のリブ(17)を有し、それらのリブ(17)は、円周方向に分散して互いに間隔を置いて配置されると共に、それぞれ軸線方向に通っており、前記リブ(17)が前記軸線方向(A1,A2)
に延びていることを特徴とする、請求項1から
9のうちのいずれか一項に記載の磁石組立体(10,10’,10”)。
【請求項11】
自動車両のステアリングシャフトの回転状態を特徴付ける測定変数を検出するためのセンサー装置において、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の磁石組立体(10,10’,10”)を有することを特徴とするセンサー装置。
【請求項12】
センサー装置を有した自動車両において、前記センサー装置が請求項11に従って設計されていることを特徴とする自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両のステアリングシャフトの回転状態を特徴付ける測定変数を検出するためのセンサー装置用の磁石組立体であって、スリーブと、スリーブへ形状結合(原語ではformschlussig (uはウムラウト付き))式に連結された磁気要素とを有した磁石組立体に関する。本発明はまた、自動車両のステアリングシャフトの回転状態を特徴付ける測定変数を検出するためのセンサー装置、および、そのようなセンサー装置を有した自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
当該型式の磁石組立体は、例えば、自動車両のステアリングシャフトに加えられたトルクを検出するためのトルクセンサー装置で使用される。当該型式の磁石組立体を有した当該形式のトルクセンサー装置は、基本的に従来の技術、例えば特許文献1(WO2016/175140 A1)より知られている。そのような磁石組立体の基本的な動作は、例えば特許文献2(EP 01269133 B1)に記載されている。当該型式の磁石組立体の更にあり得る実施形態は、特許文献3(US 9,810,592 B2)に記載されている。
【0003】
当該型式の磁石組立体はこの場合、慣例的には、軸線方向で互いに対向して置かれた2つのステアリングシャフト部品の一方に固定されるように設計される。その設計では、ステアリングシャフトの回転状態を検出するために、センサユニットを、磁石組立体の磁気要素と半径方向に向かい合って(間に小さな空隙を置いて)配置されるように設けられた磁性固定子と共に、他方のシャフト部分に固定することができる。固定子を採用することで、磁気要素で発生してシャフトの回転状態に依存する、センサー信号を生成することを企図された磁束を、磁気要素から磁束伝導体を介して磁気センサー(例えばホールセンサー)へ伝えることができる。
【0004】
当該型式の磁石組立体は従来、永久磁石の、そして概して金属スリーブの形態の環状ないしスリーブ形状の磁気要素を有し、そのスリーブを介して磁石組立体をステアリングシャフトに連結することができる。その場合、共同した回転のために、ステアリングシャフトにスリーブを、例えば接着結合、溶接、かしめ、または圧入によって連結することが知られている。
【0005】
ここでの課題は、第1に磁石組立体のステアリングシャフトへの恒久的な回転固定式の連結を確保すること、第2に磁気要素とスリーブとの間に可能な限り遊びのない回転固定式の連結をもたらすことにある。
【0006】
当該型式の磁石組立体の磁気要素はこの場合、慣例的には磁性粒子を充填されたプラスチックで構成され、一般的にはプラスチック射出成型プロセスで、あるいは圧縮成型によっても製造される。まず、磁気要素をスリーブ上へと直接的に射出成型すること、または磁性材料の周囲にスリーブを射出成型することが知られている。次に、最初にスリーブと磁気要素とを別々に製造してから、それらを互いに連結することが知られている。これは、とりわけ接着結合によって、一体的に接合する方式で特に頻繁に行われる。
【0007】
磁性粒子の充填度が概して高いため、磁気要素の基本材料として機能するプラスチックは、特に低温では、概して比較的脆いか、あまり柔軟ではない。従って、スリーブと磁気要素との熱膨張係数が異なるため、動作中に温度の変動が生じた場合には(特に、磁気要素がスリーブに接着結合されているとすれば)磁石組立体内に熱により引き起こされる応力の生じる可能性があり、それゆえ接着層への損傷が(最悪の場合を考慮した筋書きでは、接着層の破壊さえも)発生し得る。その結果、磁気要素がスリーブに対して捩れるか、あるいは完全に分離してしまう可能性さえある。最初の場合は、誤ってはいるが、それにもかかわらず妥当そうな信号につながってしまうかもしれない。次の場合では、不利な状況において磁性リングがステアリング・システム内へ押し込まれて、ステアリング・システムの動きを妨害してしまうかもしれない。どちらの場合も安全上のリスクがあり、回避されねばならない。
【0008】
スリーブと磁気要素との間の連結を固定するため、即ちバックアップとして、特許文献1は、この連結において、接着式の連結に加えて、スリーブと磁気要素とを形状結合式に連結することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2006/175140号パンフレット
