(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】光デバイス接続方法、光デバイス接続構造及び光デバイス接続システム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20220909BHJP
G02B 6/136 20060101ALI20220909BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/136
G02B6/122
(21)【出願番号】P 2021088463
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 善典
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 幹寛
(72)【発明者】
【氏名】石井 元速
(72)【発明者】
【氏名】山田 智之
(72)【発明者】
【氏名】布谷 伸浩
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0185978(US,A1)
【文献】特開2009-008766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0085760(US,A1)
【文献】特開2003-096425(JP,A)
【文献】特開2010-032782(JP,A)
【文献】特開2019-095485(JP,A)
【文献】特開2013-097072(JP,A)
【文献】特開2004-151390(JP,A)
【文献】特開2008-170528(JP,A)
【文献】特開2004-281972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路を有する光デバイス同士を接続する光デバイス接続方法であって、
第1の光デバイスの第1の基板に形成された第1のコアを含む第1の光導波路の一部をエッチングして、前記第1の光導波路から前記第1のコアの端面が前記第1の基板と交差する面に向かって露出するコア露出面及び、前記第1の光導波路が切欠かれたことにより露出する前記第1の基板の面である基板露出面を形成する工程と、
前記基板露出面に熱酸化膜を形成する工程と、
第2のコアを含む第2の光導波路を有する第2の光デバイスを
、前記第2の光導波路と前記基板露出面
上の前記熱酸化膜との間に接着剤を注入して接続し、前記第2のコアの端面と、前記コア露出面から露出する前記第1のコアの端面と、を接続する工程と、を含む、光デバイス接続方法。
【請求項2】
前記第1の光デバイス、前記第2の光デバイスの少なくとも一方は、他方との相対的な位置を調整するための位置合わせマークを有する、請求項1に記載の光デバイス接続方法。
【請求項3】
前記第2の光デバイスは、前記第2の光導波路が前記基板露出面と対向するように前記基板露出面と接続される、請求項1または2に記載の光デバイス接続方法。
【請求項4】
前記接着剤は、紫外線により硬化する光硬化性と共に、加熱によって硬化する熱硬化性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光デバイス接続方法。
【請求項5】
前記第1の光デバイスは、石英系ガラスを主体とする平面光波回路型光デバイスである、請求項1から4のいずれか一項に記載の光デバイス接続方法。
【請求項6】
前記第2の光デバイスは、Si-P型の光デバイスである、
請求項5に記載の光デバイス接続方法。
【請求項7】
前記第2の光デバイスは、光半導体型の光デバイスである、
請求項6に記載の光デバイス接続方法。
【請求項8】
コアを含む光導波路を有する光デバイス同士が接続された接続構造であって、
第1のコアを含む第1の光導波路が第1の基板の一部に形成され、前記第1の光導波路から前記第1のコアの端面が前記第1の基板と交差する面に向かって露出するコア露出面及び、前記第1の光導波路が形成されていない前記第1の基板の面である基板露出面を有する第1の光デバイスと、
前記基板露出面
上に形成された熱酸化膜上に注入された接着剤により接続され、第2のコアを含む第2の光導波路を有する第2の光デバイスと、を備え、
前記第2のコアの端面と、前記コア露出面から露出する前記第1のコアの端面と、が接続されている、接続構造。
【請求項9】
コアを含む光導波路を有する光デバイス同士を接続する光デバイス接続システムであって、
第1のコアを含む第1の光導波路が第1の基板の一部に設けられ、前記第1のコアの端面が前記第1の光導波路から露出するコア露出面及び前記第1の光導波路が形成されていない前記第1の基板である基板露出面を有する第1の光デバイスを保持する第1の保持部と、
第2のコアを含む第2の光導波路を有する第2の光デバイスを保持する第2の保持部と、
前記第1の保持部に保持された前記第1の光デバイスと、前記第2の保持部に保持された前記第2の光デバイスとの位置を調整する位置合わせ部と、
前記位置合わせ部により調整された位置において、前記基板露出面
上に形成された熱酸化膜上に注入された接着剤により前記第2の光デバイスを接続し、前記第2のコアと、前記コア露出面から露出する前記第1のコアと、を接続する接続部と、
を含む、光デバイス接続システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス同士を接続する光デバイス接続方法、光デバイス接続構造及び光デバイス接続システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信等に使用される光の導波路(以下、「光導波路」とも記す)を有するデバイス(以下、「光デバイス」とも記す)を作製するには、要求される性能に合わせて石英系ガラス、シリコン(Si)、InP等の各種材料が用いられる。光デバイスの高機能化、大規模化には、異種材料で個別に作製された光デバイスをハイブリッド接続することが効果的、効率的である。このようなハイブリッド接続された光デバイスにおける信号品質の信頼性を確保するため、光導波路同士を充分な接続強度を持って接続することが求められている。光デバイスの光導波路を他の光デバイスの光導波路と接続することは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の接続構造は、光導波路デバイスの端面に光接続部品を接続している。光接続部品は、複数のV溝が形成されたV溝基板と、V溝基板に重ねられる平板のリッド基板とにより構成される。特許文献1には、このような光接続部品が光導波路デバイスの端面に接着固定されることが記載されている。
【0003】
図11(a)、
図11(b)は、従来の一般的な接続構造を説明するための模式図である。
図11(a)、