【文献】欧州特許第01269133号明細書
【文献】米国特許第9810592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、代替的な磁石組立体、特にスリーブと磁気要素との間に代替的な形状結合式の連結(できれば製造や作成がとりわけ簡単な形状結合式の連結)を伴った磁石組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明によれば、それぞれの独立請求項に記載の特徴を有した磁石組立体、センサー装置、および自動車両によって達成される。本発明の有利な諸実施形態は、各従属請求項、明細書、および図面の対象であって、以下でより詳細に説明されることとなる。
【0012】
本発明による、自動車両のステアリングシャフトの回転状態を特徴付ける測定変数を検出するためのセンサー装置用の磁石組立体は、スリーブと、スリーブに対して形状結合式に連結された磁気要素とを有している。
【0013】
スリーブはこの場合、当該磁石組立体をステアリングシャフトの第1部分へ(特に、ステアリングシャフトへの回転固定式の連結のために)連結するように設計されると共に、少なくとも1つの止めフランジを有し、その止めフランジは、磁気要素を第1軸線方向で軸線方向に固定するために、半径方向平面内で半径方向の外側へ広がっており、磁気要素は、スリーブ形状もしくは環状設計のものであるか、または磁性リングもしくは磁性スリーブであって、第1端側と、第2端側と、それらの側同士の間の磁気的に有効な磁性部分とを有している。
【0014】
磁気要素は、スリーブに対して同心状に配置されると共に、自らの第1端側にて止めフランジ上で少なくとも部分的に(好適には、全体的に)軸線方向に支持され、それにより第1軸線方向に固定されている。
【0015】
本発明によれば、磁気要素はこの場合、軸線方向へ開いた凹部内に係合する少なくとも1つの掛け留め(ラッチ留め)手段によって第2軸線方向と第1円周方向と第2円周方向とに固定され、その凹部は複数の内面を有し、凹部の第1内面が、第2軸線方向の止め面を形成して掛け留め手段を第2軸線方向に、凹部の第2内面が、第1円周方向の止め面を形成して掛け留め手段を第1円周方向に、凹部の第3内面が、第2円周方向の止め面を形成して掛け留め手段を第2円周方向に(特に、それぞれ形状結合式に)固定する。
【0016】
本発明による磁石組立体の特に有利な改良においては、磁石組立体がステアリングシャフトへ機能的に連結されている状態に関して、第1内面がステアリングシャフトの回転軸線に垂直に広がっているのが好ましい。これに対して、特に第2内面および第3内面はそれぞれ第1内面に垂直な向きにされるのが好ましい。その場合、第2内面と第3内面とが互いに向かい合って、特に互いに平行に対向配置されているのが特に好ましい。
【0017】
それにより、複数方向での特に簡単な形状結合式の固定を実現することができる。特に、それにより回転に抗して固定をする手段を実現することができるが、当該手段は、磁性リングやスリーブの長さ公差とは無関係に構成することができるので、特に確実なものとなっている。更に、本発明による固定は、如何なる追加の構成要素をも必要としないのである。
【0018】
本発明の文脈の範囲内における「形状結合式」とは、「互いに作用し合うように連結される(特に、互いに噛み合った状態にある)連結部品同士の幾何学的形状によって」もたらされることを意味する。
【0019】
方向を示す語である「軸線方向」は、ここでは(それぞれの場合に当該技術での標準的なやり方で)磁石組立体のスリーブが(用途どおりに)ステアリングシャフトの第1部分に対して回転固定式に連結された状態に関して、ステアリングシャフトの回転軸線、即ち回転の軸線に対して平行な方向を示している。同様に、方向明細事項「円周方向」は当該回転軸線周りの回転方向を示し、方向明細事項「半径方向」は軸線方向と円周方向とに垂直な方向を表している。同様に、方向明細事項「接線方向」は、軸線方向と半径方向とに垂直な方向を表している。
【0020】
本発明の文脈において、用語「固定」は、それぞれの場合に関連した関係で示される方向への各々の構成要素の留め付け、特に構成要素の固着を意味するものと理解されたい。それは、磁石組立体によって発生するセンサー信号の必要な信号品質が保証されて、当該センサー信号を用いる諸機能の機能的信頼性が損なわれないよう、各々の構成要素がそれぞれの方向に移動/変位することが防止されるようなやり方でのことである。
【0021】
シャフトへの連結のために、スリーブはブッシュ形状の留め付け部分を有しているのが好ましい。留め付け部分は、ブッシュ形状の連結部分に隣接しているのが好ましい。連結部分は、その部位に特に磁気要素が配置され、その部位において特に磁気要素がスリーブへ少なくとも部分的に連結されるところのものである。
【0022】
本発明による磁石組立体の有利な改良において、留め付け部分はこの場合、連結部分よりも小さい直径を有しており、即ち好適にはスリーブが「段付き形状」になっている。但し、スリーブは単に円筒状であってもよい。
【0023】
本発明による磁石組立体の特に有利な改良において、磁石組立体は、特に複数(好適には、それぞれ3つ、4つ、5つ、ないしは6つ)の円周方向に分散配置された掛け留め手段、特に円周方向に均等に分散配置された掛け留め手段を有している。それらの掛け留め手段は特に、同様に円周方向に分散配置(特に、同様に均等に分散配置)された、対応する関連した凹部内に係合するものである。これにより、発生する力やモーメントの特に均等な分散を、それゆえ磁石組立体内での応力の特に均等な分散を達成することが可能となる。その結果、個々の部品、特に接着層および/または磁気要素それ自体に過度な応力を掛ける危険性を減少させることができる。
【0024】
場合によっては、本発明による1つだけの掛け留め手段と、当該1つの掛け留め手段の係合する関連した凹部とが設けられたり、更に付け加えられた(但し、掛け留め手段の係合しない)凹部が設けられたりすれば有利である。当該凹部は、例えば取付け補助手段として、特にスリーブに対する磁気要素の角度を調整するために用いることができる。特に、それにより更に別の取付け位置が生じ、その結果、取付けが簡素化される。
【0025】
本発明による磁石組立体のスリーブは、金属を含み、および/または金属から製造されているのが好ましい。その場合、スリーブは少なくとも部分的に深絞りによって製造されるのが好ましい。スリーブは、圧入によってステアリングシャフトの一部に留め付けることができるよう、或いはステアリングシャフトの一部にかしめるか、圧着するか、または接着結合することができるように設計されるのが好ましい。それに代えて、スリーブは、ステアリングシャフトの指定部分に溶接したり、圧入によって連結したりすることもできる。
【0026】
かしめ、特に熱かしめや超音波かしめによるプラスチック連結要素の形成は、先行技術から一般的に知られているので、この点に関するそれ以上の説明はこの際、省かれる。
【0027】
磁気要素の磁性部分は、同様にスリーブ形状ないしは環状設計(特に、円周方向に閉じたもの)であることが好ましい。或いは磁性部分は、スリーブ形状ないしは環状設計の磁性部分と同様に作用するか、または先行技術から知られる従来のリング磁石と類似して作用するように設計される。その場合、磁性部分は、スリーブに対して同心状に配置されるのが好ましい。また、磁気要素の内径は、特にスリーブの外径よりも大きくなっている。そして、磁気要素は、特にスリーブの周囲の半径方向外側に配置される。
【0028】
即ち、磁気要素は、円周方向でスリーブの周囲の外側を、軸線方向でスリーブの長さの一部に亘って伸びているのが好ましい。磁気要素は、特にブッシュ形状の連結部分の部位においてスリーブ周囲に広がっている。
【0029】
本発明による磁石組立体の磁気要素は、射出成型または圧縮成型プロセスによって好適に製造することができる。その他の通例による製造方法も同様に考えられる。
【0030】
本発明による磁石組立体の磁気要素は、磁性粒子の充填されたプラスチックを含んでいる、および/または、磁性粒子の充填されたプラスチックで構成されるのが好ましい。その場合、磁気要素はプラスチック射出成型プロセスで製造されるのが好ましい。磁気要素は、スリーブに接着結合されるか、または接着結合によってスリーブに一体的に結合されるやり方で連結することができるのが特に好ましい。
【0031】
本発明による磁石組立体の有利な改良において、止めフランジは特に全周を取り囲むように形成されており、即ち、有利な改良において止めフランジは円周方向に凹部を有していない。
【0032】
円周方向に凹部のない止めフランジは基本的に、凹部、間隙、スロットなどを有した同種の設計の止めフランジよりも剛性が高い。向上した剛性によって、製造に追加経費をかけることなく、直径や真円度のより小さな公差を達成することが可能となる。更に、全周を取り囲むように形成されたフランジで、より安定した止めを実現することができる。その結果、第1軸線方向における磁気要素の位置の、特に良好で均一な、とりわけ精確な位置決めおよび固定を達成することができる。
【0033】
磁気要素は、止めフランジ上に直接または間接的に(即ち、軸線方向で間に1つないし複数の更なる構成要素を伴うか、または伴わずに)載ることができ、および/または支持されることができる。その場合、磁気要素は、その第1端側の全体で(即ち、広範囲で)、或いは当該端側の一部だけで、止め要素上に載ることができる。後者は例えば、磁気要素および/または止めフランジ上の対応する突起によって達成することができる。
【0034】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、止めフランジは、好適にはスリーブの第1端部の所に配置されるか、または特にスリーブの第1端部を形成している。
【0035】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、少なくとも1つの凹部は、磁気要素の第2端側に配置されて第2端側の端面から軸線方向における第1端側の方向と円周方向とに伸びて磁気要素内へと引き込まれた窪みまたは間隙、特に磁気要素の厚さ全体に亘って半径方向に磁気要素内へと伸びる間隙である
【0036】