図11(b)は、例えば特許文献1に記載のように、光デバイス同士を互いの端面に接着剤で接続する構成を示していて、光導波路型の光デバイス110と光デバイス120とを接続する接続構造の例を示している。
図11(a)は、接続構造100の上面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す接続構造100の断面線XIbに沿う断面図である。
図11(a)、
図11(b)に示す例では、光デバイス110は平面光波回路(Planar Light wave Circuit:以下、「PLC」とも記す)であり、光デバイス120は、光ファイバを用いるファイバ部品である。PLCである光デバイス110は、Si基板112上に光導波路111を備えている。光導波路111は、コア111a、コア111aを挟んで形成されるクラッド層111bを有する。また、光デバイス110は、光導波路111上にガラスリッド113を設けている。
【0004】
一方、光デバイス120は、V字のV溝124を有するガラス基板122、V溝124に固定された光ファイバ121、固定された光ファイバ121を押さえるガラス板123を有している。光ファイバ121は、コア121a及びクラッド層121bを有している。光デバイス110と光デバイス120とは、それぞれコア111a、121aが露出する端面同士を合わせて接着剤150により接着、接続される。
【0005】
光導波路111の厚さ及び光ファイバ121の径は、いずれも数μmから100μmオーダーである。また、Si基板111やガラス基板122は凡そ1mm程度の厚さであり、具体的には、例えば、光ファイバ121の外径が125μm(コア121aが10μm、クラッド層121bが20μm)、コア112aが7μm、上下のクラッド層112bがそれぞれ20μmである。このような光デバイス110、120を接続する場合、本体のみでは十分な強度を保証する接着面積を確保することが難しく、接続の信頼性が低下する。
【0006】
図11に示す接続構造100は、光デバイス110の接着面積を確保し、接着強度を高めるために厚さが約1.5mmのガラスリッド113、ガラス板123を備えている。そして、ガラスリッド113が接着された光デバイス110及びガラス板123が接着された光デバイス120は、接着面となる端面が研磨により平坦化された後に互いに接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PLC型の光デバイス(以下、単に「PLC」とも記す)は、例えば、光半導体のようなInP(インジウムリン)等の化合物基板を利用した光デバイスと接続され、光モジュールを構成することに用いられる場合がある。光半導体系の材料をPLCの劈開面に接着する場合、接続構造100と同様に、接着面積が不足して接着の強度を確保することが課題となる。しかしながら、光半導体系の材料は、単体でも研磨することが困難であることが知られている。このため、接着面積を確保するために光半導体にガラス等の補強部材を接着して研磨することはできなかった。また、PLCと光半導体の接続時に補強部材を取り付けることは、接続工程及び接続システムの占有時間が長くなり、光デバイスの生産効率を低下させることが懸念される。また、補強部材の取り付けは、補強部材の厚さの制御が困難であるために接続構造の品質が安定し難く、十分な信頼性を得ることができない。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、光デバイス同士の接続において、十分な接続強度を確保し、生産効率を低下させることがなく、しかも接続の高い信頼性を実現する光デバイス接続方法、接続構造及び光デバイス接続システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の光デバイス接続方法の一形態は、光導波路を有する光デバイス同士を接続する光デバイス接続方法であって、第1の光デバイスの第1の基板に形成された第1のコアを含む第1の光導波路の一部をエッチングして、前記第1の光導波路から前記第1のコアの端面が前記第1の基板と交差する面に向かって露出するコア露出面及び、前記第1の光導波路が切欠かれたことにより露出する前記第1の基板の面である基板露出面を形成する工程と、前記基板露出面に熱酸化膜を形成する工程と、第2のコアを含む第2の光導波路を有する第2の光デバイスを、前記第2の光導波路と前記基板露出面上の前記熱酸化膜との間に接着剤を注入して接続し、前記第2のコアの端面と、前記コア露出面から露出する前記第1のコアの端面と、を接続する工程と、を含む。
【0011】
また、本発明の光デバイス接続構造の一形態は、コアを含む光導波路を有する光デバイス同士が接続された接続構造であって、第1のコアを含む第1の光導波路が第1の基板の一部に形成され、前記第1の光導波路から前記第1のコアの端面が前記第1の基板と交差する面に向かって露出するコア露出面及び、前記第1の光導波路が形成されていない前記第1の基板の面である基板露出面を有する第1の光デバイスと、前記基板露出面上に形成された熱酸化膜上に注入された接着剤により接続され、第2のコアを含む第2の光導波路を有する第2の光デバイスと、を備え、前記第2のコアの端面と、前記コア露出面から露出する前記第1のコアの端面と、が接続されている。
【0012】
また、本発明の光デバイス接続システムの一形態は、コアを含む光導波路を有する光デバイス同士を接続する光デバイス接続システムであって、第1のコアを含む第1の光導波路が第1の基板の一部に設けられ、前記第1のコアの端面が前記第1の光導波路から露出するコア露出面及び前記第1の光導波路が形成されていない前記第1の基板である基板露出面を有する第1の光デバイスを保持する第1の保持部と、第2のコアを含む第2の光導波路を有する第2の光デバイスを保持する第2の保持部と、前記第1の保持部に保持された前記第1の光デバイスと、前記第2の保持部に保持された前記第2の光デバイスとの位置を調整する位置合わせ部と、前記位置合わせ部により調整された位置において、前記基板露出面上に形成された熱酸化膜上に注入された接着剤により前記第2の光デバイスを接続し、前記第2のコアと、前記コア露出面から露出する前記第1のコアと、を接続する接続部と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
以上の形態によれば、光デバイス同士の接続において、十分な接続強度を確保し、生産効率を低下させることがなく、しかも接続の高い信頼性を実現する光デバイス接続方法、接続構造及び光デバイス接続システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態の接続構造の模式的な上面図、(b)は(a)の接続構造の模式的な断面図である。