そのような凹部で、スリーブに対する磁気要素の第2軸線方向と第1および第2円周方向との両方の固定を、特に簡単なやり方で同時に達成することができる。これは、それぞれが一方向にのみ作用する別々の固定用凹部および関連した別々の固定用掛け留め手段に優る、製造にかかる費用が少ないという利点を有している。更に、作り出さねばならぬ固定用の連結がより少なくなるため、取付けが簡素化される。かくしてコスト削減の可能性が生じるのである。
【0037】
この場合、少なくとも1つの凹部は、特に第2軸線方向に開いた(即ち、第2端側に向かって開いた)間隙であり、U字形ないしU字状の設計のものであって、特にこの部位の磁気要素の厚さ全体に亘って半径方向へ伸びており、特に円周方向および軸線方向へ伸びるスロットと同様に設計されている。
【0038】
とりわけ、少なくとも部分的に軸線方向へ(できれば円周方向に対して垂直に)伸びる凹部の内側面、特にU字形ないしU字状の凹部における「U」の対応する内面が、円周方向に作用する止め面を形成する。凹部の底部は、掛け留め手段(特に、掛け留め手段の自由端部)が少なくとも部分的に(できれば遊びのないやり方で)当たる軸線方向の止め面を形成しているのが好ましい。
【0039】
特に対応する材料の除去によって磁気要素に内へと引き込むことのできる、そのような凹部は、製造が簡単であると共に、次のような形状結合式連結の形成を可能とする。即ち、製造が特に簡単で、十分に確実であるが、それでもなお十分に容易に解除することのできる形状結合式連結である。更に、関連した掛け留め手段は、凹部にしっかりと係合するために複雑な幾何学的形状を有せねばならぬことはない。タブの単純な自由端部(例えば、矩形の形状のもの)で十分なのである。但しそれに代えて、特に(例えば、磁気要素を製造するのに用いられる射出成型用ダイの)対応した金型形状を採用することで、磁気要素が(できればダイから直接的に)製造されるときに、凹部が引き込まれてもよい。
【0040】
本発明による磁石組立体の代替となる、しかし同様に有利な改良において、少なくとも1つの凹部は特に、磁気要素の第2端側の端面部分と、磁気要素の2つの突起とによって形成されており、当該突起は、それぞれ円周方向の外側で当該端面部分に隣接すると共に、それぞれ第2端側の端面から軸線方向に遠ざかって伸びている。磁気要素の2つの突起の側面(当該側面同士が円周方向で互いに向かい合っている)は、円周方向に作用する止め面を好適に形成する。円周方向で2つの突起同士の間に配置される磁気要素の端面部分は、特に軸線方向に作用する止め面を形成する。
【0041】
この型式の改良は、磁気要素が(例えば突起の射出成型によって、特にダイから直接的に)製造されるときに凹部を形成できるという利点を有している。
【0042】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、少なくとも1つの凹部は特に、磁気要素の第2端側において、当該第2端側の端面から軸線方向における第1端側の方向と円周方向とに当該磁気要素内へと引き込まれた窪みまたは間隙と、磁気要素の2つの突起とによって形成されており、当該突起は、それぞれ円周方向の外側で窪みまたは間隙に隣接すると共に、それぞれ第2端側から軸線方向に遠ざかって伸びている。
【0043】
特に、磁気要素の2つの突起の側面(当該側面同士が窪みないし間隙の各内面と共に円周方向で互いに向かい合っており、当該内面が少なくとも部分的に軸線方向へ(できれば円周方向に対して垂直に)伸びている)が、円周方向に作用する止め面を形成することが好ましい。窪みないし間隙の底部は、特に軸線方向の止め面を形成することが好ましい。
【0044】
この手段により、軸線方向の十分な深さと半径方向の十分な突出とを簡単なやり方で達成することができ、かくして良好で確実な形状結合式連結を実現することができる。
【0045】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、掛け留め手段は特に、少なくとも部分的に(とりわけ実質的に)軸線方向へ伸びて自由端部部を有した掛け留めアームを有しているか、または当該掛け留めアームによって形成されており、掛け留めアームは、関連した凹部内に自らの自由端部で係合し、それにより磁気要素を、第2軸線方向と、第1円周方向および第2円周方向とにそれぞれ固定する。
【0046】
そのような掛け留め手段で、少なくとも、2つの円周方向および軸線方向における、スリーブに対しての磁気要素の形状結合式の固定を、特に簡単なやり方で達成することができる。
【0047】
掛け留めアームの自由端部はこの場合、凹部における少なくとも1つの止め面、特に少なくとも軸線方向に作用する止め面上に置かれることが好ましい。その場合、掛け留めアームの自由端部は、軸線方向に作用する止め面上と、円周方向に作用する止め面の一方ないし両方の面上とに置かれることが特に好ましい。
【0048】
掛け留め手段と凹部とはこの場合、特に互いに対する関係での扱い方で寸法が決められ、関連した各公差が次のようなやり方で選択されることが特に好ましい。即ち、少なくとも1つの定められた動作部位において、スリーブに対する両軸線方向および両円周方向での磁気要素の形状結合式の固着(当該形状結合式の固着は、磁石組立体の誤りなき機能性のため、即ち定められた信号品質を有するセンサー信号を発生させるために必要とされるものである)が保証されるようなやり方である。特に、掛け留め手段と凹部とは、軸線方向および/または円周方向の最大限許容される遊びを超過しないよう、また磁気要素とスリーブとの間における形状結合式連結の十分なねじり強度が達成されるよう、互いに対して寸法を決められる。掛け留め手段と凹部とは、少なくとも1つの中間ばめ(特に、締まりばめ)が軸線方向に生じるよう、従って少なくとも軸線方向で遊びのない連結が常に達成されるよう、互いに対して寸法が決められていることが特に好ましい。