【
図2】
図1(b)に示す接続構造の一部を拡大して示す図である。
【
図3】(a)、(b)、(c)及び(d)は、本発明の一実施形態の光デバイス接続方法の模式的な工程図である。
【
図4】(a)、(b)及び(c)は、
図3(d)に続く光デバイス接続方法の模式的な工程図である。
【
図5】本発明の一実施形態の光デバイス接続システムを説明するための模式図である。
【
図6】第一実施例のサブモジュールの上面図である。
【
図7】(a)は
図6に示すサブモジュールの模式的な断面図、(b)は(a)に示すサブモジュールの一部を拡大して示す図である。
【
図8】(a)は
図7(a)、(b)に示すサブモジュールをパッケージ化した光モジュールの上面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図9】(a)は第二実施例のサブモジュールの上面図、(a)は(b)の断面図である。
【
図10】
図9(a)、(b)に示すサブモジュールをパッケージ化した光モジュールの上面図である。
【
図11】(a)は公知の接続構造の上面図、(b)は(a)に示す接続構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。本実施形態の説明に用いる図面は、いずれも模式図であり、実施形態の具体的な形状やサイズを限定しない。また、図面は、図示された構成の寸法形状や縦横比等を正確に示すとは限らない。図中において、同様の部材には同様の符号が付与されていて、その説明を一部略す場合がある。
【0016】
(接続構造)
図1(a)、
図1(b)及び
図2は、本実施形態の接続構造1を説明するための図である。
図1(a)は、接続構造1の上面図、
図1(b)は
図1(a)中に示す断面線Ibに沿う断面図である。
図2は、
図1(b)に示す断面の範囲IIで示す部分の拡大図である
図1(a)、
図1(b)でいう上下は、
図1(a)、
図1(b)中に示す座標系のz軸に沿って決められる。
図1(a)、
図1(b)においては、z軸の座標の大きい側を「上」、座標の小さい側を「下」とする。また、本明細書において、「光デバイス」は、光を利用して情報の記録や伝達をする部品であればよく、光デバイスを接続した構成を光モジュールと記す。「接続構造」は、光モジュールにおいて光デバイス同士を接続した部分を指す。
【0017】
図1(a)、
図1(b)に示すように、接続構造1は、光デバイス10と光デバイス20とを接続する。光デバイス10、20は、いずれも光導波路を有する光デバイスである。接続構造1の例では光デバイス10を平面光波回路型光デバイス、すなわちPLCとし、光デバイス20をInPを基板とする光半導体デバイスとする。ただし、光デバイス20は、例えば基板がGaAsを材料とする光半導体デバイス、さらには光ファイバや光アイソレータ等であってもよい。
【0018】
図2に示すように、光デバイス10は、コア11aと、コア11aよりも屈折率の低いクラッド層11bを有している。また、光デバイス20は、コア21aと、コア21aよりも屈折率の低いクラッド層21bを有している。コア11a、コア21aは、それぞれ、クラッド層11b、21bに覆われている。光デバイス10はコア及びクラッド層が石英系ガラスを主体とする材料により形成されている。コア及びクラッド層の材料としては、石英ガラスの他、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、多成分ガラス、あるいはプラスチック等が挙げられる。コア11a及びクラッド層11bは光導波路11を構成し、コア21a及びクラッド層21bは光導波路21を構成する。また、光デバイス10はSi基板12を有し、光導波路11はSi基板12の表面に形成されている。光デバイス20はInP基板22を有し、光導波路21はInP基板22の表面に形成されている。
【0019】
また、
図2に示すように、光デバイス20は、InP基板22を上にして光デバイス10に接続される。このため、
図1(a)において、InP基板22の図示を省き、InP基板22下の光導波路21を図示している。
【0020】
光デバイス10は、
図1(a)に示すように、光導波路11がSi基板12の一部に形成されている。PLCである光デバイス10の光導波路11は、コア11aとクラッド層11bとを含む層であり、コア11aを含まないクラッド層11bの部分をも含む。Si基板12のうち、光導波路11が形成されている面を光導波路形成面12a、光導波路11が形成されていない面を基板露出面12bとする。なお、基板露出面12bは、光導波路11が形成されていない面であればよく、例えば酸化膜等の他の部材によりSi基板が覆われて露出していないものも含む。基板露出面12bは、光導波路11との間で段差を有し、光導波路11よりも低い面である。このような形状の基板露出面12bは、テラス部とも呼ばれている。
【0021】
また、光デバイス10は、光導波路11からSi基板12と交差する面に向かってコア11aが露出するコア露出面13を有している。「Si基板12と交差する面」は、Si基板12と平行な面を除くことを指し、本実施形態では、コア11aがSi基板12と直交する面に向かって露出する。光デバイス20は、基板露出面12bと接続し、コア21aがコア11aに接続される。コア21aとコア11aとは、光の伝搬が可能な状態に接続される。この接続では、コア11a、21a間で伝搬する光の信号特性、及び接続損失を損なわないことが望ましい。
【0022】
後述するように、本実施形態の基板露出面12bは、光導波路11及び光導波路11と積層される複数の層をエッチングして形成されている。光導波路11及び光導波路11と積層される他の層を、以下、「デバイス層」とも記す。つまり、デバイス層は、光デバイス10からSi基板12を除いた部分である。デバイス層を切欠いたことにより、基板露出面12bと同時にデバイス層の端面にコア露出面13が形成される。
【0023】
コア露出面13のz方向の長さは、デバイス層の厚さに略等しい。これに対し、基板露出面12bは、Si基板12上のデバイス層の任意の領域をエッチングして形成されるので、デバイス層の厚さより十分に大きい領域を確保することができる。そして、本実施形態は、光デバイス20を基板露出面12bに接着することによって光デバイス10と接続する。このようにすれば、コア露出面13よりも十分面積の大きな基板露出面12bを接着面にし、光デバイス10と光デバイス20とを接続することができる。このため、本実施形態は、公知の構成よりも大きな接着面を確保することによって光デバイス同士の接着強度を高め、ひいては光デバイスを接続して構成される光モジュールの信頼性を高めることができる。
【0024】
また、本実施形態は、光デバイス10、20を接続するに際し、コア11aとコア21aとを正確に位置合わせすることが好ましい。コア11a、21aの位置合わせは、