【0049】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、掛け留め手段はスリーブに連結されており、掛け留め手段が、特にスリーブと一体的に形成されているか、またはスリーブと共通の部品を形成している。
【0050】
そのような改良により、付加的な構成要素は必要とされず、従って重量も追加されない。更に、この手法で掛け留め手段を簡単に製造することができる。
【0051】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、掛け留め手段は特に、スリーブに留め付けられるか、またはスリーブと一体的に、もしくはスリーブとの一体品として形成された、自由端部を有する掛け留めアームであって、実質的に軸線方向と、少なくとも部分的に半径方向と、自らの自由端部にて磁気要素の第2端側の方向とに外側へ伸びる掛け留めアームである。
【0052】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、スリーブは金属を含むか、または金属で構成されており、掛け留めアームは、特に留め付け部分の部位でのスリーブからのタブの部分的な切り抜き、特に打ち抜きと、その後の、特にタブの曲げによる当該タブの形成とによって作り出されている。その場合、掛け留めアームは、タブを少なくとも2回曲げることによって、できれば少なくともタブを交互に2回曲げることによって、特にタブを交互に少なくとも2回約90°だけ折り曲げることによって作り出され、形成される。
【0053】
磁気要素がスリーブへ形状結合式に連結された状態において、タブの自由端部の端面が、軸線方向に作用する凹部の止め面上へ軸線方向に載っていることが特に好ましい。それは、磁気要素をスリーブ上へ第2軸線方向に(特に、第2軸線方向の変位に抗して)固定するためである。そして特に、止めフランジと共に磁気要素をスリーブ上へ軸線方向に固着させるためである。
【0054】
タブの曲げによって、特に二重曲げによって公差を補うことができ、特に対応する改良において、凹部における(特に、軸線方向に)遊びのない接触を作り出すことができる。
【0055】
本発明による磁石組立体の更に有利な改良において、磁気要素はまた、その内周面上に好適には複数のリブを有し、それらのリブは、特に円周方向に分散して互いに間隔を置いて配置されると共に、それぞれ軸線方向に通っており、好適にはリブが軸線方向へ磁気要素の全長に亘って伸びている。
【0056】
この手段により、スリーブに対する良好な中心合わせ、および/または同軸配置を、特に簡単なやり方で達成することができ、かくしてセンサー信号品質にとって実質的に重要なことである磁気要素の精確な位置決めおよび方向合わせを簡単なやり方で達成することができる。
【0057】
自動車両のステアリングシャフトの回転状態を特徴付ける測定変数を検出するための本発明によるセンサー装置は、本発明による磁石組立体を有している。
【0058】
センサー装置を伴った本発明による自動車両は、本発明による磁石組立体を伴った本発明によるセンサー装置を有している。
【0059】
磁石組立体に関して提示された有利な諸改良およびその利点は、本発明によるセンサー装置および本発明による自動車両にも相応に当てはまる。
【0060】
本発明のさらなる諸特徴は、特許請求の範囲、図面、および図面の説明から明らかとなる。上記の説明で挙げられている全ての特徴および特徴同士の組合わせ、そしてまた下記図面の説明に挙げられ、および/または図面のみに示されている特徴および特徴同士の組合わせは、それぞれ示された組合わせのみならず、その他の組合わせや、それら独自のものにおいても、技術的に実現可能ならば用いることができる。
【0061】
ここで本発明は、複数の有利な例示の実施形態に基づき、添付図面を参照して、より詳細に説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本発明による磁石組立体の第1の例示的な実施形態を示す斜視図。
【
図2】本発明による磁石組立体の第2の例示的な実施形態を示す斜視図。
【
図3】本発明による磁石組立体の第3の例示的な実施形態を示す斜視図。
【
図4】
図1から
図4の本発明による磁石組立体のスリーブを単体の部品として示す斜視図。
【
図5】
図3の本発明による磁石組立体の磁気要素を単体の部品として下方から斜めに示す第1の斜視図。
【
図6】
図3および