図1に示すz軸方向及びx-y方向に行われる。本実施形態は、コア11a、21aをz軸方向に位置合わせするため、Si基板12に熱酸化膜を形成してもよい。また、本実施形態は、接続に先立って基板露出面12bに図示しない酸化膜を成膜してもよい。このようにすれば、コア21aの位置を酸化膜の厚さの分だけ高くすることができる。酸化膜の厚さは、数十nmのオーダーで調整可能であるため、このような構成は、コア11aとコア21aとのz軸方向の位置合わせを高い精度で調整することもできる。なお、光デバイス10、20を接続する工程においては、さらに高精度でコア11a、21aの光軸を合わせるために後述する調芯が行われる。
【0025】
また、コア11a、12aのx-y方向の位置合わせは、位置合わせマークを使って行ってもよい。このため、本実施形態は、光デバイス10、20の少なくとも一方に、他方との相対的な位置を調整するための位置合わせマークを設けるようにしてもよい。
図1(a)に示すマーカ27は、x-y方向の位置合わせに使用される光デバイス20の側の位置合わせマークである。本実施形態は、光デバイス10の基板12にもマーカ17を形成し、このマーカ17にマーカ27の位置を合わせることによって光デバイス10と光デバイス20とを位置合わせする。なお、この位置合わせは、画像認識を用いたパッシブアライメントにより行われる。
【0026】
(光デバイス接続方法)
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、
図3(d)、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)及び
図4(d)は、本実施形態の光デバイス接続方法を説明するための図である。光デバイス接続方法は、Si基板12の表面に形成された光導波路11の一部をエッチングして、コア露出面13及び基板露出面12bを形成する工程と、光デバイス20を基板露出面12bに接続し、コア露出面13から露出するコア11aの端面と、コア21aの端面とを、接続する工程と、を含んでいる。
図3(a)はコア露出面13及び基板露出面12bの形成工程を示す図である。
図3(b)から
図4(d)は、コア11aの端面とコア21aの端面とを接続する工程を説明するための図である。
【0027】
本実施形態の光デバイス接続方法においては、
図3(a)に示すように、PLCウエハ120が作製される。本実施形態でいうPLCウエハ120は、PLCを有する複数の光デバイスが形成されたSiウエハを指す。光デバイスの製造は、クラッド層の形成、コアとなるガラス層の形成及び加工、再度のクラッド層の形成等の工程を含む。コアとなる層及びクラッド層の形成は、例えば、火炎堆積法、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング等により行われる。コアとなる層の加工は、フォトリソグラフィ及びエッチングにより行われる。PLCウエハ120は、エッチングされて複数の基板露出面12bが形成される。基板露出面12bの形成後、PLCウエハ120は、ダイシングソーで切断される。切断されたPLCウエハ120の各々は、
図3(b)に示すように、光デバイス10となる。また、図示を略すが、光デバイス20は、同様に、光半導体を含む複数の光デバイスが形成されたウエハを切断することによって形成される。
【0028】
次に、光デバイス10は、後に詳述する光デバイス接続システム(
図5)によって光デバイス20と接続される。このとき、光デバイス20は、
図3(c)に示すように、光デバイス接続システムの中で光デバイス10の近くに移動される。続いて、光デバイス20は、
図3(d)に示すように、x-y方向の調芯を行いながら基板露出面12b上に載置される。このとき、x-y方向の調芯は、例えば、光デバイス10に形成されたマーカ17と、
図1に示した光デバイス20のマーカ27とを使って行われる。x-y方向の調芯後、光デバイス20を下方に移動させ、タッチセンサ、またはカメラによる目視等により光デバイス20と光デバイス10との適正な接触位置を検出する。
【0029】
次に、本実施形態は、
図4(a)に示すように、光デバイス10、20のz方向の調芯を実行する。具体的には、例えば、光デバイス20を予め測定されている光デバイス10のコア11aの位置に合わせて上方に移動させながらコア21aとコア11aとの光軸が一致する位置を探索する。このとき、本実施形態では、光デバイス20についてもコア21aの位置を事前に測定しておいて、コア21aとコア11aとの光軸を正確に一致させる。
【0030】
上記調芯により、光デバイス20のz方向の適正な位置が決定すると、続いて、光デバイス10と光デバイス20とが接続される。
図4(b)、
図4(c)は、光デバイス10と光デバイス20との接続を説明するための図である。
図4(b)に示すように、光デバイス20の光導波路21と基板露出面12bとを対向させて、光導波路21と基板露出面12bとの間に接着剤15が注入される。接着剤15の注入は、ディスペンサ61により行われる。注入された接着剤15は、光導波路21と基板露出面12bとの間及びその周囲に広がる。このような接着剤15に対し、本実施形態は、
図4(c)に示すように、UV(UltraViolet)光照射部62により紫外線を照射する。紫外線の照射により、光導波路21と基板露出面12bとの周囲で接着剤15が硬化し、光デバイス20は光デバイス10と接着される。
図4(d)は、接着剤15が硬化した後の光デバイス10と光デバイス20とを示す図である。
【0031】
接着剤15は、紫外線により硬化する光硬化性と共に、加熱によって硬化する熱硬化性を有している。上記した紫外線の照射による光デバイス10と光デバイス20との接着は仮接着であり、この後に接着後の光デバイス10、20は光デバイス接続装置から取り外され、加熱される。接着剤15は、加熱によりさらに硬化する。紫外線で硬化した接着剤15をさらに加熱して硬化させるのは、光デバイス10のSi基板12及び光デバイス20のInP基板22が紫外線を透過しないため、硬化に十分な量の紫外線が接着剤15に照射されないことが懸念されるためである。また、熱硬化に先立って紫外線により接着剤15を硬化させるのは、調芯後の光デバイス20の位置が接着剤15の熱膨張によりずれることを防ぐためである。
【0032】
また、上記したように、基板露出面12bと光導波路21との間に接着剤が入るため、本実施形態は、光デバイス10の製造時、コア11aの高さがコア21aの高さよりも高くなるようにプロセス条件を設定している。
【0033】
また、光デバイス20は、
図2に示したように、光導波路21が基板露出面12bと対向するように基板露出面12bと接続されている。このような構成では、光デバイス20のInPを材料とする光導波路21と、Si基板12とを接続することができる。Siは石英(SiO
2)よりもInPと熱特性が近いために、光デバイス20と熱膨張や反りが同様に生じる。このため、光導波路21とSi基板12を接続する構成は、加熱により接続が損なわれる可能性を低減することができる。
【0034】
以上説明した本実施形態の光デバイスの接続方法によれば、光デバイス10のSi基板12の一部を光デバイス20との接着面に利用することができるので、光デバイス20との十分な接続強度を確保することができる。このため、本実施形態は、光デバイス10と光デバイス20との接続強度を保証し、ひいては光デバイス同士を接続して構成される光モジュールの信頼性を高めることができる。また、本実施形態の光デバイスの接続方法は、光デバイス10、20を研磨することがなく、補強部材を取り付ける工程が不要であるため、光デバイスを接続する光モジュールの生産効率を低下させることがない。さらに、本実施形態は、補強部材の厚さのばらつきに起因して光モジュールの特性がばらつくことを防ぐことができる。
【0035】
(光デバイス接続システム)
図5は、上記した光デバイスの接続方法により接続構造を製造する光デバイス接続システム200を説明するための模式図である。光デバイス接続システム200は、光デバイス10を保持する第1の保持部であるステージ210と、光デバイス20を保持する第2の保持部である保持具208と、を備えている。なお、ステージ210に保持される光デバイス10は、Si基板12の基板露出面12bに図示しない熱酸化膜が形成されている。
【0036】
ステージ210は、x-yステージであって、光デバイス10を載置、固定すると共に、光デバイス10を面方向に移動させる機能を有する。ステージ210の移動は、ステージ210が備える図示しない移動用モータにより行われる。本実施形態では、ステージ210が図示しない真空ポンプにより真空引きされるチャック孔211を有し、光デバイス10は、チャック孔211を通じて矢線Vaの方向に吸引され、ステージ210に吸着、固定される。また、保持具208は、例えば、図示しないロボットのアーム209の先端の治具であってもよく、アーム209を通じて矢線Vaの方向に真空引きされチャッキングされてもよい。
【0037】
また、光デバイス接続システム200は、ステージ210に保持されている光デバイス10と、保持具208に保持されている光デバイス20との位置を調整する上方カメラ201、側方カメラ202、調芯用ミラー206及びタッチセンサ250を備えている。上方カメラ201は、光デバイス10、20を上方から撮像し、側方カメラ202は側方から撮像する。調芯用ミラー206は、光デバイス10と光デバイス20の間に挿入され、それぞれに形成されているマーカ17、27を映す。調芯用ミラー206に映ったマーカ17、27は、上方カメラ201及び側方カメラ202に撮像される。上方カメラ201には、InPを透過するIRカメラを用いてもよい。なお、光デバイス接続システム200における上下は、
図5中に記した座標系のz軸にしたがい、z軸の座標が大きい側を小さい側よりも上とする。タッチセンサ250は、光デバイス20が光デバイス10に接触したことを高い精度で検出する。光デバイス接続システム200において、以上の構成は位置合わせ部として機能する。
【0038】
また、光デバイス接続システム200は、位置合わせ部により調整された位置において、基板露出面12bに光デバイス20を設置し、コア露出面13を介して光デバイス10のコア11aと、光デバイス20のコア21aとを接続するディスペンサ61及び光照射部62を備えている。ディスペンサ61は、接着剤15を収容し、光導波路21と基板露出面12bとの間に注入する。本実施形態は、ディスペンサ61を例えばステッピングモータにより駆動可能に構成し、接着剤15の注入開始、注入中、注入終了といった動作に合わせて上下、あるいは前後に駆動するようにしてもよい。光照射部62は、ディスペンサ61により注入された後の接着剤15に対して紫外線を照射する図示しない光源と、光源を必要に応じてオン、オフする図示しないスイッチとを備える構成であってもよい。
【0039】
さらに、光デバイス接続システム200は、上方カメラ201及び側方カメラ202によって撮像された画像を示す画像データと、タッチセンサ250により出力される接触の検出信号と、を入力する制御部280を備えている。制御部280は、画像データを処理してマーカ17、27を検出し、検出されたマーカ17、27の位置に基づいてアーム209による光デバイス10の移動動作を制御してもよい。また、制御部280は、ステージ210の図示しない移動用モータを制御してもよい。制御部280は、タッチセンサ250の検出信号に基づいて、アーム209のz軸方向の移動を制御してもよい。このような制御部280は、光デバイスの接続に専用の装置であってもよいし、光デバイス接続用のソフトウェアがインストールされた汎用的なコンピュータであってもよい。制御部280は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置及び無線あるいは有線で情報を入出力するインターフェース等の公知のハードウェアと、これらを制御するソフトウェアが協同することによって実現する。なお、このような制御部280が光デバイス接続システム200の全体を制御する構成にあっては、制御部280は、本実施形態の位置合わせ部及び接続部のそれぞれ一つとして機能する。
【0040】
次に、以上説明した構成の光デバイス接続システム200の動作を説明する。動作の開始時、光デバイス10はステージ210上に吸着され、光デバイス20はアーム209によりチャッキングされている。制御部280は、アーム209に制御信号を出力し、光デバイス20を光デバイス10上に移動させる。上方カメラ201は、光デバイス10、20の画像データを制御部280に出力する。制御部280は、画像データを画像処理して光デバイス10、20の相対的な位置を検出する。そして、光デバイス20を光デバイス10に対する適正な接続位置に近づけるようにアーム209を制御して両者のラフな位置合わせ、すなわち粗調芯を行う。なお、粗調芯に際し、制御部280は、図示しない移動用モータに制御信号を出力し、ステージ210を移動させてもよい。
【0041】
次に、アーム209は、光デバイス20と光デバイス10との間隔が10cm程度になるように光デバイス20を移動する。ミラー保持具205は、例えば制御部280の制御により駆動し、調芯用ミラー206が光デバイス10と光デバイス20との間に挿入される。側方カメラ202は、三角形を有する調芯用ミラー206を通して光デバイス10に形成されたマーカ17(
図3(b)、