図5の本発明による磁石組立体の磁気要素を上方から斜めに示す第2の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、金属スリーブ11と、磁性粒子の充填されたプラスチックで構成される磁気要素12とを有した、本発明による磁石組立体10の第1の例示的な実施形態を示している。そのスリーブ11は、回転軸線A周りに回転可能なステアリングシャフト(図示せず)の第1部分上に磁石組立体を固定するためのブッシュ形状の留め付け部分11Aと、当該スリーブ11を磁気要素12に留め付けるための、同様にブッシュ形状の連結部分11Bとを有している。スリーブ11は、段付き形状にされ、連結部分11Bの部位では留め付け部分11Aの部位よりも大きい直径を有している。連結部分11Bの方が外径が大きくなっていることで、ステアリングシャフト上へのスリーブ11の留め付け中に生じる可能性のある影響(特に、歪みなど)を簡単なやり方で、少なくとも大幅に(特に、かなりしっかりと)磁気要素12から切り離すことが可能となる。
【0064】
本発明による磁石組立体10の磁気要素12は、同様にブッシュないしスリーブ形状の設計である磁気的に有効な磁性部分12Aを有している。磁気要素12はスリーブ11に対して、第1に一体結合式に、即ち連結部分11Bないしは有効磁性部分12Aの部位での接着結合によって連結され、それに加えて更に(安全のため)特に半径方向、軸線方向A1,A2、および円周方向U1,U2において形状結合式に連結される。これは、たとえ接着連結が弱まってしまったとしても、構成要素11,12同士の互いに対する確実な位置決めを保証し続けることができるようにするためであり、これは特に、確実な、従って使用可能なセンサー信号のための前提条件である。
【0065】
磁気要素12とスリーブ11との間の(ステアリングシャフト(図示せず)の回転軸線Aに対する)半径方向の形状結合式連結は、ここでは連結部分11Bの部位におけるスリーブ11の周囲外側への磁気要素12の同心状の配置によって作り出される。
【0066】
磁気要素12とスリーブ11との間の軸線方向の形状結合式連結は、第1軸線方向A1においては、回転軸線Aに垂直な半径方向平面内で半径方向に外側へ広がる止めフランジ11Cによって達成される。止めフランジ11C上には磁気要素12が自らの第1端側S1で軸線方向に載っており、止めフランジ11Cが、磁気要素12をスリーブ11に対する第1軸線方向A1の変位に抗してその位置に固定する。
【0067】
反対の第2軸線方向A2への磁気要素12の固定は、スリーブ11と一体的に形成された掛け留め手段11Dによって行われる。その掛け留め手段11Dは、実質的に軸線方向A1,A2へ伸びると共に半径方向の外側へも伸びて自由端部を有した掛け留めアーム11Dの形態をしている。その掛け留めアーム11Dは、対応して設計されたU字形の凹部12B内に係合する。その凹部12Bは、止めフランジ11Cから遠ざかる方を向いて磁気要素12内へと引き込まれた間隙12Bを有している。また掛け留めアーム11Dは、その自由端部の端の側で、磁気要素12の第2端側S2の部位にて、第1内面I1上に載っている。その第1内面I1は、軸線方向A1,A2に対して垂直に広がっており、凹部12Bの底面に相当するものである。かくして掛け留めアーム11Dは、第2軸線方向A2への軸線方向変位を妨げるのである。それは結果として磁気要素が、軸線方向A1およびA2の両方に固定されることで、軸線方向で完全に固定されるようなものである。
【0068】
円周方向U1,U2、特に第1円周方向U1および反対の第2円周方向U2の固定は、同様に、間隙12Bの形態の凹部12B内に係合する掛け留めアーム11Dによって行われる。この場合、U字形の間隙12Bの第2内面I2は第1円周方向U1に有効な止め面を形成し、第3内面I3は第2円周方向U2に有効な止め面を形成する。
【0069】
磁気要素12の第2端側S2の部位において第2軸線方向A2と両円周方向U1,U2との双方で作用する、組み合わされた形状結合式の連結によって、磁気要素12とスリーブ11との間の接着連結の固定を、バックアップとして、簡単な方法で製造できる止めフランジ11Cとの共同による、特に簡単かつコンパクトなやり方で達成することができる。当該固定はまた、組み込むのが特に容易である。
【0070】
図1を参照すればすぐ分かるように、この例示的な実施形態において、磁気要素12は合計4つの対応する凹部12Bを有しているが、磁気要素12とスリーブ11との間の第2端側S2の部位には単一の形状結合式連結しか形成されていない。これには、この場合に必要な連結の安全確保が、単一の形状結合式連結ですでに達成可能であるという背景がある。かくして、その他の形状結合式連結は省略することができるのである。特に、どの場合にも、スリーブに1つのタブを導入する、即ち1つの掛け留めアーム11Dを形成する必要しかないのである。
【0071】
残り3つの未使用の凹部12Bを省略することもできるかもしれない。しかし、掛け留め手段11Dと各凹部12Bとのそれぞれの形状結合式連結を作り出すためのより多く選べる選択肢を利用することができ、従って磁気要素12とスリーブ11とのより迅速な位置決めを達成できることから、取付けを簡素化できるであろう。
【0072】
とはいえ、それに代えて、第2端側の部位に、上述の形状結合式連結を2つ以上、好適には2つ、3つ、ないしは4つ以上、特に6つまで設けることができる。こうした複数の形状結合式連結の場合には、それらの形状結合式連結が円周方向U1,U2で均等に分散配置されることが好ましい。
【0073】