図3(c))と、光デバイス20のマーカ27(
図1(a))とを撮像する。制御部280は、撮像された画像データを処理し、マーカ17、27の位置に基づいてアーム209、あるいは移動モータを制御して光デバイス10、20のx-y方向の調芯を実行する。
【0042】
次に、制御部280は、ミラー保持具205を制御して、光デバイス10と光デバイス20との間から調芯用ミラー206を除く。そして、アーム209を制御して、保持具208に保持されている光デバイス20を下方に向かって移動させる。下方に向かって光デバイス20が移動することにより、光デバイス20と光デバイス10とが接近する。光デバイス20が光デバイス10の基板露出面12bに接触すると、タッチセンサ250から接触を示す接触信号が制御部280に入力する。
【0043】
本実施形態では、クラッド層21bの基板露出面12bに向かう面を基準にしたコア21aの中心のz軸方向の位置(高さ)が予め測定されて制御部280に保存されている。また、クラッド層11bの光導波路形成面12aに向かう面を基準にしたコア11aの中心の高さが予め測定されて制御部280に保存されている。制御部280は、アーム209を制御して、光デバイス20を基板露出面12bとの接触位置から上方に移動させ、コア21aとコア11aとの高さを一致させる。このような動作は、例えば、光デバイス20のコア21aの中心の高さが2.5μm、光デバイス10のコア11aの中心の高さが12.5μmである場合、アーム209が光デバイス20を10μm上方に移動させるように行われる。上方に移動した光デバイス20と基板露出面12bとの間には、幅が10μmの間隙が生じる。なお、このような動作を実現するため、本実施形態は、コア11aの中心高さをコア21aの中心高さよりも高くする、すなわち、コア11aの下側のクラッド層11bの厚さがクラッド層21bの厚さよりも厚くなるように予めプロセス条件を設定している。
【0044】
次に、制御部280は、コア11aとコア21aとの高さが一致した光デバイス20のz方向の位置を記録する。アーム209は、光デバイス20をさらに上方に移動させ、光デバイス20を光デバイス10から遠ざける。光デバイス10と光デバイス20との間にディスペンサ61が移動し、基板露出面12bに接着剤15を適量注入する。制御部280は、アーム209を制御して先に記録されているz方向の位置に光デバイス20を移動させ、光照射部62をオンして接着剤15に紫外線を照射する。紫外線の照射を受けた接着剤15が硬化し、光デバイス20が基板露出面12bに仮固定される。
【0045】
仮固定された光デバイス10及び光デバイス20は、光デバイス接続システム200から取り外された後、例えば、100℃の温度で30分加熱される。接着剤15は、加熱処理によってさらに硬化し、光デバイス10と光デバイス20との接続が完了する。本発明者らは、光デバイス接続システム200を使って接続された接続構造の接続損失を評価し、接続による過剰損失が1dB以下という良好な特性を確認した。このような結果から、本実施形態の光デバイス接続システム200は、種別の異なる光デバイス同士を適正に接続し、接続損失の少ない接続構造、ひいては接続構造を有する光モジュールを製造することができるといえる。
【0046】
ただし、本実施形態の光デバイス接続システムは、上記のように、予め光デバイス10、20のコアの高さを測定し、測定されたコアの高さに基づいて光デバイス20の接続位置を決定することに限定されず、他の方法で調芯を行ってもよい。他の調芯の方法としては、例えば、ステージ210を移動させながら光デバイス20のコア21aからコア11aに光を入力し、コア11aから出力される光を観測するアクティブアライメントがある。アクティブアライメントにより調芯を行う場合、制御部280は、コア11aから出力される光の強度が最も強くなる位置を記録する。そして、上記と同様に、アーム209が、光デバイス20をいったん上方に移動させ、接着剤15が基板露出面12bに注入された後に光デバイス20を記録されている位置に移動させてもよい。
【実施例】
【0047】
(第一実施例)
次に、以上説明した実施形態の実施例を説明する。第一実施例は、PLC型の光デバイス30とInP系の光半導体デバイス40とを接続し、High Bandwidth Coherent Driver Modulator(HB-CDM)を構成する例である。
図6、
図7(a)及び
図7(b)は、第一実施例のHB-CDMのサブモジュール6を説明するための図である。
図6は、サブモジュール6をz軸の上方から下方に見た上面図である。
図7(a)は、
図6に示すサブモジュール6の断面線VII、VIIに沿う断面図である。
図7(b)は、
図7(a)に示す範囲VIIbで示す部分の拡大図である。
図6、
図7(a)に示すように、光デバイス30は、Si基板32と、Si基板32の表面に形成される光導波路31とを有している。光導波路31は石英系ガラス製の光導波路である。光導波路31は、コア31a、コア31aの上部及び下部に形成されるクラッド層31bを備えている。コア31a及びクラッド層31bは、いずれも酸化膜により形成されている。
【0048】
Si基板32は、光導波路形成面32aと、基板露出面32bと、を有している。Si基板32においては、光導波路形成面32aの表面に酸化膜を形成し、コア31aの高さが高い精度で調整されている。
図6に示すように、光デバイス30は、偏波合波器(PBS)36、Y分岐部37及び偏波ローテータ38を備えている。光デバイス30のチップサイズは8×6mm、厚さは1mm、
図7(b)に示すコア31aの厚さは4μm、コア31aの上部のクラッド層31bは厚さ20μm、下部のクラッド層31bの厚さは10μmであった。
【0049】
光半導体デバイス40は、InP系光半導体で構成されるマッハツェンダー型変調器(InP-MZM)を構成する。光半導体デバイス40は、光導波路41とInP基板42とを有している。光導波路41は、4個の子マッハツェンダー型干渉計45a、2個の親マッハツェンダー型干渉計45b、子マッハツェンダー型干渉計45aをそれぞれ変調動作させる8個の電極46及び光デバイス30との位置合わせに使用されるマーカ47を備えている。光導波路41は、コア41aと、クラッド層41bとを有している。光半導体デバイス40のチップサイズは5×2.5mm、基板42の厚さは250μm、コア31aの厚さは0.8μm、クラッド層41bの厚さは3μm以下であった。サブモジュール6は、光デバイス30の基板露出面32bに対し、光半導体デバイス40を、InP基板42を上方に向けて接着剤35で接着し、コア露出面33から露出したコア31aとコア41aとを接続することによって形成される。このため、
図6においては、InP基板42の図示を省き、InP基板42下の光導波路41を図示している。
【0050】
接続された光デバイス30と光半導体デバイス40との光入出力ポートを調芯するため、第一実施例は、
図6に示したマーカ47を画像認識してx-y方向のパッシブアライメントを行った。また、第一実施例においては、光デバイス30の光導波路形成面32aに向かうクラッド層31bの高さと、光半導体デバイス40のクラッド層41bの高さとを調芯に先立って予め測定した。そして、光半導体デバイス40が基板露出面32bに接触した後、コア41aの高さがコア31aの高さと一致するように、光半導体デバイスをロボットのアーム等により上方に移動させた。次に、第一実施例は、UV硬化性と熱硬化性の両方を有する接着剤35を、基板露出面32bと光導波路41の表面との間に適量注入した。注入された接着剤35は、基板露出面32bと光導波路41の表面との間に留まると共に、一部がその周囲に少量はみ出すように広がった。接着剤35は、紫外線の照射を受けて硬化し、光半導体デバイス40は、コア41aの高さがコア31aの高さと一致する位置において光デバイス30と仮固定された。
【0051】
なお、第一実施例で用いた接着剤35は、アクリル系1液タイプの接着剤であり、その特性は、粘度50mPa・s、ガラス転移温度184℃、弾性係数2.5×1010dyn/cm、接着強度200kg/cm2以上である。また、接着剤35の屈折率は、動作波長1.55μmで約1.508である。
【0052】
第一実施例においては、仮固定された光デバイス30及び光半導体デバイス40を光デバイス接続システムから取り外し、恒温槽内で加熱した。加熱されたことによって接着剤35は更に硬化し、光デバイス30と光半導体デバイス40との接続強度及び安定性が向上した。また、本発明者らは、光デバイス30と光半導体デバイス40とを接続したサブモジュール6の接続損失を評価し、接続による過剰損失が1dB以下という良好な結果を得た。さらに、コア露出面33と光半導体デバイス40との間の接着剤35の層が数μm程度と薄いため、コア31aとコア41aとの境界の接着剤は、接続構造及びこれを用いた光モジュールの光学特性に影響がなかった。また、第一実施例では、光デバイス20のチップの端面にARコート(Anti-Reflection Coating)を蒸着して、反射戻り光を抑制した。
【0053】
従来、マッハツェンダー型変調器の高速変調特性を生かしてHB-CDMを実現する場合、InP系光デバイスは、比較的面積の大きい回路の形成が歩留の観点で難しい、あるいはレンズなどの個別部品を用いると組立コストが高いという欠点があった。しかし、第一実施例に示した構成によれば、PLCの低損失性、高い集積性、比較的な大面積の回路を容易に作製できるという利点を生かして、高性能、低コストのHB-CDMを実現することが可能となる。
【0054】
また、第一実施例では、以上説明したサブモジュール6をパッケージに収容してHB-CDMとなる光モジュールを作製した。
図8(a)、
図8(b)は、光モジュールを説明するための図であって、
図8(a)は光モジュールの上面図、
図8(b)は、
図8(a)に示した断面線VIIIbに沿う断面図である。
図8(a)、
図8(b)に示すように、サブモジュール6は、基板32が上になるようにパッケージ70に収容される。つまり、
図8(a)、
図8(b)は、
図6に示すに示すサブモジュール6の上面を下にした状態を示している。
【0055】
サブモジュール6は、アルミナ(AlN)基板71に固定されてパッケージ70の内部に収容される。アルミナ基板71には駆動用ドライバ72が搭載されて、光半導体デバイス40はボンディングワイヤ73により駆動用ドライバ72と接続されている。また、光半導体デバイス40には図示しないメタル配線が形成されていて、電極46に駆動電圧が印加される。光デバイス30には入出力用偏波保持光ファイバ(Polarization Maintaining Fiber:PMF)76が接続されている。この際、入出力用偏波保持光ファイバ76は、ファイバ部品74に接着剤で固定され、ファイバ部品74の端面が研磨後の光デバイス30に接続される。さらに、入出力用偏波保持光ファイバ76は、パッケージ70の外周面に取り付けられたファイバ保持部75に固定される。第一実施例は、光デバイス30のファイバ部品74との接続端面を補強するために、ガラスリッド79を光デバイス30の光導波路31の側に接着した。ガラスリッド79は、光デバイス30の端面の研磨の前に光デバイス30に接着される。
【0056】
以上のようにしてサブモジュール6が搭載されたアルミナ基板72は、温度制御素子(Thermoelectric Controller: TEC)77に銀ペーストで固定される。さらに、全体が基板78に搭載される。HB-CDMは、このような状態のパッケージ70の内部を窒素ガスで封止して完成する。
【0057】
本発明の発明者らは、第一実施例のHB-CDMの特性を測定した。そして、測定の結果、第一実施例のHB-CDMが、OIF(Optical Internetworking Forum)に準拠するOIF-HB-CDM-01.0.pdfを満たすことを確認した。さらに、本発明者らは、第一実施例のHB-CDMの信頼性試験を行い、信頼性に問題がないことを確認した。以上説明したように、第一実施例は、温度安定性を必要とするマッハツェンダー型干渉計45を有する光半導体デバイス40を温度制御素子77に搭載し、信頼性の高い光モジュールを提供できることを確認した。
【0058】
(第二実施例)
次に、本発明の第二実施例を説明する。第二実施例は、Ultra-High Bandwidth Integrated Coherent Receiver(以下、「UHB-ICR」と記す)となる光モジュールを構成する例である。シリコンフォトニクス(Si-P)型導波路フォトダイオード(Waveguide Photodiode:WG-PD)の高速高感度受光特性を生かしてUHB-ICRを実現する場合、8チェンネルのWG-PDと偏波制御関係のDual Polarization Optical Hybrid(以下、「DPOH」と記す)回路部分が必要となる。しかしながら、8chのWG-PDは、1チップで実現することは歩留の観点から困難であるため、2つの4chのチップを用いて構成される。また、Si-PでDPOHを構成することは、位相制御等の課題から容易ではなかった。第二実施例は、PLC型光デバイスの低接続損失性、高い集積性、比較的大面積の光回路を容易に作製できるという利点を生かしてICR用DPOHを作製する。そして、このDPOHを2つの4chのSi-P型WG-PDと接続し、高性能、低コストのUHB-ICRを実現する。
【0059】
図9(a)、
図9(b)は、第二実施例のサブモジュール9を説明するための図である。
図9(a)はサブモジュール9をz軸の上方から下方に見た上面図である。