説明した本発明による磁石組立体10を製造するためには、スリーブ11と磁気要素12とを、最初にそれぞれ別々に製造してから、次に一緒に接合して磁石組立体10を形成する。
【0074】
U字形の凹部12Bは、ここでは第2端側S1から軸線方向に磁気要素12内へと引き込まれて、特に磁気要素12が製造される際に既に成型されており、この場合、第2端側S2の端面と面一になる所で終わっている。当該端面は、円周方向U1,U2で凹部12Bと隣接し合っているのである。
【0075】
掛け留めアーム11Dは、スリーブから部分的に打ち抜いて交互に2回折り曲げることによって形成されている。その場合、掛け留めアーム11Dは、半径方向にわずかに可撓性である(二重矢印および2つの表示位置によって示す)。従って、磁石組立体10の組立ての目的で磁気要素12をスリーブ上へとスライドさせるために、或いは第2端側S2の部位での形状結合式連結を解除するために、掛け留めアーム11Dを半径方向で内側へ押すことができる。また、磁気要素12を固定する目的で、掛け留めアーム11Dを、凹部12B内にしっかりと係合させるため、特に凹部12B内へ掛かり留まるようにするために、半径方向で外側へ押すことができる。
【0076】
磁石組立体10を組み立てるために磁気要素12は、
図1を参照すると、その第1端側S1が止めフランジ11Cと接触するまで、スリーブ11上へと上方からスライドさせられる。それは、スリーブ11と磁気要素12との間の接着連結を作り出すために、磁気要素12と、連結部分11Bの部位におけるスリーブ11との間に前もって接着剤が塗布されている状態で行われる。磁気要素12が止めフランジ11C上に載っているとき、掛け留めアーム11Dは、凹部12B内へ入り込むことができ、特に凹部12B内に引っ掛けられる、即ち掛け留められることができる。
【0077】
必要ならば、特に掛け留め手段11Dがスプリングバックするのを防ぐために、少なくとも1つの掛け留めラグ、掛け留め縁部、または掛け留め突起を、凹部12B内、特に1つないし複数の内面I1,I2,および/またはI3に付加的に設けることもできる。そして掛け留め手段11Dは、特に自らの自由端部にて、その裏側で係合して、改善された形状結合式連結をもたらすことが、即ち掛け留め式の連結を作り出すことができる。
【0078】
図2は、本発明による磁石組立体10’の第2の例示的な実施形態を斜視図で示している。当該磁石組立体10’は、前述した磁石組立体10とは凹部12B’の構成においてのみ異なっており、第2端側S2から軸線方向に磁気要素12’内へと引き込まれたU字形の間隙12Bに代えて、2つの突起16-1および16-2を有している。それらの突起16-1および16-2は、軸線方向A2に止めフランジ11Cから遠ざかって伸びると共に、半径方向外側へ、また円周方向へ伸びている。それらの突起16-1および16-2は、凹部12B’の第1内面を形成する端面部分と共に、掛け留め手段11Dの係合する凹部12B’を画定している。ここでは、第1円周方向U1の止め面として機能する第2内面I2が突起16-1によって形成され、第2円周方向U2の止め面として機能する第3内面I3が第2の突起16-2によって形成されている。
【0079】
図3は、本発明による磁石組立体10”の第3の例示的な実施形態を斜視図で示している。当該磁石組立体10”は、とりわけ凹部12B”の構成において前述の磁石組立体10および10’と異なっており、第2端側S2から軸線方向に磁気要素12’内へと引き込まれたU字形の間隙12Bと、2つの突起16-1’および16-2’とを有している。それらの突起16-1’および16-2’は、軸線方向A2に止めフランジ11Cから遠ざかって伸びると共に、半径方向外側へ、また円周方向へ伸びている。間隙12Bと突起16-1および16-2とが一緒になって凹部12B”を画定している。
【0080】
更に、磁気要素12”はこの場合、その内周面上に複数のリブ17を有している。それらのリブ17は、円周方向に分散して互いに間隔を置いて配置されると共に、それぞれ軸線方向に通っている。各リブ17は、特に軸線方向A1,A2へ磁気要素12”の全長に亘って伸びている(
図5および
図6参照)。当該リブ17を採用することで、スリーブ11に対する磁気要素12”の良好な中心合わせや同軸配置を、特に簡単なやり方で達成することができ、かくしてセンサ信号品質にとって実質的に重要なことである磁気要素12”の精確な位置決めおよび方向合わせを簡単なやり方で達成することができる。
【0081】
図1から
図3に示され、それらの図に基づいて説明される本発明による磁石組立体10,10’,および10”の例示的な実施形態の全ては、止めフランジ11Cから遠ざかる側に面したスリーブ11の端部の所に位置決めフランジ13をそれぞれが有している。当該位置決めフランジ13は、関連したステアリングシャフト(図示せず)上でのスリーブ11の、即ち磁石組立体10,10’,10”の簡単かつ精確な位置決めのために、半径方向内側へ広がっている。ここで、位置決めフランジ13は、関連したステアリングシャフトの対応して設計されたシャフト段部または対応して設計されたシャフト部分への接触のために設計されている。本発明による磁石組立体の代替的な構成においては、当該位置決めフランジ13が省略されてもよい。
【0082】