図9(b)は、
図9(a)に示すサブモジュール9の断面線IX、IXに沿う断面図である。第二実施例は、PLC型の光デバイス80と、二つのSi-P型光デバイス90a、90bとを接続する。光デバイス80は、第一実施例と同様に、Si基板82と光導波路81を備え、光導波路81は、コア81a及びコア81aを挟んで形成されるクラッド層81bを有している。光デバイス80は、第一実施例の光デバイス30と同様に、偏波合波器(PBS)36、Y分岐部37及び偏波ローテータ38を備えている。さらに、光デバイス80は、90°位相制御部(Optical Hybrid、OH)48を備えている。光デバイス80のSi基板82は、光導波路形成面82a、基板露出面82bを有し、Si-P型光デバイス90a、90bは、いずれも基板露出面82bに接着剤85によって接着されている。基板露出面82bの形成によって光導波路81にはコア露出面83が形成される。光デバイス80のチップサイズは10×8mm、厚さは1mm、
図9(b)に示す光導波路81の総合的な厚さは34μmであった。
【0060】
Si-P型光デバイス90a、90bは、Si-P型WG-PDであって、シリコン基板及びSi基板に形成されたSi光導波路を有している。Si光導波路にGe(ゲルマニウム)を注入することによって高速受信用のWG-PD96が形成される。Si-P型光デバイス90a、90bのチップサイズは4×2mm、Si基板の厚さは0.5mmである。
【0061】
サブモジュール9の作製にあたり、Si-P型光デバイス90a、90bは、基板露出面82bに光導波路の側を向けてそれぞれ接着されて光デバイス80と接続された。接着に係る光デバイス80とSi-P型光デバイス90a、90bとの調芯は、第一実施例と同様に行われた。すなわち、x-y方向の調芯は、マーカ97を撮像した画像を画像処理しながら光デバイス80と位置合わせするパッシングアライメントにより行われた。また、z方向の調芯は、Si-P型光デバイス90a、90bを、光導波路の側が基板露出面82bに接触した後に上方に移動させることによって行われる。なお、第二実施例においても、Si-P型光デバイス90a、90b及び光デバイス80のコアの高さとみなせるクラッド層の高さが予め測定されている。このため、第二実施例は、Si-P型光デバイス90a、90bを光デバイス80とコア同士の高さが一致するまで引き上げ、両者の端面を合わせることができる。第二実施例は、Si-P型光デバイス90a、90bを個別に調芯し、その両方を低接続損失、かつ安定に光デバイス80と接続することができる。
【0062】
次に、Si-P型光デバイス90a、90bの光導波路と基板露出面82bとの間に接着剤85が注入され、続いて紫外線が照射される。紫外線が照射された接着剤85は硬化してSi-P型光デバイス90a、90bを光デバイス80に仮固定する。仮固定後のSi-P型光デバイス90a、90bと光デバイス80は、光デバイス接続システムから取り外されて加熱される。接着剤85は、加熱によってさらに硬化し、UHB-ICRのサブモジュール9が完成する。このような第二実施例によれば、サブモジュール9におけるSi-P型光デバイス90a、90bの基板の高さが一致し、パッケージ化の際にサブモジュール9を安定してパッケージ70内に固定することができる。
【0063】
図10は、サブモジュール9をパッケージ化した光モジュール説明するための図であって、光モジュールの上面図である。
図10に示す光モジュールは、UHB-ICRを構成する。
図10に示すように、サブモジュール9は、基板82が上になるようにパッケージ70に収容される。つまり、
図10は、
図9(a)に示すに示すサブモジュール9の上面を下にした状態を示している。サブモジュール9は、アルミナ(AlN)基板71に固定されてパッケージ70の内部に収容される。アルミナ基板71には受信用増幅器(Trance Impedance Amplifier:TIA)702が搭載されて、Si-P型光デバイス90a、90bはボンディングワイヤ73により受信用増幅器702と接続されている。光デバイス80の端面には入出力用光ファイバ706が接続されている。この際、入出力用光ファイバ706は、ファイバ部品74に接着剤で固定され、ファイバ部品74の端面が研磨後の光デバイス80に接続される。サブモジュール9が搭載されたアルミナ基板71は、銀ペーストによりパッケージ70に固定され、パッケージ70の内部は窒素ガスにより封止される。以上により、第二実施例のUHB-ICRが完成する。
【0064】
本発明の発明者らは、第二実施例のUHB-ICRの特性を測定した。そして、測定の結果、第二実施例のUHB-ICRが、OIFに準拠するOIF-DPC-MRX-02.0.pdfを満たすことを確認した。さらに、本発明者らは、第二実施例のUHB-ICRの信頼性試験を行い、信頼性に問題がないことを確認した。以上説明したように、第二実施例は、3個以上の光デバイスを含むサブモジュールをパッケージ化し、信頼性の高い光モジュールを提供できることを確認した。
【符号の説明】
【0065】
1・・・接続構造
6,9・・・サブモジュール
10,20,30,40,80・・・光デバイス
11,21,31,41,81・・・光導波路
11a,21a,31a,41a,81a・・・コア
11b,21b,31b,41b,81b・・・クラッド層
12,22,32,42,82・・・Si基板
12a,32a・・・光導波路形成面
12b,32b・・・基板露出面
13,33,83・・・コア露出面
15,35,85・・・接着剤
17,27,47,97・・・マーカ
40・・・光半導体デバイス
61・・・ディスペンサ
62・・・光照射部
90a,90b・・・Si-P型光デバイス
200・・・光デバイス接続システム
201・・・上方カメラ
202・・・側方カメラ
205・・・ミラー保持具
206・・・調芯用ミラー
208・・・保持具
209・・・アーム
210・・・ステージ
250・・・タッチセンサ
280・・・制御部
【要約】
【課題】光デバイス同士の接続において、十分な接続強度を確保し、生産効率を低下させることがなく、しかも接続の高い信頼性を実現する光デバイス接続方法を提供する。
【解決手段】Si基板12に形成されたコア11aを含む光導波路11の一部をエッチングして、光導波路11からコア11aの端面が基板12と交差する面に向かって露出するコア露出面13及び、光導波路11が切欠かれたことにより露出する基板12の面である基板露出面12bを形成する工程と、コア21aを含む光導波路21を有する光デバイス20を基板露出面12bに接続し、コア21aの端面と、コア露出面13から露出するコア11aの端面とを接続する工程と、により光導波路11、21を有する光デバイス10、20同士を接続する。
【選択図】
図2