本発明による磁石組立体10,10’,10”の簡単かつ精確な方向合わせのために、
図1から
図3に示され、それらの図に基づいて説明される本発明による磁石組立体10,10’,および10”の例示的な実施形態においては、それぞれスリーブ11には更に、位置決めフランジ13の部位に窪み14が設けられている。当該窪みは特に、シャフトに対するスリーブ11の、即ち磁石組立体10,10’,10”の円周方向U1,U2での簡単な回転および方向合わせのために、工具(例えば、ねじ回しなど)を差し込むことのできる工具係合開口14として役立つものである。それは、スリーブ11を、或いは磁気要素12,12’,12”を伴った磁石組立体10,10’,10”を、シャフト上へ円周方向U1,U2に(回転方向で不動に)留め付ける前に向きを合わせるためである。本発明による磁石組立体の代替的な構成においては、当該凹部14が省略されもよい。
【0083】
更に、
図1から
図3に示されて説明される本発明による磁石組立体10,10’,および10”の例示的な実施形態の全ては、それぞれ複数(図示の例示的な各実施形態では正確にはそれぞれ3つ)の横方向スロット15を有している。それらの横方向スロット15は、円周方向U1,U2に分散して(特に、均等に分散して)並べられ、互いに間隔を置いて配置されている。各横方向スロット15は、実質的に円周方向U1,U2へ伸びている。横方向スロット15は、ステアリングシャフト上へのスリーブ11の留め付け中における荷重軽減用スロット15として役立つ。それは特に、相応のかしめピンまたは圧着ピンの助力によるかしめまたは圧着によってスリーブ11がシャフト上へ留め付けられるときのことである。本発明による磁石組立体の代替的な構成においては、当該負荷軽減用スロット15が省略されてもよい。
【0084】
図1から
図3に示され、それらの図に基づいて説明される本発明による磁石組立体10,10’,および10”の例示的な実施形態において、スリーブ11は、それぞれ段付き形状にされ、留め付け部分11Aと連結部分11Bとで異なる直径を有している。この構成も同様に有利な構成である。本発明による磁石組立体のスリーブは、留め付け部分において連結部分と同じ直径(内径および/または外径)を有することもでき、特に、その2つの部分に亘って、また、それらの部分を超えて(特に、その全長に亘って)円筒状とすることができる。
【0085】
代替的には更に、磁気要素に連結された(或いは、磁気要素と一体的に形成された)掛け留め手段(できれば同様に自由端部のある掛け留めアーム)と、対応した凹部のあるスリーブとを有した磁石組立体が考えられる。
【0086】
この場合は、掛け留め手段が止めフランジ11Cから略第2軸線方向へ伸びていて、凹部が特に止めフランジ11Cの方向へ開いてることが特に好ましい。その場合、説明した例示的な実施形態とは逆に、掛け留め手段の凹部内への「掛かり留まり」は、「内側へ」掛け留め手段を「押す」ことによってもたらされ、形状結合式連結の解除は、特に「外側へ」掛け留め手段を「押す」ことによってもたらされることが好ましい。
【0087】
この場合、磁気要素が多成分型の構成要素、特に多成分射出成型によって製造された構成要素であれば(例えば、磁気的に有効な部分に用いられる材料よりも柔軟な材料で掛け留め手段が作られていれば)有利であろう。
【0088】
図4は、
図1から
図4までの本発明による磁石組立体のスリーブ11を個別部品として斜視図で示している。この図では、止めフランジ11Cおよび掛け留めアーム11Dの構成を容易に見ることができる。特に、この図を参照すれば、止めフランジ11Cが全周を取り囲む設計のものである有利性、とりわけ次のような有利な効果を有することを分かることができる。即ち、軸線方向での止めフランジ11Cの剛性への、従ってまた止めフランジ11Cを介して軸線方向に支えることのできる力への有利な効果である。
【0089】
図5と
図6とは、
図3の本発明による磁石組立体10”の磁気要素12”を個別部品として、異なる斜視図で示している。この図においては、既に
図3との関連でもっと前に述べていたリブ17であって、磁気要素12”の内側に配置され、磁気要素12”の全長に亘って軸線方向A1,A2へ伸びて、スリーブ11に対する中心合わせを改善するために設けられたリブ17を容易に見ることができる。
【0090】
もちろん、説明した例示的な実施形態に対しての多くの構造変更が、特許請求の範囲の内容から逸脱することなく可能である。
【符号の説明】
【0091】
10,10’,10” 本発明による磁石組立体
11 スリーブ
11A ブッシュ形状の留め付け部分
11B ブッシュ形状の連結部分
11C 止めフランジ
11D 掛け留め手段
12,12’,12” 磁気要素
12A 有効磁性部分
12B,12B’,12B” スリーブへの形状結合式連結用の凹部
13 位置決めフランジ
14 工具係合凹部
15 横方向スロット
16-1,16-1’,16-1” 第1円周方向に作用する止め面を伴った突起
16-2,16-2’,16-2” 第2円周方向に作用する止め面を伴った突起
17 リブ
A 回転軸線
A1 第1軸線方向
A2 第2軸線方向
I1 第1内面
I2 第2内面
I3 第3内面
S1 第1端側
S2 第2端側
U1 第1円周方向
U2 第2円周方向